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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036504
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】直動案内ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/04 20060101AFI20230307BHJP
   F16C 33/38 20060101ALI20230307BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
F16C29/04
F16C33/38
F16H19/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021195672
(22)【出願日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2021143175
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】山口 脩介
(72)【発明者】
【氏名】松井 潤二
【テーマコード(参考)】
3J062
3J104
3J701
【Fターム(参考)】
3J062AB05
3J062AC07
3J062CA16
3J104AA13
3J104AA19
3J104AA23
3J104AA34
3J104AA64
3J104AA69
3J104AA74
3J104AA75
3J104AA76
3J104BA69
3J104CA02
3J104DA13
3J104DA17
3J104EA01
3J104EA02
3J701AA03
3J701AA32
3J701AA43
3J701AA64
3J701AA71
3J701BA36
3J701BA44
3J701BA49
3J701EA02
3J701FA41
3J701FA44
3J701GA31
3J701XB03
3J701XB19
3J701XB23
(57)【要約】
【課題】ずれの発生が防止されるとともに、部品点数が少なく簡易な構造を有する有限直動案内ユニットを提供すること。
【解決手段】側面に一対の軌道溝を有するレールと、前記レールの軌道溝のそれぞれに対向する一対の軌道溝を有するテーブルと、前記レールの軌道溝と前記テーブルの軌道溝とによって形成される軌道路に組み込まれ、前記テーブルの移動に伴って転動する複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持し、前記転動体の転動に伴って前記レールに沿って移動する保持器と、を備える直動案内ユニットである。当該直動案内ユニットは、前記レールおよび前記テーブルのそれぞれに固定された一対のラックギアと、前記保持器に回転可能に装着され、前記一対のラックギアに噛み合うピニオンギアと、を含む。前記保持器は一体に構成された鋼板から構成される。前記ピニオンギアの軸は、前記保持器に形成された孔に直接に保持されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面に一対の第1の軌道溝を有するレールと、
前記第1の軌道溝のそれぞれに対向する一対の第2の軌道溝を有するテーブルと、
前記第1の軌道溝と前記第2の軌道溝とによって形成される軌道路に組み込まれ、前記テーブルの移動に伴って転動する複数の転動体と、
前記転動体を回転自在に保持し、前記転動体の転動に伴って前記レールに沿って移動する保持器と、
を備える直動案内ユニットであって、当該直動案内ユニットは、
前記レールおよび前記テーブルのそれぞれに固定された一対のラックギアと、
前記保持器に回転可能に装着され、前記一対のラックギアに噛み合うピニオンギアと、
を含み、
前記保持器は、一体の鋼板から構成され、
前記ピニオンギアの軸は、前記保持器に形成された孔に直接に保持されている、
直動案内ユニット。
【請求項2】
前記保持器は、一定の厚みを有する鋼板から構成されている、
請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記保持器を構成する鋼板の厚みは、前記ピニオンギアの回転軸の直径よりも小さい、
請求項1または請求項2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記保持器に形成された孔は、前記ピニオンギアの歯車が回転自在である第1孔部と、前記ピニオンギアの軸を回転可能に保持する第2孔部と、を含み、
