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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036360
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/239 20180101AFI20230307BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230307BHJP
   F21W 103/10 20180101ALN20230307BHJP
   F21W 103/55 20180101ALN20230307BHJP
   F21W 103/45 20180101ALN20230307BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230307BHJP
【FI】
F21S43/239
F21S2/00 435
F21W103:10
F21W103:55
F21W103:45
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143365
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】花見 梢太
【テーマコード(参考)】
3K244
【Fターム(参考)】
3K244AA04
3K244BA09
3K244CA03
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA12
3K244EC17
3K244ED03
3K244ED07
3K244ED08
3K244ED14
3K244ED27
(57)【要約】
【課題】導光体の反射ステップにより形成される発光パターンのバリエーションを増やし、意匠的効果の高い発光を行うことが可能な車両用灯具を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの面(光反射面)12に複数の反射ステップ14が形成され、光源21から入射された光を導光するとともに導光した光を反射ステップ14において反射して他の面(光出射面)11から出射する導光体1を備える。反射ステップ14は異なるサイズの反射ステップ141~143を備え、これら反射ステップ141~143で反射された光の光量が相違する。複数の反射ステップ141~143は反射する光の発散角度が同じである。
【選択図】 図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの面に複数の反射ステップが形成され、光源から入射された光を導光するとともに導光した光を前記反射ステップにおいて反射して他の面から出射する導光体を備える車両用灯具であって、前記反射ステップは異なるサイズの反射ステップを備え、これら反射ステップで反射された光の光量が相違することを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記複数の反射ステップは、反射する光の発散角度が同じである請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記複数の反射ステップは導光体の面に凹設された球面状の凹部で構成され、その径寸法Rと深さDの比(R/D)は一定である請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記発光パターンは、それぞれ複数の反射ステップで反射された光で形成された複数の発光パターンを備える請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記複数の発光パターンは、相対的にサイズの大きな反射ステップにより形成される明るさの高い発光パターンと、相対的にサイズの小さな反射ステップにより形成される明るさの低い発光パターンで構成される請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記複数の発光パターンは、明るさの低い発光パターンが影パターンとされて明るさの高いパターンが立体的に視認される請求項5に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記導光体は板状に形成され、少なくとも一つの端面から前記光源の光が入射され、この面に交差する一方の板面に前記複数の反射ステップが形成され、この一方の板面と反対側の他方の板面から前記反射ステップで反射された光を出射する構成である請求項1ないし6のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記導光体の前記他方の板面の一部は、出射される光を拡散する光拡散面として形成されている請求項7に記載の車両用灯具。
