(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036220
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】蚊の幼虫防除用顆粒状組成物および蚊の幼虫の防除方法
(51)【国際特許分類】
A01N 63/23 20200101AFI20230307BHJP
A01N 25/12 20060101ALI20230307BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20230307BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A01N63/23
A01N25/12
A01P7/04
A01M1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143137
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】596018735
【氏名又は名称】株式会社九州メディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】前田 稔
(72)【発明者】
【氏名】下川 智子
【テーマコード(参考)】
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B121AA13
2B121CC02
2B121CC29
2B121EA26
2B121EA30
2B121FA01
2B121FA16
4H011AC02
4H011BA01
4H011BB21
4H011BC03
4H011BC18
4H011BC20
4H011DA02
4H011DD02
4H011DG16
(57)【要約】
【課題】ハマダラカを含む蚊の幼虫を効率的に防除することができ、水面での浮遊性、崩壊性および拡散性に優れた、蚊の幼虫防除用顆粒状組成物を提供する。また、ハマダラカを含む蚊の幼虫を効率的に防除することができる、蚊の幼虫の防除方法を提供する。
【解決手段】微生物が産生する、蚊の幼虫に対する殺虫性タンパク質と、中空体と、結合剤と、水溶性粉末と、界面活性剤とを含み、pHが、3以上10以下である、蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。前記蚊の幼虫防除用顆粒状組成物を、蚊の幼虫の生息場所に施用する蚊の幼虫の防除方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物が産生する、蚊の幼虫に対する殺虫性タンパク質と、
中空体と、
結合剤と、
水溶性粉末と、
界面活性剤とを含み、
pHが、3以上10以下である、蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
【請求項2】
前記水溶性粉末は、pHが3以上10以下である、請求項1に記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
【請求項3】
前記水溶性粉末は、無機塩、有機塩、糖類、および糖アルコールからなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
【請求項4】
前記中空体の含有量が、30質量%以上55質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
【請求項5】
前記結合剤の含有量が、5質量%以上25質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
【請求項6】
前記微生物が、バチルス・チューリンジェンシス(Bacillus thuringiensis)である、請求項1から5のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
【請求項7】
直径が0.5mm以上2mm以下であり、長さが0.6mm以上10mm以下の円柱状である、請求項1から6のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
【請求項8】
前記蚊が、ハマダラカ属の蚊である、請求項1から7のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物を、蚊の幼虫の生息場所に施用する蚊の幼虫の防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蚊の幼虫防除用顆粒状組成物および蚊の幼虫の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デング熱やジカ熱によるウイルス感染症、マラリア原虫による原虫感染症などの蚊媒介感染症は人類に大きな被害をもたらしてきた。中でもマラリアは世界三大疾病の一つと言われており、いまだに終息されていない。現時点でも年間40万人以上がマラリアによる感染症で亡くなっている。現在までに様々な対策が取られてきたが、いまだに根絶ができておらず大きな課題である。
【0003】
マラリアは、マラリア原虫を保有する蚊(ハマダラカ)が人を吸血するときにマラリア原虫が感染・発症する。特に夜に活動するために就寝時などに吸血されることが多い。
【0004】
その対策として「殺虫剤処理した蚊帳」と「室内残留性散布」が効果を上げている。この「殺虫剤処理した蚊帳」により就寝中の吸血のリスクを減らすことができる。また生活環境の屋内残留噴霧が推奨されており、効果を上げてきた。
