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特開2023-36664生体担体材料に使用するのに好適な無機シェル内に封入された塩基性コア材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036664
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】生体担体材料に使用するのに好適な無機シェル内に封入された塩基性コア材料
(51)【国際特許分類】
   A61K 6/849 20200101AFI20230307BHJP
   A61K 6/84 20200101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K6/849
A61K6/84
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022196709
(22)【出願日】2022-12-09
(62)【分割の表示】P 2019529617の分割
【原出願日】2017-11-30
(31)【優先権主張番号】62/428,752
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ランディリン ビー.クリステンセン
(72)【発明者】
【氏名】ケントン ディー.バッド
(72)【発明者】
【氏名】アフシン ファルサフィ
(72)【発明者】
【氏名】マハムト アクシト
(72)【発明者】
【氏名】ヤナ ニンコビッツ
(72)【発明者】
【氏名】チエ リウ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ビー.アグレ
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅之
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン ダブリュ.ビョーク
(72)【発明者】
【氏名】ビル エイチ.ドッジ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】封入された材料を含む硬化性歯科用組成物を提供する。
【解決手段】組成物であって、塩基性コア材料、及びコアを取り囲む金属酸化物を含む無機シェル材料を含む、封入された材料(を含む、例えば第1の部分)と、水又は酸性成分(を含む、例えば第2の部分)とを含む、組成物が記載される。塩基性コア材料、及びコアを取り囲む金属酸化物を含む無機シェル材料を含む、生体担体材料に使用するのに好適な封入された材料も記載される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性歯科用組成物であって、
封入された材料を含む第1の部分であって、前記封入された材料が、塩基性コア材料、及び前記コアを取り囲む金属酸化物を含む無機シェル材料を含む、第1の部分と、
水又は酸性成分を含む第2の部分と、を含む、硬化性歯科用組成物。
【請求項2】
前記第1及び第2の部分を組み合わせると、前記組成物は最初に酸性又は中性のpHを有する、請求項1に記載の歯科用組成物。
【請求項3】
前記シェルが、前記第2の部分によって分解可能である、請求項1又は2に記載の歯科用組成物。
【請求項4】
前記塩基性コア材料が、前記シェルの分解時に-OHを放出する、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項5】
前記塩基性コア材料が、8~14の範囲のpKaを有する成分を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項6】
前記塩基性コア材料が、11~14の範囲のpKaを有する成分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項7】
前記塩基性コア材料が、カルシウムイオンを放出する材料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項8】
前記塩基性コア材料が、少なくとも25、30、35、40、又は45重量%の、11~14の範囲のpKaを有する成分を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項9】
前記シェルが、500nm未満の厚さを有する連続フィルムである、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項10】
前記無機シェル材料が、前記塩基性コア材料よりも塩基性が低い、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項11】
前記無機シェル材料が、6~8のpKaを有する金属酸化物を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項12】
0.25グラムの前記封入された材料が、25gの脱イオン水と組み合わされると、24時間以内に少なくとも8.5又は9のpHが得られる、請求項1~11のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項13】
0.25グラムの前記封入された材料が、15gの脱イオン水、及び25℃で塩酸で4.00のpHに調整された10gの水性フタル酸水素カリウム緩衝液の溶液と組み合わされると、24時間以内に少なくとも8.5又は9のpHが得られる、請求項1~12のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項14】
前記塩基性コア材料が、硬化性である、請求項1~13のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項15】
前記塩基性コア材料が、ケイ酸カルシウムを含む、請求項14に記載の歯科用組成物。
【請求項16】
前記塩基性コア材料が、前記第2の部分において低い溶解度を有する中性金属酸化物を含む歯科用充填剤である、請求項1~15のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項17】
前記硬化性歯科用組成物が、カルシウムイオン、リンイオン、フッ素イオン、又はこれらの組み合わせの放出によって再石灰化を促進する材料を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項18】
少なくとも1つの第2の充填剤を更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項19】
前記第2の充填剤が、ナノスケールの粒子状充填剤を含む、請求項18に記載の歯科用組成物。
【請求項20】
前記第2の充填剤が、ジルコニア、シリカ、又はこれらの混合物を含む、請求項19に記載の歯科用組成物。
【請求項21】
前記第2の充填剤が、ナノクラスター充填剤を含む、請求項19~20のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項22】
前記第1及び/又は第2の部分が、重合性材料を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項23】
前記重合性材料が、ヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートモノマー、酸性ポリマー、又はこれらの組み合わせを含む、請求項22に記載の歯科用組成物。
【請求項24】
硬化した歯科用組成物が、ディスク緩衝試験に従って500時間以内に少なくとも8.5又は9のpHを提供する、請求項1~23のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項25】
歯髄細胞の平均細胞増殖が、前記硬化した歯科用組成物と接触しているとき、対照試料の少なくとも75%である、請求項1~24のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項26】
歯髄細胞の平均ALP活性が、前記硬化した歯科用組成物と接触しているとき、増加する、請求項1~25のいずれか一項に記載の歯科用組成物。
【請求項27】
組成物であって、
封入された材料を含む第1の部分であって、前記封入された材料が、塩基性コア材料、及び前記コアを取り囲む金属酸化物を含む無機シェル材料を含む、第1の部分と、
水又は酸性成分を含む第2の部分と、を含む、組成物。
【請求項28】
組成物であって、
塩基性コア材料、及び前記コアを取り囲む金属酸化物を含む無機シェル材料を含む、封入された材料と、
水又は酸性成分と、を含む、組成物。
【請求項29】
請求項2~26のいずれか一項又はそれらの組み合わせによって更に特徴づけられる、請求項27又は28に記載の組成物。
【請求項30】
生体担体材料に使用するのに好適な封入された材料であって、塩基性コア材料、及び前記コアを取り囲む金属酸化物を含む無機シェル材料を含む、封入された材料。
【請求項31】
請求項4~16のいずれか一項又はそれらの組み合わせによって更に特徴づけられる、請求項30に記載の封入された材料。
【請求項32】
前記組成物が、水と混合したときに硬化性又は自己硬化性である、請求項30又は31に記載の封入されたコア材料。
【請求項33】
請求項30~32のいずれか一項に記載の封入された材料を含む硬化性組成物。
【請求項34】
歯科用又は医療用組成物である、請求項33に記載の硬化性歯科用組成物。
【請求項35】
請求項18~23のいずれか一項又はそれらの組み合わせに記載の第2の充填剤及び/又は重合性材料を更に含む、請求項30~34のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項36】
使用中に水又は酸性成分と接触する、請求項32~35のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項37】
前記水又は酸性成分が、生体液である、請求項36に記載の硬化性組成物。
【請求項38】
塩基性コア材料の放出を遅延させる方法であって、
請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物を準備すること、及び
前記組成物を歯又は骨構造に適用すること、を含む、方法。
【請求項39】
塩基性の遅延増加をもたらす方法であって、
請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物を準備すること、及び
前記組成物を歯又は骨構造に適用すること、を含む、方法。
【請求項40】
再石灰化を促進する方法であって、
請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物を準備することであって、前記塩基性コアが、再石灰化を促進する材料を更に含む、準備すること、及び
前記組成物を歯又は骨構造に適用すること、を含む、方法。
【請求項41】
再石灰化を促進する前記材料が、カルシウムイオン、リン含有イオン、フッ化物イオン、又はこれらの組み合わせを放出する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
歯髄細胞の平均ALP活性を増加させる方法であって、
請求項1~35のいずれか一項に記載の組成物を準備することであって、前記塩基性コアが、再石灰化を促進する材料を更に含む、準備すること、及び
前記組成物を歯又は骨構造に適用すること、を含む、方法。
【請求項43】
歯又は骨構造に適用するために使用するための、請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物であって、前記組成物が、
塩基性コア材料の遅延放出をもたらし、
塩基性の遅延増加をもたらし、
再石灰化を促進し、
歯髄細胞の平均ALP活性を増加させ、
又はこれらの組み合わせを行う、組成物。
【請求項44】
組成物の使用方法であって、
請求項1~37のいずれか一項に記載の組成物を準備すること、及び
前記組成物を歯又は骨構造に適用すること、を含む、方法。
【請求項45】
前記組成物が、重合性材料を含み、前記方法が、前記組成物を放射線源に曝露することによって硬化させることを更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物が、塩基性コア材料の遅延放出をもたらす、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
前記組成物が、塩基性の遅延増加をもたらす、請求項44~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物が、歯又は骨構造の再石灰化を促進する、請求項44~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記組成物が、歯髄細胞の平均ALP活性を増加させる、請求項44~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物が、歯科用物品を歯構造に結合するために使用される歯科用接着剤又はセメントである、請求項44~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記組成物が、歯科用修復剤である、請求項44~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
封入された材料の製造方法であって、塩基性コア材料を準備すること、及び
前記塩基性コア材料を、少なくとも1つの蒸着技術によって金属酸化物を含む無機シェル材料で封入すること、を含む、製造方法。
【請求項53】
原子層堆積又は大気圧化学蒸着を含む、請求項52に記載の製造方法。
【請求項54】
前記シェル材料及び前記シェルの厚さが、前記塩基性コア材料の遅延放出を可能にするように選択される、請求項52又は53に記載の製造方法。
【請求項55】
前記封入された材料が、封入されていない同じ材料よりも長い持続時間の後に、pHの上昇をもたらす、請求項52又は53に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
医療用及び歯科用に使用するのに好適な様々なセメントが記載されてきた。例えば、Mitraらの米国特許第5,154,762号、国際公開第2016/005822号、及び米国特許出願第2008/0058442号を参照されたい。
【発明の概要】
【0002】
一実施形態では、硬化性歯科用組成物が記載され、硬化性歯科用組成物は、封入された材料を含む第1の部分であって、封入された材料が、塩基性コア材料、及びコアを取り囲む金属酸化物を含む無機シェル材料を含む、第1の部分と、
水又は酸性成分を含む第2の部分と、を含む。
【0003】
典型的な実施形態では、第1及び第2の部分を組み合わせると、組成物は、最初に酸性又は中性のpHを有する。シェルは、水又は第2の部分の酸性成分によって分解可能である。塩基性コア材料は、シェルの分解時に-OHを放出し、それによってpHを上昇させる。
【0004】
いくつかの実施形態では、塩基性コア材料は、ケイ酸カルシウムの場合のように、硬化性である。いくつかの実施形態では、組成物は、フルオロアルミノシリケート(FAS)ガラス及び/又はナノスケール粒子状充填剤などの少なくとも1つの第2の充填剤を更に含む。いくつかの実施形態では、第1及び/又は第2の部分は、重合性材料を含む。
【0005】
別の実施形態では、組成物が記載され、組成物は、塩基性コア材料、及びコアを取り囲む金属酸化物を含む無機シェル材料を含む、封入された材料と、水又は酸性成分と、を含む。
【0006】
別の実施形態では、生体担体材料に使用するのに好適な封入された材料は、塩基性コア材料、及びコアを取り囲む金属酸化物を含む無機シェル材料を含む。封入された材料を含む硬化性(例えば、歯科用)組成物も記載される。いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、本明細書に記載されるように、第2の充填剤及び/又は重合性材料を更に含む。いくつかの実施形態では、硬化性又は硬化性組成物は、使用中に水又は酸性成分(例えば、生体液)と接触する。
【0007】
本明細書に記載される硬化性又は硬化(hardened)(例えば、硬化(cured))組成物を準備すること、及び組成物を歯又は骨構造に適用すること、を含む、様々な使用方法も記載される。いくつかの実施形態では、組成物は重合性材料を含み、方法は、組成物を放射線源に曝露することによって硬化させることを更に含む。硬化性又は硬化(hardened)(例えば、硬化(cured))組成物は、塩基性コア材料の遅延放出、塩基性の遅延増加、歯又は骨構造の再石灰化を促進させること、及び歯髄細胞の平均ALP活性を増加させることなど、様々な技術的効果をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、組成物は、歯科用物品を歯構造に結合するために使用される歯科用接着剤又はセメントである。他の実施形態では、組成物は、歯科修復剤である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載されるのは、封入された材料である。封入された材料は、硬化性歯科用組成物などの生体担体材料中での使用に好適である。封入された材料は、化学的に塩基性のコア材料、及びコアを取り囲む無機シェル材料を含む。シェル材料及びシェルの厚さは、塩基性コア材料の制御及び/又は遅延放出若しくは反応を可能にするように選択することができる。いくつかの実施形態では、塩基性コア材料の放出は、長時間後に塩基性を増加させるために利用される。
【0009】
封入された充填剤は、塩基性コア材料を含む。塩基性コア材料、並びにコアが形成される材料(例えば、化合物)は、一般に25℃で固体である。
【0010】
塩基性コアは、単一の粒子又は複数のより小さい会合した粒子であり得る。本明細書で使用するとき、用語「会合した(associated)」は、凝集化(aggregated)及び/又は凝塊化(agglomerated)した2つ以上の一次粒子の群を指す。同様に、用語「会合していない(non-associated)」は、凝集及び/又は凝塊形成を含まない2つ以上の一次粒子の群を指す。
【0011】
いくつかの実施形態では、塩基性コアは、複数の凝集化粒子を含んでもよい。「凝集」又は「凝集化」は、一次粒子間の強い会合を指す。例えば、一次粒子は、互いに化学的に結合され得る。凝集体をより小さい粒子(例えば、一次粒子)に分解することは、典型的には、凝集化コア粒子が凝集体として残るように、コア材料の作製及びその封入中には達成されない。同様に、用語「凝集していない(non-aggregated)」は、他の一次粒子と強い会合を含まない一次粒子を指す。
【0012】
他の実施形態では、塩基性コアは、複数の凝塊化粒子を含んでもよい。本明細書で使用するとき、用語「凝塊形成」又は「凝塊化」は、一次粒子の弱い会合を指す。例えば、一次粒子は、電荷又は極性によりまとまって保持されていてもよい。凝集体をより小さい粒子(例えば、一次粒子)に分解することは、コア材料の作製及びその封入化中に生じ得る。同様に、用語「凝塊化していない(non-agglomerated)」は、他の一次粒子と強い会合を含まない一次粒子を指す。
【0013】
コアの平均(例えば、一次、会合した、又は凝塊化)粒径は、例えば沈降分析器を使用して測定したとき、典型的には少なくとも0.2、0.5、1、2、3、4、又は5マイクロメートル、典型的には1mm以下、750マイクロメートル以下、又は500マイクロメートル以下である。硬化性歯科用組成物の場合などのいくつかの実施形態では、塩基性コア材料は、典型的には、250、200、150、100、又は50マイクロメートル以下の平均(例えば、一次、会合した、又は凝塊化)粒径を有する。シェルは典型的には薄いので、封入された材料もまた、今説明した平均粒径の範囲内に入る。
【0014】
コア材料は、塩基性である。化学的に塩基性の材料は、電子を供与し、プロトンを受容し、典型的には水溶液中にヒドロキシルイオンを提供する材料である。
【0015】
封入された材料のコアは、これらが、十分な量の高pKa成分を含むこと、脱イオン水に添加されるとき(実施例に更に記載される試験方法に従って)、塩基性pHをもたらすこと、又は酸性緩衝剤に添加されるとき(実施例に更に記載される試験方法に従って)、塩基性pHをもたらすことを含む、以下に記載される1つ以上の特性を有するか又は呈するならば、塩基性と見なされる。
【0016】
塩基性材料は、酸性及び酸性緩衝液と反応してpHの上昇を生じさせるように機能する。pHの変化及びpH変化率は、塩基性成分の強度、その中の塩基性成分の化学的及び物理的形態、並びにコア材料内の塩基性成分の量に依存する。
【0017】
