(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036846
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】グラフェンを組み込んだ圧電反応性テキスタイル
(51)【国際特許分類】
D06M 11/74 20060101AFI20230307BHJP
G01L 1/20 20060101ALI20230307BHJP
G01B 7/16 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
D06M11/74
G01L1/20 Z
G01B7/16 R
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022208027
(22)【出願日】2022-12-26
(62)【分割の表示】P 2019550782の分割
【原出願日】2018-03-13
(31)【優先権主張番号】2017900867
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(71)【出願人】
【識別番号】518359753
【氏名又は名称】イマジン インテリジェント マテリアルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】エイトチソン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジオ ヴィト
(72)【発明者】
【氏名】ゴルキン ロバート
(57)【要約】 (修正有)
【課題】歪んだときに電気的特性を変化させる導電性テキスタイルを提供する。
【解決手段】変形時に電気抵抗を可逆的に変化するグラフェンを含む導電性テキスタイルであって、テキスタイルが平面で配置され、テキスタイルの平面に歪みを与えた場合に、テキスタイルは、テキスタイルの平面内に弾性変形可能であるか、または、テキスタイルの平面に対して垂直な歪みを与えた場合に、テキスタイルは、テキスタイルの平面に垂直に弾性変形可能であり、テキスタイルの形成後に、グラフェンがテキスタイルに適用されている、導電性テキスタイルである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形時に電気抵抗を変化するグラフェンを含む導電性テキスタイル。
【請求項2】
前記テキスタイルが平面で配置され、
前記テキスタイルの前記平面に歪みを与えた場合に、前記テキスタイルは、前記テキスタイルの前記平面に弾性変形を受けるように適合されている、請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項3】
前記テキスタイルの平面に対して垂直な歪みを与えた場合に、前記テキスタイルは、前記テキスタイルの前記平面に垂直な弾性変形を受けるように適合されている、請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項4】
抵抗における変化は可逆的である、請求項2または請求項3に記載のテキスタイル。
【請求項5】
前記テキスタイルの形成後に、前記グラフェンが前記テキスタイルに適用されている、請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項6】
前記グラフェンが前記テキスタイルの厚さ全体に分布するように、前記グラフェンが前記テキスタイルに適用されている、請求項5に記載のテキスタイル。
【請求項7】
前記テキスタイルの前記厚さの一部のみが前記グラフェンを含むように、前記グラフェンが前記テキスタイルの片側に適用されている、請求項5に記載のテキスタイル。
【請求項8】
前記グラフェンは、前記テキスタイルを含む繊維に、前記繊維の形成後に適用されている、請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項9】
前記グラフェンは、前記テキスタイルを含む繊維内に組み込まれている、請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項10】
前記繊維は導電性であり、前記テキスタイルは導電性である、請求項8または請求項9に記載のテキスタイル。
【請求項11】
前記繊維が均一に導電性ではない、請求項10に記載のテキスタイル。
【請求項12】
