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特開2023-36363木質波状板材製三次元曲面具備成形物、その成形方法、および三次元曲面具備成形物成形用型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036363
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】木質波状板材製三次元曲面具備成形物、その成形方法、および三次元曲面具備成形物成形用型
(51)【国際特許分類】
   B27M 3/00 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
B27M3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143371
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】309015019
【氏名又は名称】地方独立行政法人青森県産業技術センター
(71)【出願人】
【識別番号】511083329
【氏名又は名称】株式会社今井産業
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】濱田 圭
(72)【発明者】
【氏名】舘山 大
(72)【発明者】
【氏名】今井 公文
【テーマコード(参考)】
2B250
【Fターム(参考)】
2B250CA15
2B250EA02
2B250EA13
2B250FA23
2B250FA28
2B250HA01
2B250HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】木質波状板材をかかる一枚の材からの三次元曲面成形に用いて、平面の薄板材一枚では成形困難な三次元曲面成形物を、任意に、容易に、かつ多大な電力等のエネルギーや特別な装置等を用いずに低コストで得ることのできる技術を提供すること。
【解決手段】木質波状板材製三次元曲面具備成形物10Aは、山と谷からなる波状構造が一定方向に連続して形成されている木質板材であるところの木質波状板材を用いて成形されており、三次元曲面を備えている構成である。木質波状板材を、筒状物形成過程、成形用型にセットするセット過程、浸漬媒体中に浸漬する浸漬過程、その後の乾燥過程を経ることによって得られる。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
山と谷からなる波状構造が一定方向に連続して形成されている木質板材であるところの木質波状板材を用いて成形されており、三次元曲面を備えていることを特徴とする、木質波状板材製三次元曲面具備成形物。
【請求項2】
前記木質波状板材が前記波状構造と交わる方向に巻かれ、両端部が接着されていることにより略筒状をなしていることを特徴とする、請求項1に記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物。
【請求項3】
前記木質波状板材が株式会社今井産業製のe.wood+(登録商標)であることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物。
【請求項4】
請求項1、2、3のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物が加工されてなることを特徴とする、木質波状板材製三次元曲面具備成形物。
【請求項5】
山と谷からなる波状構造が一定方向に連続して形成されている木質板材であるところの木質波状板材を用いて三次元曲面を備えた成形物を成形する方法であって、該木質波状板材を該波状構造と交わる方向に巻いて両端部を接着し略筒状である筒状物に形成する筒状物形成過程と、該筒状物を成形用型にセットするセット過程と、該セット状態の該筒状物を浸漬媒体中に浸漬して該成形用型に合わせた変形を促すための浸漬過程と、該浸漬後の該筒状物を該セット状態のまま乾燥させる乾燥過程と、からなることを特徴とする、木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
【請求項6】
前記浸漬過程では、前記筒状物が前記成形用型に十分当接する程度の膨張に必要な浸漬媒体を含ませる浸漬処理が行われることを特徴とする、請求項5に記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
【請求項7】
前記筒状物形成過程における接着は、仮止め用接着剤を用いた仮止めであることを特徴とする、請求項5、6のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
【請求項8】