【0005】
マラリア防除の方法としてピレスロイド系の殺虫剤が主に用いられてきたが、近年、耐性を持った蚊の出現により上記殺虫剤蚊帳や殺虫剤の効果の低下が指摘されている。加えて、化学殺虫剤の場合は非選択的に生物に影響を及ぼすため、マラリア生息域への殺虫剤の散布による自然界への影響が懸念されている。
【0006】
化学殺虫剤の代替手段として、微生物殺虫剤が使われている。また、蚊の発生をより効率的に抑制するために、蚊の幼虫(ボウフラ)の段階において防除することが行われている。蚊の幼虫の防除のための微生物殺虫剤の有効成分として、バチルス・チューリンジェンシスが用いられてきた。この微生物殺虫剤は、バチルス・チューリンジェンシスが体内に産生する結晶性タンパク質(殺虫性タンパク質)を摂食した双翅目(蚊などを含む)の幼虫は死に至ることを利用している。
【0007】
例えば、特許文献1には、微生物が産生する、蚊の幼虫に対する殺虫性タンパク質と、蚊の幼虫の誘引物質を含有してなることを特徴とする蚊の幼虫用駆除剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の殺虫剤は、マラリアを媒介するハマダラカの幼虫にも使われてきたが、効果が低いことが指摘されてきた。また、ハマダラカの幼虫はきれいで汚れていない水域に生息しており、水田や沼地、マングローブ林の沼地、溝、川の縁、降雨後にできた水たまりなどあらゆる場所で生育する。このため、殺虫剤は使いやすさに加えて、さまざまな面積に対応できることを求められていた。
【0010】
かかる状況下、本発明の目的は、ハマダラカを含む蚊の幼虫を効率的に防除することができ、水面での浮遊性、崩壊性および拡散性に優れた、蚊の幼虫防除用顆粒状組成物を提供することである。また、本発明は、ハマダラカを含む蚊の幼虫を効率的に防除することができる、蚊の幼虫の防除方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0012】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 微生物が産生する、蚊の幼虫に対する殺虫性タンパク質と、中空体と、結合剤と、水溶性粉末と、界面活性剤とを含み、pHが、3以上10以下である、蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
<2> 前記水溶性粉末は、pHが3以上10以下である、前記<1>に記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
<3> 前記水溶性粉末は、無機塩、有機塩、糖類、および糖アルコールからなる群から選択される1種以上である、前記<1>または<2>に記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
<4> 前記中空体の含有量が、30質量%以上55質量%以下である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
<5> 前記結合剤の含有量が、5質量%以上25質量%以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
<6> 前記微生物が、バチルス・チューリンジェンシス(Bacillus thuringiensis)である、前記<1>から<5>のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
<7> 直径が0.5mm以上2mm以下であり、長さが0.6mm以上10mm以下の円柱状である、前記<1>から<6>のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
<8> 前記蚊が、ハマダラカ属の蚊である、前記<1>から<7>のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の蚊の幼虫防除用顆粒状組成物を、蚊の幼虫の生息場所に施用する蚊の幼虫の防除方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ハマダラカを含む蚊の幼虫を効率的に防除することができ、水面での浮遊性、崩壊性および拡散性に優れた、蚊の幼虫防除用顆粒状組成物が提供される。また、本発明によれば、前記顆粒状組成物を用いた蚊の幼虫の防除方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】(a)は顆粒状組成物を水面に散布したときの写真であり、(b)は顆粒状組成物を水面に散布して50秒経過後の写真である。
【
図3】顆粒状組成物を用いた殺虫試験の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0016】
<蚊の幼虫防除用顆粒状組成物>
本発明は、微生物が産生する、蚊の幼虫に対する殺虫性タンパク質と、中空体と、結合剤と、水溶性粉末と、界面活性剤とを含み、pHが3以上pH10以下である、蚊の幼虫防除用顆粒状組成物(以下、「本発明の組成物」と記載する場合がある。)に関するものである。
【0017】
