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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036305
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】インク組成物及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/322 20140101AFI20230307BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230307BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C09D11/322
B41M5/00 120
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143288
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】清本 博史
(72)【発明者】
【氏名】深沢 大志
(72)【発明者】
【氏名】三好 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】日吉 唯
(72)【発明者】
【氏名】北脇 崇也
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056FA13
2C056FA14
2C056FC02
2C056FD07
2C056HA46
2H186AB12
2H186BA10
2H186DA14
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB48
2H186FB53
4J039BC07
4J039BC20
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA29
4J039EA42
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 単位面積当たりの熱変色性インク組成物の量を増やして画像を形成した場合に、滲み又は裏抜けを起こすことなくインク量に応じて画像濃度を増加させることができ、かつ、インク量の増加にもかかわらず変色に必要な時間を短縮することができる技術を提供すること。
【解決手段】 実施形態のインク組成物は、熱変色性を示す顔料と、分散媒と、低メトキシルペクチンおよびポリガラクツロン酸からなる群より選択される少なくとも1種類の添加剤とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱変色性を示す顔料と、
分散媒と、
低メトキシルペクチンおよびポリガラクツロン酸からなる群より選択される少なくとも1種類の添加剤と
を含むインク組成物。
【請求項2】
前記添加剤が、前記インク組成物の総質量に対して0.05~2.0質量%の量で含まれる請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
アセチレングリコール系界面活性剤を更に含む請求項1又は2に記載のインク組成物。
【請求項4】
グリセリンを更に含む請求項1~3の何れか1項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記顔料が、呈色性化合物と、顕色剤と、消色剤とを含有するマイクロカプセル顔料である請求項1~4の何れか1項に記載のインク組成物。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のインク組成物を収容した容器と、
前記容器から前記インク組成物を供給され、前記インク組成物を記録媒体へ向けて吐出するインクジェットヘッドと
を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インク組成物及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可逆的に熱変色性を示すインク組成物が知られている。かかる熱変色性インク組成物として、電子供与性呈色性有機化合物と、電子受容性化合物と、電子供与性呈色性有機化合物および電子受容性化合物による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生じさせる反応媒体とを含むものが知られている。熱変色性インク組成物として、例えば、加熱により消色する熱消色性インク組成物が挙げられる。
【0003】
また、上述の熱変色性インク組成物を用いて記録媒体に印刷できる画像形成装置が知られている。熱消色性インク組成物は、印刷時は視認可能であるが、所定の温度で消色して不可視の状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-99628号公報
【特許文献2】特開2012-78808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、単位面積当たりの熱変色性インク組成物の量を増やして画像を形成した場合に、滲み又は裏抜けを起こすことなくインク量に応じて画像濃度を増加させることができ、かつ、インク量の増加にもかかわらず変色に必要な時間を短縮することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1実施形態によれば、熱変色性を示す顔料と、分散媒と、低メトキシルペクチンおよびポリガラクツロン酸からなる群より選択される少なくとも1種類の添加剤とを含むインク組成物が提供される。
【0007】
第2実施形態によれば、第1実施形態に係るインク組成物を収容した容器と、前記容器から前記インク組成物を供給され、前記インク組成物を記録媒体へ向けて吐出するインクジェットヘッドとを備えた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る画像形成装置の一例を示す模式図。
図2図1に示す画像形成装置の制御系の概略構成を示すブロック図。
図3】加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフ。
図4】加熱消色型の色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフ。
図5】加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフ。
図6】液滴量と画像濃度との関係を示すグラフ。
図7】液滴量と画像濃度との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.インク組成物
実施形態に係るインク組成物は、熱変色性を示す顔料と、分散媒と、低メトキシルペクチンおよびポリガラクツロン酸からなる群より選択される少なくとも1種類の添加剤とを含む。
【0010】
インク組成物は、例えば、加熱により消色する熱消色性インク組成物である。熱消色性インク組成物は、加熱により消色するものであれば、その後、冷却により再度発色してもよいし、再度発色しなくてもよい。
【0011】
以下に、インク組成物の各成分について説明する。
【0012】
<添加剤>
インク組成物には、低メトキシルペクチンおよびポリガラクツロン酸からなる群より選択される少なくとも1種類の添加剤が含まれる。「低メトキシルペクチンおよびポリガラクツロン酸からなる群より選択される少なくとも1種類の添加剤」は、以下の説明で単に添加剤ともいう。
【0013】
添加剤は、低メトキシルペクチンであってもよいし、ポリガラクツロン酸であってもよいし、低メトキシルペクチンとポリガラクツロン酸との混合物であってもよい。
【0014】
「低メトキシルペクチン」は、エステル化度50%未満のペクチンを指す。「ペクチン」の用語は、ポリガラクツロン酸のカルボキシル基が種々の割合にメチルエステル化している多糖を指すため、「低メトキシルペクチン」は、エステル化度50%未満のメチルエステル化ポリガラクツロン酸を指す。
【0015】
「低メトキシルペクチン」は、メチルエステル化ポリガラクツロン酸であり、メチルエステル化されているのに対し、「ポリガラクツロン酸」は、ガラクツロン酸の重合体であり、メチルエステル化されていない。なお、「低メトキシルペクチン」は、低メトキシルペクチンのカルボキシル基(すなわち、メチルエステル化されていない官能基)以外の官能基の一部が他の置換基に置換された誘導体であってもよい。例えば、「低メトキシルペクチン」は、低メトキシルペクチンのメチルエステル基の一部がアミド基に置換されたアミド化低メトキシルペクチンであってもよい。また、「ポリガラクツロン酸」は、ポリガラクツロン酸のカルボキシル基以外の官能基の一部が他の置換基に置換された誘導体であってもよい。
【0016】
「低メトキシルペクチン」は、エステル化度が低い方がより好ましい。具体的には、低メトキシルペクチンのエステル化度は、50%未満であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは20%以下である。これは、低メトキシルペクチンのメチルエステル化されていない官能基(すなわち、カルボキシル基)が、2価の陽イオンと分子架橋領域を作り、上記課題の解決に寄与すると考えられるためである。
【0017】
添加剤は、インク組成物の総質量に対して、例えば0.05~2.0質量%、好ましくは0.1~1.0質量%、より好ましくは0.1~0.5質量%の量で、インク組成物中に含むことができる。添加剤は、添加剤の添加効果を発揮することができ、かつインクの吐出性に影響を及ぼさないような量で、インク組成物中に含むことができる。
【0018】
<分散媒>
分散媒は、例えば、水、有機溶剤、またはこれらの混合物である。分散媒は、インク組成物の用途に応じて適宜選択することができる。インク組成物がインクジェットプリンタ用のインクである場合、分散媒は、好ましくは水である。
