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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036680
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】糖尿病性腎症の予防および処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230307BHJP
   A61K 31/18 20060101ALI20230307BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230307BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230307BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230307BHJP
   G01N 33/493 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/18
A61P3/10
A61P13/12
G01N33/68
G01N33/493 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197569
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2019538581の分割
【原出願日】2017-10-03
(31)【優先権主張番号】62/403,368
(32)【優先日】2016-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596115687
【氏名又は名称】ザ チルドレンズ メディカル センター コーポレーション
【住所又は居所原語表記】300 Longwood Avenue, Boston, MA 02115 U.S.A.
(71)【出願人】
【識別番号】519117972
【氏名又は名称】ドンペ ファーマーシューティシ エス.ピー.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】フィオリーナ パオロ
(72)【発明者】
【氏名】バッシ ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルガーニ アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】アレグレッティ マルチェロ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】糖尿病患者における糖尿病性腎症(DN)の発症を予防するための、および/またはDNの進行を予防するための、ならびにDNの処置のための方法を提供する。
【解決手段】CXCL8受容体CXCR1およびCXCR2の活性化の阻害剤であるレパリキシン(reparixin)および/またはラダリキシン(ladarixin)を投与する工程を含む、方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、それを必要とする対象において糖尿病性腎症(DN)の発症または糖尿病性腎症の進行を予防する方法:
糖尿病と診断された該対象に対して、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはレパリキシン(Reparixin)および/またはラダリキシン(Ladarixin)を投与する工程。
【請求項2】
以下の工程を含む、それを必要とする対象において糖尿病性腎症(DN)の発症または糖尿病性腎症の進行を予防する方法:
糖尿病と診断されかつIL8レベルが上昇した該対象に対して、レパリキシンおよび/またはラダリキシンを投与する工程。
【請求項3】
糖尿病が1型糖尿病(T1D)である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
糖尿病が2型糖尿病(T2D)である、請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
対象が正常な尿タンパクを有する、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
対象が増加した尿タンパクを有する、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
対象が、CXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有する、請求項1~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
対象からの尿のサンプル中のタンパク質レベルを測定する工程をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
タンパク尿を有する対象を選択する工程をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
尿タンパク質レベルの分析のために対象から尿のサンプルを得る工程をさらに含む、請求項1~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
測定した尿タンパク質レベルを尿タンパク質参照と比較する工程をさらに含む、請求項8~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
尿タンパク質参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た尿サンプル中のタンパク質レベルである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
サンプルが尿サンプルである、請求項13記載の方法。
【請求項15】
サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
測定したIL8レベルをIL8参照と比較する工程をさらに含む、請求項13~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
IL8参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
以下の工程を含む、糖尿病および微量アルブミン尿症と診断された対象において糖尿病性腎症(DN)の発症または糖尿病性腎症(DN)の進行を予防する方法:
(a)該対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程;ならびに
(b)測定したIL8レベルが少なくとも2.41 pg/mlを超えているときに、該対象にレパリキシンおよび/またはラダリキシンを投与する工程。
【請求項20】
糖尿病が1型糖尿病(T1D)である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
糖尿病が2型糖尿病(T2D)である、請求項19記載の方法。
【請求項22】
サンプルが尿サンプルである、請求項19~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、請求項19~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
対象が正常な尿タンパクを有する、請求項19~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
対象が増加した尿タンパクを有する、請求項19~23のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
対象が、CXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有する、請求項19~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
対象からの尿のサンプル中のタンパク質レベルを測定する工程をさらに含む、請求項19~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
タンパク質レベルの分析のために対象から尿のサンプルを得る工程をさらに含む、請求項19~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
尿タンパク質レベルを尿タンパク質参照と比較する工程をさらに含む、請求項19~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
尿タンパク質参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た尿サンプル中のタンパク質レベルである、請求項19~29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
IL8参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、請求項19~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項19~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
以下の工程を含む、糖尿病と診断された対象において糖尿病性腎症(DN)の発症または糖尿病性腎症(DN)の進行を予防する方法:
(a)該対象から得た尿サンプル中のタンパク質レベルを測定する工程;
(b)測定した尿タンパク質レベルを尿タンパク質参照と比較する工程;ならびに
(c)該測定した尿タンパク質レベルが該尿タンパク質参照を超えているときに、該対象にレパリキシンおよび/またはラダリキシンを投与する工程。
【請求項34】
糖尿病が1型糖尿病(T1D)である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
糖尿病が2型糖尿病(T2D)である、請求項33記載の方法。
【請求項36】
尿タンパク質参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た尿サンプル中のタンパク質レベルである、請求項33~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程をさらに含む、請求項33~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
サンプルが尿サンプルである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、請求項37記載の方法。
【請求項40】
測定したIL8レベルをIL8参照と比較する工程をさらに含む、請求項33~39のいずれか一項記載の方法。
【請求項41】
IL8参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、請求項40記載の方法。
【請求項42】
対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項33~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
以下の工程を含む、糖尿病と診断された対象において糖尿病性腎症(DN)の発症または糖尿病性腎症(DN)の進行を予防する方法:
(a)該対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型(SNPs)s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程;
(b)該対象が該SNPsのうちの少なくとも一つを有するときに、該対象にレパリキシンおよび/またはラダリキシンを投与する工程。
【請求項44】
糖尿病が1型糖尿病(T1D)である、請求項43記載の方法。
【請求項45】
糖尿病が2型糖尿病(T2D)である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
対象が正常な尿タンパクを有する、請求項43~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
対象が増加した尿タンパクを有する、請求項43~45のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
対象からの尿のサンプル中のタンパク質レベルを測定する工程をさらに含む、請求項43~47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
尿タンパク質レベルの分析のために対象から尿のサンプルを得る工程をさらに含む、請求項43~48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
測定した尿タンパク質レベルを尿タンパク質参照と比較する工程をさらに含む、請求項49記載の方法。
【請求項51】
尿タンパク質参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た尿サンプル中のタンパク質レベルである、請求項50記載の方法。
【請求項52】
対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程をさらに含む、請求項43~51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
サンプルが尿サンプルである、請求項52記載の方法。
【請求項54】
サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、請求項52記載の方法。
【請求項55】
測定したIL8レベルをIL8参照と比較する工程をさらに含む、請求項52~54のいずれか一項記載の方法。
【請求項56】
IL8参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、請求項55記載の方法。
【請求項57】
以下の工程を含む、処置を必要とする対象における糖尿病性腎症(DN)の処置の方法:
レパリキシンおよび/またはラダリキシンを該対象に投与する工程。
【請求項58】
対象が1型糖尿病(T1D)を有する、請求項57記載の方法。
【請求項59】
対象が2型糖尿病(T2D)を有する、請求項57記載の方法。
【請求項60】
対象が上昇したIL8レベルを有する、請求項57~59のいずれか一項記載の方法。
【請求項61】
対象が正常な尿タンパクを有する、請求項57~60のいずれか一項記載の方法。
【請求項62】
対象が増加した尿タンパクを有する、請求項57~61のいずれか一項記載の方法。
【請求項63】
対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程をさらに含む、請求項57~62のいずれか一項記載の方法。
【請求項64】
サンプルが尿サンプルである、請求項63記載の方法。
【請求項65】
サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、請求項63記載の方法。
【請求項66】
測定したIL8レベルをIL8参照と比較する工程をさらに含む、請求項63~65のいずれか一項記載の方法。
【請求項67】
IL8参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、請求項66記載の方法。
【請求項68】
対象が、CXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有する、請求項57~67のいずれか一項記載の方法。
【請求項69】
対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程をさらに含む、請求項57~68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
対象が、60 ml/min/1.73m2を超える糸球体濾過量(GFR)の値を有する、請求項1~69のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
対象が、90 ml/min/1.73m2を超える糸球体濾過量の値を有する、請求項70記載の方法。
【請求項72】
対象が、2.41 pg/mlより高いIL8の尿中レベルを有する、請求項1~71のいずれか一項記載の方法。
【請求項73】
対象が、一日当たり30 mg~300 mgのアルブミン排泄量測定値を有する、請求項1~71のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
以下の工程を含む、処置の方法:
(a)対象の尿サンプル中のIL8レベルを決定する工程;ならびに
(b)該IL8レベルが参照レベルより少なくとも3倍高いときに、レパリキシンおよび/またはラダリキシンの有効量を該対象に投与する工程。
【請求項75】
対象を糖尿病と診断する工程をさらに含む、請求項74記載の方法。
【請求項76】
サンプルが尿サンプルである、請求項74記載の方法。
【請求項77】
サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、請求項63記載の方法。
【請求項78】
参照レベルが、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、請求項74記載の方法。
【請求項79】
以下の工程を含む、高血糖症を処置する方法:
(a)患者を高血糖症と診断する工程;ならびに
(b)レパリキシンおよび/またはラダリキシンの有効量を該患者に投与する工程。
【請求項80】
それを必要とする患者にレパリキシンおよび/またはラダリキシンの有効量を投与する工程を含む、高血糖症を処置する方法。
【請求項81】
対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるため
の、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる、組成物。
【請求項82】
対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるため
の医薬の製造のための、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物。
【請求項83】
対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるため
の、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物の使用。
【請求項84】
対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるため
の医薬の製造のための、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条第(e)項の下で、2016年10月3日に出願された米国仮出願第62/403,368号に基づく恩典を主張するものであり、当該仮出願の内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
開示の分野
本明細書に開示される態様は、糖尿病性腎症(DN)に関し;具体的には、態様は、糖尿病対象におけるDNを予防および処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
糖尿病性腎症(DN)は腎不全の最も一般的な原因であり、長期にわたり腎透析を受けている患者および末期の腎疾患のおおよそ半分を占めている。糖尿病患者が直面する最も深刻な合併症の一つであり、この患者集団における有病率はおおよそ40%である。ある種のリスク要因が、糖尿病患者が症状を発症する可能性を有意に増加させる。血中グルコースレベルのコントロール不良、糖尿病を有している時間の長さ、過体重および高血圧(130/80 mm Hg超)の存在などがそれらに含まれる。
【0004】
腎機能を評価するための標準的な検査は、腎臓で濾過されてくる流体の流速である糸球体濾過量(GFR)の測定と、尿におけるタンパク尿のスクリーニングである。
【0005】
糸球体は、腎臓の濾過システムを構成し、血漿を尿へと選択的に限外濾過することを可能としている。この障壁は、水や、アルブミンよりも小さな分子量を有するタンパク質を含む小または中サイズの溶質は自由に透過させるが、より大きな分子およびタンパク質が尿中へと通過することは妨げる。糸球体のどのような損傷も、血液から尿への物質の通過を制御する腎臓の能力に影響を与える。
【0006】
糸球体の濾過機構は、三層構造となっている:有窓性内皮、糸球体基底膜(GBM)、および上皮性ポドサイトである。糸球体濾過障壁の機能は、これらの三つの層すべての完全性および機能性に依存している。
【0007】
正常な、健康な腎臓においては、血漿中のアルブミンの0.05%未満が尿中に見出される。この少量のアルブミンは糸球体の段階で濾過されて尿中に出て、次いで近くの尿細管細胞により取り込まれ、分解される。残った断片は、アルブミン断片として尿細管内腔へと再吸収される。
【0008】
