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特開2023-36687アルコキシル化不飽和脂肪酸およびそれらの使用
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  • 特開-アルコキシル化不飽和脂肪酸およびそれらの使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036687
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】アルコキシル化不飽和脂肪酸およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/24 20060101AFI20230307BHJP
   C08G 65/332 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C08F2/24 A
C08G65/332
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022198046
(22)【出願日】2022-12-12
(62)【分割の表示】P 2018538837の分割
【原出願日】2017-01-30
(31)【優先権主張番号】62/290,815
(32)【優先日】2016-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/305,563
(32)【優先日】2016-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520247833
【氏名又は名称】ウィルマー トレーディング ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137969
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 憲昭
(74)【代理人】
【識別番号】100104824
【弁理士】
【氏名又は名称】穐場 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100121463
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】ライアン リティチ
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ コーバン
(72)【発明者】
【氏名】ポール エイ バーティン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】重合後の集中的な除去取り組みを必要としない界面活性化合物であって、乳化重合によって製造されるポリマーの特性を改良することができる新規な界面活性剤を使用した、乳化重合する方法を提供する。
【解決手段】界面活性剤として、式(I)の化合物を用いて、前記界面活性剤の集中的な除去を必要とせずに、乳化重合する方法を提供する。

(式中、Rは水素原子であり;GはC1-4アルキレンでありRは水素原子、C1-5アルキル、またはC2-5アルケニルであり;nは1~50の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
で表され、式中:
は水素原子またはC1-6アルキル基であり;
はC1-4アルキレンであり
は水素原子、C1-5アルキル、またはC2-5アルケニルであり;
nは1~50の整数である、
化合物。
【請求項2】
が水素原子である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がC1-6アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
がメチルまたはエチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、各存在ごとに独立して、-CH-CH-、-CH-CH-CH-、-CH(CH)-CH-、-CH-CH(CH)-、または-CH-CH-CH-CH-である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
が-CH-CHである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
が水素原子である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
がC1-5アルキルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
がメチルまたはエチルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
がC2-5アルケニルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
が-CH-CH=CHまたは-CH-CH=CH-CH-CHである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
nが6~30の整数である、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
nが6~50の整数である、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
nが6~18の整数である、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
nが8~16の整数である、請求項12に記載の化合物。
【請求項16】
nが9~15の整数である、請求項12に記載の化合物。
【請求項17】
水と;
請求項1~16のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物と
を含む、組成物。
【請求項18】
1種以上のモノマーをさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記1種以上のモノマーが、合成ラテックスを形成するためのモノマーを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記1種以上のモノマーがフリーラジカル重合性モノマーを含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
前記1種以上のモノマーが、ビニル化合物、アクリル酸、アクリレート、アルケン、ハロ置換アルケン、ニトリル置換アルケン、スチレン、およびこれらの混合物からなる群より選択されるモノマーを含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
フリーラジカル開始剤をさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が、分散相および連続相を有するエマルションである、請求項17~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記連続相が水を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記分散相が、前記1種以上のモノマーの少なくとも一部を含む、請求項23または24に記載の組成物。
【請求項26】
1種以上の追加のコモノマーをさらに含む、請求項17~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
1種以上の界面活性剤をさらに含む、請求項17~26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項28】
前記1種以上の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
1種以上の非界面活性安定剤をさらに含む、請求項17~28のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
連鎖移動剤、緩衝剤、および塩などの1種以上の添加剤をさらに含む、請求項17~29のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項31】
反応混合物から形成されるポリマー組成物であって、前記反応混合物が請求項17~30のいずれか一項に記載の組成物である、ポリマー組成物。
【請求項32】
前記ポリマー組成物が合成ラテックスである、請求項31に記載のポリマー組成物。
【請求項33】
ポリマー組成物を形成する方法であって、
請求項18~30のいずれか一項に記載の組成物を準備する工程と;
前記組成物中の前記1種以上のモノマーを反応させて、前記ポリマー組成物を形成する工程と、
を含む、方法。
【請求項34】
前記ポリマー組成物が合成ラテックスである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
油井またはガス井の処理のための組成物であって、
水と;
請求項1~16のいずれか一項に記載の1つ以上の化合物と
を含む、組成物。
【請求項36】
油井またはガス井を処理する方法であって、
請求項35に記載の組成物を準備する工程と;
前記組成物を油井またはガス井に導入する工程と
を含む、方法。
【請求項37】
