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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036322
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】圧力検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 19/06 20060101AFI20230307BHJP
   B60T 8/171 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G01L19/06 Z
B60T8/171 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143311
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】兼子 翔輔
【テーマコード(参考)】
2F055
3D246
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB16
2F055CC02
2F055DD20
2F055EE11
2F055FF21
2F055GG49
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA11
3D246GA25
3D246HA45C
3D246LA16Z
3D246LA63A
3D246LA73Z
(57)【要約】
【課題】高圧による圧力センサの耐久性の低下を抑制する。
【解決手段】制動制御装置10の液圧回路13には、シリンダ15内をピストン16が前進することで液圧を発生する電動式のシリンダ機構12が設けられている。シリンダ機構12の出力液圧を検出する圧力検出装置は、シリンダ15に形成された検出ポート28を通じてシリンダ15内に連通する感圧部32を有した第1圧力センサ31を備える。検出ポート28は、ピストン位置が既定値L2以上となるとピストン16により閉鎖される位置に形成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主液路を流れる流体の圧力を検出する圧力検出装置において、
前記主液路に接続されている圧力導入路内に感圧部の一部又は全部が配置され、前記感圧部に加わる前記流体の圧力に応じた信号を出力する圧力センサと、
前記流体の圧力が、前記圧力センサの最大負荷圧よりも小さい既定圧以上である場合に、前記圧力導入路を閉鎖する閉鎖機構と、
を備える圧力検出装置。
【請求項2】
前記圧力センサよりも最大負荷圧が高く、前記主液路に接続されている第2圧力導入路内に第2感圧部の一部又は全部が配置され、前記第2感圧部に加わる前記流体の圧力に応じた信号を出力する第2圧力センサを更に備え、
前記閉鎖機構は、前記流体の圧力が前記既定圧以上である場合であっても、前記第2圧力導入路を閉鎖せずに前記第2感圧部に前記流体の圧力が加わることを維持する
請求項1に記載の圧力検出装置。
【請求項3】
ピストンがシリンダ内を前進することで前記シリンダ内に形成された液室から液圧を発生させるシリンダ機構を更に備え、
前記圧力導入路は、前記液室に接続され、前記シリンダに形成された検出ポートを含んで形成され、
前記閉鎖機構は、前記シリンダと前記ピストンとを含んで構成され、前記液室で発生される液圧が前記既定圧以上の場合に、前記ピストンによって前記検出ポートを閉鎖する
請求項1又は2に記載の圧力検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の圧力を検出する圧力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に見られるように、ホイールシリンダの液圧調整により、車両の制動力を制御する制動制御装置が知られている。同文献の制動制御装置では、ブレーキペダルに連結されたピストンを備えるマスタシリンダが発生する液圧であるマスタ圧の検出結果に基づき、運転者のブレーキペダルの操作量を確認して、ホイールシリンダの液圧調整を行っている。
【0003】
