(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036645
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】廃棄物織物から綿およびポリエステル繊維をリサイクルするための方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/16 20060101AFI20230307BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20230307BHJP
C08J 11/28 20060101ALI20230307BHJP
C07C 63/26 20060101ALI20230307BHJP
C07C 51/09 20060101ALI20230307BHJP
C07C 31/20 20060101ALI20230307BHJP
C07C 29/09 20060101ALI20230307BHJP
C07C 27/02 20060101ALI20230307BHJP
C07C 51/43 20060101ALI20230307BHJP
C08B 16/00 20060101ALI20230307BHJP
D06M 11/05 20060101ALI20230307BHJP
D06M 11/00 20060101ALI20230307BHJP
D06B 19/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C08J11/16 ZAB
C08J11/24
C08J11/28
C07C63/26 A
C07C51/09
C07C31/20 A
C07C29/09
C07C27/02
C07C51/43
C08B16/00
D06M11/05
D06M11/00 140
D06B19/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195852
(22)【出願日】2022-12-07
(62)【分割の表示】P 2020538680の分割
【原出願日】2019-01-11
(31)【優先権主張番号】62/616,543
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517428252
【氏名又は名称】サーク,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】バーラ,フロリン ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ショーワルター,トッド
(72)【発明者】
【氏名】ス,スン-チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ボブ ユリアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】廃棄物織物から、環境への影響が少ないセルロースおよびテレフタル酸(TPA)を含む高度な材料を製造する方法を提供する。
【解決手段】綿/ポリエステルブレンド材料を含む廃棄織物材料からセルロースおよびテレフタル酸(TPA)を製造する方法であって、前記方法は:塩基を使用して、105℃~190℃、40~300psi(275.79~2068.43kPa)で0~90分間、亜臨界水反応器で前記廃棄織物材料を処理することを含み、ここで、150~2500の範囲の重合度を含むセルロース、および、溶解したTPAおよびエチレングリコール(EG)が生成されることを特徴とする方法である。
【効果】製造されるセルロースおよびTPAは、繊維紡績および織物用途に適した再生セルロースおよび再生ポリエチレンテレフタレート(PET)の製造を可能にする高品質のものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
綿/ポリエステルブレンド材料を含む廃棄織物材料からセルロースおよびテレフタル酸(TPA)を製造する方法であって、前記方法は:
塩基を使用して、105℃~190℃、40~300psi(275.79~2068.43kPa)で0~90分間、亜臨界水反応器で前記廃棄織物材料を処理することを含み、ここで、150~2500の範囲の重合度を含むセルロース、および、溶解したTPAおよびエチレングリコール(EG)が生成されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記亜臨界水反応器における前記処理が10~14の範囲のpHを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TPAを回収することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
セルロースを回収することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
回収されたセルロースを粉砕プロセスに供することをさらに含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記亜臨界水反応器での処理が、
10~14の範囲のpHでの第1の処理であって、溶解したTPAおよびEGが生成される第1の処理と、
第1の処理で生成されるセルロースの2~4の範囲のpHでの第2の処理であって、pHは酸によって調整され、前記亜臨界水反応器での第2の処理で生成されるセルロースが、150~2000の範囲の重合度を含む、第2の処理と、
を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の処理の後に生成されたセルロースを、洗浄、粉砕、酸洗浄、活性化プロセス、溶解ドープ、または湿式紡糸の1つ以上の工程に供することをさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
生成されたセルロースを、さらに、前記亜臨界水反応器で2~4の範囲のpHにて処理し、pHは酸によって調整され、
さらに、生成されたセルロースを回収することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
回収されたセルロースを機械的粉砕プロセスに供することをさらに含むことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記亜臨界水反応器で処理する前、処理中、または処理後に、前記廃棄織物材料から色を除去することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記色の除去が、過酸化水素、過酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、ジメチルスルホキシド、次亜塩素酸リチウム、過ホウ酸ナトリウム、オゾン、酸素、活性炭、バイオチャー、炭酸ナトリウム、過酢酸、過マンガン酸カリウム、過硫酸塩、塩化ナトリウム、オキシ塩化カルシウム、クロラミン、二酸化塩素、二酸化硫黄、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、またはTAED(テトラ-アセチル-エチレン-ジ-アミン)のうちの1つ以上での処理を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記亜臨界水反応器での処理が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、臭化テトラ-n-ブチルホスホニウム(TBPB)、または塩化ベンジルトリブチルアンモニウム(BTBAC)、またはそれらのコポリマーのうちの1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記亜臨界水反応器内の廃棄織物材料対水の比率が、1:5~1:95であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
亜臨界水処理の前に、前記亜臨界水反応器内の水のpHを調整することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
pHが10~14に調整されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
pHが、0.5~20%(w/v)水酸化ナトリウム、または0.5~20%(w/v)水酸化カリウムを使用して調整されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
ポリエステル廃棄織物材料からテレフタル酸(TPA)を製造する方法であって、該方法は:
塩基を使用して、亜臨界水反応器で、105℃~190℃の温度、40~300psi(275.79~2068.43kPa)の圧力で、0~90分間、前記ポリエステル廃棄織物材料を処理することを含み、ここで、溶解したTPAおよびエチレングリコール(EG)が生成されることを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記亜臨界水反応器における処理が、10~14の範囲のpHを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
