(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036555
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】血管挟持用鉗子のクリッパー及びそれの復帰機構
(51)【国際特許分類】
A61B 17/128 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
A61B17/128
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022138241
(22)【出願日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】110132605
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】521440703
【氏名又は名称】邁斯科生醫股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】范 ▲イー▼▲ハオ▼
(72)【発明者】
【氏名】呉 晨▲シュエン▼
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160DD03
4C160DD13
4C160DD19
4C160DD23
4C160DD29
4C160MM33
(57)【要約】 (修正有)
【課題】血管を挟持してクリップを取り付けることができ、かつクリップを取り付けた後に元の状態に自動的に復帰することができる、血管挟持用鉗子のクリッパー及びそれの復帰機構を提案する。
【解決手段】間隔を置いて配置される二つのジョーアーム部材11を備える挟持機構10と、両ジョーアーム部材の間に設置されるように該両ジョーアーム部材を復帰方向D1に付勢し、ジョーアーム部材から厚み方向D2に突出しない弾性部材20を含むことを特徴とし、このような構成により、挟持機構の両ジョーアーム部材の間に当接するように設置される弾性部材が当該両ジョーアーム部材を復帰方向に付勢力を与えることで、両ジョーアーム部材を元の状態に復帰させることを補助する効果をもたらすので、挟持機構の弾性疲労の発生を抑えることができると共に、挟持機構が人体内部の骨肉に圧迫されていても元の状態に確実に復帰することが可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管挟持用鉗子のクリッパーであって、挟持機構と復帰機構を含み、
前記挟持機構は、間隔を置いて配置される二つのジョーアーム部材を備え、該二つのジョーアーム部材の互いに離間する方向を復帰方向と定義し、該復帰方向と直交する方向を厚み方向と定義し、
前記復帰機構は、前記二つのジョーアーム部材の間に設置されるように該二つのジョーアーム部材を復帰方向に付勢する弾性部材を備え、該弾性部材は、該二つのジョーアーム部材から厚み方向に突出しないことを特徴とする血管挟持用鉗子のクリッパー。
【請求項2】
前記弾性部材が湾曲した長尺状部材であって、前記二つのジョーアーム部材にそれぞれ当接する二つの直線部を有することを特徴とする請求項1に記載の血管挟持用鉗子のクリッパー。
【請求項3】
前記二つの直線部はそれぞれ、前記二つのジョーアーム部材と平行であることを特徴とする請求項2に記載の血管挟持用鉗子のクリッパー。
【請求項4】
前記挟持機構は、前記二つのジョーアーム部材の片端部に連結され、環状をなす連結部を含み、
前記弾性部材は、前記二つの直線部の片端部に連結される湾曲部を含み、該湾曲部が前記連結部の形状に合わせるように形成され、該連結部内に嵌合可能であることを特徴とする請求項2に記載の血管挟持用鉗子のクリッパー。
【請求項5】
前記弾性部材は、弾性変形可能な板状部材であって、該弾性部材の厚み方向上の相対する両側に位置する二つの天板部と、該二つの天板部に連結されると共に前記二つのジョーアーム部材に当接する周縁部とを有することを特徴とする請求項1記載の血管挟持用鉗子のクリッパー。
【請求項6】
前記挟持機構は、前記二つのジョーアーム部材の片端部に連結され、環状をなす連結部を含み、
前記弾性部材は、前記二つのジョーアーム部材に当接するように該二つのジョーアーム部材の間に配置される圧縮変形部と、該圧縮変形部に連結されると共に、前記連結部の形状に合わせるように形成される該連結部内に嵌合可能な嵌合部とを有し、
前記各天板部が該圧縮変形部及び嵌合部上に形成され、前記周縁部が該圧縮変形部及び嵌合部を囲繞するように形成することを特徴とする請求項5に記載の血管挟持用鉗子のクリッパー。
