(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036856
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】医薬組成物及びキット
(51)【国際特許分類】
A61K 35/16 20150101AFI20230307BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230307BHJP
A61K 38/38 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K35/16
A61P25/00
A61K38/38
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022208518
(22)【出願日】2022-12-26
(62)【分割の表示】P 2019558351の分割
【原出願日】2018-04-24
(31)【優先権主張番号】62/490,519
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/584,571
(32)【優先日】2017-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/623,468
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/641,194
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517404061
【氏名又は名称】アルカヘスト,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ブライスウェイト,スティーブン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー,エバ
(72)【発明者】
【氏名】ギャラガー,イアン
(72)【発明者】
【氏名】フーバー,ニナ
(72)【発明者】
【氏名】ミナミ,エス.サクラ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】加齢に伴う状態を治療する及び/または予防する方法に使用するための組成物を提供する。
【解決手段】方法で使用される組成物には、たとえば、認知障害のような加齢に伴う状態を治療すること及び/または予防することにおいて有効性がある血液血漿及び血液血漿に由来する血液血漿画分が含まれる。方法は血液血漿または血液血漿画分のパルス状投薬の計画に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
認知障害と診断された対象を治療する方法に使用される医薬組成物であって、
前記方法は、パルス投与される投薬計画を用いて有効量の血漿画分を投与することを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記血漿画分が血漿タンパク質画分である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記血漿タンパク質画分が83%~95%の間のアルブミンを含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記血漿タンパク質画分が市販の血漿タンパク質画分である、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記血漿画分がタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記血漿画分が若齢個体のプールからの血漿に由来する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記血漿画分が哺乳類の血液製剤から製造される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記哺乳類の血液製剤がヒト血液製剤である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
認知障害と診断された対象を治療する方法に使用される医薬組成物であって、
前記方法は、パルス投与される投薬計画を用いて有効量の若齢血漿を投与することを含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記方法は、認知機能の改善について前記対象をモニターすることをさらに含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記対象が哺乳類である、請求項1または9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記哺乳類がヒトである、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記血漿画分または若齢血漿が若齢個体のプールに由来する、請求項1または9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記パルス投与される投薬計画が、連続5~7日間、前記血漿画分または若齢血漿を投与することを含む、請求項1または9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記対象が、前記パルス投与される投薬計画が完全に投与された後、運動負荷計画に従う、請求項1または9に記載の医薬組成物。
【請求項16】
認知障害について対象を治療するために使用するためのキットであって、
請求項1~8及び13のいずれか一項に記載された血漿画分を含む容器を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加齢に関連した疾患の予防及び治療に関する。本発明は、たとえば、認知障害、運動障害及び神経炎症のような加齢に関連する状態を種々の投薬規範を用いて治療する及び/または予防するための血液製剤、たとえば、血液血漿画分の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
以下は背景情報としてのみ提供され、本発明に対する従来技術としては認められない。
【0003】
老化は、認知障害、がん、関節炎、失明、骨粗鬆症、糖尿病、循環器疾患及び脳卒中を含む複数のヒト疾患にとって重要なリスク因子である。自然な老化の間での正常なシナプス消失に加えて、シナプス消失は多数の神経変性状態に共通する早期の病的な事象であり、これらの状態に関連する神経障害及び認知障害に対する最大の関連要因である。そのようなものとして、加齢は、たとえば、アルツハイマー病(AD)のような認知症関連の神経変性疾患の単一で最も有力なリスク因子のままである(Bishop,N.A.et al.,Neural mechanisms of ageing and cognitive decline.Nature,464(7288),529-535(2010);Heeden,T.et al.,Insights into the ageing mind:a view from cognitive neuroscience.Nat.Rev.Neurosci.5(2),87-96(2004);Mattson,M.P.,et al.,Ageing and neuronal vulnerability.Nat.Rev.Neurosci.7(4),278-294(2006))。
【0004】
加齢は、中枢神経系を含む生体のあらゆる組織及び機能に影響を及ぼし、神経変性及び認知または運動の技能のような機能の低下は生活の質に深刻に影響を与え得る。認知低下、運動障害及び神経変性疾患の治療は、障害を防ぐ及び元に戻す点である程度の成功を有している。従って、加齢の影響に対して保護する、対抗するまたはそれを元に戻すことによって認知の完全性を維持するための新しい治療を特定することが重要である。さらに、新しい治療が開発されると、それらの治療の有効性を最適化するために投薬規範を検討しなければならない。
【0005】
老齢マウスと若齢マウスとの間での並体結合実験は、認知機能が若齢マウスとの異時性血液交換にて老齢マウスで改善できることを示しているが、最近の報告は若齢血液の1回の交換によっては老齢マウスにおけるニューロン新生での増強はないことを見いだしている(Rebo,J.et al.A single heterochronic blood exchange reveals rapid inhibition of multiple tissues by old blood.Nat.Comm.(2016))。さらに、若齢血漿の注入から生じる認知機能とニューロン新生とが連鎖していることが疑わしい。従って、ニューロン新生及び認知機能の改善を刺激する血液血漿または血液血漿画分を用いた投薬規範はいまだに記載されていなかった。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、たとえば、認知障害の状態、加齢性認知症、運動機能の障害、神経炎症及び神経変性疾患のような加齢に伴う疾病を治療する及び/または予防するための血液製剤の製造及び使用に基づく。本発明は、とりわけ、認知障害、加齢性認知症、運動障害、神経炎症及び神経変性疾患の治療及び/または予防のための新しい治療法の必要性を認識している。血液及び血液血漿に由来して、本発明の本組成物は、認知障害、加齢性認知症、運動障害、神経炎症及び神経変性疾患の治療及び/または予防において有効性を示す血液血漿画分の利用を介した現在の治療法の失敗及び欠点のための溶液に関する。
【0007】
本発明は血液血漿タンパク質が2~3日の平均半減期を有することを認識している。本発明は、治療された対象にてニューロン新生、細胞の生存、神経炎症の減少、認知または運動の機能の改善を最適化する血液血漿または血漿画分の投薬計画を使用する。本発明の投薬計画は、対象におけるこれらのプロセス(ニューロン新生、細胞の生存、認知の改善、神経炎症の減少、運動機能の改善)すべてを引き起こすことが見いだされ、そのプロセスはすべて最後の投薬の数週間後でさえも活発であることが見いだされている。
【0008】
本発明の実施形態には、有効量の血液血漿または血漿画分を認知障害であると診断された対象に投与することによってその対象を治療することが含まれる。本発明の別の実施形態には、有効量の血液血漿または血漿画分を投与し、続いて認知機能の改善について対象をモニターすることが含まれる。本発明の別の実施形態には、有効量の血液血漿または血漿画分を認知障害であると診断された対象に投与することによってその対象を治療することが含まれ、その際、血液血漿または血漿画分は認知機能の改善またはニューロン新生を生じる方法で投与される。
【0009】
本発明の実施形態には、たとえば、例として且つ限定ではなく、パーキンソン病のような神経変性運動障害と診断された対象に有効量の血液血漿または血漿画分を投与することによってその対象を治療することが含まれる。本発明の別の実施形態には、有効量の血液血漿または血漿画分を投与し、続いて運動機能の改善について対象をモニターすることが含まれる。本発明の別の実施形態には、神経変性運動障害と診断された対象に有効量の血液血漿または血漿画分を投与することによってその対象を治療することが含まれ、その際、血液血漿または血漿画分は運動機能の改善またはニューロン新生を生じる方法で投与される。
【0010】
本発明の実施形態には、神経炎症または神経炎症関連の障害と診断された対象に有効量の血液血漿または血漿画分を投与することによってその対象を治療することが含まれる。本発明の別の実施形態には、有効量の血液血漿または血漿画分を投与し、続いて神経炎症の軽減について対象をモニターすることが含まれる。本発明の別の実施形態には、神経炎症または神経炎症関連の障害と診断された対象に有効量の血液血漿または血漿画分を投与することによってその対象を治療することが含まれ、その際、血液血漿または血漿画分は神経炎症の軽減を生じる方法で投与される。
【0011】
本発明の別の実施形態には、少なくとも連続2日間の投薬計画を介して血液血漿または血漿画分を投与することが含まれる。本発明のさらなる実施形態には、少なくとも連続3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日間の投薬計画を介して血液血漿または血漿画分を投与することが含まれる(本明細書では「パルス状投薬」、「パルス状投与」、「パルス投薬」、「パルス投与」、または「パルス投与された」と呼ばれる)。本発明のさらに別の実施形態には、少なくとも連続2日間の投薬計画を介して且つ最後の投与の日付の後で血液血漿または血漿画分を投与することが含まれる。本発明の別の実施形態には、投与間の各間隔がそれぞれ0~3日であってもよい非連続の2~14日間の投薬計画を介して血液血漿または血漿画分を投与することが含まれる。本発明の別の実施形態には、最後の投与の日付の少なくとも3日後に認知もしくは運動の機能の改善、神経炎症の減少、またはニューロン新生の改善について対象をモニターすることが含まれる。本発明の別の実施形態には、血液血漿または血漿画分におけるタンパク質の平均半減期に達したときを過ぎて認知もしくは運動の機能の改善、神経炎症の減少、またはニューロン新生の改善について対象をモニターすることが含まれる。
【0012】
場合によっては、本発明に係るパルス状投薬には、たとえば、上記に記載されているような第1のセットの用量の投与と、それに続く投薬しない期間、たとえば、「投薬がない期間」、次に続く別の用量または別のセットの用量の投与とが含まれる。この「投薬がない期間」の持続期間は変化してもよいが、一部の実施形態では、7日以上、たとえば、14日以上を含めて10日以上であり、場合によっては、投薬がない期間は、たとえば、30~90日及び30~60日を含めて15日から365日に及ぶ。そのようなものとして、方法の実施形態には、非慢性的な(すなわち、非連続の)投薬、たとえば、血液血漿製剤の非慢性的な投与が含まれる。一部の実施形態では、パルス状投薬とその後に続く投薬がない期間とのパターンは所望のような回数繰り返され、その際、場合によっては、このパターンは対象の生涯に至るまで及び生涯を含めて1年以上、たとえば、2年以上継続される。本発明の別の実施形態には、連続5日間の投薬計画に2~3日の投薬がない期間を伴い、その後の連続2~14日間の投与を介して血液血漿または血漿画分を投与することが含まれる。
【0013】
本発明はまた、様々な血液血漿画分(たとえば、画分、溶出物、血漿タンパク質画分、ヒトアルブミン溶液)間でのタンパク質含量の差異が特定の認知または運動の障害を予防する及び/または改善すること、及び神経変性疾患を緩和することに関与し得ることも認識している。例として且つ限定ではなく、本発明の実施形態は、組換えヒトアルブミン製剤またはヒトアルブミン溶液(HAS)製剤の単に高いアルブミン濃度が、アルブミン濃度が低い血漿タンパク質画分(PPF)製剤に関連する認知の改善、運動機能の改善、神経炎症の軽減、細胞の生存、またはニューロン新生の背後にある推進力ではないことを実証する。
【0014】
若齢ドナーに由来する血液及び血液血漿は、脳の老化の既存の影響を分子、構造、機能及び認知のレベルを含めて改善し、元に戻すことを示している(Saul,A.Villeda,et al.Young blood reverses age-related impairments in cognitive function and synaptic plasticity in mice.Nature Medicine 20 659-663(2014))。本発明は、その一部が患者のショックを治療するために従来使用されてきた血液血漿の画分及び溶出物に関するものである、且つ、それらが加齢に伴う認知障害、運動機能の低下、及び神経炎症または神経変性関連疾患の治療の方法として有効であるという発見に関する。
【0015】
本発明の態様によれば、次いで、血液血漿の血液製剤画分を用いた加齢に伴う認知障害、加齢性の認知症、運動障害、神経炎症及び/または神経変性疾患の治療の方法が提供される。方法の態様には、加齢に伴う認知障害、運動障害、神経炎症または神経変性疾患を患っているまたはそれを発症するリスクがある個体に血液血漿画分を投与することが含まれる。方法の追加の態様には、加齢に伴う認知障害、運動障害、神経炎症または神経変性疾患を患っているまたはそれを発症するリスクがある個体に特定の年齢範囲のドナーのプールに由来する血液血漿画分を投与することが含まれる。方法のさらなる態様には、パルス状の投薬計画を用いた血液血漿または血漿画分の投与が含まれる。提供されるものはまた、主題の方法を実践するために使用される試薬、用具及びそのキットである。
【0016】
