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特開2023-36638デュアル機能タンパク質およびその誘導体を生産するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036638
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】デュアル機能タンパク質およびその誘導体を生産するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20230307BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20230307BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230307BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20230307BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20230307BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
C12P21/02 C
C07K16/00 ZNA
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K19/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022195379
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2019556962の分割
【原出願日】2018-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2017-0051758
(32)【優先日】2017-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】500309919
【氏名又は名称】ユーハン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】YUHAN Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ビョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム・インファン
(72)【発明者】
【氏名】パク・ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ギホン
(72)【発明者】
【氏名】チョ・ヘヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジュンファン
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ムヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジョンギュン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】改善された薬物動態パラメータ、高い安定性、複合体を形成する凝集の低い可能性、および低下した免疫原性の可能性を有する、デュアル機能タンパク質を生産するための培養方法を提供する。
【解決手段】デュアル機能タンパク質またはその誘導体をコードするcDNAを含む発現ベクターで形質転換された哺乳動物宿主細胞から組換えデュアル機能タンパク質を生産するための方法であって、硫酸デキストランを補った培養培地中で哺乳動物宿主細胞を培養することを含み、デュアル機能タンパク質は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質;生物学的に活性なタンパク質、またはその変異体またはフラグメント;および免疫グロブリンのFc領域を含み、FGF21変異体タンパク質は、アミノ酸配列で一部のアミノ酸の置換、およびFGF21タンパク質の免疫原性を低下させるためのアミノ酸の変異を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デュアル機能タンパク質またはその誘導体をコードするcDNAを含む発現ベクターで形質転換された哺乳動物宿主細胞から組換えデュアル機能タンパク質を生産するための方法であって、該方法は、硫酸デキストランを補った培養培地中で哺乳動物宿主細胞を培養することを含み、デュアル機能タンパク質は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質;生物学的に活性なタンパク質、またはその変異体またはフラグメント;および免疫グロブリンのFc領域を含み、FGF21変異体タンパク質は、以下の変異(1)-(7)からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む:
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98-101にてEIRPのアミノ酸配列(配列番号:53)でのアミノ酸の置換;
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:54)でのアミノ酸の置換;
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEANのアミノ酸配列(配列番号:55)でのアミノ酸の置換;
(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換;
