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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036332
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】音響システム
(51)【国際特許分類】
   H04R 5/02 20060101AFI20230307BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20230307BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20230307BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230307BHJP
   H04R 3/02 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
H04R5/02 F
G10K15/04 302D
H04R1/02 102B
B60R11/02 M
H04R3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143322
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明善
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓也
【テーマコード(参考)】
3D020
5D011
5D017
5D208
5D220
【Fターム(参考)】
3D020BA10
3D020BA11
3D020BB01
3D020BC03
3D020BC04
3D020BC11
5D011AA13
5D017AE18
5D208CC09
5D220CC06
(57)【要約】
【課題】マイクの位置をフレキシブルに設定すること、及び簡便な機構でハウリングを低減することが可能な音響システムを提供する。
【解決手段】自動車の車室Rで用いられる音響システムであって、第1スピーカーを含む複数のスピーカーと、車室R内に設置され、収音した音に基づいて出力信号を出力するマイク11とを備え、第1スピーカー21に、出力信号に応じた第1サブ信号を含む第1入力信号が入力され、第1スピーカー21とマイク11との距離は、複数のスピーカーに含まれる第1スピーカー21以外の他のスピーカーとマイク11との距離よりも短く、第1スピーカー21と、車室R内に設置されるシートに備わるヘッドレスト51-1との距離は、他のスピーカーとヘッドレスト51-1との距離よりも短い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車室で用いられる音響システムであって、
第1スピーカーを含む複数のスピーカーと、
前記車室内に設置され、収音した音に基づいて出力信号を出力するマイクとを備え、
前記第1スピーカーに、前記出力信号に応じた第1サブ信号を含む第1入力信号が入力され、
前記第1スピーカーと前記マイクとの距離は、前記複数のスピーカーに含まれる前記第1スピーカー以外の他のスピーカーと前記マイクとの距離よりも短く、
前記第1スピーカーと、前記車室内に設置されるシートに備わるヘッドレストとの距離は、前記他のスピーカーと前記ヘッドレストとの距離よりも短い、音響システム。
【請求項2】
前記第1サブ信号は第1音を示し、
前記第1入力信号は、第2音を示す第2サブ信号を含み、
前記第1スピーカーは、前記第1音と前記第2音とを放音する、請求項1に記載の音響システム。
【請求項3】
前記複数のスピーカーは第2スピーカーを含み、
前記第2スピーカーに、前記第1入力信号とは異なる第2入力信号が入力される、
請求項1に記載の音響システム。
【請求項4】
前記第1サブ信号から、前記第2スピーカーから放音される音に対応する信号成分を低減することにより前記第1入力信号を生成する生成部を更に備える、請求項3に記載の音響システム。
【請求項5】
前記第1音は人間の歌唱音であり、前記第2音は、前記歌唱音に対する伴奏音である、請求項2に記載の音響システム。
【請求項6】
前記第1サブ信号は人間の歌唱音を示し、前記第2入力信号は、前記歌唱音に対する伴奏音を示す第2サブ信号を含む、請求項3又は請求項4に記載の音響システム。
【請求項7】
前記第1音は第1の人間の音声であり、前記第2音は、第2の人間の音声である、請求項2に記載の音響システム。
【請求項8】