実施形態では、血液血漿画分は、たとえば、以下に記載されているCohn分画法のような血液分画法から得られる幾つかの血液血漿画分の1つであってもよい。別の実施形態では、血液血漿画分は、個々にまたは複合体として正常ヒトアルブミン、アルファ及びベータグロブリン、ガンマグロブリン、及びその他のタンパク質で構成される溶液である、本明細書では「血漿画分」と呼ばれる種類であってもよい。別の実施形態では、血液血漿画分は「血漿タンパク質画分」(PPF)として当業者に知られる血液血漿画分の種類であってもよい。別の実施形態では、血液血漿画分は「ヒトアルブミン溶液」(HAS)画分であってもよい。さらに別の実施形態では、血液血漿画分は血栓症のリスクが少ない分画の有効性を保持するために凝固因子の実質的にすべてが除去されるものであってもよい。本発明の実施形態は、たとえば、若齢ドナーまたは若齢ドナーのプールに由来する画分を投与することも含んでもよい。本発明の別の実施形態には、血液血漿画分で治療した対象にて認知の改善、運動機能の改善、神経炎症の減少またはニューロン新生の増加をモニターすることが含まれてもよい。
【0017】
本発明の実施形態には、認知障害、神経変性運動障害、または神経炎症関連の疾患であると診断された対象に有効量の血液血漿または血漿画分を投与することによってその対象を治療することが含まれる。本発明の別の実施形態には、有効量の血液血漿または血漿画分を投与し、その後、認知機能の改善、運動機能の改善、神経炎症の減少またはニューロン新生の増加について対象をモニターすることが含まれる。本発明の別の実施形態には、少なくとも連続2日間の投薬計画を介して有効量の血液血漿または血漿画分を投与し、最後の投与の日付の少なくとも2日後、認知機能の改善、運動機能の改善、神経炎症の減少またはニューロン新生の増加について対象をモニターすることが含まれる。本発明のさらなる実施形態には、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日の投薬計画を介して有効量の血液血漿または血漿画分を投与し、最後の投与の日付の少なくとも3日後、認知機能の改善、運動機能の改善、神経炎症の減少またはニューロン新生の増加について対象をモニターすることが含まれる。本発明のさらに別の実施形態には、少なくとも連続2日間の投薬計画を介して有効量の血液血漿または血漿画分を投与し、且つ、最後の投与の日付の後、血液血漿または血漿画分におけるタンパク質の平均半減期に達した後、認知の改善、運動機能の改善、神経炎症の減少またはニューロン新生の増加についてモニターすることが含まれる。
【0018】
本発明の実施形態には、認知障害、運動機能障害、神経炎症、またはニューロン新生の低下であると診断された対象に有効量の血液血漿または血漿画分を投与することによってその対象を治療することが含まれ、対象は投与の後、運動負荷療法に従う。本発明の別の実施形態には、対象に処方される運動負荷療法に従うことが含まれる。本発明の別の実施形態には、投与に先立って運動した対象よりも高い強度で及び/または多い頻度で運動する対象が含まれる。本発明の別の実施形態には、投与に先立って運動した対象に類似する強度及び/または頻度で運動する対象が含まれる。
【0019】
本発明の実施形態には、幹細胞療法を受けている、受ける予定である、または受けたことがある対象にあって有効量の血液血漿または血漿画分を対象に投与することによって、認知障害、運動機能障害、神経炎症、またはニューロン新生の低下であると診断された対象を治療することが含まれる。本発明の別の実施形態には、対象が幹細胞療法を受けている、受ける予定である、または受けたことがある対象に有効量の血液血漿または血漿画分を対象に投与することが含まれ、その際、治療法で使用される幹細胞は、胚性幹細胞、非胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、臍帯血幹細胞、羊水幹細胞等であることができる。本発明の別の実施形態には、幹細胞療法を受けている、受ける予定である、または受けたことがある、外傷性脊髄損傷、脳卒中、網膜疾患、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、難聴、心疾患、関節リウマチ、または重度熱傷であると診断された対象を有効量の血液血漿または血漿画分で治療することが含まれる。
【0020】
本明細書で言及される出版物及び特許出願はすべて、各個々の出版物または特許出願が具体的に且つ個々に参照によって組み入れられるように指示されたかのように同程度に参照によって本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】Aは、パルス投与及び3×/週の投薬計画を用いてPPF1で処理したマウスにおけるオープンフィールド試験にて移動した距離を示す図である。Bは、パルス投与及び3×/週の投薬計画を用いてPPF1で処理したマウスにおけるオープンフィールド試験にて中央で費やした時間を示す図である。
【
図2】パルス状投与及び3×/週の投薬計画を用いてPPF1で処理したマウスについての経時的な体重を示す図である。
【
図3】パルス投与または3×/週の投薬計画を用いてPPF1で処理したマウスにおける歯状回の顆粒層内でのDCX標識した細胞の数を示す図である。
【
図4】パルス投与または3×/週の投薬計画を用いてPPF1で処理したマウスにおける歯状回の顆粒層内でのBrdU標識した細胞の数を示す図である。
【
図5】パルス投与または3×/週の投薬計画を用いたPPF1、若齢ヒト血漿(「YP」)または老齢ヒト血漿(「OP」)で処理したマウスにおける歯状回の顆粒層内でのDCX標識した細胞の数を示す図である。
【
図6】パルス投与または3×/週の投薬計画を用いたPPF1、YPまたはOPで処理したマウスにおける歯状回の顆粒層内でのBrdU標識した細胞の数を示す図である。
【
図7】PPF1またはYPでパルス状投与したマウスについての1日当たり試行当たりの標的穴を見つけるまでの時間を示す図である。
【
図8】パルス投与される計画を用いて若齢ヒト血漿(YP)、老齢ヒト血漿(OP)またはPPF1のいずれかで処理したマウスの群における歯状回の顆粒層内でのDCX標識した細胞の数を示す図である。
【
図9】パルス投与される計画を用いて若齢ヒト血漿(YP)、老齢ヒト血漿(OP)またはPPF1のいずれかで処理したマウスの群における歯状回の顆粒層内でのBrdU標識した細胞の数を示す図である。
【
図10】Y迷路試験における処理群により各走行路に入る総進入のうち精通走行路または新規走行路に入る進入の総数のパーセントを示す図である。12ヵ月齢のマウスをPPF1または5×濃縮PPF1でパルス投与処理した。
【
図11】Y迷路試験における精通走行路に対する新規走行路のへの進入の比率を示す図である。12ヵ月齢のマウスをPPF1または5×濃縮PPF1でパルス投与処理した。
【
図12】PPF1または5×濃縮PPF1でパルス投与した12ヵ月齢のマウスにおける海馬切片当たりのBrdU標識した細胞の数を示す図である。
【
図13】PPF1または5×濃縮PPF1でパルス投与した12ヵ月齢のマウスにおける海馬切片当たりのDCX標識した細胞の数を示す図である。
【
図14】(1)連続5日間[PPF1-5d]、(2)連続7日間[PPF1-7d]、(3)連続5日間と、最初の投薬の完了の6週後に発生する追加の連続5日間の投薬(「追加投与」)[PPF1-5d-B]、(4)連続7日間と、最初の投薬の完了の6週後に発生する追加の連続7日間の投薬(「追加投与」)[PPF1-7d-B]の1つの投薬計画を用いて、PPF1または生理食塩水でパルス投与した10.5ヵ月齢のNSGマウスにおける歯状回の顆粒層内でのDCX標識した細胞の数を示す図である。
【
図15】(1)連続5日間[PPF1-5d]、(2)連続7日間[PPF1-7d]、(3)連続5日間と、最初の投薬の完了の6週後に発生する追加の連続5日間の投薬(「追加投与」)[PPF1-5d-B]、(4)連続7日間と、最初の投薬の完了の6週後に発生する追加の連続7日間の投薬(「追加投与」)[PPF1-7d-B]の1つの投薬計画を用いて、PPF1または生理食塩水でパルス投与した10.5ヵ月齢のNSGマウスにおける歯状回の顆粒層内でのBrdU標識した細胞の数を示す図である。
【
図16】(1)連続5日間[PPF1-5d]、(2)連続7日間[PPF1-7d]、(3)連続5日間と、最初の投薬の完了の6週後に発生する追加の連続5日間の投薬(「追加投与」)[PPF1-5d-B]、(4)連続7日間と、最初の投薬の完了の6週後に発生する追加の連続7日間の投薬(「追加投与」)[PPF1-7d-B]の1つの投薬計画を用いて、PPF1または生理食塩水でパルス投与した10.5ヵ月齢のNSGマウスにおける歯状回の顆粒層内でのEdU標識した細胞の数を示す図である。
【
図17】回し車の有無でのPPF1または生理食塩水で処理した3ヵ月齢または6ヵ月齢のNSG動物における歯状回の顆粒層内でのDCX標識した細胞の数を示す図である。
【
図18】回し車の有無でのPPF1または生理食塩水で処理した3ヵ月齢または6ヵ月齢のNSG動物における歯状回の顆粒層内でのKi67陽性標識した細胞の数を示す図である。
【
図19】回し車の有無でのPPF1または生理食塩水で処理した3ヵ月齢または6ヵ月齢のNSG動物における歯状回の顆粒層内でのBrdU陽性標識した細胞の数を示す図である。
【
図20】PPF1または生理食塩水対照のいずれかでパルス投与した11ヵ月齢のNSGマウスにおける所与の時間での回し車の回転数を示す図である。網掛け領域は暗期を示し、四角で囲んだ領域はホットプレート試験を施したときを示す。
【
図21】Aは、若齢血漿、組換えヒトアルブミン(「rhアルブミン」)及び生理食塩水対照で処理した10.5ヵ月齢のNSGマウスの3つの処理群における歯状回の顆粒層内のBrdU標識細胞の数を示す図である。Bは、若齢血漿、組換えヒトアルブミン(「rhアルブミン」)及び生理食塩水対照で処理した10.5ヵ月齢のNSGマウスの3つの処理群における歯状回の顆粒層内のDCX標識細胞の数を示す図である。
【
図22】対照、PPF1、HAS1またはrhアルブミンで処理したマウスE16皮質に由来する解離し、混合した神経細胞における神経ネットワーク活動の上昇の程度を示す図である。
【
図23】清澄化した老齢ヒト血漿(老齢血漿)または生理食塩水を投与される8週齢(若齢)NSGマウスの投与の4種の規範を示す図である。
【
図24】Aは、最後の用量を投与した48時間後に老齢血漿の週2回投薬により処理した8週齢(若齢)NSGマウスの海馬におけるVCAM-1陽性標識を示す図である。Bは、最後の用量を投与した48時間後に老齢血漿の週3回投薬により処理した8週齢(若齢)NSGマウスの海馬におけるVCAM-1陽性標識を示す図である。Cは、最後の用量を投与した48時間後に老齢血漿のパルス状投薬により処理した8週齢(若齢)NSGマウスの海馬におけるVCAM-1陽性標識を示す図である。Dは、最後の用量を投与した21日後に老齢血漿のパルス状投薬により処理した8週齢(若齢)NSGマウスの海馬におけるVCAM-1陽性標識を示す図である。
【
図25】Aは、最後の用量を投与した48時間後に老齢血漿の週2回投与により処理した8週齢(若齢)NSGマウスの歯状回におけるDCX陽性細胞の数を示す図である。Bは、最後の用量を投与した48時間後に老齢血漿の週3回投与により処理した8週齢(若齢)NSGマウスの歯状回におけるDCX陽性細胞の数を示す図である。Cは、最後の用量を投与した21日後に老齢血漿のパルス状投薬により処理した8週齢(若齢)NSGマウスの歯状回におけるDCX陽性細胞の数を示す図である。
【
図26】老齢血漿及び生理食塩水で処理した8週齢(若齢)NSGマウスについてBarnesの迷路脱出時間経過を示し、脱出穴に達し、それに入る時間を示す図である。マウスは老齢ヒト血漿または生理食塩水で連続7日間処理し、最後の注射の4週後に調べた。
【
図27】老齢ヒト血漿または生理食塩水で連続7日間処理した8週齢(若齢)NSGマウスの試験の4日目での最後の3回のBarnes迷路試行における平均脱出時間を示す図である。試験は注射の4週後に行った。
【
図28】老齢ヒト血漿または生理食塩水で連続7日間処理した8週齢(若齢)NSGマウスにおけるBarnes迷路試行1と3との間での脱出時間の差異を示す図である。試験は最後の注射の4週後に発生した。
【
図29】老齢ヒト血漿または生理食塩水で連続7日間処理した8週齢(若齢)NSGマウスにおけるDCX、小胞性グルタミン酸受容体(vglut1)、シナプシン1(syn1)、ベータIIIチューブリン(tuj1)及び脳由来の神経栄養因子(bdnf)のmRNAレベルを定量する定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)の結果を示す図である。
【
図30】35mg/kgのカイニン酸または生理食塩水で処理し、その後PPF1または生理食塩水で毎日連続5日間処理する8週齢(若齢)NSGマウスのための投薬規範を示す図である。
【
図31】Aは、
図28に示した規範どおりに処理したマウスの海馬のCA1領域におけるCD68陽性領域のパーセントを示す図である。Bは、
図28に示した規範どおりに処理したマウスの海馬のCA1領域におけるGFAP陽性領域のパーセントを示す図である。
【
図32】BrdUの同時投与と共にPPF1または生理食塩水対照で連続7日間パルス投与した6ヵ月齢のNSGマウスの歯状回におけるBrdUについて染色された細胞の数を示す図である。最初の2つのカラムはPPF1/生理食塩水対照及びBrdUの最後の処理の7日後に分析したコホートを構成し、2番目の2つはPPF1/生理食塩水対照及びBrdUの最後の処理の14日後に分析したコホートを構成する。
【
図33】PPF1によるパルス投与計画の完了の10日後での6ヵ月齢のNSGマウスの歯状回における増殖している細胞(Ki67+)の増加を示す図である。
【
図34】PPF1によるパルス投与計画の完了の10日後での6ヵ月齢のNSGマウスにおける歯状回及び脳室下帯の切片を示す図である。
【
図35】Aは、7日間のパルス投薬計画によりPPF1または生理食塩水対照のいずれかで処理した6ヵ月齢のNSGマウスの歯状回における細胞の細胞運命を示す図である。BrdUはパルス投薬計画の開始の直前に連続5日間投与した。BrdUで染まるNeuN+同時局在化は神経前駆細胞がニューロンになる程度を示す。BrdUで染まるGFAP+同時局在化の程度は神経前駆細胞が星状細胞になる程度を示す。Bは、
図35Aに類似する実験から得た結果を示す図であるが、NSGマウスは12ヵ月齢だった。
【
図36】Aは、7日間のパルス投薬計画により老齢血漿または生理食塩水対照のいずれかで処理した3ヵ月齢のNSGマウスの歯状回における細胞の細胞運命を示す図である。BrdUはパルス投薬計画の開始の直前に連続5日間投与した。BrdUで染まるNeuN+同時局在化は神経前駆細胞がニューロンになる程度を示す。Bは、
図36Aで詳述した実験から得られた結果を示す図であるが、BrdUで染まるGFAP+同時局在化の程度は神経前駆細胞が星状細胞になる程度を示す。
【
図37】PPF1または生理食塩水の7日間のパルス投薬計画で処理した18ヵ月齢のマウスの(A)大脳全体、(B)皮質、及び(C)等皮質におけるcFos陽性細胞の数を示す図である。
【
図38】PPF1または生理食塩水の7日間のパルス投薬計画で処理した18ヵ月齢のマウスの(A)前頭皮質、(B)眼窩皮質、(C)辺縁内皮質、及び(D)縁前方皮質おけるcFos陽性細胞の数を示す図である。
【
図39】PPF1または生理食塩水の7日間のパルス投薬計画で処理した18ヵ月齢のマウスの(A)副嗅核及び(B)嗅結節におけるcFos陽性細胞の数を示す図である。
【
図40】PPF1または生理食塩水の7日間のパルス投薬計画で処理した18ヵ月齢のマウスの前頭皮質(FRP)、眼窩皮質(ORB)、辺縁内皮質(ILA)、及び縁前方皮質(PL)及び副嗅核(AON)における局所皮質活性化のボクセル統計に基づく視覚化を示す図である。
【
図41】Aは、PPF1または生理食塩水対照による7日間のパルス投薬計画で処理した22ヵ月齢のC57BL/6J野生型マウスの海馬におけるCD68免疫反応性領域のパーセントを示す図である。Bは、PPF1または生理食塩水対照による7日間のパルス投薬計画で処理した22ヵ月齢のC57BL/6J野生型マウスの海馬におけるIba-1免疫反応性領域のパーセントを示す図である。Cは、PPF1または生理食塩水対照の7日間によるパルス投薬計画で処理した22ヵ月齢のC57BL/6J野生型マウスの海馬におけるGFAP免疫反応性領域のパーセントを示す図である。
【
図42】Aは、連続7日間のパルス状投薬計画を用いた投薬の6、9及び12週後での生理食塩水対照と比べたPPF1処理した23ヵ月齢の野生型C57BL/6JマウスにおけるBrdU染色の変化のパーセントを示す図である。Bは、連続7日間のパルス状投薬計画を用いた投薬の6、9及び12週後での生理食塩水対照と比べたPPF1処理した23ヵ月齢の野生型C57BL/6JマウスにおけるDCX染色の変化のパーセントを示す図である。
【
図43】A及びBは、PPF1または溶媒対照を用いた連続7日間のパルス状投薬計画で処理した4~4.5ヵ月齢のオスのアルファ-シヌクレインマウス(ライン61)(パーキンソン病のモデル)の体重測定の結果を示す図である。