前記組成物が、水圧下で前記油井またはガス井に導入される、請求項36に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年2月3日に出願された米国仮出願第62/290,815号明細書および2016年3月9日に出願された米国仮出願第62/305,563号明細書の優先権の利益を主張するものであり、これらの両方は、その全体が本明細書に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
アルコキシル化脂肪酸、そのような化合物の製造方法および使用方法が、本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、アルコキシル化脂肪酸は、天然油由来のモノマーから形成される。いくつかの実施形態では、アルコキシル化脂肪酸は、乳化重合によって合成ラテックスを製造するための界面活性剤として使用される。いくつかの他の実施形態では、アルコキシル化脂肪酸は、スチレンブタジエンゴムなどの合成ゴムを製造するための界面活性剤として使用される。いくつかの他の実施形態では、アルコキシル化脂肪酸は、ガス井または油井の処理用組成物中の、洗浄用途用組成物中の、様々な洗濯関連用途での使用のための組成物中の、パーソナルケア組成物での使用のための組成物中の、または反応性および非反応性水性コーティング用途などのコーティング用途の溶媒としての使用のための組成物中の、界面活性剤として使用される。
【背景技術】
【0003】
合成ラテックスは、一般に乳化重合によって製造される。特定の乳化重合プロセスでは、モノマー化合物は、界面活性剤の補助により形成されるミセルの一部として水性溶媒中に懸濁される。そのような系における重合反応は、一般にフリーラジカル重合によって進行する。重合が完了すると、得られたポリマーを水性溶媒から除去することができる。あるいは、他の例では、得られた分散液が最終生成物である。
【0004】
乳化重合は、フリーラジカル重合によって特定のラテックスを製造する方法として多くの利点をもたらす。例えば、そのプロセスは、温度制御された環境での迅速な重合を可能にする。したがって、反応が進行して熱が発生しても、得られるポリマーの特性は変化し
ない。さらに、乳化重合は、反応媒体がほぼ一定の粘度を保持することを可能にし、それは、反応が進行しても特性の変化も防ぐ。
【0005】
しかしながら、1つの欠点は、重合を可能にする界面活性剤が反応後の組成物中に残ることである。これらの界面活性剤は、ポリマー組成物から除去することが困難な場合がある。したがって、十分に低い臨界ミセル濃度を有し、重合後の集中的な除去取り組みを必要としない界面活性化合物を発見することが望ましい場合がある。
【0006】
したがって、そのような目的に役立ち、乳化重合によって製造されるポリマーの特性を改良することができる新規な界面活性剤を発見することが引き続き必要である。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本開示は、式(I)の化合物を提供する。
【化1】

式中:Rは水素原子またはC1-6アルキル基であり;GはC1-4アルキレンであり;Rは水素原子、C1-5アルキル、またはC2-5アルケニルであり;nは1~50の整数である。いくつかの実施形態では、nは6~50の整数である。
【0008】
第2の態様では、本開示は、水と、第1の態様の1つ以上の化合物とを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、乳化重合を用いて合成ラテックス材料を形成するのに適したモノマー、またはスチレンブタジエンゴムなどの合成ゴムを形成するのに適したモノマーなどの、1種以上のモノマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、1種以上のモノマーは、ビニル化合物、アクリレート、およびそれらの様々な組み合わせを含む。
【0009】
第3の態様では、本開示は、反応混合物から形成されるポリマー組成物を提供し、ここで、反応混合物は、第2の態様の任意の実施形態の組成物である。
【0010】
第4の態様では、本開示は、ポリマー組成物を形成する方法を提供し、その方法は、1種以上のモノマーを含む組成物などの第2の態様の任意の実施形態の組成物を準備する工程と;組成物中の1種以上のモノマーを反応させてポリマー組成物を形成する工程とを含む。
【0011】
第5の態様では、本開示は、水と、第1の態様の1つ以上の化合物とを含む組成物を提供し、その組成物は、例えば、種々のテルペン(例えば、d-リモネン)または飽和および/もしくは不飽和エステル(例えば、9-デセン酸メチル、9-ドデセン酸メチルなど)などの他の物質と組み合わせた、油井またはガス井の処理での使用に適している。
【0012】
第6の態様では、本開示は、水と、第1の態様の1つ以上の化合物とを含む洗浄組成物を提供し、その組成物は、硬質表面洗浄などの様々な洗浄用途での使用に適している。いくつかのそのような態様では、本開示は、水と、第1の態様の1つ以上の化合物とを含む組成物を準備する工程と;組成物を被洗浄面に塗布する工程とを含む洗浄方法を提供する
。いくつかの実施形態では、表面は硬質表面である。
【0013】
第7の態様では、本開示は、水と、第1の態様の1つ以上の化合物とを含む布地ケア組成物を提供し、その組成物は、洗濯洗剤、柔軟剤などの様々な布地ケア用途での使用に適している。いくつかのそのような態様では、本開示は、水と、第1の態様の1つ以上の化合物とを含む組成物を準備する工程と;布地物品に組成物を塗布する工程とを含む布地処理方法を提供する。
【0014】
第8の態様では、本開示は、水と、第1の態様の1つ以上の化合物とを含むパーソナルケア組成物を提供し、その組成物は様々なパーソナルケア用途での使用に適している。いくつかの実施形態では、組成物は、水中油型または油中水型エマルションなどのエマルションの形態である。いくつかのそのような態様では、本開示は、水と、第1の態様の1つ以上の化合物とを含む組成物を準備する工程と;組成物を哺乳動物の皮膚または毛髪に塗布する工程とを含む、哺乳動物の皮膚または毛髪の処理方法を提供する。いくつかの実施形態では、哺乳動物の皮膚または毛髪は、ヒトの皮膚または毛髪である。
【0015】
第9の態様では、本開示は、水と、樹脂と、第1の態様の1つ以上の化合物とを含むコーティング組成物を提供する。いくつかの実施形態では、樹脂は膜形成ポリマーである。いくつかのそのような実施形態では、膜形成ポリマーは天然または合成ラテックスである。いくつかの他の実施形態では、樹脂はアルキド樹脂である。いくつかのそのような態様では、本開示は、水と、樹脂と、第1の態様の1つ以上の化合物とを含む組成物を準備する工程と;組成物を生地に塗布する工程とを含む、表面のコーティング方法を提供する。いくつかの実施形態では、樹脂は膜形成ポリマーである。いくつかの他の実施形態では、樹脂はアルキド樹脂である。
【0016】
特定の他の態様では、本開示は、第1の態様の化合物を使用する様々な組成物および方法を提供する。これらおよび他の態様ならびに実施形態は、先の図面、発明を実施するための形態、および特許請求の範囲に記載されている。
【0017】
以下の図面は、本明細書に開示される組成物および方法の様々な実施形態を説明するために提供される。図面は説明の目的でのみ提供されており、任意の好ましい組成物または好ましい方法を記載することを意図するものではなく、請求項に係る発明の範囲に対するいかなる制限のもととなるものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本明細書に開示の特定の態様および実施形態の化合物を示す図であり、式中、Rは水素原子またはアルキル基であり;Gはアルキレン基であり;Rは水素原子、アルキル基、またはアルケニル基であり;nは1~50の整数である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の説明は、本明細書に開示される発明の様々な態様および実施形態を記載する。特定の実施形態は、本発明の範囲を規定するものではない。むしろ、実施形態は、請求項に係る発明の範囲内に含まれる様々な組成物、および方法の非限定的な例を提供する。その説明は、当業者の観点から読まれるべきである。したがって、当業者によく知られている情報は必ずしも含まれていない。
【0020】
(定義)
以下の用語および語句は、特に断りのない限り、以下に示す意味を有する。本開示は、本明細書において明白には定義されていない他の用語および語句を使用する場合がある。そのような他の用語および語句は、当業者にとって本開示の文脈内で所有すると思われる
意味を有するものとする。場合によっては、用語または語句は、単数形または複数形で定義され得る。そのような場合には、明示的に反対の指示がない限り、単数形の任意の用語はその複数形を含むことができ、逆も同様であることが理解される。
【0021】
本明細書で使用される場合、単数形は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。例えば、「置換基」への言及は、単一の置換基ならびに2つ以上の置換基および同類のものを包含する。
【0022】
本明細書で使用される場合、「例えば」、「例として」、「などの」または「含む」は、より一般的な主題をさらに明確にする例を導入することを意味する。特に明記しない限り、そのような例は、本開示に示される実施形態を理解するための補助としてのみ提供され、いかなる形でも限定することを意味しない。これらの語句は、開示の実施形態に対するいかなる優先も示すものでもない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」は、ポリマーの分子量に対して比較的低い相対分子量の物質から形成される構成単位の複数の繰返しを含む化学構造を有する物質を指す。用語「ポリマー」は、繰返し単位の鎖を有する可溶性および/または溶解性分子を含み、不溶性および不溶解性ネットワークも含む。本明細書で使用される場合、用語「ポリマー」は、ほんの僅かな(例えば、5~100)構成単位しか有さないオリゴマー材料を含むことがある。
