(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036620
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】ナノ粒子トランスデューサセンサおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230307BHJP
G01N 33/66 20060101ALI20230307BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20230307BHJP
C12N 11/08 20200101ALN20230307BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N33/66 C
G01N33/50 Z
C12N11/08
【審査請求】有
【請求項の数】52
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022194108
(22)【出願日】2022-12-05
(62)【分割の表示】P 2019516090の分割
【原出願日】2017-06-05
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/084986
(32)【優先日】2016-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】517075883
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワシントン
【氏名又は名称原語表記】University of Washington
【住所又は居所原語表記】4545 Roosevelt Way NE, Suite 400, Seattle, Washington 98105 US
(71)【出願人】
【識別番号】518431358
【氏名又は名称】ランプロジェン, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ティー. チウ
(72)【発明者】
【氏名】ジアンボ ユー
(72)【発明者】
【氏名】ウー チャンフェン
(72)【発明者】
【氏名】スン カイ
(57)【要約】
【課題】流体中の分析物濃度の検出のためのナノ粒子トランスデューサおよびその使用方法を提供すること。
【解決手段】ナノ粒子トランスデューサは、分析物との反応を触媒する酵素と結合したPdotなどのナノ粒子を含みうる。ナノ粒子トランスデューサは、反応の要素のうちの1つの濃度の関数として変動する蛍光を発する発色団をさらに含む。したがってナノ粒子トランスデューサは、分析物濃度の変化に伴って蛍光を変化させ、分析物濃度値を蛍光強度に変換する。これらの強度の測定により、分析物濃度の測定が行われる。ナノ粒子トランスデューサは生体適合性があるため、血中グルコース濃度など、分析物の血中濃度をモニタリングするためのin vivoでの使用が可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物濃度測定のためのナノ粒子トランスデューサであって、
縮合半導体発色団ポリマーを含む1つまたは複数の発色団を含むナノ粒子と、
前記ナノ粒子と結合し、かつ複数の反応要素を含む反応を触媒するように構成された酵素と
を含み、
前記反応要素が、前記分析物を含む1つまたは複数の反応物質と、1つまたは複数の生成物とを含み、前記発色団から発せられる蛍光量が、前記複数の反応要素のうちのある反応要素の濃度によって決定され、
前記1つまたは複数の発色団から発せられる前記蛍光が、シグナル蛍光波長および対照蛍光波長を含み、
前記1つまたは複数の発色団から発せられる前記蛍光が、前記シグナル波長において発せられる蛍光量の前記対照蛍光波長において発せられる蛍光量に対する比と等しい蛍光比を含み、前記蛍光比が、複数の反応要素のうちの前記反応要素の濃度によって決定され、
前記蛍光比が、前記分析物の濃度とレシオメトリックに変動し、
前記1つまたは複数の発色団のうちのある発色団が、前記1つまたは複数の発色団のうちの別の発色団に化学的に付着される、
ナノ粒子トランスデューサ。
【請求項2】
前記複数の反応要素のうちのある反応要素が酸素を含み、前記発色団から発せられる前記蛍光量が、前記酸素の濃度によって決定される、請求項1に記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項3】
前記分析物がグルコースを含む、請求項1~2のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項4】
前記酵素がグルコースオキシダーゼを含む、請求項1~3のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項5】
前記1つまたは複数の反応物質がグルコースおよび酸素を含み、前記1つまたは複数の生成物が過酸化水素およびD-グルコノ-1,5-ラクトンを含む、請求項1~4のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項6】
カタラーゼをさらに含む、請求項1~5のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項7】
前記発色団から発せられる前記蛍光量が、反応物質の濃度によって決定される、請求項1~6のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項8】
前記発色団から発せられる前記蛍光量が、生成物の濃度によって決定される、請求項1~7のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項9】
前記ナノ粒子がPdotを含む、請求項1~8のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項10】
前記酵素が前記ナノ粒子に共有結合している、請求項1~9のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項11】
前記発色団が半導体ポリマーを含む、請求項1~10のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項12】
前記発色団が色素を含み、前記色素が前記ナノ粒子中に含有されている、請求項1~11のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項13】
前記発色団が半導体ポリマーおよび色素を含み、前記色素および前記半導体ポリマーが相互作用して増強された蛍光を生成する、請求項1~12のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項14】
前記発色団から発せられる蛍光が、ある分析物濃度範囲内の前記分析物の濃度とレシオメトリックに変動する、請求項1~13のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項15】
前記分析物がグルコースであり、前記分析物濃度範囲が、グルコースの0から約20mMの間の範囲内である、請求項14に記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項16】
前記分析物濃度範囲が、約3mMのグルコース~約15mMのグルコースの範囲内である、請求項15に記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項17】
前記ナノ粒子が少なくとも20重量パーセントの発色団を含有する、請求項1~16のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項18】
前記ナノ粒子が少なくとも50重量パーセントの発色団を含有する、請求項1~17のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項19】
前記ナノ粒子が少なくとも90重量パーセントの発色団を含有する、請求項1~18のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項20】
前記ナノ粒子が約100重量パーセントの発色団を含む、請求項1~19のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項21】
前記ナノ粒子が、第2の分析物の蛍光検出のための第2の発色団を含み、
第2の酵素が前記ナノ粒子と結合し、かつ第2の複数の反応要素を含む第2の反応を触媒するように構成されており、
前記第2の複数の反応要素が、前記第2の分析物を含む第2の1つまたは複数の反応物質と、第2の1つまたは複数の生成物とを含み、前記第2の発色団から発せられる蛍光量が、前記第2の複数の反応要素のうちのある第2の反応要素の濃度によって決定され、
前記第2の発色団の前記蛍光が、他の発色団の蛍光とは異なる波長を含む、
請求項1~20のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項22】
第2の発色団を含む第2のナノ粒子と、
前記ナノ粒子と結合し、かつ第2の複数の反応要素を含む第2の反応を触媒するように構成された第2の酵素と
をさらに含み、
前記第2の複数の反応要素が、第2の分析物を含む第2の1つまたは複数の反応物質と、第2の1つまたは複数の生成物とを含み、前記第2の発色団から発せられる蛍光量が、前記第2の複数の反応要素のうちのある第2の反応要素の濃度によって決定される、
請求項1~21のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項23】
前記酵素が、アスコルビン酸オキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、ドーパミンベータ-ヒドロキシラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、およびチトクロムP450からなる群から選択される、請求項1~22のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項24】
前記分析物が、アスコルビン酸、グルタメート、ドーパミン、コレステロール、アルコールからなる群から選択される、請求項1~23のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項25】
前記分析物がアミノ酸である、請求項1~24のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項26】
前記分析物が薬物である、請求項1~24のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項27】
前記分析物が、タンパク質、核酸分子、または伝達物質分子である、請求項1~24のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項28】
前記分析物が、炭水化物、脂質、または代謝物である、請求項1~24のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項29】
前記分析物が糖である、請求項1~24のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項30】
分析物濃度が血中濃度である、請求項1~29のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項31】
複数の酵素を含み、前記複数の酵素が、それぞれの複数の反応要素をそれぞれが含むそれぞれの複数の反応を触媒し、前記分析物が、前記複数の反応のうちの1つの反応物質であり、前記発色団から発せられる前記蛍光が、前記反応のうちの少なくとも1つの反応要素の濃度によって決定される、請求項1~30のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項32】
前記ナノ粒子トランスデューサの臨界寸法が約1000nm未満である、請求項1~31のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項33】
前記ナノ粒子トランスデューサの臨界寸法が約100nm未満である、請求項1~32のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項34】
前記ナノ粒子トランスデューサの臨界寸法が約15~約45nmの範囲内である、請求項1~33のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
【請求項35】
生体液中の分析物の濃度を測定するための装置であって、請求項1~34のいずれかに記載の複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサを備え、
プロセッサおよびメモリに連結した光学センサと、
複数の蛍光ナノ粒子に光を照射することによってそれらから蛍光を誘導するように構成された照射源と
をさらに備え、
前記メモリが命令を含み、前記命令が実行されると、前記プロセッサは、前記光学センサを使用して、前記複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサにより発せられた蛍光を測定する、
装置。
【請求項36】
前記複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサが、患者の皮膚下に位置付けられるように適合されており、前記光学センサが、皮膚に面しているときに前記複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサにより前記皮膚を通して伝達される蛍光を検出するように適合されている、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
光学センサが、シグナル蛍光波長におけるシグナル蛍光量および対照蛍光波長における対照蛍光量を検出するように構成されており、前記メモリが、前記プロセッサに、シグナル蛍光および対照蛍光の前記測定量に基づいて測定蛍光比を決定させる命令を含む、請求項35または36に記載の装置。
【請求項38】
前記メモリが、前記プロセッサに、前記測定蛍光比に基づいて前記分析物の濃度を決定させる命令を含む、請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記生体液が、血液、リンパ、唾液、涙、間質液、髄液、または尿である、請求項35から38のいずれかに記載の装置。
【請求項40】
グルコース濃度の検出のためのコンタクトレンズであって、眼に装着可能な透過性のある透明な膜を備え、かつ、請求項1~34のいずれかに記載の複数のナノ粒子トランスデューサを含有し、前記ナノ粒子トランスデューサが、スキャナによる照射に応答して蛍光を生成するように構成されており、蛍光量が、眼の表面における流体中のグルコースの濃度の決定のために前記スキャナによって検出可能なシグナルをもたらす、コンタクトレンズ。
【請求項41】
前記レンズの前記膜が、装着時に人間の視力を矯正する形状をしている、請求項40に記載のコンタクトレンズ。
【請求項42】
対象の汗からグルコース濃度を測定するためのデバイスであって、
装着時に前記対象の皮膚に接触するように前記デバイスによって位置決めされる、請求項1~34のいずれかに記載の複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサと、
複数の蛍光ナノ粒子に光を照射することによってそれらから蛍光を誘導するように構成された照射源と、
前記デバイス内に配置され、かつ前記複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサからの蛍光を検出するように配向された光学センサと、
前記光学センサに連結し、かつ、前記光学センサによって検出された蛍光に基づいて、前記汗中のグルコースの濃度を決定するように構成されたプロセッサと
を備える、デバイス。
【請求項43】
前記プロセッサが、前記汗中のグルコースの前記濃度に基づいて血液中のグルコースの濃度を決定するようにさらに構成されている、請求項42に記載のデバイス。
【請求項44】
流体中の分析物濃度を決定する方法であって、
請求項1~34のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサに前記流体を接触させるステップと、
前記ナノ粒子トランスデューサの蛍光を測定するステップと、
測定された蛍光に基づいて、前記流体中の前記分析物の濃度を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項45】
前記決定するステップが、前記測定された蛍光を前記ナノ粒子トランスデューサの較正曲線と比較して前記流体中の前記分析物濃度を決定するステップを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記流体が、血液、汗、または涙である、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記測定するステップが、複数の蛍光波長を測定するステップを含み、前記決定するステップが、測定された波長の比に基づく、請求項44から46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
流体中の分析物の濃度を測定する方法であって、
前記流体をPdotに接触させるステップであって、前記Pdotが、縮合半導体発色団ポリマーを含む1つまたは複数の発色団および複数の反応要素を含む反応を触媒するように構成された酵素を含み、前記反応要素が、前記分析物を含む1つまたは複数の反応物質および1つまたは複数の生成物を含み、前記1つまたは複数の発色団から発せられる蛍光量が、前記複数の反応要素のうちのある反応要素の濃度によって決定され、前記1つまたは複数の発色団から発せられる蛍光が、シグナル蛍光波長および対照蛍光波長を含み、前記1つまたは複数の発色団から発せられる前記蛍光が、前記シグナル波長において発せられる蛍光量の前記対照蛍光波長において発せられる蛍光量に対する比と等しい蛍光比を含み、前記蛍光比が、前記複数の反応要素のうちの前記反応要素の濃度によって決定され、前記蛍光比が、前記分析物の濃度とレシオメトリックに変動し、前記1つまたは複数の発色団のうちのある発色団が、前記1つまたは複数の発色団のうちの別の発色団に化学的に付着される、ステップと、
前記1つまたは複数の発色団により発せられる前記蛍光を測定するステップと、
前記蛍光に基づいて前記流体中の前記分析物の濃度を決定するステップと
を含み、
前記分析物が前記流体中で反応を起こし、前記反応が前記流体構成要素の前記濃度を変化させる、方法。
【請求項49】
前記濃度の前記決定が、前記シグナル蛍光波長および対照蛍光波長における蛍光を測定すること、前記測定に基づいて測定蛍光比を決定すること、ならびに前記測定蛍光比に基づいて前記分析物の濃度を決定することを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記分析物がアスコルビン酸であり、前記流体構成要素が酸素である、請求項48から49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
決定された濃度が、アスコルビンの酸1mMから20mMの間である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記流体が、血液、汗、または涙である、請求項48から51のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年6月6日に出願された国際特許出願PCT/CN2016/084986号の利益を主張し、その全体の内容が参照により援用される。
【背景技術】
【0002】
流体構成成分の濃度の測定は、医学、生物医学研究、およびバイオテクノロジーにおいて重要である。例えば、患者の血液中の小分子を含む様々な分子の濃度をモニタリングすることが望ましい。実際に、小分子は、細胞シグナル伝達、酵素活性、および分子輸送などの様々な細胞プロセスに広く関与しているため、生命科学の全ての態様において極めて重要な役割を果たす。生物学および医学の進歩は、ヒト疾患に関係する膨大な数の小分子の特定につながっている。創薬において、小分子は、活性薬物の大きいが急成長しているライブラリを構成する。小分子はまた、生物学的機能を精査し、新興の治療剤を査定するための研究ツールとして広く使用されている。
【0003】
糖尿病などの慢性疾患の処置は、1つまたは複数の血液構成成分、例えばグルコースを連続的にモニタリングすることを必要とすることがあり、その濃度は、過剰に高いかまたは低いと危険でありうる。血液内容物の迅速かつ精確な測定は、こうした内容物の望ましくない変動の検出のほか、基礎状態のより効率的で応答性のある処置を可能にする。
【0004】
しかしながら、生体系における小分子の特異的で高感度の検出は極めて困難である。これまでの血中濃度のモニタリング方法の多くは、外部分析のために患者から血液を取り出すことを必要とし、結果として、患者コンプライアンスに依存する応答速度が不十分であったり、デバイスの移植の生体適合性が不十分であったり、血中濃度変化に対する精度および感度が不十分であったりする。例えば電気化学的トランスデューサには、応答障害および予測不可能なシグナルドリフトなどの解決困難な問題があり、かかるトランスデューサの移植電極の頻繁な交換を必要とする。ラマン技術などの光学技術も適用されてきた。しかしながら、一部の独特なラマンタグは、細胞の典型的なラマンサイレント領域においてシグナルを発生させることができるものの、小分子のラマンシグナルは弱い傾向にあり、優性の生物学的種による強力な重複によって容易に遮蔽されることがある。したがって、インタクトな小分子、例えばアミノ酸、糖、脂質、神経伝達物質、代謝物、および薬物分子をin vivoでリアルタイムに検出するのは極めて困難である。
【0005】
タンパク質または核酸鎖などの大分子の検出は、それらが多数あることから、さらに高い測定特異性を必要とし、さらに大きな問題が生じる。このような流体構成成分のin vivoでのリアルタイム検出は、概して実現困難であることが今までに分かっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、高い応答速度、特異性、および感度をもって流体構成成分の濃度をモニタリングするための改善されたセンサおよび方法が必要とされている。本開示は、この必要性およびそれを超える必要性に応える。
【0007】
本開示は、トランスデューサセンサ、およびこうしたセンサを使用して流体構成成分の濃度をモニタリングする方法を提供する。
【0008】
様々な態様では、本開示は、粒子特異的な濃度測定のためのナノ粒子トランスデューサを提供する。ナノ粒子トランスデューサは、発色団を含むナノ粒子と、酵素とを含む。酵素は、ナノ粒子と結合している。酵素は、反応を触媒するように構成されている。この反応は、1つまたは複数の反応物質および1つまたは複数の生成物を含む、複数の反応要素を含む。発色団は、複数の反応要素のうちのある反応要素の濃度によって決定された量の蛍光を発する。
【0009】