【
図44】PPF1または溶媒対照を用いた連続7日間のパルス状投薬計画で処理した4~4.5ヵ月齢のオスのアルファ-シヌクレインマウス(ライン61)(パーキンソン病のモデル)における営巣の結果を示す図である。
【
図45】A及びBは、PPF1または溶媒対照を用いた連続7日間のパルス状投薬計画で処理した4~4.5ヵ月齢のオスのアルファ-シヌクレインマウス(ライン61)(パーキンソン病のモデル)におけるそれぞれ、パスタ齧り及び関連する運動の改善の結果を示す図である。
【
図46】PPF1または溶媒対照を用いた連続7日間のパルス状投薬計画で処理した4~4.5ヵ月齢のオスのアルファ-シヌクレインマウス(ライン61)(パーキンソン病のモデル)における金網懸垂試験の結果を示す図である。
【
図47】Aは、困難さが増す5回の様々な梁歩行試験で使用された様々な梁の形状及びサイズを示す図である。Bは、PPF1または溶媒対照を用いた連続7日間のパルス状投薬計画で処理した4~4.5ヵ月齢のオスのアルファ-シヌクレインマウス(ライン61)(パーキンソン病のモデル)における5回の様々な梁歩行試験の結果を示す図である。梁歩行試験は最後の処理投与の72時間後に行った。Cは、PPF1または溶媒対照を用いた連続7日間のパルス状投薬計画で処理した4~4.5ヵ月齢のオスのアルファ-シヌクレインマウス(ライン61)(パーキンソン病のモデル)における5回の様々な梁歩行試験の結果を示す図である。梁歩行試験は最後の処理投与の3週後に行った。
【
図48】A~Fは、PPF1または溶媒対照を用いた連続7日間のパルス状投薬計画で処理した4~4.5ヵ月齢のオスのアルファ-シヌクレインマウス(ライン61)(パーキンソン病のモデル)における線条体及び海馬の染色の組織学的な結果を示す図である。調べた組織学的なマーカーにはCD68、Iba-1及びNeuNが含まれる。
【
図49】PPF1、HAS1または溶媒対照を用いた連続7日間のパルス状投薬計画で処理した12ヵ月齢のNSGマウスにおけるBarnes迷路の脱出時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.序論
本発明は、加齢性認知症または運動機能の低下を含む認知及び運動の障害、及び/または神経変性疾患の治療及び/または予防のための方法及び組成物の特定及び発見に関する。本明細書に記載されているものは、そのような障害を患っている対象の治療のための方法及び組成物であり、それらは本発明の態様である。本明細書に記載されているものはまた、認知または運動の障害を患っている対象にてニューロン新生または神経炎症の減少及び/または認知または運動の改善をもたらす投薬計画である。本明細書に記載されている方法及び組成物は、認知及び運動の障害、加齢性認知症、神経炎症、及び/または神経変性疾患を予防すること、認知及び運動の障害、加齢性認知症、神経炎症、及び/または神経変性疾患の症状を改善すること、加齢に伴う認知もしくは運動の障害、加齢性認知症、神経炎症、及び/または神経変性疾患の進行を減速すること、及び/または加齢に伴う認知及び運動の障害、加齢性認知症、神経炎症、及び/または神経変性疾患の進行を元に戻すことにおいて有用である。本発明の実施には、治療としての血液血漿画分、たとえば、以下に記載されているCohn分画法のような血液分画法から得られる1以上の画分または溶出物を使用することが含まれる。本発明の実施形態には、血漿画分(以後、「血漿画分」と呼ばれる個々にまたは複合体として正常ヒトアルブミンとアルファ及びベータのグロブリンとガンマグロブリンと他のタンパク質とで構成される溶液)を使用することが含まれる。本発明の別の実施形態には、治療として血漿タンパク質画分(PPF)を使用することが含まれる。本発明の別の実施形態には、治療としてヒトアルブミン溶液(HAS)画分を使用することが含まれる。さらに別の実施形態には、以下に記載される溶出物Iまたは溶出物II/IIIのような血液分画法に由来する溶出物を使用することが含まれる。追加の実施形態には、血栓症のリスクを減らす一方で有効性を保持するために実質的にすべての凝固因子を取り除いている血液血漿画分が含まれる(たとえば、全体として参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願公開番号62/236,710及び63/376,529を参照のこと)。
【0023】
本発明を詳細に記載する前に、本発明は記載されている特定の方法または組成物に限定されないので、当然、変化してもよいことが理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態のみを記載する目的のためのものであって、限定を意図するものではないことも理解される。
【0024】
本明細書で議論される出版物は、本出願の出願日に先立って単にそれらの開示のために提供されている。本発明は先行発明のせいでそのような出版物に先行する権利がないという承認と解釈されるものは本明細書にはない。さらに、提供されている出版の日付は独立して確認される必要があってもよい実際の出版日とは異なってもよい。
【0025】
値の範囲が提供される場合、文脈が明瞭に指示しない限り、その範囲の下端と上端との間で下端の単位の10分の1までの各介在する値も具体的に開示される。定められた範囲における定められた値または介在する値とその言及される範囲における他の言及される値または介在する値との間の各さらに小さな範囲は本発明内に包含される。定められた範囲とにて具体的に除外される端次第で、これらのさらに小さな範囲の上端及び下端は独立してその範囲に含まれてもよいし、または除外されてもよく、そのさらに小さな範囲に端の一方が含まれる、両方とも含まれない、または両方とも含まれる各範囲も本発明内に包含される。定められた範囲が一方または両方の端を含む場合、それらの含まれる端のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0026】
特許請求の範囲は任意の要素を除外するように下書きされてもよいことが言及される。そのようなものとして、この記述は、特許請求の範囲の要素の引用または「否定的な」限定の使用と併せた「単に」、「のみ」等のような排他的な用語の使用について先行詞として役立つように意図される。
【0027】
本開示を読む際に当業者に明らかであるように、本明細書で記載され、説明されている個々の実施形態のそれぞれは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく他の幾つかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離されてもよい、または容易にそれと組み合わせられてもよい別個の成分及び特徴を有する。引用された方法は引用された事象の順に、または理論的に可能である他の順に実施することができる。
【0028】
2.定義
特に定義されない限り、本明細書で使用される専門用語及び科学用語はすべて本発明が属する技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似するまたは同等である方法及び物質を本発明の実践または試験で使用することができるが、一部の可能性がある且つ好まれる方法及び物質がここで記載されている。本明細書で言及される出版物はすべて、出版物が併せて引用される方法及び/または物質を開示し、記載するために参照によって本明細書に組み入れられる。本開示は矛盾が存在する程度まで組み込まれた出版物の開示に優先することが理解される。
【0029】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形態「a」、「an」及び「the」には文脈が明瞭に指示しない限り、複数の指示対象が含まれることが言及されなければならない。従って、たとえば、「a細胞」への言及は複数のそのような細胞を含み、「theペプチド」への言及は当業者等に既知の1以上のペプチド及びその同等物、たとえば、ポリペプチドを含む。
【0030】
本発明の方法を記載することにおいて、用語「宿主」、「対象」、「個体」及び「患者」は相互交換可能に使用され、開示される方法に係るそのような治療を必要とする哺乳類を指す。そのような哺乳類には、たとえば、ヒト、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、マウス及びラットが挙げられる。特定の実施形態では、対象は非ヒト哺乳類である。一部の実施形態では、対象は家畜である。一部の実施形態では、対象はペットである。一部の実施形態では、対象は哺乳類である。特定の実施形態では、対象はヒトである。他の対象には、家庭内ペット(たとえば、イヌ及びネコ)、家畜(たとえば、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ等)、齧歯類(たとえば、疾患の動物モデルのような、たとえば、マウス、モルモット、及びラット)、及び非ヒト霊長類(たとえば、チンパンジー及びサル)を挙げることができる。そのようなものとして、本発明の対象には、哺乳類、たとえば、ヒト及び他の霊長類、たとえば、チンパンジー及び他の類人猿及びサル種等が挙げられるが、これらに限定されず、特定の実施形態では、対象はヒトである。用語、対象はまた、任意の年齢、体重または他の身体的特徴のヒトまたは生物を含むことにし、その際、対象は成人、小児、幼児または新生児であってもよい。
【0031】
「若齢」または「若齢個体」によって、30歳以下、たとえば、25歳以下または22歳以下を含む40歳以下、たとえば、35歳以下の実年齢である個体を意味する。場合によっては、若齢血漿を含む血液製剤の供給源として役立つ個体は、10歳以下、たとえば、1歳以下を含む、5歳以下である者である。場合によっては、対象は新生児であり、血漿製剤の供給源は臍帯血であり、その際、血漿製剤は新生児の臍帯血から採取される。そのようなものとして、「若齢」及び「若齢個体」は0~40歳の間、たとえば、0、1、5、10、15、20、25、30、35または40歳である対象を指してもよい。他の例では、「若齢」及び「若齢個体」は比較的老齢個体で示される血漿における炎症性サイトカインがレベルを示さない個体のような生物年齢(実年齢とは対照的に)を指してもよい。逆に、「若齢」及び「若齢個体」は、比較的老齢個体でのレベルと比べて血漿での抗炎症性サイトカインが高いレベルを示す個体のような生物年齢(実年齢とは対照的に)を指してもよい。例として、且つ限定ではなく、炎症性サイトカインはエオタキシンであり、若齢対象または若齢個体と老齢個体との間の倍率差は少なくとも1.5倍である。同様に、他の炎症性サイトカインにて老齢個体と若齢個体との間での倍率差を用いて生物年齢を指してもよい(参照によって本明細書に組み入れられる米国特許出願番号13/575,437を参照のこと)。普通、個体は健康であり、たとえば、個体は採取の時点で血液悪性腫瘍または自己免疫疾患を有さない。
【0032】
「加齢に関連した認知障害を患っている個体またはそれを患うリスクがある個体」によって、平均寿命のほぼ50%を超える、たとえば、平均寿命の60%を超える、たとえば、70%を超える、たとえば、75%、80%、85%、90%、95%またはさらに99%超える個体を意味する。個体の年齢は当該種に依存する。従って、この比率は当該種の予測平均余命に基づく。たとえば、ヒトでは、そのような個体は、たとえば、以下でさらに記載されている加齢に関連した状態、たとえば、自然な加齢過程に関連する認知障害を患っている50歳以上、たとえば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上、及び普通、100歳未満、たとえば、90歳、すなわち、約50~100歳の間の年齢、たとえば、50...55...60...65...70...75...80...85...90...95...100歳以上、50~100歳の間の任意の年齢であり、加齢に関連した状態、たとえば、認知障害の症状をまだ示し始めていない約50歳以上、たとえば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上、及び普通、100歳未満、すなわち、約50~100歳の間の年齢、たとえば、50...55...60...65...70...75...80...85...90...95...100歳である個体であり、以下でさらに記載されている加齢に関連した疾患による認知障害を患っている任意の年齢の個体であり、及び通常、認知障害を伴う加齢に関連した疾患であると診断されているが、個体はまだ認知障害の症状を示し始めていない任意の年齢の個体である。非ヒト対象について対応する年齢は知られており、本明細書に適用するように意図される。
【0033】
本明細書で使用されるとき、「治療」は(i)疾患もしくは障害の予防、または(ii)疾患もしくは障害の症状の軽減もしくは除去のいずれかを指す。治療は予防上(疾患の発症に先立って)または治療上(疾患の発症に続いて)達成されてもよい。効果は、疾患またはその症状を完全にまたは部分的に防ぐという点で予防的であってもよいし、及び/または疾患及び/または疾患に起因する有害効果についての部分治癒または完全治癒という点で治療的であってもよい。従って、用語「治療」は本明細書で使用されるとき、哺乳類における加齢に伴う疾患または障害の治療を対象とし、それには、(a)疾患に罹り易くてもよいが、まだそれを有すると診断されていない対象にて疾患が発生することを防ぐこと、b)疾患を抑制すること、すなわち、その発症を止めること、または(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退縮を引き起こすことが含まれる。治療は、種々の異なる身体的発現、たとえば、遺伝子発現の改変、組織または臓器の若返り等を生じてもよい。治療剤は疾患の発症の前に、発症の間に、または発症の後で投与されてもよい。治療が患者の望ましくない臨床症状を安定化するまたは軽減する進行中の疾患の治療は特に興味深い。そのような治療は冒された組織にて機能の完全な喪失に先立って実施されてもよい。主題の治療法は疾患の症候性段階の間に、且つ場合によっては、疾患の症候性段階の後で投与されてもよい。
【0034】
一部の実施形態では、治療される加齢に関連した状態は個体における認知能力の加齢に関連した障害である。認知能力または「認知」によって、注意及び集中を含む精神機能、複雑な作業及び概念を習得すること、記憶(短い及び/または長い用語で新しい情報を獲得すること、保持すること、及び取り戻すこと)、情報処理(五感によって集めた情報に対応すること)、視空間機能(心的イメージ、コピー描画、物体または形状を構築すること用いた視覚的知覚、奥行き知覚)、言語を作り出すこと及び理解すること、会話流暢性(単語発見)、問題を解決すること、決心すること、及び実行機能(計画を立てること及び優先順位を決めること)を意味する。「認知低下」によって、これらの能力の1以上における進行性の低下、たとえば、記憶、言語、思考、判断等の低下を意味する。「認知能力における障害」及び「認知障害」によって、健常な個体、たとえば、年齢が一致する健常な個体と比べた、または前の時点、たとえば、2週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、5年または10年以上前のその個体の能力と比べた認知能力の低下を意味する。「加齢に関連した認知障害」によって、たとえば、自然な加齢過程に関連する認知障害、たとえば、軽い認知障害(M.C.I.)を含む通常加齢に関連した認知能力の障害及び老化が増すと共に高頻度で見られる障害である加齢に関連した障害、たとえば、神経変性状態、たとえば、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、緑内障、筋強直性ジストロフィー、血管性認知症等に関連する認知障害を意味する。
【0035】
一部の実施形態では、治療される加齢に関連した状態は個体における運動能力の加齢に関連した障害である。運動能力によって、小さな且つ正確な動きを生じる微細運動技能(たとえば、書くこと、靴紐を結ぶこと)及び大きな動きのための粗大運動技能(たとえば、歩行、走行、蹴ること)のような動きを生じる複雑な筋と神経との活動を実施する能力を含む運動過程を意味する。「運動低下」によって、これらの能力、たとえば、微細な動きまたは粗大運動の技能等の1以上における進行性の低下を意味する。「損傷された運動」及び「運動障害」によって、健常な個体、たとえば、年齢が一致した健常な個体と比べた、または前の時点、たとえば、2週間、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月、6ヵ月、1年、2年、5年または10年以上前のその個体の能力と比べた運動の能力/技能の低下を意味する。「加齢に関連した運動障害」によって、たとえば、自然な加齢過程に関連する運動の障害または低下、及び加齢に関連した障害、すなわち、老化が増すと共に高頻度で見られる障害、たとえば、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症等の神経変性状態に関連する運動の障害または低下を含む、通常、加齢に関連した運動能力の障害または低下を意味する。