【0024】
本明細書で使用される場合、「モノマー」は、重合反応を経てポリマーの化学構造に構成単位を寄与することができる物質を指す。
【0025】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」は、2種以上のモノマーから形成される構成単位を有するポリマーを指す。
【0026】
本明細書で使用される場合、「天然油」、「天然原料」、または「天然油原料」は、植物源または動物源に由来する油を指す。これらの用語は、特記しない限り、天然油誘導体を含む。この用語は、他に示されない限り、改変された植物源または動物源(例えば、遺伝子組み換え植物源または動物源)も含む。天然油の例には、植物油、藻類油、魚油、動物脂肪、トール油、これらの油の誘導体、これらの油の任意の組み合せなどが含まれるが、これらに限定されない。植物油の代表的な非限定例には、ナタネ油(キャノーラ油)、ヤシ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム核油、キリ油、ジャトロファ油、マスタード種子油、グンバイナズナ油、カメリナ油、アサ実油、およびヒマシ油が含まれる。動物脂肪の代表的な非限定例には、ラード、獣脂、家禽脂肪、黄色油脂、および魚油が含まれる。トール油は、木材パルプ製造の副産物である。いくつかの実施形態では、天然油または天然油原料は、1つ以上の不飽和グリセリド(例えば、不飽和トリグリセリド)を含む。いくつかのそのような実施形態では、天然油原料は、天然油原料の総重量に基づいて、1つ以上の不飽和トリグリセリドを、少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも97重量%、または少なくとも99重量%含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、「天然油誘導体」は、当技術分野で知られている方法のいずれか1つまたは組み合わせを用いて天然油から得られる化合物または化合物の混合物を指す。そのような方法には、けん化、脂肪分裂、エステル交換、エステル化、水素化(部分的、選択的、または完全)、異性化、酸化、および還元が含まれるが、これらに限定されない。天然油誘導体の代表的な非限定例には、ガム、リン脂質、石けん原料、酸性石け
ん原料、留出物または留出物スラッジ、脂肪酸および脂肪酸アルキルエステル(例えば、2-エチルヘキシルエステルなどの非限定例)、天然油のそれらのヒドロキシ置換された変形物が含まれる。例えば、天然油誘導体は、天然油のグリセリドに由来する脂肪酸メチルエステル(「FAME」)であってもよい。いくつかの実施形態では、原料は、キャノーラ油またはダイズ油、非限定的な例として、精製、漂白、および脱臭されたダイズ油(すなわち、RBDダイズ油)などを含む。ダイズ油は、典型的には、約95重量%以上(例えば、99重量%以上)の脂肪酸のトリグリセリドを含む。ダイズ油のポリオールエステル中の主要な脂肪酸には、非限定的な例としてパルミチン酸(ヘキサデカン酸)およびステアリン酸(オクタデカン酸)などの飽和脂肪酸と、非限定的な例としてオレイン酸(9-オクタデセン酸)、リノール酸(9,12-オクタデカジエン酸)、およびリノレン酸(9,12,15-オクタデカトリエン酸)などの不飽和脂肪酸とが含まれる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「メタセシス触媒」は、オレフィンメタセシス反応を触媒する任意の触媒または触媒系を含む。
【0029】
本明細書で使用される場合、「メタセシス」または「メタセシス化」は、メタセシス触媒の存在下での原料の反応によって新規オレフィン化合物、すなわち「メタセシス化」化合物を含む「メタセシス化生成物」を形成することを指す。メタセシス化は、特定の種類のオレフィンメタセシスに限定されず、交差メタセシス(すなわち、コメタセシス)、自己メタセシス、開環メタセシス、開環メタセシス重合(「ROMP」)、閉環メタセシス(「RCM」)、および非環式ジエンメタセシス(「ADMET」)を指す場合がある。いくつかの実施形態では、メタセシス化は、天然原料に存在する2つのトリグリセリドをメタセシス触媒の存在下で反応させること(自己メタセシス)を指し、各トリグリセリドは不飽和炭素-炭素二重結合を有し、それによってトリグリセリド二量体を含み得るオレフィンとエステルとの新しい混合物を形成する。そのようなトリグリセリド二量体は、1つより多くのオレフィン結合を有することができ、したがって、より高次のオリゴマーも形成され得る。さらに、いくつかの他の実施形態では、メタセシス化は、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合を有する天然原料中のエチレンなどのオレフィンとトリグリセリドとを反応させることによって、新しいオレフィン分子ならびに新しいエステル分子を形成する(交差メタセシス)。
【0030】
本明細書で使用される場合、「オレフィン」または「オレフィン類」は、少なくとも1つの不飽和炭素-炭素二重結合を有する化合物を指す。特定の実施形態では、用語「オレフィン」は、異なる炭素長を有する不飽和炭素-炭素二重結合化合物の群を指す。別段の記載がない限り、用語「オレフィン」または「オレフィン類」は、1つより多くの炭素-炭素二重結合を有する「多価不飽和オレフィン」または「ポリオレフィン」を包含する。本明細書中で使用される場合、用語「モノ不飽和オレフィン」または「モノオレフィン」は、ただ1つの炭素-炭素二重結合を有する化合物を指す。末端炭素-炭素二重結合を有する化合物は、「末端オレフィン」または「α-オレフィン」と呼ぶことができ、一方で非末端炭素-炭素二重結合を有するオレフィンは、「内部オレフィン」と呼ぶことができる。いくつかの実施形態では、アルファ-オレフィンは、末端炭素-炭素二重結合を有するアルケン(以下に定義する)である末端アルケンである。追加の炭素-炭素二重結合が存在し得る。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「低分子量オレフィン」は、C2-14の範囲の不飽和の直鎖状、分岐状、または環状炭化水素のいずれか1つまたは組み合せを意味し得る。低分子量オレフィンにはα-オレフィンが挙げられ、不飽和炭素-炭素結合が化合物の一端に存在する。低分子量オレフィンには、ジエンまたはトリエンも含まれ得る。低分子量オレフィンには、内部オレフィンすなわち「低分子量内部オレフィン」も含まれ得る。特定の実施形態では、低分子量内部オレフィンは、C4-14の範囲内にある。C2-6
囲の低分子量オレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、3-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン、シクロペンテン、1,4-ペンタジエン、1-ヘキセン、2-ヘキセン、3-ヘキセン、4-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-メチル-2-ペンテン、3-メチル-2-ペンテン、4-メチル-2-ペンテン、2-メチル-3-ペンテン、およびシクロヘキセンが含まれるが、これらに限定されない。C7-9範囲の低分子量オレフィンの非限定的な例には、1,4-ヘプタジエン、1-ヘプテン、3,6-ノナジエン、3-ノネン、1,4,7-オクタトリエンが含まれる。他の可能な低分子量オレフィンには、スチレンおよびビニルシクロヘキサンが挙げられる。特定の実施形態では、オレフィンの混合物を使用することが好ましく、その混合物は、C4-10範囲の直鎖および分岐低分子オレフィンを含むものとする。C4-10範囲のオレフィンは「短鎖オレフィン」と呼ぶことができ、分岐鎖でも非分岐鎖でもよい。一実施形態では、直鎖および分岐Cオレフィン(すなわち、1-ブテン、2-ブテン、および/またはイソブテンの組み合せ)の混合物を使用することが好ましい場合がある。他の実施形態では、より大きい範囲のC11-14が使用され得る。
【0032】
任意の基または化合物中の炭素原子の数は、以下の用語で表すことができる:炭素原子をz個有する化合物の群を指す「C」;xからy個までを含む炭素原子を含有する基または化合物を指す「Cx-y」。例えば、「C1-6アルキル」は、1~6個の炭素原子を有するアルキル鎖を表し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびn-ヘキシルを含むが、これらに限定されない。さらなる例として、「C4-10アルケン」は、4~10個の炭素原子を有するアルケン分子を指し、例えば、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-ヘキセン、1-ヘプテン、3-ヘプテン、1-オクテン、4-オクテン、1-ノネン、4-ノネン、および1-デセンを含むが、これらに限定されない。
【0033】
