(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036328
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ブラケット、伸縮ブーム及び建設機械
(51)【国際特許分類】
B66C 23/687 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
B66C23/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143318
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100139354
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 昌子
(72)【発明者】
【氏名】小坂 恭平
(72)【発明者】
【氏名】小河 祐一
(72)【発明者】
【氏名】花本 貴博
【テーマコード(参考)】
3F205
【Fターム(参考)】
3F205CB20
(57)【要約】
【課題】本発明は、伸縮ブームを伸縮させるためのワイヤロープの端部を保持するブラケットであって、上記ワイヤロープの張力によって変形などすることを抑制できるブラケット、伸縮動作の確実性を向上できる伸縮ブーム、及び効率的な建設作業を行うことができる建設機械を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の一態様は、建設機械のブームを長手方向に伸縮させる伸縮用ワイヤロープの一方の端部を固定するためのブラケットであって、上記ブームに固定され、上記ワイヤロープの一方の端部を係止するための係止孔が形成されている主プレートと、上記主プレートの一方の面側で上記係止孔を挟むように離間して上記ブーム及び上記主プレートに固定されている一対の補強プレートとを備え、上記一対の補強プレートの対向している互いの表面が非平行である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のブームを長手方向に伸縮させる伸縮用ワイヤロープの一方の端部を固定するためのブラケットであって、
上記ブームに固定され、上記ワイヤロープの一方の端部を係止するための係止孔が形成されている主プレートと、
上記主プレートの一方の面側で上記係止孔を挟むように離間して上記ブーム及び上記主プレートに固定されている一対の補強プレートと
を備え、
上記一対の補強プレートの対向している互いの表面が非平行であるブラケット。
【請求項2】
上記一対の補強プレートの対向する互いの表面の距離が、上記主プレートから離間するにつれて離間する請求項1に記載のブラケット。
【請求項3】
上記一対の補強プレートの対向する互いの表面の距離が、上記主プレートから離間するにつれて近接する請求項1に記載のブラケット。
【請求項4】
請求項1、請求項2又は請求項3に記載のブラケットを備える長手方向に伸縮可能な建設機械の伸縮ブーム。
【請求項5】
請求項4に記載の伸縮ブームと、
この伸縮ブームを支持する上部旋回体と、
この上部旋回体を旋回可能に支持する下部走行体と
を備える建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブラケット、伸縮ブーム及び建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
長手方向に伸縮可能なブームを備えるクレーン等の建設機械が知られている。伸縮可能なブームは、一般的に、基端側ブームと、この基端側ブームに入れ子状に配される一又は複数の中間ブームと、この中間ブームに入れ子状に配される先端側ブームとを有する。
【0003】
上記ブームの伸縮は、上記中間ブーム及び上記先端側ブームそれぞれを油圧シリンダユニットで行うものと、例えば特許文献1に示されるように、中間ブームを油圧シリンダユニットで伸縮すると同時に、この中間ブームの伸縮と連動するワイヤロープによって先端側ブームの伸縮を行うものとがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報所載のブームでは、先端側ブームの伸縮用ワイヤロープのうち伸長用ワイヤロープの一方の端部が基端側ブームに固定されている。具体的には、二本の伸長用ワイヤロープの端部を一の止め金具でかしめ、この止め金具を上記基端側ブームに設けられているワイヤ係止部材に固定している。上記伸縮用ワイヤロープには比較的大きな張力がかかるため、上記止め金具を固定している板状のワイヤ係止部材が変形し、さらには破損などするおそれがある。上記ワイヤ係止部材が変形などすると、上記ブームを適切な長さに伸縮することが困難になり、上記ブームを備える建設機械が転倒などするおそれがあり、また、上記ブームの伸縮が困難になることで、建設作業の効率性が低下するおそれがある。
【0006】