【0036】
一部の実施形態では、治療される加齢に関連した状態は、個体における神経炎症の加齢に関連した増加である。「神経炎症」によって、傷害、感染または神経変性疾患に対する神経系の生化学的な及び細胞性の反応を意味する。そのような反応は、潜在的危害に対して防御する中枢神経系の免疫を含むことによって誘発因子を減らすことに向けられる。神経変性は中枢神経系で発生し、神経の構造及び機能の喪失の顕著な特徴を示す。神経炎症性疾患または神経炎症に関連する状態もしくは疾患には、例として且つ限定ではなく、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症等のような神経変性疾患が挙げられる。
【0037】
血漿成分を含む血液製剤
主題の方法を実践することにおいて、血漿を含む血液製剤がそれを必要とする個体、たとえば、認知障害または運動障害、神経炎症及び/または加齢性認知症を患っているまたは患うリスクがある個体に投与される。そのようなものとして、本発明の実施形態に係る方法には、個体(「ドナー個体」または「ドナー」)に由来する血漿成分を含む血液製剤を、認知障害または運動障害、神経炎症、神経変性及び/または加齢性認知症を少なくとも患うリスクがあるまたは患っている個体(「レシピエント個体」または「レシピエント」)に投与することが含まれる。「血漿成分を含む血液製剤」によって、血漿を含む血液(たとえば、全血、血液血漿またはその画分)に由来する製剤を意味する。用語「血漿」は、約92%の水分と、たとえば、アルブミン、ガンマグロブリン、抗血友病因子及び他の凝固因子のような7%のタンパク質と1%の鉱物塩、糖、脂肪、ホルモン及びビタミンとで構成される血液の麦わら色/淡黄色の液体成分を指すために従来の意味で使用される。主題の方法で使用するために好適な血漿を含む血液製剤の非限定例には、抗凝固剤(たとえば、EDTA、クエン酸塩、シュウ酸塩、ヘパリン等)で処理した全血、全血を濾過して白血球を除くことによって作製した血液製剤(「白血球除去」)、血漿交換に由来するまたはアフェレーシスに由来する血漿から成る血液製剤、新鮮凍結血漿、精製血漿から本質的に成る血液製剤、及び血漿画分から本質的に成る血液製剤が挙げられる。場合によっては、採用される血漿製剤は非全血血漿製剤であり、それによって製剤は全血ではないことが意味されるので、それは、たとえば、赤血球、白血球等のような全血で見いだされる1以上の成分を、少なくともこれらの成分が全血に存在する範囲において欠いている。場合によっては、血漿製剤は、完全ではないにしても実質的に無細胞であり、その際、そのような例では、細胞成分は5体積%、たとえば、0.5%以下を含めて1%以下であってもよく、その際、場合によっては、無細胞血漿画分は細胞を完全に欠く組成物であり、すなわち、それらは細胞を含まない。
【0038】
血漿成分を含む血液製剤の採取
本明細書に記載されている方法の実施形態には、ヒトボランティアを含むドナーに由来することができる血漿成分を含む血液製剤の投与が含まれる。用語「ヒト由来」はそのような製剤を指すことができる。血漿を含む血液製剤をドナーから採取する方法は当該技術で周知である(たとえば、参照によって本明細書に組み入れられるAABB TECHNICAL MANUAL,(Mark A.Fung,et al.,eds.,18th ed.2014)を参照のこと)。
【0039】
一実施形態では、供血は静脈穿刺によって得られる。別の実施形態では、静脈穿刺はたった1回の静脈穿刺である。別の実施形態では、生理食塩水による体積補充は採用されない。好まれる実施形態では、血漿交換のプロセスを用いて血漿を含む血液製剤を得る。血漿交換は、重量調整した体積の血漿を取り出し、細胞成分をドナーに戻すことを含むことができる。好まれる実施形態では、細胞の凝固を防ぐために血漿交換の間、クエン酸ナトリウムが使用される。ドナーから採取される血漿の体積はクエン酸塩投与の後、好ましくは690~880mLであり、好ましくはドナーの体重と調整する。
【0040】
3.血漿画分
第二次世界大戦の間に、兵士が大量の血液を失った際、戦場で採用され得る安定な血漿増量剤の必要性が生じた。その結果、凍結乾燥血漿を調製する方法が開発された。しかしながら、再構成には無菌水が必要だったので、凍結乾燥血漿の使用は戦闘の状況では困難だった。代替として、E.J.Cohn博士はアルブミンを使用し、ショックの治療に直ちに導入できる使用準備済みの安定な溶液を調製し得ることを提案した(Johan,Current Approaches to the Preparation of Plasma Fractions in(Biotechnology of Blood) 165 (Jack Goldstein ed.,1st ed.1991)を参照のこと)。血漿画分を精製するCohn博士の手順は変性効果のために冷エタノールを利用したが、pH及び温度の変化を採用して分離を達成する。
【0041】
本明細書に記載されている方法の実施形態には、血漿画分の対象への投与が含まれる。分画は特定のタンパク質サブセットが血漿から分離されるプロセスである。分画技術は当該技術で既知であり、1940年代の間にCohn,et alによって開発された工程(参照によって本明細書に組み入れられるE.Cohn,Preparation and properties of serum and plasma proteins.IV.A system for the separation into fractions of the protein and lipoprotein components of biological tissues and fluids.68J.Am.Chem.Soc459(1946))を頼りにする。幾つかの工程がこのプロセスに含まれ、各工程は、選択的なタンパク質の沈殿を生じる特定のエタノール濃度及びpH、温度及び浸透圧のシフトを含む。沈殿物も遠心分離または沈殿を介して分離される。元々の「Cohnの分画プロセス」は、画分I、画分II+III、画分IV-1、画分IV-4及び画分Vと名付けられた5つの画分への沈殿物を介したタンパク質の分離を含んだ。アルブミンは、このプロセスの元々同定された終点(画分V)産物だった。本発明の実施形態によれば、各画分(または前の分離工程からの溶出物)は治療上有用なタンパク質画分を含有するまたは含有する可能性がある(参照によって本明細書に組み入れられるThierry Burnouf,Modern Plasma Fractionation,21(2),Transfusion Medicine Reviews,101(2007);Adil Denizli,Plasma fractionation:conventional and chromatographic methods for albumin purification,4J.Biol.& Chem.315,(2011);及びT.Brodniewicz-Proba,Human Plasma Fractionation and the Impact of New Technologies on the Use and Quality of Plasma-derived Products,5 Blood Reviews,245(1991),及び米国特許第3869431号、同第5110907号、同第5219995号、同第7531513号、及び同第8772461号を参照のこと)。特定のタンパク質画分を得るために上記の実験パラメーターの調整を行うことができる。
【0042】
さらに最近、分画はさらなる複雑さに達し、そのようなものとして、本発明の追加の実施形態を含む。複雑さにおけるこの最近の増加は、寒冷沈降物、冷却不足の血漿、及びCohnの画分のような既存の画分からの新しいタンパク質の単離を生じるクロマトグラフィーの導入、クロマトグラフィーとエタノール分画法を統合することによるIgG回収の増加、及びウイルスの減少/不活化/除去を介して生じている(同文献)。生理的なpH及びイオン強度でタンパク質を捕捉するために、アニオン交換クロマトグラフィーを利用することができる。これによってタンパク質及び/またはタンパク質画分の機能的活性が保護される。ヘパリン及びモノクローナル抗体もアフィニティークロマトグラフィーで使用される。当業者は、上記に記載されているパラメーターを調整して具体的に所望の血漿タンパク質を含有する画分を得てもよいことを認識することになる。
【0043】
本発明の実施形態では、血液血漿は工業環境で分画される。凍結血漿は1℃~4℃で解凍される。連続冷蔵遠心分離が解凍血漿に適用され、寒冷沈降物が単離される。回収された寒冷沈降物は-30℃以下で凍結され、保存される。寒冷沈降物が少ない(「寒冷物が少ない」)血漿を、たとえば、第IX因子複合体及びその成分のような不安定な凝固因子と同様に抗トロンビン及びC1エステラーゼ阻害剤のようなプロテアーゼ阻害剤の捕捉(たとえば、一次クロマトグラフィーを介して)のために直ちに処理する。その後の工程で連続遠心分離及び沈殿単離を適用することができる。そのような技法は当業者に既知であり、たとえば、その開示が全体として参照によって本明細書に組み入れられる米国特許第4624780号、同第5219995号、同第5288853号、及び米国特許出願番号20140343255及び20150343025に記載されている。
【0044】
本発明の実施形態では、血漿画分は実質的な濃度のアルブミンを含有する血漿画分を含んでもよい。本発明の別の実施形態では、血漿画分は実質的な濃度のIgGまたは静脈内免疫グロブリン(IGIV)(たとえば、Gamunex-C(登録商標))を含有する血漿画分を含んでもよい。本発明の別の実施形態では、血漿画分は、たとえば、プロテインAが介在する枯渇のような当業者に周知の方法によって免疫グロブリン(IgG)を実質的に枯渇させているGamunex-C(登録商標)のようなIGIV血漿画分を含んでもよい(Keshishian,H.,et al.,Multiplexed,Quantitative Workflow for Sensitive Biomarker Discovery in Plasma Yields Novel Candidates for Early Myocardial Injury,Molecular & Cellular Proteomics,14 at 2375-93(2015)を参照のこと)。追加の実施形態では、血液血漿画分は、血栓症のリスクが低下した画分の有効性を保持するために実質的にすべての凝固因子が取り除かれているものであってもよい。たとえば、血漿画分は、その開示が全体として参照によって本明細書に組み入れられる2016年8月18日に出願された米国特許第62/376,529号に記載されているような血漿画分であってもよい。
【0045】
4.アルブミン製剤
当業者にとって、血漿タンパク質画分(「PPF」)とヒトアルブミン溶液(「HAS」)とのアルブミン血漿製剤(「APP」)の2つの一般的なカテゴリーが存在する。PPFはHASよりも収率が高いプロセスに由来するが、HASよりも低い最小アルブミン純度を有する(PPFについては>83%及びHASについては>95%)。(ヒトアルブミン溶液の製造:a continually developing colloid,P.Matejtschuk,et al.,British J.of Anaesthesia,85(6):887-95,at 888(2000))。場合によっては、PPFは83%~95%の間での、または代わりに83%~96%の間でのアルブミン純度を有する。アルブミン純度は、電気泳動または、たとえば、質量分析によるような他の定量アッセイによって決定することができる。さらに、一部は、PPFが、たとえば、PKAのようなタンパク質「混入物」の存在のゆえに短所を有することを言及している(同文献)。結果として、PPF製剤はアルブミン血漿製剤としての需要を失っており、特定の国の薬局方からはリストからの削除さえなされている(同文献)。これらの懸念に反して、本発明はこれらの「混入物」の有益な利用を行う。前述のPKAと同様にα、β及びγのグロブリンに加えて、本発明の方法は、たとえば、ニューロン新生、神経細胞の生存、認知または運動の機能の改善、及び神経炎症の減少のようなプロセスを促進する「混入物」内の追加のタンパク質または他の因子を利用する。
【0046】
当業者はPPFの幾つかの市販の供給源(たとえば、「市販のPPF製剤」)があるまたはあったことを認識する。これらには、Plasma-Plex(商標)PPF(Armour Pharmaceutical Co.,Tarrytown,NY)、Plasmanate(商標)PPF(Grifols,Clayton,NC)、Plasmatein(商標)(Alpha Therapeutics,Los Angeles,CA)、及びProtenate(商標)PPF(Baxter Labs,Inc.Deerfield,IL)が挙げられる。
【0047】
当業者はまた、HASの幾つかの市販の供給源(「市販のHAS製剤」)があるまたはあったことも認識する。これらには、Albuminar(商標)(CSL Behring)、AlbuRx(商標)(CSL Behring)、Albutein(商標)(Grifols,Clayton,NC)、Buminate(商標)(Baxatla,Inc.,Bannockburn,IL)、Flexbumin(商標)(Baxatla,Inc.,Bannockburn,IL)、及びPlasbumin(商標)(Grifols,Clayton,NC)が挙げられる。
【0048】
a.血漿タンパク質画分(ヒト)(PPF)
米国食品医薬品局(「FDA」)によれば、「血漿タンパク質画分(ヒト)」またはPPFは「ヒト血漿に由来するアルブミンとグロブリンとで構成されるタンパク質の無菌溶液」として定義される製品の適正な名称である(参照によって本明細書に組み入れられる連邦規制のコード“CFR”21 CFR640.90)。PPFの供給源物質は21 CFR640.1~640.5(参照によって本明細書に組み入れられる)にて処方されたように調製される全血から回収される血漿、または21 CFR640.60~640.76(参照によって本明細書に組み入れられる)にて処方されたように調製される供給源血漿である。
【0049】
PPFは、21 CFR640.92(参照によって本明細書に組み入れられる)による以下の基準をそれが満たすことを判定するために調べられる。
(a)最終製剤がタンパク質の5.0±0.30パーセント溶液であるべきである。且つ
(b)最終製剤における総タンパク質が少なくとも83パーセントのアルブミンと17パーセント以下のグロブリンとから成るべきである。総タンパク質の1パーセント以下はガンマグロブリンであるべきである。タンパク質の組成は食品医薬品局の生物製剤評価及び研究センターの所長によって各製造元について認可されている方法によって決定される。
【0050】
本明細書で使用されるとき、「血漿タンパク質画分」または「PPF」はヒト血漿に由来するアルブミンとグロブリンとで構成されるタンパク質の無菌溶液を指し、アルブミン含量は少なくとも83%であり、17%以下のグロブリン(α1、α2、β及びγのグロブリンを含む)と他の血漿タンパク質とを伴い、電気泳動で判定されるとき1%以下のガンマグロブリンを伴う(Hink,J.H.,Jr.,et al.,Preparation and Properties of a Heat-Treated Human Plasma Protein Fraction,VOX SANGUINIS,2(174)(1957))。PPFは溶媒に懸濁すると類似の組成を有する固体形態を指すこともできる。総グロブリン画分は総タンパク質からアルブミンを差し引くことを介して決定することができる(Busher,J.,Serum Albumin and Globulin, CLINICAL METHODS:THE HISTORY,PHYSICAL,AND LABORATORY EXAMINATIONS,Chapter 10,Walker HK,Hall WD,Hurst JD,eds.(1990))。
【0051】
b.アルブミン(ヒト)(HAS)
FDAによれば、「アルブミン(ヒト)」(本明細書では「HAS」とも呼ばれる)は「ヒト血漿に由来するアルブミンの無菌溶液」として定義される製剤の適正な名称である(参照によって本明細書に組み入れられる連邦規制のコード「CFR21 CFR 640.80)。アルブミン(ヒト)の供給源物質は21 CFR640.1~640.5(参照によって本明細書に組み入れられる)にて処方されたように調製される全血から回収される血漿、または21 CFR640.60~640.76(参照によって本明細書に組み入れられる)にて処方されたように調製される供給源血漿である。アルブミン(ヒト)についての他の要件は21 CFR640.80~640.84(参照によって本明細書に組み入れられる)にてリストにされている。
