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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003638
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/232 20110101AFI20230110BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20230110BHJP
【FI】
B60R21/232
B60R21/213
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104832
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(72)【発明者】
【氏名】長澤 康悟
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA02
3D054AA03
3D054AA04
3D054AA07
3D054CC03
3D054CC29
3D054CC30
3D054DD14
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】乗員拘束性能を向上できるとともに、安定した展開が可能なエアバッグを提供する。
【解決手段】第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30に対し車幅方向に少なくとも一部が重なって配置される。取付部32は、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とが車幅方向に重ならない位置で第一エアバッグ本体部30に配置された第一取付部65を有する。取付部32は、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とが車幅方向に重なる位置で第二エアバッグ本体部31に配置された第二取付部66を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳まれた状態からガスが供給されることで車室内に展開するエアバッグであって、
乗員の側方に展開する袋状の第一エアバッグ本体部と、
この第一エアバッグ本体部と非連通で、この第一エアバッグ本体部に対して車室外側に展開する袋状の一以上の第二エアバッグ本体部と、
車体側に取り付けられる取付部と、を備え、
前記第二エアバッグ本体部は、前記第一エアバッグ本体部に対し車幅方向に少なくとも一部が重なって配置され、
前記取付部は、
前記第一エアバッグ本体部と前記第二エアバッグ本体部とが車幅方向に重ならない位置で前記第一エアバッグ本体部に配置された第一取付部と、
前記第一エアバッグ本体部と前記第二エアバッグ本体部とが車幅方向に重なる位置で前記第二エアバッグ本体部に配置された第二取付部と、を有する
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
第一エアバッグ本体部と第二エアバッグ本体部の少なくともいずれかとは、互いに固定されている
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳まれた状態からガスが供給されることで車室内に展開するエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスが導入されて膨張展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置について、自動車の車室の側部のピラー部及びドアの窓部などを含む所定面に沿って前後に長手状のエアバッグを展開するいわゆるカーテンエアバッグ装置が知られている。このようなエアバッグ装置のエアバッグは、通常時は細長く折り畳まれ、窓部の上縁部のルーフサイド部に沿って配置されている。そして、側面衝突や横転(ロールオーバー)などの衝撃を受けた際に、インフレータからガスが供給され、エアバッグが側部の窓ガラスなどに沿って下方に膨張展開して、乗員を拘束して頭部などを保護する。
【0003】
このようなエアバッグにおいて、車内側に位置するメインの膨張部の車外側に、このメインの膨張部と通気孔を介して内部空間が結合されたサブの膨張部を備える構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-46175号公報 (第5-7頁、図1-3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の構成の場合、部分的にストロークが増加するものの、メインの膨張部とサブの膨張部とが連通しているので、内圧に有効な変化が生じにくい。
【0006】
また、メインの膨張部の上辺に車体への取付部を設けた状態でサブの膨張部が設定されているため、サブの膨張部の設定箇所の周辺において、メインの膨張部が押し上げられるなど、エアバッグの展開を安定させにくくするおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、乗員拘束性能を向上できるとともに、安定した展開が可能なエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のエアバッグは、折り畳まれた状態からガスが供給されることで車室内に展開するエアバッグであって、乗員の側方に展開する袋状の第一エアバッグ本体部と、この第一エアバッグ本体部と非連通で、この第一エアバッグ本体部に対して車室外側に展開する袋状の一以上の第二エアバッグ本体部と、車体側に取り付けられる取付部と、を備え、前記第二エアバッグ本体部は、前記第一エアバッグ本体部に対し車幅方向に少なくとも一部が重なって配置され、前記取付部は、前記第一エアバッグ本体部と前記第二エアバッグ本体部とが車幅方向に重ならない位置で前記第一エアバッグ本体部に配置された第一取付部と、前記第一エアバッグ本体部と前記第二エアバッグ本体部とが車幅方向に重なる位置で前記第二エアバッグ本体部に配置された第二取付部と、を有するものである。
