(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036281
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】高周波回転構造
(51)【国際特許分類】
H02K 1/2781 20220101AFI20230307BHJP
【FI】
H02K1/2781
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143251
(22)【出願日】2021-09-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-07
(71)【出願人】
【識別番号】514150181
【氏名又は名称】大銀微系統股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HIWIN MIKROSYSTEM CORP.
【住所又は居所原語表記】No.6,Jingke Central Rd.,Nantun Dist.,Taichung City 408,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】蕭瑞濱
(72)【発明者】
【氏名】紀政徳
(72)【発明者】
【氏名】張哲▲うぇ▼
(72)【発明者】
【氏名】許明璋
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA13
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非真円回転子の高周波回転下における応力集中現象を低減し、部材の変形を低減することによってモータの耐用年数を延ばすことが可能な高周波回転構造を提供する。
【解決手段】高周波回転構造は、外周が梅の花状を呈する環状回転素子を有し、回転素子の環状本体部中には複数の収容溝31、32がそれぞれ放射状に配列されて設けられ、さらに環状本体部中には複数の孔状磁気障壁空間40がそれぞれ設けられ、各々は各収容溝の両端部と連通し、各収容溝内には複数の磁石群51、52がそれぞれ嵌入される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状本体部と、前記本体部の環状軸の軸方向向きにおいて円形を呈し、前記本体部の内周環側に位置する内環面と、前記本体部の環状軸の軸方向向きにおいて非円形を呈し、前記本体部の外周環側に位置する外環面と、を有し、前記外環面は、複数の第1円弧面と第2円弧面を交互にして成るものである、回転素子と、
前記本体部の環周方向に沿って互いに順に配列され且つ離されて前記本体部にそれぞれ設けられ、前記本体部の曲率中心軸方向に沿って所定の深さで延在し、前記本体部の環周方向に沿って少なくとも前記第1円弧面の円弧長の半分よりも大きい所定の幅で延在する、複数の収容溝と、
それぞれ各前記収容溝内に収容される、複数の磁石群と、
前記本体部にそれぞれ設けられ、それぞれ各前記収容溝の幅方向上に位置する両端部と接続されて通じている、複数の孔状磁気障壁空間と、を含み、
各前記収容溝の幅方向上に位置する両端部の溝壁と前記外環面との間の最も短い第1距離(A)、及び各前記磁気障壁空間の孔壁と前記外環面との間の最も短い第2距離(B)は、
【請求項2】
各前記収容溝はそれぞれ前記本体部の前記第1円弧面がある部分に対応して位置しており、各々は第1溝セクションと、それぞれ前記第1溝セクションの両端に位置する2つの第2溝セクションと、を含み、各前記磁気障壁空間はそれぞれ各前記第2溝セクションと接続されて通じている、請求項1に記載の高周波回転構造。
【請求項3】
前記第1円弧面の円弧高さは、前記第2円弧面の円弧高さよりも大きい、請求項2に記載の高周波回転構造。
【請求項4】
前記第1距離は、それぞれ前記第2溝セクションと隣接する前記第2円弧面との間にあり、前記第2距離は、それぞれ前記磁気障壁空間と隣接する前記第2円弧面との間にある、請求項2又は請求項3に記載の高周波回転構造。
【請求項5】
前記第1溝セクションと各前記第2溝セクションとの間の離れる展開角度(C)、前記第1円弧面部分と前記内環面の曲率中心との間の最大距離(E)、及び前記第1溝セクションと前記内環面の曲率中心との間の最小距離(D)は、
【請求項6】
αが122%、117%、116%、110%、103%、98.5%又は95.6%である、請求項1に記載の高周波回転構造。
【請求項7】
βが42.7、42.6、42.5又は42.3である、請求項5に記載の高周波回転構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータに関し、特に高周波回転構造に関する。
【背景技術】
【0002】
