(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003661
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】赤色顔料分散体
(51)【国際特許分類】
C09B 67/46 20060101AFI20230110BHJP
C09D 17/00 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
C09B67/46 B
C09B67/46 A
C09D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104875
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000180058
【氏名又は名称】山陽色素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川井 康裕
(72)【発明者】
【氏名】松原 康洋
(72)【発明者】
【氏名】本郷 晃平
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA30
4J037EE08
4J037FF15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】調製後の粘度上昇及び粗大粒子数の増加を抑制し得る赤色顔料分散体の提供。
【解決手段】少なくとも赤色顔料、誘導体、分散剤及び溶剤を含有し、前記誘導体は、化学式1で示される化学構造を有し、前記分散剤は、酸価が80~120mgKOH/gで、カルボキシル基を有する高分子分散剤であり、前記誘導体を、赤色顔料と誘導体の合計100重量部に対し、10~40重量部の割合で含有し、前記分散剤を、全固形分の合計100重量部に対し、30~50重量部の割合で含有する赤色顔料分散体。
(化学式1中、R
1~R
4は、H、ハロゲン原子;nは1~5の整数;X
1とX
2の少なくとも一方は、C
1-6-アルキル-NR
5R
6;残りの一方は、H、C
1-6アルキル基等;R
5とR
6は、H等)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも赤色顔料、誘導体、分散剤及び溶剤を含有する赤色顔料分散体であって、
前記誘導体は、化学式1で示される化学構造を有し、
前記分散剤は、酸価が80mgKOH/g以上120mgKOH/g以下で、カルボキシル基を有する高分子分散剤であり、
前記誘導体を、赤色顔料と誘導体の合計重量100重量部に対して10重量部以上40重量部以下の割合で含有し、
前記分散剤を、全固形分の合計重量100重量部に対して30重量部以上50重量部以下の割合で含有する、
赤色顔料分散体;
【化1】
(化学式1中、R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子を表す。nは1~5の整数を表し;
X
1とX
2は、それぞれ独立に、水素原子、C
1-6アルキル、ベンジル、フェニルまたはC
1-6アルキル-NR
5R
6(R
5とR
6は、同一または異なって、水素原子、フェニルまたはC
1-6アルキルを表す。)を表す(ただし、X
1とX
2の少なくとも一方は、C
1-6アルキル-NR
5R
6で表される基である。))。
【請求項2】
前記赤色顔料がC.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 177及びC.I.Pigment Red 254からなる群より選択される1種以上である、
請求項1に記載の赤色顔料分散体。
【請求項3】
前記分散剤は、アミン価が0mgKOH/gである、
請求項1又は2に記載の赤色顔料分散体。
【請求項4】
表示装置又はイメージセンサーに用いられるカラーフィルター用顔料分散体である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の赤色顔料分散体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤色顔料、特定誘導体、特定分散剤及び溶剤を含有する赤色顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルターは、液晶ディスプレイ(LCD)のような構成部材として広く用いられている。LCDは、モニター、テレビ、ノート型パソコン、タブレット型パソコン、スマートフォンのような表示装置に広く用いられているが、これらの表示装置では高画質化が要求されている。一方、近年は地球環境保護等の観点から、消費電力の低減に対する要求も高まっており、カラーフィルターには高輝度化及び高コントラスト化も要求されるようになっている。
【0003】
カラーフィルターは、赤色、緑色及び青色の染料や顔料などの着色剤を感光性樹脂に溶解又は分散させた着色感光性組成物を塗布液として用い、フォトリソグラフィ工程により塗膜を形成して作製されることが広く行われている。前述のようにカラーフィルターの高画質化を図るための方法として、着色感光性組成物中の染料や顔料の濃度を高める等して色純度を向上させることが考えられる。しかし、この場合、LCDのバックライトによる光の透過率が低下するため、消費電力が大きくなる。また、高コントラスト化を図るためには、顔料の大粒径粒子をなくし、顔料を光の波長以下の小粒径粒子として着色感光性組成物中に分散させることが考えられる。しかし、顔料は粒子径が小さくなるほど凝集し易くなる傾向にあり、着色感光性組成物中に均一に分散せることが困難になる傾向にある。そのため、顔料等の濃度を高めることなく、従来よりも少ない光量で同等の明るさを表現可能な高輝度で高コントラストのカラーフィルターを実現可能な顔料の開発が求められている。