(5)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置174にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換;
(6)1つ以上の上記変異(1)から(5)と共に、野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180にてアミノ酸Eでのアミノ酸の置換;および
(7)野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10のアミノ酸の変異、
方法。
【請求項2】
生物学的に活性なタンパク質が、インスリン、C-ペプチド、レプチン、グルカゴン、ガストリン、胃抑制ポリペプチド(GIP)、アミリン、カルシトニン、コレシストキニン、ペプチドYY、神経ペプチドY、骨形成タンパク質-6(BMP-6)、骨形成タンパク質-9(BMP-9)、オキシントモジュリン、オキシトシン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、イリシン、フィブロネクチンIII型ドメイン含有タンパク質5(FNDC5)、アペリン、アディポネクチン、C1qおよび腫瘍壊死因子関連タンパク質(CTRPファミリー)、レジスチン、ビスファチン、オメンチン、レチノール結合タンパク質-4(RBP-4)、グリセンチン、アンジオポイエチン、インターロイキン-22(IL-22)、エキセンディン-4および成長ホルモンからなる群から選択される1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デュアル機能タンパク質が、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、生物学的に活性なタンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
硫酸デキストランが、20-5,000kDaの平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
培養培地が、0.01-10g/Lの濃度で硫酸デキストランを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
培養することが、
硫酸デキストランを補った培養培地において34-37℃で哺乳動物宿主細胞を初代培養する工程;および
28-33℃で初代培養培地を二次培養する工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
初代培養が、24-144時間行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
二次培養が、31-33℃で行われる、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本願発明は、生物学的に活性なタンパク質および線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質を含むデュアル機能タンパク質を生産するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
動物細胞が組換えタンパク質を生産するために使用されるとき、標的タンパク質の特定の領域が動物細胞(宿主細胞)によって分泌されるプロテアーゼによって切断され、組換えタンパク質の不均一性、低下または不活性化を引き起こすという問題が起こりうる。加えて、発現されたタンパク質のかかる切断はまた、生産および精製プロセス中に「ロット間」均質性を維持することを困難にさせるという問題に至る。この理由のため、組換えタンパク質の生産中、低いレベルでプロテアーゼを維持するか、またはプロテアーゼ活性を抑制する必要がある。
【0003】
この問題を解決する代替手段として、セリン、システイン、アスパラギン酸またはアミノペプチダーゼに対するインヒビター(例えばアプロチニン、ベスタチン、ロイペプチン、E-64およびペプスタチンAなど)が培養培地に加えられる生産方法が、提案された(WO 1990-002175、EP 0,306,968、およびUS 5,851,800参照)。しかしながら、商業生産におけるこれらのインヒビターの使用は、細胞毒性および最終産物から完全に除去されていることを証明するために特別な努力の必要性のため、効果的ではない。加えて、慣用の代替手段の中で、宿主細胞において生産される全ての標的タンパク質に適用できる普遍的な方法は、未だ見つかっていない。
【発明の概要】
【0004】
発明の記載
技術的問題
本願発明の目的は、改善された薬物動態パラメータ、高い安定性、複合体を形成する凝集の低い可能性、および低下した免疫原性の可能性を有する、生物学的に活性なタンパク質およびFGF21変異体タンパク質を含むデュアル機能タンパク質を生産するための培養方法を提供することである。
【0005】
解決手段
本願発明の1つの目的によると、デュアル機能タンパク質またはその誘導体をコードするcDNAを含む発現ベクターで形質転換された哺乳動物宿主細胞から組換えデュアル機能タンパク質を生産するための方法であって、該方法は、硫酸デキストランを補った培養培地中で哺乳動物宿主細胞を培養することを含み、デュアル機能タンパク質は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質;生物学的に活性なタンパク質、またはその変異体またはフラグメント;および免疫グロブリンのFc領域を含み、FGF21変異体タンパク質は、以下の変異(1)-(7)からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む:
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98-101にてEIRPのアミノ酸配列(配列番号:53)でのアミノ酸の置換;