いくつかの例では、オレフィンは「アルケン」であってもよく、それは2~30個の炭素原子および1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分岐鎖非芳香族炭化水素を指し、それは任意に置換されていてもよく、本明細書にさらに記載されるように、多重置換度が許容されている。「一価不飽和アルケン」は、1つの炭素-炭素二重結合を有するアルケンを指し、一方「多価不飽和アルケン」は、2つ以上の炭素-炭素二重結合を有するアルケンを指す。「低級アルケン」は、本明細書で使用される場合、2~10個の炭素原子を有するアルケンを指す。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「エステル」または「エステル類」は、一般式:R-COO-R’を有する化合物を指し、式中、RおよびR’は任意の有機基(アルキル基、アリール基、またはシリル基など)を意味し、ヘテロ原子含有置換基を有する有機基を含む。特定の実施形態では、RおよびR’は、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアルコール基を表す。特定の実施形態では、用語「エステル」は、上記の一般式の化合物の群を指してもよく、ここで、化合物は異なる炭素長を有する。特定の実施形態では、エステルは、三価アルコールであるグリセロールのエステルであってもよい。用語「グリセリド」は、グリセロールの-OH基の1つ、2つ、または3つがエステル化されているエステルを指すことができる。
【0035】
一般式R-COO-R’のRまたはR’基が不飽和炭素-炭素二重結合を含有する場合、オレフィンはエステルを含んでもよく、エステルもオレフィンを含んでもよいことに留意されたい。そのような化合物は、「不飽和エステル」または「オレフィンエステル」または「オレフィンエステル化合物」と呼ぶことができる。さらに、「末端オレフィンエス
テル化合物」は、Rが鎖の末端に位置するオレフィンを有するエステル化合物を指し得る。「内部オレフィンエステル」は、Rが鎖の内部位置に配置されたオレフィンを有するエステル化合物を指し得る。さらに、用語「末端オレフィン」は、R’が水素または任意の有機化合物(アルキル、アリール、またはシリル基など)を表し、Rが鎖の末端に位置するオレフィンを有するエステルまたはその酸を指してもよく、用語「内部オレフィン」は、R’が水素または任意の有機化合物(アルキル、アリール、またはシリル基など)を表し、Rが鎖の内部位置に配置されたオレフィンを有するエステルまたはその酸を指し得る。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アルキル」は、1~30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和炭化水素を指し、それは任意に置換されていてもよく、本明細書にさらに記載されるように、多重置換度が許容されている。「アルキル」の例には、本明細書で使用される場合、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、および2-エチルヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。アルキル基中の炭素原子の数は、「Cx-yアルキル」という語句で表され、それはアルキル基を指し、本明細書で定義されるように、xからy個までを含む炭素原子を含有する。したがって、「C1-6アルキル」は、1~6個の炭素原子を有するアルキル鎖を表し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、n-ペンチル、ネオペンチル、およびn-ヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの例では、「アルキル」基は二価であってもよく、この場合、その基は代わりに「アルキレン」基と呼ぶことができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」は、2~30個の炭素原子と1つ以上の炭素-炭素二重結合とを有する直鎖または分岐鎖不飽和炭化水素を指し、それは任意に置換されていてもよく、本明細書にさらに記載されるように、多重置換度が許容されている。「アルケニル」の例には、本明細書で使用される場合、ビニル、アリル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ブテニル、2-ペンテニル、3-ヘキセニルなどが含まれるが、これらに限定されない。アルケニル基中の炭素原子の数は、本明細書で定義されるように、xからy個までを含む炭素原子を含有するアルケニル基を指す「Cx-yアルケニル」という語句によって表される。したがって、「C2-6アルケニル」は、2~6個の炭素原子を有するアルキル鎖を表し、例えば、ビニル、アリル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ブテニル、2-ペンテニル、3-ヘキセニルなどが含まれるが、これらに限定されない。場合によっては、「アルケニル」基は二価であってもよく、この場合、その基は代わりに「アルケニレン」基と呼ぶことができる。
【0038】
本明細書中で使用される場合、「置換された」とは、1つ以上の指定された部位の水素原子の、指名された置換基(単数または複数)での置換を指し、別段の記載がない限り多重置換度が許容されているが、置換により、安定または化学的に実現可能な化合物が得られることを条件とする。安定な化合物または化学的に実現可能な化合物は、化学構造が、約-80℃~約+40℃の温度で、水分または他の化学反応性の高い条件がない状態で保たれたときに、少なくとも1週間、化学構造が実質的に変化しない化合物であるか、またはその完全性を十分長く維持して患者への治療的もしくは予防的適用に有用である化合物である。本明細書で使用される場合、語句「1つ以上の・・・で置換された」または「・・・1回以上置換された」は、1つ~利用可能な結合部位の数に基づいて可能な置換基の最大数に等しい数の置換基を指すが、上記の安定性と化学的実現可能性の条件が満たされていることを条件とする。
【0039】
本明細書で使用される場合、「混合」または「混合された」または「混合物」は、2つ以上の組成物の任意の組み合わせを広く指す。2つ以上の組成物は、同じ物理的状態を有
する必要はない;したがって、固体を液体と「混合」させ、例えば、スラリー、懸濁液、または溶液を形成することができる。さらに、これらの用語は、組成物のある程度の均質性または均一性を必要としない。この、そのような「混合物」が均質であっても不均質であってもよく、均一であっても不均一であってもよい。さらに、その用語は、産業ミキサーなどの、混合を実行するための特定の装置の使用を必要としない。
【0040】
本明細書で使用される場合、「任意に」は、後述される事象(単数または複数)が起こっても起こらなくてもよいことを意味する。いくつかの実施形態では、任意の事象は発生しない。いくつかの他の実施形態では、任意の事象が1回以上発生する。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「含む」または「構成する」は、開かれた群を指し、その群は、明示的に列挙された要素に加えて追加の要素を含み得ることを意味する。例えば、「Aを含む」という語句は、Aが存在しなければならないことを意味するが、他の要素も存在し得ることを意味する。用語「含む」、「有する」、および「から構成される」およびそれらの文法的な変形は同じ意味を有する。対照的に、「からなる」は、閉じた群を指す。例えば、「Aからなる」という語句は、AおよびAのみが存在することを意味する。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「または」はその最も広い合理的な解釈が与えられ、いずれか/またはの構文に限定されない。したがって、語句「AまたはBを含む」は、Aが存在してBが存在しないこと、またはBが存在してAが存在しないこと、またはAおよびBが両方存在することを意味する。さらに、Aが、例えば、複数の要素、例えばAおよびAを有することができるクラスを定義する場合、クラスの1つ以上の要素が同時に存在することができる。
【0043】
本明細書で使用される場合、表示される様々な官能基は、ハイフンもしくはダッシュ(-)またはアスタリスク(*)を有する官能基での結合点を有すると理解される。換言すれば、-CHCHCHの場合、結合点は左端のCH基であることが理解されよう。基がアスタリスクまたはダッシュなしで記される場合、結合点は、記された基の単純で通常の意味で示される。
【0044】
本明細書で使用される場合、多原子の二価種は、左から右に読み進められる。例えば、明細書または特許請求の範囲がA-D-Eを記載し、Dが-OC(O)-と定義される場合、Dで置き換えして得られる基はA-OC(O)-Eであり、A-C(O)O-Eではない。
【0045】
本明細書のいくつかの例では、有機化合物は、化学結合が線で示される「線構造」方法論を用いて表現され、構造中、炭素原子は明示的に示されておらず、炭素に共有結合した水素原子(またはC-H結合)は全く示されていない。例えば、その慣例によって、式
【化2】

はn-プロパンを表す。本明細書のいくつかの例では、ねじれた結合を用いて、化合物が2つ以上の異性体のいずれか1つを有し得ることを示す。例えば、構造
【化3】

は、(E)-2-ブテン、(Z)-2-ブテン、またはそれらの混合物を指すことができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される化合物は天然油からのオレフィンメタセシスを経て生成され、炭素-炭素二重結合の周りの立体化学の乱雑をもたらし、EおよびZ化合物(式中、Rは水素原子ではない)の混合物を生成することができる。式(I)の化合物を含み、Rが水素原子ではない本明細書のいくつかの実施形態では、組成物は、組成物中の式(I)の化合物の総重量に基づいて、炭素-炭素二重結合上の置換基がE(トランス)配置である式(I)の化合物を、少なくとも1重量%、または少なくとも2重量%、または少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも20重量%、または少なくとも35重量%、または少なくとも50重量%、または少なくとも65重量%、または少なくとも75重量%含む。