前記第2孔部の幅は、前記ピニオンギアの軸の直径よりも0.1mm~0.2mm大きい、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記レールは、一体の鋼板からなり、
前記レールの外側面は、
前記レールの底面と曲面を介して連なっている第1の外側面部分と、
前記レールを構成する鋼板の厚み方向に延在する端面である第2の外側面部分と、を含む、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記レールは、
底壁部と、
前記底壁部の長手方向に沿う両端部からそれぞれ立ち上がる一対の側壁部を含み、
前記底壁部は、
前記底壁部と前記側壁部の間の湾曲部を介して前記側壁部に接続する第1の底壁部分と、
前記第1の底壁部分よりも幅広であり前記レールの幅方向の全域にわたって延在する第2の底壁部分と、
前記第1の底壁部分と前記第2の底壁部分の間にある第3の底壁部分と、を含む、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動案内ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
直動案内ユニットにおいて、レールと、テーブルと、保持器に保持された転動体と、を備え、レールに沿ってテーブルが往復運動するとき、レールとテーブルとの間に形成された直線軌道内で転動体が往復運動するものが知られている。一般的に、このようなタイプの直動案内ユニットは有限直動案内ユニットと称される。有限直動案内ユニットは、往復運動を繰り返すうちに、レール、テーブル、保持器の間の相対的な位置関係にずれが生じることがあった。
【0003】
有限直動案内ユニットにおいて、軌道台(レールとテーブルとを合わせて軌道台と称する)と、転動体を保持する保持器と、軌道台と保持器の間のずれを防止するためのずれ防止機構と、を備えるものが知られている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-197850号公報
【特許文献2】特開平1-154422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
有限直動案内ユニットにおいて、ずれの発生が防止されるとともに、部品点数が少なく簡易な構造を有するものが望まれる。そこで、有限直動案内ユニットにおいて、ずれの発生が防止されるとともに、部品点数が少なく簡易な構造を有するものを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った直動案内ユニットは、側面に一対の第1の軌道溝を有するレールと、前記第1の軌道溝のそれぞれに対向する一対の第2の軌道溝を有するテーブルと、前記第1の軌道溝と前記第2の軌道溝とによって形成される軌道路に組み込まれ、前記テーブルの移動に伴って転動する複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持し、前記転動体の転動に伴って前記レールに沿って移動する保持器と、を備える。当該直動案内ユニットは、前記レールおよび前記テーブルのそれぞれに固定された一対のラックギアと、前記保持器に回転可能に装着され、前記一対のラックギアに噛み合うピニオンギアと、を含む。前記保持器は一体の鋼板から構成される。前記ピニオンギアの軸は、前記保持器に形成された孔に直接に保持されている。
【発明の効果】
【0007】
上記直動案内ユニットによれば、保持器のずれの発生が防止されるとともに、部品点数が少なく簡易な構造を有するものが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1における直動案内ユニットの構造を示す平面図である。
図2図2は、直動案内ユニット1の部材をずらして内部構造を模式的に示す斜視図である。
図3図3は、直動案内ユニット1を分解して示す分解斜視図である。
図4図4は、直動案内ユニット1から保持器4とピニオンギア6を取り出して示す斜視図である。
図5図5は、保持器4の孔45およびピニオンギア6を拡大して示す平面図である。
図6図6は、直動案内ユニット1からレール2とラックギア51とを取り出して示す斜視図である。
図7図7は、図6中のVII-VIIで切断した状態を示す断面図である。
図8図8は、レール2を取り出して示す斜視図である。
図9図9は、実施の形態2である直動案内ユニット8を示す。
図10図10は、直動案内ユニット8を分解して示す分解斜視図である。
図11図11は、図10中のXI-XIで切断した状態を示す直動案内ユニット8の断面図である。
図12図12は、直動案内ユニット1の変形例である直動案内ユニット11から一部の構成を取り出して示す斜視図である。
