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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036336
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】流量検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/696 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
G01F1/696 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143329
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】坂谷 哲則
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
【テーマコード(参考)】
2F035
【Fターム(参考)】
2F035EA09
(57)【要約】
【課題】 流量検出装置の一例を開示する。
【解決手段】 ポンプ2が稼働しているときにケーシング2B内を流通する水の温度上昇度を検出する温度センサ11A、11Bと、温度センサ11A、11Bにより検出された検出上昇温度、及び予め記憶されている上昇温度と流量との関係を利用して吐出し流量を決定する演算装置12とを備える。これにより、ポンプ2の吐出し流量と水の温度上昇度との間の相関関係を利用してポンプ2の送水量を検出できる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インペラをケーシング内で回転させることにより、流体を吸い込み・吐き出すポンプに適用される流量検出装置において、
前記ポンプが稼働しているときに前記ケーシング内を流通する流体の温度上昇度を検出する上昇温度検出器と、
前記上昇温度検出器により検出された検出上昇温度、及び予め記憶されている上昇温度と流量との関係を利用して吐出し流量を決定する流量決定部と
を備える流量検出装置。
【請求項2】
前記上昇温度検出器は、
前記ポンプの吐出し口側にて流体の温度を検出する温度センサ、並びに
吐出し温度と吸込み温度との温度差を前記検出上昇温度とする上昇温度決定部を有しており、
前記上昇温度決定部は、
前記ポンプが稼働しているときに前記温度センサにより検出された温度を前記吐出し温度とする機能、並びに
前記ポンプが停止しているときに前記温度センサにより検出された温度を前記吸込み温度とみなす機能
を発揮可能である請求項1に記載の流量検出装置。
【請求項3】
前記上昇温度検出器は、
前記ポンプの吐出し口側に設けられ、前記ケーシング内の流体を排出するための開閉弁、並びに
吐出し温度と吸込み温度との温度差を前記検出上昇温度とする上昇温度決定部を有しており、
前記上昇温度決定部は、
前記ポンプが稼働しているときに前記温度センサにより検出された温度を前記吐出し温度とする機能、並びに
前記ポンプが停止しているときに前記開閉弁を開いて前記ケーシング内の流体を排出するとともに、当該開閉弁を開いた時から予め決められた時間を経過したときの前記温度センサにより検出された温度を前記吸込み温度とみなす機能
を発揮可能である請求項1に記載の流量検出装置。
【請求項4】
前記上昇温度検出器は、
前記ポンプの吐出し口側にて流体の温度を検出する温度センサ、並びに
吐出し温度と吸込み温度との温度差を前記検出上昇温度とする上昇温度決定部を有しており、
前記上昇温度決定部は、
前記ポンプが稼働しているときに前記温度センサにより検出された温度を前記吐出し温度とする機能、
前記温度センサにより検出された温度の時間に対する変化率であって、前記ポンプが起動した時の変化率を起動時変化率としたとき、
前記起動時変化率が負である場合に、前回のポンプ起動時に決定された前記吸込み温度を今回の吸込み温度とみなす機能、並びに
前記起動時変化率が負でない場合に、今回のポンプ起動時に前記温度センサにより検出された温度を今回の吸込み温度とみなす機能
