(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036836
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】リサイクルされたおよび再生可能な有機材料の精製
(51)【国際特許分類】
C10G 3/00 20060101AFI20230307BHJP
C10G 67/10 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C10G3/00 Z
C10G67/10
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022207664
(22)【出願日】2022-12-23
(62)【分割の表示】P 2021502417の分割
【原出願日】2019-07-19
(31)【優先権主張番号】20185652
(32)【優先日】2018-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(71)【出願人】
【識別番号】505081261
【氏名又は名称】ネステ オサケ ユキチュア ユルキネン
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トウコニーットュ、ブランカ
(72)【発明者】
【氏名】パーシカッリオ、ビッレ
(72)【発明者】
【氏名】パサネン、ユッカ-ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】トウロネン、ヨウニ
(72)【発明者】
【氏名】ホビ、メリ
(72)【発明者】
【氏名】パサネン、アンチ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーティネン、サッラ
(72)【発明者】
【氏名】トッピネン、サミ
(72)【発明者】
【氏名】アールト、ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンソン、カリ
(72)【発明者】
【氏名】リンドブラッド、マリナ
(72)【発明者】
【氏名】ケールドストレーム、マッツ
(72)【発明者】
【氏名】ランミンパー、カイサ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】リサイクルされたまたは再生可能な有機材料を精製するための方法を提供する。
【解決手段】リサイクルされたまたは再生可能な有機材料(10)は、20ppmより多いClを含み、精製するための方法は、(a)リサイクルされたまたは再生可能な有機材料(10)を提供する工程、(b)前記リサイクルされたまたは再生可能な有機材料(10)を、工程(a)で提供される前のリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む有機材料(31)を得るために、前記リサイクルされたまたは再生可能な有機材料をアルカリ金属水酸化物(30)の水性溶液の存在下、200~300℃の温度で加熱(20)する工程(b1)によって、精製する工程、および(c)水素化処理触媒の存在下で、前記精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を水素化処理する(60)工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルされたまたは再生可能な有機材料(10)を精製するための方法であって、前記リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、20ppmより多いClを含み、前記方法は、以下の工程(a)で提供される前のリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製された水素化された、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料(61)を得るために、
(a)リサイクルされたまたは再生可能な有機材料(10)を提供する工程、
(b)前記有機のリサイクルされたまたは再生可能な有機材料(10)を、工程(a)で提供される前の前記リサイクルされたまたは再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料(31、51))を得るために、前記リサイクルされたまたは再生可能な有機材料をアルカリ金属水酸化物(30)の水性溶液の存在下、200~300℃の温度で加熱(20、40)する工程(b1)によって、精製する工程、および
(c)水素化処理触媒の存在下で、前記精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を水素化処理する(60)工程
を含む方法。
【請求項2】
前記工程(b1)における滞留時間が、1~180分、好ましくは2~90分、より好ましくは5~60分である請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属水酸化物が、KOH、LiOH、NaOHおよびそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは前記アルカリ金属水酸化物が、NaOHである請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記水性のアルカリ金属水酸化物の濃度が、0.1~10.0mL/Lであり、および、前記アルカリ金属水酸化物の水性溶液の、処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料に対する比は、0.1g/gより大きく、好ましくは、0.5~1.5g/gである請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程(b)が、
(b2)前記リサイクルされたまたは再生可能な有機材料(10)を吸着剤の存在下、100~450℃の温度(50)で、加熱(20、40)し、
そしてその後、精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料(31、51)を得るために、処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料から塩素不純物を含む固体吸着剤(52)を除去する工程