TPAを沈殿させ、再結晶させることをさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願への相互参照〕
本出願は、2018年1月12日に出願された米国仮特許出願第62/616,543号(その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)の35 U.S.C§119(e)に基づく利益を主張する。
【0002】
〔技術分野〕
本開示の主題は、織物(テキスタイル)から綿(コットン)およびポリエステルの成分をリサイクルするためのシステムおよび方法に関する。本開示の主題はさらに、環境に優しい方法を使用して高度な材料の製造を可能にする、綿およびポリエステルの高品質成分の製造方法に関する。
【0003】
〔背景〕
繊維産業では、完成アパレルおよび関連商品の寿命は限られている。それらの耐用年数が終わると、それらは典型的には埋め立て地または廃棄物焼却施設で終わる。米国では、毎年1500万トンを超える使用済み織物が発生すると推定されている。再生繊維は、綿などの天然バージン繊維の持続可能な代替物としてますます普及している。一般に、リサイクルのための織物は、(1)紡ぎ糸および布(fabric)製造からの副産物として生成されるスクラップのような消費前の供給源、(2)衣類、車両室内装飾品、家庭用品、およびその他のような消費後の供給源を含む、2つの主要な供給源から生成される。現在の織物リサイクルは、基本的に2つの処理群に分けられている。天然織物(例えば、100%綿)の場合、材料は、細断または引っ張られて繊維(fibers)になり、次いで、再紡糸のために紡ぎ糸に加工され、その後の織りおよび/または編みでの使用のために調製される。ポリエステル系織物の場合、衣類は細断され、次いで粒状化され、ポリエステルチップに加工される。その後、チップは溶融され、ポリエステル布に使用するための新しい繊維を作るために使用される。しかしながら、織物をリサイクルおよび/または再生する従来の方法は、高価で過酷な加水分解剤の使用、錯体リサイクル方法、廃水排出、汚染、プロセスを煩わしくするエネルギー使用、およびかなりの時間の消費などの重大な欠点を伴う。したがって、化学薬品の使用および廃水の生成を著しく減少させる、プレミアムリサイクル繊維を再生する単純かつ費用効果の高い方法を提供することによって、現在の技術の欠点を克服することが有益である。
【0004】
〔発明の概要〕
いくつかの実施形態では、本開示の主題は、本質的に100%の綿または綿/ポリエステルブレンド(混合、混紡)材料を含む廃棄織物材料(廃テキスタイル材料)からセルロースおよびテレフタル酸(TPA)の一方または両方を製造する方法に向けられている。具体的には、該方法は、約105℃~190℃、約40~300psi、またはその両方で約0~90分間、亜臨界水反応器(亜臨界水炉)で廃棄織物材料を処理することを含み、ここで、約150~2500の範囲の重合度を含むセルロース、および、溶解したTPAおよびエチレングリコール(EG)、の一方または両方が生成される。それによって、約150~2500の重合度を有するセルロースを含む製品および/またはリサイクルテレフタル酸(TPA)を含む製品が製造される。いくつかの実施形態では、セルロースはさらに回収され、溶解プロセスを含めて、再生セルロースが形成される。
【0005】
いくつかの実施形態では、廃棄織物材料が綿/ポリエステルブレンド材料を含み、亜臨界水反応器での処理は約10~14の範囲のpHを含む。本方法は、TPAを回収することをさらに含むことができる。本方法は、セルロースを回収することをさらに含むことができる。この方法は、回収されたセルロースを粉砕(砕解、破砕、打解)(disintegration)プロセスに供することをさらに含むことができる。
【0006】
いくつかの実施形態では、廃棄織物材料は、綿/ポリエステルブレンド材料を含み、亜臨界水反応器での処理は、約10~14の範囲のpHでの第1の処理であって、TPAが生成される第1の処理と、約2~4の範囲のpHでの第1の処理で生成されるセルロースの第2の処理であって、第2の処理で生成されるセルロースが約150~2000の範囲の重合度を含む、第2の処理と、を含む。いくつかの実施形態では、約150~2500の重合度を有するセルロースは、約94%~98%の範囲の純度のものである。本方法は、第2の処理後に生成されたセルロースを回収し、セルロースを洗浄、粉砕、酸洗浄、活性化プロセス、溶解ドープ(濃厚液、濃厚溶液)、または湿式紡糸の1つ以上の工程に供することをさらに含むことができる。
【0007】
この方法は、廃棄織物材料中のセルロース繊維のサイズを減少させること、廃棄織物材料からのセルロース繊維をほぐす(緩める、ほどく)(loosening)こと、またはその両方を可能にする。
【0008】
いくつかの実施形態では、本方法は、亜臨界水反応器での処理の前または後に、廃棄織物材料を分類(選別、仕分け)することをさらに含む。いくつかの実施形態では、分類は、色、組成、重量パーセントセルロース、非セルロース成分、またはそれらの組み合わせに基づく。
【0009】
この方法は、廃棄織物材料内に存在するセルロース繊維を溶解することを可能にする。
【0010】
いくつかの実施形態では、本方法は、廃棄織物材料のサイズを減少させる前処理ステップをさらに含む。前処理工程は、機械的切断によるものであってもよい。いくつかの実施形態では、この減少は、約60mm以下の粒度を生成する。
【0011】
いくつかの実施形態では、この方法は、亜臨界水反応器での処理の前、処理中、または処理後に、廃棄織物材料から色を除去することをさらに含む。いくつかの実施形態では、色除去が、過酸化水素、過酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、ジメチルスルホキシド、次亜塩素酸リチウム、過ホウ酸ナトリウム、オゾン、酸素、活性炭、バイオチャー(biochar)、炭酸ナトリウム、過酢酸、過マンガン酸カリウム、過硫酸塩、塩化ナトリウム、オキシ塩化カルシウム、クロラミン、二酸化塩素、二酸化硫黄、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、またはTAED(テトラ-アセチル-エチレン-ジ-アミン)のうちの1つ以上での処理を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、亜臨界水反応器処理が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、臭化テトラ-n-ブチルホスホニウム(TBPB)、または塩化ベンジルトリブチルアンモニウム(BTBAC)、またはそれらのコポリマーのうちの1つ以上を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、亜臨界水反応器内の廃棄織物材料対水の比率が約1:5~1:95である。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、亜臨界水反応器において、廃棄織物材料を酸処理に供することをさらに含む。次いで、廃棄織物材料中のセルロースは、機械的粉砕プロセスに供することができる。この方法は、廃棄織物材料中のセルロースを回収して再生セルロースを生成することを可能にすることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、本方法は、亜臨界水処理の前に亜臨界水反応器内の水のpHを調整することをさらに含む。いくつかの実施形態では、pHは約2~4に調整される。いくつかの実施形態では、pHは約10~14に調整される。いくつかの実施形態では、pHは、0.01~5%(v/v)有機酸、0.5~20%(w/v)水酸化ナトリウム、または0.5~20%(w/v)水酸化カリウムを使用して調整される。
【0016】
廃棄織物材料が綿/ポリエステルブレンドを含むいくつかの実施形態では、亜臨界水反応器は、ポリエステルを分解し、セルロース高分子の重合度を調整するように機能する。
【0017】
いくつかの実施形態では、亜臨界水反応器は、ポリエステルのテレフタル酸(TPA)およびエチレングリコール(EG)への溶解を可能にする。
【0018】
いくつかの実施形態では、ポリエステル廃棄織物材料からテレフタル酸(TPA)を製造するための方法が提供され、この方法は、亜臨界水反応器で、約105℃~190℃の温度、約40~300psiの圧力、または両方で、約0~90分間、ポリエステル廃棄織物材料を処理し、ここで、溶解したTPAおよびエチレングリコール(EG)が生成されることを含む。pHは、約10~14の範囲であることができる。本方法は、TPAを沈殿させ、再結晶させることをさらに含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、本開示の主題は、開示されている方法を用いて製造された再生セルロース材料に向けられている。いくつかの実施形態では、本開示の主題は、開示されている方法を用いて製造された再生ポリエステル材料に向けられている。いくつかの実施形態において、再生セルロース材料の製品は、レーヨン、ビスコースレーヨン、リオセルまたはセルロースアセテートを含む。再生セルロースおよびTPAは、繊維紡糸および織物用途に適した特性を有する。例えば、一実施形態では、本開示の再生セルロースモノフィラメントは、1.3g/den~1.8g/denの範囲の靭性(テナシティ、引っ張り強さ)(tenacity)および約10%~12%の破断歪みを有する。