【0052】
アルブミン(ヒト)は21 CFR640.82による以下の基準をそれが満たすことを判定するために調べられる。
(a)タンパク質濃度。最終製剤は、4.0±0.25パーセント、5.0±0.30パーセント、20.0±1.2パーセント、及び25.0±1.5パーセントのタンパク質の溶液の1つの濃度に一致すべきである。
(b)タンパク質組成。食品医薬品局の生物製剤評価及び研究センターの所長によって各製造元について認可されている方法によって判定されるとき、最終製剤における総タンパク質の少なくとも96パーセントがアルブミンであるべきである。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「アルブミン(ヒト)」または「HAS」はヒト血漿に由来するアルブミンとグロブリンとで構成されるタンパク質の無菌溶液を指し、少なくとも95%のアルブミン含量と5%以下のグロブリン(α1、α2、β及びγのグロブリンを含む)と他の血漿タンパク質を伴う。HASは溶媒に懸濁すると類似の組成を有する固体形態を指すこともできる。総グロブリン画分は総タンパク質からアルブミンを差し引くことによって決定することができる。
【0054】
当業者によって認識され得るように、PPF画分及びHAS画分は凍結乾燥することもでき、または他の固形形態であることもできる。そのような調製物を適当な添加剤と共に用いて、たとえば、錠剤、粉剤、顆粒剤またはカプセル剤を作ることができる。固形形態は、水性溶媒または非水性溶媒、たとえば、植物油または他の類似の油、合成脂肪族酸グリセリド、高級脂肪族酸のエステル、またはプロピレングリコールに、所望であれば、たとえば、可溶化剤、等張剤、懸濁剤、乳化剤、安定剤及び保存剤のような従来の添加剤と共にそれらを溶解する、懸濁するまたは乳化することによって注射用製剤に製剤化することができる。
【0055】
5.凝固因子を減らした画分
本発明の別の実施形態は、血栓症のリスクを減らした画分の有効性を保持するために実質的にすべての凝固因子が取り除かれる血液血漿画分を使用する。都合上、血液製剤は若齢ドナーまたは若齢ドナーのプールに由来することができ、ABOが適合する若齢血液製剤を提供するためにIgMを欠くようにすることができる。現在、A及びBの抗原に対する天然に存在する抗体の存在が輸血反応を生じ得るので、輸注される血漿はABO血液型について一致する。IgMは、ABOが一致しない血漿を患者が与えられるときの輸血反応に関与すると思われる。血液製剤または血液画分からのIgMの除去は本発明の血液製剤または血液血漿画分を投与される対象にて輸血反応を排除するために役立つ。
【0056】
従って、一実施形態では、本発明は、対象にて、たとえば、認知障害または運動障害、神経炎症または神経変性のような加齢に伴う状態を治療するまたは予防する方法に関する。方法は、個体または個体のプールからの全血に由来する血液製剤または血液画分を対象に投与することを含み、その際、血液製剤または血液画分は(a)少なくとも1つの凝固因子及び/または(b)IgMを実質的に欠いている。一部の実施形態では、血液製剤または血液画分が由来する個体(複数可)は若齢個体である。一部の実施形態では、血液製剤は少なくとも1つの凝固因子及びIgMを実質的に欠いている。特定の実施形態では、血液製剤はフィブリノーゲン(第I因子)を実質的に欠いている。追加の実施形態では、血液製剤は赤血球及び/または白血球を実質的に欠く。さらなる実施形態では、血液製剤は実質的に無細胞である。他の実施形態では、血液製剤は血漿に由来する。本発明のそのような実施形態は、全体として参照によって本明細書に組み入れられる2016年8月18日に出願された米国特許出願番号62/376,529によってさらに支持される。
【0057】
6.タンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤の処理
本発明の追加の実施形態は、PPFと比べてアルブミン濃度を減らしたが、グロブリンと他の血漿タンパク質(一部によって「混入物」と呼ばれているもの)との量を増やした血漿画分を使用する。実施形態は、PPF、HAS、溶出物I及び溶出物II/IIIと同様に、凝固因子をすべて効果的に欠いている。そのような血漿画分を以後、「タンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤」と呼ぶ。たとえば、本発明の実施形態は、82%のアルブミンと18%のα、β及びγのグロブリン及び他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明の別の実施形態は、81%のアルブミンと19%のα、β及びγのグロブリン及び/または他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明の別の実施形態は、80%のアルブミンと20%のα、β及びγのグロブリン及び/または他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明の追加の実施形態は、70~79%のアルブミンと21~30%のα、β及びγのグロブリン及び他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明の追加の実施形態は、60~69%のアルブミンと31~40%のα、β及びγのグロブリン及び他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明の追加の実施形態は、50~59%のアルブミンと41~50%のα、β及びγのグロブリン及び他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明の追加の実施形態は、40~49%のアルブミンと51~60%のα、β及びγのグロブリン及び他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明の追加の実施形態は、30~39%のアルブミンと61~70%のα、β及びγのグロブリン及び他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明の追加の実施形態は、20~29%のアルブミンと71~80%のα、β及びγのグロブリン及び他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明の追加の実施形態は、10~19%のアルブミンと81~90%のα、β及びγのグロブリン及び他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明の追加の実施形態は、1~9%のアルブミンと91~99%のα、β及びγのグロブリン及び他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。本発明のさらなる実施形態は、0%のアルブミンと100%のα、β及びγのグロブリン及び他の血漿タンパク質とで構成されるタンパク質を濃縮した血漿タンパク質製剤を使用してもよい。
【0058】
上記に記載されている本発明の実施形態は、1~5%の総ガンマグロブリン濃度も有してもよい。
【0059】
血漿画分におけるタンパク質の特定の濃度は関連技術の当業者に周知の技法を用いて決定されてもよい。例として且つ限定でなく、そのような技法には、電気泳動、質量分析、ELISA解析及びウエスタンブロット解析が挙げられる。
【0060】
7.血漿画分の調製
PPF及び他の血漿画分を調製する方法は当業者に周知である。本発明の実施形態は、ヒト血漿タンパク質画分を調製するために使用される血液が凝固の抑制のためのクエン酸塩または抗凝固剤クエン酸デキストロース溶液と共にフラスコに回収されることを可能にし、さらにHink,et al.(参照によって本明細書に組み入れられるHink,J.H.,Jr.,et al.,Preparation and Properties of a Heat-Treated Human Plasma Protein Fraction,VOX SANGUINIS,2(174)(1957)を参照のこと)で開示された方法のとおりに画分I、II+III、IV及びPPFに分離する。この方法によれば、混合物を2~8℃に回収することができる。血漿を次いでその後、7℃にて遠心分離によって分離し、取り出し、-20℃で保存することができる。次いで血漿を37℃で解凍し、好ましくは-20℃での保存から取り出した後、8時間以内に分画することができる。
【0061】
血漿は、pH7.2及び-2~-2.5℃の温度にて5.1~5.6パーセントのタンパク質濃度で8%エタノールを用いて画分Iから分離することができる。冷たい53.3パーセントのエタノール(176mL/血漿のL)を酢酸緩衝液(200mLの4Mの酢酸ナトリウム、230mLの氷酢酸量子塩をH2 Oで1Lにする)と共に、ノズルを用いて、たとえば、450mL/分の速度で血漿温度を-2℃に下げている間に加えることができる。画分Iは遠心分離を介して溶出物(溶出物I)から分離し、取り出すことができる。フィブリノーゲンは当業者に周知の方法のとおりに画分Iから得ることができる。
【0062】
画分II+IIIは、pH6.8、-6℃の温度で4.3パーセントのタンパク質濃度と共に21パーセントのエタノールに溶出物を調整することを介して溶出物Iから分離することができる。冷たい95パーセントのエタノール(176mL/溶出物IのL)をpH調整に使用される10Mの酢酸と共に、ノズルを用いて、たとえば、500mL/分の速度で溶出物Iの温度を-6℃に下げている間に加えることができる。得られる沈殿物(画分II+III)は-6℃にて遠心分離によって取り出すことができる。ガンマグロブリンは当業者に周知の方法を用いて画分II+IIIから得ることができる。
【0063】
画分IV-1は、pH5.2、-6℃の温度にて3パーセントのタンパク質濃度にて19パーセントのエタノールに溶出物を調整することを介して溶出物II+III(「溶出物II/III」)から分離することができる。H2 O及びpH調整のために使用される10Mの酢酸は溶出物II/IIIを-6℃で6時間維持しながら、ノズルを用いて加えることができる。沈殿する画分IV-1は-6℃で6時間沈殿することができ、その後、同じ温度で遠心分離によって溶出物から分離することができる。安定な血漿タンパク質画分は、pH4.65、-7℃の温度で2.5パーセントのタンパク質濃度にてエタノール濃度を30パーセントに調整することを介して溶出物IV-1から回収することができる。これは、冷たい酸・アルコール(2部の2M酢酸と1部の95パーセントエタノール)で溶出物IV-1のpHを調整することによって達成することができる。-7℃の温度を維持しながら、調整した溶出物IV-1のリットルごとに170mLの冷エタノール(95%)を加える。沈殿するタンパク質は36時間沈殿させることができ、その後、-7℃での遠心分離によって取り出すことができる。
【0064】
回収したタンパク質(安定な血漿タンパク質画分)を乾燥させて(たとえば、凍結乾燥によって)アルコール及びH2 Oを取り除くことができる。得られた乾燥粉末を、たとえば、15リットルの水/kgの粉末を用いて無菌蒸留水に溶解することができ、1MのNaOHで溶液をpH7.0に調整する。5パーセントタンパク質の最終濃度は、アセチルトリプトファン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、及びNaClを含有する無菌蒸留水を加え、0.004Mのアセチルトリプトファン酸塩、0.004Mのカプリル酸塩及び0.112MのNaClの最終濃度に調整することによって達成することができる。最終的に、溶液を10℃で濾過して透明な溶液を得ることができ、その後、病原体の不活化のために60℃で少なくとも10時間熱処理することができる。
【0065】
当業者は、上記に記載されている様々な画分及び溶出物のそれぞれが疾患を治療するための本発明の方法と共に使用されてもよいことを認識する。たとえば、且つ限定の目的ではなく、溶出物Iまたは溶出物II/IIIを利用して、認知障害、運動障害、及び神経変性障害のような疾患を治療してもよく、それらは本発明の実施形態である。
【0066】
血漿画分及び血漿タンパク質画分(PPF)を調製する先行する方法は単に例示であり、単に本発明の実施形態を含む。当業者は、これらの方法が変化し得ることを認識する。たとえば、とりわけ、pH、温度及びエタノール濃度を調整して本発明の様々な実施形態及び方法にて血漿画分及び血漿タンパク質画分の様々な変形を作り出すことができる。別の例では、本発明の追加の実施形態は血漿画分及び血漿タンパク質画分に由来する病原体の除去/不活化にナノ濾過の使用を考慮する。
【0067】
本発明の追加の実施形態は追加の血漿画分を用いた及び/または含む方法及び組成物を考慮する。たとえば、本発明はとりわけ、アルブミンの特定の濃度が認知活動または運動活動を改善するために決定的に重要ではないことを実証する。従って、アルブミン濃度を減らした画分、たとえば、83%未満のアルブミンを有するそれら画分が本発明によって考慮される。
【0068】
8.治療
本明細書に記載されている本発明の方法の態様には、血漿を含む血液製剤、たとえば、上記に記載されているような血液血漿画分による対象の治療が含まれる。実施形態には、血漿を含む血液製剤によるヒト対象の治療が含まれる。当業者は、血漿を含む血液製剤による対象の治療の方法が当該技術で認識されていることを認識する。例として且つ限定ではなく、本明細書に記載されている本発明の方法の一実施形態は、認知または運動の障害、神経炎症、神経変性及び/または加齢性認知症の治療のために新鮮凍結血漿を対象に投与することで構成される。一実施形態では、血漿を含む血液製剤はドナーから採取して直ちに、たとえば、12~48時間以内に、認知または運動の障害、神経炎症、神経変性及び/または加齢性認知症を患っているまたはそのリスクがある個体に投与される。そのような例では、製剤は冷蔵下で、たとえば、0~10℃で保存されてもよい。別の実施形態では、新鮮凍結血漿は-18℃以下で凍結保存(低温保存)されているものである。投与に先立って、新鮮凍結血漿は解凍され、いったん解凍されると、解凍過程が開始した後60~75分で対象に投与される。各対象は好ましくは単回単位の新鮮凍結血漿(200~250mL)を受け取り、新鮮凍結血漿は予め決定された年齢範囲のドナーに由来する。本発明の一実施形態では、新鮮凍結血漿は若齢個体によって提供される(に由来する)。本発明の別の実施形態では、新鮮凍結血漿は同一性別のドナーによって提供される(に由来する)。本発明の別の実施形態では、新鮮凍結血漿は18~22歳の間での年齢範囲のドナーによって提供される(に由来する)。
【0069】
本発明の実施形態では、血漿を含む血液製剤は血液型による供血の後、検査される。本発明の別の実施形態では、血漿を含む血液製剤は、たとえば、HIV I及びII、HBV、HCV、HTLV I及びII、抗HBcのような感染性疾患の病原体についてFDAガイダンス文書に含有される21 CFR640.33の要件及び推奨のとおりに検査される。
【0070】
本発明のさらに別の実施形態では、対象は血漿画分で治療される。本発明の実施形態では、血漿画分はPPFまたはHASである。本発明のさらなる実施形態では、血漿画分は市販のPPF製剤または市販のHAS製剤の1つである。本発明の別の実施形態では、血漿画分は特定の年齢範囲の個体、たとえば、若齢個体のプールに由来するPPFもしくはHASであり、または追加の分画もしくは処理に供されている改変されたPPFもしくはHASの画分(たとえば、1以上の特定のタンパク質が部分的にまたは実質的に取り除かれたPPFまたはHAS)である。本発明の別の実施形態では、血漿画分は免疫グロブリン(IgG)を実質的に枯渇させているIGIV血漿画分である。「実質的に枯渇させる」または「実質的に取り除かれた」IgGのような特定のタンパク質を有する血液画分は、当該技術で周知の標準アッセイを用いて測定されたとき、参照製剤または全血血漿に存在する量の約50%未満、たとえば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、.25%、.1%未満、検出できないレベル、またはこれらの値の間での任意の整数を含有する血液画分を指す。
【0071】
9.投与