【請求項9】
少なくとも一つの面に複数の反射ステップが形成され、光源から入射された光を導光するとともに導光した光を前記反射ステップにおいて反射して他の面から出射する導光体を備える車両用灯具であって、前記導光体の前記他の面の一部は、出射される光を拡散する光拡散面として形成されていることを特徴とする車両用灯具。
【請求項10】
前記導光体は板状に形成され、一方と他方の板面のそれぞれに反射ステップが形成され、各反射ステップで反射された光をそれぞれ反対側の板面から出射する構成であり、各板面から出射された光をそれぞれ同一方向に向けて反射する第1と第2の反射鏡を備える請求項1又は2に記載の車両用灯具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に配設される灯具に関し、特に導光体を用いた意匠的効果の高い車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用灯具の一つとして、灯具の一部に導光体を配設し、光源の光を導光体に入射するとともに、導光体の内部を導光された光を当該導光体に設けた反射ステップで反射して灯具の前方に向けて照射する構成の灯具が提案されている。特許文献1には、導光体の前面に反射ステップを形成し、当該導光体の内部を導光される光を反射ステップで反射して導光体の後面から出射させ、さらにこの出射した光をリフレクタで反射して灯具の前方に向けて照射させる灯具が提案されている。特許文献1によれば、導光体を略均一な明るさで面発光に近い形態で発光して見えるようにした灯具が得られる。
【0003】
また、特許文献2には、光学部材(導光体)に形成した複数の反射ステップによりそれぞれ特定の方向に向けて反射される光の強度を高め、この強度が高められた複数の光を発光面に配列させることにより、ストライプ状に明るさが高められた発光パターンを形成する構成の灯具が提案されている。
【0004】
さらに、特許文献3には、導光体に形状や寸法を相違させた複数の反射ステップを形成した灯具が提案されている。この技術は各反射ステップの光反射方向を相違させることにより灯具の発光面を車両正面に対して左右対称な明るさにするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-235729号公報
【特許文献2】特開2020-24867号公報
【特許文献3】特開2020-77470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2の技術は、いずれも導光体に形成される反射ステップは均一構成であり、反射する光の光量はいずれの反射ステップにおいても略同じである。また、特許文献3の技術は、異なる形状やサイズの反射ステップが形成されているが、各反射ステップで反射する光の光量については特に相違させてはおらず略同じである。
【0007】
このように、特許文献1~3の技術は、いずれも反射ステップで反射した光で明るさが均一な発光パターン、あるいは所要のパターン形状をした発光パターンを形成することは可能であるが、各反射ステップで反射して導光体から出射される光の光量を相違させて発光パターンを形成することについては特に考慮されていない。そのため、形成される発光パターンのバリエーションに乏しく、意匠的効果の高い発光を行うことは難しい。
【0008】
本発明の目的は、導光体の反射ステップにより形成される発光パターンのバリエーションを増やし、意匠的効果の高い発光を行うことが可能な車両用灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも一つの面に複数の反射ステップが形成され、光源から入射された光を導光するとともに導光した光を反射ステップにおいて反射して他の面から出射する導光体を備える車両用灯具であって、反射ステップは複数の同じサイズ及び異なるサイズの反射ステップを備え、これらの反射ステップは反射する光の光量が相違することを特徴とする。
【0010】
本発明において、複数の光反射ステップは、反射する光の発散角度が同じであることが好ましい。例えば、複数の反射ステップは導光体の面に凹設された球面状の凹部で構成され、その径寸法Rと深さDの比(R/D)は一定である。
【0011】