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:54)でのアミノ酸の置換;
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEANのアミノ酸配列(配列番号:55)でのアミノ酸の置換;
(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換;
(5)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置174にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換;
(6)1つ以上の上記変異(1)から(5)と共に、野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180にてアミノ酸Eでのアミノ酸の置換;および
(7)野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10のアミノ酸の変異、
方法を提供することにある。
【0006】
発明の有利な効果
本願発明の生産方法は、標的タンパク質の分解を効果的に防止することによって、標的タンパク質の安定な生産を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、デュアル機能タンパク質を発現する細胞系の懸濁培養後の、SDS-PAGEによる培養上清の分析の結果を示す模式図である。培養時間が経過すると、非切断デュアル機能タンパク質よりも小さい他のタンパク質が一緒に発現されたことを見出した。
【0008】
図2図2は、一定期間後の保存温度条件に応じたSDS-PAGEによる培養上清の分析の結果を示す模式図である。4℃または-20℃で貯蔵された培養上清は、37℃で貯蔵されたものと比較してデュアル機能タンパク質の切断の低下を示した。この結果は、デュアル機能タンパク質の切断現象が宿主細胞に由来するプロテアーゼによって誘導されたことを示した。
【0009】
図3図3は、プロテアーゼインヒビターを培養上清に加え、37℃で一定期間、混合物を保存した後のSDS-PAGEによる分析の結果を示す模式図である。主に、セリンプロテアーゼインヒビターの添加が、デュアル機能タンパク質の切断現象を減少させたことが見出された。この結果は、デュアル機能タンパク質の切断現象が宿主細胞に由来するプロテアーゼによって誘導されたことを示した。
【0010】
図4図4は、硫酸デキストランを培養培地に加えた細胞培養後のSDS-PAGEによる培養上清の分析の結果、およびそのグラフである。デュアル機能タンパク質の切断現象を低下させる効果は、1.6kDaの重量平均分子量を有する硫酸デキストランが加えられたとき観察されなかったが、デュアル機能タンパク質の切断現象は、500kDaの硫酸デキストランが加えられたとき低下した。
【0011】
図5図5は、培養培地に加えられた様々な重量平均分子量を有する硫酸デキストランで培養した後のSDS-PAGEによる培養上清の分析の結果を示す模式図である。200kDa以上の重量平均分子量を有する硫酸デキストランが培養培地に加えられたとき、デュアル機能タンパク質の切断現象は低下した。
【0012】
図6図6は、種々の濃度での硫酸デキストランが培養培地に加えられた培養後の培養上清のSDS-PAGEの結果、およびそのグラフである。硫酸デキストランが200-1,000mg/Lで加えられたとき、デュアル機能タンパク質の切断現象は低下した。加えて、培養温度が培養中に32℃に変化されたとき、デュアル機能タンパク質の切断現象はより効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願発明を実施するための最良の形態
本願発明の1つの目的によると、デュアル機能タンパク質またはその誘導体をコードするcDNAを含む発現ベクターで形質転換された哺乳動物宿主細胞から組換えデュアル機能タンパク質を生産するための方法であって、該方法は、硫酸デキストランを補った培養培地中で哺乳動物宿主細胞を培養することを含み、デュアル機能タンパク質は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質;生物学的に活性なタンパク質、またはその変異体またはフラグメント;および免疫グロブリンのFc領域を含み、FGF21変異体タンパク質は、以下の変異(1)-(7)からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む:
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98-101にてEIRPのアミノ酸配列(配列番号:53)でのアミノ酸の置換(以下、「EIRP」);
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:54)でのアミノ酸の置換(以下、「TGLEAV」);
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEANのアミノ酸配列(配列番号:55)でのアミノ酸の置換(以下、「TGLEAN」);
(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換(以下、「G170N」);
(5)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置174にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換(以下、「G174N」);
(6)1つ以上の上記変異(1)から(5)と共に、野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180にてアミノ酸Eでのアミノ酸の置換(以下、「A180E」);および