本明細書に記載されている本発明の方法の態様には、たとえば、上記に記載されているような血漿を含む血液製剤、たとえば、血液血漿または血漿画分による対象の治療が含まれる。実施形態には、血漿を含む血液製剤によるヒト対象の治療が含まれる。当業者は、血漿を含む血液製剤による対象の治療の方法が当該技術で認識されていることを認識する。例として且つ限定ではなく、本明細書に記載されている本発明の方法の一実施形態は、認知または運動の障害、神経炎症、神経変性及び/または加齢性認知症の治療及び/または予防のために対象に新鮮凍結血漿を投与することで構成される。一実施形態では、血漿を含む血液製剤はドナーから採取して直ちに、たとえば、12~48時間以内に、認知または運動の障害、神経炎症、神経変性及び/または加齢性認知症を患っているまたはそのリスクがある個体に投与される。そのような例では、製剤は冷蔵下で、たとえば、0~10℃で保存されてもよい。別の実施形態では、新鮮凍結血漿は-18℃以下で凍結保存(低温保存)されているものである。投与に先立って、新鮮凍結血漿は解凍され、いったん解凍されると、解凍過程が開始した後60~75分で対象に投与される。各対象は好ましくは単回単位の新鮮凍結血漿(200~250mL)を受け取り、新鮮凍結血漿は予め決定された年齢範囲のドナーに由来する。本発明の一実施形態では、新鮮凍結血漿は若齢個体によって提供される(に由来する)。本発明の別の実施形態では、新鮮凍結血漿は同一性別のドナーによって提供される(に由来する)。本発明の別の実施形態では、新鮮凍結血漿は18~22歳の間での年齢範囲のドナーによって提供される(に由来する)。
【0072】
本発明の実施形態では、血漿を含む血液製剤は血液型による供血の後、検査される。本発明の別の実施形態では、血漿を含む血液製剤は、たとえば、HIV I及びII、HBV、HCV、HTLV I及びII、抗HBcのような感染性疾患の病原体についてFDAガイダンス文書に含有される21 CFR640.33の要件及び推奨のとおりに検査される。
【0073】
本発明のさらに別の実施形態では、対象は血漿画分で治療される。本発明の実施形態では、血漿画分はPPFまたはHASである。本発明のさらなる実施形態では、血漿画分は市販のPPF製剤または市販のHAS製剤の1つである。本発明の別の実施形態では、血漿画分は特定の年齢範囲の個体、たとえば、若齢個体のプールに由来するPPFもしくはHASであり、または追加の分画もしくは処理に供されている改変されたPPFもしくはHASの画分(たとえば、1以上の特定のタンパク質が部分的にまたは実質的に取り除かれたPPFまたはHAS)である。本発明の別の実施形態では、血漿画分は免疫グロブリン(IgG)を実質的に枯渇させているIGIV血漿画分である。「実質的に枯渇させる」または「実質的に取り除かれた」IgGのような特定のタンパク質を有する血液画分は、当該技術で周知の標準アッセイを用いて測定されたとき、参照製剤または全血血漿に存在する量の約50%未満、たとえば、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.25%、0.1%未満、検出できないレベル、またはこれらの値の間での任意の整数を含有する血液画分を指す。
【0074】
本発明の実施形態には、認知または運動の障害、神経変性または神経炎症であると診断された対象に有効量の血液血漿または血漿画分を投与することによってその対象を治療することが含まれる。本発明の別の実施形態には、有効量の血液血漿または血漿画分を投与することと、その後、認知または運動の障害の改善、または神経炎症の減少、またはニューロン新生の増加について対象をモニターすることとが含まれる。本発明の別の実施形態には、認知または運動の障害、神経変性または神経炎症であると診断された対象に有効量の血液血漿または血漿画分を投与することによってその対象を治療することが含まれ、その際、血液血漿または血漿画分は、最も最近投与された投薬(本明細書では「パルス状投薬」または「パルス投与された」と呼ぶ)と比べて、血液血漿タンパク質または血漿画分タンパク質の平均または中央値の半減期に到達した後、認知または運動の障害の改善、神経炎症の減少、またはニューロン新生の改善を生じる方法で投与される。本発明の別の実施形態には、少なくとも連続2日間の投薬計画を介して血液血漿または血漿画分を投与することと、最後の投与の日付の少なくとも3日後に認知または運動の機能の改善、神経炎症の減少、またはニューロン新生の改善について対象をモニターすることとが含まれる。本発明のさらなる実施形態には、少なくとも連続3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14日間の投薬計画を介して血液血漿または血漿画分を投与することと、最後の投与の日付の少なくとも3日後に認知または運動の機能の改善、神経炎症の減少、またはニューロン新生の改善について対象をモニターすることとが含まれる。本発明のさらに別の実施形態には、少なくとも連続2日間の投薬計画を介して及び最後の投与の日付の後で血液血漿または血漿画分を投与することと、血液血漿または血漿画分におけるタンパク質の平均半減期に到達した時を過ぎて認知または運動の機能の改善、神経炎症の減少、またはニューロン新生の改善についてモニターすることとが含まれる。本発明の別の実施形態には、投薬間の各間隔がそれぞれ0~3日であってもよい連続しない2~14日間の投薬計画を介して血液血漿または血漿画分を投与することが含まれる。
【0075】
場合によっては、本発明に係るパルス状投薬には、たとえば、上記に記載されているような第1のセットの用量の投与と、それに続く無投薬の期間、たとえば、「投薬がない期間」、その次に続く別の用量または用量のセットの投与とが含まれる。この「投薬がない期間」の継続期間は変化してもよいが、一部の実施形態では、7日以上、たとえば、14日以上を含む10日以上であり、場合によっては、投薬がない期間は、、たとえば、30~90日及び30~60日を含めて15日から365日に及ぶ。そのようなものとして、方法の実施形態には、非慢性的な(すなわち、非連続的な)投薬、たとえば、血液血漿製剤の非慢性的な投与が含まれる。一部の実施形態では、パルス状投薬とその後に続く投薬がない期間とのパターンは所望のように多数の回数繰り返され、場合によっては、このパターンは1年以上、たとえば、対象の生涯まで及び対象の生涯を含めて2年以上継続される。本発明の別の実施形態には、2~3日の投薬がない期間とそれに続く連続2~14日間の投与を伴う連続5日間の投薬計画を介して血液血漿または血漿画分を投与することが含まれる。
【0076】
生化学的に、活性剤の「有効量」または「有効用量」によって、認知または運動の障害、神経炎症、神経変性または加齢性認知症の進行を約20%以上、たとえば、30%以上、40%以上、または50%以上、場合によっては、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上、場合によっては約100%、すなわち、無視できる量まで抑制する、拮抗する、減らす、軽減する、または抑える、及び場合によっては、それを元に戻す活性剤の量を意味する。
【0077】
10.血漿タンパク質画分
本発明の方法を実践することにおいて、血漿画分が対象に投与される。実施形態では、血漿画分は血漿タンパク質画分(PPF)である。追加の実施形態では、PPFは市販のPPF製剤から選択される。
【0078】
別の実施形態では、PPFは電気泳動によって測定したとき、88%正常ヒトアルブミンと12%のアルファ及びベータのグロブリンと1%以下のガンマグロブリンとで構成される。本発明の方法を実践するために使用されるこの実施形態のさらなる実施形態には、たとえば、炭酸ナトリウムで緩衝化され、0.004Mのカプリル酸ナトリウム及び0.004Mのアセチルトリプトファンで安定化されたPPFの5%溶液としての実施形態が含まれる。溶媒及び安定剤の濃度と同様に溶液におけるPPFの比率(たとえば、約1%~約10%、約10%~約20%、約20%~25%、約25%~30%)を改変しているものを含む追加の製剤が本発明の方法を実践することで利用されてもよい。
【0079】
11.特定のドナー年齢の血漿画分
本発明の追加の実施形態には、特定の年齢範囲の個体の血漿に由来する血漿タンパク質画分を投与することが含まれる。実施形態には、若齢個体の血漿に由来しているPPFまたはHASを投与することが含まれる。本発明の別の実施形態では、若齢個体は単一の特定の年齢または特定の年齢範囲である。さらに別の実施形態では、ドナーの平均年齢は対象のそれ未満であり、または治療される対象の平均年齢未満である。
【0080】
本発明の特定の実施形態には、特定の年齢範囲の個体に由来する血液または血液血漿をプールすることと、上記に記載されているような血液血漿を分画してPPFまたはHASのような血漿タンパク質画分製剤を得ることとが含まれる。本発明の代わりの実施形態では、血漿タンパク質画分または特定の血漿タンパク質画分は特定の年齢範囲に適合する特定の個体から得られる。
【0081】
12.適応症
主題の方法及び血漿を含む血液製剤及び血液画分は、加齢に関連した状態、たとえば、個体の認知または運動の能力における障害、たとえば、加齢性認知症、免疫状態、がん、及び身体的または機能的な低下を含む(がこれらに限定されない)認知障害、パーキンソン病のような(しかし、これらに限定されない)運動障害を予防することを含めて治療することに使用される。たとえば、本明細書で開示されている方法による主題の血漿を含む血液製剤での治療から効果が得られる、加齢に関連した認知または運動の障害、神経炎症及び/または神経変性を患っているまたはそれを発症するリスクがある個体には、約50歳以上、たとえば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上及び100歳以上であり、すなわち、約50~100歳の年齢の間、たとえば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または約100歳であり、且つ自然な加齢過程に関連する認知または運動の障害、神経炎症及び/または神経変性、たとえば、軽度認知障害(M.C.I)を患っている個体、及び約50歳以上、たとえば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上及び普通100歳未満であり、すなわち、約50~90歳の年齢の間、たとえば、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または約100歳であり、認知または運動の障害、神経炎症及び/または神経変性の症状をまだ示し始めていない個体が挙げられる。自然な加齢のせいである認知または運動、神経炎症及び/または神経変性の障害の例には以下が挙げられる。
【0082】
(a)軽度認知障害(M.C.I.)
軽度認知障害は、全体的な精神機能及び日常活動は損傷されていない一方で、経時的に悪化している記憶またはたとえば、計画を立てること、指示に従うこと、または決心することのような他の精神機能での問題として現れる認知の穏やかな崩壊である。従って、著しい神経細胞の死は通常発生していないが、加齢した脳におけるニューロンはシナプスでの構造、シナプスの完全性及びシナプスでの分子処理にて半致死性の加齢に伴う変化の影響を受け易く、そのすべては認知機能を損なう。
【0083】
たとえば、本明細書で開示されている方法による、主題の血漿を含む血液製剤または血液画分での治療から効果が得られる加齢に関連した認知障害を患っているまたはそれを発症するリスクがある対象には、加齢に関連した障害のせいで認知障害を患っている任意の年齢の対象、及び個体は認知障害の症状をまだ現し始めてはいない、通常認知障害が伴う加齢に関連した障害であると診断されている任意の年齢の対象も挙げられる。そのような加齢に関連した障害には以下が挙げられる。
【0084】
(b)アルツハイマー病
アルツハイマー病は、βアミロイドとタウタンパク質から成る神経線維のもつれとを含有する大脳皮質及び皮質下灰白質における過剰な数の老人斑に関連する認知機能の進行性で止められない喪失である。一般型は60歳以上の人々を冒し、その発生率は年齢の進行につれて増加する。それは高齢者における認知症の65%余りを占める。
【0085】
アルツハイマー病の原因は不明である。その疾患は約15~20%の症例で家族性に進行する。残りのいわゆる散発症例は何らかの遺伝的決定要因を有する。疾患は、ほとんどの早期発症症例及び一部の晩期発症症例では常染色体優性の遺伝パターンを有するが、変わりやすい晩年の浸透度を有する。環境因子は活発な調査の焦点である。
【0086】
疾患の経過では、シナプス及び最終的にはニューロンが大脳皮質、海馬、及び皮質下構造(マイネルト基底核における選択的細胞喪失を含む)、青斑核、及び背側縫線核の内部で失われる。脳グルコースの使用及び潅流は脳の幾つかの領域(早期段階の疾患では頭頂葉及び側頭葉、後期段階の疾患では前頭前皮質)で低下する。老人斑または老人斑(アミロイドコアの周りにて神経突起、星状細胞及びグリア細胞で構成される)及び神経原線維のもつれ(対合したらせん状のフィラメントで構成される)はアルツハイマー病の病態形成で役割を担っている。老人斑及び神経原線維のもつれは正常な加齢で発生するが、アルツハイマー病の人でははるかに高頻度である。
【0087】
(c)パーキンソン病
パーキンソン病(PD)は遅い且つ低下した動き(動作緩慢)、筋肉のこわばり、休止時振戦(筋失調症)、筋肉麻痺、及び姿勢不安定を特徴とする特発性の進行が遅い変性CNS障害である。元々主として運動障害と見なされていたPDは今やうつ病及び情動変化も引き起こすことが認識されている。PDは認知、行動、睡眠、自律神経機能及び感覚機能も冒すことになる。最も一般的な認知障害には、注意及び集中、作業記憶、実行機能、言語を発すること、及び視空間機能における障害が挙げられる。PDの特徴は、認知障害に関連するものに普通先行する運動機能の低下に関連する症状であり、それは疾患の診断に役立つ。
【0088】
初期のパーキンソン病では、黒質の色素性ニューロン、青斑核及び他の脳幹のドーパミン作動性細胞群が変性する。原因は不明である。尾状核及び果核に突き出る黒質ニューロンの喪失はこれらの領域での神経伝達物質であるドーパミンの枯渇を生じる。発症は一般に40歳以降であり、老齢群で発生率は増加する。
【0089】
パーキンソン病は毎年約60,000人のアメリカ人で新しく診断され、現在、およそ100万人のアメリカ人を冒している。PDはそれ自体致命的ではないけれども、その合併症は米国での死因の14番目である。現在、PDは治癒できず、治療は一般に症状を管理するように処方され、後期の重度の症例では手術が処方される。
【0090】
PDのための治療選択肢には、運動障害を管理するために役立つ医薬の投与が挙げられる。これらの選択肢は、PD患者では脳での濃度が低い神経伝達物質であるドーパミンを増やすまたは置き換える。そのような薬物には、カルビドパ/レボドパ(脳でさらに多くのドーパミンを作り出す)、アポモルフィン、プラミペキソール、ロピニロール、及びロチゴチン(ドーパミン作動薬)、セレギリン及びラサギリン(ドーパミンの分解を防ぐMAO-B阻害剤)、エンタカポン及びトルカポン(脳で利用できるさらに多くのレボドパを作るカテコール-O-メチルトランスフェラーゼ[COMT]阻害剤)、ベンズトロピン及びトリヘキシフェニジル(抗コリン剤)、ならびにアマンタジン(振戦及びこわばりを管理する)が挙げられる。運動負荷/理学療法も一般に処方され、身体機能及び精神機能を維持するために役立つ。
【0091】
しかしながら、現在の治療選択肢はPDの症状を治療するが、治癒的ではなく、疾患の進行を防ぐことはできない。さらに、現在の薬物は晩期PDにおける有効性を失う傾向がある。最も多く処方されている薬剤であるレボドパは一般に、薬物開始後5~10年以内に有害効果を生じる。これらの有害効果は深刻である可能性があり、投薬間での運動管理にて運動変動及び予測できない揺れを生じるとともに、管理することが難しく、PD自体の症状と同様に機能障害でさえある痙攣/単収縮(ジスキネジア)を生じる。従って、現在のPD薬物と共にまたは併用して投与することができる作用の新しいメカニズムを持つ新しい治療法に対する必要性が残っている。
【0092】
(d)パーキンソニズム
二次パーキンソニズム(非定型パーキンソン病またはパーキンソンプラスとも呼ばれる)は他の特発性変性疾患、薬剤または外因性毒素のせいで大脳基底核におけるドーパミンの作用の喪失または妨害から生じる。二次パーキンソニズムの最も一般的な原因はドーパミン受容体を遮断することによってパーキンソニズムを生じる抗精神病薬またはレセルピンの摂取である。あまり一般的ではない原因には、一酸化炭素またはマンガンの中毒、水頭症、構造的病変(腫瘍、中脳または大脳基底核を冒す梗塞)、硬膜下血種、及び黒質線条体変性を含む変性疾患が挙げられる。進行性核上性麻痺(PSP)、多系統萎縮症(MSA)、大脳皮質基底核変性症(CBD)及びレビー小体型認知症(DLB)のような特定の疾病は、特定診断に必要な主症状が構成され得る前にパーキンソニズムの症状を呈し得るので、「パーキンソニズム」として分類されてもよい。
【0093】
(e)前頭側頭型認知症
前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉の進行性の劣化から生じる状態である。時間をかけて変性は側頭葉に進むこともある。有病率ではアルツハイマー病(AD)に次いで2番目で、FTDは初老期認知症の20%を占める。症状は冒された前頭葉及び側頭葉の機能に基づいて3群に分類される。
【0094】
