(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036401
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】水分計及び水分測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/22 20060101AFI20230307BHJP
G01V 3/08 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
G01N27/22 C
G01V3/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143432
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】316016874
【氏名又は名称】マイクロメジャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100216736
【弁理士】
【氏名又は名称】竹井 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100202706
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 克彦
(74)【代理人】
【識別番号】100082913
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 光宏
(72)【発明者】
【氏名】杉山 晃広
【テーマコード(参考)】
2G060
2G105
【Fターム(参考)】
2G060AA13
2G060AC01
2G060AF10
2G060AG03
2G060AG10
2G060CA04
2G060CA07
2G060JA03
2G105AA02
2G105BB04
2G105DD02
2G105EE01
2G105HH04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】利用者が水分計を手で持った状態であっても対象物の含水率を高い精度で測定できる水分計及び水分測定方法を提供する。
【解決手段】+電極と-電極との間の静電容量を測定して対象物の含水率を算出する水分計であって、前記-電極と電気的に接続されているアース電極を、備え、前記アース電極は、前記対象物の静電容量を測定する場合において、利用者の肌と接触される、水分計。筐体を、さらに備え、前記+電極、前記-電極及び前記アース電極は前記筐体の表面に設けられており、前記+電極及び前記-電極の其々は前記筐体のうちの1つの面である第1面に設けられており、前記アース電極は、前記筐体のうちの前記第1面以外の面に設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
+電極と-電極との間の静電容量を測定して対象物の含水率を算出する水分計であって、
前記-電極と電気的に接続されているアース電極を、備え、
前記アース電極は、前記対象物の静電容量を測定する場合において、利用者の肌と接触される、
水分計。
【請求項2】
筐体を、さらに備え、
前記+電極、前記-電極及び前記アース電極は前記筐体の表面に設けられており、
前記+電極及び前記-電極の其々は前記筐体のうちの1つの面である第1面に設けられており、
前記アース電極は、前記筐体のうちの前記第1面以外の面に設けられている、
請求項1に記載の水分計。
【請求項3】
前記筐体は略直方体形状であり、
前記アース電極は、前記筐体のうちの前記第1面に隣接する第2面に設けられており、
前記+電極、前記-電極及び前記アース電極は其々同一の方向に沿って延びている細長形状である、
請求項2に記載の水分計。
【請求項4】
+電極と-電極との間の静電容量を測定して対象物の含水率を算出する水分計であって、
前記-電極と電気的に接続されているアース電極を備える水分計、を準備する準備工程と、
前記アース電極に利用者の肌を接触させる接触工程と、
前記接触工程と並行して、前記+電極と前記-電極が空気中に露出している状態で前記水分計の電源をオンとする作動工程と、
前記接触工程と並行して、前記+電極と前記-電極を対象物に接触させる測定工程と、
を含む水分測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分計及び水分測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、公開実用新案 昭62‐99854号公報(特許文献1)がある。この公報には、「高周波を用いて木材等の含有水分率を測定する高周波木材水分計」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】公開実用新案 昭62‐99854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
利用者が水分計を手で持った状態で対象物の含水率を測定する場合において、当該手の影響により測定結果に誤差が生じるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、
+電極と-電極との間の静電容量を測定して対象物の含水率を算出する水分計であって、
前記-電極と電気的に接続されているアース電極を、備え、
前記アース電極は、前記対象物の静電容量を測定する場合において、利用者の肌と接触される、
水分計。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、利用者が水分計を手で持った状態であっても対象物の含水率を高い精度で測定できる水分計及び水分測定方法を提供できる。
上述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1乃至
図5により水分計の一例(実施形態)を説明する。
本実施形態における水分計1は、+電極と-電極との間の静電容量を測定して対象物の含水率を算出する高周波式水分計である。
