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特開2023-36361資源管理装置、資源管理方法及び資源管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036361
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】資源管理装置、資源管理方法及び資源管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20230307BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20230307BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20230307BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20230307BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230307BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
H02J3/32
G06Q50/06
H02J3/38 110
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
H02J7/00 P
H02J3/00 180
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143366
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】大野 正夫
(72)【発明者】
【氏名】小熊 祐司
(72)【発明者】
【氏名】藤原 栄一郎
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AB05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064CB21
5G064DA11
5G066AA03
5G066AE01
5G066AE05
5G066AE09
5G066HA15
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503DA07
5G503DA08
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD05
5G503GD06
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】状況に応じて設定される互いに異なる目的を達成可能な資源の利用計画を出力する。
【解決手段】資源管理部60は、電気自動車3に資源を貯蓄させる動作と電気自動車3から電力を供給させる動作とを含む電気自動車3の利用計画を出力する。資源管理部60は、事業所2Aが供給を受ける電力の量と時間とが関連付けられた供給情報を取得する第1情報取得部64aと、事業所2Aが要求する電力の量を満たすことができない不足期間を示す不足期間情報を取得する第2情報取得部64bと、利用計画を出力する最適化計算部65と、を備える。最適化計算部65は、不足期間情報が不足期間が発生していることを示すとき、不足期間を評価指標とした利用計画を出力し、不足期間情報が不足期間が発生していないことを示すとき、供給情報を評価指標とした利用計画を出力する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
資源供給部から資源の供給を受ける資源需要部と、前記資源需要部から供給される前記資源を蓄えることが可能であると共に蓄えた前記資源を前記資源需要部に対して供給することも可能である資源貯蔵部と、を含むシステムに適用され、前記資源貯蔵部に前記資源を蓄えさせる動作と前記資源貯蔵部から前記資源を供給させる動作とを含む前記資源貯蔵部の利用計画を出力する資源管理装置であって、
前記資源需要部が供給を受ける前記資源の量と時間とが関連付けられた供給情報を取得する第1情報取得部と、
前記資源需要部が要求する前記資源の量を満たすことができない不足期間を示す不足期間情報を取得する第2情報取得部と、
前記供給情報と、前記不足期間情報と、前記供給情報及び前記不足期間情報の少なくとも一方を重み付けする要素と、を含む関数の最適化問題を解くことにより得た前記利用計画を出力する計画出力部と、を備え、
前記計画出力部は、
前記不足期間情報が前記不足期間が発生していることを示すとき、前記不足期間を評価指標とした前記利用計画を出力し、
前記不足期間情報が前記不足期間が発生していないことを示すとき、前記供給情報を評価指標とした前記利用計画を出力する、資源管理装置。
【請求項2】
前記不足期間情報は、第1の値と、前記第1の値とは異なる第2の値と、のいずれかによって示される離散変数を含み、
前記第1の値は、前記資源需要部が要求する前記資源の量を満たすことができない状態を示し、
前記第2の値は、前記資源需要部が要求する前記資源の量を満たすことができる状態を示す、請求項1に記載の資源管理装置。
【請求項3】
前記重み付けする要素は、前記不足期間情報を重み付けする、請求項1又は2に記載の資源管理装置。
【請求項4】
前記計画出力部は、前記不足期間情報が前記不足期間が発生していることを示すとき、前記不足期間を最小化する前記利用計画を出力する、請求項1~3の何れか一項に記載の資源管理装置。
【請求項5】
前記資源は、電力であり、
前記資源供給部は、電力系統であり、
前記資源需要部は、需要家であり、
前記資源貯蔵部は、前記電力を充電することが可能であると共に充電した前記電力を放電できる蓄電池を有する電気自動車であり、
前記第1情報取得部は、契約電力よって定まる基本料金と、前記需要家が消費する時間ごとの電力の使用量によって定まる従量料金と、を含む電力料金情報を前記供給情報として取得し、
前記第2情報取得部は、前記需要家が要求する前記電力と、前記需要家に供給される前記電力と、を含む情報から前記不足期間情報を生成し、
前記計画出力部は、前記電力を前記需要家に提供可能な前記電気自動車の台数と、前記電気自動車の前記蓄電池の充電量と、に関する制約条件のもとで前記関数の最適化問題を解くことによって、
前記不足期間情報が前記不足期間が発生していることを示すとき、前記電力が不足する期間を最小化する前記利用計画を出力し、
前記不足期間情報が前記不足期間が発生していないことを示すとき、前記電力料金情報を最小化する前記利用計画を出力する、請求項1~4の何れか一項に記載の資源管理装置。
【請求項6】
資源供給部から資源の供給を受ける資源需要部と、前記資源需要部から供給される前記資源を蓄えることが可能であると共に蓄えた前記資源を前記資源需要部に対して供給することも可能である資源貯蔵部と、を含むシステムに適用され、前記資源貯蔵部に前記資源を蓄えさせる動作と前記資源貯蔵部から前記資源を供給させる動作とを含む前記資源貯蔵部の利用計画を出力する資源管理方法であって、
前記資源需要部が供給を受ける前記資源の量と時間とが関連付けられた供給情報を取得することと、
前記資源需要部が要求する前記資源の量を満たすことができない不足期間を示す不足期間情報を取得することと、
前記供給情報と、前記不足期間情報と、前記供給情報及び前記不足期間情報の少なくとも一方を重み付けする要素と、を含む関数の最適化問題を解くことにより得た前記利用計画を出力することと、を含み、
前記利用計画を出力することにおいて、
前記不足期間情報が前記不足期間が発生していることを示すとき、前記不足期間を評価指標とした前記利用計画を出力し、
前記不足期間情報が前記不足期間が発生していないことを示すとき、前記供給情報を評価指標とした前記利用計画を出力する、資源管理方法。
【請求項7】
資源供給部から資源の供給を受ける資源需要部と、前記資源需要部から供給される前記資源を蓄えることが可能であると共に蓄えた前記資源を前記資源需要部に対して供給することも可能である資源貯蔵部と、を含むシステムに適用され、前記資源貯蔵部に前記資源を蓄えさせる動作と前記資源貯蔵部から前記資源を供給させる動作とを含む前記資源貯蔵部の利用計画を出力することをコンピュータに実行させる資源管理プログラムであって、
