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特開2023-36293チューンドマスダンパー、チューンドマスダンパーの設計方法、プログラム、及び、チューンドマスダンパーの設計システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036293
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】チューンドマスダンパー、チューンドマスダンパーの設計方法、プログラム、及び、チューンドマスダンパーの設計システム
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
F16F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143274
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 理都子
(72)【発明者】
【氏名】青山 優也
(72)【発明者】
【氏名】三輪田 吾郎
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA02
3J048AD07
3J048BC02
3J048BD08
3J048BF04
3J048BF08
3J048CB03
3J048CB22
3J048DA01
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】粘弾部材を用いつつも目標固有振動数に合わせ易いチューンドマスダンパー等を提供する。
【解決手段】制振対象物の上方又は下方に配置された質量体が、前記制振対象物の上下振動に同調して上下振動することにより、前記制振対象物の前記上下振動を抑制するチューンドマスダンパーであって、前記制振対象物に直接的又は間接的に設けられて前記質量体を支持する粘弾性部材と、前記粘弾性部材と並列に設けられるとともに、前記粘弾性部材よりも前記質量体の重心から離れた位置に配置されて前記質量体を支持する少なくとも3つの弾性部材と、当該チューンドマスダンパーの固有振動数を調整可能とする調整用ばねと、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振対象物の上方又は下方に配置された質量体が、前記制振対象物の上下振動に同調して上下振動することにより、前記制振対象物の前記上下振動を抑制するチューンドマスダンパーであって、
前記制振対象物に直接的又は間接的に設けられて前記質量体を支持する粘弾性部材と、
前記粘弾性部材と並列に設けられるとともに、前記粘弾性部材よりも前記質量体の重心から離れた位置に配置されて前記質量体を支持する少なくとも3つの弾性部材と、
当該チューンドマスダンパーの固有振動数を調整可能とする調整用ばねと、
を有することを特徴とするチューンドマスダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載のチューンドマスダンパーであって、
前記調整用ばねの弾性率は、前記弾性部材より小さいことを特徴とするチューンドマスダンパー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のチューンドマスダンパーであって、
前記調整用ばねは、取り外し可能に設けられていることを特徴とするチューンドマスダンパー。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチューンドマスダンパーの設計方法であって、
前記粘弾性部材の弾性率は、前記チューンドマスダンパーの振動数及び前記粘弾性部材が受ける面圧に依存し、
前記質量体の質量と、前記粘弾性部材の形状及び特性と、前記弾性部材及び前記調整用ばねの特性と、仮設定した前記チューンドマスダンパーの第一固有振動数及び前記粘弾性部材が受ける第一面圧に基づいて、前記チューンドマスダンパーの第二固有振動数及び第二面圧を計算する計算ステップと、
計算した前記第二固有振動数及び前記第二面圧が、前記第一固有振動数及び前記第一面圧の許容誤差範囲内か否かを判定する判定ステップと、
を有することを特徴とするチューンドマスダンパーの設計方法。
【請求項5】
請求項4に記載のチューンドマスダンパーの設計方法であって、
前記判定ステップにおいて、前記第二固有振動数及び前記第二面圧が、前記第一固有振動数及び前記第一面圧の許容誤差範囲内に含まれないと判定したときに、前記第二固有振動数及び前記第二面圧を最適化手法により修正し、修正した修正第二固有振動数及び修正第二面圧を、新たな前記第一固有振動数及び新たな前記第一面圧として前記計算ステップと前記判定ステップとを繰り返す収束計算を実行し、前記新たな前記第一固有振動数及び前記新たな前記第一面圧の前記許容誤差範囲内に含まれる収束固有振動数及び収束面圧を求めることを特徴とするチューンドマスダンパーの設計方法。
【請求項6】
