(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003639
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】鋳造用中子組合せ体及び成型物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B22C 9/10 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B22C9/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104833
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100156177
【弁理士】
【氏名又は名称】池見 智治
(72)【発明者】
【氏名】兼子 直樹
(72)【発明者】
【氏名】野々村 和政
(72)【発明者】
【氏名】山田 武
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093QA01
4E093QB03
4E093QC02
(57)【要約】
【課題】複数の中子本体間の位置ずれを少なくすることを目的とする。
【解決手段】鋳造物を成形する際に、前記鋳造物内の空洞を形成するための鋳造用中子組合せ体20であって、鋳造物の空洞の一部を形成するためのベース中子本体34を含むベース中子30と、鋳造物の空洞の他の部分を形成するための組合せ中子本体56、66を含む組合せ中子50、60と、を備え、ベース中子本体34がベース中子位置決め部36、37を有し、組合せ中子本体56、66が組合せ中子位置決め部56、66を有し、組合せ中子位置決め部56、66がベース中子位置決め部36、37に接した状態で、組合せ中子50、60がベース中子30に組合わされる、鋳造用中子組合せ体20である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造物を成形する際に、前記鋳造物内の空洞を形成するための鋳造用中子組合せ体であって、
前記鋳造物の空洞の一部を形成するためのベース中子本体を含むベース中子と、
前記鋳造物の空洞の他の部分を形成するための組合せ中子本体を含む組合せ中子と、
を備え、
前記ベース中子本体がベース中子位置決め部を有し、
前記組合せ中子本体が組合せ中子位置決め部を有し、
前記組合せ中子位置決め部が前記ベース中子位置決め部に接した状態で、前記組合せ中子が前記ベース中子に組合わされる、鋳造用中子組合せ体。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳造用中子組合せ体であって、
前記組合せ中子を複数備え、
前記複数の組合せ中子のそれぞれの前記組合せ中子位置決め部が、前記ベース中子位置決め部に接した状態で、前記複数の組合せ中子が前記ベース中子に組合わされる、鋳造用中子組合せ体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鋳造用中子組合せ体であって、
前記ベース中子位置決め部と前記組合せ中子位置決め部とは、少なくとも予め定められる位置決め方向に接触し合う、鋳造用中子組合せ体。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の鋳造用中子組合せ体であって、
前記組合せ中子位置決め部と前記ベース中子位置決め部との一方が位置決め凹部であり、他方が位置決め凸部であり、
前記位置決め凹部は、前記ベース中子本体の周方向に離れた一対のガイド側面を有し、
前記一対のガイド側面は、前記位置決め凹部の奥側に向けて徐々に狭まる、鋳造用中子組合せ体。
【請求項5】
請求項4に記載の鋳造用中子組合せ体であって、
前記位置決め凹部は、前記一対のガイド側面のうち幅広側の辺から外側に延在する一対の受面を有し、
前記位置決め凸部は、前記一対のガイド側面の奥側で前記位置決め凹部に対して隙間を設けた状態で、前記一対の受面に接した状態で、前記位置決め凹部に嵌り込む、鋳造用中子組合せ体。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の鋳造用中子組合せ体であって、
前記鋳造物は、筒体であり、前記空洞として、前記筒体内の主空洞と、前記主空洞の外側に連続する枝空洞とを有しており、
前記ベース中子本体は、前記主空洞の一部を形成し、
前記組合せ中子本体のそれぞれは、前記ベース中子本体と組合わされて、前記主空洞の他の部分と前記枝空洞の少なくとも一部とを形成する、鋳造用中子組合せ体。
【請求項7】
請求項6に記載の鋳造用中子組合せ体であって、
前記鋳造物が、2サイクルエンジン用のシリンダであり、
前記主空洞が前記シリンダ内におけるシリンダ空間であり、
前記ベース中子位置決め部と前記組合せ中子位置決め部とは、前記シリンダ空間の中心軸方向に接触し合い、
前記ベース中子本体及び前記組合せ中子本体のうちの少なくとも1つが前記枝空洞として前記シリンダ空間に繋がる掃気ポートを形成し、前記ベース中子本体及び前記組合せ中子本体のうちの他の少なくとも1つが前記枝空洞として前記シリンダ空間に繋がる排気ポートを形成する、鋳造用中子組合せ体。
【請求項8】
空洞を有する成型物を製造する方法であって、
(a)前記成型物の空洞の一部を形成するためのベース中子本体を含むベース中子と、組合せ中子と、を備え、前記組合せ中子が、前記成型物の空洞の他の部分を形成するための組合せ中子本体を含んでおり、前記組合せ中子本体を前記ベース中子本体に位置決め嵌合させた状態で、前記組合せ中子を前記ベース中子に固定して中子組合せ体を形成し、
(b)前記中子組合せ体を型内に配置し、
(c)型と前記中子組合せ体を用いて、前記成型物を成型する、成型物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の成型物の製造方法であって、
前記工程(a)では、
(a1)前記ベース中子の少なくとも一部を主支持部上に載置し、
(a2)前記主支持部の上方で、前記ベース中子に、前記組合せ中子の一部を位置決めし、
(a3)前記組合せ中子のうち前記ベース中子から延出する部分を副支持部で支持する、成型物の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の成型物の製造方法であって、