図13図13は、直動案内ユニット8の変形例である直動案内ユニット18から一部の構成を取り出して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の直動案内ユニットは、側面に一対の第1の軌道溝を有するレールと、前記第1の軌道溝のそれぞれに対向する一対の第2の軌道溝を有するテーブルと、前記第1の軌道溝と前記第2の軌道溝とによって形成される軌道路に組み込まれ、前記テーブルの移動に伴って転動する複数の転動体と、前記転動体を回転自在に保持し、前記転動体の転動に伴って前記レールに沿って移動する保持器と、を備える。当該直動案内ユニットは、前記レールおよび前記テーブルのそれぞれに固定された一対のラックギアと、前記保持器に回転可能に装着され、前記一対のラックギアに噛み合うピニオンギアと、を含む。前記保持器は一体の鋼板から構成される。前記ピニオンギアの軸は、前記保持器に形成された孔に直接に保持されている。
【0011】
従来、有限直動案内ユニットにおいて、保持器のずれを防止するために、レールとテーブルのそれぞれにラックギアを取り付け、ラックギアに噛み合うピニオンギアを保持器に取り付けることが知られている。例えば特許文献1には、軌道台に取り付けられたラックギアと、保持器に設けられた孔に弾性的に保持されたホルダと、ホルダに回転可能に支持されたピニオンギアと、を含む、ずれ防止機構が開示されている。特許文献1に示される有限直動案内ユニットでは、保持器に設けられた孔に弾性変形するホルダが嵌め込まれ、ピニオンギアはホルダを介して保持器に取り付けられている。これに対して本開示の有限直動案内ユニットはホルダを備えておらず、保持器に形成された孔にピニオンギアの回転軸が直接に保持されている。このため、本開示の有限直動案内ユニットでは、ずれの発生が防止されるとともに、部品点数を削減することが可能である。
【0012】
特許文献2に示される有限直動案内ユニットは、保持器の幅方向における中央部が厚肉に形成されるとともに、中央部に軸受部が形成されており、軸受部においてピニオンギアの回転軸を受けている。保持器が樹脂製である場合には、このような複雑な形状の保持器を形成しうる。しかしながら、保持器が鋼製である場合に同様の形状を作成することは、コストの観点から実用的とはいえない。これに対して、本開示の有限直動案内ユニットでは、保持器が一体の鋼板から構成されており、鋼板に形成された孔にピニオンギアの回転軸が直接保持される。このため、部品点数が少なく、簡易な構成によってずれの発生を防止することができる。
【0013】
前記保持器は、一定の厚みを有する鋼板から構成されていてもよい。一定の厚みを有する鋼板を用いることによって、品質安定性に優れた保持器を得ることができるとともに、より合理的なコストで有限直動案内ユニットを提供することができる。
【0014】
前記保持器を構成する鋼板の厚みは、前記ピニオンギアの回転軸の直径よりも小さいものとできる。従来、ピニオンギアの回転軸は、軸の全周を覆うように保持されていた。これに対して本開示に従う直動案内ユニットでは、鋼板の厚みよりもピニオンギアの回転軸の直径が大きい。本開示に従う直動案内ユニットでは、回転軸の一部のみが保持器によって支持されている状態であってもずれ防止効果が得られ、簡易な構成によって十分な機能を有する有限直動案内ユニットが得られることが見出された。
【0015】
前記保持器に形成された孔は、前記ピニオンギアの歯車が回転自在である第1孔部と、前記ピニオンギアの軸を回転可能に保持する第2孔部と、を含み、前記第2孔部の幅は、前記ピニオンギアの軸の直径よりも0.1mm~0.2mm大きいものであってよい。ピニオンギアの軸の直径と、軸を保持する第2孔部の幅との関係をこの範囲とすることによって、ピニオンギアが保持器から外れることなく、かつ、ピニオンギアが回転自在に保持され、ホルダを用いることなく簡易な構成のずれ防止機構を実現できる。
【0016】
前記レールは、一体の鋼板からなり、前記レールの外側面は、前記レールの底面と曲面を介して連なっている第1の外側面部分と、前記レールを構成する鋼板の厚み方向に延在する端面である第2の外側面部分と、を含んでよい。一体の鋼板から構成されるレール(いわゆるプレス加工レール)を採用することによって、合理的なコストで有限直動案内ユニットを提供できる。また、この形態によれば、厚みの大きな鋼板を用いて、側面に基準面を有する小型のプレス加工レールを構成することが可能となる。これらによって、低コストと剛性を確保しながらも、小型の有限直動案内ユニットが実現できる。従来のプレス加工レールは、レールの外側面の全体がレールの底面から湾曲領域を介して連続的につながった面であった。厚い鋼板をプレス加工で曲げる場合、湾曲領域が大きくなることは避けられない。このため、厚い鋼板を曲げたレールでは、レール側面の鉛直方向の基準面が充分に確保しにくい場合があった。これに対して本開示のレールでは、レールの外側面の一部が、レールを構成する鋼板の厚み方向に延在する端面で構成されている。この構成によれば、鋼板の厚み方向に延在する端面を基準面として利用することができる。このため、厚い鋼板でレールを構成する場合であっても、レール側面の基準面を確保することが可能となる。このようにして、厚みの大きな鋼板を用いてプレス加工レールを構成することが可能となり、低コストと剛性を確保しながらも、小型の有限直動案内ユニットが実現できる。