【0009】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、第一エアバッグ本体部と第二エアバッグ本体部の少なくともいずれかとは、互いに固定されているものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のエアバッグによれば、車幅方向に重なる第一エアバッグ本体部と第二エアバッグ本体部とのエネルギ吸収ストロークを有効に活用してエネルギ吸収ストロークを増加させつつ、低い荷重で乗員の頭部を保護でき、乗員拘束性能が向上するとともに、第一エアバッグ本体部と第二エアバッグ本体部との車体側への取り付け位置を直線状とすることができ、第一エアバッグ本体部と第二エアバッグ本体部とを、安定して展開させることが可能になる。
【0011】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加えて、膨張展開時に第一エアバッグ本体部と同様に第二エアバッグ本体部に張力を付与でき、乗員拘束性能をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施の形態のエアバッグを車室内側から示す側面図である。
図2】同上エアバッグの展開状態を車室前側から示す正面図である。
図3】同上エアバッグの収納状態を車室内側から示す側面図である。
図4】同上エアバッグの展開状態を模式的に示す斜視図である。
図5】本発明の第2の実施の形態のエアバッグを車室内側から示す側面図である。
図6】本発明の第3の実施の形態のエアバッグの収納状態を車室内側から示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の第1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1及び図2において、10はエアバッグである。エアバッグ10を備えたエアバッグ装置11は、カーテンエアバッグ装置とも呼ばれ、車両である自動車の車体13の車室14の収納位置としてのルーフサイド部15に配置されている。そして、エアバッグ10は、カーテンエアバッグ、側突用エアバッグ、インフレータブルカーテン、あるいは頭部保護用エアバッグなどとも呼ばれるもので、側面衝突の衝撃を受けた際や横転(ロールオーバー)の際などに、被保護物としての乗員の側方にほぼ面状に所定方向である下方へと展開し、乗員の頭部などを保護するようになっている。
【0015】
なお、以下、前後方向、車幅方向である両側方向、上下方向などの方向は、車両の直進方向を基準とし、前側方向(矢印F方向)、後側方向(矢印R方向)、上方(矢印U方向)、下方(矢印D方向)、車室14の外方(矢印W方向)、車室14の内方(矢印C方向)などを説明する。
【0016】
そして、自動車の車体13は、車室14内に乗員Hが着座可能な座席である前席及び後席を備え、これら前席及び後席に対応して、それぞれ上部に開口可能なガラスにより覆われた(第一及び第二の)窓部(サイドウィンドウ)18,19を備えたドアが設けられている。また、車室14の両側には、前側から順に、Aピラーとも呼ばれる(第一の)柱状体としてのフロントピラー21、Bピラーとも呼ばれる(第二の)柱状体としてのセンターピラー22、Cピラーとも呼ばれる(第三の)柱状体としてのリアピラー23が設けられており、フロントピラー21の後方でかつセンターピラー22の前方に窓部18が位置し、センターピラー22の後方でかつリアピラー23の前方に窓部19が位置している。そして、これら窓部18,19、ドア及び各ピラー21,22,23により、車室14の両側部にエアバッグ10が展開する所定面24が構成されている。また、これらピラー21,22,23の上側、すなわち窓部18,19の一縁部である上縁部に、ルーフサイドレールなどとも呼ばれる被取付部材を構成する車体パネル25が設けられ、この車体パネル25を介して天井部としての天井パネルが支持されている。また、両側のフロントピラー21の前側にはフロントガラス(フロントウインドシールド)が設けられ、両側のリアピラー23の後側にはリアガラスが設けられている。そして、収納位置としてのルーフサイド部15は、天井パネルの両側の縁部の部分から、この縁部の部分といわば交差する方向に延びるフロントピラー21及びリアピラー23のほぼ全長に掛かる部分にまで設定され、これら天井パネルの縁部の部分とフロントピラー21及びリアピラー23とで仮想的に構成される弧の内側に所定面24が設定される。
【0017】
なお、センターピラー22とは、前後の端部のピラー部ではなく、展開したエアバッグ10に覆われるピラー部を示す。また、車両の種類によっては、片側に例えば4本以上のピラー部を備える場合があるが、前から3本目以後のピラー部は、リアピラー23として説明する。
【0018】
そして、エアバッグ装置11は、前席及び後席の乗員を保護可能な、いわゆる前後席用エアバッグ装置であり、エアバッグ10とこのエアバッグ10にガスを供給するガス発生器であるインフレータ27となどを備える。また、エアバッグ装置11は、エアバッグ10を車体パネル25に取り付けるブラケット、及び折り畳んだエアバッグ10の形状を保持する形状保持部材としてのスリーブ、エアバッグ10の前端部に連結されたテザー部としてのテザーベルト29などが備えられている。また、各ピラー21,22,23のそれぞれの車室14の室内側は、構造物としてのカバー体すなわち被覆内装材であるピラーガーニッシュにより覆われている。
【0019】