【0020】
〔図面の簡単な説明〕
前述の概要および以下の詳細な説明は、本開示の主題のいくつかの(しかしすべてではない)実施例を示す図面を考慮して読まれるべきである。
【0021】
図1は、本開示の主題に従って使用することができる分類/サイジング方法の一実施形態の模式図である。
【0022】
図2は、本開示の主題のいくつかの実施形態による、綿織物から再生繊維を製造するための方法の一実施形態の概略図である。破線は、脱色、漂白、およびセルロース繊維活性化の任意の処理工程を示す。
【0023】
図3は、本開示の主題のいくつかの実施形態による、ポリエステル織物から再生繊維を製造するための方法の一実施形態の模式図である。破線は、脱色の任意の処理ステップを示す。
【0024】
図4は、本開示の主題のいくつかの実施形態による、ポリコットン織物から再生繊維を製造するための方法の一実施形態の模式図である。破線は、脱色、漂白、およびセルロース繊維活性化の任意の処理工程を示す。
【0025】
図5は、本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造された綿織物から回収されたセルロースのFT-IR結果を図示したグラフである。
【0026】
図6は、本開示の主題のいくつかの実施形態による、再生セルロースフィラメントを製造する方法を示す模式図である。
【0027】
図7Aは、本開示の主題に従って製造された単一再生セルロースフィラメントの顕微鏡画像である。
【0028】
図7Bは、本開示の主題に従って製造された再生セルロースフィラメントの束の顕微鏡断面画像である。
【0029】
図7Cは、本開示の主題に従って製造された再生セルロースマルチフィラメント編み物サンプルの顕微鏡画像である。
【0030】
図8は、本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造されたポリコットン織物から回収された沈殿TPAからのFT-IR結果を示すグラフである。
【0031】
図9Aは、本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造された、水再結晶ステップからの結晶化TPAのNMR分析である。
【0032】
図9Bは、本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造された、ポリコットン布からの沈殿TPA粉末のNMR分析である。
【0033】
図9Cは、本開示の主題のいくつかの実施形態に従って生成された、水再結晶ステップからの結晶化TPAのNMR分析である。
【0034】
図10Aは、本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造された、100%リサイクルテレフタル酸(reTPA)から製造された再生PETチップの示差走査熱量測定(DSC)である。
【0035】
図10Bは、本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造された、100%リサイクルテレフタル酸(reTPA)から製造された再生PETチップの熱重量分析(TGA)である。
【0036】
〔詳細な説明〕
本開示の主題は、より広範な発明の主題の1つまたは複数の特定の実施形態の理解を提供するのに十分な詳細とともに紹介される。説明は本発明の主題を明示的に記載された実施形態および特徴に限定することなく、それらの実施形態の特徴を説明し、例示する。これらの説明を考慮した考察は、本開示の主題の範囲から逸脱することなく、追加のおよび類似の実施形態および特徴をもたらす可能性が高い。
【0037】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本明細書で開示される主題が関係する当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法、装置、および材料が本明細書に開示される主題の実施または試験において使用され得るが、代表的な方法、装置、および材料がここに記載される。
【0038】
長年にわたる特許法の条約に従い、用語「a」、「an」、および「the」は特許請求の範囲を含む主題の明細書において使用される場合、「1つ以上」を指し、したがって、例えば、「反応器」への言及は、複数のそのような反応器などを含むことができる。
【0039】
明示されていない限り、仕様書および前記において使用される部品、条件などの数量を表すすべての数値は、「約」という用語によって、すべての場合において修正されているものと理解されなければならない。したがって、反対に示されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本明細書に開示される主題によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0040】
本明細書で使用されるように、用語「約」は質量、重量、時間、体積、濃度、および/またはパーセンテージの値または量に言及する場合、開示される方法において適切であるため、特定の量からの、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、およびいくつかの実施形態では±0.1%の変動を包含することができる。
【0041】
本開示の主題は、セルロース含有材料、ポリエステル含有材料、および/またはポリコットン(ポリエステル-綿)含有材料(例えば、消費前または消費後の織物、繊維スクラップ、およびそわなければ廃棄または処分される他の材料)を処理するシステムおよび方法を対象とする。具体的には、本開示のシステムおよび方法は、セルロース、ポリエステル、および/またはポリエステルとブレンド(混合、混紡)されたセルロースを含む織物の処理を提供する。再生セルロースおよびPETフィラメントは、本開示の方法に従って、廃棄織物材料から製造される。用語「再生された」および「リサイクルされた」は本明細書および特許請求の範囲の目的のために、本明細書において互換的に使用される。本開示のシステムおよび方法の実装は、環境への影響の少ないプロセスを用いて、改善された特性を有する再生繊維および織物製品を製造することができる。例えば、一実施形態では、本開示の再生セルロースモノフィラメントは、1.3g/den~1.8g/denの範囲の靭性および約10%~12%の破断歪みを有する。
【0042】
本開示のシステムおよび方法では、セルロース、ポリエステル、および/またはポリコットンを含む任意の材料を出発材料として使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、出発材料は、消費後廃棄物織物(廃織物、廃テキスタイル)および他のセルロース含有布(タオル、寝具、室内装飾品など)に見られる廃綿および/または廃ポリコットン(綿/ポリエステルブレンド)材料であり得る。本明細書および特許請求の範囲の目的のために、用語「ポリコットン」および「綿/ポリエステルブレンド」は本明細書中で互換的に使用される。綿繊維は、約95~97重量%までのセルロース含量を有する唯一の天然の純粋なセルロースである。本明細書中で使用される用語「セルロース」は、以下の構造(I)に例示されるように、β(1→4)結合D-グルコース単位(セロビオース)の直鎖として構成される式(C6H10O5)nを有する多糖類をいう:
【0043】
【0044】
セルロースポリマー中の個々のグルコースモノマー(単量体)はしばしば、無水グルコース単位(または「AGU」)と呼ばれる。AGU単位の数は、セルロースの「重合度」(DP)(Degree of Polymerization)と定義される。本開示のシステムおよび方法において、亜臨界水処理後のセルロースパルプ中のセルロースのDPの変化を評価するために、粘度測定が使用され得る。本明細書および特許請求の範囲の目的のために、用語「セルロースパルプ」、「パルプ」、「綿パルプ」、および「綿シート」は本明細書中では互換的に使用され、本開示の亜臨界水処理によって廃棄織物布から生成されるセルロースを指す。クプリエチレンジアミン(CED)溶液中でTAPPI T230 om-94(1994)(参照により本明細書に組み込まれる)に従って、セルロース粘度(単位mPa・s)が測定される。以下の式1
式1: [η]=954×lg(粘度)-325
から固有粘度[η](ml/g単位)を計算することができる(Mazumder B.B.ら、2000、Journal of Wood Science 46(5),364-370)。
【0045】
以下の式2(Sihtola et al.1963、 Paper Ja Puu 45、225-232)および式3
式2: DP0.905=0.75×[η]
式3: DP=k×[η]、 K=1.9
を用いて固有粘度から平均DPを計算することができる。
【0046】
