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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036556
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】貯留用バッグ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
B65D33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138257
(22)【出願日】2022-08-31
(31)【優先権主張番号】P 2021143399
(32)【優先日】2021-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000206473
【氏名又は名称】大倉工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】香西 幸生
(72)【発明者】
【氏名】川上 舟
(72)【発明者】
【氏名】折原 正直
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA26
3E064BA29
3E064BA30
3E064BA35
3E064BA37
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC18
3E064EA07
3E064EA30
3E064HF10
3E064HM01
3E064HN65
(57)【要約】
【課題】貯留用バッグの樹脂フィルムと吐出部材の被溶着部との接合部における樹脂だまりを起点とする樹脂フィルムの破断やピンホールの発生を抑制することができる貯留用バッグを提供することを目的とする。
【解決手段】重なり合った樹脂フィルムの熱シール部の内側に貯留物を貯留する収容空間を有するバッグ本体と、側面が前記樹脂フィルムに溶着された被溶着部と前記被溶着部の所定方向一端から所定方向一方に突出した筒状の吐出部とを有し、前記被溶着部と前記吐出部とを貫通する連通路が形成され、前記収容空間から前記バッグ本体の外部に前記貯留物を吐出可能な吐出部材と、を備える貯留用バッグであって、前記被溶着部は、前記被溶着部の底面周縁の全周にわたって樹脂だまりが形成されていることを特徴とする貯留用バッグ。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重なり合った樹脂フィルムの熱シール部の内側に貯留物を貯留する収容空間を有するバッグ本体と、側面が前記樹脂フィルムに溶着された被溶着部と前記被溶着部の所定方向一端から所定方向一方に突出した筒状の吐出部とを有し、前記被溶着部と前記吐出部とを貫通する連通路が形成され、前記収容空間から前記バッグ本体の外部に前記貯留物を吐出可能なポートと、を備える貯留用バッグであって、
前記被溶着部の底面周縁の全周にわたって樹脂だまりが形成されていること特徴とする貯留用バッグ。
【請求項2】
前記被溶着部は、底面が略菱形状であることを特徴とする請求項1に記載の貯留用バッグ。
【請求項3】
前記被溶着部の底面から突出した前記樹脂だまりの高さは、100μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の貯留用バッグ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の貯留用バッグの製造方法であって、
重なり合った前記樹脂フィルムの間に前記ポートを供給し、前記被溶着部の側面と前記樹脂フィルムとを加熱型を用いて加熱することにより前記被溶着部を前記樹脂フィルムに溶着することを特徴とする貯留用バッグの製造方法。
【請求項5】
前記被溶着部は、底面周縁の全周にわたって前記収容空間側に延在する突出部を有することを特徴とする請求項4に記載の貯留用バッグの製造方法。
【請求項6】
前記被溶着部は、側面の前記収容空間側の端部に全周にわたって外方に延在する突出部を有することを特徴とする請求項4に記載の貯留用バッグの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留物を貯留するバッグ本体に、貯留物を吐出するための吐出部材を備えた貯留用バッグ、貯留用バッグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療薬液、輸液剤、細胞剤溶液等を貯留した貯留用バッグは、例えば、柔軟な樹脂フィルムにより構成され貯留物を貯留するバッグ本体と、バッグ本体に溶着され貯留物を吐出する硬質な吐出部材とを備える。吐出部材は、貯留物の漏れがないように、樹脂シートに強固に溶着される必要があるため、例えば、樹脂フィルムに溶着される被溶着部が略舟型状に形成された吐出部材が使用される。