前記資源需要部が供給を受ける前記資源の量と時間とが関連付けられた供給情報を取得することと、
前記資源需要部が要求する前記資源の量を満たすことができない不足期間を示す不足期間情報を取得することと、
前記供給情報と、前記不足期間情報と、前記供給情報及び前記不足期間情報の少なくとも一方を重み付けする要素と、を含む関数の最適化問題を解くことにより得た前記利用計画を出力することと、前記コンピュータに実行させ、
前記利用計画を出力することにおいて、
前記不足期間情報が前記不足期間が発生していることを示すとき、前記不足期間を評価指標とした前記利用計画を出力し、
前記不足期間情報が前記不足期間が発生していないことを示すとき、前記供給情報を評価指標とした前記利用計画を出力する、資源管理プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、資源管理装置、資源管理方法及び資源管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な要因に起因する危機的状況下においても、最低限の事業を継続するための事業計画(Business Continuity Plan)の策定が進んでいる。例えば、事業の継続には、電力といった資源を要する。そこで、事業の継続に要する資源を蓄えておく。そして、資源の供給を受けることができない有事には、蓄えた資源を用いて最低限の事業の継続を図る。
【0003】
特許文献1及び特許文献2及び非特許文献1は、蓄えた資源を有効に利用するための技術を開示する。
【0004】
例えば、特許文献1には、自動車のバッテリーに貯えた電力に関する技術が開示されている。特許文献1が開示する技術は、事業所において電力需要非ピーク時に、或いは深夜電力を利用して、複数の自動車の各バッテリーを充電する。そして、充電した自動車のバッテリーに貯えた電力を、事業所において事業所の電力需要ピーク時に放出する。特許文献2には、太陽光発電手段と蓄電手段とを含むシステムの制御技術が開示されている。特許文献2が開示する技術は、電気負荷の予測電力及び太陽光発電手段の予測発電量に基づいて、蓄電および放電の推移を示す充放電スケジュールを所定の評価指標で算出する。そして、充放電スケジュールに従って、予測期間における蓄電手段の充放電電力を制御する。非特許文献1には、電気自動車のバッテリーの充電及び放電の制御に関する技術が開示されている。非特許文献1が開示する技術は、電気自動車のバッテリー残量を、車両の利用予測等に基づき予測し、充電設備とコントローラーを通して充電、放電時間を制御する。非特許文献1が開示する技術は、災害時の制御として電気自動車を非常用電源として活用するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-282383号公報
【特許文献2】特開2013-027214号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“EV導入を進める法人や事業者へのeモビリティマネジメントプラットフォームの提供サービス開始”、[online]、令和3年3月2日、株式会社REXEVプレスリリース、[令和3年7月12日検索]、インターネット<URL:https://rexev.co.jp/content/wp-content/uploads/2021/03/REXEV_20210302.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
経済性の観点から、有事の際に利用するために蓄えた資源を、必要な資源の供給を受けることが可能な平時にも利用することが検討されている。この場合において、有事の際には、事業を継続するためには蓄えた資源をいかに用いればよいかという問題が生じる。一方、平時の際には、そもそも事業の継続に必要な資源の供給を受けることができる。従って、有事とは異なり、例えば、事業の継続に要するコストを低減するために蓄えた資源をいかに用いればよいかという別の問題が生じる。つまり、蓄えた資源をいかに用いるかという点において、有事に設定される課題と、平時に設定される課題とは、互いに異なる。
【0008】
そこで、本発明は、状況に応じて設定される互いに異なる目的を達成可能な資源の利用計画を出力できる資源管理装置、資源管理方法及び資源管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態である資源管理装置は、資源供給部から資源の供給を受ける資源需要部と、資源需要部から供給される資源を蓄えることが可能であると共に蓄えた資源を資源需要部に対して供給することも可能である資源貯蔵部と、を含むシステムに適用される。資源管理装置は、資源貯蔵部に資源を蓄えさせる動作と資源貯蔵部から資源を供給させる動作とを含む資源貯蔵部の利用計画を出力する。資源管理装置は、資源需要部が供給を受ける資源の量と時間とが関連付けられた供給情報を取得する第1情報取得部と、資源需要部が要求する資源の量を満たすことができない不足期間を示す不足期間情報を取得する第2情報取得部と、供給情報と、不足期間情報と、供給情報及び不足期間情報の少なくとも一方を重み付けする要素と、を含む関数の最適化問題を解くことにより得た利用計画を出力する計画出力部と、を備える。計画出力部は、不足期間情報が不足期間が発生していることを示すとき、不足期間を評価指標とした利用計画を出力し、不足期間情報が不足期間が発生していないことを示すとき、供給情報を評価指標とした利用計画を出力する。
【0010】
本発明の別の形態である資源管理方法は、資源供給部から資源の供給を受ける資源需要部と、資源需要部から供給される資源を蓄えることが可能であると共に蓄えた資源を資源需要部に対して供給することも可能である資源貯蔵部と、を含むシステムに適用される。資源管理方法は、資源貯蔵部に資源を蓄えさせる動作と資源貯蔵部から資源を供給させる動作とを含む資源貯蔵部の利用計画を出力する。資源管理方法は資源需要部が供給を受ける資源の量と時間とが関連付けられた供給情報を取得することと、資源需要部が要求する資源の量を満たすことができない不足期間を示す不足期間情報を取得することと、供給情報と、不足期間情報と、供給情報及び不足期間情報の少なくとも一方を重み付けする要素と、を含む関数の最適化問題を解くことにより得た利用計画を出力することと、を含み、利用計画を出力することにおいて、不足期間情報が不足期間が発生していることを示すとき、不足期間を評価指標とした利用計画を出力し、不足期間情報が不足期間が発生していないことを示すとき、供給情報を評価指標とした利用計画を出力する。
【0011】
本発明のさらに別の形態である資源管理プログラムは、資源供給部から資源の供給を受ける資源需要部と、資源需要部から供給される資源を蓄えることが可能であると共に蓄えた資源を資源需要部に対して供給することも可能である資源貯蔵部と、を含むシステムに適用される。資源管理プログラムは、資源貯蔵部に資源を蓄えさせる動作と資源貯蔵部から資源を供給させる動作とを含む資源貯蔵部の利用計画を出力することをコンピュータに実行させる。資源管理プログラムは、資源需要部が供給を受ける資源の量と時間とが関連付けられた供給情報を取得することと、資源需要部が要求する資源の量を満たすことができない不足期間を示す不足期間情報を取得することと、供給情報と、不足期間情報と、供給情報及び不足期間情報の少なくとも一方を重み付けする要素と、を含む関数の最適化問題を解くことにより得た利用計画を出力することと、コンピュータに実行させ、利用計画を出力することにおいて、不足期間情報が不足期間が発生していることを示すとき、不足期間を評価指標とした利用計画を出力し、不足期間情報が不足期間が発生していないことを示すとき、供給情報を評価指標とした利用計画を出力する。
【0012】
上記の資源管理装置、資源管理方法、及び資源管理プログラムでは、供給情報と、不足期間情報と、供給情報及び不足期間情報の少なくとも一方を重み付けする要素と、を含む関数の最適化問題を解くことにより、資源貯蔵部の利用計画が出力される。供給情報には、資源需要部が供給を受ける資源の量と時間とが関連付けられており、平時における資源の需要が示される。不足期間情報には、資源需要部が要求する資源の量を満たすことができない不足期間を示す情報が関連付けられており、資源が不足して事業継続ができない有事の期間が示される。関数では、供給情報及び不足期間情報の少なくとも一方が重み付けされる。よって、この重みづけによれば、関数の最適化問題を解いた結果として得られる利用計画について、平時における評価の指標と有事における評価の指標とが自律的に切り替わった結果を得ることが可能である。その結果、資源管理装置、資源管理方法、及び資源管理プログラムによれば、状況に応じて設定される互いに異なる目的を達成可能な資源の利用計画を出力できる。