エアバッグ10は、車体パネル25と各ピラー21,22,23の上端から天井へと連続する内装材としての天井被覆部材であるヘッドライニングとなどに囲まれたルーフサイド部15すなわち車体13のドア開口部の上縁に沿って細長く折り畳んで収納される。本実施の形態では、エアバッグ10には、第一エアバッグ本体部30と、一以上の第二エアバッグ本体部31と、エアバッグ10を車体13側に取り付けるための取付部32と、が設定されている。
【0020】
第一エアバッグ本体部30は、メイン気室、メインクッションなどとも呼ばれる部分である。第一エアバッグ本体部30は、車幅方向に扁平な袋状に形成されている。第一エアバッグ本体部30は、単数または複数の基布により構成され、基布の外縁部が縫製などにより接合されることで袋状となっている。また、第一エアバッグ本体部30は、展開状態で乗員Hの側方に配置される。第一エアバッグ本体部30は、所定面24において、窓部18,19に対応する領域を覆い、前席から後席の側方に亘る前後の領域に展開する部分である。第一エアバッグ本体部30は、前後方向に長手方向を有して形成されている。第一エアバッグ本体部30は、第二エアバッグ本体部31よりも前後方向に長く延びている。また、第一エアバッグ本体部30は、第二エアバッグ本体部31よりも容積が大きく設定されている。さらに、第一エアバッグ本体部30は、例えば前端部がテザーベルト29により車体13側に取り付けられている。
【0021】
また、第一エアバッグ本体部30には、ガスの流れを規制する複数の規制部である非膨張部35が配置され、これら非膨張部35によって、第一エアバッグ本体部30が複数の膨張部36に区画されている。また、第一エアバッグ本体部30には、インフレータ27からガスが導入される第一ガス導入部37が形成されている。ここで、第一ガス導入部37は、第一エアバッグ本体部30の展開基端側である上側に位置する。本実施の形態では、第一ガス導入部37が第一エアバッグ本体部30の上部の前後方向の中央部に突設された、センターマウントタイプとなっている。これに限らず、第一ガス導入部37が第一エアバッグ本体部30の後部側に突設された、リアマウントタイプであってもよい。
【0022】
非膨張部35は、第一エアバッグ本体部30の車幅方向の膨張ストロークを規制する。非膨張部35は、第一エアバッグ本体部30を構成する基布が接合される接合部として形成されている。非膨張部35は、第一エアバッグ本体部30の形状や保護する領域などに応じて任意に設定してよい。非膨張部35は、それぞれ線状に形成されており、先端部には、基布が円形状に接合された保護部が形成されている。このような保護部が設けられることにより、膨張展開時における基布の伸びの確保と皺の発生の防止、また、第一エアバッグ本体部30の膨張展開時に非膨張部35の端部へ生じる応力集中に対して充分な強度を得ることができる。本実施の形態では、非膨張部35には、第一ないし第四非膨張部40,41,42,43が設定されている。そのため、本実施の形態では、膨張部36に、前側主室45、前側副室46、前側連通路47、後側主室48、後側副室49、後側供給路50、後側連通路51が設定されている。
【0023】
第一非膨張部40は、第二ないし第四非膨張部41~43よりも前方に離間されて位置している。すなわち、第一非膨張部40は、非膨張部35のうち最前部に位置するものである。本実施の形態において、第一非膨張部40は、エアバッグ10(第一エアバッグ本体部30)の展開状態で、第一エアバッグ本体部30の前端部近傍に配置され、フロントピラー21の上端近傍に基端側が位置している。第一非膨張部40は、上下方向に沿って形成されている。図示される例では、第一非膨張部40は、第一エアバッグ本体部30の上縁部を基端部とし、先端部が前方下側に向けて傾斜し、さらに先端部が上下方向に沿って延びている。第一非膨張部40は、前側副室46と前側連通路47とを前後に仕切っている。第一非膨張部40の先端部は、第一エアバッグ本体部30の下縁部に対して離間されている。第一非膨張部40の先端部と第一エアバッグ本体部30の下縁部との間には、第一連通口53が形成されている。第一連通口53は、上下に狭く絞られて形成され、所定の通気抵抗を発生させ、前側連通路47から前側副室46へのガスの急激な流入を抑制するインターナルベントとして機能するものである。
【0024】
第二非膨張部41は、第一非膨張部40よりも後方に位置する。本実施の形態において、第二非膨張部41は、エアバッグ10(第一エアバッグ本体部30)の展開状態で、第一エアバッグ本体部30の前部寄りに配置され、フロントピラー21とセンターピラー22との間に位置している。図示される例では、第二非膨張部41は、前端部が第一非膨張部40に対して前側連通路47を介して後方に離れて位置し、この前端部から下方前側に傾斜状に延び、中間部分が後方に延びてさらに後方上側に向けて傾斜し、後端部がさらに後方に延びている。つまり、第二非膨張部41は、側方から見てU字状に折り返されて形成されている。第二非膨張部41の後端部が、エアバッグ10(第一エアバッグ本体部30)の展開状態で、センターピラー22に掛かる位置となる。第二非膨張部41は、前側主室45と前側連通路47及び後側連通路51とを前後に仕切っている。第二非膨張部41の前端部により、前側主室45の膨張量が規制される。
【0025】