前記組合せ中子本体と前記ベース中子本体とが位置決め嵌合する部分の少なくとも一部は、前記成型物の成型後に、切削加工される部分に形成される、成型物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、複数の中子を組合わせて鋳造用中子組合せ体を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の中子として、2個のポート成形部を中子本体と一体に造形した後、別金型で造形された他のポート成形部を中子本体に接着した中子を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、中子本体に他のポートをどのように接着するかが開示されていない。中子本体と一体に造形されたポート成形部と、別金型で造形され他のポート成形部との間で位置ずれが大きくなる可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、複数の中子本体間の位置ずれを少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、鋳造用中子組合せ体は、鋳造物を成形する際に、前記鋳造物内の空洞を形成するための鋳造用中子組合せ体であって、前記鋳造物の空洞の一部を形成するためのベース中子本体を含むベース中子と、前記鋳造物の空洞の他の部分を形成するための組合せ中子本体を含む組合せ中子と、を備え、前記ベース中子本体がベース中子位置決め部を有し、前記組合せ中子本体が組合せ中子位置決め部を有し、前記組合せ中子位置決め部が前記ベース中子位置決め部に接した状態で、前記組合せ中子が前記ベース中子に組合わされるものである。
【0007】
また、上記課題を解決するため、成型物の製造方法は、空洞を有する成型物を製造する方法であって、(a)前記成型物の空洞の一部を形成するためのベース中子本体を含むベース中子と、組合せ中子と、を備え、前記組合せ中子が、前記成型物の空洞の他の部分を形成するための組合せ中子本体を含んでおり、前記組合せ中子本体を前記ベース中子本体に位置決め嵌合させた状態で、前記組合せ中子を前記ベース中子に固定して中子組合せ体を形成し、(b)前記中子組合せ体を型内に配置し、(c)型と前記中子組合せ体を用いて、前記成型物を成型する、成型物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
上記鋳造用中子組合せ体によると、複数の中子本体間の位置ずれを少なくすることができる。
【0009】
上記成型物の製造方法によると、複数の中子本体間の位置ずれを少なくし、空洞の位置ずれが少ない成型物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】ベース中子本体に対する組合せ中子本体の合体部分を示す分解斜視図である。
【
図5】ベース中子本体に対する組合せ中子本体の合体部分を示す平面図である。
【
図7】組合せ用補助具に鋳造用中子組合せ体を支持した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る鋳造用中子組合せ体について説明する。
【0012】
図1は鋳造用中子組合せ体20を示す斜視図である。鋳造用中子組合せ体20は、成型物としての鋳造物を成形する際に、鋳造物内の空洞を形成するための中子である。鋳造用中子組合せ体20は、ベース中子30と、組合せ中子50、60とを備える。
【0013】
ベース中子30は、鋳造物の空洞の一部を形成するためのベース中子本体34を含む。組合せ中子50は、鋳造物の空洞の他の部分を形成する組合せ中子本体54を含む。組合せ中子60は、鋳造物の空洞のさらに他の部分を形成する組合せ中子本体64を含む。ベース中子本体34によって形成される空洞部分と、組合せ中子本体54、64によって形成される空洞部分とは、鋳造物内で連続している。
【0014】
ベース中子30のうちベース中子本体34が、ベース中子位置決め部36、37を有している。組合せ中子本体54、64のうち組合せ中子本体54、64が、組合せ中子位置決め部56、66を有している。そして、組合せ中子位置決め部56、66が、ベース中子位置決め部36、37に接した状態で、組合せ中子本体54、64がベース中子本体34に組合わされる。つまり、ベース中子30と、組合せ中子50、60とが、空洞を形成する部分同士が接した状態で、組合わされる。このため、鋳造物における空洞が精度よく形成される。
【0015】
本実施形態では、鋳造用中子組合せ体20は、複数の組合せ中子50、60を備える。なお、鋳造用中子組合せ体20は、1つの組合せ中子を有する構成であってもよい。そして、複数の組合せ中子位置決め部56、66が、ベース中子位置決め部36、37に接した状態で、複数の組合せ中子50、60がベース中子30に組合わされる。つまり、複数の組合せ中子50、60が、1つのベース中子30を基準として組合わされる。このため、複数の組合せ中子50、60同士も位置精度よく組合わされる。
【0016】
ここで、鋳造用中子組合せ体20を用いて製造される成型物の一例について説明する。
【0017】
図2は成型物10を示す斜視図である。
図3は成型物10を示す断面図である。
図3において、鋳造用中子組合せ体20及び型90が示される。
【0018】
成型物10は、全体的に見て筒体に形成されている。成型物10は、空洞として主空洞14と、枝空洞15、16、17とを有している。主空洞14は、筒体としての成型物10内に、当該筒体の軸方向に沿って形成される。ここでは、主空洞14は、成型物10を貫通する空間であるが、底を有する空洞であってもよい。
【0019】
枝空洞15、16、17は、主空洞14から外側に連続している。ここでは、枝空洞15は、主空洞14の軸方向中間部であって主空洞14の周方向の一部から外側に至るように形成されている。成型物10のうち枝空洞15が延出する部分の外周側に、外側に向けて延出する延出筒部11aが形成されている。枝空洞15は、当該延出筒部11a内を通って外方に開口している。枝空洞16は、主空洞14の軸方向中間部であって主空洞14の周方向の一部から外側に至るように形成されている。成型物10の周方向において、枝空洞16は、枝空洞15とは反対側に設けられている。成型物10のうち枝空洞16が延出する部分の外周側に、外側に向けて延出する延出筒部11bが形成されている。枝空洞16は、当該延出筒部11b内を通って外方に開口している。枝空洞15、16は、延出筒部11a、11b内を通って外方に開口している必要は無い。例えば、枝空洞15、16は、主空洞14を形成する筒部分の外周面に直接開口していてもよい。枝空洞17は、主空洞14の軸方向中間部であって主空洞14の周方向の一部から、主空洞14の外側に向うように形成されている。枝空洞17は、成型物10の外側に開口せずに、成型物10の周壁内を通って成型物10の端部(