数多くの糖尿病に関連した病理生理学的な要素が、糸球体への損傷と、その結果としての濾過システムへの損傷を引き起こし、タンパク質、特にアルブミンの、尿中への尿排出をもたらす。尿中のアルブミンレベルの上昇は、そのため、糖尿病により腎臓が損傷を受けたことの最初の兆候である。尿中に存在するタンパク質は、次いで、腎尿細管の損傷およびネフロンの喪失を引き起こす。
【0009】
DNは、腎臓を通ってどれだけのアルブミンが失われるかによって、二つの主な段階に分けられる:微量アルブミン尿症と、顕性アルブミン尿症とである。微量アルブミン尿症は、アルブミンの尿中への流出量、一日当たり30~300 mgにより特徴づけられる。初期腎症と呼ばれることもある。顕性アルブミン尿症は、一日当たり300 mgより大きいアルブミン流出量により特徴づけられる。
【0010】
微量アルブミン尿症は、通常、DNを発症したことの最初の兆候である。しかし、微量アルブミン尿症は必ずしも顕性アルブミン尿症への進行および腎機能の喪失に関連付けられるわけではない。大多数の場合、微量アルブミン尿症は正常アルブミン尿(normoalbuminuria)に戻り得るが、おおよそ同じレベルで持続することも、顕性アルブミン尿症に進行することもあり得る。これとは逆に、一度顕性アルブミン尿症を発症すると、状態は不可逆的で、糸球体濾過量(GFR)の低下を経て末期の腎不全をきたす。患者が一度疾患のこの段階に至ると、糸球体の構造に対して不可逆的な損傷が生じる。
【0011】
糸球体濾過障壁の破壊は、糸球体における数多くの組織病理学的な変化と関連する。糖尿病性腎症による構造的異常は、1型および2型の患者において類似している。DNにおける最も初期の形態的な変化は、メサンギウム細胞の数の増加およびメサンギウム基質合成の増加とその分解の減少による、メサンギウム拡大である。ポドサイトおよび内皮細胞は、メサンギウム細胞を刺激してメサンギウム基質の堆積を増やすように応答させることにより、この過程に役割を果たしているようだ。疾患が進行するにつれ、メサンギウム基質およびメサンギウム細胞が蓄積し続け、糸球体基底膜の肥厚と、最終的には糸球体硬化症をきたす数多くの硬化性の結節の発達(結節化)とをもたらす。これらの構造的な病変が機能障害をもたらす時には、病変はかなり進行しており現在の処置では末期腎疾患(ESRD)に向かう進行を遅らせることはできても阻止することはできない(Mauer et al, J Clin Invest 1984, 74: 1143(非特許文献1); Lewis et al, N Engl J Med 1993, 329: 1456(非特許文献2))。
【0012】
したがって、糸球体濾過システムの不可逆的な損傷が生じてしまって(顕性アルブミン尿症および/またはGFRの減少などの)腎疾患の明白な兆候または症状が現れる前に糸球体の構造および機能の破壊の初期の原因に対して介入することのできる治療戦略を明らかにすることが、重要である。
【0013】
糖尿病性腎症に対する現在の処置は、主に、心血管系疾患、血中グルコースレベルのコントロール不良、および高血圧などの、糖尿病患者が病態を呈するようになる可能性を有意に高めることが知られている要因を減らすことによって、疾患が腎不全へと進行することを予防または遅延させることを目的としている。しかし、過去数年における処置の全体的な改善にもかかわらず、最終的に糖尿病性腎症を発症する患者の数が増加していることから裏付けられるとおり、これらは限定的な効果しか示していない。近年の研究は、最終糖化産物(AGE)の阻害剤、プロテインキナーゼC、ビタミンD、またはエンドセリン1など、腎疾患の進行を促すと考えられている経路を標的とした可能性のある新しい治療法の開発に焦点を当てている。しかし、これらの代替となる可能性のある治療法は、まだうまく臨床での実用に移ってはいない。
【0014】
インターロイキン8 (IL8; CXCL8)は、多形核好中球(PMN)の動員の主要なメディエーターと考えられており、乾癬、リウマチ性関節炎、慢性閉塞性肺疾患、および移植器官における虚血/再灌流傷害を含む、いくつかの病態に関与している(Griffin et al, Arch Dermatol 1988, 124: 216(非特許文献3); Fincham et al, J Immunol 1988, 140: 4294(非特許文献4); Takematsu et al, Arch Dermatol 1993, 129: 74(非特許文献5); Liu et al, 1997, 100: 1256(非特許文献6); Jeffery, Thorax 1998, 53: 129(非特許文献7); Pesci et al, Eur Respir J. 1998, 12: 380(非特許文献8); Lafer et al, Br J Pharmacol. 1991, 103: 1153(非特許文献9); Romson et al, Circulation 1993, 67: 1016(非特許文献10); Welbourn et al, Br J Surg. 1991, 78: 651(非特許文献11); Sekido et al, Nature 1993, 365, 654(非特許文献12))。IL8の生物学的活性は、ヒトPMNsの表面に発現している、7TM-GPCRファミリーに属する二つの受容体である、CXCR1およびCXCR2との相互作用により媒介される。
【0015】
数多くの研究が、微量アルブミン尿症患者では尿のIL8レベルが増加していることを証明しており、少なくともIP-10、IL-6、MIP-1δ、またはMCP1のような別のマーカーとの併用での、進行性の腎機能低下を被り得る微量アルブミン尿症患者の集団を同定するための予後的な方法におけるIL8の潜在的用途を示唆している(Tashiro et al, J Clin Lab Anal 16: 1-4, 2002(非特許文献13))。
【0016】
レパリキシン(Reparixin)およびラダリキシン(Ladarixin)は、IL8 (CXCL8)の同起源の受容体であるCXCR1およびCXCR2に対する、非競合性のアロステリックな阻害剤で、リガンドと受容体との間の結合に影響を与えることなく、白血球動員やその他の炎症反応を含むIL8シグナル伝達に関連した広範な活性を阻止することができる(Bertini, R., et al. Proc Nat Acad Sci USA 2004, 101 : 11791(非特許文献14))。
【0017】
レパリキシンは、(以前はレペルタキシン(Repertaxin)またはDF 1681Yとして知られていた)R(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミドのINN名であり、国際出願WO0024710(特許文献1)に最初に開示された。レパリキシンとその糖尿病予防における使用に関するさらなる記述が、米国特許出願公開第2015/0011639号(特許文献2)に見られる。レパリキシンの、膵島細胞移植を受けた個体における移植片拒絶反応の減少または阻害における使用が、米国特許出願公開第2012/0202884号(特許文献3)に記載されている。しかし、レパリキシンの糖尿病性腎症に対する予防的および治療的効果は、これまでに示唆されたことも調査されたこともない。レパリキシンのがんの処置のための使用が、WO2010/056753(特許文献4)に記載されている。これらの特許のそれぞれの内容は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0018】
ラダリキシンは、(以前はメラキシン(Meraxin)またはDF2156Aとして知られていた)R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]プロピオニル-メタンスルホンアミド ナトリウム塩のINN名である。ラダリキシンによるCXCR1およびCXCR2の阻害が、マウスにおいて1型糖尿病を阻止し回復に向かわせることができることが示されている(Citro A. et al., Diabetes 2015, 64: 1329(非特許文献15))。
【0019】
(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(DF2755Yとしても知られる)とそのナトリウム塩(DF2755Aとしても知られる)は、CXCR1およびCXCR2がトリガーとなったPMN活性に対する強力かつ選択的な二重阻害剤であり、WO2010/031835(特許文献5)に最初に開示された。WO2010/031835(特許文献5)は、その一過性脳虚血、水疱性類天疱瘡、リウマチ性関節炎、特発性線維症、糸球体腎炎、および虚血/再灌流により引き起こされる損傷などの、IL8依存性病態の処置における使用も開示している。
【0020】
本願発明者らは、糖尿病状態下でのタンパク尿の予防、ならびに、糖尿病性腎症(DN)の発症および進行からの腎臓の保護における、IL8阻害剤の治療効果をここで実証した。本願発明者らはさらに、IL8が、腎疾患の発症の原因となる初期の組織病理学的な変化に関与していることを実証した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】WO0024710
【特許文献2】米国特許出願公開第2015/0011639号
【特許文献3】米国特許出願公開第2012/0202884号
【特許文献4】WO2010/056753
【特許文献5】WO2010/031835
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Mauer et al, J Clin Invest 1984, 74: 1143
【非特許文献2】Lewis et al, N Engl J Med 1993, 329: 1456
【非特許文献3】Griffin et al, Arch Dermatol 1988, 124: 216
【非特許文献4】Fincham et al, J Immunol 1988, 140: 4294
【非特許文献5】Takematsu et al, Arch Dermatol 1993, 129: 74
【非特許文献6】Liu et al, 1997, 100: 1256
【非特許文献7】Jeffery, Thorax 1998, 53: 129
【非特許文献8】Pesci et al, Eur Respir J. 1998, 12: 380
【非特許文献9】Lafer et al, Br J Pharmacol. 1991, 103: 1153
【非特許文献10】Romson et al, Circulation 1993, 67: 1016
【非特許文献11】Welbourn et al, Br J Surg. 1991, 78: 651
【非特許文献12】Sekido et al, Nature 1993, 365, 654
【非特許文献13】Tashiro et al, J Clin Lab Anal 16: 1-4, 2002
【非特許文献14】Bertini, R., et al. Proc Nat Acad Sci USA 2004, 101 : 11791
【非特許文献15】Citro A. et al., Diabetes 2015, 64: 1329
【発明の概要】
【0023】
概要
具体的には、本開示の態様は、糖尿病条件下でのメサンギウム拡大およびポドサイト傷害の予防および/または復帰、ならびに糖尿病腎症(DN)のさらなる発達および進行に対抗する保護におけるレパリキシンの治療効果を、実験的に実証したことに基づくものである。
【0024】
したがって、本開示の第一の目的は、糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む方法を提供することである。
【0025】
本開示の第二の目的は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物の使用を提供することである。
【0026】
本開示の第三の目的は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための医薬の製造のための、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物の使用を提供することである。
【0027】
本開示の第四の目的は、対象における糖尿病性腎症の処置における、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行の予防における、またはそのリスクの低減における、またはその遅延における使用のための、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらにより好ましくは、R(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を提供することである。
【0028】
本開示の第五の目的は、対象からの尿サンプル中のIL8レベルを決定する工程、および、IL8レベルが参照レベルより少なくとも3倍高いときに、レパリキシンおよび/またはラダリキシンの有効量を該対象に投与する工程を含む、処置方法を提供することである。
【0029】
本開示の第六の目的は、対象を高血糖症と診断する工程、および、レパリキシンおよび/またはラダリキシンの有効量を該対象に投与する工程を含む、高血糖症の処置方法を提供することである。
【0030】
本開示の第七の目的は、それを必要とする患者に、レパリキシンおよび/またはラダリキシンの有効量を投与する工程を含む、高血糖症の処置方法を提供することである。
【0031】
本開示の第八の目的は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物を提供することである。一態様において、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるために投与され、該対象は2.4 pg/mlより高いIL8レベルを有する。一態様において、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるために投与され、該対象は参照レベルより3倍高いIL8レベルを有する。
【0032】
本開示の第九の目的は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための医薬の製造のための、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物を提供することである。
【0033】
本開示の第十の目的は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物の使用を提供することである。
【0034】
本開示の第十一の目的は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための医薬の製造のための、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物の使用を提供することである。
【0035】
したがって、上述した発明の目的のそれぞれの一態様において、前記方法または使用における対象は、糖尿病と診断されている。
【0036】
したがって、上述した発明の目的のそれぞれの一態様において、前記方法または使用における対象は、1型糖尿病と診断されている。
【0037】
したがって、上述した発明の目的のそれぞれの一態様において、前記方法または使用における対象は、2型糖尿病と診断されている。
【0038】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせによれば、前記方法または使用における対象は、微量アルブミン尿症を有する。
【0039】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせによれば、前記方法または使用における対象は、IL8の参照標準より高い尿のIL8レベルを有する。好ましくは、前記参照標準は、いかなる腎症も有していない健康な個体の尿のIL8レベルである。
【0040】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせによれば、前記方法または使用における対象は、2.41 pg/mlより高い尿のIL8レベルを有する。
【0041】
上述した発明の目的のそれぞれのさらなる態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせによれば、前記方法または使用における対象は、60 ml/min/1.73m2を超える、好ましくは90 ml/min/1.73m2を超える、GFR(糸球体濾過量)値を有する。
【0042】
上述した発明の目的のそれぞれのさらなる態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせによれば、対象は、CXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型のうちの少なくとも一つを有する: s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514。
【0043】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための方法であって、(a)対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程;(b)測定したIL8レベルをIL8参照と比較する工程;ならびに(c)測定したIL8レベルがIL8参照を超えているときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含み、ここで、該IL8参照は、いかなる腎症も有しておらずかつ炎症性疾患を有していない統計学的に有意な数の非糖尿病個体の平均尿中IL8レベルである、方法を提供する。
【0044】
発明の第一の目的の別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための方法であって、(a)対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程;ならびに(b)測定したIL8レベルが2.41 pg/mlを超えているときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0045】
発明の第一の目的の別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための方法であって、(a)対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型(SNPs) s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程;ならびに(b)該対象が該SNPsのうちの少なくとも一つを有するときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0046】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、方法は、対象からの尿のサンプル中のタンパク質レベルを測定する工程をさらに含む。
【0047】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、方法は、微量アルブミン尿症を有する対象を選択する工程をさらに含む。
【0048】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、方法は、尿タンパク質レベルの分析のために対象から尿のサンプルを得る工程をさらに含む。
【0049】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、方法は、測定したタンパク質レベルのレベルを尿タンパク質参照と比較する工程をさらに含む。
【0050】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、第一の参照は、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た尿サンプル中のタンパク質レベルである。
【0051】
上述した方法または使用の任意のものの一態様において、対象は正常な尿タンパクまたは増加した尿タンパクを有する。
【0052】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、方法は、対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程をさらに含む。
【0053】
上述した方法または使用の任意のものの一態様において、サンプルは尿、血液、血清、または血漿サンプルである。
【0054】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、方法は、測定したIL8レベルをIL8参照レベルと比較する工程をさらに含む。
【0055】
上述した方法または使用の任意のものの一態様において、IL8参照レベルはいかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである。
【0056】
