(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036487
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】エアレーション付属器具
(51)【国際特許分類】
A01K 63/04 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
A01K63/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143571
(22)【出願日】2021-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】505273648
【氏名又は名称】中村 周
(72)【発明者】
【氏名】中村 周
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CA01
2B104EB05
2B104EB19
2B104EB26
(57)【要約】
【課題】強い水流を好まない魚を小型水槽で人の生活にも快適に飼育するために,エアレーション方式において,サイズが小さくて目障りではなく,水流が少なくて,しかも水面は動かしてエアレーション機能が十分であり,音が小さい,という条件を兼ね備える器具を提供する.
【解決手段】当発明の器具はエアポンプにつなげて水中でエアを吐出する器具で,吐出管の先端が減厚デーパー形状となっていることと,吐出孔が小内径であることと,吐出方向が斜め下方である等により,上記条件を兼ね備えることが可能となった.
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水生生物飼育用水槽にエアレーションを行うための ,エアポンプに接続して使用する器具において,
エアポンプから供給されるエアを水中に吐出する部分である吐出管には,その先端部に吐出孔があり,
吐出管は先端付近以外の肉厚が0.5ミリメートルより厚みがあり,吐出管の先端付近では先端にかけて厚みが減少してテーパー形状となり,先端において法線方向が吐出方向である面の面積がわずかで,
吐出孔の内径は2.8ミリメートルより小さく,もしくは吐出孔の内腔面積が6.2平方ミリメートルより小さく,
吐出孔の吐出方向は斜め下方を向いている,
ことを特徴とするエアレーション付属器具.
【請求項2】
前記吐出管は肉厚1ミリメートル以上の厚みがあり,
前記吐出孔の内径は1.8ミリメートル以下,もしくは吐出孔の内腔面積が2.6平方ミリメートル以下で,
吐出孔の吐出方向は真下を0°とすると20°から70°までの方向に向いている,
ことを特徴とする請求項1に記載のエアレーション付属器具.
【請求項3】
エアポンプにエアチューブを接続し,途中にエア流量調節器を接続し,エアチューブに硬性エアパイプを接続し,硬性エアパイプは水中に入り,硬性エアパイプの先端に当器具を接続し,水槽壁の上端部分に固定されたクリップにて硬性エアパイプが固定されており,
硬性エアパイプから吐出孔までの水平方向における距離が10ミリメートルより長く,
吐出管が一つもしくは複数ある,
ことを特徴とする請求項1,2に記載のエアレーション付属器具.
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水生生物飼育用水槽にエアレーションを行うための ,エアポンプに接続して使用する器具に関するものである.
【背景技術】
【0002】
水槽内に水生生物を飼育するためには,自然界と違い水の容量に比べて生物が相対的に多くて酸素が多く消費されるため水の酸素溶存量を強制的に上げること(エアレーション)が必要である.エアレーションを行うためには,主にエアポンプ式とモーター式がある.エアポンプ式はエアポンプでエアを水中に送り込む方式で,主にエアストーンを付ける方式とエアリフト方式がある.モーター式はモーターにて水流を作って水流により酸素を取り込んで循環させる方式で多様な方式がある.
【0003】
エアポンプにはエアストーンが付けられることが多いが,水槽内に留置する器具のサイズが小さため目障りではなく,水流もモーター式に比べて少ないため,水流を好まない魚を,特に小型水槽で飼育するのに適したエアレーション方法である.しかし音がうるさく,寝室に置くには耐えられないものであった.音の発生は吐出部で発生する気泡発生音と水面で発生する気泡破裂音がある.気泡破裂音は気泡サイズを小さくすれば小さくなり,その音は無くすことはできないが,多量でなければ耳障りな音質ではない.一方,気泡発生音は一般的なエアストーンでは大きく耳障りな音をたてる.エアストーンの目を小さくしても静かにならず,高音のより耳障りな音質にもなる.エアストーンを付けずに直接エアを出すとさらに大きな気泡発生音と気泡破裂音が発生してしまい,水流も強くなってしまう.
【0004】
また,エアリフト式では,多量の気泡をパイプ内に発生させて,気泡がパイプ内を上昇する力で水を押し上げ,パイプ上端から水を流出させて水流を作る方式があるが,これも音がうるさく,特に気泡破裂音が大きく寝室に置くには耐えられないものであった.
【0005】
モーター方式は水中モーターでは音が静かな機種も存在するが,多くが耳障りな作動音が発生する.また,水流を十分少なくすることが難しく水流を好まない魚に適していない.さらに,サイズが大きいため目障りで,小型水槽には適しているとはいえない.
【0006】
ベタのような単独で飼うことが望ましい魚や,メダカ類のような小型の魚は小型水槽で飼うことが多いが,それらは,強い水流を好まない魚でもある.以上のように,小型水槽でも目立たず水流が少ない方式をとなるとエアストーン方式が選択されることになるが,音の問題があり,寝室に置くために適するという条件まで兼ね備えたエアレーション器具はなかった.