【0013】
一形態の資源管理装置において、不足期間情報は、第1の値と、第1の値とは異なる第2の値と、のいずれかによって示される離散変数を含んでもよい。第1の値は、資源需要部が要求する資源の量を満たすことができない状態を示してもよい。第2の値は、資源需要部が要求する資源の量を満たすことができる状態を示してもよい。離散変数によれば、有事の状態と平時の状態とを、離散的に扱うことができる。
【0014】
一形態の資源管理装置において、重み付けする要素は、不足期間情報を重み付けしてもよい。有事の期間が関連付けられた不足期間情報を重み付けすることにより、有事における事業継続に重みをおいた資源貯蔵部の利用計画を出力することができる。
【0015】
一形態の資源管理装置において、計画出力部は、不足期間情報が不足期間が発生していることを示すとき、不足期間を最小化する利用計画を出力してもよい。資源が不足する有事の期間を最小化することが可能な資源貯蔵部の利用計画を出力することができる。
【0016】
一形態の資源管理装置において、資源は、電力でもよい。資源供給部は、電力系統でもよい。資源需要部は、需要家でもよい。資源貯蔵部は、電力を蓄えることが可能であると共に蓄えた電力を供給できる蓄電池を有する電気自動車でもよい。第1情報取得部は、契約電力によって定まる基本料金と、需要家が消費する時間ごとの電力の使用量によって定まる従量料金と、を含む電力料金情報を供給情報として取得してもよい。第2情報取得部は、需要家が要求する電力と、需要家に供給される電力と、を含む情報から不足期間情報を生成してもよい。計画出力部は、電力を需要家に提供可能な電気自動車の台数と、電気自動車の蓄電池の充電量と、に関する制約条件のもとで関数の最適化問題を解くことによって、不足期間情報が不足期間が発生していることを示すとき、電力が不足する期間を最小化する利用計画を出力し、不足期間情報が不足期間が発生していないことを示すとき、電力料金情報を最小化する利用計画を出力してもよい。この場合、計画出力部は、電気料金情報及び不足期間情報を含む関数の最適化問題を、電気自動車の状態などに関する制約条件のもとで解く。その結果、有事における不足期間が最小となり、かつ平時における電気料金が最小となる電気自動車の利用計画を出力することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、状況に応じて設定される互いに異なる目的を達成可能な資源の利用計画を出力できる資源管理装置、資源管理方法及び資源管理プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施形態に係る充放電計画システムの機能ブロックの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、充放電計画システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態に示す数式の記号の定義をまとめた表である。
図4図4(A)及び図4(B)は、最適解を解く際に行われる計算の概念図を示している。
図5図5は、充放電計画システムの動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6(A)及び図6(B)は、計算例の設定条件をまとめた表である。
図7図7は、計算例による事業所電力を示すグラフである。
図8図8は、計算例による供給電力を示すグラフである。
図9図9は、計算例による電気自動車の放電電力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して一実施形態について説明する。なお、図面の説明においては、同一の要素同士、或いは、相当する要素同士には、互いに同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
【0020】
[充放電計画システム]
図1は、資源管理装置である資源管理部60を備えた充放電計画システム4の機能ブロックの構成を概略的に示す図である。充放電計画システム4は、電力供給者1(資源供給部)と、事業所2A(資源需要部、需要家)と、電気自動車3(資源貯蔵部)と、を含むエネルギーシステム100に用いられる。エネルギーシステム100と充放電計画システム4とを含む構成は、いわゆるエネルギーマネジメントシステム200とも称する。
【0021】
電力供給者1は、いわゆる電力系統である。電力供給者1は、事業所2Aに対して電力を供給する。そして、電力供給者1は、電力の提供の対価を事業所2Aから受け取る。電力供給者1は、充放電計画システム4に対して所定の情報を提供する。
【0022】
事業所2Aは、いわゆる需要者である。事業所2Aは、例えば、生産設備を備えた工場であってもよい。事業所2Aは、電力供給者1から電力の供給を受けて、事業を継続する。例えば、事業所2Aが工場である場合には、電力の供給を受けて生産設備を稼働させ、製品を製造する。
【0023】
電気自動車3は、電力の充電と放電とが相互に切り替え可能な蓄電池3aを備えている。以下では、電気自動車3が有する蓄電池3aの充電動作を、単に電気自動車3の充電動作として記載する場合がある。同様に、電気自動車3が有する蓄電池3aの放電動作を、単に電気自動車3の放電動作として記載する場合もある。電気自動車3は、事業所2Aと電気的に接続されている。この「電気的に接続」とは、電気自動車3が事業所2Aから電力の供給を受けることができることを意味する。さらに「電気的に接続」とは、電気自動車3が事業所2Aに電力を供給できることも意味する。電気自動車3と事業所2Aとの間での電力のやりとりは、充放電スタンド2Bによって制御される。電気自動車3は、充放電スタンド2Bに対して、有線又は無線によって接続されている。そして、電気自動車3は、充放電スタンド2Bから切り離されることもできる。切り離された電気自動車3は、いわゆるモビリティとしての機能を発揮する。
【0024】
充放電スタンド2Bは、事業所2Aから電力を受ける。充放電スタンド2Bは、受けた電力を電気自動車3が受け入れ可能な電力の態様に変換する。つまり、充放電スタンド2Bは、インバータといった電力変換装置の機能を有する。そして充放電スタンド2Bは、変換した電力を電気自動車3に供給する。逆に、充放電スタンド2Bは、電気自動車3から電力を受けることもできる。充放電スタンド2Bは、受けた電力を事業所2Aが受け入れ可能な電力の態様に変換する。そして充放電スタンド2Bは、変換した電力を事業所2Aに供給する。充放電スタンド2Bの動作を制御することによって、電気自動車3における充電動作と放電動作とを切り替えることができる。
【0025】
電気自動車3は、充電動作及び放電動作が可能な蓄電池3aを備えている。充放電計画システム4は、蓄電池3aの充電動作及び放電動作のスケジュールを生成する。このスケジュールは、以下の説明において「充放電スケジュール」(利用計画)と称する。本実施形態の説明において、「充電」とは、蓄電池3aへの充電を意味し、「放電」とは、蓄電池3aからの電力の出力を意味する。充放電計画システム4は、生成した充放電スケジュールを充放電スタンド2Bに提供する。充放電スタンド2Bは、受けた充放電スケジュールに基づいて充電動作と放電動作とを相互に切り替える制御を行う。
【0026】
充放電計画システム4は、いくつかの入力情報を用いて、充放電スタンド2Bの制御信号を出力する。制御信号は、充放電スケジュールに基づいて生成される。入力情報の情報源は、電力供給者1と、エネルギーマネジメントシステム運用者Mと、電気自動車利用者Uと、である。充放電計画システム4は、第1~第4入力端4a~4dを介してこれらの情報源から情報を受ける。第1~第4入力端4a~4dは、後述する入力装置105に対応する。入力情報の詳細については、後述する。
【0027】