本開示のシステムおよび方法では、亜臨界水処理された織物セルロースパルプは、約3mPa・s~約5mPa・sの粘度範囲を有することができ、これは、約200~2000、300~1700、400~1500、500~1200、600~1000、または700~800などの約150~2500のDPを指す。したがって、処理されたセルロースパルプは、少なくとも約150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、2000、2100、2200、2300、2400、または2500(または約これらに過ぎない)のDPを有することができる。
【0047】
ポリエステルは、織物用途で一般に使用されるポリマーの群である。ポリマーは、より小さな分子から構築された非常に大きな分子である。織物に使用される最も一般的なタイプのポリエステルはポリエチレンテレフタレート(PET)(以下の構成II)であり、これは、綿繊維と結合してポリコットンを形成することができる。
【0048】
【0049】
用語「織物」は、本明細書で広く使用され、繊維、フィラメント(単繊維)、紡ぎ糸(毛糸、ヤーン)、織布および不織布、ニット、ならびに完成品(衣類など)を含む。
【0050】
図1に示されるように、本開示のシステムは、廃棄物織物が1つ以上の所望のパラメータに従って分類される分類構成要素を含む。例えば、いくつかの実施形態では、綿/ポリエステルブレンドなどから100%の綿材料を分離するなど、組成に応じて廃棄物織物を分類することができる。いくつかの実施形態では、織物は、セルロース含有量(例えば、>90%、>80%、>70%、>60%、>50%または<50%セルロース)に従って分類することができる。いくつかの実施形態では、織物は、ファスナー、タグ、ボタンなどの非セルロース材料を分離するために分類することができる。いくつかの実施形態では、織物は、色に従って分類することができる。分類工程は、任意の公知の機械的分類装置を使用して達成することができ、または手動で行うことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、さらなる処理の前に、織物サイズを縮小するように、および/またはより均一な織物サイズを提供するように構成された、機械的切断装置を含む。典型的には、綿、布、紡ぎ糸、および繊維を含む織物材料は、5mmを超え100mmまでの繊維長を有する。いくつかの実施形態では、切断装置は、繊維長を約60mm以下に減少させる。切断装置は、1つまたは複数のブレード、針、シュレッダ、プーラ、グラインダ、カッタ、リッパなど(これらに限定されない)のような、織物サイズをトリミングすることができる任意の装置を含むことができる。いくつかの実施形態では、廃棄物織物は、長さおよび/または幅が約5~60mmのサイズに切断される。しかしながら、本開示の主題は限定されず、廃棄織物材料は任意の所望のサイズに切断することができる。有利には、セルロース系織物材料のサイズを減少させることは、さらなる処理(例えば、亜臨界水処理)のための表面積を増加させる。
【0052】
いくつかの実施形態では、分類処理は、
図2、
図3、および
図4に示すように、材料を3つの流れに分離するために、手動プラットフォームまたは任意の公知の現在の廃棄織物オートメーションリサイクル機によって実施することができる。特に、ストリーム1は、本質的に100%の綿を含むことができ、ストリーム2は、本質的に100%のポリエステルを含むことができ、ストリーム3は、ポリコットン(任意の比率での綿およびポリエステル)を含むことができる。いくつかの実施形態では、分類プロセスは、最初に、光学センサを使用して走査し、色によって廃棄物織物を分離することができる。その後、均一分散機により材料を完全に散乱させることができる。次に、非セルロース材料(ファスナー、タグ、ボタンなど)を除去することができる。分類およびサイジング工程は、本開示の繊維再生プロセスの効率を高めるために、随意に繰り返すことができる。
【0053】
本開示の方法は、亜臨界水反応器を含む。特に、廃棄物織物は、織物中の繊維間の連結を弱めるために亜臨界水で処理するために反応器に導入される。亜臨界水反応器はさらに、ポリエステルを分解し、セルロース高分子の重合度を調整するように機能する。さらに、亜臨界水反応器は、ポリエステルのテレフタル酸(TPA)およびエチレングリコールへの溶解を可能にする。
【0054】
本明細書で使用される「反応器」という用語は、出発材料を必要とする任意の数の化学プロセスに使用することができるデバイスを指す。いくつかの実施形態では、反応器は熱水(hydrothermal)反応器を含む。本明細書で使用される「熱水」という用語は、水の臨界点(374℃、22.1MPa)に典型的には近いか、またはそれ未満の、圧力および上昇した温度下の水系を指す。したがって、反応器は、(限定されないが、)バッチ反応器、半連続反応器、または連続反応器などの熱水状態を提供することができる。いくつかの実施形態ではバッチ反応器が好ましい。本明細書で使用される「亜臨界水」という用語は、密度、誘電率、イオン濃度、拡散率、および溶解度などのその特性に関して独特の特徴を示す、大気中の沸点(100℃)と臨界温度(374℃)との間の温度の液体水を指す。亜臨界領域では、水の電離定数(Kw)は気温と共に増加し、周囲水のそれより約3桁高く、水の誘電率は80から20に降下する。
【0055】
有利には、亜臨界水は、布リサイクル産業で伝統的に使用されている過酷な化学物質の代替物として使用することができる、無毒で、環境に害がなく、安価で、環境に優しい溶媒である。本開示の方法およびシステムにおいて、亜臨界水熱水処理の使用は、水のより高い拡散、活性、およびイオン化を可能にする。いくつかの実施形態では、セルロースの部分加水分解、および織物中の綿セルロースとポリエステルとの間の架橋の分解を達成することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、調整可能な熱水反応条件を適用して、レーヨン、ビスコースレーヨン、リオセル、リオセル類、または酢酸セルロースなどの広範な再生セルロース製品を製造するために使用することができる広範な所望のDP温度範囲(DP:150~2500)のセルロースを製造することができる。いくつかの実施形態では、亜臨界水反応器は、約105℃~190℃の温度(例えば、約105~190、110~180、120~175、130~160、140~150、140~170、150~160、160~190、170~180、165~190、または175~185℃)および/または約40~300psiの圧力(例えば、約40~300、60~280、80~250、80~120、110~140、120~150、または100~250psi)が約0~90分(例えば、0~90、10~80、20~70、30~60、40~70、または40~50分)の滞留時間に対して達成できるように、1つ以上の共溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール)と共に混合することができる。いくつかの実施形態では、共溶媒は、約0~100重量パーセント、例えば約1~90、5~80、10~70、20~60、または30~50重量パーセントの量で存在することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、プロセス効率を改善し、エネルギー消費を低減するために、相間移動触媒(PTC)(phase transfer catalyst)を含むことができる。「相間移動触媒」という用語は、水性溶媒および有機溶媒の両方にイオン対として溶解する能力によって反応器を容易にすることができる任意の薬剤を指す。テトラ-n-ブチルホスホニウムブロミド(TBPB)、塩化ベンジルトリブチルアンモニウム(BTBAC)、またはコポリマーなどの任意の市販のアンモニウムまたはホスホニウムベースのPTC(ただし、これらに限定されない)など、任意の所望のPTCを使用することができる。
【0058】
廃棄物織物を反応器に移し、所望の時間、処理することができる。いくつかの実施形態では、織物は、反応器内で、約105℃~190℃、約40~300psi、またはその両方で処理することができる。いくつかの実施形態では、織物材料対水の比率は、約1:5~1:95(例えば、1:5、1:10、1:11、1:12、1:13、1:14、1:15、1:20、1:21、1:22、1:23、1:24、1:25、1:30、1:31、1:32、1:33、1:34、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:80、1:81、1:82、1:83、1:84、1:85、1:86、1:87、1:88、1:89、1:90、1:91、1:92、1:93、1:94、1:95)である。いくつかの実施形態では、反応時間は、約0~90分、例えば、少なくとも約0、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、または90分(または約これらに過ぎない)であり得る。
【0059】
反応器では、織物中の繊維間の結合が温度および/または圧力の結果として弱められる。特に、亜臨界水の高温および/または高圧は、セルロースポリマーの分子分離を促進し、廃棄物織物内の分子間水素結合および他の非共有結合を分解する。結果として、セルロース含有織物は、それらの構成セルロースポリマーに変換される。いくつかの実施形態では、セルロース材料中の分子間水素結合の数は、亜臨界水処理後に少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%減少する。したがって、亜臨界水での処理は、廃棄織物材料中のセルロースを分解するための環境に優しい方法を提供する。