上述した方法または使用の任意のものの一態様において、IL8参照レベルはいかなる腎症も有していないまたは炎症状態を何も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである。
【0057】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、方法は、測定した尿中のIL8レベルが2.41 pg/mlより高い対象を選択する工程をさらに含む。
【0058】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、方法は、対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程をさらに含む: s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、実施例2に記載される対照マウス(対照)およびレパリキシンで処置したマウス(REPA)において24時間でのμgとして測定した尿アルブミン排泄レベルを示すデータを提示する。
図2図2Aは、対照(対照)、IL8処理(IL8)、ならびにIL8およびレパリキシン処理(IL. レパリキシン)ポドサイト細胞においてファロイジン染色により測定したアクチン発現の定量化を示す実験データを提示する。図2Bは、対照(対照)、IL8処理(IL8)、ならびにIL8およびレパリキシン処理(IL8 レパリキシン)ポドサイト細胞において測定した、GAPDH mRNA発現で標準化したシナプトポディン(synaptopodin) mRNA発現を示す実験データを提示する。
図3図3Aは、メサンギウム拡大を伴う患者(サンギウム拡大)、結節化を伴う患者(結節化)、または糸球体硬化症を伴う患者(硬化症)におけるIL8の発現(糸球体面積に対するパーセンテージとして表した)を定量化した実験データを提示する。図3Bは、対照個体、ならびに、2型糖尿病およびDNである患者の糸球体に対する定量PCRによって測定したIL8発現レベル(対照に対する増加倍率として表現した)を示す実験データを提示する。
図4図4は、T2D正常アルブミン尿患者(正常)、T2D微量アルブミン尿患者(微量)、T2D顕性アルブミン尿患者(顕性)、または対照患者(対照)において測定した平均尿中IL8レベルを示す実験データを提示する。
図5図5Aは、IL8発現が第1(Q1)、第2(Q2)、第3(Q3)、および第4(Q4)四分位のいずれかに対応する患者における平均ACR値を示す実験データを提示する。図5Bは、中央値の下側(Q1~Q2)または上側(Q3~Q4)のIL8発現を有する患者におけるACR値を示す実験データを提示する。
図6図6は、レパリキシンが細胞骨格リモデリングを防ぐように機能する機序を示すモデルを提示する。
図7A図7Aは、IL8発現が傷害フェーズ早期においてピークを有し、かつ腎実質の細胞充実度の喪失および線維症の発症に引き続いて次第に減少することを示す、実験データを提示する。
図7B図7Bは、IL8発現が傷害フェーズ早期においてピークを有し、かつ腎実質の細胞充実度の喪失および線維症の発症に引き続いて次第に減少することを示す、実験データを提示する。
図7C図7Cは、糖尿病サンプルにおける、対照と比較したIL8 mRNA発現の増加倍率を示す実験データを提示する。mRNAレベルは、RT-PCRによって分析した。
図7D図7Dは、糖尿病サンプルにおける、対照と比較したCXCR-1 mRNA発現の増加倍率を示す実験データを提示する。mRNAレベルは、RT-PCRによって分析した。
図7E図7Eは、糖尿病サンプルにおける、対照と比較したCXCR-2 mRNA発現の増加倍率を示す実験データを提示する。mRNAレベルは、RT-PCRによって分析した。
図8A図8Aは、微量アルブミン尿の患者が、正常アルブミン尿の患者と比べ、より高い尿中IL8レベルを呈することを示す実験データを提示する。
図8B図8Bは、389名の患者全員とその正常アルブミン尿および微量アルブミン尿のサブセットとにおいて、尿中のIL8の試験結果陽性を呈した患者は有意に高いACR値も呈したことを示す、実験データを提示する。
図8C図8Cは、389名の患者全員とその正常アルブミン尿および微量アルブミン尿のサブセットとにおいて、微量アルブミン尿群および正常アルブミン尿群内で尿中IL8の試験結果陽性を有している患者は有意により急なGFR勾配もまた有したことを示す、実験データを提示する。
図8D図8Dは、389名の患者全員とその正常アルブミン尿および微量アルブミン尿のサブセットとにおいて、正常および微量アルブミン尿コホートにおけるIL8の中央分布よりも上側であった患者は中央値より下側であった患者よりも有意に高いACRを示したことを示す、実験データを提示する。
図8E図8Eは、389名の患者全員とその正常アルブミン尿および微量アルブミン尿のサブセットとのイベントリスクを示す実験データを提示する。
図8F図8Fは、正常アルブミン尿および微量アルブミン尿サブセットにおけるIL8発現を示す表を提示する。
図9図9Aは、正常血糖および高血糖において14日間でIL8を発現する細胞をプロットした実験データを提示する。図9Bは、正常血糖および高血糖において14日間でCXCR-1を発現する細胞をプロットした実験データを提示する。図9Cは、正常血糖および高血糖において14日間でCXCR-2を発現する細胞をプロットした実験データを提示する。
図10図10Aは、レパリキシン処置を伴うまたは伴わない、示された状態におけるポドサイトの平均細胞面積を示す実験データを提示する。図10Bは、レパリキシン処置を伴うまたは伴わない、示された状態におけるポドサイトの平均細胞性蛍光強度を示す実験データを提示する。
図11図11Aは、対照またはREPA処置DN db/db糖尿病マウスにおける、示された時点でのインビボでの血糖レベルを示す実験データを提示する。図11Bは、対照またはREPA処置DN db/db糖尿病マウスにおける、示された時点でのインビボでのUAEレベルを示す実験データを提示する。
【発明を実施するための形態】
【0060】
詳細な説明
特に説明がない限り、本明細書で使用するすべての技術的、科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。本発明は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、および試薬等に限定されず、したがって改変され得ることが、理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、具体的な態様を記述する目的のためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるべきものである。
【0061】
分子生物学における一般的な用語の定義は、The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、第19版、Merck Sharp & Dohme Corp.出版、2011年(ISBN 978-0-911910-19-3)または2015年のデジタルオンライン版(merckmanuals.com); Robert S. Porterら編集のThe Encyclopedia of Molecular Cell Biology and Molecular Medicine、Blackwell Science Ltd.出版、1999-2012年(ISBN 9783527600908);および、Robert A. Meyers編集のMolecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、VCH Publishers Inc.出版、1995年(ISBN 1-56081-569-8); Werner LuttmannのImmunology、Elsevier出版、2006年; Janeway's Immunobiology、Kenneth Murphy、Allan Mowat、Casey Weaver編集、Taylor & Francis Limited、2014年(ISBN 0815345305, 9780815345305); Lewin's Genes XI、Jones & Bartlett Publishers出版、2014年(ISBN-1449659055); Michael Richard GreenとJoseph Sambrookの、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第4版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、米国、2012年(ISBN 1936113414); DavisらのBasic Methods in Molecular Biology、Elsevier Science Publishing Inc.、ニューヨーク、米国、2012年(ISBN 044460149X); Laboratory Methods in Enzymology: DNA、Jon Lorsch編集、Elsevier、2013年(ISBN 0124199542); Current Protocols in Molecular Biology (CPMB)、Frederick M. Ausubel編集、John Wiley and Sons Inc.、2014年(ISBN 047150338X, 9780471503385)、Current Protocols in Protein Science (CPPS)、John E. Coligan編集、John Wiley and Sons Inc.、2005年;および、Current Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coligan、ADA M Kruisbeek、David H Margulies、Ethan M Shevach、Warren Strobe編集、John Wiley and Sons、2003年(ISBN 0471142735, 9780471142737)に見出すことができ、これらの内容はすべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。さらに、文脈によって特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含む。
【0062】
特に述べない限り、本願発明は、例えば、Michael R. GreenとJoseph SambrookのMolecular Cloning: A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、コールドスプリングハーバー、ニューヨーク州、米国、2012年; DavisらのBasic Methods in Molecular Biology、Elsevier Science Publishing Inc.、ニューヨーク、米国、1986年; Current Protocols in Molecular Biology (CPMB) (Fred M. Ausubelら編集、John Wiley and Sons Inc.)、Current Protocols in Immunology (CPI) (John E. Coliganら編集、John Wiley and Sons Inc.)、Current Protocols in Cell Biology (CPCB) (Juan S. Bonifacinoら編集、John Wiley and Sons Inc.)、R. Ian FreshneyのCulture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique、出版社: Wiley-Liss、第5版、2005年、Animal Cell Culture Methods (Methods in Cell Biology、第57巻、Jennie P. MatherとDavid Barnes編集、Academic Press、第1版、1998年)、Methods in Molecular biology、第180巻、Alan R. Clark編集によるTransgenesis Techniques、第2版、2002年、Humana Press、および、Methods in Molecular Biology、第203巻、2003年、Transgenic Mouse、Marten H. HofkerとJan van Deursen編集、において当業者に知られた標準的な手順を用いて実施されたものであり、これらはすべてその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0063】
本発明は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコル、および試薬等に限定されず、したがって改変され得ることが、理解されるべきである。本明細書で使用される専門用語は、具体的な態様を記述する目的のためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義されるべきものである。
【0064】
操作例における以外、あるいはその他特に示さない限りは、本明細書で使用する成分の量や反応条件を表すすべての数は、すべての例において、「約」との用語で修飾されているものとして理解されるべきである。「約」との用語は、百分率に関連して用いられるとき、±1%を意味する。
【0065】
明示したすべての特許および刊行物は、例えば、本発明と関連して使用され得るそれら刊行物において記述された方法論を記述および開示することを目的として、参照により本明細書に明示的に組み入れられる。それらの刊行物は、本願の出願日前にそれらが開示を行っていたことのみを理由に提供されるものである。したがって、何事も、発明者らが先発明または他の何らかの理由によってそういった開示の前の日付を得る権利を有さないことを自認したものと解釈されるべきではない。それらの文献の日付に関するすべての記述、それらの文献の内容に関するすべての描写は、出願人が知り得た情報に基づくものであって、それらの文献の日付や内容の正確さに関する自認を何ら構成するものではない。
【0066】
本明細書で使用するとき、「対象」、「個体」、「患者」、および「個人」との用語は、相互交換可能に、イヌ、ネコ、ウシ、およびウマ、および好ましくはヒトのような哺乳動物を意味するように用いられる。
【0067】
一態様において、「薬学的に許容可能な」との用語は、連邦または州政府の規制当局に認可されているか、米国薬局方(U.S. Pharmacopeia)または他の一般的に認知されている動物、より具体的にはヒトにおける使用のための薬局方に掲載されていることを意味する。具体的には、健全な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題または合併症を起こさずヒトまたは動物の組織と接触させる用途において適切であり、妥当な利益対危険比に見合った、化合物、材料、組成物、および/または剤形を言う。
【0068】
「担体」との用語は、治療薬とともに投与される、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを言う。そのような薬学的担体は、水および油のような滅菌済の液体であり得、油は、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油などの、石油、動物、植物、または合成物起源のものを含む。薬学的組成物が静脈内に投与される場合、水は好ましい担体である。生理食塩水溶液およびデキストロース水溶液およびグリセリン水溶液も、特に注射用溶液のために、液体担体として使用し得る。好ましい薬学的賦形剤は、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどを含む。組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤あるいは乳化剤、またはpH緩衝剤も含み得る。これらの組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、錠剤、丸薬、カプセル、粉薬、徐放性製剤などの形態をとり得る。組成物は、トリグリセリドのような従来の結合剤および担体とともに、坐薬として製剤化されてもよい。経口製剤は、薬学的グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等の、標準的な担体を含み得る。薬学的な担体の好ましい例は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Gennaro編 (Mack Publishing Co.、1990年)に記載されている。製剤は投与の形態に好適なものとしなければならない。
【0069】
本明細書で使用するとき、「~を含んでいる」または「~を含む」との用語は、発明にとって必須である方法とその各々の構成要素に言及し、さらに、必須にせよそうでないにせよ未特定の要素の包含を許容するときに用いられる。「~を含む」の使用は、限定というよりは包含を示す。
【0070】
本明細書で使用するとき、「~から本質的になる」との用語は、ある態様に必要とされる要素について言及するときに用いられる。この用語は、発明のその態様の、基本的な、および新規のまたは機能的な特徴に実質的に影響を与えることのない要素の存在を許容する。
【0071】
「~からなる」との用語は、本明細書に記載される組成物、方法、およびそれらの各構成要素に言及するときに用いられ、その態様についての記載において言及されていないいかなる要素も排除する。
【0072】
「糖尿病性腎臓病(diabetic kidney disease)」、「DKD」、「糖尿病性腎症」、および「DN」との用語は、本明細書で相互交換可能に用いられ、特定の栄養物が血中へと戻るように再吸収される代わりに尿中に漏れる(例えばタンパク質が尿中に漏れる)結果をもたらす、腎臓の構造的な完全性および機能の任意の喪失を言う。
【0073】
「疾患」または「状態」との用語は、本明細書で相互交換可能に用いられ、機能の実行を妨げるあるいは妨害し、および/または、煩っている個人または該個人と接触した人に対し、不快、機能不全、苦痛のような症状、または死をももたらす、肉体またはいくつかの器官の状態の任意の変化を言う。疾患または障害は、不調(distemper)、病(ailing)、病(ailment)、病弊(malady)、障害(disorder)、病気(sickness)、病気(illness)、病気(complaint)、病気(affection)にも関連し得る。
【0074】
「それを必要とする」との用語は、治療的または予防的な処置の文脈で使用されるとき、疾患を有すること、疾患と診断されていること、または、たとえば疾患を発症するリスクのある人について、疾患を予防する必要があることを意味する。したがって、それを必要とする対象とは、疾患を処置するまたは予防する必要がある対象であり得る。
【0075】
本明細書で使用するとき、一態様において、「糖尿病性腎症の発症を予防する」との表現は、糖尿病対象または糖尿病状態を有する対象の尿中での30 mgを超えるアルブミンの最初の発生を止める、妨げる、および/または遅くすることを意味する。
【0076】
別の態様において、本明細書で使用するとき、糖尿病対象または糖尿病状態を有する対象におけるDNの発症およびDNの進行の文脈における「予防する」または「予防」との用語は、特定の栄養物が血中へと戻るように再吸収される代わりに尿中に漏れる(例えばタンパク質が尿中に漏れる)結果をもたらす腎臓の構造的な完全性および機能の喪失などの、DNと関連した医学的な状態に関連する悪影響および症状を起こすことの発生を止める、妨げる、および/または遅くすることを言う。
【0077】
本明細書で使用するとき、「糖尿病性腎症の進行を予防する」との表現は、糖尿病対象または糖尿病状態を有する対象の尿中での一日当たり30 mgを超えるアルブミンの継続的な発生/再発を止める、妨げる、および/または遅くすることを意味する。
【0078】
本明細書で使用するとき、一態様において、「処置する」、「処置」、「処置すること」、または「改善」との用語は、DNおよび腎不全の進行または重症度を回復に向かわせる、軽減する、改善する、阻害する、遅くする、または止めることを目的とする治療的処置を言う。一つまたは複数の症状または臨床マーカーが減少した場合に、処置は一般的に「有効」である。例えば、DNにおいては、「有効な処置」とは、尿中に排泄されるタンパク質を正常タンパク質/アルブミン範囲まで減少させ、少なくとも一週間にわたって正常範囲に維持する処置を言う。一態様において、本明細書で記載される処置は、尿タンパクを減少させタンパク質/アルブミンの正常範囲を少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも9週間、少なくとも10週間、少なくとも11週間、少なくとも12週間、少なくとも13週間、少なくとも14週間、少なくとも15週間、少なくとも16週間、少なくとも17週間、少なくとも18週間、またはそれ以上、例えば少なくとも20週間(または5か月)、6か月、またはそれ以上にわたって維持し得る。別の態様において、疾患の進行が減少または停止した場合に、処置は「有効」である。つまり、「処置」は、症状またはマーカー(例えばIL8または米国特許公開第2006/0240437号に開示された他のマーカー)の改善だけでなく、処置がなかった場合に予期され得たものとの比較での、症状の進行または悪化の停止または少なくとも減速を含む。有益なまたは望ましい臨床結果は、一つまたは複数の症状の軽減、疾患の程度の縮減、安定した(悪化しない)疾患の状態、疾患の進行の遅延または減速、疾患の状態の改善または緩和、寛解(部分でも完全でも)、および/または死亡率の低下を含むが、これらに限定されない。例えば、状態が安定化される、または尿中のタンパク質/アルブミンレベルが正常化された場合、処置は有効と考えられる。疾患の「処置」との用語は、(緩和処置を含め)疾患の症状または副作用を和らげることも含む。