【0017】
前記レールは、底壁部と、底壁部の長手方向に沿う両端部からそれぞれ立ち上がる一対の側壁部を含んでよい。前記底壁部は、前記底壁部と前記側壁部の間の部分である湾曲部を介して前記側壁部に接続する第1の底壁部分と、前記第1の底壁部分よりも幅広であり前記レールの幅方向の全域にわたって延在する第2の底壁部分と、前記第1の底壁部分と前記第2の底壁部分の間にある第3の底壁部分と、を含んでよい。このようなレールは、一部に切り抜きあるいは切り欠きを設けた鋼板をプレス加工によって曲げるという、合理的なコストで工業的に実現可能な方法によって実現できる。このため、低コストで、十分な剛性を有し、小型である有限直動案内ユニットが実現できる。
【0018】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の直動案内ユニットの具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本開示の一実施の形態における直動案内ユニットである直動案内ユニット1の構造を示す平面図である。図2は、直動案内ユニット1の部材をずらして内部構造を模式的に示す斜視図である。図3は、直動案内ユニット1を分解して示す分解斜視図である。
【0020】
図1図2を参照して、直動案内ユニット1は、レール2と、テーブル3と、保持器4と、ラックギア51、52と、ピニオンギア6と、転動体7と、を備える。テーブル3は、転動体7を介して、レール2に沿って摺動可能である。テーブル3は、テーブル本体31と、テーブル本体31の長手方向の両端面に取り付けられた端板32とを含む。端板32はねじ101によってテーブル本体31に固定されている。直動案内ユニット1を長手方向に見るとき(すなわち図1の状態)、端板32の一部は、保持器4および転動体7の一部分と重複する位置にある。端板32は、転動体7および保持器4がレール2およびテーブル3から脱落しないように、転動体7および保持器4のストッパーとして機能する。
【0021】
テーブル本体31は、上面部311と、上面部311の幅方向の両端から垂下する袖部312とを有する。袖部312の内側面312aと、レール2の外側面2aの上部とが対向する。レール2の外側面2aの下部2sはテーブル3に覆われていない。上面部311には、外部機器の取り付けに利用される孔33、ラックギア52の取り付けに利用される孔34が設けられている。
【0022】
図2図3を参照して、レール2の両側面には、一対の第1軌道溝21が形成されている。また、テーブル本体31の両側の袖部312のそれぞれには、第1軌道溝21のそれぞれに対向する、第2軌道溝81が形成されている。第1軌道溝21と第2軌道溝81とが対向して、軌道路が形成される。軌道路は、レール2およびテーブル本体31の長手方向に沿う直線状の管路である。軌道路に、ボールである複数の転動体7が挿入されている。複数の転動体7は互いに離隔して配置され、それぞれが保持器4の窓41に回転可能に保持されている。なお、図2は理解容易のために保持器4および転動体7をテーブル3から引き出して示しているが、実際には端板32があるため、端板32の外に保持器4および転動体7が引き出されることはない。
【0023】
保持器4の全体は、曲げられた一枚の鋼板から構成されている。保持器4は、一対の保持板部42と、保持板部42の間を接続する接続部43とを含む。保持板部42は、レール2の外側面2aおよびテーブル本体31の内側面312aと平行に延在する。保持板部42に、複数の円形の窓41が設けられている。接続部43は、レール2の上部端面に沿う1対の第1部分43aと、レール2の内側底面2bと平行である第2部分43bと、第1部分43aと第2部分43bとを接続する斜面である一対の第3部分43cと、を含む。
【0024】
図1図3を参照して、レール2の内側底面2bの幅方向の中央部に、長手方向に延在するラックギア51が取り付けられている。テーブル本体31の幅方向の中央部に、長手方向に延在するラックギア52が取り付けられている。ラックギア51とラックギア52は互いに対向する位置に配置されている。ラックギア51、52の間に、ラックギア51、52と噛み合うピニオンギア6が配置されている。ピニオンギア6は、保持器4に回転可能に保持されている。
