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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003668
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】射出成形機及び射出成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/54 20060101AFI20230110BHJP
【FI】
B29C45/54
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104885
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 博文
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利美
(72)【発明者】
【氏名】依田 穂積
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206JA07
4F206JD04
4F206JD05
4F206JN03
4F206JN11
4F206JN21
4F206JQ11
4F206JQ31
4F206JQ42
4F206JQ51
4F206JQ65
4F206JT02
(57)【要約】
【課題】 プリプラ式射出成形機と同様の機能を確保しつつ、射出成形機全体の小型コンパクト化を図るとともに、コストダウン及びメンテナンスやクリーニング等の容易化を図る。
【解決手段】 ノズル部7の軸心方向前方Fsfに、射出ノズル8を先端に有する射出シリンダ9を配設するとともに、ノズル部7を当該射出シリンダ9に挿入するプランジャ部10として構成した金型射出部Msと、プランジャ部10の内部に有する樹脂通路10rを開閉するバルブ機能部11と、射出装置Miを進退方向Fsに移動させる射出装置移動機構部12とを設け、成形時に、射出装置Miにより可塑化処理した所定量の樹脂Rを、開いたバルブ機能部11を通して金型射出部Msに蓄積し、この後、バルブ機能部11を閉じ、射出装置移動機構部12により射出装置Miを前進させて射出ノズル8から樹脂Rを金型Cに射出する射出成形処理を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒に内蔵したスクリュを回転駆動機構部により回転させ、ホッパから投入された成形材料を可塑化処理する機能を備えるとともに、前記スクリュを進退駆動機構部により前進させ、可塑化処理した樹脂を前記加熱筒の先端に設けたノズル部から射出する機能を有する射出装置を備える射出成形機であって、前記ノズル部の軸心方向前方に、射出ノズルを先端に有する射出シリンダを配設するとともに、前記ノズル部を当該射出シリンダに挿入するプランジャ部として構成した金型射出部と、前記プランジャ部の内部に有する樹脂通路を開閉するバルブ機能部と、前記射出装置を進退方向に移動させる射出装置移動機構部と、前記回転駆動機構部,前記進退駆動機構部,前記バルブ機能部及び前記射出装置移動機構部を、少なくとも駆動制御する成形機コントローラとを備えてなることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記射出装置移動機構部は、前記射出装置を進退方向へ移動させる移動駆動部と、前記射出装置を進退方向へガイドするガイド機構部とを備えることを特徴とする請求項1記載の射出成形機。
【請求項3】
前記移動駆動部は、前記射出装置の後端部を覆う内部中空のピストン部及びこのピストン部を収容する加圧シリンダ部を備えることを特徴とする請求項2記載の射出成形機。
【請求項4】
前記ガイド機構部は、前記射出装置の下端に設けた少なくとも一つのレールスライダ部とこのレールスライダ部をスライド自在に支持する少なくとも一つのガイドレール部を備えるレール機構部により構成することを特徴とする請求項2又は3記載の射出成形機。
【請求項5】
前記ガイド機構部は、前記射出装置に対して左右の離間した位置に配設した一対のタイロッドと前記射出装置の左右に一体に設け、かつ前記タイロッドに沿ってスライド自在に移動するロッドスライダ部を備えるロッド機構部により構成することを特徴とする請求項2,3又は4記載の射出成形機。
【請求項6】
前記バルブ機能部は、前記樹脂通路を開閉するシャットオフバルブと、このシャットオフバルブを開閉駆動するバルブ駆動機構部を備えることを特徴とする請求項1記載の射出成形機。
【請求項7】
前記加熱筒は、可塑化処理した樹脂を蓄積する容積として、前記射出シリンダの容積に対して、0.3-3倍に選定することを特徴とする請求項1記載の射出成形機。
【請求項8】
加熱筒に内蔵したスクリュを回転駆動機構部により回転させ、ホッパから投入された成形材料を可塑化処理するとともに、前記スクリュを進退駆動機構部により前進させ、可塑化処理した樹脂を前記加熱筒の先端に設けたノズル部から射出する射出装置を用いた射出成形方法であって、予め、前記ノズル部の軸心方向前方に、射出ノズルを先端に有する射出シリンダを配設するとともに、前記ノズル部を当該射出シリンダに挿入するプランジャ部として構成した金型射出部と、前記プランジャ部の内部に有する樹脂通路を開閉するバルブ機能部と、前記射出装置を進退方向に移動させる射出装置移動機構部とを設け、成形時に、前記射出装置により可塑化処理した所定量の樹脂を、開いた前記バルブ機能部を通して前記金型射出部に蓄積し、この後、前記バルブ機能部を閉じ、前記射出装置移動機構部により前記射出装置を前進させて前記射出ノズルから樹脂を金型に射出する射出成形処理を行うことを特徴とする射出成形方法。
【請求項9】
前記可塑化処理は、前記バルブ機能部を閉じ、前記スクリュを回転させることにより設定したスクリュ停止位置まで可塑化処理を行い、この後、前記スクリュを加圧することにより、前記プランジャ部を充填完了位置まで前進させることを特徴とする請求項8記載の射出成形方法。
【請求項10】
前記可塑化処理を行った後、前記バルブ機能部を開いた状態又は閉じた状態で、前記スクリュの前方に存在する樹脂を所定量だけ前記スクリュの前端位置よりも後方へ還流させる還流処理を行うことを特徴とする請求項8記載の射出成形方法。
【請求項11】
前記還流処理は、前記スクリュを設定した設定時間だけ逆回転させて行うことを特徴とする請求項10記載の射出成形方法。