【0060】
いくつかの実施形態では、反応器中の出発物質(例えば、水および織物混合物)のpHは、亜臨界水反応効率を高めるように調整することができる。例えば、0.01%~2%の酢酸を綿織物と共に使用して、pHを約4に調整することができる。いくつかの実施形態では、pHは、綿織物について約2~4の範囲に調整することができる。綿/ポリエステル織物ブレンドについては、0.01%~5%の酢酸を使用して、2~4のpHを生成することができる。織物が綿/ポリエステルブレンドおよび/またはポリエステルを含む実施形態では、0.5~20%の水酸化ナトリウム(NaOH)または水酸化カリウム(KOH)を使用して、約10~14のpHを達成することができる。いくつかの実施形態では、ポリエステル(PET)織物は、0.5~20%のNaOHを使用する加水分解によって分解することができ、亜臨界水処理によってさらに溶解することができる。しかし、酸/塩基は限定されず、任意の適切な酸または塩基を使用してpHを所望のレベルに調整することができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、KOH、NaOH、酢酸、および/または他の有機酸は、反応速度を増加させる試薬として機能する。
【0061】
図2に示され、実施例1~4に記載されるように、出発織物材料が本質的に100%綿織物(例えば、細断織物材料)である実施形態では、本開示の方法は、亜臨界水反応器(例えば、条件I、適切なpH、例えば、pH2~pH6またはpH2~4、および温度調整105℃~190℃)中に材料を堆積させることを含む。
【0062】
一実施形態では、亜臨界水反応から生じるセルロースを洗浄し、粉砕プロセスにかけて、実施例1~4に記載のようにセルロース繊維をほぐす。このようにして、セルロースを、溶解のためにさらに処理することができる。いくつかの実施形態では、この処理の後、粉砕した繊維は酸洗浄パルププロセスに供され、これは工業標準条件を使用する希釈二酸化硫黄水溶液での処理を伴う。特定の溶解系を利用する場合には、セルロース繊維活性化プロセスを開始してもよい。これは、NaOH水溶液(例えば、12~15%w/v)、1:20(セルロース試料:水溶液)中で、すり砕いた(ground)セルロースパルプ試料を製造し、室温で3~4時間撹拌し、中性pHまで洗浄し、乾燥し、酸処理(例えば、1M硫酸で45~60分間)に供し、中性pHまで洗浄し、風乾することを含む。次いで、溶解成分を組み込むことによって、セルロース溶解ドープが調製され得る。セルロースは、溶融有機塩(例えば、イオン性液体)、例えば、N-アルキルピリジウム塩および類似の薬剤、アミンオキシド(例えば、N-メチルモルホリン-N-オキシドおよび類似の薬剤)、および/または極性および非プロトン性液体(例えば、N、N-ジメチルアセトアミド/LiClおよび類似の薬剤)で溶解されて、工業標準技術を利用する再生繊維製造に適した溶解セルロースを提供することができる。
【0063】
図3に例示され、実施例5に記載されるように、出発織物材料が本質的に100%ポリエステル織物(例えば、切断織物材料)である実施形態において、本開示の方法は、亜臨界水反応器(例えば、条件II、適切なpH(例えばpH10~14)で、温度調整(105℃~190℃))中に材料を堆積させることを含む。処理後、処理液を除去し、pHを(例えばpH2~6に)調整することにより、沈殿によりテレフタル酸(TPA)を形成することができる。次いで、TPAを結晶化に進めることができる。これは、沈殿したTPAを含む水溶液を、約0~10分(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10分)の滞留時間で、約1:4~1:10の固形物:水の比率で、約250℃~300℃の温度に加熱することを伴う。次いで、結晶化したTPAをPET重合プロセスにかけて、再生PETを製造することができる。この方法は、工業規格バッチオートクレーブ中で、235℃~290℃の間の温度で、適切な触媒(例えば、アンチモンまたはチタン触媒パッケージ)を用いて、結晶化TPAをエチレングリコールで処理することを含むことができる。さらに、エチレングリコールは、工業標準技術(例えば、真空蒸留)を用いて処理溶液から回収することができる。
【0064】
図4に例示され、実施例6~9に記載されるように、出発織物材料が綿/ポリエステルブレンドを含む実施形態において、亜臨界水処理(例えば、条件II、適切なpH(例えば、pH10~pH14)および温度調整(例えば、105℃~190℃))は、溶解したポリエステルモノマーとTPAおよびエチレングリコールから、綿を分離するのに効果的であり得る。特に、亜臨界水処理は、液化ポリエステルモノマーおよびセルロースを生成する。処理後、処理溶液を除去し、適切なpH調整(例えば、pH2~6)を用いた沈殿によってTPAを形成する。次いで、TPAを結晶化に進めることができ、これは、沈殿したTPAを含む水溶液を、約0~約10分(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10分)の滞留時間で、約1:4~1:10の固形物:水の比率で、約250℃~300℃の温度に加熱することを伴う。次いで、結晶化したTPAをPET重合プロセスにかけて、再生PETを製造することができる。この方法は、工業規格バッチオートクレーブ中で、235℃~290℃の間の温度で、適切な触媒(例えば、アンチモンまたはチタン触媒パッケージ)を用いて、結晶化TPAをエチレングリコールで処理することを含むことができる。さらに、エチレングリコールは、工業標準技術(例えば、真空蒸留)を用いて処理溶液から回収することができる。
【0065】
廃棄物織物は、約0.5~20%のNaOHを添加することによって、亜臨界水熱水プロセス全体を通して、着色剤(例えば、顔料、染料など)を除去し、および/または、輝度を改善するように、部分的にまたは完全に処理することができる。任意の従来の脱色/色素除去要素を使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、脱色/染料除去要素は、過酸化水素、過酸化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、ジメチルスルホキシド、次亜塩素酸リチウム、過ホウ酸ナトリウム、活性炭粉末、バイオチャー、オゾン、酸素、炭酸ナトリウム、過酢酸、過マンガン酸カリウム、過硫酸塩、塩化ナトリウム、オキシ塩化カルシウム、クロラミン、二酸化硫黄、ヒドロ亜硫酸ナトリウム、またはTAED(テトラ-アセチル-エチレン-ジ-アミン)のうちの1つ以上から選択され得る。
【0066】
さらに、本開示のシステムは、粉砕構成要素を含むことができる。具体的には、亜臨界水反応後、セルロースを回収し、
図4に示すように、織物パルプからセルロース繊維がほぐされるような粉砕構成要素に供することができる。超音波、均質化、および/または粉砕などの任意の従来の粉砕方法を使用することができる(ただし、これらに限定されない)。
【0067】
さらに、本開示のシステムは、溶融有機塩(例えば、イオン性液体)、例えば、N-アルキルピリジウム塩および類似の薬剤、アミンオキシド(例えば、N-メチルモルホリン-N-オキシドおよび類似の薬剤)、および/または極性および非プロトン性液体(例えば、N、N-ジメチルアセトアミド/LiClおよび類似の薬剤)によって、セルロースが溶解される、溶解成分を含むことができる。いくつかの実施形態では、溶解成分は、約0.1%~15重量%(例えば、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15重量%)の濃度で1つ以上の添加剤を含むことができる。添加剤は、強化された機械的特性を有する再生セルロースフィラメントの製造を促進することができる(例えば、より高い靭性および伸びの添加剤)。適切な添加剤としては、グリセリン酸、グルコン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸、ムチン酸、および/またはグルカル酸が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、溶解成分は、半鈍化または鈍化フィラメントを生成するために、粉末二酸化チタン(例えば、0.1~10重量%)を含むことができる。
【0068】