半導体ポリマードット(Pdot)は、新しいクラスの蛍光ナノ粒子として開発された。有機色素および蛍光タンパク質と比較して、Pdotは、数桁大きい輝度を有することができ、光退色に対する耐性が高い。例えば量子ドットと比較すると、Pdotは、輝度が1桁高いことがある。さらに、Pdotの寸法は、それらのスペクトル特性に影響を及ぼすことなく、数ナノメートルから数十ナノメートルまで調整することができる。サイズの小さなPdotは、大きなナノ粒子で標識するとタグ付けされた生体分子の自然な挙動が乱れうる状況において望ましい。小さなPdotは、込みあった細胞空間または細胞内空間においても有用である場合があり、このような空間で小さなPdotは、その浸透および分布をより良好に行うことができる。Pdotの表面特性およびバイオコンジュゲーションをコントロールするための様々なスキームが開発され、これらは、細胞表面および細胞下の標識のためのPdotの使用を提供している。加えて、pH、温度、酸素および過酸化水素などの小分子、ならびに鉄および銅などのイオンのためのものを含む、Pdotベースのレシオメトリックセンサが開発された。
【0010】
一部の態様では、本開示は、グルコース濃度の測定のためのPdotトランスデューサを提供する。Pdotトランスデューサは、酸素の濃度によって決定される蛍光を発する発色団を含むPdotを含む。グルコースオキシダーゼは、Pdotと結合している。グルコースオキシダーゼは、反応要素が関与する反応を触媒するように構成されている。反応要素は、反応物質としてのグルコースおよび酸素を含む。発色団は、第1の蛍光波長および第2の蛍光波長において蛍光を発する;第1の蛍光波長における蛍光量は、酸素濃度の関数として変動する。したがってPdotトランスデューサは、第1の蛍光波長における蛍光量の、第2の蛍光波長における蛍光量に対する比と等しい蛍光比を含み、蛍光比は、酸素濃度によって決定される。酸素濃度は、酵素により触媒されるグルコースとの反応に影響される;したがって蛍光比は、グルコース濃度の関数として変動し、これによりグルコース濃度の測定が行われる。
【0011】
様々な態様では、本開示は、流体中の分析物の濃度を決定する方法を提供する。本方法は、本明細書に記載されるナノ粒子トランスデューサに流体を接触させるステップと、ナノ粒子トランスデューサの蛍光を測定するステップとを含む。本方法は、測定された蛍光に基づいて流体中の分析物の濃度を決定するステップをさらに含む。
【0012】
様々な態様では、血液中の標的反応物質の濃度を測定するための装置が提供される。本装置は、複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサを備える。本装置は、プロセッサおよびメモリに連結した光学センサをさらに備える。メモリは命令を含み、命令が実行されると、プロセッサは、光学センサを使用して、複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサにより発せられた蛍光を測定するように構成される。蛍光ナノ粒子トランスデューサは、真皮下の位置で、対象の血液由来の流体と接触した状態で置くことができる。光学センサは、センサが皮膚に面しているときに複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサにより皮膚を通して伝達される蛍光を検出するように適合されていてよい。
【0013】
様々な態様では、本開示は、流体中の分析物の濃度を測定する方法を提供する。Pdotが流体中に供給される。Pdotは発色団を含み、発色団は、流体構成要素の濃度によって決定される量の蛍光を発する。分析物は流体中で反応を起こし、この反応が流体構成要素の濃度を変化させる。発色団により発せられた蛍光が測定され、流体中の分析物の濃度は、測定された蛍光に基づく。
【0014】
様々な態様では、血中グルコース濃度を所定範囲内に維持するためのインスリンの分注をトリガするフィードバックループを提供する、ナノ粒子トランスデューサを用いるグルコースセンサを備えた人工膵臓が提供される。一部の態様では、人工膵臓は移植型デバイスであり、一部の態様では、人工膵臓は、グルコース濃度の経皮的な光学検知のために、またインスリンの注射のために構成されている。人工膵臓は、グルコース感受性ナノ粒子トランスデューサと、照射源と、ナノ粒子発光波長における蛍光を検出するように適合された検出器とを備える。このデバイスは、測定された蛍光から血中グルコース濃度を決定するための、また、貯蔵チャンバからインスリンポンプを介した患者へのインスリンの分注を制御するためのプロセッサをさらに備える。検出器、プロセッサ、およびポンプは、任意選択でユーザ調節可能でありうる所定の濃度範囲内に血中グルコースレベルを維持するためのフィードバックループを提供する。一部の態様では、このデバイスは、測定されたグルコースレベルのログを時間の関数として記憶するメモリも備える。一部の態様では、このデバイスは、モバイルデバイスとの無線通信および/またはコンピュータネットワーク上での無線通信を可能にするトランスミッタを備える。一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサ、光学センサ、およびプロセッサはひとつに統合され、真皮下の位置で、複数のナノ粒子トランスデューサからの蛍光を検出するために、対象の血液由来の流体と接触した状態で置かれる。一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサと、検出器と、プロセッサとを真皮下の位置に備える統合デバイスは、モバイルデバイスと、かつ/またはコンピュータネットワーク上で、皮膚を通して無線通信を有することができる。
【0015】
本開示は、半導体ポリマードット(Pdot)などのナノ粒子に基づく光学的輝度が高いトランスデューサを使用した、分析物の高感度検出およびin vivo動的モニタリングを提供する。蛍光Pdotは、生物学的なイメージングおよび検知用途のための、輝度が高く用途の広いナノ粒子プラットフォームである。ある特定の態様では、酸素応答性Pdotは、生物学的環境において小分子基質の形態の分析物を高感度で検出するために、表面上で酸素消費酵素とコンジュゲートしている。ある特定の態様では、分析物はグルコースである。酵素反応速度定数および酸素拡散のFickの法則に基づいた、本明細書において開示される特定のグルコース感受性トランスデューサの分析的モデリングおよびシミュレーションは、異なる濃度の小分子が、典型的な組織中酸素濃度で十分に区別されうることを示す。マウスモデルにおける細胞内グルコース検出および血中グルコースの長期的なin vivo動的モニタリングを明示する実験結果も記載されている。酸素消費酵素の大きなライブラリ、ならびに好適な感受性の蛍光発色団を使用することができる好適な流体構成要素を消費または生成することが公知である他の酵素を考慮すると、このアプローチは、例えばアミノ酸、伝達物質(例えば神経伝達物質)、代謝物、および医薬を含む広範囲の小分子のin vivo検出のために一般化することができる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
分析物濃度測定のためのナノ粒子トランスデューサであって、
発色団を含むナノ粒子と、
前記ナノ粒子と結合し、かつ複数の反応要素を含む反応を触媒するように構成された酵素と
を含み、
前記反応要素が、前記分析物を含む1つまたは複数の反応物質と、1つまたは複数の生成物とを含み、前記発色団から発せられる蛍光量が、前記複数の反応要素のうちのある反応要素の濃度によって決定される、
ナノ粒子トランスデューサ。
(項目2)
前記複数の反応要素のうちのある反応要素が酸素を含み、前記発色団から発せられる前記蛍光量が、前記酸素の濃度によって決定される、項目1に記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目3)
前記分析物がグルコースを含む、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目4)
前記酵素がグルコースオキシダーゼを含む、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目5)
前記1つまたは複数の反応物質がグルコースおよび酸素を含み、前記1つまたは複数の生成物が過酸化水素およびD-グルコノ-1,5-ラクトンを含む、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目6)
カタラーゼをさらに含む、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目7)
前記発色団から発せられる前記蛍光量が、反応物質の濃度によって決定される、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目8)
前記発色団から発せられる前記蛍光量が、生成物の濃度によって決定される、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目9)
前記ナノ粒子がPdotを含む、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目10)
前記酵素が前記ナノ粒子に共有結合している、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目11)
前記発色団が半導体ポリマーを含む、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目12)
前記発色団が色素を含み、前記色素が前記ナノ粒子中に含有されている、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目13)
前記発色団が半導体ポリマーおよび色素を含み、前記色素および前記半導体ポリマーが相互作用して増強された蛍光を生成する、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目14)
前記発色団が、2種またはそれよりも多い半導体ポリマーのブレンドを含む、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目15)
前記発色団から発せられる前記蛍光が、シグナル蛍光波長および対照蛍光波長を含む、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目16)
前記発色団から発せられる前記蛍光が、前記シグナル波長において発せられる蛍光量の、前記対照蛍光波長において発せられる蛍光量に対する比と等しい蛍光比を含み、前記シグナル蛍光比が、前記複数の反応要素のうちの前記反応要素の濃度によって決定される、項目15に記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目17)
前記蛍光比が、前記分析物の濃度とレシオメトリックに変動する、項目16に記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目18)
前記発色団から発せられる蛍光が、ある分析物濃度範囲内の前記分析物の濃度とレシオメトリックに変動する、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目19)
前記分析物がグルコースであり、前記分析物濃度範囲が、グルコースの0から約20mMの間の範囲内である、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目20)
前記分析物濃度範囲が、約3mMのグルコース~約15mMのグルコースの範囲内である、項目19に記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目21)
前記ナノ粒子が少なくとも20重量パーセントの発色団を含有する、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目22)
前記ナノ粒子が少なくとも50重量パーセントの発色団を含有する、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目23)
前記ナノ粒子が少なくとも90重量パーセントの発色団を含有する、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目24)
前記ナノ粒子が約100重量パーセントの発色団を含む、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目25)
前記ナノ粒子が、第2の分析物の蛍光検出のための第2の発色団を含み、
第2の酵素が前記ナノ粒子と結合し、かつ第2の複数の反応要素を含む第2の反応を触媒するように構成されており、
前記第2の複数の反応要素が、前記第2の分析物を含む第2の1つまたは複数の反応物質と、第2の1つまたは複数の生成物とを含み、前記第2の発色団から発せられる蛍光量が、前記第2の複数の反応要素のうちのある第2の反応要素の濃度によって決定され、
前記第2の発色団の前記蛍光が、他の発色団の蛍光とは異なる波長を含む、
前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目26)
第2の発色団を含む第2のナノ粒子と、
前記ナノ粒子と結合し、かつ第2の複数の反応要素を含む第2の反応を触媒するように構成された第2の酵素と
をさらに含み、
前記第2の複数の反応要素が、第2の分析物を含む第2の1つまたは複数の反応物質と、第2の1つまたは複数の生成物とを含み、前記第2の発色団から発せられる蛍光量が、前記第2の複数の反応要素のうちのある第2の反応要素の濃度によって決定される、
前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目27)
前記酵素が、アスコルビン酸オキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、ドーパミンベータ-ヒドロキシラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、およびチトクロムP450からなる群から選択される、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目28)
前記分析物が、アスコルビン酸、グルタメート、ドーパミン、コレステロール、アルコールからなる群から選択される、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目29)
前記分析物がアミノ酸である、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目30)
前記分析物が薬物である、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目31)
前記分析物が、タンパク質、核酸分子、または伝達物質分子である、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目32)
前記分析物が、炭水化物、脂質、または代謝物である、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目33)
前記分析物が糖である、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目34)
分析物濃度が血中濃度である、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目35)
複数の酵素を含み、前記複数の酵素が、それぞれの複数の反応要素をそれぞれが含むそれぞれの複数の反応を触媒し、前記分析物が、前記複数の反応のうちの1つの反応物質であり、前記発色団から発せられる前記蛍光が、前記反応のうちの少なくとも1つの反応要素の濃度によって決定される、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。(項目36)
前記ナノ粒子トランスデューサの臨界寸法が約1000nm未満である、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目37)
前記ナノ粒子トランスデューサの臨界寸法が約100nm未満である、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目38)
前記ナノ粒子トランスデューサの臨界寸法が約15~約45nmの範囲内である、前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサ。
(項目39)
生体液中の分析物の濃度を測定するための装置であって、前記項目のいずれかに記載の複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサを備え、
プロセッサおよびメモリに連結した光学センサと、
複数の蛍光ナノ粒子に光を照射することによってそれらから蛍光を誘導するように構成された照射源と
をさらに備え、
前記メモリが命令を含み、前記命令が実行されると、前記プロセッサは、前記光学センサを使用して、前記複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサにより発せられた蛍光を測定する、
装置。
(項目40)
前記複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサが、患者の皮膚下に位置付けられるように適合されており、前記光学センサが、皮膚に面しているときに前記複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサにより前記皮膚を通して伝達される蛍光を検出するように適合されている、項目39に記載の装置。
(項目41)
光学センサが、シグナル蛍光波長におけるシグナル蛍光量および対照蛍光波長における対照蛍光量を検出するように構成されており、前記メモリが、前記プロセッサに、シグナル蛍光および対照蛍光の前記測定量に基づいて測定蛍光比を決定させる命令を含む、項目39または40に記載の装置。
(項目42)
前記メモリが、前記プロセッサに、前記測定蛍光比に基づいて前記分析物の濃度を決定させる命令を含む、項目41に記載の装置。
(項目43)
前記生体液が、血液、リンパ、唾液、涙、間質液、髄液、または尿である、項目39から42のいずれかに記載の装置。
(項目44)
グルコース濃度の検出のためのコンタクトレンズであって、眼に装着可能な透過性のある透明な膜を備え、かつ、前記項目のいずれかに記載の複数のナノ粒子トランスデューサを含有し、前記ナノ粒子トランスデューサが、スキャナによる照射に応答して蛍光を生成するように構成されており、蛍光量が、眼の表面における流体中のグルコースの濃度の決定のために前記スキャナによって検出可能なシグナルをもたらす、コンタクトレンズ。
(項目45)
前記レンズの前記膜が、装着時に人間の視力を矯正する形状をしている、項目44に記載のコンタクトレンズ。
(項目46)
対象の汗からグルコース濃度を測定するためのデバイスであって、
装着時に前記対象の皮膚に接触するように前記デバイスによって位置決めされる、前記項目のいずれかに記載の複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサと、
複数の蛍光ナノ粒子に光を照射することによってそれらから蛍光を誘導するように構成された照射源と、
前記デバイス内に配置され、かつ前記複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサからの蛍光を検出するように配向された光学センサと、
前記光学センサに連結し、かつ、前記光学センサによって検出された蛍光に基づいて、前記汗中のグルコースの濃度を決定するように構成されたプロセッサと
を備える、デバイス。
(項目47)
前記プロセッサが、前記汗中のグルコースの前記濃度に基づいて血液中のグルコースの濃度を決定するようにさらに構成されている、項目46に記載のデバイス。
(項目48)
流体中の分析物濃度を決定する方法であって、
前記項目のいずれかに記載のナノ粒子トランスデューサに前記流体を接触させるステップと、
前記ナノ粒子トランスデューサの蛍光を測定するステップと、
測定された蛍光に基づいて、前記流体中の前記分析物の濃度を決定するステップと
を含む、方法。
(項目49)
前記決定するステップが、前記測定された蛍光を前記ナノ粒子トランスデューサの較正曲線と比較して前記流体中の前記分析物濃度を決定するステップを含む、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記流体が、血液、汗、または涙である、項目48または49に記載の方法。
(項目51)
前記測定するステップが、複数の蛍光波長を測定するステップを含み、前記決定するステップが、測定された波長の比に基づく、項目48から50のいずれかに記載の方法。
(項目52)
流体中の分析物の濃度を測定する方法であって、
前記流体をPdotに接触させるステップであって、前記Pdotが発色団を含み、前記発色団が、流体構成要素の濃度によって決定される量の蛍光を発する、ステップと、
前記発色団により発せられる前記蛍光を測定するステップと、
前記蛍光に基づいて前記流体中の前記分析物の濃度を決定するステップと
を含み、
前記分析物が前記流体中で反応を起こし、前記反応が前記流体構成要素の前記濃度を変化させる、方法。
(項目53)
前記発色団から発せられる前記蛍光が、シグナル蛍光波長において発せられる蛍光量の、対照蛍光波長において発せられる蛍光量に対する比と等しい蛍光比を含み、前記蛍光比が、前記流体構成要素の前記濃度によって決定される、項目52に記載の方法。
(項目54)
前記濃度の前記決定が、前記シグナル蛍光波長および対照蛍光波長における蛍光を測定すること、前記測定に基づいて測定蛍光比を決定すること、ならびに前記測定蛍光比に基づいて前記分析物の濃度を決定することを含む、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記分析物がアスコルビン酸であり、前記流体構成要素が酸素である、項目52から54のいずれかに記載の方法。
(項目56)
決定された濃度が、アスコルビンの酸1mMから20mMの間である、項目55に記載の方法。
(項目57)
前記流体が、血液、汗、または涙である、項目52から56のいずれかに記載の方法。
【0016】
この概要は、以下の「発明を実施するための形態」においてさらに記載される選択された概念を簡略化した形態で紹介するために提供されるものである。この概要は、特許請求される主題の主要な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を決定する助けとして使用されることを意図するものでもない。
参照による組み込み
【0017】
本明細書において言及される公開文献、特許、および特許出願は全て、あたかも各個別の公開文献、特許、または特許出願が参照により組み込まれることが明確かつ個別に示されている場合と同じ程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0018】
本発明の新規の特徴は、添付の特許請求の範囲における特殊性をもって示される。本発明の特徴および利点のより深い理解は、本発明の原理が利用されている例示的な実施形態を示す以下の詳細な記載、および添付の図面を参照することによって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1-1】
図1A~