【請求項12】
前記還流処理は、前記スクリュを前方へ設定した加圧力により加圧して行うことを特徴とする請求項10記載の射出成形方法。
【請求項13】
前記還流処理は、前記スクリュを回転させることにより設定したスクリュ停止位置まで可塑化処理を行った後、前記スクリュを設定時間だけ前進させる単位還流処理を、設定回数だけ行い、この後、前記バルブ機能部を開き、前記スクリュを加圧することにより、前記プランジャ部を充填完了位置まで前進させることを特徴とする請求項10記載の射出成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱筒のスクリュを回転させて成形材料を可塑化し、スクリュを前進させることにより可塑化した樹脂を射出する射出装置を備えて構成する射出成形機及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内蔵したスクリュを回転させることにより投入された成形材料を可塑化する可塑化工程を行う可塑化装置と、内蔵したプランジャを前進させることにより可塑化した樹脂を射出ノズルから金型に射出充填する射出工程を行う射出装置を備えるプリプラ式射出成形機は知られており、この種のプリプラ式射出成形機としては、例えば、特許文献1及び2に開示されるプリプラ式射出成形機が知られている。
【0003】
特許文献1のプリプラ式射出成形機は、可塑化シリンダに内蔵するスクリュを回転させて成形材料を可塑化溶融するとともに、溶融した樹脂を開状態の逆流防止弁を通して射出シリンダにチャージし、この射出シリンダに内蔵するプランジャを後退させて計量を行うものであり、特に、計量時に、プランジャが予め設定した計量終了位置に達したなら、スクリュの回転を停止させるとともに、予めスクリュの回転量及び回転速度により設定した制御条件により逆回転させ、この後、可塑化シリンダと射出シリンダ間に配設した逆流防止弁を閉状態にするようにしたものである。また、特許文献2のプリプラ式射出成形機は、プランジャを内装した射出シリンダと、先端に逆流防止弁を備えた可塑化用のスクリュを回転かつ進退自在に内装した可塑化シリンダとを、先端部にわたり設けた樹脂路により連通して並設し、その可塑化シリンダの後部にスクリュ移動手段と回転用のモータとを設け、そのスクリュ移動手段によるスクリュの進退移動により逆流防止弁を開閉作動するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-255588号公報
【特許文献2】特開平11-207794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来における射出成形機(プリプラ式射出成形機)は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
第一に、可塑化装置と射出装置をそれぞれ独立した別体のユニット装置として構成し、樹脂路を通して連結するため、可塑化工程と射出工程をそれぞれ独立した専用装置として実行できる利点はあるものの、射出装置と可塑化装置をそれぞれ併設した構成、具体的には、射出装置を水平に設置し、可塑化装置を水平に又は前下がりに傾斜させることにより、射出装置の上端上方に二段形態により取り付ける場合が多い。このため、射出成形機全体が大型化し、設置時における高さ方向のスペースが取られ、かつ圧迫感や威圧感の増加を招くとともに、射出成形機全体のコストアップを招きやすい。しかも、樹脂路等が構造的な煩雑さを有することから、メンテナンスやクリーニング(樹脂替え)が大変になる難点があった。
【0007】
第二に、プリプラ式射出成形機をはじめとした各種射出成形機により成形品の生産を行う場合、通常、成形品の種類等にマッチングする樹脂温度等の可塑化条件及び射出速度等の射出条件を含む各種成形条件を設定して成形を行うが、最終的に得られる成形品にはある程度の成形不良が発生するとともに、特に、成形品の種類等によっては、成形不良が発生しやすい成形品も存在する。例えば、可塑化時間が短く樹脂に対して十分な熱が伝わりにくいハイサイクル成形品,粉砕材等の混入により通常のペレットに比べてペレット形状が不均一な傾向を有するリサイクルペレット材料を使用した成形品,一度に大容量の可塑化が求められる射出容量の大きい成形品等は、成形不良が発生しやすく歩留率(良品率)の低下を来しやすい。このため、従来は、各種成形条件に対する精度の高い設定や制御の安定化などにより対応、例えば、樹脂に対する可塑化処理の場合、加熱温度に対する精度の高い設定やスクリュの回転速度及び可塑化時間等の最適化を図るなどにより対応していたが、このような対応を十分に行ったとしても、実際の生産現場では相当数の成形不良が発生するとともに、具体的な不良原因が解らないことも少なくなく、高い歩留率を確保するには限界があった。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機及び射出成形方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る射出成形機Mは、上述した課題を解決するため、加熱筒2に内蔵したスクリュ3を回転駆動機構部4により回転させ、ホッパ5から投入された成形材料を可塑化処理する機能を備えるとともに、スクリュ3を進退駆動機構部6により前進させ、可塑化処理した樹脂Rを加熱筒2の先端に設けたノズル部7から射出する機能を有する射出装置Miを備える射出成形機であって、ノズル部7の軸心方向前方Fsfに、射出ノズル8を先端に有する射出シリンダ9を配設するとともに、ノズル部7を当該射出シリンダ9に挿入するプランジャ部10として構成した金型射出部Msと、プランジャ部10の内部に有する樹脂通路10rを開閉するバルブ機能部11と、射出装置Miを進退方向Fsに移動させる射出装置移動機構部12と、回転駆動機構部4,進退駆動機構部6,バルブ機能部11及び射出装置移動機構部12を、少なくとも駆動制御する成形機コントローラ13とを備えてなることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、射出装置移動機構部12は、射出装置Miを進退方向Fsへ移動させる移動駆動部14と、射出装置Miを進退方向Fsへガイドするガイド機構部15とを備えて構成できる。この際、移動駆動部14は、射出装置Miの後端部Mirを覆う内部中空のピストン部14p及びこのピストン部14pを収容する加圧シリンダ部14cを備えて構成することができる。