いくつかの実施形態では、封入された材料のコアは、強塩基性である。強塩基性材料は、典型的には、約11~14の範囲のpKaを有する、十分な量の強塩基性材料(例えば、化合物)を含み、かつこれから調製される。強塩基性化合物の例としては、アルカリ及びアルカリ土類金属の酸化物及び水酸化物、並びにアルカリリン酸塩などの強塩基性塩が挙げられる。強塩基性コア化合物の具体例としては、Na、K、Ca、Sr、及びBaの酸化物及び水酸化物、Na、K、Ca、Sr、及びBaのケイ酸塩、並びにNa、K、Ca、Sr、及びBaのアルミン酸塩が挙げられる。強塩基性ケイ酸塩及びガラスは、典型的には、カチオンモル基準で、シリカ1モル当たり少なくとも1、2、又は3モルの強塩基性コア化合物(例えば、CaO)を含む。同様に、強塩基性アルミン酸塩は、典型的には、カチオンモル基準で、アルミナ1モル当たり少なくとも1、2、又は3モルの強塩基性コア化合物(例えば、CaO)を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、強塩基性材料は、少なくとも1つの強塩基性化合物と、塩基性が弱い又は中性の材料との組み合わせの異種物理的混合物であり得る。例えば、強塩基性材料は、シリカと水酸化ナトリウムとの物理的混合物であってもよい。水酸化ナトリウムは、13.8のpKaを有する強塩基性材料である。水酸化ナトリウムの0.1N水溶液は、13のpHを有する。重量パーセント基準で、1リットルの水中の96重量%のシリカと4重量%の水酸化ナトリウムとの混合物の1グラムは、水酸化ナトリウムの0.1N水溶液を提供することになる。封入された材料が物理的混合物である場合、実質的に全ての強塩基性化合物は、シェルの分解時に到達可能である。したがって、この実施形態では、塩基性コア材料は、脱イオン水中に少なくとも8.5又は9の遅延pHを提供するために(実施例に記載の試験方法に従って)、少量(例えば、少なくとも1、2、又は3重量%の強塩基性材料)を含んでもよい。しかしながら、酸性緩衝溶液中に、少なくとも8.5又は9の遅延pHを提供するために、より高い濃度の化学的に塩基性のコア材料が必要であり得る。例えば、強塩基性材料のpKaに応じて、強塩基性材料の量は、封入された材料全体の少なくとも5、6、7、8、9、又は10重量%であり得る。
【0019】
他の実施形態では、封入された材料のコアは、少なくとも1つの強塩基性材料(例えば、化合物)及び他の成分(アルカリ土類ケイ酸塩など)を含み、かつこれらから調製される多成分結晶性化合物である。更に他の実施形態では、封入された材料のコアは、少なくとも1つの強塩基性材料(例えば、化合物)から調製された多成分非晶質ガラスとして特徴付けることができる。強塩基性材料(例えば、化合物)は、ガラス構造体内に均質又は不均質に分布させることができる。封入された材料のコアがガラスなどの溶融多成分材料である場合、強塩基性化合物の濃度(X線蛍光(XRF)又は誘導結合プラズマ(ICP)によって決定することができる)は、典型的には、塩基性コア材料全体に基づいて、少なくとも25、30、35、40、45、又は50重量%から最大75重量%以上に及ぶ範囲である。
【0020】
いくつかの好ましい実施形態では、コアは、11.6のpKaを有するCaOを含み、かつこれから調製される。CaOは、カルシウムイオン源を提供することと組み合わせて、pHの上昇の遅延の両方をもたらすために利用することができる。CaOの量は、典型的には、少なくとも5、10、15、20、又は25重量%であり、最大75重量%以上まで及び得る。Caの量は、このような値の約71%である。
【0021】
CaOを含む強塩基性多成分コア材料の具体的な例としては、ポルトランドセメント(60~70%重量%のCaOを含有することが報告されている)、ケイ酸三カルシウム(CaOを約75重量%含有する)、及び3M Advanced Material Divisionから入手可能であるような生体活性ガラス(約25重量%のCaO、及び約25重量%のNaOを含有する)が挙げられる。
【0022】
他の実施形態では、封入された材料のコアは、弱塩基性である。弱塩基性材料は、少なくとも8であるが、11未満の範囲のpKaを有する実質的な量の少なくとも1つの材料(例えば、化合物)を含む。弱塩基性コア化合物の例としては、Cu、Zn、及びFeの酸化物、並びにNaF、酢酸Ca、及びリン酸水素などの弱塩基性塩が挙げられる。
【0023】
あるいは、弱塩基性コア材料は、より少量の強塩基性化合物を含み得るか、又はそれから調製されてもよい。弱塩基性コア材料は、単独では、典型的には、酸性溶液のpHを適切に上昇させるのに十分な量のヒドロキシルイオンを提供することはできない。しかしながら、弱塩基性コア材料は、単独で、水のpHを適切に上昇させるのに十分な量のヒドロキシルイオンを提供することができる。更に、封入された弱塩基性コア材料は、封入された強塩基性コア材料と組み合わせて使用することができる。
【0024】
封入された塩基性材料は、典型的には、酸化還元硬化系の還元剤ではない。いくつかの好ましい硬化性(例えば、歯科用又は医療用)材料において、好ましい技術的効果は、組成物が接着を促進するのに十分な時間にわたって酸性であるように、その後、再石灰化を促進するために塩基性になるようにpHを制御することである。このpHの変化は、これが硬化後に生じるように十分に遅延される。還元剤の封入は、酸化還元硬化反応を遅延させるであろう。更に、還元剤は、典型的には比較的低濃度で利用される弱塩基であるため、封入還元剤単独では、pHの所望の上昇をもたらさない。
【0025】
好ましい実施形態では、コア材料は、本明細書では少なくとも6、6.5、又は7、かつ8未満のpKaを有するものとして定義される1つ以上の中性化合物を更に含み、かつこれから調製される。いくつかの実施形態では、かかる中性化合物は、脱イオン水中、及び/又は弱酸溶液、及び/又は弱塩基溶液中で低い溶解度を示す。弱酸溶液は、典型的には、7未満であるが、4を超えるpHを有する。弱塩基溶液は、典型的には、7超であるが、10未満のpHを有する。低溶解度とは、1リットル当たり100グラム(すなわち、10重量%)未満が溶解することを意味する。いくつかの実施形態では、1リットル当たり50、25、5、又は1グラム未満が溶解する。中性化合物としては、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、アルミナ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。7超のpKaはわずかに塩基性であるが、このような塩基性は、前述したように、弱塩基性コア材料のものよりも小さく、かつ強塩基性コア材料のものよりも有意に小さい。
【0026】
コア材料が、塩基性材料(例えば、化合物)のみから、又は中性材料との塩基性材料の組み合わせを含み、かつこれらから調製される場合、コア材料の塩基性は、成分の重量に基づいて推定することができる。したがって、コア材料は、前述のような塩基性材料(例えば、化合物)の量を含む。
【0027】
しかしながら、コア材料が酸性材料(例えば、化合物)を更に含む場合、塩基性を推定することはより困難であり得る。特に、その組成又は組成分析に基づいてコア材料の塩基性を推定することが困難である実施形態については、コア材料又は封入されたコア材料の塩基性は、脱イオン水中又は酸性(例えば、緩衝液)溶液中の特定の量の材料のpHの変化によって定義することができる。これらの試験はまた、コア材料又は封入されたコア材料が実際に塩基性であることを確認するために使用され得る。
【0028】
例えば、フルオロアルミノシリケート(FAS)ガラスは、約19重量%の強塩基性化合物(SrO)から調製された均質なガラス構造であり、残りは中性(SiO)及び他の化合物から調製される。表11を参照すると、実施例に記載の試験方法に従って脱イオン水中で試験したとき、FASガラスは、15分以内にpHを6.5まで低下させ、したがって弱酸性コア材料と見なされる。
【0029】
いくつかの実施形態では、コア材料又は封入されたコア材料の塩基性は、脱イオン水25g中の特定の量(0.25g)の材料のpHの変化によって決定することができる。封入されていないコア材料は、典型的には、脱イオン水のpHを中性から少なくとも8.5又は9のpHに変化させる。これは、典型的には、1、2、3、4、又は5分以内に生じるが、最長1時間又は24時間要してもよい。例えば、表10を参照すると、封入されていない(例えば、生体活性ガラス)コア材料は、20秒以内に水中10のpHをもたらすことができる。溶解などによって無機シェル材料が十分に分解するまで、コア材料がヒドロキシルイオンを放出できないので、同じ封入されたコア材料がこのようなpH時間をもたらすために、より長い時間を要する。しかしながら、ごく一部の封入されていない材料又は試料のバルクよりも少ない封入された材料が存在する場合には、封入された材料の場合であっても、DI水中で、急速であるがより小さいpH変化が起こり得る。
【0030】
好ましい実施形態では、コア材料又は封入された材料の塩基性は、緩衝溶液中の特定の量(0.25g)の材料のpHの変化、脱イオン水15gと25℃で4.00のpHに調整された(塩酸で)10gの水性フタル酸水素カリウム緩衝液(例えば、4のpHを有する緩衝液BDH5018)のpHの変化によって決定することができる。この試験は、本明細書では「緩衝試験」と称される。強塩基性コア材料又は封入された材料が緩衝試験に供されると、これは少なくとも8.5又は9のpHに達することもできる。脱イオン水と比較して酸性溶液を塩基性pHに変化させるために、より多量のヒドロキシルイオンが必要であることが理解される。したがって、このpH変化は、脱イオン水中の同じ材料と比較して、より長い時間がかかり得る。いくつかの実施形態では、このようなpH変化は、5、10、又は15分以内に生じるが、最長1時間又は24時間要してもよい。溶解及び/又は分解などによって無機シェル材料が十分に分解するまで、コア材料が酸と反応するヒドロキシルイオンを放出できないので、同じ封入されたコア材料がこのようなpH変化をもたらすために、更により長い時間を要する。一実施形態では、表8を参照すると、封入されていない(例えば、生体活性ガラス)コア材料は、15分以内に緩衝試験に従って8.5のpHを達成し、40分以内に9のpHを達成する。同じ封入された(例えば、生体活性ガラス)コア材料は、35分以内に緩衝試験に従って8.5のpHを達成し、pHは1時間後に上昇し続ける。
【0031】
弱塩基性コア材料は、緩衝試験に従って試験したときに、pHの小さな上昇をもたらし得る。例えば、pHは4から5に上昇し得る。しかしながら、弱塩基性コア材料は、緩衝試験に従って試験したとき、pHを少なくとも8.5又は9のpHに到達させるのに十分な量のヒドロキシルイオンを提供しない。
【0032】
したがって、封入された塩基性コア材料は、本明細書に記載されるように、最初に(すなわち、水又は緩衝液中の材料の浸漬直後)、pHを変化させないが、シェル及び塩基性コア材料に応じて様々な速度でpHが上昇する。
【0033】
いくつかの実施形態では、塩基性コア材料は、様々な天然及び合成セメントの場合など、水と混合されたときに硬化性又は自己硬化性である。従来の天然(例えば、ポルトランド)及び合成セメントは、典型的には、多量のケイ酸カルシウム(例えば、3CaO-SiO、2CaO-SiO)を単独で、又は1つ以上のカルシウムアルミネート(例えば、3CaO-Al、4CaO-Al-Fe)と組み合わせて含む。塩基性コア材料が硬化性又は自己硬化性である場合、このような塩基性コア材料は、硬化性組成物の唯一の硬化性材料であり得る。したがって、組成物の第1の部分は、100%の封入された塩基性コア材料を含有してもよい。
【0034】
Mitraらの米国特許第5,154,762号に記載されているような水系医療用及び歯科用セメントは、典型的には、多量のケイ酸カルシウムを含まない。むしろ、このような組成物は、一般に、酸反応性金属酸化物又は酸反応性ガラス充填剤(例えば、FASガラス)として特徴付けられ得る粒子状材料を含む。これらの種類の充填剤は、水と混合したときに自己硬化しない。しかしながら、このような酸反応性充填剤を多官能酸成分と組み合わせて、硬化性材料を提供することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、封入された材料は、封入された(例えば、歯科用)充填剤である。封入された(例えば、歯科)充填剤は、3~4のpHを有する水又は酸性溶液中で、前述したように、低溶解度を有する相当量の中性金属酸化物を含むことができる。中性金属酸化物としては、例えば、シリカ、ジルコニア、チタニア、及びアルミナが挙げられる。中性金属酸化物の量は、塩基性コア材料の総重量の少なくとも10、15、20、25、30重量%から最大50、60、70、80、又は90重量%の範囲であり得る。封入されたケイ酸カルシウムはまた、シリカ含有量に起因して充填剤として特徴付けられてもよい。
【0036】
硬化性歯科用組成物又は他の好適な(例えば、生物学的)担体材料は、カルシウムイオン、リン含有イオン(例えば、リン酸塩)、フッ化物イオン、又はこれらの組み合わせを放出する材料などの再石灰化を促進する材料を含む。これらの材料は、封入された充填剤のコア内に存在することができ、FASガラスなどの第2の充填剤として提供することができ、又は硬化性歯科用組成物中に別個の成分として提供することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、封入された(例えば、充填剤)材料のコアは、好ましくは、カルシウムイオン、リンイオン、フッ化物イオン、又はこれらの組み合わせを放出する材料などの再石灰化を促進する材料を含む。CaOは、前述のように、高度に塩基性の材料(例えば、化合物)及びカルシウムイオン源の両方として機能し得る。塩基性コア材料がカルシウムイオンを放出しない強塩基性材料を含む場合、コアは、カルシウム塩(例えば、グリセロリン酸カルシウム)などの別のカルシウム材料を更に含んでもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、封入された(例えば、歯科用)充填剤のコアは、フッ化物イオンの放出によって再石灰化を促進する材料を更に含み、かつこれから調製される。他の実施形態では、(例えば、歯科用)組成物は、フッ化物イオンの放出によって再石灰化を促進する材料を含む第2の充填剤を更に含む。コア又は第2の充填剤材料は、約5~40重量%の範囲の量で、AlF、NaAlF、及びこれらの混合物などのフッ化物化合物を含み、かつこれらから調製される。いくつかの実施形態では、AlFの量は、コア又は第2の充填剤材料の10~30重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、NaAlFは、コア又は第2の充填剤材料の2~10重量%の範囲である。
【0039】
いくつかの実施形態では、封入された(例えば、歯科用)充填剤のコアは、リンイオンの放出によって再石灰化を促進する材料を更に含む。他の実施形態では、(例えば、歯科用)組成物は、フッ化物イオンの放出によって再石灰化を促進する材料を含む第2の充填剤を更に含む。いくつかの実施形態では、コア又は第2の充填剤材料は、2~25重量%の範囲の量で、P、AlPO、及びこれらの混合物などのリン化合物を含み、かつこれらから調製される。いくつかの実施形態では、Pの量は、コア又は第2の充填剤材料の2~15重量%の範囲である。いくつかの実施形態では、AlPOの量は、コア又は第2の充填剤材料の2~10重量%の範囲である。
【0040】
塩基性コアは、当該技術分野において周知の技術である、蒸着、原子層堆積(ALD)、スパッタリング、又は蒸発などの任意の好適な方法で金属酸化物を含む無機シェルで封入することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、封入材料の製造方法は、前述したように、塩基性コア粒子を準備すること、及び蒸着技術のうちの少なくとも1つを用いて、塩基性コア粒子を(例えば、連続した非粒子状)無機コーティングで封入すること、を含む。蒸着法としては、常圧化学気相成長法(APCVD)、加水分解CVD、プラズマCVDなどの化学蒸着法(CVD)が挙げられる。
【0042】
コーティングをもたらすための蒸着技術の利点としては、コーティングが、溶媒又は液体媒体からの干渉を伴わずに分子サイズ種から構築されることが挙げられる。いくつかのコーティング方法(例えば、ALD及びCVD)は、不規則な材料(例えば、粉末又は多孔質微粒子)上の共形層からなるコーティングをもたらす傾向がある。
【0043】
ALD及びCVDは、化学反応を伴うコーティングプロセスであり、使用される化学反応物質は化学前駆体と呼ばれる。すなわち、これらは、形成されるコーティング材料(例えば、金属酸化物コーティング)に対する前駆体である(すなわち、コーティング前駆体)。いくつかの実施形態では、単一のコーティング前駆体が使用されるが、他の実施形態では、少なくとも2つのコーティング前駆体が使用される。少なくとも1つのコーティング前駆体は、コーティング(例えば、金属酸化物コーティング)に必要な少なくとも1つの金属カチオンを含む。
【0044】
前駆体の単純な分解(例えば、熱分解又はプラズマ増強分解)がコーティングを形成するのに十分である場合、単一のコーティング前駆体を使用することができる。少なくとも1つのコーティング前駆体が少なくとも1つの金属カチオンを含み、少なくとも1つの追加の前駆体(すなわち、共反応物質)と化学反応してコーティング(例えば、金属酸化物コーティング)を形成するとき、少なくとも2つのコーティング前駆体(例えば、金属酸化物前駆体)が使用される。追加のコーティング前駆体は、少なくとも1つの金属カチオンを含むコーティング前駆体に対する共反応物である。共反応物質は、少なくとも1つの金属カチオンを含むコーティング前駆体と化学的に反応して、コーティングを形成する。
【0045】
ALDコーティングは、一般に、化学前駆体(例えば、少なくとも1つの金属カチオンを含むコーティング前駆体)の代替パルス、前駆体の単層の吸収、過剰な前駆体の除去、及び共反応物質のパルス化(例えば、少なくとも1つの金属カチオンを含むコーティング前駆体への共反応物質)を介して一度に1つの単層を堆積させる。したがって、これらのコーティングは、共形かつ均一である傾向がある。あるいは、例えば、ALDシステムはまた、より厚い非自己制限コーティングを堆積させることも可能であり、各化学反応物の単層よりも著しく大きな量が、各パルス又はサイクル中に基材に吸着し、はるかに大量のコーティングの堆積をもたらす。
【0046】
CVDコーティングは、同様の化学反応を含むことができるが、両方の前駆体は、典型的には、同時にかつ連続的に供給される。均一性は、コーティングされている粉末を連続的に混合することによって向上させることができる。
【0047】
本明細書に記載される封入された材料を作製するための有効なコーティング方法は、常圧CVD(APCVD)である。APCVDは、ガラス製品などの簡単な設備で実施することができる。いくつかの実施形態では、加水分解反応を使用して、室温(約22℃)から約180℃までの範囲の温度で、(例えば、連続的な)金属酸化物コーティングを形成する。
【0048】
ALD及びCVDプロセスの例示的な前駆体としては、金属アルキル(例えば、トリメチル又はトリエチルアルミニウム、ジエチル亜鉛)、揮発性金属塩化物(四塩化チタン、四塩化ケイ素、三塩化アルミニウム)、シラン、金属アルコキシド(チタンイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、シリコンエトキシド)、混合アルキル、ハロゲン化物、ヒドリド、アルコキシ、及び他の基を有する化合物、並びに他の揮発性金属有機化合物などの少なくとも1つの金属カチオンを含むコーティング前駆体(例えば、金属酸化物前駆体)が挙げられる。少なくとも1つの金属カチオン(例えば、少なくとも1つの金属カチオンを含む金属酸化物前駆体)を含むコーティング前駆体に対する例示的な共反応物としては、水、酸素、オゾン、アンモニア、及びアルキルアミンが挙げられる。金属酸化物に加えて、他の無機、非金属コーティング材料が、コーティング前駆体とコーティング前駆体に対する共反応物質との間の化学反応を用いて堆積される(例えば、少なくとも1つの金属カチオンと金属窒化物前駆体に対する共反応物質を含む金属窒化物前駆体を使用して、金属窒化物コーティングが堆積される)。
【0049】
例示的な(例えば連続的な)コーティングは、例えば、金属(例えば、Al、Si、Ti、Zr、Mg、及びZn)酸化物などの非金属無機材料を含む。いくつかの実施形態では、シェル材料は、少なくとも50、60、70、80、90、又は100重量%の単一金属酸化物又はこれらの組み合わせを含む。例示的な金属酸化物としては、水酸化物及び含水酸化物などの形態、並びに混合アニオン(例えば、酸化物に加えてハロゲン化物、ヒドロキシル、少量のアルキル又はカルボキシレートなど)を含む形態を挙げることができる。シェル材料は、主に、20、10、5、又は1重量%以下の炭素含有量を有する無機物である。更に、封入された塩基性材料はまた、20、10、5、又は1重量%以下の炭素含有量を有することができる。シェル材料は、金属窒化物、金属硫化物、金属オキ硫化物、及び金属オキシ窒化物を更に含んでもよい。コーティングは、非晶質、結晶質、又は混合された単相若しくは多相であってよく、1つ以上のカチオン及び1つ以上のアニオンを含有することができる。いくつかの実施形態では、コーティングは、いくつかのヒドロキシル又は結合水を含むか、又は含まない非晶質アルミナである。