【0019】
<顔料>
顔料は、熱変色性を示す公知の着色顔料粒子を使用することができる。顔料は、例えば、熱消色性を示す公知の着色顔料粒子を使用することができる。着色顔料粒子は、消色後に再度発色させることができない不可逆タイプであってもよいし、消色と発色を繰り返すことができる可逆タイプであってもよい。
【0020】
着色顔料粒子は、好ましくはマイクロカプセル粒子である。一例によれば、マイクロカプセル粒子は、内包物として、(a)呈色性化合物と、(b)顕色剤と、(c)消色剤とを含む。(a)呈色性化合物は、色を決める成分であり、顕色剤に電子を供与し、発色する化合物とすることができる。代表的な呈色性化合物としてロイコ染料が挙げられる。(b)顕色剤は、呈色性化合物から電子を受け取り、呈色性化合物の顕色剤として機能する化合物とすることができる。(c)消色剤(変色温度調整剤)は、呈色性化合物及び顕色剤による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生じさせる化合物とすることができる。かかる(a)~(c)の成分を含むマイクロカプセル粒子は、可逆タイプであり、公知である。
【0021】
したがって、(a)~(c)の成分は、それぞれ、公知の成分を使用することができる。また、(a)~(c)の成分の配合割合は、適宜決定することができる。
【0022】
マイクロカプセル顔料としては、特公昭51-44706号公報、特公昭51-44707号公報、特公平1-29398号公報等に記載されている、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1℃から7℃)を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を用いることができる(図3参照)。
消色状態を呈する高温側変色点の温度としては、例えば、30~35℃であり、発色状態を呈する低温側変色点の温度としては、例えば、23℃~34℃である。
【0023】
また、特開2005-1369号公報、特開2006-137886号公報、特開2006-188660号公報、特開2008-45062号公報、特開2008-280523号公報等に記載されている、大きなヒステリシス特性を示す可逆熱変色性組成物を内包させたマイクロカプセル顔料を用いることもできる。即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2からt3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させたマイクロカプセル顔料を用いることもできる(図4参照)。
【0024】
色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させたマイクロカプセル顔料の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性について説明する。
図4では、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全消色状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色を開始する温度t3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色を開始する温度t2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全発色状態に達する温度t1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
【0025】
変色温度域は前記t1とt4間の温度域であり、着色状態と消色状態の両状態が共存でき、色濃度の差の大きい領域であるt2とt3の間の温度域が実質変色温度域である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分EFの中点を通る線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が小さいと変色前後の両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在しえない。また、前記ΔH値が大きいと変色前後の各状態の保持が容易となる。
【0026】
前記完全消色温度t4は、ヒーターの熱や、摩擦部材と印刷面との擦過によって生じる摩擦熱等により消色する温度である。ヒーターの熱や、摩擦部材と印刷面との擦過によって生じる摩擦熱等により消色する温度としては、例えば、50℃以上90℃以下であり、好ましくは55℃以上85℃以下、より好ましくは60℃以上80℃以下の範囲にあり、完全発色温度t1は冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度とすることができ、例えば、0℃以下であり、好ましくは-50℃以上-5℃以下、より好ましくは-50℃以上-10℃以下の範囲にある。
【0027】
以下に前記可逆熱変色性組成物の(a)、(b)、(c)成分について具体的に化合物を例示する。
【0028】
前記(a)成分、即ち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(b)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
前記電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられ、これらのうちフタリド化合物およびフルオラン化合物が好ましい。
【0029】
前記フタリド化合物としては、例えばジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、およびそれらの誘導体などが挙げられ、これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、ならびにそれらの誘導体が好ましい。
また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0030】
以下にこれらの化合物を例示する。
3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、
3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、
3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-アセトアミド-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-プロピルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6-ジメトキシフルオラン、
3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、
2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアミノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジペンチルアミノフルオラン、
2-(ジベンジルアミノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(N-メチルアニリノ)-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、
1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)フルオラン、
1,2-ベンツ-6-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)フルオラン、
2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジエチルアミノ)-8-(ジエチルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジ-n-ブチルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(ジエチルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジ-n-ブチルアミノ)-8-(N-エチル-N-i-アミルアミノ)-4-メチル、
スピロ〔5H-(1)ベンゾピラノ(2,3-d)ピリミジン-5,1′(3′H)イソベンゾフラン〕-3′-オン,2-(ジブチルアミノ)-8-(ジペンチルアミノ)-4-メチル、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-〔4-(ジメチルアミノ)-2-メトキシフェニル〕-3-(1-ブチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-〔4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル〕-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-〔4-(ジエチルアミノ)-2-エトキシフェニル〕-3-(1-ペンチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-[4-(ジエチルアミノ)-2-メチルフェニル]-3-(1-エチル-2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