図2及び
図3の下端部)に向う。枝空洞17は、成型物10の端部(
図2及び
図3の下端部)において、主空洞14側に開口する。つまり、枝空洞17の一端及び他端は、主空洞14に対してその軸方向において異なる位置で連続しており、枝空洞17の中間部は、成型物10の周壁部内を通っている。本実施形態では、2つの枝空洞17が、成型物10の周方向において、上記枝空洞15と枝空洞16との2つの間に形成されている。
【0020】
上記成型物10の一例は、2サイクルエンジン用のシリンダである。2サイクルエンジンとは、吸入・圧縮と、燃焼と、排気と、掃気とを含む1周期の行程を、ピストン1往復で行うエンジンである。2サイクルエンジンでは、シリンダ空間の内周壁に開口する吸気ポート、掃気ポート及び排気ポートを、ピストンの上下移動によって開閉する。このため、シリンダ空間の内周壁における吸気ポート、掃気ポート及び排気ポートの開口位置は、上記各行程の動作タイミングに影響を与え得る。
【0021】
成型物10が2サイクルエンジン用のシリンダであることを想定すると、例えば、上記主空洞14は、シリンダが往復移動する空間を形成するシリンダ空間である。枝空洞15は、シリンダ空間と繋がって、燃焼ガスを外側に排気する排気ポートを形成するための空間である。枝空洞16は、シリンダ空間と繋がり、混合気をシリンダ空間内に導く吸気ポートを形成する空間である。なお、吸気ポートを形成する枝空洞16は省略されてもよい。この場合、吸収ポートはクランクケースに形成されてもよい。枝空洞17は、シリンダ空間の軸方向において異なる2箇所で当該シリンダ空間と繋がり、シリンダ空間へ混合気を導入して掃気を行う掃気ポートを形成する空間である。成型物10には、冷却水を流すための通路(ウオータージャケット)10cが形成されていてもよい。
【0022】
上記のように成型物10が2サイクルエンジン用のシリンダである場合において、ベース中子本体34は、主空洞14であるシリンダ空間の一部を形成してもよい。ベース中子本体34及び組合せ中子本体54、64のうちの少なくとも1つが掃気ポートを形成し、ベース中子本体34及び組合せ中子本体54、64のうちの他の少なくとも1つが排気ポートを形成してもよい。
【0023】
ここでは、次の例が説明される。すなわち、ベース中子本体34が主空洞14であるシリンダ空間の一部(ここでは大部分)と、枝空洞15である排気ポートを形成する。組合せ中子本体54が、主空洞14であるシリンダ空間の一部と枝空洞16である吸気ポートを形成する。組合せ中子本体64が、主空洞14であるシリンダ空間の一部と枝空洞17である掃気ポートを形成する。
【0024】
上記のように、ベース中子30に対して組合せ中子50、60が位置精度よく組合わされることで、シリンダ空間の内周壁における吸気ポート、掃気ポート及び排気ポートの開口位置が精度よく形成される。
【0025】
特に、2サイクルエンジン用のシリンダにおいては、シリンダ空間の上縁を基準に、シリンダ空間の軸方向における排気ポート、吸気ポート及び掃気ポートの開口の各上縁の位置を精度よくすることが要請される。排気ポートを形成する部分を含むベース中子本体34を基準にして、吸気ポート、掃気ポートを形成する組合せ中子本体54、64が位置決めされることで、排気ポート、吸気ポート及び掃気ポートの各開口の相対的な位置精度がよくなる。結果、シリンダ空間の上縁を基準として、排気ポート、吸気ポート及び掃気ポートの開口の各上縁の位置を精度よく形成することが可能となる。
【0026】
なお、成型物10のうち外向き面を含む面は、下型92及び上型94を含む型90によって形成される。下型92及び上型94のうち対向する部分には、成型物10のうち外向き面を含む面を形成するための型面が形成されている。鋳造用中子組合せ体20が型90内に支持された状態で、型90内における空間に鋳造用の溶融金属が流し込まれることによって、型面と鋳造用中子組合せ体20とに決る面を有する成型物10が形成される。
【0027】
鋳造用中子組合せ体20についてより詳細に説明する。
図4はベース中子本体34に対する組合せ中子本体54、64の合体部分を示す分解斜視図である。
図5はベース中子本体34に対する組合せ中子本体54、64の合体部分を示す平面図である。
【0028】
図1、
図3、
図4及び
図5に示すように、鋳造用中子組合せ体20は、ベース中子30と、複数の組合せ中子本体54、64とが合体することによって構成される。例えば、ベース中子30と、複数の組合せ中子本体54、64とが接着剤によって接着されることによって、目的形状を形成する鋳造用中子組合せ体20が構成される。ベース中子30と複数の組合せ中子本体54、64とは、主空洞14を形成する部分で合体している。ベース中子30と、複数の組合せ中子本体54、64とのそれぞれは、中子用の金型内で、砂を樹脂で固めることによって形成される。
【0029】
ベース中子30は、幅木32と、ベース中子本体34とを含む。ベース中子本体34は、主空洞形成部35と、枝空洞形成部38とを含む。主空洞形成部35は、主空洞14の一部を形成する部分であり、本実施形態では、円柱状を部分的に凹ませた形状に形成されている。以下の説明において、主空洞14がなす概略的な円柱形状を基準に、その中心軸側を内周側又は内側、その反対側を外周側又は外側という場合がある。主空洞形成部35の中心には、その軸方向に沿った位置決め孔35hが形成される。主空洞形成部35における下端面35b及び位置決め孔35hが形成された部分は、型90において位置決めされる幅木となり得る。枝空洞形成部38は、枝空洞15を形成する部分であり、主空洞形成部35の外周部の一部から径方向外側に向けて延出する長尺形状に形成されている。ここでは、枝空洞形成部38は、主空洞形成部35の上寄りの位置から斜め下方に向けて延出している。枝空洞形成部38の先端部に幅木32が形成されている。幅木32は、型90においてベース中子30を支持するための部分である。
