(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036632
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】走査装置、走査装置の制御方法、プログラム及び記録媒体並びに測距装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20230307BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20230307BHJP
G02B 26/08 20060101ALN20230307BHJP
G02B 26/10 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G02B26/08 E
G02B26/10 C
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195112
(22)【出願日】2022-12-06
(62)【分割の表示】P 2018152305の分割
【原出願日】2018-08-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白戸 琢也
(57)【要約】
【課題】種々の環境で使用される場合でも対象物に対して正確に走査及び測距を行うことが可能な走査装置及び測距装置を提供する。
【解決手段】
光を方向可変に投光する投光部と、投光部から投光されて対象物によって反射された光を受光する受光部と、を有する走査装置であって、投光部は、第1の方向を主走査方向としかつ第1の方向とは異なる第2の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードと、第2の方向を主走査方向としかつ第1の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードとの切替えを、走査装置の周辺の環境に基づいて行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を方向可変に投光する投光部と、
前記投光部から投光されて対象物によって反射された光を受光する受光部と、を有する走査装置であって、
前記投光部は、第1の方向を主走査方向としかつ前記第1の方向とは異なる第2の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードと、前記第2の方向を主走査方向としかつ前記第1の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードとの切替えを、前記走査装置の周辺の地形、前記走査装置の周辺の建造物の有無、前記走査装置の周辺の道路に塀があるか否か、前記走査装置の周辺の道路がトンネル内にあるか否か、前記走査装置の周辺の道路に歩道があるか否か、前記走査装置の周辺の道路が高速道路であるか否か又は前記走査装置の周辺の道路の形状もしくは寸法に基づいて行うことを特徴とする走査装置。
【請求項2】
前記投光部は、前記走査装置の周辺の道路が事故多発地点であることに基づいて前記第1及び第2の投光モードを切替えることを特徴とする請求項1に記載の走査装置。
【請求項3】
前記投光部は、地図情報によって取得される前記走査装置の周辺の地形、前記走査装置の周辺の建造物の有無、前記走査装置の周辺の道路に塀があるか否か、前記走査装置の周辺の道路がトンネル内にあるか否か、前記走査装置の周辺の道路に歩道があるか否か、前記走査装置の周辺の道路が高速道路であるか否か、又は前記走査装置の周辺の道路の形状もしくは寸法に基づいて前記第1及び第2の投光モードを切替えることを特徴とする請求項1又は2に記載の走査装置。
【請求項4】
前記投光部は、前記走査装置の周辺を撮像した画像によって取得される前記走査装置の周辺の地形、前記走査装置の周辺の建造物の有無、前記走査装置の周辺の道路に塀があるか否か、前記走査装置の周辺の道路がトンネル内にあるか否か、前記走査装置の周辺の道路に歩道があるか否か、前記走査装置の周辺の道路が高速道路であるか否か、又は前記走査装置の周辺の道路の形状もしくは寸法に基づいて前記第1及び第2の投光モードを切替えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の走査装置。
【請求項5】
前記主走査方向に沿って前記投光部から投光される光の投光方向の可変範囲は、前記副走査方向に沿って前記投光部から投光される光の投光方向の可変範囲よりも広いことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の走査装置。
【請求項6】
前記投光部は、光源と、互いに異なる第1及び第2の揺動軸の周りに揺動することで前記光源からの出射光を前記第1及び第2の方向に沿って方向可変に反射させる揺動ミラーと、を有し、
前記投光部は、前記揺動ミラーを前記第1の揺動軸の周りに共振させつつ揺動させるか、又は前記揺動ミラーを前記第2の揺動軸の周りに共振させつつ揺動させるか、を切替えることで、前記第1及び第2の投光モードを切替えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の走査装置。
【請求項7】
前記投光部は、光源と、第1の揺動軸の周りに揺動することで前記光源からの出射光を前記第1の方向に沿って方向可変に反射させる第1の揺動ミラーと、前記第1の揺動軸の軸方向とは異なる方向に延びる第2の揺動軸の周りに揺動することで前記第1の揺動ミラーを経た前記出射光を前記第2の方向に沿って方向可変に反射させる第2の揺動ミラーと、を有し、
前記投光部は、前記第1の揺動ミラーを共振させつつ揺動させるか、又は前記第2の揺動ミラーを共振させつつ揺動させるか、を切替えることで、前記第1及び第2の投光モードを切替えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の走査装置。
【請求項8】
前記投光部は、前記走査装置の周辺の地形、前記走査装置の周辺の建造物の有無、前記走査装置の周辺の道路に塀があるか否か、前記走査装置の周辺の道路がトンネル内にあるか否か、前記走査装置の周辺の道路に歩道があるか否か、前記走査装置の周辺の道路が高速道路であるか否か、又は前記走査装置の周辺の道路の形状もしくは寸法に基づいて前記光源による光の出射態様を変化させることを特徴とする請求項6又は7に記載の走査装置。
【請求項9】
前記投光部は、移動体に搭載されるか又は移動可能に構成され、
前記投光部は、前記投光部の周辺の道路の態様に基づいて前記第1及び第2の投光モードを切替えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の走査装置。
【請求項10】
光を方向可変に投光する投光部と、
前記投光部から投光されて対象物によって反射された光を受光する受光部と、を有する走査装置であって、
前記投光部は、第1の方向を主走査方向としかつ前記第1の方向とは異なる第2の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードと、前記第2の方向を主走査方向としかつ前記第1の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードとの切替えを、前記走査装置の周辺の地形又は前記走査装置の周辺の道路の形態に基づいて、かつ、前記走査装置の周辺の道路が事故多発地点であるか否かに基づいて行うことを特徴とする走査装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1つに記載の走査装置と、
前記受光部による光の受光結果に基づいて前記対象物までの距離を測定する測距部と、を有することを特徴とする測距装置。
【請求項12】
第1の方向を主走査方向としかつ前記第1の方向とは異なる第2の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モード及び前記第2の方向を主走査方向としかつ前記第1の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードを有する投光部と、前記投光部から投光されて対象物によって反射された光を受光する受光部と、を有する走査装置を制御する方法であって、