充放電計画システム4は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組み合わせによって実現される。充放電計画システム4が有する各機能は、物理的及び/又は論理的に分離した2つ以上の装置を直接的及び又は間接的に接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。
【0028】
図2は、充放電計画システム4のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、充放電計画システム4は、物理的には、プロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、通信装置104と、入力装置105と、出力装置106と、バス107等を含むコンピュータ装置として構成されてもよい。充放電計画システム4における各機能は、プロセッサ101、メモリ102等のハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ101が演算を行い、通信装置104による通信、あるいは、メモリ102及びストレージ103におけるデータの読み出し及び書き込みを制御することで実現される。
【0029】
プロセッサ101は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ101は、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。例えば、充放電計画システム4の各種処理等は、プロセッサ101で実現されてもよい。また、プロセッサ101は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、及びデータを、ストレージ103又は通信装置104からメモリ102に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。充放電計画システム4の各種処理を実行する機能は、メモリ102に格納され、プロセッサ101で動作する制御プログラムによって実現されてもよい。なお、充放電計画システム4における各種処理は、1つのプロセッサ101で実行されてもよいが、2以上のプロセッサ101により同時又は逐次に実行されてもよい。
【0030】
メモリ102は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)等の少なくとも1つによって構成されてもよい。
【0031】
ストレージ103は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体である。ストレージ103は、例えば、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク等の少なくとも1つで構成されてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ102及びストレージ103等を含むデータベース、サーバ又はその他の適切な媒体であってもよい。
【0032】
通信装置104は、有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのデバイスである。例えば、充放電計画システム4の各種処理の一部は、通信装置104で実現されてもよい。
【0033】
入力装置105は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード等)である。出力装置106は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ等)である。
【0034】
上記の各装置は、情報を通信するためのバス107で接続される。バス107は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0035】
再び図1を参照する。充放電計画システム4は、第1入力端4aと、第2入力端4bと、第3入力端4cと、第4入力端4dと、出力端4eと、を有する。第1~第4入力端4a~4dは、物理的には上述した通信装置104及び/又は入力装置105である。第1入力端4aは、電力供給者1から入力される情報を受ける。第1入力端が受ける情報は、電力供給者1が事業所2Aへ供給する電力供給量である。第2入力端4bは、事業所2Aから入力される情報を受ける。第2入力端4bが受ける情報は、事業所2Aの電力需要である。なお、第2入力端4bが受ける情報は、電気自動車3の充放電の電力を含んでもよい。第3入力端4cは、エネルギーマネジメントシステム運用者Mから入力される情報を受ける。第3入力端4cが受ける情報は、例えば、計画パラメータである。第4入力端4dは、電気自動車3の利用者から入力される情報を受ける。第4入力端4dが受ける情報は、例えば電気自動車の利用予定である。出力端4eは、充放電スタンド2Bに利用予定に基づく制御信号を出力する。
【0036】
充放電計画システム4は、第1~第4入力端4a~4dから受けた情報を、いくつかの機能的構成要素によって処理することにより、充放電スケジュールを生成する。充放電計画システム4は、機能構成要素として、データベースユニット5と、資源管理部60(資源管理装置)と、電力需要予測部20と、充放電制御部80と、を有する。
【0037】
データベースユニット5は、電気自動車3に搭載された蓄電池3aの充放電スケジュールの生成に要するいくつかの情報を保持する。データベースユニット5は、上述したストレージ103である。なお、データベースユニット5は、そのすべてが充放電計画システム4に含まれる必要はない。データベースユニット5を構成する複数のデータベースのうち、その一部又は全部が充放電計画システム4とは別の構成要素とされてもよい。
【0038】
データベースユニット5は、電力供給量データベース10と、事業所電力需要データベース30と、計画パラメータデータベース40と、電気自動車利用予定データベース50と、充放電スケジュールデータベース70と、を含む。なお、データベースユニット5は、必要に応じてこれらのデータベースの一部を省略してもよい。また、データベースユニット5は、必要に応じてこれらのデータベースとは別のデータベースを含んでもよい。
【0039】
電力供給量データベース10は、第1入力端4aを介して電力供給者1から電力供給量情報を受ける。電力供給量データベース10は、受けた電力供給量情報を格納する。電力供給量情報は、電力供給者1が事業所2Aに供給する電力量と時間とが関連付けられた情報である。電力供給量データベース10は、気象情報等を元にした電力供給量の予測値、及び停電情報などの電力供給に関わる情報を格納してもよい。
【0040】
事業所電力需要データベース30は、電力需要予測部20から事業所電力需要予測情報を受ける。事業所電力需要データベース30は、受けた事業所電力需要予測情報を格納する。事業所電力需要予測情報は、事業所2Aが消費するであろう電力を予測した情報である。
【0041】
計画パラメータデータベース40は、第3入力端4cを介してエネルギーマネジメントシステム運用者Mが入力する計画パラメータを受ける。計画パラメータデータベース40は、入力された計画パラメータを格納する。計画パラメータは、例えば、以下のような具体的な情報を数値として含んでよい。
電気自動車3の台数。
電気自動車3の充電残量の上限値。
電気自動車3の充電残量の下限値。
電気自動車3の充電電力の上限値。
電気自動車3の充電電力の下限値。
電気自動車3の放電電力の上限値。
電気自動車3の放電電力の下限値。
充放電スタンド2Bの数。
充放電スケジュール(利用計画)の期間。
充放電スケジュールの単位時間。
事業所2Aが負担する電力料金情報。
電力供給者1が事業所2Aに供給する電力の最大値。
【0042】
電力供給者1が事業所2Aに供給する電力の最大値は、換言すると、電力供給者1と事業所2Aとの契約電力である。電力料金情報は、基本料金と、従量料金と、を含む。基本料金は、契約電力によって定まる料金である。従量料金は、事業所2Aが消費する時間ごとの電力の使用量によって定まる料金である。電力料金情報は、外部に電力を売却する際の売電価格を含んでもよい。
【0043】
電気自動車利用予定データベース50は、第3入力端4cを介して電気自動車利用者Uが入力する電気自動車利用予定情報を受ける。電気自動車利用予定データベース50は、入力された電気自動車利用予定情報を格納する。電気自動車利用予定情報は、例えば、以下のような具体的な情報を数値として含んでよい。