によって行われる請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記工程(b2)における滞留時間が、1~180分、好ましくは2~90分、より好ましくは5~60分である請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記工程(b2)が、バッチプロセスとして行われる請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
前記工程(b2)が、例えばガード床などの連続プロセスとして行われる請求項5または6記載の方法。
【請求項9】
前記工程(b2)において、LHSVが、0.1~10 1/h、好ましくは0.2~9 1/h、より好ましくは0.5~5 1/hである請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記吸着剤が、シリカベースの吸着剤から選択される請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記吸着剤が、金属塩化物または金属酸化物から選択される請求項5~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記吸着剤の量が、前記処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の総重量に対して1~10wt%、好ましくは2~6wt%である請求項5~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
水素化処理工程(c)が、持続的な水素流の下で行われる請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記工程(c)における前記持続的な水素流が、500~2000n-L/Lである、好ましくは800~1400n-L/LであるH2/フィード比を有する請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記工程(c)が、270~380℃の温度で、好ましくは275~360℃で、より好ましくは300~350℃で行われる請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
工程(d)が、4~20MPaである圧力下で行われる請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記工程(c)における前記水素化処理触媒が、周期表においてIUPACの第6、8または10族から選択される少なくとも一つの成分を含む請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記工程(c)における前記水素化処理触媒が、担持されたPd、Pt、Ni、NiW、NiMoまたはCoMo触媒であり、および、担体が、ゼオライト、ゼオライト-アルミナ、アルミナおよび/またはシリカであり、好ましくはNiW/Al2O3、NiMo/Al2O3またはCoMo/Al2O3である請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記工程(c)が、
(c1)前記加熱処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料留分を水素化脱酸素(HDO)する工程
によって達成される請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記工程(c)が、
前記工程(a)で提供される前記リサイクルされたまたは再生可能な有機材料の当初の塩素含有量の50%より少ない、好ましくは30%より少ない量を含む精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を得るために、
(c1)前記加熱処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を、HDO触媒の存在下で、270~380℃の温度で、4~20MPaの圧力下、および持続的な水素流の下で水素化脱酸素(HDO)する工程
によって達成される請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記工程(c1)が、275~360℃、好ましくは300~350℃の温度で行われる請求項19または20記載の方法。
【請求項22】
前記工程(c1)におけるHDO触媒が、硫化NiW、硫化NiMoまたは硫化CoMo触媒である請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記工程(c1)における持続的な水素流が、500~2000n-L/L、好ましくは800~1400n-L/LであるH2/フィード比を有する請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記リサイクルされたまたは再生可能な有機材料が、植物ベースの脂肪およびオイル、動物ベースの脂肪およびオイル、化石廃棄物ベースのオイル、廃棄物オイル、海藻オイル、および微生物オイルからなる群より、特には使用済み潤滑油(ULO)、廃棄物プラスティック熱分解オイル(WPPO)、廃タイヤ熱分解オイル(ELTPO)からなる群より選択され、より特には、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料が、WPPO、ELTPO、またはULOである請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
リサイクルされたまたは再生可能な炭化水素を製造するためのプロセスであって、
(x)請求項1~24のいずれか1項に記載の方法のように、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料から炭化水素を製造する工程、および
(y)精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を精油変換プロセス(70)へと付す工程であって、前記精油変換プロセスが、少なくとも一つのリサイクルされたまたは再生可能な炭化水素を得るために、フィードの分子量を変化させること、前記フィードからのヘテロ原子の除去、前記フィードの飽和度を変化させること、前記フィードの分子構造を組み替えること、または、それらの任意の組み合わせを含む工程