前記走査装置の周辺の地形、前記走査装置の周辺の建造物の有無、前記走査装置の周辺の道路に塀があるか否か、前記走査装置の周辺の道路がトンネル内にあるか否か、前記走査装置の周辺の道路に歩道があるか否か、前記走査装置の周辺の道路が高速道路であるか否か、又は前記走査装置の周辺の道路の形状もしくは寸法に基づいて前記投光部の前記第1及び第2の投光モードを切替えることを特徴とする方法。
【請求項13】
コンピュータを、
第1の方向を主走査方向としかつ前記第1の方向とは異なる第2の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モード及び前記第2の方向を主走査方向としかつ前記第1の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードを有する投光部と、前記投光部から投光されて対象物によって反射された光を受光する受光部と、を有する走査装置を、
前記走査装置の周辺の地形、前記走査装置の周辺の建造物の有無、前記走査装置の周辺の道路に塀があるか否か、前記走査装置の周辺の道路がトンネル内にあるか否か、前記走査装置の周辺の道路に歩道があるか否か、前記走査装置の周辺の道路が高速道路であるか否か、又は前記走査装置の周辺の道路の形状もしくは寸法に基づいて前記投光部の前記第1及び第2の投光モードを切替えるように制御する制御部として機能させるプログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のプログラムが記録された記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査を行う走査装置、走査装置の制御方法、走査装置の制御プログラム及び記録媒体、光測距を行う測距装置、並びに地図データに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光を対象物に照射し、当該対象物によって反射された光を検出することで、当該対象物までの距離を測定する測距装置が知られている。また、対象物の光走査を行い、当該対象物までの距離に加えて当該対象物の形状や向きなどに関する情報を得ることができる光走査型の測距装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光反射面を有し、当該光反射面に入射される光を対象領域内でリサージュ走査できる光走査部と、光源部から出射されて物体によって反射された光を受光する受光部と、当該物体の距離を計測する測距部と、を備える光測距装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走査型の測距装置は、例えば、所定の走査領域に対して光走査を行い、その走査結果に基づいて光学的な測距を行う。従って、走査領域内には、多数の物体が存在することが想定される。また、例えば測距装置が移動体に搭載される場合などにおいては、例えば道路環境など、走査領域(すなわち測距対象の領域)の状況が刻々と変化する。走査型の測距装置は、例えばこのような環境で使用される場合をも考慮して、当該走査領域に存在する全ての対象物に対し、正確に走査及び測距を行うことができることが好ましい。
【0006】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、種々の環境で使用される場合でも対象物に対して正確に走査及び測距を行うことが可能な走査装置及び測距装置を提供することを目的の1つとしている。また、本発明は、種々の環境で使用される場合でも対象物に対して正確に走査を行うことが可能な走査装置の制御方法、制御プログラム及び当該制御プログラムが記録された記録媒体を提供することを目的の1つとしている。また、本発明は、種々の環境で使用される場合でも対象物に対して正確に走査及び測距を行うことが可能な情報を含む地図データを提供することを目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、光を方向可変に投光する投光部と、投光部から投光されて対象物によって反射された光を受光する受光部と、を有する走査装置であって、投光部は、第1の方向を主走査方向としかつ第1の方向とは異なる第2の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードと、第2の方向を主走査方向としかつ第1の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードとの切替えを、走査装置の周辺の環境に基づいて行うことを特徴とする。
【0008】
また、請求項10に記載の発明は、請求項1に記載の走査装置と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項11に記載の発明は、第1の方向を主走査方向としかつ第1の方向とは異なる第2の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モード及び第2の方向を主走査方向としかつ第1の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードを有する投光部と、投光部から投光されて対象物によって反射された光を受光する受光部と、を有する走査装置を制御する方法であって、走査装置の周辺の環境に基づいて投光部の前記第1及び第2の投光モードを切替えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項12に記載の発明は、コンピュータを、第1の方向を主走査方向としかつ第1の方向とは異なる第2の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モード及び第2の方向を主走査方向としかつ第1の方向を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードを有する投光部と、投光部から投光されて対象物によって反射された光を受光する受光部と、を有する走査装置を、走査装置の周辺の環境に基づいて投光部の第1及び第2の投光モードを切替えるように制御する制御部として機能させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項13に記載の発明は、請求項12に記載のプログラムが記録されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1に係る測距装置の全体構成を示す図である。
【
図2】実施例1に係る測距装置における偏向素子の上面図である。
【
図3】実施例1に係る測距装置の走査態様を示す図である。
【
図4】実施例1に係る測距装置の走査態様を示す図である。
【
図5】実施例1に係る測距装置におけるモード切替のテーブルを示す図である。
【
図6A】実施例1に係る測距装置が取得する地図情報のデータ構造を例示する図である。
【
図6B】実施例1に係る測距装置が取得する地図情報のデータ構造を例示する図である。
【
図6C】実施例1に係る測距装置が取得する地図情報のデータ構造を例示する図である。
【
図7】実施例1に係る測距装置の走査態様を示す図である。
【
図8】実施例1の変形例に係る測距装置における偏向素子の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例0014】
図1は、実施例1に係る測距装置10の模式的な配置図である。測距装置10は、所定の領域(以下、走査領域と称する)R0の光走査を行い、走査領域R0内に存在する対象物OBまでの距離を測定する走査型の測距装置である。また、
図1は、制御部17のブロック図である。
図1を用いて、測距装置10について説明する。なお、
図1には、走査領域R0及び対象物OBを模式的に示している。
【0015】
まず、測距装置10は、光を方向可変に投光する投光部11と、投光部11から投光されて対象物OBによって反射された光を受光する受光部12と、を有する。本実施例においては、投光部11は、パルス光L1を出射する光源13と、パルス光L1を方向可変に偏向しつつ走査光(出射光と称する場合がある)L2として走査領域R0に向けて投光する偏向素子14と、を有する。また、本実施例においては、光源13は、パルス光L1として赤外領域にピーク波長を有するレーザ光を生成し、これを断続的に出射する。
【0016】