請求項5に記載のチューンドマスダンパーの設計方法であって、
前記チューンドマスダンパーは、複数の前記調整用ばねを設置可能であり、
前記チューンドマスダンパーの固有振動数は、前記調整用ばねの数により調整可能であり、
前記許容誤差範囲内に含まれる前記第二固有振動数及び前記第二面圧または前記収束固有振動数及び前記収束面圧が求められた条件において、前記調整用ばねの数を異ならせて前記計算ステップと前記判定ステップとを実行し、前記調整用ばねの数により調整可能な固有振動数の上限値と下限値を計算する調整可能範囲計算ステップを有することを特徴とするチューンドマスダンパーの設計方法。
【請求項7】
請求項6に記載のチューンドマスダンパーの設計方法であって、
計算した前記上限値と前記下限値との間に、前記調整用ばねにより調整可能とすべき目標固有振動数の目標調整範囲が含まれるか否かを判定する調整範囲判定ステップを有することを特徴とするチューンドマスダンパーの設計方法。
【請求項8】
請求項7に記載のチューンドマスダンパーの設計方法であって、
前記調整範囲判定ステップにおいて、前記上限値と前記下限値との間に、前記目標固有振動数の目標調整範囲が含まれないと判定した場合には、前記粘弾性部材の形状及び特性と、前記弾性部材及び前記調整用ばねの特性と、を変更することを特徴とするチューンドマスダンパーの設計方法。
【請求項9】
請求項4乃至請求項8のいずれかに記載のチューンドマスダンパーの設計方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項10】
請求項9に記載のプログラムを記憶する記憶装置と、
前記プログラムを実行可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記質量体の質量と、前記粘弾性部材の形状及び特性と、前記弾性部材及び前記調整用ばねの特性と、仮設定した前記チューンドマスダンパーの前記第一固有振動数及び前記粘弾性部材が受ける前記第一面圧に基づいて、前記チューンドマスダンパーの前記第二固有振動数及び前記第二面圧を計算し、
計算した前記第二固有振動数及び前記第二面圧が、前記第一固有振動数及び前記第一面圧の前記許容誤差範囲内か否かを判定することを特徴とするチューンドマスダンパーの設計システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューンドマスダンパー、チューンドマスダンパーの設計方法、プログラム、及び、チューンドマスダンパーの設計システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、制振対象物(例えば、建物の床等)の上下振動を抑制する装置として、質量体と弾性部材と減衰部材を備え、制振対象物の上下振動に同調して、略逆位相の上下振動を質量体がすることにより、制振対象物の上下振動を抑制するチューンドマスダンパー(以下、TMDとも言う)が知られている。
【0003】
また、特許文献1のように、質量体を支持する粘弾性部材と、粘弾性部材と並列に設けられるとともに、粘弾性部材よりも質量体の重心から離れた位置に配置されて、質量体を支持する少なくとも3つの弾性部材と、を有するTMDも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-7503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように質量体を支持する粘弾性部材は、弾性率が、振動数や振動振幅、質量体から受ける面圧に依存するので、粘弾性体と共に質量体を支持している弾性体と質量体の重量とのバランスにより粘弾性体の弾性率が変化してしまい、TMDの固有振動数と制振しようとする目標固有振動数とが相違してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、粘弾部材を用いつつも目標固有振動数に合わせ易いチューンドマスダンパー、チューンドマスダンパーの設計方法、プログラム、及び、チューンドマスダンパーの設計システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、本発明のチューンドマスダンパーは、制振対象物の上方又は下方に配置された質量体が、前記制振対象物の上下振動に同調して上下振動することにより、前記制振対象物の前記上下振動を抑制するチューンドマスダンパーであって、
前記制振対象物に直接的又は間接的に設けられて前記質量体を支持する粘弾性部材と、
前記粘弾性部材と並列に設けられるとともに、前記粘弾性部材よりも前記質量体の重心から離れた位置に配置されて前記質量体を支持する少なくとも3つの弾性部材と、
当該チューンドマスダンパーの固有振動数を調整可能とする調整用ばねと、
を有することを特徴とする。
【0008】
このようなチューンドマスダンパーによれば、質量体を支持している弾性部材より弾性率が低い調整用ばねによりチューンドマスダンパーの固有振動数を調整することが可能である。このため、粘弾部材を用いつつも目標固有振動数に合わせ易いチューンドマスダンパーを提供することが可能である。