を含むプロセス。
【請求項26】
前記工程(y)が、水素化分解である請求項25記載のプロセス。
【請求項27】
前記工程(y)が、軽度水素化分解(MHC)精製所ユニット内で行われる請求項26記載のプロセス。
【請求項28】
前記工程(y)が、水素化分解触媒の存在下で行われる請求項26または27記載のプロセス。
【請求項29】
前記工程(y)が、水蒸気分解である請求項25記載のプロセス。
【請求項30】
前記工程(y)が、異性化である請求項25記載のプロセス。
【請求項31】
前記工程(y)が、水素化処理である請求項25記載のプロセス。
【請求項32】
前記工程(y)が、熱触媒分解である請求項25記載のプロセス。
【請求項33】
前記工程(y)が、流動接触分解である請求項25記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料、特には、20ppmより多い塩素(Cl)を含むリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を精製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、有機酸素および多量の塩素(Cl)を含む場合がある。リサイクルされたまたは再生可能な有機材料の触媒的水素化の前に、塩素は、材料から除去される必要があり、これは、プロセス装置に腐食を引き起こすことが知られている塩化水素(HCl)を生成し得るためである。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、したがって、上記の課題を克服することのできる方法を提供することである。本発明の目的は、独立クレームに記載されている事項によって特徴付けられる方法によって達成される。本発明の好ましい実施態様は、従属クレームに記載されている。
【0004】
本発明は、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料が、Clを除去するためおよび精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を得るために精製へと付され、そしてその後、精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を得るために、270~380℃の温度で、4~20Mpaの圧力下、および持続的な水素流の下、水素化触媒の存在下で水素化処理されるという、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料からのClの除去を導く方法によって、多量の塩素(Cl)を含むリサイクルされたまたは再生可能な有機材料が精製され得るという驚くべき発見に基づく。優位には、精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、精製前のリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の塩素含有量の50%未満、好ましくは30%未満を含む。
【0005】
方法は、低品質のリサイクルされたまたは再生可能な有機材料のフィードの、水素化処理における、例えば高品質な再生可能な燃料および/または化学品を製造するためのプロセスなどにおける、フィードストックとしての使用を可能にする。
【0006】
以下において、本発明は、添付の図面を参照して好ましい実施態様によってよい詳細に記載されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の方法の第1の例示的なプロセスフローを示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の方法の第2の例示的なプロセスフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料を製造精製する方法を提供する。
【0009】
用語「リサイクルされたまたは再生可能な有機材料(recycled or renewable organic material)」は、有機材料、すなわち、炭素を含む材料であって、1)その使用および消費によって引き起こされる供給源の枯渇を補充する天然源から、または2)廃棄物から回収される再利用のための原材料または加工済み材料から、得られる有機材料を意味する。本明細書において、用語「リサイクルされたまたは再生可能な有機材料」は具体的には、廃棄物から回収される再利用のための原材料または加工済み材料から、得られる有機材料を意味する。リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、特徴的には、4~30の炭素原子、好ましくは12~22の炭素原子の炭素鎖を有する脂肪族化合物を含む。このような脂肪族化合物の典型的な例としては、脂肪酸またはそれらのエステル、特には脂肪酸が4~30の炭素原子、より特には12~22の炭素原子の脂肪族鎖を有する例が挙げられる。リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は典型的には、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料の総重量の少なくとも50wt%の脂肪族化合物を含む。
【0010】
典型的には、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、植物、海藻、微生物および/または動物起源の脂肪および/またはオイルを意味する。それはまた、そのようなオイルおよび/または脂肪の処理からもたらされる任意の廃棄物流を意味する。リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、未処理の形状(例えば動物性脂肪)または加工済みの形状(使用済み料理油)であり得る。リサイクルされたまたは再生可能な有機材料はまた、化石廃棄物ベースのオイルまたは廃棄物オイルを意味する。
【0011】
用語「植物ベースの脂肪およびオイル」は、植物起源の脂肪および/または植物起源のオイル、すなわち直接的に植物に由来し得るオイルを意味するか、または、それらは、例えば農業もしくは林業などの様々な産業部門からの副生成物であり得る。