【0046】
このサブセクションには含まれていないが、この説明の他の部分では他の用語が定義されている。
【0047】
(アルコキシル化不飽和脂肪酸化合物)
第1の態様では、本開示は、式(I)の化合物を提供する。
【化4】

式中:Rは水素原子またはC1-6アルキル基であり;GはC1-4アルキレンであり;Rは水素原子、C1-5アルキル、またはC2-5アルケニルであり;nは1~50の整数である。
【0048】
いくつかの実施形態では、Rは水素原子である。上記の実施形態のいずれかのいくつかの他の実施形態では、RはC1-6アルキルである。いくつかのそのような実施形態では、Rはメチルまたはエチルである。いくつかのそのような実施形態では、Rはメチルである。いくつかの他のそのような実施形態では、Rはエチルである。
【0049】
上記の実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、Gは、各存在ごとに独立して、-CH-CH-、-CH-CH-CH-、-CH(CH)-CH-、-CH-CH(CH)-、または-CH-CH-CH-CH-である。いくつかのそのような実施形態では、Gは-CH-CHである
【0050】
上記実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、Rは水素原子である。上記実施形態のいずれかのいくつかの他の実施形態では、RはC1-5アルキルである。いくつかのそのような実施形態では、Rはメチルまたはエチルである。いくつかのさらなるそのような実施形態では、Rはメチルである。いくつかのさらなるそのような実施形態では、Rはエチルである。上記実施形態のいずれかのいくつかの他の実施形態では、RはC2-5アルケニルである。いくつかのそのような実施形態では、Rは-CH-CH=CHまたは-CH-CH=CH-CH-CHである。
【0051】
上記実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、Rは水素原子ではない。いくつかのそのような実施形態では、式(I)の化合物を含む(下記の態様または実施形態のいずれかによる)組成物は、Rが結合している炭素-炭素二重結合の周りにE配置を有する式(I)の化合物と、Rが結合している炭素-炭素二重結合の周りにZ配置を有する
式(I)の化合物とを含有し、式中、Rが結合している炭素-炭素二重結合の周りにZ配置を有する式(I)の化合物は、組成物中の式(I)の化合物の総重量に基づいて、組成物中の式(I)の化合物の少なくとも1重量%、または少なくとも2重量%、または少なくとも5重量%、または少なくとも10重量%、または少なくとも20重量%、または少なくとも35重量%、または少なくとも50重量%、または少なくとも65重量%、または少なくとも75重量%を構成する。
【0052】
上記実施形態のいずれかのいくつかの実施形態では、nは6~50の整数であるか、またはnは6~30の整数であるか、またはnは6~24の整数であるか、またはnは6~18の整数であるか、またはnは8~16の整数であるか、またはnは9~15の整数であるか、またはnは1~5の整数であるか、またはnは1~4の整数であるか、またはnは1~3の整数であるか、またはnは1~2の整数である。
【0053】
(アルコキシル化不飽和脂肪酸を含む組成物)
いくつかの他の態様および実施形態では、本開示は、水ならびに前述の態様および実施形態の1つ以上の化合物を含む組成物を提供する。
【0054】
いくつかのそのような実施形態では、組成物は、例えば乳化重合を用いて合成ラテックス材料を形成するためのモノマーなどの1種以上のモノマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、1種以上のモノマーは、フリーラジカル重合可能なモノマーを含む。例えば、いくつかの実施形態では、1種以上のモノマーは、ビニル化合物(例えば、ビニルアルコール、酢酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニルなど)、アクリル酸、アクリレート(例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチルなどのアクリル酸アルキル、およびメタクリル酸メチルなどの各種メタクリル酸アルキルなど)、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブタジエンなど)、ハロ置換アルケン(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル、テトラフルオロエテンなど)、ニトリル置換アルケン(例えば、アクリロニトリルなど)、スチレン、ならびにそれらの混合物からなる群より選択されるモノマーを含む。
【0055】
いくつかの実施形態では、組成物は、分散相および連続相を有するエマルションである。いくつかの実施形態では、連続相は水を含む。いくつかの他の実施形態では、分散相は、1種以上のモノマーの少なくとも一部を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、組成物は、特定の他の材料を含む。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、例えば、1種以上のモノマーの重合、および、いくつかの実施形態では、得られるポリマーへの式(I)の化合物の組み込みを開始することができるフリーラジカル開始剤をさらに含む。
【0057】
他の材料も組成物中に含まれてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、1種以上の追加のコモノマーを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(式(I)の化合物に加えて)1種以上の界面活性剤を含む。いくつかのそのような実施形態では、1種以上の界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびそれらの混合物からなる群より選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、1種以上の非界面活性安定剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、連鎖移動剤、緩衝剤、および塩などの1種以上の添加剤を含む。
【0058】
(乳化重合のための界面活性剤としての使用)
他の態様および実施形態では、本開示は、反応混合物から形成されるポリマー組成物を提供し、ここで、反応混合物は、前述の態様および実施形態の任意の実施形態の組成物である。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、例えば乳化重合によって形成される
合成ラテックスである。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は合成ゴム、例えばスチレンブタジエンゴムである。
【0059】
いくつかの他の態様および実施形態では、本開示は、ポリマー組成物を形成する方法であって、前述の態様および実施形態の組成物、例えば1種以上のモノマーを含む組成物を準備する工程と;組成物中の1種以上のモノマーを反応させてポリマー組成物を形成する工程とを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、例えば乳化重合によって形成される合成ラテックスである。
【0060】
(その他の用途)
他の態様および実施形態では、式(I)の化合物を、多くの他での使用および用途に用いることができる。これらには、ペイント組成物、接着剤組成物、紙コーティング、布地サイジング、不織布地、ガラス繊維サイジング組成物、バインダー組成物、床磨き剤、インク、カーペット裏地材料、家庭用洗剤、および洗濯関連組成物が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
いくつかの態様および実施形態では、本開示は、式(I)の1つ以上の化合物を含む油井またはガス井の処理に使用するための組成物(例えば、水性組成物)を提供する。いくつかのそのような実施形態では、組成物は、テルペン(例えば、d-リモネン)および/または不飽和エステル(例えば、9-デセン酸メチルおよび/または9-ドデセン酸メチル)などの他の処理化合物も含む。
【0062】
いくつかの態様および実施形態では、本開示は、水と、式(I)の1つ以上の化合物とを含む洗浄組成物を提供し、その組成物は、硬質表面洗浄などの様々な洗浄用途での使用に適している。いくつかのそのような態様では、本開示は、水と、式(I)の1つ以上の化合物とを含む組成物を準備する工程と;組成物を被洗浄面に塗布する工程とを含む洗浄方法を提供する。いくつかの実施形態では、表面は硬質表面である。
【0063】
いくつかの態様および実施形態では、本開示は、水と、式(I)の1つ以上の化合物とを含む布地ケア組成物を提供し、その組成物は、洗濯洗剤、柔軟剤などの様々な布地ケア用途での使用に適している。いくつかのそのような態様では、本開示は、水と、式(I)の1つ以上の化合物とを含む組成物を準備する工程と;布地物品に組成物を塗布する工程とを含む布地処理方法を提供する。
【0064】
いくつかの態様および実施形態では、本開示は、水と、式(I)の1つ以上の化合物とを含むパーソナルケア組成物を提供し、その組成物は様々なパーソナルケア用途での使用に適している。いくつかの実施形態では、組成物は、水中油型または油中水型エマルションなどのエマルションの形態である。いくつかのそのような態様では、本開示は、水と、式(I)の1つ以上の化合物とを含む組成物を準備する工程と;組成物を哺乳動物の皮膚または毛髪に塗布する工程とを含む、哺乳動物の皮膚または毛髪の処理方法を提供する。いくつかの実施形態では、哺乳動物の皮膚または毛髪は、ヒトの皮膚または毛髪である。