【0025】
テーブル3が外力を受けて移動すると、転動体7は、第1軌道溝21および第2軌道溝81の上で回転しながら摺動し、保持器4とともにレール2に沿って移動する。レール2およびテーブル本体31の長手方向の長さは互いにほぼ等しい。保持器4の長手方向の長さは、レール2およびテーブル本体31の長手方向の長さの2/5~3/5程度である。
【0026】
図4は、直動案内ユニット1から保持器4とピニオンギア6を取り出して示す斜視図である。二点鎖線で囲んだ部分の拡大図を合わせて示している。保持器4の全体は例えばプレス加工によって曲げられた、一定の厚みを有する一枚の鋼板からなる。保持器4を構成する鋼板の厚みは特に制限されないが、例えば0.5mm~1mm程度の厚みのステンレス鋼板を用いることができる。前述のとおり、保持器4はレール2の両側面のそれぞれと平行である保持板部42を有する。保持板部42には、転動体7を回転可能に保持可能である窓41が並列して複数(図4の例では7つ)設けられている。
【0027】
一対の保持板部42は、接続部43を介して互いにつながっている。接続部43は、保持板部42に隣接する部分である第1部分43aを含む。第1部分43aは、テーブル本体31の上面部311(図3)の下側面とレール2の上部端面との間に位置し、これらの面に平行な面であり、かつどちらからも離隔する高さに設定されている。接続部43の幅方向の中央部に、長手方向に延びる第2部分43bがある。第2部分43bは、第1部分43aと平行である。また、第2部分43bの高さ方向の位置は、ラックギア51、52(図1)の両方から等距離の位置である。第2部分43bの長手方向の中央部に孔45が形成されている。孔45に、ピニオンギア6が直接保持されている。なお、「直接保持されている」とは、保持器とピニオンギアとの間にホルダや軸受等の別部材が設けられておらず、保持器とピニオンギアとが直接に接触しうる態様で、ピニオンギアが所定の位置に維持されているという意味である。
【0028】
図5は、保持器4の孔45およびピニオンギア6を拡大して示す平面図である。図1,4,5を参照して、ピニオンギア6は、歯車部61と、回転軸62と、を含む。回転軸62は歯車部61の中心から両側方へ突出している。回転軸62の太さ、すなわち回転軸62の直径t(W)は、保持器4を構成する鋼板の厚みtよりも大きい。tとtの関係は、直動案内ユニットの動作中に保持器からピニオンギアが外れることなく保持されれば特に制限されないが、例えば、tはtの2倍から2.5倍程度とできる。また、tとtの関係は、t>tに限られず、t≦tであってもよい。
【0029】
図5を参照して、保持器4に形成された孔45は、保持器4の長手方向に延びる第1孔部451と、保持器4の幅方向に延びる第2孔部452とを含む、十字形状の孔である。第1孔部451は、ピニオンギア6が自由に回転できるよう、歯車部61と第1孔部451を規定する周壁とが接触しない大きさにされている。例えば、第1孔部451の幅Wは、歯車部61の幅Wよりも、0.3mm程度大きいものとできる。第2孔部452は、ピニオンギア6の回転軸62を回転可能に保持する。第2孔部452の幅Wは、ピニオンギア6の直径W(t)よりもわずかに大きいことが好ましい。第2孔部452の幅Wは、ピニオンギア6の直径W(t)よりも0.1mm~0.2mm大きいことが好ましい。この範囲であれば、ピニオンギア6が保持器4から外れることがなく、かつ、ピニオンギア6が自由に回転できる。このため、ピニオンギア6がテーブル3の動作を妨げることがない。
【0030】
図6は、直動案内ユニット1からレール2とラックギア51とを取り出して示す斜視図である。図7は、図6中のVII-VIIで切断した状態を示す断面図である。図8は、レール2の底壁部27を主に示す斜視図である。図6,7を参照して、レール2の全体は曲げられた一枚の鋼板から構成されている。レール2はいわゆるプレス加工レールである。レール2は、底壁部27と、底壁部27の長手方向に沿う両端部から立ち上がる一対の側壁部28と、底壁部27と側壁部28の間にある湾曲部29と、を含む。側壁部28の上部は、長手方向に連続する壁である。側壁部28の外側面2aには、第1軌道溝21が形成されている。一方、側壁部28の下部2sは、一部が切り欠き22となっている。底壁部27の一部が延びて、切り欠き22に至っている。延在する底壁部27の端面272bが、レール2の外側面2aの一部を構成している。
【0031】
すなわち、レール2の外側面2aは、2つの部分を含んでなる。第1の外側面部分28aと、第2の外側面部分272bである。図6~8を参照して、第1の外側面部分28aは、底壁部27の底面27aと、曲面部29aを介して連なっている。第2の外側面部分272bは、底壁部27の第2部分272の端面であり、レール2を構成する鋼板の厚み方向に延在する端面272bである。このような形状のレールの効果を、次に説明する。