電気自動車3の利用予定。
電気自動車3の走行を開始する時刻。
電気自動車3の走行を終了する時刻。
【0044】
充放電スケジュールデータベース70は、資源管理部60から充放電スケジュールを受ける。充放電スケジュールデータベース70は、受けた充放電スケジュールを格納する。充放電スケジュールデータベース70は、充放電スケジュールを充放電制御部80に出力する。
【0045】
電力需要予測部20は、第2入力端4bを介して事業所2Aから電力需要に関する情報を受ける。電力需要予測部20は、電力需要情報を予測する。電力需要予測部20は、電力需要情報の予測に際し、事業所2Aが過去に消費した電力の実績値と、事業所2Aが現在消費している電力の実績値と、を利用する。電力需要予測部20は、予測した電力需要情報を事業所電力需要データベース30に出力する。
【0046】
資源管理部60(資源管理装置)は、電力供給量データベース10等から各種のデータを受ける。資源管理部60は、受けたデータを利用して、充放電スケジュールを生成する。資源管理部60は、生成した充放電スケジュールを充放電スケジュールデータベース70に出力する。資源管理部60の詳細については、後述する。
【0047】
充放電制御部80は、充放電スケジュールデータベース70から充放電スケジュールを受ける。充放電制御部80は、受けた充放電スケジュールを利用して、充放電スタンド2Bを制御するための制御信号を生成する。充放電制御部80は、出力端4eを介して制御信号を充放電スタンド2Bに出力する。
【0048】
[資源管理装置]
資源管理部60(資源管理装置)は、データ読込部61と、計画期間設定部62と、制約条件設定部63と、評価指標設定部64と、最適化計算部65(計画出力部)と、を有する。これらの機能的構成要素は、プロセッサ101によって所定のプログラムが実行されることにより、実現される。
【0049】
[データ読込部]
データ読込部61は、電力供給量データベース10、計画パラメータデータベース40及び電気自動車利用予定データベース50から情報を取得する。電力供給量データベース10、計画パラメータデータベース40及び電気自動車利用予定データベース50は、共通のバスを介して資源管理部60に接続されている。つまり、データ読込部61は、電力供給量データベース10、計画パラメータデータベース40及び電気自動車利用予定データベース50から提供される各種の情報を、第1データ入力60aから受け入れる。さらに、データ読込部61は、事業所電力需要データベース30から情報を取得する。データ読込部61は、事業所電力需要データベース30から提供される情報を、第2データ入力60bから受け入れる。データ読込部61は、受け入れた各種の情報を一時的に保持してもよい。データ読込部61は、読み込んだ各種の情報を、計画期間設定部62、制約条件設定部63、評価指標設定部64及び最適化計算部65の求めに応じて、出力する。
【0050】
[計画期間設定部]
計画期間設定部62は、第1の期間として充放電スケジュールの期間(計画期間)を設定する。計画期間設定部62は、充放電スケジュールの期間(計画期間)の設定のために、計画パラメータを用いる。計画期間設定部62は、データ読込部61を介して計画パラメータデータベース40から計画パラメータを受ける。
【0051】
計画期間設定部62は、第2の期間として電気自動車3の駐車時間帯を設定する。具体的には、計画期間設定部62は、駐車時間帯として電気自動車3の充電が可能である時間帯と、電気自動車3の放電が可能である時間帯と、を設定する。計画期間設定部62は、駐車時間帯の設定のために、電気自動車3の利用予定を用いる。計画期間設定部62は、データ読込部61を介して電気自動車利用予定データベース50から電気自動車3の利用予定を受ける。
【0052】
計画期間設定部62は、設定した充放電スケジュールの期間及び駐車時間帯を一時的保持してもよい。そして、計画期間設定部62は、最適化計算部65の求めに応じて設定した充放電スケジュールの期間及び駐車時間帯を出力する。
【0053】
[制約条件設定部]
制約条件設定部63は、複数の制約条件を設定する。制約条件設定部63は、複数の制約条件の設定のために、計画パラメータを用いる。制約条件設定部63は、データ読込部61を介して計画パラメータデータベース40から計画パラメータを受ける。制約条件設定部63は、設定した複数の制約条件を一時的に保持してもよい。そして、制約条件設定部63は、最適化計算部65の求めに応じて設定した複数の制約条件を出力する。
【0054】
制約条件設定部63は、第1の制約条件として、電力需給に関する制約を設定する。第1の制約条件は、例えば契約電力に関する制約である。式(1)は、電力供給者1が事業所2Aに供給する電力の最大値(契約電力)に関する制約を示す。式(1)は、各時刻において、正味の電力需要(enet,k)は、契約電力(pnet max)を超えないことを示している。計画期間全体でのピーク電力値を表す決定変数をzとすると、正味の電力需要enet,kとzには自明の関係(enet,k<=z)が成立する。ピーク電力が契約電力を超えてはならないため、式(1)が成立しなければならない。なお、以下の説明で示す数式が含む各変数の意味するところについては、図3の表に一覧として示す。
【数1】
【0055】
制約条件設定部63は、第2の制約条件として、充放電に関する制約を設定する。第2の制約条件は、充放電スタンド2Bの台数、充電残量の上下限値及び充放電電力の上下限値を含む。以下、第2の制約条件の具体例として、4個の条件を例示する。
【0056】
第2の制約条件の第1の例示は、同時に充放電が可能な電気自動車3の台数に関する制約である(式(2)参照)。式(2)は、各時刻において充放電する電気自動車3の数は、同時実行可能台数を超えないことを示す。同時実行可能台数は、充放電スタンド2Bの数によって制限される。
【数2】
【0057】
第2の制約条件の第2の例示は、電気自動車3の充放電動作に関する制約である(式(3)参照)。式(3)は、各時刻において充放電する電気自動車3は、普通充電、普通放電、急速充電、及び急速放電のうち、いずれか一つの動作しか実行できないことを示す。
【数3】
【0058】
第2の制約条件の第3の例示は、電気自動車3の充放電が可能な時間帯に関する制約である(式(4)参照)。式(4)は、各時刻において充放電が可能な時刻(Fv,k=1)のみにおいて充放電が可能であることを示す。つまり、式(4)では、充放電が可能な時刻を変数(Fv,k=1)として示し、充放電が不可能である時刻を(Fv,k=0)として示す。充放電が可能な時刻は、例えば、電気自動車3がモビリティとして利用されていない時刻のことである。したがってFv,kは電気自動車利用予定データベース50の情報から生成される。
【数4】
【0059】
第2の制約条件の第4の例示は、電気自動車3の充電残量に関する制約である(式(5)~式(7)参照)。まず、電気自動車3の充電残量と充電電力との関係は、式(5)によって示される。
【数5】
【0060】
次に、電気自動車3の充電残量は、各時刻において蓄電池の容量を超えない。蓄電池の容量は、電気自動車3の充電残量の上限値とみなしてもよい。この制約は、式(6)によって示される。
【数6】
【0061】
次に、単位時間当たりの電気自動車3に充放電される電力は、電気自動車3の充放電電力の上限値を超えない。この制約は、式(7)によって示される。
【数7】
【0062】
制約条件設定部63は、第3の制約条件として、予備力不足状態を表す離散変数(ok)に関する制約を設定する(式(8)~式(12)参照)。
【0063】
まず、不足期間情報の生成について説明する。式(8)は、事業所2Aの正味の電力需要(enet,k)を示す。正味の電力需要(enet,k)は、事業所2Aが消費できる電力の需要に、電気自動車3からの充放電の電力を加算した値である。事業所2Aが消費できる電力の需要は、事業所2Aの電力需要(ek)と、電力供給者1から事業所2Aに供給される最低供給電力(πk)とのうち、小さい方の電力である。最低供給電力(πk)は、電力供給量データベース10の電力供給情報に含まれる。
【数8】
【0064】