第三非膨張部42は、第二非膨張部41よりも後方に位置する。本実施の形態において、第三非膨張部42は、エアバッグ10(第一エアバッグ本体部30)の展開状態で、第一エアバッグ本体部30の後部寄りに配置され、センターピラー22とリアピラー23との間に位置している。図示される例では、第三非膨張部42は、第一エアバッグ本体部30の下縁部を基端部として前方上側に向けて延び、中間部分が後側供給路50の下部に沿って前方に延び、先端部が第二非膨張部41の後方の位置で前方下側に向けて傾斜している。第三非膨張部42は、後側連通路51、後側供給路50、後側主室48と、後側副室49と、を仕切っている。第三非膨張部42の先端部である前端部は、エアバッグ10(第一エアバッグ本体部30)の展開状態で、センターピラー22に掛かる位置となる。第三非膨張部42の先端部は、第一エアバッグ本体部30の下縁部に対して離間されている。第三非膨張部42の先端部と第一エアバッグ本体部30の下縁部との間には、第二連通口55が形成されている。第二連通口55は、上下に狭く絞られて形成され、所定の通気抵抗を発生させ、後側連通路51から後側副室49へのガスの急激な流入を抑制するインターナルベントとして機能するものである。
【0026】
第四非膨張部43は、第三非膨張部42の基端部と先端部との間に位置する。本実施の形態において、第四非膨張部43は、エアバッグ10(第一エアバッグ本体部30)の展開状態で、センターピラー22とリアピラー23との間に位置している。図示される例では、第四非膨張部43は、第一エアバッグ本体部30の下縁部を基端部として後方上側に向けて直線状に延び、先端部が第三非膨張部42の中間部分の下方に位置している。第四非膨張部43により、後側副室49の膨張量が規制される。
【0027】
前側主室45は、エアバッグ10(第一エアバッグ本体部30)の展開により前席に着座する乗員の頭部を拘束するものである。前側主室45は、第二非膨張部41により前側、下側、及び後側が区画され、第一エアバッグ本体部30の上縁部により上側が区画されている。前側主室45は、第二非膨張部41及び第一エアバッグ本体部30の上縁部により囲まれる拘束面である前側拘束面により前席に着座した乗員の頭部を拘束するようになっている。また、前側主室45は、前方上側が前側連通路47と直接連通されている。さらに、本実施の形態において、前側主室45は、後方上側が第一ガス導入部37と直接連通されている。
【0028】
前側副室46は、前側主室45での乗員の頭部の拘束に伴う内圧の上昇を、前側主室45に導入されたガスの一部を受け入れることで抑制して前側主室45を安定した一定の圧力に保持するものである。前側副室46は、膨張部36の最前部に位置する。前側副室46は、第一非膨張部40により後側が区画され、第一エアバッグ本体部30の上縁部、前縁部、及び下縁部により、上側、前側、及び下側が区画されている。前側副室46は、前側主室45よりも容積が小さく形成されている。
【0029】
前側連通路47は、前側主室45と前側副室46とを連通するものである。前側連通路47は、前側主室45と前側副室46との間に前後に挟まれて位置する。前側連通路47は、第一非膨張部40により前側が区画され、第二非膨張部41により後側が区画されているとともに、第一エアバッグ本体部30の上縁部及び下縁部により上側及び下側が区画されている。前側連通路47は、第一連通口53を介して前側副室46と直接連通されている。
【0030】
後側主室48は、エアバッグ10(第一エアバッグ本体部30)の展開により後席に着座する乗員の頭部を拘束するものである。後側主室48は、第三非膨張部42により前側が区画され、第一エアバッグ本体部30の上縁部、後縁部、及び下縁部により、上側、後側、及び下側が区画されている。また、後側主室48は、前側上部が後側供給路50を介して第一ガス導入部37と連通されている。そして、後側主室48は、第三非膨張部42と、第一エアバッグ本体部30の上縁部、後縁部、及び下縁部により囲まれる拘束面である後側拘束面により後席に着座した乗員の頭部を拘束するようになっている。
【0031】
後側副室49は、後側主室48での乗員の頭部の拘束に伴う内圧の上昇を、後側主室48に導入されたガスの一部を受け入れることで抑制して後側主室48を安定した一定の圧力に保持するものである。後側副室49は、第三非膨張部42により後側、上側、及び前側がそれぞれ区画され、第一エアバッグ本体部30の下縁部により下側が区画されるとともに、第四非膨張部43により前後に仕切られている。後側副室49は、後側供給路50の下部に区画されている。
【0032】
後側供給路50は、第一ガス導入部37から第一エアバッグ本体部30内に導入されたガスを後側主室48に導くものである。後側供給路50は、第三非膨張部42の中間部と第一エアバッグ本体部30の上縁部との間に前後方向に長手状に区画されている。後側供給路50の前端部は第一ガス導入部37及び後側連通路51と直接連通し、後端部は後側主室48と直接連通している。
【0033】
後側連通路51は、後側主室48と後側副室49とを連通するものである。後側連通路51は、前側主室45と後側副室49との間に前後に挟まれて位置する。後側連通路51は、第二非膨張部41により前側が区画され、第三非膨張部42により後側が区画されている。後側連通路51は、第二連通口55を介して後側副室49と直接連通されている。
【0034】
他方、第二エアバッグ本体部31は、サブ気室、サブクッション、別体袋などとも呼ばれる部分である。第二エアバッグ本体部31は、特に高速度・高エネルギでの衝突時の前席に着座した乗員の頭部の第一エアバッグ本体部30による保護を補助する。第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30に対して非連通の別個のものである。第二エアバッグ本体部31は、車幅方向に扁平な袋状に形成されている。第二エアバッグ本体部31は、単数または複数の基布により構成され、基布の外縁部が縫製などにより接合されることで袋状となっている。
【0035】