【0004】
例えば、特許文献1は、取り扱い性が良好であり、高着色化、高輝度化を両立できる顔料分散液として、塩素原子を3.5重量%以上含有するハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料と特定分散剤とを含む顔料分散液を開示している。特許文献1に開示されているような顔料を用いることで、カラーフィルターの高輝度化、高コントラスト化はある程度期待できる。しかし、一般に、顔料を着色感光性組成物中に均一に分散させることは容易ではないため、例えば着色感光性組成物を構成する成分として分散剤や顔料誘導体を用いたり、表面処理した顔料を用いたりする方法が採用されるのが一般的である。
【0005】
特許文献2は、サーマルインクジェットプリンタに使用する際、長い待機時間と長期の吐出安定性を備えるためにヒドロキシアミド誘導体を用いることを開示し、ヒドロキシアミド誘導体の具体例としてフタルイミド誘導体を例示している。また特許文献3は、水とポリビニルピロリドンを含有する記録用インクにおいて、水とポリビニルピロリドンとの水和現象を防止するため、ピロリドン環を有する物質を使用することを開示し、その具体例として、フタルイミドを例示している。
【0006】
特許文献4は、フタロシアニン顔料及び酸型フタルイミド誘導体を用いることにより、フタロシアニン顔料分散体調製後の粘度上昇を抑制し、当該分散体を含有する着色組成物を調製した後の塗膜のコントラスト低下を抑制可能であることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-38584号公報
【特許文献2】特開平10-204359号公報
【特許文献3】特開平7-331146号公報
【特許文献4】特開2018-80217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者等は、特許文献4に開示されている緑色又は青色顔料を赤色顔料(C.I.Pigment Red 122/キナクリドン顔料)に変更し、酸性基を有するフタルイミド誘導体と併用することにより、顔料分散体調製後の粘度上昇を抑制し得るかを試みた。しかし、得られた赤色顔料分散体は、分散性は良好であったが、粗大粒子数がやや多いという問題があった。
【0009】
本発明は、調製後の粘度上昇を抑制しつつ、粗大粒子数の増加も抑制し得る赤色顔料分散体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の塩基型フタルイミド誘導体と特定の分散剤を併用することにより、赤色顔料分散体の粘度上昇を抑制しつつ、粗大粒子数も抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
具体的に本発明は、
少なくとも赤色顔料、誘導体、分散剤及び溶剤を含有する赤色顔料分散体であって、
前記誘導体は、化学式1で示される化学構造を有し、
前記分散剤は、酸価が80mgKOH/g以上120mgKOH/g以下で、カルボキシル基を有する高分子分散剤であり、
前記誘導体を、赤色顔料と誘導体の合計重量100重量部に対して10重量部以上40重量部以下の割合で含有し、
前記分散剤を、全固形分の合計重量100重量部に対して30重量部以上50重量部以下の割合で含有する、
赤色顔料分散体に関する。
【0012】
【0013】
(化学式1中、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子を表す。nは1~5の整数を表し;
X1とX2は、それぞれ独立に、水素原子、C1-6アルキル、ベンジル、フェニルまたはC1-6アルキル-NR5R6(R5とR6は、同一または異なって、水素原子、フェニルまたはC1-6アルキルを表す。)を表す(ただし、X1とX2の少なくとも一方は、C1-6アルキル-NR5R6で表される基である。))。
【0014】
本発明の赤色顔料分散体は、化学式1で示される塩基型フタルイミド誘導体と、酸価が80mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であり、酸性基としてカルボキシル基を有する高分子分散剤とを、特定の割合で含有することにより、粘度上昇を抑制しつつ、粗大粒子数も抑制し得る。
【0015】
前記赤色顔料は、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 177及びC.I.Pigment Red 254からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
【0016】
前記分散剤は、アミン価が0mgKOH/gであることが好ましい。
【0017】