(7)野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10のアミノ酸の変異、
方法を提供することにある。
【0014】
FGF21変異体タンパク質
グルコースおよび脂質ホメオスタシスにおいて重要な役割を果たすことが知られているホルモンである野生型FGF21タンパク質は、哺乳動物、例えばヒト、マウス、ブタ、サルなど、好ましくはヒト由来のものであり得る。さらに好ましくは、野生型FGF21タンパク質は、配列番号:1によって示されるアミノ酸配列を有する野生型ヒトFGF21タンパク質であり得る。
【0015】
好ましくは、FGF21変異体タンパク質に含まれる変異は、EIRP、TGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つ;TGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つおよびEIRPの変異の組合せ;EIRP、TGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つおよびA180Eの変異の組合せ;TGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つ、EIRPの変異およびA180Eの変異の組合せであり得る。
【0016】
EIRPは、野生型FGF21タンパク質のN末端から位置98-101でのアミノ酸であるLLLEが、EIRPで置換されている変異を指す。さらに、TGLEAVは、野生型FGF21タンパク質のN末端から位置170-174でのアミノ酸であるGPSQGが、TGLEAVで置換されている変異を指す。加えて、TGLEANは、野生型FGF21タンパク質のN末端から位置170-174でのアミノ酸であるGPSQGが、TGLEANで置換されている変異を指す。さらに、G170Nは、野生型FGF21タンパク質のN末端から位置170でのアミノ酸であるGが、Nで置換されている変異を指す。加えて、G174Nは、野生型FGF21タンパク質のN末端から位置174でのアミノ酸であるGが、Nで置換されている変異を指す。
【0017】
さらに、FGF21変異体タンパク質は、N-末端またはC-末端での1から10のアミノ酸が野生型FGF21タンパク質と比較して欠失されている構造を有し得る。さらに好ましくは、FGF21変異体タンパク質は、配列番号:6から23のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を含み得る。なおさらに好ましくは、FGF21変異体タンパク質は、配列番号:6から23のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を含み、N-末端またはC-末端での1から10のアミノ酸が野生型FGF21タンパク質と比較して欠失されている構造をさらに有してもよい。
【0018】
デュアル機能タンパク質において、変異によって導入されるFGF21変異体タンパク質のアミノ酸残基Nはグリコシル化され得る。
【0019】
生物学的に活性なタンパク質
生物学的に活性なタンパク質は、インスリン、C-ペプチド、レプチン、グルカゴン、ガストリン、胃抑制ポリペプチド(GIP)、アミリン、カルシトニン、コレシストキニン、ペプチドYY、神経ペプチドY、骨形成タンパク質-6(BMP-6)、骨形成タンパク質-9(BMP-9)、オキシントモジュリン、オキシトシン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、イリシン、フィブロネクチンIII型ドメイン含有タンパク質5(FNDC5)、アペリン、アディポネクチン、C1qおよび腫瘍壊死因子関連タンパク質(CTRPファミリー)、レジスチン、ビスファチン、オメンチン、レチノール結合タンパク質-4(RBP-4)、グリセンチン、アンジオポイエチン、インターロイキン-22(IL-22)、エキセンディン-4および成長ホルモンからなる群から選択される1つであり得る。好ましくは、生物学的に活性なタンパク質は、GLP-1、その変異体およびエキセンディン-4から選択される1つであり得る。
【0020】
GLP-1タンパク質は、食物によって刺激されるなどによって、腸管におけるL細胞によって分泌される31アミノ酸からなるインクレチンホルモンである。例えば、GLP-1タンパク質は、配列番号:29のアミノ酸配列によって示され得る。
【0021】
GLP-1の変異体は、例えば、配列番号:30から33のいずれかのアミノ酸配列によって示され得る。
【0022】
免疫グロブリンのFc領域
本願明細書において使用される「Fc領域」、「Fcフラグメント」または「Fc」なる用語は、免疫グロブリンの重鎖定常領域1(CH1)、重鎖定常領域2(CH2)および重鎖定常領域3(CH3)を含むが、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域および軽鎖定常領域1(CL1)を含まないタンパク質を示す。さらに、本願明細書において使用される「Fc領域変異体」なる用語は、Fc領域のアミノ酸の一部を置換することによって、または様々な型のFc領域を組み合わせることによって調製されるものを示す。
【0023】
免疫グロブリンのFc領域は、抗体を構成する完全Fc領域、そのフラグメントまたはFc領域変異体であり得る。さらに、Fc領域は、単量体または多量体の形態の分子を含み、重鎖定常領域のヒンジ領域をさらに含み得る。Fc領域変異体は、ヒンジ領域での開裂を防止するように修飾され得る。さらに、Fcのヒンジ配列は、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)または補体依存性細胞毒性(CDC)を低下させるためにいくつかのアミノ酸配列において置換を有し得る。加えて、Fcヒンジ配列のアミノ酸配列の一部は、Fab領域の再配列を阻害するために置換され得る。FcのC-末端でのリジン残基は除去され得る。