式(9)は、事業所2Aに供給される電力の供給予備力(ξk)を示す。供給予備力(ξk)は、最低供給電力(πk)から、正味の電力需要(enet,k)に予備力目標値(mk)を考慮した値を減算した値である。予備力目標値(mk)は、計画パラメータデータベース40の計画パラメータに含まれる。予備力目標値(mk)は、エネルギーマネジメントシステム運用者Mによって設定される。
【数9】
【0065】
式(10)は、離散変数(ok)に関する制約を示す。式(10)の離散変数(ok)は、供給予備力(ξk)が不足するとき(式(11)参照)には、離散変数(ok)が1となり、それ以外のとき(式(12)参照)には、離散変数(ok)が0となることを示している。なお、定数(M0)は、供給予備力(ξk)の絶対値がとり得る値より十分大きな正の定数である。
【数10】

【数11】

【数12】
【0066】
不足期間情報は、供給予備力(ξk)の不足又は充足を示す離散変数(ok)を含む。離散変数(ok)は、第1の値と、第1の値とは異なる第2の値と、のいずれかによって示される変数である。第1の値は、事業所2Aに供給される電力の量が、事業所2Aが要求する電力の量を満たすことができない状態を示す。式(13)によれば、第1の値は、「1」である。第2の値は、事業所2Aに供給される電力の量が、事業所2Aが要求する電力の量を満たすことができる状態を示す。式(13)によれば、第2の値は、「0」である。つまり、式(13)は、一例として、供給予備力(ξk)が0以上(充足)のとき0を割り当てる。式(13)は、供給予備力(ξk)が0未満(不足)のときに1を割り当てる。
【数13】
【0067】
[評価指標設定部]
ここで、目的関数、評価指標、重み(要素)の関係について示す。これらの関係は、例えば、「目的関数=評価指標1×重み1+評価指標2×重み2+評価指標3×重み3・・・」のように簡易的に示すことができる。つまり、評価指標ごとに設定するものは「重み」である。「評価指標×重み」を足し合わせたものが目的関数(最適化の用語)である。評価指標設定部64は、評価指標を設定する。評価指標設定部64は、評価指標ごとの重み付けと、目的関数を設定する。評価指標設定部64は、第1情報取得部64aと、第2情報取得部64bと、を含む。評価指標設定部64は、評価指標として、基本料金(fkw)と、従量制電力料金(fkWh)と、予備力不足時間と、を採用する。そして、評価指標設定部64は、これらの評価指標と重み付けとをもとに目的関数を設定する。
【0068】
第1情報取得部64aは、事業所2Aが供給を受ける電力と時間とが関連付けられた供給情報を取得する。この供給情報は、基本料金(fkw)と従量制電力料金(fkWh)とを含む。
【0069】
第1の評価指標である基本料金(fkw)は、ピーク電力によって決まる。基本料金(fkw)の単位は、「円」である。ピーク電力は、電力供給者1が事業所2Aに供給する電力の最大値である。また、ピーク電力は、電力供給者1と事業所2Aとの間で交わされる契約電力であるとも言える。基本料金(fkw)は、ピーク電力(z)に比例する。例えば、月額の基本料金(fkw)は、式(14)によって示される。
【数14】
【0070】
第2の評価指標である従量制電力料金(fkWh)は、充放電スケジュール(計画期間)に使用された電力量に比例する。従量制電力料金(fkWh)の単位も、「円」である。例えば、従量制電力料金(fkWh)は、式(15)によって示される。なお、右辺第2項(式(16)参照)は、電力の不足が発生した時(ok=1)には、料金が計上されないことを示す。
【数15】

【数16】
【0071】
第2情報取得部64bは、事業所2Aが要求する電力を満たすことができない不足期間を示す不足期間情報を取得する。事業所2Aが要求する電力とは、事業所2Aが通常行う事業を継続するために要する電力をいう。
【0072】
第3の評価指標である予備力不足時間(foutage)(不足期間情報)は、予備力が不足するステップのカウント値である。予備力不足時間(foutage)の単位は、「時間(hour)」である。例えば、予備力不足時間(foutage)は、式(17)によって示される。
【数17】
【0073】
[最適化計算部]
最適化計算部65は、最適化計算を実行する。最適化計算部65は、式(18)のように定式化された整数計画問題を解く。式(18)は、公知の最適化解法によって解くことができる。その結果、実時間で示される最適解又は準最適解を得ることができる。
【数18】
【0074】
供給予備力(ξk)が0以上(充足)のときは電力コスト(式(14)及び式(15))を最小化する充放電スケジュールが出力される。供給予備力(ξk)が0未満(不足)のとき予備力不足時間(式(17))を最小化する充放電スケジュールが出力される。供給予備力(ξk)は電気自動車3の充電動作及び放電動作によって変化する。式(18)によれば、電気自動車3の充電動作及び放電動作の影響も考慮した最適化を行うことができる。その結果、式(18)を解くことは、自律的に評価指標を切り替えた解を得ることができるとも言える。自律的な評価指標の切り替えは、予備力不足状態を示す離散変数(ok)の導入により可能になる。有事の際の評価指標は、離散変数(ok=1)となる回数をカウントすればよい。
【0075】
ここで、自律的に評価指標を切り替えについて、図4を参照しながら、その概念を説明する。図4は、式(18)の最適解を解く際に行われる計算の概念図を示している。図4(A)は、供給予備力(ξk)が0以上となり、不足期間情報(foutage)が不足期間が発生していないことを示すときの概念図である。このとき、供給情報に含まれる電力料金Xは、0よりも大きくなり、予備力不足時間Yは0になる(X>0、Y=0)。この場合、式(18)は、電力料金Xを示す。従って、最適化計算部65は、電力料金Xを評価指標として、電力料金Xを最小化する充放電スケジュールを出力する。
【0076】
図4(B)は、供給予備力(ξk)が0より小さくなり、不足期間情報(foutage)が不足期間が発生していることを示すときの概念図である。このとき、供給情報に含まれる電力料金X(円)、及び予備力不足時間Yは0より大きくなる(X>0、Y>0)。この場合、予備力不足時間Yは、要素(ε)によって重み付けされるため、式(18)は、予備力不足時間Yが支配的な値を示す。従って、最適化計算部65は、予備力不足時間Yを評価指標として、予備力不足時間Yを最小化する充放電スケジュールを出力する。
【0077】
つまり、最適化計算部65は、供給情報と、不足期間情報と、供給情報及び不足期間情報の少なくとも一方を重み付けする要素と、を含む関数を設定する。式(18)は、供給情報と、不足期間情報と、供給情報及び不足期間情報の少なくとも一方を重み付けする要素と、を含む。最適化計算部65は、式(18)を解くことによって充放電スケジュールを得る。式(18)は、供給情報(fkWh+fkW)と、不足期間情報(foutage)と、重み付けする要素(ε)と、を含む。式(1)、(2)、(3)、(6)、(7)は、制約条件として考慮される。要素(ε)は、各項を重み付けするためのパラメータであり、エネルギーマネジメントシステム運用者Mが設定する。要素(ε)は、不足期間情報(foutage)を重み付けする。
【0078】
[資源管理方法]
図5は、充放電計画システム4によって行われる資源管理方法のフローチャートである。
【0079】
まず、資源管理部60のデータ読込部61は、データを読み込む(ステップS10)。次に、資源管理部60の計画期間設定部62は、充放電スケジュールを設定する(ステップS20)。次に、資源管理部60の制約条件設定部63は、複数の制約条件を設定する(ステップS30)。次に、資源管理部60の評価指標設定部64は、各評価指標と、各評価指標ごとの重み付けと、評価指標及び重み付けから構成される目的関数とを設定する(ステップS40)。より詳細には、ステップS40では、第1情報取得部64aが供給情報を取得する(ステップS41)と共に第2情報取得部64bが不足期間情報を取得する(ステップS42)。例えば、ステップS41では、基本料金(fkw)を示す目的関数(式(14))及び従量制電力料金(fkWh)を示す目的関数(式15)を取得する。ステップS42では、予備力不足時間(foutage)(式17)を取得する。次に、資源管理部60の最適化計算部65は、整数計画問題として定式化した式(18)を、公知の最適化解法を用いて解く(ステップS50)。
【0080】