前記乾燥過程後には乾燥後過程が設けられ、該乾燥後過程には前記仮止めの除去過程、前記両端部の最終的な接着過程が含まれていることを特徴とする、請求項7に記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
【請求項9】
前記成形用型として、前記筒状物の外側への変形を規制する外側型が用いられることを特徴とする、請求項5、6、7、8のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
【請求項10】
前記成形用型として、前記外側型に加えて、前記筒状物の内側への変形を規制する内側型が用いられることを特徴とする、請求項9に記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
【請求項11】
請求項1、2、3、4のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物の成形、または、請求項5、6、7、8、9、10のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法の実施に用いられることを特徴とする、三次元曲面具備成形物成形用型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は木質波状板材製三次元曲面具備成形物、その成形方法、および三次元曲面具備成形物成形用型に係り、特に、1枚の木質波状板材から任意の三次元曲面を備えた成形物を得ることのできる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
木質材の三次元曲面成型には従来、材料の煮沸や高周波とプレス機の使用、高圧に耐える成型用型などを必要とする。つまり、その成形・製造には、多大な電力や動力、特別な装置や道具を要するものであり、高コストであり、決して容易に行うことのできる技術ではない。特に、平面状態の突板一枚から三次元曲面形状を成形することは困難である。
【0003】
一方、出願人・株式会社今井産業はかねて、木製薄板の連続曲げ加工技術を開発した。これは木材からなる波形ボードであり、木材の維管束伸延方向である維管束方向と、これに直交する方向とによって規定される基準面上の一方向に、連続的に波形状を形成した、機能性・デザイン性をともに備える素材である。この素材をe.wood+(登録商標)と名付け、本素材を用いたパネル形状、積層板形状、組立体形状など、種々の応用製品を開発、提供している(後記特許文献、非特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-214051号公報「波形ボード、波形ボードの製造方法、及びこの波形ボードを用いた組立体」
【特許文献2】特開2015-163482号公報「波形ボードの製造方法」
【特許文献3】特開2017-154268号公報「波形ボード製造システムおよび波形ボード製造方法」
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社今井産業のWebページのURL:http://www.imaisangyou.com/
【非特許文献2】WOOD MAKER JAPAN株式会社のWebページのURL:http://woodmaker.jp/material/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
木質材の三次元曲面成型、特に平面状態の突板一枚からの三次元曲面形状成形を、従来のような電力や動力、特別な装置や道具を用いることなくより容易に、低コストで行える技術があれば便利である。また一方、木質波状板材であるところの上記e.wood+(登録商標)については、パネル形状・積層板形状・組立体形状成形等への利用を越えたさらなる利用技術が得られると、本素材の利用・普及拡大を一層進めることができる。同素材では従来、平面の伸縮を伴わずに形成可能な曲面(可展面)を形成して製品に応用することはなされているが、三次元曲面の形成技術開発は未だなされていない。
【0007】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の状況を踏まえ、 木質材の三次元曲面成形、特に平面の薄板材一枚では成形困難な平面状態の突板一枚からの三次元曲面形状成形を、従来のような多大な電力や動力といったエネルギーや特別な装置、道具を用いることなくより容易に、低コストで行える技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した結果、木質波状板材が水分を吸収した際の細胞膨張による変形作用を制御することにより、所望の三次元曲面形状を得られることに想到した。つまり、水分を吸収した際に平面に戻ろうとする特性を有する木質波状板材を、成形用の型で任意の形状に制御し、その後、乾燥により形状を固定するという過程を経て三次元曲面成型物を得る方法である。
【0009】