一方、ガイド機構部15は、射出装置Miの下端に設けた少なくとも一つのレールスライダ部16s,16sとこのレールスライダ部16s,16sをスライド自在に支持する少なくとも一つのガイドレール部16r,16rを備えるレール機構部16,16により構成できるとともに、さらに、ガイド機構部15として、射出装置Miに対して左右の離間した位置に配設した一対のタイロッド17t,17tと射出装置Miの左右に一体に設け、かつタイロッド17t,17tに沿ってスライド自在に移動するロッドスライダ部17m,17mを備えるロッド機構部17,17により構成できる。なお、バルブ機能部11は、樹脂通路10rを開閉するシャットオフバルブ11vと、このシャットオフバルブ11vを開閉駆動するバルブ駆動機構部11dを備えて構成できる。他方、加熱筒2は、可塑化処理した樹脂Rを蓄積する容積Ahとして、射出シリンダ9の容積Acに対して、0.3-3倍に選定可能である。
【0011】
一方、本発明に係る射出成形方法は、上述した課題を解決するため、加熱筒2に内蔵したスクリュ3を回転駆動機構部4により回転させ、ホッパ5から投入された成形材料を可塑化処理するとともに、スクリュ3を進退駆動機構部6により前進させ、可塑化処理した樹脂Rを加熱筒2の先端に設けたノズル部7から射出する射出装置Miを用いた射出成形方法であって、予め、ノズル部7の軸心方向前方Fsfに、射出ノズル8を先端に有する射出シリンダ9を配設するとともに、ノズル部7を当該射出シリンダ9に挿入するプランジャ部10として構成した金型射出部Msと、プランジャ部10の内部に有する樹脂通路10rを開閉するバルブ機能部11と、射出装置Miを進退方向Fsに移動させる射出装置移動機構部12とを設け、成形時に、射出装置Miにより可塑化処理した所定量の樹脂Rを、開いたバルブ機能部11を通して金型射出部Msに蓄積し、この後、バルブ機能部11を閉じ、射出装置移動機構部12により射出装置Miを前進させて射出ノズル8から樹脂Rを金型Cに射出する射出成形処理を行うようにしたことを特徴とする。
【0012】
この場合、発明の好適な態様により、可塑化処理は、バルブ機能部11を閉じ、スクリュ3を回転させることにより設定したスクリュ停止位置Xceまで可塑化処理を行い、この後、スクリュ3を加圧することにより、プランジャ部10を充填完了位置Xpeまで前進させることができる。また、可塑化処理を行った後、バルブ機能部11を開いた状態又は閉じた状態で、スクリュ3の前方に存在する樹脂Rを所定量だけスクリュの前端位置よりも後方へ還流させる還流処理(S20,S40)を行うことができる。還流処理(S20,S40)は、スクリュ3を、設定時間Tnだけ逆回転方向Fnへ回転させて行うことができるとともに、スクリュ3を、設定した加圧力により前方Fsfへ加圧して行うこともできる。さらに、還流処理(S20,S40)は、スクリュ3を回転させることにより設定したスクリュ停止位置Xceまで可塑化処理を行った後、スクリュ3を設定時間Trだけ前進させる単位還流処理を、設定回数Nだけ行い、この後、バルブ機能部11を開き、スクリュ3を加圧することにより、プランジャ部10を充填完了位置Xpeまで前進させることができる。
【発明の効果】
【0013】
このような本発明に係る射出成形機M及び射出成形方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0014】
(1) 射出成形機Mは、射出装置Miの軸心方向前方に金型射出部Msを配設するとともに、ノズル部7を射出シリンダ9に挿入するプランジャ部10として構成(兼用)したため、可塑化工程と射出工程をそれぞれ独立して実行できるプリプラ式射出成形機と同様の機能を確保しつつ、射出成形機M全体の小型コンパクト化を図ることができる。特に、設置時における高さ方向のスペースを通常のインラインスクリュ式射出成形機と同等の水準に抑えることができるとともに、軸方向長さも必要最小限の長さに抑えることができるなど、圧迫感や威圧感が増加する不具合を回避し、かつ射出成形機M全体のコストダウンを図ることができる。しかも、樹脂通路を最短距離に設定できるなど、メンテナンスやクリーニング(樹脂替え)を容易化することができる。
【0015】
(2) 本発明の射出成形方法は、このような射出成形機Mを利用することにより、プリプラ式射出成形機と同様の機能を確保、即ち、射出工程中に次ショットの可塑化工程を行うことができるなど、可塑化工程と射出工程をそれぞれ独立して実行できるメリットを確保できるとともに、射出成形機Mを利用する観点から最適な射出成形処理を行うことができる。
【0016】
(3) 好適な態様により、射出装置移動機構部12を構成するに際し、射出装置Miを進退方向Fsへ移動させる移動駆動部14と、射出装置Miを進退方向Fsへガイドするガイド機構部15とを備えて構成すれば、射出装置移動機構部12の移動機構を最もオーソドックスな機構により構成できるため、確実で安定した移動機構部12を構築することができる。
【0017】
(4) 好適な態様により、移動駆動部14を、射出装置Miの後端部Mirを覆う内部中空のピストン部14p及びこのピストン部14pを収容する加圧シリンダ部14cを備えて構成すれば、射出装置Miの後端部Mirにおける外郭形状の一部を利用して加圧シリンダ部14cを構成できるため、シンプルな移動駆動部14を構築できるとともに、高圧の油圧シリンダを構成することができる。
【0018】
(5) 好適な態様により、ガイド機構部15を、射出装置Miの下端に設けた少なくとも一つのレールスライダ部16s,16sとこのレールスライダ部16s,16sをスライド自在に支持する少なくとも一つのガイドレール部16r,16rを備えるレール機構部16,16により構成すれば、最もオーソドックスな構成を有するレール機構部16,16によりガイドできるため、重量の大きな射出装置Miであっても安定かつ円滑に移動させることができる。
【0019】
(6) 好適な態様により、ガイド機構部15を、射出装置Miに対して左右の離間した位置に配設した一対のタイロッド17t,17tと射出装置Miの左右に一体に設け、かつタイロッド17t,17tに沿ってスライド自在に移動するロッドスライダ部17m,17mを備えるロッド機構部17,17により構成すれば、射出装置Miに対して左右方向のブレを防止できるため、射出装置Miに対するガイド機能をより安定に行うことができるとともに、特に、レール機構部16,16と組合わせることにより、最も望ましい形態のガイド機構部15を構築することができる。