また、本発明においては、発光パターンは、それぞれ複数の反射ステップで反射された光で形成された複数の発光パターンを備える。この場合において、複数の発光パターンは、相対的にサイズの大きな反射ステップにより形成される明るさの高い発光パターンと、相対的にサイズの小さな反射ステップにより形成される明るさの低い発光パターンで構成される。例えば、複数の発光パターンは、明るさの低い発光パターンが影パターンとされて明るさの高いパターンが立体的に視認される。
【0012】
本発明の好ましい形態として、導光体は板状に形成され、少なくとも一つの端面から光源の光が入射され、この面に交差する一方の板面に複数の反射ステップが形成され、この一方の面と反対側の他方の板面から反射ステップで反射された光を出射する構成とされる。また、導光体の他の面の一部は、出射される光を拡散する光拡散面として形成されることが好ましい。あるいは、他の形態として、導光体は、一方と他方の板面のそれぞれに反射ステップが形成され、各反射ステップで反射された光をそれぞれ反対側の板面から出射する構成であり、各板面から出射された光をそれぞれ同一方向に向けて反射する第1と第2の反射鏡を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導光体の反射ステップにより形成される発光パターンを、例えば明るさの異なる発光パターンのように多様な形態の発光パターンとすることができ、意匠的効果の高い発光を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の車両用灯具を装備した自動車の外観図とヘッドランプの一部破談正面図。
図2】実施形態1のクリアランスランプユニットを背面側から見た斜視図とその一部の拡大図。
図3】(a)は実施形態1のクリアランスランプユニットの正面図、(b),(c)はそれぞれ(a)のb-b線、c-c線に沿う拡大断面図。
図4】(a)は実施形態1の非点灯時の視認性を説明する概念図、(b)は実施形態1の点灯時の視認性を説明する概念図。
図5】(a)は実施形態2のクリアランスランプユニットの正面図、(b)は各領域における拡大断面図。
図6】実施形態2の点灯時の視認性を説明する概念図。
図7】(a)は実施形態3のクリアランスランプユニットの正面図、(b)はそのb-b線に沿う拡大断面図。
図8】実施形態3の点灯時の視認性を説明する概念図。
図9】実施形態4のクリアランスランプユニットの概略斜視図。
図10】実施形態4のクリアランスランプユニットの概略側面図。
図11】(a)は実施形態4の非点灯時の視認性を説明する概念図、(b)は実施形態4の点灯時の視認性を説明する概念図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
次に、本発明の実施形態1について図面を参照して説明する。図1は本発明の灯具を、車体の前部に配設した左右のヘッドランプL-HL,R-HLに適用した自動車CARの外観図である。これらヘッドランプL-HL,R-HLは左右対称の構成であり、同図に左ヘッドランプL-HLの一部を破断した正面図を示すように、ロービームランプユニットLoLUとハイビームランプユニットHiLuとターンシグナルランプユニットTSLUとクリアランスランプユニットCLUが複合された構成とされている。
【0016】
この左ヘッドランプL-HLは、ランプボディ101と透光カバー(アウターレンズ)102とで構成されるランプハウジング100内に、各ランプユニットLoLU,HiLU,TSLU,CLUが配設されている。透光カバー102は無色(白色)透光性樹脂で形成されている。そして、前記クリアランスランプユニットCLUに本発明が適用されており、当該クリアランスランプユニットCLUが点灯されたときに、その発光面に所要の発光パターンが形成されるようになっている。なお、ロービームランプユニットLoLU、ハイビームランプユニットHiLU及びターンシグナルランプユニットTSLUについては本発明との関連が少ないので説明は省略する。
【0017】
図2はクリアランスランプユニットCLUを背面方向から見た斜視図である。クリアランスランプユニットCLUは、インナーレンズとして機能する無色透明樹脂等の透光性部材からなる板状の導光体1を備え、同図には表れない支持部材によって前記ランプボディ101に支持されている。この導光体1は板厚方向の両面、すなわち板面がクリアランスランプユニットCLUの光軸に沿った前後方向に向けて配設されており、前方に向けられた一方の板面11は光出射面として構成され、前記透光カバー102に対面されている。導光体1の板面は平面あるいは透光カバー102に沿って緩やかに湾曲された曲面に形成されていてもよいが、ここでは平面に形成されている。