また、第二エアバッグ本体部31は、展開状態で第一エアバッグ本体部30の車外側、つまり所定面24側に配置される。すなわち、第一エアバッグ本体部30を基準として乗員とは車幅方向の反対側に第二エアバッグ本体部31が配置される。第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30に対して、少なくとも一部が車幅方向つまり厚み方向に重なって位置する。第二エアバッグ本体部31が一つの場合には、この第二エアバッグ本体部31が第一エアバッグ本体部30に対して車幅方向つまり厚み方向に重なって位置する。第二エアバッグ本体部31が複数の場合には、第二エアバッグ本体部31のうちの少なくともいずれかが第一エアバッグ本体部30に対して車幅方向つまり厚み方向に重なって位置する。すなわち、第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30に対して、乗員の頭部の進入方向に重なって位置する。したがって、エアバッグ10は、車幅方向または乗員の頭部の進入方向に対して、互いに非連通の二層以上の多層の気室が重なる構成となっている。第二エアバッグ本体部31の厚みや設定数は任意に調整可能であるが、本実施の形態において、第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30と同等の厚みを有し、一つ設定されている。図示される例では、第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30の膨張部36において、前側主室45に対応する位置にて第一エアバッグ本体部30の車室外側に位置する。本実施の形態において、第二エアバッグ本体部31の上下方向の長さは、第一エアバッグ本体部30と同等となっているが、これに限らず、第一エアバッグ本体部30よりも長くまたは短くしてもよい。第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30の前側主室45と同等、またはそれより大きい容積に設定されている。
【0036】
また、第二エアバッグ本体部31には、ガスの流れを規制する規制部である非膨張部57が配置され、非膨張部57によって、第二エアバッグ本体部31が複数の膨張部58に区画されている。さらに、第二エアバッグ本体部31には、インフレータ27からガスが導入される第二ガス導入部59が形成されている。ここで、第二ガス導入部59は、第二エアバッグ本体部31の展開基端側である上側に位置する。本実施の形態では、第二ガス導入部59が第二エアバッグ本体部31の上部の前後方向の中央部に突設された、センターマウントタイプとなっている。これに限らず、第二ガス導入部59が第二エアバッグ本体部31の後部側に突設された、リアマウントタイプであってもよい。
【0037】
非膨張部57は、第二エアバッグ本体部31の車幅方向の膨張ストロークを規制する。非膨張部57は、第二エアバッグ本体部31を構成する基布が接合される接合部として形成されている。非膨張部57は、第二エアバッグ本体部31の形状や保護する領域などに応じて任意に設定してよい。非膨張部57は、線状に形成されており、先端部には、基布が円形状に接合された保護部が形成されている。このような保護部が設けられることにより、膨張展開時における基布の伸びの確保と皺の発生の防止、また、第二エアバッグ本体部31の膨張展開時に非膨張部57の端部へ生じる応力集中に対して充分な強度を得ることができる。本実施の形態では、非膨張部57は、一つ設定されている。そのため、本実施の形態では、膨張部58に、主室60と副室61とが前後に設定されている。
【0038】
本実施の形態において、非膨張部57は、エアバッグ10(第二エアバッグ本体部31)の展開状態で、側方から見て、第一エアバッグ本体部30の第二非膨張部41の前端部と後端部との間に位置する。図示される例では、非膨張部57は、エアバッグ10(第二エアバッグ本体部31)の展開状態で、側方から見て、第一エアバッグ本体部30の第二非膨張部41の前端部の後部に近接して位置する。非膨張部57は、第二エアバッグ本体部31の上縁部を基端部とし、先端部が上下方向に沿って下側に直線状に延びている。非膨張部57の先端部である下端部は、第二エアバッグ本体部31の下縁部に対して離れている。非膨張部57の先端部と第二エアバッグ本体部31の下縁部との間には、連通口63が形成されている。連通口63は、上下に狭く絞られて形成され、所定の通気抵抗を発生させ、主室60から副室61へのガスの急激な流入を抑制するインターナルベントとして機能するものである。
【0039】
主室60は、エアバッグ10(第二エアバッグ本体部31)の展開により前席に着座する乗員の頭部を拘束する第一エアバッグ本体部30を車室外側から支持するものである。主室60は、エアバッグ10(第二エアバッグ本体部31)の展開状態で、フロントピラー21とセンターピラー22との間に位置する。図示される例では、主室60は、エアバッグ10(第二エアバッグ本体部31)の展開状態で、センターピラー22の前部に隣接し、側方から見て、第一エアバッグ本体部30の前側主室45と重なる位置にある。主室60は、前席の窓部18の略中央部分に設定される。主室60は、非膨張部57により前側が区画され、第二エアバッグ本体部31の上縁部、後縁部、及び下縁部により上側、後側、及び下側が区画されている。また、主室60は、上側が第二ガス導入部59と直接連通されている。
【0040】
副室61は、主室60での第一エアバッグ本体部30の前側主室45の支持による内圧の上昇を、主室60に導入されたガスの一部を受け入れることで抑制して主室60を安定した一定の圧力に保持するものである。副室61は、主室60に対し、非膨張部57を介して前側に隣接している。図示される例では、副室61は、エアバッグ10(第二エアバッグ本体部31)の展開状態で、側方から見て、第一エアバッグ本体部30の第二非膨張部41の前端部と重なる位置にある。副室61は、非膨張部57により後側が区画され、第二エアバッグ本体部31の上縁部、前縁部、及び下縁部により、上側、前側、及び下側が区画されている。副室61は、主室60よりも容積が小さく形成されている。
【0041】