また、本実施例においては、偏向素子14は、周期的な動作を行ってパルス光L1の偏向方向を周期的に変化させる。偏向素子14は、パルス光L1の進行方向を屈曲させつつ出射し、またその屈曲方向を周期的に変化させる。偏向素子14は、偏向されたパルス光L1を走査光L2として走査領域R0に向けて投光する。
【0017】
本実施例においては、偏向素子14は、互いに直交する2つの揺動軸の周りに揺動し、パルス光L1を反射させる揺動ミラー14Aを有する。本実施例においては、偏向素子14は、揺動ミラー14Aが揺動することで、パルス光L1の反射方向を周期的に変化させる。
【0018】
なお、走査領域R0は、偏向素子14から走査光L2が投光される仮想の3次元空間である。
図1においては、走査領域R0の外縁を破線で模式的に示した。
【0019】
例えば、走査領域R0は、揺動ミラー14Aの2つ揺動軸周りの揺動方向に対応するパルス光L1の偏向方向の可変範囲に対応する方向に沿った幅方向及び高さ方向の方向範囲と、走査光L2が所定の強度を維持できる距離方向の範囲(すなわち奥行範囲)と、を有する錐状の空間として定義されることができる。
【0020】
また、走査領域R0内における偏向素子14から所定の距離だけ離れた仮想の平面を走査面R1としたとき、走査面R1は、2次元的な領域として定義されることができる。走査光L2は、この走査面R1を走査するように、走査領域R0に向けて投光される。
【0021】
そして、
図1に示すように、走査領域R0に対象物OB(すなわちパルス光L1に対して反射性又は散乱性を有する物体又は物質)が存在する場合、走査光L2は、対象物OBによって反射又は散乱される。対象物OBによって反射された走査光L2は、その一部が、反射光L3として、走査光L2とほぼ同一の光路を走査光L2とは反対の方向に向かって進み、偏向素子14に戻って来る。
【0022】
反射光L3は、偏向素子14によって屈曲される。反射光L3は、偏向素子14によって屈曲された後、パルス光L1とほぼ同一の光路をパルス光L1とは反対の方向に向かって進む。
【0023】
受光部12は、対象物OBによって反射されて偏向素子14に戻ってきた走査光L2である反射光L3を受光する受光素子15を有する。受光素子15は、反射光L3を検出し、反射光L3に応じた電気信号を生成する少なくとも1つの光電変換素子を含む。受光部12は、受光素子15によって生成された電気信号を反射光L3の受光結果として生成する。
【0024】
なお、本実施例においては、光源13と偏向素子14との間のパルス光L1の光路上には、反射光L3を分離して受光素子15に導く光分離素子BSを有する。例えば、光分離素子BSは、パルス光L1を透過させかつ反射光L3を反射させることでパルス光L1及び反射光L3を分離するビームスプリッタである。なお、光の利用効率を向上させるために、光分離素子BSが設けられず、投光部11と受光部12とがほぼ同軸に配置され、パルス光L1の揺動ミラー14Aへの入射位置と反射光L3の揺動ミラー14Aへの入射位置とがわずかにずれるように投光部11及び受光部12が構成されていてもよい。
【0025】
測距装置10は、走査領域R0又はその一部の領域(以下、撮像領域と称する)R2を撮像する撮像部16を含む。撮像部16は、例えば赤外線カメラからなる。なお、
図1においては、撮像領域R2を破線で模式的に示した。撮像部16は、例えば、所定の間隔で走査領域R0を撮像した画像を生成及び出力する。
【0026】
なお、投光部11及び撮像部16は、例えば、互いに近接して配置され、かつほぼ同一の方向を向いていることが好ましい。そして、走査領域R0と撮像領域R2がほぼ同一の領域となるように構成されていることが好ましい。すなわち、投光部11から見た走査面R1内の対象物OBの位置及び外形と、撮像部16から見た走査面R1内の対象物OBの位置及び外形とが極力一致していることが好ましい。
【0027】
次に、測距装置10は、投光部11、受光部12及び撮像部16の動作を制御し、また、受光部12による反射光L3の受光結果に基づいて対象物OBまでの距離を測定する制御部17を有する。
【0028】
制御部17は、測距装置10の周辺の環境を示す情報(以下、環境情報と称する)を取得する環境情報取得部21を有する。本実施例においては、環境情報取得部21は、走査領域R0を含む投光部11及び受光部12の周辺の地理環境に関する情報を取得する。本明細書においては、地理環境に関する情報とは、例えば、地形及び水文などの自然環境に関する情報、並びに、道路、住宅及び農地などの人工環境に関する情報をいう。
【0029】
環境情報取得部21は、例えば、測距装置10(投光部11及び受光部12)の現在位置に関する情報を取得する。例えば、環境情報取得部21は、測距装置10の測位を行う測位装置(図示せず)を有していてもよい。そして、環境情報取得部21は、例えば、測距装置10の周辺の環境情報を取得する。
【0030】
本実施例においては、環境情報取得部21は、測距装置10の周辺の地図に関する情報である地図情報を取得する地図情報取得部21Aを有する。また、本実施例においては、環境情報取得部21は、撮像部16から、撮像部16によって撮像された画像を取得する。本実施例においては、環境情報取得部21は、これらの情報を測距装置10の周辺の環境情報として取得する。
【0031】
制御部17は、環境情報取得部21によって取得された測距装置10の周辺の環境情報に基づいて投光部11の投光モードを制御する投光モード制御部22を有する。本実施例においては、投光モード制御部22は、偏向素子14におけるパルス光L1の偏向態様、本実施例においては揺動ミラー14Aの揺動態様を制御する偏向モード制御部22Aを有する。
【0032】
具体的には、偏向モード制御部22Aは、偏向素子14を駆動して揺動ミラー14Aを2つの揺動軸の周りにそれぞれ揺動させる駆動信号DX及びDYを生成する。また、偏向モード制御部22Aは、当該駆動信号DX及びDYの態様を制御しつつ偏向素子14に供給することで、揺動ミラー14Aの揺動態様を制御する。
【0033】
また、本実施例においては、投光モード制御部22は、光源13によるパルス光L1の出射間隔を制御するパルス間隔制御部22Bを有する。具体的には、パルス間隔制御部22Bは、光源13を駆動してパルス光L1を出射させかつパルス光L1の出射及び非出射を切替えることでパルス光L1の出射態様を制御する駆動信号を生成する。パルス間隔制御部22Bは、当該駆動信号を光源13に供給する。
【0034】
制御部17は、受光素子15による反射光L3の受光結果に基づいて、対象物OBまでの距離を測定する測距部23を有する。本実施例においては、測距部23は、受光素子15によって生成された電気信号から反射光L3を示すパルスを検出する。また、測距部23は、走査光L2の投光タイミングと反射光L3の受光タイミングとの間の時間差に基づくタイムオブフライト法によって、対象物OB(又はその一部の表面領域)までの距離を測定する。また、測距部23は、測定した距離情報を示すデータ(測距データ)を生成する。
【0035】
また、本実施例においては、測距部23は、走査領域R0(走査面R1)を複数の測距点(走査点又は投光点)に区別し、当該複数の測距点の各々の測距結果(距離値)を画素として示す走査領域R0の画像(測距画像)を生成する。本実施例においては、測距部23は、測距点と偏向素子14の揺動ミラー14Aの変位(揺動位置)とを示す情報とを対応付け、走査領域R0内の対象物OBまでの距離を示す2次元マップである画像データを生成する。
【0036】
また、測距部23は、例えば、走査光L2の投光方向の変化周期、すなわち走査領域R0を走査する周期である走査周期を測距画像の生成周期とし、当該走査周期毎に1つの測距画像を生成する。また、測距部23は、生成した複数の測距画像を時系列に沿って動画として表示する表示部(図示せず)を有していてもよい。
【0037】
なお、走査周期とは、例えば、測距装置10が走査領域R0に対する光走査を周期的に行う場合において、偏向素子14の揺動ミラー14Aの任意の変位の状態が、その後に再度当該変位の状態に戻るまでの期間をいう。
【0038】
図2は、偏向素子14の上面図である。本実施例においては、偏向素子14は、第1及び第2の揺動軸AX及びAYの周りに揺動する揺動ミラー14Aを有するMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーである。まず、本実施例においては、偏向素子14は、フレーム部31と、フレーム部31によって支持され、第1及び第2の揺動軸AX及びAYの周りに揺動する揺動部32とを有する。