そして実験によりその作用効果を確認し、これに基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0010】
〔1〕 山と谷からなる波状構造が一定方向に連続して形成されている木質板材であるところの木質波状板材を用いて成形されており、三次元曲面を備えていることを特徴とする、木質波状板材製三次元曲面具備成形物。
〔2〕 前記木質波状板材が前記波状構造と交わる方向に巻かれ、両端部が接着されていることにより略筒状をなしていることを特徴とする、〔1〕に記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物。
〔3〕 前記木質波状板材が株式会社今井産業製のe.wood+(登録商標)であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物。
〔4〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物が加工されてなることを特徴とする、木質波状板材製三次元曲面具備成形物。
〔5〕 山と谷からなる波状構造が一定方向に連続して形成されている木質板材であるところの木質波状板材を用いて三次元曲面を備えた成形物を成形する方法であって、該木質波状板材を該波状構造と交わる方向に巻いて両端部を接着し略筒状である筒状物に形成する筒状物形成過程と、該筒状物を成形用型にセットするセット過程と、該セット状態の該筒状物を浸漬媒体中に浸漬して該成形用型に合わせた変形を促すための浸漬過程と、該浸漬後の該筒状物を該セット状態のまま乾燥させる乾燥過程と、からなることを特徴とする、木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
【0011】
〔6〕 前記浸漬過程では、前記筒状物が前記成形用型に十分当接する程度の膨張に必要な浸漬媒体を含ませる浸漬処理が行われることを特徴とする、〔5〕に記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
〔7〕 前記筒状物形成過程における接着は、仮止め用接着剤を用いた仮止めであることを特徴とする、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
〔8〕 前記乾燥過程後には乾燥後過程が設けられ、該乾燥後過程には前記仮止めの除去過程、前記両端部の最終的な接着過程が含まれていることを特徴とする、〔7〕に記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
【0012】
〔9〕 前記成形用型として、前記筒状物の外側への変形を規制する外側型が用いられることを特徴とする、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
〔10〕 前記成形用型として、前記外側型に加えて、前記筒状物の内側への変形を規制する内側型が用いられることを特徴とする、〔9〕に記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法。
〔11〕 〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物の成形、または、〔5〕、〔6〕、〔7〕、〔8〕、〔9〕、〔10〕、のいずれかに記載の木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法の実施に用いられることを特徴とする、三次元曲面具備成形物成形用型。
【発明の効果】
【0013】
本発明の木質波状板材製三次元曲面具備成形物、その成形方法、および三次元曲面具備成形物成形用型は上述のように構成されるため、これらによれば、木質材の三次元曲面成形、特に平面状態の突板一枚からの三次元曲面形状成形を、従来のような電力や動力、特別な装置や道具を用いることなくより容易に、低コストで行うことができる。つまり、木質波状板材をかかる一枚の材からの三次元曲面成形に用いて、平面の薄板材一枚では成形困難な三次元曲面成形物を、任意に、容易に、かつ多大な電力・動力等のエネルギーや特別仕様の装置や型等を用いずに、低コストで得ることができる。
【0014】
従来、平面状態の突板から三次元曲面形状を成形するのは困難であるが、本発明では、木質波状板材を使用することにより、水に漬け、その後、乾燥するという極めて容易な作業により三次元曲面が得られる。また、型の形状を替えることで様々な曲面を任意に成形できる。本発明を用いることによって、木質材では前例の見当たらない、デザイン性の高い形状の成形物を得ることができ、広い分野に亘る製品開発への応用を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物に用いる木質波状板材の構造を示す説明図である。
図2A】本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物の例を示す説明図である。