【0003】
ここで、従来の貯留用バッグについて説明する。図7(a)は従来の貯留用バッグを示す平面図であり、図7(b)は図7(a)に示すE-E線矢視図である。図7(a)に示すように、従来の貯留用バッグ1は、柔軟な樹脂フィルム3を重ね合わせ、その周囲の重ね合わせ辺同士を熱融着(熱シール)により接合して熱シール部5を形成する。このとき、その重ね合わせ辺の一部は溶着せずに、吐出部材4を固定するための隙間(開口部)とする。そして、熱シール部5によりバッグ状に形成された樹脂フィルム3の開口部に吐出部材4の被溶着部を嵌め込んだ状態で金型等により熱溶着することで、樹脂フィルム3と吐出部材4の被溶着部の重なり部を接合させ、内部に貯留物が収容される収容空間が形成された貯留用バッグ1を作成することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-178371
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来の貯留用バッグでは、樹脂フィルムと吐出部材とを熱融着する際に、両者から溶解した樹脂が溶着範囲をはみ出して固化する「樹脂だまり」と呼ばれる現象が生じることが知られている。図7(a)及び図7(b)に示す貯留用バッグ1では、樹脂フィルム3と吐出部材4の被溶着部との接合部6における収容空間側の一部に樹脂だまり7が生じている。
【0006】
樹脂だまりは、貯留用バッグの使用時に外力が掛かる等の要因により被溶着部付近の樹脂フィルムが押し広げられた際、樹脂だまりの箇所に応力が集中し、樹脂フィルムを破断させる恐れがある。また、樹脂だまりは、内圧が上昇する等の要因により被溶着部付近の樹脂フィルムが押し広げられることで、樹脂フィルムから剥がれてピンホール等を発生させる恐れがある。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みなされたものであり、貯留用バッグの樹脂フィルムと吐出部材の被溶着部との接合部における樹脂だまりを起点とする樹脂フィルムの破断やピンホールの発生を抑制することができる貯留用バッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、貯留用バッグの樹脂フィルムと吐出部材の被溶着部との接合部における樹脂だまりを起点として発生する樹脂フィルムの破断やピンホールの抑制について鋭意検討した結果、驚くべきことに樹脂フィルムと吐出部材の被溶着部との接合部における収容空間側の被溶着部の底面の一部のみに樹脂だまりを形成するのでなく、樹脂フィルムと吐出部材の被溶着部との接合部における収容空間側の被溶着部の底面周縁の全周にわたって樹脂だまりを形成することにより樹脂フィルムの破断やピンホール等を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
本発明によれば、
(1)重なり合った樹脂フィルムの熱シール部の内側に貯留物を貯留する収容空間を有するバッグ本体と、側面が前記樹脂フィルムに溶着された被溶着部と前記被溶着部の所定方向一端から所定方向一方に突出した筒状の吐出部とを有し、前記被溶着部と前記吐出部とを貫通する連通路が形成され、前記収容空間から前記バッグ本体の外部に前記貯留物を吐出可能なポートと、を備える貯留用バッグであって、前記被溶着部の底面周縁の全周にわたって樹脂だまりが形成されていること特徴とする貯留用バッグが提供され、
(2)前記被溶着部は、底面が略菱形状であることを特徴とする(1)に記載の貯留用バッグが提供され、
(3)前記被溶着部の底面から突出した前記樹脂だまりの高さは、100μm以上であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の貯留用バッグが提供され、
(4)(1)乃至(3)に記載の貯留用バッグの製造方法であって、重なり合った前記樹脂フィルムの間に前記ポートを供給し、前記被溶着部の側面と前記樹脂フィルムとを加熱型を用いて加熱することにより前記被溶着部を前記樹脂フィルムに溶着することを特徴とする貯留用バッグの製造方法が提供され、