【請求項7】
間隔を置いて配置される二つのジョーアーム部材と、該二つのジョーアーム部材の片端部に連結され、環状をなす連結部とを含む挟持機構に組み合わされて用いられる、血管挟持用鉗子のクリッパーにおける復帰機構であって、弾性部材を備え、該二つのジョーアーム部材の互いに離間する方向を復帰方向と定義し、該復帰方向と直交する方向を厚み方向と定義し、
前記弾性部材は、前記二つのジョーアーム部材から厚み方向に突出しないように該二つのジョーアーム部材の間に設置されると共に、該二つのジョーアーム部材を復帰方向に付勢することを特徴とする血管挟持用鉗子のクリッパーの復帰機構。
【請求項8】
前記弾性部材は、湾曲した長尺状部材であると共に、前記二つのジョーアーム部材にそれぞれ当接する二つの直線部と、該二つの直線部の片端部を連結する湾曲部とを含み、
前記湾曲部は、前記連結部の形状に合わせるように形成されると共に、該連結部内に嵌合可能であることを特徴とする請求項7に記載の血管挟持用鉗子のクリッパーの復帰機構。
【請求項9】
前記弾性部材は、ゴムからなる板状部材であって、該弾性部材の厚み方向上の相対する両側に位置する二つの天板部と、該二つの天板部に連結すると共に前記二つのジョーアーム部材に当接する周縁部とを有することを特徴とする請求項7に記載の血管挟持用鉗子のクリッパーの復帰機構。
【請求項10】
前記弾性部材は、前記二つのジョーアーム部材に当接するように該二つのジョーアーム部材の間に配置される圧縮変形部と、該圧縮変形部に連結されると共に、前記連結部の形状に合わせるように形成される該連結部内に嵌合可能な嵌合部とを有し、
前記各天板部は該圧縮変形部及び嵌合部上に形成され、前記周縁部は該圧縮変形部及び嵌合部を囲繞するように形成されることを特徴とする請求項9に記載の血管挟持用鉗子のクリッパーの復帰機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関し、特に、血管を挟持してクリップを取り付けることができ、かつクリップを取り付けた後に、元の状態に自動的に復帰することができる、血管挟持用鉗子のクリッパー及びそれの復帰機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外科手術器具には、血管を挟むための血管挟持用鉗子があり、このような血管挟持用鉗子を用いて、血管を挟んで、その血管の挟まれた箇所にクリップを取り付けて血流を遮断して後続手術を容易にすることができる。
【0003】
既存の血管挟持用鉗子の挟持機構は二つのジョーアーム部材を有し、該両ジョーアーム部材は、それぞれの片端部が角度をなすように一体に連結されると共に、開いた状態で延びている。既存の血管挟持用鉗子は、操作スリーブ又はプッシュ機構の操作を介して、両ジョーアーム部材を互いに接近させて血管を挟み、そして、血管が挟まれた箇所にクリップを取り付け、クリップを取り付けた後に、操作スリーブ又はプッシュ機構を復帰させて、挟まれている血管を解放するように両ジョーアーム部材を開放する。
【0004】
このように、既存の血管挟持用鉗子の挟持機構は、両ジョーアーム部材を復帰させるための復帰機構を有しておらず、つまり、両ジョーアーム部材自体の材質による弾性復元力のみで元の状態に復帰している。これにより、長期間の使用にわたり、既存の血管挟持用鉗子の両挟持機構は、弾性疲労により元の状態に確実に復帰できなくなることから、挟まれている血管を十分に解放することができなかったり、あるいは血管を挟持できる開き角度まで十分に開くことができなかったりする可能性があった。また、血管挟持用鉗子は、通常、人体内部の奥深くに入り込んで治療を行うことから、両ジョーアーム部材自体の材質による弾性復元力のみで元の状態に復帰すると、人体内部の骨肉の圧迫により確実に復帰することができない可能性がある。
【0005】
以上のような様々な状況は、手術の進行に影響を与えるので、従来技術の血管挟持用鉗子は改善する必要があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、両ジョーアーム部材の間に、該両ジョーアーム部材を開かせて元の状態への復位を補助する弾性部材が設けられる、血管挟持用鉗子のクリッパー及びそれの復帰機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、管挟持用鉗子のクリッパーを提案しており、該血管挟持用鉗子のクリッパーは、挟持機構と復帰機構を含み、