【0009】
かかるチューンドマスダンパーであって、
前記調整用ばねの弾性率は、前記弾性部材より小さいことを特徴とする。
このようなチューンドマスダンパーによれば、調整用ばねの弾性率は、弾性部材より小さいので、調整用ばねにより、チューンドマスダンパーの固有振動数を微調整することが可能である。
【0010】
かかるチューンドマスダンパーであって、
前記調整用ばねは、取り外し可能に設けられていることを特徴とする。
このようなチューンドマスダンパーによれば、調整用ばねを、取り外す、取り付ける、または、数を増やすなどしてチューンドマスダンパーの固有振動数を調整することが可能である。
【0011】
また、上記チューンドマスダンパーの設計方法であって、
前記粘弾性部材の弾性率は、前記チューンドマスダンパーの振動数及び前記粘弾性部材が受ける面圧に依存し、
前記質量体の質量と、前記粘弾性部材の形状及び特性と、前記弾性部材及び前記調整用ばねの特性と、仮設定した前記チューンドマスダンパーの第一固有振動数及び前記粘弾性部材が受ける第一面圧に基づいて、前記チューンドマスダンパーの第二固有振動数及び第二面圧を計算する計算ステップと、
計算した前記第二固有振動数及び前記第二面圧が、前記第一固有振動数及び前記第一面圧の許容誤差範囲内か否かを判定する判定ステップと、
を有することを特徴とする。
【0012】
このようなチューンドマスダンパーの設計方法によれば、例えば、チューンドマスダンパーにおける構成部材の諸元及び仮設定した第一固有振動数及び第一面圧に基づいて計算した第二固有振動数及び前記第二面圧が、第一固有振動数及び第一面圧の許容誤差範囲内か否を判定するので、第一固有振動数及び第一面圧に対する誤差が許容範囲に含まれているか否かを判定することが可能である。
【0013】
かかるチューンドマスダンパーの設計方法であって、
前記判定ステップにおいて、前記第二固有振動数及び前記第二面圧が、前記第一固有振動数及び前記第一面圧の許容誤差範囲内に含まれないと判定したときに、前記第二固有振動数及び前記第二面圧を最適化手法により修正し、修正した修正第二固有振動数及び修正第二面圧を、新たな前記第一固有振動数及び新たな前記第一面圧として前記計算ステップと前記判定ステップとを繰り返す収束計算を実行し、前記新たな前記第一固有振動数及び前記新たな前記第一面圧の前記許容誤差範囲内に含まれる収束固有振動数及び収束面圧を求めることを特徴とする。
【0014】
このようなチューンドマスダンパーの設計方法によれば、判定ステップにおいて、第二固有振動数及び第二面圧が、第一固有振動数及び前記第一面圧の許容誤差範囲内に含まれないと判定したときには、第二固有振動数及び第二面圧を修正し、修正した修正固有振動数及び修正第二面圧を、新たな第一固有振動数及び新たな第一面圧として計算ステップと判定ステップとを繰り返す収束計算を実行するので、最初に仮設定した第一固有振動数及び前記第一面圧に基づいて計算した結果が許容誤差範囲内に含まれない場合であっても、収束固有振動数及び収束面圧を求めることが可能である。
【0015】
かかるチューンドマスダンパーの設計方法であって、
前記チューンドマスダンパーは、複数の前記調整用ばねを設置可能であり、
前記チューンドマスダンパーの固有振動数は、前記調整用ばねの数により調整可能であり、
前記許容誤差範囲内に含まれる前記第二固有振動数及び前記第二面圧または前記収束固有振動数及び前記収束面圧が求められた条件において、前記調整用ばねの数を異ならせて前記計算ステップと前記判定ステップとを実行し、前記調整用ばねの数により調整可能な固有振動数の上限値と下限値を計算する調整可能範囲計算ステップを有することを特徴とする。
【0016】
このようなチューンドマスダンパーの設計方法によれば、調整可能範囲計算ステップにおいて、調整用ばねの数を変えることにより調整可能な固有振動数の上限値と下限値を計算するので、調整用ばねの本数を変更することにより調整可能なチューンドマスダンパーの固有振動数、すなわち調整可能な範囲を確認することが可能である。
【0017】
かかるチューンドマスダンパーの設計方法であって、
計算した前記上限値と前記下限値との間に、前記調整用ばねにより調整可能とすべき目標固有振動数の目標調整範囲が含まれるか否かを判定する調整範囲判定ステップを有することを特徴とする。
【0018】
このようなチューンドマスダンパーの設計方法によれば、計算した上限値と下限値との間に、調整用ばねにより調整可能とすべき目標固有振動数の目標調整範囲が含まれるか否かを判定するので、調整用ばねにより目標固有振動数の目標調整範囲に調整可能か否かを確認することが可能である。このため、設置現場で調整用ばねの数を調節することにより、所望の性能を発揮するチューンドマスダンパーを容易に設置することが可能である。
【0019】
かかるチューンドマスダンパーの設計方法であって、