【0079】
本明細書で使用するとき、「IL8阻害剤」または「CXCR1および/またはCXCR2阻害剤」における「阻害剤」との用語は、天然で生じる、IL8ケモカインがその受容体に結合することで、またはCXCR1および/またはCXCR2の活性化で惹起されるシグナル伝達現象に対抗する、任意の合成/天然の、有機または有機/無機分子を言う。
【0080】
本明細書で使用するとき、「投与(する)」との用語は、本明細書に開示されるIL8阻害剤を、剤/薬が所望の部位に少なくとも部分的に送達される結果をもたらすような方法または経路で、対象の中へと配置することを言う。本明細書に開示される化合物を含む薬学的組成物は、対象における有効な処置をもたらす任意の適当な経路で投与され得る。「投与(する)」とは、対象への経口(「po」)投与、坐薬としての投与、局所的接触、静脈内(「iv」)、腹腔内(「ip」)、筋肉内(「im」)、病巣内、鼻腔内、もしくは皮下(「sc」)投与、または、遅延放出型装置(例えば、小型浸透圧ポンプ)の埋め込みを意味する。投与は、非経口および経粘膜的な経路(例えば、経口、経鼻、経膣、経腸、経皮)を含む、任意の経路による。非経口投与は、例えば、静脈内、筋肉内、小動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内、および頭蓋内を含む。他の送達形態は、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチ等を含むが、これらに限定されない。
【0081】
「全身投与」および「全身投与される」との用語は、化合物または組成物を、薬学的作用の標的部位を含む体内の部位に循環系を介して化合物または組成物が送達されるように、哺乳動物に投与する方法を言う。全身投与は、経口、鼻腔内、経腸、および非経口(つまり、消化管を介したもの以外の、筋肉内、静脈内、動脈内、経皮、および皮下など)の投与を含むが、これらに限定されない(ただし、全身投与は、本明細書で使用するとき、循環系を介する以外の手段による脳の領域への直接投与(くも膜下腔内注射および頭蓋内投与など)は含まないことを条件とする)。
【0082】
本明細書で使用するとき、一態様において、「増加した尿タンパク」との用語は、尿タンパク質参照レベルと比べて少なくとも10%増加した尿サンプル中のタンパク質レベルを意味する。別の態様において、「増加した尿タンパク」は、一日24時間当たり30 mgを超えるアルブミンを尿中に排泄することを意味する。
【0083】
「増加した」、「増加する」、または「上昇した」との用語は、本明細書ではすべて、通常、統計学的に有意な量の増加を意味するように用いられる。疑義の生じるのを避けるために、「増加した」、「増加する」、または「高まる」との用語は、参照レベルと比べて少なくとも10%の増加、例えば、参照レベルと比べて少なくとも約10%、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは最大100%の増加、もしくは10~100%の間の任意の増加を意味し、または、参照レベルと比べて少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、もしくは2倍~10倍の間もしくはそれ以上の任意の増加を意味する。
【0084】
「減らす」、「減少させる」、「減少」、「低下」、「低下させる」、または「阻害」との用語は、本明細書ではすべて、通常、統計学的に有意な量の減少を意味するように用いられる。例えば、「減らす」、「減少させる」、「減少」、または「阻害」は、参照レベルと比べて少なくとも10%の減少、例えば、参照レベルと比べて少なくとも約20%、または少なくとも約30%、または少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または最大100%の減少(例えば、参照レベルと比べて不存在のレベルまたは検出不能なレベル)、または10~100%の間の任意の減少を意味する。マーカーまたは症状の文脈では、これらの用語は、それらのレベルの統計学的に有意な減少を意味する。減少は、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%あるいはそれ以上であり得、好ましくは所定の疾患を有していない個体の正常範囲内と認められるレベルまでの減少である。
【0085】
「統計学的に有意」または「有意に」との用語は、統計学的な有意性を言い、通常、2標準偏差(two standard deviation: 2SD)またはそれ以上の差を言う。
【0086】
「正常化」との用語は、尿タンパク質/アルブミンレベルにおける、上昇した尿タンパク質/アルブミンレベルから正常範囲内への変化を言う。「正常化させる」とは、異常に高い尿タンパク質/アルブミンレベルにおける低下を促進する活性のみを言うのではなく、長い期間にわたって(例えば、本明細書で記載される一単位用量の薬学的組成物の投与について少なくとも一週間)そのようなレベルを維持する活性も言う。
【0087】
本明細書で使用するとき、「薬学的に許容される」、「生理学的に忍容される」との用語およびこれらの文法上の変種は、組成物、担体、希釈剤、および試薬について言及する場合において、相互交換可能に用いられ、材料が、吐き気、めまい、急性胃蠕動などの望ましくない生理学的な影響を生じることなく、哺乳動物にまたは哺乳動物上に投与されることができることを表す。薬学的に許容される担体は、そのように所望されない限り、ともに混合されている剤に対する免疫応答を高めることを促進しない。活性成分をその中に溶解または分散して含む薬理学的組成物の調製は当技術分野においてよく理解されており、製剤に基づいて限定される必要はない。典型的には、そのような組成物は、注入可能な液体の溶液または懸濁液として調製されるが、使用前に液体に溶解または懸濁させるのに適した固体形態もまた調製され得る。調製物は、乳化されるか、リポソーム組成物として提供されてもよい。活性成分は、薬学的に許容可能で活性成分と適合性があり、かつ本明細書に記載される治療方法において使用するのに適した量の賦形剤と、混合され得る。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどや、それらの組み合わせを含む。加えて、所望するなら、組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などの、活性成分の有効性を促進する少量の補助剤を含み得る。本発明の治療用組成物は、その構成要素の薬学的に許容可能な塩を含み得る。薬学的に許容可能な塩は、例えば塩酸またはリン酸などの無機酸または酢酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と形成される、(ポリペプチドの遊離アミノ基で形成される)酸付加塩を含む。遊離カルボキシル基で形成される塩も、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化第二鉄などの無機塩基およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から得られ得る。生理学的に忍容される担体は、当技術分野でよく知られている。例示的な液体担体は、活性成分と水以外の材料を何も含んでいない滅菌水性溶液、または、生理学的pH値のリン酸ナトリウムなどの緩衝液、生理食塩水、もしくはその両方(リン酸緩衝食塩水など)を含んだ滅菌水性溶液である。またさらに、水性担体は二種類以上の緩衝塩ならびに塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの塩、デキストロース、ポリエチレングリコール、および他の溶質を含み得る。液体組成物は、水に加えて、および水を除外するように、液相を含み得る。そのような追加の液相の例示は、グリセリン、綿実油などの植物油、および水-油乳化物である。本明細書で記載される方法において使用される活性剤の、特定の障害または状態の処置において有効となる量は、その疾患または状態の性質に依存し、標準的な臨床手法によって決定することができる。好ましい薬学的担体は、この技術分野における標準的な参照テキストであるA. OsolのRemington's Pharmaceutical Sciencesに記載されている。例えば、注入による投与に適した非経口の組成物は、重量で1.5%の活性成分を0.9%の塩化ナトリウム溶液中に溶解させることで調製される。
【0088】
一態様において、「薬学的に許容可能な」担体は、インビトロでの細胞培養培地を含まない。
【0089】
「徐放」および「持続放出」との用語は、それらの従来通りの意味で、長時間(例えば、12時間以上)にわたる薬物の緩やかな放出を提供しかつ、必ずしもそうでなくてもよいものの好ましくは、長時間にわたり薬物の実質的に定常状態の血中レベルをもたらす、薬物製剤を言うように用いられる。
【0090】
本明細書で使用するとき、「遅延放出」との用語は、無傷のまま胃を通過して小腸で溶ける薬学的調製物を言う。
【0091】
「調節放出」、「徐放」、「持続放出」、および「時限放出(timed release)」との用語は、薬物の放出が即時でない(つまり、「調節放出」製剤の場合、経口投与は吸収プールへの薬物の即時の放出をもたらさない)任意の薬物含有製剤を相互交換可能に言うことを意図している。これらの用語は、RemingtonのThe Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippencott Williams & Wilkins、2006年に定義される「非即時放出(nonimmediate release)」との用語と、相互交換可能に使用される。
【0092】
本明細書で使用するとき、「治療量以下の用量」との用語は、薬理活性剤の投与用量としてでも、薬理活性剤の対象中での実際のレベルとしてでも、それ自体で所期の薬理効果(鎮痛性、抗痙攣性、抗うつ性、抗炎症性、抗高血圧性、心保護的、または臓器保護的効果)を引き起こすには機能的に不十分であるか、その特定の薬理剤の確立した治療用量(当業者が参考にする参考書にて公にされた、例えば、Physicians’ Desk Reference、第62版、2008年、Thomson Healthcareや、BruntonらのGoodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、第11版、2006年、McGraw-Hill Professionalにおいて公にされた薬理剤の用量)に量的に満たない、薬理活性剤の用量を言う。「治療量以下の用量」は、相対的なものとして(つまり、従来投与されてきた薬理活性剤の量のパーセント量(100%未満)として)定義することができる。例えば、治療量以下の用量の量は、従来投与されてきた薬理活性剤の量の約1%から約75%であり得る。いくつかの態様において、治療量以下の用量は、従来投与されてきた薬理活性剤の量の約75%、50%、30%、25%、20%、10%またはそれ未満であり得る。
【0093】
本明細書で使用するとき、IL8阻害剤の文脈では、「治療有効量」との用語は、糖尿病性腎症を示している糖尿病個体または糖尿病状態を有している個体に投与したときに、治療効果のために十分であり、処置している疾患、状態、または障害の一つまたは複数の症状の発現を減らすのに十分である、IL8阻害剤の量または用量(例えば、DNを示している糖尿病個体の尿中のタンパク質レベルを減少させるのに十分な量)を意味する。
【0094】
本明細書でIL8阻害剤の投与の文脈で使用するとき、「予防有効量」との用語は、糖尿病性腎症を有さない糖尿病個体または糖尿病状態を有している個体に投与したときに、DNの症状の発症、つまり防ぐことが求められている生物学的または医学的イベントが起きることを防ぐかその危険を減少させるのに十分な薬物の量を言うIL8阻害剤の量または用量(例えば、糖尿病個体の尿中のタンパク質レベルの上昇を防ぐのに十分な量)を意味する。
【0095】
本明細書で使用するとき、「腎症」との用語は、腎臓に対して損傷または腎臓の疾患がある、腎臓病(腎疾患としても知られる)を意味する。
【0096】
本明細書で使用するとき、「糖尿病状態」との用語は、グルコース産生および/または利用異常によって特徴づけられる状態を言い、糖尿病(例えば、1型糖尿病、2型糖尿病、および妊娠糖尿病)、前糖尿病、メタボリック症候群、高血糖症、耐糖能異常、および空腹時血糖異常を含む。
【0097】
本明細書で使用するとき、「糖尿病」との用語は、体内で適切な血糖値を維持し損ねる結果を招く、グルコースの産生および利用における代謝障害によって一般的に特徴づけられる、疾患または状態を言う。対象は、125 mg/dlを超える空腹時血中グルコースレベル、200 mg/dlを超える糖負荷試験2時間値、または6.5%と等しいかそれを超えるHbA1cレベルを有する場合に、糖尿病を有するとして同定される。
【0098】
本明細書で使用するとき、「前糖尿病」との用語は、耐糖能異常により一般的に特徴づけられる疾患または状態であって、しばしば対象における糖尿病の発症に先行する疾患または状態を言う。
【0099】
対象は、100 mg/dlを超えるが125 mg/dl以下の空腹時血中グルコースレベル、140 mg/dlを超えるが200 mg/dl未満の糖負荷試験2時間値、または6.0%と等しいかそれを超えるが6.5%未満のHbA1cレベルを有する場合に、前糖尿病を有するとして同定される。
【0100】
本明細書で使用するとき、「高血糖症」との用語は、グルコースの産生および利用における代謝障害に起因する、体内における上昇した血中グルコースレベルを言う。対象は、定常的に126 mg/dlを超える空腹時血中グルコースレベルを有する場合に、高血糖症であるとして同定される。
【0101】
本明細書で使用するとき、「過体重」との用語は、25 kg/m2以上であるが30 kg/m2未満の肥満度指数を有する個体を言う。
【0102】
本明細書で使用するとき、「肥満度指数 (body mass index)」または「BMI」との用語は、個体の体重がその身長に対して適切であるかどうかを推定する、体重対身長比測定値を言う。本明細書で使用するとき、個体の肥満度指数は、以下のようにして計算される:BMI=(ポンド×700)/(インチでの身長)2またはBMI=(キログラム)/(メートルでの身長)2
【0103】
本明細書で使用するとき、「ベースライン体重」との用語は、個体が処置の開始時に示した体重を言う。
【0104】
本明細書で使用するとき、「肥満した」または「肥満」との用語は、過剰な脂肪組織のために30 kg/m2以上の肥満度指数(BMI)を有する個体を言う。肥満は、体脂肪含量に基づいて定義することもできる:男性の場合25%を超える体脂肪含量または女性の場合30%を超える体脂肪含量。「病的肥満」の個体は、35 kg/m2以上の肥満度指数を有する。
【0105】
本開示の態様は、糖尿病性腎症(DN)の発症および発達と進行の予防におけるレパリキシンおよび/またはラダリキシンの治療効果を実験的に実証したことに基づくものである。
【0106】
詳細には、本願発明者らは、糖尿病の動物モデルおよび糖尿病患者の両方において、局在性、発現時期の両面で、腎臓における特定の再現性のあるIL8発現パターンを見出した。実際、実験セクションから明らかになるとおり、IL8は内皮細胞およびポドサイトにおいて特異的に、かつメサンギウム拡大の間にのみ有意なレベルで発現することが見出された。逆に、続いて糸球体の傷害が結節化および糸球体硬化症へと進行する間、IL8発現レベルの定常的な減少が観察された。糖尿病の動物モデルにおいて、本願発明者らは、レパリキシンを用いたKC/CXCR2軸遮断が、アルブミン排泄の尿中の増加と、メサンギウム拡大とを予防することを示した。さらに、IL8が、(レパリキシンにより例示されるCXCR1/2阻害剤の投与によって阻害され得る)ポドサイトへの直接的な傷害を誘導することが示された。実験セクションは、IL8が、メサンギウム拡大およびポドサイト損傷を刺激して、糖尿病性腎症の発症と発達において、その病理のごく初期の段階で、重要な役割を果たすことを示している。この段階が過ぎると、IL8の発現と病原性の役割とは、次第に減少する。発明者らは、抗IL8治療に最もよく反応する患者、好ましくは微量アルブミン尿を有する患者、に対応した尿のIL8レベルもまた、同定した。
【0107】
したがって、本発明の第一の目的は、糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための方法であって、必要とする対象に投与する工程を含む方法である。
【0108】
本開示の第二の目的は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物の使用を提供することである。
【0109】
本開示の第三の目的は、対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための医薬の製造のための、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物の使用を提供することである。
【0110】
本開示の第四の目的は、対象における糖尿病性腎症の処置における、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行の予防における、またはそのリスクの低減における、またはその遅延における使用のための、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらにより好ましくは、R(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を提供することである。
【0111】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様において、前記方法または使用における対象は、糖尿病と診断されている。
【0112】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様において、前記方法または使用における対象は、1型糖尿病と診断されている。
【0113】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様において、前記方法または使用における対象は、2型糖尿病と診断されている。
【0114】
したがって、例えば、現実の実施において、個体が、1型であれ2型であれ、糖尿病であると診断されたときに、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、直ちに、糖尿病状態が続き管理/処置されるにつれ発達し得る糖尿病性腎症の発症を防ぐために、予防的に投与することが企図される。
【0115】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、対象は正常な尿タンパクを有する。上述した発明の目的のそれぞれの一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、対象は増加した尿タンパクを有する。一態様において、増加した尿タンパクは、24時間期間中の少なくとも300 mgのアルブミンの排泄である。一態様において、測定されるタンパク質はアルブミンである。
【0116】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、対象は、微量アルブミン尿症を有する。
【0117】
一態様において、「微量アルブミン尿症」との用語は、尿中アルブミンが約20~200μg/分または約30~300 mg/24時間の速度で尿の中に排泄される任意の疾患、障害、病、または健康の状態を言う(例えば、Abbott, K.C.ら、Arch. Internal Med. 754: 146-153 (1994)を参照のこと。当該文献の教示はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。)。別の態様において、「微量アルブミン尿症」との用語は、アルブミンが30~300 mg/日で尿の中に排泄される任意の疾患、障害、病、または健康の状態を言う。
【0118】
微量アルブミン尿症を検出および診断する方法は、当業者に周知であり、放射免疫測定法、ラテックスボディ(latex bodies)を用いた免疫測定法、蛍光免疫測定法、酵素免疫測定法、凝集阻止反応、免疫比濁法、免疫比朧法、および、放射状免疫拡散アッセイを含む。例えば、US5326707;US5492834、US5385847;US5750405、US20030027216;US20030232396であり、各々の内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0119】