セルロース繊維の粉砕後、単離されたセルロース分子を使用して、再生セルロース繊維および織物材料を形成することができる。いくつかの実施形態において、「再生セルロース」は、溶解セルロース繊維を含む溶液からの再生によって調製された(すなわち、固体形態に戻された)セルロースを指す。いくつかの実施形態では、単離されたセルロース分子は、溶融有機塩(例えば、イオン性液体)、例えば、N-アルキルピリジウム塩および類似の剤、アミンオキシド(例えば、N-メチルモルホリン-N-オキシドおよび類似の薬剤)、および/または極性および非プロトン性液体(例えば、N、N-ジメチルアセトアミド/LiClおよび類似の薬剤)によって溶解され、凝固浴中で紡糸(紡績)されて、レーヨン、ビスコースレーヨン、リオセル、リオセル類、または酢酸セルロースなどの再生セルロース繊維を生成することができる。新たに形成された繊維は、所望の構成に延伸および/または吹き付けられ、洗浄され、乾燥され、所望の長さに切断され得る。再生セルロース繊維は、糸に撚り、染色し、漂白し、織物に織り、最終的には切断して縫い付けて衣類にすることができる。したがって、処理された繊維は、シャツ、パンツ、帽子、コート、ジャケット、靴、靴下、ユニフォーム、運動服、および水着などの衣類(これらに限定されない)を製造するために使用することができる。処理された繊維を使用して、毛布、シーツ、寝袋、バックパック、テント、断熱材などの非衣料品を構成することも可能であり、企図される。
【0069】
したがって、使用時に、本開示のシステムを使用して、セルロース、ポリエステル、および/またはポリコットンを含む任意の出発織物材料から、セルロース、および、テレフタル酸(TPA)およびエチレングリコール(EG)の、一方または両方をリサイクルすることができる。リサイクルセルロースを使用して再生セルロースを製造することができ、リサイクルテレフタル酸(TPA)およびエチレングリコール(EG)を使用して再生PETを製造することができる。特に、廃棄物織物は、所望のパラメータ(例えば、セルロースのパーセンテージ、組成、色など)に基づいて、提供され、分類され得る。分類された織物は、織物材料が処理に適したサイズおよび均一なサイズであることを確実にするために、切断装置、ブレンド装置、またはその両方に曝すことができる。切断および/またはブレンドされた織物材料は、染料、仕上げ剤、および/または汚染物質の量を除去または低下させるために、任意に漂白することができる。織物材料を反応器に導入し、そこでは、PETを溶解してセルロース繊維間の結合を弱めるのに充分な温度、圧力および時間(例えば、条件II、適切なpH、例えばpH10~pH14、および温度調整、例えば105℃~190℃)の間、亜臨界水反応を行う。次いで、溶解したTPAをpH調整により沈殿させ、真空下で濾過し、中性条件まで洗浄することができる。洗浄したTPAを乾燥させ、結晶化に進めることができる。結晶化したTPAをPET再重合プロセスにかけて、再生PETを製造することができる。綿セルロース材料は、回収されることができる。いくつかの実施形態では、回収されたセルロース材料は、粉砕されることができ、再生されたセルロース繊維を製造するために使用され得る。いくつかの実施形態において、回収されたセルロース材料を短繊維(人造繊維)(staple fiber)として粉砕して、未使用の綿繊維、または、リサイクルされた綿ブレンド紡ぎ糸としての他の繊維、のいずれかとブレンドすることができる。いくつかの実施形態では、回収されたセルロース材料を洗浄し、より小さい断片に切断することができる。断片は、約4~6mmの範囲の平均サイズを有することができる。断片は、実施例6~8に記載されるような第2の亜臨界水処理(例えば、条件I、適切なpH、例えば、pH2~pH4、および温度調整、例えば、105℃~190℃)に供することができる。亜臨界水処理された廃棄物織物は、実施例10に記載されるように、セルロース繊維がパルプ材料からほぐされるような粉砕構成要素に暴露されることができる。次いで、回収されたセルロースは、セルロースの溶解を促進するために溶解成分に曝される。セルロース繊維の溶解後、単離されたセルロース分子を使用して、再生セルロース繊維および織物材料を形成することができる。
【0070】
図5は、本開示の方法に従って処理された綿廃棄物織物からセルロースが回収されたことを検証するフーリエ変換赤外線検査の結果を示す。回収されたセルロースの純度は、約94%~98%の範囲であり得る(HPLC分析によって計算される)。セルロースドープは、
図6の模式図に示すように、連続再生(continuous regenerated)セルロースフィラメントおよび織物製品を製造するために使用することができる。本開示の方法に従って製造されたセルロースモノフィラメントは、約1.3g/den~1.8g/denの範囲の靭性および約10%~12%の破断歪みを有することができる。本開示の方法に従って製造された再生セルロースフィラメントの光学顕微鏡画像を
図7A~
図7Cに示す。特に、
図7Aは、再生セルロースフィラメントの顕微鏡画像(4x)を示す。
図7Bは、束(bundle)フィラメントの断面顕微鏡画像(4x)であり、ここで、各個々のフィラメントの断面は、楕円に似た形状を示す。
図7Cは、マルチフィラメントを示す、編み物サンプルの共焦点顕微鏡画像(2x)である。
【0071】
実施例11は、本開示の方法によるポリコットン廃棄物織物から製造された再生ポリエステルの物理的性質を記載する。本明細書に記載されるように、ポリコットン廃棄物織物は、例えば実施例6に記載されるような条件IIなどの亜臨界水処理に供され、得られたTPAは、結晶化およびPET重合に運ばれ、再生PETを生成する。その結果得られたTPAのFT-IR分析を
図8に示す。水再結晶からのTPAのNMR分析を
図9Aに示す。(脂肪族領域でズームされた)ポリコットン布からの沈殿したTPA粉末を、再結晶前(
図9B)および再結晶後(
図9C)に示す。
図9A~
図9Cは、再結晶後の不純物の減少を示す。本開示の方法による100%リサイクルTPAから製造された再生PETチップの示差走査熱量測定(DSC)を
図10Aに示す。示されるように、PET参照標準(reference standard)ピーク温度は246.139℃であり、本開示の方法は、251.800℃のピーク温度を有する再生PETを生成した。100%再生TPAから製造された再生PETチップの熱重量分析(TGA)を
図10Bに示す。示されるように、PETの参照標準は開始x=425.33℃を有し、本開示の手法は、開始x=426.040℃を有する再生PETを生成した。
【0072】
〔実施例〕
以下の実施例は、本明細書に開示される主題の代表的な実施形態を実施するためのガイダンスを当業者に提供するために含まれている。本開示および当業者の一般的なレベルに照らして、当業者は以下の実施例が単に例示的であることを意図し、本開示の主題の範囲から逸脱することなく、多数の変更、修正、および変更を使用することができることを理解することができる。
【0073】
〔実施例1〕
〔セルロースパルプ内の重合度を調整するための亜臨界水での処理を用いた綿織物のリサイクル〕
図2に示す方法は、綿織物をリサイクルするために使用することができる。特に、本質的に100%の綿廃棄物織物のサンプルを得て、平均サイズ5mmの断片に切断した。織物片を、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「条件I」)した。反応器温度は175℃、約0.05%~0.1%(v/v)の酢酸濃度であり、所望の温度に到達した後、滞留時間は60分であり、圧力は80~120psiの範囲であった。固体:水の比は1:88であった。亜臨界水反応の間に、織物内部の繊維間の結合は弱められた。
【0074】
亜臨界水処理後、2~3%セルロースパルプ濃度の標準的な繊維粉砕機(ディスインテグレーター)を用いて、10分間の操作時間にわたり粉砕プロセスを行って、繊維結合をほぐし、粉砕セルロースを製造した。得られたセルロースパルプ生成物は3.2mPa・sの粘度を有し、式1、2、3に基づいて約DP240~370として計算された。粉砕セルロースを分離プロセスに供し、セルロース繊維を回収した。
【0075】
生成した重合体の存在および種類を確認>するために、フーリエ変換赤外線(FT-IR、Pike MIRacle ATR取り付けを有するJasco 6200、範囲:4000~600cm
-1、スキャン回数:128)試験を行った。
図5に示すように、結果は、セルロースが綿廃棄物織物から回収されたことを示す。
【0076】
〔実施例2〕
〔セルロースパルプ内の重合度を調整するための亜臨界水での処理を用いた綿織物のリサイクル〕
図2に示す方法は、綿織物をリサイクルするために使用することができる。特に、本質的に100%の綿廃棄物織物のサンプルを得て、平均サイズ5mmの断片に切断した。織物片を、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「状態I」)した。反応器温度は155℃、約0.05%~0.1%(v/v)の酢酸濃度であり、所望の温度に到達した後、滞留時間は60分であり、圧力は80~120psiの範囲であった。固体:水の比は1:94であった。亜臨界水反応の間に、織物内部の繊維間の結合は弱められた。得られたセルロースパルプ生成物は4.9mPa・sの粘度を有し、次いで、式1、2、3に基づいて約DP450~640として計算された。
【0077】
亜臨界水処理後、2~3%セルロースパルプ濃度の標準的な繊維粉砕機を用いて、10分間の操作時間にわたり粉砕プロセスを行って、繊維結合をほぐし、粉砕セルロースを製造した。次いで、粉砕セルロースを分離プロセスに供し、セルロース繊維を回収した。
【0078】
〔実施例3〕
〔セルロースパルプ内の重合度を調整するための亜臨界水での処理を用いた綿織物のリサイクル〕