【0012】
本発明の植物ベースの脂肪およびオイルの例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、パームオイルスラッジ、菜種油(rapeseed oil)、キャノーラ油、菜種油(colza oil)、ひまわり油、大豆油、麻実油、オリーブオイル、亜麻仁油、綿実油、マスタードオイル、パーム油、落花生油、ひまし油、およびココナッツオイルなどが挙げられる。
【0013】
植物ベースの脂肪およびオイルの他の例としては、バイオクルードおよびバイオオイルが挙げられる。バイオクルードおよびバイオオイルは、バイオマスから、特にはリグノセルロース系バイオマスから、例えば水熱液化法などの様々な液化法を用いて、または、熱分解、特には急速熱分解を用いて製造される。
【0014】
用語「バイオクルード(biocrude)」は、水熱液化法を行うことによってバイオマスから製造されるオイルを意味する。
【0015】
用語「バイオオイル(bio oil)」は、熱分解を行うことによってバイオマスから製造される熱分解オイルを意味する。
【0016】
用語「バイオマス(biomass)」は、植物、動物およびそれらの副生成物を含む、最近まで生きていた生物由来の材料を意味する。
【0017】
用語「リグノセルロース系バイオマス(lignocellulosic biomass)」は、植物またはそれらの副生成物由来のバイオマスを意味する。リグノセルロース系バイオマスは、炭水化物ポリマー(セルロース、ヘミセルロース)および芳香族ポリマー(リグニン)から構成される。
【0018】
用語「熱分解(pyrolysis)」は、非酸化的雰囲気下、上昇された温度での材料の熱分解を意味する。
【0019】
用語「急速熱分解(fast pyrolysis)」は、酸素の非存在下での急速な加熱を通じたバイオマスの熱化学的分解を意味する。
【0020】
用語「水熱液化法(hydrothermal liquefaction)」(HTL)は、適温および高圧下で、湿潤バイオマスを、クルード様オイルへと変換するために使用される熱解重合プロセスを意味する。
【0021】
リグノセルロース系バイオマス、例えば森林収穫残材のような材料または製材所の副生成物など、から製造されるバイオオイルおよびバイオクルードの例としては、例えば、急速熱分解を行うことによって製造されるリグノセルロース系熱分解液(LPL)、および、水熱液化法を行うことにより製造されるHTL-バイオクルードなどが挙げられる。
【0022】
植物ベースの脂肪およびオイルのさらなる例は、クラフト法(木材パルプ化)の副生成物として得られる粗トール油(CTO)ならびにその誘導体、例えばトール油ピッチ(TOP)、粗脂肪酸(CFA)、トール油脂肪酸(TOFA)および蒸留トール油(DTO)などが挙げられる。
【0023】
粗トール油は、樹脂酸、脂肪酸および不けん化物を含む。樹脂酸は、テルペンの酸化および重合反応から得られる有機酸の混合物である。粗トール油中の主な樹脂酸は、アビエチン酸であるが、アビエチン酸誘導体および他の酸、例えばピマール酸なども見られる。脂肪酸は、長鎖モノカルボン酸であり、そして、硬材および軟材中に見られる。粗トール油中の主な脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸である。不けん化物は、中性化合物であり塩を形成するために水酸化ナトリウムと反応しないため、石鹸に変換され得ない。それらとしては、ステロール、より高級なアルコール、および炭化水素が挙げられる。ステロールは、水酸基も含むステロイド誘導体である。
【0024】
用語「トール油ピッチ(tall oil pitch)(TOP)」は、粗トール油蒸留プロセスからの残渣塔底留分を意味する。トール油ピッチは典型的には、トール油ピッチの総重量に対して、34~51wt%の遊離酸、23~37wt%のエステル化された酸、および25~34wt%のけん化できない中性化合物を含む。遊離酸は、典型的には、デヒドロアビエチン酸、アビエチンおよび他の樹脂酸からなる群より選択される。エステル化された酸は、典型的には、オレイン酸およびリノール酸からなる群より選択される。けん化できない中性化合物は、典型的には、ジテルペンステロール、脂肪アルコール、ステロール、およびステロール脱水物からなる群より選択される。
【0025】
用語「粗脂肪酸(crude fatty acid)(CFA)」は、CTOの精製(例えば、減圧下での蒸留、抽出、および/または結晶化など)によって得られ得る脂肪酸含有材料を意味する。
【0026】
用語「トール油脂肪酸(tall oil fatty acid)(TOFA)」は、粗トール油(CTO)蒸留プロセスの脂肪酸に富んだ留分を意味する。TOFAは、典型的には、脂肪酸を主に、典型的には、TOFAの総重量に対して少なくとも80wt%で、含む。典型的には、TOFAは、10wt%より少ないロジン酸を含む。
【0027】
用語「蒸留トール油(distilled tall oil)(DTO)」は、粗トール油(CTO)蒸留プロセスの樹脂酸に富んだ留分を意味する。DTOは、典型的には、脂肪酸を主に、典型的には、DTPの総重量に対して55~90wt%で、および、ロジン酸を、典型的にはDTPの総重量に対して10~40wt%のロジン酸を含む。典型的には、DTOは、蒸留トール油の総重量に対して10wt%より少ないけん化できない中性化合物を含む。
【0028】
用語「動物ベースの脂肪およびオイル(animal based fats and oils)」は、動物起源の脂肪および/またはオイル、すなわち、動物起源の液体材料を意味する。動物ベースの脂肪およびオイルの例としては、これらに限定される訳ではないが、例えば、スエット、獣脂、脂身、ラード、鯨油、乳脂、魚油、家禽オイルおよび家禽脂などが挙げられる。
【0029】
用語「微生物油(microbial oils)」は、微生物によって産生されるトリグリセリド(脂質)を意味する。
【0030】
用語「海藻オイル(algal oils)」は、海藻に直接的に由来するオイルを意味する。
【0031】
用語「化石廃棄物ベースのオイル(fossil waste-based oils)」は、廃プラスティックまたは廃タイヤのような廃棄物流から製造されるオイルを意味する。化石廃棄物ベースのオイルの例としては、例えば、廃プラスティック熱分解オイル(WPPO)および廃タイヤ熱分解オイル(ELTPO)などが挙げられる。