したがって、例えば、糖尿病個体が、微量アルブミン尿症の発症によって裏付けられる早期糖尿病性腎症と診断されたときに、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、その糖尿病個体における糖尿病性腎症の進行を処置、予防、および/または遅らせるために、直ちに予防的に投与する。
【0120】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における対象は、IL8の参照標準より高い生物学的サンプル中のIL8レベルを有しており、ここで、該参照標準は、統計学的に有意な数の腎症および炎症性疾患を何も有していない非糖尿病個体の対応する生物学的サンプル中の平均IL8レベルである。
【0121】
生物学的サンプル中のIL8レベルを決定する種々の方法が利用できる。例えば、定量RT-PCRを介してIL8のmRNAレベルを測定する、またはELISAおよびウェスタンブロッティングなどの免疫ベースのアッセイによるなどである。例えば、IL8用の酵素免疫測定法(ELISA)におけるモノクローナル抗体試薬が、米国特許第6133426号および第6468532号に記載されている。これらの各々の内容はその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0122】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における対象は、IL8の参照標準より高い尿のIL8レベルを有しており、ここで、該参照標準は、統計学的に有意な数の腎症および炎症性疾患を何も有していない非糖尿病個体の平均IL8尿中レベルである。記載された任意の方法または使用の一態様において、上昇したIL8レベルとは、少なくとも、参照IL8レベルと比較して少なくとも10%の増加を意味する。記載された任意の方法の別の態様において、上昇したIL8レベルとは、少なくとも、参照レベルと比較して少なくとも約10%、少なくとも約20%、もしくは少なくとも約30%、もしくは少なくとも約40%、もしくは少なくとも約50%、もしくは少なくとも約60%、もしくは少なくとも約70%、もしくは少なくとも約80%、もしくは少なくとも約90%、もしくは最大100%の増加、もしくは10~100%の間の任意の増加を意味し、または、参照IL8レベルと比較して少なくとも約2倍、もしくは少なくとも約3倍、もしくは少なくとも約4倍、もしくは少なくとも約5倍、もしくは少なくとも約10倍の増加、もしくは2倍~10倍の間かそれ以上の任意の増加を意味する。
【0123】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における対象は、IL8の参照標準より高い腎生検中のIL8発現レベルを有しており、ここで、該参照標準は、腎症および炎症性疾患を何も有していない非糖尿病個体からの腎生検中の平均IL8発現レベルである。上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における尿のIL8の参照レベルは、腎症および炎症性疾患を何も有していない非糖尿病個体からの平均尿中IL8レベルである。例えば、平均レベルは、10~25名の腎症および炎症性疾患を何も有していない非糖尿病個体の集団から得られる。上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における参照尿中タンパク質レベルは、腎症および炎症性疾患を何も有していない非糖尿病個体からの平均尿タンパク質レベルである。例えば、平均レベルは、10~25名の腎症および炎症性疾患を何も有していない非糖尿病個体の集団から得られる。
【0124】
例えば、現実の実施において、個体が糖尿病であると診断されたが糖尿病性腎症をまだ発症していない(例えば、正常な尿タンパクを有する状態にある)ときに、同個体をIL8レベルについてさらに検査することが企図される。この糖尿病個体が増加したまたは上昇したIL8レベルを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、糖尿病性腎症の発症を防ぐために、直ちに予防的に投与する。さらに、糖尿病個体が早期糖尿病性腎症を発症したとき、同個体は同様にIL8レベルについて検査される。そのような個体が同様に増加したまたは上昇したIL8レベルを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはレパリキシンおよび/またはラダリキシンを、その個体における糖尿病性腎症の進行を処置、予防、および/または遅らせるために、直ちに予防的に投与する。
【0125】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における対象は、少なくとも2.41 pg/mlより高い尿のIL8レベルを有する。
【0126】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における対象は、2.41 pg/mlより高い尿のIL8レベルを有しかつ微量アルブミン尿症を有する。
【0127】
後述の実験セクションにおいて示されるとおり、この尿のIL8レベルは、IL8が中心的役割を果たす病理の段階にありそのためIL8阻害剤を用いた治療的処置に応答性である、患者を同定する。
【0128】
上述した発明の目的のそれぞれのさらなる態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせによれば、前記方法または使用における対象は、60 ml/min/1.73m2を超える、好ましくは90 ml/min/1.73m2を超える、GFR (糸球体濾過量)の値を有する。
【0129】
後述の実験セクションにおいて示されるとおり、IL8は、糸球体の構造への損傷がまだ明白ではなくGFRの低下がまだ始まっていない病理のごく初期の段階で病原性の役割を有している。上記のGRFの値は、したがって、IL8が中心的役割を果たす病理の段階にありそのためIL8阻害剤を用いた治療的処置に応答性である、患者を同定する。
【0130】
実験セクションにおいて論ずるが、本願発明者らはまた、糖尿病性腎臓病の発達に関連するCXCR1受容体遺伝子中の一塩基多型を多数同定した。
【0131】
したがって、上述した発明の目的のそれぞれのさらなる態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における対象はCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型のうちの少なくとも一つを有する: s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514。
【0132】
上述した発明の目的のそれぞれのさらなる態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における対象は高いHbA1cを有する。
【0133】
上述した発明の目的のそれぞれのさらなる態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における対象は過体重でも肥満でもない。
【0134】
上述した発明の目的のそれぞれのさらなる態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における対象は過体重または肥満である。
【0135】
上述した発明の目的のそれぞれのさらなる態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における対象はヒトである。
【0136】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるための方法であって、(a)対象からの腎生検中のIL8発現レベルを測定する工程;(b)測定したIL8発現レベルを参照標準と比較する工程;ならびに(c)測定したIL8レベルがIL8参照標準を超えているときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含み、ここで、該参照標準は、何の腎症も炎症性疾患も有していない非糖尿病個体からの腎生検中の平均IL8発現レベルである、方法を提供する。
【0137】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、(a)対象における尿のIL8レベルを測定する工程;(b)測定したIL8レベルを参照標準と比較する工程;ならびに(c)測定したIL8レベルがIL8参照標準を超えているときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含み、ここで、該参照標準は、統計学的に有意な数の何の腎症も炎症性疾患も有していない非糖尿病個体の平均尿中IL8レベルである、方法を提供する。
【0138】
例えば、現実の実施において、対象が糖尿病であると診断されたが糖尿病性腎症をまだ発症していないときに、同個体をIL8レベルについてさらに検査し、かつこの測定したIL8レベルをIL8参照標準と比較することが企図される。この糖尿病対象がIL8参照標準と比較して増加したまたは上昇したIL8レベルを有することが示されたときは、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、糖尿病性腎症の発症を防ぐまたは遅らせるために、直ちに予防的に投与する。さらに、糖尿病対象が早期糖尿病性腎症を発症したとき、同対象はさらにIL8レベルについて検査され、かつこの測定したIL8レベルはIL8参照標準と比較される。この糖尿病個体が参照IL8レベルを超える増加したまたは上昇したIL8レベルを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、その糖尿病対象における糖尿病性の進行を処置、予防、および/または遅らせるために、直ちに予防的に投与する。
【0139】
発明の第一の目的の別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、対象における糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、(a)対象における尿のIL8レベルを測定する工程;ならびに(b)測定したIL8レベルが2.41 pg/mlを超えているときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0140】
発明の第一の目的の別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、対象における糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、(a)対象から得た尿サンプル中のタンパク質レベルを測定する工程;(b)測定した尿タンパク質レベルを尿タンパク質参照標準と比較する工程;ならびに(c)測定した尿タンパク質レベルが尿タンパク質参照を超えているときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含み、ここで、該参照は、いかなる腎症も有していない統計学的に有意な数の非糖尿病個体の平均尿中タンパク質レベルである、方法を提供する。上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用における参照尿中タンパク質レベルは、腎症および炎症性疾患を何も有していない非糖尿病個体からの平均尿タンパク質レベルである。例えば、平均レベルは、10~25名の腎症および炎症性疾患を何も有していない非糖尿病個体の集団から得られる。
【0141】
実施において、例えば、対象が糖尿病であると診断されたが糖尿病性腎症をまだ発症していないときに、同個体を尿タンパク質レベルについてさらに検査し、かつこの測定した尿タンパク質レベルを参照尿タンパク質レベルと比較することが企図される。この糖尿病対象が参照と比較して増加したまたは上昇した尿タンパク質レベルを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、ナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、糖尿病性腎症の発症を防ぐまたは遅らせるために、直ちに予防的に投与する。さらに、糖尿病対象が早期DNを発症したとき、同対象はさらに尿タンパク質レベルについて検査され、かつこの測定した尿タンパク質レベルは参照尿タンパク質レベルと比較される。この糖尿病個体が参照尿タンパク質レベルを超える増加したまたは上昇した尿タンパク質レベルを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、その糖尿病対象における糖尿病性腎症の進行を処置、予防、および/または遅らせるために、直ちに投与する。
【0142】
発明の第一の目的の別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、対象における糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、(a)対象からの尿中のアルブミン排泄量を測定する工程;ならびに(b)測定したアルブミン排泄量が一日当たり30 mg~300 mgであるときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0143】
発明の第一の目的の別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、(a)対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型(SNPs) s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程; ならびに(b)該対象が該SNPsのうちの少なくとも一つを有するときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0144】
現実の実施において、例えば、対象が糖尿病であると診断されたが糖尿病性腎症をまだ発症していないときに、同個体のゲノムを記載されたSNPsについてさらに検査することが企図される。この糖尿病対象が記載されたSNPsのうちの少なくとも一つを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはその塩、そのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、DNの発症を防ぐまたは遅らせるために、直ちに予防的に投与する。さらに、糖尿病対象が早期糖尿病性腎症を発症したとき、同個体のゲノムはさらに記載されたSNPsについて検査される。この糖尿病対象が記載されたSNPsのうちの少なくとも一つを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、その対象における糖尿病性腎症を予防および/または処置するおよびまたは糖尿病性腎症の発症または進行を遅らせるために、直ちに投与する。
【0145】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、対象における糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、(a)対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型(SNPs) s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程;(b)対象における尿のIL8レベルを測定する工程;(c)測定したIL8レベルを参照と比較する工程; ならびに(d)該対象が該SNPsのうちの少なくとも一つを有し、かつ参照に関して増加したIL8を有するときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含み、ここで、該参照は、統計学的に有意な数の何の腎症も炎症性疾患も有していない非糖尿病個体の平均尿中IL8レベルである、方法を提供する。
【0146】
発明の第一の目的の代替態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、対象における糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、(a)対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型(SNPs) s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程;(b)対象からの腎生検中のIL8発現レベルを測定する工程;(c)測定したIL8の発現を参照と比較する工程; ならびに(d)対象が該SNPsのうちの少なくとも一つを有し、かつ参照に関して増加したIL8発現を有するときに、対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含み、ここで、該参照は、何の腎症も炎症性疾患も有していない非糖尿病個体の腎臓における平均IL8発現レベルである、方法を提供する。
【0147】
実施において、例えば、対象が糖尿病であるか糖尿病状態を有すると診断されたがDNをまだ発症していないときに、同個体のゲノムを記載されたSNPsについてさらに検査し、かつ同個体をIL8レベルについてさらに検査し、かつこの測定したIL8レベルを参照IL8と比較することが企図される。この糖尿病対象が記載されたSNPsのうちの少なくとも一つを有することが示され、かつ参照IL8と比較して増加したまたは上昇したIL8レベルを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、糖尿病性腎症の発症を防ぐまたは遅らせるために、直ちに予防的に投与する。さらに、糖尿病対象が早期糖尿病性腎症を発症したとき、同個体のゲノムはさらに記載されたSNPsについて検査され、かつ同個体はIL8レベルについてさらに検査され、かつこの測定したIL8レベルは参照IL8と比較される。この糖尿病対象が記載されたSNPsのうちの少なくとも一つを有することが示され、かつ参照IL8レベルを超える増加したまたは上昇したIL8レベルを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、その糖尿病対象における糖尿病性腎症を処置する、予防する、および/または糖尿病性腎症の進行を遅らせるために、直ちに予防的に投与する。
【0148】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、対象における糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、(a)対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型(SNPs) s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程;(b)対象における尿タンパク質レベルを測定する工程;(c)測定したタンパク質レベルをタンパク質参照と比較する工程; ならびに(d)対象が該SNPsのうちの少なくとも一つを有し、かつ増加した尿中のタンパク質を有するときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含む、方法を提供する。一態様において、方法は、タンパク質レベルの分析のために対象から尿のサンプルを得る工程をさらに含む。実施において、対象が糖尿病であると診断されたがDNをまだ発症していないときに、同個体のゲノムを記載されたSNPsについてさらに検査し、かつ同個体を尿タンパク質レベルについてさらに検査し、かつこの測定した尿タンパク質レベルを参照尿タンパク質レベルと比較することが企図される。この糖尿病対象が記載されたSNPsのうちの少なくとも一つを有することが示され、かつ参照レベル尿タンパク質を超える増加したまたは上昇した尿タンパク質レベルを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、DNの発症を防ぐまたは遅らせるために、直ちに予防的に投与する。さらに、糖尿病対象が早期糖尿病性腎症を発症したとき、同個体のゲノムはさらに記載されたSNPsについて検査され、かつ同個体は尿タンパク質レベルについてさらに検査され、かつこの測定した尿タンパク質レベルは参照尿タンパク質レベルと比較される。この糖尿病対象が記載されたSNPsのうちの少なくとも一つを有することが示され、かつ参照レベル尿タンパク質を超える増加したまたは上昇した尿タンパク質レベルを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、その糖尿病対象における糖尿病性腎症を処置する、予防する、および/または糖尿病性腎症の進行を遅らせるために、直ちに予防的に投与する。