また、同文献の制動制御装置では、マスタ圧を検出する圧力センサとして、2つのセンサを備えている。そのうちの一つは、圧力の検出レンジの上限が高いものの、検出精度が低い高レンジ圧力センサである。もう一つは、圧力の検出レンジの上限が低いものの、検出精度が高い低レンジ圧力センサである。そして、同制動制御装置では、マスタ圧が既定値以下の低圧領域では低レンジ圧力センサの検出値を用いて制動制御を行っている。また、同制動制御装置では、マスタ圧が既定値を超える高圧領域では高レンジ圧力センサの検出値を用いて制動制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-168581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の制動制御装置における低レンジ圧力センサには、検出レンジの上限を超える液圧が加わることがある。一般に圧力センサは、検出レンジの上限を大幅に超える高圧に耐えられるようには設計されていない。そのため、上記従来の制動制御装置の低レンジ圧力センサは、同センサの最大負荷圧を超える高圧が加わって耐久性が低下する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する圧力検出装置は、主液路を流れる流体の圧力を検出する装置であって、主液路に接続されている圧力導入路内に感圧部の一部又は全部が配置され、感圧部に加わる流体の圧力に応じた信号を出力する圧力センサと、流体の圧力が、圧力センサの最大負荷圧よりも小さい既定圧以上である場合に、圧力導入路を閉鎖する閉鎖機構と、を備えている。
【0007】
上記圧力検出装置では、主流路を流れる流体の圧力が既定圧以上となると、閉鎖機構により圧力導入路が閉鎖されて、主流路を流れる流体の圧力が圧力センサの感圧部に伝搬されなくなる。これにより、圧力センサの感圧部に加わる圧力が同圧力センサの最大負荷圧未満の圧力に制限される。したがって、高圧による圧力センサの耐久性の低下が生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】圧力検出装置の一実施形態が適用される制動制御装置の液圧回路の構成を模式的に示す図である。
図2】同実施形態の圧力検出装置に設けられたシリンダ機構のピストン位置と液圧との関係を示すグラフである。
図3】同実施形態の圧力検出装置の制御部が実行するシリンダ機構のピストン位置制御の処理の流れを示す制御ブロック図である。
図4】同実施形態の制御部が制動制御に用いる特性マップにおけるピストン推力と前進量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
圧力検出装置の一実施形態を、図1図4を参照して説明する。
<制動制御装置10の構成>
まず、図1を参照して本実施形態の圧力検出装置が適用される制動制御装置10の構成を説明する。制動制御装置10は、ホイールシリンダ11の液圧調整により車両の制動力を制御する。制動制御装置10は、電動式のシリンダ機構12が設けられた液圧回路13を備えている。シリンダ機構12は、ホイールシリンダ11に液圧を発生させる加圧装置である。液圧回路13には、ブレーキ液を貯留するリザーバタンク14が設けられている。
【0010】
シリンダ機構12は、シリンダ15と、シリンダ15内に直動自在に配置されたピストン16と、を備えている。シリンダ15の内部には、ブレーキ液が導入される液室17がピストン16により区画形成されている。また、シリンダ機構12は、電気モータ18、減速機構19、及び直動変換機構20を備えている。減速機構19は、電気モータ18の回転を減速して直動変換機構20に伝達する。直動変換機構20は、減速機構19から入力された回転をピストン16の直動に変換する。直動変換機構20は、例えば送りねじ機構やボールねじ機構である。
【0011】
シリンダ機構12における液室17の容積は、シリンダ15内でのピストン16の移動位置により変化する。以下の説明では、液室17の容積を縮小する方向へのピストン16の移動を、同ピストン16の前進と記載する。また、以下の説明では、液室17の容積を拡大する方向へのピストン16の移動を、同ピストン16の後退と記載する。さらに、シリンダ15内でのピストン16の移動範囲において液室17の容積が最大となるピストン16の移動位置を、同ピストン16の初期位置と記載する。そして、初期位置から前進方向にピストン16が移動した場合の位置、すなわちピストン16が初期位置から前進した位置をピストン位置と記載する。以下の説明では、初期位置とピストン位置の差を0よりも大きい値を用いて説明する。具体的には、ピストン位置の値が大きいほどピストン16が初期位置から前進方向に離れていることを示す。ピストン16が前進するほど大きい圧力が発生される。したがってピストン位置が大きい値であるほど大きい圧力が発生される。