3′,6′-ビス〔フェニル(2-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-〔9H〕キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-〔9H〕キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-エチルフェニル)アミノ〕-スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-〔9H〕キサンテン]-3-オン、
2,6-ビス(2′-エチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2′,4′-ジエチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2-(4′-ジメチルアミノフェニル)-4-メトキシ-キナゾリン、
4,4′-(エチレンジオキシ)-ビス〔2-(4-ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
等を挙げることができる。
【0031】
なお、フルオラン類としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する前記化合物の他、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基等のアルキル基、クロロ基等のハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
【0032】
前記(b)成分、即ち電子受容性化合物は、(a)成分から電子を受け取り、(a)成分の顕色剤として機能する化合物である。
前記電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群及びその誘導体、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して(a)成分を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物があり、これらの中でも活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
【0033】
活性プロトンを有する化合物及びその誘導体としては、例えばフェノール性水酸基を有する化合物及びその金属塩、カルボン酸及びその金属塩、好ましくは、芳香族カルボン酸、炭素数2~5の脂肪族カルボン酸及びそれらの金属塩、酸性リン酸エステル及びその金属塩、並びにアゾ-ル系化合物及びその誘導体、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体が挙げられ、これらの中でも、有効な熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性水酸基を有する化合物が好ましい。
【0034】
前記フェノール性水酸基を有する化合物はモノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、更にビス型、トリス型フェノール等およびフェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性水酸基を有する化合物の中でも、少なくともベンゼン環を2以上有するものが好ましい。また、これら化合物は置換基を有していてもよく、置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等が挙げられる。
【0035】
前記活性プロトンを有する化合物の金属塩が含む金属としては、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛およびモリブデン等が挙げられる。
【0036】
以下に具体例を挙げる。
フェノール、o-クレゾール、ターシャリーブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,1-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、3,3-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン等がある。
【0037】
前記フェノール性水酸基を有する化合物が最も有効な熱変色特性を発現させることができるが、芳香族カルボン酸及び炭素数2~5の脂肪族カルボン酸、カルボン酸金属塩、酸性リン酸エステル及びそれらの金属塩、1、2、3-トリアゾール及びその誘導体から選ばれる化合物等であってもよい。
【0038】
(c)成分としては、色濃度-温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物、例えば、分子中に置換芳香族環を含むカルボン酸エステル、無置換芳香族環を含むカルボン酸と炭素数10以上の脂肪族アルコールのエステル、分子中にシクロヘキシル基を含むカルボン酸エステル、炭素数6以上の脂肪酸と無置換芳香族アルコールまたはフェノールのエステル、炭素数8以上の脂肪酸と分岐脂肪族アルコールまたはエステル、ジカルボン酸と芳香族アルコールまたは分岐脂肪族アルコールのエステル、ケイ皮酸ジベンジル、ステアリン酸ヘプチル、アジピン酸ジデシル、アジピン酸ジラウリル、アジピン酸ジミリスチル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジステアリル、トリラウリン、トリミリスチン、トリステアリン、ジミリスチン、ジステアリン等が用いられる。
【0039】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコールまたはn-ヘプチルアルコールと炭素数10~16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17~23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
【0040】
具体的には、酢酸n-ペンタデシル、酪酸n-トリデシル、酪酸n-ペンタデシル、カプロン酸n-ウンデシル、カプロン酸n-トリデシル、カプロン酸n-ペンタデシル、カプリル酸n-ノニル、カプリル酸n-ウンデシル、カプリル酸n-トリデシル、カプリル酸n-ペンタデシル、カプリン酸n-ヘプチル、カプリン酸n-ノニル、カプリン酸n-ウンデシル、カプリン酸n-トリデシル、カプリン酸n-ペンタデシル、ラウリン酸n-ペンチル、ラウリン酸n-ヘプチル、ラウリン酸n-ノニル、ラウリン酸n-ウンデシル、ラウリン酸n-トリデシル、ラウリン酸n-ペンタデシル、ミリスチン酸n-ペンチル、ミリスチン酸n-ヘプチル、ミリスチン酸n-ノニル、ミリスチン酸n-ウンデシル、ミリスチン酸n-トリデシル、ミリスチン酸n-ペンタデシル、パルミチン酸n-ペンチル、パルミチン酸n-ヘプチル、パルミチン酸n-ノニル、パルミチン酸n-ウンデシル、パルミチン酸n-トリデシル、パルミチン酸n-ペンタデシル、ステアリン酸n-ノニル、ステアリン酸n-ウンデシル、ステアリン酸n-トリデシル、ステアリン酸n-ペンタデシル、エイコサン酸n-ノニル、エイコサン酸n-ウンデシル、エイコサン酸n-トリデシル、エイコサン酸n-ペンタデシル、ベヘニン酸n-ノニル、ベヘニン酸n-ウンデシル、ベヘニン酸n-トリデシル、ベヘニン酸n-ペンタデシル等を挙げることができる。
【0041】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、2-デカノン、3-デカノン、4-デカノン、2-ウンデカノン、3-ウンデカノン、4-ウンデカノン、5-ウンデカノン、2-ドデカノン、3-ドデカノン、4-ドデカノン、5-ドデカノン、2-トリデカノン、3-トリデカノン、2-テトラデカノン、2-ペンタデカノン、8-ペンタデカノン、2-ヘキサデカノン、3-ヘキサデカノン、9-ヘプタデカノン、2-ペンタデカノン、2-オクタデカノン、2-ノナデカノン、10-ノナデカノン、2-エイコサノン、11-エイコサノン、2-ヘンエイコサノン、2-ドコサノン、ラウロン、ステアロン等を挙げることができる。
【0042】
また、総炭素数が12~24のアリールアルキルケトン類、例えば、n-オクタデカノフェノン、n-ヘプタデカノフェノン、n-ヘキサデカノフェノン、n-ペンタデカノフェノン、n-テトラデカノフェノン、4-n-ドデカアセトフェノン、n-トリデカノフェノン、4-n-ウンデカノアセトフェノン、n-ラウロフェノン、4-n-デカノアセトフェノン、n-ウンデカノフェノン、4-n-ノニルアセトフェノン、n-デカノフェノン、4-n-オクチルアセトフェノン、n-ノナノフェノン、4-n-ヘプチルアセトフェノン、n-オクタノフェノン、4-n-ヘキシルアセトフェノン、4-n-シクロヘキシルアセトフェノン、4-tert-ブチルプロピオフェノン、n-ヘプタフェノン、4-n-ペンチルアセトフェノン、シクロヘキシルフェニルケトン、ベンジル-n-ブチルケトン、4-n-ブチルアセトフェノン、n-ヘキサノフェノン、4-イソブチルアセトフェノン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、シクロペンチルフェニルケトン等を挙げることができる。
【0043】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効であり、ジペンチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル、ジオクチルエーテル、ジノニルエーテル、ジデシルエーテル、ジウンデシルエーテル、ジドデシルエーテル、ジトリデシルエーテル、ジテトラデシルエーテル、ジペンタデシルエーテル、ジヘキサデシルエーテル、ジオクタデシルエーテル、デカンジオールジメチルエーテル、ウンデカンジオールジメチルエーテル、ドデカンジオールジメチルエーテル、トリデカンジオールジメチルエーテル、デカンジオールジエチルエーテル、ウンデカンジオールジエチルエーテル等を挙げることができる。
【0044】