本発明者らは、殺虫成分とハマダラカの幼虫の接触を増やすためにハマダラカの生態に着目した。従来の殺虫剤では、有効成分である殺虫性タンパク質が水表面下にとどまらずに、水中に拡散するため、水表面下の微生物や藻類などを主食とするハマダラカの幼虫に対しては、期待する殺虫効果が発揮出来ていないのではないかと考え、ハマダラカの幼虫を殺虫するには水面直下にできる限り長く殺虫成分をとどまらせておく必要があると考えた。そこで、殺虫性タンパク質を溶解させにくい、酸性の水溶性粉末であり、安価に入手することも可能なクエン酸を、増量剤として選択して、その他の成分についても種々検討し、顆粒状の組成物を作製した。しかしながら、このような構成では、殺虫活性が低下することが判明した。本発明者らは、さらに鋭意検討を行い、顆粒状組成物が特定のpHとなるように水溶性粉末などを選択することで、ハマダラカの幼虫に対する殺虫効果を大幅に向上させることができることを見出し、本発明に至った。
【0018】
本発明の組成物は、中空体を含むため、水面での浮遊性に優れ、有効成分である殺虫性タンパク質が水表面下に長く留まることができる。また、結合剤、水溶性粉末および界面活性剤を含むことで、顆粒状に成形する成形性に優れ、水面での拡散性や崩壊性が向上する。顆粒状であるため、散布しやすく、組成物が徐々に崩壊し、水面に広く拡散することができ、様々な生息域に対応可能である。さらに、本発明の組成物のpHを3~10とすることで、殺虫性タンパク質の殺虫活性を維持または殺虫活性の低下を抑制することができる。このような構成の本発明の組成物は、殺虫性タンパク質を、その殺虫活性を維持または活性低下を抑制した状態で、水面に広く拡散させ、水面に長く浮遊させた状態にできるため、特に、水面下に広く存在する蚊の幼虫を効果的に防除することができる。
【0019】
以下、本発明の組成物の構成成分について、より詳細に説明する。
【0020】
(殺虫性タンパク質)
本発明の組成物は、微生物が産生する、蚊の幼虫に対する殺虫性タンパク質(以下、「本発明に係る殺虫性タンパク質」、あるいは、単に「殺虫性タンパク質」と記載する場合がある。)を含む。微生物としては、蚊の幼虫に対する殺虫性タンパク質を産生できる微生物であればよく、例えば、土壌細菌の一種であるバチルス・チューリンジェンシス(Bacillus thuringiensis)や、バチルス・スパリカス(Bacillus sphaericus)が挙げられ、バチルス・チューリンジェンシスが好適である。
【0021】
本発明に係る殺虫性タンパク質は、微生物、例えば、バチルス・チューリンジェンシスが、栄養細胞中に芽胞を形成する際、芽胞に隣接して結晶性のタンパク質を産生し、このタンパク質は特定の昆虫の腸内で、プロテアーゼにより活性化され、特定の昆虫に対して殺虫活性を示す。
【0022】
バチルス・チューリンジェンシスはその血清型(亜種)の違いにより殺虫活性が異なっている。双翅目昆虫である蚊(幼虫含む)に対する殺虫性タンパク質を産生できるバチルス・チューリンジェンシスとして、鱗翅目、双翅目昆虫に活性を示す血清型(亜種)クルスタキー(kurstaki)およびアイザワイ(aizawai)、双翅目昆虫に活性を示すイスラエレンシス(israelensis)が挙げられる。この中でも、israelensisが好ましい。
【0023】
殺虫性タンパク質としては、殺虫性タンパク質そのものだけでなく、殺虫性タンパク質を含むものを用いることができる。例えば、バチルス・チューリンジェンシスの培養物、生菌体、その菌芽胞、熱や化学的手段により死菌化処理された菌体、又はこれらの菌体の破砕物を、殺虫性タンパク質を含むものとして用いてもよい。これらは、市販のものや、特開2005-139167号公報や、特開2017-31057号公報に開示された方法に準じて得ることができる。
【0024】
好適な殺虫性タンパク質のひとつとしては、バチルス・チューリンジェンシス D142株由来の殺虫性タンパク質が挙げられる。
【0025】
殺虫性タンパク質の含有量(殺虫性タンパク質の質量/本発明の組成物の質量×100(%))は、施用量等によって調整することもできるため、特に限定されない。例えば、殺虫性タンパク質の含有量は、0.5~5質量%や、1~3質量%等とすることができる。
【0026】
(中空体)
本発明の組成物は、中空体を含む。中空体は、本発明の組成物の水面での浮遊性に寄与する。
【0027】
中空体は、内部に空隙を有し、比重が1未満であり、水面に浮遊する性質を有するものであれば、特に限定されない。中空体としては、シラスバルーン、パーライト、ガラスバルーン、フラッシュアイバルーン、セラミックバルーンなどの無機バルーン;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリアクリロニトリルなどの樹脂から形成される樹脂製バルーン;樹脂中空体の表面を無機材料で被覆した有機無機複合バルーン等が挙げられる。これらの中空体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0028】
中でも、本発明の組成物を構成する中空体は、高硬度で、安定性が高いことから、無機バルーンが好ましい。また、低嵩密度であり、天然物由来で環境への影響も小さいことから、シラスバルーンがより好ましい。
【0029】
本発明の組成物を水面に浮遊させることができれば、中空体の含有量は特に限定されないが、中空体の含有量が少なすぎると、顆粒の浮遊性にバラツキが生じ、水面に浮遊しにくく、沈みやすい顆粒の割合が多くなる傾向にある。また、中空体の含有量が多すぎると、顆粒状に成形することが困難であったり、顆粒が脆くなり、安定性や保存性が低下したりする傾向にある。中空体の含有量(中空体の質量/本発明の組成物の質量×100(%))は、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、中空体の含有量は、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。2種以上の中空体を用いる場合には、中空体の合計の含有量(中空体の合計質量/本発明の組成物の質量×100(%))が、上記範囲であることが好ましい。