図1Hは、グルコースオキシダーゼで触媒した反応によるO
2変調シグナルを使用したグルコースの検出のための例証的なナノ粒子トランスデューサに関するシミュレーションしたO
2枯渇動態および分布プロファイルを例示する。
図1Aおよび
図1Bは、それぞれ、閉鎖キュベットおよび開放キュベットにおけるグルコース誘導性O
2枯渇動態を例示する。
図1Cは、開放キュベット構成のZ軸に沿った、5nMのGOxおよび20mMのグルコースを含むシステムでの時間的および空間的な酸素分布の3-Dプロットを例示する。
図1Dは、500秒の時点でのグルコース濃度の異なる開放キュベットにおける酸素分布プロファイルを例示する。
図1Eは、閉鎖した組織酸素環境におけるO
2枯渇動態を例示する。
図1Fは、酸素拡散ありの組織におけるO
2枯渇動態を例示する。
図1Gは、20秒の時点における酸素拡散ありの円形構成の2-Dマッピングを例示する。
図1Hは、20秒の時点における酸素拡散ありおよびなしでのグルコースの定量のための酸素枯渇の感度を例示する。
【0020】
【
図2-1】
図2A~
図2Dは、Pdot-GOxアセンブリを含むナノ粒子トランスデューサの調製および特徴付けを例示する。
図2Aは、in vivoでのグルコースモニタリングのためのPdot-GOxバイオコンジュゲートの形成の概略表現である。
図2Bは、裸のPdotおよびPdot-GOxの流体力学直径を例示する。
図2Cは、カルボキシルPdotおよびPdot-GOxのゼータ電位を例示する。
図2Dは、カルボキシルPdot(左)およびPdot-GOx(右)の代表的なTEM画像を例示する。
【0021】
【
図3】
図3A~
図3Dは、Pdotトランスデューサなどのナノ粒子トランスデューサのさらなる特性を例示する。
図3Aは、30日間にわたるPdot-GOxトランスデューサのコロイド安定性を例示する。
図3Bは、Pdot-GOxセンサのUV可視(vis)吸収スペクトルおよびフォトルミネセンススペクトルを示す。
図3Cは、ポリフルオレンナノ粒子(PDHF)の蛍光発光とリン光性色素(PtOEP)の吸収との間のスペクトルの重複を例示する。
図3Dは、380nmの励起波長を有するドープなしのPDHF PdotおよびPtOEPドープPdotの発光スペクトルを例示する。
【0022】
【
図4】
図4A~
図4Dは、Pdot-GOxナノ粒子トランスデューサの分光学的特性を例示する。
図4Aは、異なるグルコース濃度におけるPdot-GOxトランスデューサの発光スペクトルを示す。
図4Bは、グルコース濃度の関数としてのPdot-GOxトランスデューサのレシオメトリックな較正プロット(I
648/I
428)を示す。
図4Cは、水性懸濁液中のグルコースに対するPdot-GOxの応答曲線を例示する。
図4Dは、Pdot-GOxトランスデューサの、干渉する可能性のある炭水化物と比べたグルコースに対する選択性を例示する。
【0023】
【
図5】
図5Aおよび
図5Bは、低い濃度における検知のための、酵素で密にコーティングされたナノ粒子の使用を例示する。
図5Aは、様々なグルコース濃度における、GOxで密にコーティングされたPdotの発光スペクトルを例示する。
図5Bは、低分析範囲内のPdot-GOxのレシオメトリックな較正プロット(I
648/I
428)を示す。
【0024】
【
図6】
図6A~
図6Dは、Pdot-GOxトランスデューサを含む様々な材料で処置したHeLa細胞の細胞生存率を例示する。
図6A~
図6Cは、それぞれ、変動する濃度のPdot-GOxトランスデューサ、GOx、およびカタラーゼで処置した細胞の、24時間の細胞生存率を示す。
図6Dは、約1:6の比のPdot-GOxトランスデューサおよびカタラーゼの両方で処置した細胞を示す。
【0025】
【
図7】
図7A~
図7Cは、HeLa細胞における細胞内グルコース検知を例示する。
図7Aは、Pdot-GOxインキュベーションをしていない対照群としてのHeLa細胞を示し、
図7Bは、24時間にわたりPdot-GOxナノ粒子と共に糖不含培地でインキュベートした細胞を示し、
図7Cは、24時間にわたりPdot-GOxと共にインキュベートし、4時間にわたりグルコースを補充した細胞を示す。
【0026】
【
図8】
図8Aは、皮下にPdot-GOxトランスデューサを有するマウスの蛍光イメージングを例示する。
図8Aは、異なる濃度でPdot-GOxトランスデューサを3つの部位に注射したマウスの蛍光イメージングを例示する。
図8Bは、Pdot-GOxを注射した3つの異なる部位の蛍光強度を示す。
【0027】
【
図9】
図9は、ナノ粒子トランスデューサを皮下注射したマウスの室内光(上)およびUV(下)のもとでの画像を示す。
【0028】
【
図10-1】
図10A~
図10Dは、生きたマウスにおけるin vivoでの連続的なグルコースのモニタリングを例示する。
図10Aは、Pdot-GOxを注射された生きたマウスにおける、変動するグルコース濃度のin vivo蛍光イメージングを示す。
図10Bは、グルコースおよびインスリンの投与をしていない対照群のうちのある生きたマウスにおけるPdot-GOxのin vivo蛍光イメージングを示す。
図10Cは、生きたマウスに注射したPdot-GOxトランスデューサの蛍光強度および切断した尾の血液試料から測定したグルコース濃度を示す。
図10Dは、グルコースおよびインスリンの投与をしていない対照群における血中グルコース濃度に対するPdot-GOxの蛍光応答を示す。
【0029】
【
図11-1】
図11A~
図11Fは、長期のグルコースモニタリングおよびin vivo分布を例示する。
図11Aは、Pdot-GOxトランスデューサ(下)または滅菌リン酸緩衝食塩水(上)を皮下注射したマウスから切り出した臓器および皮膚組織の蛍光画像を示す。
図11Bは、注射したマウスおよび対照マウスから採取した臓器および組織中に分布したPdot-GOxの蛍光強度の数量化を示す(
*P<0.05)。
図11C~
図11Eは、それぞれ皮下投与の7日後、15日後、および30日後の血中グルコース濃度に応答する、注射されたPdot-GOxの蛍光強度を示す。
図11Fは、Pdot-GOxを注射したマウス(右)およびPBSを注射した対照群(左)から切り出した臓器切片のヘマトキシリンおよびエオシンによる染色を例示する。
【0030】
【
図12】
図12は、ナノ粒子トランスデューサ注射30日後のマウスの組織切片の組織化学的分析を示す。
【0031】
【0032】
【
図14】
図14Aは、小型蛍光光度計を用いたin vivoグルコース測定を示す。
図14Aは、Pdot-GOxを皮下注射したマウスのUV光(385nm)下での写真を示す。
図14Bは、385nmで励起した、生きたマウスに移植されたPdot-GOxトランスデューサの蛍光発光スペクトルの動態変化を例示する。
図14Cは、グルコースおよびインスリン注射後の、生きたマウスに移植されたPdot-GOxトランスデューサの強度比の変化(480nmに対して650nm)を示す。
【0033】
【
図15-1】
図15Aおよび
図15Bは、グルコースの検出のためのPdot-GOxトランスデューサにおける、do-PFO、10%のPdOEP、および10%のPSMAを含む発色団を有するナノ粒子トランスデューサからの蛍光発光を示す。
図15Aは、複数のグルコース濃度に対する発光スペクトルを示す。
図15Bは、0~約20mMの濃度範囲に対するグルコースを検出する前記トランスデューサの較正プロットを示し、その範囲全体にわたるレシオメトリックな応答曲線を示している。
図15Cは、測定されたグルコース濃度に実質的に重なる発光曲線を示すin vivoのマウス応答データを示す。
図15Dは、グルコースを与えたマウス(上の画像)およびグルコースを与えていない対照群(下の画像)の時間データを含む画像を示す。
【0034】
【
図16】
図16Aおよび
図16Bは、グルコースの検出のためのPdot-GOxトランスデューサにおける、PSMA、1%のPdOEP、および0.1%のクマリン1を含む発色団を有するナノ粒子トランスデューサからの蛍光発光を示す。
図16Aは、複数のグルコース濃度に対する発光スペクトルを示す。
図16Bは、0~約20mMの濃度範囲に対するグルコースを検出する前記トランスデューサの較正プロットを示し、レシオメトリックな応答曲線を示している。
【0035】
【
図17】
図17Aおよび
図17Bは、グルコースの検出のためのPdot-GOxトランスデューサにおける、PSMA、1%のPtOEPK、および0.1%のナイルレッドを含む発色団を有するナノ粒子トランスデューサからの蛍光発光を示す。
図17Aは、複数のグルコース濃度に対する発光スペクトルを示す。
図17Bは、0~約20mMの濃度範囲に対するグルコースを検出する前記トランスデューサの較正プロットを示し、レシオメトリックな応答曲線を示している。
【0036】
【
図18】
図18Aおよび
図18Bは、アスコルビン酸の検出のためのナノ粒子センサにおける、PDHF、10%のPtOEP、および10%のPSMAを含む発色団を有するナノ粒子トランスデューサからの蛍光発光を示す。
図18Aは、複数のアスコルビン酸濃度に対する発光スペクトルを示す。
図18Bは、約2~約20mMの濃度範囲に対するアスコルビン酸を検出する前記トランスデューサの較正プロットを示し、その範囲全体にわたるレシオメトリックな応答曲線を示している。
【0037】
【
図19】
図19Aおよび
図19Bは、ナノ粒子センサを使用した、生きたマウスにおけるin vivoでの連続的なアスコルビン酸のモニタリングを例示する。
図19Aは、異なる濃度のアスコルビン酸を投与した、生きたマウスに注射したナノ粒子センサの蛍光強度を例示する。
図19Bは、Pdotセンサを注射された生きたマウスにおける、変動するアスコルビン酸濃度のin vivo蛍光イメージングを示す。
【0038】
【
図20】
図20Aおよび
図20Bは、小型光学検出システムによるアスコルビン酸血中濃度のモニタリングを例示する。
図20Aは、385nmで励起した、生きたマウスに注射されたPdotの蛍光発光スペクトルの、アスコルビン酸の血中濃度に対する動態変化を示す。
図20Bは、アスコルビン酸の静脈内投与後のその血中濃度に対する蛍光強度の応答を時間の関数として示す。
【0039】
【
図21】
図21は、ナノ粒子-GOxアセンブリを含むH
2O
2ベースのナノ粒子トランスデューサのスペクトルの応答を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示は、概して、ナノ粒子トランスデューサを使用して流体中の分析物の濃度をモニタリングするための装置、組成物、システム、および方法に関する。多くの態様では、分析物は流体中の分子である。多くの態様では、流体は血液である;例えば、本明細書において開示される組成物、システム、および方法は、対象の血液中の、1つまたは複数の選択された分子の濃度をモニタリングするために有用である。多くの態様では、流体は涙である;例えば、本明細書において開示される組成物、システム、および方法は、対象の涙中の、1つまたは複数の選択された分子の濃度をモニタリングするために有用である。多くの態様では、流体は汗である;例えば、本明細書において開示される組成物、システム、および方法は、対象の汗中の、1つまたは複数の選択された分子の濃度をモニタリングするために有用である。多くの態様では、流体は唾液である;例えば、本明細書において開示される組成物、システム、および方法は、対象の唾液中の、1つまたは複数の選択された分子の濃度をモニタリングするために有用である。多くの態様では、流体はリンパ液である;例えば、本明細書において開示される組成物、システム、および方法は、対象のリンパ液中の、1つまたは複数の選択された分子の濃度をモニタリングするために有用である。多くの態様では、流体は髄液である;例えば、本明細書において開示される組成物、システム、および方法は、対象の髄液中の、1つまたは複数の選択された分子の濃度をモニタリングするために有用である。多くの態様では、流体は尿である;例えば、本明細書において開示される組成物、システム、および方法は、対象の尿中の、1つまたは複数の選択された分子の濃度をモニタリングするために有用である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ポリマードット」または「Pdot」という用語は、安定なミクロン未満のサイズの粒子、例えばナノ粒子を形成するように圧潰された、1種または複数種の半導体ポリマーを含む粒子構造を指す。一部の態様では、ポリマードットは、発光が例えば可視領域から近IR領域まで調整可能な、高度に蛍光性のナノ粒子である。ポリマードットは、例えば、光を吸収してから蛍光によって光を発することのできる、発色団ポリマーを含みうる。一部の実施形態では、ポリマードットは、少なくとも1種の縮合ポリマー、例えば半導体ポリマーを含む。1種を超える縮合ポリマー(例えば、1種を超える半導体ポリマー)を有するポリマードットの場合、縮合ポリマーは、同じ種類のポリマーであっても、異なる種類のポリマーであってもよい。例えば、Pdotは、半導体ポリマーおよび非半導体ポリマーの両方を含むことができる。
【0042】
選択された分析物をモニタリングするためのナノ粒子トランスデューサは、適切な選ばれた酵素、ナノ粒子、および発色団からアセンブルしてよい。酵素は、分析物の濃度が反応の速度に影響しうるように、分析物が関与する反応を触媒する酵素として選択することができる。この反応には、反応物質および生成物を含む複数の反応要素が関与しうる。酵素は、酵素に触媒される反応の各反応物質が、分析される流体中に存在するように、選択することができる。発色団は、発色団の蛍光が、酵素により触媒される反応の反応物質または生成物の濃度によって決定されるように、選択することができる。ナノ粒子は、酵素および発色団の両方がナノ粒子に組み込まれるように、またはナノ粒子とコンジュゲートするように、選択することができる。例えば、ナノ粒子をPdotとすることで、酵素がPdotと共有結合でき、発色団がPdotに組み込まれ、かつ/または共有結合できるようにしてもよい。場合により、発色団が、ナノ粒子の全てまたは実質的に全てを構成してもよい;例えば、場合によりPdotは、全体的にまたは実質的に全体的に、1つまたは複数の発色団からなっていてもよい。
【0043】
多くの態様では、次のように、可能性のある一式の酵素、発色団、およびナノ粒子から酵素、発色団、およびナノ粒子を選択してナノ粒子トランスデューサを作出し、所与の分析物を検出することができる。一式の酵素から、分析物が反応物質である反応を触媒するものを選択する。そのような各反応について、反応発生の結果として濃度が変化する(例えば、反応が起こるたびに反応物質の濃度が低下し、生成物の濃度が上昇する(可逆的反応の場合は、反応の逆転が反対の作用を引き起こす)ような)、他の反応要素を特定する。これらの反応要素から、各酵素について、一式の発色団から、反応生成物のうちの1つの濃度変化に応答してその蛍光量が変化する、対応する発色団を特定する。発色団がいずれも一致しなければ、その酵素を排除する。こうした残りの酵素/発色団ペアから、該当する1つのペアを選択し、それぞれが結合および/または組み込み可能なPdotなどのナノ粒子を選択することにより、ナノ粒子トランスデューサを構築する要素を選択する。異なる波長で発光し、いずれの反応要素に対する応答としてもその強度を変化させない第2の発色団を発色団のリストから選択して、対照発色団とすることができる。代替的に、最初に選択した発色団が、反応物質または生成物の濃度に応答して強度を変化させる波長と、強度を変化させない異なる波長との両方で蛍光を発する場合は、その単一の発色団を、それ自体の対照とすることができる。
【0044】
多くの態様では、本明細書に記載されるナノ粒子トランスデューサは、分析物が関与する反応を触媒する酵素を含む。この反応は、反応物質および生成物を含む反応要素を有し、そのうちの1つが分析物である。ナノ粒子は、光線の照射に応答して1つまたは複数の波長の蛍光を発する発色団を含む。波長のうちの少なくとも1つにおける蛍光量は、分析物以外の反応物質または生成物の分子の濃度に依存する。酵素およびナノ粒子の発色団は近接している;したがって、酵素により触媒される反応が反応物質を消費し、生成物を生成するにつれ、前記反応物質および生成物のそれぞれの濃度が変化し、反応物質の濃度は低下し、生成物の濃度は上昇する。高い濃度における分析物の存在は、濃度が低い場合よりも急速に反応を進行させるため、分析物の存在は、生成物の濃度を比較的高くし、反応物質の濃度を比較的低くする。発色団の蛍光量は反応物質または生成物のうちの1つに依存するため、発色団からの蛍光量は、反応が起こると他の反応要素の濃度が変化することにより、発色団の蛍光量に影響を及ぼす。したがって、酵素およびナノ粒子の発色団は、一緒にトランスデューサとして作用し、分析物濃度の変動を蛍光の変動に変換する。一部の態様では、トランスデューサの一波長発光の蛍光強度を使用して、分析物濃度を決定する。一部の態様では、トランスデューサの二波長発光の蛍光強度比を使用して、分析物濃度を決定する。この蛍光は、光学センサのシグナルから分析物の濃度を決定するための波長選択的様式で容易に測定することができる。
【0045】
一部の態様では、ナノ粒子は、光線の照射に応答して1つまたは複数の波長の蛍光を発する半導体ポリマーを含む。波長のうちの少なくとも1つにおける蛍光量は、分析物以外の反応物質または生成物の分子の濃度に依存する。場合により、ナノ粒子は、半導体ポリマーと、1つまたは複数の波長の蛍光を発する色素とを含む。色素は、ナノ粒子を形成するために、半導体ポリマーに物理的にドーピングしても、化学的に付着させてもよい。半導体ポリマーは、色素の蛍光強度を増強または増幅するように、色素へのエネルギー移動を有しうる。
【0046】
多くの態様では、本明細書に記載される流体は、対象の体内の流体、例えば、血液、汗、涙、リンパ液、髄液、尿、唾液、または体組織内の、もしくは体組織により分泌される、他の流体である。対象は動物であってよく、多くの態様では、対象はヒトである。
【0047】
本開示の様々な態様は、本明細書において提供されるナノ粒子トランスデューサを使用した分析物濃度の効率的かつ正確な測定に有利な特徴を有する発色団を提供する。かかる特徴の例としては、(1)トランスデューサシグナルの容易な検出および回復を可能にする高い輝度、(2)酵素により触媒される反応の反応要素に対する高い感度、(3)強力なエネルギーの適用を必要とせずにナノ粒子トランスデューサ蛍光が容易に誘導されうるような高い吸収断面積、(4)ナノ粒子トランスデューサがin vivoで長期間にわたり活性状態を保つことができるような良好な安定性(例えば熱安定性)、(5)場合によっては例えば経皮的に検出および判別することが可能な波長、ならびに/または(6)連続的な分析物のモニタリングに使用した場合の劣化を減少させる良好な耐疲労性が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の態様では、本開示において記載されるナノ粒子トランスデューサの発色団は、これらの特徴のうちの一部または全てを含む。
【0048】
例えば本開示は、一部の態様では、流体構成成分の濃度の関数として変動するピーク発光波長におけるシグナル蛍光発光強度を呈するナノ粒子トランスデューサを提供する。ナノ粒子トランスデューサはまた、流体構成成分の濃度に応答して実質的に変動しないピーク発光波長における異なる対照発光強度を有する発色団を含んでもよい。ある特定の態様では、ピーク発光波長は、約200ナノメートルから約300ナノメートル、約250ナノメートルから約350ナノメートル、約300ナノメートルから約400ナノメートル、約350ナノメートルから約450ナノメートル、約400ナノメートルから約500ナノメートル、約450ナノメートルから約550ナノメートル、約500ナノメートルから約600ナノメートル、約550ナノメートルから約650ナノメートル、約600ナノメートルから約700ナノメートル、約650ナノメートルから約750ナノメートル、約700ナノメートルから約800ナノメートル、約750ナノメートルから約850ナノメートル、約800ナノメートルから約900ナノメートル、約850ナノメートルから約950ナノメートル、約900ナノメートルから約1000ナノメートル、約950ナノメートルから約1050ナノメートル、約1000ナノメートルから約1100ナノメートル、約1150ナノメートルから約1250ナノメートル、または約1200ナノメートルから約1300ナノメートルの範囲内である。
【0049】
別の例として、本開示の一部の態様は、長期のin vivo分析物濃度モニタリングに十分な安定性を呈するナノ粒子トランスデューサを提供し、例えば、ナノ粒子トランスデューサは、実質的に劣化することなく長期間にわたって分析物濃度を安定に検出することが可能である。様々な態様では、ナノ粒子トランスデューサの安定性は、前記トランスデューサが交換の必要なく長期間にわたってin vivoで使用されうることを確実にするのに有利である。一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサの集団は、集団内のナノ粒子トランスデューサの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも99.95%が、分析物濃度の変動に応答して蛍光を変調する能力を指定された期間にわたって保持すれば、「安定」であると考えられる。一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサは、ナノ粒子トランスデューサの発光強度が、分析物濃度の変動を測定する能力を指定された期間にわたって保持すれば、「安定」であると考えられる。一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサは、絶対的な発光強度が著しく減少しうるとしても、2つの発光ピークの強度比が、分析物濃度の変動を測定する能力を指定された期間にわたって保持すれば、「安定」であると考えられる。一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサは、時定数(例えば、蛍光シグナル強度の1/eまで減衰するまでの時間)が、少なくとも約3時間、約6時間、約12時間、約24時間、約1日、約2日、約4日、約10日、約20日、約30日、約1か月、約2か月、約4か月、約6か月、約1年、またはそれよりも長ければ、安定であると考えられる。一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサは、指定された期間を通じて分析物の検出が確実に行われうるように十分なシグナル強度を維持する。
【0050】
本開示の一部の態様では、発色団の発光スペクトルは、他の発光源との重複を低減させるか、または最小限に抑えるために、ピーク発光波長における狭帯域発光特性を呈するように、選択またはデザインされる。例えば、ある特定の態様では、発色団は、約5ナノメートル、約10ナノメートル、約15ナノメートル、約20ナノメートル、約25ナノメートル、約30ナノメートル、約35ナノメートル、約40ナノメートル、約45ナノメートル、約50ナノメートル、約60ナノメートル、約70ナノメートル、約80ナノメートル、約90ナノメートル、または約100ナノメートル以下のピーク発光帯域幅(例えば、発光ピークの半値幅(FWHM))を有する。
発色団の組成
【0051】