【0050】
シェル材料は、弱塩基性材料であってもよい。しかしながら、シェル材料の塩基性は、特に前述の緩衝試験又はディスク緩衝試験に従って、所望のpH変化を生じさせるために十分ではない(続いて記載されるように)。
【0051】
いくつかの実施形態では、連続コーティングで塩基性粒子を封入することは、APCVDコーティングプロセスを介して行われ、ここではアルミナ系コーティングが、トリメチルアルミニウム(TMA)及び水を使用してもたらされる。前駆体は、各液体前駆体のバブラーを通してキャリアガスを流すことによって、反応チャンバ内に導入することができる。一般的に、CVDプロセスに典型的であるように、各成分を有するキャリアガスは、反応チャンバ内に同時にかつ連続的に送達される。所望の流量及び比率を調整して、コーティングの所望の量及び特性を生成することができる。いくつかの実施形態では、トリメチルアルミニウム(TMA)流量及び水の流量は、独立して、少なくとも50又は100cm/分から1000、1500、又は2000cm/分の範囲である。水の流量は、典型的には、2倍~10倍以上の範囲の係数でTMA流量よりも高い。いくつかの実施形態では、いずれかの前駆体の流れは、他の前駆体の流れが存在しない期間、個別に開始又は維持することができる。いくつかの実施形態では、前駆体の流れは、プロセス全体にわたって1回以上変更又は調整することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、共反応物質(例えば、水)の、少なくとも1つの金属カチオン(例えば、TMA)を含むコーティング前駆体に対する比は、プロセスの後よりも最初に高い。他の実施形態では、共反応物質(例えば、水)の、少なくとも1つの金属カチオンを含むコーティング前駆体に対する比は、プロセスの後よりも最初に低い。いくつかの実施形態では、複合粒子は、少なくとも1つの金属カチオンを含むコーティング前駆体に曝露される前に、初期期間にわたって共反応物質(例えば、水)のみに曝露される。いくつかの実施形態では、複合粒子は、第2の反応物質(例えば、コーティング前駆体に対する共反応物質)への曝露前に、少なくとも1つの金属カチオンを含むコーティング前駆体のみに曝露される。いくつかの実施形態では、異なる流量条件は、少なくとも5分間(又は他の実施形態では、少なくとも10、15、20、30、45、60、又は90分間)から最長150分間の範囲で維持される。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1の組成のコーティングが堆積され、その後、第2の組成のコーティングが続く。例えば、アルミナ系コーティングは、TMA及び水から堆積させることができ、その後、TiCl及び水から堆積されたチタニア系コーティングが続く。
【0054】
いくつかの実施形態では、シェル、又は換言すれば封入材は、少なくとも5、10、15、20、又は25nmの平均厚さを有する。シェルの厚さは、最大250、500、750、又は1000nm(1マイクロメートル)の範囲であってもよい。いくつかの実施形態では、例えば、封入された歯科用充填剤の場合、シェルの厚さは、典型的には、最大100、150、又は200nmの範囲である。
【0055】
重量%基準では、シェル材料は、典型的には、封入された材料全体の少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5重量%である。重量%基準でのシェル材料の量は、封入された材料全体の最大15又は20重量%までの範囲であり得るが、より典型的には10、9、8、7、6、又は5重量%以下である。
【0056】
好ましい実施形態では、シェル材料及びシェルの厚さは、塩基性コア材料の制御及び/又は遅延放出若しくは反応を可能にするように選択することができる。
【0057】
好ましい実施形態では、シェルは最初に不透過性である(すなわち、組成物及びコア材料からの材料は、シェルを通じた単純な拡散によって相互作用することができない)。相互作用は、シェルが他の材料との相互作用(例えば、分解、腐食、又は溶解)によって変化した後に生じる。組成物(例えば、二成分組成物)は、シェルを分解する水又は酸などの成分を含むように設計することができる。他の実施形態では、使用中に水又は酸性成分と接触するようになることにより、シェルの分解が起こり得る。この実施形態では、供給源又は水若しくは酸性成分は、生体液(例えば、歯又は骨を取り囲む軟組織内に保持された唾液若しくは水)であり得る。
【0058】
次の実施例の表4~7を参照すると、一実施形態では、封入されていない(例えば、ポルトランドセメント又はケイ酸三カルシウム)塩基性材料は、前述の緩衝試験に供されたときに1分以内に、塩基性pH(例えば、少なくとも8.5、9、9.5、10、又は10.5)をもたらす。しかしながら、封入された(例えば、ポルトランドセメント又はケイ酸三カルシウム)塩基性材料は、前述の緩衝試験によると、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10分間に、塩基性pH(例えば、少なくとも8.5、9、9.5、10、又は10.5)をもたらさない。いくつかの実施形態では、封入された(例えば、ポルトランドセメント)塩基性材料は、15、20、25、30、35、40、又は45分間に、塩基性pH(例えば、少なくとも8.5、9、9.5、10、又は10.5)をもたらさない。いくつかの実施形態では、封入された(例えば、ポルトランドセメント)塩基性材料は、100、200、又は300分間に、塩基性pH(例えば、少なくとも8.5、9、9.5、10、又は10.5)をもたらさない。
【0059】
次の実施例の表8を参照すると、別の実施形態では、封入されていない(例えば、生体活性ガラス)塩基性材料は、前述の緩衝試験に供されたときに5分以内に、塩基性pH(例えば、少なくとも8.5、9、9.5、10、又は10.5)をもたらす。しかしながら、封入された(例えば、生体活性ガラス)塩基性材料は、前述の緩衝試験によると、30~40分間に、塩基性pH(例えば、少なくとも8.5、9、9.5、10、又は10.5)をもたらさない。
【0060】
次の実施例の表9を参照すると、別の実施形態では、封入されていない(例えば、ポルトランドセメント)塩基性材料は、脱イオン水中で試験したときに20秒以内に、11.5の塩基性pHをもたらす。しかしながら、封入された(例えば、ポルトランドセメント)塩基性材料は、脱イオン水中で試験したときに、20秒以内に少なくとも8.5の塩基性pHをもたらす。次の実施例の表10を参照すると、別の実施形態では、封入されていない(例えば、生体活性ガラス)塩基性材料は、脱イオン水中で試験したときに20秒以内に、10.5の塩基性pHをもたらす。しかしながら、封入された(例えば、生体活性ガラス)塩基性材料は、20秒以内に少なくとも9.8の塩基性pHをもたらす。したがって、酸性(例えば、緩衝液)溶液のpHの変化は、脱イオン水よりも著しく遅い速度で生じ得る。
【0061】
好ましい実施形態では、塩基性コア材料の遅延放出又は反応は、歯又は骨構造への適用後、典型的には硬化後などの後の時点で、硬化性歯科用材料などの(例えば、生物学的)担体材料の塩基性を増加させるために利用される。封入されていない塩基性材料は、pHの望ましくは大きな(更に望ましくない急速な)上昇を生じさせ得る。同じ封入された塩基性材料は、pHの所望の上昇を生じさせるが、より長い時間の後に生じさせ得る。
【0062】
封入された塩基性材料を含む硬化性(例えば、歯科用)組成物などの(例えば、生物学的)担体材料の塩基性は、2mlのプラスチック遠心管内に収容された1.5mlの10mMのNaHPO(一般的にPBSとして知られる)緩衝液中に浸漬された硬化(hardened)(すなわち、硬化された(cured))材料のディスク(高さ3.1mm×1.3mm)のpH変化を測定することによって評価することができる。PBS緩衝液は、8gのNaCl、0.2gのKCL、1.44gのNaHPO、及び0.24gのKHPOを、800mlの蒸留HOに溶解し、HClでpHを7.4に調整し、追加の蒸留水で体積を1Lに調整し、オートクレーブにより滅菌することによって調製することができる。この試験は、その後、本明細書では「ディスク緩衝試験」と称されるであろう。
【0063】
封入された(例えば、歯科用)塩基性材料を評価する目的で利用され得る代表的な二成分硬化性(例えば、歯科用)組成物は、以下に記載される第1の部分と、封入された塩基性材料を含む第2の部分と、を含む。第1及び第2の部分は、(1:1の重量比で)組み合わされ、実施例において更に詳細に記載されるように放射線硬化される。一実施形態では、第2の部分は、65重量%の本明細書に記載の封入された塩基性材料、33.7部のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、及び1重量%のヒュームドシリカを含む。別の実施形態では、第2の部分は、33.7部のヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、16.25~65重量%(例えば、32.5重量%)の本明細書に記載の封入された塩基性材料0~32.5重量%のFASガラス、及び1重量%のヒュームドシリカを含む。
【0064】
【表1】
【0065】
いくつかの実施形態では、封入された塩基性材料の濃度は、典型的には、硬化性(例えば、歯科用)組成物の第2の部分の少なくとも2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、又は65重量%から最大100%の範囲である。硬化性(例えば、歯科用組成物)の全体は、封入された塩基性材料のそのような濃度の半分を含む。したがって、封入された塩基性材料の濃度は、典型的には、硬化性(例えば、歯科用)組成物の全体の少なくとも1、1.5、2、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、又は32.5重量%から最大50重量%の範囲である。第2の部分(合計8重量%)中に16.25重量%の生体活性ガラスを有する製剤は、限界性能を示したが、より小さい濃度が、少なくとも8.5又は9のpHへの上昇の遅延をもたらすことができるように、生体活性ガラスの高塩基性材料(CaO、NaO)の濃度を増加させることができると推測される。
【0066】
次の実施例の表12~22を参照すると、一実施形態では、封入されていない塩基性材料は、16.25重量%超の封入された塩基性材料を含む組成物については、46、72、100、147、260、360、又は500時間以内に塩基性pH(例えば、少なくとも8.5、9、9.5、10、又は10.5)をもたらす。
【0067】
硬化性(例えば、歯科用)組成物は、典型的には、骨又は歯構造への良好な接着を提供するのに十分な時間、酸性成分を含むことにより、硬化前に酸性(1、2、3、4、5、又は6のpH)である。この期間はある程度変化し得るが、最初に(水又は緩衝液中の硬化性又は硬化した組成物の浸漬直後)に酸性であり、典型的には、少なくとも30秒、1、2、3、4、又は5分間酸性である。他の実施形態では、硬化性又は硬化した(例えば、歯科用)組成物は、最初に中性(7~7.5のpH)であり、1時間~1日の範囲の様々な期間後、いくつかの実施形態では最長2、3、4、5、6、又は7日間、若しくはそれ以上の範囲の様々な期間後に、塩基性(例えば、少なくとも8、8.5、9、9.5、10、10.5又は11)を増加させる。
【0068】
いくつかの実施形態では、硬化性(例えば、歯科用)組成物は、複数の硬化モードを有するセメントとして特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、セメントは、酸と酸反応性充填剤(例えば、FASガラス)との間のイオン反応を介する、第1の機構を通して硬化する。封入された塩基性(例えば、充填剤)材料の反応は、前述のように遅延され、したがって典型的には、硬化反応に害を及ぼさない。セメントはまた、エチレン性不飽和成分の光開始フリーラジカル架橋を介する、第2の機構を通して硬化する。セメントは、任意に、エチレン性不飽和成分の酸化還元開始フリーラジカル架橋を介する、第3の機構を通して硬化する。
【0069】
このようなセメントは、典型的には、2つの部分に配合され、第1の部分は、典型的には、封入された塩基性充填剤、及び硬化のための酸反応性(例えば、FAS-ガラス)充填剤を含有する粉末又は液体部分である。第2の部分は、典型的には、酸性ポリマー及び水を含有する水性液体部分である。場合によっては、封入された充填剤は、制御された硬化をもたらし、その後、pHを継続して上昇させるように設計することができる。
【0070】
セメントは、任意に、別個の部分に水溶性還元剤及び水溶性酸化剤を含有してもよい。還元剤が液体部分に存在するならば、このときは酸化剤が、典型的には粉末部分に存在し、逆もまた同様である。好適な還元剤としては、アスコルビン酸、スルフィン酸、バルビツール酸並びにその誘導体、塩化コバルト(II)、塩化鉄、硫酸鉄、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン(酸化剤の選択に応じて)シュウ酸、チオ尿素、及びジチオン酸塩又は亜硫酸塩アニオンの塩が挙げられる。好適な酸化剤は、前述したものと同じである。
【0071】
還元剤及び酸化剤の量は、エチレン性不飽和成分の所望の重合度を提供するのに十分なものである。還元剤の量は、典型的には、非硬化セメント組成物の総重量(水を含む)に基づいて、少なくとも0.01又は0.02から最大5、6、7、8、9、又は10重量%に及ぶ範囲である。酸化剤の量は、典型的には、非硬化セメント組成物の総重量(水を含む)に基づいて、少なくとも0.01又は0.02から最大5、6、7、8、9、又は10重量%に及ぶ範囲である。
【0072】
還元剤又は酸化剤は、Mitraらの米国特許第5,154、762号に記載されているようなポリマーで封入することができる。硬化性(例えば、歯科用)組成物がエチレン性不飽和成分の酸化還元開始フリーラジカル架橋を通して硬化するとき、組成物は、金属酸化物を含む無機シェル内に封入されていない架橋反応のための十分な量の酸化剤を含む。硬化性(例えば、歯科用)組成物はまた、ある期間にわたってpHを上昇させる目的で、金属酸化物を含む無機シェル内に封入された酸化剤を含んでもよい。
【0073】
セメントは、二成分粉末-液体組成物に限定されない。例えば、一成分の無水製剤を調製することができる。これらは乾燥形態で販売され、水を添加することによって使用するために調製することができる。また、二成分ペースト-ペースト配合物は、封入された塩基性及び/又は追加の酸反応性(例えば、FASガラス)充填剤に、その充填剤とは反応しない好適な重合性液体(例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、又は「HEMA」)を添加して、第1のペーストを得ることによって調製することができる。上述の酸性ポリマーを、酸性ポリマーとは反応しない好適な充填剤(例えば、石英)と組み合わせて、第2のペーストを得る。2つのペーストを一緒に撹拌することによって、使用するために調製される。
【0074】
セメントは、使用時に水を含有する。水は、販売される組成物中に存在してもよく、又は使用直前に添加されてもよい。水は、蒸留水、脱イオン水、又は味のない(plain)水道水であってよい。水の量は、一般的に、適切な取扱い特性及び混合特性を提供するのに、並びに充填剤-酸反応において、イオン輸送を許容するのに、十分である量である。水の量は、典型的には、セメントの総重量の少なくとも1、2、3、4、又は5%、典型的には20又は25%以下である(すなわち、第1及び第2の部分と添加される任意の水との組み合わせ)である。
【0075】
セメントは、典型的にはイオン硬化性であり、すなわちイオン反応によって反応して硬化塊を生成することができる。イオン反応は、主にポリマー上の酸基と酸反応性(例えば、FASガラス)充填剤との間で起こる。
【0076】
いくつかの実施形態では、酸反応性(FAS)ガラスは、封入された塩基性(例えば、充填剤)材料と組み合わせて利用される。いくつかの実施形態では、FASガラスの量は、二成分組成物の第1の部分の少なくとも5、10、15、20、25、30、35、又は40重量%から最大約50、55、又は60重量%までの範囲に及ぶ。第1の部分は典型的には、総硬化性(例えば、歯科用)組成物の半分に相当するので、合計での酸反応性(FAS)ガラスの濃度は、ちょうど記載された濃度の半分である。イオン反応への関与に加えて、FASガラスは、再石灰化を促進することが知られているリンイオン及びフッ素イオンを放出する。
【0077】
いくつかの実施形態では、酸反応性(FAS)ガラスの濃度は、封入された塩基性(例えば、充填剤)材料の濃度よりも高い。他の実施形態では、封入された塩基性(例えば、充填剤)材料の濃度は、酸反応性(FAS)ガラスの濃度よりも高い。いくつかの実施形態では、封入された塩基性充填剤の封入されていない酸反応性(FAS)ガラスに対する重量比は、典型的には、二成分型組成物の第2の部分において、少なくとも1:1若しくは1:1超、例えば、1.5:1、2:1、2.5:1、又は3:1から最大5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、又は10:1の範囲に及ぶ。
【0078】
セメントは、少なくとも1つのエチレン性不飽和部分を更に含み得る。エチレン性不飽和部分は、別個の成分として(例えば、アクリレート官能性モノマー若しくはメタクリレート官能性モノマーとして)存在してもよく、又は酸性ポリマーなどの別の成分上に基として存在してもよい。
【0079】
エチレン性不飽和基は、典型的には、(例えば、末端)フリーラジカル重合性基であり、(メタ)アクリル、例えば(メタ)アクリルアミド(HC=CHCON-及びHC=CH(CH)CON-)並びに(メタ)アクリレート(CHCHCOO-及びCHC(CH)COO-)などが挙げられる。他のエチレン性不飽和重合性基としては、ビニルエーテル(HC=CHO-)などのビニル(HC=C-)が挙げられる。エチレン性不飽和末端重合性基は、特に化学線(例えば、UV又は青色光)に対する曝露によって硬化される組成物の場合、(メタ)アクリレート基であることが好ましい。更に、メタクリレート官能基は、典型的には、歯科用硬化性組成物において、アクリレート官能基よりも好ましい。
【0080】
いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和成分は、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリセロールモノ-又はジ-メタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコール(例えば、400及び他の分子量)ジメタクリレート、ウレタンメタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチレンビス-アクリルアミド又はメタクリルアミドなどの水混和性又は水溶性(メタ)アクリレートであり、ジアセトンアクリルアミド及びメタクリルアミドが好ましい。必要に応じて、エチレン性不飽和部分の混合物を使用してもよい。好ましくは、エチレン性不飽和部分は、以下により詳細に記載されるように、酸性ポリマー上の基として存在する。
【0081】
第2の部分は、有機又は無機酸成分を含む。いくつかの実施形態では、酸成分は、ポリ(マレイン)酸又はポリ(イタコン)酸などのポリカルボン酸である。他の実施形態では、酸成分は、ポリアクリル酸又はリン含有酸である。
【0082】
いくつかの実施形態では、酸成分は酸性ポリマーである。好適な酸性ポリマーとしては、米国特許第4,209,434号の第2欄、62行~第3欄6行に列挙されているものが挙げられる。好ましい酸性ポリマーとしては、アクリル酸、イタコン酸、及びマレイン酸などのアルケン酸のホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、酸性ポリマーは、光硬化性アイオノマー、すなわち、硬化反応が可能なペンダントイオン基、及び結果として生じる混合物を、放射エネルギーに曝露すると重合させる、すなわち硬化させることができるペンダントフリーラジカル重合性基を有するポリマーとして特徴付けることができる。
【0084】