取付部32は、ブラケットを介して車体13側に取り付けられる部分である。取付部32は、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31との上縁部にそれぞれ設定されている。取付部32は、第一エアバッグ本体部30の外縁部、第二エアバッグ本体部31の外縁部から突出するタブ状に形成されている。取付部32には、第一取付部65と、第二取付部66と、が設定されている。
【0042】
第一取付部65は、第一エアバッグ本体部30に設定されている。第一取付部65は、第一エアバッグ本体部30の前端部から後端部に亘り、互いに離れて複数設定されている。第一取付部65は、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とが車幅方向に重ならない位置で第一エアバッグ本体部30に配置されている。第一取付部65は、第二エアバッグ本体部31よりも前方の位置、及び、第二エアバッグ本体部31よりも後方の位置において、第一エアバッグ本体部30に設定されている。本実施の形態において、第一取付部65は、第一エアバッグ本体部30において、前側主室45の上部を除く部分の上縁部に設定されている。
【0043】
第二取付部66は、第二エアバッグ本体部31に設定されている。第二取付部66は、第二エアバッグ本体部31の上縁部に配置されている。第二取付部66は、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とが車幅方向に重なる位置で第二エアバッグ本体部31に配置されている。第二取付部66は、第一エアバッグ本体部30の前側主室45の上方に位置する。
【0044】
また、インフレータ27は、後席の後方あるいは上方に収納されこのエアバッグ10にガスを供給する。インフレータ27は、単数でも複数でもよいが、本実施の形態では、インフレータ27には、第一エアバッグ本体部30を膨張展開させるための第一インフレータ70と、第二エアバッグ本体部31を膨張展開させるための第二インフレータ71と、が別個に設定される。
【0045】
第一インフレータ70は、第一ガス導入部37に挿入接続される。また、第二インフレータ71は、第二ガス導入部59に挿入接続される。これら第一インフレータ70と第二インフレータ71とは、第一エアバッグ本体部30及び第二エアバッグ本体部31のそれぞれの容積や要求される展開挙動に応じてガスの供給性能が設定されている。好ましくは、これら第一インフレータ70と第二インフレータ71とにより、乗員の頭部の拘束時の内圧が、第一エアバッグ本体部30、特に前側主室45において、第二エアバッグ本体部31の主室60と同等以上となるようにガスの供給性能が設定されている。
【0046】
そして、エアバッグ10は、基布を縫製などにより接合して第一エアバッグ本体部30及び第二エアバッグ本体部31をそれぞれ形成し、第一ガス導入部37及び第二ガス導入部59に対し、第一インフレータ70及び第二インフレータ71のガス噴射側を挿入して、第一インフレータ70及び第二インフレータ71を第一エアバッグ本体部30及び第二エアバッグ本体部31から外側に露出させた状態として一体的に固定する。
【0047】
さらに、第一エアバッグ本体部30及び第二エアバッグ本体部31をそれぞれロール状などに折り曲げながら巻き上げてそれぞれ所定の細長い形状に折り畳み(図3)、スリーブなどを用いてこれら第一エアバッグ本体部30及び第二エアバッグ本体部31の展開時の圧力で結合解除すなわち破断可能となるように折り畳み形状をそれぞれ保持する。このようにして、第一エアバッグ本体部30及び第二エアバッグ本体部31が細長く折り畳まれ、かつ、折畳形状が保持された状態となり、カーテンエアバッグモジュールとなるエアバッグ装置11が構成される。
【0048】
そして、上記のように折り畳まれた第一エアバッグ本体部30及び第二エアバッグ本体部31を備えるエアバッグ装置11を車室14内に持ち込み、ヘッドライニング及びピラーガーニッシュなどの内装材が取り付けられる前に車体13への取付作業を行う。この取付作業は、第一エアバッグ本体部30の第一取付部65と第二エアバッグ本体部31の第二取付部66とを、ブラケットを介してボルトなどの固定具により車体13に取り付け固定するとともに、第一エアバッグ本体部30のテザーベルト29をボルトなどの固定具により車体13に取り付け固定することにより行われる。このとき、第一取付部65と第二取付部66とは、車体13に対し、前後方向に沿う所定の直線上に沿う位置に取り付けられる。また、第一インフレータ70及び第二インフレータ71は、センターピラー22の上方に相当する位置に固定される。さらに、各インフレータ70,71から導出されたハーネスを車体13に備えた制御装置に接続する。次いで、車体13の天井パネルにヘッドライニングを取り付けてエアバッグ装置11を覆うとともに、各ピラー21,22,23にピラーガーニッシュをそれぞれ取り付けて、エアバッグ装置11の車体13への取付作業が完了する。この取付状態で、エアバッグ装置11がヘッドライニング及びピラーガーニッシュによって車室14内と隔離されるとともに、各インフレータ70,71と、ロール状に折り畳まれた第一エアバッグ本体部30及び第二エアバッグ本体部31とが、ピラーガーニッシュの上方の位置に保持される。
【0049】
そして、車両の斜め衝突(斜め前方からの衝突)を含む側面衝突あるいは横転などの際には、制御装置によりインフレータ27が作動する。第一インフレータ70から第一エアバッグ本体部30にガスが供給されるとともに、第二インフレータ71から第二エアバッグ本体部31にガスが供給される。第一エアバッグ本体部30が膨張展開に伴い、ヘッドライニングの下端部を車室14の室内側へと押しのけるように変形させ、ピラーガーニッシュの上端部から車室14内へと第一エアバッグ本体部30及び第二エアバッグ本体部31が突出し、所定面24に沿って下方へと展開する。このとき、第一エアバッグ本体部30よりも容積が小さい第二エアバッグ本体部31が、第一エアバッグ本体部30よりも先に所定面24に沿って素早く展開し、第二エアバッグ本体部31に続いて第一エアバッグ本体部30が、第二エアバッグ本体部31に対して車室14の内側へとオフセットした形で膨張展開することとなる。