前記調整範囲判定ステップにおいて、前記上限値と前記下限値との間に、前記目標固有振動数の目標調整範囲が含まれないと判定した場合には、前記粘弾性部材の形状及び特性と、前記弾性部材及び前記調整用ばねの特性と、を変更することを特徴とする。
【0020】
このようなチューンドマスダンパーの設計方法によれば、上限値と下限値との間に、調整用ばねにより調整可能とすべき目標固有振動数の目標調整範囲が含まれないと判定した場合には、粘弾性部材の形状及び特性と、弾性部材および調整用ばねの特性と、を変更するので、新たに設定した、弾性部材の形状及び特性と、調整用ばねの特性とにより、所望の性能を発揮させるチューンドマスダンパーを設計することができる。
【0021】
また、チューンドマスダンパーの設計方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラムである。
このようなプログラムをコンピュータで実行することにより、所望の性能を発揮させるチューンドマスダンパーを設計することができる。
【0022】
また、上記プログラムを記憶する記憶装置と、
前記プログラムを実行可能な制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記質量体の質量と、前記粘弾性部材の形状及び特性と、前記弾性部材及び前記調整用ばねの特性と、仮設定した前記チューンドマスダンパーの前記第一固有振動数及び前記粘弾性部材が受ける前記第一面圧に基づいて、前記チューンドマスダンパーの前記第二固有振動数及び前記第二面圧を計算し、
計算した前記第二固有振動数及び前記第二面圧が、前記第一固有振動数及び前記第一面圧の前記許容誤差範囲内か否かを判定することを特徴とするチューンドマスダンパーの設計システムである。
【0023】
このようなチューンドマスダンパーの設計システムによれば、上記プログラムを実行して、所望の性能を発揮させるチューンドマスダンパーを設計することができるチューンドマスダンパーの設計システムを提供することが可能である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、粘弾部材を用いつつも目標固有振動数に合わせ易いチューンドマスダンパー、このチューンドマスダンパーの設計方法、このチューンドマスダンパーの設計方法を実行するプログラム、及び、このチューンドマスダンパーの設計システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態のTMD20が設けられた床1の構造を示す伏図である。
図2図1のA-A矢視図である。
図3図1のB-B矢視図である。
図4図1のC-C矢視図である。
図5】TMD20の概略縦断面図である。
図6図5中のB-B断面図である。
図7】動的弾性率の振動数依存性を示す図である。
図8】弾性率の振幅依存性を示す図である。
図9】弾性率(SP10)の面圧依存性を示す図である。
図10】弾性率(SP30)の面圧依存性を示す図である。
図11】弾性率(SP100)の面圧依存性を示す図である。
図12】TMD20による制振効果を示す図である。
図13】コンピュータシステム30を示すブロック図である。
図14】TMD20の設計方法を示すフロー図である。
図15】TMD20の設置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
===実施形態===
最初に本実施形態で基本となるチューンドマスダンパー(以下、TMDという)及びTMDが設置される床構造の概要について説明する。
【0027】
<床構造について>
図1は、本実施形態のTMD20が設けられた床1直下の構造を示す平面図である。図2は、図1のA-A矢視図であり、図3は、図1のB-B矢視図であり、図4は、図1のC-C矢視図である。なお、図1図4において、水平面で直交する2方向(2つの水平方向)のうちの一方をX方向とし、他方をY方向とする。また、ここでは、本実施形態のTMD20を立方体の概略図で示している(詳細の構成は図5参照)。
【0028】
本実施形態の床構造は、床1と、梁3と、T字部材5と、連結部材7と、TMDユニット10とを備えている。
床1(制振対象物に相当)は、コンクリート製の構造床であり、建物の所定階(例えば3階)の床である。
【0029】
梁3は、床1を支承する梁(既存梁)であり、床1の下に設けられている。図1図2において、梁3はY方向に沿って2本平行に配置されている。梁3はH形鋼であり、上下一対の上フランジ3a及び下フランジ3bと、上フランジ3aと下フランジ3bを繋ぐウェブ3cとを有している。そして、図2に示すように、梁3の上フランジ3aの上面が床1の下面に接合されている。
【0030】
T字部材5は、断面(ここでは水平断面)がT字状の鋼製部材である。図1図4に示すように、T字部材5の端面は、梁3のウェブ3cに接合されている。より具体的には、T字部材5の端面は、梁3のウェブ3cのうち、他方の梁3と対向する側の面に接合されている。これにより、T字部材5は、梁3から内側(2本の梁3の間の空間)に突出している。