精密加工機における加工精度の高精度化への要求を満たすために、動力源となる回転モータの改良に関する多くの改良技術が従来技術において開示されてきた。例えば、径方向断面の外周輪郭が梅の花形状を呈する非真円回転子は、回転出力が正弦波に近くなるため、工作機械のコギングによって加工物の表面に刃模様が生じてしまうのを防ぐことができ、スピンドルモータの回転部材として真円形回転子よりも適している。
【0003】
確かに径方向断面が梅の花のような回転子形状は回転時のコギングを低減し得るが、それ自体の重量分布が均一ではないため、高周波の回転下では応力集中現象が形成されやすくなり、回転子を構成するのに用いられる珪素鋼片自体の変形を招き、モータの耐用年数を減少させてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、非真円回転子の高周波回転下における応力集中現象を低減し、部材の変形を低減することによってモータの耐用年数を延ばすことが可能な高周波回転構造を提供することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明が提供する高周波回転構造は、やはり外周が梅の花状を呈する環状回転素子を有し、回転素子の環状本体部中には複数の収容溝がそれぞれ放射状に配列されて設けられ、さらに環状本体部中には複数の孔状磁気障壁空間がそれぞれ設けられ、各々は各収容溝の両端部と連通し、各収容溝内には複数の磁石群がそれぞれ嵌入される。その主な技術的特徴として、各収容溝の両端部の溝壁と本体部の外環面との間の最短間隔の第1距離(A)、各磁気障壁空間の孔壁と本体部の外環面との間の最短間隔の第2距離(B)は、下記式1によって定義される。
【0006】
【0007】
そのうち、外環面は、複数の第1円弧面と複数の第2円弧面によって構成され、各第1円弧面の円弧高さは各第2円弧面の円弧高さよりも大きい。
【0008】
そのうち、各収容溝はそれぞれ本体部の環周に沿って延在している。
【0009】
そのうち、各第1距離はそれぞれ各収容溝の両端部と第2円弧面との間にあり、各第2距離は、それぞれ各磁気障壁空間と第2円弧面との間にある。
【0010】
さらに、各収容溝はそれぞれ互いに連通する第1溝セクション及び第1溝セクションの両側にそれぞれ位置する2つの第2溝セクションをさらに含み、各磁気障壁空間はそれぞれ各第2溝セクションと接続されて通じている。
【0011】
そのうち、第1溝セクションと第2溝セクションとの間の離れる展開角度(C)、第1円弧面部分と内環面の曲率中心との間の最大距離(E)、及び第1溝セクションと内環面の曲率中心との間の最小距離(D)は、下記式2によって定義される。
【0012】
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】本発明の好ましい実施例の上面方向における部分拡大図である。
【
図4】本発明の好ましい実施例の上面方向における別の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0014】
図1~
図4を参照して、本発明の好ましい実施例で提供する高周波回転構造(10)は、主に回転素子(20)、複数の収容溝(30)、複数の磁気障壁空間(40)及び複数の磁石群(50)を含む。
【0015】
回転素子(20)は回転モータの可動子部材とされ、構造においては、複数の珪素鋼片を重ね合わせて成る環状本体部(21)と、本体部(21)の環状軸の軸方向を中心とした真円形状である、本体部(21)の内周環側に位置する内環面(22)と、本体部(21)の環状軸の軸方向を中心とした梅の花形状に近似した非円形を呈する、本体部(21)の外周環側に位置する外環面(23)と、を含む。そのうち、外環面(23)の非円形状は、複数の第1円弧面(231)と複数の第2円弧面(232)とを順に交互にして成るものであり、
図3に示す通り、第1円弧面(231)の円弧高さ(B1)を第2円弧面の円弧高さ(B2)よりも大きくすることで、第1円弧面(231)と第2円弧面(232)とを交互にして成る外環面(23)の形状を梅の花の輪郭に近似させている。そのうち、内環面(22)の円形形状は、本実施例では連続する円弧面を呈するように形成しているが、実際の使用においては、キー溝などの既知の結合構造を利用して設け、内環面(22)の円形をキー溝で分割された複数の円弧面によって形成してもよい。
【0016】
収容溝(30)は本体部(21)の環周方向に沿って互いに順に配列され且つ離されて本体部(21)にそれぞれ設けられ、本体部(21)の曲率中心軸方向に沿って適当な深さで延在し、本体部(21)の環周方向に沿って少なくとも第1円弧面の円弧長(L1)の半分よりも大きい幅(L2)で延在する。そのうち、収容溝(30)の延在深さは本体部(21)を貫通する程度に達してもよいし、本体部(21)を貫通しない程度でもよく、本実施例では貫通しない程度を呈する。