【0020】
(7) 好適な態様により、バルブ機能部11を構成するに際し、樹脂通路10rを開閉するシャットオフバルブ11vと、このシャットオフバルブ11vを開閉駆動するバルブ駆動機構部11dを備えて構成すれば、射出装置Miの駆動系を油圧系駆動部により構成した場合、バルブ駆動機構部11dの駆動源として、この油圧系駆動部を利用できるため、バルブ機能部11の制御の簡略化及び確実化を図れるとともに、構成の簡略化に伴うシャットオフバルブ11vの開閉動作の迅速化にも寄与できる。
【0021】
(8) 好適な態様により、加熱筒2と射出シリンダ9の関係において、加熱筒2における可塑化処理した樹脂Rを蓄積する容積Ahとして、射出シリンダ9の容積Acに対して、0.3-3倍に選定することができる。即ち、インラインスクリュ式射出成形機などでは、容積Ahと容積Acの関係は、ある程度の倍率範囲に設定する必要があるが、本発明に係る射出成形機Mでは倍率範囲をより大きく設定することができる。この結果、いわば大型成形品から小型成形品(超小型成形品)まで良好に成形処理することが可能となり、汎用性の高い射出成形機Mとして提供することができる。
【0022】
(9) 好適な態様により、可塑化処理を実行するに際し、バルブ機能部11を閉じ、スクリュ3を回転させることにより設定したスクリュ停止位置Xceまで可塑化処理を行い、この後、スクリュ3を加圧することにより、プランジャ部10を充填完了位置Xpeまで前進させれば、加熱筒2及び射出シリンダ9における有効ストロークを最大限に利用できるため、最も能率的かつ効率的な成形処理を行うことができる。
【0023】
(10) 好適な態様により、可塑化処理を行った後、バルブ機能部11を開いた状態又は閉じた状態で、スクリュ3の前方に存在する樹脂Rを所定量だけスクリュの前端位置よりも後方へ還流させる還流処理(S20,S40)を行うようにすれば、加熱筒2内において再可塑化処理することが可能になるため、混練度の高い、より均質性に優れた溶融樹脂を得ることができるとともに、不良品の削減により最終成形品の歩留率をより高めることができる。
【0024】
(11) 好適な態様により、還流処理(S20,S40)を行うに際し、スクリュ3を、設定時間Tnだけ逆回転方向Fnへ回転させて行うようにすれば、還流方向の圧力を低下させることができるため、還流処理を迅速に行えるとともに、回転速度を可変制御することにより容易に還流時間や還流量を調整することができる。
【0025】
(12) 好適な態様により、還流処理(S20,S40)を行うに際し、スクリュ3を、設定した加圧力により前方Fsfへ加圧して行うようにすれば、最もシンプルな方法により樹脂Rを還流させることができるため、実施の容易化及び制御の容易化に寄与できる。
【0026】
(13) 好適な態様により、還流処理(S20,S40)を行うに際し、スクリュ3を回転させることにより設定したスクリュ停止位置Xceまで可塑化処理を行った後、スクリュ3を設定時間Trだけ前進させる単位還流処理を、設定回数Nだけ行い、この後、バルブ機能部11を開き、スクリュ3を加圧することにより、プランジャ部10を充填完了位置Xpeまで後退させるようにすれば、単位還流処理を、設定回数Nだけ行うことができるため、より混練度の高い、均質性に優れた可塑化樹脂を得れるとともに、樹脂の種類や特性等にマッチングした還流処理の最適化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の好適実施形態に係る射出成形機の一部断面側面図、
図2】同射出成形機における射出装置の一部断面平面図、
図3】同射出成形機における図1中X-X線断面図、
図4】同射出成形機におけるバルブ機能部の抽出拡大構成図、
図5】同射出成形機の基本動作(通常モード)による射出成形方法に基づく成形工程を順を追って示すフローチャート、
図6】同フローチャートの射出成形機の状態を示す模式図、
図7】同フローチャートにおける標準の還流モードによる還流処理工程の詳細な処理工程を示すサブルーチンフローチャート、
図8】同サブルーチンフローチャートの射出成形機の状態を示す模式図、
図9】同フローチャートにおける他の還流処理工程の詳細な処理工程を示すサブルーチンフローチャート、
図10】同サブルーチンフローチャートの射出成形機の状態を示す模式図、
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0029】
まず、本実施形態に係る射出成形機Mの構成について、図1図4を参照して具体的に説明する。
【0030】
射出成形機Mは、図1及び図2に示すように、平坦な成形機ベッドMoを備え、この成形機ベッドMoの右側上面に、射出装置Miと金型射出部Msを配設した可動ベッドMomを備えるとともに、成形機ベッドMoの左側に、仮想線により一部を省略して描いた型締装置Mcを配設する。
【0031】
この場合、射出装置Miは、一般的なインラインスクリュ式射出成形機における射出装置に類する構成を備えている。即ち、基本的構成として、加熱筒2に内蔵したスクリュ3を、回転駆動機構部4により回転させることにより、ホッパ5から投入された成形材料を可塑化し、スクリュ3の前方に可塑化した樹脂Rを蓄積する機能を備えるとともに、スクリュ3を、進退駆動機構部6により前進させることにより可塑化した樹脂Rを加熱筒2の先端に設けたノズル部7から射出する機能を備える。
【0032】
したがって、図2に示すように、スクリュ3の後端は、進退駆動機構部6を構成するスクリュ駆動ラム22の前端に固定するとともに、このスクリュ駆動ラム22の後端には、回転駆動機構部4を構成するオイルモータ21の回転出力軸の先端側をスプライン方式により結合する。この場合、スクリュ3の後部側は、中空状のハウジング部23により覆うとともに、このハウジング部23の後端に固定盤24を固定し、この固定盤24にオイルモータ21の前端を取付ける。これにより、オイルモータ21を駆動制御することにより、スクリュ駆動ラム22を介してスクリュ3を、正回転方向(可塑化方向)Fm(図6(b)参照)又は逆回転方向Fn(図8(a)参照)に回転できる。一方、スクリュ駆動ラム22を駆動制御することにより、スクリュ3を前進方向Fsfに移動できるとともに、後退方向に背圧を付与できる。なお、25は加熱筒2の外周面に付設したバンドヒータ、26は可動ベッドMomを移動させるノズルタッチシリンダをそれぞれ示す。