本発明の赤色顔料分散体は、表示装置又はイメージセンサーに用いられるカラーフィルター用顔料分散体であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、表示装置又はイメージセンサーに用いられるカラーフィルター用途に適した赤色顔料分散体の粘度上昇を抑制し、かつ、粗大粒子数も抑制し得る。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
本発明に使用できる赤色顔料としては、C.I.Pigment Red 1、C.I.Pigment Red 2、C.I.Pigment Red 3、C.I.Pigment Red 4、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 6、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 8、C.I.Pigment Red 9、C.I.Pigment Red 10、C.I.Pigment Red 11、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 14、C.I.Pigment Red 15、C.I.Pigment Red 16、C.I.Pigment Red 17、C.I.Pigment Red 18、C.I.Pigment Red 21、C.I.Pigment Red 22、C.I.Pigment Red 23、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red 32、C.I.Pigment Red 38、C.I.Pigment Red 41、C.I.Pigment Red 48、C.I.Pigment Red 48:1、C.I.Pigment Red 48:2、C.I.Pigment Red 48:3、C.I.Pigment Red 48:4、C.I.Pigment Red 48:5、C.I.Pigment Red 49、C.I.Pigment Red 52、C.I.Pigment Red 52:1、C.I.Pigment Red 52:2、C.I.Pigment Red 53:1、C.I.Pigment Red 54、C.I.Pigment Red 57:1、C.I.Pigment Red 58、C.I.Pigment Red 60:1、C.I.Pigment Red 63、C.I.Pigment Red 64:1、C.I.Pigment Red 68、C.I.Pigment Red 81:1、C.I.Pigment Red 83、C.I.Pigment Red 88、C.I.Pigment Red 89、C.I.Pigment Red 95、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 114、C.I.Pigment Red 119、C.I.Pigment Red 122、C.I.Pigment Red 123、C.I.Pigment Red 129、C.I.Pigment Red 136、C.I.Pigment Red 144、C.I.Pigment Red 146、C.I.Pigment Red 147、C.I.Pigment Red 149、C.I.Pigment Red 150、C.I.Pigment Red 164、C.I.Pigment Red 166、C.I.Pigment Red 168、C.I.Pigment Red 169、C.I.Pigment Red 170、C.I.Pigment Red 171、C.I.Pigment Red 172、C.I.Pigment Red 175、C.I.Pigment Red 176、C.I.Pigment Red 177、C.I.Pigment Red 178、C.I.Pigment Red 179、C.I.Pigment Red 181、C.I.Pigment Red 183、C.I.Pigment Red 184、C.I.Pigment Red 185、C.I.Pigment Red 187、C.I.Pigment Red 188、C.I.Pigment Red 190、C.I.Pigment Red 193、C.I.Pigment Red 194、C.I.Pigment Red 200、C.I.Pigment Red 202、C.I.Pigment Red 206、C.I.Pigment Red 207、C.I.Pigment Red 208、C.I.Pigment Red 209、C.I.Pigment Red 210、C.I.Pigment Red 211、C.I.Pigment Red 213、C.I.Pigment Red 214、C.I.Pigment Red 216、C.I.Pigment Red 220、C.I.Pigment Red 221、C.I.Pigment Red 224、C.I.Pigment Red 226、C.I.Pigment Red 237、C.I.Pigment Red 238、C.I.Pigment Red 239、C.I.Pigment Red 242、C.I.Pigment Red 245、C.I.Pigment Red 247、C.I.Pigment Red 248、C.I.Pigment Red 251、C.I.Pigment Red 253、C.I.Pigment Red 254、C.I.Pigment Red 255、C.I.Pigment Red 256、C.I.Pigment Red 257、C.I.Pigment Red 258、C.I.Pigment Red 260、C.I.Pigment Red 262、C.I.Pigment Red 263、C.I.Pigment Red 264、C.I.Pigment Red 266、C.I.Pigment Red 268、C.I.Pigment Red 269、C.I.Pigment Red 270、C.I.Pigment Red 271、C.I.Pigment Red 272、C.I.Pigment Red 279、C.I.Pigment Red 291等を使用し得るが、これらに限定されない。