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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036226
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/42 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
B01D46/42 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143149
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】窪 英範
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA12
4D058PA06
4D058PA11
4D058SA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ストレーナ等の濾過手段に目詰りが生じたことを適切なタイミングで確実に把握することができる濾過装置の提供。
【解決手段】逆止弁10の弁室5に設けられた弁体4は、蒸気やドレンが順方向91に流入したとき開弁し、蒸気やドレンが逆方向92に逆流したときは閉弁して逆止弁の機能を果たす。弁室5には弁体4とともにストレーナ2が設けられており、蒸気やドレンを濾過して混入している異物を捕捉するが、目詰りが生じた場合、矢印95方向に回動して開き、蒸気やドレンを通過させる。ホール素子8は、ストレーナ2に設けられているマグネット6の磁界の変化を検出し、制御部41はストレーナ2の開き度を算出する。そして、ストレーナ2の開き度が30%以上となる状態が一定時間継続した場合、制御部41はストレーナ2に目詰りが生じていると判断してモニター42に目詰り発生を表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に形成された流路を流体が通過する本体、
前記流体を透過させて濾過し前記流体に混入している異物を捕捉する濾過手段であって、基準位置と開放位置との間を移動可能であり、基準状態にあるとき、基準位置に位置して前記流体を透過して濾過し、異物の付着によって前記流体の透過が阻害される詰り状態のとき、前記流体の流体圧を受けて開放位置に位置して前記流体の通過を許容する濾過手段、
前記濾過手段の開放位置への移動を検出して検出信号を出力する検出手段、
前記検出信号を受け、濾過手段が詰り状態にあることを報知する報知手段、
を備えたことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
請求項1に係る濾過装置において、
前記検出手段は、前記濾過手段の特定の検出対象部位との距離を検出することによって、前記濾過手段の開放位置への移動を検出する、
ことを特徴とする濾過装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る濾過装置において、
前記検出手段は、前記濾過手段の開放位置への移動の程度を検出し、当該移動の程度を表す検出信号を出力し、
前記報知手段は、前記濾過手段の開放位置への移動の程度が所定の基準程度を超えたことに基づいて、濾過手段が詰り状態にあることを報知する、
ことを特徴とする濾過装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に係る濾過装置において、
前記検出対象部位は、前記濾過手段に設けられた磁石であり、
前記検出手段は、ホール素子である、
ことを特徴とする濾過装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係る濾過装置は、流体内の異物を捕捉するストレーナ等の濾過手段を有する濾過装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
濾過装置を備えた機器としては、たとえば逆止弁がある。逆止弁は、流体の流路に設けられ、流体の背圧による逆流を防止する機構を備えた弁である。たとえば、産業プラントに設置されている配管は高温・高圧の蒸気を移送し、この配管内には蒸気と共に、蒸気から発生したドレン(凝縮水)が所定の方向(順方向)に流れている。
【0003】
このような蒸気やドレンの逆流を防止するために、配管上の必要箇所に逆止弁が設けられている。逆止弁には、様々な構造があり、スイング式逆止弁、リフト式逆止弁、スプリングディスク式逆止弁等が知られている。