【0065】
いくつかの態様および実施形態では、本開示は、水と、樹脂と、式(I)の1つ以上の化合物とを含むコーティング組成物を提供する。いくつかの実施形態では、樹脂は膜形成ポリマーである。いくつかのそのような実施形態では、膜形成ポリマーは天然または合成ラテックスである。いくつかの他の実施形態では、樹脂はアルキド樹脂である。いくつかのそのような態様では、本開示は、水と、樹脂と、式(I)の1つ以上の化合物とを含む組成物を準備する工程と;組成物を生地に塗布する工程とを含む、表面のコーティング方法を提供する。いくつかの実施形態では、樹脂は膜形成ポリマーである。いくつかの他の実施形態では、樹脂はアルキド樹脂である。
【0066】
(再生可能資源からの誘導)
本明細書に開示の態様または実施形態のいずれかで使用される化合物は、特定の実施形態では、様々な天然油またはそれらの誘導体などの再生可能資源に由来し得る。任意の適切な方法を使用し、これらの化合物をそのような再生可能資源から製造することができる。適切な方法には、発酵、生物有機体による変換、およびメタセシスによる変換が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
オレフィンメタセシスは、特定の天然油原料を、様々な用途で使用することができるか、またはさらに化学修飾をして様々な用途に使用することができるオレフィンおよびエステルに変換する1つの可能な手段を提供する。いくつかの実施形態では、組成物(または組成物の成分)は、天然油および/またはそれらの脂肪酸もしくは脂肪エステル誘導体のメタセシス反応を経て形成される再生可能原料などの再生可能原料から形成され得る。炭素-炭素二重結合を含む化合物がメタセシス触媒の存在下でメタセシス反応を受けると、元の炭素-炭素二重結合の一部または全部が破壊され、新しい炭素-炭素二重結合が形成される。そのようなメタセシス反応の生成物は異なる位置に炭素-炭素二重結合を含み、それにより有用な化学的性質を有する不飽和有機化合物を提供することができる。
【0068】
広範囲の天然油、またはそれらの誘導体を、そのようなメタセシス反応に使用することができる。適切な天然油の例には、植物油、藻類油、魚油、動物脂肪、トール油、これらの油の誘導体、これらの油の任意の組み合せなどが含まれるが、これらに限定されない。植物油の代表的な非限定例には、ナタネ油(キャノーラ油)、ヤシ油、コーン油、綿実油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ベニバナ油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、アマニ油、パーム核油、キリ油、ジャトロファ油、マスタード種子油、グンバイナズナ油、カメリナ油、アサ実油、およびヒマシ油が含まれる。動物脂肪の代表的な非限定例には、ラード、獣脂、家禽脂肪、黄色油脂、および魚油が含まれる。トール油は、木材パルプ製造の副産物である。いくつかの実施形態では、天然油または天然油原料は、1つ以上の不飽和グリセリド(例えば、不飽和トリグリセリド)を含む。いくつかのそのような実施形態では、天然油原料は、天然油原料の総重量に基づいて、1つ以上の不飽和トリグリセリドを、少なくとも50重量%、または少なくとも60重量%、または少なくとも70重量%、または少なくとも80重量%、または少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%、または少なくとも97重量%、または少なくとも99重量%含む。
【0069】
天然油は、キャノーラまたはダイズ油、例えば、精製、漂白および脱臭されたダイズ油(すなわち、RBDダイズ油)などを含み得る。ダイズ油は、典型的には、約95重量パーセント(重量%)以上(例えば、99重量%以上)の脂肪酸のトリグリセリドを含む。ダイズ油のポリオールエステル中の主要な脂肪酸には、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)およびステアリン酸(オクタデカン酸)などの飽和脂肪酸と、オレイン酸(9-オクタデセン酸)、リノール酸(9,12-オクタデカジエン酸)、およびリノレン酸(9,12,15-オクタデカトリエン酸)などの不飽和脂肪酸とが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
メタセシス化天然油も使用することができる。メタセシス化天然油の例には、メタセシス化植物油、メタセシス化藻類油、メタセシス化動物脂肪、メタセシス化トール油、これら油のメタセシス化誘導体、またはそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。例えば、メタセシス化植物油は、メタセシス化キャノーラ油、メタセシス化ナタネ油、メタセシス化ココナッツ油、メタセシス化コーン油、メタセシス化綿実油、メタセシス化オリーブ油、メタセシス化パーム油、メタセシス化ピーナッツ油、メタセシス化ベニバナ油、メタセシス化ゴマ油、メタセシス化ダイズ油、メタセシス化ヒマワリ油、メタセシス化アマニ油、メタセシス化パーム核油、メタセシス化キリ油、メタセシス化ジャトロファ
油、メタセシス化マスタード油、メタセシス化カメリナ油、メタセシス化グンバイナズナ油、メタセシス化ヒマシ油、これらの油のメタセシス化誘導体、またはそれらの混合物を含み得る。別の例では、メタセシス化天然油は、メタセシス化ラード、メタセシス化獣脂、メタセシス化家禽脂肪、メタセシス化魚油、これら油のメタセシス化誘導体、またはそれらの混合物などのメタセシス化動物脂肪を含み得る。
【0071】
そのような天然油またはそれらの誘導体は、種々の不飽和脂肪酸のトリグリセリドなどのエステルを含有することができる。そのような脂肪酸の同一性および濃度は、油源、および、場合によっては、種類によって異なる。いくつかの実施形態では、天然油は、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸の1つ以上のエステル、またはそれらの任意の組み合わせを含む。そのような脂肪酸エステルがメタセシス化されると、新しい化合物が形成される。例えば、メタセシスが、特定の短鎖オレフィン、例えば、エチレン、プロピレン、または1-ブテンを使用し、天然油がオレイン酸のエステルを含む実施形態では、ある量の1-デセンおよび1-デセン酸(またはそのエステル)がとりわけ形成される。例えば、アルキルアルコールによるエステル交換の後、ある量の9-デセン酸アルキルエステルが形成される。いくつかのそのような実施形態では、メタセシスとエステル交換との間に分離工程が発生し、そこでアルケンはエステルから分離される。いくつかの他の実施形態では、エステル交換はメタセシスの前に行うことができ、メタセシスはエステル交換生成物に対して実施される。
【0072】
いくつかの実施形態では、天然油は、それらの有用性を特定のメタセシス反応における使用のために促進することができる様々な前処理プロセスを受けることができる。有用な前処理方法は、米国特許出願公開第2011/0113679号明細書、米国特許出願公開第2014/0275595号明細書および米国特許出願公開第2014/0275681号明細書に記載されており、これらの3つ全ては、参照により、本明細書に完全に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0073】
いくつかの実施形態では、天然油原料の任意の前処理の後、天然油原料をメタセシス触媒の存在下で、メタセシス反応器中で反応させる。いくつかの他の実施形態では、不飽和エステル(例えば、不飽和トリグリセリドなどの不飽和グリセリド)を、メタセシス触媒の存在下で、メタセシス反応器中で反応させる。これらの不飽和エステルは、天然油原料の成分であってもよく、または他の供給源から、例えば先に実施したメタセシス反応で生成されたエステルから誘導されてもよい。特定の実施形態では、メタセシス触媒の存在下で、天然油または不飽和エステルは、それ自体で自己メタセシス反応を起こすことができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、メタセシスは、天然油原料(または別の不飽和エステル)を、メタセシス触媒の存在下で反応させることを含む。いくつかのそのような実施形態では、メタセシスは、天然油原料中の1つ以上の不飽和グリセリド(例えば、不飽和トリグリセリド)を、メタセシス触媒の存在下で反応させることを含む。いくつかの実施形態では、不飽和グリセリドは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸の1つ以上のエステル、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの他の実施形態では、不飽和グリセリドは、別の不飽和グリセリドの部分水素化および/またはメタセシスの生成物である(上記のように)。
【0075】
そのようなメタセシス反応のための条件、および反応器設計、ならびに適切な触媒は、オレフィンエステルのメタセシスに関して以下に記載する通りである。その議論は、参照により、本明細書に完全に記載されているかのように組み込まれる。
【0076】
(オレフィンメタセシス)