【0149】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、対象における糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、(a)対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程;(b)測定したIL8レベルを参照と比較する工程;(c)対象から得たサンプル中のタンパク質レベルを測定する工程;(d)測定したタンパク質レベルをタンパク質参照と比較する工程;ならびに(e)対象が増加した尿中のIL8およびタンパク質を有するときに、該対象にレパリキシンおよび/またはラダリキシンを投与する工程を含む、方法を提供する。一態様において、タンパク質レベルの分析のためのサンプルは、尿サンプルである。一態様において、方法は、タンパク質レベルの分析のために対象から尿のサンプルを得る工程をさらに含む。一態様において、IL8レベルの分析のためのサンプルは、尿、血清、血液、または血漿サンプルである。一態様において、方法は、IL8レベルの分析のために対象からサンプルを得る工程をさらに含む。実施において、対象が糖尿病であると診断されたがDNを発症していないときに、同個体をIL8レベルについてさらに検査しかつこの測定したIL8レベルを参照IL8と比較するとともに、同個体を尿タンパク質レベルについてさらに検査しかつこの測定した尿タンパク質レベルを参照尿タンパク質レベルと比較する。この糖尿病対象が参照IL8と比較して増加したまたは上昇したIL8レベルを有することが示され、かつ、参照レベル尿タンパク質を超える増加したまたは上昇した尿タンパク質レベルも有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、DNの発症を予防するまたは遅らせるために、直ちに予防的に投与する。さらに、糖尿病対象が早期DNを発症したとき、同対象をIL8レベルについてさらに検査しかつこの測定したIL8レベルをIL8参照と比較するとともに、同対象を尿タンパク質レベルについてさらに検査しかつこの測定した尿タンパク質レベルを参照尿タンパク質レベルと比較する。この糖尿病対象が、参照IL8と比較して増加したまたは上昇したIL8レベルを有することが示され、かつ参照レベル尿タンパク質を超える増加したまたは上昇した尿タンパク質レベルも有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、その糖尿病対象におけるDNを処置する、予防する、および/またはその進行を遅らせるために、直ちに予防的に投与する。
【0150】
発明の第一の目的の一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、本明細書は、対象における糖尿病性腎症を処置する、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防する、またはそのリスクを低減する、またはそれを遅らせる方法であって、(a)対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型(SNPs) s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程;(b)対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程;(c)測定したIL8レベルを参照と比較する工程;(d)対象から得たサンプル中のタンパク質レベルを測定する工程;(e)測定したタンパク質レベルをタンパク質参照と比較する工程; ならびに(f)対象が該SNPsのうちの少なくとも一つを有し、増加した尿中タンパク質を有し、かつ増加したIL8を有するときに、該対象にIL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を投与する工程を含む、方法を提供する。一態様において、タンパク質レベルの分析のためのサンプルは、尿サンプルである。一態様において、方法は、タンパク質レベルの分析のために対象から尿のサンプルを得る工程をさらに含む。一態様において、IL8レベルの分析のためのサンプルは、尿、血清、血液、または血漿サンプルである。一態様において、方法は、IL8レベルの分析のために対象からサンプルを得る工程をさらに含む。現実の実施において、対象が糖尿病であると診断されたが糖尿病性腎症を発症していないときに、同個体のゲノムを記載されたSNPsについてさらに検査し、かつ、同個体を、IL8レベルについてさらに検査しかつ尿タンパク質レベルについてさらに検査する。測定したIL8レベルを参照IL8と比較し、測定した尿タンパク質レベルを参照尿タンパク質レベルと比較する。この糖尿病対象が記載されたSNPsのうちの少なくとも一つを有することが示され、かつ、参照IL8と比較して増加したまたは上昇したIL8レベルと、参照レベル尿タンパク質を超える増加したまたは上昇した尿タンパク質レベルとを有することが示されたときは、次いで、レパリキシンおよび/またはラダリキシンを、糖尿病性腎症の発症を予防するために直ちに予防的に投与する。さらに、糖尿病対象が早期糖尿病性腎症を発症したとき、同個体のゲノムをさらに記載されたSNPsについて検査し、かつ、同個体をIL8レベルについてさらに検査しかつ尿タンパク質レベルについてさらに検査する。測定したIL8レベルをIL8参照と比較し、測定した尿タンパク質レベルを参照尿タンパク質レベルと比較する。この糖尿病対象が、記載されたSNPsのうちの少なくとも一つを有することが示され、参照IL8と比較して増加したまたは上昇したIL8レベルと、参照レベル尿タンパク質を超える増加したまたは上昇した尿タンパク質レベルとを有することが示されたときは、次いで、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物を、その糖尿病対象における糖尿病性腎症の進行を予防するおよび/または遅らせるために、直ちに予防的に投与する。IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物の早期の適用がこれらの個体における末期腎疾患または慢性腎不全に向かう期間を引き延ばすことが、企図される。
【0151】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用では、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物の有効量が、対象に投与される。
【0152】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用では、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物の有効量が、薬学的に許容可能な担体との混合において、対象に投与される。
【0153】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用では、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物の有効量を含む組成物が、対象に投与される。好ましくは、前記組成物は、薬学的に許容可能な担体を含む。好ましくは、組成物は、少なくとも一つの他の糖尿病、および/またはメタボリック症候群、および/または心血管系疾患、および/または高血圧用の活性分子をさらに含む。
【0154】
例えば、糖尿病は一般的に、スルホニル尿素薬、メグリチニド薬、ビグアナイド薬、チアゾリジンジオン薬、αグルコシダーゼ阻害剤、およびDPP-4阻害剤を含む薬の一つまたは組み合わせを使用して処置される。記載された任意の方法の一態様において、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物は、少なくとも一つの糖尿病の処置に使用される活性分子(好ましくは、スルホニル尿素薬、メグリチニド薬、ビグアナイド薬、チアゾリジンジオン薬、αグルコシダーゼ阻害剤、およびDPP-4阻害剤から選択される)とともに投与される。
【0155】
例えば、記載された少なくとも一つの他の活性分子は、インスリン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンジオテンシンII受容体アンタゴニスト(AIIRA)、血中HbA1cを低下させる薬物または剤(例えば、その内容の全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第8440655号に記載の、テレンゼピンおよびセルトラリン)である。記載された任意の方法の一態様において、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物は、ACE阻害剤、AIIRA、テレンゼピンおよびセルトラリンを含む少なくとも一つの有効成分とともに投与される。
【0156】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用では、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはまたはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物が、一つまたは複数の抗糖尿病剤に伴って投与される。
【0157】
上述した発明の目的のそれぞれの別の態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用では、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物が、少なくとも一つの他の糖尿病、および/またはメタボリック症候群、および/または心血管系疾患、および/または高血圧用の活性分子とともに投与される。
【0158】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用では、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物が、全身投与される。
【0159】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用では、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物が、徐放性製剤で投与される。
【0160】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用では、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物が、治療量以下の量で投与される。
【0161】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用では、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物が、治療有効量で投与される。
【0162】
上述した発明の目的のそれぞれの一態様、さらには任意のこれまでの態様との組み合わせにおいて、前記方法または使用では、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物が、予防有効量で投与される。
【0163】
一態様において、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物またはその薬学的組成物は、全身性送達のために製剤化される。一代替的態様において、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物、およびその薬学的組成物は、特定の臓器(例えば腎臓だがそれに限定されない)への送達のために製剤化されてもよい。代替態様において、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物、またはその薬学的組成物は、肺への吸入によるエアロゾル適用のために製剤化されてもよい。代替的に、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物、またはその薬学的組成物は、経皮送達のために製剤化されてもよい(例えば、皮膚パッチ)。いくつかの態様において、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物、またはその薬学的組成物は、腸溶性コーティングされ経口送達のために製剤化されてもよい。いくつかの態様において、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物、またはその薬学的組成物は、リポソームまたはナノ粒子中にカプセル化されてインビボにおけるゆっくりとした持続性のある送達のために製剤化されてもよい。IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物、またはその薬学的組成物を含む徐放性製剤もまた、企図される。例えば、週に一回の投与のための、徐放性製剤である。代替的に、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物、またはその薬学的組成物は、標的化送達のために製剤化されてもよい(例えば、設計されたリポソームまたはナノ粒子上の標的化部分を特徴とする、リポソームまたはナノ粒子中にカプセル化されてもよい)。
【0164】
IL8阻害剤、またはその薬学的製剤は、製剤化されて、任意の公知の経路で投与されることができる。例示として、IL8阻害剤およびその組成物は、粘膜、肺、局所、または他の局所性または全身性経路(例えば、経腸および非経口)により投与され得る。IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物は、任意の使いやすい経路で、例えば、注入やボーラス注射で、上皮または皮膚粘膜内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸管粘膜等)を通る吸収で、投与されてもよく、他の生物学的活性剤とともに投与されてもよい。
【0165】
投与経路は、エアロゾル、直接注射、皮内、経皮(例えば、遅延放出型ポリマーで)、硝子体内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、局所、経口、経粘膜、口腔内、経腸、経膣、経皮、鼻腔内および非経口経路を含むが、これらに限定されない。「非経口」とは、眼窩内、注入、動脈内、嚢内、心臓内、皮内、肝臓内、臓器内、筋肉内、腹腔内、肺内、脊髄内、胸骨内、くも膜下腔内、子宮内、静脈内、くも膜下、嚢下、皮下、経粘膜、経気管を含むがこれらに限定されない注射と一般的に関連した投与経路を言う。例えば、注入やボーラス注射、上皮または皮膚粘膜内層を通る吸収など、任意の他の治療上有効である投与経路が使用され得る。種々の態様において、投与は、エアロゾル投与を介して、例えば噴霧化した状態で、肺へと吸入されてもよい。投与はまた、全身性とも局所性ともできる。
【0166】
例えば、IL8阻害剤またはその薬学的組成物は、全身性送達に適合された製剤として投与されてもよい。いくつかの態様において、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはCXCR1およびCXCR2阻害剤、さらに好ましくはR(-)-2-[(4-イソブチルフェニル)プロピオニル]-メタンスルホンアミド(以下、レパリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのリジン塩、R(-)-2-[(4'-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-メタンスルホニル プロピオンアミド(以下、ラダリキシンと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩、および(2S)-2-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)プロパン酸(以下、DF2755Yと称する)またはその塩、好ましくはそのナトリウム塩(以下、DF2755Aと称する)から選択される化合物またはその薬学的組成物は、特定の臓器(例えば腎臓だがそれに限定されない)への送達のために適合された製剤として投与されてもよい。
【0167】
加えて、IL8阻害剤、またはその薬学的組成物は、薬学的に許容可能な界面活性剤(例えば、グリセリド類)、賦形剤(例えば、ラクトース)、担体、希釈剤、およびビヒクルなどの、生物学的活性剤の他の構成要素とともに投与されてもよい。
【0168】
IL8阻害剤、またはその薬学的組成物は、糖尿病、メタボリック症候群、心血管系疾患、および高血圧のための少なくとも一つの他の治療の投与の前に、または投与と同時に(同じまたは別々の組成物中で)、または投与に続いて、対象に治療的に投与されてもよい。
【0169】
非経口の(例えば、静脈内、皮下、筋肉内)投与のために、IL8阻害剤、またはその薬学的組成物は、薬学的に許容可能な非経口ビヒクルを伴って、溶液、懸濁液、乳剤、または凍結乾燥粉末として製剤化され得る。そのようなビヒクルの例は、水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンである。リポソームおよび不揮発性油などの非水系ビヒクルも使用し得る。ビヒクルまたは凍結乾燥粉末は、等張性(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)および化学的安定性(例えば、緩衝剤および防腐剤)を維持する添加剤を含み得る。製剤は、一般的に用いられる手法で滅菌される。
【0170】
対象に投与される適用量は、個々の阻害剤の薬力学的特性、その投与の方式および経路;レシピエントのサイズ、年齢、性別、健康状態、体重、および食餌;処置中の疾患の症状の性質および程度、併用療法の種類、処置の頻度、および所望の効果を含む、種々の要因に依存して変動する。
【0171】
通常、IL8阻害剤の一日適用量は、一日当たり、体重1キログラム当たり約1~100ミリグラム、好ましくは、体重1キログラム当たり5~80ミリグラムであり得る。好ましくは、適用量を、一日1~5回の分割用量として経口投与により与えるか、5~10日の1または複数サイクル分にわたり連続注入によって与えることが、所望の結果を得るために効果的である。二回目以降の投与は、最初または前回個体に投与された用量と同じか、それよりも少ないまたは多い適用量で行い得る。
【0172】
二回目以降の投与は、好ましくは、疾患または疾患の症状の再発または再燃の間またはその直前である。例えば、二回目以降の投与は、前回の投与から約1日から30週の間に与えられ得る。合計2、3、4、またはそれ以上の投与が必要に応じて同じ個体に送達され得る。
【0173】
製剤において用いるべき正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重さにも依存し、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効な用量は、インビトロまたは動物モデル試験系に由来する用量反応曲線から推定してもよい。
【0174】
本明細書に記載される方法を使用した処置の期間中に、効力試験が実施され得る。特定の病に関連したいくつかの症状の重症度の程度の計測値を、処置の開始前、次いで、後の処置の開始後特定の期間に、記録する。
【0175】
薬剤の製剤において用いるべき正確な用量は、投与経路、および疾患または障害の重さにも依存し、医師の判断および各患者の状況に従って決定されるべきである。有効な用量は、インビトロまたは動物モデル試験系に由来する用量反応曲線から推定してもよい。
【0176】
本明細書に記載される方法を使用した処置の期間中に、効力試験が実施され得る。特定の病に関連したいくつかの症状の重症度の程度の計測値を、処置の開始前、次いで、後の処置の開始後特定の期間に、記録する。例えば、処置時である。
【0177】
当業者は、疾患または障害の重症度、以前の処置、対象の全般的な健康状態および/または年齢、および他に有している疾患を含むがこれらに限定されない、ある種の因子が、対象を効果的に処置するために必要とされる適用量およびタイミングに影響するかもしれないことを理解するだろう。用量レベルは、腎症の程度、症状の重さ、および対象の副作用に対する感受性にも依存し得る。治療有効用量での対象の処置は、一回の処置または一連の処置を含み得る。IL8阻害剤の有効な適用量およびインビボ半減期の推定は、当技術分野において公知であるように、または本明細書に記載されるように、従来の方法論を用いてまたは適当な動物モデルを用いたインビボ試験に基づいて、行い得る。好ましい適用量は、種々の手段によって当業者によって容易に決定され得る。
【0178】
本明細書に記載される技術のいくつかの態様は、番号を付与した以下のパラグラフのいずれかに従って定義され得る:
[1] 以下の工程を含む、それを必要とする対象において糖尿病性腎症(DN)の発症または糖尿病性腎症の進行を予防する方法:
糖尿病と診断された該対象に対して、IL8阻害剤、好ましくはCXCR1および/またはCXCR2阻害剤、より好ましくはレパリキシン(Reparixin)および/またはラダリキシン(Ladarixin)を投与する工程。
[2] 以下の工程を含む、それを必要とする対象において糖尿病性腎症(DN)の発症または糖尿病性腎症の進行を予防する方法:
糖尿病と診断されかつIL8レベルが上昇した該対象に対して、レパリキシンおよび/またはラダリキシンを投与する工程。
[3] 糖尿病が1型糖尿病(T1D)である、パラグラフ1または2の方法。