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効であり、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ペンタデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、ヘプタデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール、ドコシルアルコール等を挙げることができる。
【0045】
酸アミド類としては、ヘキサン酸アミド、ヘプタン酸アミド、オクタン酸アミド、ノナン酸アミド、デカン酸アミド、ウンデカン酸アミド、ラウリル酸アミド、トリデカン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ドコサン酸アミド等を挙げることができる。
【0046】
また、(c)成分として、国際公開WO2020/209118の段落[0053]~[0072]で例示した化合物を用いることもできる。
【0047】
更に、電子受容性化合物として炭素数3~18の直鎖または側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11-129623号公報、特開平11-5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001-105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51-44706号公報、特開2003-253149号公報)加熱発色型(加熱により発色し、冷却により消色する)の可逆熱変色性組成物を内包してなるマイクロカプセル顔料を適用することもできる。(図5参照)
【0048】
更に、マイクロカプセル粒子には、その機能に影響を及ぼさない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤、防腐・防黴剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0049】
マイクロカプセル粒子は、内包物/壁膜=7/1~1/1(質量比)の範囲であることが好ましい。壁膜の比率が範囲内にあることにより、発色時の色濃度の低下及び鮮明性の低下を防止することができる。マイクロカプセル粒子は、より好適には、内包物/壁膜=6/1~1/1(質量比)の範囲内である。
【0050】
マイクロカプセル粒子は、化学的、物理的に安定であり、これにより、種々の使用条件において、同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができる点で優れている。
【0051】
マイクロカプセル化は、公知の方法により行うことができる。カプセルの隔膜の材質としては、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、イソシアネート樹脂等が挙げられる。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与したり、表面特性を改質したりすることもできる。
【0052】
着色顔料粒子は、例えば300~5000nm、好ましくは300~4000nm、より好ましくは500~3000nmの平均粒子径を有する。粒子径が小さくなると、発色性が低下する傾向がある。粒子径が大きくなると、熱消色性インク中の分散性やインクジェット吐出性が悪くなる傾向がある。
【0053】
マイクロカプセル顔料の平均粒子径としては、等体積球相当の粒子の平均粒子径(メジアン径)を用いる。その最適測定としては直接的測定法にてキャリブレーションを行ったレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置である島津製作所製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD7000を用いて測定できる。
【0054】
上記直接的測定法としては、キャリブレーションは、顕微鏡で撮影した画像から個々の粒子の面積(2次元)を計測して相当径を測定する、画像解析法、コールターカウンターを用いて検出器の微小な穴(アパチャー)に定電流を流し、その穴を粒子が通過する際に生じるインピーダンスの変化から相当径を測定する、コールター法(電気的検知帯法)などが挙げられ、レーザー測定法のキャリブレーションはこれらによって得られた値を元に行なう。
【0055】
画像解析法による平均粒子径の測定は、例えば、マウンテック社製の画像解析式粒度分布測定ソフトウェア「マックビュー」を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定することができる。
【0056】
コールター法による平均粒子径の測定は、全ての粒子、あるいは、大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合に適用可能であり、例えば、ベックマン・コールター社製の粒度分布測定装置「Multisizer 4e」を用いて測定することができる。
【0057】
着色顔料粒子は、熱消色性インク全量に対し、例えば5~40質量%、好ましくは10~40質量%、更に好ましくは10~35質量%の量で配合することができる。
【0058】
<追加成分>
インク組成物は、上述の添加剤、分散媒、および顔料に加えて、追加成分を更に含んでいてもよい。例えば、安定化剤、調粘剤、防腐剤、保湿剤、濡れ剤、消泡剤等の汎用的な助剤をさらに含んでいてもよい。
【0059】
例えば、インク組成物は、追加成分として、アセチレングリコール系界面活性剤を更に含んでいてもよい。アセチレングリコール系界面活性剤は、インク組成物をインクジェットプリンタで使用した場合に吐出安定性を高めることができる。アセチレングリコール系界面活性剤は、例えば、サーフィノール465(日信化学工業社製)を使用することができる。サーフィノール465は、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールのエチレンオキサイド付加物である。アセチレングリコール系界面活性剤は、インク組成物の総質量に対して、例えば0.1~5.0質量%の量でインク組成物中に含むことができる。
【0060】
また、インク組成物は、追加成分として、グリセリンを更に含んでいてもよい。グリセリンは保湿剤として機能し、とりわけ、インク組成物をインクジェットプリンタで使用した場合に吐出安定性を高めることができる。グリセリンは、インク組成物の総質量に対して、例えば5~60質量%の量でインク組成物中に含むことができる。
【0061】
<効果>
熱消色性インクに含まれる顔料は、熱変色を生じない通常のインクに比べて発色性が低い。また、熱消色性インクに含まれる顔料は、通常のインクに含まれる顔料と比較して粒径が大きい。そのため、例えば、インクジェットプリンタで使用する場合には、目詰まり防止の観点から、熱消色性インク中の顔料濃度を、通常のインクの場合のように高めることは難しい。これらの事情から、熱消色性インクをインクジェットプリンタで使用して十分な画像濃度を達成するためには、印字ドロップ数を増やす必要がある。本明細書において「印字ドロップ数」は、「液滴量」ともいう。
【0062】
本発明者らは、一般的な熱消色性インクの印字ドロップ数を増やして画像を形成した場合に、以下の問題を生じることを見出した。即ち、一般的な熱消色性インクを使用した場合、印字ドロップ数を増加させても、画像濃度を期待されるほど増加させることができない。また、一般的な熱消色性インクを使用した場合、印字ドロップ数を増加させると、滲み又は裏抜けが起こる。更に、一般的な熱消色性インクを使用した場合、印字ドロップ数を増加させると、消色が不十分になる。
【0063】
これに対し、実施形態に係る上記のインク組成物は、単位面積当たりのインク量を増やして画像を形成した場合であっても、滲み又は裏抜けを起こすことなく、インク量に応じて画像濃度を増加させることができる。また、実施形態に係る上記のインク組成物で形成した画像は、単位面積当たりのインク量を増やした場合であっても、加熱による変色を短時間で生じさせることができる。このような効果は、以下の理由により生じると考えられる。
【0064】
低メトキシルペクチンおよびポリガラクツロン酸は、いずれも、カルボキシル基(すなわち、メチルエステル化されていない部分)が、2価の陽イオンと分子架橋領域を作り、ゲル化することが知られている。一方、記録媒体として紙が使用された場合、紙には、通常、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウムなどの填料を含み、填料の中には、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、またはバリウムイオンなどの2価の陽イオンが含まれている。したがって、インク組成物が紙と接触すると、インク組成物に含まれる低メトキシルペクチンまたはポリガラクツロン酸が、紙に含まれる2価の陽イオンの存在下でゲル化し、熱変色性を示す顔料が、紙に染み込まず紙の表面またはその近傍にとどまりやすくなる。熱変色性を示す顔料が、紙に染み込まず紙の表面またはその近傍にとどまると、単位面積当たりのインク組成物の量を増やして画像を形成した場合でも、滲み又は裏抜けを起こすことなくインク量に応じて画像濃度を増加させることができる。また、熱変色性を示す顔料が、紙に染み込まず紙の表面またはその近傍にとどまると、紙の表面またはその近傍にとどまっている顔料は、効率良く加熱され、変色反応を効率良く引き起こすため、変色に必要な時間を短縮することができる。
【0065】
一方、インク組成物が紙と接触していない状況では、インク組成物に含まれる添加剤と紙に含まれる2価の陽イオンとの反応が起こらず、インク組成物は低い粘度のままであり、インク組成物中の添加剤が、インクの紙への吐出に影響を及ぼすことはない。このため、実施形態に係るインク組成物は、インクの吐出性に影響を及ぼすことなく、紙への吐出後に、紙に含まれる2価の陽イオンと反応して初めて上記効果を発揮することができる。
【0066】