前記繊維の約100%が導電性である、請求項11に記載のテキスタイル。
【請求項13】
前記繊維の50%超が導電性である、請求項11に記載のテキスタイル。
【請求項14】
前記繊維の10%超が導電性である、請求項11に記載のテキスタイル。
【請求項15】
前記繊維の1%超が導電性である、請求項11に記載のテキスタイル。
【請求項16】
前記テキスタイルは、導電性であるグラフェンを含む1つ以上の領域を含み、
前記1つ以上の領域は、変形する場合に電気抵抗を変化させる、請求項1に記載のテキスタイル。
【請求項17】
導電性の第1の領域は、導電性の第2および第3の領域に電気的に接続され、
前記導電性の第1の領域は、変形によって抵抗を変化させ、
前記第2および第3の領域は、電気機器を前記第1の領域に接続する使用に適合されている、請求項16に記載のテキスタイル。
【請求項18】
前記第1、第2、および第3の領域は繰り返しパターンを含み、
前記第2および第3の領域は、前記第1の領域が前記第2および第3の領域の間に配置されている場所においてのみ、互いに電気的に接続されている、請求項17に記載のテキスタイル。
【請求項19】
電気回路を、複数の第1の領域を前記第2および第3の領域のうちの2つ以上に電気的に接続することによって作成することができ、
前記領域内における前記回路の接続位置が、1つの前記第1の領域に対する第1の抵抗と、他の第1の領域に対する第2の抵抗とを有する電気的経路を作成するように選択されており、
前記第1の抵抗と第2の抵抗とは異なる、パターンを組み込んだ請求項18の記載のテキスタイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電反応性テキスタイルの分野に関する。特に、本発明は、歪んだときに電気的特性を変化させる導電性テキスタイルに関する。
【背景技術】
【0002】
歪み計は広く使用されている。圧力計として使用される場合、それは非常に精密であり、多くの材料から多くの手段によって作ることができる。通常、それらは、圧力が加えられるときに電気的特性の変化を受ける材料、または材料の配置を使用するスタンドアロンの電気デバイスである。電気的特性の変化は、通常、抵抗、静電容量またはインダクタンスである。
【0003】
材料の変形は、材料の構成部品の相対位置を変更し、歪みを生じる。このような変形は、弾性または非弾性であり、両方または部分的に弾性の組み合わせであり、各変形に伴っていくつかの永久的な変形が生じる。変形は圧縮または広範囲であり、3つの物理的寸法の一部またはすべてで発生する可能性がある。実際には、シートの平面に垂直な力を適用することにより、材料のシートの圧縮は、適用力の領域でシートを薄くする。シートの平面で圧縮できる材料のシートを伸ばすと、多くの場合、それが薄くなる。これらの変形のさまざまな個体または組み合わせを使用して歪みを測定できる。
【0004】
弾性は、正式に「弾性の率」(引張弾性率およびヤング率とも呼ばれる)として測定される。弾性可逆性は、変形後に物体が元の形状を回復する度合いである。一般的に、弾性変形後も物体が目的に適合したままの場合、弾性は可逆性と見なされる。歪みセンサでは、非弾性変形を補正できる。
【0005】
歪み計は、多くの場合、複雑なパターンで薄い金属ワイヤーや箔などの変形可能であって、感度を最大化するために、柔軟性または伸縮性のある絶縁シートに接着された導電体を使用する。絶縁体が伸ばされた場合、導電体が変形し、その抵抗が変化する。導電体が伸びると電気経路がより狭く、かつより長くなり、抵抗が大きくなる。圧縮された場合、電気経路はより短く、かつより広くなり、抵抗が減少する。この効果は、圧電抵抗と記載することができる。このような2次元歪み計は、圧力センサとして機能するように膜上に配置することができる。
【0006】
圧電抵抗は、歪み(および包含圧力による)の変動を測定するために使用することができる。シリコンやゲルマニウムなどの半導体は、圧電抵抗の材料としてよく知られている。それらは歪みによる抵抗の大きな変化を受け、優れた高精度と高感度の圧力センサを作る。
【0007】
電気抵抗は多くの方法で報告することができる。薄いシート中の電気伝導では、単位「正方形当たりのオーム」(「オーム/sq」または「オーム/□」)がよく使用され、「シート抵抗」と呼ばれる。この単位は、測定される材料がどのように構成されるかに関係なく望ましい結果を反映するという実用的な利点である。例えば、導電体の2枚のシートは、異なる特定の抵抗を持つことができるが、にもかかわらず、異なる厚さで存在する場合には、同じ、望ましいシート抵抗を与えることができる。シート抵抗は、通常、均一な厚さのフィルムに適用されるが、テキスタイルなどの導体の不均一なシートにも適用することができる。