【0024】
好ましくは、免疫グロブリンのFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgDのFc領域のいずれか1つ;またはそれらの組合せであるハイブリッドFcであり得る。さらに、ハイブリッドFcはIgG4領域およびIgD領域を含み得る。さらに、ハイブリッドFc領域は、IgDのFcのヒンジ配列の一部およびCH2、およびIgG4のFcのCH2およびCH3配列を含み得る。
【0025】
加えて、本願発明のFcフラグメントは、野生型グリコシル化鎖、野生型よりも多いグリコシル化鎖、野生型よりも少ないグリコシル化鎖または脱グリコシル化鎖の形態においてであり得る。グリコシル化鎖の増加、減少または除去は、当分野で知られている慣用の方法、例えば化学方法、酵素方法および微生物を使用する遺伝子操作方法によって行われ得る。
【0026】
好ましくは、免疫グロブリンFc領域は、配列番号:24から28から選択されるアミノ酸配列によって示され得る。
【0027】
デュアル機能タンパク質
デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、生物学的に活性なタンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含み得る。さらに、デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、FGF21変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域および生物学的に活性なタンパク質を含み得る。好ましくは、デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、GLP-1変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含み得る。さらに、デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、FGF21変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびGLP-1変異体タンパク質を含み得る。
【0028】
リンカー
さらに、デュアル機能タンパク質はリンカーをさらに含み得る。
【0029】
デュアル機能タンパク質は、FGF21変異体タンパク質が免疫グロブリンFc領域のN-末端またはC-末端に直接的に連結される、またはFGF21変異体タンパク質がリンカーを介して免疫グロブリンFc領域に連結される形態であり得る。
【0030】
そのような場合、リンカーは、FcフラグメントのN-末端、C-末端または遊離基に連結され得、また、FGF21変異体タンパク質のN-末端、C-末端または遊離基に連結され得る。リンカーがペプチドリンカーであるとき、連結は任意の領域において起こり得る。例えば、リンカーは、免疫グロブリンFc領域のC-末端およびFGF21変異体タンパク質のN-末端に連結され、免疫グロブリンFc領域およびFGF21変異体タンパク質の融合タンパク質を形成し得る。さらに、本願発明のデュアル機能タンパク質は、生物学的に活性なタンパク質が融合タンパク質の免疫グロブリンのFc領域のN-末端に連結される形態であり得る。
【0031】
リンカーおよびFcが別々に発現され、次に連結されるとき、リンカーは当分野で知られている架橋剤であり得る。架橋剤の例は、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸およびジスクシンイミジルエステル、例えば3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)を含むイミドエステル、および二機能性マレイミド、例えばビス-N-マレイミド-1,8-オクタンを含み得るが、これらに限定されない。
【0032】
さらに、リンカーはペプチドであり得る。好ましくは、リンカーは10から30のアミノ酸残基からなるペプチドであり得る。
【0033】
さらに、アラニンが、リンカーの末端にさらに結合され得る。好ましくは、リンカーは、配列番号:2から5のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有するペプチドであり得る。
【0034】
デュアル機能タンパク質は、1つ以上のFGF21変異体タンパク質が互いに連結したFGF21変異体タンパク質の二量体または多量体が免疫グロブリンFc領域に連結される形態であり得る。さらに、デュアル機能タンパク質は、2つ以上の免疫グロブリンFc領域が連結される二量体または多量体の形態であって、免疫グロブリンFc領域が連結されるFGF21変異体タンパク質を有する、形態であり得る。
【0035】
哺乳動物宿主細胞
哺乳動物宿主細胞は、組換えデュアル機能タンパク質を発現することができる任意の動物細胞、好ましくは標的化形質転換細胞の単離を容易にさせる動物細胞であり得る。具体的には、哺乳動物宿主細胞は、不死化ハイブリドーマ細胞、NS/0骨髄腫細胞、293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、HeLa細胞、CAP細胞(ヒト羊水由来細胞)、またはCOS細胞であり得る。
【0036】
硫酸デキストラン
本願発明のデュアル機能タンパク質の細胞培養へプロテアーゼインヒビターを適用する結果として、宿主細胞由来のプロテアーゼによるデュアル機能タンパク質の切断現象を防止する効果は、不十分であった。
【0037】
硫酸デキストランは、20-5,000kDaの重量平均分子量を有し得る。具体的には、硫酸デキストランは、200-5,000kDaの重量平均分子量を有し得る。
