(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036276
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】スピーカ
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
H04R1/02 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143241
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友久
(72)【発明者】
【氏名】鷲見 颯汰
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017AD40
(57)【要約】
【課題】部品点数を抑えながら、音圧の確保と取付対象へ伝わる振動の低減の両立を図ることが可能なスピーカを得る。
【解決手段】スピーカ20は、スピーカユニット22と、スピーカユニット22を保持すると共に他部材に取り付けられるケース状の保持部材30と、を備える。保持部材30において保持部32の開放側端部32Aから取付用張出部34までの範囲には、弾性材料である第一材料で形成された弾性部30Aが設けられている。また、エンクロージャ部31のうち開放側端部32Aを除く部分には、第一材料よりも硬い第二材料で形成された硬質部30Bが設けられている。これにより、エンクロージャ部31のうち開放側端部32Aを除く部分は、保持部32の開放側端部32Aから取付用張出部34までの部分よりも剛性が高く設定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニットと、前記スピーカユニットを保持すると共に他部材に取り付けられる保持部材と、を備えるスピーカであって、
前記保持部材は、
前記保持部材の開放側の部分を構成し、前記保持部材の開放側の端部である開放側端部を備えると共に、前記スピーカユニットの外周部側を保持する保持部と、
前記保持部の前記開放側端部から外側に張り出すと共に、取付対象に固定される被固定部と、前記保持部の前記開放側端部と前記被固定部とを繋ぐ繋ぎ部と、を備える取付用張出部と、
前記保持部に連続して形成されると共に、前記スピーカユニットの背面側にキャビティを形成する裏側キャビティ形成部と、
を有し、
少なくとも前記取付用張出部の前記繋ぎ部に弾性材料である第一材料で形成された弾性部が設けられると共に、少なくとも前記裏側キャビティ形成部に前記第一材料よりも硬い第二材料で形成された硬質部が設けられることで、前記裏側キャビティ形成部は前記繋ぎ部よりも剛性が高く設定されている、スピーカ。
【請求項2】
前記弾性部は、前記保持部の前記開放側端部を含む範囲に設けられており、
前記保持部の前記開放側端部は、前記保持部材の開口内側に延出されて前記スピーカユニットの正面側外周部と密着する正面側密着部を含んで構成されている、請求項1記載のスピーカ。
【請求項3】
前記繋ぎ部には、前記スピーカユニットの軸方向に対する前記繋ぎ部の剛性を低下させる剛性低下部が形成されている、請求項1又は請求項2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記弾性部は、前記保持部の内面側を構成する部位を含む範囲に設けられ、
前記保持部の内面は、前記スピーカユニットの外周面と密着しており、
前記保持部において前記内面側を構成する部位に対して外面側の部位には、前記硬質部を構成する部分が含まれている、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記弾性部は、前記取付用張出部のうち少なくとも前記繋ぎ部と前記保持部の一部とを一体に構成する部分に設けられており、
前記硬質部は、前記保持部の他の一部と前記裏側キャビティ形成部とを一体に構成する部分に設けられており、
前記弾性部及び前記硬質部には、互いの境界部において前記スピーカユニットの軸方向に凹凸状とされて互いに嵌合するように形成された凹凸嵌合部が設けられている、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のスピーカ。
【請求項6】
前記被固定部は、少なくとも一部が前記第一材料よりも硬い材料により形成されている、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記硬質部は、前記保持部の少なくとも一部を含む範囲に設けられ、
更に、前記硬質部の一部として、前記保持部における前記硬質部を構成する部分から延出されて、前記取付用張出部における前記弾性部を構成する部分に隣接された延出部が設けられている、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、スピーカユニットが、車両のドアインナパネル(取付対象)に取り付けられたスピーカ装置が開示されている。このスピーカ装置では、スピーカユニットのフレームをドアインナパネルに取り付けるインシュレータが弾性部材を具備しており、弾性部材がスピーカユニットからドアインナパネルに伝達される振動を吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、インシュレータの数だけ弾性部材を要するため、部品点数が増加し、組立作業が複雑化してしまう。このような課題に対しては、例えば、スピーカユニットを収容して保持するケース状の保持部材を設け、その保持部材を弾性材料で形成して取付対象に取り付ける、という対策も考えられるが、このような対策を採った場合には、保持部材の剛性が低く、スピーカユニットから出力される音の音圧が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、部品点数を抑えながら、音圧の確保と取付対象へ伝わる振動の低減の両立を図ることが可能なスピーカを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載する本発明のスピーカは、スピーカユニットと、前記スピーカユニットを保持すると共に他部材に取り付けられる保持部材と、を備えるスピーカであって、前記保持部材は、前記保持部材の開放側の部分を構成し、前記保持部材の開放側の端部である開放側端部を備えると共に、前記スピーカユニットの外周部側を保持する保持部と、前記保持部の前記開放側端部から外側に張り出すと共に、取付対象に固定される被固定部と、前記保持部の前記開放側端部と前記被固定部とを繋ぐ繋ぎ部と、を備える取付用張出部と、前記保持部に連続して形成されると共に、前記スピーカユニットの背面側にキャビティを形成する裏側キャビティ形成部と、を有し、少なくとも前記取付用張出部の前記繋ぎ部に弾性材料である第一材料で形成された弾性部が設けられると共に、少なくとも前記裏側キャビティ形成部に前記第一材料よりも硬い第二材料で形成された硬質部が設けられることで、前記裏側キャビティ形成部は前記繋ぎ部よりも剛性が高く設定されている。
【0007】
上記構成によれば、スピーカは、スピーカユニットと、スピーカユニットを保持する保持部材と、を備えており、スピーカユニットは、保持部材を介して他部材の取付対象に取り付けられる。保持部材における保持部は、保持部材の開放側の部分を構成し、保持部材の開放側の端部である開放側端部を備えると共に、スピーカユニットの外周部側を保持する。保持部材における取付用張出部は、保持部の開放側端部から外側に張り出すと共に、取付対象に固定される被固定部と、保持部の開放側端部と被固定部とを繋ぐ繋ぎ部と、を備える。保持部材における裏側キャビティ形成部は、保持部に連続して形成されると共に、スピーカユニットの背面側にキャビティを形成する。