【0050】
第二エアバッグ本体部31については、第二インフレータ71により第二ガス導入部59から導入されたガスが主室60に供給される。
【0051】
他方、第一エアバッグ本体部30については、第一インフレータ70により第一ガス導入部37から導入されたガスが前側主室45と、後側供給路50から後側主室48へと前後に分岐されて供給される。前側副室46には、前側主室45から前側連通路47を介して第一連通口53からガスが供給され、後側副室49には、後側供給路50及び後側連通路51を介して第二連通口55からガスが供給され、これら前側副室46及び後側副室49も膨張しながら展開する。
【0052】
前側主室45は、先に展開している第二エアバッグ本体部31の主室60に対して車幅方向の乗員H側に重なる位置に展開する。そして、第一取付部65と第二取付部66とが、直線に沿って車体13に取り付けられていることにより、第一エアバッグ本体部30が、図4に模式的に示すように、第二エアバッグ本体部31(主室60)の位置が車室14の内側に最大に突出してその前後が所定面24に近接する、いわば上方から見て弓状に湾曲した状態で展開することとなる。すなわち、第一エアバッグ本体部30及び第二エアバッグ本体部31が、基布からのいわゆる膜力が効いた所定面24側のテンションラインTL上に並んで膨張展開する。
【0053】
そこで、図1に示すように、前側主室45は、主室60とともに車幅方向に厚い保護部を形成し、前席に着座した乗員Hの頭部HEの側方(乗員Hの頭部HEと車体13との間)に展開する前側拘束面によって側方または斜め前方へと投げ出されて移動してくる乗員Hの頭部HEを拘束する。
【0054】
前側主室45は、乗員Hの頭部HEの拘束により幅方向に押圧されることでガスの一部が第一連通口53を介して前側副室46へと徐々に流入し、適切な内圧を保持する。また、主室60は、前側主室45による乗員Hの頭部HEの拘束によって幅方向に押圧されることでガスの一部が第二連通口55を介して副室61へと徐々に流入し、適切な内圧を保持する。
【0055】
また、後側主室48では、後席に着座した乗員の頭部の側方に後側拘束面を形成し、斜め衝突によって斜め前方へと投げ出されて移動してくる乗員の頭部を後側拘束面で拘束する。後側主室48は、乗員の頭部の拘束により幅方向に押圧されることでガスの一部が第二連通口55を介して後側副室49へと徐々に流入し、適切な内圧を保持する。
【0056】
なお、制御装置は、衝突の速度またはエネルギなどの衝突モードに応じて、制御装置は、第一インフレータ70のみを動作させるか、第一インフレータ70及び第二インフレータ71をともに動作させるかを選択してもよい。例えば、衝突の速度またはエネルギが所定以下の場合には、第一インフレータ70のみを動作させ、第一エアバッグ本体部30のみを膨張展開させることで、第一エアバッグ本体部30の展開挙動及び特性によって乗員の頭部を拘束して保護するようにしてもよい。
【0057】
このように、第1の実施の形態は、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とを非連通とし、第二エアバッグ本体部31を第一エアバッグ本体部30に対して車室14の外側に、第一エアバッグ本体部30に対し車幅方向に少なくとも一部が重なって展開させる構成とした。
【0058】
そのため、互いに独立した第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とが車幅方向に並んで少なくとも一部が重なることで、これら車幅方向に重なる第一エアバッグ本体部30(前側主室45)と第二エアバッグ本体部31(主室60)とが、フックの法則における直列接続されたコイルばねと同様に機能し、これらのエネルギ吸収ストロークを有効に活用してエネルギ吸収ストロークを増加させつつ、低い荷重で乗員Hの頭部HEを保護することが可能になり、乗員拘束性能が向上する。
【0059】
特に、高速度・高エネルギの衝突の場合、速度の増加により乗員Hの頭部HEが受ける荷重が高く、従来のエアバッグでは、エネルギ吸収ストロークが不足し、吸収できるエネルギが足りずに乗員の頭部が底付きしてしまうため、容積を増加させてエネルギ吸収ストロークを増加させることが考えられる。その場合、十分な展開速度と内圧を得るために、インフレータの出力を増加させる必要があるが、ストロークが増加しても、内圧が極端には変わらないので、徐運を受け止めた際の高い荷重発生を抑制できない。また、単純なエネルギ吸収ストロークの増加は、乗員加害性の増加が懸念されるとともに、通常拘束における性能変化が大きい。
【0060】
それに対し、本実施の形態では、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31との個々のエネルギ吸収ストロークを大きくすることなく、これらを車幅方向に直列に作用させることでエネルギ吸収ストロークを得ることができ、かつ、乗員Hの頭部HEを低荷重で保護することができるので、乗員加害性を悪化させることなく、高速度・高エネルギ衝突に対応したエアバッグ10を提供できる。
【0061】
また、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とが互いに非連通であり、互いのガス導入部37,59が独立しているため、互いのガスの行き来やいずれかへのガスの充填不足が生じることがなく、一方へのガス供給による展開が他方のガス供給による展開を阻害せず、迅速かつ確実な展開挙動を得ることができる。