いくつかの実施形態では、不飽和モノマーの1つ以上は、天然油または天然油誘導体をメタセシス化することによって製造することができる。用語「メタセシス」または「メタセシス化」は、交差メタセシス、自己メタセシス、開環メタセシス、開環メタセシス重合(「ROMP」)、閉環メタセシス(「RCM」)、および非環式ジエンメタセシス(「ADMET」)を含むが、これらに限定されない様々な反応を指すことができる。任意の適切なメタセシス反応を、所望の生成物または生成混合物に応じて使用することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、天然油原料の任意の前処理の後、天然油原料を、メタセシス触媒の存在下で、メタセシス反応器中で反応させる。いくつかの他の実施形態では、不飽和エステル(例えば、不飽和トリグリセリドなどの不飽和グリセリド)を、メタセシス触媒の存在下で、メタセシス反応器中で反応させる。これらの不飽和エステルは、天然油原料の成分であってもよく、または他の供給源から、例えば先に実施したメタセシス反応で生成されたエステルから誘導されてもよい。特定の実施形態では、メタセシス触媒の存在下で、天然油または不飽和エステルは、それ自体で自己メタセシス反応を起こすことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、メタセシスは、天然油原料(または別の不飽和エステル)を、メタセシス触媒の存在下で反応させることを含む。いくつかのそのような実施形態では、メタセシスは、天然油原料中の1つ以上の不飽和グリセリド(例えば、不飽和トリグリセリド)を、メタセシス触媒の存在下で反応させることを含む。いくつかの実施形態では、不飽和グリセリドは、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸の1つ以上のエステル、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの他の実施形態では、不飽和グリセリドは、別の不飽和グリセリドの部分水素化および/またはメタセシスの生成物である(上記のように)。
【0079】
メタセシスプロセスは、所望のメタセシス生成物を生成するのに適切な任意の条件下で行うことができる。例えば、化学量論、雰囲気、溶媒、温度、および圧力が当業者によって選択され、所望の生成物を生成し、望ましくない副生成物を最小限に抑えることができる。いくつかの実施形態では、メタセシスプロセスを不活性雰囲気下で行ってもよい。同様に、試薬が気体として供給される実施形態では、不活性気体状希釈剤を気体流中で使用することができる。そのような実施形態では、不活性雰囲気または不活性気体状希釈剤は、典型的には不活性気体であり、これは、気体がメタセシス触媒と相互作用して触媒作用を実質的に妨げないことを意味する。例えば、不活性気体の非限定的な例には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、および窒素が挙げられ、これらは個々にまたは互いにおよび他の不活性気体と一緒に使用される。
【0080】
メタセシス反応のための反応器設計は、反応の規模、反応条件(熱、圧力など)、触媒の同一性、反応器内で反応される材料の同一性、使用される原料の性質を含むが、これらに限定されない様々な要因に応じて変化させることができる。適切な反応器は、関連する因子に応じて、当業者によって設計され、本明細書に開示されるような精製プロセスに組み込まれ得る。
【0081】
本明細書に開示されるメタセシス反応は、一般に、1つ以上のメタセシス触媒の存在下で起こる。そのような方法は、任意の適切なメタセシス触媒を使用することができる。この反応におけるメタセシス触媒は、メタセシス反応を触媒する任意の触媒または触媒系を含み得る。任意の既知メタセシス触媒を、単独で、または1つ以上の追加の触媒と組み合わせて使用してもよい。メタセシス触媒およびプロセス条件の例は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0160472号明細書に記載されているが、本明細書からの一貫性のない開示または定義が存在する場合には、本明細
書の開示または定義が優先するものとみなされることを除く。米国特許出願公開第2011/0160472号明細書に記載の多くのメタセシス触媒は、Materia社(カリフォルニア州パサディナ)から現在入手可能である。
【0082】
いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、グラブス型オレフィンメタセシス触媒および/またはそれから誘導される実体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、第1世代のグラブス型オレフィンメタセシス触媒および/またはそれから誘導される実体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、第2世代グラブス型オレフィンメタセシス触媒および/またはそれから誘導される実体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、第1世代ホベイダ-グラブス型オレフィンメタセシス触媒および/またはそれから誘導される実体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、第2世代ホベイダ-グラブス型オレフィンメタセシス触媒および/またはそれから誘導される実体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、カリフォルニア州パサディナのMateria社から販売されている1つまたは複数のルテニウムカルベンメタセシス触媒および/またはそのような触媒に由来する1つ以上の実体を含む。本教示に従って使用するためのMateria社からの代表的なメタセシス触媒には、以下の製品番号で販売されるものおよびそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない:製品番号C823(CAS番号172222-30-9)、製品番号C848(CAS番号246047-72-3)、製品番号C601(CAS番号203714-71-0)、製品番号C627(CAS番号301224-40-8)、製品番号C571(CAS番号927429-61-6)、製品番号C598(CAS番号802912-44-3)、製品番号C793(CAS番号927429-60-5)、製品番号C801(CAS番号194659-03-9)、製品番号C827(CAS番号253688-91-4)、製品番号C884(CAS番号900169-53-1)、製品番号C833(CAS番号1020085-61-3)、製品番号C859(CAS番号832146-68-6)、製品番号C711(CAS番号635679-24-2)、製品番号C933(CAS番号373640-75-6)。
【0083】
いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、モリブデンおよび/もしくはタングステンカルベン錯体ならびに/またはそのような錯体に由来する実体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、シュロック型オレフィンメタセシス触媒および/またはそれから誘導される実体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、モリブデンの高酸化状態アルキリデン錯体および/またはそれから誘導される実体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、タングステンの高酸化状態アルキリデン錯体および/またはそれから誘導される実体を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、モリブデン(VI)を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、タングステン(VI)を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス触媒は、(a)Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 2003, 42, 4592-4633、(b)Chem. Rev., 2002, 102, 145-179;および/または(c)Chem. Rev., 2009, 109, 3211-3226の1つ以上に記載のタイプのモリブデンおよび/またはタングステン含有アルキリデン錯体を含み、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるが、本明細書からの一貫性のない開示または定義が存在する場合には、本明細書の開示または定義が優先するものとみなされることを除く。
【0084】
特定の実施形態では、メタセシス触媒は、メタセシス反応を行う前に溶媒に溶解される。特定のそのような実施形態では、選択される溶媒は、メタセシス触媒に関して実質的に不活性であるように選択され得る。例えば、実質的に不活性な溶媒には、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族溶媒;およびジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの塩化アルカンが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、溶媒はトルエンを含む。
【0085】
他の実施形態では、メタセシス触媒は、メタセシス反応を行う前に溶媒に溶解されない。代わりに、触媒は、例えば、天然油または不飽和エステルが液体状態にある天然油または不飽和エステルでスラリー化することができる。これらの条件下で、プロセスから溶媒(例えば、トルエン)を除去し、溶媒を分離する際の下流のオレフィン損失を排除することが可能である。他の実施形態では、メタセシス触媒は、固体状態で(スラリー化されずに)、天然油または不飽和エステル(例えば、オーガー供給物)に添加されてもよい。