【0008】
ここで、少なくとも取付用張出部の繋ぎ部に弾性材料である第一材料で形成された弾性部が設けられている。このため、音声出力時のスピーカユニットの振動が保持部材を介して保持部材の取付対象に伝わる際に、当該振動は、少なくとも繋ぎ部に設けられた弾性部によって吸収される。このように振動吸収が保持部材の一部によってなされることで、部品点数が抑えられる。また、本発明では、少なくとも裏側キャビティ形成部に第一材料よりも硬い第二材料で形成された硬質部が設けられることで、裏側キャビティ形成部は繋ぎ部よりも剛性が高く設定されている。これにより、スピーカユニットの背面側のキャビティ内の空気のスティフネスが高められるので、スピーカユニットの振動エネルギーの吸収が抑えられて音圧減衰が抑制される。
【0009】
請求項2に記載する本発明のスピーカは、請求項1記載の構成において、前記弾性部は、前記保持部の前記開放側端部を含む範囲に設けられており、前記保持部の前記開放側端部は、前記保持部材の開口内側に延出されて前記スピーカユニットの正面側外周部と密着する正面側密着部を含んで構成されている。
【0010】
上記構成によれば、スピーカユニットの正面側外周部に対して、保持部のうち弾性を有する開放側端部の正面側密着部が密着するので、スピーカユニットの外周側からの音漏れが正面側密着部によって効果的に低減される。
【0011】
請求項3に記載する本発明のスピーカは、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記繋ぎ部には、前記スピーカユニットの軸方向に対する前記繋ぎ部の剛性を低下させる剛性低下部が形成されている。
【0012】
上記構成によれば、音声出力時のスピーカユニットの振動が保持部材を介して保持部材の取付対象に伝わる際に、繋ぎ部が弾性変形することで、振動が吸収される。
【0013】
請求項4に記載する本発明のスピーカは、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記弾性部は、前記保持部の内面側を構成する部位を含む範囲に設けられ、前記保持部の内面は、前記スピーカユニットの外周面と密着しており、前記保持部において前記内面側を構成する部位に対して外面側の部位には、前記硬質部を構成する部分が含まれている。
【0014】
上記構成によれば、保持部の内面は、スピーカユニットの外周面と密着し、保持部において、内面側を構成する部位は弾性材料である第一材料で形成され、その内面側を構成する部位に対して外面側の部位には、第一材料よりも硬い第二材料で形成された部分が含まれている。このため、保持部の内面とスピーカユニットの外周部との密着性が向上し、スピーカユニットの外周側からの音漏れが抑制される。
【0015】
請求項5に記載する本発明のスピーカは、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の構成において、前記弾性部は、前記取付用張出部のうち少なくとも前記繋ぎ部と前記保持部の一部とを一体に構成する部分に設けられており、前記硬質部は、前記保持部の他の一部と前記裏側キャビティ形成部とを一体に構成する部分に設けられており、前記弾性部及び前記硬質部には、互いの境界部において前記スピーカユニットの軸方向に凹凸状とされて互いに嵌合するように形成された凹凸嵌合部が設けられている。
【0016】
上記構成によれば、弾性部は、取付用張出部のうち少なくとも繋ぎ部と保持部の一部とを一体に構成する部分に設けられている。また、硬質部は、保持部の他の一部と裏側キャビティ形成部とを一体に構成する部分に設けられているので、スピーカユニットの背面側のキャビティ内の空気のスティフネスが弾性部によって低下するのを抑制できる。ここで、弾性部及び硬質部には、互いの境界部においてスピーカユニットの軸方向に凹凸状とされて互いに嵌合するように形成された凹凸嵌合部が設けられている。このため、弾性部と硬質部との境界部分の結合強度を向上させることができる。
【0017】
請求項6に記載する本発明のスピーカは、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の構成において、前記被固定部は、少なくとも一部が前記第一材料よりも硬い材料により形成されている。
【0018】
上記構成によれば、取付対象に対する被固定部の取付強度及び取付精度が向上する。
【0019】
請求項7に記載する本発明のスピーカは、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の構成において、前記硬質部は、前記保持部の少なくとも一部を含む範囲に設けられ、更に、前記硬質部の一部として、前記保持部における前記硬質部を構成する部分から延出されて、前記取付用張出部における前記弾性部を構成する部分に隣接された延出部が設けられている。
【0020】
上記構成によれば、硬質部の一部として延出部が設けられることで、保持部から取付用張出部にかけての部分において硬質部と弾性部との結合強度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明のスピーカによれば、部品点数を抑えながら、音圧の確保と取付対象へ伝わる振動の低減の両立を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第1の実施形態に係るスピーカがメータ装置に搭載された状態の全体構成を簡略化して示す断面図である。
【
図2】
図1の保持部材を斜め正面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図3】
図2の3-3線に沿って切断した状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】試験対象となった保持部材を斜め背面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図5】スピーカ正面側の所定位置で測定された音圧を比較したグラフである。
【
図6】取付対象で測定された振動加速度を比較したグラフである。
【
図7】第2の実施形態に係るスピーカがメータ装置に搭載された状態の全体構成を簡略化して示す断面図である。
【
図8】
図7の保持部材を斜め正面側から見た状態で示す斜視図である。
【
図9】
図8の9-9線に沿って切断した状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図10】第3の実施形態に係るスピーカに適用される保持部材を示す半断面の斜視図である。
【
図11】
図10の保持部材に設けられる骨格部を示す斜視図である。
【
図12】第4の実施形態に係るスピーカに適用される保持部材を示す正面図である。
【
図13】第5の実施形態に係るスピーカに適用される保持部材を示す斜視図である。
【
図14】
図13の保持部材の弾性部と硬質部とを分解した状態で示す分解斜視図である。
【
図15A】
図13の15A-15A線に沿って切断した状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図15B】
図13の15B-15B線に沿って切断した状態を拡大して示す拡大断面図である。
