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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003678
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】車両用ガラスモジュール
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/14 20060101AFI20230110BHJP
   E05D 1/02 20060101ALI20230110BHJP
   E06B 3/62 20060101ALI20230110BHJP
   E05D 11/06 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
B60J1/14 C
E05D1/02 E
E06B3/62 Z
E05D11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104900
(22)【出願日】2021-06-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中川 雅文
(72)【発明者】
【氏名】門脇 武利
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和志
【テーマコード(参考)】
2E016
2E032
3D127
【Fターム(参考)】
2E016AA07
2E016BA10
2E016CA01
2E016CB01
2E016CC01
2E016DA07
2E016DB02
2E016DB03
2E016DB04
2E016DC03
2E016DD03
2E032BA06
2E032CA00
2E032DA00
3D127BB01
3D127CB07
3D127CC06
3D127DF02
3D127DF31
3D127EE07
3D127EE13
3D127EE20
(57)【要約】
【課題】製造効率が良く、耐久性の高い車両用ガラスモジュールを提供する。
【解決手段】車両用ガラスモジュールAは、一方の端部に力を印加して他方の端部を回動軸として回動させることにより片開き可能であって、車外側の第1面10aと、第1面10aと平行で車内側の第2面10bとを有するガラス板10と、ガラス板10の他方の端部における第2面10bの側に配置され、車体1に取り付け可能な複数の取付部材20と、ガラス板10と夫々の取付部材20とを各別に固定する固定機構40と、を備え、固定機構40は、ガラス板10に設けられた貫通孔11の縁部全域を覆う弾性変形可能な弾性部材43を含んでいる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に力を印加して他方の端部を回動軸として回動させることにより片開き可能な車両用ガラスモジュールであって、
車外側の第1面と、該第1面と平行で車内側の第2面とを有するガラス板と、
前記ガラス板の前記他方の端部における前記第2面の側に配置され、車体に取り付け可能な複数の取付部材と、
前記ガラス板と夫々の前記取付部材とを各別に固定する固定機構と、を備え、
前記固定機構は、前記ガラス板に設けられた貫通孔の縁部全域を覆う弾性変形可能な弾性部材を含んでいる車両用ガラスモジュール。
【請求項2】
前記取付部材は、前記車体に取り付け可能な第1板状部と、前記ガラス板の前記第2面と平行且つ前記弾性部材に接触する接触面を含む第2板状部と、前記第1板状部及び前記第2板状部を接続するヒンジ部と、が一体形成されており、
前記第1板状部は、前記接触面と平行な車体対向面を含んでおり、前記第2面と離間した状態で前記ヒンジ部から前記第2板状部とは反対側に延在している請求項1に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項3】
前記第1板状部は、前記車体対向面とは反対側の外表面に固定された頭部と前記車体対向面から延出した螺子部とを含むボルトを有している請求項2に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項4】
前記ガラス板の前記第1面に垂直な方向視で、前記取付部材の全体が、前記ガラス板と重複している請求項1から3の何れか一項に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項5】
前記取付部材における前記固定機構とは異なる箇所に設けられ、前記ガラス板の回転を防止する回転防止機構を更に備えた請求項1から4の何れか一項に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項6】