を発揮可能である請求項1に記載の流量検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インペラをケーシング内で回転させることにより、流体を吸い込み・吐き出すポンプに適用される流量検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の流量検出装置では、流体の流路に電気ヒータが配置され、当該電気ヒータの温度差を維持するために必要な電力量に基づいて流量を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-41789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、特許文献1に記載の流量検出装置と異なる技術的思想にて流量を検出する流量検出装置の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者等は、ポンプの吐出し流量と流体の温度上昇度との間に相関関係をあることを詳細な試験により発見した。そして、本願に係る流量検出装置は、当該発見に基づく発明である。
【0006】
すなわち、インペラをケーシング内で回転させることにより、流体を吸い込み・吐き出すポンプに適用される流量検出装置は、例えば、ポンプが稼働しているときにケーシング内を流通する流体の温度上昇度を検出する上昇温度検出器(11)と、上昇温度検出器(11)により検出された検出上昇温度(ΔT)、及び予め記憶されている上昇温度と流量との関係を利用して吐出し流量を決定する流量決定部(12)とを備えることが望ましい。
【0007】
これにより、当該流量検出装置は、ポンプの吐出し流量を検出することが可能となる。
【0008】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る給水装置及び流量検出装置を示す図である。
図2】温度差と給水量との関係を示すグラフである。
図3】第2実施形態に係る給水装置及び流量検出装置を示す図である。
図4】第2実施形態に係る演算装置の作動を示すフローチャートである。
図5】第3実施形態に係る給水装置及び流量検出装置を示す図である。
図6】第3実施形態に係る演算装置の作動を示すフローチャートである。
図7】第4実施形態に係る演算装置の作動を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0011】
なお、各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び各部材又は部位の形状を理解し易くするために記載されたものである。したがって、本開示に示された発明は、各図に付された方向に限定されない。
【0012】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された流量検出装置は、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素、並びに図示された構造部位を備える。
【0013】
(第1実施形態)
<1.給水装置等の概要>
本実施形態は、例えば、工業用給水装置(以下、給水装置という。)に本開示に係る流量検出装置の一例が適用されたものである。給水装置1は、図1に示されるように、ポンプ2、電動モータ3、受水槽4、逆止弁5及び流量検出装置10等を少なくとも備える。
【0014】
ポンプ2は、インペラ2A及びケーシング2Bを有する渦流型のポンプである。インペラ2Aは、ケーシング2B内で高速回転することにより渦流を発生させて水を吸い込んで吐き出す。電動モータ3は、インペラ2Aを回転させる動力を発生する。
【0015】
受水槽4は、ポンプ2により吸い込まれる水が貯留されたタンクである。当該受水槽4内に貯留される水の水位は、ポンプ2の吐出し口より高い位置に保持される。このため、ポンプ2の吸込み口には、常に、正の押込圧力が作用している。
【0016】
逆止弁5は、ポンプ2の吐出し口側に配置され、ポンプ2から吐き出された水がポンプ2内に逆流することを防止する。なお、本実施形態では、受水槽4の水位がポンプ2の吐出し口より高い位置に保持されているため、ポンプ2が停止した状態であっても、逆止弁5より下側にある水が受水槽4側に逆流することはない。
【0017】
流量検出装置10は、ポンプ2の送水量を検出する。なお、流量検出装置10にて検出された流量は、例えば、電動モータ3、つまりポンプ2の回転速度制御及び停止制御に利用される。
【0018】
<2.流量検出装置の詳細>
流量検出装置10は、ポンプ2が稼働しているとき、つまりインペラ2Aが回転しているときにケーシング2B内を流通する水の温度上昇度を利用して送水量を検出する。
【0019】
すなわち、発明者等は、詳細な試験により、温度上昇度(以下、温度差ΔTという。)と送水量Qとの間には、例えば図2に示されるような相関関係があることを発見した。したがって、流量検出装置10は、温度差ΔTを検出し、当該検出された温度差ΔTを利用して送水量Qを演算にて算出する。
【0020】