前記第1サブ信号は第1の人間の音声を示し、前記第2入力信号は、第2の人間の音声を示す第2サブ信号を含む、請求項3又は請求項4に記載の音響システム。
【請求項9】
前記第1スピーカーは、前記ヘッドレストに設置される、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の音響システム。
【請求項10】
前記マイクは、前記車室内のダッシュボード又は天井に設置される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の音響システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラオケが自動車内で楽しまれるようになってきており、車載のカラオケシステムに関する技術も種々開発されている。車載のカラオケシステムでは、ハウリングを低減するため、例えば、左右のドア・スピーカーの中央にマイクを設置し、ドア・スピーカーからマイクに至る帰還伝達系の伝達特性に応じた推定信号を、音信号から減算して第1信号を生成すると共に、第1信号の位相を反転した第2信号を生成するマイク音処理部を設ける技術(引用文献1参照)が開発されている。
【0003】
当該技術においては、左のドア・スピーカーから、第1信号と第1音楽信号とが合成されて生成された第1出力信号に応じた音が放音される。右のドア・スピーカーから、第2信号と第2音楽信号とが合成されて生成された第2出力信号に応じた音が放音される。互いに位相が反転した双方の音がマイク近傍で打ち消されることで、ハウリングが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-049598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に係る技術では、マイクの位置が左右のドア・スピーカーの中央に限定されていた。また、位相反転のための回路が必要となるため、ハウリングを低減するための機構が複雑なものとなっていた。
【0006】
以上の事情を考慮して、本開示のひとつの態様は、マイクの位置をフレキシブルに設定すること、及び簡便な機構でハウリングを低減することが可能な音響システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本開示のひとつの態様に係る音響システムは、自動車の車室で用いられる音響システムであって、第1スピーカーを含む複数のスピーカーと、前記車室内に設置され、収音した音に基づいて出力信号を出力するマイクとを備え、前記第1スピーカーに、前記出力信号に応じた第1サブ信号を含む第1入力信号が入力され、前記第1スピーカーと前記マイクとの距離は、前記複数のスピーカーに含まれる前記第1スピーカー以外の他のスピーカーと前記マイクとの距離よりも短く、前記第1スピーカーと、前記車室内に設置されるシートに備わるヘッドレストとの距離は、前記他のスピーカーと前記ヘッドレストとの距離よりも短い、音響システムである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る音響システム100を搭載した車両の平面図である。
図2】同車両の側面図である。
図3】同実施形態の音響システム100の電気的な構成を示すブロック図である。
図4】第2実施形態の音響システム100Aの電気的な構成を示すブロック図である。
図5】第3実施形態の音響システム100Bの電気的な構成を示すブロック図である。
図6】第4実施形態に係る音響システム100Cを搭載した車両の平面図である。
図7】同車両の側面図である。
図8】同実施形態の音響システム100Cの電気的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、図面において各部の寸法及び縮尺は実際のものと適宜異なる。また、以下に記載する実施の形態は、本発明の好適な具体例である。このため、本実施形態には、技術的に好ましい種々の限定が付されている。しかしながら、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
1.第1実施形態
本実施形態に係る音響システム100は車両C1に用いられる。図1は、本発明の第1実施形態に係る音響システム100を搭載した車両C1の平面図であり、図2は車両C1の側面図である。
【0011】
車両C1の車室Rには、音響システム100の他に、矩形に配置された4つの座席51~54と、天井6と、フロントライトドア71と、フロントレフトドア72と、リアライトドア73と、リアレフトドア74が配置されている。座席51は運転席であり、座席52は助手席であり、座席53は後部右座席であり、更に、座席54は後部左座席である。座席51~54の各々は、布又は革を素材とする材質であり吸音性を有する。座席51~54は、共通の方向を向いている。また、座席51~座席54の各々はヘッドレスト51-1~54-1を備える。