【0039】
揺動部32は、一端がフレーム部31の内周部に固定され、第1の揺動軸AXに沿って延び、かつ第1の揺動軸AXの周方向の弾性を有する一対のトーションバーTXを有する。また、揺動部32は、一対のトーションバーTXの内側において第1の揺動軸AXの周りに揺動可能なように一対のトーションバーTXの他端に接続された揺動枠SXを有する。揺動枠SXは、一対のトーションバーTXが第1の揺動軸AXの周方向に沿ってねじれることで、第1の揺動軸AXの周りに揺動する。
【0040】
また、揺動部32は、一端が揺動枠SXの内周部に固定され、第2の揺動軸AYに沿って延び、かつ第2の揺動軸AYの周方向の弾性を有する一対のトーションバーTYを有する。また、揺動部32は、一対のトーションバーTYの内側において第2の揺動軸AYの周りに揺動可能なように一対のトーションバーTYの他端に接続された揺動板SYを有する。
【0041】
揺動板SYは、一対のトーションバーTYが第2の揺動軸AYの周方向に沿ってねじれることで、第2の揺動軸AYの周りに揺動する。また、揺動板SYは、揺動枠SXが第1の揺動軸AXの周りに揺動することで、第1及び第2の揺動軸AX及びAYの周りに揺動する。
【0042】
偏向素子14は、電磁気的に揺動部32を揺動させる揺動力(すなわち偏向素子14の駆動力)を生成する駆動力生成部33を有する。駆動力生成部33は、フレーム部31上に配置された永久磁石MGと、揺動枠SX上において揺動枠SXの外周に沿って配線された金属配線(第1のコイル)CXと、揺動板SY上において揺動板SYの外周に沿って配線された金属配線(第2のコイル)CYと、を含む。
【0043】
本実施例においては、永久磁石MGは、フレーム部31上における揺動部32の外側領域に設けられた複数の磁石片からなる。本実施例においては、4つの磁石片が、それぞれ、揺動軸AX及びAYの各々に沿ってかつ一対のトーションバーTX及びTYの外側の位置に配置されている。
【0044】
また、揺動軸AXに沿った方向において互いに対向する2つの磁石片は、互いに反対の極性を示す部分が対向するように配置されている。同様に、揺動軸AYに沿った方向において互いに対向する2つの磁石片は、互いに反対の極性を示す部分が対向するように配置されている。
【0045】
本実施例においては、金属配線CXに電流が流れると、揺動軸AYに沿った方向に並んだ永久磁石MGの2つの磁石片によって生じた磁界との相互作用により、一対のトーションバーTXが周方向にねじれ、揺動枠SXが揺動軸AXを中心に揺動する。同様に、金属配線CYに流れた電流による電界と揺動枠AXに沿った方向に並んだ永久磁石MGの2つの磁石片による磁界とによって一対のトーションバーTYがねじれ、揺動板SYが揺動軸AYを中心に揺動する。
【0046】
また、金属配線CX及びCYは、制御部17に接続されている。制御部17の投光モード制御部22は、金属配線CX及びCYに駆動信号DX及びDYを印加する。駆動力生成部33は、当該駆動信号DX及びDYの印加によって、揺動部32を揺動させる電磁気力を生成する。
【0047】
なお、駆動力生成部33は、電磁気的に揺動ミラー14Aの揺動力を生成するように構成されていてもよい。駆動力生成部33は、例えば、静電気的、圧電的又は熱的に揺動板SYを揺動させる揺動力を生成してもよい。
【0048】
また、偏向素子14は、揺動板SY上に形成された光反射膜34を有する。光反射膜34は、揺動板SYの揺動に従って、第1及び第2の揺動軸AX及びAYの周りに揺動する。本実施例においては、光反射膜34は、偏向素子14における揺動ミラー14Aとして機能する。
【0049】
図3及び
図4は、投光部11が有する走査光L2の投光モードを示す図である。
図3及び
図4は、それぞれ、第1及び第2の投光モードM1及びM2における駆動信号DX及びDYの波形及び走査面R1上の走査光L2の軌跡を示す図である。
図3及び
図4を用いて、投光部11(光源13及び偏向素子14)の動作について説明する。
【0050】
本実施例においては、第1の投光モードM1においては、光源13は、パルス光L1として、レーザ光を出射するように構成されている。また、第1の投光モードM1においては、偏向素子14は、揺動ミラー14Aを、第1の揺動軸AXの周りには共振させつつ揺動させ、第2の揺動軸AYの周りには非共振の態様で揺動させる。
【0051】
なお、偏向素子14の共振周波数は、例えば、偏向素子14の質量、トーションバーTX及びTYのねじりばね定数などによって決まる。また、例えば、揺動ミラー14Aを共振させつつ揺動させる場合、非共振の場合に比べ、短い揺動周期と大きい揺動振幅で揺動させることができる。
【0052】
例えば、制御部17のパルス間隔制御部22Bは、光源13に対し、所定の時間間隔でパルス化されたレーザ光を生成させる駆動信号を供給する。また、制御部17の偏向モード制御部22Aは、金属配線CXに対し、駆動信号DXとして、偏向素子14における揺動ミラー14Aの第1の揺動軸AX周りの共振周波数に対応する周波数の正弦波の信号DX1を供給する。
【0053】
一方、制御部17の偏向モード制御部22Aは、金属配線CYに対し、駆動信号DYとして、偏向素子14における揺動ミラー14Aの第2の揺動軸AY周りの共振周波数とは異なる周波数ののこぎり波の信号DY1を供給する。これによって、揺動ミラー14Aは、第1の揺動軸AXの周りには高速で(短い揺動周期で)揺動し、第2の揺動軸AYの周りには低速で(長い揺動周期で)揺動する。
【0054】
従って、本実施例においては、第1の投光モードM1においては、投光部11は、走査領域R0に対し、偏向素子14における揺動ミラー14Aの第1の揺動軸AX周りの変位方向に対応する方向である第1の方向D1を主走査方向とし、偏向素子14における揺動ミラー14Aの第2の揺動軸AY周りの変位方向に対応する方向である第2の方向D2を副走査方向とするラスタ走査を行う。従って、偏向素子14から走査面R1を見たとき、走査光L2は、
図3に示すような軌跡TR1を描くように投光される。なお、主走査方向とは、例えば、副走査方向に比べて走査周期が短い(高速で揺動する)方向のことをいう。
【0055】
また、第1の投光モードM1においては、投光部11は、第1の方向D1を長辺方向とし、第2の方向D2を短辺方向とする略長方形の走査面R11に対応する走査領域R0に対して走査光L2を投光することとなる。また、第1の投光モードM1においては、投光部11は、パルス光L1を第1の方向D1に沿って順次投光し、この投光動作を第2の方向D2に沿って繰り返し行うような投光態様を有する。
【0056】
以下においては、第1の方向D1を走査面R1の縦方向又はy軸方向と称し、第2の方向を走査面R1の横方向又はx軸方向と称する場合がある。また、例えば、揺動ミラー14Aの第2の揺動軸AYが鉛直方向に沿った方向となるように測距装置10を配置した場合、第1の方向D1は鉛直方向に対応し、第2の方向D2は水平方向に対応する。また、以下においては、第1の投光モードM1を縦ラスタ走査モードと称する場合がある。
【0057】
次に、
図4に示すように、第2の投光モードM2においては、投光部11は、第2の方向D2を主走査方向とし、第1の方向D1を副走査方向とするラスタ走査を行うような態様で走査光L2を投光する。
【0058】
具体的には、光源13は、本実施例においては、第2の投光モードM2においても、パルス光L1として、レーザ光を所定の時間間隔で出射するように構成されている。
【0059】
一方、第2の投光モードM2においては、偏向素子14は、揺動ミラー14Aを、第2の揺動軸AYの周りには共振させつつ揺動させ、第1の揺動軸AXの周りには非共振の態様で揺動させる。
【0060】
例えば、
図4に示すように、制御部17の偏向モード制御部22Aは、金属配線CXに対し、駆動信号DXとして、偏向素子14における揺動ミラー14Aの第1の揺動軸AX周りの共振周波数とは異なる周波数ののこぎり波の信号DX2を供給する。
【0061】
また、制御部17の偏向モード制御部22Aは、金属配線CYに対し、駆動信号DYとして、偏向素子14における揺動ミラー14Aの第2の揺動軸AY周りの共振周波数に対応する周波数の正弦波の信号DY2を供給する。これによって、揺動ミラー14Aは、第1の揺動軸AXの周りには低速で(長い揺動周期で)揺動し、第2の揺動軸AYの周りには高速で(短い揺動周期で)揺動する。
【0062】