【0032】
用語「廃棄物オイル(waste oils)」は、汚染を通じて、不純物の存在または当初の特性の損失に起因して当初の目的にそぐわなくなった任意のオイルを意味する。廃棄物オイルの例としては、使用済み潤滑油(ULO)、油圧オイル、変圧器オイルまたは金属加工において使用されたオイルなどが挙げられる。
【0033】
本発明において、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、典型的には、植物ベースの脂肪およびオイル、動物ベースの脂肪およびオイル、化石廃棄物ベースのオイル、廃棄物オイル、海藻オイル、および微生物オイルからなる群より選択される。
【0034】
本発明のリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の例としては、例えば、これらに限定される訳ではないが、動物ベースのオイルおよび脂肪、例えばスラッジパーム油、使用済み料理油、微生物オイル、海藻オイルなどの野菜または植物ベースのオイルおよび脂肪、遊離脂肪酸、リンおよび/または金属を含む任意の脂質、酵母またはかび産生物から由来するオイル、バイオマスに由来するオイル、菜種油(rapeseed oil)、キャノーラ油、菜種油(colza oil)、ひまわり油、大豆油、麻実油、オリーブオイル、亜麻仁油、綿実油、マスタードオイル、パーム油、落花生油、ひまし油、ココナッツオイル、例えばスエット、獣脂、脂身などの動物性脂肪、リサイクルされた食事性脂肪、遺伝子工学によって製造された出発物質、および、例えば海藻およびバクテリアなどの微生物によって産生された生物学的出発物質、トール油、トール油脂肪酸(TOFA)、粗脂肪酸(CFA)、トール油ピッチ(TOP)、ならびに、該フィードストックの任意の混合物が挙げられる。
【0035】
リサイクルされたまたは再生可能な有機材料の具体的な例は、植物ベースの脂肪およびオイル、動物ベースの脂肪およびオイル、化石廃棄物ベースのオイル、廃棄物オイル、海藻オイルおよび微生物オイルからなる群より選択され、特には、使用済み潤滑油(ULO)、廃棄物プラスティック熱分解オイル(WPPO)、および廃タイヤ熱分解オイル(ELTPO)からなる群より選択され、より特には、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、WPPO、ELTPO、またはULOである。
【0036】
本発明の方法によって処理されるリサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、多量の塩素(Cl)を含む。典型的には、塩素は、塩化物塩および/または例えば塩化炭化水素などの有機塩化物化合物の形状で存在する。本発明のリサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、20ppmより多いCl、特には50ppmより多いCl、より特には50~100ppmのClを含む。さらに、本発明の方法によって処理されるリサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、有機酸素化合物として多量の酸素を含む。
【0037】
本発明の方法によって処理されるリサイクルされたまたは再生可能な有機材料はまた、さらなる不純物、例えばリンおよび/または金属をリン脂質、石鹸および/または塩の形状で含む不純物などを含み得る。不純物は例えば、リン酸塩または硫酸塩、鉄塩または有機塩、石けんまたはリン脂質の形状であってもよい。バイオマスベースの脂質材料中に存在し得る金属不純物は、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えばナトリウムもしくはカリウム塩、またはマグネシウムもしくはカルシウム塩、または該金属の任意の化合物である。
【0038】
したがって、本明細書においてリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を精製するための方法が提供され、ここで、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、20ppmより多いClを含み、該方法は、精製された水素化処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を得るために、
(a)有機のリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を提供する工程、
(b)有機のリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を、精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を得るために精製する工程、
(c)水素化処理触媒の存在下で、精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を水素化処理する工程を含む。
【0039】
工程(b)において、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、有機のリサイクルされたまたは再生可能な有機材料からClを除去するために精製される。精製工程(b)は、加熱処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料からの揮発物の分離のために当業者にとって適切であると理解される任意の精製方法によって達成され得る。適切な例としては、これらに限定される訳ではないが、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料を例えば苛性アルカリ溶液などのアルカリ金属水酸化物または吸着剤に付すことが挙げられる。
【0040】
適応可能な精製工程(b)は、精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を提供し、ここで、精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、好ましくは、20ppm未満のClを含む。
【0041】