前記回転防止機構は、前記ガラス板と夫々の前記取付部材とを各別に接着している請求項5に記載の車両用ガラスモジュール。
【請求項7】
前記回転防止機構は、エポキシ樹脂を含む接着剤である請求項6に記載の車両用ガラスモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の端部からの力の印加により他方の端部を回動軸として片開き可能な車両用ガラスモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のリアサイドウインドウに設けられた片開き式のサイドクォーター窓ガラスが知られている(例えば、特許文献1参照)。サイドクォーター窓ガラスは、ガラス板の一方の端部のロック解除により、ガラス板の他方の端部を回動軸として回動させることにより僅かな隙間を形成し、車内を換気できるものである。
【0003】
特許文献1に記載の車両用ガラスモジュールは、ガラス板とガラス板の他方の端部に接着固定された金属板ヒンジとを備えており、金属板ヒンジがボルト,ナットにより車体に固定される。この金属板ヒンジは、ガラス板の他方の端部を包囲する断面コの字状、且つ、当該他方の端部の長手方向に亘る長尺状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-218419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両用ガラスモジュールは、金属板ヒンジが断面コの字状且つ長尺状で構造が複雑であり、重量も大きくなるため、製造効率が悪く、更に外面から金属板が露出しているため、美観も悪くなる。また、金属板ヒンジをガラス板に接着固定して支持する構造であるため、接着剤が劣化してガラス板の自重を支えきれずに変形する可能性があり、耐久性に問題があった。
【0006】
そこで、製造効率が良く、耐久性の高い車両用ガラスモジュールが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両用ガラスモジュールの特徴構成は、一方の端部に力を印加して他方の端部を回動軸として回動させることにより片開き可能な車両用ガラスモジュールであって、車外側の第1面と、該第1面と平行で車内側の第2面とを有するガラス板と、前記ガラス板の前記他方の端部における前記第2面の側に配置され、車体に取り付け可能な複数の取付部材と、前記ガラス板と夫々の前記取付部材とを各別に固定する固定機構と、を備え、前記固定機構は、前記ガラス板に設けられた貫通孔の縁部全域を覆う弾性変形可能な弾性部材を含んでいる点にある。
【0008】
本構成では、ヒンジ部分となるガラス板の他方の端部に、固定機構により複数の取付部材を各別に固定しているため、取付部材の重量が小さく、製造効率を高め、軽量化を実現することができる。また、夫々の取付部材はガラス板の車内側となる第2面に固定されているため、車外側から目立つことなく、美観に優れる。
【0009】
しかも、本構成の固定機構は、ガラス板に設けられた貫通孔の縁部全域を覆う弾性変形可能な弾性部材を含んでいるため、車両用ガラスモジュールを開閉したときには弾性部材が弾性変形する。つまり、窓開閉時における取付部材の変形に伴ってガラス板の貫通孔に作用する応力が弾性部材により緩和される。その結果、ガラス板において強度が弱くなる取付部材の固定部位(例えば貫通孔)に作用する応力が小さくなり、ガラス板の貫通孔の内周面に亀裂等が発生することなく、耐久性を高めることができる。
【0010】
このように、本構成を採用することにより、製造効率が良く、耐久性の高い車両用ガラスモジュールとなっている。
【0011】
他の特徴構成は、前記取付部材は、前記車体に取り付け可能な第1板状部と、前記ガラス板の前記第2面と平行且つ前記弾性部材に接触する接触面を含む第2板状部と、前記第1板状部及び前記第2板状部を接続するヒンジ部と、が一体形成されており、前記第1板状部は、前記接触面と平行な車体対向面を含んでおり、前記第2面と離間した状態で前記ヒンジ部から前記第2板状部とは反対側に延在している点にある。
【0012】
本構成では、取付部材の第2板状部が弾性部材に接触する接触面を含んでいるため、窓開閉時に取付部材がガラス板に直接当接することなく、ガラス板の耐久性を高めることができる。また、第1板状部が接触面と平行な車体対向面を含んでおり、第2面と離間した状態でヒンジ部から第2板状部とは反対側に延在しているため、ヒンジ部による変形機能を確保しながら取付部材を薄くコンパクトに形成して製造効率を高めることができる。
【0013】
他の特徴構成は、前記第1板状部は、前記車体対向面とは反対側の外表面に固定された頭部と前記車体対向面から延出した螺子部とを含むボルトを有している点にある。
【0014】
本構成のように、第1板状部にボルトを固定すれば、車体側に形成された孔にボルトを差し込んで螺子部にナットを螺合するだけで取付けが完了するため、車両用ガラスモジュールの車体への取付けが簡単になる。