【0012】
シリンダ15には、入力ポート21及び出力ポート22が形成されている。入力ポート21は、入力配管23を通じてリザーバタンク14に接続されている。出力ポート22は、出力配管24を通じてホイールシリンダ11に接続されている。入力ポート21は、ピストン位置が既定値L1以下のときには液室17に連通している。そして、入力ポート21は、ピストン位置が既定値L1を超えると、ピストン16により閉鎖されて、液室17から遮断される。一方、出力ポート22は、ピストン位置に拘わらず、常に液室17に連通している。以上のように構成されたシリンダ機構12は、ピストン16がシリンダ15内を前進することでホイールシリンダ11に液圧を発生させる。
【0013】
制動制御装置10は、制御部25を備えている。制御部25は、各種制御を実行する1つ又は複数のプロセッサと、制御用のプログラムやデータを記憶したメモリと、を備える電子制御装置である。制御部25には、ブレーキペダル26の踏込量であるペダルストロークSを検出するストロークセンサ27の検出信号が入力されている。また、制御部25には、電気モータ18の回転角を検出する回転角センサ29の検出信号が入力されている。
【0014】
<圧力検出装置の構成>
さらに、制動制御装置10は、シリンダ機構12が発生する液圧を検出する圧力検出装置を備えている。圧力検出装置は、第1圧力センサ31及び第2圧力センサ35の2つの圧力センサを備えている。第1圧力センサ31及び第2圧力センサ35の検出信号は、制御部25に入力されている。第1圧力センサ31と第2圧力センサ35は互いに検出レンジと検出精度が異なるように構成されている。第1圧力センサ31は第2圧力センサ35よりも検出レンジの上限が低い。第1圧力センサ31の最大負荷圧は、第2圧力センサ35の最大負荷圧よりも小さい。以下、最大負荷圧を上限値とも称す。第1圧力センサ31の検出精度は第2圧力センサ35の検出精度よりも高い。次に、夫々のセンサの詳細を説明する。
【0015】
第1圧力センサ31は、シリンダ機構12のシリンダ15の外壁に取り付けられている。第1圧力センサ31は、印加された液圧に応じた信号を出力する感圧部32を有している。本実施形態では、第1圧力センサ31として、ダイアフラム33とそのダイアフラム33に固定された歪みゲージ34とを感圧部32に有した歪みゲージ型の圧力センサを採用している。第1圧力センサ31の感圧部32は、シリンダ15に形成された検出ポート28を通じてシリンダ15の内部に連通されている。検出ポート28は、第1圧力センサ31の圧力の検出位置であるシリンダ15内への開口部である。検出ポート28は、ピストン位置が既定値L2未満の場合には液室17に連通している。一方、検出ポート28は、ピストン位置が既定値L2以上である場合には、ピストン16により閉鎖される。なお、既定値L2は、入力ポート21が液室17に連通した状態と遮断された状態とが切替わるピストン位置である既定値L1よりも大きい値となっている。ここで、ピストン位置が既定値L2のときにシリンダ機構12が発生する液圧を閉鎖液圧PCとする。検出ポート28は、シリンダ機構12によって発生される液圧が閉鎖液圧PC以上である場合にピストン16によって閉鎖されるようにシリンダ15に形成されている。すなわち、ピストン16は、液室17内の液圧が閉鎖液圧PC以上である場合に検出ポート28を閉鎖する。閉鎖液圧PCは、第1圧力センサ31の最大負荷圧よりも小さい圧力である。上述のように、ピストン16が前進するほど大きい圧力が発生される。そのためピストン16が前進するほど第1圧力センサ31には大きな圧力が作用する。シリンダ機構12によって発生される液圧が閉鎖液圧PC以上の場合にはピストン16によって検出ポート28が閉鎖されるので、第1圧力センサ31には閉鎖液圧PCよりも大きい圧力が作用しない。
【0016】
一方、第2圧力センサ35は、印加された液圧に応じた信号を出力する第2感圧部37を有している。本実施形態では、第2圧力センサ35として、ダイアフラム38とそのダイアフラム33に固定された歪みゲージ39とを第2感圧部37に有した歪みゲージ型の圧力センサを採用している。上述のように、第2圧力センサ35は、第1圧力センサ31に比べて、圧力の検出レンジの上限が高いものの、検出精度は低いセンサとなっている。第2圧力センサ35の第2感圧部37は、圧力導入配管36を介して出力配管24に接続されている。
【0017】