【0012】
音響システム100は、マイク11及び第1スピーカー21を含んで構成されている。第1スピーカー21は、ヘッドレスト51-1内に設置されている。第1スピーカー21は、汎用のヘッドレスト・スピーカーであってよい。
【0013】
マイク11は、音を収音する収音部を備え、収音した音を音信号Maに変換して出力する。なお、収音部は音を収音する構成であればどのようなものであってもよいが、例えば、防風の構造が該当する。マイク11は、車室Rの天井6に配置されており、座席51に着席した利用者の音声を収音する。なお、マイク11を、計器などが取り付けられたダッシュボードの中央に配置してもよい。マイク11の配置個所は、後述の条件を満たす限り、座席51に着席した利用者の音声を収音可能な範囲内であれば、その場所は問わない。
【0014】
図1に示した例では、ヘッドレスト51-1と第1スピーカー21との距離は、第1スピーカー21とマイク11との距離よりも短い。また、車室Rには、第1スピーカー21以外のスピーカーが備わっていてもよい。とりわけ、ヘッドレスト52-1~ヘッドレスト54-1のそれぞれに、ヘッドレスト・スピーカーが備わっていてもよい。この場合、各々のヘッドレスト・スピーカーに対して、独立したアンプが設置されており、各々のヘッドレスト・スピーカーは、独立した音源に基づいて放音してもよい。音響システム100がこのような構成を有することにより、座席51~座席54に着席した利用者毎に異なる音楽を楽しむことが可能となる。
【0015】
図3は、音響システム100の電気的な構成を示すブロック図である。音響システム100は、音信号Maを出力するマイク11、第1スピーカー21、及び音響装置30-1を備える。なお、本明細書において音信号Maは出力信号の一例である。また、音信号Maが示す音は第1音の一例である。
【0016】
音響装置30-1は、マイク11から出力される音信号Maに基づいて、駆動信号D1を生成し、駆動信号D1を第1スピーカー21に出力する。なお、本明細書において、第1スピーカー21に入力される駆動信号D1は、第1入力信号の一例である。また、音響装置30-1は、生成部の一例である。
【0017】
ハウリングは、第1スピーカー21から放音された音がマイク11で収音され正帰還が掛かることによって発生する。具体的には、利用者が音声を発すると、その音声がマイク11で収音され、音響装置30-1で増幅されて第1スピーカー21を駆動する駆動信号D1が生成される。駆動信号D1に基づいて第1スピーカー21から放音された利用者の音声が、マイク11で収音された後、再び増幅され、正帰還が掛かることがハウリングの原因である。
【0018】
しかし、図1及び図2を参照すると、座席51に着席した利用者の頭部は、ヘッドレスト51-1にほぼ接しているため、当該利用者の耳の位置と第1スピーカー21との距離は、マイク11と第1スピーカー21との距離よりも短くなる。本実施形態に係る技術と、第1スピーカー21の代わりにドア・スピーカーを用いる従来技術とを比較する。この比較では、各態様において当該利用者が同じ音量の音声を発することを想定する。本実施形態では従来技術に比較して、当該利用者の聴感上、第1スピーカー21から出力される、マイク11によって収音された音声の音量がより大きく感じられる。従って、当該利用者は、従来技術に比較して、第1スピーカー21から放音される音声の音量を小さくすることが可能となる。このため、第1スピーカー21から放音される音声の音量を、当該利用者にとって適正な音量とした場合に、マイク11で収音される、第1スピーカー21からの音声の音量が、従来技術に比較して抑制される。従って、第1スピーカー21から放音される音声が、マイク11に入力されることによって、ハウリングが発生する可能性が抑制される。
【0019】
音響装置30-1は、マイク音処理部30A-1と信号処理部30B-1とを備える。マイク音処理部30A-1は、音信号Maをアナログ信号からデジタル信号としての音信号Mdに変換するADC31と、効果付与部33-1とを備える。ADC31から効果付与部33-1に対して、デジタル信号としての音信号Mdが出力される。なお、本明細書において、デジタル信号としての音信号Mdは、第1サブ信号の一例である。本実施形態において、第1サブ信号としての音信号Mdは、第1入力信号に含まれる。
【0020】