【0030】
中空体の平均粒径は特に限定されず、2.5μm~500μmや、10μm~250μm、20μm~200μmなど任意である。
【0031】
(結合剤)
本発明の組成物は、結合剤(バインダー)を含む。結合剤としては、顆粒の造粒等に用いられる一般的なものを用いることができる。結合剤としては、多糖類結合剤や合成高分子結合剤などの有機結合剤;粘土鉱物等が挙げられる。これらの結合剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0032】
多糖類結合剤としては、単糖類が3個以上結合した多糖類が挙げられ、デキストリンや、デンプン、アラビアガム、キサンタンガム、セルロース類(カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、カルボキシメチルセルロースカリウム塩、ヒドロキシプロピルセルロースなど)等が挙げられる。合成高分子結合剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。粘土鉱物としては、ベントナイト等が挙げられる。
【0033】
本発明の組成物は、結合剤として、有機結合剤および/または粘土鉱物を含むことが好ましく、有機結合剤と粘土鉱物を含むことがより好ましく、多糖類結合剤と粘土鉱物を含むことがさらに好ましい。有機結合剤は、成形性に優れ、粘土鉱物は、成形性に加えて水中での崩壊性にも優れるため、これらを併用することで、水面に散布したときの顆粒状組成物の崩壊性および拡散性をより優れたものとすることができる。
【0034】
本発明の組成物において、成形できる程度に各種材料を接着させることができれば、結合剤の含有量は特に限定されないが、結合剤の含有量が多すぎると、結合剤の種類によっては、べたつきが生じ、造粒が難しく、均一な顆粒状組成物を得ることが困難になる傾向にある。また、結合剤の含有量が少なすぎる場合も、顆粒状にすることが困難になる。そのため、本発明の組成物において、結合剤の含有量(結合剤の質量/本発明の組成物の質量×100(%))は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。また、結合剤の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。2種以上の結合剤を用いる場合には、結合剤の合計の含有量(結合剤の合計質量/本発明の組成物の質量×100(%))が、上記範囲であることが好ましい。
【0035】
(水溶性粉末)
本発明の組成物は、水溶性粉末を含む。水溶性粉末を含むことで、水面での崩壊性に優れたものとなる。また、水溶性粉末は、本発明の組成物の増量剤や賦形剤等として機能する。
【0036】
水溶性粉末は、水に溶解するものであれば特に限定されず、例えば、無機塩、有機塩、糖類、および糖アルコールからなる群から選択される1種以上とすることができる。
【0037】
本発明者らは、実施例にて後述する通り、本発明の組成物のpHは、水溶性粉末のpHに大きく影響されることを見出している。本発明の組成物のpHを3~10としやすいため、水溶性粉末は、pHが3~10の水溶性粉末であることが好ましい。pH3~10の水溶性粉末を用いることで、組成物に局所的にpHが小さい部分が存在するなどのばらつきも生じにくい。なお、水溶性粉末のpHは、1w/v%水溶液(水溶液100mL中に水溶性粉末を1g含む水溶液)としたときのpHとして、25℃でpHメータを用いて求めることができる。
【0038】
水溶性粉末のpHは、4以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。また、水溶性粉末のpHは、9以下が好ましく、8以下がより好ましく、7.5以下がさらに好ましい。
【0039】
pH3~10の水溶性粉末としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、硫酸マグネシウム等の無機塩;クエン酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機塩;ラクトース、マルトース、トレハロース、グルコース、フルクトース、キシロース等の糖類;ソルビトールやマンニトール等の糖アルコール等が挙げられる。また、これらは水和物の形態であってもよい。
【0040】
pH3~10の水溶性粉末は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。例えば、本発明の組成物は、水溶性粉末として、pH3~10(好ましくは、pH4~7.5)の無機塩、有機塩、糖類、および糖アルコールからなる群から選択される1種以上を含むものとすることができる。また、本発明の組成物は、水溶性粉末として、pH3~10(好ましくは、pH4~7.5)の無機塩、糖類、および糖アルコールからなる群から選択される1種以上を含むものとすることができる。
【0041】
殺虫活性の観点からは、水溶性粉末は、pH3~10の無機塩を含むことが好ましく、硫酸アンモニウムおよび/または硝酸カリウムを含むことが好ましい。
【0042】