【0018】
また、前記導光体1の上方に向けられた端面は光入射面として構成されており、この光入射面13に沿って光源基板2が配設されている。この光源基板2には光入射面13に沿って複数個、ここでは3個のLED(発光ダイオード)21が配列して搭載されている。各LED21は白色光を発光する白色LEDとして構成されており、それぞれにおいて発光した光は導光体1の光入射面13に入射され、導光体1の内部を導光されるようになっている。
【0019】
前記導光体1の他方の板面、すなわち前記光出射面11と反対側の板面12は光反射面として構成されており、この光反射面12には多数個の反射ステップ14が形成されている。この反射ステップ14は、導光体1の内部を導光される光を反射し、前記光出射面11から出射させる。
【0020】
そして、実施形態1では、図4を参照して後述するように、クリアランスランプユニットCLUが点灯されたときに、導光体1の光出射面11から出射される光により、明るさ(光度)が相違する第1ないし第3の3つのストライプパターンSP1~SP3が発光するように前記反射ステップ14が構成されている。ここでは、第1ストライプパターンSP1が最も明るく発光され、第2ストライプパターンSP2、第3ストライプパターンSP3の順序で明るさが低減されるように構成されている。
【0021】
図3(a)はクリアランスランプユニットCLUの正面図であり、導光体1の光反射面12に形成された反射ステップ14は、前記した第1ないし第3のストライプパターンSP1~SP3に対応する位置に、それぞれ所定の縦横ピッチ寸法(間隔)で直交枡目状あるいは斜め枡目状に配設されている。
【0022】
図3(b)、(c)は図3(a)のb-b線、c-c線に沿った拡大断面図である。光反射面12に形成された反射ステップ14は、光反射面12の表面から球面状に凹設された球面凹部として形成されている。その上で、図3(c)に示すように、第1ないし第3のストライプパターンSP1~SP3に対応する各反射ステップ14の球面凹部の径寸法が相違されている。すなわち、第1ないし第3のストライプパターンSP1~SP3の各反射ステップ14をそれぞれ第1ないし第3反射ステップ141~143とすると、第1ないし第3反射ステップ141~143はそれぞれの球面凹部が光出射面12において形成される円形の径寸法が相違されている。ここでは、第1反射ステップ141から第3反射ステップ143に向けて順次反射ステップ141~143の径寸法が小さくされている。したがって、反射ステップ141~143で反射される光の光量は、径寸法が大きい第1反射ステップ141から第3反射ステップ143に向けて低減されることになる。
【0023】
その一方で、図3(c)に示すように、各反射ステップ141~143の径寸法Rと深さDの比(R/D)は各反射ステップ141~143において同じにされている。すなわち、各反射ステップ141~143は相似形とされている。このように各反射ステップ141~143の径寸法、すなわちサイズを相違する一方で相似形とすることにより、同図に実線矢印で模式的に示すように、各反射ステップ141~143で反射される光の発散角度を等しくすることができる。
【0024】
以上の構成の実施形態1のクリアランスランプユニットCLUでは、非点灯時には、図3(b)に鎖線矢印で示すように、外光が導光体1の光出射面11に入射され、入射された光は導光体1の内部を板厚方向に導光される。導光された光の一部は光反射面12を透過されて導光体1の外部に透過される。また、他の一部は反射ステップ14に投射され、ここで導光体1の内部を導光され、その一部は光出射面11を透過して導光体1から再帰される。
【0025】
自動車の前方側からクリアランスランプユニットCLUを観察すると、反射ステップ14で反射された再帰光が導光体1の光出射面11から出射されるので、図4(a)に示すように、複数の点状のパターンが集合された状態で視認される。しかし、この再帰光は低光度であるので、各点状のパターンの視認性は明瞭ではない。したがって、第1ないし第3ストライプパターンSP1~SP3については、それぞれの形状がおぼろげに観察できる程度の視認性である。
【0026】