【0033】
次に、本発明に係る射出成形機Mの要部の構成について説明する。まず、射出装置Miには、図1図3に示すように、この射出装置Miを進退方向Fsに移動させる射出装置移動機構部12を付設する。この射出装置移動機構部12は、射出装置Miを進退方向Fsへ移動させる移動駆動部14と、射出装置Miを進退方向Fsへガイドするガイド機構部15とを備えて構成する。これにより、射出装置移動機構部12の移動機構を最もオーソドックスな機構により構成できるため、確実で安定した移動機構部12を構築することができる。
【0034】
この場合、移動駆動部14は、図2に示すように、射出装置Miの後端部Mirを覆う内部中空のピストン部14p及びこのピストン部14pを収容する加圧シリンダ部14cを備えて構成する。即ち、オイルモータ21を覆う筒形に形成したモータカバーを兼ねるピストンロッド体14prを備え、このピストンロッド体14prを前述した固定盤24に固定し、このピストンロッド体14prの後端にピストン本体14pmを一体形成してピストン部14pを構成するとともに、このピストン部14pは筒形のシリンダ部14cに収容する。
【0035】
これにより、ピストンロッド体14prの前端側がシリンダ部14cから前方へ突出する片ロッドタイプの加圧駆動シリンダ14oが構成されるとともに、この加圧駆動シリンダを用いた移動駆動部14が構成される。そして、この加圧駆動シリンダ14oの下端面は、図1に示すように、可動ベッドMomの後端部に固定する。このような移動駆動部14を設ければ、射出装置Miの後端部Mirにおける外郭形状の一部を利用して加圧駆動シリンダ14oを構成できるため、シンプルな移動駆動部14を構築できるとともに、高圧の油圧シリンダを構成することができる。
【0036】
また、ガイド機構部15は、下端に配設するレール機構部16,16と両サイドに配設するロッド機構部17,17を備える。レール機構部16,16は、射出装置Miの下端に設けた少なくとも一つのレールスライダ部16s,16sとこのレールスライダ部16s,16sをスライド自在に支持する少なくとも一つのガイドレール部16r,16rを備える。この場合、射出装置Miにおける前後方向の中間位置、即ち、前述したハウジング部23に射出装置Miを支持する支持ブロック27を一体に設ける。そして、図3に示すように、この支持ブロック27の下面に、左右一対のレールスライダ部16s,16sを設けるとともに、可動ベッドMomの上面に、左右一対のガイドレール部16r,16rを設ける。これにより、レールスライダ部16s,16sは、ガイドレール部16r,16r上をスライド自在に支持される。ガイド機構部15を、このように構成すれば、最もオーソドックスな構成を有するレール機構部16,16によりガイドできるため、重量の大きな射出装置Miであっても安定かつ円滑に移動させることができる。
【0037】
さらに、ロッド機構部17,17は、射出装置Miに対して左右の離間したサイド位置に固定した一対のタイロッド17t,17tと射出装置Miの左右に一体に設け、かつタイロッド17t,17tに沿ってスライド自在に移動するロッドスライダ部17m,17mを備える。この場合、図2に示すように、加圧駆動シリンダ14oの左右に軸受形態に形成した一対のロッド支持部28p,28qを固定し、他方、可動ベッドMomの前部に、後述する射出シリンダ9を支持するシリンダ支持部29を固定する。これにより、このシリンダ支持部29の左右に軸受形態に形成した一対のロッド支持部29p,29qを固定し、一対のロッド支持部28p,28qと一対のロッド支持部29p,29q間に、別途用意した一対のタイロッド17t,17tによりそれぞれ固定する。そして、射出装置Miにおける前述した支持ブロック27に一体に設けた左右一対のロッドスライダ部17m,17mを各タイロッド17t,17tに対してスライド自在に係合させる。このように構成すれば、射出装置Miに対して左右方向のブレを防止できるため、射出装置Miに対するガイド機能をより安定に行うことができるとともに、特に、レール機構部16,16と組合わせることにより、最も望ましい形態のガイド機構部15を構築できる。
【0038】
一方、ノズル部7の軸心方向前方Fsfには、図1に示すように、射出シリンダ9を配設する。この場合、可動ベッドMomの上面にシリンダ支持部29を固定し、このシリンダ支持部29に射出シリンダ9の後端面を固定する。また、射出シリンダ9の前端には、先端のノズル口が、金型Cに当接する射出ノズル8を備える。この射出ノズル8には、シャットオフノズルタイプを用いてもよいし、射出ノズル8の中途位置にシャットオフバルブ11vsを内蔵するタイプを用いてもよい。
【0039】
なお、加熱筒2と射出シリンダ9の関係においては、加熱筒2における可塑化処理した樹脂Rを蓄積する容積Ahとした場合、射出シリンダ9の容積Acに対して、0.3-3倍に選定することができる。即ち、インラインスクリュ式射出成形機などでは、容積Ahと容積Acの関係は、ある程度の倍率範囲に設定する必要があるが、本発明に係る射出成形機Mでは倍率範囲をより大きく設定することができる。この場合、下限となる0.3倍は、シャットオフバルブの動作タイミングや成形サイクル等を考慮した値となり、また、上限となる3倍は、還流量を考慮した余裕のある値となる。これにより、いわば大型成形品から小型成形品(超小型成形品)まで良好に成形処理することが可能になることを意味し、汎用性の高い射出成形機Mとして提供することができる。
【0040】
また、ノズル部7は、射出シリンダ9の後端口からシリンダ内部に挿入するプランジャ部10として構成する。したがって、プランジャ部10はノズル部7を兼用するとともに、ノズル部7はプランジャ部10を兼用することになり、このプランジャ部10と射出シリンダ9により金型射出部Msが構成される。これにより、加熱筒2側の樹脂Rは、プランジャ部10の内部に有する樹脂通路10rを通して射出シリンダ9の内部に収容されるとともに、プランジャ部10を前進させることにより、射出シリンダ9内の樹脂Rを射出ノズル8を通して金型Cに射出充填することができる。
【0041】