【0008】
抵抗、容量およびインダクタンスの測定は、多くの手段によって達成することができる。アナログ歪み計では、未知の抵抗を決定するために、ホイートストンブリッジまたはポテンショメータを使用できる。最新のデジタル機器と半導体技術によって、1つ以上の電気パラメータを測定する簡単で正確かつ比較的低コストの測定装置が可能である。
【0009】
広い領域に対する歪みセンシングには、堅牢で比較的安価な材料が必要である。半導体技術は不適切である。ゴムなどの導電性、伸縮性ポリマーを用いた歪みセンサがよく知られている。ベロスタット(Velostat)(登録商標)は、電気絶縁性のポリオレフィンに導電性の炭素粒子(カーボンブラック)が加えられて導電性を有する市販の利用できる例の1つである。シートが伸ばされた場合に抵抗が変わり、歪センサとして使用できる。その構造の性質は、シートに対して垂直な方向に圧力がシートに加わると、加えられた圧力の方向に抵抗の変化が生じるが、加えられた圧力に垂直な方向(面内またはシート抵抗)には抵抗の変化が生じない。
【0010】
織物や布とも呼ばれるテキスタイルは、天然繊維や人工繊維のネットワークからなる柔軟な材料である。材料の広い範囲は、望ましい特性および適用に依存する繊維として使用される。
【0011】
テキスタイルは、織る、編む、ノッティング(knotting)、編組および、インタータングリング(inter-tangling)(例えば、ニードルパンチ、フェルティング、水流交絡、スパンレーシング、ウォーターニードリング)などのさらなる工程を伴う不織布オーバーレイ技術を含む、多くの方法によって繊維から形成することができる。また、テキスタイルは、カーディングおよびヒートボンディングなど、所望の特性を改善するためのさまざまな工程を含むことができる。
【0012】
導電性テキスタイルは、金属;導電性ポリマー(例えばポリピロール);炭素充填ポリマー繊維および;金属充填ポリマー繊維などの、導電性繊維から作ることができる。さらに、テキスタイルは、非導電性ポリマー(ポリオレフィンまたは天然繊維)が、ここに記載されているような導電層でコーティングされて、コーティングされた繊維から形成でき、それゆえ繊維はテキスタイルに作りこまれる。場合によっては、導電性テキスタイルは、所望の特性に応じて導電性繊維と非導電性繊維の混合物から作られる。あるいは、テキスタイルを導電性材料でコーティングすることにより、テキスタイルを導電性にすることができる。
【0013】
導電性テキスタイルは、典型的に非導電性テキスタイルと比較して高価であるため、個々のアプリケーションのサイズとアプリケーションの幅が制限される。さらに、ほとんどの導電性テキスタイルは、顕著な圧電抵抗効果を有していない。さらに限定的に、圧電抵抗効果を発揮する材料は、印加された圧力または歪みの方向のみにおいてそれを行う。
【0014】
テキスタイルの多くの工業用途がある。「テクニカルテキスタイル」と呼ばれることもあり、これらは、土木工学や関連する地盤工学の応用から、建設、製造、自動車に至る範囲に及ぶ。一般的に、それらは非審美的とみなされ、別の部分の構成要素を形成する。大規模な導電性テキスタイルでは、費用対効果の高いオプションはほとんどない。
【0015】
歪みや圧力応答を伴う衣類や医療用途用のテキスタイルは、通常、テキスタイルに埋め込まれた複雑な電気部品、またはアイテムが形成された後にテキスタイルに取り付けられる複雑な電気部品に依存する。場合によっては、導電性インクを使用してテキスタイル上にセンサが印刷される。このような場合、センサは個別の物体であり、テキスタイルの固有の部分ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、本発明の目的は、従来技術に関連する少なくともいくつかの問題を改善する歪み検出システムの一部として使用するための変形性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様によれば、変形時に電気抵抗を変化させるグラフェンが組み込まれた導電性テキスタイルが提供される。
【0018】