症状による行動異形のFTD(bvFTD)には、一方の手での倦怠感及び自発性喪失及び他方の手での脱抑制、明瞭発音の困難さの故の会話流暢性の破壊、音韻論的な及び/または統語的なエラーが観察されるが、単語の理解力は保たれている進行性の非能弁的失語症(PNFA)、及び患者は正常な音韻論及び統語論で流暢なままであるが、命名及び単語の理解力で困難さが増している意味認知症(SD)が挙げられる。FTD患者すべてに共通する他の認知症状には、実行機能及び集中力の損傷が挙げられる。知覚、空間能力、記憶及び応用を含む他の認知能力は無傷のままである。FTDは構造MRI走査にて前頭葉及び/または前側頭葉の委縮を示す所見によって診断することができる。
【0095】
FTDの多数の形態が存在し、そのうちのいずれかは主題の方法及び組成物を用いて治療されまたは予防されてもよい。たとえば、前頭側頭型認知症の1つの形態は意味認知症(SD)である。SDは言語能力の領域及び非言語能力の領域の双方での意味記憶の喪失を特徴とする。SD患者は喚語困難の症状を呈することが多い。臨床兆候には、流暢性失語症、健忘性失語症、語義の理解力の損傷、及び関連する視覚失認症(意味的に関連する絵または物を一致させることができない)が挙げられる。疾患が進行するにつれて、症例は遅発性の行動症状が少ない「純粋な」意味認知症と記載されているが、前頭側頭型認知症で見られるものに類似して行動及び人格の変化が見られることが多い。構造MRI画像解析は、側頭葉(左で優勢)における委縮の特徴的なパターンを示し、下側の関与の方が上側の関与よりも大きく、前側頭葉の委縮は後側頭葉よりも大きい。
【0096】
別の例として、前頭側頭型認知症の別の形態はピック病(PiD、またPcD)である。その疾患の決定的な特徴はニューロンにおけるタウタンパク質の蓄積であり、「ピック体」として知られる銀染色の球状凝集物を蓄積する。症状には会話の喪失(失語症)及び認知症が挙げられる。眼窩前頭不全の患者は狂暴になり、社会的に不適切になり得る。彼らは、こっそり動き、強迫的なまたは反復的な定型的行動を示すこともある。背内側または背外側の前頭葉不全の患者は、関心の欠如、無気力症、または自発的な行為の減少を示すこともある。患者は、自己監視の欠如、異常な自己認識、及び意味を十分に理解することができないことを示す。両側性の後側部の眼窩前頭皮質及び右側前島における灰白質の喪失を伴う患者は、摂食行動の変化、たとえば、病的な甘党を示すこともある。前外側の眼窩前頭皮質におけるさらに局在性の灰白質喪失を伴う患者は過食症を発症することもある。症状の一部は当初緩和することができる一方で、疾患は進行し、患者は2~10年以内に死亡することが多い。
【0097】
(f)ハンチントン病
ハンチントン病(HD)は、情動的な、行動上の及び精神医学上の異常状態の発生、知的なまたは認知の機能の喪失、及び行動異常(運動障害)を特徴とする遺伝性で進行性の神経変性障害である。HDの従来の兆候には、舞踏病-顔面、腕、脚または胴体に影響を与えてもよい不随意の素早い不規則な痙攣様の動きの発生-と同様に思考処理及び獲得した知的能力の緩慢な喪失を含む認知低下が挙げられる。記憶、抽象的思考、及び判断の損傷、時、場所及び同一性の不適正な知覚(見当識障害)、興奮の増大、ならびに人格変化(人格崩壊)があってもよい。症状は通常、40歳代~50歳代の間に明らかになるが、発症の年齢は変動し、幼児期から後期成人期(70歳代または80歳代)に及ぶ。
【0098】
HDは常染色体優性形質として家族内で伝えられる。疾患は、第4染色体(4p16.3)における遺伝子内でのコードされた指示の異常に長い配列または「繰り返し」の結果として発生する。HDに関連した神経系機能の進行性の喪失は大脳基底核及び大脳皮質を含む脳の特定の領域におけるニューロンの喪失から生じる。
【0099】
(g)筋萎縮性側索硬化症
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロンを攻撃する進行が早い、常に致死性の神経疾患である。筋肉の衰弱及び委縮及び前角細胞の機能不全の兆候が多くは手で且つあまり多くはないが脚で最初に気付かれる。発症の部位は無作為であり、進行は非対称である。筋痙攣は一般的であり、衰弱に先行することもある。稀に患者は30年生き延びるが、50%は発症の3年以内に死亡し、20%は5年生存し、10%は10年生存する。
【0100】
診断の特徴には、中年または老年での発症及び感覚異常がない進行性で一般化された運動の関与が挙げられる。神経伝導速度は疾患の後期まで正常である。最近の研究は、同様に認知障害の提示、特に即時言語記憶、視覚記憶、言語及び実行機能での低下を明らかにしている。
【0101】
細胞体領域、シナプスの数及び総シナプス長の低下はALS患者の正常に見えるニューロンでさえ報告されている。活性帯の可塑性がその限界に達すると、シナプスの継続する喪失が機能的な損傷につながり得ることが示唆されている。新しいシナプスの形成を促進することまたはシナプスの喪失を防ぐことがこれらの患者にてニューロンの機能を維持してもよい。
【0102】
(h)多発性硬化症
多発性硬化症(MS)は、寛解と再発する増悪とを伴う種々の症状及びCNS機能不全の兆候を特徴とする。最も一般的な症候性の症状は1以上の四肢、胴体または顔面の片側における知覚障害、脚または手の衰弱または不器用さ、あるいは視覚障害、たとえば、部分的な失明及び片目における疼痛(球後視神経炎)、視界の暗さまたは暗点である。一般的な認知障害には、記憶(新しい情報を獲得すること、保持すること及び取り戻すこと)、注意及び集中(特に分割的注意)、情報処理、実行機能、視空間機能及び言語流暢性における損傷が挙げられる。一般的な初期症状は、複視(複視)を生じる眼筋麻痺、1以上の四肢における一時的な衰弱、軽いこわばりまたは四肢の異常な易疲労感、軽い歩行困難、膀胱制御の困難、眩暈、及び軽い情緒不安定であり、すべては散在性のCNSの関与を示し、疾患が認識される数ヵ月または数年前に発生することが多い。異常な高温が症状及び兆候を際立たせてもよい。
【0103】
経過は高度に変化し、予測不能であり、ほとんどの患者では弛張性である。特に球後視神経炎で疾患が始まる場合、最初は、数ヵ月または数年の寛解が症状の発現を分離することもある。しかしながら、一部の患者は頻繁な攻撃を有し、急速に能力を奪われ、わずかな間に経過は急速に進展し得る。
【0104】
(i)緑内障
緑内障は、網膜神経節細胞(RGC)を冒す一般的な神経変性疾患である。証拠は、シナプス及びRGCを含む樹状突起での区切られた変性プログラムの存在を支持している。最近の証拠はまた、高齢者における認知障害と緑内障との間の相関も示している(Yochim BP,et al.Prevalence of cognitive impairment,depression,and anxiety symptoms among older adults with glaucoma.J.Glaucoma.2012;21(4):250-254)。
【0105】
(j)筋強直性ジストロフィー
筋強直性ジストロフィー(DM)は、ジストロフィー筋衰弱及び筋強直を特徴とする常染色体優性の多系統疾病である。分子欠陥は、第19q染色体におけるミオトニンタンパク質キナーゼ遺伝子の3’非翻訳領域での伸長した三ヌクレオチド(CTG)の反復である。症状はどんな年齢でも発生する可能性があり、臨床重症度の範囲は広い。筋強直は手の筋肉で目立ち、眼瞼下垂症は軽い症例でも共通する。重度の症例では、顕著な末梢筋の衰弱が発生し、白内障、早期の脱毛、斧状顔貌、不整脈、精巣委縮及び内分泌異常(たとえば、糖尿病)を伴うことが多い。精神遅滞は重度の先天性形態で一般的である一方で、前頭葉及び側頭葉の認知機能、特に言語及び実行機能の加齢に伴う低下は疾患の軽度成人形態で観察される。重度に冒された人は50歳代前半までに死亡する。
【0106】
(k)認知症
認知症は、日常の機能を妨げるために大幅に十分な思考能力及び社会能力を冒す症状を有する疾患の部類を記載している。上記で議論されている加齢に関連した疾病の後期段階で見られる認知症に加えて認知症の他の例には、以下に記載されている血管性認知症及びレビー小体型認知症が挙げられる。
【0107】
血管性認知症または「多発梗塞性認知症」では、認知障害は、脳への血液の供給での問題によって、通常、一連の軽微な脳卒中、または時には先行する1回の大きな脳卒中によって、または後に続く他の小さな脳卒中によって引き起こされる。血管病変は小血管疾患または局所性病変またはその双方のようなびまん性脳血管疾患の結果であることができる。血管性認知症を患っている患者は、急性脳血管事象の後、急性にまたは亜急性に認知障害を呈し、その後、進行性の認知低下が観察される。脳における関連する変化はADの病理によるものではなく、最終的に認知症を生じる脳での慢性的な血流の低下によるが、言語、記憶、複雑な視覚処理または実行機能における損傷を含む認知障害はアルツハイマー病で見られるものに類似する。単光子放出コンピューター断層撮影(SPECT)及びポジトロン放出断層撮影(PET)による神経画像を用いて精神状態に関する検査を含む評価と併せて多発梗塞性認知症の診断を確認してもよい。
【0108】
レビー小体型認知症(DLB、レビー小体認知症、びまん性レビー小体疾患、皮質性レビー小体疾患、及びレビー型加齢性認知症を含む種々の他の名称でも知られる)は、検視脳組織学で検出できるニューロンにおけるレビー小体(アルファ-シヌクレイン及びユビキチンタンパク質の塊)の存在によって解剖学的に特徴付けられる認知症の型である。その主な特徴は特に実行機能の認知低下である。注意力及び短期の記憶は増減する。
【0109】
鮮明で詳細な絵柄を伴った持続するまたは再発する幻視は初期の診断症状であることが多い。アルツハイマー病は普通、全く緩慢に始まるのに対してDLBは迅速で急性の発症を呈することが多いが、DLBはその早期でアルツハイマー病及び/または血管性認知症と混同されることが多い。DLBの症状にはまた、パーキンソン病のそれに類似する運動症状も含まれる。DLBは、認知症の症状がパーキンソンの症状に関連して現れる時間枠によって時にはパーキンソン病で発生する認知症とは区別される。認知症を伴うパーキンソン病(POD)は認知症の発症がパーキンソン病の発症の1年を超えて後である場合の診断である。DLBは、パーキンソンの症状と同時またはその1年以内に認知症状が始まる場合に診断される。
【0110】
(l)進行性核上性麻痺
進行性核上性麻痺(PSP)は、複雑な眼球運動及び思考の問題と共に歩行及び平衡の制御で深刻な且つ進行性の問題を引き起こす脳の障害である。疾患の従来の兆候の1つは眼球運動を調整する脳の領域における病変のために発生する、適正に目を向けることができないことである。一部の人はこの影響をぼやけと表現している。冒された人は、進行性の軽度認知症と同様にうつ及び無気力を含む気分及び行動の変化を示すことが多い。疾患の長い名称は、疾患がゆっくり始まり、悪化し続け(進行性)、眼球運動を制御する核と呼ばれる豆粒大の構造の上(核上)の脳の特定の部分を損傷することによって衰弱(麻痺)を引き起こすことを示す。PSPは、3人の科学者がパーキンソン病から状態を区別した論文を出版した際、1964年に初めて異なる疾病として記載された。それは、疾病を定義した科学者の合わせた名前を反映してSteele-Richardson-Olszewski症候群と呼ばれることもある。PSPは進行性に悪化するが、PSP自体で死亡した人はいない。
【0111】
(m)運動失調
運動失調の人々は、運動及び平衡を制御する神経系の一部が冒されるので協調に問題を有する。運動失調は、指、手、腕、脚、身体、会話及び眼球運動を冒してもよい。単語、運動失調は、中枢神経系における感染、外傷、他の疾患または変性変化に関連し得る非協調の症状を記載するために使用されることが多い。運動失調を用いて、米国運動失調財団の重点である遺伝性及び散発性の運動失調と呼ばれる神経系の特定の変性疾患の群も意味する。
【0112】
(n)多系統萎縮症
多系統萎縮症(MSA)は変性神経疾患である。MSAは脳の特定の領域における神経細胞の変性に関連する。この細胞変性は、たとえば、膀胱制御または血圧調節のような身体の運動、平衡及び他の自律性の機能に関する問題を引き起こす。
【0113】
MSAの原因は不明であり、特定のリスク因子は同定されていない。症例の約55%は男性で発生し、発症の典型的な年齢は50歳代後半から60歳代前半である。MSAはパーキンソン病と同じ症状の幾つかを呈する。しかしながら、MSA患者は一般にパーキンソン病に使用されるドーパミン薬に対してあったとしても最少限の応答しか示さない。
【0114】
(o)フレイル
フレイル症候群(「フレイル」)は、可動性の低下、筋肉の衰弱、動作緩慢、乏しい持久力、少ない身体活動、栄養不足状態及び無意識の体重減少を含む機能的な及び身体的な低下を特徴とする老年症候群である。そのような低下は、たとえば、認知機能不全及びがんのような疾患の因果関係を伴うことが多い。しかしながら、フレイルは疾患がなくても発生し得る。フレイルを患っている人は骨折、偶発的な転倒、身体障害、併存疾患及び若年死亡率から見た否定的な予後の高いリスクを有する(C.Buigues,et al.Effect of a Prebiotic Formulation on Frailty Syndrome:A Randomized,Double-Blind Clinical Trial,Int.J.Mol.Sci.2016,17,932)。さらに、フレイルを患っている人は高い医療費の高い発生率を有する。(同文献)。
【0115】
フレイルの共通する症状は特定の型の試験によって決定することができる。たとえば、意図的ではない体重減少は少なくとも10lbの減少または前年の体重の5%を超える減少を含み、筋肉の衰弱は(性別とBMIについて調整して)ベースラインでの最低20%での握力の低下によって決定することができ、動作緩慢は15フィートの距離を歩行するために要する時間に基づくことができ、乏しい持久力は極度の疲労状態のその人自身の報告によって決定することができ、少ない身体活動は標準化されたアンケートを用いて測定することができる(Z.Palace,et al.,The Frailty Syndrome,Today’s Geriatric Medicine,7(1),at 18(2014))。
【0116】
一部の実施形態では、主題の方法及び組成物は、加齢に関連した認知、運動、神経炎症、または加齢に伴う他の障害または状態の進行を減速することに使用される。言い換えれば、開示されている方法による治療の前よりもまたは治療がない場合よりも開示されている方法による治療に続いて、個体における認知、運動、神経炎症または他の能力または状態はさらにゆっくり低下する。一部のそのような例では、治療の主題の方法には、治療の後の認知、運動、神経炎症または他の加齢に伴う能力または症状の低下の進行を測定し、低下の進行が軽減されていることを判定することが含まれる。一部のそのような例では、たとえば、主題の血液製剤の投与に先立つ2以上の時点で前もって認知、運動、神経炎症または他の加齢に伴う能力または状態を測定することによって判定されるように、判定は、参照に対して、たとえば、治療に先立つ個体における低下の速度を比べることによって行われる。
【0117】
主題の方法及び組成物は、個体、たとえば、加齢に関連した認知低下を患っている個体または加齢に関連した認知低下を患うリスクがある個体の認知、運動、神経炎症または他の能力または状態を安定化することにおいても使用される。たとえば、個体は何らかの加齢に関連した認知障害を示してもよく、開示されている方法による治療に先立って観察される認知障害の進行は開示されている方法による治療に続いて停止される。別の例として、個体は加齢に関連した認知低下を発症するリスクがあってもよく(たとえば、個体は50歳以上であってもよく、または加齢に関連した障害かあると診断されていてもよく)、個体の認知能力は、開示されている方法による治療の前と比べて開示されている方法による治療に続いて実質的に無変化であり、すなわち、認知低下は検出できない。
【0118】
主題の方法及び組成物は、加齢に関連した障害を患っている個体における認知、運動、神経炎症または他の加齢に伴う障害を軽減することにおいても使用される。言い換えれば、冒された能力は主題の方法による治療に続いて個体にて改善される。たとえば、個体における認知または運動の能力は、主題の方法による治療に先立って個体で観察される認知または運動の能力と比べて主題の方法による治療に続いて、たとえば、50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上を含めて2倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、30倍以上、または40倍以上上昇する。
【0119】
場合によっては、主題の方法及び組成物による治療は、加齢に関連した認知または運動の低下を患っている個体にて認知、運動またはその他の能力を、たとえば、個体が約40歳以下だった時のレベルまで回復させる。言い換えれば、認知または運動の障害は抑止される。