加えて、射出成形機Mは、図4に示すように、プランジャ部10の内部に有する樹脂通路10rを開閉するバルブ機能部11を備える。例示の場合、バルブ機能部11は、樹脂通路10rを開閉するシャットオフバルブ11vと、このシャットオフバルブ11vを開閉駆動するバルブ駆動機構部11dを備えて構成する。シャットオフバルブ11vは、プランジャ部10の中間位置又はプランジャ部10の後端と加熱筒2間に配設することができ、円柱形の弁体11vmを90゜回動変位させることにより樹脂通路10rを開閉することができる。このため、バルブ駆動機構部11dは、後端を、支持ブロック27に回動部を介して連結した進退駆動シリンダ11dcと、この進退駆動シリンダ11dcから前方へ突出させた駆動ロッド11drの先端と弁体11vmを連結する連結機構11mjを備えて構成する。
【0042】
これにより、図4に示すように、進退駆動シリンダ11dcを駆動制御し、駆動ロッド11drを引込方向Fpに変位させれば、弁体11vmを閉側に切換えることができるとともに、駆動ロッド11drを突出方向に90゜回動変位させれば、弁体11vmを開側に切換えることができる。このように構成すれば、射出装置Miの駆動系を油圧系駆動部により構成した場合、バルブ駆動機構部11dの駆動源として、この油圧系駆動部を利用できるため、バルブ機能部11の制御の簡略化及び確実化を図れるとともに、構成の簡略化に伴うシャットオフバルブ11vの開閉動作の迅速化にも寄与できる。
【0043】
他方、図2に示すように、油圧ポンプ.油圧回路及び各種バルブを備えて構成する油圧駆動部31を備え、この油圧駆動部31に、スクリュ駆動ラム22(進退駆動機構部6),オイルモータ21(回転駆動機構部4),油圧シリンダ14o(移動駆動部14),進退駆動シリンダ11dc(バルブ駆動機構部11d)をそれぞれ接続するとともに、図1に示したノズルタッチシリンダ26を接続する。そして、油圧駆動部31には、各種制御指令を付与する成形機コントローラ13を接続するとともに、この成形機コントローラ13に対して、射出成形機Mにおける各種位置情報,時間情報,圧力情報,切換情報等を検出するセンサ群32を接続する。これにより、成形機コントローラ13により、回転駆動機構部4,進退駆動機構部6,バルブ機能部11及び射出装置移動機構部12を少なくとも駆動制御することができる。
【0044】
次に、このように構成する射出成形機Mを用いた成形方法、即ち、本実施形態に係る射出成形方法について、図5図10を参照して説明する。
【0045】
本実施形態に係る射出成形方法は、通常モードによる基本形態の射出成形方法に加え、樹脂Rに対して二回以上の可塑化処理を繰り返して行う還流処理工程を含む各種還流モードによる射出成形方法を実施することができる。
【0046】
最初に、通常モードによる射出成形方法について、図6(a)-(c)を参照し、図5に示すフローチャートに従って説明する。
【0047】
図6(a)は、樹脂Rが存在しない射出成形機Mの状態を示す。即ち、型締された金型Cに射出ノズル8の先端がノズルタッチし、また、プランジャ部10は、射出シリンダ9の最前進位置にあるとともに、スクリュ3の先端が加熱筒2の最前進位置に停止している状態を示す。さらに、シャットオフバルブ11vは開状態に切換えておく。なお、射出ノズル8に、シャットオフノズルを用いた場合は、シャットオフ状態に制御するとともに、図6(b)に例示するように、射出ノズル8の中途位置にシャットオフバルブ11vsを設けた際は閉側に切換制御する。
【0048】
通常モードでは、まず、図6(b)に示す可塑化工程を実行する(ステップS1)。可塑化工程では、シャットオフバルブ11vが開側に切換えられているため、オイルモータ21を駆動制御することにより、スクリュ3を可塑化方向となる正回転方向Fmに回転制御する。これにより、ホッパー5から加熱筒2内に投入された成形材料(ペレット材料)は、加熱筒2及びスクリュ3により可塑化処理される。また、可塑化された樹脂Rは、開状態のシャットオフバルブ11vを通り、さらに、プランジャ部10の樹脂通路10rを通って射出シリンダ9内に蓄積される。
【0049】
そして、可塑化工程が進行し、射出シリンダ9の内部に樹脂Rが蓄積されれば、プランジャ部10及び射出装置Miは、蓄積された樹脂量に応じて矢印Fb方向へ後退移動する。この際、加圧駆動シリンダ14oを駆動制御することにより、スクリュ3に対して所定の背圧を付与する。この後、プランジャ部10が、設定したプランジャ停止位置Xpmに達したなら可塑化工程を終了する。この状態が図6(b)の状態となる。
【0050】
可塑化工程が終了したなら、型締工程が終了していることを確認(ステップS2)し、シャットオフバルブ11vを閉側に切換える(ステップS3,S4)。即ち、通常モードによる射出成形方法では、還流処理工程は行わないため、可塑化工程の終了後、速やかにシャットオフバルブ11vを閉側に切換えるとともに、シャットオフバルブ11vsを開側に切換制御する。そして、この後、射出工程を実行する(ステップS5)。射出工程では、加圧駆動油圧シリンダ14oを駆動制御し、射出装置Miの全体を図6(c)に示す矢印Fi方向へ前進移動、即ち、設定した前進目標位置Xpiまで前進移動させる。これにより、プランジャ部10はプランジャ停止位置Xpmから前進目標位置Xpiまで前進移動し、金型Cに対する樹脂Rの射出充填が行われる。この状態を図6(c)に示す。
【0051】
この後、設定された冷却時間Tcにわたって冷却工程を行うとともに(ステップS6)、冷却時間Tcが経過したなら型開工程を行う(ステップS7)。そして、成形品を取出す成形品取出工程を行うとともに(ステップS8)、次の型締工程を行うことができる(ステップS9,S10)。
【0052】
次に、標準の還流モード、即ち、図5のフローチャートに示す還流処理工程S20を用いた射出成形方法について、図8(a)-(c)を参照し、図5に示したフローチャート及び図7に示すサブルーチンフローチャートに従って説明する。
【0053】
標準の還流モードでは、図5のフローチャートにおける可塑化工程(ステップS1)の終了後、ステップS3において還流処理が選択される。また、還流処理が選択されたときは、図6(b)の状態にあるものとする。即ち、通常モードにおける可塑化工程(ステップS1)が終了した後の状態にある。さらに、標準の還流モードの場合には、シャットオフバルブ11vが開状態に維持される(ステップS21)。
【0054】