図2に、シリンダ機構12の出力液圧とピストン位置との関係を示す。なお、液室17内の液圧、及び出力配管24内の液圧は、いずれもシリンダ機構12の出力液圧を示す。図2における「MAX」は、第1圧力センサ31の圧力の検出レンジの上限値を示している。検出ポート28が液室17に連通した状態と遮断された状態とが切替わるピストン位置である上記既定値L2は、シリンダ機構12の出力液圧が「MAX」となるピストン位置よりも若干小さい値となっている。
【0018】
こうした圧力検出装置では、液室17の内部、出力ポート22、出力配管24、圧力導入配管36が主液路に相当する。また、検出ポート28が、主液路に接続されている圧力導入路に対応する。また第1圧力センサ31において検出ポート28と感圧部32の間で形成される領域も圧力導入路に対応する。このように、感圧部32は圧力導入路に配置されている。感圧部32は圧力を検出可能であれば、その一部のみが圧力導入路に配置されていてもよい。そして、圧力導入配管36が、第2圧力導入路に対応している。第2圧力導入路に対応する圧力導入配管36は、シリンダ機構12の出力液圧が閉鎖液圧PCを超える場合にも連通が維持される。また、本実施形態では、閉鎖液圧PCが既定圧に対応する。そして、ピストン16が、検出位置の液圧が既定圧を超えた場合に、圧力導入路を閉鎖する閉鎖機構に対応する。シリンダ機構12によって発生される液圧が閉鎖液圧PCよりも大きい場合であっても、ピストン16は出力ポート22を閉鎖せずに第2圧力センサ35の第2感圧部37に液圧が加わることを維持する。
【0019】
<制動制御>
次に、図3を参照して、制動制御装置10が実施する制動制御について説明する。図3には、制動制御のために制御部25が実行する処理の流れが示されている。なお、以下の説明では、第1圧力センサ31の液圧の検出値を第1液圧検出値P1と記載する。また、第2圧力センサ35の液圧の検出値を第2液圧検出値P2と記載する。
【0020】
制動制御に際して制御部25は、ペダルストロークS等に基づき目標推力T*を演算する(S100)。目標推力T*は、液室17内のブレーキ液にピストン16が加える力であるピストン推力の目標値である。ピストン推力は、シリンダ機構12の出力液圧にピストン面積Aを乗算した積として表せる。そして、制御部25は、制御部25のメモリに予め記憶された基準特性マップMを用いて、目標推力T*から基準目標ピストン位置LTBを演算する(S110)。なお、ピストン面積Aは、ピストン16において液室17に面する部分の面積である。
【0021】
図4に示すように、基準特性マップMには、シリンダ機構12の基準となる個体におけるピストン位置毎のピストン推力の値が格納されている。基準目標ピストン位置LTBは、シリンダ機構12の特性が基準特性マップMのものと一致する場合に、目標推力T*分のピストン推力が得られるピストン位置を示している。
【0022】
また、制御部25は、回転角センサ29による電気モータ18の回転角の検出値θに基づき、実ピストン位置Lを演算する(S120)。具体的には、初期位置からの電気モータ18の回転角の検出値θに、減速機構19の減速比、及び直動変換機構20のねじリードを乗算した積を、実ピストン位置Lの値として演算している。
【0023】
なお、シリンダ機構12の特性には、個体差や経年変化によるばらつきが存在する。そのため、シリンダ機構12のピストン位置と出力液圧との関係が、基準特性マップMのものとは一致しない場合がある。そこで、本実施形態では、シリンダ機構12の特性のばらつきを補償するため、以下の処理を行う。
【0024】
すなわち、制御部25は、第1液圧検出値P1及び第2液圧検出値P2から液圧検出値P3を演算する(S130)。具体的には、第2液圧検出値P2が既定の第1圧力PA未満の場合には、第1液圧検出値P1を液圧検出値P3の値として演算する。また、第2液圧検出値P2が既定の第2圧力PBを超えている場合には、第2液圧検出値P2を液圧検出値P3の値として演算する。さらに、第2液圧検出値P2が第1圧力PA以上、かつ第2圧力PB以下の場合には、式(1)及び式(2)の関係を満たす値を液圧検出値P3の値として演算する。図2に示されるように、第2圧力PBには、閉鎖液圧PCよりも若干低い圧力が値として設定されている。また、第1圧力PAには、第2圧力PBよりも低い圧力が値として設定されている。
【0025】
【数1】
【0026】