上記のゲル化を生じさせるうえでは、記録媒体は、2価の陽イオンを含んでいる記録媒体であることが望ましく、具体的には、2価の陽イオンを含んでいる紙であることが望ましい。上述のとおり、紙は、通常、填料として2価の陽イオンを含んでいる。
記録媒体は、好ましくは、複写機で一般的に使用されている紙(コピー用紙と呼ばれる)であり、より好ましくは、普通紙である。普通紙は、PPC(Plain Paper Copier)用紙とも呼ばれる。コピー用紙、とりわけ普通紙は、インクが浸透しやすく、滲み又は裏抜けが起こりやすいため、このインク組成物の有用性が特に高い。
【0067】
また、インク組成物は、2価の陽イオンを含まないことが好ましい。上述のとおり、2価の陽イオンは、低メトキシルペクチンやポリガラクツロン酸のゲル化を引き起こし得るため、インク組成物が2価の陽イオンを含んでいない場合、紙と接触する前にインク組成物の粘度が上昇することを確実に防止することができる。なお、インク組成物は、通常の組成によると、2価の陽イオンを含んでいない。
【0068】
また、上記の説明から明らかなように、単位面積当たりのインク組成物の量が多いときに、このインク組成物の有用性は特に高い。例えば、インク組成物をインクジェットプリンタで使用した場合、記録媒体の単位面積あたりのインク組成物の液滴量が、例えば1.0mg/cm2~5.0mg/cm2、好ましくは1.0mg/cm2~4.0mg/cm2であるときに、このインク組成物の有用性は特に高い。
【0069】
2.画像形成装置
上述のインク組成物は、画像形成装置に使用することができる。実施形態に係る画像形成装置は、
「1.インク組成物」の欄で説明したインク組成物を収容した容器と、
前記容器から前記インク組成物を供給され、前記インク組成物を記録媒体へ向けて吐出するインクジェットヘッドと
を備えている。
【0070】
以下、実施形態に係る画像形成装置の一例を、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る画像形成装置の一例を示す模式図である。図2は、図1に示す画像形成装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。
【0071】
図1に示す画像形成装置は、インクジェットプリンタ70である。インクジェットプリンタ70は、例えば記録媒体である用紙Pを搬送しながら、画像形成等の各種処理を行う装置である。
【0072】
インクジェットプリンタ70は、筐体80と、筐体80の上部に設けられた排紙トレイ72と、筐体80内部に設けられた、給紙装置40、搬送装置50、保持ローラ73、保持装置75、供給装置20、除電剥離装置77、クリーニング装置79及び反転装置78とを備えている。
【0073】
給紙装置40は、給紙カセット71と、ピックアップローラ84とを備えている。給紙カセット71は、用紙Pなどの記録媒体を収容する。ピックアップローラ84は、搬送用モータを駆動することで回転する。これにより、給紙カセット71に収容された記録媒体のうち最上層のものがピックアップされる。
【0074】
搬送装置50は、給紙カセット71から保持ローラ73を経由し、排紙トレイ72にわたって形成される搬送路Aに沿って用紙Pを搬送する。
【0075】
搬送装置50は、搬送路Aに沿って設けられた複数のガイド部材81~83や、複数の搬送用ローラ85~89を備えている。搬送用ローラとしては、給紙ローラ対85、レジストローラ対86、分離ローラ対87、搬送ローラ対88、排出ローラ対89が設けられている。これらの搬送用ローラ85~89は、搬送用モータを駆動することで回転する。これにより、用紙Pは、搬送路Aに沿って下流側に送られる。
【0076】
搬送路Aにおけるレジストローラ対86のニップ近傍には、用紙Pの先端位置を検知する用紙位置センサ107が設けられている。さらに、ユーザによって各種の項目が設定可能なオペレーションパネルが設けられている。また、インクジェットプリンタ70の内部には、インクジェットプリンタ70の内部の温度を検出する温度センサ108が設けられている。そのほか、用紙Pの搬送状況を監視するためのセンサなどが各所に配置されている。
【0077】
保持ローラ73は、回転軸90と、アルミニウムからなる円筒状の円筒フレーム91と、円筒フレーム91の表面に形成された絶縁層92とを備えている。円筒フレーム91は、接地されていて、帯電ローラ97による帯電時には対抗電極として電位が0Vに保持される。保持ローラ73は、用紙Pを保持した状態で回転することにより用紙Pを搬送する。ここでは、図1に示される矢印に示される向きに回転することにより、用紙Pを時計回りに搬送する。
【0078】
保持ローラ73の周りには、上流側から下流側に向かって順番に、保持装置75と、供給装置20と、除電剥離装置77と、クリーニング装置79とが設けられている。
【0079】
保持装置75は、用紙Pを保持ローラ73の外面に押圧することで、用紙Pを保持ローラ73の表面(外周面)に吸着させる。保持装置75は、用紙Pを保持ローラ73に対して押圧する押圧装置93と、静電気により用紙Pを保持ローラ73に吸着させる吸着装置94とを備えている。
【0080】
押圧装置93は、回転軸950と、保持ローラ73の表面に対向して配置される押圧ローラ95(押圧部材)と、押圧ローラ95を駆動する押圧モータとを備えている。
【0081】
押圧ローラ95は、回転することにより、保持ローラ73の表面を第1の押圧力で押し付ける第1状態と、第1の押圧力よりも小さい第2の押圧力で押し付ける第2状態と、保持ローラ73から離間して押圧力が解除される第3状態とに遷移する。
【0082】
押圧ローラ95と保持ローラ73間にかかる力は、用紙Pが変形せず、また、画質が低下しないような適正値に設定される。用紙Pが保持ローラ73と押圧ローラ95のニップ部を通過する際に、押圧ローラ95により用紙Pが保持ローラ73に押し付けられる。これにより、用紙Pが保持ローラ73に密着する。
【0083】
押圧ローラ95の外周面は、絶縁材からなる絶縁層951で覆われ、帯電した用紙Pの電荷が押圧ローラ95を介してリークしないようになっている。
【0084】
吸着装置94は、押圧ローラ95の下流側に配置される帯電ローラ97を備えている。帯電ローラ97は、帯電可能な金属製の帯電軸970と帯電軸970の外周に形成された表層部971とを有し、保持ローラ73に対向して配置されている。この帯電ローラ97に対しては、電荷の供給が可能である。また、帯電ローラ97は、保持ローラ73に対して、移動可能になっている。
【0085】
帯電ローラ97が保持ローラ73に近接した状態で、帯電ローラ97に電力が供給されると、帯電ローラ97と接地された円筒フレーム91との間に電位差が生じる。その結果、用紙Pを保持ローラ73に吸着させる方向の静電気力が発生(帯電)する。この静電気力により、用紙Pは、保持ローラ73の表面に吸着する。
【0086】
供給装置20は、保持ローラ73に保持された用紙Pに画像を形成する。供給装置20は、保持ローラ73の上方に配置され、4色の熱消色性インクのための4つのインクジェットヘッド21、22、23、24を備えている。また、供給装置20は、4色の熱消色性インクの各々を収容した容器(図示せず)を備えている。これら熱消色性インクの1以上は、上述したインク組成物である。ここでは、一例として、これら熱消色性インクの全ては、上述したインク組成物であるとする。
4色の熱消色性インクは、それぞれ、4つのインクジェットヘッド21、22、23、24へ供給される。4つのインクジェットヘッド21、22、23、24は、用紙Pにインクを吐出する。例えば、インクジェットヘッド21、22、23、24は、それぞれ、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの熱消色性インクを吐出する。これにより用紙Pに画像が形成される。
【0087】
供給装置20は、図1に示されるとおり、カラー画像を形成できるように、画像形成用インクのための複数のインクジェットヘッドを備えていてもよい。あるいは、供給装置20は、単色の画像を形成できるように、画像形成用インクのための1つのインクジェットヘッドを備えていてもよい。
【0088】
なお、記録媒体に塗布された熱消色性インクを乾燥させるための乾燥装置を、供給装置20の下流に設けてもよい。この乾燥装置は、画像が形成された記録媒体を、消色温度未満の温度に加熱可能なものである。
【0089】
除電剥離装置77は、除電装置101と剥離装置102とを備えている。
除電装置101は、用紙Pの除電を行う。除電装置101は、供給装置20よりも下流側に設けられ、帯電可能な除電ローラ103を備えている。除電装置101は、電荷を供給して用紙Pを除電することで、用紙Pを保持ローラ73から剥離しやすい状態にする。
【0090】
剥離装置102は、除電後に保持ローラ73の表面から用紙Pを剥離する。剥離装置102は、除電装置101の下流側に設けられ、移動可能な分離爪105を備えている。分離爪105は、分離爪105が用紙Pと保持ローラ73の間に挿入される剥離位置と、分離爪105が保持ローラ73から退避する退避位置との間で移動可能である。分離爪105は、剥離位置に配置されたときに、用紙Pを保持ローラ73の表面から剥離する。なお、図1では、剥離位置にある分離爪105が破線で示され、退避位置にある分離爪105が実線で示されている。
【0091】
クリーニング装置79は、保持ローラ73をクリーニングする。クリーニング装置79は、除電剥離装置77よりも下流側に設けられている。クリーニング装置79は、保持ローラ73に当接する当接位置と保持ローラ73から退避する離間位置とで移動動作可能なクリーニング部材と、クリーニング部材を動作させるクリーニングモータとを備えている。クリーニング部材が、保持ローラ73の表面に当接した状態で、保持ローラ73が回転することにより、保持ローラ73の表面がクリーニングされる。
【0092】