一方、標準の還流モードでは、スクリュ3の逆回転制御を実行するか否かの選択が可能である。今、逆回転制御を選択した場合を想定する(ステップS22)。スクリュ3の逆回転制御の選択により、射出成形機Mの成形工程が射出工程中にあることを確認(ステップS23)し、図8(a)に示すように、スクリュ3に対して、設定した回転速度により設定時間だけ逆回転方向Fnに回転制御する(ステップS24,S25)。この際、加圧駆動シリンダ14oを駆動制御することにより、前方へ所定の加圧力を付与することが望ましい。この結果、スクリュ3の逆回転動作により、スクリュ3の前端よりも前方にある少なくとも一部の樹脂Rは、スクリュ3の前端よりも後方へ相対的に還流されるとともに、射出シリンダ9内の樹脂Rも、樹脂通路10rを通して加熱筒2内の樹脂Rに混入する。この結果、還流分だけ、プランジャ部10が前進移動する。図8(a)は、樹脂Rが樹脂通路10rを矢印Frb方向に逆流し、プランジャ部10がプランジャ停止位置Xpmから前方位置Xpfまで移動した状態を示している。また、還流処理により、スクリュ3の前端よりも前方の樹脂Rは、スクリュ3の前端よりも後方へ還流され、可塑化処理中の樹脂Rに混入する。
【0055】
このように、還流処理工程S20を行うに際し、スクリュ3を、設定時間Tnだけ逆回転方向Fnへ回転制御すれば、還流方向の圧力を低下させることができるため、還流処理を迅速に行えるとともに、回転速度を可変制御することにより容易に還流時間や還流量を調整することができる。
【0056】
そして、冷却工程中であることを確認(ステップS26)し、スクリュ3を正回転方向(可塑化方向)Fmへ回転駆動する(ステップS27)。この場合、可塑化方向への回転は、スクリュ3が、後方に設定したスクリュ停止位置Xceに達するまで行う(ステップS28)。したがって、この時の可塑化処理は、可塑化処理中の樹脂Rに対して還流された樹脂Rが混入し、還流された樹脂Rに対する再可塑化処理が行われる。この状態を図8(b)に示す。
【0057】
この後、スクリュ3がスクリュ停止位置Xceに達っしたなら、スクリュ3を前進移動させる(ステップS29)。これにより、加熱筒2内の樹脂Rは、樹脂通路10rを通して射出シリンダ9の内部に移送され、これに伴い、前方位置Xpfに位置するプランジャ部10(射出装置Mi)は、後方となる矢印Fb方向へ移動するため、プランジャ部10が充填完了位置Xpeに達したなら、還流処理工程S20を終了させる(ステップS30)。この状態を図8(c)に示す。
【0058】
なお、ステップS22において、スクリュ3の逆回転制御を選択しない場合には、還流処理は行われない。この場合には、そのまま冷却工程中であることを確認(ステップS26)し、スクリュ3に対する上述した可塑化処理のための回転制御を行う(ステップS27)。この際、可塑化方向への回転は、スクリュ3が、後方に設定したスクリュ停止位置Xceに達するまで行うとともに、スクリュ3がスクリュ停止位置Xceに達っしたなら、スクリュ3を前進移動させ、プランジャ部10が充填完了位置Xpeに達したなら、還流処理工程S20を終了させる(ステップS28,S29,S30)。
【0059】
このように、標準の還流モードでは、還流処理工程S20を備えるため、スクリュ3の逆回転制御により、スクリュ3の前端よりも前方にある一部の樹脂Rが、スクリュ3の前端よりも後方へ還流される。この結果、還流された樹脂Rは、スクリュ3の回転(可塑化)により、再度可塑化されることになり、混練度の高い、より均質性に優れた溶融樹脂を得ることができるとともに、不良品の削減により最終成形品の歩留率をより高めることができる。特に、スクリュ3に対して、所定の加圧力により加圧することにより逆回転制御すれば、還流方向の圧力を低下させることができるため、還流処理を迅速に行えるとともに、回転速度を可変制御することにより容易に還流時間や還流量を調整できる。
【0060】
以上により、還流処理を含む可塑化工程が終了するため、型締工程が終了していることを確認(ステップS2)し、図5に示す通常モードの射出工程を含む後段処理を行うことができる。
【0061】
次に、他の還流モード、即ち、図5のフローチャートに示す還流処理工程S40を用いた射出成形方法について、図10(a)-(b)を参照し、図5に示したフローチャート及び図9に示すサブルーチンフローチャートに従って説明する。
【0062】
この場合、図5のフローチャートにおける可塑化工程(ステップS1)の終了後、ステップS3において、還流処理が選択されず、シャットオフバルブ11vを閉側に切換えた後に、還流処理工程S40を行う場合の例を示す。
【0063】
この還流処理工程S40では、まず、スクリュ3に対する可塑化処理のための回転制御を行う(ステップS41)。これにより、スクリュ3は後退し、このスクリュ3の前方には可塑化した樹脂Rが蓄積される。また、樹脂Rの蓄積に伴い、スクリュ3は矢印Fbs方向に後退する。この状態を図10(a)に示す。この可塑化処理のための回転制御は、スクリュ3が設定した停止位置Xce(図8(b)参照)に達するまで行う(ステップS42)。
【0064】
そして、この後、還流処理を行う(ステップS43)。この場合の還流処理は、スクリュ駆動ラム22を駆動制御し、スクリュ3を前進移動、即ち、加圧駆動シリンダ14oを駆動制御し、所定の加圧力によりスクリュ3を加圧する処理を設定時間だけ行う(ステップS44,S45)。これにより、スクリュ3は所定の前方位置、例えば、図10(b)に示す前方位置Xcfまで移動する。この結果、加圧力の作用により、スクリュ3の前端から前方における少なくとも一部の樹脂Rは、スクリュ3の前端よりも後方へ相対移動する。このため、スクリュ3におけるスクリュヘッド等の外径は、予め小径に切削したり複数の溝を形成するなどにより、加圧力により樹脂Rが還流しやすいように処理しておくことが望ましい。このように、スクリュ3を、設定した加圧力により前方Fsfへ加圧して行うようにすれば、最もシンプルな方法により樹脂Rを還流させることができるため、実施の容易化及び制御の容易化に寄与できる。
【0065】
また、この場合、ステップS41-S45は単位還流処理となるため、この単位還流処理は、予め設定した設定回数Nだけ繰り返して行う(ステップS46)。そして、単位還流処理が設定回数Nだけ終了したなら、射出成形機Mの成形工程が冷却工程にあることを確認(ステップS47)し、シャットオフバルブ11vを開側に切換え(ステップS48)、スクリュ3を前進移動させる(ステップS49)。これにより、加熱筒2内の樹脂Rは、樹脂通路10rを通して射出シリンダ9の内部に転送されるとともに、これに伴い、プランジャ部10(射出装置Mi)は、矢印Fb方向となる後方へ移動する。この結果、プランジャ部10が充填完了位置Xpe(図10(b)参照)に達したなら、還流処理工程40が終了する(ステップS50)。