【
図16】第6の実施形態に係るスピーカに適用される保持部材の一部を示す断面図である。
【
図17】
図16の被固定部の第二構成部に代えて配置可能な第二構成部を示す斜視図である。
【
図18】
図16の被固定部の第二構成部に代えて配置可能な他の第二構成部を示す斜視図である。
【
図19】第7の実施形態に係るスピーカに適用される保持部材の一部を示す断面図である。
図20の19L-19L線に沿って切断した状態の断面図に相当する。
【
図20】
図19の20L-20L線に沿って切断した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るスピーカ20について
図1~
図6を用いて説明する。スピーカ20は、一例として、車両に搭載されたメータ装置10に搭載されている。なお、
図1においては、説明の便宜上、メータ装置10のメータ表示部13が向く側であるメータ装置前方側を矢印FRで示し、メータ装置上方側を矢印UPで示している。
【0024】
(メータ装置の全体構成)
図1に示されるメータ装置10は、図示しない車両のインストルメントパネルに設置されている。メータ装置10は、運転者の前方側に配置され、ケース体11を有している。ケース体11は、その前後方向中間部に配置されたメータケース12と、メータケース12の装置前側に配置されたフロントケース14と、メータケース12の装置後側に配置されたリアケース16と、で構成されている。
【0025】
メータケース12は、装置後方側に開放された箱状に形成されており、前後方向を板厚方向とする前壁部12Aと、前壁部12Aの周縁から装置後方側に立設された側壁部12Bと、を有している。前壁部12Aの装置前方側の面には、車両に搭載された各種計測機器の計測値を表示するメータ表示部13が設けられている。このメータ表示部13は、フロントケース14に設けられた透明な窓部14Aを通して車両の室内の運転者に視認可能に構成されている。
【0026】
メータケース12の前壁部12Aの後面には、装置後方側に立設された基板支持部12Cが形成されている。基板支持部12Cはメータ基板15を支持している。メータ基板15には、車両に搭載された各種計測機器からの信号を受信する制御装置(図示省略)が実装されている。また、メータ基板15は、後述するスピーカ20と対向配置されている。メータ基板15には、スピーカ20から延在された配線18がコネクタ19を介して接続されると共に、スピーカ20の制御に必要な電子部品Cが実装されている。
【0027】
リアケース16は、装置前方側に開放された箱状に形成されており、前後方向を板厚方向とする後壁部16Aと、後壁部16Aの周縁から装置前方側に立設された側壁部16Bを有している。後壁部16Aには、リアケース16の内方側に凹んだ収容凹部16Cが形成されている。また、収容凹部16Cの凹底壁部16C1の中央部には、略円形の開口部16Dが貫通形成されている。また、収容凹部16Cの凹底壁部16C1には、取付孔16Hが貫通形成されており、スピーカ20の一部を構成する保持部材30(詳細後述)が取り付けられている。
【0028】
(スピーカ)
次に、スピーカ20について説明する。スピーカ20は、振動板24Aを振動させることによって音響信号(音波)を出力するスピーカユニット22と、スピーカユニット22を保持するケース状の保持部材30と、を備えている。なお、本実施形態のスピーカ20は、メータ装置10の装置後方側(言い換えれば車両前方側)を向く姿勢でメータ装置10に取り付けられている。
【0029】
(スピーカユニット)
スピーカユニット22は、振動板24Aを備えるスピーカ本体24と、スピーカ本体24の正面側に装着されたフロントカバー26を有している。なお、
図1では、便宜上、スピーカ本体24をブロック化して図示している。また、
図1では、スピーカユニット22の中心軸を符号22Xで示す。
【0030】
スピーカ本体24は、その正面側に配置される振動板24Aと、磁気ギャップを有する磁気回路(図示省略)と、振動板24Aの中央領域の背面側から突出する円筒状のボビン(図示省略)と、前記ボビンの外周側面に巻かれて前記磁気回路の磁気ギャップ内に配置されるボイスコイル(図示省略)と、を含んで構成されている。振動板24Aの背面側で前記磁気回路の外周側には、振動板24A及び前記磁気回路を支持するフレーム24Fが設けられている。なお、
図1において、符号24Aは、便宜上、スピーカ本体24において振動板24Aが配置される部位の一部を指しており、符号24Fは、便宜上、スピーカ本体24においてフレーム24Fが配置される部位の一部を指している。また、振動板、磁気回路、ボビン、ボイスコイル及びフレームについては、例えば、特開2012-100190号公報等で公知であるため、詳細説明を省略する。また、スピーカユニット22の軸方向(言い換えれば中心軸22Xの軸線方向)と振動板24Aの振幅方向とは同じ方向である。
【0031】
フロントカバー26は、振動板24Aの正面側に対向配置されるカバー本体部26Aと、カバー本体部26Aの周端部からフレーム24Fの外周部側に突出されてフレーム24Fの外周部に嵌合される嵌合部26Bと、を備えている。カバー本体部26Aは、スピーカユニット22の軸方向を板厚方向とする円形板状に形成されている。カバー本体部26Aには、複数の貫通孔26Hが形成されている。
【0032】
(保持部材)
図2には、保持部材30を斜め正面側から見た状態の斜視図が示されている。また、
図3には、
図2の3-3線に沿って切断した状態の拡大断面図が示されている。なお、
図3では、スピーカユニット22の外形を簡略化して二点鎖線で示している。また、
図3では、図を見易くするために、スピーカユニット22の外周部22Pと保持部材30とが接触している部分について僅かに離して図示している。
【0033】
図3に示されるように、保持部材30は、スピーカユニット22の外周部22P側を保持する保持部32を有している。保持部32は、保持部材30の開放側(図中上側)の部分を構成し、保持部材30の開放側の端部である開放側端部32Aを備えている。保持部32の開放側端部32Aは、保持部材30の開口内側に延出されてスピーカユニット22の正面側外周部22Aと密着する正面側密着部32Xを含んで構成されている。また、保持部32の内面32Bは、スピーカユニット22の外周面22Bと密着している。さらに、保持部32は、内面32Bのうち正面側密着部32X側とは反対側の端部から内方側に曲げられてスピーカユニット22の背面側外周部22Cと密着する背面側密着部32Yを有している。
【0034】
また、保持部材30は、保持部32の開放側端部32Aから外側に張り出す取付用張出部34を有している。取付用張出部34は、複数(本実施形態では三個(
図2参照))設けられ、取付対象(ここではリアケース16(
図1参照))に固定される被固定部34Aと、保持部32の開放側端部32Aと被固定部34Aとを繋ぐ繋ぎ部34Bと、を備えている。なお、取付用張出部34は、ホルダー部として把握される場合がある。
【0035】
被固定部34Aは、正面側(図中上側)とは反対側に突出した部分を含んで構成されている。被固定部34Aには、その突出方向に貫通する貫通孔34Hが形成されている。また、被固定部34Aには、その突出方向中間部に外径が縮小された縮径部34Mが形成されると共に、突出方向先端側には縮径部34Mの端部から拡径された部分を有するフック部34Fが形成されている。フック部34Fは、フック部34Fの外周側から貫通孔34Hの中心軸に向かって弾性変形可能とされている。フック部34Fの外径は、先端側へ向けて徐々に縮小されている。