特に、グラフェンが組み込まれた導電性テキスタイルは、3次元全てにおいて圧電抵抗効果を発揮し、圧力センサや歪みセンサとして使用できる。
【0019】
織物や布として知られているテキスタイルは、天然繊維および/または人工繊維のネットワークからなる柔軟な材料である。材料の広い範囲は、望ましい特性および適用に依存する繊維として使用される。
【0020】
テキスタイルは、織る、編む、ノッティング(knotting)、編組および、インタータングリング(inter-tangling)(例えば、ニードルパンチ、フェルティング、水流交絡、スパンレーシング、ウォーターニードリング)などのさらなる工程を伴う不織布オーバーレイ技術を含む、多くの方法によって繊維から形成することができる。また、テキスタイルは、カーディング、ヒートボンディング、およびコーティングなど、所望の特性を改善するためのさまざまな工程を含むことができる。
【0021】
導電性テキスタイルは、金属;導電性ポリマー(例えばポリピロール);炭素充填ポリマー繊維および;および金属充填ポリマー繊維などの、導電性繊維から作ることができる。さらに、テキスタイルは、非導電性ポリマー(ポリオレフィンまたは天然繊維)が、ここに記載されているような導電層でコーティングされて、コーティングされた繊維から形成でき、それゆえ繊維はテキスタイルに作りこまれる。場合によっては、導電性テキスタイルは、所望の特性に応じて導電性繊維と非導電性繊維の混合物から作られる。あるいは、テキスタイルを導電性材料でコーティングすることにより、テキスタイルを導電性にすることができる。
【0022】
導電性テキスタイルは、典型的に非導電性テキスタイルと比較して高価であるため、個々のアプリケーションのサイズとアプリケーションの幅が制限される。さらに、ほとんどの導電性テキスタイルは、顕著な圧電抵抗効果を有していない。さらに限定的に、圧電抵抗効果を発揮する材料は、印加された圧力または歪みの方向のみにおいてそれを行う。
【0023】
テキスタイルの多くの工業用途がある。「テクニカルテキスタイル」と呼ばれることもあり、これらは、土木工学や関連する地盤工学の応用から、建設、製造、自動車に至る範囲に及ぶ。一般的に、それらは非審美的とみなされ、別の部分の構成要素を形成する。大規模な導電性テキスタイルでは、費用対効果の高いオプションはほとんどない。
【0024】
歪みや圧力応答を伴う衣類や医療用途用のテキスタイルは、通常、テキスタイルに埋め込まれた複雑な電気部品、またはアイテムが形成された後にテキスタイルに取り付けられる複雑な電気部品に依存する。場合によっては、導電性インクを使用してテキスタイル上にセンサが印刷される。このような場合、センサは個別のオブジェクトであり、テキスタイルの固有の部分ではない。
【0025】
グラフェンは本質的にグラファイトの個々の層であり、グラファイトの機械的または電気化学的剥離、グラファイトの化学的酸化、および酸化グラフェンとしての剥離の後にグラフェンへの部分的または完全な還元のような「トップダウン」アプローチ、並びに、基板または触媒上におけるガスまたはプラズマからの成長のような「ボトムアップ」アプローチを含む多くの経路によって形成され得る。グラフェンの性質は、ほぼ原子的に完璧な単層から、2層、少数層、および多層グラフェン、最高には超微細グラファイトに似た巨大凝集体の数スケール層までさまざまに変化できる。グラフェンはアスペクト比が高く、最終的には1原子層の厚さ(1ナノメートル未満)であり、典型的には平面方向に数百ナノメートルから数百ミクロンである。それゆえ、グラフェンは2次元(2D)材料と呼ばれる。グラフェンは優れた導電体である。
【0026】
好ましくは、テキスタイルの平面に歪みを与えた場合、テキスタイルの平面に弾性変形を受け、および/または、テキスタイルの平面に垂直な圧縮を行った場合、テキスタイルの平面に対して垂直に弾性変形を受ける。好ましくは、抵抗の変化は可逆的である。
【0027】
グラフェンは、テキスタイルの形成後にテキスタイルに適用され得る。グラフェンは、テキスタイルの厚さの全体に分布するように、テキスタイルに適用され得る。
【0028】
グラフェンは、テキスタイルの厚さの一部だけがグラフェンを含むように、テキスタイルの片側(one side)に適用され得る。
【0029】
グラフェンは、テキスタイルを含む繊維に、繊維の形成後に適用されてもよいし、また、代替的に、グラフェンを、テキスタイルを含む繊維に組み込むようにしてもよい。
【0030】