【0017】
さらに、収容溝(30)がある位置については、それぞれ本体部(21)の第1円弧面(231)の対応する部分に対応して位置しており、各々は第1溝セクション(31)と、それぞれ第1溝セクション(31)の両端に位置する2つの第2溝セクション(32)と、を含み、そのうち、各第2溝セクション(32)の一端はそれぞれ第1溝セクション(31)の両端と接続されて通じており、各第2溝セクション(32)の他端は、本体部(21)の各第2円弧面(232)の位置に対応する部分に近接している。
【0018】
磁気障壁空間(40)はそれぞれ孔状を呈し、本体部(21)にそれぞれ設けられ、且つ各々は各第2溝セクション(32)の第1溝セクション(31)から離れた他端と接続されて通じており、本体部(21)の各第2円弧面(232)の位置に対応する部分まで延在している。
【0019】
磁石群(50)はそれぞれ各収容溝(30)内に収容して固定され、各磁石群(50)はそれぞれ回転モータの1つの極に対応する。具体的には、本実施例中、磁石群(50)の数は4つであり、回転モータの4つの極に対応する。また、磁石群(50)はそれぞれ第1磁性体(51)及び第2磁性体(52)をさらに含み、第1磁性体(51)は第1溝セクション(31)内に嵌め込まれ、各第2磁性体(52)はそれぞれ同じ収容溝の各第2溝セクション(32)内に嵌め込まれる。
【0020】
収容溝(30)内に嵌め込まれた各第1磁性体(51)及び各第2磁性体(52)が良好な位置制限効果を得られるようにするため、
図3に示す通り、高周波回転構造(10)は複数の制限突出部(60)をさらに含み、制限突出部(60)はそれぞれ各第1溝セクション(31)の両端と隣接する各第2溝セクション(32)との間、及び各第2溝セクション(32)と隣接して連通する各磁気障壁空間(40)との間に位置する。
【0021】
図4に示す通り、上述の技術を基礎とした上で、本実施例ではさらに、各収容溝(30)、各磁気障壁空間(40)及び回転素子(20)の間の相対位置について、下記式1の定義に適合するものに限定する。
【0022】
【0023】
そのうち、式1中のAは、各収容溝(30)の幅方向上に位置する両端部の溝壁と外環面(23)との間の最も短い第1距離(A)である。
【0024】
式1中のBは、各磁気障壁空間(40)の孔壁と外環面(23)との間の最も短い第2距離(B)である。
【0025】
そのうち、第1距離(A)と第2距離(B)は直線距離であり、外環面(23)に対応する端点は、外環面(23)の対応する第2円弧面(232)上に位置する。
【0026】
再び
図2を参照して、さらに、各収容溝(30)と回転素子(20)との間の相対位置は、上記式1を満足するだけでなく、下記式2の定義にも適合するものに限定することもできる。
【0027】
【0028】
そのうち、式2中のCは、単一の収容溝(30)中の第1溝セクション(31)と隣接する第2溝セクション(32)との間の離れる展開角度(C)である。
【0029】
式2中のEは、第1円弧面(231)と内環面(22)の曲率中心との間の最大距離(E)である。
【0030】
式中のDは、第1溝セクション(31)と内環面の曲率中心との間の最小距離(D)である。
【0031】
上述の部材の構成による高周波回転構造(10)を回転子部材とした回転モータは、従来技術よりも良好に応力集中の欠点を回避することができ、珪素鋼片の変形が防止されると同時に、磁場の強さを一層向上させることができる。
【0032】
下記表に示す通り、応力の上限値は珪素鋼片や導磁性材料の材質によって決まり、α値が122%、117%、116%、110%、103%、98.5%及び95.6%、β値が42.7、42.6、42.5及び42.3である場合には、各第1距離(A)及び各第2距離(B)がある位置に対応する本体部(21)部分の応力はいずれも300Mpa未満であり、応力集中現象を確実且つ効果的に低減せしめ、これにより高周波回転構造を回転子部材とした回転モータの耐用年数を伸ばすことができる。そのうち、第1磁性体(51)と第2磁性体(52)の組み立て方法を検討し、異なった組み立て方式の実例を表1に示した。下記表中の結合1とは、各磁石群中の第1磁性体(51)と第2磁性体(52)がそれぞれ制限突出部(60)と分離可能且つ貫通不可能な接触方式を採用し、第1磁性体(51)と第1溝セクション(31)、第2磁性体と第2溝セクションは分離不可能な結合方式を採用したものを指す。下記表中の結合2とは、各磁石群中の第1磁性体(51)と第2磁性体(52)が制限突出部(60)、第1溝セクション(31)、第2溝セクション(32)と分離不可能な結合方法を採用したものを指す。
【0033】
【0034】
さらに、
図5に示す磁力線図を参照すると、そこでは上記表の実例Bの磁力線図が示されており、本発明が良好な磁気特性を有することを証明している。