糖類は、殺虫性タンパク質の保護剤として、殺虫活性の低下を抑制することができるため、水溶性粉末は、糖類を含むことが好ましい。糖類は、二糖類(ラクトース、マルトース、トレハロース等)および/または単糖類(グルコール、フルクトース、キシロース等)とすることができ、二糖類が好ましく、ラクトースがより好ましい。
【0043】
成形性の観点からは、水溶性粉末は、糖アルコールを含むことが好ましい。
【0044】
中でも、水溶性粉末は、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、ラクトースおよびソルビトールからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、硫酸アンモニウム、ラクトースおよびソルビトールからなる群から選択される1種以上を含むことがより好ましい。
【0045】
本発明の組成物において、水溶性粉末の含有量(水溶性粉末の質量/本発明の組成物の質量×100(%))は、中空体や結合剤等の含有量に応じて適宜調整される。例えば、水溶性粉末の含有量は、50質量%以下や、45質量%以下、40質量%以下等とすることができる。また、水溶性粉末の含有量は、25質量%以上や、30質量%以上、35質量%以上とすることができる。2種以上の水溶性粉末を用いる場合には、水溶性粉末の合計の含有量(水溶性粉末の合計質量/本発明の組成物の質量×100(%))を上記範囲とすることができる。
【0046】
(界面活性剤)
本発明の組成物は、界面活性剤を含む。界面活性剤を含むことで、本発明の組成物は、水面での拡散性に優れたものとなる。
【0047】
界面活性剤としては、特に限定されないが、アセチレン系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用して用いてもよい。
【0048】
アセチレン系界面活性剤としては、アセチレンアルコールおよび/またはアセチレンジオールや、これらにアルキレンオキサイドを付加したもの等が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール高級脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ソルビンタンモノアルキレート等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、アルキルアリールスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸、アルキル硫酸エステル塩、アルキル燐酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルアリール燐酸エステル塩等が挙げられる。
【0049】
本発明の組成物において、界面活性剤の含有量が多すぎると、中空体や結合剤の割合が少なくなるため、造粒が難しくなったり、水面での浮遊性が低下したりする場合がある。また、界面活性剤の含有量が少なすぎる場合も、水面での拡散性が低下する場合がある。界面活性剤の含有量(界面活性剤の質量/本発明の組成物の質量×100(%))は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましい。2種以上の界面活性剤を用いる場合には、界面活性剤の合計の含有量(界面活性剤の合計質量/本発明の組成物の質量×100(%))が、上記範囲であることが好ましい。
【0050】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、殺虫性タンパク質、中空体、結合剤、水溶性粉末、および界面活性剤以外にも、害虫の駆除剤、防除剤、忌避剤に用いられる任意の成分を含んでいてもよい。また、造粒時に加えた水を含んでもよい。
【0051】
例えば、本発明の組成物における、殺虫性タンパク質、中空体、結合剤、水溶性粉末、および界面活性剤の合計の質量の割合は、65質量%以上や、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上などとすることができる
【0052】
(顆粒状組成物)
本発明の組成物は、顆粒状である。顆粒状とは、粉末よりも大きな粒径の粒を意味する。具体的には、JIS Z 8801-1(2019)で規定される目開き500μmの篩を通過しない粒径のものである。
【0053】
本発明の組成物の大きさは、水面に浮遊できれば特に限定されない。大きさが大きすぎると水面に浮遊しにくくなるため、本発明の組成物の大きさは、10mm以下が好ましく、8mm以下がより好ましく、5mm以下がさらに好ましい。また、大きさが小さすぎると、散布が難しく、水面に浮遊しにくくなるため、本発明の組成物の大きさは、0.6mm以上が好ましく、0.8mm以上がより好ましく、1mm以上がさらに好ましい。なお、本発明の組成物の大きさは、デジタルノギス等を用いて測定することができ、球状である場合はその粒径を意味し、球状以外の形状である場合は、その最大の長さを意味する。
【0054】
本発明の組成物の形状は、特に限定されず、円柱状、楕円形、直方体状、多角形状、球状、不定形など任意の形状に成形されたものとすることができる。
【0055】
本発明の組成物の好適な形状として、直径0.5~2mmかつ長さ0.6~10mmの円柱状が挙げられる。より好ましくは、直径0.8~1.2mmかつ長さ1~5mmの円柱状である。なお、円柱状の直径と長さは、デジタルノギスを用いて顆粒10個の直径と長さをそれぞれ測定した値の平均値である。
【0056】