(5)前記被溶着部は、底面周縁の全周にわたって前記収容空間側に延在する突出部を有することを特徴とする(4)に記載の貯留用バッグの製造方法が提供され、
(6)前記被溶着部は、側面の前記収容空間側の端部に全周にわたって外方に延在する突出部を有することを特徴とする(4)に記載の貯留用バッグの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の貯留用バッグは、樹脂フィルムと吐出部材の被溶着部との接合部における収容空間側の被溶着部の底面周縁の全周にわたって樹脂だまりを形成することにより、貯留用バッグの使用時に外力が掛かる等の要因により被溶着部付近の樹脂フィルムが押し広げられた際、樹脂だまりの箇所に局所的に応力が集中しても、樹脂だまりによって剥離強度が向上しているため、樹脂フィルムの破断やピンホール等の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)本発明の一実施形態に係る貯留用バッグの正面図である。(b)図1(a)に示すA-A線矢視断面図である。(c)図1(a)に示すB-B線矢視断面図である。(d)図1(a)に示すB-B線矢視断面図の変形例である。
図2】本発明の一実施形態に係るポートの斜視図である。
図3】(a)本発明の一実施形態に係るポートの平面視の図である。(b)本発明の一実施形態に係るポートの正面視の図である。(c)本発明の一実施形態に係るポートの底面視の図である。(d)本発明の一実施形態に係るポートの側面視の図である。
図4】(a)本発明の他の実施形態に係るポートの正面視の図である。(b)本発明の他の実施形態に係るポートの底面視の図である。(c)本発明の他の実施形態に係るポートの側面視の図である。(d)図4(a)に示すC-C線矢視断面図である。
図5】(a)本発明の他の実施形態に係るポートの正面視の図である。(b)本発明の他の実施形態に係るポートの底面視の図である。(c)本発明の他の実施形態に係るポートの側面視の図である。(d)図5(a)に示すD-D線矢視断面図である。
図6】本発明の実施例において樹脂だまりの高さの測定箇所を示すポートの底面視の図である。
図7】(a)従来の貯留用バッグに係る正面図である。(b)図7(a)に示すE-E線矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は以下の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲において種々の形態とすることができる。
【0013】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る貯留用バッグの正面図である。図1(a)に示すように、本発明の貯留用バッグ1は、重なり合った樹脂フィルム3の熱シール部5(トップシール部5a、ボトムシール部5b、一対のサイドシール部5c)の内側に貯留物を貯留する収容空間を有するバッグ本体2と、熱シール部5(トップシール部5a)に固定される被溶着部4bを有し、収容空間からバッグ本体の内外に貯留物を流入或いは流出可能なポート4(吐出部材)とを備え、ポートの被溶着部4bがバッグ本体2の上方にて貯留物を流入或いは流出可能に樹脂フィルム3と接合されている。そして、図1(a)、図1(b)及び図1(c)に示すように、本発明の貯留用バッグは、樹脂フィルム3とポートの被溶着部4bとの接合部6における収容空間側の被溶着部の底面4c周縁の全周にわたって樹脂だまり7が形成されている。
【0014】
本発明においては、樹脂フィルム3とポートの被溶着部4bとの接合部6における収容空間側の被溶着部の底面4cの一部のみに樹脂だまりを形成するのでなく、樹脂フィルム3とポートの被溶着部4bとの接合部6における収容空間側の被溶着部の底面4c周縁の全周にわたって樹脂だまり7を形成することにより樹脂フィルム3の破断やピンホール等を抑制することができる。この理由は定かではないが、被溶着部4bの底面4c周縁の全周にわたって略均一に樹脂だまり7を形成することにより、貯留用バッグの使用時に外力が掛かる等の要因により被溶着部4bの付近の樹脂フィルム3が押し広げられた際の応力が一部の樹脂だまり7に局所的に集中しても、樹脂だまりによって剥離強度が向上していることによるものと推測される。
【0015】