【0004】
ところで、蒸気やドレンの中には錆やスケール(水垢)等の異物が混入していることが多く、過度の異物が生じた状態で蒸気やドレンが移送されると、流路上に設置されている種々の機器に悪影響を及ぼすおそれがある。このため、流路には異物を濾過するために、ストレーナを備えた濾過装置が設けられることが多く、ストレーナを内蔵した逆止弁もある。
【0005】
このようなストレーナ付きの逆止弁として、後記特許文献1に開示されている技術がある。この特許文献1に開示されている逆止弁においては、弁ボディ1内部に設けられた弁座9にストレーナ3が一体的に固定され、ストレーナ3は内部流路を流れる流体を濾過する。そして、弁体2は軸心Pで揺動可能に弁ボディ1内部に配置されており、弁体2は弁座9に当接して内部流路5を閉塞する閉じ位置tと、弁体2が弁座流路5から離れて内部流路5を開放する開き位置hとの間を移動する。
【0006】
内部流路5に流体が供給されたとき弁体2は開き位置hに移動して内部流路5を開放するが、弁体2がこの開き位置hから閉じ位置tに復位する際、弁座9に衝撃又は振動を与える。この衝撃又は振動によって、弁座9に設けられたストレーナ3に付着しているゴミや異物が振り落とされてゴミ受け10に溜り、ストレーナ3の目詰りが防止される。なお、弁ボディ1には異物の溜り具合を視認するための点検用覗き窓8が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-228737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に開示されている逆止弁においては、ストレーナ3に目詰りが生じたことを確実に把握することができないという問題がある。すなわち、特許文献1に開示されている逆止弁は、弁体2が閉じ位置tに復位する際、弁座9に衝撃又は振動を与えてストレーナ3に付着しているゴミや異物を振り落とすが、ストレーナ3に強く固着した異物は完全に除去することが難しく、時間の経過によってストレーナ3には異物による目詰りが生じる。
【0009】
このような目詰りはメンテナンス作業によって除去する必要があり、このメンテナンス作業を行うためにストレーナ3に目詰りが生じたことを適切に把握しなければならない。特許文献1に開示されている逆止弁には、点検用覗き窓8が設けられているが、作業員が点検用覗き窓8を通じて逆止弁内部を目視して確認する必要があり、目詰りを適切なタイミングで確実に把握することができない。
【0010】
そこで、本願に係る濾過装置は、これらの問題を解決することを課題とし、ストレーナ等の濾過手段に目詰りが生じたことを適切なタイミングで確実に把握することができる濾過装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願に係る濾過装置は、
内部に形成された流路を流体が通過する弁本体、
前記流体を透過させて濾過し前記流体に混入している異物を捕捉する濾過手段であって、基準位置と開放位置との間を移動可能であり、基準状態にあるとき、基準位置に位置して前記流体を透過して濾過し、異物の付着によって前記流体の透過が阻害される詰り状態のとき、前記流体の流体圧を受けて開放位置に位置して前記流体の通過を許容する濾過手段、
前記濾過手段の開放位置への移動を検出して検出信号を出力する検出手段、
前記検出信号を受け、濾過手段が詰り状態にあることを報知する報知手段、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願に係る濾過装置においては、検出手段は濾過手段の開放位置への移動を検出して検出信号を出力し、報知手段は当該検出信号を受け、濾過手段が詰り状態にあることを報知する。したがって、濾過手段に目詰りが生じたことを適切なタイミングで確実に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本願に係る濾過装置の第1の実施形態である逆止弁10を示す断面図であって、通常時における弁体4の閉弁状態を示す断面図である。
図2図1に示す逆止弁10の通常時における弁体4の開弁状態を示す断面図である。
図3図1に示す逆止弁10の目詰り時におけるストレーナ2の30%開き状態を示す断面図である。
図4図1に示すホール素子8が検出する磁界と、ストレーナ2の位置(開き度)との関係を示すグラフである。
図5図1に示す制御部41が実行する目詰り表示処理のフローチャートである。
図6図5に示す処理を説明するためのストレーナ2の開き度の経時的変化を示すグラフである。