色素、染料、タンパク質、ポリマー、ビーズ、粒子、またはそれらの組合せを含むがこれらに限定されない、様々な種類の発色団が、本開示の方法およびシステムと共に使用するのに好適である。一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサは、1つまたは複数の発色団(例えばフルオロフォア)を含む。本明細書に記載される発色団を使用して、様々な機構に従ってナノ粒子トランスデューサを生成することができる。一部の態様では、ナノ粒子は、光線の照射に応答して1つまたは複数の波長の蛍光を発する半導体ポリマーを含む。半導体ポリマーの蛍光量は、反応物質または生成物の分子の濃度に依存しうる。一部の態様では、ナノ粒子は、半導体ポリマーと、1つまたは複数の波長の蛍光を発する色素とを含む。色素の蛍光量は、反応物質または生成物の分子の濃度に依存する。色素は、ナノ粒子を形成するための半導体ポリマーに物理的にドーピングしても、化学的に付着させてもよい。発色団ポリマーは、色素の蛍光強度を増強または増幅するように、色素へのエネルギー移動を有しうる。
【0052】
一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサは、安定なミクロン未満のサイズの粒子に圧潰された、1種または複数種のポリマー(例えば、半導体ポリマー、非半導体ポリマー、またはそれらの組合せ)を含む、少なくとも1種の発色団の半導体ポリマー粒子(「ポリマードット」または「Pdot」としても公知)を含む。半導体ポリマー粒子は、他の種類の発色団と比較して、ある特定の態様では、いくつかの理由で有利である。すなわち、(1)半導体ポリマー粒子は極めて輝度が高く、量子ドットよりも輝度が最大で30倍高く、光安定性が非常に高い;(2)半導体ポリマー粒子は速い光子放出速度を有し、寿命はナノ秒未満であることが多く、そのため半導体ポリマー粒子は高速の光学検出によく適している;(3)半導体ポリマー粒子は良好な生体適合性を有し、量子ドットのように細胞傷害性重金属から構成されていない;(4)半導体ポリマー粒子は増幅されたエネルギー移動を呈するため、その蛍光発光は、例えば、エネルギー移動を介したフォトクロミック分子によって、良好に変調することができる。
【0053】
様々な構造および組成の発色団ポリマー粒子が、本明細書において提示される態様に適用可能である。本明細書において提供される発色団ポリマー粒子は、単一のポリマーからなるか、または代替的に、ポリマーのブレンドを含む。ある特定の態様では、ポリマーマトリックスを形成するように、1種または複数種のポリマーの圧潰、沈殿、および/または縮合が行われる。一部の態様では、発色団ポリマー粒子の特性は、構成成分ポリマーの構造および/または特性に依存する。したがって、ある特定の態様では、ポリマーの骨格(主鎖)、側鎖、末端単位、および置換基を変えることで、特定の特性が得られる。一部の態様では、発色団ポリマー粒子の光学特性は、ポリマー骨格(主鎖)の構造を変えることによって調整される。
【0054】
一部の態様では、本明細書において提供される発色団ポリマー粒子は、本明細書では発色団単位とも称される1つまたは複数の発色団を含む。ある特定の態様では、発色団は、ある特定の波長の光、例えばUV領域から近赤外領域までを吸収し、発光性である場合もあれば発光性でない場合もある。一部の態様では、発色団単位は、非局在化したパイ電子を有する構造単位、小型有機色素分子の単位、および/または金属錯体の単位を含むが、これらに限定されない。様々な態様では、発色団は、ポリマーマトリックスの一部であるか、または例えばブレンド、架橋などによってポリマーマトリックスに組み込まれている。一部の態様では、発色団ポリマーは半導体ポリマーである。
【0055】
ある特定の態様では、本開示の発色団ポリマー粒子は、1種または複数種の発色団ポリマーを含む。一部の態様では、発色団ポリマーは、例えばUVスペクトルから近赤外スペクトルまでの範囲のある特定の波長の光を吸収する、少なくとも一部分を含む。本開示による発色団ポリマーは、発光性である場合もあれば発光性でない場合もある。一部の態様では、発色団ポリマーは、1つまたは複数の発色団単位を含む。発色団ポリマーの例としては、非局在化したパイ電子を有する構造単位を含むポリマー(例えば半導体ポリマー)、小型有機色素分子の単位を含むポリマー、金属錯体の単位を含むポリマー、およびそれらの任意の組合せの単位を含むポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。一部の態様では、発色団単位は、ポリマー骨格に組み込まれている。一部の態様では、発色団単位は、ポリマーの側鎖または末端単位に共有結合的に付着している。発色団ポリマーは、ある特定の態様では、当技術分野で一般に周知の標準的な合成方法を使用して作製される。
【0056】
様々な種類の発色団ポリマー粒子が、本開示の光学的マーキングアプローチのためのプラットフォームとして使用するのに好適である。発色団ポリマー粒子は、均一で均質な組成を有するモノリシックなポリマー粒子、または明確に異なるコアおよびキャップ構造を有するポリマー粒子を含むがこれらに限定されない、種々の構成を採ることができる。本明細書において提供される発色団ポリマー粒子は、限定されないが、沈殿に依拠する方法、エマルジョン(例えばミニエマルジョンまたはマイクロエマルジョン)の形成に依拠する方法、および縮合に依拠する方法を含む、当技術分野で公知のいかなる方法によって形成されてもよい。本明細書に記載される技術において使用するのに好適な発色団ポリマー粒子の例は、例えば、PCT出願第PCT/US2010/056079号、同第PCT/US2012/071767号、同第PCT/US2011/056768号、同第PCT/US2013/024300号、および同第PCT/US2013/063917号、ならびに米国特許公開第2013/0266957号に見出すことができ、これらはそれぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
一部の態様では、発色団ポリマー粒子はナノ粒子である。一部の態様では、本明細書において提供されるナノ粒子のサイズは、ナノ粒子の最小の寸法を指す「臨界寸法」の点から定義される。一部のナノ粒子はほぼ球状の形状であり、その結果、臨界寸法は球状粒子の直径となる。一部の態様では、ナノスフェアおよびナノキューブなど、ある特定のナノ粒子は、完全にナノスコピックなサイズである。一部の態様では、ナノ粒子の全ての寸法がナノスケールであるとは限らない。例えば、ナノシリンダーは、ナノスケールの直径だがミクロスケールの長さを有する場合がある。本明細書に記載される態様には、球体、円柱、楕円体、多面体、プリズム、ロッド、ワイヤ、またはそれらの組合せを含むがこれらに限定されない、多種多様なナノ粒子の形状が適用可能である。当業者には察知されるように、ある特定の態様では、ナノ粒子の形状は光学特性に寄与する(例えば、ナノロッドはナノスフェアとは異なる光学特性を有しうる)。
【0058】
一部の態様では、発色団ポリマー粒子の典型的なサイズは、100ナノメートル未満である。ある特定の態様では、コロイド状ポリマーナノ粒子が、疎液性ポリマーの内部から構成される。任意選択で、多価電解質をナノ粒子に形成することもできる。ある特定の態様では、発色団ポリマー粒子は、安定な粒子に形成された少なくとも1種の発色団ポリマーを含む。粒径は、例えば5ナノメートルから500ナノメートルまで様々でありうる。一部の態様では、粒子の臨界寸法(例えば直径)は、1,000ナノメートル未満、700ナノメートル未満、500ナノメートル未満、400ナノメートル未満、300ナノメートル未満、200ナノメートル未満、100ナノメートル未満、50ナノメートル未満、40ナノメートル未満である。一部の態様では、粒子の臨界寸法は、30ナノメートル未満、20ナノメートル未満、または10ナノメートル未満である。
【0059】
一部の態様では、本明細書に記載される発色団ポリマー粒子は、1種または複数種の発色団ポリマーから形成されたポリマーマトリックスを含む。発色団ポリマーの種類の任意の好適な数および組合せ、例えば、1種もしくは複数種の発色団ポリマー、2種もしくはそれよりも多い発色団ポリマー、3種もしくはそれよりも多い発色団ポリマー、4種もしくはそれよりも多い発色団ポリマー、5種もしくはそれよりも多い発色団ポリマー、6種もしくはそれよりも多い発色団ポリマー、7種もしくはそれよりも多い発色団ポリマー、8種もしくはそれよりも多い発色団ポリマー、9種もしくはそれよりも多い発色団ポリマー、10種もしくはそれよりも多い発色団ポリマー、50種もしくはそれよりも多い発色団ポリマー、または100種もしくはそれよりも多い発色団ポリマーを、本明細書に記載される発色団ポリマー粒子に組み込むことができる。発色団ポリマー粒子質量全体と比べた発色団ポリマーの質量濃度は、1%~99%、10%~99%、20%~99%、30%~99%、40%~99%、または50%~99%と様々であってよい。
【0060】
様々な種類および組成の発色団ポリマーが、本開示の態様に従った使用に適用可能である。発色団ポリマーは、ホモポリマーであってもヘテロポリマーであってもよい。様々な態様では、発色団ポリマーは、半導体ポリマー、非半導体ポリマー、またはそれらの組合せである。例えば、いくつかの半導体ポリマーが、本開示による発色団ポリマー粒子に使用するのに好適である。半導体ポリマーの例としては、ポリ(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)(PDHF)系およびポリ(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)(PFO)系を含むがこれらに限定されない、ポリフルオレン系ポリマー;ポリ[{9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレン-フルオレニレン}-alt-co-{2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン}](PFPV)系、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(1,4-ベンゾ-{2,1,3}-チアジアゾール)](PFBT)系、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,7-ジ-2-チエニル-2,1,3-ベンゾチアジアゾール)](PFTBT)系、およびポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,7-ジ-2-チエニル-2,1,3-ベンゾチアジアゾール)](PF-0.1TBT)系を含むがこれらに限定されない、フルオレン系コポリマー;ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](MEH-PPV)系およびポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-(1-シアノビニレン-1,4-フェニレン)](CN-PPV)系半導体ポリマーを含むがこれらに限定されない、フェニレンビニレンポリマー;ポリ(2,5-ジ(3’,7’-ジメチルオクチル)フェニレン-1,4-エチニレン(PPE)系半導体ポリマーを含むがこれに限定されない、フェニレンエチニレン系ポリマー;BODIPY系半導体ポリマー;スクアライン系半導体ポリマー;またはそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
多種多様な発色団ポリマー構造が、本開示の様々な態様に従った使用に好適である。一部の態様では、発色団ポリマーは直鎖状ポリマーである。他の態様では、発色団ポリマーは分枝状ポリマーである。ある特定の態様では、発色団ポリマーはデンドリマーである。ある特定の態様では、発色団ポリマーはブラシポリマーである。ある特定の態様では、発色団ポリマーは星型ポリマーである。
【0062】
一部の態様では、本明細書に記載される発色団ポリマー粒子は、ポリスチレン系の櫛型ポリマーを含有する。ポリスチレン系の櫛型ポリマーの非限定的な例としては、ポリスチレングラフトアクリル酸、ポリスチレングラフトエチレンオキシド、ポリスチレングラフトブチルアルコールなどが挙げられる。一部の態様では、本明細書に記載される発色団ポリマー粒子は、ポリ(メチルメタクリレート)系の櫛型ポリマーを含有する。ポリ(メチルメタクリレート)系の櫛型ポリマーの非限定的な例としては、ポリ(メチルメタクリレート)グラフトアクリル酸、ポリ(メチルメタクリレート)グラフトエチレンオキシドなどが挙げられる。一部の態様では、本明細書に記載される発色団ポリマー粒子は、カルボキシル基、アミン基、チオール基、エステル基、スクシンイミジルエステル基、アジド基、アルキン基、シクロオクチン基、またはホスフィン基を含む櫛型ポリマーを含有する。
【0063】
一部の態様では、本明細書に記載される発色団ポリマー粒子は、例えばカルボキシル基、アミン基、チオール基、エステル基、スクシンイミジルエステル基、アジド基、アルキン基、シクロオクチン基、ホスフィン基、または同様の官能基で末端モノマー単位に官能基をもたせたポリマーを含有する。そのようなポリマーの例としては、ポリ(メタ)アクリレートポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、ポリイソブチレン、ポリジエン、ポリフェニレン、ポリエチレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリウレタン、それらのブロックコポリマー、それらのランダムコポリマーまたは交互コポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
一部の態様では、本明細書に記載される発色団ポリマー粒子は、官能基をもたせた1つまたは複数のモノマー単位を有するコポリマー、例えば、ポリ((メタ)アクリル酸)系コポリマー、例えば、ポリ(アクリル酸-b-アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸-b-メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸-b-N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(n-ブチルアクリレート-b-アクリル酸)、ポリ(アクリル酸ナトリウム-b-メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸-b-ネオペンチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート-b-アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリレート-b-メタクリル酸)、ポリ(メチルメタクリレート-b-N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(メチルメタクリレート-b-アクリル酸ナトリウム)、ポリ(メチルメタクリレート-b-メタクリル酸ナトリウム)、ポリ(ネオペンチルメタクリレート-b-メタクリル酸)、ポリ(t-ブチルメタクリレート-b-エチレンオキシド)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸-b-アクリル酸);ポリジエン系コポリマー、例えば、ポリ(ブタジエン(1,2付加)-b-エチレンオキシド)、ポリ(ブタジエン(1,2付加)-b-メチルアクリル酸、ポリ(ブタジエン(1,4付加)-b-アクリル酸)、ポリ(ブタジエン(1,4付加)-b-エチレンオキシド、ポリ(ブタジエン(1,4付加)-b-アクリル酸ナトリウム)、ポリ(ブタジエン(1,4付加)-b-N-メチル4-ビニルピリジニウムヨージド)、ポリ(イソプレン-b-エチレンオキシド)、ポリ(イソプレン-b-エチレンオキシド)、およびポリ(イソプレン-b-N-メチル2-ビニルピリジニウムヨージド);ポリ(エチレンオキシド)系コポリマー、例えば、ポリ(エチレンオキシド-b-アクリル酸)、ポリ(エチレンオキシド-b-アクリルアミド)、ポリ(エチレンオキシド-b-ブチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド-b-c-カプロラクトン)、ポリ(エチレンオキシド-b-ラクチド)、ポリ(エチレンオキシド-b-ラクチド)、ポリ(エチレンオキシド-b-メタクリル酸)、ポリ(エチレンオキシド-b-メチルアクリレート)、ポリ(エチレンオキシド-b-N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(エチレンオキシド-b-メチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド-b-ニトロベンジルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド-b-N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド-b-プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド-b-t-ブチルアクリレート)、ポリ(エチレンオキシド-b-t-ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド-b-テトラヒドロフルフリルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド-b-2-エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド-b-2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド-b-2-メチルオキサゾリン);ポリイソブチレン系コポリマー、例えば、ポリ(イソブチレン-b-アクリル酸)、ポリ(イソブチレン-b-エチレンオキシド)、ポリ(イソブチレン-b-メタクリル酸);ポリスチレン系コポリマー、例えば、ポリ(スチレン-b-アクリルアミド)、ポリ(スチレン-b-アクリル酸)、ポリ(スチレン-b-セシウムアクリレート)、ポリ(スチレン-b-エチレンオキシド)、ブロック接合部で切断可能なポリ(スチレン-b-エチレンオキシド)酸、ポリ(スチレン-b-メタクリル酸)、ポリ(4-スチレンスルホン酸-b-エチレンオキシド)、ポリ(スチレンスルホン酸-b-メチルブチレン)、ポリ(スチレン-b-N,N-ジメチルアクリルアミド)、ポリ(スチレン-b-N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(スチレン-b-N-メチル2-ビニルピリジニウムヨージド)、ポリ(スチレン-b-N-メチル-4-ビニルピリジニウムヨージド)、ポリ(スチレン-b-プロピルアクリル酸)、ポリ(スチレン-b-アクリル酸ナトリウム)ポリ(スチレン-b-メタクリル酸ナトリウム)、ポリ(p-クロロメチルスチレン-b-アクリルアミド)(polyp-chloromethyl styrene-b-acrylamide))、ポリ(スチレン-co-p-クロロメチルスチレン-b-アクリルアミド)、ポリ(スチレン-co-p-クロロメチルスチレン-b-アクリル酸)、ポリ(スチレン-b-メチルブチレン-co-イソプレンスルホネート);ポリシロキサン系コポリマー、例えば、ポリ(ジメチルシロキサン-b-アクリル酸)、ポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)、ポリ(ジメチルシロキサン-b-メタクリル酸);ポリ(フェロセニルジメチルシラン)系コポリマー、例えば、ポリ(フェロセニルジメチルシラン-b-エチレンオキシド);ポリ(2-ビニルナフタレン)系コポリマー、例えば、ポリ(2-ビニルナフタレン-b-アクリル酸)、ポリ(ビニルピリジンおよびN-メチルビニルピリジニウムヨージド)系コポリマー、例えば、ポリ(2-ビニルピリジン-b-エチレンオキシド)、ポリ(2-ビニルピリジン-b-メチルアクリル酸)、ポリ(N-メチル2-ビニルピリジニウムヨージド-b-エチレンオキシド)、ポリ(N-メチル4-ビニルピリジニウムヨージド-b-メチルメタクリレート)、ポリ(4-ビニルピリジン-b-エチレンオキシド)PEO末端官能化OH;ならびにポリ(ビニルピロリドン)系コポリマー、例えば、ポリ(ビニルピロリドン-b-D/L-ラクチド)などを含むがこれらに限定されない、両親媒性ポリマーを含有する。
【0065】
本開示の一部の態様では、本明細書において提供される発色団ポリマー粒子は、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-(1-シアノビニレン-1,4-フェニレン)]としても公知のポリマーであるCN-PPVを含み、これは、高輝度でコンパクトな橙色を発光する半導体ポリマー粒子である。ある特定の態様では、CN-PPVは、大きな吸収断面積、高い量子収率、および速い発光速度など、優れた蛍光特性を有する。一部の態様では、発色団ポリマー粒子は、CN-PPVから本質的になるポリマーを含む。一部の態様では、粒子は、CN-PPVおよび少なくとも1つの他の材料を含む。例えば、CN-PPVは、さらなる機能性をもたらすコポリマーまたは他の材料と混合することができる。
【0066】
一部の態様では、本開示の発色団ポリマー粒子は、少なくとも2つの異なる発色団単位を有する半導体コポリマーを含む。例えば、コンジュゲートコポリマーは、所与の比で存在するフルオレンおよびベンゾチアゾールの両方の発色団単位を含有することができる。半導体コポリマーを合成するために使用される典型的な発色団単位としては、フルオレン単位、フェニレンビニレン単位、フェニレン単位、フェニレンエチニレン単位、ベンゾチアゾール単位、チオフェン単位、カルバゾールフルオレン単位、ホウ素-ジピロメテン単位、およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。異なる発色団単位は、ブロックコポリマーにおけるように分離していてもよいし、または混ざり合っていてもよい。一部の態様では、発色団コポリマーは、主要な発色団種の同一性を記載することによって表される。例えば、PFBTは、ある特定の比でフルオレン単位およびベンゾチアゾール単位を含有する発色団ポリマーである。場合により、微量の発色団種の百分率の次に微量の発色団種の同一性を示すために、ダッシュが使用される。例えば、PF-0.1 BTは、90%のポリフルオレン(PF)および10%のベンゾチアゾール(BT)を含有する発色団コポリマーである。
【0067】
ある特定の態様では、発色団ポリマー粒子は、半導体ポリマーのブレンドを含む。ブレンドは、ホモポリマー、コポリマー、およびオリゴマーの任意の組合せを含みうる。発色団ポリマー粒子を形成するために使用されるポリマーブレンドは、結果として得られるポリマー粒子の特性を調整するように、例えば、ポリマー粒子の所望される励起スペクトルまたは発光スペクトルが達成されるように、選択することができる。
【0068】
本開示の様々な態様では、半導体発色団ポリマー粒子が改善された検出感度を提示するのは、ひとつには、それらが他の蛍光レポーターよりも高い量子収率を呈するからである。一部の態様では、使用される発色団ポリマー粒子の量子収率は、5%超、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、80%超、または90%超である。様々な態様では、半導体発色団ポリマー粒子が改善された検出感度を提示するのは、ひとつには、それらが大きな吸収断面積を呈するからである。様々な態様では、半導体発色団ポリマー粒子が改善された検出感度を提示するのは、ひとつには、それらが他の蛍光レポーターよりも速い発光速度を呈するからである。ある特定の態様では、使用される発色団ポリマー粒子の発光速度は、約100ピコ秒から約50ナノ秒の間である。