例えば、米国特許第5,130,347号に記載されているように、光硬化性アイオノマーは、一般式:
B(X)(Y)を有し、
式中、
Bは有機骨格鎖を表し、
各Xは、独立してイオン性基であり、
各Yは、独立して光硬化性基であり、
mは、2以上の平均値を有する数であり、
nは、1以上の平均値を有する数である。
【0085】
好ましくは、骨格鎖Bは、炭素-炭素結合のオリゴマー又はポリマー骨格鎖であり、任意に、酸素、窒素、又は硫黄ヘテロ原子などの非干渉置換基を含有する。本明細書で使用される場合、用語「非干渉」は、光硬化性アイオノマーの光硬化反応のいずれにも過度に干渉しない置換基又は連結基を指す。
【0086】
好ましいX基は酸性基であり、カルボキシル基が特に好ましい。
【0087】
好適なY基としては、重合性エチレン性不飽和基及び重合性エポキシ基が挙げられるが、これらに限定されない。エチレン性不飽和基、特にフリーラジカル機構によって重合することができるものが好ましく、その例は、置換及び非置換アクリレート、メタクリレート、アルケン及びアクリルアミドである。
【0088】
X及びY基は、直接的に、又は置換若しくは非置換アルキル、アルコキシアルキル、アリール、アリールオキシアルキル、アルコキシアリール、アラルキル、又はアルカリル基などの任意の非干渉有機連結基を用いて、骨格鎖Bに結合することができる。
【0089】
好ましい光硬化性アイオノマーは、各Xがカルボキシル基であり、各Yが、フリーラジカル機構によって重合され得る(メタ)アクリレート基などのエチレン性不飽和基であるものである。このようなアイオノマーは、ポリアルケン酸(例えば、式B(X)m+n(式中、各Xはカルボキシル基である)のポリマー)と、エチレン性不飽和基と、NCO基などのカルボン酸基と反応可能な基との両方を含有するカップリング化合物と反応させることによって簡便に調製される。得られる光硬化性アイオノマーは、好ましくは、フリーラジカル重合性のうちの少なくとも1つを有する(例えば、(メタ)アクリレート基)が、アミド結合によってアイオノマーに結合される。得られる光硬化性アイオノマーの分子量は、典型的には約1000~約100,000g/モルである。
【0090】
(例えば、光硬化性アイオノマー)酸性ポリマーは、典型的には、ゲル透過クロマトグラフィー及びポリスチレン標準を使用して測定したときに、少なくとも5000g/モルから最大約100,000g/モルの範囲の(重量平均)分子量を有する。いくつかの実施形態では、(例えば、光硬化性アイオノマー)酸性ポリマーは、50,000又は25,000g/モル未満の分子量を有する。
【0091】
光硬化性アイオノマーなどの酸性成分の濃度は、典型的には、二成分型組成物の第1の部分の少なくとも5、6、7、8、9、又は10重量%、典型的には30、25、20、又は15重量%以下である。第1の部分は典型的には、総硬化性(例えば、歯科用)組成物の半分だけに相当するので、光硬化性アイオノマーなどの酸性成分の合計での濃度は、ちょうど記載された濃度のおよそ半分である。
【0092】
いくつかの実施形態では、酸成分は、酸及び/又は酸前駆体官能基を有するエチレン性不飽和化合物の形態の硬化性成分である。酸前駆体官能基としては、例えば、無水物、酸ハロゲン化物、及びピロホスフェートが挙げられる。酸官能基としては、リン酸官能基、ホスホン酸官能基、スルホン酸官能基、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。典型的には、本明細書に記載される接着剤組成物は、組成物がジルコニアの場合などの塩基性表面を含む放射線不透過性充填剤を含む場合、カルボン酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物をほとんど含まない(例えば、10重量%未満、5重量%未満、又は1重量%未満)、又はカルボン酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物を含まない。
【0093】
酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリセロールホスフェートモノ(メタ)アクリレート、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートホスフェート(例えばHEMA-P)、ビス((メタ)アクリルオキシエチル)ホスフェート、((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシ)プロピルオキシホスフェート、(メタ)アクリルオキシヘキシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシヘキシル)ホスフェート(例えばMHP)、(メタ)アクリルオキシオクチルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシオクチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシデシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシデシル)ホスフェート、及びカプロラクトンメタクリレートホスフェートなどのα、β-不飽和酸性化合物が挙げられる。
【0094】
いくつかの実施形態では、(例えば、歯科用)組成物は、本明細書に記載の封入された充填剤に加えて、他の(すなわち、第2の)充填剤を更に含む。第2の充填剤は、典型的には、本明細書に記載されるような(例えば、強い)塩基性コア材料を含まない。第2の充填剤は、典型的には、前述のように、低い溶解度を有する中性金属酸化物を含む。第2の充填剤はまた、弱塩基性又は弱酸性であってもよい。
【0095】
いくつかの実施形態では、第2の充填剤は、前述のように、酸反応性(FASガラス)充填剤である。
【0096】
いくつかの実施形態では、他の充填剤は、(例えば、無機金属酸化物)ナノ粒子を含む。このようなナノ粒子、又は換言すれば「ナノスコピック充填剤」は、粘度及びチクソトロピー調節剤として使用することができる。このようなナノ粒子はまた、歯科用硬化性組成物の機械的特性に対しても部分的に寄与し得る。このようなナノ粒子はまた、それらのサイズにより、重合性樹脂の屈折率に対しても寄与する。
【0097】
いくつかの実施形態では、無機酸化物ナノ粒子は、100nm以下の一次粒径を有する。一次粒径は、典型的には、非凝集体の離散粒子のサイズを指す。他のより一般性が低い実施形態では、ナノ粒子は、2個以上の(例えば、溶融又は共有)結合した粒子の凝集体である場合もあり、この凝集体は100nm以下の粒径を有する。平均粒径は、硬化した歯科用組成物の薄片試料を切断し、倍率300,000の透過型電子顕微鏡写真を使用して約50~100個の粒子の粒子径を測定し、平均を計算することによって決定することができる。ナノ粒子は、単峰性又は多峰性(例えば、二峰性)の粒径分布を有し得る。いくつかの実施形態では、(例えば、ジルコニア)ナノ粒子は、少なくとも約2、3、4、又は5ナノメートル(nm)の平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、(例えば、ジルコニア)ナノ粒子は、約50、40、30、25、15、又は10ナノメートル(nm)以下の平均粒径を有する。
【0098】
歯科用組成物は、任意に、比較的低い屈折率を有する(例えば、無機金属酸化物)ナノ粒子、例えばシリカなどを更に含む。低屈折率ナノ粒子の包含は、重合性樹脂の屈折率を低減させ得る。好適なシリカナノ粒子は、Ecolab(St.Paul,MN)からNALCO COLLOIDAL SILICASの商品名で市販されている。例えば、好ましいシリカ粒子は、NALCO製品1034A、1040、1042、1050、1060、2327、及び2329を使用することで得ることができる。
【0099】
シリカナノ粒子は、好ましくは、シリカの水性コロイド分散体(すなわち、ゾル又はアクアゾル)から製造される。コロイドシリカは、典型的には、シリカゾル中に約1~50重量パーセントの濃度で存在する。異なるコロイドサイズを有する、使用することができるコロイドシリカゾルが市販されており、Surface&Colloid Science,Vol.6,ed.Matijevic,E.,Wiley Interscience,1973を参照されたい。充填剤の製造における使用にとって好ましいシリカゾルは、水性媒体中の非晶質シリカの分散体(例えば、Ecolab製のNalcoコロイドシリカなど)、及びナトリウム濃度が低く、好適な酸との混和によって酸性化することができるもの(例えば、E.I.Dupont de Nemours&Co.製のLudoxコロイドシリカ、又はEcolab製のNalco 2326)として供給されている。
【0100】
いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、少なくとも0.5、1、1.5、又は2重量%の低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子を含む。低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子の量は、典型的には、歯科用組成物の30、25、20、15、又は5重量%以下である。他の実施形態では、歯科用組成物は、1、0.5、0.25、0.1、若しくは0.005重量%未満の低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子を含むか、又は低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子を実質的に含まない。
【0101】
低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子が歯科用組成物に含まれている場合、低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子の濃度は、概して、高屈折率(例えば、ジルコニア)ナノ粒子の濃度未満である。したがって、高屈折率(例えば、ジルコニア)ナノ粒子の重量又は体積濃度は、典型的には、低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子の重量又は体積濃度よりも大きい。いくつかの実施形態では、高屈折率(例えば、ジルコニア)ナノ粒子の、低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子に対する重量比又は体積比は、少なくとも1.1対1、1.2対1、1.3対1、1.4対1、1.5対1、1.6対1、1.7対1、1.8対1、1.9対1、又は2対1である。いくつかの実施形態では、高屈折率(例えば、ジルコニア)ナノ粒子の、低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子に対する重量比又は体積比は、少なくとも2.1対1、2.2対1、2.3対1、又は2.4対1である。いくつかの実施形態では、高屈折率(例えば、ジルコニア)ナノ粒子の、低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子に対する重量比又は体積比は、100対1、75対1、50対1、25対1、10対1、又は5対1以下である。
【0102】
いくつかの好適な低屈折率(例えば、シリカ)ナノ粒子及び高屈折率(例えば、ジルコニア)ナノ粒子については、米国特許第6,387,981号(Zhangら)及び同第6,572,693号(Wuら)、並びにPCT国際公開第WO 01/30304号(Zhangら)、同第WO 01/30305号(Zhangら)、同第WO 01/30307号(Zhangら)、同第WO 03/063804号(Wuら)、米国特許第7,090,721号(Craigら)、同第7,090,722号(Buddら)、同第7,156,911号(Kangasら)、米国特許第7,241,437号(Davidsonら)、及び米国特許第7,649,029号(Kolbら)に開示されている。
【0103】
本明細書に記載される歯科用組成物は、認識可能な量の無機金属酸化物充填剤を含むことが好ましい。歯科用途において使用される充填剤の性質は、典型的には、セラミックである。
【0104】
充填剤は、例えば歯科用コンポジット及び歯科用物品(例えば、クラウン)などにおいて現在使用されている充填剤などの、歯科用途のために使用される組成物への組み込みにとって好適な広範な材料のうちの1種以上から選択することができる。充填剤は、概して、無毒性であり、口腔内での使用にとって好適である。充填剤は、放射線不透過性、放射線透過性、又は非放射線不透過性であり得る。いくつかの実施形態では、充填剤は、典型的には、少なくとも1.500、1.510、1.520、1.530、又は1.540の屈折率を有する。
【0105】
放射線不透過性を増加させるために、YbFなどの構成成分を最大約5重量%まで含むことが一般的である。いくつかの実施形態では、硬化した歯科用組成物の放射線不透過性は、厚さ少なくとも3mmのアルミニウムである。
【0106】
充填剤の性質は、粒子状又は繊維状のいずれかであり得る。粒子状充填剤は、概して、20:1以下、より一般的には10:1以下の長さ対幅の比又はアスペクト比を有するものとして定義され得る。繊維は、20:1超、又はより一般的には100:1超のアスペクト比を有するものとして定義され得る。粒子の形状は、球形から楕円形、又はより平面的なもの、例えばフレーク若しくはディスクなどの範囲にわたって多様であり得る。巨視的特性は、充填剤粒子の形状、特に形状の均一性に対して高度に依存し得る。
【0107】
本明細書に記載される歯科用組成物は、ナノ粒子よりもサイズが大きい無機金属酸化物充填剤材料を含む。先に記載されているように、ナノ粒子は、典型的には、100nm以下の粒径を有する、非凝集体の離散粒子である。対照的に、無機金属酸化物充填剤は、100nm超、例えば少なくとも150nm又は少なくとも200nmなどの少なくとも1つの寸法を有する、粒子状又は繊維状材料である。粒子状充填剤の場合、非凝集体の離散粒子又は凝集粒子の平均粒径は、少なくとも200nmである。無機金属酸化物充填剤は、硬化後の摩耗特性の改善にとって非常に有効である。
【0108】
いくつかの実施形態では、充填剤は、重合性樹脂に不溶性である架橋済み有機材料を含んでもよく、任意に無機充填剤で充填されてもよい。好適な有機充填剤粒子の例としては、充填又は非充填粉砕ポリカーボネート、ポリエポキシド、ポリ(メタ)アクリレート、及び同類のものが挙げられる。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される歯科用組成物は、石英、ヒュームドシリカ、米国特許第4,503,169号(Randklev)に記載されている種類の非ガラス質微粒子などの非酸反応性充填剤、並びにナノクラスター充填剤(nanocluster filler)、例えば米国特許第6,730,156号(Windischら)、米国特許第6,572,693号(Wuら)、及び米国特許第8,722,759号(Craig)に記載されているものなどを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、充填剤は、ナノクラスター、すなわち、硬化性樹脂中に分散された場合でも、比較的弱いものの粒子を凝集させるのに十分な分子間力によって結びついた2個以上の粒子の群の形態である、ナノ粒子を含む。好ましいナノクラスターは、非重金属酸化物(例えば、シリカ)粒子及びジルコニアなどの重金属酸化物(すなわち、28よりも大きい原子番号を有する)の、軽度に凝集した、実質的に非晶質のクラスターを含み得る。ジルコニアは、結晶質であっても非晶質であってもよい。いくつかの実施形態では、ジルコニアは、粒子として存在してもよい。ナノクラスターを形成する粒子は、約100nm未満の平均直径を有することが好ましい。しかしながら、軽度に凝集したナノクラスターの平均粒径は、典型的には、相当大きくなる。
【0111】
いくつかの実施形態では、(例えば、歯科用)組成物は、ジルコニア/シリカナノクラスター充填剤などの中性金属酸化物を含む第2の充填剤を更に含む。二成分歯科用組成物の場合、中性金属酸化物を含む充填剤は、第1又は第2の液体含有部分に相当量で存在する。いくつかの実施形態では、中性又は非反応性充填剤は、酸性部分及び非酸性部分のいずれか又は両方に存在し、一方、酸反応性充填剤(例えば、FASガラス)及び/又は封入された塩基性コアは、非酸性部分に存在し、混合後に酸性部分と反応する。
【0112】
いくつかの実施形態では、硬化性(例えば、歯科用)組成物の第1の部分は、ジルコニア/シリカナノクラスター充填剤などの、中性金属酸化物を含む第2の充填剤を、少なくとも5、10、15、又は20重量%から最大30、35、又は40重量%の範囲の量で含む。総硬化性(例えば、歯科)組成物は、ジルコニア/シリカナノクラスター充填剤などの中性金属酸化物を含む第2の充填剤のこのような濃度の約半分を含む。
【0113】
いくつかの実施形態では、第2の充填剤はまた、米国特許第7,396,862号に記載されているような金属酸化物を含むシェル材料で封入されてもよい。
【0114】
充填剤の混合物も使用することができる。
【0115】
典型的な実施形態では、第2の充填剤は、ナノ粒子と無機酸化物充填剤と樹脂との間の結合を強化するための表面処理を含んでもよい。様々な表面処理について、当該技術分野において記載されており、例えば、米国特許第8,647,510号(Davidsonら)に記載されているものなどの有機金属カップリング剤及びカルボン酸が挙げられる。封入された塩基性材料はまた、任意に表面処理を含んでもよい。
【0116】
好適な共重合性有機金属化合物は、一般式:CH=C(CHSi(OR)又はCH=C(CHC=OOASi(OR)[式中、mは0又は1であり、Rは1~4個の炭素原子を有するアルキル基であり、Aは二価有機連結基であり、nは1~3である]を有し得る。有機金属カップリング剤は、アクリレート、メタクリレート、ビニル基及び同類のものなどの反応性硬化性基で官能化されてもよい。好ましいカップリング剤としては、ガンマ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、及び同類のものが挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態では、表面改質剤の組み合わせが有用である可能性があり、これらの薬剤のうちの少なくとも1種は、硬化性樹脂と共重合可能である官能基を有する。硬化性樹脂とは一般に反応しない他の表面改質剤が、分散性又はレオロジー特性を強化するために含まれてもよい。この種類のシランの例としては、例えば、アリールポリエーテル、アルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、又はアミノアルキル官能性シランが挙げられる。
【0118】
表面修飾は、モノマーとの混合に続いて、又は混合後のいずれかで行うことができる。典型的には、樹脂へ組み込む前に、オルガノシラン表面処理化合物をナノ粒子と組み合わせることが好ましい。表面改質剤の必要とされる量は、粒径、粒子のタイプ、改質剤の分子量、及び改質剤のタイプなどのいくつかの要因に左右される。概して、ほぼ単層の改質剤を粒子の表面に付着させることが好ましい。
【0119】
様々なエチレン性不飽和モノマーを、歯科用組成物において利用することができる。歯科用組成物のエチレン性不飽和モノマーは、典型的には、約25℃において安定な液体であり、これは、少なくとも30、60、又は90日間の典型的な貯蔵寿命の間、室温(約25℃)で保管した場合に、モノマーが、実質的に重合、結晶化、又は別様に硬化しないことを意味する。モノマーの粘度は、典型的には、初期粘度の10%を超えて変化(例えば、増加)することはない。
【0120】
特に、歯科修復用組成物の場合、エチレン性不飽和モノマーは、概して、少なくとも1.50の屈折率を有する。いくつかの実施形態では、屈折率は、少なくとも1.51、1.52、1.53、又はそれ以上である。硫黄原子の包含及び/又は1個以上の芳香族部分の存在は、(このような置換基を含まない同じ分子量のモノマーと比較して)屈折率を上昇させ得る。
【0121】
硬化性(例えば、歯科用)組成物の硬化性成分は、広範囲の「他の」エチレン性不飽和化合物(酸官能性を有する又は有しない)、エポキシ官能性(メタ)アクリレート樹脂、ビニルエーテル等を含むことができる。
【0122】
(例えば、光重合性)歯科用組成物は、1個以上のエチレン性不飽和基を有する、フリーラジカル重合性モノマー、オリゴマー、及びポリマーを含んでもよい。好適な化合物は、少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を含有し、付加重合を受けることが可能である。有用なエチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性アクリル酸エステル、ヒドロキシ官能性メタクリル酸エステル、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0123】