例えば、20ppmより多いClを含むリサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、工程(a)で提供されるリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を得るために、100~450℃の温度で、アルカリ金属水酸化物の水性溶液の存在下で加熱され得る(工程(b1))。
【0042】
工程(b1)において、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、塩素含有不純物、特には塩素化された有機炭化水素を分解する熱反応を引き起こすように加熱される。工程(b1)の加熱処理は、100~450℃のあいだの任意の温度で起こる。理想的な結果を達成するために、工程(b1)は、150~450℃で、好ましくは、200~300℃で行われる。
【0043】
(b1)において、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料が加熱され、および、所望の温度で維持される時間、すなわち滞留時間は、工程(b1)において、典型的には、1~180分、好ましくは2~90分、より好ましくは5~60分である。
【0044】
アルカリ金属水酸化物は、典型的には、KOH、LiOH、NaOHおよびそれらの混合物からなる群より選択される。アルカリ金属水酸化物は、好ましくはNaOHである。水性のアルカリ金属水酸化物の濃度は、典型的には、0.1~10.0mL/Lである。工程(b1)における、アルカリ金属水酸化物の水性溶液の、処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料に対する比は、典型的には、0.1g/gより大きく、好ましくは、0.5~1.5g/gである。
【0045】
加熱後、有機および水性留分は、工程(a)で提供されるリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を得るために、当業者にとって公知である適切な方法によって分離され得る。
【0046】
別の実施態様において、20ppmより多いClを含むリサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、100~450℃の温度で、吸着剤の存在下、加熱され、そしてその後、優位には工程(a)で提供されるリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない量を含む、精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を得るために、処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料から塩素不純物を含む固体吸着剤を除去する(工程(b2))。
【0047】
工程(b2)において、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、塩素不純物を吸着剤に吸着させ、および混合物を分離可能にするために、吸着剤の存在下で加熱される。工程(b2)の加熱処理は、100~450℃のあいだの任意の温度で行われる。理想的な結果を達成するために、工程(b2)は、200~400℃で、好ましくは240~300℃で行われる。
【0048】
(b2)において、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料が加熱され、および、所望の温度で維持される時間、すなわち滞留時間は、工程(b2)において、典型的には、1~180分、好ましくは2~90分、より好ましくは5~60分である。
【0049】
工程(b2)の一実施形態において、加熱処理は、バッチプロセスとして行われる。工程(b2)の代替的な実施形態において、加熱処理は、例えばガード床などの連続プロセスとして行われる。優位には、LHSVは、工程(b2)において、0.1~10 1/h、好ましくは、0.2~9 1/h、より好ましくは、0.5~5 1/hである。
【0050】
吸着剤は、典型的には、シリカベースの吸着剤から選択される。好ましくは、吸着剤は、トリシルシリカである。吸着剤は、代替的には、金属塩化物または金属酸化物から選択される。吸着剤の量は、典型的には、処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の総重量に対して0.1~10wt%、好ましくは0.5~2wt%である。
【0051】
工程(b2)の吸着剤の存在下での加熱処理の後、固体の吸着剤は、除去される。固体の吸着剤の除去は、例えば、加熱処理されたバイオマスベースの液体材料からの固体材料の分離のために当業者にとって適切であることが理解され得る任意の分離方法によって達成され得る。適切な例としては例えば、これらに限定される訳ではないが、ろ過、遠心分離、および相分離が挙げられる。いくつかの分離方法、例えばろ過および遠心分離が組み合わせられ得ることが理解されるべきである。好ましくは、除去はろ過によって達成される。除去は、好ましくは、100~180℃のあいだの任意の温度で行われる。
【0052】
精製工程(b)の後、精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料からさらにClを除去するために水素化処理触媒の存在下、水素化処理に付される。
【0053】
用語「水素化処理(hydrotreating)」は、水素の反応が、特にはオイル精製の一部として、例えば酸素、硫黄、窒素、リン、シリコンおよび金属などの不純物を除去するために使用される化学工学プロセスを意味する。
【0054】
水素化処理は、一またはそれ以上のリアクターユニットまたは触媒床での一またはいくつかの工程で行われ得る。
【0055】
工程(c)は、典型的には、持続的な水素流の下で達成される。理想的な結果を達成するために、工程(c)における持続的な水素流は、好ましくは、500~2000n-L/Lである、より好ましくは、800~1400n-L/LであるH2/フィード比を有する。
【0056】
工程(c)において、水素化処理は、優位には、270~380℃の温度で、好ましくは275~360℃で、より好ましくは300~350℃で行われる。典型的には、工程(c)における圧力は、4~20MPaである。
【0057】