【0069】
一部の態様では、本明細書における発色団ポリマー粒子は、小型有機色素分子、金属錯体、フォトクロミック色素、およびそれらの任意の組合せの単位を有するポリマー、例えば、小型有機色素、金属錯体、フォトクロミック色素、またはそれらの任意の組合せと共有結合的に連結またはグラフトしたポリスチレンなどの光学不活性ポリマーを含む。一部の態様では、発色団ポリマー粒子は、発光単位としての小型有機色素分子、金属錯体、フォトクロミック色素、またはそれらの任意の組合せと共有結合的に連結した半導体ポリマーを含む。そのような発光単位は、発光色を調整し、量子収率を増加させ、発色団ポリマー粒子の光安定性を改善することができる。一部の態様では、小型有機色素または金属錯体は検知機能を有し、したがって発色団ポリマー粒子にタンパク質検知能力などのさらなる機能性を付加する。
【0070】
一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサは、1つまたは複数の発色団(例えばフルオロフォア)を含む。発色団は、流体構成成分に依存する蛍光を発する。一部の態様では、流体構成成分は、ナノ粒子トランスデューサの酵素により触媒される反応の反応要素であり、この反応には分析物が関与する。場合により、流体構成成分は、反応の生成物である;場合により、流体構成成分は、反応の反応物質である。一部の態様では、反応速度は分析物濃度の関数として変動し、これにより流体構成成分の濃度が変化し、それに従ってトランスデューサの蛍光を変動させる。
【0071】
一部の態様では、発色団は色素を含む。一部の態様では、色素は、1つまたは複数の流体構成成分に対して感受性がある。一部の態様では、色素は、酸素に対して感受性がある。本明細書において開示されるナノ粒子トランスデューサで使用することのできる酸素感受性色素の例としては、Pt(II)-ポルフィリンおよびPd(II)-ポルフィリン、リン光性のRu(II)錯体、ならびにIr(III)錯体が挙げられる。酸素感受性色素の例としては、Pt(II)オクタエチルポルフィン(PtOEP)、Pt(II)メソ-テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィン(PtTFPP)、Pt(II)オクタエチルポルフィンケトン(PtOEPK)、Pd(II)オクタエチルポルフィン(PdOEP)、およびPd(II)メソ-テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィン(PdTFPP)、Pd(II)-メソ-テトラ-(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(PdTPCPP)、Pd(II)-メソ-テトラ-(4-カルボキシフェニル)テトラベンゾポルフィリンデンドリマー(PdTCPTBP)、Pt(II)-コプロポルフィリン(PtCP)、Pt(II)-メソ-テトラベンゾポルフィリンブチルオクタエステル(PtTBP)、Pt(II)-コプロポルフィリン-ケトン(PtCPK)、シクロメタル化Ir(III)l-クロロ-架橋二量体クマリン錯体(Ir(III)(Cx)2(acac))、および[Ru(bpy)2(2-(4-カルボキシフェニル)イミダゾ-[4,5-f][1,10]フェナントロリン)H2)]2+([Ru(bpy)2(picH2)]2+)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
一部の態様では、発色団は、イオン、pH、および温度に対して感受性のある色素を含む。ナノ粒子トランスデューサを構築するための色素の例としては、ナトリウム感受性色素、カリウム感受性色素、カルシウム感受性色素、マグネシウム感受性色素、鉄感受性色素、亜鉛感受性色素、銅感受性色素、マンガン感受性色素、pH感受性色素、温度感受性色素が挙げられる。イオン、pH、および温度に対して感受性のある発色団を含むナノ粒子は、例えば、PCT/US2010/056079に記載されているものを含む。
【0073】
一部の態様では、発色団は、1つまたは複数の流体構成成分に対して感受性のある半導体発色団ポリマーを含む。半導体ポリマーは、1つまたは複数の流体構成成分に対して感受性のある蛍光を有するようにデザインし、合成することができる。一部の態様では、半導体発色団ポリマーは、酸素に対して感受性がある。酸素感受性の半導体発色団ポリマーを合成する方策の例としては、半導体ポリマー骨格への酸素感受性単位の組み込み、または半導体ポリマーの側鎖への酸素感受性単位の付着が挙げられる。酸素感受性単位を付着させることのできる半導体発色団ポリマーの例としては、ポリ(9,9-ジヘキシルフルオレン)(PDHF)系、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン)(PFO)系、ポリ{[9,9-ジ-(3-(3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル-co-[9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル]}(do-PFO)系、ポリ[{9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレン-フルオレニレン}-alt-co-{2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン}](PFPV)系、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(1,4-ベンゾ-{2,1,3}-チアジアゾール)](PFBT)系、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,7-ジ-2-チエニル-2,1,3-ベンゾチアジアゾール)](PFTBT)系、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](MEH-PPV)系、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-(1-シアノビニレン-1,4-フェニレン)](CN-PPV)系を含むがこれらに限定されない、フェニレンビニレンポリマー、ポリ(2,5-ジ(3’,7’-ジメチルオクチル)フェニレン-1,4-エチニレン(PPE)系、BODIPY系、およびスクアライン系半導体ポリマーが挙げられる。
【0074】
一部の態様では、発色団は、過酸化水素(H2O2)の濃度に依存する蛍光を発する。過酸化水素は、生成物の反応要素でありうる。一部の態様では、ナノ粒子は、過酸化水素の濃度に依存する蛍光を発する発色団ポリマーを含む。一部の態様では、ナノ粒子は、発色団ポリマーと、1つまたは複数の波長の蛍光を発する色素とを含む。色素の蛍光量は、過酸化水素の濃度に依存しうる。色素は、例えばナノ粒子を形成するための発色団ポリマーに物理的にドーピングしても、化学的に付着させてもよい。発色団ポリマーは、色素の蛍光強度を増強または増幅するように、発色団ポリマーと色素との間でのエネルギー移動を有しうる。本明細書において開示されるナノ粒子トランスデューサで使用することのできる過酸化水素感受性色素の例としては、クマリン誘導体、フルオレセイン誘導体、ローダミン誘導体、シアニン誘導体、ホウ素-ジピロメテン(BODIPY)誘導体が挙げられる。
【0075】
一部の態様では、発色団は色素および半導体発色団ポリマーを含み、色素および半導体ポリマーが相互作用して増強された蛍光を生成する。一部の態様では、半導体ポリマーは、流体構成成分に対して感受性がない;このようなポリマーからの蛍光は安定な内部標準を提供し得るため、他の波長における可変蛍光のシグナルのための対照として機能することができる。半導体発色団ポリマーは、色素の蛍光を増幅および増強するように、色素へのエネルギー移動を有しうる。本明細書において開示されるナノ粒子トランスデューサで使用することのできる半導体発色団ポリマーの例としては、ポリ(9,9-ジヘキシルフルオレン)(PDHF)系、ポリ(9,9-ジオクチルフルオレン)(PFO)系、およびポリ{[9,9-ジ-(3-(3-メチルオキセタン-3-イル)メトキシ)ヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル-co-[9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル]}(do-PFO)系、ポリ[{9,9-ジオクチル-2,7-ジビニレン-フルオレニレン}-alt-co-{2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレン}](PFPV)系、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(1,4-ベンゾ-{2,1,3}-チアジアゾール)](PFBT)系、ポリ[(9,9-ジオクチルフルオレニル-2,7-ジイル)-co-(4,7-ジ-2-チエニル-2,1,3-ベンゾチアジアゾール)](PFTBT)系、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン](MEH-PPV)系、ポリ[2-メトキシ-5-(2-エチルヘキシルオキシ)-1,4-(1-シアノビニレン-1,4-フェニレン)](CN-PPV)系を含むがこれらに限定されない、フェニレンビニレンポリマー、ポリ(2,5-ジ(3’,7’-ジメチルオクチル)フェニレン-1,4-エチニレン(PPE)系、BODIPY系、ならびにスクアライン系半導体ポリマーが挙げられる。一部の態様では、色素は、1つまたは複数の流体構成成分に対して感受性がある。一部の態様では、色素は、酸素に対して感受性がある。本明細書において開示されるナノ粒子トランスデューサで使用することのできる酸素感受性色素の例としては、Pt(II)-ポルフィリンおよびPd(II)-ポルフィリン、リン光性のRu(II)錯体、ならびにIr(III)錯体が挙げられる。酸素感受性色素の他の例としては、Pt(II)オクタエチルポルフィン(PtOEP)、Pt(II)メソ-テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィン(PtTFPP)、Pt(II)オクタエチルポルフィンケトン(PtOEPK)、Pd(II)オクタエチルポルフィン(PdOEP)、およびPd(II)メソ-テトラ(ペンタフルオロフェニル)ポルフィン(PdTFPP)、Pd(II)-メソ-テトラ-(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(PdTPCPP)、Pd(II)-メソ-テトラ-(4-カルボキシフェニル)テトラベンゾポルフィリンデンドリマー(PdTCPTBP)、Pt(II)-コプロポルフィリン(PtCP)、Pt(II)-メソ-テトラベンゾポルフィリンブチルオクタエステル(PtTBP)、Pt(II)-コプロポルフィリン-ケトン(PtCPK)、シクロメタル化Ir(III)l-クロロ-架橋二量体クマリン錯体(Ir(III)(Cx)2(acac))、および[Ru(bpy)2(2-(4-カルボキシフェニル)イミダゾ-[4,5-f][1,10]フェナントロリン)H2)]2+([Ru(bpy)2(picH2)]2+)が挙げられるが、これらに限定されない。色素は、ナノ粒子トランスデューサを形成するために、半導体発色団ポリマーと物理的にブレンドしても、化学的に付着させてもよい。
【0076】
一部の態様では、発色団は複数の色素を含む。第1の色素は、1つまたは複数の流体構成成分に対して感受性があり、この感受性色素と第2の色素が相互作用して、増強された蛍光を生成することができる。一部の態様では、少なくとも1つの色素は流体構成成分に対する感受性がなく、したがって、内部標準として安定な蛍光をもたらす。複数の色素は、異なる波長の蛍光を発することができ、各色素の蛍光の独立した測定が可能である。感受性および非感受性の色素は、互いと相互作用して、1つまたは複数の流体構成成分に対して感受性のある色素の蛍光を増幅および増強することができる。
【0077】
一部の態様では、発色団ポリマー粒子は、タンパク質検知などのさらなる機能性を有するように、小型有機色素、金属錯体、フォトクロミック色素、またはそれらの任意の組合せと共有結合的に連結またはグラフトした不活性ポリマーなどの、他の発色団ポリマーと物理的に混合した、または化学的に架橋した、半導体ポリマーを含む。
【0078】
一部の態様では、発色団ポリマー粒子は、発光色を調整するため、量子収率および/もしくは光安定性を改善するため、かつ/または例えば磁性機能、プラズモン共鳴機能などのさらなる機能性をもたらすために、他の構成要素、例えば蛍光色素、無機ルミネセンス材料、磁性材料、金属材料などと物理的に混合した、または化学的に架橋した、半導体ポリマーを含む。
【0079】
所与の発色団ポリマー粒子に関する吸収波長などの光学特性は、その組成および/または構造を改変することによって調整することができる。半導体ポリマーは、可視スペクトル全体を含め、UVから赤外までの範囲の吸収波長を有するものが開発されている。一部の態様では、約200ナノメートルから約300ナノメートルの間、約250ナノメートルから約350ナノメートルの間、約300ナノメートルから約400ナノメートルの間、約350ナノメートルから約450ナノメートルの間、約400ナノメートルから約500ナノメートルの間、約450ナノメートルから約550ナノメートルの間、約500ナノメートルから約600ナノメートルの間、約550ナノメートルから約650ナノメートルの間、約600ナノメートルから約700ナノメートルの間、約650ナノメートルから約750ナノメートルの間、約700ナノメートルから約800ナノメートルの間、約750ナノメートルから約850ナノメートルの間、約800ナノメートルから約900ナノメートルの間、約850ナノメートルから約950ナノメートルの間、または約900ナノメートルから約1000ナノメートルの間のピーク吸収波長を有する発色団ポリマー粒子が使用される。
【0080】
半導体ポリマーは、可視スペクトル全体を含め、UVから赤外までの範囲の発光波長を有するものが開発されている。一部の態様では、約200ナノメートルから約300ナノメートルの間、約250ナノメートルから約350ナノメートルの間、約300ナノメートルから約400ナノメートルの間、約350ナノメートルから約450ナノメートルの間、約400ナノメートルから約500ナノメートルの間、約450ナノメートルから約550ナノメートルの間、約500ナノメートルから約600ナノメートルの間、約550ナノメートルから約650ナノメートルの間、約600ナノメートルから約700ナノメートルの間、約650ナノメートルから約750ナノメートルの間、約700ナノメートルから約800ナノメートルの間、約750ナノメートルから約850ナノメートルの間、約800ナノメートルから約900ナノメートルの間、約850ナノメートルから約950ナノメートルの間、約900ナノメートルから約1000ナノメートルの間、約950ナノメートルから約1050ナノメートルの間、約1000ナノメートルから約1100ナノメートルの間、約1150ナノメートルから約1250ナノメートルの間、または約1200ナノメートルから約1300ナノメートルの間のピーク発光波長を有する発色団ポリマー粒子が使用される。
【0081】
一部の態様では、本開示は、狭帯域発光を有する発色団ポリマー粒子を提供する。狭帯域発光は、複数の蛍光シグナルの分解を含むがこれに限定されない、ある特定の用途に有利である。ポリマー粒子の発光波長は、紫外から近赤外領域まで様々でありうる。一部の態様では、発光帯のFWHMは、約100ナノメートル、約70ナノメートル、約65ナノメートル、約60ナノメートル、約55ナノメートル、約50ナノメートル、約45ナノメートル、約40ナノメートル、約35ナノメートル、約30ナノメートル、約25ナノメートル、約20ナノメートル、または約10ナノメートル未満である。一部の態様では、本明細書に記載されるポリマー粒子のFWHMは、約5ナノメートルから約100ナノメートルの間、約10ナノメートルから約70ナノメートル、約20ナノメートルから約60ナノメートル、または約30ナノメートルから約50ナノメートルの範囲でありうる。
【0082】
一部の態様では、本開示の発色団ポリマー粒子の種類は、狭帯域発光単位(例えば、狭帯域モノマーおよび/または狭帯域単位)を有するポリマーを含む。例えば、本開示は、BODIPYおよび/もしくはBODIPY誘導体モノマー、スクアラインおよび/もしくはスクアライン誘導体モノマー、金属錯体および/もしくは金属錯体誘導体モノマー、ポルフィリンおよび/もしくはポルフィリン誘導体モノマー、メタロポルフィリンおよび/もしくはメタロポルフィリン誘導体モノマー、フタロシアニンおよび/もしくはフタロシアニン(phthalocynanine)誘導体モノマー、ランタニド錯体および/もしくはランタニド錯体誘導体モノマー、ペリレンおよび/もしくはペリレン誘導体モノマー、シアニンおよび/もしくはシアニン誘導体モノマー、ローダミンおよび/もしくはローダミン誘導体モノマー、クマリンおよび/もしくはクマリン誘導体モノマー、ならびに/またはキサンテンおよび/もしくはキサンテン誘導体モノマーなどの狭帯域モノマーを含む、ホモポリマーまたはヘテロポリマーを含みうる。ある特定の態様では、狭帯域単位は、例えば、ポリマー粒子に包埋または付着した狭帯域モノマーまたは蛍光ナノ粒子である。蛍光ナノ粒子は、例えば量子ドットであってもよい。任意選択で、狭帯域単位は、本開示のポリマー粒子の狭い発光をもたらすポリマーまたは蛍光色素分子を含む。
【0083】
本開示の一部の態様では、本明細書において提供される装置、組成物、システム、および方法は、例えば、UV光、可視光、遠赤色光、近赤外光、または他の光などの入射放射線に応答して、1つまたは複数の波長における蛍光を発生させることができる、1つまたは複数の発色団(例えば、色素または半導体発色団ポリマー)を利用する。場合により、発色団からの所与の波長における蛍光量は、流体構成成分の局所濃度の関数として変動する(シグナル発色団);他の態様では、発色団からの蛍光量は、前記局所濃度に応答して変動しない(対照発色団)。ある特定の態様では、本明細書において提供されるナノ粒子は、それぞれシグナル波長および対照波長の蛍光を発する、シグナルおよび対照の両方の発色団を組み込むことができる。本明細書における様々な態様は、1つまたは2つの異なる発光波長を有するナノ粒子の観点から記載されているが、本明細書において提示されるアプローチは、2つを超える波長を発するナノ粒子にも適用可能であることを理解されたい。例えば、2つのシグナル波長および1つまたは2つの対照波長において発光するナノ粒子を用意することができ、これは、複数の分析物測定シグナルのために使用することができる。それぞれが明確に異なる分析物(または任意選択で、例えば冗長シグナル伝達の場合、同じ分析物)に応答する、異なるシグナル/対照波長ペアを有する複数の異なるナノ粒子が用意されてもよい。
【0084】
ある特定の態様では、シグナル波長の蛍光を発生させる発色団は、異なる濃度の流体構成成分中にあるとき、異なる光学的特徴(例えば、発光スペクトル、吸収スペクトル、ピーク発光波長(複数可)、ピーク励起波長(複数可)、発光強度、発光寿命、発光速度)を呈する。例えば、発色団は、分子などの流体構成成分の濃度の上昇に応答して蛍光の増加(または減少)を呈しうる。一部の態様では、蛍光の変動は、流体構成成分の濃度の関数としてレシオメトリックでありうる。分子は、例えば酸素であってもよく、これは、測定される分析物が関与し、かつ酵素により触媒される反応の、反応物質または生成物であってもよい。酵素は、酵素により触媒される反応が分子の局所濃度を変化させることにより、分析物の濃度の変化に応答して発色団の蛍光が変化するように、発色団を含むナノ粒子と結合していてもよい。一部の態様では、このような変化はレシオメトリックでありうる。蛍光を対照波長で発生させることで、例えば、対照とシグナルの蛍光比を分析物濃度のシグナルとして働き、蛍光強度測定におけるノイズおよび不確実性のある特定の源を排除または低減することができる。
酵素の組成
【0085】
本明細書において開示されるある特定の態様では、小分子の検出は、小分子酸化反応を触媒する酸素消費酵素とナノ粒子酸素トランスデューサの統合に基づいて行われる。場合により、ナノ粒子トランスデューサを測定のために酵素と直接混合してもよい。場合により、ナノ粒子を酵素に連結させるために共有結合によるコンジュゲーションが行われ、細胞内検知に使用されうるコンパクトなプローブがもたらされる。ナノ粒子表面上に酵素コロナが形成されると、ナノ粒子-酵素バイオコンジュゲートは、酵素が感受性をもつ小分子分析物の存在下でその内部の酸素の貯蔵を枯渇させるナノリアクターとして挙動する。したがって、酸素が枯渇するに伴い、酸素トランスデューサの光学シグナルにより、小分子濃度がモニタリングされる。この検知スキームの性能は、(1)分析物の存在が酸素分布プロファイルの明確な変化を誘導することができるかどうか、(2)酸素トランスデューサが酸素の変化を光学シグナルに変換することができるかどうかを含む因子に依存性である。加えて、in vivo検出は、局所的微小血管灌流、組織中酸素の利用可能性、および酵素活性などの問題とも密接に関係している。以下の節では、in vitroおよびin vivo両方の用途に関し、理論的分析および実験的証拠の両方と共に、分析物濃度の検知における本明細書に記載されるナノ粒子トランスデューサの有効性を例示しうる例として、グルコースを提示する。本明細書に記載される例に基づけば、ナノ粒子トランスデューサは、適切な反応性がある酵素、およびそれにより触媒される反応の反応要素に対して感受性のある対応する発色団を選択することにより、小分子、大分子、および他の流体構成成分を含む多種多様な分析物の検出のための蛍光シグナルを生成するように製作することができる。
【0086】
多くの態様では、本明細書において提供されるナノ粒子トランスデューサは酵素を含み、この酵素が反応を触媒する。この反応には測定されることになる分析物が関与し、反応により生成物が生成され、反応物質が消費され、これらは集合的に反応要素と称される。多くの態様では、反応要素は流体構成成分を含み、反応によって流体構成成分の濃度が変化する。例えば、流体構成成分は反応生成物である場合があり、反応は流体構成成分の濃度を上昇させる場合がある。代替的に、流体構成成分は反応物質であってもよく、反応はその濃度を低下させうる。一部の態様では、流体構成成分は酸素であり、酸素は反応物質である。一部の態様では、酸素消費酵素および分析物はそれぞれ、次のペア:グルコースオキシダーゼとグルコース;アスコルビン酸オキシダーゼとアスコルビン酸;グルタミン酸オキシダーゼとグルタメート;ドーパミンベータ-ヒドロキシラーゼとドーパミン;コレステロールオキシダーゼとコレステロール;ならびにアルコールオキシダーゼとアルコール、乳酸オキシダーゼとラクテート、およびキサンチンオキシダーゼとキサンチン、モノアミンオキシダーゼとモノアミン、NADPHオキシダーゼとNADPH、L-グロノラクトンオキシダーゼとL-グロノラクトン、リシルオキシダーゼとリシン、ラッカーゼ類とそれらの様々な基質、例えばフェノール、およびチトクロムP450オキシダーゼと薬物を含むその様々な基質のうちの1つまたは複数を含む。場合により、酸素消費酵素はアミンオキシダーゼであり、分析物はアミノ酸である。場合により、酸素消費酵素はチトクロムP450であり、分析物は、チトクロムP450により触媒されると酸素と反応する薬物である。場合により、酸素消費酵素はNADPHオキシダーゼ(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸オキシダーゼ)であり、分析物はNADPHである。場合により、酸素消費酵素はキサンチンオキシダーゼであり、分析物はキサンチンである。場合により、酸素消費酵素はグロノラクトンオキシダーゼであり、分析物はグロノラクトンである。