【0030】
主空洞形成部35の外周部にベース中子位置決め部36、37が形成される。ベース中子位置決め部36は、主空洞形成部35の外周部のうち枝空洞形成部38とは反対側の部分に形成されている。2つのベース中子位置決め部37は、主空洞形成部35の外周部であって上記ベース中子位置決め部36と枝空洞形成部38との間の2つの部分に形成されている。
【0031】
組合せ中子50は、幅木52と、組合せ中子本体54とを含む。幅木52は、型90において組合せ中子50を支持するための部分である。組合せ中子本体54は、主空洞形成部55と、枝空洞形成部58とを含む。主空洞形成部55は、上記主空洞形成部35と一体となって主空洞14を形成する部分である。主空洞形成部55に、組合せ中子位置決め部56が形成される。
【0032】
枝空洞形成部58は、主空洞形成部55の外周側部分下部から下方に延出し、その下方延出部分からさらに外側に延び出ている。枝空洞形成部58の内側面は、主空洞形成部55の外周面の下方延長上に位置する弧状面に形成されている。枝空洞形成部58は、外側に向けて斜め上方に向うように延在する。枝空洞形成部58の先端部に、幅木52が設けられる。
【0033】
組合せ中子60は、幅木62と、組合せ中子本体64とを含む。幅木62は、型90において組合せ中子60を支持するための部分である。組合せ中子本体64は、主空洞形成部65と、枝空洞形成部68とを含む。主空洞形成部65は、上記主空洞形成部35と一体となって主空洞14を形成する部分である。主空洞形成部65に、組合せ中子位置決め部66が形成される。
【0034】
枝空洞形成部68は、主空洞形成部65の外周側部分下部から、外周側に凸となる弧状をなしつつ下方に延出する。枝空洞形成部68の下端部は、内周側に向い、その先端面は、主空洞形成部65の外周面の下方延長上に位置する弧状面に形成される。枝空洞形成部68の下端部に、幅木62が設けられる。
【0035】
なお、2つの組合せ中子60は、主空洞形成部35の中心軸を通る仮想面に対して鏡像対称形状である。2つの組合せ中子60が位置決めされるベース中子位置決め部37も、当該仮想面に対して鏡像対称形状である。
【0036】
そして、上記主空洞形成部35、55、65が組合わされることで、主空洞14を形成するための円柱状の中子部分が形成される。この状態で、円柱状の中子部分から枝空洞形成部38、58、68が突出するように配置される。これにより、成型物10における主空洞14(シリンダ空間)及び枝空洞15、16、17(排気ポート、掃気ポート、吸気ポート)を形成するための鋳造用中子組合せ体20が製造される。
【0037】
ベース中子本体34に対して組合せ中子本体54、64を位置決めするための構成に着目した説明が以下になされる。
【0038】
ベース中子位置決め部36、37と、組合せ中子位置決め部56、66とは、少なくとも予め定められる位置決め方向Pに接触し合った状態で、相互に位置決めされる。予め定められる位置決め方向Pは、例えば、主空洞形成部35の軸方向である。主空洞形成部35の軸方向は、主空洞14(シリンダ空間)の中心軸方向でもある。この場合、ベース中子本体34と組合せ中子本体54、64とが、主空洞14(シリンダ空間)の軸方向に位置決めされることになるので、当該空間に対するポートの開口が主空洞14(シリンダ空間)の軸方向において精度よく位置決めされる。予め定められる位置決め方向Pは、重力方向であってもよい。この場合、ベース中子本体34と組合せ中子本体54、64のうちの1つを他方に載せて、重力による荷重を加えた状態で、組合せ作業を容易に実施できる。ベース中子位置決め部36、37と、組合せ中子位置決め部56、66とは、少なくとも予め定められる位置決め方向P以外の方向、例えば、主空洞形成部35の周方向に位置決めされてもよい。
【0039】
組合せ中子位置決め部56、66とベース中子位置決め部36、37とのうちの一方が位置決め凹部であり、他方が位置決め凸部とされている。位置決め凸部が位置決め凹部に嵌ることで、組合せ中子位置決め部56、66とベース中子位置決め部36、37とが互いに接触した状態で、互いに位置決めされる。本実施形態では、位置決め凸部としての組合せ中子位置決め部56が、位置決め凹部としてのベース中子位置決め部36に嵌る例が説明される。また、位置決め凸部としての組合せ中子位置決め部66が、位置決め凹部としてのベース中子位置決め部37に嵌る例が説明される。これらの凹凸関係の少なくとも1つは、逆の関係であってもよい。
【0040】
組合せ中子位置決め部56とベース中子位置決め部36とについて説明する。
【0041】
ベース中子位置決め部36は、主空洞形成部35の外周の一部が凹む形状に形成されている。ベース中子位置決め部36は、第1凹部36Aと、第2凹部36Bとを含む。第2凹部36Bが第1凹部36Aの奥側で凹んでおり、第2凹部36Bの高さ及び幅は、第1凹部36Aの高さ及び幅よりも小さい。
【0042】
より具体的には、第1凹部36Aは、一対の外側ガイド側面36Aaと、一対の受面36Abとを含む。一対の外側ガイド側面36Aaは、主空洞形成部35の外周面から内側に向うように形成されている。一対の外側ガイド側面36Aaの下端部は、下方に向けて互いに接近する方向に向う形状に形成されている。一対の受面36Abは、一対の外側ガイド側面36Aaの内側の辺同士を結ぶ面(ここでは、平面)上に形成されている。一対の受面36Abは、主空洞形成部35の外周側を向いている。
【0043】
第2凹部36Bは、一対のガイド側面36Baと、奥面36Bbと、主位置決め面36Bcとを含む。一対のガイド側面36Baは、一対の外側ガイド側面36Aaよりも内側の位置で、受面36Abから内側に向っている。一対のガイド側面36Baは、ベース中子本体34における主空洞形成部35の周方向において離れて対向し合っている。一対のガイド側面36Baは、第2凹部36Bの奥側に向けて徐々に狭まるように形成されている。一対のガイド側面36Baを基準とすると、上記一対の受面36Abは、当該一対のガイド側面36Baのうち幅広側の辺から外側に延在している。奥面36Bbは、一対のガイド側面36Baの奥側の辺同士を結ぶ面、ここでは、平面に形成されている。
【0044】