ポートの被溶着部の底面4c周縁に形成する樹脂だまり7の樹脂量や形状は、本発明の効果を奏する範囲で適宜調整すればよく、特に制限するものではないが、例えば、図1(a)、図1(b)及び図1(c)に示すように、ポートの被溶着部の底面4cから収容空間側に樹脂だまり7が底面周縁の全周にわたって突出するよう形成されていればよい。ポートの被溶着部の底面4cから突出した樹脂だまりの高さは、特に制限するものではないが、例えば、下限値が100μm以上、好ましくは200μm以上、さらに好ましくは300μm以上、特に好ましくは500μm以上、最も好ましくは700μm以上であり、上限値が3000μm以下、好ましくは2500μm以下、より好ましくは2250μm以下、さらに好ましくは2000μm以下、特に好ましくは1700μm以下、最も好ましくは1500μm以下である。また、ポートの被溶着部の底面4cから突出した樹脂だまりの高さは底面周縁の全周にわたって略均一であることが好ましく、樹脂だまりの高さのばらつきは、底面周縁の全周における樹脂だまり高さの平均値の3倍以内であることが好ましく、2倍以内であることがより好ましく、1.5倍以内であることがさらに好ましい。ポートの被溶着部の底面4cから突出した樹脂だまりの高さが上記範囲であれば、貯留用バッグの樹脂フィルム3とポートの被溶着部4bの接合部付近における樹脂フィルムの破断やピンホール等を抑制することができる。なお、図1(d)に示すように、樹脂フィルム3とポートの被溶着部4bとの接合部6における収容空間側の樹脂フィルム3が貯留用バッグ1の内側に向かって入り込んでいる状態であってもよい。
【0016】
バッグ本体2は、例えば、正面視で長方形状に形成される。このバッグ本体2は、柔軟性を有する1枚以上の樹脂フィルム3が重ね合わされ又は折り重ね合わされて、所定部位(上下左右の4辺)が熱シールにより袋状に形成されており、4つの熱シール部(トップシール部5a、ボトムシール部5b、一対のサイドシール部5c)を有する。なお、バッグ本体は、上下左右の4辺が袋を形成するよう閉じていればよく、熱シール部5が4辺以下であることを制限するものではない。
【0017】
バッグ本体2の内部、すなわち熱シール部5の内側には、貯留物を所定量収容可能な容積を有する収容空間が形成されている。収容空間の容積は、貯留物の種類や用途に応じて適宜設計すればよい。また、バッグ本体2は、ボトムシール部5b側やサイドシール部5c側に容積を確保するためのマチが設けられていてもよい。
【0018】
バッグ本体2の樹脂フィルム3を構成する材料は、特に制限されるものではなく、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂、エチレン―ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン―酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。樹脂フィルムは、異なる樹脂をブレンドしてフィルム状に形成したものや、複数の樹脂材料のフィルムを積層したものであってもよい。
【0019】
図2は本発明の一実施形態に係るポートの斜視図であり、図3は本発明のポートの一実施形態に係るポートの(a)平面視、(b)正面視、(c)底面視、(d)側面視の図である。図2及び図3に示すように、ポート4は、2枚の樹脂フィルム3の間に挿入されて側面を樹脂フィルム3に溶着可能に構成される被溶着部4bと、医療用チューブ等が装着される被溶着部の所定方向一端から所定方向一方に突出した筒状の吐出部4aとを有し、被溶着部4bと吐出部4aの中心にはポートの上下方向(軸方向)に沿って貯留物を流入或いは流出するための連通路4dが貫通形成されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、ポートの被溶着部4bは、平面視及び底面視で、トップシール部5aの延在方向に沿って長軸を有し、延在方向と直交する方向に短軸を有する略菱形状に底面4cが形成されている。被溶着部4bは、トップシール部5aの方向に沿って広い範囲で側面が樹脂フィルム3に溶着され得る部位となっている。また、被溶着部4bは、正面視で、ポートの軸方向(或いは連通路の延在方向)に充分な厚みを有しており、全体的な外観として略舟型状を呈している。なお、被溶着部の形状は、これに制限するものではなく、例えば、略円形状の底面を有し、全体的な外観として略円柱状を呈するもの、略楕円形状の底面を有し、全体的な外観として略円柱状を呈するもの、四角形等の略多角形状の底面を有し、全体的な外観として略角柱状を呈するものであってもよい。