従って、本実施例においては、第2の投光モードM2においては、投光部11は、走査領域R0に対し、第2の方向D2を主走査方向とし、第1の方向D1を副走査方向とするラスタ走査を行う。従って、偏向素子14から走査面R1を見たとき、走査光L2は、
図4に示すような軌跡TR2を描くように投光される。
【0063】
また、第2の投光モードM2においては、投光部11は、第2の方向D2を長辺方向とし、第1の方向D1を短辺方向とする略長方形の走査面R12に対応する走査領域R0に対して走査光L2を投光することとなる。また、第2の投光モードM2においては、投光部11は、パルス光L1を第2の方向D2に沿って順次投光し、この投光動作を第1の方向D1に沿って繰り返し行うような投光態様を有する。すなわち、第2の投光モードM2は、横方向を主走査方向とするラスタ走査を行う横ラスタ走査モードである。
【0064】
このように、本実施例においては、投光部11は、揺動ミラー14Aを第1の揺動軸AXの周りに共振させつつ揺動させるか、又は揺動ミラー14Aを第2の揺動軸AYの周りに共振させつつ揺動させるか、を切替えることで、第1及び第2の投光モードM1及びM2を切替える。
【0065】
また、縦ラスタ走査モードM1においては、縦方向D1に沿った走査光L2の投光方向の可変範囲は、横方向D2に沿った走査光L2の投光方向の可変範囲よりも広い。また、横ラスタ走査モードM2においては、横方向D2に沿った走査光L2の投光方向の可変範囲は、縦方向D1に沿った走査光L2の投光方向の可変範囲よりも広い。すなわち、本実施例においては、主走査方向に沿って投光部11から投光される光の投光方向の可変範囲は、副走査方向に沿って投光部11から投光される光の投光方向の可変範囲よりも広い。
【0066】
なお、上記においては、第2の方向D2が第1の方向D1に垂直な方向である場合について説明した。しかし、第2の方向D2は、第1の方向D1とは異なる方向であればよい。投光部11は、第1の方向D1を主走査方向としかつ第1の方向D1とは異なる第2の方向D2を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードM1と、第2の方向D2を主走査方向としかつ第1の方向D1を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードM2と、を有していればよい。
【0067】
図5は、投光モード制御部22における投光モードPMの制御テーブルの例を示す図である。本実施例においては、投光モード制御部22は、環境情報取得部21によって取得された測距装置10の周辺の環境情報EIに基づいて、縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2を切替える。
【0068】
なお、本実施例においては、測距装置10が車両などの移動体に搭載される場合について説明する。本実施例においては、環境情報取得部21は、測距装置10の周辺の環境情報として、当該移動体が移動している際の当該移動体の周辺の環境に関する情報を取得する。そして、投光モード制御部22は、当該移動体の移動環境に関する情報に基づいて、投光部11の投光モードPMを制御する。
【0069】
より具体的には、本実施例においては、環境情報取得部21が、環境情報EIとして、移動体(測距装置10)が幅の狭い道路を走行していることを示す情報を取得した場合、投光モード制御部22は、縦ラスタ走査モードM1で走査光L2を投光するように、偏向素子14の動作を制御する。
【0070】
同様に、環境情報EIとして移動体が塀のある道路を走行していること(道路の両側部が塀に囲まれていること)を示す情報が取得された場合、投光モード制御部22は、縦ラスタ走査モードM1で走査光L2を投光するように、偏向素子14の動作を制御する。例えば、上記した2つの状況では、横方向D2に広い範囲の走査を行ってもその全域で有益な情報を得られる可能性が低い。従って、縦方向D1に広い走査領域R11を有する縦ラスタ走査モードM1に設定されることが好ましい。
【0071】
次に、環境情報EIとして移動体が坂道を走行していることを示す情報が取得された場合、投光モード制御部22は、縦ラスタ走査モードM1で走査光L2を投光するように、偏向素子14の動作を制御する。坂道を走行中の場合、移動体の進行方向の見通しが悪く、当該進行方向に広い領域の走査情報を得ることが安全上好ましい場合が多い。従って、当該進行方向に対応する縦方向D1に広い走査領域R11を有する縦ラスタ走査モードM1に設定されることが好ましい。
【0072】
また、環境情報EIとして移動体が高速道路を走行していることを示す情報が取得された場合、投光モード制御部22は、縦ラスタ走査モードM1で走査光L2を投光するように、偏向素子14の動作を制御する。高速道路を走行中の場合、移動体の進行方向の状況が高速で変化するために、当該進行方向に広い領域の走査情報を得ることが安全上好ましい場合が多い。従って、当該進行方向に対応する縦方向D1に広い走査領域R11を有する縦ラスタ走査モードM1に設定されることが好ましい。
【0073】
一方、環境情報EIとして移動体がトンネル内を走行していることを示す情報が取得された場合、投光モード制御部22は、横ラスタ走査モードM2で走査光L2を投光するように、偏向素子14の動作を制御する。トンネル内を走行中の場合、移動体の進行方向に対応する縦方向D1に広い範囲の走査を行ってもその全域で有益な情報を得られる可能性が低い。従って、横方向D2に広い走査領域R12を有する横ラスタ走査モードM2に設定されることが好ましい。
【0074】
また、環境情報EIとして移動体が幅の広い道路、車線数の多い道路、又は合流地点の周辺を走行していることを示す情報が取得された場合、投光モード制御部22は、横ラスタ走査モードM2で走査光L2を投光するように、偏向素子14の動作を制御する。これらの状況では、移動体の左右方向に広い領域の走査情報を得ることが安全上好ましい。従って、当該左右方向に対応する横方向D2に広い走査領域R12を有する横ラスタ走査モードM2に設定されることが好ましい。
【0075】
また、環境情報EIとして移動体が歩道のある道路、又は交差点の周辺を走行していることを示す情報が取得された場合、投光モード制御部22は、横ラスタ走査モードM2で走査光L2を投光するように、偏向素子14の動作を制御する。これらの状況では、横から歩行者や他車両が出てくることが想定される。従って、移動体の左右方向に広い領域の走査情報を得ることが安全上好ましい。従って、当該左右方向に対応する横方向D2に広い走査領域R12を有する横ラスタ走査モードM2に設定されることが好ましい。
【0076】
このように、環境情報取得部21は、測距装置10(測距装置10が搭載された移動体)の周辺の道路の態様に関する情報を取得する。そして、投光モード制御部22は、当該道路の態様に関する情報に基づいて、投光部11の投光モードPMを制御する。従って、投光部11は、投光部11の周辺の道路の態様に基づいて縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2を切替える。
【0077】
なお、上記した環境情報EI及びこれに基づく投光モード制御部22による投光モードPMの制御態様は、一例に過ぎない。例えば、測距装置10は、移動体に搭載され、移動体とともに移動する場合に限定されない。
【0078】
例えば、測距装置10は、屋内や屋外に関わらず、種々の地点に固定され、一定の領域を走査領域R0として走査及び測距を行うように使用されてもよい。この場合、環境情報取得部22は、環境情報EIとして、測距装置10が設置された地点の周辺の地形や室内環境に関する情報を取得すればよい。そして、測距装置10の投光部11は、例えば投光部11及び受光部12の周辺の環境に基づいて、縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2を切替えることができるように構成されていればよい。
【0079】
図6A、
図6B及び
図6Cは、環境情報取得部21の地図情報取得部21Aが取得する地図情報を示すデータ(以下、地図データと称する)DTのデータ構造を模式的に示す図である。地図情報取得部21Aが取得する地図データDTは、
図6A~
図6Cに示すような種々のデータを含んでいてもよい。
【0080】
具体的には、まず、
図6Aに示すように、地図データDTは、地図上の所定の領域を特定する情報(以下、領域情報と称する)RIを含むデータ(以下、領域データ)DT11と、当該地点毎の環境情報EIを含むデータ(以下、環境データと称する)DT2と、を含む。