図7】本願に係る濾過装置の第2の実施形態である逆止弁における制御部が実行する目詰り表示理のフローチャートである。
図8図7に示す処理を説明するためのストレーナ2の開き度の経時的変化を示すグラフである。
図9】本願に係る濾過装置の第3の実施形態である逆止弁における制御部が実行する目詰り表示処理のフローチャートである。
図10図9に示す処理を説明するためのストレーナ2の開き度の経時的変化を示すグラフである。
図11】本願に係る濾過装置の第4の実施形態である逆止弁60を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係る濾過装置の下記の要素に対応している。
【0015】
ストレーナ2・・・濾過手段
弁室5、入口10a及び出口10b・・・流路
マグネット6・・・磁石、検出対象部位
ホール素子8・・・ホール素子、検出手段
逆止弁10、60・・・濾過装置
ボディ12及びボディ蓋14・・・本体
制御部41及びモニター42、LED82・・・報知手段
通常位置P1・・・基準位置
開き位置P3・・・開放位置
目詰りが生じていないストレーナ2の状態・・・基準状態
目詰りが生じているストレーナ2の状態・・・詰り状態
開き度30%・・・基準程度
蒸気又はドレン・・・流体
【0016】
[第1の実施形態]
本願に係る濾過装置の第1の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では濾過装置を逆止弁に適用した例を掲げ、逆止弁として産業プラントに配置されている配管系統に設けられるスイング式逆止弁を例示する。この配管系統は、高温・高圧の蒸気を移送し、配管内には蒸気と共に、蒸気から発生したドレンも流れている。
【0017】
(逆止弁10の全体構成)
図1は、本実施形態における逆止弁10を示す断面図である。本実施形態における逆止弁10はボディ12を備えており、このボディ12の上部に位置する蓋フランジ12cにボディ蓋14が固定されている。そして、ボディ12及びボディ蓋14によって、内部に弁室5が形成される。
【0018】
ボディ12には、同軸上に位置するように入口10a及び出口10bが形成されており、各々に設けられている入口フランジ12a及び出口フランジ12bに配管(図示せず)が接続されて固定され、入口10aから出口10bに向かう順方向91に沿って蒸気やドレンが弁室5を通過する。入口10a側が逆止弁10の一次側であり、出口10b側が逆止弁10二次側である。
【0019】
弁室5にはストレーナ2が設けられている。このストレーナ2は、弁室5、入口10a及び出口10bによって構成される円筒状の流路に対応させて、略円盤状の形状を有している。そして、本実施形態におけるストレーナ2は、軸24を中心に矢印95、96方向に回動自在に配置されている。
【0020】
ストレーナ2は全体にわたって形成されたメッシュ部22を有しており、このメッシュ部22に蒸気やドレンを透過させることによって、メッシュ部22の網目よりも大きな異物を捕捉する。そして、ストレーナ2と軸24とは一体的に構成されており、軸24が本体12に形成された支持穴(図示せず)に支持されて、ストレーナ2は軸24を回動中心として回動自在に保持されている。
【0021】
弁室5の底面部には内側に向けて突出した弁座16が設けられている。そして、この弁座16に、ストレーナ2のストレーナ先端部2Gが当接することによって、ストレーナ2の矢印96方向への回動が規制される。なお、ストレーナ先端部2Gは、図1に示すように二次側に向けて突出する突出部として構成されており、ストレーナ先端部2Gのこの突出部にはマグネット6が内蔵されている。
【0022】
また、ストレーナ2の軸24には、略円盤状の形状を有する弁体4が軸24を回動中心として回動可能に取り付けられている。弁体4の接続部(図示せず)が軸24に連結していることによって、弁体4はストレーナ2の回動とは無関係に、独立して矢印95、96に回動可能である。
【0023】
ストレーナ2及び弁体4は通常時においては各々の自重によって垂下しており、図1に実線で示すようにストレーナ2及び弁体4は重なり合った状態で通常位置P1に位置する。なお、弁体4はストレーナ2のメッシュ部22を覆う大きさに形成されており、通常位置P1において、ストレーナ2のストレーナ先端部2Gの突出部は、弁体4の外周縁よりも二次側に向けて突出している。
【0024】
弁室5の上部には突出した状態で天井面19が設けられており、この天井面19にストレーナ2及び弁体4が当接することよって、ストレーナ2及び弁体4の矢印95方向への回動が規制される。図1に示す破線がストレーナ2及び弁体4の限界位置P2である。そして、通常位置P1から矢印95方向に回動した全範囲が開き位置P3(限界位置P2を含む)である。