顆粒状組成物のpHが低いと、殺虫性タンパク質が変性することで、殺虫活性が低下してしまい、所望の活性を得ることが難しくなると考えられる。また、顆粒状組成物のpHが高いと、殺虫性タンパク質が溶解することで、殺虫活性が低下してしまい、所望の活性を得ることが難しくなると考えられる。本発明の組成物は、pHが3以上10以下であるため、殺虫性タンパク質の殺虫活性の低下を抑えることができ、顆粒状組成物としたときにも十分な殺虫活性を有するものとできる。なお、本発明の組成物のpHは、1w/v%水溶液(水溶液100mL中に本発明の組成物を1g含む水溶液)としたときのpHとして、25℃でpHメータを用いて求めることができる。この1w/v%水溶液は懸濁液でもよい。
【0057】
本発明の組成物のpHは、4以上が好ましく、5以上がより好ましく、5.5以上がさらに好ましい。また、本発明の組成物のpHは、9以下が好ましく、8以下がより好ましく、7.5以下がさらに好ましい。
【0058】
蚊の幼虫に対する本発明の組成物のLC50は、10mg/L以下、7mg/L以下、5mg/L以下、4.5mg/L以下、4mg/L以下等とすることができる。
【0059】
(蚊)
防除対象となる蚊(幼虫含む)としては、特に限定はなく、ハマダラカ属(Anopheles)、ヤブカ属(Aedes)、ナガハシカ属(Tripteroides)、イエカ属(Culex)などが挙げられる。また、オオチョウバエやユスリカ等の蚊以外の双翅目昆虫(幼虫含む)も防除対象となりうる。
【0060】
ハマダラカ属(Anopheles)に属する蚊としては、ステフェンシ・ハマダラカ(Anopheles stephensi)、アコニタス・ハマダラカ(Anopheles aconitus)、コガタハマダラカ(Anopheles minimus)、シナハマダラカ(Anopheles sinesis)、バラバセンシス・ハマダラカ(Anopheles balabacensis)、ファラウティ・ハマダラカ(Anopheles farauti)、サンダニカス・ハマダラカ(Anopheles sundaicus)、サブピクタス・ハマダラカ(Anopheles subpictus)、ガンビエ・ハマダラカ(Anopheles gambiae)、ロイコスフィラス・ハマダラカ(Anopheles leucosphyrus)等が挙げられる。
【0061】
ヤブカ属(Aedes)に属する蚊としては、オオムラヤブカ(Aedes alboscutellatus)、キンイロヤブカ(Aedes vexans nipponii)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)、ヤマダシマカ(Aedes flavopictus)、セスジヤブカ(Aedes dorsalis)、トウゴウヤブカ(Aedes togoi)、ヤマトヤブカ(Aedes japonicus)等が挙げられる。
【0062】
ナガハシカ属(Tripteroides)に属する蚊としては、キンパラナガハシカ(Tripteroides bambusa)が挙げられる。
【0063】
イエカ属(Culex)に属する蚊としては、アカイエカ(Culex pipiens pallens)、チカイエカ(Culex pipiens molestu)、ネッタイイエカ(Culex pipiens quinquefasciatus)、コガタイエカ(Culex tritaeniorhynchus)等が挙げられる。
【0064】
中でも、好適な防除対象は、ハマダラカ属(Anopheles)および/またはヤブカ属(Aedes)の蚊の幼虫であり、より好適な防除対象は、ハマダラカ属の蚊の幼虫である。
【0065】
本発明の組成物は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、本発明の組成物は、殺虫性タンパク質と、中空体と、結合剤と、水溶性粉末と、界面活性剤および水を含む混合物を混練後、混練物を造粒し、造粒物を乾燥することで得ることができる。
【0066】
原料成分の混合順に特に制限はなく、例えば、一度にすべての成分を混合する方法や、原料成分を任意の組み合わせで混合したものを先に調整して、これらをさらに混合する方法などが挙げられる。実施例に記載の通り、乾燥によってpHは大きく変化しないため、混練では、混練物の1w/v%水溶液としたときのpHが3~10(好ましくは、pH4~7.5)となるように各種材料を混合することができる。
【0067】
造粒は、湿式押出造粒などの公知の方法を利用することができる。乾燥は、自然乾燥や送風乾燥など公知の方法を利用でき、高温になりすぎないように、60℃以下や40℃以下で乾燥させることができる。
【0068】
また、乾燥後に造粒物をJIS Z 8801-1(2019)で規定される500μm(0.5mm)篩を用いて篩かけすることが好ましい。これにより、造粒や乾燥時に崩壊しているものを除いて用いることができ、散布しやすく、水面での浮遊性、崩壊性および拡散性に優れたものとできる。
【0069】
<蚊の幼虫の防除方法>
本発明の蚊の幼虫の防除方法は、上述した本発明の組成物を蚊の幼虫の生息場所に施用することを特徴とする。
蚊の幼虫の生息場所としては、湿地帯、貯水槽、沼地、河川、側溝、水たまり等の水が滞留するあらゆる場所が挙げられる。上述の通り、本発明の組成物は、水面での浮遊性、拡散性および崩壊性に優れ、長期間にわたって水面直下に殺虫性タンパク質をとどまらせておくことができるので、湿地帯、側溝、住宅の周囲のあらゆる水が滞留している場所で有効に蚊の発生を抑制することができる。