反転装置78は、剥離装置102の下流側に設けられ、剥離装置102で剥離された用紙Pを反転させて再び保持ローラ73の表面上に供給する。反転装置78は、例えば用紙Pを前後方向逆にスイッチバックさせる所定の反転経路に沿って用紙Pを案内することにより、用紙Pを反転させる。
【0093】
インクジェットプリンタ70は、図2に示す画像情報入力部100及びコントローラ120を更に備えている。
【0094】
画像情報入力部100は、用紙Pなどの記録媒体に印刷すべき画像情報を外部記録媒体やネットワークから取り込む。画像情報入力部100は、この画像情報をコントローラ120へ供給する。
【0095】
コントローラ120は、記憶部130及び処理部140を含んでいる。記憶部130は、例えば、一次記憶装置(例えば、Random Access Memory;RAM)と二次記憶装置(例えば、Read Only Memory;ROM)とを含んでいる。処理部140は、プロセッサ(例えば、Central Processing Unit;CPU)を含んでいる。二次記憶装置は、例えば、プロセッサが解釈及び実行するプログラムを記憶している。一次記憶装置は、例えば、画像情報入力部100等が供給した画像情報、二次記憶装置が記憶しているプログラム、及びプロセッサが演算処理によって生成したデータ等を一次記憶する。プロセッサは、一次記憶装置が記憶しているプログラムを解釈及び実行する。
【0096】
コントローラ120は、このようにして、画像情報入力部100等から供給された画像情報に基づいて、給紙装置40、供給装置20、及び搬送装置50等の動作を制御する。
【0097】
コントローラ120は、記録のための画像処理を開始し、画像データに対応した画像信号を生成するとともに、給紙装置40及び搬送装置50の各ローラ、供給装置20の各インクジェットヘッド等の動作を制御する制御信号を生成する。
【0098】
上述したインクジェットプリンタ70は、消色装置と組み合わせて使用することができる。消色装置は、非着色印刷層と着色印刷層が形成された記録媒体を、消色温度以上に加熱可能なものである。消色装置は、特に限定されないが、例えば、ヒータなどの加熱装置であってもよいし、摩擦による加熱装置であってもよい。
【0099】
このインクジェットプリンタ70は、熱消色性インクとして、上述したインク組成物を吐出する。それ故、インク組成物に関する説明から明らかなように、このインクジェットプリンタ70は、単位面積当たりのインク量を増やして画像を形成した場合であっても、滲み又は裏抜けを起こすことなく、インク量に応じて画像濃度を増加させることができる。また、このインクジェットプリンタ70によって形成した画像は、単位面積当たりのインク量を増やした場合であっても、加熱による消色を短時間で生じさせることができる。
【0100】
ここでは、画像形成装置の一例としてインクジェット式の画像形成装置について説明したが、画像形成装置はこれに限定されない。画像形成装置としては、例えば、スクリーン印刷、凹版印刷、及び凸版印刷式の印刷法を用いた画像形成装置であってもよい。
【0101】
3.筆記具
ここまでは、インク組成物を画像形成装置に使用する場合について説明したが、インク組成物は筆記具に使用することもできる。以下、インク組成物を筆記具に使用する場合を説明するが、以下の説明では、インク組成物を「筆記具用インキ」と呼ぶ。
【0102】
筆記具用インキに用いられる筆記具用ビヒクル(分散媒)としては、有機溶剤を含む油性ビヒクル、或いは、水と、必要により有機溶剤を含む水性ビヒクルが挙げられる。
【0103】
前記有機溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、チオジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、スルフォラン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等を挙げることができる。
【0104】
前記筆記具用インキとしては、ビヒクル中に剪断減粘性付与剤を含む剪断減粘性インキ、ビヒクル中に水溶性高分子凝集剤を含み、マイクロカプセル顔料を緩やかな凝集状態に懸濁させた凝集性インキを挙げることができる。
【0105】
前記剪断減粘性付与剤を添加することにより、マイクロカプセル顔料の凝集、沈降を抑制することができると共に、筆跡の滲みを抑制することができるため、良好な筆跡を形成できる。
【0106】
更に、前記インキを充填する筆記具がボールペン形態の場合、不使用時のボールとチップの間隙からのインキ漏れを防止したり、筆記先端部を上向き(正立状態)で放置した場合のインキの逆流を防止したりすることができる。
【0107】
前記剪断減粘性付与剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100万乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万~15万の重合体、グルコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8~12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類、N-アルキル-2-ピロリドンとアニオン系界面活性剤の混合物、ポリビニルアルコールとアクリル系樹脂の混合物を例示できる。
【0108】
前記水溶性高分子凝集剤としては、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、水溶性多糖類等が挙げられる。
【0109】
前記水溶性多糖類としてはトラガントガム、グアーガム、プルラン、サイクロデキストリン、水溶性セルロース誘導体等が挙げられ、水溶性セルロース誘導体の具体例としてはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等が挙げられる。
【0110】
更に、筆跡の紙面への固着性や粘性を付与するために適用される水溶性樹脂を添加することができる。
【0111】
前記水溶性樹脂としては、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、スチレンマレイン酸共重合物、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストリン等が挙げられ、好ましくはポリビニルアルコールが用いられる。
【0112】
前記水溶性樹脂の添加量としては、インキ中に0.3~3.0質量%、好ましくは0.5~1.5質量%の範囲で添加される。
【0113】
また、前記インキをボールペンに充填して用いる場合は、オレイン酸等の高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、チオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルメチルエステル)やチオ亜燐酸トリ(アルコキシカルボニルエチルエステル)等のチオ亜燐酸トリエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸モノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルのリン酸ジエステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩等の潤滑剤を添加してボール受け座の摩耗を防止することが好ましい。
【0114】
その他、必要に応じて、炭酸ナトリウム、燐酸ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等のpH調整剤、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、サポニン等の防錆剤、石炭酸、1、2-ベンズチアゾリン3-オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン等の防腐剤或いは防黴剤、尿素、ノニオン系界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等のオリゴ糖類、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、ピロリン酸ナトリウム等の湿潤剤、消泡剤、分散剤、インキの浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン系の界面活性剤を添加してもよい。
【0115】
前記インキの全質量に対し、好ましくは5~40質量%、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは10~30質量%のマイクロカプセル顔料を含有することができる。マイクロカプセル顔料の含有量が上記の範囲であることにより、望ましい発色濃度が達成でき、更にインキ流出性の低下を防止することができる。
【0116】
前記インキを収容するボールペン、マーキングペンについて説明する。
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に剪断減粘性インキを充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したボールペンチップに連通しており、さらにインキの端面には逆流防止用の液栓が密接しているボールペンを例示できる。
【0117】
前記ボールペンチップについて更に詳しく説明すると、金属製のパイプの先端近傍を外面より内方に押圧変形させたボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、或いは、金属材料をドリル等による切削加工により形成したボール抱持部にボールを抱持してなるチップ、金属又はプラスチック製チップ内部に樹脂製のボール受け座を設けたチップ、或いは、前記チップに抱持するボールをバネ体により前方に付勢させたもの等を適用できる。
【0118】
又、前記ボールは、超硬合金、ステンレス鋼、ルビー、セラミック、樹脂、ゴム等の0.3~2.0mm、好ましくは0.3~1.5mm、より好ましくは0.3~1.0mm径程度のものが適用できる。