上記一対のガイド側面36Ba及び奥面36Bbは、主空洞形成部35の上端部から下端部に至る手前まで延在している。一対のガイド側面36Baの下辺と奥面36Bbの下辺とを結ぶように、主位置決め面36Bcが形成されている。主位置決め面36Bcは、予め定められる位置決め方向Pに対して交差(ここでは直交)している。主位置決め面36Bcを基準とし、当該主位置決め面36Bcに交差する面(例えば、受面36Ab又は一対のガイド側面36Ba)を副位置決め面と捉えてもよい。主位置決め面と、主位置決め面と交差する副位置決め面とが設けられることによって、異なる2方向以上における位置決めがなされ得る。
【0045】
組合せ中子位置決め部56は、上記ベース中子位置決め部36に対応し、当該ベース中子位置決め部36に嵌込可能な形状に形成されている。
【0046】
より具体的には、組合せ中子位置決め部56は、上記第1凹部36Aに対応する第1凸部56Aと、第2凹部36Bに対応する第2凸部56Bとを含む。第1凸部56Aは、第1凹部36Aに嵌込可能な凸形状に形成されており、上記一対の外側ガイド側面36Aaに対応する一対の側面と、受面36Abに対応する当接面とを有する。第1凸部56Aは、一対の外側ガイド側面36Aa及び受面36Abに接触した状態で、第1凹部36Aに嵌め込まれる。
【0047】
第2凸部56Bは、第2凹部36Bに嵌込可能な凸形状に形成されており、上記第1凹部36Aの内側面の周方向中間部であって上寄りの位置から突出している。第2凸部56Bは、上記一対のガイド側面36Baに対応する一対の側面と、奥面36Bbに対応する面56Bbと、主位置決め面36Bcに対応する主当接面56Bcとを有している。一対の側面は、一対のガイド側面36Baと同方向に傾斜している。第1凸部56Aに対する第2凸部56Bの突出寸法は、受面36Abを基準とする第2凹部36Bの深さ寸法よりも小さい。このため、第2凸部56Bが第2凹部36Bに嵌った状態で、その第2凸部56Bの内周側の面56Bbと奥面36Bbとの間に隙間Sが設けられる(
図5参照)。また、主当接面56Bcは、予め定められる位置決め方向Pに対して交差(ここでは直交)しており、第2凸部56Bが第2凹部36Bに嵌った状態で、主位置決め面36Bcと主当接面56Bcとは、予め定められる位置決め方向Pに接触し合うことができる。主当接面56Bcを基準とし、当該主当接面56Bcに対して交差する他の面(第1凸部56Aの各面、第2凸部56Bの一対の側面、面56Bb)は副当接面と把握されてもよい。
【0048】
組合せ中子位置決め部66とベース中子位置決め部37とについて説明する。
【0049】
ベース中子位置決め部37は、主空洞形成部35の外周の一部が凹んだ形状に形成されている。ここでは、ベース中子位置決め部37は、主空洞形成部35の周方向において、ベース中子位置決め部36と枝空洞形成部38との間の2箇所に形成されている。
【0050】
ベース中子位置決め部37は、一対のガイド側面37aと、受面37bとを含む。一対のガイド側面37aは、主空洞形成部35の外周面から内側に向うように形成されている。一対のガイド側面37aは、ベース中子本体34における主空洞形成部35の周方向において離れて対向し合っている。一対のガイド側面37aは、ベース中子位置決め部37の奥側に向けて徐々に狭まるように形成されている。受面37bは、一対のガイド側面37aの奥側の辺同士を結ぶ面、ここでは、外側に凸となる弧状の面に形成されている。上記一対のガイド側面37a及び受面37bは、主空洞形成部35の上端部から下端部に至る手前まで延在している。一対のガイド側面37aの下辺と受面37bの下辺とを結ぶように、主位置決め面37cが形成されている。主位置決め面37cは、予め定められる位置決め方向Pに対して交差(ここでは直交)している。主位置決め面37cを基準とし、当該主位置決め面37cに交差する面(例えば、受面37b又は一対のガイド側面37a)を副位置決め面と捉えてもよい。
【0051】
組合せ中子位置決め部66は、上記ベース中子位置決め部37に対応し、当該ベース中子位置決め部37に嵌込可能な形状に形成されている。
【0052】
より具体的には、組合せ中子位置決め部66は、ベース中子位置決め部37に嵌込可能な凸形状に形成されており、上記一対のガイド側面37aに対応する一対の側面66aと、受面37bに対応する奥面66bと、主位置決め面37cに対応する主当接面66cとを有している。一対の側面66aは、一対のガイド側面37aと同方向に傾斜している。奥面66bは、一対の側面66aの内側の辺同士を結ぶ面(ここでは弧状面)に形成されている。37bに、主空洞形成部35の軸方向に沿って延びる浅い溝37bgが形成されている。溝37bgは、接着剤を滞留させる空間として利用され得る。主当接面66cは、予め定められる位置決め方向Pに対して交差(ここでは直交)している。そして、組合せ中子位置決め部66がベース中子位置決め部37に嵌った状態で、一対の側面66aが一対のガイド側面37aに接触すること、奥面66bが受面37bに接触すること、さらに、主当接面66cが主位置決め面37cに接触することが同時に成立し得る。主当接面66cを基準とし、当該主当接面66cに対して交差する他の面(奥面66b、一対の側面66a)は副当接面と把握されてもよい。
【0053】
中子組合せ体の一例としての鋳造用中子組合せ体20を利用して、空洞14、15、16、17を有する成型物10を製造する方法例について説明する。
【0054】
この製造方法は、鋳造用中子組合せ体20を形成する工程(a)と、鋳造用中子組合せ体20を型内に配置する工程(b)と、成型物10を成型する工程(c)とを備える。
【0055】
工程(a)においては、組合せ中子本体54、64を、ベース中子本体34に位置決め嵌合させた状態で、組合せ中子50、60をベース中子30に固定して鋳造用中子組合せ体20を形成する。
【0056】
この際、
図6及び
図7に示すような組合せ用補助具100を用いてもよい。
図6は組合せ用補助具100にベース中子30を支持した状態を示し、
図7は組合せ用補助具100にベース中子30及び組合せ中子50、60が支持された状態を示している。
【0057】
組合せ用補助具100は、樹脂等によって形成された部材であり、主支持部110と、副支持部120、130とを備える。主支持部110と、副支持部120、130とは、平面的に広がるベース102上において一定の位置関係で支持されている。
【0058】