図1に示されるように、フック部34Fは、凹底壁部16C1の取付孔16Hを貫通することで、凹底壁部16C1における取付孔16Hの周縁部に係合される。これにより、保持部材30は、リアケース16に取り付けられている。
【0036】
また、
図3に示されるように、保持部材30は、スピーカユニット22の背面22R側にキャビティ38を形成する裏側キャビティ形成部36を有している。裏側キャビティ形成部36は、保持部32に連続して形成されている。
図2に示されるように、裏側キャビティ形成部36の底壁部36Aの内面には、補強用のリブ36Bが格子状に形成されている。なお、保持部32と裏側キャビティ形成部36とで構成される部分は、エンクロージャ部31と称されることがある。
【0037】
保持部材30は、二色成形によって形成されている。保持部材30において、保持部32の開放側端部32Aから取付用張出部34までの範囲には、弾性材料である第一材料で形成された弾性部30Aが設けられている。弾性部30Aを形成する第一材料(弾性材料)には、一例として、ショアA硬度が40度のゴム材料(例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、シリコーンゴム等)を適用することができる。なお、第一材料のショアA硬度は、例えば、25度以上40度未満であってもよいし、25度未満であってもよいし、40度より高くかつ45度未満であってもよい。
【0038】
また、保持部材30において、保持部32のうち開放側端部32Aを除く部分及び裏側キャビティ形成部36には、硬質部30Bが設けられている。裏側キャビティ形成部36を含む硬質部30Bは、第一材料よりも硬い第二材料で形成されている。保持部32のうち開放側端部32Aを除く部分及び裏側キャビティ形成部36は、硬質部30Bが設けられることで、保持部32の開放側端部32Aから取付用張出部34までの部分(繋ぎ部34Bを含む部分)よりも剛性が高く設定されている。硬質部30Bを形成する第二材料には、一例として、ショアA硬度が80度のゴム材料(例えばEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、CR(クロロプレンゴム)、シリコーンゴム等)もしくは硬質の樹脂材(例えば、ABS樹脂(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン/共重合体)、PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)やこれらの複合材等)を適用することができる。なお、第二材料のショアA硬度は、80度の他、例えば、60度以上80度未満であってもよいし、80度よりも高くてもよい。
【0039】
(作用・効果)
次に、上記実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
図1に示されるスピーカ20では、保持部材30において保持部32の開放側端部32Aから取付用張出部34までの範囲に弾性材料である第一材料で形成された弾性部30Aが設けられている。このため、音声出力時のスピーカユニット22の振動が保持部材30を介してリアケース16に伝わる際に、当該振動は、保持部32の開放側端部32Aから取付用張出部34までの範囲に設けられた弾性部30Aによって吸収される。このように振動吸収が保持部材30の一部によってなされることで、部品点数を抑えつつ、取付対象であるリアケース16に伝わる振動を抑えることができる。その結果、リアケース16の振動に起因した不要な音の放出が抑制される。また、部品点数が抑えられることで、コストアップの抑制も可能となる。
【0041】
また、本実施形態では、エンクロージャ部31のうち開放側端部32Aを除く部分に、第一材料よりも硬い第二材料で形成された硬質部30Bが設けられることで、エンクロージャ部31のうち開放側端部32Aを除く部分は、保持部32の開放側端部32Aから取付用張出部34までの部分よりも剛性が高く設定されている。これにより、エンクロージャ部31の共振が低減される。また、このような剛性設定により、スピーカユニット22の背面22R側のキャビティ38内の空気のスティフネスが高められるので、スピーカユニット22の振動エネルギーの吸収が抑えられて音圧減衰が抑制される。
【0042】
ここで、上記の作用及び効果について、試験結果を参照しながら補足説明する。
図5及び
図6は、いずれも、複数種類の保持部材の特性を比較したグラフであり、スピーカユニットを保持した状態の保持部材を取付対象に取り付けた状態で行った試験の結果を示している。
【0043】
また、
図5及び
図6のグラフの凡例において、ゴムの後ろに付された数字はショアA硬度を示す。すなわち、
図5及び
図6のグラフ中において、破線は、ショアA硬度が40度のゴム材料を材料とした保持部材の試験結果を示し、太い実線は、ショアA硬度が50度のゴム材料を材料とした保持部材の試験結果を示し、一点鎖線は、ショアA硬度が60度のゴム材料を材料とした保持部材の試験結果を示す。なお、ゴム材料には、一例として、EPDMが用いられた。
【0044】
また、
図5及び
図6のグラフ中において、二点鎖線は、ショアA硬度が80度よりも高い硬質の樹脂を材料とした保持部材の試験結果を示し、点線(凡例で「樹脂+ゴム40ホルダー」と記載されたもの)は、
図4に示される保持部材40の試験結果を示す。保持部材40は、本発明のスピーカに適用される保持部材の一実施形態である。なお、
図4では、便宜上、保持部材30(
図2参照)と外形が実質的に同様の部分については、同一符号を付している。
図4に示される保持部材40は、ショアA硬度が40度のゴム材料(言い換えれば弾性材料である第一材料)で形成された弾性部40Aが取付用張出部34に設けられている。保持部材40におけるエンクロージャ部31には、ショアA硬度が80度よりも高い硬質の樹脂材料(第一材料よりも硬い第二材料)で形成された硬質部40Bが設けられている。エンクロージャ部31は、硬質部40Bが設けられることで、取付用張出部34(繋ぎ部34Bを含む部分)よりも剛性が高く設定されている。また、
図5のグラフ中において、細い実線(凡例で「ゴム60 補強」と記載されたもの)は、ショアA硬度が60度のゴム材料で保持部材全体が形成され更にエンクロージャ部の背面及び外周側面にショアA硬度が80度よりも高い硬質の樹脂片が貼り付けられて補強された保持部材の試験結果を示す。なお、硬質の樹脂材料には、一例として、ABSを含む複合材を用いた。
【0045】
図5には、スピーカ正面側の所定位置で測定された音圧を比較したグラフが示されている。
図5において、横軸は周波数(Hz)を示し、縦軸は音圧レベル(dB)を示す。また、
図5において、点線で囲まれた600Hz~900Hzの範囲は、重要範囲を示す。
【0046】
図5に示されるグラフの重要範囲を見ると、保持部材が軟らかいゴム材料(ショアA硬度が40度のゴム材料)で形成されている場合(破線の線図参照)、音圧が低下してしまい、保持部材が硬い樹脂材料で形成されている場合(二点鎖線の線図参照)は、音圧が良好に確保されていることが判る。また、ショアA硬度が60度のゴム材料で保持部材全体が形成され更にエンクロージャ部が補強されている保持部材の場合(細い実線参照)は、ショアA硬度が60度のゴム材料で補強がない保持部材の場合(一点鎖線の線図参照)と比べて音圧が改善されていることが判る。さらに、保持部材40(