上述のような事情を鑑みて、本発明は、伸縮ブームを伸縮させるためのワイヤロープの端部を保持するブラケットであって、上記ワイヤロープの張力によって変形などすることを抑制できるブラケット、伸縮動作の確実性を向上できる伸縮ブーム、及び効率的な建設作業を行うことができる建設機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、建設機械のブームを長手方向に伸縮させる伸縮用ワイヤロープの一方の端部を固定するためのブラケットであって、上記ブームに固定され、上記ワイヤロープの一方の端部を係止するための係止孔が形成されている主プレートと、上記主プレートの一方の面側で上記係止孔を挟むように離間して上記ブーム及び上記主プレートに固定されている一対の補強プレートとを備え、上記一対の補強プレートの対向している互いの表面が非平行である。
【0008】
本発明の他の実施態様は、上記ブラケットを備える長手方向に伸縮可能な建設機械の伸縮ブームである。
【0009】
本発明のさらに他の実施態様は、上記伸縮ブームと、この伸縮ブームを支持する上部旋回体と、この上部旋回体を旋回可能に支持する下部走行体とを備える建設機械である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブラケットは、伸縮用ワイヤロープの張力による変形を抑制することができる。本発明の伸縮ブームは、伸縮動作の確実性を向上できる。本発明の建設機械は、効率的な建設作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態である建設機械を示す模式的側面図である。
【
図2】
図2は、
図1の建設機械が備える伸縮ブームが縮小した状態を示す模式的側面図である。
【
図3】
図3は、
図2の伸縮ブームの一部が伸長した状態を示す模式的側面図である。
【
図4】
図4は、
図2の伸縮ブームが伸長した状態を示す模式的側面図である。
【
図5】
図5は、伸縮可能な四段ブームの第二ブームを示す模式的な部分側面図である。
【
図9】
図9は、
図5の第二ブームのブラケットとは異なるブラケットを示す模式的側面図である。
【
図10】
図10は、
図5、
図9の第二ブームのブラケットとは異なるブラケットを示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、建設機械のブームを長手方向に伸縮させる伸縮用ワイヤロープの一方の端部を固定するためのブラケットであって、上記ブームに固定され、上記ワイヤロープの一方の端部を係止するための係止孔が形成されている主プレートと、上記主プレートの一方の面側で上記係止孔を挟むように離間して上記ブーム及び上記主プレートに固定されている一対の補強プレートとを備え、上記一対の補強プレートの対向している互いの表面が非平行である。
【0013】
当該ブラケットは、主プレートを補強する一対の補強プレートを備えるため、ワイヤロープの張力によって上記主プレートが変形などすることを抑制できる。また、上記一対の補強プレートが、対向している互いの表面が非平行に配設されているため、上記主プレートから伝搬する応力を分散することができ、上記一対の補強プレートが変形などすることを抑制できる。上記一対の補強プレートが、上記主プレートから伝搬する応力を分散するため、上記一対の補強プレートが取り付けられているブームの表面が変形などすることも抑制できる。以上のように、当該ブラケットは、上記ワイヤロープの張力によって変形などすることを抑制できる。
【0014】
上記一対の補強プレートの対向する互いの表面の距離が、上記主プレートから離間するにつれて離間するのが好ましい。このようにすることで、上記一対の補強プレートが変形することをより抑制できる。
【0015】
又は、上記一対の補強プレートの対向する互いの表面の距離が、上記主プレートから離間するにつれて近接するのが好ましい。このようにすることでも、上記一対の補強プレートが変形することをより抑制できる。
【0016】
本発明の他の実施態様は、上記ブラケットを備え長手方向に伸縮可能な建設機械の伸縮ブームである。
【0017】
当該伸縮ブームは、上記ブラケットを備えるため、伸縮動作の確実性を向上できる。
【0018】
本発明のさらに他の実施態様は、上記伸縮ブームと、この伸縮ブームを支持する上部旋回体と、この上部旋回体を旋回可能に支持する下部走行体とを備える建設機械である。
【0019】
当該建設機械は、上記伸縮ブームを備えるため、効率的な建設作業を行うことができる。
【0020】
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。なお、図面は、本発明の説明するための模式的な図であり、各構成(各部材)の形状、縮尺等は、実際のものと異なることがある。
【0021】
[クレーン]
本発明の建設機械は、例えば
図1に示すようなクレーン100であり、長手方向に伸縮可能なブーム10と、この伸縮ブーム10を支持する上部旋回体20と、この上部旋回体20を旋回可能に支持する下部走行体30とを主に備える。
【0022】