【0021】
ポート4を構成する材料は、特に制限されるものではないが、バッグ本体2を構成する材料よりも硬質な樹脂材料を用いることが好ましい。ポート4を構成する材料としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂や、ポリプロピレン系樹脂、エチレン―ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン―酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらから選ばれる1種、或いは2種以上を用いることができる。ポート4を構成する材料は、樹脂フィルム3の融点に近い融点を有する材料であることが好ましく、具体的には、ポート4と樹脂フィルム3の融点の温度差が30℃以下、20℃以下、10℃以下であることが好ましい。また、ポート4を構成する材料のMFR(JIS-K7210に準拠して測定)は、特に制限するものではないが、例えば、下限値が5g/10min以上、10g/min以上、15g/min以上、20g/min以上であり、上限値が50g/min以下、30g/min以下、25g/min以下である。本発明においては、ポートや樹脂フィルムを構成する材料の融点やMFRを適宜調整して設計し、被溶着部の底面周縁の全周にわたって樹脂だまりを形成すればよい。
【0022】
次に、本発明の貯留用バッグの製造方法について説明する。本発明の貯留用バッグの製造方法は、従来公知の方法を採用することができ、特に制限するものではないが、例えば、重なり合った樹脂フィルムの周縁を熱融着(熱シール)することによりバッグ本体を形成するバッグ形成工程と、溶着領域によって画定される開口部にポートの被溶着部を挿入する挿入工程と、開口部に挿入されたポートの被溶着部と被溶着部の周縁の樹脂フィルムとを加熱型を用いて加熱することにより被溶着部を樹脂フィルムに融着する加熱工程と、を含む方法により製造することができる。
【0023】
バッグ形成工程では、2枚の柔軟な樹脂フィルムを重ね合わせ、或いは1枚の柔軟な樹脂フィルムを折り重ね合わせ、重ね合わせた樹脂フィルムの周縁の一部を熱融着(熱シール)する。これにより、図1において破線で囲む領域に示したように、重ねられた樹脂シートが互いに溶着された帯状の溶着領域(トップシール部、ボトムシール部、一対のサイドシール部)、および上記樹脂フィルムが互いに溶着されていない部分である開口部(図示しない)を有するバッグ本体が形成される。溶着領域で囲まれる領域が収容空間となる。
【0024】
ポート挿入工程では、溶着領域によって画定される開口部に、ポートの被溶着部を挿入する。開口部に複数のポートを挿入する場合には、ポート同士を所定の間隔で挿入する。開口部に挿入されるポートの数は特に限定されない。また、ポート挿入工程の後、加熱工程における樹脂フィルムやポートの被溶着部の樹脂の流動性を高めて樹脂だまりを形成しやすくするため、接合部付近の樹脂フィルムやポートの被溶着部を加熱・昇温する予熱工程を設けてもよい。
【0025】
加熱工程では、開口部の内部に挿入されたポートの被溶着部、および被溶着部の周縁の樹脂フィルムを、加熱金型を用いて加熱することにより被溶着部を樹脂フィルムに溶着する。これにより、被溶着部を樹脂フィルムに確実に溶着することができ、その結果、収容空間内を少なくとも液密に封止することができる。加熱工程は、加熱金型の加熱温度、加熱時間、加熱金型とポートの被溶着部とのクリアランス、加熱金型による押圧力等を変更しながら多段的に行ってもよい。加熱型の形状や材質は、特に制限するものではないが、例えば、ポートの被溶着部の形状(略舟型状)に対応する凹部が形成された上下対称の一対の加熱金型であってよい。加熱金型は、例えば電熱線で構成されたヒータが内蔵され加熱可能となっているもの、加熱金型に電流を通電して金型を加熱可能(インパルスシール方式)となっているものであればよい。
【0026】
加熱工程後、接合部における溶融状態の樹脂を固化させるために冷却工程を設けてもよい。冷却工程では、例えば、ポートの被溶着部の形状(略舟型状)に対応する凹部が形成された上下対称の一対の冷却金型を用いて冷却することで溶融樹脂を固化することができる。冷却金型には、それぞれ、内部に冷却媒体が流れ、これにより冷却可能となっていればよい。
【0027】