クリアランスランプユニットの点灯時には、図3(b)に実線矢印で示すように、LED21が発光され、発光された光は光入射面13から導光体1に入射されて内部を導光される。導光された光は反射ステップ14において反射され、導光体1の光出射面11から出射される。このとき、前記したように、第1ないし第3反射ステップ141~143で反射される光は、サイズの大きい方がサイズの小さいものよりも光量が多くなるが、このサイズの相違にかかわらず発散角度は同じである。したがって、各反射ステップ141~143の反射光によって点状の発光パターンが形成されるが、各点状の発光パターンの大きさは略同じである。すなわち、反射ステップ141~143のサイズの相違にかかわらず同じ形状、サイズのパターンが形成される。その一方で明るさは反射ステップ141~143のサイズに比例した明るさとなる。
【0027】
そして、各反射ステップ141~143で内面反射された複数の点状の発光パターンがそれぞれ集合されて第1ないし第3ストライプパターンSP1~SP3が形成され、外部から視認される。この形成された3つのストライプパターンSP1~SP3の各反射ステップ141~143はサイズが相違しており、第1反射ステップ141から第3反射ステップ143の順でサイズが段階的に小さくされているので、図4(b)のように、視認される3つのストライプパターンSP1~SP3は、第1ストライプパターンSP1が最も明るく見え、第2ストライプパターンSP2から第3ストライプパターンSP3の順で明るさが低減される。なお、図4(b)では塗り潰し密度(濃度)が低い領域が明るく、密度の高い領域が暗いことを示している。
【0028】
このように、本発明を適用した実施形態1のクリアランスランプユニットCLUでは、非点灯時には導光体1に設けた反射ステップ14により3つのストライプパターンSP1~SP3はおぼろげに観察され、あるいはほとんど観察できない程度の視認性である。一方、点灯時には導光体1に設けた3つの反射ステップ141~143のサイズの相違により3つのストライプパターンSP1~SP3が異なる明るさで視認される。したがって、3つのストライプパターンSP1~SP3が均一な明るさで視認される場合よりも点灯時における意匠的効果が高められる。また、非点灯時と点灯時で3つのストライプパターンSP1~SP3の視認性が変化されることにより、クリアランスランプユニットCLUの意匠的効果が高められる。
【0029】
(実施形態2)
図5図1に示したクリアランスランプユニットCLUに本発明を適用した実施形態2の概略構成図であり、実施形態1と等価な部分には同一符号を付してある。実施形態2は、いわゆる「だまし絵」の原理を利用して文字「K」の発光パターン(以下、Kパターン)を立体的に発光する形態である。
【0030】
図5(a)は実施形態2のクリアランスランプユニットCLUの正面図であり、導光体1の光反射面12には、発光パターンを形成するために複数の領域が区画され、各領域に異なる反射ステップが形成されている。各領域は実線で区画されているが、文字「K」を模したKパターン領域a1と、このKパターン領域a1に沿った側面領域a2と、Kパターンの影を模した影パターン領域a3と、それ以外の背景領域a4の4つの領域が区画されている。
【0031】
そして、図5(b)に各領域における導光体1の断面を示すように、Kパターン領域a1と側面領域a2と背景領域a4には、実施形態1と同様に球面凹部で構成された反射ステップ14が枡目状に集合された状態で形成されている。ここで、Kパターン領域a1の反射ステップ141はサイズが最大の反射ステップとして形成され、側面領域a2の反射ステップ142はそれよりもサイズの小さい反射ステップとして形成され、背景領域a4の反射ステップ143はさらに小さい反射ステップとして形成されている。一方、影パターン領域a3には反射ステップは形成されていないが、場合によっては最もサイズの小さい反射ステップが形成されてもよい。
【0032】
実施形態2のクリアランスランプユニットCLUでは、非点灯時には、実施形態1と同様に導光体1に形成されている反射ステップ14による外光の再帰によりKパターン領域a1、側面領域a2、背景領域a4がおぼろげに観察できる程度の視認性である。
【0033】
一方、点灯時には、発光されたLED21の光が導光体1の反射ステップ14により反射されて光出射面11から出射されるので、自動車の前方側からクリアランスランプユニットCLUを観察すると、Kパターン領域a1は反射ステップ141のサイズが大きいので最も明るい発光パターンとして観察される。また、側面領域a2と背景領域a4は反射ステップ142,143のサイズがそれよりも小さいので、相対的に暗い発光パターンとして観察される。これに対し、影パターン領域a3は反射ステップが存在しないので最も暗いパターンとして観察される。
【0034】