【0031】
連結部材7は、図2に示すように、略台形形状の鋼製の板材であり、T字部材5の突出部分を挟むように、T字部材5のY方向の両側にボルト等で固定されている。連結部材7は、TMDユニット10のTMD受梁12を、T字部材5に連結するための部材である。なお、連結部材7は、例えば、T字部材5の片側だけに配置されていてもよいし、あるいは、T字部材5と連結部材7を一体に構成してもよい。
【0032】
<TMDユニット10について>
TMDユニット10は、床1の下方において2本の梁3の間に設けられている。本実施形態のTMDユニット10は、TMD受梁12と、台座14と、TMD20とを備えている。
【0033】
TMD受梁12は、図3に示すように、TMD20の荷重を受ける梁であり、Y方向に間隔を空けて、X方向に沿って2本平行に設けられている。すなわち、2本のTMD受梁12は、梁3に対して垂直に設けられている。本実施形態のTMD受梁12は、梁3よりもサイズの小さいH形鋼であり、上下一対の上フランジ12a及び下フランジ12bと、上フランジ12aと下フランジ12bとを繋ぐウェブ12cとを備えている。
【0034】
図2に示すように、上フランジ12aの長手方向(X方向)の両端部は、連結部材7の形状に合わせてカットされており、上フランジ12aは、下フランジ12bよりも長さが短い。これにより、2つの連結部材7(T字部材5を挟む連結部材7)の間に、下側からTMD受梁12のウェブ12cの端部を挿入することが可能である。そして、TMD受梁12のウェブ12cは、2つの連結部材7の間に挿入されてボルト等で連結部材7と接合される。
【0035】
台座14は、TMD20を載置するための台である。台座14は、平面形状が矩形(正方形)であり、Y方向の両端部がTMD受梁12の下フランジ12bの上面にボルト等で接合されている。これにより、台座14は、TMD受梁12、連結部材7、T字部材5、梁3を介して、床1に対して固定されている。
【0036】
TMD20は、床1の上下振動を抑制するための装置であり台座14の上に設けられている。本実施形態のTMDユニット10には、TMD20と台座14の組み合わせがX方向に2つ並んで設けられている。但し、これには限らず、TMD20と台座14の組み合わせが1つだけ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。
【0037】
<TMD20の構成について>
図5及び図6は、本実施形態のTMD20の説明図である。図5は、TMD20の概略縦断面図であり、図6は、図5中のB-B断面図である。なお、図5中では、コイルばね26、27等のTMD10の一部の構成を側面視で示している。
【0038】
本実施形態のTMD20は、床1(制振対象物)の下方に配置されている。より具体的には、床1の下方において床1に対して固定された台座14の上に設けられている。つまり、TMD20は、床1に対して間接的に設けられている。そして、基本的に、このTMD20では、床1の下方に設けられた質量体(後述する質量体22)が、床1の上下振動に同調して略逆位相の上下振動をすることにより、床1の上下振動を抑制する。
本実施形態のTMD20は、質量体22と、粘弾性部材24と、弾性部材としてのメインばね26と、調整用ばね27と、を有している。
【0039】
質量体22は、例えば平面視略矩形形状の鋼製等の金属製部材であり、この例では、所定厚さの一枚の矩形鋼板が使用されている。但し、これには限らず、例えば、質量が足りない場合には、複数枚の矩形鋼板を積層して使用しても良いし、必要な質量を確保できればコンクリートその他の各種素材を用いることもできる。
【0040】
粘弾性部材24は、粘性(減衰成分)と弾性(はね成分)の両方の性質を有する部材である。本実施形態では粘弾性部材24として、発泡性ポリウレタン素材で減衰性能が高い「シロダンプ(登録商標)」を用いている。本実施形態の粘弾性部材24の形状は直方体であり、その平面形状は矩形である。但し、粘弾性部材24の形状はこれには限定されない。例えば、立方体でもよい。また、平面形状が円形や多角形でもよい。粘弾性部材24は、床1の下方において床1に対して固定された台座14の上に設けられて、質量体22を支持している(質量体22と台座14との間に介挿されている)。なお、本実施形態では、粘弾性部材24は、質量体22の平面中心C22又はその近傍位置に配置されており、粘弾性部材24の平面中心は、質量体22の重心の平面位置PG22に一致している。
【0041】
メインばね26は、例えば鋼製の線材を所定方向(図では鉛直方向)に沿った中心軸回りに螺旋状に旋回してなる部材(コイルばね)であり、特に圧縮方向の荷重を受けるのに用いられる圧縮コイルばねである。よって、質量体22を下側から支持する場合に好適である。本実施形態のTMD20には、メインばね26は、質量体22の四隅部にそれぞれ(すなわち4つ)設けられている。より具体的には、メインばね26は、床1に対して固定された台座14の上に、粘弾性部材24と並列に4つ設けられている(台座14と質量体22との間に互いに並列に介挿されている)。そして、これら4つのメインばね26は、それぞれの位置において、質量体22を支持している。但し、これには限られず、メインばね26は、少なくとも3つあればよく、この場合、安定して質量体22を支持することができる。