被溶着部の底面周縁の全周にわたって樹脂だまりを形成する方法は、特に制限するものではないが、例えば、上記の被溶着部と樹脂フィルムとを溶着する加熱工程において、加熱金型の形状、加熱金型とポートの被溶着部とのクリアランス、加熱金型の加熱温度、加熱時間、加熱金型による押圧力等を適宜調整することや、上記の接合部における溶融状態の樹脂を固化させる冷却工程において、冷却金型の形状、冷却金型とポートの被溶着部とのクリアランス、冷却金型の冷却温度、冷却時間、冷却金型による押圧力等を適宜調整することで達成することができる。また、その際、加熱工程や冷却工程における溶融状態の樹脂の流動性を考慮し、樹脂フィルムやポートの材質を適宜調整してもよい。
【0028】
なお、被溶着部の底面周縁の全周にわたって樹脂だまりを形成するために、ポートの被溶着部の形状を変更してもよい。図4及び図5は本発明のポートの他の実施形態に係る図である。図4に示すように、ポートの被溶着部41bは、底面周縁の全周にわたって収容空間側に延在する突出部41eを有する構成であってもよく、図5に示すように、被溶着部42bは、側面の収容空間側の端部に全周にわたって外方に延在する突出部42eを有する構成であってもよい。ポートの被溶着部の形状が上記であれば、被溶着部と樹脂フィルムとを溶着する加熱工程において被溶着部の突出部が溶融し、ポートの被溶着部の底面周縁の全周にわたって樹脂だまりを形成することができる。
【実施例0029】
(実施例1乃至3及び比較例1)
厚さが0.15mmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(融点127℃)と、図2に示す高密度ポリエチレン(融点129℃)からなるポート(被溶着部は長軸が20mm(図6に示すCC’間距離)、短軸が10mm(図6に示すAA’間距離))とを用い、上記にて説明した製造方法と同様に、バッグ形成工程、ポート挿入工程、加熱工程及び冷却工程を経て貯留用バッグを製造した。加熱工程及び冷却工程における製造条件を表1に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
得られた実施例、比較例のサンプルについて以下の測定と評価を行った。結果を表2に示す。
[樹脂だまり高さ測定]
上記で得られた貯留用バッグからポート溶着部を切り出し、図6に示す被溶着部の短軸方向における端部(A、A’)、被溶着部の長軸方向における端部(C、C’)、被溶着部の短軸方向における端部と長軸方向における端部との中間位置(B、B’)について、ポートの被溶着部の底面側からレーザー顕微鏡(キーエンス社製、形状解析レーザー顕微鏡VK-X1000)を用い、被溶着部底面から突出した樹脂だまりの高さ(μm)を測定した。測定数はn=3とし、その平均値を記載した。
[リーク評価]
上記で得られた貯留用バッグについて、加圧放置法によりリークテストを実施した。試験圧力は30kPaとし、試験圧力に達した時点から90秒間保持し、リークの発生有無を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:リークの発生がない
×:被溶着部の底面周縁においてフィルムが破断し、リークが発生
【0032】
【表2】
【0033】
表1に示すように、ポートの被溶着部の底面周縁の全周にわたって略均一な樹脂だまりが形成された実施例1乃至3の貯留用バッグは、リーク評価において被溶着部の底面周縁においてフィルムの破断が見られなかった。一方、ポートの被溶着部の底面周縁の一部に樹脂だまりが形成された比較例1の貯留用バッグは、リーク評価において被溶着部の底面周縁においてフィルムが破断し、リークが発生した。
【0034】
以上の如く、本発明の貯留用バッグは、樹脂フィルムと吐出部材の被溶着部との接合部における収容空間側の被溶着部の底面周縁の全周にわたって樹脂だまりを形成することにより樹脂フィルムの破断やピンホール等を抑制でき、医療薬液、輸液剤、細胞剤溶液等の保存バッグ、細胞培養バッグとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0035】
1:貯留用バッグ
2:バッグ本体
3:樹脂フィルム
4;ポート(吐出部材)
4a、41a、42a:吐出部
4b、41b、42b:被溶着部
4c、41c、42c:底面
4d、41d、42d:連通路
41e、42e:突出部
5:熱シール部
5a:トップシール部
5b:ボトムシール部
5c:サイドシール部
6:接合部
7:樹脂だまり


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7