図4参照)を用いた場合(点線の線図参照)は、保持部材が硬質の樹脂材料で形成されている場合(二点鎖線の線図参照)に近似した特性を示していることが判る。
【0047】
以上の試験結果より、音圧を確保するためには、エンクロージャ部が硬い方が有利であることが判る。また、取付用張出部34(ホルダー部)が軟らかくても、音圧への影響は小さいことが判る。
【0048】
図6には、取付対象における振動加速度を比較したグラフが示されている。
図6において、横軸は周波数(Hz)を示し、縦軸は加速度(m/s
2)を示す。加速度は、保持部材が取り付けられた取付対象の所定位置の上に設置した加速度センサで測定した。よって、加速度の値が大きければ保持部材からその取付対象に大きな振動が伝わったといえる。また、
図6において、点線で囲まれた600Hz~800Hzの範囲は、重要範囲を示す。
【0049】
図6に示されるグラフの重要範囲を見ると、保持部材が硬質の樹脂材料で形成されている場合(二点鎖線の線図参照)は、振動が殆ど抑制されずに伝わってしまい、保持部材が軟らかいゴム材料(ショアA硬度が40度のゴム材料)で形成されている場合(破線の線図参照)は、振動が大きく低減されていることが判る。また、
図6の重要範囲を見ると、保持部材40(
図4参照)を用いた場合(点線の線図参照)は、振動の低減が概ね維持されていることが判る。
【0050】
以上の試験結果より、取付対象への振動伝達を抑制するためには、取付用張出部34(ホルダー部)が軟らかい方が有利であることが判る。また、エンクロージャ部31が硬くても、振動伝達の抑制への影響は小さいことが判る。
【0051】
以上説明したように、第1の実施形態の
図1~
図3に示されるスピーカ20によれば、部品点数を抑えながら、音圧の確保と取付対象へ伝わる振動の低減の両立を図ることが可能になる。
【0052】
また、
図1に示されるように、第1の実施形態では、スピーカユニット22の正面側外周部22Aに対して、保持部32のうち弾性を有する開放側端部32Aの正面側密着部32Xが密着するので、スピーカユニット22の外周側からの音漏れが正面側密着部32Xによって効果的に低減される。
【0053】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るスピーカ50について、
図7~
図9を用いて説明する。
図7には、第2の実施形態に係るスピーカ50がメータ装置10に搭載された状態の全体構成が簡略化された断面図で示されている。
図8には、
図7の保持部材52を斜め正面側から見た状態の斜視図が示され、
図9には、
図8の9-9線に沿って切断した状態の拡大断面図が示されている。
【0054】
図7~
図9に示されるように、スピーカ50は、保持部材30(
図1~
図3参照)に代えて、保持部材52を備える点で、第1の実施形態に係るスピーカ20(
図1~
図3参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態と実質的に同様の構成となっている。よって、第1の実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。なお、
図7に示されるメータ装置10は、第1の実施形態のスピーカ20(
図1参照)に代えてスピーカ50を搭載した構成となっているが、便宜上、第1の実施形態と同一符号を付している。
【0055】
また、保持部材52の外形は、第1の実施形態の保持部材30(
図1~
図3参照)の外形と実質的に同様である。このため、保持部材52において第1の実施形態の保持部材30(
図1~
図3参照)と実質的に同様の外形部分については、便宜上、同一符号を付して説明を省略する。
【0056】
図8及び
図9に示されるように、保持部材52は、二色成形によって形成されている。保持部材52には、弾性材料である第一材料で形成された弾性部52Aと、第一材料よりも硬い第二材料で形成された硬質部52Bと、が設けられている。第一材料は、第1の実施形態で説明した第一材料と同じ材料であり、第二材料は、第1の実施形態で説明した第二材料と同じ材料である。
【0057】
弾性部52Aは、裏側キャビティ形成部36の内面側を構成する部位36Mと、保持部32の内面側を構成する部位32Mと、開放側端部32Aと、取付用張出部34と、からなる部分において連続して設けられている。硬質部52Bは、裏側キャビティ形成部36の外面側を構成する部位36Nと、保持部32のうち開放側端部32Aを除く部分でかつ外面側を構成する部位32Nと、からなる部分において連続して設けられている。裏側キャビティ形成部36と、保持部32のうち開放側端部32Aを除く部分は、硬質部52Bが設けられることで、保持部32の開放側端部32Aから取付用張出部34までの部分(繋ぎ部34Bを含む部分)よりも剛性が高く設定されている。
【0058】
以上説明した第2の実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、
図7に示されるように、保持部32の内面32Bは、スピーカユニット22の外周面22Bと密着しており、保持部32において、内面側を構成する部位32Mは弾性部52Aの一部とされ、その内面側を構成する部位32Mに対して外面側に配置されて外面側を構成する部位32Nは硬質部52Bの一部とされている。このため、内面側を構成する部位32Mの外側への弾性変形が外面側を構成する部位32Nによって抑制されるので、保持部32の内面32Bとスピーカユニット22の外周面22Bとの密着性が向上し、スピーカユニット22の外周側からの音漏れが抑制される。
【0059】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係るスピーカについて、
図10及び
図11を用いて説明する。
図10には、第3の実施形態に係るスピーカに適用される保持部材60が半断面の斜視図で示されている。また、
図11には、保持部材60に設けられる骨格部62の斜視図が示されている。なお、第3の本実施形態のスピーカにおいて保持部材60が保持するスピーカユニットは、第1の実施形態のスピーカユニット22(
図1参照)と同様であり、スピーカユニットが保持される構造も第1の実施形態で説明したスピーカユニット22(
図1参照)が保持される構造と同様であるため、スピーカユニットについては図示及び説明を省略する。また、第3の実施形態のスピーカは、一例として、第1の実施形態と同様のメータ装置(
図1に示されるメータ装置10参照)に搭載されている。
【0060】
また、保持部材60の外形は、第1の実施形態の保持部材30(
図1~
図3参照)の外形と実質的に同様である。このため、保持部材60において第1の実施形態の保持部材30(
図1~
図3参照)と実質的に同様の外形部分については、便宜上、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
図10に示されるように、保持部材60は、二色成形によって形成されている。保持部材60には、弾性材料である第一材料で形成された弾性部60Aと、第一材料よりも硬い第二材料で形成された硬質部60Bと、が設けられている。第一材料は、第1の実施形態で説明した第一材料と同じ材料であり、第二材料は、第1の実施形態で説明した第二材料と同じ材料である。
【0062】