このようなフリーラジカル重合性化合物としては、モノ、ジ、又はポリ-(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレート及びメタアクリレート)、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリ(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[1-(2-アクリルオキシ)]-p-エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシ)]-p-プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、及びトリスヒドロキシエチル-イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートなど;(メタ)アクリルアミド(すなわち、アクリルアミド及びメタクリルアミド)、例えば、(メタ)アクリルアミド、メチレンビス-(メタ)アクリルアミド、及びジアセトン(メタ)アクリルアミドなど;ウレタン(メタ)アクリレート;(好ましくは分子量200~500の)ポリエチレングリコールのビス-(メタ)アクリレート;並びにビニル化合物、例えば、スチレン、フタル酸ジアリル、コハク酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、及びフタル酸ジビニルなどが挙げられる。他の好適なフリーラジカル重合性化合物としては、シロキサン官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。所望される場合、2つ以上のフリーラジカル重合性化合物の混合物を使用することが可能である。
【0124】
硬化性(例えば、歯科用)組成物は、単一分子内にヒドロキシル基とエチレン性不飽和基とを有するモノマーを含有してもよい。このような材料の例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなど;グリセロールモノ又はジ-(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノ又はジ-(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールモノ、ジ、及びトリ-(メタ)アクリレート;ソルビトールモノ、ジ、トリ、テトラ、又はペンタ-(メタ)アクリレート;並びに2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(bisGMA)が挙げられる。好適なエチレン性不飽和化合物は、広範な商業的供給業者、例えば、Sigma-Aldrich,St.Louisなどから入手可能である。
【0125】
いくつかの実施形態では、二成分硬化性(例えば、歯科用)組成物の第1の部分は、HEMAなどの単一分子中にヒドロキシル基及びエチレン性不飽和基を有するモノマーを含む。いくつかの実施形態では、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物(例えば、HEMA)の量は、二成分組成物の第1の部分の少なくとも5、10、15、20、25、30重量%から最大約35、40、45、又は50重量%までの範囲に及ぶ。第1の部分は、総硬化性(例えば、歯科用)組成物の半分のみに相当するので、酸性官能基を有するエチレン性不飽和化合物(例えば、HEMA)の合計での濃度は、ちょうど記載された濃度のおよそ半分である。
【0126】
本明細書に記載される(例えば、歯科用)組成物は、酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物の形態の、1つ以上の硬化性構成成分を含んでもよい。このような構成成分は、単一分子内に酸性基とエチレン性不飽和基とを含有する。存在する場合、この重合性構成成分は、任意に、酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物を含む。好ましくは、酸官能基は、炭素、硫黄、リン、又はホウ素のオキシ酸(すなわち、酸素含有酸)を含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、歯科用組成物は、酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物を実質的に含まない(1、0.5、0.25、0.1、又は0.005重量%未満)。
【0127】
本明細書において使用される場合、酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和、並びに酸及び/又は酸前駆体官能基を有するモノマー、オリゴマー、及びポリマーを包含することが意図される。酸前駆体官能基としては、例えば、無水物、酸ハロゲン化物、及びピロホスフェートが挙げられる。酸官能基としては、カルボン酸官能基、リン酸官能基、ホスホン酸官能基、スルホン酸官能基、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0128】
酸官能基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、α,β-不飽和酸性化合物、例えば、グリセロールホスフェートモノ(メタ)アクリレート、グリセロールホスフェートジ(メタ)アクリレート(GDMA-P)、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、HEMA)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシエチル)ホスフェート、((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシプロピル)ホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシ)プロピルオキシホスフェート、(メタ)アクリルオキシヘキシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシヘキシル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシオクチルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシオクチル)ホスフェート、(メタ)アクリルオキシデシルホスフェート、ビス((メタ)アクリルオキシデシル)ホスフェート、カプロラクトンメタクリレートホスフェート、クエン酸ジ又はトリ-メタクリレート、ポリ(メタ)アクリレート化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリカルボキシル-ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリクロロホスホン酸、ポリ(メタ)アクリレート化ポリスルホネート、ポリ(メタ)アクリレート化ポリホウ酸、及び同類のものなどが挙げられ、構成成分として使用することができる。また、不飽和炭酸、例えば、(メタ)アクリル酸、芳香族(メタ)アクリレート化酸(例えば、メタクリレート化トリメリット酸)、及びそれらの無水物などのモノマー、オリゴマー、及びポリマーを使用することも可能である。
【0129】
歯科用組成物は、少なくとも1個のP-OH部分を有する酸官能基を有する、エチレン性不飽和化合物を含んでもよい。このような組成物は、自己接着性であり、かつ非水性である。例えば、このような組成物は、少なくとも1個の(メタ)アクリルオキシ基及び少なくとも1個の-O-P(O)(OH)基を含む第1の化合物であって、式中、x=1又は2であり、少なくとも1個の-O-P(O)(OH)基及び少なくとも1個の(メタ)アクリルオキシ基は、C1~C4炭化水素基によって一緒に連結されている、第1の化合物;少なくとも1個の(メタ)アクリルオキシ基及び少なくとも1個の-O-P(O)(OH)基を含む第2の化合物であって、式中、x=1又は2であり、少なくとも1個の-O-P(O)(OH)基及び少なくとも1個の(メタ)アクリルオキシ基は、C5~C12炭化水素基によって一緒に連結されている、第2の化合物;酸官能基を有しないエチレン性不飽和化合物;開始剤系;及び充填剤を含み得る。
【0130】
開始剤は、典型的には、重合性成分の混合物に添加される。開始剤は、重合性組成物中に容易に溶解できるように(かつそれからの分離を防止するように)樹脂系と十分に混和性である。典型的には、開始剤は、組成物中に、組成物の総重量に基づいて、約0.1重量パーセント~約5.0重量パーセントなどの有効量で存在する。
【0131】
いくつかの実施形態では、モノマーの混合物は光重合性であり、この組成物は、化学線で照射した際に組成物の重合(又は硬化)を開始させる光開始剤(すなわち、光開始剤系)を含有する。このような光重合性組成物は、フリーラジカル重合性であってもよい。光開始剤は、典型的には、約250nm~約800nmの有効波長範囲を有する。フリーラジカル光重合性組成物を重合させるのに好適な光開始剤(すなわち、1種以上の化合物を含む光開始剤系)としては、二成分及び三成分系が挙げられる。典型的な三成分光開始剤は、米国特許第5,545,676号(Palazzottoら)に記載されているように、ヨードニウム塩、光増感剤、及び電子供与体化合物を含む。ヨードニウム塩としては、ジアリールヨードニウム塩、例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート及びジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート(tetrafluoroboarate)が挙げられる。一部の好ましい光増感剤としては、約300nm~約800nm(好ましくは、約400nm~約500nm)の範囲内の一部の光を吸収するモノケトン及びジケトン(例えば、アルファジケトン)、例えば、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6-テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、及び他の環状アルファジケトンを挙げることができる。これらの中でも、カンファーキノンが典型的には好ましい。好ましい電子供与体化合物としては、置換アミン、例えば、4-(N,N-ジメチルアミノ)安息香酸エチルが挙げられる。
【0132】
フリーラジカル光重合性組成物を重合させるのに好適な他の光開始剤としては、典型的には約380nm~約1200nmの有効波長範囲を有するホスフィンオキシドのクラスが挙げられる。約380nm~約450nmの有効波長範囲を有する好ましいホスフィンオキシドフリーラジカル開始剤は、アシル及びビスアシルホスフィンオキシドである。
【0133】
約380超~約450nmの波長範囲で照射されるとフリーラジカル反応を開始することができる市販のホスフィンオキシド光開始剤としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819(Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,N.Y.)))、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド(CGI 403(Ciba Specialty Chemicals))、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの重量で25:75の混合物(IRGACURE 1700(Ciba Specialty Chemicals))、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンとの重量で1:1の混合物(DAROCUR 4265(Ciba Specialty Chemicals)、及びエチル-2,4,6-トリメチルベンジルフェニルホスフィネート(LUCIRIN LR8893X(BASF Corp.(Charlotte,N.C.))が挙げられる。
【0134】
第三級アミンを、アシルホスフィンオキシドと組み合わせて使用してもよい。例示的な第三級アミンとしては、エチル4-(N,N-ジメチルアミノ)ベンゾエート及びN,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。存在する場合、アミン還元剤は、光重合性組成物中に、組成物の総重量に基づいて、約0.1重量パーセント~約5.0重量パーセントの量で存在する。いくつかの実施形態では、歯科用硬化性組成物は、紫外(UV)線で又は青色光で照射されてもよい。この実施形態では、好適な光反応開始剤としては、Ciba Speciality Chemical Corp.,Tarrytown,N.Y.からIRGACURE及びDAROCURの商品名で入手可能なものが挙げられ、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(IRGACURE 651)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(IRGACURE 819)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(IRGACURE 2959)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン(IRGACURE 369)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン(IRGACURE 907)、及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(DAROCUR 1173)が挙げられる。
【0135】
光重合性組成物は、典型的には、組成物の様々な構成成分を混和することによって調製される。光重合性組成物が空気の存在下で硬化しない実施形態では、光開始剤は、「安全な光」条件(すなわち、組成物の早過ぎる硬化を招くことのない条件)下で組み合わせられる。混合物を調製する際、所望されるならば、好適な不活性溶媒を用いてもよい。好適な溶媒の例としては、アセトン及びジクロロメタンが挙げられる。
【0136】
硬化は、放射線源、好ましくは可視光源に対して組成物を曝露することによって起こる。250nm~800nmの化学線光(特に、380nm~520nmの波長の青色光)を発する光源、例えば、石英ハロゲン電球、タングステンハロゲン電球、水銀アーク、炭素アーク、低、中、及び高圧水銀電球、プラズマアーク、発光ダイオード、並びにレーザーなどを用いるのが便利である。概して、有用な光源は、0.200~6000mW/cmの範囲の強度を有する。20秒間の、1000mW/cmの強度によって、一般に、所望される硬化をもたらすことができる。このような組成物を硬化させるための様々な従来の光を使用することができる。
【0137】
任意に、組成物は、溶媒(例えば、アルコール(例えば、プロパノール、エタノール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル)、他の非水性溶媒(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1-メチル-2-ピロリジノン))、及び水を含有してもよい。いくつかの実施形態では、(例えば、一成分)歯科用組成物は、典型的には歯科用組成物全体の5重量%以下の量の水を含む。
【0138】
所望される場合、組成物は、添加剤、例えば、インジケーター、光退色性染料などの染料、顔料、阻害剤、促進剤、粘度調整剤、湿潤剤、緩衝剤、ラジカル及びカチオン性安定剤(例えば、BHT)、並びに当業者には明白であろう他の類似成分などを含有することができる。
【0139】
加えて、医薬又は他の治療用物質を、歯科用組成物に対して任意に添加することができる。例としては、限定されるものではないが、歯科用組成物に使用されることが多い種類の、フッ化物源、増白剤、抗う蝕剤(例えば、キシリトール)、カルシウム源、リン源、再石灰化剤(例えば、リン酸カルシウム化合物)、酵素、息清涼剤、麻酔剤、凝固剤、酸中和剤、化学療法剤、免疫応答調節剤、チクソトロピー剤、ポリオール、抗炎症剤、抗菌剤(抗菌性脂質構成成分に加えて)、抗真菌剤、口腔乾燥症治療剤、減感剤、及び同類のものが挙げられる。上記の添加剤のうちのいずれかの組み合わせを用いてもよい。当業者であれば、所望される結果を達成するために、過度な実験を行うことなく、そのような添加剤のいずれかを選び、その量を選択することができる。
【0140】
硬化性歯科用組成物は、当該技術分野において既知であるように、歯などの口腔表面を処理するために使用することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、歯科用組成物を適用した後に硬化する(curing)ことによって硬化(harden)できる。例えば、歯科用硬化性組成物が歯牙充填などの修復材として使用される場合、この方法は、概して、硬化性組成物を口腔表面(例えば、虫歯)に適用すること、及び組成物を硬化させることを含む。いくつかの実施形態では、歯科用接着剤が、本明細書に記載される硬化性歯科修復材料を適用する前に適用されてもよい。また、歯科用接着剤は、典型的には、高充填された歯科修復用組成物の硬化(curing)と同時に硬化させる(curing)ことによって硬化(harden)される。口腔表面を処理する方法は、歯科用物品を準備することと、口腔(例えば、歯)表面に歯科用物品を接着することとを含み得る。
【0141】
一実施形態では、硬化した歯科用組成物は、歯髄キャッピングに使用することができる。この実施形態では、硬化した歯科用組成物(例えば、緩衝ディスク試験に使用されるものと同じ成形ディスク)と接触させた歯髄幹細胞の細胞増殖を、実施例において更に詳細に記載される方法で評価した。平均細胞増殖は、対照の少なくとも75%であった(硬化した歯科用組成物のディスクは存在しなかった)。いくつかの実施形態では、平均細胞増殖は、対照の少なくとも80、85、又は90%であった。平均アルカリホスファターゼ(ALP)活性も、対照と比較して増加した。いくつかの実施形態では、平均ALP活性は、少なくとも0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mU/mLから最大1.1又は1.2mU/mL以上の範囲であった。
【0142】
別の実施形態では、硬化した歯科用組成物を接着剤として使用することができる。硬化した歯科用組成物は、実施例に記載の試験方法に従って測定したときに、少なくとも1、2、3、4、5、6、8、9、又は10MPaの接着性を示すことができる。いくつかの実施形態では、接着性は、最大20MPa以上の範囲であり得る。
【0143】
本明細書において使用される場合、「歯科用組成物」は、口腔表面に接着又はボンディング可能である、充填剤を含む材料を指す。歯科用硬化性組成物は、歯牙構造に歯科用物品をボンディングさせるために使用されたり、コーティング(例えば、シーラント又はバーニッシュ)を歯表面上に形成するために使用されたり、口腔内に直接配置され、その場で硬化させる修復材として使用されたり、又は代替的に、後に口腔内で接着される補綴を口腔外で作製するために使用されたりし得る。
【0144】
硬化性歯科用組成物としては、例えば、接着剤(例えば、歯科用及び/又は歯科矯正用接着剤)、セメント(例えば、二成分セメント)、プライマー(例えば、歯科矯正用プライマー)、ライナー(歯の過敏性を低減するために虫歯の基部に適用される)、歯根修復及び歯髄キャッピング、シーラントなどのコーティング(例えば、小窩裂溝)、及びバーニッシュ;並びに歯牙充填などのレジン修復材(直接コンポジットとも呼ばれる)、並びにクラウン、ブリッジ、及び歯科インプラント用物品が挙げられる。また、高充填された歯科用組成物は、ミルブランクにも使用され、ミルブランクからクラウンを削り出すことができる。コンポジットは、歯牙構造における実質的な欠損の充填にとって好適であるように設計された、高充填されたペーストである。歯科用セメントは、コンポジットよりもいくらか低充填かつ粘性が低い材料であり、典型的には、インレー、オンレー、及び同類のものなどの追加的材料に対するボンディング剤として作用するか、又は層として適用及び硬化させる場合には、それ自体が充填材料として作用する。また、歯科用セメントは、歯表面又はインプラントアバットメントに対してクラウン、ブリッジ、又は歯科矯正装具などの歯科修復物品を永続的にボンディングさせるために使用される。
【0145】