主支持部110は、ベース中子30の少なくとも一部を載置状態で支持可能に構成される。ここでは、主支持部110は、第1主支持部112と、第2主支持部114とを備える。第1主支持部112は、円柱状部分113と、円柱状部分113の上面の中央に立設された棒状部113pとを備える。第2主支持部114は、第1主支持部112の周りの一部に設けられている。第2主支持部114に溝状の凹部115が形成されている。
【0059】
ベース中子30のうちの主空洞形成部35が第1主支持部112に支持される。具体的には、主空洞形成部35の下面が円柱状部分113の上面に載置される。これにより、主空洞形成部35が第1主支持部112上において位置決め方向Pにおいて位置決めされる。また、棒状部113pが主空洞形成部35の位置決め孔35hに挿入される。これにより、主空洞形成部35が位置決め方向Pに交差する方向においても位置決めされる。また、枝空洞形成部38の端部に設けられた幅木32が凹部115に嵌った状態で当該凹部115上に載置される。これにより、棒状部113pを中心とするベース中子30の回転止がなされる。これにより、ベース中子30が主支持部110によって、一定位置に支持される。
【0060】
副支持部120、130は、主支持部110によって支持されたベース中子30に複数の組合せ中子50、60の一部が位置決めされた状態で、組合せ中子50、60のうちベース中子30から延出する部分を支持可能に構成される。
【0061】
具体的には、副支持部120は、第1主支持部112に対して第2主支持部114とは反対側に設けられる。副支持部120には、位置決め凹部122が形成されている。位置決め凹部122は、第1主支持部112を中心とする周方向において離れて対向する一対の側面と、一対の側面との間の底面とを有している。組合せ中子50の組合せ中子位置決め部56がベース中子30のベース中子位置決め部36に位置決めされた状態で、組合せ中子50の幅木52が一対の側面間で底面上に載置される。これにより、組合せ中子50のうちベース中子30から延出する部分が、副支持部120によって支持される。
【0062】
副支持部130は、第1主支持部112の外周りであって第2主支持部114と副支持部120との2箇所の間に設けられる。副支持部130には、位置決め凹部132が形成されている。位置決め凹部132は、第1主支持部112を中心とする周方向において離れて対向する一対の側面と、一対の側面との間の底面とを有している。組合せ中子60の組合せ中子位置決め部66がベース中子30のベース中子位置決め部37に位置決めされた状態で、組合せ中子60の幅木62が一対の側面間で底面上に載置される。これにより、組合せ中子60のうちベース中子30から延出する部分が、副支持部130によって支持される。組合せ中子位置決め部66がベース中子位置決め部37に位置決めされた状態で、組合せ中子60が垂下がって支持される場合、底面が幅木62を支持することは必須ではない。
【0063】
上記組合せ用補助具100を用いて鋳造用中子組合せ体20を形成する作業例について説明する。
【0064】
棒状部113pを主空洞形成部35の位置決め孔35hに挿入し、主空洞形成部35の下面を円柱状部分113の上面に接触させるようにする。また、枝空洞形成部38の端部に設けられた幅木32を凹部115に嵌める。これにより、ベース中子30が主支持部110に載置される(工程a1)。
【0065】
この際、ベース中子位置決め部36、37又は組合せ中子位置決め部56、66に、チューブBa等から供給される接着剤Bを塗布してもよい(
図6参照)。接着剤Bとしては、シアノアクリレート系のゼリー状接着剤が用いられてもよい。塗布箇所は、例えば、ベース中子位置決め部36、37のうち主空洞形成部35寄りの面であってもよい。
【0066】
次に、主支持部110の上方で、ベース中子30の主空洞形成部35に、組合せ中子50、60の一部である主空洞形成部55、65を位置決めする(工程a2)。具体的には、組合せ中子50、60の組合せ中子位置決め部56、66を、ベース中子30のベース中子位置決め部36、36に嵌め込む。
【0067】
そして、組合せ中子位置決め部56、66のうちベース中子30から延出する幅木52、62を、副支持部120、130で位置決め支持する(工程a2、
図7参照)。
【0068】
接着剤Bが硬化するまで、ベース中子30及び組合せ中子50、60が組合せ用補助具100上に支持された状態とする。接着剤Bが硬化すると、鋳造用中子組合せ体20が形成される。
【0069】
上記のように製造された鋳造用中子組合せ体20を、型90内に配置する(
図3参照)。すなわち、主空洞形成部35の下端面35b及び位置決め孔35hを型90における円柱部分92aに固定することで、ベース中子本体34、組合せ中子本体54、64が型面から離れた位置に配置されるようにする。
【0070】
なお、主空洞形成部35、55、65によって構成される円柱状の中子部分は、下型92から突出する円柱部分92aの上に載置される。上型94から突出する円柱部分94aが、円柱状の中子部分の上方に連続するように配置される。よって、成型物10のうち主空洞14は、下型92の円柱部分92a、鋳造用中子組合せ体20における円柱状の中子部分と、上型94の円柱部分とによって形成される。
【0071】
そして、型90内に溶融した金属が流し込まれる。溶融した金属が冷却固化することで、型面形状及び鋳造用中子組合せ体20の表面形状が、表面形状として転写された成型物10が成型される。
【0072】
成型物10は、主空洞14の周りの内周面が切削加工されてもよい。これにより、シリンダ空間を形成する内周面が円滑な面に加工される。主空洞14の周りの内周面には、下型92の円柱部分92aと、中子組合せ体20の円柱状部分と、上型94の円柱部分との境界によって生じる線状の凹凸部分が形成される可能性がある。また、中子組合せ体20の円柱状部分においては、主空洞形成部35、55、65の境界が存在しているため、主空洞14の周りの内周面に、当該境界による凹凸部分が形成される可能性がある。これらの境界による凹凸部分は、金型成型後に、切削加工される部分に形成されているため、凹凸部分を目立たなくすることができる。
【0073】