具体的には、流量検出装置10は、図1に示されるように、上昇温度検出器11及び演算装置12等を有して構成されている。上昇温度検出器11は、温度差ΔTを検出するための検出器である。
【0021】
なお、温度差ΔTは、ポンプ2から吐き出される水の温度(以下、吐出し温度Tdという。)とポンプ2に吸い込まれる水の温度(以下、吸込み温度Tsという。)との差である。このため、本実施形態では、2つの温度センサ11A、11Bにより上昇温度検出器
11が構成されている。
【0022】
温度センサ11Aは、ポンプの吐出し口側にて水の温度を検出する。温度センサ11Bは、ポンプの吸込み口側にて水の温度を検出する。2つの温度センサ11A、11Bの検出信号は、演算装置12に入力されている。
【0023】
演算装置12は、温度センサ11Aの検出信号を利用して吐出し温度Tdを把握し、温度センサ11Bの検出信号を利用して吸込み温度Tsを把握する。そして、演算装置12は、吐出し温度Tdと吸込み温度Tsとの差を温度差ΔTとして把握した後、当該温度差ΔTを変数とする関数値として送水量Qを演算・決定する。
【0024】
なお、演算装置12は、CPU、ROM及びRAM等を有するマイクロコンピュータにて構成されている。当該演算装置12の不揮発性記憶部(図示せず。)には、温度差ΔTと送水量Qとの関係式が予め記憶されている。
【0025】
そして、演算装置12は、不揮発性記憶部に予め記憶されているソフトウェアに従って2つの温度センサ11A、11Bの検出信号を利用して温度差ΔTを演算した後、送水量Qを決定する。
【0026】
<3.本実施形態に係る流量検出装置の特徴>
本実施形態に係る流量検出装置10では、温度差ΔTを利用して送水量Qを演算にて決定する。これにより、連続的に変化する送水量を検出することが可能となる。
【0027】
(第2実施形態)
上述の実施形態に係る流量検出装置10は、2つの温度センサ11A、11Bの検出信号を利用して温度差ΔTを検出した。これに対して、本実施形態に係る流量検出装置10は、図3に示されるように、温度センサ11Bが廃止され、温度センサ11Aの検出信号が演算装置12に入力されている。
【0028】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。以下の説明は、上述の実施形態に係る流量検出装置との相違点に関する説明である。
【0029】
<1.吐出し温度Td及び吸込み温度Tsの決定>
本実施形態に係る演算装置12は、以下の2つの機能が実行可能である。
【0030】
(1)ポンプ2が稼働しているときに温度センサ11Aにより検出された温度を吐出し温度Tdとする機能
(2)ポンプ2が停止しているときに温度センサ11Aにより検出された温度を吸込み温度Tsとみなす機能
すなわち、ポンプ2が停止しているときには、受水槽4からポンプ2の吐出し口に至る流路において、水の温度が略均一であるとみなすることが可能である。このため、ポンプ2が停止しているときに温度センサ11Aにより検出された温度は、受水槽4からポンプ2に吸い込まれる水の温度、つまり吸込み温度Tsとみなすことが可能である。
【0031】
図4は、本実施形態に係る送水量Qの演算制御フローの一例を示す。当該演算制御フローを実行するためのソフトウェアは、不揮発性記憶部に予め記憶されている。なお、本演算制御フローは、自動運転モードが選択された時に起動し、自動運転モードが終了したときに停止する。
【0032】
自動運転モードとは、ポンプ2の作動、つまり電動モータ3の回転速度及び停止がポンプ制御部(図示せず。)により制御される運転モードである。自動運転モードは、作業者による手動選択されたときに実行される。
【0033】
なお、本実施形態に係る自動運転モードでは、給水装置1の送水先に設けられた水槽タンク内の水位が第1所定水位未満となったときにポンプ2が稼働し、当該水位が第2所定水位を超えたときにポンプ2が停止する。
【0034】
そして、演算制御フローが起動すると、演算装置12は、ポンプ2が稼働中であるか否かを判断する(S20)。なお、演算装置12は、ポンプ制御部からモータ駆動部(図示せず。)に出力される指令信号を利用してポンプ2が起動中であるか否かを判断する。
【0035】
そして、ポンプ2が稼働中でない、つまりポンプ2が停止していると判断された場合には(S20:NO)、演算装置12は、温度センサ11Aにより検出された温度(以下、検出温度という。)を吸込み温度Tsとする(S22)。
【0036】
ポンプ2が稼働中であると判断された場合には(S20:YES)、演算装置12は、検出温度を吐出し温度Tdとするとともに(S21)、S22にて決定された吸込み温度Ts及びS21にて決定された吐出し温度Tdを利用して温度差ΔTを演算する(S23)。