下部走行体30は、走行装置として一対のクローラを有し、任意の方向に走行してクレーン100を移動可能にする。上部旋回体20は、下部走行体30上に旋回可能に搭載され、操縦者用キャビン21、伸縮ブーム10を俯仰させるシリンダユニット(不図示)、伸縮ブーム10の先端から垂下される吊荷用ケーブル等を送出及び巻上げる巻上げウインチ(不図示)等を有する。なお、「俯仰する」とは、伸縮ブーム10が、起立状態と倒伏状態との間で揺動することを意味する。
【0023】
〔ブーム〕
伸縮ブーム10は、その基端が上部旋回体20に固定され、上部旋回体20の回転面に対して垂直方向に俯仰する。本実施形態の伸縮ブーム10は、四段のブームで構成されている。具体的には、伸縮ブーム10は、基端が上部旋回体20に固定されている第一ブーム11と、一部が第一ブーム11内に収容可能な第二ブーム12と、一部が第二ブーム12に収容可能な第三ブーム13と、一部が第三ブーム13に収容可能な第四ブーム14とを有する。なお、「基端」とは、伸縮ブーム10の長手方向における上部旋回体20側の端部を意味し、「先端」とは、その反対側の端部を意味する。
【0024】
伸縮ブーム10は、
図2、
図3及び
図4に示すように、第二ブーム12を長手方向に伸縮するための第一シリンダユニット121を第二ブーム12内に内蔵している。第一シリンダユニット121のロッド121aの先端は、第一ブーム11に固定されている。伸縮ブーム10は、第三ブーム13を長手方向に伸縮するための第二シリンダユニット131を第三ブーム13内に内蔵している。第二シリンダユニット131のロッド131aの先端は、第二ブーム12に固定されている。伸縮ブーム10は、第四ブーム14を長手方向に伸長するための伸長用ワイヤロープ15と、この伸長用ワイヤロープ15が架けられる伸長用シーブ132と、第四ブーム14を長手方向に縮小するための縮小用ワイヤロープ16と、この縮小用ワイヤロープ16が架けられる縮小用シーブ133とを有する。
【0025】
本実施形態では、伸長用シーブ132は、第三ブーム13の先端側に設けられている。また、縮小用シーブ133は、第三ブーム13の基端側に設けられている。伸長用ワイヤロープ15は、一端が第二ブーム12の先端側に設けられているブラケット122に係止され、伸長用シーブ132を介して他端が第四ブーム14の基端側に設けられている係止部141に係止されている。係止部141は、伸長用ワイヤロープ15の上記他端と、縮小用ワイヤロープ16の一端とを係止する。縮小用ワイヤロープ16は、上記一端が係止部141に係止され、縮小用シーブ133を介して他端が第二ブーム12の先端側に設けられているブラケット123に係止されている。
【0026】
縮小状態の伸縮ブーム10(
図2)を伸長するには、まず、第一シリンダユニット121のロッド121aを伸長して第二ブーム12を第一ブーム11に対して突出させる(
図3)。次に、第二シリンダユニット131のロッド131aを伸長して第三ブーム13を第二ブーム12に対して突出させる。第三ブーム13が第二ブーム12に対して突出することで、伸長用ワイヤロープ15によって、第四ブームが第三ブーム13から突出する。すなわち、第三ブーム13と第四ブーム14とは、同時に伸長する(
図4)。
【0027】
伸長状態の伸縮ブーム10を縮小するには、まず、第二シリンダユニット131のロッド131aを縮小して第三ブーム13を第二ブーム12に格納する。第三ブーム13が第二ブーム12に格納されることで、縮小用ワイヤロープ16によって、第四ブーム14が第三ブーム13に格納される。すなわち、第三ブーム13と第四ブーム14とは、同時に縮小する。第三ブーム13が第二ブーム12に、第四ブーム14が第三ブーム13にそれぞれ格納されると、第一シリンダユニット121のロッド121aを縮小して第二ブーム12を第一ブーム11に格納する。
【0028】
なお、
図2、
図3及び
図4では、伸長用シーブ132がブーム10の側面に、伸長用ワイヤロープ15の上記一端を係止するブラケット40がブーム10の上面に、縮小用ワイヤロープ16の上記他端を係止するブラケット50がブーム10の下面に設けられるものを図示しているが、これらの配置は特に限定されるものではない。
【0029】
(ブラケット)
以下では、ワイヤロープの端部を係止するブラケットが、四段のブームで構成される伸縮ブームの第二ブームの側面に設けられているもので説明する。
図5、
図6、
図7及び
図8に示すように、ブラケット40,50は、上記ワイヤロープの一方の端部を係止するための係止孔411,511が形成されている主プレート41,51と、この主プレート41,51の一方の面側に配置されている一対の補強プレート42,43,52,53とを備える。上記一対の補強プレート42,43,52,53の対向している互いの表面421,431,521は、非平行である。主プレート41,51及び一対の補強プレート42,43,52,53は、溶接など公知の方法で第二ブーム12の側面に固定されている。
【0030】
本実施形態のブラケット40,50は、第二ブーム12の両側面に形成されている。一対のブラケット40,50は、第二ブーム12の両側面に、第二ブーム12を挟んで対称になるように配置されている。すなわち、一対のブラケット40,50は、第二ブーム12の両側面に同一の形状で形成されている。一対のブラケット40,50は、いずれも伸長用ワイヤロープ150の端部を係止する。すなわち、本実施形態では、伸縮ブーム10は、二本の伸長用ワイヤロープ150と、二つの伸長用シーブ132とを備える。一対のブラケット40,50は、主プレート41,51と、この主プレート41,51を支持するように配置されている一対の補強プレート42,43,52,53とを備える。