【0042】
図5及び図6に示すように、本実施形態では、粘弾性部材24を平面視略矩形形状の質量体22の平面中心C22又はその近傍位置に配しているとともに、粘弾性部材24を周囲から囲むように4つのメインばね26を質量体22の四隅部にそれぞれ配置している。すなわち、各メインばね26は、それぞれ、粘弾性部材24よりも質量体22の重心の位置PG22から水平方向に関して遠い位置(離れた位置)に配置されている。
【0043】
換言すると、質量体22の重心の平面位置PG22と4つのメインばね26の平面中心26Cとの水平方向の距離L26は、当該重心の平面位置PG22と粘弾性部材24の平面中心C24との水平方向の距離(不図示)よりも大きくなっている。
【0044】
よって、これら4つのメインばね26で質量体22は安定して支持することが可能である。これにより、質量体22は安定して上下振動することができ、その結果、質量体22のロッキング振動を効果的に防ぐことができる。
【0045】
なお、仮に、中央の粘弾性部材24の剛性が高い(硬い)とロッキング振動が発生しやすい。このため、粘弾性部材24の剛性は、4つのメインばね26の剛性の合計よりも小さいことが望ましい。
【0046】
調整用ばね27は、例えば、メインばね26と同様に、鋼製の線材を所定方向(図では鉛直方向)に沿った中心軸回りに螺旋状に旋回してなる部材(コイルばね)であり、床1に対して固定された台座14の上に、粘弾性部材24及びメインばね26と同様と並列に配置され、取り外し可能に複数設けられている。本実施形態の調整用ばね27は、例えば粘弾性部材24の周りを囲むように円形状に等間隔で並べて配置されている。
【0047】
調整用ばね27も、特に圧縮方向の荷重を受けるのに用いられる圧縮コイルばねであり、上記4つのメインばね26とともに質量体22を支持している。このため、調整用ばね27を設ける数を異ならせることにより、粘弾性部材24にかかる面圧を変更し、TMDの固有振動数をTMD20の固有振動数を調整することができる。
【0048】
本実施形態では、調整用ばね27を最大10個まで設置可能に構成されている。すなわち、調整用ばね27の設置可能な最小数は0であり、最大数は10に設定されている。調整用ばね27の弾性率は、メインばね26の弾性率より十分小さく、1個の調整用ばね27の有無により、TMD20の固有振動数が、例えば、0.2Hz程度変化するように設定されていることが望ましい。このため、TMD20は、メインばね26が主に質量体22を支持しており、調整用ばね27は介挿する数を増減することにより固有振動数の調整に用いられる。
【0049】
<TMD20の設置方法について>
まず、床1を支承する2本の梁3の対向するウェブ3cの側面にT字部材5、及び、連結部材7を取り付けておく。
【0050】
次に、TMDユニット10を形成する。すなわち、上フランジ12aの長手方向の両端をカット(図2参照)したTMD受梁12を2本平行に配置し、その下フランジ12bに台座14をボルト等で取り付ける(接合する)。また、台座14の上に、図6に示すように、粘弾性部材24と4つのメインばね26及び所望の固有振動数(目標固有振動数)となるべく設計した数の調整用ばね27を並列に配置する。さらに、粘弾性部材24と4つのメインばね26の上に、所定の質量の質量体22(例えば、複数枚の矩形鋼板積層させたもの)を配置する。このようにして、TMDユニット10を形成する。このとき設置する調整用ばね27の数等の設計方法については、後述する。
【0051】
そして、形成したTMDユニット10を床1の下方から上に持ち上げて、T字部材5を挟む2つの連結部材7の間にTMD受梁12のウェブ12cの端部を挿入する。そして、ボルト等で連結部材7とウェブ12cを接合する。これにより、床1に対してTMDユニット10(TMD受梁12)が固設される。
【0052】
次に、設置したTMD20の質量体22に、例えば加速度ピックアップを取り付け、床1を叩くなどしてTMD20の固有振動数を測定する。測定結果に基づいて、目標固有振動数となるように介挿する調整用ばね27の数を変更する。このため、設計上では、調整ばね27の設置可能な数の中央値近傍において目標固有振動数となるように設計しておくことが望ましい。例えば、本実施形態の場合には、調整ばね27の設置可能な数は10なので、その中央値である5個の調整用ばね27を介挿したときに、TMD20が目標固有振動数となるように設定しておくと、固有振動数を大きくする側にも、小さくする側にもの調整代が確保できる。このため、設置する現場においてTMD20の固有振動数を容易に調整することが可能となる。