効果付与部33-1は、音声に対する好適な効果、例えばリバーブやエコーなどの効果をデジタルの音信号Mdに付与することによって、効果付与信号Dedを生成する。このようにマイク音処理部30A-1は、アナログ信号としての音信号Maを、デジタル信号としての音信号Mdに変換した後、効果を付与することにより効果付与信号Dedを生成する。
【0021】
次に、信号処理部30B-1は、効果付与信号Dedをデジタル信号からアナログ信号としての効果付与信号Deaに変換するDAC37-1と、アンプ38-1とを備える。効果付与信号Dedは、DAC37-1でデジタル信号からアナログ信号としての効果付与信号Deaに変換された後、アンプ38-1で増幅され、駆動信号D1として第1スピーカー21に供給される。
【0022】
第1実施形態に係る音響システム100においては、利用者の耳の位置と第1スピーカー21との距離は、マイク11と第1スピーカー21との距離よりも短い。マイク11と第1スピーカー21との位置を上述したように設定することにより、利用者が鼻歌を楽しんだり、或いは英語学習をしたりする場合に、車室Rで発生するハウリングを低減した状態で、気軽に自身の音声をフィードバックさせることが可能となる。
【0023】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態に係る音響システム100Aについて説明する。なお、以下では、音響システム100Aが備える構成要素のうち、音響システム100が備える構成要素と同一の構成要素については同一の符号を用いて示すと共に、その機能の説明については省略することがある。
【0024】
図4に第2実施形態に係る音響システム100Aの電気的構成を示す。音響システム100Aは、通話装置25を備える点、及び音響装置30-1の代わりに音響装置30-2を備える点を除き、図3を参照して説明した第1実施形態の音響システム100と同様に構成されている。
【0025】
通話装置25は、音響システム100Aの利用者が車両C1の外部の人物とハンズフリー通話をするための装置である。通話装置25は、話し相手の音声を示す装置信号Diを生成する。本明細書において、合成部36-1に入力される装置信号Diは、第2サブ信号の一例である。本実施形態において第2サブ信号としての装置信号Diは、第1入力信号に含まれる。
【0026】
音響装置30-2は、第1実施形態に係る音響装置30-1に備わるマイク音処理部30A-1の代わりにマイク音処理部30A-2を備える。また、音響装置30-2は、音響装置30-1に備わる信号処理部30B-1の代わりに信号処理部30B-2を備える。
【0027】
マイク音処理部30A-2は、マイク音処理部30A-1と異なり、効果付与部33-1を備えない。
【0028】
信号処理部30B-2は、DAC37-1の代わりにDAC37-2を、AMP38-1の代わりにAMP38-2を備える。更に、信号処理部30B-2は、合成部36-1を備える。
【0029】
合成部36-1は、マイク音処理部30A-2から取得したデジタル信号としての音信号Mdと、通話装置25から取得した装置信号Diとを合成することによって、合成信号Sdを生成する。合成信号Sdは、DAC37-2でデジタル信号からアナログ信号としての合成信号Saに変換された後、アンプ38-2で増幅され、駆動信号D1として第1スピーカー21に供給される。なお、本明細書において、装置信号Diが示す音は、第2音の一例である。
【0030】
第2実施形態に係る音響システム100Aにおいても、第1実施形態に係る音響システム100と同様に、利用者の耳の位置と第1スピーカー21との距離は、マイク11と第1スピーカー21との距離よりも短い。これにより、利用者が、通話装置25を用いて、車室R内で話し相手とハンズフリー通話をする場合に、車室Rで発生するハウリングを低減した状態で、第1スピーカー21から、自身の音声と話し相手の音声とが合成された音声を聴取することが可能となる。
【0031】
3.第3実施形態
次に、第3実施形態に係る音響システム100Bについて説明する。なお、以下では、音響システム100Bが備える構成要素のうち、音響システム100~100Aが備える構成要素と同一の構成要素については同一の符号を用いて示すと共に、その機能の説明については省略することがある。
【0032】
図5に第3実施形態に係る音響システム100Bの電気的構成を示す。音響システム100Bは、再生装置27-1を備える点、及び音響装置30-1の代わりに音響装置30-3を備える点を除き、図3を参照して説明した第1実施形態の音響システム100と同様に構成されている。
【0033】