これにより、全体として、図6に示すように、明るいK文字パターンCPが相対的に暗い周囲から浮かび上がるような立体的な発光パターン、すなわち「だまし絵」的な発光パターンが形成される。このように、実施形態2では、点灯時に立体的な発光パターンが形成されるので、単に明暗のパターンが形成される場合に比較してクリアランスランプユニットCLUの意匠的効果を高めることができる。また、実施形態2においても、非点灯時での視認性と、点灯時の発光パターンの視認性との差が極めて顕著になり、クリアランスランプユニットCLUの意匠的効果が高められる。
【0035】
(実施形態3)
図7(a)は本発明を適用した実施形態3のクリアランスランプユニットCLUの正面図である。基本的な構成は実施形態1,2と同様であり、等価な部分には同一符号を付してある。実施形態3は、導光体1の光反射面12には、所要のパターン、ここでは実施形態2と同様のKパターンCPを形成するための多数の反射ステップ14が形成されている。KパターンCPの領域a1には相対的に大きなサイズの反射ステップ141が形成され、これ以外の背景領域a4にはそれよりも小さなサイズの反射ステップ143が形成されている。
【0036】
一方、実施形態3では、図7(b)にb-b線拡大断面図を示すように、導光体1の光出射面11の一部領域が光拡散面15として構成されている。この光拡散面15は、導光体1の光出射面11を粗面にしたシボ面で構成されているが、別途光拡散材を被膜させる構成であってもよい。この光拡散面15はKパターンCPを囲むように周縁に沿った領域に形成されている。あるいは、KパターンCPを除く全ての領域に形成されてもよい。
【0037】
実施形態3においても、クリアランスランプユニットCLUの非点灯時の視認性は実施形態1,2と同様である。また、点灯時には、LED21が発光されると、導光体1に入射されかつ導光された光が反射ステップ14によって反射され、光出射面11から出射されてKパターンCPの視認性が得られる。このとき、サイズの大きなKパターンCPの領域a1の反射ステップ141は、サイズの小さい背景領域a4の反射ステップ143よりも反射の光量が多いため、暗い背景の中に明るいKパターンCPの発光パターンが視認される。
【0038】
実施形態3では、これに加えて、反射ステップ14で反射された光は導光体1の光出射面の光拡散面15によって拡散された状態で出射される。この拡散により、図8に模式的に示すように、出射される光で形成されるKパターンCPの周縁部はぼけた状態となり、当該KパターンCPの周縁部の鮮鋭度やコントラストが低下される。この場合では、KパターンCPの周縁に沿って所要の幅寸法で延在される部位、すなわちKパターンCPの輪郭部の鮮鋭度やコントラストが低下される。
【0039】
これにより、KパターンCPは周縁部の明暗階調が緩やかなパターン、例えばソフトフォーカスされたパターンとなり、KパターンCPが背景領域a4から浮かび上がっているように視認される。また、図示は省略するが、KパターンCPや背景領域をそれぞれ枡目で形成したような場合には、背景領域の光を光拡散面によって拡散させることにより、例えば、アーティスト「ダニエル・ピコン氏」による錯覚効果と同様な視認性が得られる。したがって、実施形態3においても、点灯時での発光パターンの視認性が高められるとともに、当該点灯時の視認性と非点灯時の視認性との差が顕著になり、クリアランスランプユニットの意匠的効果が高められる。
【0040】
この実施形態3では、背景領域には特に反射ステップが形成されなくても所要の視認性を得ることはできるが、前記したようにKパターン領域と背景領域の反射ステップのサイズを相違させることにより、立体的な錯覚効果をより高めることが可能になる。
【0041】
(実施形態4)
図9は本発明を適用した実施形態4のクリアランスランプユニットCLUの概略斜視図であり、図10はその側面構成図である。導光体1は板面が略水平に向けられた状態で、すなわちクリアランスランプユニットCLUの光軸に沿った方向に延長された状態で図1に示したランプハウジング100内に支持されている。そして、導光体1の光入射面13は後方に向けられており、この光入射面13に光源としてのLED21が配設され、発光した光を導光体1の光入射面13から入射させるようになっている。
【0042】
導光体1は上方に向けられた上板面1Uと下方に向けられた下板面1Dの少なくとも一方が光反射面として構成されている。ここでは上板面1Uと下板面1Dの両面が光反射面として構成されている。すなわち、導光体1の上板面1Uと下板面1Dのそれぞれに、球面状の凹部からなる多数個の反射ステップ14が形成されており、これら反射ステップ14によって発光パターンとして、例えば実施形態2,3と同様なKパターンCPが構成されている。すなわち、下板面1DにはKパターンCPの領域に相対的にサイズの大きな反射ステップ141が形成され、上板面1UにはKパターンCPの領域を囲む背景領域に相対的にサイズの小さい反射ステップ143が形成されている。