図2に示す方法は、綿織物をリサイクルするために使用することができる。特に、本質的に100%の綿廃棄物織物のサンプルを得て、平均サイズ5mmの断片に切断した。織物片を、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「条件I」)した。反応器温度は155℃、約0.05%~0.1%(v/v)の酢酸濃度であり、所望の温度に達した後、滞留時間は0分であり、圧力は80~120psiの範囲であった。固体:水の比は1:31であった。亜臨界水反応の間に、織物内部の繊維間の結合は弱められた。得られたセルロースパルプ生成物は16.8mPa・sの粘度を有し、次いで、式1、2、3に基づいて約DP1200~1600として計算された。
【0079】
亜臨界水処理後、2~3%セルロースパルプ濃度の標準的な繊維粉砕機を用いて、10分間の操作時間にわたり粉砕プロセスを行って、繊維結合をほぐし、粉砕セルロースを製造した。次いで、粉砕セルロースを分離プロセスに供し、セルロース繊維を回収した。
【0080】
〔実施例4〕
〔セルロースパルプ内の重合度を調整するための亜臨界水での処理を用いた綿織物のリサイクル〕
図2に示す方法は、綿織物をリサイクルするために使用することができる。特に、本質的に100%の綿廃棄物織物のサンプルを得て、平均サイズ5mmの断片に切断した。織物片を、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「条件I」)した。反応器温度は155℃、約0.05%~0.1%(v/v)の酢酸濃度であり、所望の温度に達した後、滞留時間は0分であり、圧力は80~120psiの範囲であった。固体:水の比は1:21であった。亜臨界水反応の間に、織物内部の繊維間の結合は弱められた。得られたセルロースパルプ生成物は27.9mPa・sの粘度を有し、次いで、式1、2、3に基づいて約DP1600~2000として計算された。
【0081】
亜臨界水処理後、2~3%セルロースパルプ濃度の標準的な繊維粉砕機を用いて、10分間の操作時間にわたり粉砕プロセスを行って、繊維結合をほぐし、粉砕セルロースを製造した。次いで、粉砕セルロースを分離プロセスに供し、セルロース繊維を回収した。
【0082】
〔実施例5〕
〔亜臨界水処理による100%ポリエステル織物のリサイクル〕
図3に示す方法は、ポリエステル織物をリサイクルするために使用することができる。特に、本質的に100%のポリエステル廃棄物織物のサンプルを得て、断片(30cm×30cm)に切断した。織物片を、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「条件II」)した。反応器温度は約175℃~180℃であり、水酸化ナトリウムは約5%(w/v)であり、滞留時間は60分であり、圧力は110~140psiの範囲であった。固体/水の比は約1:5であった。処理後、処理溶液を除去し、pH調整(例えば、pH2~pH4)を用いた沈殿によってTPAを形成した。次いで、沈殿したTPAを結晶化に進めた。これは、沈殿したTPAを含む水溶液を、約5分の滞留時間で、約1:5の固形分:水の比率で、約250℃~300℃の温度に加熱することを必要とした。次いで、結晶化したTPAを、PET重合法のための触媒としてアンチモン金属(Sb
2O
3)を用いて約290℃の温度でバッチオートクレーブ中にてエチレングリコールで処理して、0.620dl/gの目標とする固有粘性(IV)を有する再生PETを製造した。
【0083】
〔実施例6〕
〔セルロースパルプ内の重合度を調整するための亜臨界水での処理を用いたポリコットン織物のリサイクル〕
図4に示す方法は、ポリコットン織物をリサイクルするために使用することができる。特に、80/20ポリコットン(ポリエステル:綿=80:20)廃棄物織物のサンプルを得、平均サイズ30×30cmのシートに切断した。織物シートを、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「条件II」)した。水酸化ナトリウム約5%(w/v)を有する反応器の温度は180℃であり、滞留時間は60分であり、圧力は120~150psiの範囲であった。固体/水の比は1:11であった。処理後、溶解したTPAを回収し、実施例5に記載の方法を使用して、再生PETを製造した。
【0084】
TPAに加えて、亜臨界水処理で生成したセルロースも回収した。亜臨界水反応の間に、織物内部の繊維間の結合は弱められ、得られたセルロースパルプ生成物は6mPa・s(DP600~800として計算)の粘度を有した。次いで、パルプを洗浄し、約5mmの平均サイズを有する断片に切断した。織物片を、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「条件I」)した。亜臨界水処理後、生成物を洗浄し、2~3%セルロースパルプ濃度で10分間の操作時間で粉砕プロセスにかけて、繊維結合をほぐした。粉砕した繊維を分離プロセスに供し、セルロース繊維を回収した。得られたセルロースパルプ製品の粘度は4mPa・sであった(DP300~500として計算)。
【0085】
〔実施例7〕
〔セルロースパルプ内の重合度を調整するための亜臨界水処理および相間移動触媒を用いたポリコットン織物のリサイクル〕
図4に示す方法は、ポリコットン織物をリサイクルするために使用することができる。特に、80/20ポリコットン(ポリエステル:綿=80:20)廃棄物織物のサンプルを得、平均サイズ30×30cmのシートに切断した。織物シートを、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「条件II」)した。水酸化ナトリウム約5%(w/v)、0.5% BTBAC(w/v)を有する反応器の温度は155℃であり、滞留時間は60分であり、圧力は120~150psiの範囲であった。固体/水の比は1:10であった。処理後、溶解したTPAを回収し、実施例5に記載の方法を使用して、再生PETを製造した。
【0086】
回収されたセルロースパルプ生成物については、亜臨界水反応の間に、織物内部の繊維間の結合が弱められ、得られた生成物は約50.5mPa・s(DP2000~2500として計算)の粘度を有した。次いで、パルプを洗浄し、約5mmの平均サイズを有する断片に切断した。実施例1、2、3および4の方法に従って、断片を、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「条件I」)して、所望の粘度を有するセルロースパルプを製造した。
【0087】
〔実施例8〕
〔セルロースパルプ内の重合度を調整するための亜臨界水および共溶媒での処理を用いたポリコットン織物のリサイクル〕
図4に示す方法は、ポリコットン織物をリサイクルするために使用することができる。特に、80/20ポリコットン(ポリエステル:綿=80:20)廃棄物織物のサンプルを得、平均サイズ30×30cmのシートに切断した。織物シートを、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「条件II」)した。水酸化ナトリウム約5%(w/v)、10% MeOH(v/v)を有する反応器の温度は150℃であり、滞留時間は60分であり、圧力は120~150psiの範囲であった。固体/水の比は1:10であった。処理後、溶解したTPAを回収し、実施例5に記載の方法を使用して、再生PETを製造した。
【0088】
回収されたセルロースパルプ生成物については、亜臨界水反応の間に、織物内部の繊維間の結合が弱められ、得られた生成物は約35mPa・s(DP1750~2200として計算)の粘度を有した。次いで、パルプを洗浄し、約5mmの平均サイズを有する断片に切断した。実施例1、2、3および4の方法に従って、断片を、熱水反応器(Parr 4553M 2ガロン反応器、Parr Instrument Company、Moline、イリノイ州から入手可能)に導入し、亜臨界水処理(「条件I」)して、所望の粘度を有するセルロースパルプを製造した。
【0089】
〔実施例9〕
〔ポリコットン織物からの綿繊維の回収〕
ポリコットン織物を実施例8に記載の亜臨界水処理(状態II)に供した。処理後、TPAを溶解し、粘度約35mPa・sでセルロース材料を回収した(DP1750~2200として計算)。次に、綿シートを細断し、短繊維として使用するために粉砕して、未使用の綿繊維またはリサイクルされた綿ブレンド紡ぎ糸としての他の繊維とブレンドした。
【0090】
〔実施例10〕
〔ポリコットン織物のリサイクルにより製造された再生セルロースフィラメント〕
実施例6の方法から得られたセルロースパルプ製品を、希釈二酸化硫黄水溶液(pH2~pH3)、1:20(セルロース試料:水溶液)で酸洗浄処理に供し、室温で1.5時間撹拌した。次いで、酸洗浄したパルプを濾過し、中性pHが得られるまでDI水で洗浄し、風乾した。NaOH水溶液(15%w/v)、1:20(セルロース試料:水溶液)中で、すり砕いたセルロースパルプ試料を製造し、室温で4時間撹拌し、次いで中性pHまで洗浄し、乾燥し、室温にて1M硫酸で約45分間処理し、次いで中性pHまで洗浄し、風乾することを含むセルロース繊維活性化プロセスを行った。
【0091】
セルロース溶解ドープを作製するために、活性化セルロースサンプルを、添加剤としてラウリルガレート(加えたセルロースサンプルに対して10%w/w)および粘液酸(加えたセルロースサンプルに対して5%w/w)を含む塩化リチウム(8%w/v)/N,N-ジメチルアセトアミドに組み込み、120℃~130℃で約90分間攪拌し、冷却し、次いで、2500rpmで約60分間遠心分離して未溶解不純物を除去し、固形分濃度約4%~6%の溶解セルロースドープを作製した。次に、セルロースドープを使用して、