【0087】
一部の態様では、流体構成成分は酸素以外である;例えば、流体構成成分はイオンであってもよく、酵素は、イオン濃度を変化させる反応を触媒してもよく、発色団は、前記イオン濃度により変調される蛍光を生成してもよい;流体構成成分は酸もしくは塩基であってもよく、酵素は、pHを変化させる反応を触媒してもよく、発色団は、前記pHにより変調される蛍光を生成してもよい;または、流体構成成分は熱エネルギーであってもよく、酵素は、温度を変化させる反応を触媒してもよく、発色団は、前記温度により変調される蛍光を生成してもよい。一部の態様では、流体構成成分は、過酸化水素であってもよく、酵素は、過酸化水素濃度を変化させる反応を触媒してもよく、発色団は、前記過酸化水素濃度により変調される蛍光を生成してもよい。例えば、過酸化水素は、反応の生成物であってもよい。
【0088】
一部の態様では、複数の酵素が、それぞれの複数の反応を触媒するように、ナノ粒子トランスデューサに結合している。複数の反応は、1つの反応の1つまたは複数の生成物が別の反応の反応物質である、反応の連鎖を生じる。例えば、複数の酵素により酵素カスケードがもたらされてもよく、各酵素は、カスケードの一ステップを行う。複数の反応のうちの少なくとも1つには、分析物が反応物質として関与し、反応のうちの少なくとも1つは、発色団の発光強度の変調のための反応要素としての流体構成成分を有する。
デバイス構成要素
【0089】
一部の態様では、本明細書に記載されるシステムは、1つまたは複数のプロセッサと、実行可能命令が記憶されたメモリデバイスとを備えるコンピュータを含む。一部の態様では、コンピュータは、本明細書に記載される方法を行うために使用される。様々な態様では、コンピュータを使用して、上記に例示および記載されたシステムまたは方法のうちのいずれかを実施することができる。一部の態様では、コンピュータは、バスサブシステムを介していくつかの周辺サブシステムと通信するプロセッサを含む。これらの周辺サブシステムは、メモリサブシステムおよびファイル記憶サブシステムを含む記憶サブシステム、ユーザインタフェース入力デバイス、ユーザインタフェース出力デバイス、ならびにネットワークインタフェースサブシステムを含みうる。
【0090】
一部の態様では、バスサブシステムは、コンピュータの様々な構成要素およびサブシステムが意図されたように互いと通信できるようにするための機構を提供する。バスサブシステムは、単一のバスを含んでも、複数のバスを含んでもよい。
【0091】
一部の態様では、ネットワークインタフェースサブシステムは、他のコンピュータおよびネットワークに対するインタフェースを提供する。ネットワークインタフェースサブシステムは、コンピュータからデータを受信し、他のシステムにデータを送信するためのインタフェースとすることができる。例えば、ネットワークインタフェースサブシステムは、コンピュータをインターネットに接続させ、インターネットを使用した通信を容易にすることができる。
【0092】
一部の態様では、コンピュータは、ユーザインタフェース入力デバイス、例えばキーボード、ポインティングデバイス、例えばマウス、トラックボール、タッチパッド、またはグラフィックスタブレット、スキャナ、バーコードスキャナ、ディスプレイに組み込まれたタッチスクリーン、音声入力デバイス、例えば声認識システム、マイクロフォン、および他の種類の入力デバイスを含む。一般に、「入力デバイス」という用語の使用は、コンピュータに情報を入力するためのデバイスおよび機構の可能性のある全ての種類を含むよう意図される。
【0093】
一部の態様では、コンピュータは、ユーザインタフェース出力デバイス、例えばディスプレイサブシステム、プリンタ、ファックス機、または非視覚的ディスプレイ、例えば音声出力デバイスなどを含む。ディスプレイサブシステムは、例えば液晶ディスプレイ(LCD)などのフラットパネルデバイスまたは投射デバイスであってもよい。一般に、「出力デバイス」という用語の使用は、コンピュータから情報を出力するためのデバイスおよび機構の可能性のある全ての種類を含むよう意図される。
【0094】
一部の態様では、コンピュータは、基本的なプログラミングおよびデータ構造を記憶するためのコンピュータ可読記憶媒体を提供する記憶サブシステムを含む。一部の態様では、記憶サブシステムは、プロセッサにより実行されると本明細書に記載される方法およびシステムの機能性を提供するソフトウェア(プログラム、コードモジュール、命令)を記憶する。これらのソフトウェアモジュールまたは命令は、1つまたは複数のプロセッサにより実行することができる。記憶サブシステムは、本開示に従って使用されるデータを記憶するためのリポジトリを提供することもできる。記憶サブシステムは、メモリサブシステムおよびファイル/ディスク記憶サブシステムを含んでもよい。
【0095】
一部の態様では、コンピュータは、プログラム実行中の命令およびデータの記憶のためのメインランダムアクセスメモリ(RAM)、ならびに固定命令が記憶された読出し専用メモリ(ROM)を含め、いくつかのメモリを含むことのできるメモリサブシステムを含む。ファイル記憶サブシステムは、プログラムおよびデータファイルの非一時的な持続性(不揮発性)記憶を行い、ハードディスクドライブ、USBスティック、ソリッドステートドライブ、光学ドライブ、リムーバブルメディアカートリッジ、および他の同様な記憶媒体を含みうる。
【0096】
コンピュータは、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ、携帯型コンピュータ、ワークステーション、ネットワークコンピュータ、メインフレーム、キオスク、サーバー、またはあらゆる他のデータ処理システムを含め、様々な種類のものでありうる。コンピュータおよびネットワークの性質は常に変化しているため、本明細書に含まれるコンピュータの記載は、コンピュータの態様を例示することを目的とした特定の例として意図されるに過ぎない。本明細書に記載されるシステムよりも多いかまたは少ない構成要素を有する、多くの他の構成が可能である。
本発明のさらなる態様
【0097】
様々な態様では、分析物濃度測定のためのナノ粒子トランスデューサが提供される。ナノ粒子トランスデューサは、発色団を含むナノ粒子を含み、ナノ粒子には酵素が結合している。酵素は、複数の反応要素を含む反応を触媒する。反応要素は、分析物を含む1つまたは複数の反応物質と、1つまたは複数の生成物とを含む。発色団は、複数の反応要素のうちのある反応要素の濃度によって決定された量の蛍光を発する。蛍光の発光は、紫外光、可視光、遠赤色光、近赤外光、または他の光などの適切な光の照射によって誘導されうる。
【0098】
一部の態様では、反応要素のうちの1つは酸素であり、発色団から発せられる蛍光量は、酸素の濃度によって決定される。場合により、酵素はグルコースオキシダーゼを含む。1つまたは複数の反応物質はグルコースおよび酸素を含んでもよく、1つまたは複数の生成物は過酸化水素およびD-グルコノ-1,5-ラクトンを含む。
【0099】
一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサは、カタラーゼをさらに含む。
【0100】
一部の態様では、発色団から発せられる蛍光量は、反応物質の濃度によって決定される;一部の態様では、発色団から発せられる蛍光量は、生成物の濃度によって決定される。
【0101】
一部の態様では、ナノ粒子はPdotを含む。酵素はナノ粒子に共有結合している。
【0102】
一部の態様では、発色団は半導体ポリマーを含む。一部の態様では、発色団は色素を含む。色素は、ナノ粒子中に含有されていてもよい。発色団は半導体ポリマーおよび色素を含んでもよく、色素および半導体ポリマーは相互作用して増強された蛍光を生成する。場合により、発色団は、2種またはそれよりも多い半導体ポリマーのブレンドを含む。
【0103】
一部の態様では、発色団から発せられる蛍光は、シグナル蛍光波長および対照蛍光波長を含む。発色団から発せられる蛍光は、シグナル波長において発せられる蛍光量の、対照蛍光波長において発せられる蛍光量に対する比と等しい蛍光比を含みうる。シグナル蛍光比は、複数の反応要素のうちの当該反応要素の濃度によって決定されうる。多くの場合、蛍光比は、分析物の濃度とレシオメトリックに変動する。場合により、対照波長蛍光は実質的に一定の状態を保つのに対し、シグナル波長蛍光は、分析物濃度と共に実質的に直線的に大きくなる。
【0104】
様々な態様では、分析物はグルコースであり、分析物濃度範囲は、グルコースの0から約20mMの間の範囲内である。場合により、分析物濃度範囲は、約3mMのグルコース~約15mMのグルコースの範囲内である。
【0105】
一部の態様では、ナノ粒子は少なくとも20重量パーセントの発色団を含有する。例えば、ナノ粒子は、少なくとも50重量パーセントの発色団、または少なくとも90重量パーセントの発色団を含有しうる。場合により、ナノ粒子は約100重量パーセントの発色団を含む。
【0106】
一部の態様では、ナノ粒子は、第2の分析物の蛍光検出のための第2の発色団、およびナノ粒子と結合した第2の酵素を含む。第2の酵素は、第2の複数の反応要素を含む第2の反応を触媒する。第2の複数の反応要素は、第2の分析物を含む第2の1つまたは複数の反応物質と、第2の1つまたは複数の生成物とを含む。第2の発色団から発せられる蛍光量は、第2の複数の反応要素のうちのある第2の反応要素の濃度によって決定される。第2の発色団の蛍光は、他の発色団の蛍光とは異なる波長を含む。
【0107】
一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサは、第2の発色団を含む第2のナノ粒子と、ナノ粒子と結合し、かつ第2の複数の反応要素を含む第2の反応を触媒するように構成された第2の酵素とを含む。第2の複数の反応要素は、第2の分析物を含む第2の1つまたは複数の反応物質と、第2の1つまたは複数の生成物とを含む。第2の発色団から発せられる蛍光量は、第2の複数の反応要素のうちのある第2の反応要素の濃度によって決定される。
【0108】
場合により、酵素が、アスコルビン酸オキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、ドーパミンベータ-ヒドロキシラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、アミンオキシダーゼ、およびチトクロムP450からなる群から選択される。場合により、分析物が、アスコルビン酸、グルタメート、ドーパミン、コレステロール、アルコールからなる群から選択される。場合により、分析物は、アミノ酸、薬物、タンパク質、核酸分子、または伝達物質分子でありうる。場合により、分析物は、炭水化物、脂質、または代謝物である。場合により、分析物は糖である。
【0109】
一部の態様では、分析物濃度は血中濃度である。一部の態様では、分析物濃度は、リンパ、唾液、涙、間質液、髄液、または尿中の濃度である。
【0110】
一部の態様では、ナノ粒子トランスデューサは、複数の酵素を含み、複数の酵素は、それぞれの複数の反応要素をそれぞれが含むそれぞれの複数の反応を触媒する。分析物は、複数の反応のうちの1つの反応物質であり、発色団から発せられる蛍光は、反応のうちの少なくとも1つの反応要素の濃度によって決定される。場合により、1つの酵素の反応の生成物のうちの1つまたは複数は、別の酵素の反応の反応物質であり、これにより、酵素反応の連鎖が生じる。したがって、分析物濃度は、酵素反応の連鎖に関与することにより、発色団の蛍光に影響を及ぼしうる。
【0111】
場合により、ナノ粒子トランスデューサの臨界寸法は、約1000nm未満、700nm未満、約500nm未満、または約100nm未満である。場合により、ナノ粒子トランスデューサの臨界寸法は約15nm~約45nmの範囲内である。
【0112】
様々な態様では、生体液中の分析物の濃度を測定するための装置が提供される。本装置は、本明細書において開示される態様に従って用意された複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサを備える。本装置は、プロセッサおよびメモリに連結した光学センサと、複数の蛍光ナノ粒子に光を照射することによってそれらから蛍光を誘導するように構成された照射源とをさらに備える。メモリは命令を含み、命令が実行されると、プロセッサは、光学センサを使用して、複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサにより発せられた蛍光を測定する。
【0113】
一部の態様では、生体液は、血液、リンパ、唾液、涙、間質液、髄液、または尿である。
【0114】
一部の態様では、複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサは、患者の皮膚下に位置付けられるように適合されており、光学センサは、皮膚に面しているときに複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサにより皮膚を通して伝達される蛍光を検出するように適合されている。場合により、光学センサは、シグナル蛍光波長におけるシグナル蛍光量および対照蛍光波長における対照蛍光量を検出するように構成されており、メモリは、プロセッサに、シグナル蛍光および対照蛍光の前記測定量に基づいて測定蛍光比を決定させる命令を含む。場合により、メモリは、プロセッサに、測定蛍光比に基づいて分析物の濃度を決定させる命令を含む。
【0115】
様々な態様では、グルコース濃度の検出のためのコンタクトレンズが提供される。コンタクトレンズは、眼に装着可能な透過性のある透明な膜を備え、レンズは、本明細書において開示される態様に従う複数のナノ粒子トランスデューサを含有する。ナノ粒子トランスデューサは、スキャナによる照射に応答して蛍光を生成するように構成されており、蛍光量は、眼の表面における流体中のグルコースの濃度の決定のためにスキャナによって検出可能なシグナルをもたらす。レンズの膜は、装着時に人間の視力を矯正する形状をしていてよい。
【0116】
様々な態様では、対象の汗からグルコース濃度を測定するためのデバイスが提供される。本デバイスは、本明細書において開示される態様に従う、装着時に対象の皮膚に接触するようにデバイスによって位置決めされる、複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサを備える。本デバイスは、複数の蛍光ナノ粒子に光を照射することによってそれらから蛍光を誘導するように構成された照射源と、デバイス内に配置され、かつ複数の蛍光ナノ粒子トランスデューサからの蛍光を検出するように配向された光学センサとをさらに備える。光学センサにはプロセッサが連結している。プロセッサは、光学センサによって検出された蛍光に基づいて、汗中のグルコースの濃度を決定するように構成されている。プロセッサは、汗中のグルコースの濃度に基づいて血液中のグルコースの濃度を決定するようにさらに構成されていてもよい。
【0117】
様々な態様では、流体中の分析物濃度を決定する方法が提供される。流体は、本明細書において開示される態様に従うナノ粒子トランスデューサと接触する。ナノ粒子トランスデューサの蛍光が測定され、流体中の分析物の濃度が、測定された蛍光に基づいて決定される。場合により、本方法は、ナノ粒子トランスデューサに光を照射することによって蛍光を誘導するステップを含む。
【0118】
一部の態様では、決定するステップは、測定された蛍光をナノ粒子トランスデューサの較正曲線と比較して流体中の分析物濃度を決定するステップを含む。一部の態様では、測定するステップは、複数の蛍光波長を測定するステップを含み、決定するステップは、測定された波長の比に基づいている。場合により、流体は、血液、汗、または涙である。
【0119】
一部の態様では、流体中の分析物の濃度を測定する方法が提供される。分析物は流体中で反応を起こし、この反応が流体構成要素の濃度を変化させる。流体は、発色団を含むPdotと接触し、発色団は、流体構成要素の濃度によって決定される量の蛍光を発する。発色団により蛍光が発せられ、流体中の分析物の濃度が、蛍光に基づいて決定される。
【0120】
一部の態様では、発色団から発せられる蛍光は、シグナル蛍光波長において発せられる蛍光量の、対照蛍光波長において発せられる蛍光量に対する比と等しい蛍光比を含み、蛍光比は、流体構成要素の濃度によって決定される。場合により、濃度の決定は、シグナル蛍光波長および対照蛍光波長における蛍光を測定すること、前記測定に基づいて測定蛍光比を決定すること、ならびに測定蛍光比に基づいて分析物の濃度を決定することを含む。
【0121】
一部の態様では、分析物はアスコルビン酸であり、流体構成要素は酸素である。場合により、決定された濃度は、アスコルビン酸の1mMから20mMの間である。一部の態様では、流体は、血液、汗、または涙である。
【0122】
本開示の装置、デバイス、およびそれらの構成要素のうちのいずれの特定の寸法も、本明細書における開示内容を考慮すれば当業者には明らかであるように、意図される用途に応じて容易に変えることができる。さらに、本明細書に記載される例および態様は例示のみを目的としていること、そしてそれを踏まえた様々な改変または変更が当業者に連想される場合があり、またそれらが本出願の趣旨および範疇ならびに添付の特許請求の範囲に含まれることが理解される。本明細書に記載される態様の多数の異なる組合せが可能であり、そのような組合せは本開示の一部と考えられる。
【0123】
本明細書で使用される場合、Aおよび/またはBは、AまたはBのうちの1つまたは複数、およびそれらの組合せ、例えばAおよびBを包含する。本明細書で使用される場合、本開示において態様が1つまたは複数の要素を含むものとして記載されている場合、前記要素からなる態様も開示される。
【0124】
任意の態様または本明細書における態様に関連して論述される特徴は全て、他の態様および本明細書における態様における使用にあわせて容易に適応させることができる。異なる態様における同様の特徴に対する異なる用語または参照番号の使用は、明示的に示されたもの以外の差違を必ずしも暗示するとは限らない。したがって本開示は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ記載されることが意図され、本明細書において開示される態様に限定されない。
【0125】
特に指定されない限り、本明細書に記載される方法およびプロセスは、いかなる順序で行われてもよい。例えば、ステップ(a)、(b)、および(c)を記載する方法は、第1にステップ(a)、続いてステップ(b)、次いでステップ(c)を行ってもよい。または、この方法は、例えば第1にステップ(b)、続いてステップ(c)、次いでステップ(a)など、異なる順序で行ってもよい。さらに、これらのステップは、特殊性をもって特に指定されない限り、同時に行っても別々に行ってもよい。
【0126】
本明細書に示される詳細は例であり、本開示の好ましい態様の例示的論述のみを目的とし、本発明の様々な態様の原理および概念的態様の最も有用で容易に理解される記載と考えられるものを提供するために提示される。これに関し、本発明の基礎的理解に必要とされる以上に本発明の構造的詳細を詳細に示す試みは行われず、本発明のいくつかの形態が実際にどのように具現されうるかは、この記載を図面および/または例とあわせて読めば、当業者には明らかとなる。
【0127】
本開示の好ましい態様を本明細書に示し記載したが、特定の態様の変更を行うことができ、それでも添付の特許請求の範囲内に含まれる場合があるため、本開示は記載された本開示の特定の態様に限定されないことを理解されたい。また、用いられている用語法は、本開示の特定の態様を記載することを目的とし、限定を意図しないことも理解されたい。むしろ、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【0128】
値の範囲が提供されている場合、文脈による明らかな指示が特にない限り下限の単位の10分の1に至るまで、その範囲の上限と下限との間の各介在値、およびその規定範囲内のあらゆる他の規定値または介在値が、本明細書において提供される開示内容に包含される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、規定範囲内に何らかの明確に除外される限界がない限り、より小さな範囲内に独立して含まれていてもよく、また、本発明に包含されている。規定範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれている限界のいずれかまたは両方を除外する範囲も、本明細書において提供される開示内容に含まれる。
【0129】
ある態様または本明細書における態様に関連して論述される特徴は全て、他の態様および本明細書における態様における使用にあわせて容易に適応させることができる。異なる態様における同様の特徴に対する異なる用語または参照番号の使用は、明示的に示されたもの以外の差違を必ずしも暗示するとは限らない。したがって本開示は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ記載されることが意図され、本明細書において開示される態様に限定されない。
【実施例0130】
以下の実施例は、本開示の一部の態様をさらに記載するために含まれるものであり、本発明の範囲を限定するように使用されてはならない。
(実施例1)
分析物濃度測定のためのナノ粒子トランスデューサの動作原理
【0131】
一実施例では、グルコースオキシダーゼのグルコース酵素反応および酸素拡散を考慮するモデルにより、典型的な試料構成における酸素濃度の空間的および時間的な変化をシミュレーションする。
図1A~
図1Hは、グルコースオキシダーゼで触媒した反応によるO
2変調シグナルを使用したグルコースの検出のための例証的なナノ粒子トランスデューサに関するシミュレーションしたO
2枯渇動態および分布プロファイルを例示する。グルコースオキシダーゼ(GOx)を含有する典型的なキュベット(1cm×1cm×3cm)を使用して、グルコースにより誘導される酸素消費量をモデリングする。簡潔に述べると、閉鎖システム(酸素拡散なし)では、GOxおよびグルコースの存在下の酸素消費動態は次のように表すことができる。
a([O
2]-[O
2]
0)+b(ln[O
2]-ln[O
2]
0=-(t-t
0))式中、[O
2]
0は、反応が開始する直前のt
0時間における空気飽和溶液中の[O
2]に対応する。パラメータaおよびbは、GOx濃度、所与のグルコース濃度に関する酵素反応速度定数から計算することができる。この式は、グルコースが酸素と比べて過剰に存在する場合に有効であり、このことは、生理的グルコース濃度(典型的には約mMの範囲)が空気飽和溶液中の酸素濃度(約250μM)および組織中の酸素濃度(<100μM)よりも大幅に高いため、概して真実である。上記の式に基づき、GOx(5nM)および可変濃度のグルコースを含有する閉鎖キュベットにおける酸素濃度の動態変化が