再生装置27-1は、例えばCD(Compact Disk)に記録されたデータを読み出し、読み出したデータに基づいて、信号処理部30B-3への装置信号Diを生成する。
【0034】
音響装置30-3は、第1実施形態と同様のマイク音処理部30A-1と、信号処理部30B-3とを備える。
【0035】
信号処理部30B-3は、第2実施形態と同様のDAC37-2及びアンプ38-2を備える。また、信号処理部30B-3は、第2実施形態に備わる合成部36-1とは異なる合成部36-2を備える。更に、信号処理部30B-3は、歌唱成分減衰部35を備える。
【0036】
歌唱成分減衰部35は、装置信号Diに含まれる歌唱成分を所定の割合で減衰させて音楽信号Dsdを生成する。音楽信号Dsdは合成部36-2に入力される。本明細書において、合成部36-2に入力される音楽信号Dsdは、第2サブ信号の一例である。本実施形態において、第2サブ信号としての音楽信号Dsdは、第1入力信号に含まれる。
【0037】
なお、歌唱成分減衰部35は、信号処理部30B-3にとって必須の構成要素ではない。すなわち、信号処理部30B-3は、歌唱成分減衰部35を備えなくてもよい。信号処理部30B-3が歌唱成分減衰部35を備えない場合、再生装置27-1からの装置信号Diがそのまま合成部36-2に入力される。
【0038】
合成部36-2は、マイク音処理部30A-1から取得したデジタル信号としての効果付与信号Dedと、歌唱成分減衰部35から取得した音楽信号Dsdとを合成して合成信号Sdを生成する。なお、信号処理部30B-3が歌唱成分減衰部35を備えない場合には、合成部36-2は、効果付与信号Dedと、再生装置27-1から取得した装置信号Diとを合成して合成信号Sdを生成する。合成信号Sdは、DAC37-2でデジタル信号からアナログ信号としての合成信号Saに変換された後、アンプ38-2で増幅され、第1スピーカー21に供給される。
【0039】
第3実施形態に係る音響システム100Bにおいても、第1実施形態に係る音響システム100と同様に、利用者の耳の位置と第1スピーカー21との距離は、マイク11と第1スピーカー21との距離よりも短い。これにより、利用者が、再生装置27を用いて、車室R内でカラオケを楽しむ場合に、車室Rで発生するハウリングを低減した状態で、第1スピーカー21から、自身の歌声とカラオケの伴奏音とが合成された音声を聴取することが可能となる。
【0040】
なお、上述した第3実施形態では、モノラル形式の音響システム100Bを一例として説明したが、音響システム100Bはステレオ形式であってもよい。この場合、ヘッドレスト51-1に、2個の第1スピーカー21を配置する。2個の第1スピーカー21の一方には、右チャネル用の駆動信号D1が供給され、他方には左チャネル用の駆動信号D1が供給される。
【0041】
4.第4実施形態
次に、第4実施形態に係る音響システム100Cについて説明する。なお、以下では、音響システム100Cが備える構成要素のうち、音響システム100~100Bが備える構成要素と同一の構成要素については同一の符号を用いて示すと共に、その機能の説明については省略することがある。
【0042】
図6に本発明の第4実施形態に係る音響システム100Cを搭載した車両C2の平面図を示す。図7に車両C2の側面図を示す。音響システム100Cは、第1スピーカー21に加えて、第2スピーカー22を備える。第2スピーカー22は、フロントライトドア71に配置されるドア・スピーカーである。
【0043】
第1スピーカー21とマイク11との距離は、第2スピーカー22とマイク11との距離よりも短い。また、ヘッドレスト51-1と第1スピーカー21との距離は、ヘッドレスト51-1と第2スピーカー22との距離よりも短い。また、車室Rには、第1スピーカー21及び第2スピーカー22以外のスピーカーが備わっていてもよい。
【0044】
図8は、音響システム100Cの電気的な構成を示すブロック図である。音響システム100Cは、音信号Maを出力するマイク11、第1スピーカー21、第2スピーカー22、再生装置27-2、及び音響装置30-4を備える。なお、本明細書において、第2スピーカー22に入力される駆動信号D2は、第2入力信号の一例である。
【0045】
音響装置30-4は、マイク音処理部30A-3と、信号処理部30B-1と、信号処理部30B-4とを備える。マイク音処理部30A-3は、音信号Maをアナログ信号からデジタル信号としての音信号Mdに変換するADC31と、基準信号Drefを用いてハウリング成分を除去するハウリングキャンセラ32と、効果付与部33-2と、歌唱成分減衰部35を備える。
【0046】