液圧検出値P3の演算後、制御部25は、液圧検出値P3にピストン面積Aを乗算した積(P3×A)を実推力Tの値として演算する(S140)。そして、制御部25は、基準特性マップMを用いて、実推力Tの値分のピストン推力が得られるピストン位置を基準ピストン位置LBの値として演算する(S150)。基準ピストン位置LBは、シリンダ機構12の特性が基準特性マップMと一致するとした場合の液圧検出値P3分の出力液圧が得られるピストン位置を示している。続いて、制御部25は、実ピストン位置Lから基準ピストン位置LBを引いた差(L-LB)を位置補正量ΔLの値として演算する(S160)。こうして演算される位置補正量ΔLは、シリンダ機構12の特性のばらつきによるピストン位置のずれ量を表している。
【0027】
次に、制御部25は、基準目標ピストン位置LTBに位置補正量ΔLを加えた和(LTB+ΔL)を最終目標ピストン位置LTFの値として演算する(S170)。そして、制御部25は、実ピストン位置Lと最終目標ピストン位置LTFとに基づき、シリンダ機構12のピストン位置のPID制御を実施する(S180)ことで、車両の制動制御を行っている。
【0028】
<実施形態の作用効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
制動制御装置10における制御部25は、第1圧力センサ31及び第2圧力センサ35の2つの圧力センサを用いてシリンダ機構12の出力液圧を検出している。また、制御部25は、出力液圧の検出結果に基づきシリンダ機構12の実ピストン位置Lを演算している。そして、制御部25は、実ピストン位置Lの演算結果を用いてシリンダ機構12の特性のばらつき補償を行った上で、シリンダ機構12の制御を行っている。このように、本実施形態の制動制御装置10では、第1圧力センサ31及び第2圧力センサ35の双方の出力に基づき、加圧装置であるシリンダ機構12を制御している。
【0029】
ところで、図2に示すように、ピストン位置の増加と共にシリンダ機構12の出力液圧の変化率が大きくなる。そのため、出力液圧が低い低圧領域では、出力液圧が高い高圧領域に比べて、出力液圧の検出誤差によるピストン位置の演算結果のずれが大きくなり易い。また、車両の自動制動を行う場合には、小制動力領域での緻密な制動力調整が必要となることがある。そのため、低圧領域では、高圧領域よりも高い精度での出力液圧の検出が求められる。検出レンジの上限が高く、しかも検出精度の高い圧力センサは、製造が難しいことから高価となる。
【0030】
一方、出力液圧の検出に用いる2つのセンサのうち、第1圧力センサ31は、検出レンジの上限は低いが検出精度が高いセンサとなっている。これに対して第2圧力センサ35は、検出レンジの上限は高いが検出精度が低いセンサとなっている。そして、本実施形態では、第1圧力PA未満の低圧領域では、第1圧力センサ31によりシリンダ機構12の出力液圧を検出している。一方、第2圧力PBを超える高圧領域では、第2圧力センサ35により、シリンダ機構12の出力液圧を検出している。このように本実施形態では、検出レンジ、検出精度の異なる2種の圧力センサを使い分けることで、低圧領域での高精度の出力液圧の検出を実現している。なお、検出レンジが広く、しかも検出精度の高い圧力センサを用いれば、単一のセンサで同様の要求は満たせる。ただし、そうしたセンサは、製造が難しいため、第1圧力センサ31及び第2圧力センサ35を合わせた分よりも高価となる可能性が高い。
【0031】
ところで、圧力センサの出力特性には、ばらつきがある。そのため、一定の圧力を境に、出力液圧の検出に用いる圧力センサを切替えると、液圧検出値P3が不連続に変化することがある。これに対して、本実施形態では、低圧領域と高圧領域の間に境界領域を設定している。そして、その境界領域では、式(1)及び式(2)の関係を満たす値を液圧検出値P3の値として演算している。これにより、境界領域では、切替前の圧力センサの検出値から切替後の圧力センサの検出値へと徐々に変化していく値として、液圧検出値P3を演算できる。そのため、出力液圧の検出に用いる圧力センサの切り替えに際して、液圧検出値P3が不連続に変化することが抑えられる。
【0032】
なお、こうした制動制御装置10では、シリンダ機構12の出力液圧が、第1圧力センサ31の検出レンジの上限よりも高くなることがある。一方、圧力センサは一般に、検出レンジの上限を大幅に超える高圧に耐えられるように設計されていない。本実施形態では、そうした一般的な圧力センサを第1圧力センサ31として採用している。そのため、第1圧力センサ31の耐圧限界は、制動制御装置10におけるシリンダ機構12の出力液圧の最大値よりも低い圧力となっている。
【0033】