[4] 糖尿病が2型糖尿病(T2D)である、パラグラフ1または2の方法。
[5] 対象が正常な尿タンパクを有する、パラグラフ1~4のいずれかの方法。
[6] 対象が増加した尿タンパクを有する、パラグラフ1~4のいずれかの方法。
[7] 対象が、CXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有する、パラグラフ1~6のいずれかの方法。
[8] 対象からの尿のサンプル中のタンパク質レベルを測定する工程をさらに含む、パラグラフ1~7のいずれかの方法。
[9] タンパク尿を有する対象を選択する工程をさらに含む、パラグラフ1~8のいずれかの方法。
[10] 尿タンパク質レベルの分析のために対象から尿のサンプルを得る工程をさらに含む、パラグラフ1~9のいずれかの方法。
[11] 測定した尿タンパク質レベルを尿タンパク質参照と比較する工程をさらに含む、パラグラフ8~10のいずれかの方法。
[12] 尿タンパク質参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た尿サンプル中のタンパク質レベルである、パラグラフ11の方法。
[13] 対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程をさらに含む、パラグラフ1~12のいずれかの方法。
[14] サンプルが尿サンプルである、パラグラフ13の方法。
[15] サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、パラグラフ13の方法。
[16] 測定したIL8レベルをIL8参照と比較する工程をさらに含む、パラグラフ13~15のいずれかの方法。
[17] IL8参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、パラグラフ16の方法。
[18] 対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程をさらに含む、パラグラフ1~17のいずれかの方法。
[19] 以下の工程を含む、糖尿病および微量アルブミン尿症と診断された対象において糖尿病性腎症(DN)の発症または糖尿病性腎症(DN)の進行を予防する方法:
(a)該対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程;ならびに
(b)測定したIL8レベルが少なくとも2.41 pg/mlを超えているときに、該対象にレパリキシンおよび/またはラダリキシンを投与する工程。
[20] 糖尿病が1型糖尿病(T1D)である、パラグラフ19の方法。
[21] 糖尿病が2型糖尿病(T2D)である、パラグラフ19の方法。
[22] サンプルが尿サンプルである、パラグラフ19~21のいずれかの方法。
[23] サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、パラグラフ19~21のいずれかの方法。
[24] 対象が正常な尿タンパクを有する、パラグラフ19~23のいずれかの方法。
[25] 対象が増加した尿タンパクを有する、パラグラフ19~23のいずれかの方法。
[26] 対象が、CXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有する、パラグラフ19~25のいずれかの方法。
[27] 対象からの尿のサンプル中のタンパク質レベルを測定する工程をさらに含む、パラグラフ19~26のいずれかの方法。
[28] タンパク質レベルの分析のために対象から尿のサンプルを得る工程をさらに含む、パラグラフ19~27のいずれかの方法。
[29] 尿タンパク質レベルを尿タンパク質参照と比較する工程をさらに含む、パラグラフ19~28のいずれかの方法。
[30] 尿タンパク質参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た尿サンプル中のタンパク質レベルである、パラグラフ19~29のいずれかの方法。
[31] IL8参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、パラグラフ19~30のいずれかの方法。
[32] 対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程をさらに含む、パラグラフ19~31のいずれかの方法。
[33] 以下の工程を含む、糖尿病と診断された対象において糖尿病性腎症(DN)の発症または糖尿病性腎症(DN)の進行を予防する方法:
(a)該対象から得た尿サンプル中のタンパク質レベルを測定する工程;
(b)測定した尿タンパク質レベルを尿タンパク質参照と比較する工程;ならびに
(c)該測定した尿タンパク質レベルが該尿タンパク質参照を超えているときに、該対象にレパリキシンおよび/またはラダリキシンを投与する工程。
[34] 糖尿病が1型糖尿病(T1D)である、パラグラフ33の方法。
[35] 糖尿病が2型糖尿病(T2D)である、パラグラフ33の方法。
[36] 尿タンパク質参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た尿サンプル中のタンパク質レベルである、パラグラフ33~35のいずれかの方法。
[37] 対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程をさらに含む、パラグラフ33~35のいずれかの方法。
[38] サンプルが尿サンプルである、パラグラフ37の方法。
[39] サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、パラグラフ37の方法。
[40] 測定したIL8レベルをIL8参照と比較する工程をさらに含む、パラグラフ33~39のいずれかの方法。
[41] IL8参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、パラグラフ40の方法。
[42] 対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程をさらに含む、パラグラフ33~41のいずれかの方法。
[43] 以下の工程を含む、糖尿病と診断された対象において糖尿病性腎症(DN)の発症または糖尿病性腎症(DN)の進行を予防する方法:
(a)該対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型(SNPs)s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程;および
(b)該対象が該SNPsのうちの少なくとも一つを有するときに、該対象にレパリキシンおよび/またはラダリキシンを投与する工程。
[44] 糖尿病が1型糖尿病(T1D)である、パラグラフ43の方法。
[45] 糖尿病が2型糖尿病(T2D)である、パラグラフ43の方法。
[46] 対象が正常な尿タンパクを有する、パラグラフ43~45のいずれかの方法。
[47] 対象が増加した尿タンパクを有する、パラグラフ43~45のいずれかの方法。
[48] 対象からの尿のサンプル中のタンパク質レベルを測定する工程をさらに含む、パラグラフ43~47のいずれかの方法。
[49] 尿タンパク質レベルの分析のために対象から尿のサンプルを得る工程をさらに含む、パラグラフ43~48のいずれかの方法。
[50] 測定した尿タンパク質レベルを尿タンパク質参照と比較する工程をさらに含む、パラグラフ49の方法。
[51] 尿タンパク質参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た尿サンプル中のタンパク質レベルである、パラグラフ50の方法。
[52] 対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程をさらに含む、パラグラフ43~51のいずれかの方法。
[53] サンプルが尿サンプルである、パラグラフ52の方法。
[54] サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、パラグラフ52の方法。
[55] 測定したIL8レベルをIL8参照と比較する工程をさらに含む、パラグラフ52~54のいずれかの方法。
[56] IL8参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、パラグラフ55の方法。
[57] 以下の工程を含む、処置を必要とする対象における糖尿病性腎症(DN)の処置の方法:
レパリキシンおよび/またはラダリキシンを該対象に投与する工程。
[58] 対象が1型糖尿病(T1D)を有する、パラグラフ57の方法。
[59] 対象が2型糖尿病(T2D)を有する、パラグラフ57の方法。
[60] 対象が上昇したIL8レベルを有する、パラグラフ57~59のいずれかの方法。
[61] 対象が正常な尿タンパクを有する、パラグラフ57~60のいずれかの方法。
[62] 対象が増加した尿タンパクを有する、パラグラフ57~61のいずれかの方法。
[63] 対象から得たサンプル中のIL8レベルを測定する工程をさらに含む、パラグラフ57~62のいずれかの方法。
[64] サンプルが尿サンプルである、パラグラフ63の方法。
[65] サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、パラグラフ63の方法。
[66] 測定したIL8レベルをIL8参照と比較する工程をさらに含む、パラグラフ63~65のいずれかの方法。
[67] IL8参照が、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、パラグラフ66の方法。
[68] 対象が、CXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有する、パラグラフ57~67のいずれかの方法。
[69] 対象がCXCR1遺伝子座における以下の一塩基多型s13006838、rs4674308; rs4674309; rs3755042; rs7601872;およびrs664514のうちの少なくとも一つを有するかどうかを決定する工程をさらに含む、パラグラフ57~68のいずれかの方法。
[70] 対象が、60 ml/min/1.73m2を超える糸球体濾過量(GFR)の値を有する、パラグラフ1~69のいずれかの方法。
[71] 対象が、90 ml/min/1.73m2を超える糸球体濾過量の値を有する、パラグラフ70の方法。
[72] 対象が、2.41 pg/mlより高いIL8の尿中レベルを有する、パラグラフ1~71のいずれかの方法。
[73] 対象が、一日当たり30 mg~300 mgのアルブミン排泄量測定値を有する、パラグラフ1~71のいずれかの方法。
[74] 以下の工程を含む、処置の方法:
(a)対象の尿サンプル中のIL8レベルを決定する工程;ならびに
(b)該IL8レベルが参照レベルより少なくとも3倍高いときに、レパリキシンおよび/またはラダリキシンの有効量を該対象に投与する工程。
[75] 対象を糖尿病と診断する工程をさらに含む、パラグラフ74の方法。
[76] サンプルが尿サンプルである、パラグラフ74の方法。
[77] サンプルが血清、血液、または血漿サンプルである、パラグラフ63の方法。
[78] 参照レベルが、いかなる腎症も有していない正常健常者らにおいて得た各サンプル中のIL8レベルである、パラグラフ74の方法。
[79] 以下の工程を含む、高血糖症を処置する方法:
(a)患者を高血糖症と診断する工程;ならびに
(b)レパリキシンおよび/またはラダリキシンの有効量を該患者に投与する工程。
[80] それを必要とする患者にレパリキシンおよび/またはラダリキシンの有効量を投与する工程を含む、高血糖症を処置する方法。
[81] 対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるため
の、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる、組成物。
[82] 対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるため
の医薬の製造のための、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物。
[83] 対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるため
の、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物の使用。
[84] 対象における糖尿病性腎症を処置するため、あるいは、糖尿病性腎症の発症もしくは進行を予防するため、またはそのリスクを低減するため、またはそれを遅らせるため
の医薬の製造のための、レパリキシンおよび/もしくはラダリキシンを含む、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンからなる、またはレパリキシンおよび/もしくはラダリキシンから本質的になる組成物の使用。
【0179】
本開示の態様は、以下の実施例によってさらに例証されるが、当該実施例は限定的なものとして解釈されるべきではない。本願を通して引用されたすべての参照文献、ならびに、図面および表の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0180】
当業者は、本明細書に記載された発明の具体的態様に対する多くの同等物を認識し得、あるいは、ルーチンの範囲を超えない実験を用いることで確認することが可能であり得る。
【0181】
ここで、また本明細書全体を通して引用された参照文献は、参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例0182】
序論
慢性腎臓病(CKD)は、真性糖尿病に付随する複数の合併症のうち、日常生活および費用面で最も負荷の高い合併症として確立している。CKDは若年死および末期腎疾患(ESRD)の危険を増加させる1。糖尿病による末期腎疾患(ESRD)の発生は、過去20年にわたって増加の一途をたどっている。糖尿病は、西洋社会で三分の一を超える患者のESRDの主要な原因である2。新たに2型糖尿病(T2D)と診断された患者の5%超は、すでに糖尿病性腎臓病を有していると考えられ、加えて30~40%が、通常診断から10年以内に、糖尿病性腎症(DN)を発症すると考えられる3,4,5
【0183】
T2Dの患者は、免疫系における改変を呈する。これらの患者において、サイトカイン、ケモカイン、および急性期タンパク質のレベルが上昇していることが記述されていて6,7;免疫学的プロファイルにおける改変がアポトーシスおよび組織の線維化を増加させることが示されている8。1型糖尿病(T1D)の患者は、対照と比べて6~7倍高い尿中IL8レベルを有する9。さらに、アルブミン尿症を伴うT1Dの患者のうち、ベースラインにおける尿中IL8レベルが最も高い患者は、より早い腎機能の低下を呈した。
【0184】
IL8は、単球10、Tリンパ球、マクロファージ11としての白血球により、または内皮細胞12、ポドサイト13、近位細管上皮細胞14のような非白血球集団により産生され得るケモカインである。このケモカインは、二つの受容体CXCR-1およびCXCR-2を有し、これらは好中球、単球、CD8 T細胞、マスト細胞、ナチュラルキラー細胞としての白血球によって発現され、また、内皮細胞12、ポドサイト13、線維芽細胞11としての非白血球細胞によっても発現される。
【0185】
糖尿病の患者において、高血糖症はIL8産生の誘因となり得、したがってオートクリンおよびパラクリン様式でCXCR1/2の発現を刺激し得る。CXCR1/2の活性化は、CXCR1/2細胞質側末端を介して、ポドサイト内および内皮細胞内で広がる。CXCR1/2細胞質側末端は、α3β1-インテグリンの細胞質側末端へのタリンの結合(α3β1-インテグリン活性に必須;図6)と競合することによって、α3β1-インテグリンの脱活性化を決定する。この競合的結合は、ポドサイトの生理的構造および糸球体基底膜への接着の喪失を伴う、パキシリンの脱活性化をもたらす。CXCR1/2の活性化は、mTor経路の活性化にもつながり、代謝性変化および酸化的損傷をもたらす。総合すると、これらの病理的変化は、究極的にポドサイトの構造上および機能上の異常およびタンパク尿の発症を引き起こす(図7A~6Eおよび8A~7F)。本明細書に記載の発明は、臨床的に利用可能なCXCR1/2アンタゴニストを用いてIL8シグナル伝達を抑えることが、インビトロでポドサイト障害(podocytopathy)の程度を減少させインビボで腎臓の傷害の進行を減少させることを示し、かつDNのための新たな治療ツールを提供する。
【0186】
実施例1
CXCR2およびKCの発現は、STZ誘導C57BL/6糖尿病マウスの糸球体においてインビボで次第に増加し、内皮細胞およびポドサイトに局在化している
DN db/db糖尿病マウスのモデルの一つであるSTZ誘導C57BL/6糖尿病マウスにおいて、KC(ヒトIL8のマウスホモログ)およびその受容体CXCR2(ヒトCXCR2のマウスホモログ)のインビボでの発現は、上昇していた。本実施例において、糖尿病は、3日間連続した >250 mg/dlの血中グルコースレベルとして定義する。血清中のグルコースレベルの測定には、BD Logic Glucose Meter(Becton Dickinson、フランクリンレイクス、ニュージャージー州)を用いた。7週でdb/dbマウスは高血糖症を呈したがDNは呈さなかった。C57BL/6マウスおよびC57BL/6J Lepdb/dbは、Jackson Laboratory(バーハーバー、メイン州)から入手した。マウスを病原体フリーの環境で飼育し;水と固形飼料を自由に採らせた。すべてのマウスはオスであり、Boston Children's HospitalおよびHarvard Medical Schoolの動物管理飼育ガイドラインに沿って飼育し、使用した。Institutional Animal Care and Use Committeeがプロトコルを承認した。
【0187】
8、12、および25週齢のdb/dbマウスから、標準的手法を用いて、腎臓を外科的に取り除いた。標準的な光学顕微鏡観察を実施するために、腎臓を4%緩衝パラホルムアルデヒド(PFA)中で固定し、脱水し、パラフィン包埋した。AxioVisionソフトウェア4.3を用いて、過ヨウ素酸シッフ(PAS)染色およびトリクローム染色からの画像を記録した。メサンギウム基質の評価は、AxioVision分析モジュールに組んだマクロを用いて電子的に実施した(Carl Zeiss Spa、ソーンウッド、ニューヨーク州)。糸球体を関心領域(ROI)として同定し、メサンギウムをcolor thresholdプロトコルによって強調表示した。次いで二値画像を生成し、メサンギウムを糸球体領域におけるパーセンテージとして自動的に算出した。画像取得は、Zeiss Axioscope 40FL顕微鏡とAxioCam MRc5デジタルビデオカメラ(Carl Zeiss SpA)を用いて実施した。AxioVisionソフトウェア4.3を用いて画像を記録し、AxioVision分析モジュールを用いて結果を分析した(Carl Zeiss SpA)。
【0188】
糖尿病マウスにおいて、KCおよびCXCR2の発現は糸球体レベルで12週齢で増加し、発現は28週齢でピークに達する(データ示さず)。加えて28週で、CXCR2およびKCの発現は、db/db C57BL/6糖尿病マウスにおいてインビボで糸球体レベルでCD31(内皮細胞マーカー)およびシナプトポディン(ポドサイト特異的マーカー)と共局在化する(データ示さず)。対照的に、7週(ベースライン)齢で非糖尿病C57BL/6対照マウスから取得した腎臓では、CXCR2およびKCは発現していなかった。
【0189】
実施例2
レパリキシンを用いたKC/CXCR2軸遮断は、db/dbマウスにおける尿アルブミン排泄(UAE)の増加を予防し、メサンギウム拡大を軽減する
DN進行におけるIL8遮断の潜在的役割を評価するために、7週齢のdb/dbマウスを18週間にわたって(25週齢まで)1日2回、15 mg/kg (ip)のレパリキシンで処置した。簡潔に述べると、動物を調光環境下自由摂水で代謝ケージ(Nalgene)中で飼育し、糞および尿を分離した。サンプル回収チューブは、調光環境の底の小孔を通してケージ下に回した。
【0190】
第8、12、および25週に、代謝ケージからdb/dbマウスの尿サンプルを回収した。BeadLyteマウス マルチ サイトカイン Beadmaster キット(Millipore、ビレリカ、マサチューセッツ州)を製造元のプロトコルに従って使用し、IL8のサイトカインレベルを決定した。簡潔に述べると、上清をIL8をコンジュゲートしたビーズのみと所定の時間インキュベートし、次いでビオチン化レポーターおよびストレプトアビジン-フィコエリトリン溶液とともに30分間インキュベートした。Luminex100リーダー(Luminex Corporation、オースチン、テキサス州)を用いて、サンプルのサイトカインレベルを測定した。
【0191】