【0025】
天井面19に対応するボディ12の外面部分には、ホール素子8が固定されている。ホール素子はホール効果を利用して磁界を検出する素子であり、ストレーナ2のストレーナ先端部2Gに内蔵されているマグネット6による磁界の変化を検出することにより、検出信号を出力する。すなわち、検出手段の一例としてのホール素子は、濾過手段の一例としてのストレーナ2の開放位置への移動の程度を検出して検出信号を出力する。ホール素子8からの検出信号は制御部41に取り込まれ、制御部41は弁室5におけるマグネット6の位置を把握し、モニター42への表示を制御する。なお、制御部41にはメモリ43が接続されている。
【0026】
(通常時における逆止弁10の動作説明)
次に、通常時(ストレーナ2に目詰りが生じていない時)における逆止弁10の動作を説明する。逆止弁10の弁室5には、接続された配管を通じて入口10aから蒸気やドレンが順方向91に沿って流入する。そして、この蒸気やドレンは、ストレーナ2が有するメッシュ部22を透過し、弁体4に流体圧を加える。
【0027】
この流体圧を受け、弁体4は矢印95方向に回動して跳ね上げられ、図2に示すように、開弁した状態になる。弁体4の開弁によって、蒸気やドレンは順方向91に弁室5を通過して出口10bから出口側の配管に流出する。
【0028】
蒸気やドレンが背圧を受けて、逆方向92に沿って逆止弁10の弁室5に逆流した場合、弁体4はその自重に加え、逆流した蒸気やドレンの流体圧を受けて矢印96方向に回動し、ストレーナ2に接して閉弁した状態(図1に示す通常位置P1)になる。弁体4の閉弁によって、蒸気やドレンの逆方向92への流れが阻止され、逆止弁としての機能が果たされる。なお、蒸気やドレンの流れが順方向91の場合及び逆方向92の場合のいずれもストレーナ2は閉じ位置P1にある。
【0029】
(目詰り時における逆止弁10の動作説明)
次に、ストレーナ2の目詰り時における逆止弁10の動作を説明する。前述のように、ストレーナ2は、蒸気やドレン中の異物を捕捉するものであり、メッシュ部22に蒸気やドレンを透過させることによって異物を捕捉する。
【0030】
捕捉された異物はストレーナ2のメッシュ部22に付着して徐々に堆積する。そして、メッシュ部22が異物によって塞がれ、蒸気やドレンを完全に透過することができなくなった状態が目詰り状態である。
【0031】
この目詰り状態のストレーナ2が、蒸気やドレンの順方向91への流れを受けた場合、その流体圧によって、ストレーナ2は弁体4と共に軸24を中心に矢印95方向に回動する。ストレーナ2が回動して開き位置に位置することによって、ストレーナ2に目詰りが生じているにもかかわらず、蒸気やドレンの順方向91への流れは阻止されない。
【0032】
なお、蒸気やドレンが背圧を受けて、逆方向92に沿って弁室5に逆流した場合、弁体4及びストレーナ2は各々の自重に加え、逆流した蒸気やドレンの流体圧を受け、矢印96方向に回動して閉弁状態になり(図1)、逆止弁として機能する。
【0033】
ここで、ストレーナ2及び弁体4が図1に示す通常位置P1に位置するときのストレーナ2の開き度(ストレーナ2の開きの程度)を0%とし、限界位置P2に達したときのストレーナ2の開き度を100%とする。弁室5に蒸気やドレンが流入した場合、常にストレーナ2が限界位置P2に達して開き度100%になわけではなく、実際には通常位置P1と限界位置P2との間の開き位置P3の範囲を揺動して、その開き度も変動することが多い。
【0034】
なお、蒸気やドレンの流体圧の変動や、逆止弁10に加えられる振動の影響を受け、ストレーナ2のメッシュ部22に目詰りが生じていないにもかかわらず、ストレーナ2及び弁体4が細かな開き動作を繰り返すことがあるが、このような場合のストレーナ2の開き度は比較的、小さい。
【0035】
そこで、本実施形態においては、以下に詳述するようにストレーナ2の開き度が30%以上となる状態が一定時間継続したことをホール素子8で検出し、これに従って制御部41がストレーナ2に目詰りが生じていると判断してモニター42に目詰り発生を表示する。図3は目詰り時におけるストレーナ2の開き度が30%の状態を示している。
【0036】
図5に、制御部41が実行する目詰り表示処理のフローチャートを示す。まず、制御部41はホール素子8から検出信号を受信したか否かを判別する(ステップS1)。そして、検出信号を受信した場合、この検出信号からストレーナ2の開き度xを求める(ステップS2)。前述のように、ホール素子8はストレーナ2のストレーナ先端部2Gに内蔵されているマグネット6の磁界を検出して検出信号を出力する。