【0032】
従来、有限直動案内ユニットでは、直動案内ユニットを設置する際の基準になる面(基準面)が設けられている。レールの外側面のうち、テーブルと重ならず露出する部分が、基準面として利用されることがあった。基準面として利用される面は、ある程度の面積と高さを有する面であることが求められる。図1,7を参照して、直動案内ユニット1の例では、レール2の外側面2aのうちテーブル3と重なっていない下部2sを基準面として利用できることが望ましい。一方で、レール2はプレス加工レールであり、底面27aと側面28aの間に曲面部29aが存在するため、高さ方向に延びる部分(L)は小さくなる。特に、剛性を確保するために厚い鋼板を用いる場合には、曲面部29aがより大きくなり、基準面の確保が難しくなる。ここで、レール2では、側壁部28の一部に切り欠きを設け、底壁部27の一部を外側面2aにまで延在させた構成としている。このため、端面272bを基準面Sとして利用することが可能となる。本開示のレール2によれば、厚みが大きく剛性の高い鋼板からなるプレス加工レールを用いながらも、高さ方向の寸法を小さくし、かつ、必要な基準面を確保できる。
【0033】
レール2は、材料となる鋼板に、凹形状の切り抜き部を設けた後に曲げ加工を行うことによって作製できる。曲げ加工を行った後に、端面272bと面28bとを面一にするために研削を行うことによって、精度の高い基準面を得ることができる。レール2によれば、特殊な設備や工程を必要とすることなく、厚みのある鋼板を用いた場合であっても基準面を有し、かつ高さ方向の小型化が実現された直動案内ユニットが提供される。
【0034】
図8を参照して、レール2は底壁部27と、側壁部28とを有する。底壁部27は、第1の底壁部分271と、第2の底壁部分272と、第3の底壁部分273と、を含む。第1の底壁部分271、第2の底壁部分272、第3の底壁部分273は連続的に一体に連なって底壁部27を構成している。第1の底壁部分271は、湾曲部29に接続しており、湾曲部29を介して側壁部28に接続している。第2の底壁部分272は、第1の底壁部分271よりも幅広であり、レール2の幅方向の全域にわたって延在する。前述のとおり、第2の底壁部分272の端面である端面272bは、レール2の外側面2aの一部を構成している。第1の底壁部分271と第2の底壁部分272との間に、第3の底壁部分273がある。すなわち、レール2の底壁部27は、幅の異なる3つの部分が連続して構成されている。なお、レール2の形状は一例であり、切り欠き部の数や寸法、間隔は様々に変更されうる。
【0035】
(実施の形態2)
図9は本開示に従う直動案内ユニットの実施の形態2である直動案内ユニット8を示す。図9を参照して、直動案内ユニット8は、レール9と、テーブル3と、保持器4と、ラックギア51と、ピニオンギア6と、転動体7と、を備える。テーブル3は、転動体7を介して、レール9に沿って摺動可能である。直動案内ユニット8のテーブル3、保持器4、ピニオンギア6、転動体7は、基本的に実施の形態1と同様であり、説明を省略する。直動案内ユニット8は、レール9の構成において実施の形態1と大きく異なる。
【0036】
図10は、直動案内ユニット8を分解して示す分解斜視図である。直動案内ユニット1と異なる部分を中心に説明する。図10を参照して、保持器4は、転動体7を保持する窓41を有する2つの保持板部42と、保持板部42の間を接続する接続部43と、を含む。接続部43の幅方向中央部分である第2部分43bに、孔45が形成されている。孔45に、ピニオンギア6が保持されている。孔45の第2部分である第2孔部452は、接続部43の第2部分43bの全幅にわたり、さらに、斜面である第3部分43cに至っている。第2孔部452に、ピニオンギア6の回転軸62が保持されている。保持器4は一体の鋼板から構成される。このため、接続部43の寸法の違いのような設計の変更に対して柔軟に対応可能である。
【0037】
図10を参照して、レール9は、レール本体91と、レール端板92とを含む。レール本体91と、レール端板92とは、ねじ109で固定されている。レール本体91は、例えば引き抜き加工によって形成される鋼材のレールである。レール本体91は両側面に第1軌道溝921が形成されている。レール端板92の上端の両端部には、耳部922が形成されている。耳部922は、第1軌道溝921の端を封止するように延在している。このため、保持器4および転動体7がレール9およびテーブル3から脱落することが防止される。端板32も同様に、保持器4および転動体7がレール9およびテーブル3から脱落することを防止する。