このように構成された鋳造用中子組合せ体20によると、組合せ中子本体54、64の組合せ中子位置決め部56、66が、ベース中子本体34のベース中子位置決め部36、37に接した状態で、組合せ中子50、60がベース中子30に組合わされる。このため、ベース中子本体34を基準として組合せ中子本体54、64の位置が定る。これにより、ベース中子本体34と組合せ中子本体54、64との間で位置ずれを少なくすることができる。これにより、鋳造用中子組合せ体20を用いて製造された成型物10の表面形状精度がよくなる。
【0074】
また、1つのベース中子本体34に対して複数の組合せ中子本体54、64の位置が定る。このため、ベース中子本体34を基準として複数の組合せ中子本体54、64の位置ずれを少なくすることができ、この点からも、成型物10の表面形状精度がよくなる。
【0075】
また、ベース中子位置決め部36、37と、組合せ中子本体54、64とは、予め定められる位置決め方向Pに接触し合うため、ベース中子本体34を基準として、組合せ中子本体54、64を、位置決め方向Pに位置決め精度よく配置することができる。
【0076】
また、ベース中子位置決め部36、37は、位置決め凹部であり、その奥側に向けて徐々に狭まる一対のガイド側面36Ba、37aを有している。このため、位置決め凸部である組合せ中子位置決め部56、66をベース中子位置決め部36、37に嵌め込むと、組合せ中子位置決め部56、66は、一対のガイド側面36Ba、37aによってベース中子位置決め部36、37の奥に向け円滑に案内される。これにより、ベース中子30の主空洞形成部35の周りに組合せ中子本体54、64が精度よく容易に位置決めされる。
【0077】
また、位置決め凹部であるベース中子位置決め部36は、一対のガイド側面36Baのうち幅広側の辺から外側に延在する一対の受面36Abを有している。位置決め凸部である組合せ中子位置決め部56は、一対のガイド側面36Baの奥側の奥面36Bbに対して隙間Sを設けると共に一対の受面36Abに接した状態で、ベース中子位置決め部36に嵌り込んでいる。例えば、奥面36Bbと受面36Abとの両方が、組合せ中子位置決め部56に同時に接触する形状に設計した場合、製造誤差等によって、奥面36Bbと受面36Abとの一方が先に接触し、他方が非接触となる場合があり得る。特に、奥面36Bbが組合せ中子位置決め部56に接触すると、接触面積が小さいことから、ベース中子本体34に対して組合せ中子本体54がぐらついてしまう可能性がある。そこで、一対のガイド側面36Baのうち幅広側の辺から外側に延在する一対の受面36Abが、組合せ中子位置決め部56に優先的に接触し得る構成とすることで、組合せ中子位置決め部56がベース中子位置決め部36にがたつき無く位置決めされ易い。
【0078】
また、成型物10は、主空洞14と、枝空洞15、16、17とを有する筒体であり、ベース中子本体34が主空洞14の一部を形成し、組合せ中子本体54、64のそれぞれは、ベース中子本体34と組合わされて、主空洞14の他の分と、枝空洞15、16、17の少なくとも一部とを形成する。このため、主空洞14の一部を形成するベース中子本体34を基準として、枝空洞16、17を形成する中子本体54、64が組合われる。このため、主空洞14に対して他の枝空洞16、17が位置精度よく形成される。枝空洞15は、ベース中子本体34によって形成されるため、主空洞14に対する枝空洞15の位置精度はよい。
【0079】
また、成型物10が2サイクルエンジン用のシリンダであり、ベース中子位置決め部36、37と組合せ中子位置決め部56、66とがシリンダ空間の中心軸方向Pに接触し合い、ベース中子30及び組合せ中子50、60のうちの少なくとも1つが掃気ポートを形成し、他の少なくとも1つが排気ポートを形成すれば、シリンダ空間に対して掃気ポートと排気ポートとを、前記方向Pに位置精度よく形成することができる。これにより、ピストンの移動に伴う排気、掃気等のタイミングが良好となる。
【0080】
かかる鋳造用中子組合せ体20を用いて成型物10を製造することによって、ベース中子30による空洞と、組合せ中子50、60による空洞とが、設計上の位置に対して位置ずれ少なく形成された成型物10を製造することができる。
【0081】
鋳造用中子組合せ体20を形成するにあたって、上記組合せ用補助具100を用いることで、主支持部110及び副支持部120、130上で、ベース中子30に対して組合せ中子位置決め部56、66を精度よく容易に組合わせることができる。
【0082】
また、組合せ中子本体54、64とベース中子本体34とが位置決め嵌合する部分の少なくとも一部(例えば、ベース中子位置決め部36、37と組合せ中子位置決め部56、66との組合せ部分)が、成型物10の成型後に切削加工される部分(例えば、シリンダ空間の内周面)に形成されれば、その組合せによる凹凸部分を、切削加工によって目立たなくすることができる。
【0083】
なお、成型物10は、2サイクルエンジン用のシリンダでなくてもよい。成型物10は、2サイクルエンジン用ではないシリンダであってもよい。成型物10は、エンジンを構成する他の部品であってもよい。成型物は、エンジン用の部品に限定されず、他の成型物、例えば、鋳造物であってもよい。
【0084】
ベース中子本体34及び組合せ中子本体54、64による枝空洞15、16、17の形成例は、上記実施形態で説明した例に限られない。例えば、枝空洞15、16、17の全てが組合せ中子本体によって形成されてもよい。また、掃気ポート又は吸気ポートがベース中子本体によって形成され、他のポートが組合せ中子本体によって形成されてもよい。
【0085】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0086】
本開示は、下記各態様を含む。
【0087】
第1の態様は、鋳造物を成形する際に、前記鋳造物内の空洞を形成するための鋳造用中子組合せ体であって、前記鋳造物の空洞の一部を形成するためのベース中子本体を含むベース中子と、前記鋳造物の空洞の他の部分を形成するための組合せ中子本体を含む組合せ中子と、を備え、前記ベース中子本体がベース中子位置決め部を有し、前記組合せ中子本体が組合せ中子位置決め部を有し、前記組合せ中子位置決め部が前記ベース中子位置決め部に接した状態で、前記組合せ中子が前記ベース中子に組合わされる、鋳造用中子組合せ体である。
【0088】
この鋳造用中子組合せ体によると、組合せ中子本体の組合せ中子位置決め部がベース中子本体のベース中子位置決め部に接した状態で、組合せ中子がベース中子に組合わされる。このため、ベース中子本体を基準として組合せ中子本体の位置が定まる。これにより、ベース中子本体と組合せ中子本体との間で位置ずれを少なくすることができる。