【0081】
図6Aに示す例では、領域情報RIは、道路網のリンクを特定するリンクIDを含む。また、環境データDT2は、例えば、
図5を用いて上記したような環境情報EIを含む。例えば、環境データDT2は、当該地点が含まれるリンクの態様に関する情報を含む。また、例えば、環境データDT2は、当該リンクの幅に関する情報、当該リンクの車線数に関する情報、当該リンクの勾配に関する情報を含む。
【0082】
また、地図データDTは、測距装置10が走査光L2を投光する際の推奨される投光モードPMを示しかつ当該領域情報RIに関連付けられた情報(以下、推奨モード情報と称する)SIを含むデータ(以下、推奨モードデータと称する)DT3を有する。推奨モードデータDT3は、推奨モード情報SIとして、例えば縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2のいずれの投光モードPMが推奨されるかを示す情報を含む。
【0083】
例えば、環境情報取得部21は、測距装置10が搭載された移動体の測位を行って当該移動体が走行しているリンクのリンクIDを特定し、当該リンクIDが地図データDT内の領域データDT12によって特定されるリンクIDに合致するか否かを判定する。そして、投光モード制御部22は、例えば走行中のリンクのリンクIDが地図データDT内のリンクIDと合致する場合、当該リンクIDに関連付けられた推奨モード情報SIを考慮して投光モードPMを制御することができる。
【0084】
また、地図データDTは、
図6Bに示すようなデータ構造を有していてもよい。
図6Bに示す例は、領域データDT12が、領域情報RIとして当該所定の領域を特定する3地点以上の座標(座標群)を示す情報を含む。なお、例えば
図6Bに示す例では、4地点によって囲まれた領域が特定されることができる。また、この領域に関連付けられた環境情報EIとしては、例えば、当該領域内に交差点又は合流地点が存在することを示す情報などが挙げられる。
【0085】
この場合、環境情報取得部21は、例えば測距装置10が搭載された移動体が走行している地点及び移動が予定される領域の座標が領域データDT12によって特定される領域内であるか否かを判定する。そして、当該移動体が当該領域内を走行していると判定された場合、投光モード制御部22は、当該領域データDT12に関連付けられた推奨モード情報SIを考慮して投光モードPMを制御することができる。
【0086】
また、地図データDTは、
図6Cに示すようなデータ構造を有していてもよい。
図6Cに示す例では、地図データDTは、地図上の特定の地点の位置を特定する情報(以下、位置情報と称する)PIを含むデータ(以下、位置データと称する)DT13を有する。また、環境データDT2(環境情報EI)及び推奨モードデータDT3(推奨モード情報SI)は、位置データDT13内の位置情報PIに関連付けられている。
【0087】
例えば、位置データDT13内の位置情報PIは、道路網のノードを特定するノードIDを含む。また、環境データDT2内の環境情報EIは、例えば、推奨される投光モードPMが変化する可能性のある地点であることを示す情報を含む。例えば、環境情報EIは、道路の車線数が変化する地点であることを示す情報、事故が多発する地点であることを示す情報を含む。
【0088】
そして、例えば、環境情報EIとして車線数がそれぞれ減少及び増加することを示す情報がノードIDに関連付けられている場合、推奨モード情報SIとしてはそれぞれ縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2が関連付けられている。また、環境情報EIとして事故多発地点であることを示す情報がノードIDに関連付けられている場合、横ラスタ走査モードM2が推奨モード情報SIとして関連付けられている。
【0089】
なお、上記においては、地図データDT内に環境情報EI(環境データDT2)が含まれている場合について説明した。しかし、地図データDTは領域情報RI又は位置情報PIと、推奨モード情報SIとが関連付けられていればよい。
【0090】
このように、本実施例においては、環境情報取得部21の地図情報取得部21Aは、地図情報として、測距装置10の位置に応じた好ましい投光モードPMに関する情報を取得する。
【0091】
そして、投光モード制御部22は、例えば
図6A~
図6Cに示したようなデータを含む地図データDTを取得した場合、この地図データDTに含まれる推奨モードデータDT3に従って投光部11の投光モードPMを制御してもよい。
【0092】
また、投光モード制御部22は、地図データDTに含まれる推奨モードデータDT3を参考にしつつ、環境情報取得部21の周辺画像取得部21Bによって取得された測距装置10の周辺画像を考慮して、最終的な投光モードPMを決定してもよい。この場合、例えば実際の道路環境に基づいたより好ましい投光モードPMを決定することができる。しかし、投光モード制御部22は、投光モードPMの制御に際し、当該周辺画像を考慮する必要はない。
【0093】
なお、地図情報取得部21Aが取得する地図情報は、上記の地図データDTである必要はない。例えば、地図情報取得部21Aは、地図情報として、推奨モードデータDT3を含まない情報を取得してもよい。また、地図情報取得部21Aは、地図情報として、環境情報EIを含まない情報を取得してもよい。すなわち、地図情報取得部21Aは、測距装置10の周辺の環境に関する情報として、例えば測距装置10の周辺の地図情報を取得すればよい。
【0094】
このように、本実施例においては、測距装置10は、縦方向D1を主走査方向としかつ横方向D2を副走査方向として光を方向可変に投光する縦ラスタ走査モードM1と横方向D2を主走査方向としかつ縦方向D1を副走査方向として光を方向可変に投光する横ラスタ走査モードM2とを有する投光部11と、投光部11から投光されて対象物OBによって反射された光を受光する受光部12と、を有する。
【0095】
そして、測距装置10は、測距装置10の周辺の環境情報EIを取得する環境情報取得部21と、環境情報EIに基づいて縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2を切替えるように投光部11を制御する投光モード制御部22と、受光部12による反射光L3の受光結果に基づいて対象物OBまでの距離を測定する測距部23と、を有する。従って、種々の環境で使用される場合でも対象物OBの正確な走査及び測距を行うことが可能な測距装置10を提供することができる。
【0096】
図7は、投光部11が有する他の投光モードである第3の投光モードM3における駆動信号DX及びDYの波形及び走査面R1上の走査光L2の軌跡を示す図である。投光部11は、
図7に示すような第3の投光モードM3を有していてもよい。
【0097】
第3の投光モードM3においては、光源13は、第1及び第2の投光モードM1及びM2と同様に、パルス光L1として、レーザ光を出射するように構成されている。また、第3の投光モードM3においては、偏向素子14は、揺動ミラー14Aを、第1及び第2の揺動軸AX及びAYの両方の周りに共振させつつ揺動させる。
【0098】
例えば、制御部17の偏向モード制御部22Aは、金属配線CXに対し、駆動信号DXとして、偏向素子14における揺動ミラー14Aの第1の揺動軸AX周りの共振周波数に対応する周波数の正弦波の信号DX1を供給する。そして、偏向モード制御部22Aは、金属配線CYに対し、駆動信号DYとして、偏向素子14における揺動ミラー14Aの第2の揺動軸AY周りの共振周波数に対応する周波数の正弦波の信号DY2を供給する。
【0099】
従って、揺動ミラー14Aは、第1及び第2の揺動軸AX及びAYの両方の周りに高速で揺動する。従って、本実施例においては、第3の投光モードM3においては、偏向素子14から走査面R1を見たときの走査光L2は、
図7に示すようなリサージュ曲線を描くような軌跡TRに沿って投光される。すなわち、第3の投光モードM3は、リサージュ走査を行うリサージュ走査モードとなる。
【0100】
例えば、リサージュ走査モードM3は、測距装置10が測距装置10の広範囲に亘って走査を行うための投光モードとして使用されることができるほか、周辺の環境を認識するための投光モードとして使用されることができる。具体的には、リサージュ走査モードM3においては、揺動ミラー14Aを両方向に高速かつ大きい振幅で揺動させる。従って、縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2に比べて広い範囲が走査領域R13となる。従って、広範囲な走査を行うこと、また測距装置10の周辺環境を認識するのに適している。