図6の模式図に示すように、連続再生セルロースフィラメントおよび織物製品を製造した。
【0092】
再生セルロースモノフィラメントの物理的性質を測定した。モノフィラメントは、1.3g/den~1.8g/denの範囲の靭性および約10%~12%の破断歪みを有していた。
【0093】
生成した再生セルロースフィラメントの光学顕微鏡画像を撮影した。特に、
図7Aは、単一の再生セルロースフィラメントの顕微鏡画像(4×)を示す。
図7Bは、束フィラメントの断面顕微鏡画像(4x)であり、ここで、各個々のフィラメントの断面は、楕円に似た形状を示す。
図7Cは、マルチフィラメントを示す、編み物サンプルの共焦点顕微鏡画像(2x)である。
【0094】
〔実施例11〕
〔リサイクルポリコットン織物から製造されたリサイクルポリエステルの物理的性質〕
ポリコットン織物を、実施例6に記載の亜臨界水処理(条件II)に供し、次いで、溶解したTPAを、pH調整(例えば、pH2~pH4)を用いた沈殿によって回収した。次いで、沈殿したTPAを結晶化に進めた。これは、沈殿したTPAを含む水溶液を、約5分の滞留時間で、約1:5の固形分:水の比率で、約250℃~300℃の温度に加熱することを必要とした。次いで、結晶化したTPAを、PET重合法のための触媒としてアンチモン金属(Sb2O3)を用いて約290℃の温度で、バッチオートクレーブ中にてエチレングリコールで処理して、0.620dl/gの目標とする固有粘性(IV)を有する再生PETを製造した。
【0095】
図8に示すように、TPA沈殿工程中に生成したTPAを分析するために、FT-IR(Pike MIRacle ATR取り付けを有するJasco 6200、範囲4000~600cm
-1、スキャン回数:128)試験を行った。
【0096】
水再結晶からの結晶化TPAのNMR分析を
図9Aに示す。(脂肪族領域でズームされた)ポリコットン布からの沈殿したTPA粉末を、再結晶前(
図9B)および再結晶後(
図9C)に示す。示されるように、再結晶後、不純物の減少が観察された。
【0097】
100%リサイクルTPAから製造された再生PETチップの示差走査熱量測定(DSC)を
図10Aに示す。処理履歴に基づく熱履歴を除去するために「加熱‐冷却‐加熱」方法を利用したTA Instruments Discovery Model DSCを用いてDSC分析を行った。2回目の加熱走査は、10℃の速度で(0または-90℃のいずれか)から325℃まで実行された。示されるように、PET参照標準ピーク温度は246.139℃であり、本開示の方法は、251.800℃のピーク温度を有する再生PETを生成した。
【0098】
100%リサイクルTPAから製造された再生PETチップの熱重量分析(TGA)を
図10Bに示す。TGA分析は、窒素雰囲気下での20℃/分の速度で室温から700℃までの温度勾配を利用するTA器具のDiscovery Model TGAを用いて行った。示されるように、PETの参照標準は開始x=425.33℃を有し、本開示の方法は、開始x=426.040℃を有する再生PETを生成した。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】本開示の主題に従って使用することができる分類/サイジング方法の一実施形態の模式図である。
【
図2】本開示の主題のいくつかの実施形態による、綿織物から再生繊維を製造するための方法の一実施形態の概略図である。
【
図3】本開示の主題のいくつかの実施形態による、ポリエステル織物から再生繊維を製造するための方法の一実施形態の模式図である。
【
図4】本開示の主題のいくつかの実施形態による、ポリコットン織物から再生繊維を製造するための方法の一実施形態の模式図である。
【
図5】本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造された綿織物から回収されたセルロースのFT-IR結果を図示したグラフである。
【
図6】本開示の主題のいくつかの実施形態による、再生セルロースフィラメントを製造する方法を示す模式図である。
【
図7A】本開示の主題に従って製造された単一再生セルロースフィラメントの顕微鏡画像である。
【
図7B】本開示の主題に従って製造された再生セルロースフィラメントの束の顕微鏡断面画像である。
【
図7C】本開示の主題に従って製造された再生セルロースマルチフィラメント編み物サンプルの顕微鏡画像である。
【
図8】本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造されたポリコットン織物から回収された沈殿TPAからのFT-IR結果を示すグラフである。
【
図9A】本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造された、水再結晶ステップからの結晶化TPAのNMR分析である。
【
図9B】本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造された、ポリコットン布からの沈殿TPA粉末のNMR分析である。
【
図9C】本開示の主題のいくつかの実施形態に従って生成された、水再結晶ステップからの結晶化TPAのNMR分析である。
【
図10A】本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造された、100%リサイクルテレフタル酸(reTPA)から製造された再生PETチップの示差走査熱量測定(DSC)である。
【
図10B】本開示の主題のいくつかの実施形態に従って製造された、100%リサイクルテレフタル酸(reTPA)から製造された再生PETチップの熱重量分析(TGA)である。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル廃棄織物材料からテレフタル酸(TPA)を製造する方法であって、該方法は:
塩基を使用して、亜臨界水反応器で、105℃~190℃の温度、40~300psi(275.79~2068.43kPa)の圧力で、0~90分間、前記ポリエステル廃棄織物材料を処理することを含み、ここで、溶解したTPAおよびエチレングリコール(EG)が生成され、TPAから生成された再生ポリエチレンテレフタレート(PET)が、示差走査熱量測定によって測定されるピーク温度と、熱重量分析によって測定される開始温度とを、PETの参照標準の±5%以内に有することを特徴とする方法。
【請求項2】
TPAから生成された再生PETが、熱重量分析によって測定される開始温度を、PETの参照標準の±1%以内に有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
TPAから生成された再生PETが、示差走査熱量測定によって測定されるピーク温度を、PETの参照標準の2.3%以内に有し、または、熱重量分析によって測定される開始温度を、PETの参照標準の0.2%以内に有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記亜臨界水反応器における前記処理が、10~14の範囲のpHを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記亜臨界水反応器における前記処理が5%(w/v)の水酸化ナトリウムを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリエステル廃棄織物材料と水との比率が1:5であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
TPAを回収することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
TPAの回収が、pH2~4のpH調整を用いて行われることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
回収されたTPAを、PET重合処理において、エチレングリコールで処理することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記処理が、触媒としてアンチモン金属(Sb
2
O
3
)を用いた、290℃の温度でのオートクレーブを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
再生されたPETが、0.620dl/gの固有粘度を有することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
エチレングリコールを回収することをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
エチレングリコールの回収が、真空蒸留を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
TPAを回収することと、エチレングリコールを回収することとをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。