好ましくは、繊維は導電性であり、また、テキスタイルは導電性である。テキスタイルは、均一に導電性で無いように形成されてもよい。導電性繊維の割合は、100%、または50%超、または10%超、または1%超であってもよい。
【0031】
本発明は、代替として、導電性のグラフェンを含む少なくとも1つの領域を含む第1の側(first side)と、グラフェンを含む少なくとも1つの領域を含む第2の側(second side)とを有し、それによって、第1の側上の領域の少なくとも1つと第2の側上の領域の少なくとも1つとによって電気抵抗が形成され、テキスタイルが変形する場合に、電気抵抗が可変である、テキスタイルを提供する。
【0032】
テキスタイルは、第1および第2の側上のそれぞれの導電性の第1の領域が、それぞれの側上における導電性の第2および第3の領域に接続されているように構成されてもよい。導電性の第2および第3の領域が、電気機器を第1の領域に接続するように使用されてもよい。
【0033】
上記テキスタイルは、第1、第2、および第3の領域を含む繰り返しパターンを備え、第2および第3の領域は、第1の領域が第2および第3の領域との間に挿入された箇所を除いて、電気的に互いに接続されていないように構成されてもよい。
【0034】
電気回路が、第2および第3の領域の電気的接続を介して形成可能であり、回路の接続位置が、1番目の第1の領域の第1の抵抗と、2番目の第1の領域の第2の抵抗とを有する電気的経路を形成し、第1の抵抗と第2の抵抗とが異なる。
【0035】
ここで、具体的で非限定的な実施例を用いて、図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】シートの平面に垂直に圧縮された場合に、グラフェンによって片側にコーティングされた不織布ポリエステルから作成された長方形のテキスタイルセンサの電気抵抗の変化を示すグラフである。
【0037】
【
図2】柔軟なグラフェンコーティングによって片側にコーティングされたエラステインから作成された弾性テキスタイルを示す2つのグラフを示す。伸びの3サイクルの時間とともに電気抵抗(左)と伸び(右)の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
グラフェンの様々な形態が存在する。理想的なグラフェンは、純粋な炭素であり、グラフェンファミリーで最高の導電体であり、これまでに発見された最高の導体の1つである。それは、欠陥が無く、また酸素のような他の化学的作用も無い。酸化グラフェン(GO)は、電気絶縁体である、高度に酸化されたグラフェンの形態である。
【0039】
様々な記載を参照すると、中間種としては、部分的に還元された酸化グラフェン(prGO)または官能化グラフェン等がある。グラフェンのエッジおよび/または基底面に様々な化学官能基が付着している、この機能によってグラフェンの電気的および物理的特性の調整が可能になり、例えばプラスチックなどの材料の中に、または上に組み込んで、複合材料を形成したりするのが容易になる。炭素原子が窒素やその他の共有結合した原子などの他の原子に置き換えられるヘテロ原子の組み込みも、グラフェンの特性を調整するために使用することができる。
【0040】
また、グラフェンは、単層または複数層でも、様々な次元であってもよい。構造的な並び替えを記述するために様々な用語が使用され、用語の標準化の試みが行われてきた。用語にかかわらず、グラフェンのこれらの単層および多層構造は有用な導電性を有し、ここで記載されるように、ポリマー、繊維およびテキスタイルの特性を生じさせる。
【0041】
グラフェンのこれらの種々の並び替えは、特に詳細かつその特性が記載されていない限り、ここでは「グラフェン」として一般化される。導電性から電気絶縁まで連続的なスケールは、多くの形態のグラフェンを導電体として使用することができ、また、グラフェンの導電性が低い場合であっても、特に他の特性での使用が望ましい場合には、目的を果たすことができることを意味する。
【0042】