図1Aに示されている。図に見ることができるように、酵素反応が生じると初期の酸素濃度(約250μM、空気飽和溶液)が低下し、その後、異なるグルコース濃度により誘導された相違が区別された。溶液中の酸素の利用可能性制限(酸素供給および拡散のない閉鎖システム)のために、酸素は最終的には、グルコース含量の異なる溶液間で同様の平衡レベルまで枯渇した。
【0132】
酸素拡散は、開放キュベット構成および皮下組織におけるグルコースの定量に関連する。シミュレーションを簡略化するために、キュベットのZ軸を一連の薄層に離散させ、酸素を頂部の開口部からのみ拡散するものとしてモデリングした。各層における時間的酸素濃度は、Fickの法則に左右される酸素の消費および拡散の組合せ効果によってシミュレーションした。最終的には酸素の消費と拡散との間の平衡を確立し、
図1Bに示されるように、実質的な反応時間の後に平坦な濃度曲線を得た。
図1Cは、開放キュベット構成のZ軸に沿った、5nMのGOxおよび20mMのグルコースを含むシステムでの時間的および空間的な酸素分布の3-Dプロット、ならびに酵素反応時間に依存する各層における時間的進化を例示する。500秒の時点において、グルコース濃度は、酸素マッピングにより、特にキュベットの底部分において十分に区別された。
図1Dは、500秒の時点でのグルコース濃度の異なる開放キュベットにおける酸素分布プロファイルを例示する。この結果は、生体液中のグルコース濃度が、酸素トランスデューサの助けにより、蛍光光度計の開放キュベット構成で効果的かつ効率的に測定されうることを示す。
【0133】
組織中酸素濃度(<100μM)が空気飽和溶液中の濃度(約250μM)よりも大幅に低い、皮下組織中の球状試料に関する酸素マッピングのさらなるシミュレーションを提供する。in vivoのリアルタイムでのグルコースモニタリングの要件を満たすため、50nM濃度のGOxを供給して急速な応答時間を達成した。予想したとおり、この試料の中心における時間的酸素変化は、低いGOx濃度のものと比較して短い応答時間をもたらした。
図1Eは、閉鎖した組織酸素環境における、これらのO
2枯渇動態を例示する。実際の移植における3D球状物体の薄層に似せて円形の縁から内部へと酸素を拡散させた。
図1Fは、酸素拡散ありの組織におけるO
2枯渇動態を例示する。酸素拡散の存在下での時間的進化が、比較的短い時間で明確に異なる酸素分布曲線をもたらすグルコース酵素反応を示したことを示す。
図1Gは、20秒の時点における酸素拡散ありの円形構成の2-Dマッピングを例示する。2Dマッピングによりさらに示されるように、酸素プロファイルは異なるグルコースレベルで明確に区別されており、酸素トランスデューサによる皮下グルコース測定の実現可能性が高いことを示している。ある程度の酸素拡散がグルコースの定量において酸素拡散なしの場合と比較して大幅に高い感度をもたらしたことは注目に値する。この差違は、20秒の時点における酸素拡散ありおよびなしでのグルコースの定量のための酸素枯渇の感度を例示する
図1Hに示されている。実践的実験において酸素またはグルコースの拡散を調節するには、多孔質ゲルまたは異なる封入層を有する他のマトリックスへのトランスデューサの包埋など、いくつかの方策を用いることができる。
(実施例2)
分析物濃度測定のためのナノ粒子トランスデューサの生成
【0134】
この実施例では、グルコースの検出のための例証的なシステムにおけるナノ粒子トランスデューサの生成および特徴付けを行った。再沈殿方法を使用して半導体ポリマードットの水分散を行った。典型的な調製物では、それぞれ、半導体ポリマーPDHF、機能性ポリマーPSMA、およびリン光色素PtOEPを、不活性雰囲気下で一晩にわたり撹拌することにより無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解させて、1mg/mLのストック溶液を作製した。3つの溶液をTHF中に希釈および混合して、PDHF濃度100μg/mL、PtOEP濃度10μg/mL、およびPSMA濃度10μg/mLの溶液混合物を生成した。2mL分量の溶液混合物をバスソニケータ内の10mLのMilli-Q水に直ちに添加すると同時に混合物を超音波処理し、続いてさらに100秒間の超音波処理を行った。窒素ストリッピングによりTHFを除去し、90℃のホットプレート上で溶液を5mLに濃縮した後に、0.2ミクロンフィルタを通して濾過した。ナノ粒子形成中、PSMA分子の無水マレイン酸単位が水性環境で加水分解し、Pdot上にカルボキシル基が発生した。リン光色素分子は、それらの疎水性の性質のため、Pdotの内部に封入された。Pdot分散液は透き通っており、数か月にわたり凝集の兆候がなく安定であった。
【0135】
グルコースにより誘導された酸素濃度の増減は、酸素応答性トランスデューサを使用することによって光学シグナルに変換することができる。
図2A~
図2Dは、Pdot-GOxアセンブリを含むナノ粒子トランスデューサの調製および特徴付けを例示する。このPdotトランスデューサは、酸素感受性リン光色素(白金(II)オクタエチルポルフィン、PtOEP)を含む発色団をドーピングした蛍光半導体ポリマー[ポリ(9,9-ジヘキシルフルオレニル-2,7-ジイル)、PDHF]を含む。このデザインでは、コンジュゲートポリマーPDHFは、エネルギーをPtOEP色素に移動させる光ハーベスターの機能を果たし、酸素濃度に対して高い感受性のある高輝度のリン光をもたらした。
【0136】
図2Aは、in vivoでのグルコースモニタリングのためのPdot-GOxバイオコンジュゲートの形成の概略表現である。
図2Aに示されるように、酸素感受性Pdotには、表面カルボキシル基の官能基をもたせた。Pdotのカルボキシル基と酵素中のアミン基との間のEDC触媒反応を使用し、PdotをGOxでコーティングした。Pdot表面のカルボキシル基とGOx酵素のアミン基との間のEDC触媒反応を利用することにより、バイオコンジュゲーションを行った。このバイオコンジュゲーション反応では、80μLの濃HEPES緩衝液(1M、pH6.5)を4mLの官能化Pdot溶液(MilliQ水中50μg/mL)に添加し、pH6.5の20mM HEPES緩衝液中のPdot溶液をもたらした。次いで、100μLのグルコースオキシダーゼ(20mM
pH=6.5 HEPES中10μM)を溶液に添加し、ボルテックスで十分に混合した。80μLの新しく調製したEDC溶液(MilliQ水中5mg/mL)を溶液に添加し、上記の混合物を室温で4時間にわたり回転式振盪機上に置いた。最後に、結果として得られたPdotバイオコンジュゲートを、Sephacryl HR-300ゲル媒体を使用したゲル濾過により、遊離生体分子から分離した。GOxのPdotに対する比を変えると、異なるダイナミックレンジのPdot-GOxセンサを生成することができる。
【0137】
動的光散乱法測定は、バイオコンジュゲーション後のPdotの流体力学直径が、
図2Bに例示されるように、24nmから32nmに増加した一方で、Pdot-GOxの表面ゼータ電位は、
図2Cに示されるように、-31mVから-20mVに変化したことを示した。粒径および表面電位の両方の測定により、コンジュゲーションの成功および粒子表面上のGOxの存在が裏付けられた。透過型電子顕微鏡法(TEM)は、Pdot-GOxナノ粒子が球状であり単分散であったことを示した。
図2Dは、カルボキシルPdot(左)およびPdot-GOx(右)の代表的なTEM画像を例示する。
【0138】
Pdot-GOxバイオコンジュゲートはまた、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液中で30日超にわたる優れたコロイド安定性を呈した。
図3Aは、30日間にわたるPdot-GOxトランスデューサのコロイド安定性を例示する。in vivoでのグルコースモニタリングの目的のため、このPdot-GOxコンジュゲートは、少量の移植センサ材料からのシグナルでさえも容易に検出することを可能にする、類いまれな輝度および高い感度を有した。このPdotトランスデューサは、長期の経皮検出のために十分なルミネセンスシグナルをもたらすと同時に、移植型センサの生体適合性要件も満たす。
【0139】
蛍光分光法は、生体液中のグルコース検出のためのPdot-GOxアセンブリの高い感度、優れた選択性、および調整可能なダイナミックレンジを示した。Pdotトランスデューサは、PDHFからの380nmにおける優位な吸収およびPtOEPからの648nmにおける主要なリン光ピークを呈した。
図3Bは、Pdot-GOxセンサのUV可視(vis)吸収スペクトルおよびフォトルミネセンススペクトルを示す。赤色発光はUV励起から良好に分離され、これは発光シグナルを裸眼でモニタリングするのに優れた利点である。
図3Cは、PDHFの蛍光発光とリン光色素PtOEPの吸収との間のスペクトルの重複を例示する。この重複は発色団同士の間のエネルギー移動をもたらし、PDHFドナーにより吸収されたUV光をPtOEPアクセプターにポンピングすることが可能になる。
図3Dは、380nmの励起波長を有するドープなしのPDHF PdotおよびPtOEPドープPdotの発光スペクトルを例示する。PDHFドナーからPtOEPアクセプターへと生じる効率的なフェルスター共鳴エネルギー移動のため、PDHFポリマーの青色蛍光は著しく消光された。
(実施例3)
ナノ粒子トランスデューサの特徴付け
【0140】
この実施例では、Pdot-GOxナノ粒子トランスデューサの分光学的および物理的な特性を測定した。動的光散乱法(DLS)および透過型電子顕微鏡法(TEM)により、Pdotの粒径および形態の特徴付けを行った。動的光散乱法は、Malvern Nano ZS機器を用い、1cmの使い捨てポリスチレンキュベットを使用して25℃で行った。同じMalvern Nano ZS機器でゼータ電位測定を実施した。TEM測定のための試料は、Pdots分散液を銅グリッド上に滴下流延することによって調製した。試料を室温で乾燥させ、次いで、120kVで動作するHitachi H-600顕微鏡を使用してTEM画像を得た。1cmのガラスキュベットを使用し、Schimadzu UV-2550走査分光光度計を用いて、UV可視吸収スペクトルを記録した。Hitachi F-4500蛍光分光光度計を使用して蛍光スペクトルを得た。380nmの励起波長で、キュベットにグルコースを加えた10分後に、異なるグルコース濃度におけるPdot-GOxの蛍光スペクトルを測定した。赤色発光の青色発光に対する強度比(I648/I428)を計算して、感度曲線をプロットした。
【0141】
図4Aは、異なるグルコース濃度におけるPdot-GOxトランスデューサの発光スペクトルを示す。これらの曲線は、グルコース0mMから20mMまで2ずつ変動する;648nmのピークにおいて、これらの曲線は、最も低い濃度から最も高い濃度まで強度順に並んでおり、20mMが最も強力である。Pdot-GOxバイオコンジュゲートは、グルコース濃度に対して感受性のある高輝度の赤色リン光を示したが、弱い青色蛍光は一定のままであった。一定の青色蛍光および感受性のある赤色リン光は、レシオメトリックな検知に役立った。これは、細胞および組織のグルコースレベルの定量的決定などの用途に有用である。
図4Bは、グルコース濃度の関数としてのPdot-GOxトランスデューサのレシオメトリックな較正プロット(I
648/I
428)を示す。
図4Bに示されるように、648nmにおける発光の、428nmにおける発光に対する比は、血中グルコース約4mM~約18mMの生理学的に適切な範囲内のグルコース濃度との直線関係を示した。曲線の直線部分の傾きとして感度を定義することにより、Pdot-GOxセンサは1mM当たり20%の強度変化を示し、そのためこれは最も高感度の蛍光グルコースセンサのうちに入った。加えて、Pdot-GOxアセンブリのダイナミックレンジは、バイオコンジュゲーション反応におけるGOxのPdotに対するモル比を変えることによって調整することができる。
【0142】
図4Cは、水性懸濁液中のグルコースに対するPdot-GOxの応答曲線を例示する。水性環境におけるPdot-GOxプラットフォームは、数分以内に急速なグルコース応答を呈した。センサの応答は、キュベット内でPdot-GOx溶液にグルコースを添加した後に一般的な蛍光光度計によって測定した。センサの応答時間は、キセノンランプを備えた蛍光分光光度計(Hitachi F-4500、日本)を用い、HEPES緩衝液(pH=6.5)中で25℃において、1cmのガラスキュベットを使用して測定した。応答曲線は全て、380nmの励起波長を用いて取得した。30μLのグルコース溶液を3mLのPdot-GOx懸濁液に添加することにより、時間の関数としての648nmにおけるPdot-GOx(10μg/mL)の蛍光強度を記録した。グルコースが励起体積に拡散するには時間がかかることに留意すると、648nmにおける発光強度は10分以内に一定値まで増加してプラトーに達し、数分以内のセンサの急速な応答を示している。Pdot-GOxセンサの選択性を評価するために、様々な炭水化物種(10mM)を添加した10分後に380nmの励起を用いてPdot-GOxの蛍光スペクトルを測定した。応答時間は主にグルコース拡散および酵素反応によって決定した。
【0143】
Pdot-GOxセンサは、GOx酵素の特異的な触媒反応のために、異なる炭水化物誘導体などの可能性のある干渉基質に対する優れた選択性を示す。
図4Dは、Pdot-GOxトランスデューサの、干渉する可能性のある炭水化物と比べたグルコースに対する選択性を例示する。高い選択性は、in vivoグルコースモニタリングにおいて、例えばボロン酸認識に基づくグルコース検知色素と比較して、優れた利点をもたらす。さらに、グルコースを測定のためにPdot-GOx溶液に添加し、各サイクル後に脱塩カラムによって除去した可逆的測定により、動作安定性を評価した。センサの応答は、10回を超える反復測定を行っても変化なしのままであった。急速かつ可逆的な応答は、連続的なグルコースの測定を可能にし、グルコースセンサへの簡単な組み込みを可能にした。25℃および4℃における2か月の貯蔵後、センサはその初期応答の95%超を保持した。これらの結果は、Pdot-GOxバイオコンジュゲートの優れた動作安定性および貯蔵安定性を示した。
(実施例4)
低い分析物濃度に対して感受性のあるナノ粒子トランスデューサ
【0144】
この実施例では、選択された感度を有するナノ粒子トランスデューサを記載し、特に、低分析範囲における分析物感度を有するナノ粒子トランスデューサを提供する。
図5Aおよび
図5Bは、低い濃度における検知のための、酵素で密にコーティングされたナノ粒子の使用を例示する。
図5Aは、様々なグルコース濃度における、GOxで密にコーティングされたPdotの発光スペクトルを例示し、
図5Bは、低分析範囲内のPdot-GOxのレシオメトリックな較正プロット(I
648/I
428)を示す。
図5Aおよび
図5Bに示されるように、GOxで密にコーティングされたPdotは、比較的低い分析範囲(1~4mM)で高い感度(1mM当たり25%)を示し、これは、低血糖症におけるグルコースモニタリングに有用でありうる。
(実施例5)
ナノ粒子トランスデューサの生体適合性
【0145】
この実施例では、本明細書に記載されるナノ粒子トランスデューサの細胞株に対する生体適合性を裏付ける実験を記載する。生体適合性は、例えばPdot-GOxナノ粒子などのナノ粒子トランスデューサをin vivoグルコースモニタリングのための移植型センサとして使用することができるかどうかを決定する、重要な因子である。HeLa細胞における細胞生存率アッセイを使用して、Pdot-GOxナノ粒子の細胞傷害性を評価した。HeLa細胞株は、細胞毒性研究および細胞内グルコースイメージングのために使用した。細胞培養には、10%のウシ胎仔血清(FBS)、50U/mLのペニシリン、および50μg/mLのストレプトマイシンを補充したフェノールレッドを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Life Technologies Gibco、USA)を使用した。細胞は、インキュベータ(Thermo scientific、USA)内で、37℃の空気/CO2(95:5)の雰囲気において、T75細胞培養フラスコ(NEST、Wuxi China)内で維持した。細胞は、実験前にコンフルエンスに達するまで前培養した。
【0146】
細胞傷害性研究のため、24時間にわたり96ウェルプレートに細胞を播種し(ウェル1つ当たり100μL中7000個の細胞)、次いで、それぞれPdot、GOx、CAT(カタラーゼ)、およびPdot-GOx(+CAT)(異なる最終濃度)を細胞培養培地に添加した。様々な材料と共に細胞を24時間インキュベートした後に、MTT(20μL、5mg/mL、BioSharp、Hefei China)を3時間にわたって添加した。培地を除去し、DMSO(150μL)(Sigma-Aldrich、Shanghai China)を各ウェルに加え、室温で10分間にわたり穏やかに振盪して、形成した沈殿物を全て溶解させた。マイクロプレートリーダー(BioTek Cytation3、USA)を使用することにより、490nmにおける吸光度を測定した。細胞生存率は、Pdot-GOx溶液と共にインキュベートした細胞の吸光度の、培養培地のみと共にインキュベートした細胞の吸光度に対する比によって表した。
【0147】
図6A~
図6Dは、Pdot-GOxトランスデューサを含む様々な材料で処置したHeLa細胞の細胞生存率を例示する。
図6A、
図6B、および
図6Cは、それぞれ、様々な濃度のPdot-GOxトランスデューサ、GOx、およびカタラーゼで処置した細胞の、24時間の細胞生存率を示す。
図6Aはまた、HeLa細胞と同じプロトコールに供したMCF-7細胞およびGES-1細胞の24時間の細胞生存率を例示し、生存率が細胞株に依存しないことを示している。
図6Bにより示されるように、GOx単独は、過酸化水素の発生に起因して細胞死を誘導した。しかしながら、
図6Dに示されるように、カタラーゼの存在下では、Pdot-GOxナノ粒子(<10μg/mL)は、24時間のインキュベーション後の細胞と生体適合性がある。この濃度範囲において、Pdot-GOxセンサは、エンドサイトーシスを介して細胞内に進入することができた。HeLa細胞は、糖不含培養培地中で12時間にわたり、Pdot-GOxナノ粒子と共にインキュベートした。
【0148】
細胞内グルコース検知のため、ポリ-L-リシンでコーティングされた22mmのガラス底培養皿(NEST、Wuxi China)に1.5×104個のHela細胞を播き、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で一晩(37℃、5%のCO2)増殖させた。次いで、これらの細胞を、Pdot-GOx(10μg/mL)およびカタラーゼ(CAT、250kDa、Sigma-Aldrich、Shanghai China)(300nM)を含有する糖不含DMEM中で12時間にわたり培養した。4時間のインキュベーションのため、細胞培養物にグルコースをさらに補充した(25mM)。次いで、細胞を温PBS緩衝液で3回洗浄してから蛍光顕微鏡で見た。
【0149】
0.45NAのLUCPLFLN 20X対物レンズを備えた倒立蛍光顕微鏡(Olympus IX71、日本)で蛍光画像を取得した。水銀ランプから帯域通過フィルタ(Semrock FF01-377/50-25、Rochester、NY USA)によりフィルタリングした励起光を生成した。蛍光シグナルを帯域通過フィルタ(Semrock FF01-655/40-25、Rochester、NY USA)によりフィルタリングし、Andor iXon3フレーム転送EMCCD(Andor、UK)でイメージングした。
【0150】
図7A~
図7Cは、HeLa細胞における細胞内グルコース検知を例示する。
図7Aは、Pdot-GOxインキュベーションをしていない対照群としてのHeLa細胞を示し、
図7Bは、24時間にわたりPdot-GOxナノ粒子と共に糖不含培地でインキュベートした細胞を示す。
図7に示されるように、蛍光イメージングは、細胞によるPdot-GOxナノ粒子の明らかな内部移行を示した。次いで、培養細胞の培地にグルコースを補充した。
図7Cは、24時間にわたりPdot-GOxと共にインキュベートし、4時間にわたりグルコースを補充した細胞を示す。グルコースを与えなかった細胞と比較すると、細胞内発光は大幅に増強されており、Pdot-GOxセンサによる細胞内グルコースの検出の成功が示された。
(実施例6)
in vivoマウスモデルにおける生体適合性
【0151】
この実施例では、本明細書に記載されるナノ粒子トランスデューサの、in vivoで連続的な分析物のモニタリングに使用するための生体適合性を裏付ける、マウス対象を使用した実験を記載する。全ての動物実験において、体重およそ25gで8週齢のBALB/c雄マウス(Vital River Laboratories(VRL)、Beijing China)を用いた。実験群のサイズは各処置につき3頭の動物を含み、結果の十分な再現と動物数の低減を両立させている。イメージングした動物は全て分析に含めた。動物は、in vivoグルコースモニタリングのため、イメージングの前に8時間にわたって絶食させた。各マウスに100μLの抱水クロラール(10重量%)を腹腔内注射して麻酔した。その後、連続的なin vivoグルコースモニタリングのため、マウスの背面に200μLのPdot-GOx(50μg/mL)を皮下注射した。
【0152】
類まれな輝度のため、ミクログラム範囲のPdotトランスデューサが経皮的に検出可能であった;濃度の異なる3つの移植部位が、小動物イメージングシステムを用いて明らかに区別された。Andor iKon-Mフレーム転送CCD(Andor iKon-M 934、UK)およびキセノン光源(Asahi Spectra MAX-303、日本)を備えたカスタム製の小動物イメージングシステムを用いて蛍光動物イメージングを取得した。麻酔投与の25分後、543nmの励起および655nmの発光を用い、5秒の露光時間を使用することにより、蛍光イメージングを行った。イメージング直後、メスを使用してマウスの尾の最大1cmを素早く除去して尾から血液試料を収集し、標準的なグルコース計(Accu-Chek、Roche Diagnostics)を使用することにより血中グルコース濃度を測定した。その後、マウスの腹腔内を200μLの滅菌グルコース溶液(1M)で処置して血中グルコース濃度を上昇させた。15分後、100μLの滅菌インスリン食塩水溶液(0.5U/mL、Wanbang Biopharmaceuticals、Xuzhou China)を腹腔内注射して血中グルコース濃度を低下させた。このプロセスの間、我々は、血中グルコース濃度が正常な範囲に戻るまで5分毎に蛍光画像をキャプチャし、血中グルコース濃度を測定した。対照群の動物については、グルコースおよびインスリンの同時投与の代わりに同じ用量の滅菌食塩水をマウスに注射した。蛍光イメージングは同じ手順に従って行った。グルコースモニタリング実験後、過剰用量の麻酔を注射することによって動物を安楽死させた。
【0153】
図8Aおよび
図8Bは、Pdot-GOxトランスデューサを皮下注射したマウスの蛍光イメージングを例示する。
図8Aは、異なる濃度でPdot-GOxトランスデューサを注射した3つの部位の蛍光イメージングを例示し、
図8Bは、Pdot-GOxを注射した3つの異なる部位の蛍光強度を示す。事実、0.25μg(50μg/mLの5μL)のPdot-GOxは、UVランプ励起下で皮膚層および毛を通して裸眼でも視認可能であった。