これら赤色顔料は、単独で使用されてもよく、2種類以上を組み合わせて使用されてもよい。また、これら赤色顔料は、コントラスト向上の観点、平均粒子径を調整する観点、等から、予めミリング処理を行ってもよい。ミリング処理は赤色顔料の種類等に応じて定法に従って行うことができる。このようなミリング処理としては、例えば、ソルベントソルトミリング法等が挙げられる。
【0021】
本発明に使用できる誘導体は、化学式1で示される化学構造を有する塩基型フタルイミド誘導体である。化学式1において、R1~R4が表すハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。また、化学式1において、X1、X2、R5及びR6が表すC1-6アルキルは、炭素数が1~6の脂肪族炭化水素基であればよく、該脂肪族炭化水素基は直鎖状、環状又は分岐していてもよい。赤色顔料分散体における誘導体の含有量は、赤色顔料と誘導体の合計重量100重量部に対して10重量部以上40重量部以下であるが、赤色顔料と誘導体の合計重量100重量部に対して15重量部以上35重量部以下であることがより好ましい。
【0022】
本発明に使用できる分散剤としては、酸価が80mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であり、酸性基としてカルボキシル基を有する高分子分散剤である。このような分散剤は、種々のものが市販されており、例えば、タープラス(登録商標)MD1100(大塚化学株式会社)、タープラス(登録商標)MD1000(大塚化学株式会社)、Disperbyk(登録商標)-180(BYK-Chemie社)等を使用し得るが、これらに限定されない。これら分散剤は、単独で使用されてもよく、2種類以上を組み合わせて使用されてもよい。本発明で使用できる分散剤としては、酸価が80mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であり、かつ、アミン価が0mgKOH/gである高分子分散剤がより好ましい。
【0023】
ここで酸価とは、分散剤固形分1gあたりの酸価を表し、JIS K 0070 (1992)に準じ、電位差滴定法によって求めることができる(単位:mgKOH/g)。またアミン価とは、分散剤固形分1gあたりのアミン価を表し、0.1Nの塩酸水溶液を用い、電位差滴定法によって求めた後、水酸化カリウムの当量に換算した値(単位:mgKOH/g)をいう。
【0024】
本発明の赤色顔料分散体においては、分散剤の含有量(固形分又は有効成分)は、全固形分の合計重量100重量部に対して30重量部以上50重量部以下の割合で含有することが好ましく、全固形分の合計重量100重量部に対して33重量部以上45重量部以下の割合で含有することがより好ましい。ここで、本発明の赤色顔料分散体における「全固形分の合計重量」とは、赤色顔料、誘導体、分散剤及び後述する任意の添加剤の固形分又は有効成分の合計重量を指す。また、分散安定性の観点から、(分散剤の固形分又は有効成分の重量)/(赤色顔料と誘導体の合計重量)の比が、0.45以上1.00以下であるのが好ましく、0.50以上0.80以下であることがより好ましい。ただし、分散剤の最適な添加量は、使用する赤色顔料の種類との組み合わせなどにより、適宜、調整し得る。
【0025】
本発明に使用できる溶剤には特に限定はなく、例えば、芳香族系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系、アルコール系、脂肪族系等の各種の溶剤が挙げられる。このうち、カラーフィルター用途における塗膜形成性の観点からは、芳香族系、ケトン系、エステル系、グリコールエーテル系から選択される溶剤が好ましい。溶剤は、1種のみでもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0026】
芳香族系の溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0027】
ケトン系の溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、アセチルアセトン、イソホロン、アセトフェノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0028】
エステル系の溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、酢酸-3-メトキシブチル、エチルグリコールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチル、モノクロロ酢酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ブチルカルビトールアセテート、乳酸ブチル、エチル-3-エトキシプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸プロピル、1,3-ブチレングリコールジアセテート等が挙げられる。