【0066】
このように、スクリュ3を回転させることにより設定したスクリュ停止位置Xceまで可塑化処理を行った後、スクリュ3を設定時間Trだけ前進させる単位還流処理を、設定回数Nだけ行い、この後、バルブ機能部11を開き、スクリュ3を加圧することにより、プランジャ部10を充填完了位置Xpeまで後退させるようにすれば、単位還流処理を、設定回数Nだけ行うことができるため、より混練度の高い、均質性に優れた可塑化樹脂を得れるとともに、樹脂の種類や特性等にマッチングした還流処理の最適化を実現することができる。
【0067】
なお、ステップS43において、還流処理を選択しない場合には、可塑化処理のための回転制御により(ステップS41)、スクリュ3が、最初に、停止位置Xce(図10(b)参照)に達したなら、そのまま冷却工程中であることを確認(ステップS47)し、シャットオフバルブ11vを開側に切換える(ステップS48)。そして、スクリュ3を前進移動させる(ステップS49)。これにより、加熱筒2内の樹脂Rは、樹脂通路10rを通して射出シリンダ9の内部に移送され、これに伴い、プランジャ部10(射出装置Mi)は後方となる矢印Fb方向へ移動するため、プランジャ部10が充填完了位置Xpeに達したなら、還流処理工程S40が終了する(ステップS50)。
【0068】
このように、可塑化処理を実行し、シャットオフバルブ11vを閉じ、スクリュ3を回転させることにより設定したスクリュ停止位置Xceまで可塑化処理を行い、この後、スクリュ3を加圧することにより、プランジャ部10を充填完了位置Xpeまで前進させれば、加熱筒2及び射出シリンダ9における有効ストロークを最大限に利用できるため、最も能率的かつ効率的な成形処理を行うことができる。
【0069】
よって、このような本実施形態に係る射出成形機M(射出成形方法)によれば、基本的な手法として、ノズル部7の軸心方向前方Fsfに、射出ノズル8を先端に有する射出シリンダ9を配設するとともに、ノズル部7を当該射出シリンダ9に挿入するプランジャ部10として構成した金型射出部Msと、プランジャ部10の内部に有する樹脂通路10rを開閉するバルブ機能部11と、射出装置Miを進退方向Fsに移動させる射出装置移動機構部12とを設け、成形時に、射出装置Miにより可塑化処理した所定量の樹脂Rを、開いたバルブ機能部11を通して金型射出部Msに蓄積し、この後、バルブ機能部11を閉じ、射出装置移動機構部12により射出装置Miを前進させて射出ノズル8から樹脂Rを金型Cに射出する射出成形処理を行うようにしたため、射出成形機Mは、射出装置Miの軸心方向前方に金型射出部Msを配設するとともに、ノズル部7を射出シリンダ9に挿入するプランジャ部10として構成(兼用)することができる。これにより、可塑化工程と射出工程をそれぞれ独立して実行できるプリプラ式射出成形機と同様の機能を確保しつつ、射出成形機M全体の小型コンパクト化を図ることができる。特に、設置時における高さ方向のスペースを通常のインラインスクリュ式射出成形機と同等の水準に抑えることができるとともに、軸方向長さも必要最小限の長さに抑えることができるなど、圧迫感や威圧感が増加する不具合を回避し、かつ射出成形機M全体のコストダウンを図ることができる。しかも、樹脂通路を最短距離に設定できるなど、メンテナンスやクリーニング(樹脂替え)を容易化することができる。特に、本実施形態に係る射出成形方法によれば、このような射出成形機Mを利用することにより、プリプラ式射出成形機と同様の機能を確保、即ち、射出工程中に次ショットの可塑化工程を行うことができるなど、可塑化工程と射出工程をそれぞれ独立して実行できるメリットを確保できるとともに、射出成形機Mを利用する観点から最適な射出成形処理を行うことができる。
【0070】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0071】
例えば、射出装置移動機構部12は、射出装置Miを進退方向Fsへ移動させる移動駆動部14と、射出装置Miを進退方向Fsへガイドするガイド機構部15とを備えて構成したが、射出装置Miを進退方向Fsへ移動させる機能を有するものであれば、他の機構により置換可能である。また、左右一対のレール機構部16,16を例示したが、ロッド機構部17,17と組合わせて使用する場合には、単一のレール機構部16を用いる場合を排除するものではない。さらに、バルブ機能部11は、樹脂通路10rを開閉するシャットオフバルブ11vと、このシャットオフバルブ11vを開閉駆動するバルブ駆動機構部11dを備えて構成した場合を示したが、樹脂通路10rを開閉する機能を有するものであれば、他の各種バルブ機能部11により置換可能である。一方、還流モードとして、二つの異なる態様の還流処理工程S20,S40を例示したが、還流処理を実現できる態様であれば、実行するタイミングや細部の処理は、他の各種態様により置換可能である。なお、駆動方式として、油圧式駆動部を例示しが、電動式,電動式と油圧式を組合わせたハイブリッド式,空圧式等、任意の駆動源を利用した射出成形機に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明に係る射出成形機及び射出成形方法は、大型成形品から小型成形品(超小型成形品)までの各種樹脂を用いた成形品の成形に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
M:射出成形機,Mi:射出装置,Mir:射出装置の後端部,Ms:金型射出部,2:加熱筒,3:スクリュ,4:回転駆動機構部,5:ホッパ,6:進退駆動機構部,7:ノズル部,8:射出ノズル,9:射出シリンダ,10:プランジャ部,10r:樹脂通路,11:バルブ機能部,11v:シャットオフバルブ,11d:バルブ駆動機構部,12:射出装置移動機構部,13:成形機コントローラ,14:移動駆動部,14p:ピストン部,14c:加圧シリンダ部,15:ガイド機構部,16:レール機構部,16s:レールスライダ部,16r:ガイドレール部,17:ロッド機構部,17t:タイロッド,17m:ロッドスライダ部,R:樹脂,Fs:進退方向,Fsf:軸心方向前方,Ah:容積,Ac:容積,C:金型,Xce:スクリュ停止位置,Xpe:充填完了位置,S20:還流処理工程,S40:還流処理工程,Fn:逆回転方向,N:設定回数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10