保持部材60のエンクロージャ部31において開放側端部32Aの端末側を除く部分には、硬質部60Bを構成する骨格部62が埋設されている。また、弾性部60Aは、取付用張出部34と、エンクロージャ部31のうち骨格部62を除く部分と、からなる部分において連続して設けられている。
【0063】
図11に示されるように、骨格部62は、格子状に形成されている。
図10及び
図11に示されるように、骨格部62は、底補強部62A、第一周壁補強部62B、段差補強部62C及び第二周壁補強部62Dを備えている。
図10に示されるように、底補強部62Aは、裏側キャビティ形成部36の底壁部36Aに埋設されている。第一周壁補強部62Bは、底補強部62Aに連続して形成されて裏側キャビティ形成部36の周壁部36Cに埋設されている。段差補強部62Cは、第一周壁補強部62Bに連続して形成されて裏側キャビティ形成部36の周壁部36Cと保持部32の周壁部32Cとの境界段差部35に埋設されている。第二周壁補強部62Dは、段差補強部62Cに連続して形成されて保持部32の周壁部32Cに埋設されている。このような構成により、裏側キャビティ形成部36を含むエンクロージャ部31の大部分は、繋ぎ部34Bを含む取付用張出部34よりも剛性が高く設定されている。
【0064】
以上説明した第3の実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、保持部32において、内面側を構成する部位32Lは弾性部60Aの一部とされ、その内面側を構成する部位32Lに対して外面側の部位32Pには周方向に間隔をおいて硬質部60Bの一部が設けられている。このため、第2の実施形態と概ね同様に、保持部32の内面32Bと図示しないスピーカユニットの外周部との密着性が向上する。
【0065】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態に係るスピーカについて、
図12を用いて説明する。
図12には、第4の実施形態に係るスピーカに適用される保持部材70が正面図で示されている。なお、第4の本実施形態のスピーカにおいて保持部材70が保持するスピーカユニットは、第1の実施形態のスピーカユニット22(
図1参照)と同様であり、スピーカユニットが保持される構造も第1の実施形態で説明したスピーカユニット22(
図1参照)が保持される構造と同様であるため、スピーカユニットについては図示及び説明を省略する。また、第4の実施形態のスピーカは、一例として、第1の実施形態と同様のメータ装置(
図1に示されるメータ装置10参照)に搭載されている。
【0066】
図12に示されるように、保持部材70は、取付用張出部34(
図2参照)に代えて、取付用張出部72を備える点で、第1の実施形態の保持部材30(
図2参照)とは異なる。他の構成は、第1の実施形態と同様の構成となっている。第4の実施形態の構成部において、第1の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0067】
取付用張出部72は、取付対象に固定される被固定部34A(第1の実施形態の被固定部34A(
図2参照)と同様の構成部)と、保持部32の開放側端部32Aと被固定部34Aとを繋ぐ繋ぎ部72Bと、を備えている。繋ぎ部72Bには、図示しないスピーカユニットの軸方向(すなわち
図12の紙面に垂直な方向)に対する繋ぎ部72Bの剛性を低下させる剛性低下部としての括れ部74が形成されている。
【0068】
保持部材70は、第1の実施形態の保持部材30(
図2参照)と同様に、二色成形によって形成されている。保持部材70には、弾性材料である第一材料で形成された弾性部70Aと、第一材料よりも硬い第二材料で形成された硬質部30B(第1の実施形態の硬質部30B(
図2参照)と同様の構成部)と、が設けられている。第一材料は、第1の実施形態で説明した第一材料と同じ材料である。弾性部70Aは、保持部32の開放側端部32Aから取付用張出部72までの範囲に設けられている。
【0069】
第4の実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、第4の実施形態では、音声出力時のスピーカユニット(図示省略、
図1のスピーカユニット22参照)の振動が保持部材70を介して保持部材70の取付対象(図示省略、
図1のリアケース16参照)に伝わる際に、繋ぎ部72Bが弾性変形することで、振動が吸収される。
【0070】
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態に係るスピーカについて、
図13~
図15を用いて説明する。
図13には、第5の実施形態に係るスピーカに適用される保持部材80が斜視図で示され、
図14には、保持部材80の弾性部80Aと硬質部80Bとを分解した状態の分解斜視図が示されている。また、
図15Aには、
図13の15A-15A線に沿って(二点鎖線15A1を通るように)切断した状態の拡大断面図が示され、
図15Bには、
図13の15B-15B線に沿って(二点鎖線15B1を通るように)切断した状態の拡大断面図が示されている。なお、第5の本実施形態のスピーカにおいて保持部材80が保持するスピーカユニットは、第1の実施形態のスピーカユニット22(
図1参照)と同様であり、スピーカユニットが保持される構造も第1の実施形態で説明したスピーカユニット22(
図1参照)が保持される構造と同様であるため、スピーカユニットについては図示及び説明を省略する。また、第5の実施形態のスピーカは、一例として、第1の実施形態と同様のメータ装置(
図1に示されるメータ装置10参照)に搭載されている。
【0071】
また、保持部材80の外形は、第1の実施形態の保持部材30(
図1~
図3参照)の外形と実質的に同様である。このため、保持部材80において第1の実施形態の保持部材30(
図1~
図3参照)と実質的に同様の外形部分については、便宜上、同一符号を付して説明を省略する。
【0072】
図13~
図15Bに示されるように、保持部材80は、二色成形によって形成されている。保持部材80には、弾性材料である第一材料で形成された弾性部80Aと、第一材料よりも硬い第二材料で形成された硬質部80Bと、が設けられている。第一材料は、第1の実施形態で説明した第一材料と同じ材料であり、第二材料は、第1の実施形態で説明した第二材料と同じ材料である。
【0073】
弾性部80Aは、取付用張出部34と保持部32の一部(より具体的には開放側端部32A、内面側を構成する部位32M、及び外面側を構成する部位32Nの一部)とを一体に構成する部分に設けられている。硬質部80Bは、保持部32の他の一部と裏側キャビティ形成部36とを一体に構成する部分に設けられると共に弾性部80Aと一体成形されている。
【0074】
弾性部80Aには、保持部32の外面側を構成する部位32Nにおける硬質部80Bとの境界部において図示しないスピーカユニットの軸方向(
図13に二点鎖線で示す中心軸22Xの軸線方向参照)に凹凸状(より具体的には波状)とされた凹凸嵌合部82が設けられている。これに対応するように、硬質部80Bには、保持部32の外面側を構成する部位32Nにおける弾性部80Aとの境界部において図示しないスピーカユニットの軸方向(
図13に二点鎖線で示す中心軸22Xの軸線方向参照)に凹凸状(より具体的には波状)とされた凹凸嵌合部84が設けられている。凹凸嵌合部82、84は、互いに嵌合するように形成されている。
【0075】
以上により、
図15Bに示されるように、保持部32には、弾性部80Aと硬質部80Bとが板厚方向に重なる重なり部80Wが設けられている。重なり部80Wは、裏側キャビティ形成部36よりも剛性が低く、