【0029】
グリコールエーテル系の溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、1-メチル-1-メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-iso-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等の水溶性のグリコールエーテル類;
エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコール-n-ヘキシルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルプロピオネート等の非水溶性のグリコールエーテル類等が挙げられる。
【0030】
アルコール系の溶剤としては、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1~4のアルキルアルコール類;
エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0031】
脂肪族系の溶剤としては、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0032】
溶剤の添加量は、赤色顔料等を含む全固形分の濃度が15~50重量%となるように調整し得る。
【0033】
本発明の赤色顔料分散体は、必要に応じて前述した成分以外に、他の添加剤を含んでもよい。他の添加剤としては、酸化防止剤、凝集防止剤、表面調整剤(レベリング剤)等が挙げられる。
【0034】
本発明の赤色顔料分散体は、例えば、前述の各成分をビーズミル、サンドミル、ディスパー等の公知の分散機に添加し、分散することで調製し得る。各成分の添加の仕方には特に限定はなく、各成分を同時に混合したものを分散処理してもよく、例えば顔料を複数種用いる場は、顔料毎に予め分散体を調製した後、それらを混合して再度分散処理を行ってもよい。
【0035】
一例として、サンドミルを用いて分散処理する場合について説明する。まず、赤色顔料、分散剤及び分散媒体としてのビーズをサンドミルに仕込む。ビーズとしては、0.01~ 1mmの粒子径のガラスビーズ、ジルコニアビーズ等を用いることができる。ビーズの使用量は、赤色顔料分散体1重量部に対して2~6重量部を添加するのが好ましい。その後、サンドミルを作動させ分散処理する。分散処理条件は、概ね1000~2000rpmで1~20時間とするのが好ましい。分散処理後にビーズを濾過等により除去することで、赤色顔料分散体が得られる。
【0036】
本発明の赤色顔料分散体における赤色顔料含有量は、赤色分散体の重量100重量部に対して0.01重量部以上30重量部以下とすることが好ましく、1重量部以上20重量部以下とすることがより好ましい。
【0037】
<赤色顔料分散体に好適な誘導体及び分散剤の検討>
赤色顔料としてC.I.Pigment Red 122を使用し、赤色顔料分散体に適した誘導体及び分散剤について検討するため、誘導体及び分散剤の組み合わせを代えて赤色顔料分散体を製造した。C.I.Pigment Red 122は、下記の工程により微細化した。
【0038】
(Pigment Red 122の微細化工程)
C.I.Pigment Red 122(DIC株式会社、Fastogen(登録商標) Super Magenta RG)75重量部、無水硫酸ナトリウム750重量部、ジエチレングリコール 174重量部、固形苛性ソーダ (東ソー株式会社、トーソーパール(登録商標)) 3.75重量部を双腕型ニーダー(株式会社井上製作所、5Lニーダー)に投入し、ニーダー内が70℃となるように温度調整しながら、6時間混練した。混練物を水3400重量部を貯水した温度調節可能なタンク内に移し、70℃で2時間撹拌した。内容物を濾過、水洗、乾燥及び粉砕し、微細化されたC.I.Pigment Red 122を得た。
【0039】
誘導体としては、化学式2で示される誘導体1、化学式3で示される誘導体2、化学式4で示される誘導体3、化学式5で示される誘導体4、及び化学式6で示される誘導体5を使用した。分散剤としては、タープラス(登録商標)MD1100(大塚化学株式会社/酸価=85mgKOH/g、アミン価=0mgKOH/g)、Disperbyk(登録商標)-111(BYK-Chemie社/酸価=129mgKOH/g、アミン価=0mgKOH/g)、Disperbyk(登録商標)-140(BYK-Chemie社/酸価=73mgKOH/g、アミン価=76mgKOH/g)、ソルスパース(登録商標)41000(日本ルーブリゾール株式会社/酸価=50mgKOH/g、アミン価=0mgKOH/g)及びHIPLAAD(登録商標) ED-153(楠本化成株式会社/酸価=55mgKOH/g、アミン価=0mgKOH/g)を使用した。
【0040】
(誘導体1の製法)