次に、資源管理部60は、ステップS50の結果(充放電スケジュール)を、充放電スケジュールデータベース70に出力する。充放電スケジュールデータベース70は、資源管理部60から受けた充放電スケジュールを保存する(ステップS60)。
【0081】
そして、充放電制御部80は、充放電スケジュールデータベース70から充放電スケジュールを読み出す。充放電制御部80は、充放電スケジュールを利用して充放電スタンド2Bの制御信号を生成する。そして、充放電制御部80は、制御信号を充放電スタンド2Bに出力する。その結果、電気自動車3の充電動作及び放電動作が制御される(ステップS70)。
【0082】
[資源管理プログラム]
コンピュータまたはコンピュータシステムを資源管理部60(資源管理装置)として機能させるための資源管理プログラムは、該コンピュータシステムをデータ読込部61、計画期間設定部62、制約条件設定部63、評価指標設定部64(第1情報取得部、第2情報取得部)及び最適化計算部65(計画出力部)として機能させるためのプログラムコードを含む。この資源管理プログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等の有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、資源管理プログラムは、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。提供された資源管理プログラムは例えばストレージ103に記憶される。プロセッサ101がストレージ103からその資源管理プログラムを読み出して実行することで、上記の各機能要素が実現する。
【0083】
[作用効果]
資源管理装置、資源管理方法、及び資源管理プログラムでは、供給情報と、不足期間情報と、不足期間情報を重み付けする要素(ε)と、を含む関数(式(18))の最適化問題を解くことにより、電気自動車3の蓄電池3aの充放電スケジュール(利用計画)が出力される。供給情報には、事業所2Aが供給を受ける電力と時間とが関連付けられており、平時における電力の需要が示される。不足期間情報には、事業所2Aが要求する電力の量を満たすことができない不足期間を示す情報が関連付けられており、電力が不足して通常の事業継続ができない有事の期間が示される。式(18)に示す関数では、不足期間情報を示す項に重み付け(ε)がなされる。この重み付け(ε)によれば、式(18)の最適化問題を解いた結果として得られる充放電スケジュールについて、平時には電力コストを最小化するという評価の指標と、有事において最低限の事業継続のための電力の確保という評価の指標と、が自律的に切り替わった結果を得ることが可能である。その結果、資源管理装置、資源管理方法、及び資源管理プログラムによれば、状況に応じて設定される互いに異なる目的を達成可能な資源の利用計画を出力できる。
【0084】
式(18)に示すように、重み付けする要素(ε)は、不足期間情報を重み付けする。これは、平時における評価指標と、有事における評価指標があるとき、平時における評価指標よりも有事における評価指標を優先することを意味する。換言すると、電力コストの最小化よりも最低限の事業継続のための電力の確保が優先される。つまり、不足期間情報への重みづけによれば、有事における事業継続に重みをおいた電気自動車3の蓄電池3aの充放電スケジュール(利用計画)を出力することができる。
【0085】
[計算例]
図6(A)及び図6(B)は、計算例の設定条件をまとめた表である。図7図9は、式(18)の最適化問題を解くことによって得られた充放電スケジュールの計算例の結果を示すグラフである。図7図9に示すように、計算例では72時間(3日間)の充放電スケジュールを生成した。電気自動車3の台数は、10台とした。充放電スケジュールの単位時間は、0.5時間とした。普通充電及び普通放電が可能な充放電スタンド2Bの数は3つとした。急速充電が可能な充放電スタンド2Bの数は1つとした。蓄電池3aの容量は50kWhとした。電気自動車3の普通充放電電力の上限値は、5kWとした。電気自動車3の急速充電電力の上限値は50kWとした。予備力目標値mは、0.1とした。不足期間情報を重み付けする要素(ε)は、10000とした。契約電力は500kW未満であり、電気料金の基本料金(fkw)は、1716円であるとした。電気料金の従量料金は、ピーク時間(13~16時)においては1kWhあたり20円52銭であり、昼間時間(8~13時、16~22時)においては1kWhあたり19円81銭であり、夜間時間(22~8時)においては1kWhあたり12円77銭であるとした。
【0086】
図7は、電力に関する条件のデータと充放電計画システム4による制御の結果のデータとを示す。図7の縦軸は、電力を示す。図7の横軸は、経過時間を示す。グラフG7aは、事業所2Aの電力需要(enet,k)を示す。つまり、グラフG7aは、式(1)の電力需要(ek)に対応する。グラフG7bは、事業所2Aの正味の電力需要(enet,k)を示す。つまり、グラフG7bは、式(1)の正味の電力需要(enet,k)に対応する。このグラフG7bは、充放電計画システム4による制御の結果である。グラフG7cは、事業所2Aに供給される最低供給電力(πk)を示す。つまり、グラフG7cは、式(9)の最低供給電力(πk)に対応する。グラフG7dは、事業所2Aの契約電力(pnet max)を示す。つまり、グラフG7dは、式(1)の契約電力(pnet max)に対応する。
【0087】
グラフG7aが示すように、条件として設定される電力需要(ek)は、1日(24時間)を単位として、周期的に変化するものとして設定した。具体的には、電力需要(ek)は、最低値が100kWであり、最大値が500kWであると設定した。さらに、電力需要(ek)は、0時間、24時間、48時間及び72時間の付近において最低値を取ると設定した。電力需要(ek)は、12時間、36時間及び60時間の付近において最大値を取ると設定した。
【0088】
グラフG7dが示すように、条件として設定される契約電力(pnet max)は500kW未満である。つまり、グラフG7bが示す正味の電力需要(enet,k)がグラフG7dを超えないように、契約電力が順守できていることがわかる。
【0089】
グラフG7cが示すように、条件として設定される最低供給電力(πk)は、1日目(0時間~24時間)と、3日目(48時間~72時間)とにおいて、550kWである。1日目と3日目とにおいて、グラフG7cが示す最低供給電力(πk)は、グラフG7aが示す電力需要(ek)より大きい。つまり、1日目と3日目とは、事業所2Aが要求する電力が十分に供給されている状態を示す。換言すると、1日目と3日目とは、平時期間T1A、T1Bである。一方、最低供給電力(πk)は、2日目(24時間~48時間)において、20kWである。2日目において、グラフG7cが示す最低供給電力(πk)は、グラフG7aが示す電力需要(ek)より小さい。つまり、2日目は、事業所2Aが通常の事業を行うために要求する電力に不足が生じている状態を示す。換言すると、2日目は、有事期間T2である。この場合には、事業所2Aは、1日目と3日目とで行われる事業を継続することができない。
【0090】
図8は、電力供給予備力(ξk)に関するデータを示す。図8の第1の縦軸は、予備力不足状態を示す離散変数(ok)(式(13)参照)を示す。上述したように、離散変数(ok=0)は、予備力不足状態でないことを示す。離散変数(ok=1)は、予備力不足状態であることを示す。図8の第2の縦軸は、供給予備力(ξk)(式(9)参照)を示す。グラフG8aは、離散変数(ok)を示す。つまり、グラフG8aは、式(13)の離散変数(ok)に対応する。グラフG8bは、供給予備力(ξk)を示す。つまり、グラフG8bは、式(9)の供給予備力(ξk)に対応する。
【0091】
グラフG8bを参照すると、電力需要(ek)が少ない時間帯(0時間、24時間、48時間及び72時間の付近)には、供給予備力(ξk)が増加することがわかった。一方、電力需要(ek)が多い時間帯(12時間、36時間及び60時間の付近)には、供給予備力(ξk)が低下することもわかった。
【0092】