【0037】
なお、S22は、ポンプ2が起動するまで繰り返し実行される。したがって、本実施形態に係る吸込み温度Tsは、ポンプ2が起動する直前に温度センサ11Aにて検出された温度となる。
【0038】
次に、演算装置12は、S23にて決定された温度差ΔTを変数とする関数fを利用して給水量Qを演算・決定する(S24)。なお、当該決定された給水量Qは、ポンプ制御部に入力される。
【0039】
<2.本実施形態に係る流量検出装置の特徴>
例えば、2つの温度センサ11A、11Bを用いて温度差ΔTを決定する場合、基準となる温度を温度センサ11Aにて測定した場合の検出値と、当該基準となる温度を温度センサ11Bにて測定した場合の検出値とが同一である必要がある。
【0040】
したがって、仮に、基準となる温度に対する温度センサ11Aの検出値と当該基準となる温度に対する温度センサ11Bの検出値とが異なると(以下、基準相違という。)、正確な温度差ΔTを検出することができない。
【0041】
これに対して、本実施形態では、ポンプ2の吐出し口側にて流体の温度を検出する温度センサ11Aを利用して吸込み温度Tsを決定する。このため、上記のような基準相違に起因した技術的な課題が原理的に発生しない。
【0042】
(第3実施形態)
第1実施形態に係る流量検出装置10は、2つの温度センサ11A、11Bの検出信号を利用して温度差ΔTを検出した。これに対して、本実施形態に係る流量検出装置10は、図5に示されるように、温度センサ11Bが廃止され、温度センサ11Aの検出信号が演算装置12に入力され、かつ、電動式の開閉弁13が設けられている。
【0043】
開閉弁13は、ポンプ2の吐出し口側に設けられ、ケーシング2B内の水を外部に排出するためのバルブである。そして、当該開閉弁13の開閉作動は、演算装置12により制
御される。
【0044】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。以下の説明は、上述の実施形態に係る流量検出装置との相違点に関する説明である。
【0045】
<1.吐出し温度Td及び吸込み温度Tsの決定>
本実施形態に係る演算装置12は、以下の2つの機能が実行可能である。
【0046】
(1)ポンプが稼働しているときの検出温度を吐出し温度Tdとする機能
(2)ポンプが停止しているときに開閉弁13を開いてケーシング2B内の水を排出するとともに、当該開閉弁13を開いた時から予め決められた時間を経過したときの検出温度を吸込み温度Tsとみなす機能
なお、上記「予め決められた時間」とは、例えば、ケーシング2B内の容積に相当する水を排出する必要な時間に、ケーシング2Bの温度及び温度センサ11Aの温度が受水槽4内の水温と同一温度まで低下するために必要時間が加算された時間である。
【0047】
図6は、本実施形態に係る送水量Qの演算制御フローの一例を示す。当該演算制御フローを実行するためのソフトウェアは、不揮発性記憶部に予め記憶されている。なお、本演算制御フローは、自動運転モードが選択された時に起動し、自動運転モードが終了したときに停止する。
【0048】
演算制御フローが起動すると、演算装置12は、ポンプ2が停止中であるか否かを判断する(S30)。ポンプ2が停止中していると判断された場合には(S30:YES)、演算装置12は、開閉弁13を開く(S31)。
【0049】
そして、開閉弁13が開かれた時からの経過時間が予め決められた時間(本実施形態では、約60秒)経過したときに(S32:YES)、演算装置12は、開閉弁13を閉じた後(S33)、検出温度を吸込み温度Tsとする(S34)。
【0050】
なお、S31~S34は、ポンプ2が起動するまで繰り返し実行される。したがって、本実施形態に係る吸込み温度Tsは、ポンプ2が起動する直前に温度センサ11Aにて検出された温度となる。
【0051】
ポンプ2が停止中でない、つまりポンプ2が稼働中であると判断された場合には(S30:NO)、演算装置12は、検出温度を吐出し温度Tdとするとともに(S35)、S34にて決定された吸込み温度Ts及びS35にて決定された吐出し温度Tdを利用して温度差ΔTを演算する(S36)。
【0052】
次に、演算装置12は、S36にて決定された温度差ΔTを変数とする関数fを利用して給水量Qを演算・決定する(S37)。そして、当該決定された給水量Qは、ポンプ制御部に入力される。
【0053】
なお、ポンプ制御部は、ポンプ2を起動させる際には、開閉弁13を閉じる指令信号を出力した後にポンプ2を現実に起動する。このため、開閉弁13が開かれた時から60秒以内にポンプ2が起動する場合には、ポンプ制御部は、開閉弁13を閉じる。