【0038】
加えて、培養培地は、0.01-10g/Lの濃度で硫酸デキストランを含み得る。具体的には、培養培地は、0.1-10g/L、または0.1-1g/Lの濃度で硫酸デキストランを含み得る。
【0039】
培養
培養は、硫酸デキストランを補った培養培地において34-37℃で哺乳動物宿主細胞を初代培養する工程;および28-33℃での初代培養培地を二次培養する工程を含み得る。具体的には、初代培養は、24-144時間で実施され得る。また、二次培養は、31-33℃で実施され得る。
【0040】
デュアル機能タンパク質は、GLP-1およびFGF21変異体、生物学的に活性なタンパク質が、免疫グロブリンのFc領域に融合されるポリペプチドであり、および動物細胞培養により生産されるとき無傷な形態において発現され、および肝炎、肝線維症、および肝硬変を予防または処置するための組成物として活性を示す。
【0041】
本願発明の様式
以下、本願発明の典型的な態様は例を基準にして詳細に記載される。しかしながら、本願発明の例は多数の様々な形態において修飾することができ、本願発明の範囲はここに記載の例に限定されるべきでない。
【実施例0042】
[実施例]
調製例1.デュアル機能タンパク質の発現のための宿主細胞の調製
1-1:デュアル機能タンパク質の発現のための発現ベクターの調製
FGF21タンパク質に導入される各変異の位置、配列情報、標的および予期される効果は以下の表1に列挙される(表1において、はグリコシル化アスパラギン(N)を示す)。さらに、表1に記載されている変異を含むFGF21変異体タンパク質は以下の表2に列挙される。
【0043】
【表1】



【0044】
【表2】



【0045】
GLP-1変異体タンパク質配列は以下の表3に示され、Fc融合GLP-1変異体タンパク質配列は表4に示される。
【0046】
【表3】



【0047】
【表4】



【0048】
表4において、HyFc5は配列番号:27を示し、HyFc40は配列番号:28を示す。
【0049】
さらに、GLP-1変異体タンパク質およびFGF21変異体タンパク質を含むデュアル機能タンパク質の配列は、以下の表5に列挙される。各デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、GLP-1変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域、リンカーおよびFGF21変異体タンパク質を含む。
【0050】
【表5】



【0051】
具体的には、デュアル機能タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列を、各タンパク質のアミノ酸配列に基づいてBioneer Corporation(Korea)と相談した後に合成した。NheIおよびNotI制限酵素配列をデュアル機能タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列の5’末端および3’末端に加え、タンパク質翻訳のための開始コドンおよび細胞の外側に発現されたタンパク質の分泌を可能にするリーダー配列(配列番号:56、MDAMLRGLCCVLLLCGAVFVSPSHA)を5’末端で制限酵素配列の次に挿入した。終止コドンを、FGF21変異体タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列の次に挿入した。デュアル機能タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列を、NheIおよびNotIの2つの制限酵素を使用することによってpTrans-empty発現ベクターにクローニングした。CMVプロモーター、pUC-由来複製起点、SV40-由来複製起点およびアンピシリン-耐性遺伝子を有するpTrans-empty発現ベクターを、CEVEC Pharmaceuticals(Germany)から購入した。
【0052】
1-2:デュアル機能タンパク質の発現のためのプラスミドDNAの構築
発現のために使用される大量のプラスミドDNAを得るために、大腸菌を、調製例1-1において構築された発現ベクターのそれぞれで形質転換した。熱ショックを介して弱められた細胞壁を有する大腸菌細胞をそれぞれの発現ベクターで形質転換し、形質転換体をLBプレート上に置き、コロニーを得た。このように得られたコロニーをLB培地に播種し、37℃で16時間培養し、それぞれの発現ベクターを含む各大腸菌培養物を100mlの容量において得た。その後に得られた大腸菌を遠心分離して培養培地を除去し、次にP1、P2、P3溶液(QIAGEN、Cat No.:12963)を加え、細胞壁を破砕し、それによりタンパク質およびDNAが分離されたDNA懸濁液を得た。Qiagen DNA精製カラムを使用することによって、このように得られたDNA懸濁液からプラスミドDNAを精製した。溶出したプラスミドDNAをアガロースゲル電気泳動によって同定し、濃度および純度をナノドロップ(nanodrop)装置(Thermo Scientific、Nanodrop Lite)を使用して測定した。このように得られたDNAを発現のために使用した。
【0053】
1-3:デュアル機能タンパク質の発現のための形質転換された宿主細胞の生産
CHO DG44細胞(チャイニーズハムスター卵巣細胞)を、FreeStyleMAX (Invitrogen、Cat. No. 16447-100)を使用して調製例1-2において単離される各プラスミドDNAで形質転換した。形質転換されたチャイニーズハムスター卵巣細胞を培地(CD OptiCHO、Gibco、Cat. No. 12681-011)に播種し、8% COおよび37℃の条件下でインキュベーターにおいて培養し、継代を繰り返し生存細胞を選択および培養した。選択された細胞を、最後に、96-ウェルプレートにおいて限界希釈により単一クローンとして選択した。