【0062】
例えば、展開状態で第一エアバッグ本体部30(前側主室45)と第二エアバッグ本体部31(主室60)とが同じ硬さである場合、フックの法則によれば、これらを車幅方向に直列に並べることで、理論上30%の荷重低減が可能となる。
【0063】
また、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とが車幅方向に重ならない位置で第一エアバッグ本体部30を第一取付部65により車体13側に取り付け、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とが車幅方向に重なる位置で第二エアバッグ本体部31を第二取付部66により取り付けることで、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31との車体13側への取付位置を直線状とすることができ、これら第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とを、安定して展開させることが可能になる。
【0064】
しかも、第二エアバッグ本体部31が第一エアバッグ本体部30に対して車体13側に位置するため、乗員Hの頭部HEへの第二エアバッグ本体部31の直撃を避けることができるとともに、第二エアバッグ本体部31が不要な程度の衝突の場合には、第二エアバッグ本体部31を膨張展開させなくても第一エアバッグ本体部30による乗員拘束性能を阻害することがない。
【0065】
なお、第1の実施の形態において、第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30に対して固定されていてもよい。例えば、第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30に対して上部及び下部が縫製などにより固定されていてもよい。この場合には、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とを重ねた状態で一体的にロール状に折ることで、エアバッグ10を省スペースで配置できる。また、膨張展開時に第一エアバッグ本体部30と同様に第二エアバッグ本体部31に張力を付与でき、乗員拘束性能をより向上できる。
【0066】
第二エアバッグ本体部31を第一エアバッグ本体部30に固定する場合には、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とで、車体13に対する取付位置を共用してもよい。例えば、図5に示す第2の実施の形態のように、第二エアバッグ本体部31を、第一エアバッグ本体部30に対して固定部材75により固定する場合、好ましくは、第二エアバッグ本体部31の前後両方の位置における第一エアバッグ本体部30の車体13に対する取付位置に固定する。図示される例では、第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30に対し、テザーベルト29、及び、後方の取付部32にテザーなどの固定部材75により下端部側が固定されている。これに限らず、第二エアバッグ本体部31は、例えば第一エアバッグ本体部30に対し、前方及び後方の取付部32などに固定部材75により固定されていてもよい。このように、第二エアバッグ本体部31の下端部を第一エアバッグ本体部30に固定することで、第二エアバッグ本体部31に対して、第一エアバッグ本体部30と同様に張力を持たせることができる。
【0067】
また、第二エアバッグ本体部31は、上部及び/または下部を、第一エアバッグ本体部30に代えて、車体13側に直接固定しても、膨張展開時に第二エアバッグ本体部31に張力を付与することが可能になる。
【0068】
さらに、各実施の形態において、図6に示す第3の実施の形態のように、共通のインフレータ27から分岐体77を用いてガスを分岐させてもよい。分岐体77は、例えばパイプであり、一端部がインフレータ27に接続され、他端部が第一出口77aと第二出口77bとに分岐されて、第一出口77aが第一ガス導入部37に接続され、第二出口77bが第二ガス導入部59に接続されている。第一エアバッグ本体部30に供給されるガスの量と第二エアバッグ本体部31とに供給されるガスの量とは、互いに同一でもよいし、互いに異なっていてもよい。本実施の形態では、例えば第一出口77aと第二出口77bとの開口断面積が、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とのそれぞれの容積に応じて設定されている。これにより、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31との展開速度や内圧を制御可能となっている。このように、第一エアバッグ本体部30と第二エアバッグ本体部31とで、インフレータ27を共通のものとすることで、構成をより簡略化しつつ、上記の各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0069】
また、各実施の形態において、第二エアバッグ本体部31は、第一エアバッグ本体部30の車室外側の任意の箇所に設定可能である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えば自動車の側部の窓部に沿って取り付けられ展開することで乗員を保護するエアバッグ及びエアバッグ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0071】
10 エアバッグ
13 車体
14 車室
30 第一エアバッグ本体部
31 第二エアバッグ本体部
32 取付部
65 第一取付部
66 第二取付部
H 乗員
図1
図2
図3
図4
図5
図6