グラフG8aを参照すると、平時期間T1A、T1Bには、離散変数(ok)が0となることがわかった。一方、有事期間T2には、離散変数(ok)が0又は1となることがわかった。資源管理部60は、有事期間T2には、有事である時間を最小化することを指標とする充放電スケジュールを出力する。有事期間T2におけるグラフG8bを参照すると、離散変数(ok)が0と1との間で複数回切り替わっている。つまり、グラフG8bによれば、需要に対して供給が不足する時間(離散変数(ok=1))を、需要に対して供給が満足する時間帯((離散変数(ok=0))に変換する制御が行われていることがわかった。
【0093】
図9は、電気自動車3の充放電電力に関するデータを示す。図9の第1の縦軸は、予備力不足状態を示す離散変数(ok)(式(13)参照)を示す。図9の第2の縦軸は、電気自動車3の充放電電力を示す。グラフG9aは、離散変数(ok)を示す。つまり、グラフG9aは、式(13)の離散変数(ok)に対応する。グラフG9bは、電気自動車3の充放電電力を示す。つまり、グラフG9bは、式(8)の右辺の第2項に対応する。グラフG9bは、符号が正であるときが充電動作を示し、符号が負であるときが放電動作を示す。
【0094】
グラフG9aが示すところは、図8のグラフG8aと同じであるから説明を省略する。
【0095】
グラフG9bを参照すると、供給力が高い時間帯(0時間、24時間、48時間及び72時間の付近)では、充電動作が行われていることがわかった。一方、供給力が低い時間帯(12時間及び60時間の付近)では、放電動作が行われていることがわかった。このようなタイミングでの充電動作及び放電動作によれば、電力供給者1から事業所2Aに提供される電力の変動が抑制される傾向にある。電力供給者1から事業所2Aに提供される電力の変動の抑制は、電力コストの最小化に寄与する。従って、資源管理部60は、平時期間T1A、T1Bには電力コストを最小化することを指標とした充放電スケジュールを出力できていることがわかった。
【0096】
また、グラフG9bを参照すると、有事期間T2では、継続的な放電動作が行われていることがわかった。この放電動作によって、予備力が不足する時間帯(離散変数(ok=1))を、予備力が充足する時間帯(離散変数(ok=0))に切り替えることができていることがわかった。つまり、資源管理部60は、有事期間T2には、有事である時間を最小化することを指標とする充放電スケジュールを出力できていることがわかった。
【0097】
以上の計算例の結果により、資源管理部60は、不足期間情報が不足期間が発生していることを示すとき(上記計算例の2日目に相当:有事期間T2)、電力が不足する期間を最小化する充放電スケジュールを出力できていることが確認できた。また、不足期間情報が不足期間が発生していないことを示すとき(上記計算例の1日目、3日目に相当:平時期間T1A、T1B)、電力料金を最小化する充放電スケジュールを出力できていることが確認できた。
【0098】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0099】
上記実施形態では、平時には電力料金を評価指標として、電力料金が最小化する充放電スケジュールを出力していたが、平時の評価指標は電力料金に限定されない。最低供給電力(πk)と電力需要(enet,k)との差分の需給アンバランス量を評価指標として、需給アンバランス量を最小化する充放電スケジュールを出力してもよい。電気自動車3の充電率を評価指標として、充電率を最大化する充放電スケジュールを出力してもよい。評価指標は、所定値(最大値又は最小値)が指定できるものであればよい。
【0100】
上記実施形態では、平時と有事とで評価指標が切り替わる例を説明したが、制約条件を切り替えてもよい。式(19)は、充放電する電気自動車3の同時実行可能台数の制約条件が切り替わる例を示す。式(19)によれば、有事の際の充放電スタンド2Bの数(C1 n)と、平時の際の充放電スタンド2Bの台数(C1 n)とが、自律的に切り替わる。この場合、例えば、携帯型の放電スタンドなどを使って、有事には平時より多くの電気自動車3を放電する充放電スケジュールを出力できる。
【数19】
【0101】
上記実施形態では、一例として、充放電計画システム4の管理対象である資源が電力である場合について説明したが、資源は、電力に限定されない。資源は、例えば、ガス及び燃料などエネルギー全般を含んでもよい。資源は、平時には平準化が求められ、有事には供給量の確保が求められるもの全てを含んでもよい。資源は、例えば、水、生活必需品、及び空間(物流倉庫、駐車場又は道路)を含んでもよい。また、資源貯蔵部は、電気自動車3に限定されない。資源が電力の場合、資源貯蔵部は燃料電池車でもよい。
【0102】
例えば、充放電計画システム4が管理する資源の例として、生活必需品など製品が挙げられる。この場合には、上述の実施形態と対比すると、電力供給者1からの電力を工場から出荷される製品と読み替えればよく、事業所2Aを消費者と読み替えればよく、電気自動車3を倉庫と読み替えればよい。倉庫を使った需供の調整(平準化)と製品のバックアップの確保(バックアップは必需品の場合特に必要である)を行ないつつ、他製品の保管などのその他の用途での倉庫利用を考慮した運用計画を作成できる。この場合には、資源貯蔵部は、倉庫などに保管されている製品の在庫を収容可能な空間である。資源貯蔵部は、管理対象である製品の保管だけでなく。別の製品の保管に用いることもできる。資源需要部は、消費者である。平時の評価指標は、倉庫間における製品の在庫量の平準化を採用してよい。倉庫間の製品の在庫量の平準化によれば、輸送効率及び稼働率を向上することができる。有事と平時との切り替えに用いる指標として、供給予備力を採用してよい。製品の供給予備力とは、消費者に供給される製品の量から、消費者が必要とする製品の需要に、予備力目標値を考慮した値を減算した値である。有事の評価指標は、供給予備力の不足時間を採用してよい。
【0103】
例えば、充放電計画システム4が管理する資源の別の例として、水が挙げられる。この場合には、上述の実施形態と対比すると、電力供給者1は川と読み替えればよく、事業所2Aは生活水又は工業用水といった水需要と読み替えればよい。この場合には、資源貯蔵部は、貯水池、ダム又は外郭放水路である。資源貯蔵部は、管理対象である貯水だけでなく、例えば、首都圏の外郭放水路などの規模を想定すると通常の土地利用も可能である。通常の土地利用の例示としては、観光、イベント、駐車場、広場としての利用が挙げられる。資源需要部は、企業又は自治体である。平時の評価指標は、河川流量の平準化を採用してよい。平時の制約条件として、河川の流量限界を採用してよい。有事と平時との切り替えに用いる指標として、河川の水資源供給予備力を採用してよい。有事の評価指標は、水の供給予備力の不足時間を採用してよい。充放電計画システム4によれば、川の水量調整、火災などの災害時用水源の確保、貯水とは異なる目的での土地利用に貯水池を利用する際の運用計画を立てることができる。換言すると、充放電計画システム4によれば、川の水量の平準化、バックアップ資源としての水の確保としての利用する際の貯水池の運用計画を立てることができる。
【0104】
上述した技術は、エネルギーシステムの経済性、事業継続性及び事業収益のみに関わるものではない。上述した技術は、社会全体としての経済的なエネルギー供給や環境負荷低減にも関わるものである。よって、本技術は、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」および目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に貢献するものである。
【符号の説明】
【0105】
1 電力供給者(資源供給部)
2A 事業所(資源需要部、需要家)
2B 充放電スタンド
3 電気自動車(資源貯蔵部)
4 充放電計画システム
10 電力供給量データベース
20 電力需要予測部
30 事業所電力需要データベース
40 計画パラメータデータベース
50 電気自動車利用予定データベース
60 資源管理部(資源管理装置)
61 データ読込部
62 計画期間設定部
63 制約条件設定部
64 評価指標設定部
64a 第1情報取得部
64b 第2情報取得部
65 最適化計算部(計画出力部)
70 充放電スケジュールデータベース
80 充放電制御部
M エネルギーマネジメントシステム運用者
U 電気自動車利用者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9