工程(c)における水素化処理触媒は、好ましくは、周期表においてIUPACの第6、8または10族から選択される少なくとも一つの成分を含む。好ましくは、工程(c)における水素化処理触媒は、担持されたPd、Pt、Ni、NiW、NiMoまたはCoMo触媒であり、そして、担体は、ゼオライト、ゼオライト-アルミナ、アルミナおよび/またはシリカであり、好ましくはNiW/Al2O3、NiMo/Al2O3またはCoMo/Al2O3である。特には、水素化処理触媒は、硫化NiW、NiMOまたはCoMo触媒である。
【0058】
適用可能な水素化処理工程(c)は、精製された、水素化処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を提供する。精製された、水素化処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料は、優位には、工程(a)において提供されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の塩素含有量の50%より少ない、好ましくは30%より少ない、より好ましくは5%より少ない量を含む。
【0059】
理想的な結果を達成するために、水素化処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の一部は、工程(c)にリサイクルされてもよい。好ましくは、新鮮なフィード、すなわち工程(b)で得られる精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料の、リサイクルされた水素化されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料に対する比は、2:1~20:1である。
【0060】
特定の実施形態において、水素化処理は水素化脱酸素である。このような実施形態において、工程(c)は、典型的には、(c1)精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料をHDO触媒の存在下で水素化脱酸素する工程によって行われる。これは、好ましくは、275~360℃、より好ましくは300~350℃の温度で、4~20MPaの圧力下、持続的な水素流の下行われる。
【0061】
用語「水素化脱酸素(hydrodeoxygenation)(HDO)」は、(HDO)触媒の影響下の、水素分子の働きによる酸素の水としての除去を意味している。
【0062】
HDO触媒は、例えば、NiMo-、CoMo-、NiW-触媒およびそれらの任意の混合物からなる群より選択され得る。好ましくは、工程(c)におけるHDO触媒は、硫化NiW、硫化NiMoまたは硫化CoMo触媒である。
【0063】
優位には、持続的な水素流は、500~2000n-L/L、好ましくは、800~1400n-L/LであるH2/フィード比を有する。
【0064】
別の実施形態において、工程(c)は、(c2)加熱処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を水素化脱流(HSD)する工程によって達成される。用語「水素化脱流(hydrodesulfurisation)(HDS)」は、(HDS)触媒の影響下の、水素分子の働きによる硫黄の硫化水素としての除去を意味している。
【0065】
別の実施形態において、工程(c)は、(c3)加熱処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を水素化メタライゼーション(HDM)する工程によって達成される。用語「水素化脱金属反応(hydrodemetallization)(HDM)」は、(HDM)触媒を用いて金属をトラップすることによる金属の除去を意味している。
【0066】
別の実施形態において、工程(c)は、(c4)加熱処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を水添脱窒素(HDN)する工程によって達成される。用語「水添脱窒素(hydrodenitrification)(HDN)は、(HDN)触媒の影響下の、水素分子の働きによる窒素の除去を意味している。
【0067】
別の実施形態において、工程(c)は、(c5)加熱処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を水素化脱芳香化(HDA)する工程によって達成される。用語「水素化脱芳香化(hydrodearomatisation)(HDA)」は、(HDA)触媒の影響下の、水素分子の働きによる芳香族化合物の飽和または開環を意味している。
【0068】
図1は、本発明の方法の第1の例示的なプロセスフローを示している。
【0069】
図1を参照して、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料のフィード、具体的にはトール油ピッチ(TOP)、10が、工程(b1)として本明細書中において説明されるように、アルカリ金属水酸化物の水溶液の存在下でのリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を加熱する工程20へと付される。リサイクルされたまたは再生可能な有機材料の処理されたフィードは、その後、フィード(10)の塩素含有量の少なくとも50%しか含まない精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料31と、Cl不純物の主要部分を含む水性留分32とを得るために、工程(b1)として本明細書中で説明されるように分離30される。精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料はその後、精製された、水素化処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料61を得るために、工程(c)として本明細書で説明されるように、水素化処理60される。精製された、水素化処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料41は、その後、触媒的なアップグレーディング70へと付され得る。
【0070】
図2は、本発明の方法の第2の例示的なプロセスフローを示す。
【0071】