【0054】
<2.本実施形態に係る流量検出装置の特徴>
ポンプ2が停止した直後等においては、当該停止するまでポンプ2が稼働していため、ポンプ2(特に、ケーシング2B)の温度、及びケーシング2B内に残留している水の温
度が上昇している。
【0055】
このため、当該水の温度を吸込み温度Tsとすると、適切な温度差ΔTを検出することができない。これに対して、本実施形態では、開閉弁13を開いた時から予め決められた時間を経過したときの検出温度を吸込み温度Tsとみなす。
【0056】
このため、開閉弁13を開いた時から予め決められた時間を経過したときには、ポンプ2(特に、ケーシング2B)の温度、及びケーシング2B内の水温が受水槽4内の水温相当まで低下している。したがって、当該タイミングで検出した検出温度を吸込み温度Tsとすれば、適切な温度差ΔTを検出することが可能となる。
【0057】
(第4実施形態)
本実施形態は、第2実施形態の変形例である。すなわち、本実施形態に係る流量検出装置10は、第2実施形態と同様に、温度センサ11Bが廃止され、温度センサ11Aの検出信号が演算装置12に入力されている(図3参照)。
【0058】
なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。以下の説明は、第2実施形態に係る流量検出装置との相違点に関する説明である。
【0059】
<1.吐出し温度Td及び吸込み温度Tsの決定>
本実施形態に係る演算装置12は、以下の3つの機能が実行可能である。
【0060】
(1)ポンプ2が稼働しているときの検出温度を吐出し温度Tdとする機能
(2)起動時変化率dT/dtが負である場合に、前回のポンプ起動時に決定された吸込み温度Tsを今回の吸込み温度Tsとみなす機能
(3)起動時変化率dT/dtが負でない場合に、今回のポンプ起動時の検出温度を今回の吸込み温度Tsとみなす機能
なお、起動時変化率dT/dtとは、検出温度の時間に対する変化率であって、ポンプ2が起動した時の変化率をいう。因みに、本実施形態に係る演算装置12は、非常に短いサンプリング周期、つまり連続的なサンプリングとみなすことが可能な程度に短い周期にて検出温度を読み込んでいる。
【0061】
このため、本実施形態に係る演算装置12は、ポンプ2が起動した時に読み込んだ検出温度と当該読み込んだ検出温度の1つ前に読み込んだ検出温度との差を起動時変化率dT/dtとしている。
【0062】
「ポンプ2が起動した時」とは、例えば、(a)ポンプ2が現実に起動した時、(b)ポンプ2を起動させる条件が成立した時、(c)ポンプ制御部がポンプ起動させる指令信号を発信した時、又は(d)停止中のポンプ2が起動したと演算装置12が認識した時をいう。
【0063】
「起動時変化率dT/dtが負である」とは、起動時変化率dT/dtが下降傾向であるとみなすことが可能な状態をいう。このため、起動時変化率dT/dt<0であっても、起動時変化率dT/dtの絶対値が小さく、起動時変化率dT/dtが略0であるとみなすことが可能な状態は、起動時変化率dT/dtが負でない場合に相当する。
【0064】
図7は、本実施形態に係る送水量Qの演算制御フローの一例を示す。当該演算制御フローを実行するためのソフトウェアは、不揮発性記憶部に予め記憶されている。なお、本演算制御フローは、自動運転モードが選択された時に起動し、自動運転モードが終了したと
きに停止する。
【0065】
演算制御フローが起動すると、演算装置12は、ポンプ2が停止中であるか否かを判断する(S40)。ポンプ2が停止中していると判断された場合には(S40:YES)、演算装置12は、ポンプ2が起動したか否かを判断する(S41)。
【0066】
そして、ポンプ2が起動したと判断された場合には、演算装置12は、起動時変化率dT/dtを演算した後(S42)、その起動時変化率dT/dtが0以上であるか否か、つまり起動時変化率dT/dtが負でないか否かを判断する(S43)。
【0067】
起動時変化率dT/dtが負でないと判断された場合には(S43:YES)、演算装置12は、ポンプ2が起動した時の検出温度を吸込み温度Tsとして決定するとともに、当該吸込み温度TsをRAM等に記憶する(S44)。
【0068】
起動時変化率dT/dtが負であると判断された場合には(S43:NO)、演算装置12は、前回のポンプ起動時に決定された吸込み温度Tsを今回の吸込み温度Tsとして決定するとともに、当該吸込み温度TsをRAM等に記憶する(S45)。
【0069】