【0037】
図4は、ホール素子8が検出する磁界と、ストレーナ2の位置(開き度)との関係を示すグラフである。図4に示すように、ストレーナ2が通常位置P1から限界位置P2に向けて変位して開き度が大きくなるに従って、ホール素子8が検出する磁界はH1からH2へと大幅に増加する。この磁界と開き度との関係はメモリ43に記憶されており、制御部41はこの関係に基づきステップS2で検出信号(磁界)からストレーナ2の開き度xを求める。
【0038】
そして、ストレーナ2の開き度xが30%以上であるか否かを判別し(ステップS3)、30%以上である場合、制御部41はタイマーをスタートさせる(ステップS4)。この後、再度、検出信号を受信したか否かを判別し(ステップS5)、検出信号からストレーナ2の開き度xを求めて(ステップS7)、開き度xが30%以上であるか否かを判別する(ステップS8)。ステップS5で検出信号を受信しない場合や、ステップS8で開き度xが30%未満である場合は、タイマーをリセットし(ステップS6)、ステップS1に戻る。
【0039】
ステップS8で開き度xが30%以上である場合、制御部41はステップS4でスタートしたタイマーによる経過時間t1が基準時間ts以上か否かを判別する(ステップS9)。この基準時間tsは予めメモリ43に記憶されている基準データであり、ストレーナ2に詰りが発生したときに開き度30%以上の状態が継続すると考えられる最小の時間である。
【0040】
図6は、本実施形態におけるストレーナ2の開き度の経時的変化を示すグラフである。このグラフに表れているストレーナ2の開き度の変化において、開き度xが30%以上継続している経過時間t1は基準時間ts未満であるため、制御部41は開き度xが30%未満になった時点でタイマーをリセットし(ステップS6)、ステップS8からステップS1の処理に戻る。これに対して、開き度xが30%以上継続している経過時間t2については基準時間ts以上であるため、制御部41はステップS9においてストレーナ2に目詰りが生じていると判断する。
【0041】
そして、制御部41は、モニター42に逆止弁10のストレーナ2に目詰りが発生していることを示す表示を行い(ステップS10)、タイマーをリセットして処理を終了する(ステップS11)。制御部41がモニター42に目詰り発生の表示を行うことによって、ストレーナ2のクリーニング作業が促される。このため、目詰りが生じたことを適切なタイミングで確実に把握することができ、作業者はボディ12からボディ蓋14を取り外し、ストレーナ2のメッシュ部22等に付着した異物を除去するクリーニング作業を行う。
【0042】
以上のように本実施形態においては、ストレーナ2の開き度が30%以上となる状態が一定時間継続したことを検出し、モニター42への表示を行うことによって目詰りを報知する。このため、蒸気やドレンの流体圧の変動や、逆止弁10に加えられる振動の影響を受け、ストレーナ2に目詰りが生じていない状態で、ストレーナ2が開き度30%を下回る小さな開き動作を行う場合や、開き度30%以上であっても短時間の開き動作を行う場合を報知処理の対象外とすることができる。このため、確実に誤報知を防止することが可能となる。
【0043】
[第2の実施形態]
次に、本願に係る濾過装置の第2の実施形態を説明する。前述の第1の実施形態においては、ストレーナ2の開き度が30%以上となる状態が一定時間継続したことを検出し、モニター42への表示を行うことによって目詰りを報知した。しかし、ストレーナ2の開き度が30%以上となる状態が一定時間継続した場合であっても、開き度の程度によっては、実際にはストレーナに詰りが発生していないこともある。
【0044】
このため以下に詳述するように、本実施形態ではストレーナ2の開き度が30%以上となる状態が一定時間継続したことを前提に、開き度30%以上のグラフ上の曲線において経過時間tの範囲で開き度xの値を積分し、当該積分した値iが所定の基準積分値is以上の場合に限り目詰りを報知する。
【0045】
本実施形態における逆止弁の構成や動作は、前述の第1の実施形態で示した逆止弁10と同様であるため説明は省略する。本実施形態に係る逆止弁が前述の第1の実施形態と異なるのは目詰り表示処理の内容である。図7に本実施形態における目詰り表示処理のフローチャートを示す。
【0046】