【0053】
<TMDの設計方法について>
上述したTMD20を用いて床1の振動を減衰させるには、TMD20の固有振動数を床1の固有振動数とほぼ一致させる必要がある。以下では、TMD20の質量体22の上下振動を床1の上下振動に同調させるための設計方法を、粘弾性部材24としてシロダンプ24を用いたTMDを例に挙げて説明する。
【0054】
図7は、動的弾性率の振動数依存性を示す図であり、図8は、弾性率の振幅依存性を示す図であり、図9は、弾性率(SP10)の面圧依存性を示す図であり、図10は、弾性率(SP30)の面圧依存性を示す図であり、図11は、弾性率(SP100)の面圧依存性を示す図であり、図12は、TMD20による制振効果を示す図である。
【0055】
(1)シロダンプ24の剛性評価式について
TMD20の減衰材として用いるシロダンプ24には、形状係数、温度、振動数、振幅、面圧により、弾性率や損失係数が変化する特性がある。このため、シロダンプ24をTMD20の減衰材として用いる場合、弾性率が変化すると、バネとの荷重分担率が変わって面圧が変化し、鉛直剛性が変わって固有振動数も変化する。したがって、TMD20の固有振動数を適切に評価するためには、シロダンプ24の各種依存性を定式化した上で収束計算を行う必要がある。
【0056】
損失係数については、形状係数、振幅、面圧による影響は示されていない。一方、温度と振動数の影響については、通常の室内環境として考えられる15~30℃の範囲で±10%程度、床1の一次固有振動数として考えられる3~30Hzの範囲で±3%程度の変化であるため、本実施形態のTMD20の設計においては、10Hz、23℃における代表値を用いることとする。
【0057】
また、弾性率については、温度依存性は15~30℃の範囲ではほぼ一定であり、形状係数の影響は想定される範囲で±10%以内の変化であるため、振動数、振幅、面圧に対する依存性のみを考慮することとした。
【0058】
【0059】
【0060】
(3)振幅依存性について
動的弾性率の振幅依存性に関するメーカー提供値と近似値を図8に示す。メーカー資料では、振動数10Hzの速度実効値v=5mm/s(変位振幅約0.1mm)を基準として、基準振幅以下で振幅の対数比例、基準振幅以上で振幅比例となっている。
そこで、速度実効値vに対する変化率βvを、vが0.05mmで1.24、5mm/sで1.0、25mm/s以上は0.8、5mm/sの範囲ではvの自然対数に比例、5mm/s以上の範囲ではvに比例するものとし、メーカー提供値と概ね一致するように比例係数を定めた。
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
TMD20の設計は、以下のような流れでコンピュータシステム30により実行される。すなわち、以下に説明するTMD20の設計方法のSTEP1~STEP6における工程は、コンピュータ31上で機能可能なプログラムとして構成し、当該コンピュータ31を含むコンピュータシステム30により実行される。例えば、図13のブロック図に示す様に、当該プログラムを記憶する記憶装置31bと制御装置31aとを互いに通信可能に備えたコンピュータ31と入力装置32及び出力装置33を備えたコンピュータシステム30を構成し、以下のTMD20の設計方法を実行させる。
【0067】
図14は、TMD20の設計方法を示すフロー図である。TMD20の設計方法は以下のように実行される。
STEP1:必要な低減率とコストを勘案して有効質量比を決め、対象スパンの一次有効質量から必要なTMD20の振動質量Mを求める。
【0068】
STEP2:設置スペースに収まるように1台あたりの鋼板枚数と設置台数を決め、有効質量比から目標とするTMD20の目標固有振動数foptと減衰定数hoptを求める。このとき目標固有振動数foptには、設置可能な数の調整用ばねにより調整可能とすべき固有振動数の調整代(目標調整範囲)を設定しておく。
【0069】
TMD20は、対象範囲が広い場合に場所により床の固有振動数がいくらか異なったり、将来のレイアウト変更などで床固有振動数が変わったりする場合があるため、調整用ばね27の設置する数を変更して固有振動数変えることができることが有効である。例えば、目標固有振動数を8Hzとしたときに、下限値が7Hz、上限値が9Hzとなるように目標調整範囲を設定すると、調整ばね27の設置可能な本数が10本の本実施形態のTMD20であれば、概ね、調整ばね27一本あたりのピッチが0.2Hzとなり、調整ピッチ、調整範囲とも適切な値となる。一方、下限値が7.8Hz、上限値が8.2Hzであった場合には、調整ばね27一本あたりのピッチが0.04Hzとなり、調整範囲が狭すぎて、現場での調整が困難になる。また、逆に上限値と下限値との差が広すぎる場合、または、調整ばね27の設置可能本数が少なくて調整ピッチが1Hz刻みなどになる場合も、目標固有振動数foptに合わせることが困難になる。このため、目標固有振動数foptに設定する目標調整範囲は、施工現場において設置する調整ばね27の本数を変えることにより固有振動数を容易に調整できるように、調整設置可能な調整用ばねの数と、調整ばね27一本あたりのピッチに基づいて設定される。