前記挟持機構は、間隔を置いて配置される二つのジョーアーム部材を備え、該二つのジョーアーム部材の互いに離間する方向を復帰方向と定義し、該復帰方向と直交する方向を厚み方向と定義し、
前記復帰機構は、前記二つのジョーアーム部材の間に設置されるように該二つのジョーアーム部材を復帰方向に付勢する弾性部材を備え、該弾性部材は、該二つのジョーアーム部材から厚み方向に突出しないことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、さらに、血管挟持用鉗子のクリッパーの復帰機構を提案しており、該血管挟持用鉗子のクリッパーの復帰機構は、間隔を置いて配置される二つのジョーアーム部材と、該二つのジョーアーム部材の片端部を連結し、環状をなす連結部とを含む挟持機構に組み合わされると共に、弾性部材を備えており、該二つのジョーアーム部材の互いに離間する方向を復帰方向と定義し、該復帰方向と直交する方向を厚み方向と定義し、
前記弾性部材は、前記二つのジョーアーム部材から厚み方向に突出しないように該二つのジョーアーム部材の間に設置されると共に、該二つのジョーアーム部材を復帰方向に付勢することを特徴とする。
【0009】
本発明の優れた点は、弾性部材が挟持機構の両ジョーアーム部材の間に当接するように設置され、該両ジョーアーム部材を復帰方向に付勢力を与えることで、該両ジョーアーム部材を元の状態に復帰させることを補助する効果をもたらし、これにより、クリッパーの弾性疲労の発生を抑えることができると共に、挟持機構は人体内部の骨肉に圧迫されていても元の状態に確実に復帰することができるということである。
【0010】
前記弾性部材が湾曲した長尺状部材であって、前記二つのジョーアーム部材にそれぞれ当接する二つの直線部を有することを特徴とする。
【0011】
前記二つの直線部はそれぞれ、前記二つのジョーアーム部材と平行であることを特徴とする。
【0012】
前記挟持機構は、前記二つのジョーアーム部材の片端部に連結され、環状をなす連結部を含み、前記弾性部材は、前記二つの直線部の片端部に連結される湾曲部を含み、該湾曲部が前記連結部の形状に合わせるように形成され、該連結部内に嵌合可能であることを特徴とする。
【0013】
前記弾性部材は、弾性変形可能な板状部材であって、該弾性部材の厚み方向上の相対する両側に位置する二つの天板部と、該二つの天板部に連結されると共に前記二つのジョーアーム部材に当接する周縁部とを有することを特徴とする。
【0014】
前記挟持機構は、前記二つのジョーアーム部材の片端部に連結され、環状をなす連結部を含み、前記弾性部材は、前記二つのジョーアーム部材に当接するように該二つのジョーアーム部材の間に配置される圧縮変形部と、該圧縮変形部に連結されると共に、前記連結部の形状に合わせるように形成される該連結部内に嵌合可能な嵌合部とを有し、前記各天板部が該圧縮変形部及び嵌合部上に形成され、前記周縁部が該圧縮変形部及び嵌合部を囲繞するように形成することを特徴とする。
【0015】
前記弾性部材は、湾曲した長尺状部材であると共に、前記二つのジョーアーム部材にそれぞれ当接する二つの直線部と、該二つの直線部の片端部を連結する湾曲部とを含み、前記湾曲部は、前記連結部の形状に合わせるように形成されると共に、該連結部内に嵌合可能であることを特徴とする。
【0016】
前記弾性部材は、ゴムからなる板状部材であって、該弾性部材の厚み方向上の相対する両側に位置する二つの天板部と、該二つの天板部に連結すると共に前記二つのジョーアーム部材に当接する周縁部とを有することを特徴とする。
【0017】
前記弾性部材は、前記二つのジョーアーム部材に当接するように該二つのジョーアーム部材の間に配置される圧縮変形部と、該圧縮変形部に連結されると共に、前記連結部の形状に合わせるように形成される該連結部内に嵌合可能な嵌合部とを有し、前記各天板部は該圧縮変形部及び嵌合部上に形成され、前記周縁部は該圧縮変形部及び嵌合部を囲繞するように形成されることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の好適な実施例を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の好適な実施例の分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1の好適な実施例の正面視断面図である。
【
図4】本発明の第2の好適な実施例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2の好適な実施例の分解斜視図である。