図2B】本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物の例を示す説明図である。
図3】本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法の基本構成を示すフロー図である。
図4】本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法のより詳細な構成例を示すフロー図である。
図5】本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法に用いる成形用型の構成を概念的に示す説明図である。 図6~10は、実施例1に係る各図面である。
図6】材料である木質波状板材を円筒形にした状態を示す説明図である。
図7】提灯型成形物成形用の成形用型の構造を示す説明図である。
図8】成形用型に筒状物をセットした状態を示す説明図である。
図9】筒状物をセットした成形用型の扉を閉めた状態を示した図である。
図10】浸漬過程を完了した状態を示す説明図である。 図11~14は、実施例2に係る各図面である。
図11】ラッパ型成形物成形用の成形用型の構造を示す説明図である(内側型)。
図12】ラッパ型成形物成形用の成形用型の構造を示す説明図である(外側型)。
図13】筒状物が外側型にセットされている状態を示す説明図である。
図14図13の状態にさらに内側型がされている状態を示す説明図である。 図15は、実施例3に係る図面である。
図15】本発明により成形可能な木質波状板材製三次元曲面具備成形物の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物に用いる木質波状板材の構造を示す説明図である。また、
図2A、2Bは、本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物の例を示す説明図である。これらに示すように本木質波状板材製三次元曲面具備成形物10A、10Bは、山1と谷2からなる波状構造3が一定方向に連続して形成されている木質板材であるところの木質波状板材5を一枚用いて成形されており、三次元曲面を備えていることを、主たる構成とする。本木質波状板材製三次元曲面具備成形物10A等を得るための基礎的な形状は、波状板材一枚による円筒形であるが、本発明成形物10A等はこの円筒形を基礎として任意の三次元曲面形状が形成された成形物である。なお、三次元曲面とは、平面を変形させることによって成立させることのできない曲面、つまり可展面ではない曲面である。
【0017】
本木質波状板材製三次元曲面具備成形物10A等は、木質波状板材5が前記波状構造3と交わる方向に巻かれ、両端部4a、4zが接着されていることにより、略筒状をなしている。ここで「略筒状」とは、完全な円筒のように平面を変形させることによって得られる曲面(可展面)は含まず、上記「基礎的な形状」である円筒に対して変形が加えられて三次元曲面が形成されている形状をいう。なお、本木質波状板材製三次元曲面具備成形物10A等の材料である木質波状板材5としては、上述のe.wood+(登録商標)を好適に用いることができる。
【0018】
図1に例示する木質波状板材5は波状構造3の形成方向を長辺とする長方形状であり、長辺方向に巻かれることにより上記「基礎的な形状」である円筒を容易に形成できるため、好適な形態である。しかし木質波状板材の形態はこれに限定されず、波状構造の形成方向を短辺とする長方形状であっても、あるいは平行四辺形状や台形状であっても、さらにはいかなる任意の形状であってもよく、本発明から除外されない。また、図2A、2Bに例示する木質波状板材製三次元曲面具備成形物10A、10Bもあくまでも一例であり、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物10A等は略筒状をなす形態を基本とするが、これに対して何らかの加工が施されてなる物もまた、本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物の範囲内である。たとえば、略筒状に形成されている木質波状板材製三次元曲面具備成形物(以下、単に「成形物」ともいう。)がその高さ方向などある方向に切断されて開口が設けられている形態、開いている形態、などである。
【0020】
図3は、本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法の基本構成を示すフロー図である。なお説明中の符号としては、図1等既出の図面の符号も用いることがある。図示するように本成形物成形方法P100は、山1と谷2からなる波状構造3が一定方向に連続して形成されている木質板材すなわち木質波状板材5を用いて三次元曲面を備えた成形物10を成形する方法であって、木質波状板材5を波状構造3と交わる方向に巻いて両端部4a、4zを接着し略筒状である筒状物6に形成する筒状物形成過程P10と、筒状物6を成形用型7にセットするセット過程P20と、セット状態の筒状物6を浸漬媒体8中に浸漬して成形用型7に合わせた変形を促すための浸漬過程P30と、浸漬後の筒状物6をセット状態のまま乾燥させる乾燥過程P40とを備えてなることを、主たる構成とする。