【0031】
主プレート41,51は、板状の部材であり、第二ブーム12の先端側の側面に立設している。主プレート41,51の少なくとも一部の表面は、第二ブーム12の長手方向に対して略垂直になるように配設される。第二ブーム12の長手方向に対して垂直になるように配設されている主プレート41,51の上記一部に係止孔411,511が形成されている。この係止孔411,511に伸長用ワイヤロープ150の端部が係止される。第二ブーム12の両側面に伸長用ワイヤロープ150を架けることで、第四ブーム14の伸長をスムーズに行うことができる。
【0032】
主プレート41,51の第二ブーム12の側面からの高さは、係止孔411,511が形成されている部分の高さが最も高く、第二ブーム12の上面側及び下面側に向かうにつれて、高さが低くなるように形成されている。このようにすることで、当該ブラケット40,50の軽量化と低コスト化とを図ることができる。
【0033】
伸長用ワイヤロープ150の一方の端部は、略円筒状の係止用金具60に接続されている。係止用金具60の外周面には、雌螺子が形成されている。この係止用金具60を係止孔411に挿通し、主プレート40の基端側でナット70を螺合することにより、伸長用ワイヤロープ150の一方の端部が主プレート40に係止される(
図5)。主プレート41の基端部側の表面には、係止孔411の周辺を補強するための補強部412が設けられている。なお、
図6、
図7及び
図8では、伸長用ワイヤロープ150、係止用金具60及びナット70の図を省略している。
【0034】
主プレート41,51の基端側には、一対の補強プレート42,43,52,53が配設されている。一対の補強プレート42,43,52,53は、板状の部材であり、主プレート41,51を支持するように第二ブーム12の先端側の側面に立設している。具体的には、一対の補強プレート42,43,52,53は、一部が主プレート41,51に接続され、基端側に延びるように第二ブーム12の先端側の側面に立設している。一対の補強プレート42,43,52,53のうち一方の補強プレート42,52(上側補強プレート42,52)は係止孔411,511の上側に配され、他方の補強プレート43,53(下側補強プレート43,53)は係止孔411,511の下側に配されている。すなわち、係止孔411,511は、上側補強プレート42,52と下側補強プレート43,53との間に位置するように形成されている。
【0035】
補強プレート42,43,52,53の第二ブーム12の側面からの高さは、主プレート41,51に接続している部分の高さが最も高く、主プレート41,51から離間するにつれて、高さが低くなるように形成されている。このようにすることで、当該ブラケット40,50の軽量化と低コスト化とを図ることができる。
【0036】
上側補強プレート42,52及び下側補強プレート43,53の対向している互いの表面は非平行である。本実施形態では、上側補強プレート42,52及び下側補強プレート43,53の対向している互いの表面の距離は、主プレート41,51から離間するにつれて離間している。伸長用ワイヤロープ150により、主プレート41,51には先端側に引っ張られる張力がかかる。主プレート41,51を支持する一対の補強プレート42,43,52,53を、互いの表面が主プレート41,51から離間するにつれて離間するように配設することで、主プレート41,51から伝搬して一対の補強プレート42,43,52,53にかかる応力が分散され、一対の補強プレート42,43,52,53が変形、破損などすることを抑制できる。また、主プレート41,51は、一対の補強プレート42,43,52,53に支持されているため、伸長用ワイヤロープ150の張力によって変形、破損などすることを抑制できる。
【0037】
また、一対の補強プレート42,43,52,53を非平行にすることで、係止用金具60にナット70を螺合するための工具を操作するスペースを確保でき、作業性を向上することができる。
【0038】
本実施形態の一対の補強プレート42,43,52,53は、対向している互いの表面が主プレート41,51から離間するにつれて緩やかに離間している第一離間部分と、この第一離間部分から連続し、主プレート41,51から離間するにつれて大きく離間している第二離間部分とを有する。すなわち、主プレート41,51の基端側の表面から所定の距離に設けられている第一離間部分では、一対の補強プレート42,43,52,53の対向している互いの表面の距離が、比較的小さい率で離間し、上記所定の距離を超えて設けられている第二離間部分では、上記互いの表面の距離が、比較的大きい率で離間している。このようにすることで、一対の補強プレート42,43,52,53にかかる応力をより効果的に分散することができる。
【0039】