【
図6】本発明の第2の好適な実施例の正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面及び本発明の好適な実施例を参照しながら、本発明が予め決められた発明の目的を達成するために講じた技術的手段をさらに詳述する。
【0020】
図1、
図2及び
図3に示すように、本発明に係る血管挟持用鉗子のクリッパーは、挟持機構10と、弾性部材20を備える復帰機構とを含む。
【0021】
前記挟持機構10は、二つのジョーアーム部材11及び連結部12を含み、該両ジョーアーム部材11は間隔を置いて配置される。尚、該両ジョーアーム部材11の互いに離間する方向は、復帰方向D1として定義され、該復帰方向D1と直交する方向が厚み方向D2として定義され、さらに、挟持機構10の長手方向は、該復帰方向D1及び厚み方向D2と共に直交している。前記連結部12は、環状に形成されると共に、前記両ジョーアーム部材11の片端部に連結される。具体的に述べると、第1の好適な実施例では、該連結部12がC字状の環状を呈しているが、他の実施例においてはこれに限定されるものではなく、例えば、V字状または他の形状を呈してもよい。
【0022】
前記弾性部材20は、前記両ジョーアーム部材11の間に当接するように脱着可能に設置されると共に、該両ジョーアーム部材11を復帰方向D1に付勢している。該弾性部材20は、厚み方向D2において前記両ジョーアーム部材11及び連結部12から突出しない、つまり、本発明に係る弾性部材20の厚さは、該両ジョーアーム部材11及び連結部12の厚さより薄いか又は等しい。
【0023】
前記弾性部材20について詳しく説明すると、第1の好適な実施例における弾性部材20は、湾曲した長尺状部材であって、前記二つのジョーアーム部材11にそれぞれ当接している二つの直線部21と、該両直線部21の片端部に連結される湾曲部22とを有する。本実施例では、前記両直線部21はそれぞれ、両ジョーアーム部材11に当接しつつ平行に延びるが、これに限定されるものではなく、他の実施例においては、直線部21の端部のみがジョーアーム部材11に当接していてもよい。前記湾曲部22は、前記連結部12の形状に合わせてC字状の環状に形成され、該連結部12内に嵌合可能である。
【0024】
尚、前記弾性部材20の具体的な構造は、上記に限定されるものではなく、例えば、
図4、
図5及び
図6に示した第2の好適な実施例のように、該弾性部材20Aは、弾性変形可能な材質でできた板状部材であってもよく、その材質は、例えばゴムを含んでもよい。板状部材である弾性部材20Aは、該弾性部材20Aの厚み方向D2上の相対する両側に位置二つの天板部21Aと、該両天板部21Aに連結されると共に前記両ジョーアーム部材11Aに当接する周縁部22A、両ジョーアーム部材11Aに当接するように該両ジョーアーム部材11Aの間に配置される圧縮変形部23Aと、該圧縮変形部23Aに連結されると共に前記連結部12Aの形状に合わせるように形成され、該連結部12A内に嵌合可能な嵌合部24Aを含む。該各天板部21Aが該圧縮変形部23A及び嵌合部24A上に形成されており、該周縁部22Aが該圧縮変形部23A及び嵌合部24Aを囲繞するように形成される。
【0025】
本発明の優れた点は、弾性部材20が挟持機構10の両ジョーアーム部材11の間に当接するように設置され、該両ジョーアーム部材11を復帰方向D1に付勢力を与えることで、該両ジョーアーム部材11を元の状態に復帰させることを補助する効果をもたらし、これにより、挟持機構10の弾性疲労の発生を抑えることができると共に、挟持機構10は人体内部の骨肉に圧迫されていても元の状態に確実に復帰することができるということである。
【0026】
以上の説明は、本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明に対して何ら限定を行うものではない。本発明について、比較的好適な実施形態をもって上記のとおり開示したが、これは本発明を限定するものではなく、すべての当業者が、本発明の技術構想を逸脱しない範囲において、本発明の技術の本質に基づいて上記の実施形態に対して行ういかなる簡単な修正、変更及び修飾も、依然としてすべて本発明の技術構想の範囲内にある。
【符号の説明】
【0027】
D1 復帰方向
D2 厚み方向
10 挟持機構
11、11A ジョーアーム部材
12、12A 連結部
20、20A 弾性部材
21 直線部
22 湾曲部
21A 天板部
22A 周縁部
23A 圧縮変形部
24A 嵌合部
【外国語明細書】