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
強い水流を好まない魚を小型水槽で人の生活にも快適に飼育するために,エアレーション方式において,サイズが小さくて目障りではなく,水流が少なくて,しかも水面は動かしてエアレーション機能が十分であり,音が小さい,という条件を兼ね備えることを目的とする.
【0009】
通常のエアポンプにエアストーンを付ける方式では,気泡から直接水中に酸素が供給される量は少なく,それよりも気泡が水面を動かすことの方が酸素供給において主たる要素であると言われている.それは気泡の表面積より水面の表面積の方が大きいためで,水面付近は大気から酸素が水中へ溶けて酸素溶存量が高く,水面付近の水を動かして循環流を作り水槽中の酸素溶存量を上げている.水面を動かすということが最も重要な要素である.さらに,水面を動かすことは油膜の除去という効果も加わる.気泡を大量に発生させると,上昇する気泡が水を巻いて水流を作り,水面も動かすことになるが,同時に水流が強くなってしまうことと,水泡発生音と水泡破裂音が増大してうるさくなってしまう.また,気泡のサイズが大きすぎると水面ですぐに破裂してしまうが,気泡のサイズが小さいと水面で破裂しにくくなり水面を気泡が流れることで,水面を動かすことになり,水流が小さくても水面を動かしエアレーション能力と油膜除去効果が維持できる.そのため,エア流量がおさえめで,気泡が小さい方が今回の目的に合っていると言える.気泡の大きさは吐出孔の大きさやエア流量や粘度等に関連する.
【0010】
気泡発生音を観察すると,エアが水を押す時に音が発生しているものではなく,気泡が吐出孔から離れた瞬間に音が発生している.気泡が吐出孔から離れた瞬間に表面張力により気泡下面の水が周囲から一気に衝突することで音を発生しているとすると気泡サイズが小さい方が衝突エネルギーが小さいため,発生音が小さくなると推測される.
【0011】
実際に水槽内にて各種内径のエア吐出孔で実験を行った.内径4.0ミリメートルから0.5ミリメートルまでの管の先から吐出させたところ,小さくなるに従って気泡発生音が小さくなる傾向にあったが,十分には小さくならず,内径を極小にするとむしろ気泡発生音が大きくなった,つまり,吐出孔内径を小さくすることだけでは十分ではないと言える.
【0012】
次に,先端形状による比較実験を行うと,吐出管がある程度肉厚で,吐出管の先端付近では先端にかけて厚みが減少してテーパー形状となっており(内径はそのまま),先端において法線方向が吐出方向である面の面積がわずかであるものでは,顕著に気泡発生音が小さくなった.
【0013】
さらに,その先端減厚テーパー形状の吐出管で内径を変えて実験すると,エア流量が高い場合には内径が大きくても静音効果が顕著であったが,低流量では内径が2.8ミリメートル以上あると十分に静音効果が得られなかった.内径が小さい方が低流量でも気泡発生音が小さくなる傾向があり,特に内径1.8ミリメートルの小径のものではかなり静かになった.よって低流量でも気泡発生音が無視できる程度になるためには,吐出孔は2.8ミリメートル(内腔面積は6.2平方ミリメートル)より小さくする必要があり,望ましくは1.8ミリメートルぐらい小さくすると良いといえる.
【0014】
さらに,吐出孔内径が2ミリメートルで吐出管が1ミリメートル以上の肉厚で上記先端減厚テーパー形状のものと,同じ内径で先端面もわずかだが肉厚が0.5ミリメートル以下の肉薄で先端減厚テーパー形状ではないもので比較すると,気泡発生音は明らかに前者のほうが静かだった.つまり,吐出管の肉厚が0.5ミリメートルより厚くて,望ましくは肉厚が1ミリメートル強あり,かつ上記の先端減厚テーパー形状にするのが有効であると言える.
【0015】
さらに,吐出方向による気泡発生音の変化を実験で確かめると,斜め下方では静かであったのが,角度を上げていくと,水平付近から音が発生しはじめ,水平以上では顕著に音が大きくなった.一方,斜め下から角度を下げていくと真下付近ではかえって音が発生するようになり,下方程良いというわけではなかった.以上より,吐出方向が斜め下方にするとよく,望ましくは,真下を0°とすると20°から70°の範囲が良いと言える.
【0016】
また,気泡が水面に出る所にエアパイプ等のものがあると表面張力により気泡がその周囲に吸い寄せられるように集まってしまい水面を流れる動きが阻害されてしまうため,吐出孔とエアパイプとの水平距離が離れている方が望ましかった.