【0101】
換言すれば、例えば、投光部11は、環境情報EIに基づいて、縦ラスタ走査モードM1、横ラスタ走査モードM2及びリサージュ走査モードM3を切替えつつ走査光L2と投光してもよい。
【0102】
また、環境情報取得部21は、過去の走査領域R0の走査結果(例えばリサージュ走査モードM3による走査領域R13の走査結果)に基づいて測距装置10の周辺の環境情報EIを取得してもよい。すなわち、環境情報取得部21は、地図情報取得部21Aが取得した地図情報、又は撮像部16によって撮像された画像を用いて測距装置10の周辺の環境情報EIを取得する場合に限定されない。環境情報取得部21は、測距装置10の周辺の環境に関する情報、例えば測距装置10の周辺の地理環境に関する情報を取得すればよい。
【0103】
すなわち、投光部11は、例えば、縦方向D1を主走査方向としかつ横方向D2を副走査方向として光を方向可変に投光する縦ラスタ走査モードM1と横方向D2を主走査方向としかつ縦方向D1を副走査方向として光を方向可変に投光する横ラスタ走査モードM2との間の切替を、測距装置10の周辺の環境に基づいて行うように構成されていればよい。投光部11は、例えば、測距装置10の周辺の地理環境に基づいて縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2を切替えるように構成されていればよい。
【0104】
また、投光部11は、例えば、測距装置10の周辺の地図情報から取得される測距装置10の周辺の環境に基づいて縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2を切替えるように構成されていればよい。
【0105】
また、投光部11は、例えば、当該地理環境に関する情報又は地図情報に加え、測距装置10の周辺を撮像した画像から取得される測距装置10の周辺の環境に基づいて縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2を切替えるように構成されていればよい。
【0106】
また、本実施例においては、投光部11が光源13及び互いに異なる第1及び第2の揺動軸AX及びAYの周りに揺動することでパルス光L1を縦方向D1及び横方向D2に沿って方向可変に反射させる揺動ミラー14Aを有する場合について説明した。そして、投光部11は、揺動ミラー14Aを第1の揺動軸AXの周りに共振させつつ揺動させるか、又は揺動ミラー14Aを第2の揺動軸AYの周りに共振させつつ揺動させるか、を切替えることで、縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2を切替える場合について説明した。しかし、投光部11の構成はこれに限定されない。
【0107】
例えば、投光部11は、2つの揺動ミラーによってパルス光L1を方向可変に偏向することで、走査光L2を縦方向D1及び横方向D2に沿って方向可変に投光するように構成されていてもよい。
図8は、本実施例の変形例に係る測距装置10Aの投光部11Aにおける偏向素子14Mの上面図である。測距装置10Aは、投光部11Aの構成を除いては、測距装置10と同様の構成を有する。また、投光部11Aは、偏向素子14Mの構成を除いては投光部11と同様の構成を有する。
【0108】
本変形例においては、投光部11Aの偏向素子14Mは、第1の揺動軸AXの周りに揺動する第1の揺動ミラー18Aを有する第1のミラー素子18と、第2の揺動軸AYの周りに揺動する第2の揺動ミラー19Aを有する第2のミラー素子19と、を有する。
【0109】
第1のミラー素子18は、フレーム部41と、第1の揺動軸AXの周りに揺動可能にフレーム部41に支持された揺動部42と、揺動部42上に設けられて第1の揺動ミラー18Aとして機能する反射膜43とを有する。例えば、揺動部42は、フレーム部41の内側に支持され、第1の揺動軸AXに沿って延びる一対のトーションバーTXと、トーションバーTXの内側に接続され、第1の揺動軸AXの周りに揺動可能な揺動板SX1と、を有する。また、反射膜43は、揺動板SX1上に設けられ、偏向素子14の反射膜34と同様の構成を有する。
【0110】
また、第2のミラー素子19は、フレーム部44と、第2の揺動軸AYの周りに揺動可能にフレーム部44に支持された揺動部45と、揺動部45上に設けられて第2の揺動ミラー19Aとして機能する反射膜46とを有する。例えば、揺動部45は、フレーム部44の内側に、偏向素子14の一対のトーションバーTY及び揺動板SYのみが設けられた場合に相当する構成を有する。また、反射膜46は、揺動板SY上に設けられ、偏向素子14の反射膜34と同様の構成を有する。
【0111】
また、制御部17は、第1のミラー素子18に対して駆動信号DXを供給し、第2のミラー素子19に対して駆動信号DYを供給する。また、本変形例においては、投光部11Aは、まずパルス光L1を第1の揺動ミラー18Aによって反射させ、次いで第1の揺動ミラー18Aを経たパルス光L1を第2の揺動ミラー19Aによって反射させることで、パルス光L1を縦方向D1及び横方向D2に沿って方向可変に投光する。
【0112】
本変形例においては、第1の揺動ミラー18A及び第2の揺動ミラー19Aのいずれが共振するかに応じて、投光部11Aの投光モードPMは、縦ラスタ走査モードM1(
図3)、横ラスタ走査モードM2(
図4)及びリサージュ走査モードM3(
図7)間で切替わることとなる。
【0113】
換言すれば、本変形例においては、投光部11Aは、光源13と、第1の揺動軸AXの周りに揺動することで光源13からの出射光(パルス光L1)を縦方向D1に沿って方向可変に反射させる第1の揺動ミラー18Aと、第1の揺動軸AXの軸方向とは異なる方向に延びる第2の揺動軸AYの周りに揺動することで第1の揺動ミラー18Aを経た当該出射光を横方向D2に沿って方向可変に反射させる第2の揺動ミラー19Aと、を有する。
【0114】
また、投光部11Aは、第1の揺動ミラー18Aを共振させつつ揺動させるか、又は第2の揺動ミラー19Aを共振させつつ揺動させるかを切替えることで、縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2を切替える。
【0115】
また、測距装置10又は10Aは、上記したように、車両などの移動体に搭載される場合、又は移動可能な構成を有する場合に大きな効果を発揮する。具体的には、測距装置10が置かれる環境が変化する状況においては、好ましい投光モードPMも変化する。従って、例えば、刻々と変化する環境下で当該環境に適した投光モードを選択しつつ走査を連続して行うことで、高精度な走査及び測距を継続して行うことができる。
【0116】
例えば、環境情報取得部21は、走査周期毎に環境情報EIを取得してもよい。また、投光モード制御部22は、例えば、投光モードPMを切替える条件が変化する毎に、例えば移動体が走行する道路の態様が変化する毎に、投光モードPMを切替えるように構成されていてもよい。
【0117】
このように、測距装置10又は10Aは、例えば投光部11又は11Aが移動体に搭載されるか又は移動可能に構成されている場合、大きな効果を得ることができる。なお、上記したように、測距装置10が固定されて使用される場合であっても、測距装置10の周辺の環境に応じて走査態様を調節することで、正確な走査及び測距を行うことができる。
【0118】
また、主走査方向に沿った走査光L2の投光方向の可変範囲が副走査方向に沿った走査光L2の投光方向の可変範囲よりも広くなるように投光部11が走査光L2を投光する場合、環境に応じた好ましい走査領域を定めることができ、得られる効果がより大きい。例えば移動体に搭載される場合などにおいては、変化する道路環境に応じて好ましい走査領域の形状も変化する。従って、投光部11が好ましい走査領域の形状変化に応じて投光モードPM毎の走査領域R0を変化させることで、走査領域R0の全域で無駄のない有益な走査情報を得ることができる。
【0119】