【0015】
他の特徴構成は、前記ガラス板の前記第1面に垂直な方向視で、前記取付部材の全体が、前記ガラス板と重複している点にある。
【0016】
本構成では、取付部材がガラス板からはみ出ていないため、美観に優れる。また、窓の片開き時にガラス板の端部が取付部材に当接して損傷するといった不都合もない。
【0017】
他の特徴構成は、前記取付部材における前記固定機構とは異なる箇所に設けられ、前記ガラス板の回転を防止する回転防止機構を更に備えた点にある。
【0018】
上述したように、複数の取付部材をガラス板の貫通孔に固定する構成上、夫々の取付部材のガラス板との固定部位が独立した支点となり、自重の大きいガラス板を車体に装着する際に回転しやすい。そこで、本構成のように、取付部材における固定機構とは異なる箇所に回転防止機構を備えれば、ガラス板の回転が防止されるため、車両用ガラスモジュールの車体への取付けが容易なものとなる。
【0019】
他の特徴構成は、前記回転防止機構は、前記ガラス板と夫々の前記取付部材とを各別に接着している点にある。
【0020】
本構成のように、回転防止機構をガラス板と取付部材とを接着する構成とすれば、新たな固定部材を用意する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0021】
他の特徴構成は、前記回転防止機構は、エポキシ樹脂を含む接着剤である点にある。
【0022】
本構成のように、硬度の高いエポキシ樹脂を含む接着剤でガラス板と取付部材とを接着すれば、回転防止機構の強度を高めることが可能となり、窓開閉時に繰り返し弾性変形して接着強度が低下するおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】車体に車両用ガラスモジュールが取り付けられた正面図である。
図2図1のII-II線矢視図である。
図3】取付部材の斜視図である。
図4図1のIV-IV線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る車両用ガラスモジュールの1つの実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0025】
〔車両用ガラスモジュールの構成〕
図1図2に示すように、本実施形態に係る車両用ガラスモジュールAは、車体1に取り付けられて開閉する窓に使用される。車両用ガラスモジュールAは、ガラス板10と、固定機構40及び回転防止機構50によりガラス板10の端部に各別に取り付けられた複数(本実施形態においては2つ)の取付部材20と、からなる。車両用ガラスモジュールAは、ガラス板10の一方の端部に取り付けられた操作部材3を操作(例えば、ロック機構のロックを解除)し車内から車外に向かう力を印加して、ガラス板10の他方の端部に取り付けられた取付部材20を回動軸としてガラス板10を車体1に対して車外方向に向かって回動させることにより、片開き可能に構成されている。ガラス板10は、車体1に取り付けた状態で車外側に位置する第1面10aと、第1面10aに平行で車内側に位置する第2面10bとを有する。
【0026】
取付部材20は、図3に示すように、鉄やアルミ等の金属からなり、平面視長円形状の板材を板面の短手方向に沿って中央近傍の2箇所で折り曲げて階段状の段差を形成した板状部材21に、溶接等の方法により車体固定ボルト24(ボルトの一例)が取り付けられて構成されている。以下、取付部材20の板状部材21のうち、階段状の段差を形成する部分をヒンジ部28と称する。また、ヒンジ部28から延出し、車体固定ボルト24が取り付けられた板状部分を第1板状部21aと称し、第1板状部21aと平行且つヒンジ部28に対して第1板状部21aと反対方向に延出した側の板状部分を第2板状部21bと称する。
【0027】
板状部材21において、ヒンジ部28は第1板状部21a及び第2板状部21bを接続しており、ヒンジ部28により第1板状部21aと第2板状部21bとの間に段差が作られている。第1板状部21aの両側の板面及び第2板状部21bの両側の板面は何れも互いに平行なので、第1板状部21aとヒンジ部28との曲げ角度θ1、及び、第2板状部21bとヒンジ部28との曲げ角度θ2は、何れも同じ角度で鈍角である。
【0028】