プロピレングリコールモノメチルエーテル350重量部に対して、テトラクロロ無水フタル酸42.9重量部、ベンジルアミン16.1重量部を添加し、120℃で6時間反応させた。その後、室温まで冷却して内容物を濾過、水洗、乾燥及び粉砕し、N-ベンジルテトラクロロフタルイミドを52.8重量部得た。クロルスルホン酸150重量部に対して、N-ベンジルテトラクロロフタルイミド26.3重量部を添加し、50℃で3時間反応させた。その後、1250重量部の冷水中に反応物を排出し、濾過及び水洗した。水洗した反応物を水580重量部中に分散させ、ジエチルアミノプロピルアミン27.4重量部を加え、50℃で30分反応させた後、内容物を濾過、水洗、乾燥及び粉砕し、化学式2で示される誘導体1を34.2重量部得た。
【0041】
得られた顔料誘導体の化学構造の同定は、AXIMA Confidence(登録商標)型マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF-MS、株式会社島津製作所)を用い、α-シアノ-4-ヒドロキシけい皮酸(CHCA)をマトリックスとして、正イオンモードで測定することにより行った。その結果、m/z 565に分子イオンピークが観測された。この値は、化学式2(n=1)に相当するモノアイソトピック質量と一致した。
【0042】
【0043】
(誘導体2の製法)
クロルスルホン酸900重量部に対して、C.I.Pigment Red 255(BASF社、Irgazin(登録商標) Red L 3551 HD)205重量部及び塩化チオニル252重量部を添加し、60℃で5時間反応させた。その後、25000重量部の冷水中に反応物を排出し、濾過及び水洗し、C.I.Pigment Red 255のクロルスルホン化物を得た。これを水6000重量部中に分散させ、ジエチルアミノプロピルアミン296重量部を加え、50℃で30分反応させた後、内容物を濾過、水洗、乾燥及び粉砕を行い、化学式3で示される誘導体2(n=1~2の混合物)を329重量部得た。
【0044】
【0045】
(誘導体3の製法)
水3000重量部にジエチルアミノプロピルアミン87重量部、塩化シアヌル123重量部を加えて20℃で1時間反応させた後、炭酸ナトリウム35重量部を添加して10分撹拌して反応混合液aを得た。水8000部に4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化工業株式会社、セイカキュアーS)166重量部、35%塩酸140重量部加えて撹拌し、反応混合液bを得た。反応混合液aと反応混合液bとを混合した後、30℃に加熱し、30分撹拌した。その後、ジエチルアミノプロピルアミン87重量部を添加して80℃に加熱し、30分撹拌して反応混合液cを得た。5℃以下に冷却した反応混合液cに35%塩酸140重量部を添加し、亜硝酸ナトリウム60重量部を添加して30分撹拌して反応混合液dを得た。水8000重量部に30%水酸化ナトリウム水溶液260重量部、5-アセトアセチルアミノベンズイミダゾロン(三星化学工業株式会社、AABI)260重量部を加えて撹拌した後、酢酸ナトリウム140重量部、ジメチルラウリルアミン17重量部、80%酢酸155重量部を加えて撹拌して反応混合液eを得た。反応混合液dと反応混合液eとを混合した後、25℃に加熱し、30分撹拌した。その後、80℃に加熱して、30%水酸化ナトリウム水溶液500重量部を加えた後、20分撹拌した。反応物を濾過、水洗、乾燥及び粉砕し、化学式4で示される誘導体3を400重量部得た。
【0046】
【0047】
(誘導体4の製法)
冷水5000重量部にジエチルアミノプロピルアミン195重量部、4-アセトアミノベンゼンスルホニルクロリド234重量部を加えて50℃で30分撹拌させた後、85℃まで加熱した。その後、35%塩酸350重量部を加えて3時間撹拌して反応混合液aを得た。冷却した反応混合液aに塩化シアヌル184重量部加えて5℃で1時間撹拌して反応混合液bを得た。水10000重量部に4,4’-メチレンジ-2,6-キシリジン(日本化薬株式会社、KAYABOND(登録商標) C-200S)254重量部を加えて撹拌し、反応混合液cを得た。反応混合液bと反応混合液cとを混合した後、85℃に加熱して2時間撹拌した。内容物を濾過、水洗、乾燥及び粉砕し、化学式5で示される誘導体4を567重量部得た。
【0048】
【0049】
(誘導体5の製法)
ジエチレングリコールジメチルエーテル600重量部に対して、カリウムt-ブトキシド47.1重量部、C.I.Pigment Red 122(BASF社、Cinquasia(登録商標) Pink K 4410)68.1重量部、ベンジルブロミド71.8重量部を添加し、80℃で8時間反応させた。その後、40℃以下まで冷却して、内容物を濾過、水洗、乾燥及び粉砕し、赤色粉末aを101重量部得た。クロルスルホン酸192重量部に対して、赤色粉末aを52.1重量部となるように添加し、40℃で17時間反応させた後、2300重量部の氷水中に排出し、反応物を濾過及び水洗した。水洗物を水1100重量部中に分散させ、ジエチルアミノプロピルアミン39.1重量部を加え、50℃で30分反応させた後、内容物を濾過、水洗、乾燥及び粉砕し、化学式6に示す誘導体5(n=1~2の混合物)を75.1重量部得た。
【0050】
【0051】
[赤色顔料分散体の製造]
(分散体No.1)