本明細書において使用される場合、「歯科用物品」は、歯牙構造又は歯科用インプラントに対して接着(例えば、ボンディング)することが可能な物品を指す。歯科用物品としては、例えば、クラウン、ブリッジ、ベニア、インレー、オンレー、充填剤、歯科矯正装置及びデバイスが挙げられる。
【0146】
「歯科矯正装置」は、歯牙構造に対してボンディングさせることが意図される任意のデバイスを指し、限定されるものではないが、歯科矯正ブラケット、バッカルチューブ、舌固定装置、歯科矯正バンド、開口器、ボタン、及びクリートが挙げられる。この装置は、接着剤を受容する基部を有し、この基部は、金属、プラスチック、セラミック、又はそれらの組み合わせで製造されたフランジであってもよい。あるいは、基部は、硬化した接着剤層(すなわち、単層又は多層接着剤)から形成されたカスタム基部であってもよい。
【0147】
「口腔表面」とは、口腔環境中の軟質表面又は硬質表面を指す。硬質表面としては、典型的には、例えば、天然の及び人工の歯表面、骨、及び同類のものを含む歯牙構造が挙げられる。
【0148】
「硬化性(hardenable)」及び「硬化性(curable)」は、加熱して重合及び/若しくは架橋を誘発することによって;化学線で照射して重合及び/若しくは架橋を誘発することによって;並びに/又は1種以上の構成成分を混合して重合及び/若しくは架橋を誘発することによって、硬化(例えば、重合又は架橋)させることができる材料又は組成物について説明している。「混合」は、例えば、2種以上の成分を組み合わせ、混合して均質な組成物を形成することによって実施することができる。あるいは、2種以上の成分を別個の層として準備して、これらの層を境界面で(例えば、自然発生的に又は剪断応力の適用によって)相互混合して重合を開始させてもよい。
【0149】
「硬化された(hardened)」は、硬化した(cured)(例えば、重合した又は架橋した)材料又は組成物を指す。
【0150】
「硬化剤」は、樹脂の硬化を開始させるものを指す。硬化剤としては、例えば、重合開始剤系、光開始剤系、熱開始剤系、及び/又は酸化還元開始剤系を挙げることができる。
【0151】
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの組み合わせを指す省略表現であり、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸、メタクリル酸、又はこれらの組み合わせを指す省略表現であり、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリル、又はこれらの組み合わせを指す省略表現である。
【0152】
本明細書において使用される場合、「ある1つの(a)」、「ある1つの(an)」、「その(the)」、「少なくとも1種の」、及び「1種以上の」は、互換的に使用される。
【0153】
また、本明細書において、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【実施例0154】
材料
ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)は、Evonik Industries,Sarasota,FLから入手した。
エチル4-ジメチルアミノベンゾエート(EDMAB)は、Sigma-Aldrich Corporation,St.Louis,MOから入手した。
カンファーキノン(CPQ)は、Sigma-Aldrichから入手した。
2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)は、PMC Specialties Incorporated,Cincinnati,OHから入手した。
ヒュームドシリカR812Sは、Degussa-Huls Corporation,Parsippany,NJから入手した。
グリセロリン酸カルシウムは、Spectrum Laboratory Products,Gardena,CAから入手した。
フッ化イッテリビウム(YbF)は、Treibacher Industrie Incorporated,Toronto,Canadaから入手した。
VWR International,Radnor,PAから入手した緩衝剤BDH5018(25℃において塩酸で4.00のpHに調整された水性フタル酸水素カリウム緩衝液)。
VBPポリマーは、PAA:ITAコポリマーを十分なIEM(2-イソシアナトエチルメタクリレート)と反応させて、米国特許第5,130,347号(Mitra)の実施例11の乾燥ポリマー調製に従って、コポリマーの酸基の16モルパーセントをペンダントメタクリレート基に変換することによって作製した。
PAA:ITAコポリマーは、米国特許第第5,130,347号の実施例3に従って調製されたアクリル酸:イタコン酸の4:1モル比から作製した。
Zr/Siナノクラスター充填剤は、米国特許第6,730,156号[調製例A(51~64行)及び実施例B(第25欄65行~第26欄40行)]に本質的に記載されるように調製されたシラン処理ジルコニア/シリカナノクラスター充填剤である。
ポルトランドセメント:白色ポルトランドセメント(Federal White Type1、ASTM表記C150)を、Federal White Cement,Woodstock,Ontario,Canadaから購入した。製造業者によって報告される組成物の主成分は、ケイ酸三カルシウム(3CaO-SiO)、ケイ酸二カルシウム(2CaO-SiO)、アルミン酸三カルシウム(3CaO-Al)、アルミノライト四カルシウム(4CaO-Al-Fe)、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、硫酸カリウム、及び硫酸ナトリウムである。ポルトランドセメントは、複数の成分を含む強塩基性材料である。各主要成分(酸化マグネシウム、硫酸カリウム、及び硫酸ナトリウムの微量成分を除く)は、かなりの量の強塩基(CaO)を含有する。ポルトランドセメントは、典型的には約61%~69%のCaO、約18%~24%のSiO、約2%~6%のAl、約1%~6%のFe、約0.5%~5%のMgOを含有する。
生体活性ガラス[45S5]を以下の組成物:SiO(45重量%)、NaO(24.5重量%)、CaO(24.5重量%)、P(6重量%)]を用いて調製した。生体活性ガラスは、強塩基性材料である。これは、組成物の合計49重量%である2つの強塩基成分(NaO及びCaO)を有して均質である。
ケイ酸三カルシウム(3CaOSiO)粉末を、ゾル-ゲル法により調製した。0.5molのSi(OC(オルトケイ酸テトラエチル、TEOS)、触媒として200mLの水及び硝酸の溶液を、連続撹拌下で合わせた。次いで、1.5molのCa(NO-4HOを溶液に添加した。溶液を60℃に加熱し、ゲル化が発生するまで維持した。次いで、ゲルを200℃で乾燥させて、1500℃で6時間焼成させた。ケイ酸三カルシウムは、約74重量%の強塩基成分(CaO)を有する強塩基性均質化合物である。
フルオロアルミノシリケート(FAS)ガラスを、本質的に米国特許第5154762号の実施例1に記載のとおりに調製した。SiO(34.6重量%)、AlF(21.5重量%)、SrO(18.7重量%)、Al(9.4重量%)、AlPO(6.5重量%)、NaAlF(5.6重量%)、P(3.7重量%)の粉末成分を混合し、1350~1450℃のアーク炉内で溶融させ、非晶質単相FASガラス中でローラー急冷させた。その後、ガラスをボールミル粉砕して、2.6m/gの表面積を有する粉砕生成物を得た(ブルナウアー・エメット・テラー(BET)法に従って測定)。
【0155】
計算
以下の式1~6を使用して、実施例1~5に記載のプロセスによって調製された封入された材料についてのシェル厚さ、コア材料の重量%、及びシェル材料の重量%を計算した。計算において、コア材料の総表面積は、コア材料粉末の粒子を球体として(表面積=4π(d/2)、体積=(4/3)(π)(d/2))表すことによって決定した。
式1:
【数1】
STem(cm)=封入された材料のシェル厚さ。
mo(cm)=APCVDプロセスにより調製された金属酸化物の体積。
SA(cm)=コア材料粉末の総表面積。
式2:
【数2】
FRcg(cm/分)=キャリアガスの流速(AlMe、TiCl、SiClについて)。
CT(分)=コーティング時間。
CA=前駆体材料のモル当たりのカチオン。
MWmo(g/mol)=カチオンのモル当たりの金属酸化物の分子量(AlについてはMWmo=51g/mol、TiOについてはMWmo=80g/mol、SiOについてはMWmo=60g/mol)。
mo(g/cm)=酸化金属の密度(Alについては、Dmo=3.0、TiOについてはDmo=3.0、SiOについては、Dmo=2.2)。
%P=キャリアガス中に含有された金属酸化物前駆体のモル百分率(AlMeについての%P=1.33%、TiClについての%P=1.33%、SiClについての%P=35.7%)。
EDE=実施例で使用されるAPCVDプロセスの推定付着効率(AlについてのEDE=0.5、TiOについてのEDE=0.6、SiOについてのEDE=0.4)。
式3:
【数3】
cp=コア材料粉末粒子の数。
式4:
【数4】
Mcp(g)=APCVDプロセスで使用されるコア粉末材料の量(生体活性ガラス、ポルトランドセメント、ケイ酸三カルシウム)。
Msm(g)=APCVDプロセスによって堆積された金属酸化物(Al、TiO、SiO)の量。
Msm(g)=Vmo mo
cp(g/cm)=コア粉末材料の密度(生体活性ガラスについてはDcp=2.65、ポルトランドセメントについてはDcp=3.11)。
d(cm)=コア粒子の直径。
式5及び6-封入された材料の重量百分率(重量%):
【数5】
コアの重量パーセント=(100-シェルの重量パーセント)。
【0156】
ケイ酸三カルシウムコアを有する封入された材料については、コア粒子は、見かけの表面積測定に影響を及ぼす追加の多孔率を有した。ケイ酸三カルシウムの封入された材料については、間接法を用いてコアの有効表面積及びシェルコーティングの厚さを推定した。4~9の緩衝液のpHを変化させるのに必要な時間(実施例6~9の手順に従う)とほぼ同じ時間を有するケイ酸三カルシウムの封入された材料及びポルトランドセメントの封入された材料(同じシェル材料で)は、同じシェル厚さを有すると推定された。したがって、ケイ酸三カルシウムの封入された材料のシェル厚さは、対応するポルトランドセメントの封入された材料について計算された値に基づいた。
【0157】
実施例1.生体活性ガラスコアを有する封入された材料
生体活性ガラス(BG)粉末を、常圧化学気相成長法(APCVD)を用いて酸化アルミニウム(AO)系材料で封入した。生体活性ガラスを、トリメチルアルミニウム(Strem Chemicals,Newburyport,MAから入手し、ステンレススチールバブラーから分配された)を、流動床反応器内の水蒸気と反応させることによってコーティングした。反応器は、ガラスフリット漏斗管(直径2cm、高さ18cm)であった。反応器は、反応器の本体に平行に経路付けされたフリットの下方から延びる入口管と、フリットの上方の延長された頂部領域とを有して、所望の反応器高さ及び前駆体注入器管及び排気出口用の取り付け具を可能にした。温度は、油浴を使用して180℃で制御した。窒素キャリアガスを、液体前駆体の標準的なバブラー構成で使用した。バブラーを約22℃の周囲温度に維持した。トリメチルアルミニウム(TMA)バブラーを通る流量は、100~330cm/分の範囲であった。水バブラーを通る流量は、(250~1250cm/分)の範囲であった。総コーティング時間は、20~100分の範囲であった。封入された材料A~Jを、以下のパラメータ:添加される生体活性ガラスの量、生体活性ガラス粉末の粒径、TMA流量、水流量、及びコーティング時間を変化させることによって調製した。表1では、封入パラメータを封入された材料A~Jについて列挙している。封入された材料G~Jについては、より大きな反応器を使用した(直径4cm、高さ30cm)。封入された材料A~C、及びG~Jについては、反応器に添加する前に、粉末を45ミクロンのふるいに通し、38ミクロンのふるい上に収集することによって、生体活性ガラス粉末の粒径を選択した。封入された材料D~Fについては、反応器に添加する前に、5mmの媒体を有するボールミルを使用して生体活性ガラス粉末を粉砕して、10ミクロンの粒径を得た。粉砕後の各粉末の平均粒径は、Model LA950 Laser Particle Size Analyzer(Horiba Scientific,Edison,NJ)を水と共に使用して測定した。
【0158】
表1aでは、封入された材料A~Jについてのシェル厚さ(ナノメートル)の計算値、コアの重量%、及びシェルの重量%を報告する。
【0159】
【表2】
【0160】
【表3】
【0161】
実施例2.ケイ酸三カルシウムコアを有する封入された材料
ケイ酸三カルシウム(TCS)を、常圧化学気相成長法(APCVD)を用いて酸化アルミニウム系材料で封入した。ケイ酸三カルシウム粉末(30g)を、トリメチルアルミニウム(Strem Chemicalsから入手し、ステンレススチールバブラーから分配された)を、流動床反応器内の水蒸気と反応させることによってコーティングした。反応器は、ガラスフリット漏斗管(直径4cm、高さ30cm)であった。反応器は、反応器の本体に平行に経路付けされたフリットの下方から延びる入口管と、フリットの上方の延長された頂部領域とを有して、所望の反応器高さ及び前駆体注入器管及び排気出口用の取り付け具を可能にした。温度は、油浴を使用して180℃で制御した。窒素キャリアガスを、液体前駆体の標準的なバブラー構成で使用した。バブラーを約22℃の周囲温度に維持した。トリメチルアルミニウム(TMA)バブラーを通る流量は、500cm/分であった。水バブラーを通る流量は、1750cm/分であった。総コーティング時間は、40分であった。表2では、反応器に添加されたケイ酸三カルシウム粉末の平均粒径及び他の封入パラメータを列挙している。コーティング手順に続いて、得られた封入された材料を個々に篩分けして、38ミクロン未満の粒径を有する封入された材料を収集した。これらのふるい分けされた封入された材料は、封入された材料K及びLとして表記された。
【0162】
表2aでは、封入された材料K~Lについてのシェル厚さ(ナノメートル)の計算値、コアの重量%、及びシェルの重量%を報告する。
【0163】
【表4】
【0164】
【表5】
【0165】
実施例3.ポルトランドセメントコアを有する封入された材料
ポルトランドセメント(PC)を、常圧化学気相成長法(APCVD)を用いて酸化アルミニウム系材料で封入した。ポルトランドセメント粉末を、トリメチルアルミニウム(Strem Chemicalsから入手し、ステンレススチールバブラーから分配された)を、流動床反応器内の水蒸気と反応させることによってコーティングした。反応器は、ガラスフリット漏斗管(直径4cm、高さ30cm)であった。反応器は、反応器の本体に平行に経路付けされたフリットの下方から延びる入口管と、フリットの上方の延長された頂部領域とを有して、所望の反応器高さ及び前駆体注入器管及び排気出口用の取り付け具を可能にした。温度は、油浴を使用して180℃で制御した。窒素キャリアガスを、液体前駆体の標準的なバブラー構成で使用した。バブラーを約22℃の周囲温度に維持した。トリメチルアルミニウム(TMA)バブラーを通る流量は、240~1000cm/分の範囲であった。水バブラーを通る流量は、(610~2500cm/分)の範囲であった。総コーティング時間は、10~105分の範囲であった。封入された材料M~Uを、以下のパラメータ:添加されるポルトランドセメントの量、ポルトランドセメント粉末の粒径、TMA流量、水流量、及びコーティング時間を変化させることによって調製した。表3では、封入パラメータを封入された材料M~Uについて列挙する。
【0166】
封入された材料Mについては、反応器に添加したポルトランドセメント粉末を、受け取ったままの状態で使用し、Coulter Counter Multisizer 3(Beckman Coulter Company,Brea,CA)を使用して測定したとき、17.1ミクロンの平均粒径(6.0~33.5ミクロンのD10~D90範囲)を有した。
【0167】
封入された材料N~Sについては、反応器に添加する前に、AVEKA CCE遠心空気分類器モデル100(AVEKA CCE LLC,Cottage Grove,MN)を使用して、空気分類によって、微細粒子をポルトランドセメント試料から除去した。パラメータを選択して、56%の収率の粗材料を得て、Coulter Counter Multisizer 3(Beckman Coulter Company)を使用して測定したときに、24.4ミクロンの平均粒径(13.8~38.4ミクロンのD10~D90範囲)を有する試料を提供した。
【0168】
封入された材料T~Uについては、反応器に添加する前に、AVEKA CCE遠心空気分類器モデル100を使用して、微細粒子及び粗粒子をポルトランドセメント試料から除去した。第1の工程では、初期試料の合計で約24%の粗部分を除去し、次いで第2の工程では、約25%の微細部分を残りの試料から除去した。得られたポルトランドセメント粉末は、Coulter Counter Multisizer 3(Beckman Coulter Company)を使用して測定したときに、19.6ミクロンの平均粒径(9.4~31.5ミクロンのD10~D90範囲)を有した。
【0169】
表3aでは、封入された材料M~Uについてのシェル厚さ(ナノメートル)の計算値、コアの重量%、及びシェルの重量%を報告する。
【0170】
【表6】
【0171】
【表7】
【0172】
実施例4.ポルトランドセメントコア及び二酸化チタンシェルを有する封入された材料
ポルトランドセメントを、常圧化学気相成長法(APCVD)を用いて二酸化チタン系材料で封入した。ポルトランドセメント粉末(50g)を、四塩化チタン(Strem Chemicalsから入手し、ステンレススチールバブラーから分配された)を、流動床反応器内の水蒸気と反応させることによってコーティングした。反応器に充填する前に、実施例3の封入された材料N~Sについて記載した空気分類手順を用いて、微細粒子をポルトランドセメント試料から除去した。得られた粉末の平均粒径は、Coulter Counter Multisizer 3(Beckman Coulter Company)を使用して測定したときに、24.4ミクロン(13.8~38.4ミクロンのD10~D90範囲)を有した。反応器は、ガラスフリット漏斗管(直径4cm、高さ30cm)であった。反応器は、反応器の本体に平行に経路付けされたフリットの下方から延びる入口管と、フリットの上方の延長された頂部領域とを有して、所望の反応器高さ及び前駆体注入器管及び排気出口用の取り付け具を可能にした。温度は、油浴を使用して180℃で制御した。窒素キャリアガスを、液体前駆体の標準的なバブラー構成で使用した。バブラーを約22℃の周囲温度に維持した。四塩化チタンバブラーを通る流量は、1000cm/分であった。水バブラーを通る流量は、1000cm/分であった。総コーティング時間は、57分であった。
【0173】
実施例5.ポルトランドセメントコア及び二酸化ケイ素シェルを有する封入された材料
ポルトランドセメントを、常圧化学気相成長法(APCVD)を用いて二酸化ケイ素系材料で封入した。ポルトランドセメント粉末(50g)を、四塩化ケイ素(Strem Chemicalsから入手し、ステンレススチールバブラーから分配された)を、流動床反応器内の水蒸気と反応させることによってコーティングした。反応器に充填する前に、実施例3の封入された材料N~Sについて記載した空気分類手順を用いて、微細粒子をポルトランドセメント試料から除去した。得られた粉末の平均粒径は、Coulter Counter Multisizer 3(Beckman Coulter Company)を使用して測定したときに、24.4ミクロン(13.8~38.4ミクロンのD10~D90範囲)を有した。反応器は、ガラスフリット漏斗管(直径4cm、高さ30cm)であった。反応器は、反応器の本体に平行に経路付けされたフリットの下方から延びる入口管と、フリットの上方の延長された頂部領域とを有して、所望の反応器高さ及び前駆体注入器管及び排気出口用の取り付け具を可能にした。温度は、油浴を使用して180℃で制御した。窒素キャリアガスを、液体前駆体の標準的なバブラー構成で使用した。バブラーを約22℃の周囲温度に維持した。四塩化ケイ素バブラーを通る流量は、60cm/分であった。水バブラーを通る流量は、1300cm/分であった。総コーティング時間は、58分であった。
【0174】
表3bでは、実施例4及び5の封入された材料についてのシェル厚さ(ナノメートル)の計算値、コアの重量%、及びシェルの重量%を報告する。
【0175】
【表8】
【0176】
実施例6.