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の結果から,考案した当発明の器具は,当器具のエアを水中に吐出する部分である吐出管には,その先端部に吐出孔があり,吐出管は先端付近以外の肉厚が0.5ミリメートルより厚みがあり,望ましくは1ミリメートル以上ある.吐出管の先端付近では先端にかけて厚みが減少してテーパー形状となり,先端において法線方向が吐出方向である面の面積がわずかである.吐出孔の内径は2.8ミリメートルより小さく,望ましくは1.8ミリメートル以下である.吐出孔の吐出方向は斜め下方を向いていて,望ましくは真下を0°とすると20°から70°までの方向に向いている.硬性エアパイプとの接続部から吐出孔までの水平方向における距離が10ミリメートルより長くなるよう吐出管にはある程度の長さがある.吐出管が一つ,もしくは複数ある.エアポンプにエアチューブを接続し,途中にエア流量調節器を接続し,エアチューブに硬性エアパイプを接続し,硬性エアパイプは水中に入り,その先端に当器具を接続する.水槽壁の上端部分に固定されたクリップにて硬性エアパイプを固定する.
【発明の効果】
【0018】
前述のように,気泡が大きすぎず気泡が水面を滑るように流れることにより水面を動かす.気泡が水面に出るところがエアパイプより離れるため気泡が集まってとどまってしまうことが少ない.水面を動かす作用が十分であるため,エア流量をしぼって水槽内の水流を小さくしつつも,十分なエアレーション効果を保つことができる.
【0019】
前述のように気泡発生音がかなり小さくなり,寝室に置くことも許容できる.気泡破裂音はするが,気泡が小さいためその音量も大きくなく,音質はむしろ心地よいものであり,問題にならない.
【0020】
硬性エアパイプが既製の切断可能なものを使用でき,小型水槽をはじめ様々な水槽サイズに適応させることができる.
【0021】
当器具は非常に小さく,さらにエアパイプも既製のもので細くて透明のものを使用できるので,小型水槽でも目障りにならない.前述の既存のエアレーション器具よりサイズが顕著に小さい.
【0022】
吸盤を使わなくても設置できるため,器具を取り出して清掃することが容易である.汚れやすい吸盤がなく見栄えがいい.吸盤は水槽の角には設置できないが,当器具は水槽の角にも設置できるためさらに目立たない.
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態1の全体斜視図.a:外面図.b:内部構造追加.
【
図2】本発明の実施形態1亜型の全体斜視図.a:外面図.b:内部構造追加.
【
図3】本発明の実施形態1の先端部の図.a:斜視図.b:正面図.
【
図4】本発明の実施形態1の先端部の矢状断面図.a:曲線減厚テーパー.b:直線減厚テーパー.
【
図6】本発明の実施形態1とその他の器具を接続した使用時外観図.
【発明を実施するための形態】
【0024】
当発明の器具の実施形態1を
図1から6にて説明する.当器具のエアを水中に吐出する部分である吐出管1には,エアが通る内腔4(
図1bと
図2bの点線の内側)と,その先端部に吐出孔2があり,吐出管1は先端付近以外での肉厚Tが0.5ミリメートルより厚みがあり,望ましくは1ミリメートル以上あり,その先端付近では先端にかけて厚みが減少してテーパー形状となって,先端において法線方向が吐出方向である面Pの面積がわずかである.吐出孔2の内径IDは2.8ミリメートルより小さく,望ましくは1.8ミリメートル程度である.吐出孔が正円ではない場合には,上記と同等の面積である吐出孔内腔面積が6.2平方ミリメートルより小さく,望ましくは2.6平方ミリメートル程度である.吐出管1とエアパイプ接続部3の間は屈曲しており,吐出孔2の吐出方向Dは斜め下方を向いていて,望ましくは真下を0°とすると45°程である.エアパイプとの接続部から吐出孔2までの水平方向における距離Lが10ミリメートルより長くなるよう吐出管1にはある程度の長さがある.
【0025】
エアポンプ30にエアチューブ31を接続し,途中にエア流量調節器32を接続し,エアチューブ31に硬性エアパイプ33を接続し,硬性エアパイプ33は水中に入り,硬性エアパイプ33の先端に当器具のエアパイプ接続部3を接続する.水槽壁40の上端部分にクリップ34のばね35で固定し,クリップ34にてエアパイプ33を固定する.エアポンプ30から供給されるエアの流量を流量調節器32でしぼって吐出孔2から水中へエアが適量に吐出される状態にして用いるとよい.硬性エアパイプ33は市販されている外径約4.5ミリメートルの透明樹脂製のものなどを用いる.エアチューブ31も市販されている一般的な外径5から6ミリメートル,内径約4ミリメートルの軟性シリコン製のものなどを用いる.
【0026】
エアパイプ接続部3は硬性エアパイプ33に直接はめ込むタイプ(
図1)や,軟性エアチューブを介して硬性エアパイプ33に接続するタイプでエアパイプ接続部3がテーパー形状となってエアチューブの内腔に押し込める形態となっているタイプ(
図2)が考えられる.
【0027】
吐出管1の先端付近の減厚テーパー形状は,曲線減厚テーパー(
図4a)の他に線形減厚テーパー(
図4b)およびそれらの複合も考えられる.また,上部のみ減厚テーパー形状にしたものも考えられる.
【0028】
実施形態2は,
図7のように吐出管1が複数あり,水平パイプ5から並列で複数本でている.また,一か所から複数本枝分かれして吐出管がでている亜型も考えられる.