【0021】
かかる構成の本フローによる作用を説明する。まず筒状物形成過程P10では、木質波状板材5は波状構造3と交わる方向に巻かれ、両端部4a、4zが接着されて略筒状である筒状物6に形成され、セット過程P20では、筒状物形成過程P10で形成された筒状物6が成形用型7にセットされ、浸漬過程P30では、セット過程P20にて成形用型7へのセット状態となった筒状物6がセット状態のままで浸漬媒体8中に浸漬されて成形用型7に合わせた変形が促され、そして乾燥過程P40では、浸漬過程P30での浸漬後の筒状物6がセット状態のまま乾燥処理される。これら諸過程P10~P40を経ることにより、木質波状板材5は三次元曲面を備えた成形物10へと成形される。
【0022】
本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法P100は、木質波状板材5が水分を吸収した際に細胞膨張によって平面に戻ろうとする特性、変形作用を成形用型7で任意の形状に制御し、三次元曲面成形物10を得るものである。したがって、浸漬過程P30で用いる浸漬媒体8にはかかる作用を得るのに十分な水分を有する媒体であればよい(つまり、水を用いればよい。以下では、浸漬媒体8=水 として説明する)。また、本発明成型方法で用いる木質波状板材5の枚数は、一枚であることを基本とする。
【0023】
本木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法P100の浸漬過程P30では、筒状物6が成形用型7に十分当接する程度の膨張に必要な浸漬媒体8を含ませる浸漬処理が行われる。つまり本浸漬過程P30を経ることにより、筒状物6はその内部に浸漬媒体8を含む状態となるが、含むべき浸漬媒体8の量は、筒状物6をセットする成形用型7の内壁に対して十分に当接する程度までに筒状物6を膨張させるのに十分な量である。かかる十分な量の浸漬媒体8の含浸を得るための条件は、浸漬時間の長さや浸漬媒体8の温度によって、適宜に整えることができる。
【0024】
筒状物形成過程P10における接着は、仮止め用接着剤を用いた仮止めとすればよい。本過程P10はあくまでも、後続のセット過程P20、浸漬過程P30、および乾燥過程P40を通して、木質波状板材5の両端部4a、4zを仮に固定し、これらの過程P20、P30、P40を効率的に、円滑に進めるための接着処理でよいからである。最終的な接着についてはこの後述べる。
【0025】
図4は、本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法のより詳細な構成例を示すフロー図である。図示するように本成形物成形方法P150は、図3で説明した各過程P10、P20、P30、P40に加え、乾燥過程P40後に乾燥後過程P50が設けられ、乾燥後過程P50には仮止めの除去過程P51、両端部の最終的な接着過程P53が含まれていることを、特徴的な構成とする。
【0026】
かかる構成により本フローでは、図3でも示した各過程P10、P20、P30、P40により木質波状板材5から三次元曲面を備えた乾燥済み成形物r10が得られる。この乾燥済み成形物r10は所望の三次元曲面が形態として固定された状態のものではあるが、未だ仮止めのままである。これが乾燥後過程P50に供されると、その中の仮止めの除去過程P51において、成形物r10における端部4a―4z間の仮止め除去による接着状態が一旦解除され、そして最終的な接着過程P53において、両端部間の最終的な接着がなされ、その後必要な場合にはその他の処理がなされて、最終的に木質波状板材製三次元曲面具備成形物110が得られる。
【0027】
なお、筒状物形成過程P10における仮止めは、各処理を経た筒状物6の端部が最終的には必要な調製処理を施されて成形物110の完成を得る可能性を考慮するものである。かかる調製処理が必要な場合は、仮止めの除去過程P51と両端部の最終的な接着過程P53との間に行われる。なお、実施例にも後述するが、最終的な接着過程P53の後に、さらに仕上げ過程や塗装過程などを付加して成形物110を得ることは、適宜に可能である。
【0028】
図5は、以上説明したいずれかの本発明木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法に用いる成形用型の構成を概念的に示す説明図である。図中(a)に示すように成形用型17は、筒状物の外側への変形を規制する外側型であるものとすることができる。一方、図中(b)に示すように成形用型は、外側型27Xに加えて、筒状物の内側への変形を規制する内側型27Eを併用することとしてもよい。本図に示すものを含め、本発明に用いる三次元曲面具備成形物成形用型もまた、本発明の範囲内である。