【0038】
レール本体91は、幅方向の中央部に長手方向にわたって延在する凹部911が設けられている。凹部911の底面911a上に、ラックギア51が取り付けられている。底面911aには、ラックギア51と重複しない位置に、厚み方向に穿たれた2箇所の円形孔912が形成されている。円形孔912は、レール本体91を外部設備等に対して固定する際に用いる固定用ボルトを挿入するための、ざぐり穴である。
【0039】
図11は、図10における直動案内ユニット8を組み合わせた状態で、図10中のXI-XIで切断した状態を示す直動案内ユニット8の断面図である。なお、理解容易のために、端板32、レール端板92等の一部の部材を省いて示している。テーブル本体31の下面側、幅方向中央部には、長手方向に延在する凹部315が設けられている。凹部315の底面315a上に、ラックギア52が取り付けられている。レール本体91に凹部911を、テーブル本体31に凹部315を設けて、それらの凹部のそれぞれにラックギア51、52を取り付けることによって、直動案内ユニット8の厚み方向の寸法の増大が防止される。ラックギア51、52と噛み合うピニオンギア6が備えられている。ピニオンギア6は、ホルダを介することなく保持器4に直接に保持されている。本開示の直動案内ユニットは、ピニオンギアが保持器に直接保持される構造であるため、ホルダや軸受を収めるための空間が不要である。このため、部品点数の削減が可能であるとともに、小型化が容易である。
【0040】
レール本体91の外側面91aの上部はテーブル本体31に覆われている。一方、レール9の外側面91aの下部2yは、テーブル本体31に覆われず、露出している。レール本体91の外側面91aは、第1軌道溝921が形成された部分を除いて、ひとつの平坦面で構成されている。このため、外側面91aの下部2yを、基準面として利用できる。
【0041】
(変形例)
図12は、直動案内ユニット1の変形例である直動案内ユニット11から、レール12および保持器14を含む一部の構成を取り出して示す斜視図である。転動体としてローラを採用している点が、直動案内ユニット11と直動案内ユニット1の主な相違点である。直動案内ユニット1と同様の構成は説明を省略する。図12に示すとおり、本開示にかかる直動案内ユニット11において、円筒形のローラを転動体17として採用してもよい。直動案内ユニット11では、複数の転動体17が交互に直交する方向に配置されている。レール12は両側面に長手方向に一対の軌道溝121が形成されている。軌道溝121は、上部軌道面121aと、下部軌道面121bとによって規定される。保持器14には、転動体17を回転可能に保持する楕円形の窓141が形成されている。直動案内ユニット11では転動体としてクロスローラが採用されているため、複数方向からの荷重を受けることが可能で、より定格荷重の大きな有限直動案内ユニットが提供される。
【0042】
図13は、直動案内ユニット8の変形例である直動案内ユニット18から、レール19および保持器14を含む一部の構成を取り出して示す斜視図である。転動体としてローラを採用している点が、直動案内ユニット18と直動案内ユニット8の主な相違点である。直動案内ユニット8と同様の構成は説明を省略する。図13に示すとおり、図12と同様に本開示にかかる直動案内ユニット18において、円筒形のローラを転動体17として採用してもよい。直動案内ユニット8では、複数の転動体17が交互に直交する方向に配置されている。レール19は両側面に長手方向に一対の軌道溝925が形成されている。軌道溝925は、上部軌道面925aと、下部軌道面925bとによって規定される。保持器14には、転動体17を回転可能に保持する楕円形の窓141が形成されている。直動案内ユニット18では転動体としてクロスローラが採用されているため、複数方向からの荷重を受けることが可能で、より定格荷重の大きな有限直動案内ユニットが提供される。
【0043】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0044】
1、11、8、18 直動案内ユニット、2、12、9、19 レール、21、121、81、921、925 軌道溝、27 底壁部、28 側壁部、29 湾曲部、3 テーブル、31 テーブル本体、311 上面部、312 袖部、315、911 凹部、32 端板、33、34、45 孔、4、14 保持器、41、141 窓、42 保持板部、43 接続部、51、52 ラックギア、6 ピニオンギア、61 歯車部、62 回転軸、7、17 転動体、91 レール本体、92 レール端板、912 円形孔、922 耳部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13