図15Aに示される保持部32のように弾性部80Aの単層で構成されている部分よりも剛性が高い。また、
図15Bに示される重なり部80Wにおける図中上下方向の長さは、
図13に示される保持部32の周方向に沿って変化している。これらにより、保持部材80における保持部32の開放側端部32Aから裏側キャビティ形成部36までの範囲においては密度が分散化されている。
【0076】
以上説明した第5の実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、第5の実施形態では、
図13及び
図15Bに示されるように、保持部32において、内面側を構成する部位32Mは弾性部80Aの一部とされ、その内面側を構成する部位32Mに対して外側に配置される外面側を構成する部位32Nには硬質部80Bを構成する部分が含まれているので、第2、第3の実施形態と概ね同様に、保持部32の内面32Bと図示しないスピーカユニットの外周部との密着性が向上する。
【0077】
さらに、第5の実施形態では、弾性部80A及び硬質部80Bには、互いの境界部において互いに嵌合する凹凸嵌合部82、84が設けられている。このため、弾性部80Aと硬質部80Bとの結合強度を向上させることができる。また、保持部32における外面側を構成する部位32Nに凹凸嵌合部82、84が設けられることで、保持部材80における保持部32の開放側端部32Aから裏側キャビティ形成部36までの範囲においては、弾性部80Aから硬質部80Bへの変化に距離を持たせることができ、密度が分散化される。これによって、この範囲での保持部材80の内部損失が増加し、周波数特性のピーク及びディップを軽減することができるので、音質が向上する。
【0078】
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態に係るスピーカについて、
図16を用いて説明する。
図16には、第6の実施形態に係るスピーカに適用される保持部材90が断面図で示されている。なお、第6の実施形態のスピーカは、以下に説明する点を除いて、第1の実施形態のスピーカ20(
図1~
図3参照)と同様の構成とされ、一例として、第1の実施形態と同様のメータ装置(
図1に示されるメータ装置10参照)に搭載されている。
【0079】
図16に示されるように、保持部材90は、取付用張出部34(
図2参照)に代えて、取付用張出部92を備える点で、第1の実施形態の保持部材30(
図2参照)とは異なる。第6の実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同様の構成となっている。第6の実施形態の構成部において、第1の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。なお、保持部材90は、一例として二色成形によって形成されている。
【0080】
取付用張出部92は、被固定部92Aが二つの材料で構成されている点で第1の実施形態の取付用張出部34(
図2参照)とは異なる。なお、取付用張出部92の繋ぎ部34Bは、第1の実施形態の繋ぎ部34Bと同様の構成である。また、被固定部92Aの外形は、第1の実施形態の被固定部34A(
図3参照)の外形と実質的に同様である。このため、被固定部92Aにおいて第1の実施形態の被固定部34A(
図3参照)と実質的に同様の外形部分については、便宜上、同一符号を付して説明を省略する。
【0081】
被固定部92Aは、繋ぎ部34Bに対して保持部32の開放側端部32Aとは反対側に延長された部分を構成する第一構成部92A1と、第一構成部92A1に連続して正面側(図中上側)とは反対側に突出する第二構成部92A2と、を備えている。第二構成部92A2は、第一構成部92A1との接合部に鍔状のフランジ部92AFを備えている。
【0082】
第一構成部92A1は、繋ぎ部34B等と同じ第一材料で形成されている。これに対して、第二構成部92A2は、第一材料よりも硬い材料、ここでは一例として裏側キャビティ形成部36等と同じ第二材料により形成されている。すなわち、第6の実施形態では、保持部材90には、保持部32の開放側端部32Aと、取付用張出部92の繋ぎ部34B及び被固定部92Aの第一構成部92A1と、からなる範囲に、弾性部90Aが設けられている。また、保持部材90には、保持部32のうち開放側端部32Aを除く部分、裏側キャビティ形成部36、及び被固定部92Aの第二構成部92A2に、硬質部90Bが設けられている。
【0083】
以上説明した第6の実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態と同様の作用及び効果が得られる。また、第6の実施形態では、被固定部92Aの第二構成部92A2が第一材料よりも硬い材料で形成されているので、取付対象(ここではリアケース16(
図1参照))に対する被固定部92Aの取付強度及び取付精度が向上する。なお、第二構成部92A2は、第一構成部92A1との接合部に鍔状のフランジ部92AFを備えているので、取付対象への取り付け時には第一構成部92A1から第二構成部92A2に安定的に力を伝えることができる。
【0084】
[第6の実施形態の変形例]
なお、
図16に示される第二構成部92A2に代えて、
図17に示される第二構成部93が第一構成部92A1(
図16参照)に接合されてもよい。第二構成部93は、第一材料よりも硬い材料、ここでは一例として第二構成部92A2と同じ第二材料により形成されている。
【0085】
第二構成部93は、円筒状の筒部93Aと、筒部93Aの側面に連続して設けられたリブ93Bと、筒部93Aの中に設けられた楔部93Cと、を備えており、図中上側の端部が第一構成部92A1(
図16参照)との接合部となる。リブ93Bの先端側(図中下側)には、筒部93Aの中心軸方向と直交する面(図示省略)が設けられており、この面は、取付対象の押さえ用とされる。また、筒部93Aの先端側には、筒部93Aの中心軸方向と平行なスリット93Sが複数形成されると共に、筒部93Aの半径方向外側に凸とされた突起を有するフック部93Fが形成されている。フック部93Fは、その外周側から筒部93Aの中心軸に向かって弾性変形可能とされている。さらに、楔部93Cは、押し込み可能となっており、取付対象(ここではリアケース16(
図1参照))への取付時に押し込まれることで取付対象に係合されたフック部93Fがその外周側から筒部93Aの中心軸に向かって弾性変形するのを阻止できるようになっている。このため、取付対象から第二構成部93が抜けてしまうのを効果的に防ぐことができる。
【0086】
また、他の変形例として、
図16に示される被固定部92Aにおいて貫通孔34Hを形成しないでかつ
図16に示される第二構成部92A2に代えて、
図18に示される第二構成部94が第一構成部92A1(
図16参照)に接合されてもよい。第二構成部94は、第一材料よりも硬い材料、ここでは一例として第二構成部92A2と同じ第二材料により形成されている。
【0087】
第二構成部94は、平板状の延出部94Aと、延出部94Aの先端部に設けられた係合部94Bと、を備えたスナップフィットであり、図中上側の端部が第一構成部92A1(
図16参照)との接合部となる。なお、取付対象には、第二構成部94が挿入される取付孔(図示省略)が貫通形成される。第二構成部94を適用した変形例では、取り付け及び取り外しを比較的容易に行うことができる。