図7のフローチャートのステップS201ないしS209は、図5で示したフローチャートのステップS1ないしS9と同様であるため説明は省略する。本実施形態ではステップS209で経過時間t1が基準時間ts以上である場合、開き度xの経時的変化のグラフ曲線において、経過時間tの範囲で開き度xの値を積分して積分値iを算出する(ステップS210)。そして、算出した積分値iが基準積分値is以上か否かを判別する(ステップS211)。
【0047】
この基準積分値isは予めメモリに記憶されている基準データであり、ストレーナに詰りが発生して開き度30%以上の状態が基準時間ts以上継続したとき、経過時間t1の範囲で開き度30%以上のグラフ曲線を積分した積分値として考えられる最小の値である。
【0048】
図8は、本実施形態におけるストレーナの開き度の経時的変化を示すグラフである。このグラフに表れているストレーナの開き度の変化において、開き度xが30%以上継続している経過時間t21は基準時間ts以上であるが、この経過時間t21の範囲で30%以上の開き度xのグラフ曲線を積分した積分値i21が基準積分値is未満である。このため、制御部はストレーナに目詰りは発生していないと判断し、タイマーをリセットし(ステップS206)、ステップS211からステップS201の処理に戻る。
【0049】
これに対して、開き度xが30%以上継続している経過時間t22については基準時間ts以上であり、かつ経過時間t22の範囲で30%以上の開き度xのグラフ曲線を積分した積分値i22が基準積分値is以上である。このため、制御部はステップS211においてストレーナに目詰りが生じていると判断し、モニターに目詰りが発生していることを示す表示を行い(ステップS212)、タイマーをリセットして処理を終了する(ステップS213)。
【0050】
以上のように、本実施形態ではストレーナ2の開き度が30%以上となる状態が一定時間継続したことを前提に、開き度30%以上のグラフ上の曲線において経過時間tの範囲で開き度xの値を積分し、当該積分した値iが所定の基準積分値is以上の場合に限り目詰りを報知する。このため、積分値iが基準積分値is未満である場合を報知処理の対象外とすることができ、より確実に誤報知を防止することが可能となる。
【0051】
[第3の実施形態]
続いて、本願に係る濾過装置の第3の実施形態を説明する。前述の第1の実施形態及び第2の実施形態においては、ストレーナ2の開き度が30%以上となる状態が一定時間継続したことを検出し、これを前提にモニター42への表示を行うことによって目詰りを報知した。しかし、ストレーナ2の開き度が30%以上となる状態が一定時間継続しない場合であっても、実際にはストレーナに詰りが発生していることもある。
【0052】
このため以下に詳述するように、本実施形態ではストレーナ2の開き度が30%以上となる場合、その時点から所定の直前時間bt遡り、開き度30%以上のグラフ上の曲線において直前時間btの範囲で開き度xの値を積分し、当該積分した値iの合計が所定の基準積分値is以上の場合に限り目詰りを報知する。
【0053】
本実施形態における逆止弁の構成や動作は、前述の第1の実施形態で示した逆止弁10と同様であるため説明は省略する。本実施形態に係る逆止弁が前述の第1の実施形態と異なるのは目詰り表示処理の内容である。図9に本実施形態における目詰り表示処理のフローチャートを示す。
【0054】
図9のフローチャートのステップS301ないしS303は、図5で示したフローチャートのステップS1ないしS3と同様であるため説明は省略する。本実施形態ではステップS303でストレーナの開き度xが30%以上であると判別した場合、開き度30%以上の状態の開き度xの経時的変化のグラフ曲線を直前時間btの範囲で積分した合計積分値biを算出する(ステップS304)。直前時間btは予めメモリに記憶されている基準データである。
【0055】
その後、合計積分値biが基準積分値is以上であるか否かを判別する(ステップS305)。この基準積分値isは予めメモリに記憶されている基準データであり、ストレーナに詰りが発生した場合、開き度30%以上の状態の開き度xの経時的変化のグラフ曲線を直前時間btの範囲で積分した合計積分値として考えられる最小の値である。ステップS305で合計積分値biが基準積分値is未満である場合は、ステップS301に戻る。
【0056】
図10は、本実施形態におけるストレーナの開き度の経時的変化を示すグラフである。このグラフにおいて、ストレーナの開き度xが30%以上の状態の開き度xの経時的変化のグラフ曲線を直前時間btの範囲で積分した合計積分値bi(積分値bi31と積分値bi32との和)は、基準積分値is以上である。このため、ストレーナに目詰りが生じていると判断し、モニターに目詰りが発生していることを表示して(ステップS306)処理を終了する。