4つのガラスバイアルのそれぞれに、15gの脱イオン水及び10gのpH4の緩衝液(緩衝液BDH5018、VWR International)を充填し、バイアル内の溶液を撹拌した。封入されていないポルトランドセメント(0.25g、24.4ミクロンの粒径)を、第1のバイアルに添加した。封入されていないFASガラス(0.25g)を、第2のバイアルに添加した。封入された材料O(0.25g)を、第3のバイアルに添加した。封入された材料Q(0.25g)を、第4のバイアルに添加した。バイアル内で撹拌を継続し、Mettler Toledo M300 pH Meter(Mettler Toledo Corporation,Columbus,OH)を使用して、各溶液のpHを8~10分間にわたって測定した。封入された材料のシェルの厚さは、コーティング時間をより長いコーティング時間に変更して、より厚いシェルを生成することによって修正した。封入された材料Oのシェルは、封入された材料Qのシェルよりも約4.25倍厚くなった。結果を表4に提示し、封入された材料が、塩基性コア材料との遅延反応又は塩基性コア材料の遅延放出をもたらしたことを示す。
【0177】
【表9】
【0178】
実施例7.
2つのガラスバイアルのそれぞれに、15gの脱イオン水及び10gのpH4の緩衝液(緩衝液BDH5018、VWR International)を充填し、バイアル内の溶液を撹拌した。実施例4の二酸化チタンで封入された材料(0.25g)を、第1のバイアルに添加した。実施例5の二酸化ケイ素で封入された材料(0.25g)を、第2のバイアルに添加した。バイアル内で撹拌を継続し、Mettler Toledo M300 pH Meter(Mettler Toledo Corporation)を使用して、各溶液のpHを45分間にわたって測定した。結果を表5に示し、封入された材料が、塩基性コア材料との遅延反応又は塩基性コア材料の遅延放出をもたらしたことを示す。
【0179】
【表10】
【0180】
実施例8.
3つのガラスバイアルのそれぞれに、15gの脱イオン水及び10gのpH4の緩衝液(緩衝液BDH5018、VWR International)を充填し、バイアル内の溶液を撹拌した。封入されていないケイ酸三カルシウム(0.25g)を、第1のバイアルに添加した。封入された材料K(0.25g)を、第2のバイアルに添加した。封入された材料L(0.25g)を、第3のバイアルに添加した。バイアル内で撹拌を継続し、Mettler Toledo M300 pH Meter(Mettler Toledo Corporation)を使用して、各溶液のpHを12分間にわたって測定した。結果を表6に示し、封入された材料が、塩基性コア材料との遅延反応又は塩基性コア材料の遅延放出をもたらしたことを示す。
【0181】
【表11】
【0182】
実施例9.
4つのガラスバイアルのそれぞれに、15gの脱イオン水及び10gのpH4の緩衝液(緩衝液BDH5018、VWR International)を充填し、バイアル内の溶液を撹拌した。封入された材料O(0.25g)を、第1のバイアルに添加した。封入された材料P(0.25g)を、第2のバイアルに添加した。封入された材料Q(0.25g)を、第3のバイアルに添加した。封入された材料R(0.25g)を、第4のバイアルに添加した。バイアル内で撹拌を継続し、Mettler Toledo M300 pH Meter(Mettler Toledo Corporation)を使用して、各溶液のpHを測定した。各溶液がPH9に達した時間を記録した。結果を表7に示し、塩基性コア材料の遅延放出がシェルの厚さに依存することを示す。封入された材料のシェルの厚さは、コーティング時間をより長いコーティング時間に変更して、より厚いシェルを生成することによって修正した。封入された材料O~Rの酸化アルミニウムシェルの厚さは、次のように漸進的に減少した:シェルの厚さ:封入された材料O>封入された材料P>封入された材料Q>封入された材料R。封入された材料O~Rの相対的なシェル厚さは、約8.5:4.5:2:1であった(表7)。
【0183】
【表12】
【0184】
実施例10.
2つのガラスバイアルのそれぞれに、15gの脱イオン水及び10gのpH4の緩衝液(緩衝液BDH5018、VWR International)を充填し、バイアル内の溶液を撹拌した。封入されていない生体活性ガラス(0.25g、38~45ミクロンの粒径のもの)を、第1のバイアルに添加した。封入された材料J(0.25g)を、第2のバイアルに添加した。バイアル内で撹拌を継続し、Mettler Toledo M300 pH Meter(Mettler Toledo Corporation)を使用して、各溶液のpHを60分間にわたって測定した。結果を表8に示し、封入された材料が、塩基性コア材料との遅延反応又は塩基性コア材料の遅延放出をもたらしたことを示す。
【0185】
【表13】
【0186】
実施例11.
2つのガラスバイアルのそれぞれに、25gの脱イオン水を充填した。封入されていないポルトランドセメント(0.25g、24.4ミクロンの粒径)を、第1のバイアルに添加した。封入された材料P(0.25g)を、第2のバイアルに添加した。内容物を撹拌し、Mettler Toledo M300 pH Meter(Mettler Toledo Corporation)を使用して、各溶液のpHを5分間にわたって測定した。結果を表9に示し、封入された材料が、塩基性コア材料との遅延反応又は放出をもたらしたことを示す。
【0187】
【表14】
【0188】
実施例12.
2つのガラスバイアルのそれぞれに、25gの脱イオン水を充填した。封入されていない生体活性ガラス(0.25g、38.45ミクロンの粒径のもの)を、第1のバイアルに添加した。封入された材料J(0.25g)を、第2のバイアルに添加した。内容物を攪拌し、Mettler Toledo M300 pH Meter(Mettler Toledo Corporation)を使用して、各溶液のpHを3分間にわたって測定した。結果を表10に示し、封入された材料が、塩基性コア材料との遅延反応又は塩基性コア材料の遅延放出をもたらしたことを示す。
【0189】
【表15】
【0190】
実施例13(比較例)。
ガラスバイアルに25gの脱イオン水を充填し、0.25gの封入されていないFASガラス(0.25g)をバイアルに添加した。内容物を撹拌し、Mettler Toledo M300 pH Meter(Mettler Toledo Corporation)を使用して、溶液のpHを3分間にわたって測定した。結果を表11に示す。
【0191】
【表16】
【0192】
実施例14.生体活性ガラスの封入された材料を含む歯科用組成物
歯科用組成物1~6(DC-1~DC-6)を、組成物の第1の部分としてのペーストB1~B6及び組成物の第2の部分としてのペーストAから選択されたペーストを使用して調製した。
【0193】
ペーストAの組成を表12に報告する(各成分は、重量%で報告)。ペーストAをバルクで調製した。BHT及びCPQを、HEMAを含有する混合カップに添加した。充填カップをFlackTek SPEEDMIXER(FlackTek Incorporated,Landrum,SC)に置き、均質な混合物が得られるまで内容物を2500rpmで混合した。次に、水中のVBPの混合物をカップに添加し、混合を継続した。CGP、Zr/Siナノクラスター充填剤、及びフッ化イッテルビウム成分を合わせて均質な混合物を形成し、次いでこの混合物をカップに添加した。混合物が均質になるまで混合を継続した。得られたペーストを、使用していないときは、4℃で保管した。
【0194】
ペーストB1~B4及びペーストBAの組成を表13に報告する(各成分は、重量%で報告)。HEMAを含有するフラスコにEDMABを添加し、混合することにより、ペーストB1~B4及びペーストBAを調製した。別個のビーカー内で、FASガラス、封入された材料H(表1から)、及びヒュームドシリカを混合して均質な混合物を形成した。次に、EDMAB\HEMA混合物をビーカー内の混合物に添加し、内容物を均質になるまで撹拌した。ビーカーを覆い、調製の24時間以内にペーストを使用した。
【0195】
ペーストB5及びB6の組成を表14に報告し、ペーストは、ペーストB1~B4については、上記の一般的な方法に従って調製した。
【0196】
歯科用組成物1については、ペーストB1は組成物の第1の部分であった。DC-1のペーストA及びペーストB1(1:1重量)を混合パッド上で合わせ、均質になるまで撹拌した(約10~30秒間混合)。得られたペーストのpHを、ORION PERPHECT ROSS pH Micro Electrode(カタログ番号8220BNWP、Thermo Fisher Scientific Company,Waltham,PA)を使用して直ちに測定した。プローブをペーストに挿入した30秒後のpH測定値を記録した。記録したpHは4.3であった。テフロンディスク金型(直径3.1mm及び高さ1.3mm)を直ちにペーストで満たし、次いで、ELIPAR S10硬化ライト(3M Oral Care,Maplewood,MN)を使用して、金型の各側で20秒間ペーストを硬化させた。得られた成形ディスクを金型から直ちに取り出し、1.5mLのGIBCOリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液(1×、pH7.4)(Thermo Fisher Scientific)を含有する2mLのプラスチック遠心管内に置いた。ディスクを、PBS溶液中に完全に浸漬させた。管に栓をして、室温で保管した。
【0197】
歯科用組成物2(DC-2)については、ペーストB2が組成物の第1の部分としてペーストB1に取って代わった。DC-1について記載した手順に従って、DC-2を用いて成形ディスクを調製した。金型を充填する直前に測定したペーストのpHは、3.8であった。
【0198】
歯科用組成物3(DC-3)については、ペーストB3が組成物の第1の部分としてペーストB1に取って代わった。歯科用組成物1について記載した手順に従って、DC-3を用いて成形ディスクを調製した。金型を充填する直前に測定したペーストのpHは、3.7であった。
【0199】
歯科用組成物4(DC-4)については、ペーストB4が組成物の第1の部分としてペーストB1に取って代わった。DC-1について記載した手順に従って、DC-4を用いて成形ディスクを調製した。金型を充填する直前に測定したペーストのpHは、3.6であった。
【0200】
歯科用組成物5(DC-5)については、ペーストB5が組成物の第1の部分としてペーストB1に取って代わった。DC-1について記載した手順に従って、DC-5を用いて成形ディスクを調製した。金型を充填する直前に測定したペーストのpHは、4.9であった。
【0201】
歯科用組成物6(DC-6)については、ペーストB6が組成物の第1の部分としてペーストB1に取って代わった。DC-1について記載した手順に従って、DC-6を用いて成形ディスクを調製した。金型を充填する直前に測定したペーストのpHは、3.8であった。
【0202】
比較歯科用組成物A(比較DC-A)については、ペーストBAが組成物の第1の部分としてペーストB1に取って代わった。ペーストBAは、封入された材料を含有しなかった。DC-1について記載した手順に従って、比較DC-Aを用いて成形ディスクを調製した。金型を充填する直前に測定したペーストのpHは、3.6であった。
【0203】
浸漬ディスク毎に、ORION PERPHECT ROSS pH Micro Electrode(カタログ番号8220BNWP、Thermo Fisher)を使用して364時間にわたってPBS溶液のpHを周期的に測定した。各測定の前に試料を穏やかに振盪した。PBS溶液のpHプロファイルを、表15及び表16に報告する。「0時間」で記録したpH測定を、PBS溶液中のディスクの浸漬直後に行った。
【0204】
表15では、歯科用組成物に組み込まれた封入された材料Hの濃度(重量%)は、封入された材料Hを含有しない比較DC-Aと比べてDC-1からDC-4まで減少した(すなわち、組み込まれた封入された材料の濃度はDC-1>DC-2>DC-3>DC-4>比較DC-Aであった)。表16では、歯科用組成物DC-1、DC-5、及びDC-6中の封入された材料のシェルの厚さを、DC-6が最も厚いシェルを有する封入された材料を含有し、かつDC-5が最も薄いシェルを有する封入された材料を含有するように変化させた。
【0205】
【表17】
【0206】
【表18】
【0207】
【表19】
【0208】
【表20】
【0209】
【表21】
【0210】
実施例15.ポルトランドセメントの封入された材料を含む歯科用組成物
歯科用組成物(DC-7~DC-11)を、組成物の第1の部分としてのペーストB7~B11及び組成物の第2の部分としてのペーストAから選択されたペーストを使用して調製した。
【0211】
ペーストAを、実施例14で報告した通りに調製した。
【0212】
ペーストB7~B9の組成を表17に報告する(各成分は、重量%で報告)。HEMAを含有するフラスコにEDMABを添加し、混合することにより、ペーストB7~B9を調製した。別個のビーカー内で、FASガラス、封入された材料P(表3から)、及びヒュームドシリカを混合して均質な混合物を形成した。次に、EDMAB\HEMA混合物をビーカー内の混合物に添加し、内容物を均質になるまで撹拌した。ビーカーを覆い、調製の24時間以内にペーストを使用した。
【0213】
ペーストB10の組成を表18に報告する。封入された材料Pを実施例4の封入された材料(二酸化チタン封入ポルトランドセメント)と置き換えたことを除いては、ペーストB7~B9について上述した一般的方法に従って、ペーストB10を調製した。
【0214】
ペーストB11の組成を表19に報告する。封入された材料Pを実施例5の封入された材料(二酸化ケイ素封入ポルトランドセメント)と置き換えたことを除いては、ペーストB7~B9について上述した一般的方法に従って、ペーストB11を調製した。
【0215】
歯科用組成物7(DC-7)については、ペーストB7が組成物の第1の部分であった。DC-7のペーストA及びペーストB7(1:1重量)を混合パッド上で合わせ、均質になるまで撹拌した(約10~30秒間混合)。得られたペーストのpHを、ORION PERPHECT ROSS pH Micro Electrode(カタログ番号8220BNWP、Thermo Fisher Scientific Company)を使用して直ちに測定した。プローブをペーストに挿入した30秒後のpH測定値を記録した。記録したpHは3.5であった。テフロンディスク金型(直径3.1mm及び高さ1.3mm)を直ちにペーストで満たし、次いで、ELIPAR S10硬化ライト(3M Oral Care,Maplewood,MN)を使用して、金型の各側で20秒間ペーストを硬化させた。得られた成形ディスクを金型から直ちに取り出し、1.5mLのGIBCOリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液(1×、pH7.4)(Thermo Fisher Scientific)を含有する2mLのプラスチック遠心管内に置いた。ディスクを、PBS溶液中に完全に浸漬させた。管に栓をして、室温で保管した。
【0216】
歯科用組成物8(DC-8)については、ペーストB8が組成物の第1の部分としてペーストB7に取って代わった。DC-7について記載した手順に従って、DC-8を用いて成形ディスクを調製した。金型を充填する直前に測定したペーストのpHは、3.5であった。
【0217】
歯科用組成物9(DC-9)については、ペーストB9が組成物の第1の部分としてペーストB7に取って代わった。DC-7について記載した手順に従って、DC-9を用いて成形ディスクを調製した。金型を充填する直前に測定したペーストのpHは、3.6であった。
【0218】
歯科用組成物10(DC-10)については、ペーストB10が組成物の第1の部分としてペーストB7に取って代わった。DC-7について記載した手順に従って、DC-10を用いて成形ディスクを調製した。金型を充填する直前に測定したペーストのpHは、3.3であった。
【0219】
歯科用組成物11(DC-11)については、ペーストB11が組成物の第1の部分としてペーストB7に取って代わった。DC-7について記載した手順に従って、DC-11を用いて成形ディスクを調製した。金型を充填する直前に測定したペーストのpHは、3.3であった。
【0220】
浸漬ディスク毎に、ORION PERPHECT ROSS pH Micro Electrode(カタログ番号8220BNWP、Thermo Fisher)を使用して、333又は646時間にわたってPBS溶液のpHを周期的に測定した。各測定の前に試料を穏やかに振盪した。PBS溶液のpHプロファイルを、表20及び表21に報告する。「0時間」で記録したpH測定を、PBS溶液中のディスクの浸漬直後に行った。