【0086】
メタセシス反応温度は、場合によっては、温度が所望の生成物を許容可能な速度で提供するように選択される速度制御変数であってもよい。特定の実施形態では、メタセシス反応温度は、-40℃より高く、または-20℃より高く、または0℃より高く、または10℃より高い。特定の実施形態では、メタセシス反応温度は、200℃未満、または150℃未満、または120℃未満である。いくつかの実施形態では、メタセシス反応温度は、0℃~150℃、または10℃~120℃である。
【実施例0087】
(実施例1-合成手順)
撹拌子、熱電対、ディーンスタークトラップ、コンデンサー、ガラス栓、加熱マントル、および窒素導入口を備えた1リットルの三つ口丸底フラスコに、脂肪酸(9-デセン酸、9-DA、75.0g、0.440mol)を加えた。これに、等モル量のメトキシポリエチレングリコール(Carbowax(商標)550、525g、0.440mol)、トルエン(325g)、およびp-トルエンスルホン酸(pTsOH、1.0g)を加えた。これを撹拌し(500RPM)、加熱還流した(118~124℃)。理論量の水(7.9ml)がディーンスタークトラップに集まるまで、通常8時間後まで加熱を続けた。水をディーンスタークトラップトラップから排出し、水が蓄積されなくなる(<1.0ml)まで(8時間)反応を続けた。この間、反応は黄色~オレンジ色に暗くなった。加熱を止め、冷却した(60℃)溶液を2リットルのナシ型フラスコに移し、減圧下で濃縮した(95℃/全真空)。熱い生成物(uC10MEE-12EO)を中和し、風袋を計量した8オンスの透明ボトルに移し、秤量した(定量的収率)。同様の手順を用いて、同じエステルの7EOおよび16EO変異体を作製した。
【0088】
(実施例2-泡の高さ)
9デセン酸メチルエステルエトキシレート(uC10MEE-XXEO)は、飽和対応物(C10MEE-XXEO)よりも泡発生が著しく低く、市販のアルキルフェノールエトキシレートと比較して発泡が低い(表1)。界面活性剤による発泡の緩和は、完成したコーティングの品質に影響を与える重要な特性である。表1は、Ross-Miles泡高さ法を用いた泡の高さの結果を示す。
【表1】
【0089】
(実施例3-重合)
9-デセン酸メチルエステルエトキシレートは、それらの飽和C10対応物と比較して改善された取扱い特性を示す。多くの非イオン性界面活性剤は、水中濃度が増加するにつれて扱いにくい(ゲル)液晶相を形成する。これは、これらの界面活性剤を含む水性生成物の調製および移送においてだけでなく、長期間にわたってその安定性を維持する上で重要な制限となり得る。9-デセン酸から誘導されたメチルエステルエトキシレートは、ゲル相形成を示さず、かつデカン酸メチルエステルエトキシレートよりも低い粘度を示した(表2)。これは、APEの代わりに使用される直鎖および他の飽和アルコールエトキシレートと比較して大幅に改善されている。表2は、25℃での水中濃度の関数としてのブルックフィールド粘度を示す。
【表2】
【0090】
(実施例4-重合)
撹拌子、熱電対、コンデンサー、2つのゴム隔壁、湯浴、および窒素導入口を備えた250mlの四つ口丸底フラスコ(RBF)に、脱イオン(DI)水(45.6g)および炭酸ナトリウム(0.08g)を加えた。これを撹拌し(250RPM)、窒素をバブリングしながら70℃に加温し、水を脱気した。10分後、窒素バブリングを止め、アニオン性界面活性剤(PolyStep(商標)B-27、2.4g)、次いで非イオン性界面活性剤(uC10MEE-12EO、0.41g)を添加して、20.5のHLBを得た。それとは別に、アクリル酸ブチル(9.0g、20重量%)を酢酸ビニル(36.0g、80重量%)と混合し、50mlのガラスシリンジに加えた。過硫酸カリウム(0.040g)の溶液をDI水(1.0g)に溶解し、1mlガラスシリンジに入れた。過硫酸カリウム(0.05g)と炭酸ナトリウム(0.10g)の別の溶液をDI水(6ml)に溶解し、5mlガラスシリンジに入れた。モノマーをシリンジポンプによりRBFに供給し、撹拌した界面活性剤溶液に過硫酸カリウム溶液(1.0g)の最初の充填を加えた。10分後、他の開始剤の溶液(6ml)をポンプで注入し、反応温度を70℃±2℃に保った。モノマー供給は2時間後に完了し、開始剤供給は30分後に終了し、反応を70℃でさらに1時間保持した。加熱を止め、ラテックスを600ミクロンのスクリーンに注ぎ、凝固物を除去した。凝固物をフラスコ内の残渣に加え、乾燥させた(1.9g)。白色ラテックスを秤量し(92.6g)、その固形分パーセントを決定し(46.9重量%、43.4g固形分)、97.8%質量収支を得た。
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤として、 式(I):
【化1】
で表され、式中:
は水素原子であり;
はC1-4アルキレンであり
は水素原子、C1-5アルキル、またはC2-5アルケニルであり;
nは1~50の整数である、
化合物を用いて、前記界面活性剤の集中的な除去を必要とせずに、乳化重合する方法。
【請求項2】
が、各存在ごとに独立して、-CH-CH-、-CH-CH-CH-、-CH(CH)-CH-、-CH-CH(CH)-、または-CH-CH-CH-CH-である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が-CH-CHである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
が水素原子である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
がC1-5アルキルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
がメチルまたはエチルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
がC2-5アルケニルである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
が-CH-CH=CHまたは-CH-CH=CH-CH-CHである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
nが6~30の整数である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
nが6~13の整数である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
nが6~18の整数である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
nが8~16の整数である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
nが9~15の整数である、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
1種以上のモノマーが、乳化重合で使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記1種以上のモノマーが、合成ラテックスを形成するためのモノマーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記1種以上のモノマーがフリーラジカル重合性モノマーを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記1種以上のモノマーが、ビニル化合物、アクリル酸、アクリレート、アルケン、ハロ置換アルケン、ニトリル置換アルケン、スチレン、およびこれらの混合物からなる群より選択されるモノマーを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
フリーラジカル開始剤が、前記乳化重合でさらに使用される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記乳化重合が、分散相および連続相を有するエマルションのための重合である、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記連続相が水を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記分散相が、前記1種以上のモノマーの少なくとも一部を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
1種以上の追加のコモノマーが、前記乳化重合でさらに使用される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
1種以上の界面活性剤が、前記乳化重合でさらに使用される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記1種以上の界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
1種以上の非界面活性安定剤が、前記乳化重合でさらに使用される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
連鎖移動剤、緩衝剤、および塩などの1種以上の添加剤が、前記乳化重合でさらに使用される、請求項14~17のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】