【0119】
前記インキを収容するインキ収容管は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる成形体、金属製管状体が用いられる。
【0120】
前記インキ収容管にはチップを直接連結する他、接続部材を介して前記インキ収容管とチップを連結してもよい。
【0121】
尚、前記インキ収容管はレフィルの形態として、前記レフィルを樹脂製、金属製等の軸筒内に収容するものでもよいし、先端部にチップを装着した軸筒自体をインキ収容体として、前記軸筒内に直接インキを充填してもよい。
【0122】
また、前記インキ組成物を出没式のボールペンに収容する場合、出没式ボールペンの構造、形状は特に限定されるものではなく、ボールペンレフィルに設けられた筆記先端部が外気に晒された状態で軸筒内に収納されており、出没機構の作動によって軸筒開口部から筆記先端部が突出する構造であれば全て用いることができる。
【0123】
出没機構の操作方法としては、例えば、ノック式、回転式、スライド式等が挙げられる。
【0124】
前記ノック式は、軸筒後端部や軸筒側面にノック部を有し、該ノック部の押圧により、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部を押圧することにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
【0125】
前記回転式は、軸筒後部に回転部を有し、該回転部を回すことによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
【0126】
前記スライド式は、軸筒側面にスライド部を有し、該スライドを操作することによりボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成、或いは、軸筒に設けたクリップ部をスライドさせることにより、ボールペンチップを軸筒前端開口部から出没させる構成を例示できる。
【0127】
前記出没式ボールペンは軸筒内に複数のボールペンレフィルを収容してなり、出没機構の作動によっていずれかのボールペンレフィルの筆記先端部が軸筒前端開口部から出没する複合タイプの出没式ボールペンであってもよい。
【0128】
前記インキ収容管に収容したインキの後端にはインキ逆流防止体が充填される。
前記インキ逆流防止体組成物は不揮発性液体又は難揮発性液体からなる。
【0129】
具体的には、ワセリン、スピンドル油、ヒマシ油、オリーブ油、精製鉱油、流動パラフィン、ポリブテン、α-オレフィン、α-オレフィンのオリゴマーまたはコオリゴマー、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル等があげられ、一種又は二種以上を併用することもできる。
【0130】
前記不揮発性液体及び/又は難揮発性液体は、増粘剤を添加して好適な粘度まで増粘させることが好ましく、前記増粘剤としては表面を疎水処理したシリカ、表面をメチル化処理した微粒子シリカ、珪酸アルミニウム、膨潤性雲母、疎水処理を施したベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土系増粘剤、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属石鹸、トリベンジリデンソルビトール、脂肪酸アマイド、アマイド変性ポリエチレンワックス、水添ひまし油、脂肪酸デキストリン等のデキストリン系化合物、セルロース系化合物等を挙げることができる。
【0131】
更に、前記液状のインキ逆流防止体と、固体のインキ逆流防止体を併用することもできる。
【0132】
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内に繊維集束体からなるインキ吸蔵体を内蔵し、毛細間隙が形成された繊維加工体からなるマーキングペンチップを直接或いは中継部材を介して軸筒に装着してなり、前記インキ吸蔵体とチップが連結されてなるマーキングペンの前記インキ吸蔵体に凝集性インキを含浸させたマーキングペンや、チップの押圧により開放する弁体を介してチップとインキ収容管とを配置し、該インキ収容管内にインキを直接収容させたマーキングペン等を例示できる。
【0133】
前記チップは、繊維の樹脂加工体、熱溶融性繊維の融着加工体、フェルト体等の従来より汎用の気孔率が概ね30~70%の範囲から選ばれる連通気孔の多孔質部材であり、一端を砲弾形状、長方形状、チゼル形状等の目的に応じた形状に加工して実用に供される。
【0134】
前記インキ吸蔵体は、捲縮状繊維を長手方向に集束させたものであり、プラスチック筒体やフィルム等の被覆体に内在させて、気孔率が概ね40~90%の範囲に調整して構成される。
【0135】
また、前記弁体は、従来より汎用のポンピング式形態が使用できるが、筆圧により押圧開放可能なバネ圧に設定したものが好適である。
【0136】
更に、前記ボールペンやマーキングペンの形態は前述したものに限らず、相異なる形態のチップを装着させたり、相異なる色のインキを導出させるペン先を装着させたりした両頭式筆記具であってもよい。
【0137】
なお、前記筆記具用インキ組成物を収容した筆記具を用いて被筆記面に筆記して得られる筆跡は、加熱具又は冷却具により変色させることができる。
前記加熱具としては、抵抗発熱体を装備した通電加熱変色具、温水等を充填した加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられるが、好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
【0138】
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。
なお、消しゴムを使用して筆跡を摩擦することもできるが、摩擦時に消しカスが発生するため、消しカスが殆ど発生しない前述の摩擦部材が好適に用いられる。
【0139】
前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブタジエンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂等が用いられる。
前記摩擦部材は筆記具と別体の任意形状の部材(摩擦体)とを組み合わせて筆記具セットを得ることもできるが、筆記具に摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れる。
【0140】
キャップを備える筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、キャップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、キャップ先端部(頂部)或いは軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)に摩擦部材を設けることができる。
【0141】
出没式の筆記具の場合、摩擦部材を設ける箇所は特に限定されるものではないが、例えば、軸筒自体を摩擦部材により形成したり、クリップを設ける場合はクリップ自体を摩擦部材により形成したり、軸筒開口部近傍、軸筒後端部(筆記先端部を設けていない部分)或いはノック部に摩擦部材を設けることができる。
【0142】
この筆記具は、筆記具用インキとして、上述したインク組成物を含んでいる。それ故、インク組成物に関する説明から明らかなように、この筆記具は、単位面積当たりのインク量を増やして筆記した場合であっても、滲み又は裏抜けを起こすことなく、インク量に応じて画像濃度を増加させることができる。また、この筆記具によって形成した画像は、単位面積当たりのインク量を増やした場合であっても、加熱等による変色を短時間で生じさせることができる。
【実施例0143】
実施例1
実施例1では、画像濃度の評価および裏抜けの評価を行った。
【0144】
[1-1]着色顔料粒子の作製
ロイコ染料としての3-(4-ジエチルアミノ-2-ヘキシルオキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド2質量部、顕色剤としての1,1-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン4質量部、顕色剤としての1,1-ビス(4′-ヒドロキシフェニル)n-デカン4質量部、消色剤としてのデカン酸-4-ベンジルオキシフェニルエチル50質量部からなる成分を均一に加温溶解した。得られた混合物を、カプセル化剤としての芳香族多価イソシアネートプレポリマー30質量部及び助溶剤40質量部と混合し、得られた溶液を10%ポリビニルアルコール水溶液240質量部中に乳化分散し、70℃で約1時間攪拌を続けた。その後、反応剤として水溶性脂肪族変性アミン2.5質量部を加え、更に6時間攪拌を続けて無色のカプセル粒子を得た。さらに、このカプセル粒子分散体を遠心分離後、冷凍庫(-30℃)に入れて発色させ、イオン交換水を添加することで、30wt%の着色顔料粒子を含有する微粒子分散体を得た。得られた微粒子分散体を、上記で説明した「着色顔料粒子の平均粒子径を求める方法」に従って測定したところ、その平均粒子径(メジアン径)は1.3μmであった。完全消色温度は60℃である。
【0145】
[1-2]熱消色性インクの作製
<熱消色性インク1Aの作製>
[1-1]の欄で得た着色顔料粒子16.7質量部、グリセリン30質量部、吐出安定剤として日信化学工業社製のサーフィノール(登録商標)465を1質量部、防腐剤としてLonza社製のプロキセル(登録商標)xL-2を0.2質量部、純水52.1質量部とを混合し、スターラを用いて1時間攪拌し、その後濾過した。これにより、熱消色性インク1Aを得た。
【0146】
<熱消色性インク1Bの作製>