【0070】
本発明の蚊の幼虫の防除方法は、上述の通り、ハマダラカ属および/またはヤブカ属の蚊の幼虫を防除する方法として好適であり、ハマダラカ属の蚊の幼虫を防除する方法として特に好適である。
【0071】
(施用方法)
蚊の幼虫の生息場所への本発明の組成物の散布方法は、特に限定されない。本発明の組成物は、希釈せずに直接散布することができる。本発明の組成物は軽いため無人ヘリコプターやドローンなどを用いた散布も可能である。本発明の組成物の散布は、水面全体をカバーできるように一定間隔で行うことが好ましい。また、施用対象となる水域の周縁部に散布してもよい。
【0072】
本発明の顆粒用組成物の施用量や、施用頻度などは、目的とする水源に応じて適宜選択される。例えば、殺虫タンパク質としては、表面積1平方メートル当たり0.5mg~100mgや1mg~50mgを目安に投与すればよい。殺虫タンパク質の含有量にもよるが、表面積1平方メートル当たりの本発明の組成物の施用量(g/m2)は、0.01g/m2以上や、0.03g/m2以上、0.05g/m2以上などとすることができる。本発明の組成物の施用量の上限は、5g/m2以下や、2.5g/m2以下などとすることができる。施用頻度としては、幼虫の残存数に応じて頻度を調整すればよい。
【実施例0073】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
[原料]
・殺虫性タンパク質:Bacillus thuringiensis D142株を、特開2005-139167号公報に開示された方法に準じる方法で培養し、培養された微生物およびその産生物である殺虫タンパク質を培地ごと遠心分離および乾燥して、殺虫タンパク質(D142)として用いた。
・中空体:シラスバルーン(ザンワーズ製、MSB-5021)
・結合剤:デキストリン(三和澱粉工業製、コーンデックスF)、ベントナイト(クニミネ工業製、筑前1号)
・水溶性粉末:塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸(無水)(昭和加工製)、ラクトース(GLANBIA製、REFINED EDIBLE LACTOSE 100 Mesh)
・界面活性剤液:オルフィン10%液(オルフィンPD-001(日信化学工業製)が10質量%となるように、蒸留水で希釈し、作製した。)
【0075】
[評価]
・殺虫活性試験
殺虫活性(殺幼虫活性)は、実験室で育てたAedes albopictusの3齢及び4齢初期ボウフラ(幼虫)を用いて調べた。一晩汲み置きし、塩素を除去した水4mLを入れた12穴細胞培養用プレートの中で5匹の幼虫を準備し、試験液を加えた。各濃度の試験液で3回ずつ試験を行い、24時間後の死亡ボウフラ数を記録し、死亡率、半数致死濃度(LC50mg/L)を算出した。また、半数致死濃度を用いてITUを算出した。
試験液は、試験試料の10%(100,000mg/L)液を、4段階(1,000mg/L、100mg/L、10mg/L、1mg/L(終濃度)、または、8mg/L、6mg/L、4mg/L、2mg/L)に希釈して用いた。
【0076】
・菌数測定
試験試料の10%(100,000mg/L)液を10倍希釈液として、107倍まで希釈した。普通寒天培地に塗沫し、27℃で1晩培養後コロニーをカウントした。
【0077】
・pHの確認
試験試料を水に加えて、1w/v%の水溶液(水溶液100mL中に試験試料を1g含む水溶液)を調整し、pHメータを用いて、この水溶液のpHを測定し、試験試料のpHとした。
【0078】
[参考例A]
(参考例A-1)
シラスバルーン4.2g、デキストリン1g、ベントナイト0.4g、オルフィン10%液2.2g、塩化ナトリウム2.2g、ラクトース1.8g、殺虫性タンパク質0.2gを混合し、混練物を得た。
【0079】
混練物1gをシャーレにのせ、27℃で12時間乾燥して、乾燥物を得た。
【0080】
(参考例A-2~A-7)
水溶性粉末を、塩化ナトリウムおよびラクトースから表1に示すものに変更した以外は参考例A-1と同様にして、参考例A-2~A-7の混練物と乾燥物を得た。
【0081】
(評価A)
試験試料として参考例A-1~A-7の混練物と乾燥物を用いて、殺虫活性試験、菌数測定、およびpH測定を行った。菌数は、参考例A-7のものと比較した。表1に結果を示す。また、乾燥物の質量から、予め測定したシャーレの質量を引いて、乾燥物の含水量を算出した。表1に結果を示す。
【0082】
【0083】
[参考例B]
シラスバルーン42g、クエン酸22g、デキストリン28g、ベントナイト4g、オルフィン(PD-001)2g、殺虫性タンパク質2g、水を加えて、混練した。次いで、押出造粒機(MG-55-2型(ダルトン)を用いて造粒を試みた。しかしながら、べたつきにより造粒が困難であった。
【0084】
[実施例1]
(実施例1-1)
シラスバルーン42g、デキストリン10g、ベントナイト4g、塩化カリウム22g、ラクトース18g、オルフィン10%液20g、殺虫性タンパク質2gの混合物に4mL加水して、混練した。得られた混練物を、押出造粒機(MG-55-2型、ダルトン製)で造粒し、65時間自然乾燥し、顆粒状組成物を得た。
【0085】
得られた顆粒状組成物は円柱状であった。デジマチックキャリパCD-15C(mitutoyo)を用いて、顆粒状組成物10個の直径と大きさを測定したところ、直径1mm、大きさ1mm~5mmであった。また、評価には、顆粒状組成物をJIS Z 8801-1(2019)に規定する目開き500μmの篩にかけて、篩網の上に残ったものを使用した。