【0043】
一方、導光体1の上方位置と下方位置には、それぞれ光反射面を前方に向けて鉛直方向に傾斜された第1反射鏡としての上反射鏡3Uと、第2反射鏡としての下反射鏡3Dが配設されている。これら上反射鏡3Uと下反射鏡3Dの各光反射面は導光体1の上板面1Uと下板面1Dに対してそれぞれ鉛直方向に略45度の角度に設定されている。したがって上反射鏡3Uと下反射鏡3Dは導光体1を挟んで対称に配置され、かつ互いに直角(90度)をなすように配設されている。これらの反射鏡3U,3Dは板状部材の表面にアルミ等が蒸着されて光反射面が形成された構成であるが、他の構成であってもよい。なお、クリアランスランプユニットCLUの外観上の見栄えを高めるために、透光カバー102の一部に上反射鏡3U及び下反射鏡3Dの端部を目隠しするための遮蔽部材103が配設されている。また、導光体1の前方に向けられた端面には光反射膜16が形成されている。
【0044】
実施形態4のクリアランスランプユニットCLUでは、非点灯時にはLED21からの光が導光体1から出射されることがなく、また導光体1は上板面1Uと下板面1Dは略水平方向に向けられているので、外部から観察され難い。そのため、導光体1及び導光体1に形成された反射ステップ141,143よるKパターンが観察されることは殆どない。また、導光体1は透光性部材であるので、導光体1を透して上反射鏡3Uと下反射鏡3Dの間で光が透過可能である。上反射鏡3Uと下反射鏡3Dは略直角に配置されているので、図10に鎖線矢印で示すように、これらで再帰反射鏡(リフレックスリフレクタ)が構成される。したがって、図11(a)に示すように、自動車の前方からクリアランスランプユニットCLUを観察すると、上反射鏡3Uと下反射鏡3Dによる再帰反射鏡が観察できるだけの視認性となる。
【0045】
クリアランスランプユニットCLUの点灯時には、図10に実線矢印で示すように、LED21の光が導光体1の内部を導光され、一部の光は上板面1Uの反射ステップ143により反射されて導光体1の下面から出射される。また、他の一部の光は下板面1Dの反射ステップ141により反射されて導光体1の上面から出射される。すなわち、下板面1DのKパターンCPの反射ステップ141で反射された光は上板面1Uから出射され、上反射鏡3Uで反射されて相対的に明るいKパターンとして照射される。また、上板面1Uの背景領域の反射ステップ143で反射された光は下板面1Dから出射され、下反射鏡3Dで反射されて相対的に暗い背景パターンとして照射される。
【0046】
これにより、図11(b)に示すように、暗い背景領域の中に明るいKパターンCPが観察される視認性となる。このとき、KパターンCPは背景領域よりも明るいので、実施形態2や3と同様にKパターンが浮かび上がって見えるという視認性も期待できる。このように、実施形態4においても、点灯時での発光パターンの視認性と、非点灯時の視認性との差が極めて顕著になり、クリアランスランプユニットCLUの意匠的効果が高められる。
【0047】
以上の実施形態1~4は本発明の一例を示したものであり、クリアランスランプユニット以外のランプユニット、例えば、デイタイムランニングランプユニットやテールランプユニットに適用してもよい。また、発光パターンについても実施形態に記載のストライプパターンやKパターンに限られるものではなく、種々のパターンが適用できる。
【0048】
また、導光体に形成される反射ステップは、光の反射光量を相違させる一方で反射される光の発散性が略同等となる反射ステップであれば、実施形態に記載の球面状凹部からなるステップ形状に限られるものではなく円錐面状凹部や角錐面状凹部からなるステップ形状、あるいはその他のステップ形状であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 導光体
2 光源基板
3U,3D 反射鏡
11 光出射面
12 光反射面
13 光入射面
14(141,142,143) 反射ステップ
15 光拡散面
21 光源(LED)
100 ランプハウジング
101 ランプボディ
102 透光カバー
L-HL,R-HL ヘッドランプ
CLU クリアランスランプユニット
SP ストライプパターン
CP Kパターン(文字パターン)

図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11