第1圧力センサ31の感圧部32は、検出ポート28を介してシリンダ15内に連通している。検出ポート28は、ピストン位置が既定値L2以上となると、ピストン16により閉鎖される。そして、ピストン16により検出ポート28が閉鎖されると、液室17内の液圧が第1圧力センサ31の感圧部32に伝搬されなくなる。そのため、耐圧限界を超える高圧が加わって、第1圧力センサ31の耐久性が低下することが防止される。なお、本実施形態では、シリンダ15における検出ポート28の開口位置を、液室17内の液圧が第1圧力センサ31の検出レンジの上限である「MAX」となるピストン位置よりも後退方向の位置としている。そのため、第1圧力センサ31の感圧部32に加わる液圧は、第1圧力センサ31の検出レンジの上限未満となっている。
【0034】
なお、本実施形態では、第1圧力センサ31をシリンダ15の外壁に取り付けている。そして、シリンダ15に形成された検出ポート28に、第1圧力センサ31の感圧部32を直接接続している。そのため、シリンダ15内と感圧部32とを配管を介して接続する場合よりも、制動制御装置10の部品点数を減らせる。
【0035】
<実施形態の変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0036】
・静電容量型、ピエゾ抵抗型等の歪みゲージ型以外の圧力センサを、第1圧力センサ31、第2圧力センサ35として採用してもよい。第1圧力センサ31及び第2圧力センサ35は、主流路に接続されている圧力導入路内に感圧部の一部又は全部が配置されており、その感圧部に加わる流体の圧力に応じた信号を出力するセンサであればよい。
【0037】
・上記実施形態では、シリンダ機構12のピストン16が、第1圧力センサ31の圧力導入路である検出ポート28を閉鎖する機構となっていた。それ以外の機構により、圧力導入路の閉鎖を行うようにしてもよい。例えば圧力導入路に電磁弁を設置する。そして、シリンダ機構12の出力液圧が閉鎖液圧PCを超える場合には電磁弁を閉弁するように制御部25が電磁弁の作動制御を行うようにしてもよい。
【0038】
・第2圧力センサ35はシリンダ機構12に取り付けられてもよい。例えば第2圧力センサ35を、シリンダ15の底壁に取り付けるようにしてもよい。この場合、第2圧力センサ35の第2感圧部37と液室17とを連通するポートをシリンダ15の底壁に設ければ、ピストン16により当該ポートが閉鎖されることはない。
【0039】
・シリンダ機構12を、電動式ではなく、ブレーキペダル26に連結されたピストンを有する手動式のシリンダ機構としてもよい。また、シリンダ機構以外の加圧装置、或いは複数の加圧装置により、ホイールシリンダ11の液圧を発生するように制動制御装置10を構成してもよい。
【0040】
・上記実施形態における制動制御装置10の液圧回路13の構成は変更してもよい。また、液圧回路13における液圧の検出位置も変更してもよい。
・第1圧力センサ31及び第2圧力センサ35の2つの圧力センサにより構成された上記実施形態の圧力検出装置を、制動制御装置10の液圧回路13以外の場所の流体の圧力の検出に用いるようにしてもよい。
【0041】
・上記実施形態の圧力検出装置を、圧力導入路に閉鎖機構が設けられた第1圧力センサ31のみで構成するようにしてもよい。
・制御部25は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェアなどの1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。専用のハードウェアとしては、例えば、特定用途向け集積回路であるASICを挙げることができる。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROMなどのメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0042】
10…制動制御装置
11…ホイールシリンダ
12…シリンダ機構
13…液圧回路
14…リザーバタンク
15…シリンダ
16…ピストン
17…液室
18…電気モータ
19…減速機構
20…直動変換機構
21…入力ポート
22…出力ポート
23…入力配管
24…出力配管
25…制御部
26…ブレーキペダル
27…ストロークセンサ
28…検出ポート(圧力導入路)
29…回転角センサ
31…第1圧力センサ(圧力センサ)
32…感圧部
33…ダイアフラム
34…歪みゲージ
35…第2圧力センサ
36…圧力導入配管(第2圧力導入路)
37…第2感圧部
38…ダイアフラム
39…歪みゲージ
図1
図2
図3
図4