次を含む多くの方法で、グラフェンを製造することができる:陽極接合、カーボンナノチューブ切断、化学剥離、化学合成、化学蒸着、電気化学的剥離、電気化学的インターカレーション、炭化ケイ素上の成長、液相剥離、マイクロメカニカル切断、マイクロ波剥離、分子線エピタキシー、光剥離、金属からの沈殿および熱剥離。これらの方法のいくつかは、つぎのように呼ばれる材料を生み出した:化学的に変換されたグラフェン、少数層グラフェン、GO、グラフェン、酸化グラフェン、グラフェンナノフレーク、グラフェンナノプレートレット、グラフェンナノリボン,グラフェンナノシート、グラファイトナノフレーク、グラファイトナノプレートレット、グラファイトナノシート、グラファイト酸化物、LCGO、液晶酸化グラフェン、多層グラフェン、部分的に還元された酸化グラフェン、部分的に還元されたグラファイト酸化物、prGO、rGO、還元された酸化グラフェン、還元されたグラファイト酸化物。
【0043】
グラフェンのテキスタイルへの組み込みは、多くの方法によって達成することがでるが、いずれの場合においても、繊維およびテキスタイルの特性は、組み込みの方法に影響を与える。組み込み方法は、繊維およびテキスタイル化学、グラフェン化学、グラフェンの形状、グラフェンを繊維の中にまたは上に組み込むために使用されるプロセス、およびテキスタイルを形成するプロセスに依存する。合成繊維または複合繊維にとって、好ましい方法は、合成繊維を形成する前にグラフェンをポリマーまたは複合材料に混合することを含む。天然繊維と合成繊維の両方をグラフェンでコーティングして導電性繊維を作ることができ、テキスタイルおよびテキスタイル中間体は、テキスタイルの導電性を提供するためにコーティングされ得る。
【0044】
合成繊維または複合繊維用ポリマーへのグラフェンの分散のために、グラフェンは、粉末として、または流体中の分散として存在することができる。適切な流体中のグラフェンの事前分散は、ポリマー中のグラフェンの分散を促進する。グラフェンのコーティングは、流体中のグラフェンの分散からが好ましい。ポリマーへのグラフェンの組み込み方法は、ポリマーへのグラフェンの溶融配合、グラフェンとポリマーのその場での(in-situ)重合、および溶液混合を含む。いずれの技術を用いるにせよ、最小のグラフェンによって導電性を得るためには、グラフェンを十分に分散させることが望ましい。
【0045】
場合によっては、グラフェンとポリマーの相分離を減らすために添加剤が必要となる。
【0046】
好ましい方法は、テキスタイルがグラフェンを含む繊維から形成される点にある。繊維は、ポリマーのペレットまたは粉末から溶融押出によって形成される。グラフェンは、担体ポリマーに分散した濃縮形態で溶融押出物に添加される。キャリアポリマーは、バルクポリマーと同じであってもよいし、異なっていてもよい。グラフェンポリマー分散の濃縮形態は、繊維中におけるグラフェンの所望の濃度を得るために、溶融押出プロセスで混合および希釈される。別の実施形態では、グラフェンの濃縮形態は、油、溶媒または水などの流体中に分散される。
【0047】
電気測定は、回路を形成する導電性に依存する。十分な導電性は、導電経路の大きさと長さ、および導電性媒体の導電性に依存する。変数のこの組み合わせは、測定が有効である広い範囲を提供する。測定方法を所望の結果と条件に調整する必要がある。これにより、テキスタイルの導電性も所望の用途および測定方法に合わせて調整することができる。場合によっては、測定電圧が高く、抵抗の変化が大きく、回路経路が短い場合などでは、導電テキスタイルの導電性が非常に低くなる場合がある。
【0048】
いくつかの実施形態では、回路の抵抗が測定され、他の実施形態では、静電容量またはインダクタンスが測定される。
【0049】
一実施形態では、天然綿、織物、非弾性衣類テキスタイルは、キャリア溶媒からのグラフェンの分散でコーティングされた。乾燥後、コーティングされた領域は導電性であった。導電性は、所望の導電性、および圧縮および伸張に対する所望の圧電抵抗応答を与えるために調整され得る。導電性および圧電抵抗応答は、適用されるグラフェンの量と、テキスタイルへのグラフェンの浸透とによって制御され得る。テキスタイルへのグラフェンの浸透の厚さが大きいほど、圧電抵抗応答が大きくなる。
【0050】
三次元テキスタイル構造は骨格を提供し、その骨格は、適切なグラフェン粒子でコーティングすると、テキスタイルシートの方向に垂直なテキスタイルの圧縮が、圧縮方向においてテキスタイルの厚さを横切った繊維同士の接触を大きくし、それによって、電流を流すための、より多くの数の導電性経路を導き、それによって、より低い抵抗が測定されるというメカニズムを提供する、との仮説が可能である。この抵抗の変化は、適用された圧縮の方向(テキスタイルの厚さを横切る)においてと、テキスタイルの平面(適用された圧縮の方向に垂直)においてとの両方で測定され得る。
【0051】