本実施形態の上側補強プレート42,52は、基端側の端部が、第二ブーム12の長手方向に対して略垂直になるように配設されている。この略垂直になるように配設された部分には、吊環孔422,522が形成されている。上側補強プレート42,52に吊環孔422,522が形成されることで、伸縮ブーム10を建設機械100から取り外す際に、又は伸縮ブーム10を建設機械100に取り付ける際に、伸縮ブーム10を略平行に吊ることができる。建設機械100は、その大きさによっては、移送する際に重量制約により分解をして移送することがある。上側補強プレート42,52に吊環孔422,522を形成することで、伸縮ブーム10の建設機械100への取り付け及び取り外しを容易に行うことができる。
【0040】
上側補強プレート42,52と下側補強プレート43,53とは、係止孔411,511の軸を中心に対称に形成されていない。すなわち、吊環孔422,522が形成されている上側補強プレート42,52に対して、吊環孔が形成されていない下側補強プレート43,53は、異なる形状で比較的小さく形成されている。このようにすることで、当該ブラケット40,50の軽量化と低コスト化とを図ることができる。
【0041】
上側補強プレート42,52及び下側補強プレート43,53の長さ(主プレート41,51に接続している部分から、主プレート41,51から離間している端部までの距離)としては、特に限定されるものではなく、必要とされる強度などに応じて設計されればよい。上側補強プレート42,52及び下側補強プレート43,53の長さを必要以上に長くすると、当該ブラケット40,50の軽量化と低コスト化とを図ることが困難になるおそれがある。
【0042】
〔利点〕
主プレート41,51は、一対の補強プレート42,43,52,53に支持されているため、伸長用ワイヤロープ150の張力によって変形、破損などすることを抑制できる。一対の補強プレート42,43,52,53は、互いの対向している表面が非平行になるように配設されることで応力が分散されるため、変形、破損などすることを抑制できる。このため、当該ブラケット40,50は、伸長用ワイヤロープ150の張力によって変形、破損などすることを抑制できる。
【0043】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0044】
上述の実施形態では、四段のブームで構成された伸縮ブームの第二ブームに配設されるブラケットについて説明したが、当該ブラケットは、三段のブームで構成される伸縮ブームの第一ブーム(基端側ブーム)、五段以上のブームで構成される伸縮ブームの先端側から三番目のブームに配設してもよい。
【0045】
また、当該ブラケットが配設される箇所は、ブームの側面に限定されるものでなく、ブームの上面又は下面に配設されてもよい。また、当該ブラケットは、ブームの一方の側面に配設されてもよい。
【0046】
上述の実施形態では、ナットで伸長用ワイヤロープの端部を当該ブラケットに係止するもので説明したが、ワイヤロープの端部を係止する方法はこれに限定されるものでなく、その他の公知の方法を用いてもよい。
【0047】
上述の実施形態では、上側補強プレートに吊環孔が形成されるもので説明したが、吊環孔は必須の構成ではない。上側補強プレートと下側補強プレートとは、相似形に形成されてもよい。
【0048】
また、上述の実施形態では、一対の補強プレートの対向する互いの表面の距離が、比較的小さい率で離間する第一離間部分と、比較的大きい率で離間する第二離間部分とを有するもので説明したが、
図9に示すように、上記互いの表面の距離が一定の率で離間するように一対の補強プレート401,402を配設してもよい。
【0049】
又は、
図10で示すように、一対の補強プレート500の対向する互いの表面が、主プレート41から離間するにつれて近接するように配設してもよい。
【0050】
下部走行体は、走行装置として、クローラに換えて車輪を有してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係るブラケットは、変形、破損などが抑制できるため、ワイヤロープを用いて伸縮する建設機械のブームに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0052】
10 伸縮ブーム
11 第一ブーム
12,120 第二ブーム
121 第一シリンダユニット
121a ロッド
122,123 ブラケット
13 第三ブーム
131 第二シリンダユニット
131a ロッド
132 伸長用シーブ
133 縮小用シーブ
14 第四ブーム
141 係止部
15,150 伸長用ワイヤロープ
16 縮小用ワイヤロープ
20 上部旋回体
21 操縦者用キャビン
30 下部走行体
40,50 ブラケット
41,51 主プレート
411,511 係止孔
412 補強部
42,43,52,53,401,402,403,404 補強プレート
421,431,521 表面(一対の補強プレート42,43,52,53の対向している互いの表面)
422,522 吊環孔
60 係止用金具
70 ナット
100 クレーン