板状部材21は、第1板状部21aの中央部に板厚方向に形成された貫通孔である第1ボルト挿通孔23を有しており(図4参照)、第1ボルト挿通孔23に、頭部24aと雄ねじ部(螺子部の一例)24bとを有する車体固定ボルト24のうち、雄ねじ部24bが挿通されている。車体固定ボルト24の頭部24aの外径は第1ボルト挿通孔23の内径よりも大きいので、頭部24aは第1ボルト挿通孔23に挿通できず、第1板状部21aの板面に当接する。当接した頭部24aと第1板状部21aの外表面29とは溶接等の方法により接合されており、これにより車体固定ボルト24は取付部材20の第1板状部21aの外表面29に対して固定されている。雄ねじ部24bは第1板状部21aに対するヒンジ部28の折り曲げ方向とは反対側(第1板状部21aの車体対向面22側)に延出している。この構成より、第1板状部21aは、第2面10bと離間した状態でヒンジ部28から第2板状部21bとは反対側に延在している。なお、第1板状部21aの両側の板面及び第2板状部21bの両側の板面は何れも互いに平行なので、第1板状部21aの車体対向面22と後述する第2板状部21bの接触面25とは互いに平行である。
【0029】
板状部材21における第2板状部21bの中央部には、車体固定ボルト24の雄ねじ部24bの延出方向と同じ方向、すなわち、第2板状部21bに対するヒンジ部28の折り曲げ方向と同じ方向に平面視で円形状の凹部26が形成されており、凹部26の中央部には、板厚方向に形成された貫通孔である第2ボルト挿通孔27が形成されている。第2ボルト挿通孔27には、後述する固定機構40が取り付けられる。
【0030】
固定機構40は、取付部材20をガラス板10に固定するために用いられる。図4に示すように、固定機構40は、リテーナ41と締付ボルト42とブッシュ(弾性部材の一例)43とからなる。
【0031】
リテーナ41は金属製で、頭部41aと頭部41aの中央から延出した円筒状の軸部41bとを有する。軸部41bにおいて頭部41aとは反対側の端部から頭部41aに向かって雌ねじ部41cが形成されている。雌ねじ部41cは、締付ボルト42の雄ねじ部42bと螺合するように構成されている。
【0032】
締付ボルト42は金属製で、頭部42aと雄ねじ部42bとを有する。雄ねじ部42bは、リテーナ41の雌ねじ部41cと螺合するように形成されており、これによりガラス板10に取付部材20を固定する。雄ねじ部42bの外径は、取付部材20の第2板状部21bの第2ボルト挿通孔27の内径よりも若干小さい。
【0033】
ブッシュ43は、ゴムやエラストマー等の弾性力を有する材料からなり、円筒形状の筒部43cと、筒部43cの軸方向の両端に夫々配置され、筒部43cから径外方向に延出した第1鍔部43aと第2鍔部43bとを有する。ブッシュ43の筒部43cの外径は、ガラス板10に形成された貫通孔であるリテーナ挿通孔11の内径よりも若干小さい。ブッシュ43は、第1鍔部43aと第2鍔部43bとでガラス板10を挟み込むようにリテーナ挿通孔11に嵌め込まれ、ガラス板10のリテーナ挿通孔11が露出しないようにする。このとき、第1鍔部43aはガラス板10の第1面10aに当接し、第2鍔部43bは第2面10bに当接する。なお、本実施形態におけるブッシュ43は一部品であるが、一つの筒部と一つの鍔部とからなる部品を2個使って、ガラス板10を表裏から挟み込むように構成されていてもよい。
【0034】
ブッシュ43を用いることにより、リテーナ41の軸部41bがガラス板10(特にリテーナ挿通孔11の縁部全域)と接することがない。したがって、仮に軸部41bにバリ等が残っていたとしても、それが車体1の振動等によりガラス板10に接触してガラス板10に亀裂等が入って破損することがない。
【0035】
〔車両用ガラスモジュールの製造方法〕
次に、車両用ガラスモジュールAの製造方法について説明する。
【0036】
まず、ガラス板10の他方の端部に形成されたリテーナ挿通孔11に固定機構40のブッシュ43を取り付ける。次に、ガラス板10の第1面10a側にリテーナ41の頭部41aが来るようにして、軸部41bをブッシュ43の筒部43cの内周面の内側の空間に挿通する。軸部41bはブッシュ43の筒部43cの軸方向長よりも長いので、軸部41bの先端は、第2鍔部43bから突出している。
【0037】
次に、取付部材20の第2板状部21bに形成された凹部26の底部26aの裏面26bの側(外側)から第2ボルト挿通孔27に締付ボルト42の雄ねじ部42bを挿通させた状態で、ガラス板10の第2面10b側から締付ボルト42の雄ねじ部42bをリテーナ41の雌ねじ部41cに螺合する。このとき、予め、回転防止機構50の一例としての接着剤51を車体固定ボルト24の頭部24aの表面に塗布しておく。そして、接着剤51が塗布された状態でリテーナ41に対して締付ボルト42を締結する。なお、回転防止機構50は、取付部材20において固定機構40とは異なる箇所に設けられており、車両用ガラスモジュールAの車体1への取り付け時にガラス板10が回転するのを防止するために設けられる。したがって、車両用ガラスモジュールAの車体1への取り付け後には、回転防止機構50におけるガラス板10が回転するのを防止する機能は不要となる。
【0038】