【0088】
[第7の実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態に係るスピーカについて、
図19及び
図20を用いて説明する。
図19には、第7の実施形態に係るスピーカに適用される保持部材100の一部が断面図(
図20の19L-19L線に沿って切断した状態の断面図)で示されている。
図20には、
図19の20L-20L線に沿って切断した状態の断面図が示されている。なお、第7の実施形態のスピーカは、以下に説明する点を除いて、第1の実施形態のスピーカ20(
図1~
図3参照)と同様の構成とされ、一例として、第1の実施形態と同様のメータ装置(
図1に示されるメータ装置10参照)に搭載されている。
【0089】
図19及び
図20に示されるように、保持部材100の外形は、第1の実施形態の保持部材30(
図1~
図3参照)の外形と実質的に同様である。このため、保持部材100において第1の実施形態の保持部材30(
図1~
図3参照)と実質的に同様の外形部分については、便宜上、同一符号を付して説明を省略する。
【0090】
保持部材100は、二色成形によって形成されている。保持部材100には、弾性材料である第一材料で形成された弾性部100Aと、第一材料よりも硬い第二材料で形成された硬質部100Bと、が設けられている。第一材料は、第1の実施形態で説明した第一材料と同じ材料であり、第二材料は、第1の実施形態で説明した第二材料と同じ材料である。第7の実施形態では、保持部32から取付用張出部34にかけての部分における弾性部100A及び硬質部100Bの配置構成が第1の実施形態における弾性部30A及び硬質部30B(いずれも
図3参照)の配置構成とは異なる。第7の実施形態の他の構成は、第1の実施形態と同様の構成となっている。第7の実施形態の構成部において、第7の実施形態と同様の構成部については、同一符号を付して説明を省略する。
【0091】
図19に示されるように、弾性部100Aは、取付用張出部34の大部分と、保持部32の開放側端部32Aの大部分と、を含む範囲(保持部材100のうち後述する硬質部100B以外の部分)に設けられている。硬質部100Bは、裏側キャビティ形成部36と、保持部32の一部と、を含む範囲に設けられている。更に、硬質部100Bの一部として、保持部32における硬質部100Bを構成する部分から延出されて、取付用張出部34における弾性部100Aを構成する部分の内部に埋設された延出部102が設けられている。延出部102は、取付用張出部34における弾性部100Aを構成する部分に隣接されている。
【0092】
保持部32において硬質部100Bが設けられる範囲は、第1の実施形態の保持部32に硬質部30B(
図3等参照)が設けられる範囲よりも、開放側端部32A側(図中上側)に若干大きく、開放側端部32Aの一部を含んでいる。延出部102の延出方向先端部102Aは、その板厚が他の部位よりも厚く設定され、被固定部34Aの突出方向(図中下方向)と同じ方向に凸とされている。
図20に示されるように、延出部102は、延出方向先端部102Aから両側に延在された抜け止め部102Bを有し、正面視(
図20の方向視)でT字状をなしている。
【0093】
以上説明した第7の実施形態の構成によっても、前述した第1の実施形態と概ね同様の作用及び効果が得られる。また、第7の実施形態では、硬質部100Bの一部として延出部102が設けられることで、保持部32から取付用張出部34にかけての部分において硬質部100Bと弾性部100Aとの結合強度を向上させることができる。すなわち、第7の実施形態では、弾性部100Aが硬質部100Bから剥がれてしまうのを効果的に防止することができる。
【0094】
[実施形態の補足説明]
なお、上記第1の実施形態で説明した
図1に示されるスピーカユニット22は、フロントカバー26を備えているが、スピーカユニットは、フロントカバーを備えない構成でもよい。
【0095】
また、上記第3の実施形態では、
図10に示されるように、硬質部60Bを構成する骨格部62は、保持部材60のエンクロージャ部31において開放側端部32Aの端末側を除く部分に埋設されているが、変形例として、骨格部(62)は、裏側キャビティ形成部(36)にのみ埋設されるようなものとすることも可能である。
【0096】
また、上記第4の実施形態では、
図12に示されるように、繋ぎ部72Bに剛性低下部としての括れ部74が形成されているが、繋ぎ部に形成される剛性低下部は、例えば、肉厚を薄くした薄肉形状、または貫通穴を設けて剛性を低下させるなど、括れ形状以外の形状による剛性低下部でもよい。
【0097】
また、上記第6の実施形態では、
図16に示されるように、被固定部92Aは、第一材料で構成された第一構成部92A1と、第二材料で構成された第二構成部92A2と、を備えているが、被固定部は、第一材料よりも硬い材料のみにより形成されていてもよい。
【0098】
また、上記第6の実施形態及びその変形例において、
図16~
図18に示される第二構成部92A2、93、94は、裏側キャビティ形成部36等と同じ第二材料により形成されているが、変形例として、第二構成部(92A2、93、94)は、裏側キャビティ形成部(36)等と同じ第二材料ではないが第一材料よりも硬い材料で形成されていてもよい。
【0099】
また、上記第1~第7の実施形態では、第二材料が樹脂材料の場合を例に挙げて説明したが、第二材料は金属材料でもよい。また、第二材料として樹脂材料を適用した場合、その樹脂材料に強化繊維が含まれていてもよい。
【0100】
また、上記第1~第7の実施形態では、保持部材30、52、60、70、80、90、100は、二色成形によって形成されているが、保持部材は、例えば、インサート成形、アウトサート成形等のように、二色成形以外の成形方法によって成形されてもよいし、弾性部と硬質部とを別々に形成したうえで両者を一体化してもよい。
【0101】
なお、上記第1~第7の実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0102】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0103】
16 リアケース(取付対象)
20 スピーカ
22 スピーカユニット
22A スピーカユニットの正面側外周部
22B スピーカユニットの外周面
22P スピーカユニットの外周部
22R スピーカユニットの背面
30 保持部材
30A 弾性部
30B 硬質部
32 保持部
32A 開放側端部
32B 保持部の内面
32L 保持部の内面側を構成する部位
32M 保持部の内面側を構成する部位
32N 保持部の外面側を構成する部位(保持部の内面側を構成する部位に対する外面側の部位)
32P 保持部の内面側を構成する部位に対する外面側の部位
32X 正面側密着部
34 取付用張出部
34A 被固定部
34B 繋ぎ部
36 裏側キャビティ形成部
38 キャビティ
40 保持部材
40A 弾性部
40B 硬質部
50 スピーカ
52 保持部材
52A 弾性部
52B 硬質部
60 保持部材
60A 弾性部
60B 硬質部
70 保持部材
70A 弾性部
72 取付用張出部
74 括れ部(剛性低下部)
80 保持部材
80A 弾性部
80B 硬質部
82 凹凸嵌合部
84 凹凸嵌合部
90 保持部材
90A 弾性部
90B 硬質部
92 取付用張出部
92A 被固定部
100 保持部材
100A 弾性部
100B 硬質部
102 延出部