なお、仮に、前回のポンプ起動時に決定された吸込み温度Tsが記憶されていなかった場合には、ポンプ2が起動した時の検出温度を吸込み温度Tsとして決定するとともに、当該吸込み温度TsをRAM等に記憶する。
【0070】
そして、演算装置12は、検出温度を吐出し温度Tdとするとともに(S46)、S44又はS45にて決定された吸込み温度Ts及びS46にて決定された吐出し温度Tdを利用して温度差ΔTを演算する(S47)。
【0071】
次に、演算装置12は、S47にて決定された温度差ΔTを変数とする関数fを利用して給水量Qを演算・決定する(S48)。そして、当該決定された給水量Qは、ポンプ制御部に入力される。
【0072】
なお、S40にてポンプ2が停止中でない、つまりポンプ2が稼働中であると判断された場合には(S40:NO)、演算装置12は、S46を実行する。このため、ポンプ2が停止するまで給水量Qの演算が繰り返される。
【0073】
<2.本実施形態に係る流量検出装置の特徴>
起動時変化率dT/dtが負でない場合には、ポンプ2(特に、ケーシング2B)の温度及びケーシング2B内の水温が、受水槽4内の水温相当まで低下したとみなすことが可能である。
【0074】
したがって、起動時変化率dT/dtが負でない場合に、今回のポンプ起動時の検出温度を今回の吸込み温度Tsとすれば、適切な吸込み温度Tsを得ることができ得るので、適切な温度差ΔTを検出することが可能となる。
【0075】
また、起動時変化率dT/dtが負である場合には、ポンプ2(特に、ケーシング2B)の温度及びケーシング2B内の水温が、受水槽4内の水温相当まで低下していない可能性が高い。このため、本実施形態では、起動時変化率dT/dtが負である場合には、前回のポンプ起動時に決定された吸込み温度Tsを今回の吸込み温度Tsとしている。
【0076】
なお、前回のポンプ起動時においても起動時変化率dT/dtが負であった可能性がある。この場合には、前々回のポンプ起動時に決定された吸込み温度Tsが前回の吸込み温
度Tsとして決定されている。
【0077】
同様に、前々回のポンプ起動時においても起動時変化率dT/dtが負であった可能性がある。この場合には、前々々回のポンプ起動時に決定された吸込み温度Tsが前回の吸込み温度Tsとして決定されている。
【0078】
つまり、起動時変化率dT/dtが負でない場合に限り、吸込み温度Tsが前回の吸込み温度Tsと異なる温度となる。このため、起動時変化率dT/dtが負である場合には、起動時変化率dT/dtが負でない場合が発生したときの吸込み温度Tsであって、直近の吸込み温度Tsが今回の吸込み温度Tsとして用いられる。
【0079】
そして、直近の吸込み温度Tsは、現時の受水槽4内の水温相当とみなすことが可能である。したがって、適切な吸込み温度Tsを得ることができ得るので、適切な温度差ΔTを検出することが可能となる。
【0080】
(その他の実施形態)
第1実施形態では、2つの温度センサ11A、11Bにより温度差ΔTを検出した。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、熱電対の一方の接点を吐出し側に接触させ、他方の接点を吸込側に接触させることにより、ゼーベック効果を利用して温度差ΔTを検出してもよい。
【0081】
第3実施形態では、ポンプ2内の水を排出することにより、温度センサ11Aが検出する温度が現時の受水槽4内の水温相当となるようにした。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ポンプ停止後、予め決められた時間が経過したときの検出温度を吸込み温度Tsとしてもよい。
【0082】
上述の実施形態に係る給水装置は、受水槽方式の給水装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ポンプ2の吸い込み側に水道圧が直接的に作用する直結給水方式の給水装置であってよい。
【0083】
上述の実施形態は、給水装置用の流量検出装置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示に係る流量検出装置は、例えば、給水装置以外のポンプ装置にも適用可能である。
【0084】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1… 給水装置
2… ポンプ
3… 電動モータ
4… 受水槽
5… 逆止弁
10… 流量検出装置
11… 上昇温度検出器
11A… 温度センサ
11B… 温度センサ
12… 演算装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7