【0054】
実験例1.デュアル機能タンパク質の発現のための懸濁培養、および分解現象
調製例1-3の物質コードDFD112(配列番号:51)で形質転換されたCHO細胞系を、8mM GlutaMAXを補ったCD OptiCHO培地において懸濁培養した(作業容量 30ml/125ml フラスコ、37℃、8% CO、120rpm)。その後、培養上清を3つの異なる保存温度(37℃、4℃、または-20℃)で3日間貯蔵し、次にタンパク質分解現象の程度を培養上清のSDS-PAGE(4-12% Bis-Tris、非還元条件)分析により評価した。SDS-PAGE分析の結果は、図1および2に示される。
【0055】
図1に示されるとおり、標的タンパク質よりも小さいタンパク質(85から110kDa)が、デュアル機能タンパク質を生産するための細胞培養中に、切断されていない(無傷の)標的タンパク質と共に発現されたことを見出した。
【0056】
図2に示されるとおり、4℃および-20℃で貯蔵された培養上清は、37℃で貯蔵された培養上清と比較して、デュアル機能タンパク質が切断された小さなサイズのタンパク質が少なかった。したがって、デュアル機能タンパク質の分解現象が、培養上清に存在する宿主細胞から分泌されるプロテアーゼによって引き起こされたことを見出した。
【0057】
実験例2.デュアル機能タンパク質分解に関与するプロテアーゼインヒビターの検出
実験例1において同定されたデュアル機能タンパク質の分解に関与するプロテアーゼのカテゴリーを試験するために、実験例1の培養上清に種々のプロテアーゼインヒビターを加え、3日間37℃で処理し、次にSDS-PAGE分析に付した。本願明細書において使用されるプロテアーゼインヒビターは表6に示され、SDS-PAGE分析結果は図3に示される。
【0058】
【表6】



【0059】
図3に示されるとおり、デュアル機能タンパク質の分解現象がセリンプロテアーゼに関するプロテアーゼインヒビター、例えばAEBSF、アンチパイン、ロイペプチン、ベンザミジン-HClおよびアプロチニンで処理された培養上清において低下したことを見出した。したがって、デュアル機能タンパク質の分解現象が宿主細胞に由来するプロテアーゼによって引き起こされたことを見出した。
【0060】
例1.硫酸デキストラン処理
デュアル機能タンパク質の細胞培養中に起こる切断現象を阻害するために、調製例1-3の形質転換されたCHO細胞系を、6mM グルタミンを補ったCD Dynamis培地(Gibco、cat. No. A2661501)において7日間懸濁培養した(作業容量 30mL/125mL フラスコ、37℃、8% CO、120rpm)。懸濁培養について、硫酸デキストラン(重量平均分子量:1.6kDaまたは500kDa)を200mg/Lの濃度で培養培地に加え、培養を低温変換およびフェドバッチ培養方法により32℃で実施した。その後、培養上清をSDS-PAGE(4-12% Bis-Tris、非還元条件)により分析し、SDS-PAGE分析の結果およびその模式図は図4に示される。図4において、w/oおよびLane 1はコントロールであり、500kDaおよびLane 2は500kDa 硫酸デキストランで処理された培養上清であり、1.6kDaおよびLane 3は1.6kDa 硫酸デキストランで処理された培養上清である。
【0061】
図4に示されるとおり、500kDaの重量平均分子量を有する硫酸デキストランを培養培地に加えたとき、デュアル機能タンパク質の切断現象が効果的に阻害されたことを見出した。
【0062】
例2.分子量による硫酸デキストランの効果
細胞培養中のデュアル機能タンパク質の切断現象に対する保護効果が例1において特定された加えられる硫酸デキストランの効果的な濃度範囲を、試験した。
【0063】
具体的には、加えられる硫酸デキストランの重量平均分子量(1.6kDa、8kDaまたは200kDa)および濃度(100mg/L、200mg/Lまたは500mg/L)を調整することを除けば、培養を例1と同じ条件下で実施した。その後、培養上清をSDS-PAGE(4-12% Bis-Tris、非還元条件)により分析し、SDS-PAGE分析の結果およびそのグラフは図5に示される。
【0064】
図5に示されるとおり、デュアル機能タンパク質の切断現象は、200kDaまたはそれ以上の分子量を有する硫酸デキストランが100から500mg/Lの濃度で培養培地に加えられたとき、有意に低下した。
【0065】
例3.デュアル機能タンパク質分解の防止のための培養条件の評価
例1および2において特定された硫酸デキストランによるデュアル機能タンパク質の切断を防止する効果を最大化するための培養条件を試験した。
【0066】
具体的には、500kDaの硫酸デキストランを0mg/Lから1,000mg/Lの濃度で加えたことを除けば、培養を例1と同じ条件下で実施した。ここで、培養温度が培養の4日目に32℃に変化させた実験グループを、含んだ(以下の表7参照)。次に、培養上清をSDS-PAGE(4-12% Bis-Tris、非還元条件)により分析し、SDS-PAGE分析の結果およびそのグラフは図6に示される。
【0067】
【表7】



【0068】
図6に示されるとおり、500kDaの重量平均分子量を有する硫酸デキストランの処理での培養の培養上清が、硫酸デキストランの処理なしの培養の培養上清と比較して、デュアル機能タンパク質の有意に低下した切断現象を示したことを見出した。また、温度を培養中に変化させたとき、デュアル機能タンパク質の切断現象がさらに効果的に阻害されたことを見出した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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【外国語明細書】