歌唱成分減衰部35は、装置信号Diに含まれる歌唱成分を所定の割合で減衰させた音楽信号Dsdを出力する。適応フィルタ321には、その音楽信号Dsdが基準信号Drefとして入力される。
【0047】
なお、第3実施形態と同様、マイク音処理部30A-3にとって、歌唱成分減衰部35は必須の構成要素ではない。すなわち、マイク音処理部30A-3は、歌唱成分減衰部35を備えなくてもよい。
【0048】
ハウリングキャンセラ32は、音信号Mdから、第2スピーカー22から放音される音の成分を減算する。ハウリングキャンセラ32は、適応フィルタ321、設定部322及び減算部323を備える。適応フィルタ321は、第2スピーカー22からマイク11に至る帰還伝達系の伝達特性を模擬し、この伝達特性に応じた推定信号Eを出力する。具体的には、適応フィルタ321には、歌唱成分減衰部35から基準信号Drefが入力される。適応フィルタ321によって、基準信号Drefに上記伝達特性が付与された推定信号Eが得られる。この例の伝達特性は、第2スピーカー22からマイク11に至る帰還伝達系の伝達特性である。この伝達特性は帰還伝達系で発生する遅延及び反射等を含む。適応フィルタ321は、典型的にはFIR(Finite Impulse Response)フィルタであり、特に図示しないが、縦続接続された複数個の遅延要素と、遅延要素の各出力に係数を乗算する複数個の乗算器と、各乗算器の出力同士の和を求めて出力する加算器とを含む。
【0049】
減算部323は、マイク11による音信号Mdから、適応フィルタ321から出力される推定信号Eを減算する。なお、設定部322は、減算信号Rdが、すなわち音信号Mdから推定信号Eを減算した結果が小さくなるように、適応フィルタ321における各係数を適応的に設定する。このため、窓の開閉や利用者が座る座席などによって、上記伝達特性が時間的に刻々と変化しても、適応フィルタ321の特性が当該変化に合わせて逐次更新されることになる。
【0050】
信号処理部30B-1は、第1実施形態と同様の信号処理部30B-1である。効果付与信号Dedは、DAC37-1でデジタル信号からアナログ信号としての効果付与信号Deaに変換された後、アンプ38-1で増幅され、駆動信号D1として第1スピーカー21に供給される。
【0051】
信号処理部30B-4は、信号処理部30B-1と同様の信号処理部30B-4である。
【0052】
また、信号処理部30B-4は、歌唱成分減衰部35から入力される音楽信号Dsdをデジタル信号からアナログ信号としての音楽信号Dsaに変換するDAC37-3と、アンプ38-3とを備える。
【0053】
音楽信号Dsdは、DAC37-3でデジタル信号からアナログ信号としての音楽信号Dsaに変換された後、アンプ38-3で増幅され、駆動信号D2として第2スピーカー22に供給される。
【0054】
第4実施形態に係る音響システム100Cにおいても、第1実施形態に係る音響システム100と同様に、利用者の耳の位置と第1スピーカー21との距離は、マイク11と第1スピーカー21との距離よりも短い。また、第1スピーカー21とマイク11との距離は、第2スピーカー22とマイク11との距離よりも短い。また、利用者の耳の位置と第1スピーカー21との距離は、利用者の耳の位置と第2スピーカー22との距離よりも短い。更に、音響システム100Cは、ハウリングキャンセラ32を備える。
【0055】
従来技術では、ドア・スピーカーから、利用者が発する音声と、再生装置から出力される音声との双方が並行して出力されていた。更に、本実施形態における第1スピーカー21と利用者の耳との距離に比較して、従来技術に係るドア・スピーカーと利用者の耳との距離は遠い。このため、利用者が、スピーカーから放音される自身の音声を聴取する場合、本実施形態に係る第1スピーカー21に比較して、従来技術に係るドア・スピーカーでは、より高い音圧で放音しないと、利用者自身の発する音声を同程度の音量で聴取できなかった。より高い音圧で放音するため、ドア・スピーカーから放音される音声の音量を上げすぎてしまうと、ドア・スピーカーから放音された音声がマイクで収音されることに起因して、ハウリングが発生していた。一方、本実施形態における音響システム100Cにおいては、従来技術に比較して、ドア・スピーカーとしての第2スピーカー22から放音される音声の音量を上げすぎる必要はない。更に、音響装置30-4は、ハウリングキャンセラ32を備える。ハウリングキャンセラ32によって、マイク11によって収音された音のうち、第2スピーカー22から放音された音の成分が減衰される。従って、第2スピーカー22→マイク11→第1スピーカー21→マイク11といった正帰還ループのゲインが低減する。