締付ボルト42の締結により、リテーナ41と締付ボルト42とでガラス板10と取付部材20とを挟み込む。これにより、ブッシュ43の第1鍔部43aが潰されてリテーナ41の頭部41aと密着すると共に、ブッシュ43の第2鍔部43bが潰されて第2板状部21bの凹部26よりも径方向外側の部分を含む接触面25と密着して、取付部材20の第2板状部21bがガラス板10に対して固定される。このとき、接着剤51がガラス板10の第2面10bに接着されるので、取付部材20の第1板状部21aもガラス板10に対して固定される。これを複数の取付部材20の夫々に対して行うことで、車両用ガラスモジュールAが完成する。このとき、車両用ガラスモジュールAにおいては、ガラス板10の第1面10aに垂直な方向視で、取付部材20の全体とガラス板10とが重複するように、ガラス板10に対して取付部材20が配置されている。
【0039】
車両用ガラスモジュールAでは、ガラス板10の他方の端部に、固定機構40により複数の取付部材20を各別に固定しているため、取付部材20の重量が小さく、製造効率を高め、軽量化を実現することができる。また、夫々の取付部材20はガラス板10の第2面10bに固定されているため、車外側から目立つことなく、美観に優れる。
【0040】
本実施形態において、ブッシュ43は、第1鍔部43aの厚さが第2鍔部43bの厚さよりも薄く構成されており、且つ、リテーナ41と締付ボルト42との締結状態において、第1鍔部43aがリテーナ41の頭部41aからはみ出さず、第2鍔部43bの外径も第2板状部21bから大きくはみ出さないように構成されている。これにより、ガラス板10から車外方向に突出する第1鍔部43aとリテーナ41の頭部41aの突出量を最小にすることができると共に、ガラス板10の第1面10aに垂直な方向から視認できるのはリテーナ41の頭部41aだけになるので、車体1の美観を損ねることがない。また、窓の片開き時にガラス板10の端部が取付部材20に当接して損傷するといった不都合もない。
【0041】
回転防止機構50の接着剤51は、車体固定ボルト24の雄ねじ部24bを中心として、取付部材20に対してガラス板10を回転させる剪断力に対する耐性(剪断強度)が大きく、取付部材20に対してガラス板10が接離する力(引張力、圧縮力)に対しては弾性力を有していることが好ましい。このような性質を有する接着剤51の例としてはエポキシ系接着剤(エポキシ樹脂を含む接着剤の一例)が挙げられる。硬度の高いエポキシ系接着剤51でガラス板10と取付部材20とを接着すれば、回転防止機構50の強度を高めることが可能となり、窓開閉時に繰り返し弾性変形して接着強度が低下するおそれもない。なお、エポキシ系接着剤51と同様の性質を有していれば、他の接着剤を用いてもよいし、ウレタン樹脂等の柔軟な接着剤を用いてもよい。
【0042】
〔車両用ガラスモジュールの車体への取付方法〕
次に、車両用ガラスモジュールAの車体1への取付方法について説明する。
【0043】
図4に示すように、車両用ガラスモジュールAの複数の車体固定ボルト24の位置に合わせて車体1のピラー2に形成したガラスモジュール取付孔2aに、車体1の外側から車両用ガラスモジュールAの取付部材20の雄ねじ部24bを挿通し、ピラー2の裏面側からナット4で締結する。これにより、取付部材20の車体対向面22と車体1のピラー2とが密着した状態で車両用ガラスモジュールAが取り付けられる。車両用ガラスモジュールAにおいては、取付部材20が、固定機構40と、固定機構40とは異なる箇所に設けられた回転防止機構50との二箇所によりガラス板10に固定されているので、車両用ガラスモジュールAのピラー2への取り付け時においても、取付部材20に対してガラス板10が回転することなく、確実に取り付けることができる。特に、片開き式の車両用ガラスモジュールAは、重量の大きいガラス板10が車体固定ボルト24の軸芯を回転軸として回転しやすく、ガラス板10を下側から支えながら取付作業を行う必要があり、作業効率が悪い。しかしながら、本実施形態における回転防止機構50を設けることにより、ガラスモジュール取付孔2aに車体固定ボルト24を差し込むだけでガラス板10の回転が防止されるため、車両用ガラスモジュールAの車体1への取付けが極めて簡便なものとなる。この後、ガラス板10の一方の端部と車体1の内側とを操作部材3で繋ぐことにより、車両用ガラスモジュールAの車体1への取り付けが完了する。
【0044】
このように、取付部材20は、第1板状部21aに固定された車体固定ボルト24を有しているので、車体1に形成されたガラスモジュール取付孔2aに車体固定ボルト24を差し込んで雄ねじ部24bにナット4を螺合するだけで良いため、車両用ガラスモジュールAの車体1への取付けが簡単である。また、回転防止機構50は複数の取付部材20に各別に設けられてガラス板10と夫々の取付部材20とを接着する構成であるため、新たな固定部材を用意する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0045】