【0057】
以上のように本実施形態では、直前時間btの範囲で開き度xが30%以上の状態の開き度xのグラフ曲線を積分し、合計積分値biが基準積分値is以上であるとき目詰りの発生を表示する。したがって、ストレーナの開き度が30%以上となる状態が、たとえば第2の実施形態において示した基準時間ts以上継続しないような不連続的な場合であっても、ストレーナが大きく開いて、合計積分値biが基準積分値is以上となるときは、目詰りの発生を表示することができる。これによって、ストレーナに目詰りが生じたことを適切なタイミングで確実に把握することができる。
【0058】
[第4の実施形態]
続いて、本願に係る濾過装置の第4の実施形態である逆止弁60を図11に基づいて説明する。前述の各実施形態においては、ストレーナ2に目詰りが生じたことをモニター42に表示することによって報知したが、本実施形態ではこれに代えてLED82を点灯させて報知する。図11に示す逆止弁60の基本的構成は、第1の実施形態で示した逆止弁10と同様であり、逆止弁10と同じ構成部分については図11において同一の符号を付して構成や動作の説明を省略する。
【0059】
図11に示すように、逆止弁60のボディ12の上部開口の近傍には支持体81が一体的に固定されており、この支持体81の上面にLED82が設けられている。LED82は、ボディ12にボディ蓋14を取り付けた際、ボディ蓋14から上側に突出するように配置されており、外部からLED82を容易に視認することができるようになっている。そして支持体81は、図1に示す制御部41及びメモリ43に相当する制御機能、メモリ機能を内蔵している。
【0060】
本実施形態における目詰り表示処理も、第1の実施形態で示した処理(図5)と基本的には同様であるが、第1の実施形態における図5のステップS10のモニター42への表示処理の代わりにLED82を点灯させる処理を実行し、LED82の点灯を通じて詰り状態であることを報知する。なお、本実施形態ではLED82を点灯させるが、LED82を点滅させてさらに注意を喚起することもできる。
【0061】
また、本実施形態におけるLED82を第2の実施形態又は第3の実施形態に適用するとこともできる。第2の実施形態に本実施形態に係るLED82を適用する場合は、図7のステップS212の処理の代わりにLED82を点灯させる処理を実行し、LED82の点灯を通じて詰り状態であることを報知し、第3の実施形態に本実施形態に係るLED82を適用する場合は、図9のステップS306の処理の代わりにLED82を点灯させる処理を実行し、LED82の点灯を通じて詰り状態であることを報知する。
【0062】
[その他の実施形態]
前述の各実施形態においては、本願に係る濾過装置をスイング式逆止弁に適用した例を掲げたが、逆止弁以外の機器に本願に係る濾過装置を適用することもできる。また、前述の各実施形態においては、濾過手段として軸を中心に回動するストレーナを例示したが、基準位置と開放位置との間を移動可能なものであれば他の構成を採用することもできる。たとえばスプリングによって付勢され、流体の流体圧を受けて直線的に平行移動するストレーナを濾過手段として採用することもできる。
【0063】
また、前述の各実施形態においては、検出手段としてホール素子を例示し、検出対象部位としてマグネットを例示したが、濾過手段の開放位置への移動の程度を検出することができる構成であれば他の形状、構造のものを採用してもよい。たとえばホール素子の代わりにホールICをい用いてもよい。
【0064】
さらに、前述の各実施形態においては、ストレーナの開き度30%を基準程度として目詰りを判断したが、30%よりも大きい数値又は小さい数値を基準としてもよい。また、ストレーナの開き度ではなく、ストレーナの移動距離を検出し、所定雄基準距離を基準程度として目詰りを判断することもできる。
【0065】
また、前述の各実施形態においては、報知手段としてモニター又はLEDを用いたが、これに限定されるものではなく、濾過手段が詰り状態にあることを報知することが可能な限り、音声による報知等、他の構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0066】
2:ストレーナ 5:弁室 6:マグネット 8:ホール素子 10、60:逆止弁
10a:入口 10b:出口 12:ボディ 14:ボディ蓋 41:制御部
42:モニター 82:LED P1:通常位置 P3:開き位置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11