そのため、利用者が再生装置27を用いて、車室R内でカラオケを楽しむ場合、車室Rで発生するハウリングを低減した状態で、第1スピーカー21から自身の歌声を、第2スピーカー22からカラオケの伴奏音を聴取することが可能となる。
なお、上述した第4実施形態では、モノラル形式の音響システム100Cを一例として説明したが、音響システム100Cはステレオ形式であってもよい。この場合、2個の第2スピーカー22を用いる。一方の第2スピーカー22はフロントライトドア71に配置され、他方の第2スピーカー22はフロントレフトドア72に配置される。フロントライトドア71に配置される第2スピーカー22には、右チャネル用の駆動信号D2が供給される。フロントレフトドア72に配置される第2スピーカー22には、左チャネル用の駆動信号D2が供給される。
【0056】
3.変形例
以上の実施態様は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0057】
3-1.変形例1
例えば、マイク11と、第1スピーカー21及び第2スピーカー22との間に、遮蔽物が存在してもよい。音響システム100~100Cがこのような構成を有することにより、ハウリングが発生する可能性をより抑制することが可能となる。
【0058】
3-2.変形例2
マイク11と、第1スピーカー21及び第2スピーカー22とは、指向性を有していてもよい。より詳細には、マイク11は、利用者の音声を収音する方向に指向性を有していることが好適である。また、第1スピーカー21及び第2スピーカー22は、放音の向きが、利用者に向いていると同時に、マイク11から逸れる向きであることが好適である。これらにより、ハウリングが発生する可能性を低減できる。
【0059】
3-3.変形例3
第4実施形態に係る音響システム100Cは、再生装置27-2を備え、第2スピーカー22からカラオケの伴奏音が放音される構成であったが、本発明の実施形態に係る構成はこれには限定されない。例えば、本変形例3に係る音響システムは、再生装置27-2の代わりに、第2実施形態に係る音響システム100Aに備わる通話装置25を備え、第2スピーカー22から話し相手の音声が放音される構成としてもよい。
【0060】
4.付記
上述した実施形態等から、例えば以下のような態様が把握される。
【0061】
本開示の態様(第1態様)に係る音響システム100~100Cは、自動車の車室Rで用いられる音響システム100~100Cであって、第1スピーカー21を含む複数のスピーカーと、車室R内に設置され、収音した音に基づいて出力信号としての音信号Maを出力するマイク11とを備える。また、当該音響システム100~100Cにおいて、第1スピーカー21に、上記の出力信号としての音信号Maに応じた第1サブ信号としての音信号Mdを含む第1入力信号としての駆動信号D1が入力される。また、第1スピーカー21とマイク11との距離は、複数のスピーカーに含まれる第1スピーカー21以外の他のスピーカーとマイク11との距離よりも短い。更に、第1スピーカー21と、車室R内に設置されるシートに備わるヘッドレスト51-1との距離は、他のスピーカーとヘッドレスト51-1との距離よりも短い
【0062】
音響システム100~100Cがこの構成を有することにより、マイク11の位置をフレキシブルに設定すること、及び、通常、自動車に車載されている要素を用いた簡便な機構でハウリングを低減することが可能となる。第1スピーカー21とマイク11との距離は、複数のスピーカーに含まれる第1スピーカー21以外の他のスピーカーとマイク11との距離よりも短い。これにより、他のスピーカーから放音される音は、第1スピーカー21から放音される音に比較して、マイク11により収音されにくい。また、第1スピーカー21と、車室R内に設置されるシートに備わるヘッドレスト51-1との距離は、他のスピーカーとヘッドレスト51-1との距離よりも短い。これにより、他のスピーカーから放音される音は、第1スピーカーから放音される音に比較して、座席51に着席している人間の耳には聞こえにくい。
【0063】
また、第1態様の例(第2態様)において、第1サブ信号としての音信号Mdは第1音を示す。第1入力信号としての駆動信号D1は、第2音を示す第2サブ信号としての装置信号Diを含む。第1スピーカー21は、第1音と第2音とを放音する。
【0064】
音響システム100~100Bがこの構成を有することにより、人間の音声と、他の音とをミキシングした上で、第1スピーカー21から放音することが可能となる。とりわけ、車両C1の車室Rで、例えばハンズフリーのカラオケシステムや通話システムを利用することが可能となる。