また、本実施例においては、投光部11は、例えば投光モード制御部22のパルス間隔22Bによって、光源13によるパルス光L1の出射態様を変化させることが可能な構成を有する。例えば、投光部11は、測距装置10の周辺の環境に基づいて光源13による光の出射態様を変化させてもよい。これによって、同一投光モードPM内においても、走査領域R0内における走査光L2の投光態様を変化させることができる。
【0120】
例えば、パルス間隔制御部22Bは、縦ラスタ走査モードM1内において、副走査方向である横方向D2において走査面R11(走査領域R0)を複数の部分領域に分け、当該部分領域毎の環境情報EIに基づいて当該部分領域毎で走査光L2の出射間隔を変化させるように、光源13によるパルス光L1の出射間隔を変化させてもよい。また、例えば、パルス間隔制御部22Bは、当該部分領域のいずれかにおいて全く走査光L2を投光させないように、光源13によるパルス光L1の出射態様を調節してもよい。
【0121】
なお、副走査方向において走査領域R0を複数の部分領域に分け、いずれかの部分領域には走査光L2を投光させない場合、走査領域R0における走査光L2が投光される部分領域の走査結果を得た時点で、走査を終えることができる。従って、パルス光L1の出射態様を切替えることで、走査周期内における実質的な走査時間が短くなる。
【0122】
また、走査光L2が投光される部分領域に対しては比較的高密度で走査光L2を投光するようにパルス光L1の出射間隔を調節してもよい。従って、例えば、投光モード制御部22は、環境情報EIの取得結果に基づいて、走査領域R0内における重点的に走査を行うべき部分領域を選定し、当該部分領域のみに高密度の走査光L2を投光するように、投光モードPMを制御してもよい。これによって、例えば、部分的に形状が複雑な道路などに対して、走査周期よりも短い期間内に、走査及び測距を行うことができる。
【0123】
なお、投光モード制御部22は、パルス光L1の出射間隔を制御しなくてもよい。すなわち、投光モード制御部22は、少なくとも偏向モード制御部22Aを有していればよく、少なくとも縦ラスタ走査モードM1及び横ラスタ走査モードM2を切替えるように構成されていればよい。
【0124】
このように、本実施例においては、測距装置10は、光を方向可変に投光する投光部11と、投光部11から投光されて対象物OBによって反射された光を受光する受光部12と、受光部12による光の受光結果に基づいて対象物OBまでの距離を測定する測距部23と、を有する。
【0125】
また、投光部11は、第1の方向D1を主走査方向としかつ第1の方向D1とは異なる第2の方向D2を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードM1と、第2の方向D2を主走査方向としかつ第1の方向D1を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードM2と、の切替を、測距装置10の周辺の環境に基づいて行う。従って、種々の環境で使用される場合でも対象物OBに対して正確に走査及び測距を行うことが可能な測距装置10を提供することができる。
【0126】
なお、本実施例においては、制御部17が測距部23を有する場合について説明した。しかし、制御部17は測距部23を有していなくてもよい。受光部12による反射光L3の受光結果は、測距以外の用途、例えば対象物OBの検出用途に用いられる場合でも、同様の効果を得ることができる。従って、測距装置10は、測距部23を有さず、走査装置として機能してもよい。この場合でも、受光部12による反射光L3の受光結果は、高精度な走査結果として、種々の用途に用いられることができる。
【0127】
換言すれば、例えば、本実施例に係る走査装置は、光を方向可変に投光する投光部11と、投光部11から投光されて対象物OBによって反射された光を受光する受光部12と、を有する。また、投光部11は、第1の方向D1を主走査方向としかつ第1の方向D1とは異なる第2の方向D2を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードM1と、第2の方向D2を主走査方向としかつ第1の方向D1を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードM2と、の切替を、当該走査装置の周辺の環境に基づいて行う。従って、種々の環境で使用される場合でも対象物OBに対して正確に走査を行うことが可能な走査装置を提供することができる。
【0128】
また、本発明は、例えば制御部17のように投光部11及び受光部12を制御することで、走査装置の制御方法としても実施されることができる。例えば、本実施例に係る走査装置の制御方法は、第1の方向D1を主走査方向としかつ第1の方向D1とは異なる第2の方向D2を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードM1及び第2の方向D2を主走査方向としかつ第1の方向D1を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードM2を有する投光部11と、投光部11から投光されて対象物OBによって反射された光を受光する受光部12と、を有する走査装置を制御する方法であって、当該走査装置の周辺の環境に基づいて第1及び第2の投光モードM1及びM2を切替えるように投光部11を制御するステップと、を有する。これによって、種々の環境で使用される場合でも対象物OBに対して正確に走査を行うことが可能な走査装置の制御方法を提供することができる。
【0129】
また、本発明は、例えば制御部17の動作をプログラム化したものとしても実施されることができる。例えば、本実施例に係るプログラムは、コンピュータを、第1の方向D1を主走査方向としかつ第1の方向D1とは異なる第2の方向D2を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードM1及び第2の方向D2を主走査方向としかつ第1の方向D1を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードM2を有する投光部11と、投光部11から投光されて対象物OBによって反射された光を受光する受光部12と、を有する走査装置を、走査装置の周辺の環境に基づいて投光部11の第1及び第2の投光モードM1及びM2を切替えるように制御する制御部17として機能させる。
【0130】
また、当該プログラムは、記録媒体に記録されていてもよい。従って、種々の環境で使用される場合でも対象物OBに対して正確に走査を行うことが可能な走査装置の制御プログラム及び当該制御プログラムが記録された記録媒体を提供することができる。
【0131】
また、本発明は、地図データDTのようなデータとしても実施されることができる。例えば、本実施例に係る地図データは、地図上の少なくとも1つの領域を特定する情報である領域情報RIを含む領域データDT11又はDT12と、第1の方向D1を主走査方向としかつ第1の方向D1とは異なる第2の方向D2を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードM1と第2の方向D2を主走査方向としかつ第1の方向D1を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードM2とを有する投光部11を有して対象物OBの走査を行う走査装置が光を投光する際に、第1及び第2の投光モードM1及びM2のうちの推奨される投光モードPMを示しかつ領域情報RIに関連付けられた情報である推奨モード情報SIを含む推奨モードデータDT3と、を含むデータ構造を有する。
【0132】
また、例えば、本実施例に係る地図データは、地図上の少なくとも1つの地点の位置を特定する情報である位置情報PIを含む領域データDT13と、第1の方向D1を主走査方向としかつ第1の方向D1とは異なる第2の方向D2を副走査方向として光を方向可変に投光する第1の投光モードM1と第2の方向D2を主走査方向としかつ第1の方向D1を副走査方向として光を方向可変に投光する第2の投光モードM2とを有する投光部11を有して対象物OBの走査を行う走査装置が光を投光する際に、第1及び第2の投光モードM1及びM2のうちの推奨される投光モードPMを示しかつ位置情報PIに関連付けられた情報である推奨モード情報SIを含む推奨モードデータDT3と、を含むデータ構造を有する。従って、種々の環境で使用される場合でも対象物OBに対して正確に走査及び測距を行うことが可能な情報を含む地図データを提供することができる。