【0221】
表20では、様々な濃度の組み込まれた封入された材料Pを有する歯科用組成物を評価した。DC-7は、DC-9の約2倍の封入された材料P(重量%基準)を含有した。比較DC-Aは、封入された材料Pを含まなかった。
【0222】
【表22】
【0223】
【表23】
【0224】
【表24】
【0225】
【表25】
【0226】
【表26】
【0227】
実施例16.ケイ酸三カルシウムの封入された材料を含む歯科用組成物
実施例14で報告した手順に従って、歯科用組成物DC-12を用いて成形ディスクを調製した。DC-12を、組成物の第1の部分としてのペーストB12(表22の組成)及び組成物の第2の部分としてのペーストAを使用して調製した。金型を充填する直前に測定した撹拌したペーストのpHは、3.7であった。ディスクを取り囲むPBS溶液のpHを、実施例14に記載の手順に従って790時間にわたって周期的に測定し、結果を表23に報告した。「0時間」で記録したpH測定を、PBS溶液中のディスクの浸漬直後に行った。
【0228】
【表27】
【0229】
【表28】
【0230】
実施例17.封入された生体活性ガラスを含有する歯科用組成物と接触させた歯髄幹細胞の細胞増殖
歯科用組成物1~4、及び比較歯科組成物Aの成形ディスク(直径3.1mm及び高さ1.3mm)を、実施例14に記載の成形ディスクを調製するための一般的な混合及び硬化手順を使用して調製した。個々のディスクもまた、市販の歯科用ベース/ライナー製品(比較例X)及び市販の歯髄キャップ/ライナー製品(比較例Y)から調製した。ディスクを70%エタノール浴中に20分間連続的に配置し、PBSですすぐこと(3回)によってディスクを個別に滅菌し、次いで、歯髄幹細胞(DPSC)基本培地(Lonza Group LTD.,Basel,Switzerland)中で一晩インキュベートした(37℃、5%のCO、98%の相対湿度)。ヒト歯髄幹細胞(DPSC、Lonza Group LTD.)を、DPSC基本培地を含有するCOSTAR 48ウェル細胞培養プレート(Corning Incorporated,Corning,NY)中に、ウェル当たり20,000個細胞/mLで播種した。各ウェルにディスクを装填し、細胞を7日間培養した(37℃、5%のCO、98%の相対湿度)。対照例として、追加のウェルにヒト歯髄幹細胞を播種したが、これらのウェルのいずれにも成形ディスクを添加しなかった。
【0231】
7日目に、MTT比色アッセイキット(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CA)と共にマイクロプレートリーダー(Tecan Group LTD.,Mannedorf,Switzerland)を使用して540nmで採取した吸光度測定値を用いて、DPSC試料を細胞増殖について評価した。表24では、歯科用組成物1~4(封入された生体活性ガラス材料の様々な濃度を含有する)、比較歯科組成物A(封入された材料を含まない)、比較例X及びY、並びに対照例と接触させたDPSC試料についての平均OD540(n=6)を記録する。
【0232】
【表29】
【0233】
実施例18.封入されたポルトランドセメント又は封入されたケイ酸三カルシウムを含有する歯科用組成物と接触させた歯髄幹細胞の細胞増殖
歯科用組成物8、10、11、12、比較歯科組成物A、比較例X、及び比較例Yの成形ディスク(直径3.1mm及び高さ1.3mm)を調製し、実施例17に記載の手順に従って細胞増殖について試験した。実施例17に記載のように、対照例(DPSCを播種したが、成形ディスクを添加していないウェル)も調製した。表25では、歯科用組成物8、10、11、12(異なるシェルコーティングを伴うポルトランドセメント又はケイ酸三カルシウムコアを有する封入された材料を含有する)、比較歯科組成物A(封入された材料を含まない)、比較例X及びY、並びに対照例と接触させたDPSC試料についての平均OD540(n=4)を記録する。
【0234】
【表30】
【0235】
実施例19.歯科用組成物と接触させた歯髄幹細胞のALP活性
歯科用組成物1~4、比較歯科組成物A、比較例X、及び比較例Yの成形ディスク(直径3.1mm及び高さ1.3mm)を、実施例14に記載の成形ディスクを調製するための一般的な混合及び硬化手順を使用して調製した。ディスクを70%エタノール浴中に20分間連続的に配置し、PBSですすぐこと(3回)によってディスクを個別に滅菌し、次いで、歯髄幹細胞(DPSC)基本培地(Lonza Group LTD.)中で、(37℃、5%のCO、98%の相対湿度において)一晩インキュベートした。ヒト歯髄細胞(DPSC、Lonza Group LTD.)を、DPSC基本培地を含有するCOSTAR 48ウェル細胞培養プレート(Corning Incorporated,Corning,NY)中に、ウェル当たり20,000個細胞/mLで播種した。各ウェルにディスクを装填し、細胞を7日間培養した(37℃、5%のCO、98%の相対湿度)。対照例として、追加のウェルにヒト歯髄幹細胞を播種したが、これらのウェルのいずれにも成形ディスクを添加しなかった。
【0236】
7日目に、DPSC細胞を採取し、各試料の細胞溶解物を、ヒトALP ELISAキット(BioVision Incorporated,San Francisco,CA)を使用して、製造業者の指示に従ってアルカリホスファターゼ(ALP)活性について分析した。表26では、歯科用組成物1~4(封入された生体活性ガラス材料の様々な濃度を含有する)、比較歯科組成物A(封入された材料を含まない)、比較例X及びY、並びに対照例と接触させたDPSC試料についての平均ALP濃度(n=2)をmU/mLで記録する。
【0237】
【表31】
【0238】
実施例20.歯科用組成物と接触させた歯髄幹細胞のALP活性
歯科用組成物8、10、11、12、比較歯科組成物A、比較例X、及び比較例Yの成形ディスク(直径3.1mm及び高さ1.3mm)を調製し、実施例19に記載の手順に従ってALP活性について試験した。実施例19に記載のように、対照例(DPSCを播種したが、成形ディスクを添加していないウェル)も調製した。表27では、歯科用組成物8、10、11、12(異なるシェルコーティングを伴うポルトランドセメント又はケイ酸三カルシウムコアを有する封入された材料を含有する)、比較歯科組成物A(封入された材料を含まない)、比較例X及びY、並びに対照例と接触させたDPSC試料についての平均ALP濃度(n=1~3)をmU/mLで記録する。
【0239】
【表32】
【0240】
実施例21.水酸化カルシウムコア又は混合相のケイ酸カルシウムコアを有する封入された材料
水酸化カルシウム(CH)粉末は、Jost Chemical(St.Louis,MO、製品番号:2242)から入手した。材料を、25ミクロンのふるいを通過させた。
【0241】
混合相ケイ酸カルシウム(MPCS)を、14.1重量%のSiO、50.3重量%のCaCO、34.7重量%のHO、及び0.8重量%のBYK-W9012を混合することによって調製した。BYK-W9012の湿潤及び分散添加剤は、BYK-Chemie GmbH,Wesel,Germanyから入手した。混合後、得られたスラリーを100℃で12時間乾燥させ、次いで1500℃で2時間焼結した。得られた粒子を乳鉢及び乳棒を用いて粉砕し、レーザー回折により測定された11.35ミクロン平均粒径を有する粉末を得た。
【0242】
水酸化カルシウム(CH)及び混合相ケイ酸カルシウム(MPCS)をそれぞれ、実施例2に記載のAPCVDプロセス及び装置を用いて(反応器を加熱テープで加熱した以外は)、酸化アルミニウムで封入し、粉末量及び流量を表28に報告した。
【0243】
【表33】
【0244】
実施例22.封入された材料のpH緩衝試験
実施例6に記載された試験を、封入されていないCH及びMPCSの両方、並びに表28に記載のバッチからサンプリングされた封入されたCH及びMPCSで実施した。粉末添加直前の緩衝液のpHは、4つの試料全てについて4.1であった。結果を表29に示し、封入された材料が、塩基性コア材料との遅延反応又は塩基性コア材料の遅延放出をもたらしたことを示す。
【0245】
【表34】
【0246】
実施例23.原子層堆積法(ALD)を用いて封入されたポルトランドセメントコア
ポルトランドセメント粉末(5g)を、原子層堆積(ALD)プロセスを用いてマイクロカプセル化した。逐次的な4工程プロセス(前駆体A、パージ、前駆体B、パージ)を組み込んだフロースルー原子層堆積(FTALD)反応器を使用して、標的化粒子材料上の自己制限表面反応によって酸化アルミニウムコーティングを堆積させた。
【0247】
逐次的な4工程プロセスは、以下のシーケンス:(1)前駆体A(すなわち、トリメチルアルミニウム(TMA))パルス、(2)Nパージ、(3)前駆体B(すなわち、オゾン@20%パルス)、及び(4)Nパージからなった。TMA前駆体パルスの時間及び圧力を、反応器内部で1~3トルの圧力で、1.125秒に設定した。オゾン前駆体パルスの時間及び圧力を、反応器内部で1~4トルの圧力で、1.000秒に設定した。パージ時間は、半サイクル当たり100~120秒の範囲であった。4工程シーケンスは、本明細書では、1 ALDサイクルと称される。150℃のプロセス温度で、合計で200回のALDサイクルを使用して、ポルトランドセメントの5g試料を処理した。
【0248】
内部試料チャンバは、1つの端部が閉鎖され、他方の開放端部を嵌合具(VCR8嵌合具)を装着された34mmのフリットチューブからなった。次いで、嵌合具を、フリットチューブの内側に様々なガスを添加し、フリットチューブの壁を通って排気することを可能にする前駆体送達システムに取り付けた。
【0249】
前駆体送達システムは、フリットチューブ(試料チャンバ)が反応器システムの残りの部分とは独立して回転するように、回転ユニオンを用いて設計された。次いで、前駆体送達システムに取り付けたフリットチューブを、堆積プロセス中に粒子及び前駆体の温度を制御するために使用される温度制御スリーブ又はチューブの内側に配置した。
【0250】
堆積プロセス中に、粒子を含有するチューブを回転させて、これにより、粒子をチューブの壁に沿って持ち上げ、管の底部に自由落下させた。自由落下の間、粒子は、フリットチューブの開放端部に流入したガスが壁を通って排出される際に、様々な前駆体及びパージ工程に逐次的に曝露された。また、堆積プロセス中に粒子が自由に流動することを維持するように追加の撹拌をもたらす振動モータもまた、反応器アセンブリに取り付けられた。ガス流が試料を冷却させないように、全てのガスを80℃に加熱した。
【0251】
十分な量の前駆体が反応器に供給されることを確実にするために、前駆体の充填を、残留ガス分析器(Stanford Research Systems,Inc.,Sunnyvale,CAから商品名「SRS RESIDUAL GAS ANALYZER」で入手)を用いて監視した。
【0252】
得られた封入された粉末を、実施例6に記載の手順を用いてpH変化について測定した。結果を表30に報告する。
【0253】
【表35】
【0254】
実施例24.象牙質表面に適用される歯科用組成物8(DC-8)及び比較歯科組成物A(DC-A)の接着力測定。
ウシ門歯(10)を、直径25mm×高さ10~20mmの樹脂パック(パック当たり1本の歯)に別々に埋め込んだ。得られた各パックを120グリットサンドペーパーで粉砕して、歯の象牙質層を露出させ、320グリットサンドペーパーで研磨した。全ての実験を、75℃の一定温度、50%の湿度、及び450nmでフィルター処理したライトを用いて室内で実施した。各歯表面をブロットして余分な水を除去し、3M 201+マスキングテープ(3M Company,Maplewood,MN)をマスクとして使用して、露出した象牙質の直径5mmの円をフレーム化した。DC-8(実施例15に記載のように調製)を適用して、露出した象牙質の部位を覆い、スパチュラを用いてマスクと一様の高さに拭き取った後、ELIPAR S10 LED硬化光(3M Company)を使用して20秒間硬化させた。次いで、使い捨てアプリケータを使用して、SCOTCHBONDユニバーサル接着剤(3M Company)を硬化表面に20秒間適用した。この部位を穏やかな空気流で5秒間乾燥させ、次いで、ELIPAR S10 LED硬化光で10秒間光硬化させた。深さ2~5mmで、ゼラチンで裏打ちされた直径5mmの穴を備えたテフロンマスクを、テープマスクと位置合わせし、金属クリップで固定した。次いで、穴をFILTEK Z250歯科用複合樹脂(3M Company)で充填し、ELIPAR S10 LED硬化光で20秒間光硬化して、ペグを作製した。次いで、歯試料をチャンバ(37℃及び95%の湿度)内に0.5時間置いた。金属クリップを歯試料から取り出し、各試料を脱イオン水中に37℃で24時間浸漬させた。24時間後、ゼラチンを溶解し、テフロンマスクを除去した。樹脂パックを、Instron 5944(Instron Corporation,Norwood,MA)の上部アーム上の円形グリップ固定具に固定した。下部固定具は、長さ約90mmのワイヤループを有していた。ワイヤをFILTEK Z250ペグ上にループ状にして、歯/樹脂表面と同一平面に固定した。次いで、硬化した歯科用組成物DC-8の歯への接着力を決定するために、破損するまで(すなわち、アセンブリが歯の表面から破壊されるか、又は歯が破壊される)、張力を適用した。
【0255】
DC-8の代わりに比較歯科組成物A(実施例14のように調製されたDC-A)を使用して、この手順を繰り返した。歯科用組成物DC-A及びDC-8について決定された平均(n=10)接着力値(MPa)を表31に報告する。
【0256】
【表36】
【0257】
実施例25.歯科用組成物(DC-13)
IRGACURE 819(BASF Corporation,Wyandotte,MIから入手した光開始剤)120mgを、SR 603(Sartomer Americas,Exton,PAから入手したポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート)40gに添加することによって、歯科用組成物B(DC-B)を調製した。混合物を、FlackTek DAC 150 FVZ速度ミキサー内で3000rpmにて1分間、合計3回混合した。テフロンディスク金型(直径3.1mm及び高さ1.3mm)を直ちにDC-Bで満たし、次いで、Elipar(商標)DeepCure-S LED硬化ライト(3M Company)を使用して、金型の各側で20秒間硬化させた。得られた成形ディスクを金型から直ちに取り出し、1.5mLのGIBCOリン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液(1×、pH7.4)(Thermo Fisher Scientific)を含有する2mLのプラスチック遠心管内に置いた。ディスクを、PBS溶液中に完全に浸漬させた。管に栓をして、室温で保管した。歯科用組成物Bからのディスクは、対照として機能した(封入された材料を含まない)。
【0258】
歯科用組成物13(DC-13)を、3gの封入された材料Pを1gのDC-Bと合わせることによって調製した。この混合物を3000rpmで1分間、3回混合した。DC-Bについて記載した手順に従って、DC-13を用いて成形ディスクを調製した。
【0259】
歯科用組成物C(DC-C)を、3gの封入されていないポルトランドセメントを、1gのDC-Bと合わせることによって調製した。この混合物を3000rpmで1分間、3回混合した。DC-Bについて記載された手順に従って、成形ディスクをDC-Cで調製した。歯科用組成物Cからのディスクは、対照(封入されていないポルトランドセメントが含まれる)として機能した。
【0260】
浸漬ディスク毎に、ORION PERPHECT ROSS pH Micro Electrode(カタログ番号8220BNWP、Thermo Fisher)を使用して90.4時間にわたってPBS溶液のpHを周期的に測定した。各測定の前に、各試料を穏やかに振盪した。PBS溶液のpHプロファイルを、表32に報告する。「0時間」で記録したpH測定を、PBS溶液中のディスクの浸漬直後に行った。
【0261】
【表37】
【手続補正書】
【提出日】2023-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性歯科用組成物であって、
封入された材料を含む第1の部分であって、前記封入された材料が、塩基性コア材料、及び前記コアを取り囲む金属酸化物を含む無機シェル材料を含む、第1の部分と、
水又は酸性成分を含む第2の部分と、を含む、硬化性歯科用組成物。
【外国語明細書】