図9は、ナノ粒子トランスデューサを皮下注射したマウスの室内光(上)およびUV(下)のもとでの画像を示し、ナノ粒子トランスデューサの蛍光が明らかに視認可能である。移植の材料を微小な量で使用することができるのは、移植部位における炎症を低減させ、移植型センサの生体適合性要件を満たすのに役立つ。
【0154】
生きたマウスの血中グルコースの増減に対するPdot-GOxアセンブリのin vivo応答が、動物全身の生体光イメージングにより明示された。グルコースの腹腔内注射により、マウスの血中グルコースレベルを高血糖範囲内である約20mMまで上昇させた。次いで、インスリン注射を用いて、正常血糖範囲内である約10mMまで血中グルコースレベルを低下させた。比較のため、切断した尾の血液試料を使用し、市販のグルコース計で5分毎に血中グルコース濃度を測定した。始点として、生きたマウスに移植されたPdot-GOxセンサの蛍光画像を麻酔投与後25分目にキャプチャした。その後、マウスの腹腔内を200μLの滅菌グルコース溶液(1M)で処置して血中グルコースレベルを上昇させた。15分後、100μLの滅菌インスリン食塩水(0.5U/mL)を腹腔内投与して血中グルコースレベルを低下させた。
【0155】
プロセス全体の間、蛍光画像を5分毎にキャプチャして、血中グルコース濃度の変化をモニタリングした。
図10Aおよび
図10Bは、それぞれ、グルコース/インスリン処置ありおよびなしのマウスの蛍光画像を示す。イメージング結果により示されるように、蛍光シグナルはグルコース投与直後に増加し、インスリンの注射後に元のレベルまで低下した。対照的に、グルコース/インスリンなしのマウスからの蛍光は変化なしのままである。
図10Cは、グルコースおよびインスリンを投与した3頭のマウスの血中グルコース濃度の関数として、Pdot-GOxセンサの平均ルミネセンス強度および標準偏差を示す。図に明らかに示されているように、ルミネセンス強度(円)は血中グルコースレベル(四角)と密接に相関し、血中グルコース増減による濃度変化に常に沿っていた。グルコース注射を与えなかったマウスについては、
図10Dに示されるように、ルミネセンス強度およびグルコース濃度の両方が比較的一定の状態を保った。これらの観察は、血中グルコース濃度の変化を経皮的にモニタリングするのに十分なシグナルおよび感度をもたらした、Pdot-GOxセンサの優秀なin vivo応答を明白に裏付けた。
(実施例7)
ナノ粒子トランスデューサの薬物動態および安定性
【0156】
皮下注射後のPdot-GOxナノ粒子の薬物動態およびin vivo分布を評価した。
図11は、長期のグルコースモニタリングおよびin vivo分布を例示する。マウスはセンサ移植の30日後に屠殺した。体内分布研究のため、グルコースモニタリング実験後のマウスを過剰用量の麻酔によって安楽死させた。臓器および組織(心臓、肝臓、脾臓、肺、腎臓、大腿筋、および移植部位付近の皮膚組織)を蛍光イメージング分析のために摘除した。最後に、切り出した臓器および組織を組織学および蛍光分析のためにホルマリンに入れた。
【0157】
摘除した臓器および組織を10%緩衝ホルマリン中で一晩かけて固定した。組織は、一連の段階的なエタノール浴によって脱水し、キシレンを使用して透徹し、次いでワックスを浸透させる。次いで、浸透した組織をワックスブロックに包埋する。次いで、ミクロトームを使用して組織を5μmの切片に切り、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)で染色する。組織学的切片を光学顕微鏡下で観察した。皮下投与後の主要臓器および組織内におけるセンサ分布を査定するため、分析のために蛍光イメージングも用いた。UV励起フィルタ(375nm)および赤色発光フィルタ(655nm)を備えた蛍光顕微鏡を用い、H&E染色なしの組織切片の蛍光画像をキャプチャした。皮下組織および様々な臓器を生体光イメージングのために摘除した。
【0158】
図11Aは、Pdot-GOxトランスデューサ(下)または滅菌リン酸緩衝食塩水(上)を皮下注射したマウスから切り出した臓器および皮膚組織の蛍光画像を示す。画像により示されるように、強い蛍光は皮下組織からしか観察されず、Pdot-GOxが1か月もの間にわたって移植部位に留まったことを示している。この時点において、
図11Bに示されるように、対照動物と比較して、肝臓、脾臓、肺、腎臓、心臓、および筋肉を含む様々な臓器において、有意差は観察されなかった。
【0159】
組織切片のさらなる顕微鏡検査は、生体光イメージング結果と一致して、これらの臓器から検出可能なルミネセンスを示さなかった。
図12は、ナノ粒子トランスデューサ注射30日後のマウスの組織切片の組織化学的分析を示す。in vivo分布研究は、Pdot-GOxナノ粒子が主に皮下移植部位内に捕捉され、末梢血に進入しなかったことを示した。注射される溶液中の水分子は末梢組織により急速に吸収され、ほとんど拡散しない安定なナノ粒子アセンブリをもたらしうる。この観察は、基質上のPdot凝集物が有機溶媒中であっても低い溶解性を有するという結論と一致する。
【0160】
移植部位におけるPdot-GOxアセンブリは、連続的グルコースモニタの開発における主要な目標であった、長期間にわたる高感度のグルコース検出を示した。生体光イメージングは、選定された時間間隔で、すなわちPdot-GOxセンサの注射後7日、15日、および30日に行った。
図13A~
図13Cは、ナノ粒子トランスデューサの注射後7日目(
図13A)、15日目(
図13B)、および30日目(
図13C)における生きたマウスの蛍光イメージングを示す。
【0161】
移植されたPdot-GOxアセンブリは、蛍光(円)がグルコース(四角)に近接して沿っている
図11Cおよび
図11Dにそれぞれ示されるように、7日間および15日間にわたって目立った劣化の兆候がなく優れた応答を呈した。
図11Eに示されるように、30日後、センサのルミネセンス強度は依然として血中グルコースレベルと密接に相関し、濃度変化に常に沿っており、上下サイクルにおけるグルコースの変動に対する比較的小さな強度変化から感度がわずかに減少したのみであった。このわずかな劣化は、Pdot表面上の酵素の触媒活性の減少に起因する可能性が高い。
図11Fは、Pdot-GOxを注射したマウス(右)およびPBSを注射した対照群(左)から切り出した臓器切片のヘマトキシリンおよびエオシンによる染色を例示する。対照群と比較すると、目立った臓器損傷も炎症も観察されなかった。組織学的分析は、主要臓器および組織における毒性作用を明らかにせず、Pdot材料との生体適合性を示した。
(実施例8)
携帯型デバイスを用いたグルコース濃度モニタリングのためのナノ粒子トランスデューサ
【0162】
この実施例に例示されるように、ナノ粒子トランスデューサにより、洗練されたイメージング機器類がなくともin vivoグルコース濃度の定量的測定が可能になる。皮下に移植されたPdot-GOxアセンブリのグルコース応答を検出するために、携帯型の光ファイバーベースの微小分光計を使用した。
図14Aは、Pdot-GOxを皮下注射したマウスのUV光(385nm)下での写真を示す。in vivoイメージングに使用したものと同じプロトコールのもとで、経皮蛍光シグナルを収集することにより、移植されたPdot-GOxセンサの発光スペクトルを測定した。
図14Bは、生きたマウスに移植されたPdot-GOxトランスデューサの、グルコースおよびインスリン注射後の強度比の変化(480nmに対して650nm)を示す挿入図とあわせて、385nmで励起した、生きたマウスに移植されたPdot-GOxトランスデューサの蛍光発光スペクトルの動態変化を例示する。
図14Bに示されるように、650nmにおける発光強度は、グルコースおよびインスリンの作用に起因するグルコースレベルの増減を明らかに反映した。最も高いピークは10分時点であり、その後の各10分間隔は、グルコースレベルがインスリンにより低下するのに伴ってなだらかに低下している(0分時点の測定を除く)。0分および40分におけるスペクトルおよびグルコースレベルはほぼ等しく、最も低い強度曲線は60分時点の測定に対応する。480nmにおける青色発光は一定の状態を保ち、レシオメトリックな測定のための内部基準として使用することができる。
図14Cは、グルコースおよびインスリン注射後の、生きたマウスに移植されたPdot-GOxセンサの強度比の変化(480nmに対して650nm)を示す。これらの結果もまた、切断した尾の血液試料を使用してグルコース計により測定した血中グルコースの上昇および低下に密接に従う。コンパクトな携帯型の微小分光計を用いた迅速かつ定量的な測定は、スマートフォンとのシステム統合またはウェアラブルデバイスの開発のために特に望ましい。
(実施例9)
ナノ粒子トランスデューサのためのさらなる発色団および酵素の例
【0163】
この実施例は、代替的な発色団構成を使用したいくつかのさらなるナノ粒子トランスデューサを例示する。記載されている実施例は網羅的ではなく、本明細書に記載される技術を使用して形成することのできる幅広い構造を例示するに過ぎない。グルコースの検出のための例証的な酵素としてGOxを提示するが、他の分析物のモニタリングのために代替的な酵素を用意してもよい;例えば、代替的な分析物を酸化することにより酸素を消費して関連する発色団の蛍光に変化をもたらす酵素とGOx酵素を交換することによって、本明細書に記載されるグルコース感受性を代替的な分析物に置き換えてもよい。このように、酵素が分析物との酸素消費反応を触媒する場合、任意の分析物の検出のための酸素消費酵素と組み合わせれば、いずれの酸素感受性発色団もトランスデューサ蛍光シグナルをもたらすために使用することができる。
【0164】
図15A~
図15Dは、グルコースの検出のためのPdot-GOxトランスデューサにおける、do-PFO、10%のPdOEP、および10%のPSMAを含む発色団を有するナノ粒子トランスデューサからの蛍光発光を示す。
図15Aは、複数のグルコース濃度に対する発光スペクトルを示す。
図15Bは、0mM~約20mMの濃度範囲に対するグルコースを検出する前記トランスデューサの較正プロットを示し、その範囲全体にわたるレシオメトリックな応答曲線を示している。
図15Cは、測定されたグルコース濃度に実質的に重なる発光曲線を示すin vivoのマウス応答データを示す。
図15Dは、グルコースを与えたマウス(上の画像)およびグルコースを与えていない対照群(下の画像)の時間データを含む画像を示す。
図15Cは、測定されたグルコース濃度に実質的に重なる発光曲線を示すin vivoのマウス応答データを示す。
図15Dは、グルコースを与えたマウス(上の画像)およびグルコースを与えていない対照群(下の画像)の時間データを含む画像を示す。
【0165】
図16Aおよび
図16Bは、グルコースの検出のためのPdot-GOxトランスデューサにおける、PSMA、1%のPdOEP、および0.1%のクマリン1を含む発色団を有するナノ粒子トランスデューサからの蛍光発光を示す。
図16Aは、複数のグルコース濃度に対する発光スペクトルを示す。
図16Bは、0~約20mMの濃度範囲に対するグルコースを検出する前記トランスデューサの較正プロットを示し、レシオメトリックな応答曲線を示している。
【0166】
図17Aおよび
図17Bは、グルコースの検出のためのPdot-GOxトランスデューサにおける、PSMA、1%のPtOEPK、および0.1%のナイルレッドを含む発色団を有するナノ粒子トランスデューサからの蛍光発光を示す。
図17Aは、複数のグルコース濃度に対する発光スペクトルを示す。
図17Bは、0~約20mMの濃度範囲に対するグルコースを検出する前記トランスデューサの較正プロットを示し、レシオメトリックな応答曲線を示している。
(実施例10)
反応性分析物の検出のためのナノ粒子センサ
【0167】
本開示のさらなる態様では、触媒酵素を必要とすることなく反応性分析物の検出を可能にするナノ粒子センサが提供される。ナノ粒子センサは、例えば、酸素感受性発色団を含むPdotなどのナノ粒子を供給することによって、アスコルビン酸を検出するために用いることができる。アスコルビン酸は還元剤であるため、自発的に反応して酸素を消費する。したがって、前記センサは、例えば、アスコルビン酸が薬学的分量で存在するとき、アスコルビン酸の存在を検出するために使用することができる。
【0168】
図18Aおよび
図18Bは、アスコルビン酸の検出のためのPdotナノ粒子センサにおける、PDHF、10%のPtOEP、および10%のPSMAを含む発色団を有する例証的なナノ粒子センサからの蛍光発光を示す。
図18Aは、複数のアスコルビン酸濃度に対する発光スペクトルを示す。
図18Bは、約2mM~約20mMの濃度範囲に対するアスコルビン酸を検出する前記センサの較正プロットを示し、その範囲全体にわたるレシオメトリックな応答曲線を示している。
【0169】
図19Aおよび
図19Bは、ナノ粒子センサを使用した、生きたマウスにおけるin vivoでの連続的なアスコルビン酸のモニタリングを例示する。
図19Aは、異なる濃度のアスコルビン酸を投与した、生きたマウスに注射したナノ粒子センサの蛍光強度を例示する。
図19Bは、Pdotセンサを注射された生きたマウスにおける、変動するアスコルビン酸濃度のin vivo蛍光イメージングを示す。
【0170】
図20Aおよび
図20Bは、小型光学検出システムによるアスコルビン酸血中濃度のモニタリングを例示する。
図20Aは、385nmで励起した、生きたマウスに注射されたPdotの蛍光発光スペクトルの、アスコルビン酸の血中濃度に対する動態変化を示す。
図20Bは、アスコルビン酸の静脈内投与後のその血中濃度に対する蛍光強度の応答を時間の関数として示す。したがって、酸素感受性発色団を含むナノ粒子センサを用いたアスコルビン酸のin vivo検出が明示された。
(実施例11)
ナノ粒子トランスデューサを使用した対象のグルコースモニタリングのためのウェアラブルデバイス
【0171】
本明細書に記載されるナノ粒子トランスデューサの長期安定性、高い信頼性、および急速な可逆的応答は、in vivoグルコースモニタリングのためのPdot-GOxトランスデューサの使用を可能にする。この実施例では、記載されるin vivo試験において明示されるように、Pdot-GOxトランスデューサを真皮下に注射し、経皮UV照射を用い、発せられた蛍光を検出して血中グルコースレベルを連続的に決定するプローブによる、連続的な経皮モニタリングができるようにする。Pdot-GOxトランスデューサの蛍光発光に対して感度の高い光学センサと、ナノ粒子の蛍光のためのエネルギーを供給する波長の光を供給する照射源とを備える、ウェアラブルデバイスが提供される。光学センサは、対象の皮膚を通して伝達される蛍光を検出して、血中グルコースの連続的な経皮モニタリングを可能にするように適合されている。光学センサは、デバイス内に配置されたプロセッサおよびメモリに連結している。メモリは命令を含み、命令が実行されると、プロセッサは、光学センサを使用して、グルコースの存在および光源からの照射に応答して複数のPdot-GOxトランスデューサにより発せられた蛍光を測定する。本デバイスは、電力を供給するためのバッテリーをさらに備える。
(実施例12)
人工膵臓のためのグルコースセンサとしてのナノ粒子トランスデューサ
【0172】
この実施例では、Pdot-GOxトランスデューサを人工膵臓内でグルコースセンサとして用い、測定されたグルコースが高ければインスリンの分注を、または測定されたグルコースが低ければインスリン分注の停止をトリガするフィードバックループを提供する。本デバイスは、グルコースが所定の閾値を上回るかまたは下回るのに応答してトリガされるアラーム機能を備える。人工膵臓は、グルコース感受性ナノ粒子トランスデューサと、UV光を供給する照射源と、ナノ粒子発光波長における蛍光を検出するように適合された光学検出器とを備える、移植型デバイスである。このデバイスは、本明細書に記載されるものと同様の較正曲線を使用して、測定された蛍光から血中グルコースレベルを決定するための、また、貯蔵チャンバからインスリンポンプを介した患者へのインスリンの分注を制御するためのプロセッサをさらに備える。必要に応じて、患者の外部にある供給源から貯蔵チャンバへの補給を行ってよい。検出器、プロセッサ、およびポンプは、血中グルコースレベルを所定範囲内に維持するためのフィードバックループを提供し、グルコースレベルが所定範囲外になるとアラームがトリガされうる。所定範囲は、血糖制御の強化または緩和ができるようにユーザにより調節可能である。このデバイスは、較正目的でグルコースレベルを時間の関数としてログするため、ならびにグルコースレベル履歴をユーザに提供するための、メモリも備える。このデバイスは、モバイルデバイスとの、かつ/またはコンピュータネットワーク上での、任意選択の無線通信を可能にする、トランスミッタをさらに備える。
(実施例13)
ナノ粒子トランスデューサを含むコンタクトレンズ
【0173】
この実施例では、対象の眼にレンズを装着した対象の涙液中の分析物を検出するためのナノ粒子トランスデューサを含むコンタクトレンズが提供される。対象により装着されると、眼の涙液がレンズを透過して、ナノ粒子トランスデューサが涙液に接触する。レンズは、グルコースの検出のために上述のように構成された、グルコースオキシダーゼおよび発色団を含むナノ粒子トランスデューサを含む。トランスデューサは、装着者の視力矯正をもたらす形状をした、コンタクトレンズの実質的に透明な膜に包埋されている。対象にはスキャナが提供され、このスキャナは、眼の上に置くことができ、ナノ粒子トランスデューサの蛍光を誘導するための照射を供給し、誘導された蛍光を検出するための検出器を備える。ナノ粒子トランスデューサは、分析物の濃度に応答して変動する強度の光を発し、これにより、対象の涙液中の分析物濃度の測定が行われる。涙液中の分析物の濃度は血液中の分析物の濃度と相関する;したがって、この測定により、血液中の分析物濃度の測定が行われる。スキャナは、糖尿病性網膜症などの状態の検出のための網膜走査を行うこともできる。
(実施例14)
汗の測定から血中グルコースレベルを検出するためのデバイス
【0174】
この実施例では、対象の汗中のグルコースの検出に基づく血中グルコースレベルの測定のためのデバイスが提供される。ウェアラブルバンドと、複数のナノ粒子トランスデューサと、照射源と、光学センサとを備えるデバイスが提供される。ナノ粒子トランスデューサは、グルコースの検出のために上述のように構成された、グルコースオキシダーゼおよび発色団を含む。ナノ粒子トランスデューサは、対象により装着されるとナノ粒子トランスデューサが対象の皮膚に接触するように、デバイスの表面上に配置されている。皮膚上には汗が典型的に存在するため、ナノ粒子トランスデューサはしたがって対象の汗に接触することができる。対象の汗は、血液中のグルコースに比例して変動するグルコースを含有する;したがって、汗のグルコース濃度の測定により、血中グルコースレベルの決定が可能になる。
【0175】
デバイスの照射源は、蛍光を誘導するために、対象の皮膚に接触しているナノ粒子トランスデューサに照射を供給するように位置決めされている。ナノ粒子トランスデューサは、接触した皮膚上の汗の薄膜におけるグルコースの濃度に基づいて変動する蛍光を生成する。この蛍光は、プロセッサに連結した光学センサによって検出される。プロセッサは、光学センサにより検出された蛍光に基づいて汗中のグルコース濃度を決定する。プロセッサは次いで、汗中のグルコース濃度に基づいて血中グルコース濃度を決定する。
(実施例15)
生成物反応要素(H2O2)の検出に基づくナノ粒子トランスデューサ
【0176】
この実施例では、生成物反応要素を検出するためのナノ粒子トランスデューサを生成し、流体構成成分の検出のための例証的なシステムで特徴付けを行った。再沈殿方法を使用してナノ粒子の水分散液を形成した。1つの調製物では、それぞれ、機能性ポリマーPSMAおよび過酸化水素感受性色素を、不活性雰囲気下で一晩にわたり撹拌することにより無水テトラヒドロフラン(THF)に溶解させて、1mg/mLのストック溶液を作製した。これらの溶液をTHF中に希釈および混合して溶液混合物を生成し、これをさらにバスソニケータ内のMilli-Q水に直ちに添加すると同時に混合物を超音波処理した。窒素ストリッピングによりTHFを除去し、90℃のホットプレート上で溶液を5mLに濃縮した後に、0.2ミクロンフィルタを通して濾過した。ナノ粒子形成中、PSMA分子の無水マレイン酸単位が水性環境で加水分解し、Pdot上にカルボキシル基が発生した。H
2O
2感受性色素分子は、ナノ粒子の内部に封入されたか、またはポリマーと会合した。過酸化水素(H
2O
2)は細胞呼吸の副産物であり、多くの酵素触媒反応中に発生しうる。例えばH
2O
2濃度は、グルコースオキシダーゼが触媒するグルコース酸化反応に影響されうる。グルコースにより誘導された過酸化水素濃度の変化は、H
2O
2応答性Pdotトランスデューサを使用することによって光学シグナルに変換することができる。
図21は、ナノ粒子-GOxアセンブリを含むH
2O
2ベースのナノ粒子トランスデューサのスペクトル応答を示す。グルコースを添加すると、GOxが触媒したグルコース酸化反応により発生したH
2O
2の存在に起因して明らかな蛍光増加が観察された。したがって、ナノ粒子-GOxアセンブリは、アセンブリに結合した酵素により触媒される分析物の反応の生成物によって媒介される蛍光に基づいて分析物(この実施例ではグルコース)を検出するためのナノ粒子トランスデューサとして機能する。
【0177】
イオンまたは金属イオンベースのPdotトランスデューサ、pHベースのPdotトランスデューサ、および熱ベースのPdotトランスデューサをはじめとする、他のナノ粒子またはPdotトランスデューサも同様に上述のように調製することができる。金属イオンは、多くの酵素の生物学的機能において重要な役割を果たす。イオンは、電子ドナーもしくはアクセプター、Lewis酸、または構造制御因子として機能しうる。イオンは、触媒プロセスに直接的に関与する。例えば、カルボキシペプチダーゼA、肝アルコールデヒドロゲナーゼ、アスパラギン酸トランスカルバモイラーゼ、およびアルカリホスファターゼは、金属酵素中の金属イオンの異なる役割を示し、一方で亜鉛イオンは、正常な増殖および発達を維持するためのヌクレオチドポリメラーゼにおいて本質的な役割を果たす。したがって、イオン濃度を変化させる反応を触媒する酵素を組み込むことにより、分析物濃度と共に変動する蛍光を発生させる、分析物の検出のためのナノ粒子トランスデューサを構築するために、イオン感受性Pdotを使用することができる。同様に、プロトンドナーおよびアクセプター、例えば酸および塩基は、酵素触媒作用においてプロトンを供与および受容しうる。例えば、セリンプロテアーゼ触媒機構の最初のステップには、活性部位のヒスチジンがセリン残基からプロトンを受容することが関与する。したがって、pHを変化させる反応を触媒する酵素を組み込むことにより、分析物濃度と共に変動する蛍光を発生させる、分析物の検出のためのナノ粒子トランスデューサを構築するために、pH感受性Pdotを使用することができる。
【0178】
本発明の好ましい態様を本明細書に示し記載したが、このような態様は単なる例として提供されていることが当業者には明らかであろう。当業者には、本発明から逸脱することなく、多数の変化形態、変更形態、および置換形態が想起されるであろう。本発明の実践に当たり、本明細書に記載される本発明の態様の様々な代替形態が用いられうることを理解されたい。続く請求項が本発明の範囲を定義すること、ならびに、これらの請求項およびそれらの均等物の範囲内にある方法および構造が本発明の範囲に含まれることが意図される。