高周波式水分計は、水分の増減にしたがって変化する静電容量を、これに流れる高周波電流の多少を測定することによって測定し、含水率を算出するものである。
【0009】
水分計1は、筐体2、+電極31、-電極32、アース電極33、表示部4及び操作部5を備える。
筐体2は、略直方体形状である。
筐体2は絶縁性の部材から構成されている。
【0010】
+電極31及び-電極32並びに後述するアース電極33は筐体2の表面に突出して設けられている。
+電極31及び-電極32の其々は筐体2のうちの1つの面である第1面(本実施形態における
図2で示す背面)に設けられている。
【0011】
ところで、利用者が水分計を手で持った状態で対象物の含水率を測定する手持型水分計においては、高い含水率を有する人体(利用者の手)が水分計に近づくことに起因して静電容量の測定値に誤差が生じるおそれがあった。
【0012】
この点につき、従来においては、水分計を手で持った後に、水分計の電源をオンとすることにより、持ち手を含めたその状態を基準として静電容量の測定を行うことで、対象物の水分のみの増加分に起因する静電容量の変化を測定している。
【0013】
しかしながら、電源をオンとした後において、利用者は生身の人間であるがゆえに、水分計を持つ手が一定位置に固定されず、その位置がずれてしまうおそれがあり、これに起因して測定値に誤差が生じるおそれがあった。
【0014】
そこで、本実施形態における水分計1は、アース電極33を備えており、アース電極33は-電極32と電気的に接続されており、対象物の静電容量を測定する場合において、利用者の肌と接触される。
当該構成により、アース電極33に利用者の指を接触させた後に、水分計1の電源をオンとすることにより、持ち手が-電極と同電位となった状態を基準として静電容量の測定を行うことができるため、持ち手の影響により測定値に誤差が生じることを抑制できる。
【0015】
アース電極33は、筐体2のうちの第1面以外の面である、第1面に隣接する第2面(本実施形態における
図3で示す右側面)に設けられている。
当該構成により、+電極31及び-電極32を対象物に接触させた状態で、アース電極33に利用者の指を接触させることができる。
【0016】
+電極31、-電極32及びアース電極33は其々同一の方向に沿って延びている細長形状である。
当該構成により、+電極31と-電極32との間、及び+電極31とアース電極33との間に、広範囲な電界を発生させることができるため、測定精度を向上できる。
また、本実施形態のように、アース電極33と近接する電極を+電極31としてもよい。すなわち、-電極32とアース電極33との間に+電極31が位置していてもよい。
【0017】
水分計1の原理を説明する。
水分計1は、各電極を介して高周波(20~22MHz)発振回路に接する対象物の静電容量の変化により発振周波数が増減し、この信号を、増幅回路を介して分周器で分周し、マイクロコンピュータでその周期をカウントする。
まず、測定時の雰囲気中の空気の静電容量を測定するために、+電極31及び-電極32を空気中に露出させた状態、かつアース電極33に肌が触れた状態で電源をオンとすることで分周した周期をカウントしてその値をマイクロコンピュータの内部の記憶部に記憶する。
次に、+電極31及び-電極32を対象物に接触させて同様にカウント及び記憶し、両者の差をマイクロコンピュータにより計算してこの値から含水率を算出して表示部4で表示する。
【0018】
なお、操作部5により、予め入力された、対象物の密度や厚みの情報を用いて、対象物の含水率を算出してもよい。
また、+電極31及び-電極32を対象物に接触させた直後の測定値は、誤差が生じやすいため、用いないこととしてもよい。
【0019】
水分計1を用いて、対象物の含水率を測定する方法を説明する。
まず、アース電極33に利用者の肌を接触させる(接触工程)。
次いで、接触工程と並行して、+電極31と-電極32が空気中に露出している状態で水分計1の操作部5により電源をオンとする(作動工程)。
次いで、
図5で示すように、接触工程と並行して、+電極31と-電極32を対象物に接触させる(測定工程)。
【0020】
上述した本実施形態の水分計1を用いて以下の測定1~3を1セットとして10回行った。測定した対象物は木材(スギ)であり、厚みは40mmであり、密度は0.35g/cm3であった。
測定1:水分計1における正面のほぼ全面を持ち手で覆うように水分計1を手で保持した状態で対象物の測定を行った。
測定2:水分計1における正面のうちのほぼ半分の面積を持ち手で覆うように水分計1を手で保持した状態で対象物の測定を行った。
測定3:水分計1における正面を極力持ち手で覆わないように水分計1を手で保持した状態で対象物の測定を行った。
【0021】
測定1~3で算出した含水率の最大値と最小値の差を算出した。
測定結果を表1に示す。
【0022】
【0023】
従来から利用されている公知の水分計(以下、従来水分計とする場合がある。)を用いて同様の測定を行った。
測定結果を表2に示す。
【0024】
従来水分計はマイクロメジャー株式会社製のHS-100(型式)を用いた。
図6は従来水分計の斜視図である。
図7は従来水分計の背面図である。
従来水分計は、
図7で示すとおり背面に設けられた+電極と-電極との間の静電容量を測定して対象物の含水率を算出する高周波式水分計である。
【0025】
【0026】
本実施形態の水分計1を用いた場合における測定1~3のうちの最大値と最小値の差の値(表1)は、従来水分計を用いた場合における測定1~3のうちの最大値と最小値の差の値(表2)より明らかに小さい。
このことから、本実施形態の水分計1は、利用者が当該水分計1を手で持った状態であっても対象物の含水率を高い精度で測定できるといえる。
【0027】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 :水分計
2 :筐体
31 :+電極
32 :-電極
33 :アース電極
4 :表示部
5 :操作部