【0070】
STEP3:振動数依存性のみ考慮した概算で求めたシロダンプ24の弾性率を用いて、目標減衰hoptを満足するようにシロダンプ24の面積Aを決める。また、シロダンプ24を含めて剛性が目標±10%程度に収まるようなメインばね26と調整用ばね27の種類を仮決めする。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
本実施形態のチューンドマスダンパー(TMD)20によれば、質量体22を支持しているメインばね26より弾性率が低い調整用ばね27を、取り外す、取り付ける、または、数を増やすなどしてTMDの固有振動数を微調整することが可能である。このため、シロダンプ24のような粘弾部材を用いつつも目標固有振動数に合わせ易いTMD20を提供することが可能である。
【0076】
【0077】
【0078】
また、調整可能範囲計算ステップ(STEP6)において、調整用ばね27の数を変えることにより調整可能な固有振動数の上限値と下限値を計算するので、調整用ばね27の本数を変更することにより調整可能なTMD20の固有振動数、すなわち調整可能な範囲を確認することが可能である。
【0079】
また、計算した上限値と下限値との間に、調整用ばね27の数を変えることにより調整可能とすべき目標固有振動数foptの目標調整範囲が含まれるか否かを判定するので、調整用ばね27により調整可能な調整代を確保できるか否かを確認することが可能である。このため、設置現場で調整用ばね27の数を調節することにより、所望の性能を発揮するTMD20を容易に設計することが可能である。
【0080】
また、計算した上限値と下限値との間に、調整用ばね27により調整可能とすべき目標固有振動数foptの目標調整範囲が含まれないと判定した場合には、弾性率の変動傾向を反映してシロダンプ24の特性、例えば、弾性率や面積A、及び、メインばね26と調整用ばね27の特性、例えば、ばね定数や自由長等を変更するので、新たに設定したシロダンプ24の形状及び特性と、メインばね26及び調整用ばね27の特性とにより、所望の性能を発揮させるTMD20を設計することができる。
【0081】
また、上記TMD20の設計方法をコンピュータに実行させることにより、所望の性能を発揮させるTMD20を容易に設計することができる。
また、上記プログラムを実行して、所望の性能を発揮させるTMD20を設計することができるコンピュータシステム30を提供することが可能である。
【0082】
図15は、TMD20の設置の変形例を示す図である。
図15では、床1の上に二重床ユニット9が設けられた二重床構造となっている。二重床ユニット9は複数の脚部9aを備えており、この脚部9aが床1の上面に設置されている。これにより、床1の上方に二重床ユニット9による床(所謂OA床)が形成されている。
【0083】
この変形例では、TMD20は、床1の上に直接的に設けられている。つまり、粘弾性部材24と4つの弾性部材26と複数の調整用ばね27が床1の上面に並列に配置されており、その上に質量体22が配置されている。換言すると、床1と質量体22との間に、粘弾性部材24と4つの弾性部材26と複数の調整用ばね27とが並列に介挿されている。そして、粘弾性部材24と4つの弾性部材26と複数の調整用ばね27とは、それぞれ、質量体22を支持している。
この場合においても、調整用ばね27を、取り外す、取り付ける、または、数を増やすなどしてTMDの固有振動数を微調整することが可能である。
【0084】
また、この例では、TMD20は二重床構造のうちの床1(下側の床)の上に設けられているが、これには限られない。例えば、二重床ユニット9によって形成される床(上側の床)の下にTMD20を設けても良い。つまり、二重床ユニット9の床の下面に4つの弾性部材26と粘弾性部材24と複数の調整用ばね27とを配置し、その下に質量体22を設ける(二重床ユニット9の床と質量体22との間に、4つの弾性部材26と粘弾性部材24と複数の調整用ばね27とを互いに並列に介挿する)ようにしてもよい。但し、この場合、弾性部材26及び調整用ばね27として、引張コイルばねを用いることが望ましい。
【0085】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0086】
1 床(制振対象物)
20 チューンドマスダンパー(TMD)
22 質量体
24 シロダンプ(粘弾性部材)
26 メインばね(弾性部材)
27調整用ばね
30 コンピュータシステム
31 コンピュータ
31a 制御装置
31b 記憶装置
STEP4 計算ステップ
STEP5 判定ステップ
STEP6 調整可能範囲計算ステップ
STEP7 調整範囲判定ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15