処置をしていない対照マウスにおいて尿アルブミン排泄が増加したが、レパリキシン処置マウスにおいては、尿アルブミンレベルは時間が経過しても安定したままであり(図1および11B)、25週齢で対照糖尿病db/dbマウスと比べて有意に低く、最終時点で有意な時間-処置交互作用を示した(レパリキシン処置25週=211.1±24.4 vs 対照25週=353.8±99.4 μg/ml、p<0.01;図1)。処置群において、血糖コントロールに対する影響は観察されなかった(図11A)。上記の動物からの腎生検の病理組織学的検査を実施したところ、レパリキシン処置は25週齢のdb/dbマウスの腎臓に対する保護効果を示し、対照マウスと比べて処置された動物におけるメサンギウム拡大の減少は明らかであった(データ示さず)。
【0192】
実施例3
IL8負荷は、インビトロで、ストレスファイバーの喪失、皮質アクチンの用量依存的な増加、およびポドサイトにおける細胞のブレビング(blebbing)を引き起こす
SV40 T抗原の温度感受性変異体(ts58A)についての導入遺伝子を有し、それにより増殖のためにインターフェロンγ応答性とされたヒトのポドサイト細胞を、33℃で培養し、80%コンフルエンスまで増殖させた(これを0日とした)。細胞を次いで37℃に温度シフトさせ、SV40 T抗原を失活させて細胞複製を休止させた。ポドサイトを異なるグルコース濃度で5日間培養した(正常グルコース:5 mM [NG]; 高グルコース:30 mM [HG])。高グルコースの浸透圧対照として、マンニトールを使用した(マンニトール20mM+グルコース 10mM)(図10Aおよび10B)。
【0193】
ポドサイトは円形のガラス製のカバーガラス(VWR、ラドナー、ペンシルベニア州)上で増殖させ、パラホルムアルデヒドを用いて固定し、次いで0.3% Triton X-100(Fisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州)を用いて透過処理した。細胞をローダミン ファロイジン(Invitrogen、カールスバッド、カリフォルニア州)とともにインキュベートし、F-アクチンネットワークを標識しストレスファイバーを可視化した。標準的な蛍光顕微鏡観察を用いて、ストレスファイバーの形成を評価した。完全なアクチンフィラメントを含む細胞のパーセンテージを、マニュアルで細胞を計数することにより評価した。
【0194】
100 nMの用量でのIL8を用いた処置は、ヒトのポドサイトにおいてインビトロで、ストレスファイバーの喪失(ファロイジン染色により測定;対照 vs IL8、p<0.05;図2A)、皮質アクチンの用量依存的な増加、細胞のブレビング、およびシナプトポディンc発現(対照 vs IL8、p<0.05;図2B)を、NGおよびHG(データ示さず)条件の両方でもたらし;後者はIL8の効果と相乗的に働いた。これらのデータは、IL8がポドサイトに対する直接的な傷害を誘導するとの仮説を支持する。
【0195】
興味深いことに、100μMの用量でのレパリキシン処置は、NG(データ示さず)およびHG(データ示さず;図2A、2B、10A、および10B)の両方において、IL8で誘導される傷害(ストレスファイバーの喪失;皮質アクチンの増加;細胞のブレビングおよびシナプトポディン発現の喪失)からポドサイトをレスキューすることができた。
【0196】
実施例4
T2DおよびDNを有する患者サブセットにおいてIL8は糸球体レベルで発現しており、かつCD-31およびシナプトポディンと共局在化している
2型糖尿病(T2D)でかつ異なる重症度の段階(比較的軽症から比較的重症まで:メサンギウム拡大;結節化;および糸球体硬化症)にあるDKDである患者30名の腎生検と、対照個体(がんに侵されて外科的に取り除いた腎臓を持つ)(データ示さず)からの腎生検におけるIL8の発現を、免疫組織化学的分析によって上述のとおり測定した。このコホートからの組織学データは、Fiorinaらにより2013年に公開された。インフォームドコンセントは、患者らによる署名に先立って、Hospital San Carlo(ミラン、イタリア)の治験審査委員会および/またはAzienda Ospedaliera di Parma(パルマ、イタリア)の治験審査委員会承認による承認を受けた。すべての患者について、診療歴の記録とともに、腎臓の機能に関するデータを得るための血清および尿サンプルを得た。対照として、腎がんのために片側腎摘出術を受けた患者(n=10)の、変化していない腎臓極からの組織学的サンプルを用いた。
【0197】
通常の光学顕微鏡用染色のために、材料を、4%緩衝パラホルムアルデヒド(PFA)中で固定し、脱水し、パラフィン包埋した。PASおよびトリクローム染色からの画像をAxioVisionソフトウェア4.3を用いて記録し、メサンギウム基質の評価は、AxioVision分析モジュールに組んだマクロを用いて電子的に実施した(Carl Zeiss SpA、ソーンウッド、ニューヨーク州)。簡潔に述べると、糸球体を関心領域(ROI)として同定し、メサンギウムをcolor thresholdプロトコルによって強調表示した。次いで二値画像を生成し、メサンギウムを糸球体領域におけるパーセンテージとして自動的に算出した。画像取得は、Zeiss Axioscope 40FL顕微鏡とAxioCam MRc5デジタルビデオカメラ(Carl Zeiss SpA)を用いて実施した。AxioVisionソフトウェア4.3を用いて画像を記録し、AxioVision分析モジュールを用いて結果を分析した(Carl Zeiss SpA)。抗ヒトIL8抗体はAbcam(ケンブリッジ、マサチューセッツ州)から得た。染色は、糸球体一つ当たりの陽性ヒットの数として、サンプル当たり40個の糸球体において評価した。
【0198】
図3Aおよび3Bに示したとおり、腎臓損傷の段階とIL8発現との間の相関関係が見出された。IL8発現は、傷害の早期の段階においてピークを迎え、腎実質の細胞充実度の喪失および線維症の発症に引き続いて次第に減ることが認められた(データ示さず;図7Aおよび7B)。糸球体におけるIL8の発現はメサンギウム拡大の間に最も高かった(データ示さず;図3A;および表2):平均GRF=91.43±7.74 ml/min/1.73m2;IL8病理組織学スコア:3±0.0任意単位(AU))。糸球体の傷害が結節化(データ示さず;図3A;および表2):平均GFR=62.29±6.75 ml/min/1.73m2;IL8病理組織学スコア:1.5±0.41 任意単位(AU))および糸球体硬化症(データ示さず;図3A;および表2:平均GFR=48.25±8.52 ml/min/1.73m2;IL8病理組織学スコア:0.0±0.0 任意単位(AU))へと進行する間、IL8染色の定常的な減少が観察された。対照対象は完全に保たれた糸球体を有し、IL8染色は見られなかった(データ示さず;および図3A)。
【0199】
加えて、上記の生検に対して実施したrt-PCRにより、IL8のmRNAレベルが対照個体と比べてT2D患者において上方制御されていることが明らかにされた(IL8 mRNA:糖尿病 vs 対照:3倍増加、p<0.05;図3B)。簡潔に述べると、精製した糸球体からTrizol Reagent (Invitrogen)を用いてRNAを抽出し、TaqMan assays (Life Technologies、グランドアイランド、ニューヨーク州)を用いて製造元の指示に従ってqRTPCR分析を行った。ΔΔCt法を用いて、標準化発現値を決定した。定量的逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)データは、ACTBの発現に関して標準化し、ΔΔCt値を算出した。統計学的分析により、one-way ANOVAで各患者についてすべての細胞集団の間での遺伝子発現を比較し、次いで、関心対象の集団と他のすべての集団との間の多重比較のためのBonferroni事後検定を行った。統計学的解析は、入手可能なRT2 profiler PCR Array Data Analysisソフトウェア(Qiagen)によっても行った。CXCR1およびCXCR2レベルの間に有意な差は観察されなかった。検出可能な量の転写産物(IL8 mRNA:糖尿病 vs 対照、p<0.05;図7C)が同定された。さらに、IL8は糸球体レベルで発現しており、かつシナプトポディン(ポドサイトマーカー)およびCD-31(内皮性マーカー)と共局在化していた(データ示さず)。
【0200】
得られたデータは、糸球体への選択的な局在化、および、ポドサイトレベルでのシナプトポディンと内皮レベルでのCD31との共発現を明らかにした(データ示さず)。図3Aおよび3Bに提示された証拠を確認すると、IL8発現は、腎実質の細胞充実度の喪失および線維症の発症に続いて次第に減少している(データ示さず)。
【0201】
実施例5
尿中IL8レベルは腎機能の悪化したT2D患者において高い
IL8が2型糖尿病(T2D)患者におけるDKDと関連しているのか、および特に尿中IL8レベルがアルブミン尿症の状態にしたがって改変されるのかを確認するために、本発明者らは、T2Dの個体のJoslinコホートを利用した。このコホートは、8~12年間の追跡調査(ただし腎臓機能低下、タンパク尿の発生および末期腎疾患(ESRD)により打ち切られた)を受けたT2Dの個体を含む。次のとおり群分けされた1246名のT2D患者において、尿中IL8のベースラインのレベルをLuminexにより測定した:正常アルブミン尿の対象702名、微量アルブミン尿の対象390名、顕性アルブミン尿の対象156名、および健常対象25名。本発明者らは、第一段階としてベースラインでの尿中のIL8レベルを評価し、微量アルブミン尿の個体におけるより高い尿中IL8レベルはアルブミン尿の最高レベルに関連していることを見出した。
【0202】
簡潔に述べると、Luminex(登録商標)のxMAP(登録商標)テクノロジーに磁気ミクロスフェアベースのMilliplex MAP(登録商標)アッセイ(EMD Millipore、ビレリカ、マサチューセッツ州)を用い、製造元のプロトコル(4)に従って使用して、各患者からの尿サンプルをヒトIL8濃度について検査した。簡潔に述べると、尿サンプルを+4℃で徐々に解かし、10,000gで10分間遠心分離した。次いで、尿サンプルに磁気ビーズを入れて+4℃で一晩、穏やかな振盪下でインキュベートした。次いで、ビオチン化レポーターを加え、ストレプトアビジン-フィコエリトリン溶液をサンプルとともに室温で30分間インキュベートした。サンプルをLuminex200(登録商標)リーダー(Luminex Corp、オースチン、テキサス州)で読み、結果をxPONENT(登録商標)ソフトウェアパッケージ(Luminex Corp)で分析した。データは平均±標準誤差で表している。2つの群を横断的に比較するときは、分布にしたがって、対応のないスチューデントのt検定による両側検定(パラメトリックデータ用)またはマン・ホイットニー検定(ノンパラメトリックデータ用)を用いた。2以上の群を比較するときは、ANOVA(パラメトリックデータ用)およびクラスカル・ワリス検定(ノンパラメトリックデータ用)を用いた。0.05未満のP値(両側検定による)を、統計学的有意差の指標と考えた。GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software, Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州)を用いてデータを解析しグラフを生成した。
【0203】
得られたデータは、微量アルブミン尿の患者は正常アルブミン尿の個体と比べて高い尿中IL8レベルを呈したことを示す(IL8:正常アルブミン尿者=19.69±3.70 vs 微量アルブミン尿者=30.28±5.42 pg/ml、p<0.001;図6A、6B、および8A)。次に、微量アルブミン尿の患者(より腎機能異常へと進行しやすい)を評価したところ、尿中IL8濃度と尿中アルブミン:クレアチニン比(ACR; mg/g)で測定される腎機能の喪失との間の相関が決定された。ベースラインでの尿中IL8が高い患者(微量アルブミン尿患者コホートにおけるIL8の中央分布よりも上側として定義)は、有意に悪い腎機能を示した[ACR:Q3~Q4(高IL8)=101.7±13.0 vs Q1~Q2(低IL8)=58.5±6.5 mg/g、p=0.003、図5B]。IL8の中央閾値は、2.41 pg/mlであった。加えて、Joslinコホートからのデータを分析した;腎機能が正常(GFR≧60 ml/min)で正常/微量範囲内のアルブミン尿の、5年にわたり追跡された389名の患者である。アルブミン:クレアチニン比(ACR: mg/g)およびGFRの勾配を、すべての患者について算出した。正常および微量アルブミン尿コホートにおけるIL8の中央分布より上の患者は、中央値より下側の者と比べて有意に高いACRを示した(図8D)。全389名の患者とその正常アルブミン尿および微量アルブミン尿のサブセットのうち、尿中のIL8についての検査で陽性を示した患者は、有意に高いACR値も示した(図8B)。GFRの勾配は5年の追跡調査期間において1.6 ml/年であり(IQR 0.5~3.3)、55名の患者がFDAの定義による「困難な腎転帰(hard renal outcome)」を有した(ESRD、任意の原因による死、または30%の腎臓機能喪失)。IL8値は検討された追跡変数のいずれとも定量的に相関しなかった(GFR勾配、腎転帰の危険、ベースライン尿タンパクレベル)。続いて、尿中IL8検査陽性を有した患者を、陰性の患者と比較した。陽性患者は有意に急なGFR勾配を有した(2.47±0.26 vs 1.81±0.16 ml/分/年、p=0.036、図8C);この傾向は、微量アルブミン尿群内でも(2.5±0.29 vs 1.84±0.19 ml/分/年、p=0.056、図8C)、正常アルブミン尿群内でも(2.3±0.7 vs 1.71±0.28 ml/分/年、p=0.39、図8C)観察された。
【0204】
複合腎転帰に関して、389名の患者のうちの368名が有効なデータを有していた;41/55イベント(74.5%)が、陽性の尿中IL8値を有していた。イベントのリスクはIL8陽性患者の19%対IL8陰性患者の9%であり、絶対リスクの増加は10%、相対的増加は111%だった(χ2検定、p=0.0096、データ示さず)。すべての対象のうち、IL8陽性尿を伴う対象は、イベント(ESRD、任意の原因による死、または30%の腎臓機能喪失)を被るリスクが1.33倍であった(95% C.I. 1.11~1.60)。同様に、早期の微量および正常アルブミン尿におけるリスクは、それぞれ1.29および1.76のリスクを有していた(95% C.I. 1.05~1.58および95% C.I. 1.41~2.20;図8E)。
【0205】
実施例6
DKDと関連付けられるCXCR1遺伝子の一塩基多型の同定
ヒトにおけるDNに対するIL8-CXCR1/2軸の重要性を評価するために、the Joslin Study of Genetics of NephropathyのT2Dの個体からのサンプルを評価した。このコホートからのデータは、すでに公開されている(the National Institute of Healthのワールドワイドウェブアドレスにおいてgap、アクセッション番号phs000302.v1.p1で見られるdbGaPにて入手可能)。このコホートに含まれる患者は、8~12年間の追跡調査においてモニタリングされた(ただし、タンパク尿、腎機能の低下、およびESRDで打ち切られた)。DNの速い進行とIL8、CXCR1またはCXCR2遺伝子座の何らかの自然発生的な遺伝的変異との間に関連性があるかを決定するための実験的検討が実施された。326名のT2D患者(DNを有するまたは有さない患者)を、スクリーニングし遺伝子型を決定して、これらの遺伝子座の何らかの一塩基多型(SNP)がDN加速に影響し得るかを評価した。
【0206】
詳細には、この集合から糖尿病性腎臓病症例を、IlluminaのヒトCNV370vlジェノタイピングアレイ(Illumina、サンディエゴ、カリフォルニア州)での全ゲノム遺伝子型決定のためにランダムに選択した(データはthe National Institute of Healthのワールドワイドウェブページ、アクセッション番号phs000302.v1.p1のdbGaPで入手可能)。マイナーアレル頻度(Minor Allele Frequency; MAF) <0.01、ハーディ・ワインベルグ仮説の棄却(P≦10~5)、および差次的データ欠損率(症例/対照状態による)のための品質管理基準(quality control metrics)の適用により、324,382個の常染色体性一塩基多型(SNPs)についての高品質の遺伝子型データが得られた。ヨーロッパ系の全個体のACRおよびeGFRデータが、量的形質分析のために使用できた。標準的な症例/対照アレル試験を用いてP値を算出した。推定糸球体濾過量に関する量的形質分析によるP値を提示する。すべての連関検定はPLINKを用いて実施した。SNPsの位置は、NCBI Build 36.1(3)を参照した。
【0207】
326名のT2D個体をDKDの有無でスクリーニングおよび遺伝子型決定し、IL8、CXCR1、またはCXCR2遺伝子の何らかの一塩基多型(SNP)がDKD発症に影響を与え得るかを評価した。この集団でのDKDとの最も強い関連は、2番染色体のCXCR1遺伝子の218461578位に位置するSNPである、rs13006838で生じた(log10-p値=1.35)。
【0208】
同様に、IL8-CXCR1/2軸がT1D患者における糖尿病性腎臓病(DKD)と関連しているかどうかを確認するため、本発明者らは、Genetics of Kidney disease (GoKind)集団(n=829症例;904名の対照患者)を利用した(2)。この集団において、推定糸球体濾過量(eGFR)の低下との最も強い関連は、CXCR1遺伝子において発生した:(i) rs4674308(2番染色体、219018727位)、log10-p値=1.36; (ii)rs4674309(2番染色体、219022817位)、log10-p値=1.47; (iii) rs3755042(2番染色体、219025492位)、log10-p値=1.36;(iv) rs7601872(2番染色体、219028129位)、log10-p値=1.36;(v) rs664514(2番染色体、219038063位)、log10-p値=1.31(下の表1参照)。
【0209】
IL8およびCXCR1/2遺伝子座のSNPとDN、ACR、およびeGFRとの遺伝子型による関連を観察した。DN集団で、ESRDへの進行またはGFRの悪化との最も強い関連は、rs13006838で生じた(log10-p値=1.35; p=0.045);このSNPは2番染色体のCXCR1遺伝子の218461578位に位置する(表4)。この発見は、DNのESRDへの進行における、IL8-CXCR1/2軸の重要性を示している。GFRを性別、年齢、肥満度指数、糖化ヘモグロビンA1Cに対して調節したとき、この関連性は有意でなくなる。CXCR2とIL8に関しては、ESRDへの進行、ACR、またはGFRと関連した遺伝子座は見られなかった。
【0210】
実施例7
IL8およびCXCR-1/2はヒトポドサイトにより発現される
ヒトのポドサイトを、IL8、CXCR1、およびCXCR2発現に関してインビトロで調べた(図9A~9C)。ポドサイトを、完全な細胞分化の後5日間、正常グルコース(10 mM [NG])または高グルコース(30 mM [HG])中で培養した。高グルコースの浸透圧対照として、マンニトールを使用した(マンニトール20mM+グルコース 10mM)。不死化したポドサイト細胞株を、当技術分野で公知の標準的な手法を用いて培養した。基本条件下でIL8の弱い発現が検出され、これは培養培地中のグルコースレベルによって影響を受けなかった。反対に、CXCR-1は、正常血糖培地から高血糖培地で、15%から5%未満に落ちた。CXCR-2発現の有意な変化は見られなかった(図9Bおよび9C)。
【0211】
本明細書の実施例に示されたすべてのインビトロおよびインビボの実験データは、特に示さない限り、3連で行った。db/dbマウスにおけるタンパク尿測定は未処置の動物10匹、処置済の動物30匹について行った。Prism統計ソフトウェア(ラホヤ、カリフォルニア州、米国)をデータ分析に使用した。データはダゴスティーノ・パーソン検定(連続非正規分布の変数を中央値と四分位範囲(IQR)とで示した)によって分類し、マン・ホイットニー検定(正規分布変数を平均値と標準偏差によって示した)で分析し、かつ対応のある両側t検定またはone-way ANOVAで分析した。離散変数については、χ2検定を用いた。すべての検定について、p<0.05を有意とした。
【0212】
参考文献
【0213】
(表1)DNと関連付けられたCXCR1のSNPs
【0214】
(表2)次第に減少する糸球体IL8発現と進行性腎臓傷害とを有する患者におけるGFRレベル
【0215】
(表3)同定された状態の例を一覧にした表。一覧に掲載された状態の一つまたは組み合わせを被っていると同定された対象は、本明細書に開示された方法により処置され得る。
【0216】
(表4)ゲノム全領域関連研究を用いてCXCR-2、CXCR-1、およびCXCL-8遺伝子座において同定されたSNPs
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2023-01-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。