図2を参照して、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料のフィード、特にはトール油ピッチ(TOP)、10は、工程(b2)として本明細書中において説明されるように、吸着剤に塩素不純物を吸着させ、および混合物を分離可能にさせるための吸着剤の存在下で、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料を加熱する工程40へと付される。吸着剤は、その後、フィード(10)の塩素含有量の少なくとも50%未満しか含まない精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料51と、Cl不純物の主な部分を含む吸着剤52とを得るために、工程(b2)で説明されているように、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料の処理されたフィードから分離される50。精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料はその後、精製された、水素化処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料61を得るために、工程(c)として本明細書で説明されるように、水素化処理60される。精製された、水素化処理されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料61は、その後、触媒的なアップグレーディング70へと付され得る。
【0072】
リサイクルされたまたは再生可能な有機材料が、本発明方法にしたがって精製された後、それはさらなる処理、例えば触媒的なアップグレーディングなどに付されてもよい。このような触媒的なアップグレーディングプロセスとしては例えば、これらに限定される訳ではないが、接触分解、接触水素化分解、熱接触分解、触媒水素化、流動接触分解、触媒的ケトン化、および触媒的エステル化などが挙げられる。このようなプロセスは、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料が十分に純粋でかつ不純物を含んでいないことを必要とし、そうでない場合、触媒プロセスを妨げたり、プロセス中に存在する触媒を汚染する可能性がある。
【0073】
したがって本発明はさらに、リサイクルされたまたは再生可能な炭化水素を製造するためのプロセスであって、(x)本明細書中で説明されるようにリサイクルされたまたは再生可能な有機材料から炭化水素を製造する工程、および(y)精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を精油変換プロセスへと付す工程であって、該精油変換プロセスが、少なくとも一つのリサイクルされたまたは再生可能な炭化水素を得るために、フィードの分子量を変化させること、フィードからのヘテロ原子の除去、フィードの飽和度を変化させること、フィードの分子構造を組み替えること、または、それらの任意の組み合わせを含む工程、を含むプロセスを提供する。
【0074】
本発明のプロセスの典型的な一実施形態において、リサイクルされたまたは再生可能な炭化水素は、再生可能な交通燃料または燃料成分である。
【0075】
本発明のプロセスの一実施形態において、工程(y)は、水素化分解である。このような実施形態において、工程(y)は、好ましくは、軽度水素化分解(MHC)精製所ユニット内で、特には、水素化分解触媒の存在下で、行われる。
【0076】
本発明のプロセスの別の一実施形態において、工程(y)は、水蒸気分解である。このような実施形態において、工程(y)は、好ましくは、水蒸気分解ユニット内で行われる。
【0077】
本発明のプロセスのさらなる別の一実施形態において、工程(y)は異性化である。このような実施形態において、工程(y)は、好ましくは、異性化ユニット内で行われる。
【0078】
リサイクルされたまたは再生可能な有機材料が本発明の方法にしたがって精製された後、それは、例えば、触媒的アップグレーディングなどのさらなる処理へと付されてもよい。このような触媒的アップグレーディングプロセスとしては、これらに限定される訳ではないが、接触分解、熱接触分解、触媒水素化、流動接触分解、触媒的ケトン化、触媒的エステル化、または触媒的脱水などが挙げられる。このようなプロセスは、リサイクルされたまたは再生可能な有機材料が十分に純粋でかつ不純物を含んでいないことを必要とし、そうでない場合、触媒プロセスを妨げたり、プロセス中に存在する触媒を汚染する可能性がある。
【0079】
したがって、本発明は、さらに、(x)リサイクルされたまたは再生可能な有機材料を本明細書中で記載されるように精製する工程、および(y)再生可能な交通燃料または燃料成分を得るために精製されたリサイクルされたまたは再生可能な有機材料を水素化脱酸素(HDO)する工程を含む、再生可能な交通燃料、または燃料成分を製造するプロセスを提供する。工程(y)は、好ましくは、軽度水素化分解(MHC)精製所ユニット内で、特には、アルミナベースのHDO触媒の存在下で、行われる。
【実施例0080】
実施例1 廃プラスティック熱分解オイルの高温NaOH処理
以下の実験は、1リットルのバッチ式オートクレーブリアクター内で行われた。廃プラスティック熱分解オイル(340g)および2wt%の水性NaOH(227g)が共にリアクター容器内に秤量された。密封および圧力試験後、500ppmで回転されたリアクターが、240℃である所望の反応温度まで加熱され、これはその後30分維持された。リアクターは、その後、生成物の回収前に、室温まで冷却された。内容物は、リアクター容器から遠心分離チューブへと傾斜法で注がれ、そして、液体が、20℃および4300rpmで30分間遠心分離された。遠心分離後、精製された熱分解オイルが、分離層として回収され、そして、そのCl、Br、S、およびN含油量が分析された。Cl、Br、およびS含有量は、蛍光X線分析により測定され、そして、N含有量は、ASTMD5762の規格にしたがって決定された。表1に示されている結果は、ClよびBr両方の含有量が60%以上減少していることを明確に示している。
【0081】
【0082】
当該技術分野における当業者にとって、技術の進歩にともない、発明の概念は様々な方法によって実施され得ることは明らかであろう。本発明およびその実施形態は、前述された実施例に限定されることなく、請求項の範囲内において変更され得るであろう。