低メトキシルペクチン(エステル化度:12%)(三晶株式会社)0.1質量部を原料に加えたこと以外は、熱消色性インク1Aと同様の方法で熱消色性インク1Bを作製した。熱消色性インク1Bは、低メトキシルペクチンを、熱消色性インク1Bの総質量に対して0.1質量%の量で含んでいる。
【0147】
<熱消色性インク1Cの作製>
低メトキシルペクチン(エステル化度:12%)(三晶株式会社)0.2質量部を原料に加えたこと以外は、熱消色性インク1Aと同様の方法で熱消色性インク1Cを作製した。熱消色性インク1Cは、低メトキシルペクチンを、熱消色性インク1Cの総質量に対して0.2質量%の量で含んでいる。
【0148】
<熱消色性インク1Dの作製>
低メトキシルペクチン(エステル化度:12%)(三晶株式会社)0.4質量部を原料に加えたこと以外は、熱消色性インク1Aと同様の方法で熱消色性インク1Dを作製した。熱消色性インク1Dは、低メトキシルペクチンを、熱消色性インク1Dの総質量に対して0.4質量%の量で含んでいる。
【0149】
<熱消色性インク1Eの作製>
高メトキシルペクチン(エステル化度:70%)(三晶株式会社)0.2質量部を原料に加えたこと以外は、熱消色性インク1Aと同様の方法で熱消色性インク1Eを作製した。熱消色性インク1Eは、高メトキシルペクチンを、熱消色性インク1Eの総質量に対して0.2質量%の量で含んでいる。
【0150】
[1-3]評価方法
熱消色性インク1A~1Eを用いて、画像濃度の評価を行った。また、熱消色性インク1Aおよび1Dを用いて、裏抜けの評価を行った。
ピエゾヘッドを搭載した東芝テック社製のインクジェットプリンタを使用して、熱消色性インクでアルファベットの文字を印字した。記録媒体として普通紙を使用した。
【0151】
各インクについて、記録媒体の単位面積当たりの液滴量を以下のとおり変化させた。
液滴量1: 0.75mg/cm2
液滴量2: 1.50mg/cm2
液滴量3: 2.15mg/cm2
液滴量4: 3.00mg/cm2
このようにして形成した印刷層は、ドライヤで10秒間に亘って加熱することで定着させた。このとき、記録媒体の表面温度は50℃以下であった。
【0152】
画像濃度の評価は、印字面の画像濃度(以下、画像濃度という)をX-Rite Exact(エックスライト社製)により測定することにより行った。裏抜けの評価は、印字面とは反対の面の画像濃度(以下、裏抜け濃度という)をX-Rite Exact(エックスライト社製)により測定することにより行った。
【0153】
[1-4]結果
熱消色性インク1A~1Dを用いた場合の画像濃度の測定結果を図6に示す。図6において、熱消色性インク1Aの結果を黒丸のマークで示し、熱消色性インク1Bの結果を黒三角のマークで示し、熱消色性インク1Cの結果を黒四角のマークで示し、熱消色性インク1Dの結果を×のマークで示す。
また、裏抜け濃度の測定結果を表1に示す。表1において、熱消色性インク1Aの結果を、「低メトキシルペクチンの添加量0%」の欄に示し、熱消色性インク1Dの結果を、「低メトキシルペクチンの添加量0.4%」の欄に示す。
【0154】
【表1】
【0155】
熱消色性インクに低メトキシルペクチンを配合しないと、単位面積当たりの熱変色性インクの液滴量を増やして画像を形成した場合に、液滴量の増加に伴って画像濃度を増加させることができなかった(図6参照)。これに対し、熱消色性インクに低メトキシルペクチンを配合すると、単位面積当たりの熱変色性インクの液滴量を増やして画像を形成した場合に、液滴量の増加に伴って画像濃度を増加させることができた(図6参照)。
【0156】
また、熱消色性インクに低メトキシルペクチンを配合しないと、単位面積当たりの熱変色性インクの液滴量を増やして画像を形成した場合に、液滴量の増加に伴って裏抜け濃度が増加した(表1参照)。これに対し、熱消色性インクに低メトキシルペクチンを配合すると、単位面積当たりの熱変色性インクの液滴量を増やして画像を形成した場合に、液滴量が増加しても裏抜け濃度は増加しなかった(表1参照)。
【0157】
また、熱消色性インク1A、1Cおよび1Eを用いた場合の画像濃度の測定結果を図7に示す。図7において、熱消色性インク1Aの結果を白丸のマークで示し、熱消色性インク1Cの結果を黒四角のマークで示し、熱消色性インク1Eの結果をアスタリスクのマークで示す。
【0158】
熱消色性インクに低メトキシルペクチンを0.2質量%の量で配合すると、単位面積当たりの熱変色性インクの液滴量を増やして画像を形成した場合に、液滴量の増加に伴って画像濃度を増加させることができた(図7参照)。これに対し、熱消色性インクに高メトキシルペクチンを0.2質量%の量で配合しても、単位面積当たりの熱変色性インクの液滴量を増やして画像を形成した場合に、液滴量の増加に伴って画像濃度を増加させることができなかった(図7参照)。
【0159】
<実施例2>
実施例2では、消色性の評価を行った。
【0160】
[2-1]熱消色性インクの作製
<熱消色性インク2Aの作製>
熱消色性インク1Aと同様の方法で熱消色性インク2Aを作製した。
【0161】
<熱消色性インク2Bの作製>
ポリガラクツロン酸(Alfa Aesar)0.2質量部を原料に加えたこと以外は、熱消色性インク1Aと同様の方法で熱消色性インク2Bを作製した。熱消色性インク2Bは、ポリガラクツロン酸を、熱消色性インク2Bの総質量に対して0.2質量%の量で含んでいる。
【0162】
<熱消色性インク2Cの作製>
低メトキシルペクチン(エステル化度:12%)(三晶株式会社)0.2質量部を原料に加えたこと以外は、熱消色性インク1Aと同様の方法で熱消色性インク2Cを作製した。熱消色性インク2Cは、低メトキシルペクチンを、熱消色性インク2Cの総質量に対して0.2質量%の量で含んでいる。
【0163】
[2-2]評価方法
熱消色性インク2A~2Cを用いて、消色性の評価を行った。
ピエゾヘッドを搭載した東芝テック社製のインクジェットプリンタを使用して、熱消色性インクでアルファベットの文字を印字した。記録媒体として普通紙を使用した。記録媒体の単位面積あたりの液滴量は、2.15mg/cm2とした。このようにして形成した印刷層は、ドライヤで10秒間に亘って加熱することで定着させた。このとき、記録媒体の表面温度は50℃以下であった。
【0164】
次に印刷物を70℃、75℃、または80℃に加熱し、消色させた。加熱による消色は、タッキング試験機(株式会社レスカ)を用いて行った。各消色温度において、加熱時間を表2に記載したとおり変化させた。所定の加熱時間後に、消色の程度を目視により評価した。
【0165】
消色の程度は、以下の基準に従って評価した。
A: 完全に全体が消色している
B: ほとんど消色しているが、一部に消え残りがある
C: わずかに薄くなっているが、視認できる程度に発色している
D: 全く色の変化なし
【0166】
[2-3]結果
評価結果を表2に示す。表2は、3つの表に分かれており、上段の表は、消色温度70℃の場合の結果を示し、中段の表は、消色温度75℃の場合の結果を示し、下段の表は、消色温度80℃の場合の結果を示す。各表において、熱消色性インク2Aの結果を、「添加剤なし」の欄に示し、熱消色性インク2Bの結果を、「ポリガラクツロン酸」の欄に示し、熱消色性インク2Cの結果を、「低メトキシルペクチン」の欄に示す。
【0167】
【表2】
【0168】
熱消色性インクにポリガラクツロン酸を配合すると、すべての加熱温度において、消色に必要な時間を短縮することができた(表2参照)。また、熱消色性インクに低メトキシルペクチンを配合すると、すべての加熱温度において、消色に必要な時間を短縮することができた(表2参照)。
【0169】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0170】
20…供給装置、21…インクジェットヘッド、22…インクジェットヘッド、23…インクジェットヘッド、24…インクジェットヘッド、40…給紙装置、50…搬送装置、70…インクジェットプリンタ、71…給紙カセット、72…排紙トレイ、73…保持ローラ、75…保持装置、77…除電剥離装置、78…反転装置、79…クリーニング装置、80…筐体、81…ガイド部材、82…ガイド部材、83…ガイド部材、84…ピックアップローラ、85…給紙ローラ対、86…レジストローラ対、87…分離ローラ対、88…搬送ローラ対、89…排出ローラ対、90…回転軸、91…円筒フレーム、92…絶縁層、93…押圧装置、94…吸着装置、95…押圧ローラ、950…回転軸、951…絶縁層、97…帯電ローラ、970…帯電軸、971…表層部、101…除電装置、102…剥離装置、103…除電ローラ、105…分離爪、107…用紙位置センサ、108…温度センサ、A…搬送路、P…用紙、100…画像情報入力部、120…コントローラ、130…記憶部、140…処理部、t…加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全発色温度、t…加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の発色開始温度、t…加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の消色開始温度、t…加熱消色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全消色温度、T…加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全消色温度、T…加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の消色開始温度、T…加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の発色開始温度、T…加熱発色型の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の完全発色温度、ΔH…ヒステリシス幅
図1
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図7