【実施例0029】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
〔実施例1 提灯型の三次元曲面具備成形物の成形〕
三次元曲面具備成形物成型方法の例として、提灯型の成形物を成形する方法を、図を用いて述べる。
図6は、材料である木質波状板材を円筒形にした状態を示す説明図である。一枚の木質波状板材35を、波状構造33と交わる方向に巻いて両端部を接着(仮止め)し、円筒形の筒状物36にした状態である。すなわち、筒状物形成過程が完了した状態である。
【0030】
図7は、提灯型成形物成形用の成形用型の構造を示す説明図である。本成形用型37は、周方向に閉じた筒状の成形物たる提灯型成形物を得るために、筒状物36を提灯型に形成された内部に収容し、保持するよう形成されている。扉37dは、筒状物36の収容、取出しの際に用いられ、図では左右の扉37d、37dを開けた状態を示す。なお、本成形用型37の構造はあくまでも一例である。実施例2、3の説明において示す別の成形用型についても同様である。
【0031】
図8は、成形用型に筒状物をセットした状態を示す説明図である。また、
図9は、筒状物をセットした成形用型の扉を閉めた状態を示した図である。図9は、セット過程が完了した状態であり、変形のための浸漬過程はまだなされておらず、収容された筒状物36にはまだ変形が生じていない。
【0032】
図10は、浸漬過程を完了した状態を示す説明図である。成形用型37内に収容された状態(セット過程 図9)の筒状物36を、セットされたままで一定時間、浸漬媒体である水に浸漬する浸漬過程を経た後、水から引き上げた状態を示す。成形用型37内に、浸漬過程を経て、提灯型の成形用型37内に十分に当接した、膨張状態の筒状物q36が、内部にまだ収容されている状態である。この後、膨張状態の筒状物q36は乾燥過程等を経て、完成した提灯型成形物310(図2Aの10Aと同じにつき、図示省略)となる。
【0033】
〔実施例2 ラッパ型の三次元曲面具備成形物の成形〕
三次元曲面具備成形物成型方法の例として、ラッパ型の成形物を成形する方法を、図を用いて述べる。
筒状物形成過程については、実施例1と同じである(図6参照)。
図11、12は、ラッパ型成形物成形用の成形用型の構造を示す説明図であり、それぞれ内側型、外側型を示した図である。また、
図13は、筒状物が外側型にセットされている状態を示す説明図、
図14は、図13の状態にさらに内側型がされている状態を示す説明図である。
【0034】
本成形用型47E(内側型)、47X(外側型)の使用方法は、まず外側型47Xを筒状物46に被せるようにセットし、それを浸漬過程に供して膨張状態の筒状物q46を得た後(図13)、内側型47Eを膨張状態の筒状物q46の内側からセットする(図14)、という手順である。その後の浸漬過程は、行う,必要に応じて行う、行わない、のいずれでもよい。この後、膨張状態の筒状物q46は乾燥過程等を経て、完成したラッパ型成形物410(図2Bの10Bと同じにつき、図示省略)となる。
【0035】
〔実施例3 その他の形状例〕
図15は、本発明により成形可能な木質波状板材製三次元曲面具備成形物の例を示す説明図である。図示するように本発明によれば、実施例1、2で示した提灯型やラッパ型の他にも、種々の形状の成形物を成形することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の木質波状板材製三次元曲面具備成形物、その成形方法、および三次元曲面具備成形物成形用型によれば、木質波状板材を三次元曲面成形に用い、平面の薄板材一枚では成形困難な三次元曲面成形物を、任意に、容易に、かつ多大な電力等のエネルギーや特別な装置等を用いずに、低コストで得ることができる。特に、照明器具やインテリア用品、木工芸品など、デザイン性の要求が高い物品の製造、使用分野、および関連する全分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0037】
1…山
2…谷
3、33…波状構造
4a、4z…両端部
5、35…木質波状板材
6、36…筒状物
7、17、37…成形用型
8…浸漬媒体
10、10A(310)、10B(410)、110…木質波状板材製三次元曲面具備成形物
27E、47E…成形用型(内側型)
27X、47X…成形用型(外側型)
37d…成形用型の扉
P10…筒状物形成過程
P20…セット過程
P30…浸漬過程
P40…乾燥過程
P50…乾燥後過程
P51…仮止めの除去過程
P53…最終的な接着過程
P100、P150…木質波状板材製三次元曲面具備成形物成形方法
q36、q46…膨張状態の筒状物
r10…乾燥済み木質波状板材製三次元曲面具備成形物
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15