このように車体1に取り付けられた車両用ガラスモジュールAは、ガラス板10の一方の端部に取り付けられた操作部材3の操作により車内から車外に向かう力が印加されると、ガラス板10の他方の端部に取り付けられた取付部材20のヒンジ部28を回動軸としてガラス板10が車体1に対して車外方向に向かって回動する。このとき、取付部材20の固定機構40のブッシュ43と回転防止機構50の接着剤51とが弾性変形している。つまり、窓開閉時における取付部材20の変形に伴ってガラス板10のリテーナ挿通孔11に作用する応力がブッシュ43により緩和され、ガラス板10の第2面10bに作用する応力が接着剤51により緩和される。その結果、ガラス板10において強度が弱くなる取付部材20の固定部位であるリテーナ挿通孔11及び第2面10bに作用する応力が小さくなり、ガラス板10のリテーナ挿通孔11の内周面や第2面10bに亀裂等が発生することなく、耐久性を高めることができる。
【0046】
また、車両用ガラスモジュールAでは、取付部材20の第2板状部21bがブッシュ43と接触する接触面25を含んでいるため、窓開閉時に取付部材20がガラス板10に直接当接することなく、ガラス板10の耐久性を高めることができる。また、取付部材20の第1板状部21aが接触面25と平行な車体対向面22を含んでおり、第2面10bと離間した状態でヒンジ部28から第2板状部21bとは反対側に延在しているため、ヒンジ部28による変形機能を確保しながら取付部材20を薄くコンパクトに形成して製造効率を高めることができる。
【0047】
〔その他の実施形態〕
(1)本実施形態においては、ヒンジ部28により第1板状部21aと第2板状部21bとの間に段差を設けたが、これに限られるものではない。第1板状部21aを第2面10bと離間した状態にできるのであれば、第1板状部21aとヒンジ部28と第2板状部21bの全てが同一平面状、すなわち板状部材21を折り曲げずに構成してもよい。この場合、ブッシュ43の第2鍔部43bの厚さを本実施形態よりも厚くすれば、取付部材20の第1板状部21aをガラス板10の第2面10bと離間した状態を容易に作ることができる。
【0048】
(2)本実施形態においては、第1板状部21aをヒンジ部28に対し第2板状部21bとは反対側に延在させたが、これに限られるものではない。取付部材20の第1板状部21aをガラス板10の第2面10bと離間した状態にできるのであれば、ヒンジ部28から第2板状部21bと同一側に延在させてもよい。この場合、ヒンジ部28をU字状や蛇腹状に形成することが好ましい。
【0049】
(3)本実施形態においては、車体固定ボルト24を第1板状部21aに固定させて取付部材20の一部としたが、車体固定ボルト24を取付部材20とは別部材としてもよい。
【0050】
(4)本実施形態においては,第2板状部21bに凹部26を設けたが、凹部26を設けずに第2板状部21bを平面状に構成してもよい。
【0051】
(5)本実施形態においては、回転防止機構50として接着剤51を用いたが、これに限られるものではない。例えば、両面テープなど、ガラス板10に孔を開けることなく取付部材20とガラス板10とを固定できる方法であれば任意の方法を用いることができる。
【0052】
(6)上述したように、車両用ガラスモジュールAを車体1のピラー2へ取り付けた後には、回転防止機構50の回転防止機能は不要となる。そのため、回転防止機構50は、車体1のピラー2への車両用ガラスモジュールAの取り付け時にガラス板10の回転を防止できるものであれば、どのような形態であっても良い。例えば、回転防止治具でガラス板10を保持した状態で車両用ガラスモジュールAをピラー2に取り付けて、車両用ガラスモジュールAの取り付け完了後に回転防止治具を取り外すようにしてもよい。
【0053】
(7)本実施形態においては、ガラス板10の第1面10aに垂直な方向視で、取付部材20の全体とガラス板10とが重複するように、ガラス板10に対して取付部材20が配置されていたが、外部から取付部材20の一部が視認できる形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、一方の端部からの力の印加により他方の端部を回動軸として片開き可能な車両用ガラスモジュールに利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
A 車両用ガラスモジュール
1 車体
10 ガラス板
10a 第1面
10b 第2面
11 リテーナ挿通孔(貫通孔)
20 取付部材
21a 第1板状部
21b 第2板状部
22 車体対向面
24 車体固定ボルト(ボルト)
24a 頭部
24b 雄ねじ部(螺子部)
25 接触面
28 ヒンジ部
29 外表面
40 固定機構
43 ブッシュ(弾性部材)
50 回転防止機構
51 接着剤
図1
図2
図3
図4