【0086】
(実施例1-2~1-4、比較例1-5、1-6)
表2に示すように、水溶性粉末および加水する水の量を変更した以外は、実施例1-1と同様にして、顆粒状組成物を得た。
【0087】
(顆粒状組成物の外観)
図1に、顆粒状組成物の外観写真を示す。顆粒状態は、実施例1-3および実験例1-4で良好であった。
【0088】
(評価1-1)
混練後の混練物および顆粒状組成物について、pHを求めた。表2に結果を示す。
なお、各原料の1w/v%水溶液のpHを測定したところ、シラスバルーンのpHは5.9、デキストリンのpHは6.5、ベントナイトのpHは7.7、ラクトースのpHは6.5であった。
【0089】
(評価1-2)
試験試料として実施例1-1~1-4、比較例1-5、1-6の顆粒状組成物を用いて、殺虫活性試験および菌数測定を行った。表2に結果を示す。
【0090】
【0091】
(評価1-3:保存安定性)
実施例1-2~1-4の顆粒状組成物をアルミニウム製の袋で包装し、4℃、27℃、40℃湿度75%、65℃で2週間保存し、殺虫活性試験および菌数測定を行った。表3に結果を示す。
【0092】
【0093】
[実施例2]
(実施例2-1)
シラスバルーンの含有量が32質量%となるように混合し、実施例1-2と同様の方法で造粒して、実施例2-1の顆粒状組成物を得た。得られた実施例2-1の顆粒状組成物と、実施例1-2の顆粒状組成物をそれぞれ、水を入れた水槽の水面に散布し、目視評価にて浮遊性を評価した。実施例1-2の顆粒状組成物は水面に浮遊するものが多く、水中に沈むものは少なかった。実施例2-1の顆粒状組成物は、実施例1-2に比べて水面に浮遊せずに沈み込むものの割合が多かった。
【0094】
(実施例2-2)
シラスバルーンの含有量が52質量%となるように混合し、実施例1-2と同様の方法で造粒して、実施例2-2の顆粒状組成物を得た。得られた実施例2-2の顆粒状組成物は、実施例1-2の顆粒状組成物をと比べると脆かった。そのため、流通中に、顆粒の形状を維持できずに崩れて粉末になってしまう可能性があると考えられた。
【0095】
[実施例3]
塩化カリウム22gに代えて、表4に示す割合で硫酸アンモニウムおよびソルビトールを用いた以外は、実施例1-1と同様にして、実施例3-1~3-4の顆粒状組成物を得た。
【0096】
(評価3-1)
得られた実施例3-1~3-4の顆粒状組成物を用いて殺虫活性試験および菌数測定を行った。表4に結果を示す。
【0097】
【0098】
(評価3-2)
実施例3-2の顆粒状組成物を、水を入れた水槽の表面に散布し、浮遊性、拡散性および崩壊性を目視により評価した。
図2(a)は顆粒状組成物を水面に散布したときの写真であり、
図2(b)は顆粒状組成物を水面に散布して50秒経過後の写真である。
図2(a)、(b)に示すように、実施例3-2の顆粒状組成物を、水面に散布すると、組成物が浮遊した状態で拡散し、少しずつ崩壊しており、崩壊時に弾けるように崩壊することがわかる。
【0099】
(評価3-3:ステフェンシ・ハマダラカに対する殺虫活性)
殺虫試験にはAnopheles stephensiを使用した。ポリプロピレン容器に2リットルの脱塩素水を加えて100匹の4齢初期幼虫を加えた(
図3参照)。実施例3-2の顆粒状組成物4.2mgを表面散布した(n=3)。24時間後までの生残虫数を計数し、生残率を計算した。表5に、実施例3-2の顆粒状組成物を散布した区(本発明)と、薬剤を何も散布しなかった区(対照区)の生残率の結果を示す。
【0100】
表5に示す通り、実施例3-2の顆粒状組成物を用いると、散布後24時間後にはすべての幼虫が死亡し、有効性を示すことができた。
【0101】
【0102】
(評価3-4:アコニタス・ハマダラカに対する殺虫活性)
殺虫試験にはAnopheles aconitus(アコニタス・ハマダラカ)の3齢幼虫を使用した。プラスチック容器に2リットルの飼育水を加えて、25頭の幼虫を加えた。実施例3-2の顆粒状組成物を規定濃度となるように表面散布したのち、24時間と48時間後の死虫数を計数し、死虫率を計算した。表6に結果を示す。
【0103】
90%以上の死亡率が認められる濃度を有効とした。表6に示したように24時間後では、0.5g/10m2、0.6g/10m2、0.7g/10m2で有効性を示し、48時間後ではすべての濃度で死虫率が100%となった。以上の結果から、Anopheles aconitusへの実施例3-2の顆粒状組成物の有効性が確認できた。
【0104】
【0105】
(評価3-5:アエデス・アエジプティに対する殺虫活性)
生態が異なる別属のAedes aegyptiに対する有効性を調べた。ポリプロピレン容器に2リットルの脱塩素水を加えて100匹の4齢初期幼虫を加えた。実施例3-2の顆粒状組成物4.2mgを表面散布した。24時間後までの生残虫数を計数し、生残率を計算した。表7に、実施例3-2の顆粒状組成物を散布した区(本発明)と、薬剤を何も散布しなかった区(対照区)の生残率の結果を示す。
【0106】
表7に示すように、水面直下の飼料を摂らないAedes aegyptiにおいても実施例3-2の顆粒状組成物が殺虫効果を示すことが示された。
【0107】
本発明の顆粒状組成物によれば、従来ハマダラカの幼虫に殺虫効果が劣るとされた微生物殺虫剤の有効性を高めることが可能となる。また、殺虫剤抵抗性が付きにくく、環境にやさしく、マラリアを含む蚊媒介感染症の防除に貢献することができる。