別の実施形態では、厚く、低密度で、不織布の、ポリエステルフェルトのテキスタイルを、グラフェンの水性ポリマー分散液でコーティングして、テキスタイルの片側の上部内に導電性層を形成した。圧縮すると、低密度フェルトテキスタイルが大幅に変形し、テキスタイルのシート(平面内)全体で測定された圧電抵抗応答を生じさせた。理論によって予測される通り、圧電抵抗応答(電圧の変化として測定され、抵抗に変換される)は、印加された力の増加に伴う抵抗の低下を示し、抵抗の低下度は、テキスタイルの面積に比例して印加された力の面積が大きくなるほど大きかった。
【0052】
別の実施形態では、グラフェンの薄いコーティングは、薄くて弾性の織布のテキスタイルの片側に水性ポリマー分散として適用された。いくつかのケースでは、テキスタイルは両方向に弾性であり、他のケースでは、テキスタイルは一方向にのみ弾性であった。グラフェンコーティングは、テキスタイルの厚さ内にグラフェンの顕著な浸透を伴わないテキスタイルの表面にのみ適用された。伸縮性の方向にテキスタイルを伸ばすことは、伸びの程度に比例して抵抗の増加を生じさせた。薄いテキスタイルの、テキスタイルの平面に垂直な方向への圧縮は、抵抗のわずかな減少を生じさせた。この場合、グラフェンコーティングは2次元歪みゲージのように振る舞う。
【0053】
本発明を、以下の非限定的な実施例を参考にして説明する。
【実施例0054】
実施例1:約140g/m2の溶融紡糸、不織布、ニードルパンチポリエステルの約10cm2の正方形を、テキスタイルが黒くなるまでグラフェンの分散液に繰り返し浸漬することによって、キシレン中における0.05重量%のグラフェンの分散によってコーティングした。空気乾燥後、測定された導電率は約2000Ω/sqであった。
【0055】
実施例2:約140g/m2の溶融紡糸、不織布、ニードルパンチポリエステルの約5cm×2cmのストリップを、酸化グラフェンの分散液に手でテキスタイルを繰り返し浸漬し、ジオテキスタイルが暗褐色になるまで、それを浸漬したままにすることによって、水中における酸化グラフェンの分散によってしてコーティングした。その後、コーティングテキスタイルを還元剤としてのクエン酸によって処理し、酸化グラフェンをグラフェンに変換した。すすいで空気乾燥後、測定された導電率は870Ω/sqであった。
【0056】
実施例3:グラフェンナノプレートレット(GNP)を、アルゴン中1050℃での膨張性グラファイトの熱剥離によって作製し、続いて水中における超音波による剥離を行った。走査型電子顕微鏡(SEM)は、プレートレットの直径が平均で約1ミクロンであり、単層から10層以上の範囲であったことを示した。GNPを水性アクリルバインダーと混合し、2重量%のグラフェン分散液を得、約190g/m
2の溶融紡糸、不織布、ニードルパンチポリエステルの片側にブレード(blade)コーティングし、テキスタイル上に約2重量%のグラフェンのコーティングを与えた。電気抵抗は、コーティングされた側で約3400Ω/sq、コーティングされていない側で無限(>20MΩ)としてテキスタイルの両側で測定された。
図1は、4cm×4cmの面積が試料の幅にわたって圧縮された場合における、4cm×14cmのコーティングテキスタイルのサンプルの圧力応答曲線を示す。抵抗が印加された力との予測可能な関係を示すことが、観察される。
【0057】
実施例4:エラステイン繊維から作られた市販の弾性テキスタイル(スパンデックスおよびライクラとも呼ばれる)において、セルロース系濃縮剤を用いた水性アクリル結合剤中において、2重量%グラフェン分散液を片側にブレードコーティングした。コーティング面積は約20cm×2cmであった。120℃で一度乾燥すると、グラフェンコーティングは柔軟で部分的に弾性となった。コーティング面積の長さに沿って測定した場合の2点間抵抗は約3.5kΩであった。エラステインの非常に弾性的な性質は、任意の別々の一連の抵抗測定の出発点が異なっていることを意味した。エラステインの少量の伸び(<5%)は、抵抗のほとんど可逆的な変化を生じ、1%伸び当たり、約300Ωの抵抗の増加を伴った。
図2は、伸びと抵抗変化との間で観察された関係を示し、伸び量と電気抵抗との関係が予測可能に見えることが観察される。
【0058】
当業者には理解されるように、上記の実施形態は、本発明の概念がどのように実施されるかの単なる一例を示すに過ぎない。その詳細が異なるにもかかわらず、同じ発明の概念の中に入り、同じ発明を表す他の実施形態も考えられる。