容器内に微細化されたC.I.Pigment Red 122を3.64重量部、誘導体1を1.56重量部、Disperbyk(登録商標)-111(固形分95重量%)を2.74重量部、溶剤としてPMAを32.06重量部投入した。φ0.5mmジルコニアビーズを160重量部投入し、ペイントシェイカーで60分間分散処理を行い、その後φ0.5mmジルコニアビーズを除去して分散体No.1を得た。
【0052】
(分散体No.2)
分散剤としてDisperbyk(登録商標)-140(固形分51重量%)を5.10重量部、PMAを29.70重量部使用する以外、すべて分散体No.1と同様にして、分散体No.2を調製した。
【0053】
(分散体No.3)
分散剤としてソルスパース(登録商標)41000(固形分100重量%)を2.60重量部、PMAを32.20重量部使用する以外、すべて分散体No.1と同様にして、分散体No.3を調製した。
【0054】
(分散体No.4)
分散剤としてHIPLAAD(登録商標) ED-153(固形分49.1重量%)を5.30重量部、PMAを29.50重量部使用する以外、すべて分散体No.1と同様にして、分散体No.4を調製した。
【0055】
(分散体No.5)
分散剤としてタープラス(登録商標)MD1100(固形分41重量%)を6.34重量部、PMAを28.46重量部使用する以外、すべて分散体No.1と同様にして、分散体No.5を調製した。
【0056】
(分散体No.6)
タープラス(登録商標)MD1100を8.24重量部、PMAを26.56重量部使用する以外、すべて分散体No.5と同様にして、分散体No.6を調製した。
【0057】
(分散体No.7)
タープラス(登録商標)MD1100を10.15重量部、PMAを24.65重量部使用する以外、すべて分散体No.5と同様にして、分散体No.7を調製した。
【0058】
(分散体No.8)
微細化されたC.I.Pigment Red 122を4.16重量部、誘導体として誘導体1を1.04重量部使用する以外、すべて分散体No.5と同様にして、分散体No.8を調製した。
【0059】
(分散体No.9)
タープラス(登録商標)MD1100(固形分41重量%)を8.24重量部、PMAを26.56重量部使用する以外、すべて分散体No.8と同様にして、分散体No.9を調製した。
【0060】
(分散体No.10)
誘導体として誘導体2を1.56重量部使用する以外、すべて分散体No.5と同様にして、分散体No.10を調製した。
【0061】
(分散体No.11)
誘導体として誘導体3を1.56重量部使用する以外、すべて分散体No.5と同様にして、分散体No.11を調製した。
【0062】
(分散体No.12)
誘導体として誘導体4を1.56重量部使用する以外、すべて分散体No.5と同様にして、分散体No.12を調製した。
【0063】
(分散体No.13)
誘導体として誘導体5を1.56重量部使用する以外、すべて分散体No.5と同様にして、分散体No.13を調製した。
【0064】
[粘度測定]
No.1~No.13の分散体(赤色顔料分散体)について、調製直後と、45℃恒温槽内で3日保存後の2点で粘度を測定した。粘度の測定は、分散体を25℃に調整しE型粘度計(東機産業株式会社、TVE-25L)を用いて行った。
【0065】
表1は、No.1~No.13の分散体の赤色顔料、誘導体、誘導体添加量(赤色顔料と誘導体の合計重量に対する誘導体の重量(重量%))、D/P比(分散剤の固形分重量と赤色顔料と誘導体の合計重量との比)、粘度(初期粘度、45℃3日保存後の粘度、3日保存後の粘度変化率、及び粘度安定性に関する実用性判定を示す。ここで、粘度変化率とは、「3日保存後の粘度/初期粘度」を意味する。また、粘度安定性に関する実用性判定は、初期粘度が20mPa・s以下であり、かつ、45℃3日保存後の粘度変化率が0.80~1.20の範囲内であれば「〇」、そうでない場合には「×」と判定した。
【0066】
【0067】
No.1~No.4の分散体は、調製時にゲル化したため、45℃保存試験を行っていない。No.5~No.9及びNo.13の分散体は、初期粘度が好適と考えられる6.08~10.23mPa・sであり、45℃3日保存後の粘度変化率についても「○」の判定であった。No.10及びNo.11の分散体は、45℃3日保存後の粘度変化率が1.20を超えているため、「×」の判定であった。No.12の分散体は、初期粘度が20mPa・sを超えており、45℃3日保存後にはゲル化したため、「×」の判定となった。
【0068】
このように、赤色顔料としてC.I.Pigment Red 122を使用する場合、誘導体として誘導体1又は誘導体5、分散剤としてタープラス(登録商標)MD1100を併用する場合には、保存試験中に粘度の変化が少ないことが確認された。
【0069】
[粘度、粒径及び粗大粒子数の測定]
次に、誘導体添加量を30重量%、分散剤をタープラス(登録商標)MD1100、D/P比を0.50に固定し、赤色顔料及び誘導体の種類を代えた赤色顔料分散体について、調製直後の粘度及びキュムラント平均粒径(nm)、45℃3日保存後の粘度、25℃1日保存後の粗大粒子数(個)を測定した。キュムラント平均粒径は、PMAで赤色顔料分散体を約1000倍に希釈し、粒度分布測定装置(大塚電子株式会社、nano SAQLA(登録商標))を用いて測定した。粗大粒子数は、以下の方法によって測定した。
【0070】