【0089】
第2の態様は、第1の態様に係る鋳造用中子組合せ体であって、前記組合せ中子を複数備え、前記複数の組合せ中子のそれぞれの前記組合せ中子位置決め部が、前記ベース中子位置決め部に接した状態で、前記複数の組合せ中子が前記ベース中子に組合わされるものである。この場合、ベース中子本体を基準として複数の組合せ中子本体の位置が定る。これにより、ベース中子本体と複数の組合せ中子本体との間で位置ずれを少なくすることができる。
【0090】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る鋳造用中子組合せ体であって、前記ベース中子位置決め部と前記組合せ中子位置決め部とは、少なくとも予め定められる位置決め方向に接触し合うものである。これにより、ベース中子本体を基準として、組合せ中子本体を、予め定める位置決め方向に位置決め精度よく配置することができる。
【0091】
第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に係る鋳造用中子組合せ体であって、前記組合せ中子位置決め部と前記ベース中子位置決め部との一方が位置決め凹部であり、他方が位置決め凸部であり、前記位置決め凹部は、前記ベース中子本体の周方向に離れた一対のガイド側面を有し、前記一対のガイド側面は、前記位置決め凹部の奥側に向けて徐々に狭まるものである。この場合、位置決め凸部を位置決め凹部に嵌め込む際に、位置決め凸部が一対のガイド側面によって案内される。これにより、ベース中子の周方向において組合せ中子が精度よく容易に位置決めされる。
【0092】
第5の態様は、第4の態様に係る鋳造用中子組合せ体であって、前記位置決め凹部は、前記一対のガイド側面のうち幅広側の辺から外側に延在する一対の受面を有し、前記位置決め凸部は、前記一対のガイド側面の奥側で前記位置決め凹部に対して隙間を設けた状態で、前記一対の受面に接した状態で、前記位置決め凹部に嵌り込むものである。これにより、これにより、ベース中子本体に対して組合せ中子が位置精度よく配置され得る。
【0093】
第6の態様は、第1から第5のいずれか1つの態様に係る鋳造用中子組合せ体であって、前記鋳造物は、筒体であり、前記空洞として、前記筒体内の主空洞と、前記主空洞の外側に連続する枝空洞とを有しており、前記ベース中子本体は、前記主空洞の一部を形成し、前記組合せ中子本体のそれぞれは、前記ベース中子本体と組合わされて、前記主空洞の他の部分と前記枝空洞の少なくとも一部とを形成するものである。この場合、主空洞の一部を形成するベース中子本体を基準として、枝空洞の少なくとも一部を形成する組合せ中子本体が組合わされる。このため、主空洞に対して、他の枝空洞が位置精度よく形成される。
【0094】
第7の態様は、第6の態様に係る鋳造用中子組合せ体であって、前記鋳造物が、2サイクルエンジン用のシリンダであり、前記主空洞が前記シリンダ内におけるシリンダ空間であり、前記ベース中子位置決め部と前記組合せ中子位置決め部とは、前記シリンダ空間の中心軸方向に接触し合い、前記ベース中子本体及び前記組合せ中子本体のうちの少なくとも1つが前記枝空洞として前記シリンダ空間に繋がる掃気ポートを形成し、前記ベース中子本体及び前記組合せ中子本体のうちの他の少なくとも1つが前記枝空洞として前記シリンダ空間に繋がる排気ポートを形成するものである。これにより、シリンダにおけるシリンダ空間に対して、掃気ポートと排気ポートとをシリンダ空間の中心軸方向に位置精度よく形成することができる。
【0095】
第8の態様は、空洞を有する成型物を製造する方法であって、(a)前記成型物の空洞の一部を形成するためのベース中子本体を含むベース中子と、組合せ中子と、を備え、前記組合せ中子が、前記成型物の空洞の他の部分を形成するための組合せ中子本体を含んでおり、前記組合せ中子本体を前記ベース中子本体に位置決め嵌合させた状態で、前記組合せ中子を前記ベース中子に固定して中子組合せ体を形成し、(b)前記中子組合せ体を型内に配置し、(c)型と前記中子組合せ体を用いて、前記成型物を成型する、成型物の製造方法である。
【0096】
この成型物の製造方法によると、組合せ中子本体をベース中子本体に位置決め嵌合させた状態で、組合せ中子がベース中子に組合わされる。このため、ベース中子本体を基準として組合せ中子本体の位置が定まる。かかる中子組合せ体を用いて成型物を製造することで、ベース中子による空洞と、組合せ中子による空洞とが、位置ずれ少なく形成された成型物を製造することができる。
【0097】
第9の態様は、第8の態様に係る成型物の製造方法であって、前記工程(a)では、(a1)前記ベース中子の少なくとも一部を主支持部上に載置し、(a2)前記主支持部の上方で、前記ベース中子に、前記組合せ中子の一部を位置決めし、(a3)前記組合せ中子のうち前記ベース中子から延出する部分を副支持部で支持する。
【0098】
これより、主支持部及び副支持部上でベース中子に対して組合せ中子を精度よく容易に組合わせることができる。
【0099】
第10の態様は、第8又は第9の態様に係る成型物の製造方法であって、前記組合せ中子本体と前記ベース中子本体とが位置決め嵌合する部分の少なくとも一部は、前記成型物の成型後に、切削加工される部分に形成されるものである。これにより、組合せ中子本体とベース中子本体とが位置決め嵌合する部分の少なくとも一部を、切削加工によって目立たなくすることができる。
【0100】
上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0101】
10 成型物
14 主空洞
15、16、17 枝空洞
20 鋳造用中子組合せ体
30 ベース中子
34 ベース中子本体
35 主空洞形成部
36、37 ベース中子位置決め部
36Ab、37b 受面
36Ba、37a ガイド側面
36Bb 奥面
36Bc、37c 主位置決め面
38 枝空洞形成部
50、60 組合せ中子
54、64 組合せ中子本体
55、65 主空洞形成部
56、66 組合せ中子位置決め部
56Bb 面
56Bc、66c 主当接面
58、68 枝空洞形成部
62 幅木
66a 側面
90 型
100 組合せ用補助具
110 主支持部
120、130 副支持部
P 位置決め方向