【0065】
また、第1態様の例(第3態様)において、複数のスピーカーは第2スピーカー22を含み、第2スピーカー22に第1入力信号としての駆動信号D1とは異なる第2入力信号としての駆動信号D2が入力される。
【0066】
音響システム100Cがこの構成を有することにより、第1スピーカー21から人間の音声を放音し、第2スピーカー22から他の音を放音することが可能となる。とりわけ、車両Cの車室Rで、例えばハンズフリーのカラオケシステムや通話システムを利用することが可能となる。
【0067】
また、第1態様の例(第4態様)は、第1サブ信号としての音信号Mdから、第2スピーカー22から放音される音に対応する信号成分を低減することにより第1入力信号としての駆動信号D1を生成する音響装置30-4を更に備えてもよい。
【0068】
音響システム100Cがこの構成を有することにより、第2スピーカー22から放音された音をマイク11が収音し、マイク11によって収音された音が第1スピーカー21から放音され、更に第1スピーカー21から放音された音をマイク11が収音することによるハウリングを抑制することが可能となる。
【0069】
また、第1態様の例(第5態様)において、第1音は人間の歌唱音であり、第2音は、歌唱音に対する伴奏音である。
【0070】
音響システム100Bがこの構成を有することにより、車両C1の車室Rで、ハンズフリーのカラオケシステムを利用することが可能となる。
【0071】
また、第1態様の例(第6態様)において、第1サブ信号としての音信号Mdは人間の歌唱音を示し、第2入力信号としての駆動信号D2は、歌唱音に対する伴奏音を示す第2サブ信号としての音楽信号Dsdを含む。
【0072】
音響システム100Cがこの構成を有することにより、車両C2の車室Rで、ハンズフリーのカラオケシステムを利用することが可能となる。
【0073】
また、第1態様の例(第7態様)において、第1音は第1の人間の音声であり、第2音は、第2の人間の音声である。
【0074】
音響システム100Aがこの構成を有することにより、車両C1の車室Rで、ハンズフリーの通話システムを利用することが可能となる。
【0075】
また、第1態様の例(第8態様)において、第1サブ信号としての音信号Mdは第1の人間の音声を示し、第2入力信号としての駆動信号D2は、第2の人間の音声を示す第2サブ信号としての装置信号Diを含む。
【0076】
音響システム100Bがこの構成を有することにより、車両C1の車室Rで、ハンズフリーの通話システムを利用することが可能となる。
【0077】
また、第1態様の例(第9態様)において、第1スピーカー21は、ヘッドレスト51-1に設置される。
【0078】
音響システム100~100Cがこの構成を有することにより、第1スピーカー21をヘッドレスト以外の場所に設置した場合に比較して、第1スピーカー21を、人間の耳からより近い位置に設置することが可能となる。
【0079】
また、第1態様の例(第10態様)において、マイク11は、車室R内のダッシュボード又は天井6に設置される。
【0080】
音響システム100~100Cがこの構成を有することにより、マイク11がダッシュボードに設置されている場合、車両C1又はC2の運転席又は助手席の人間が、本発明の音響システム100~100Cを利用することが可能となる。マイク11が天井6に設置されている場合、車両C1又はC2の運転席又は助手席の人間及び後部座席の人間が、本発明の音響システム100~100Cを利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0081】
6…天井、11…マイク、21…第1スピーカー、22…第2スピーカー(ドア・スピーカー)、25…通話装置、27…再生装置、30…音響装置、30A…マイク音処理部、30B…信号処理部、31…ADC、32…ハウリングキャンセラ、33-1、33-2…効果付与部、35…歌唱成分減衰部、36-1、36-2…合成部、37-1、37-2、37-3…DAC、38-1、38-2、38-3…アンプ、51~54…座席、51-1~54-1…ヘッドレスト、71…フロントライトドア、72…フロントレフトドア、73…リアライトドア、74…リアレフトドア、100~100C…音響システム、321…適応フィルタ、322…設定部、323…減算部、351…歌唱成分減衰部、
図1
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図3
図4
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図6
図7
図8