分散体/PMA=1/1(重量比)となるようにPMAを添加して希釈した。希釈液を、スピンコーター(ミカサ株式会社、スピンコーターMS-150A)を用い、膜厚が0.4±0.2μmとなるように回転数を調整しながら、厚さ1mm、100mm角のガラス板に塗布した。この塗板を90℃で2.5分間エアバスにて乾燥した。乾燥した塗板を、MX63(Olympus社、工業用顕微鏡)を用いて500倍透過にて観察し、WinRoof2015(三谷商事株式会社、画像解析・計測ソフトウェア)を使用して反射で5視野の画像写真を撮影した。撮影した写真を画像処理ソフト(Fiji)にて処理し、5視野合計の粗大粒子個数を求めた。なお、Fijiは、アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)が提供している画像処理ソフトImageJの1種である。
【0071】
(分散体No.14)
容器内に微細化されたC.I.Pigment Red 122を7.00重量部、誘導体1を3.00重量部、タープラス(登録商標)MD1100(固形分41重量%)を12.20重量部、溶剤としてPMAを17.80重量部投入した。φ0.8mmジルコニアビーズを160重量部投入し、ペイントシェイカーで30分間分散処理を行った。この分散処理液にPMA 10.00重量部を追加して希釈した。φ0.8mmジルコニアビーズを除去した分散処理液40.0重量部を、別の容器にφ0.1mmジルコニアビーズ160重量部と共に投入して、ペイントシェイカーで30分間分散処理を行った。PMA 21.53重量部を追加して希釈し、φ0.1mmジルコニアビーズを除去して分散体No.14を得た。
【0072】
(分散体No.15)
誘導体として誘導体2を3.00重量部使用する以外、すべて分散体No.14と同様にして、分散体No.15を調製した。
【0073】
(分散体No.16)
誘導体として誘導体5を3.00重量部使用する以外、すべて分散体No.14と同様にして、分散体No.16を調製した。
【0074】
(分散体No.17)
赤色顔料としてC.I.Pigment Red 177(CINIC社、SR3C-CF)を7.00重量部使用する以外、すべて分散体No.14と同様にして、分散体No.17を調製した。
【0075】
(分散体No.18)
誘導体として誘導体2を3.00重量部使用する以外、すべて分散体No.17と同様にして、分散体No.18を調製した。
【0076】
(分散体No.19)
赤色顔料として以下の方法で微細化したC.I.Pigment Red 254を7.00重量部使用する以外、すべて分散体No.14と同様にして、分散体No.19を調製した。
【0077】
(C.I.Pigment Red 254の微細化)
C.I.Pigment Red 254(BASF社、Irgazin(登録商標) Red L 3630)300重量部、無水硫酸ナトリウム3000重量部、ジエチレングリコール805重量部を双腕型ニーダー(株式会社井上製作所、5Lニーダー)に投入し、ニーダー内が50℃となるように温度調整しながら、6時間混練した。混練物を水12000重量部を貯水した温度調節可能なタンク内に移し、60℃で30分間撹拌後、35%塩酸でpHを2.3~2.5に調節して1時間分散した。内容物を濾過、水洗、乾燥及び粉砕し、微細化されたC.I.Pigment Red 254を得た。
【0078】
(分散体No.20)
誘導体として誘導体2を3.00重量部使用する以外、すべて分散体No.19と同様にして、分散体No.20を調製した。
【0079】
表2は、No.14~No.20の分散体の粘度、粘度変化率、キュムラント平均粒径(nm)、粗大粒子数(個)、及び粘度安定性/粗大粒子数に関する実用性判定を示す。粘度安定性/粗大粒子数に関する実用性判定は、45℃3日保存後の粘度変化率が0.80~1.20の範囲内であり、かつ、粗大粒子数が500個未満であれば「〇」とし、そうでない場合には「×」と判定した。粗大粒子数が多い赤色顔料分散体を用いてカラーフィルターを作製した場合、解像度の低下又は色ムラが生じるという不具合が起きやすい。
【0080】
【0081】
表2より3種類の赤色顔料と、分散剤としてタープラス(登録商標)MD1100をD/P比0.50で含有する赤色顔料分散体は、誘導体として誘導体1を使用した場合のみ、粘度安定性/粗大粒子数に関する実用性判定が「○」となることが確認された。
【0082】
タープラス(登録商標)MD1100は、酸価=85mgKOH/g、アミン価=0mgKOH/gで、酸性基としてカルボキシル基を有する。表1の結果も併せると、本発明の赤色顔料分散体に使用する分散剤としては、酸価が80mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であり、酸性基としてカルボキシル基を有する高分子分散剤が適していると考察された。
【0083】
誘導体については、誘導体1を使用した赤色顔料分散体のみ、粘度安定性及び粗大粒子数に関して実用性があると判断された。なお、実用性判定が「○」であった分散剤は、D/P比が0.45以上1.0以下、より好ましくは0.5以上0.8以下の範囲内であれば、実用性判定に影響がないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の赤色顔料分散体は、表示装置又はイメージセンサーに用いられるようなカラーフィルターの製造において有用である。