【0120】
13.障害についての診断及びモニターの方法
場合によっては、認知疾患、運動障害、神経変性疾患及び/または神経炎症性疾患における疾患の進行及び改善を診断し、モニターする種々の方法の間で、以下の型の評価が単独で、または所望どおりに神経変性疾患を患っている対象と組み合わせて使用される。以下の型の方法は例として提示され、引用される方法に限定されない。疾患をモニターする好都合な方法を所望どおりに本発明を実践することで使用されてもよい。それらの方法は本発明の方法によっても考慮される。
【0121】
(a)一般認知
本発明の方法の実施形態はさらに、認知障害及び/または加齢性認知症を治療するために対象に対する薬物または治療の効果をモニターする方法を含み、該方法は治療の前及び後での認知機能を比較することを含む。当業者は、認知機能を評価する周知の方法があることを認識している。たとえば、且つ限定の目的ではなく、方法は、病歴、家族歴、認知症及びに認知機能を専門とする臨床医による身体的及び神経学的な検査、臨床検査及び神経心理学的評価に基づくに認知機能の評価を含んでもよい。本発明によって考慮される追加の実施形態には、たとえば、Glasgow昏睡尺度(EMV)を用いた意識の評価、簡易知能検査スコア(AMTS)またはミニ精神状態の検査(MMSE)を含む精神状態の検査(Folstein,et al.,J.Psychiatr.Res,1975、12:1289-198)、高等機能の全体的評価、たとえば、眼底検査による頭蓋内圧の推定が含まれる。一実施形態では、認知障害及び/または加齢性認知症に対する効果をモニターすることには、アルツハイマー病評価スケール・認知サブスケール(ADAS-COG)を用いた1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12点の改善が含まれる。
【0122】
一実施形態では、個々に調べることができる嗅覚、視野及び視力、眼球運動及び瞳孔(交感神経及び副交感神経)、顔面の感覚機能、顔面及び肩甲の帯筋の強度、聴力、味覚、咽頭運動及び咽頭反射、舌の動き(たとえば、視力はSnellenチャートによって調べることができ、咬筋、二頭筋及び三頭筋の腱、膝の腱、くるぶしの反射及び足底(すなわち、Babinskiサイン)を含む反射を調べるために使用される反射ハンマー)、1~5のMRCスケールであることが多い筋力、筋緊張及びこわばりの兆候のいずれか1つを含む末梢神経系の検査を使用して認知機能を評価してもよい。
【0123】
(b)パーキンソン病
本発明の方法の実施形態はさらに、運動障害を治療するために対象に対する薬物または治療の効果をモニターする方法を含み、該方法は、治療の前及び後での運動機能を比較することを含む。当業者は運動機能を評価する周知の方法があることを認識している。たとえば、且つ限定の目的ではなく、方法は、病歴、家族歴、神経変性及びに運動障害を専門とする臨床医による身体的及び神経学的な検査、臨床検査及び神経変性評価に基づく運動機能の評価を含んでもよい。本発明によって考慮される追加の実施形態は、以下で議論されている評定尺度の採用を含む。
【0124】
PDの進行を評価するために幾つかの評定尺度が利用されている。最も広く使用されている尺度にはパーキンソン病統一評定スケール(UPDRS、1987年に導入された)(J.Rehabil Res.Dev.,2012,49(8):1269-76),及びHoehn及びYahrのスケール(Neruology,1967,17(5):427-42)が挙げられる。追加のスケールには、運動障害疾患学会(MDS)が更新するUPDRSスケール(MDS-UPDRS)と同様にSchwab及びEnglandの日常生活動作(ADL)スケールが挙げられる。
【0125】
UPDRSスケールは、(1)知的活動、行動及び気分、(2)日常生活動作、及び(3)運動検査の3つのサブスケールに寄与する31項目を評価する。Hoehn及びYahrのスケールは、慎重なサブステージを伴う5つのステージ:0-疾患の兆候なし、1-一方側のみでの症状、1.5-一方側でしかし、首と脊椎も含む症状、2-両側で症状があり平衡障害はない、2.5-「引き試験」を行うと回復がある両側での軽度の症状、3-軽度から中程度の疾患で平衡障害がある、4-重度の身体障害、しかし、自力で歩行する、または立つ能力はある、及び5-車椅子を必要とする、または支援なしでは寝たきり、にPDを分類する。Schwab及びEnglandのスケールはPDを幾つかの比率(100%-完全に自立から10%-完全な依存まで)に分類する。
【0126】
一般的な運動機能は一般運動機能スケール(GMF)を含む広く使用されているスケールを用いて評価することができる。これは依存性、疼痛及び不安定性の3つの成分を調べる(Aberg,A.C.,et al.(2003),Disabil.Rehabil.2003,May,6;25(9):462-72.)。運動機能は、家庭でのモニタリングまたは装着できるセンサーを用いて評価することもできる。たとえば、歩行(移動の速度、変動、脚のこわばり)は加速度計で感知することができ、ジャイロスコープによる姿勢(体幹の傾き)、加速度計による脚の動き、加速度計及びジャイロスコープによる手の動き、加速度計による振戦(大きさ、頻度、持続時間、非対称性)、加速度計による転倒、加速度計によるすくみ足、加速度計、ジャイロスコープ及び慣性センサーによるジスキネジア、加速度計とジャイロスコープとによる動作緩慢(持続時間及び頻度)、ならびにマイクを用いた失語症(ピッチ)を感知できる。(Pastorino,M,et al.,Journal of Physics:Conference Series,450(2013),012055)。
【0127】
(c)多発性硬化症
認知に関連する症状についてのモニタリングの改善に加えて、当業者に周知の技法を用いて、多発性硬化症(MS)に関連する神経変性の進行または改善をモニターすることができる。例として且つ限定ではなく、モニタリングは、たとえば、脳脊髄液(CSF)のモニタリング、病変及び脱髄斑の発生を検出するための磁気共鳴画像診断(MRI)、誘発電位試験、及び歩行モニタリングのような技法を介して行うことができる。
【0128】
CSFの分析は、たとえば、腰椎穿刺を介して行って、圧力、外見及びCSF含量を得てもよい。正常値は通常以下のような範囲であり、すなわち、圧力(70~180mmH2 0)、外見は透明で無色であり、総タンパク質(15~60mg/100mL)、IgGは総タンパク質の3~12%であり、グルコースは50~80mg/100mLであり、細胞数は0~5の白血球で赤血球はなく、塩化物(110~125mEq/L)である。異常な結果はMSの存在または進行を示してもよい。
【0129】
MRIは、疾患の進行及び改善をモニターするために実施されてもよい別の技法である。MRIでMSをモニターするための典型的な基準には、大脳半球及び脳室周辺部の領域における異常な白質の斑状領域の出現、小脳及び/または脳幹と同様に脊髄の頚部及び胸部の領域に存在する病変が挙げられる。
【0130】
誘発電位を用いて対象におけるMSの進行及び改善をモニターしてもよい。誘発電位は、たとえば、視覚誘発反応(VER)、脳幹聴覚誘発反応(BAER)及び体性感覚誘発反応(SSER)におけるように電気的刺激の減速を測定する。異常な反応は中枢感覚経路における伝導の速度に低下があることを示すために役立つ。
【0131】
歩行のモニタリングを用いてMS対象における疾患の進行及び改善をモニターすることもできる。MSにはある程度疲労のせいでの可動性の障害及び異常な歩行が伴うことが多い。モニタリングは、たとえば、対象が装着した移動型のモニタリング装置の使用で実施されてもよい。(Moon,Y.,et al.,Monitoring gait in multiple sclerosis with novel wearable motion sensors,PLOS One,12(2):e0171346 (2017))。
【0132】
(d)ハンチントン病
認知に関連する症状についての改善をモニターすることに加えて、当業者に周知の技法を用いてハンチントン病(HD)に関連する神経変性の進行または改善をモニターすることができる。例として且つ限定ではなく、モニタリングは、たとえば、運動機能、行動、機能的評価、及び画像解析のような技法を介して実施することができる。
【0133】
疾患の進行または改善の指標としてモニターされてもよい運動機能の例には、舞踏病及び筋失調症、こわばり、動作緩慢、眼球運動機能不全、及び歩行/平衡の変化が挙げられる。これらの測定基準のモニタリングを実施する技法は当業者に周知である。(Tang,C,et al.,Monitoring Huntington’s disease progression through preclinical and early stages, Neurodegener Dis Manag,2(4):421-35(2012)を参照のこと)。
【0134】
HDの精神医学的影響は、疾患の進行及び改善をモニターする機会を提示する。たとえば、精神医学的診断は、対象がうつ病、易刺激性、興奮、不安症、無気力症、及び偏執症による精神病を患っているか否かを判定するために精神医学的診断が行われてもよい。(同文献)。
【0135】
機能的評価を採用して疾患の進行または改善もモニターしてもよい。全機能スコア法が報告されており(同文献)、一部のHD群にて年当たり1点低下することが多い。
【0136】
MRIまたはPETを採用して疾患の進行または改善もモニターしてもよい。たとえば、HDでは線条体投射ニューロンの喪失があり、これらのニューロンの数の変化が対象にてモニターされてもよい。HD対象におけるニューロンの変化を測定する技法にはドーパミンD2受容体の結合を画像化することが挙げられる。(同文献)
【0137】
(e)ALS
認知に関連する症状について改善をモニターすることに加えて、筋萎縮性側索硬化症(ALS)に関連する神経変性の進行または改善は当業者に周知の技法を用いてモニターすることができる。例として且つ限定ではなく、モニタリングは、たとえば、機能的評価、筋力を判定すること、呼吸機能を測定すること、下位運動ニューロン(LMN)の喪失を測定すること、及び上位運動ニューロン(UMN)の機能不全を測定することのような技法を介して行うことができる。
【0138】
機能的な評価は、延髄、手足及び呼吸の機能に関連する症状を評価するALS機能評定尺度(ALSFRS-R)のような当業者に周知の機能的尺度を用いて行うことができる。変化の割合は生存と同様に疾患の進行または改善を予測することにおいて有用である。別の評価尺度には、機能と生存の併用評価(CAFS)、生存期間をALSFRS-Rの変化と組み合わせることによる対象の臨床転帰のランク付けが挙げられる。(Simon,NG,et al.,Quantifying Disease Progression in Amyotrophic Lateral Sclerosis,Ann.Neurol.76:643-57(2014))。
【0139】
筋力は、複合徒手筋力テスト(MMT)の得点の使用を介して調べられてもよいし、定量されてもよい。これは、医学研究審議会(MRC)の筋力評価尺度を用いて幾つかの筋群から得られる平均化測定量を伴う。(同文献)。他の技法の間で、手で操作できる動力測定法(HHD)も使用されてもよい。(同文献)
【0140】
呼吸機能は、ベースラインでの努力性肺活量(FVC)を得るために使用される携帯肺活量測定ユニットを用いて実行され疾患の進行または改善を予測することができる。さらに、最大呼吸圧、経鼻呼吸圧(SNIP)及びサッピング(supping)FVCを測定し、それを用いて疾患の進行または改善をモニターしてもよい。(同文献)
【0141】
下位運動ニューロンの喪失はALSにおける疾患の進行または改善をモニターするために利用することができる別の利点である。神経生理学的な指標は、運動神経伝導試験にて複合筋活動電位(CMAP)を測定することによって決定されてもよく、そのパラメーターにはCMAPの大きさ及びF波の周波数が挙げられる。(同文献及びde Carvalho,M.,et al.,Nerve conduction studies in amyotrophic lateral sclerosis.Muscle Nerve,23:344-352,(2000))。下位運動ニューロンの単位数(MUNE)を同様に推定してもよい。MUNEでは、個々の運動単位の寄与の推定を介して筋肉を最大CMAP反応に供給する残りの運動性軸索の数を推定し、それを用いて疾患の進行または改善を判定する(Simon,et al,上記)。LMNの喪失を判定する追加の技法には、神経の興奮性を調べること、電気インピーダンス筋運動記録法、及び筋肉の厚さの変化を検出するために筋超音波法を使用することが挙げられる。(同文献)
【0142】
上位運動ニューロンの機能不全はALSにおける疾患の進行または改善をモニターするために利用することができる別の利点である。機能不全を判定するための技法には、脳及び脊髄にてMRI走査またはPET走査を行うこと、経頭蓋磁気刺激、及び脳脊髄液(CSF)における生体マーカーのレベルを測定することが挙げられる。
【0143】
(f)緑内障
認知に関連する症状についての改善をモニターすることに加えて、緑内障に関連する神経変性の進行または改善は、当業者に周知の技法を用いてモニターすることができる。例として且つ限定ではなく、モニタリングは、たとえば、眼内圧を測定すること、損傷についての視神経円板または視神経頭の評価、周辺視野喪失についての視野テスト、及び断層撮影解析のための視神経円板及び網膜の画像化のような技法を介して行うことができる。
【0144】
(g)進行性核上性麻痺(PSP)
認知に関連する症状についての改善をモニターすることに加えて、進行性核上性麻痺(PSP)に関連する神経変性の進行または改善は、当業者に周知の技法を用いてモニターすることができる。例として且つ限定ではなく、モニタリングは、たとえば、機能的な評価(日常生活動作またはADL)、運動評価、精神医学的症状の判定、ならびに容積測定の及び機能的な磁気共鳴画像解析(MRI)のような技法を介して行うことができる。
【0145】
非依存性、他者への部分的依存性または完全な依存性という点での対象の機能のレベルは疾患での進行または改善を判定するために有用であることができる。(Duff,K,et al.,Functional impairment in progressive supranuclear palsy,Neurology,80:380-84,(2013)を参照のこと)。進行性核上性麻痺評定尺度(PSPRS)は、6つのカテゴリーである日常動作(病歴による)、行動、延髄、眼球運動、四肢運動及び歩行/正中線における28個の測定基準を含む評定尺度である。成績は0~100に及ぶスコアである。6つの項目は0~2に採点され、22個の項目は考えられる合計100について0~4で採点される。PSPRSスコアは実践的な測定量であり、患者の生存の厳しい予測因子である。それらは疾患の進行に対して感度もよく、疾患の進行または改善をモニターするために有用である。(Golbe LI,et al.,A clinical rating scale for progressive supranuclear palsy,Brain,130:1552-65,(2007))。
【0146】
UPDRS(パーキンソン病統一評定スケール)に由来するADLの区分を用いてPSP対象にて機能的な動作を定量することもできる。(Duff,et al.,上記)。同様に、非依存性を評価するためにSchwab及びEnglandの日常生活動作スコア(SE-ADL)を使用することができる。(同文献)。さらに、UPDRSの運動機能の区分はPSP患者にて疾患の進行を評価するための信頼できる評価基準として有用である。運動の区分は、たとえば、PSP患者における運動機能を定量するための27個の異なる評価基準を含有してもよい。これらの例には、休止時振戦、こわばり、指叩き、姿勢及び歩行が含まれる。対象の疾患の進行または改善は、訓練された医療関係者によって完了されるベースライン神経心理学的評価を、行動異常(たとえば、妄想、幻覚、興奮、うつ、不安、強い高揚感、無気力症、脱抑制、易刺激性、及び異常な運動行動)の頻度及び重症度を判定する神経精神医学的一覧表(NPI)を用いた評価を行うことによって評価されてもよい。(同文献)
【0147】
機能的MRI(fMRI)を採用して同様に疾患の進行または改善をモニターすることができる。fMRIは脳の特定の領域にて、普通、それらの領域での血流に基づいて脳の活動の変化を測定するMRIを用いた技法である。血流は脳の領域の活性化と相関すると見なされている。PSPのような神経変性疾患の患者はMRIスキャナーで走査される前にまたはその間に身体検査または知能検査に供され得る。例として且つ限定ではなく、検査は、PSPで最も冒された手及び最大随意収縮(MVC)で力を出すように頼まれたときの患者を検査が行われた直後にfMRIによって測定する十分に確立された力制御規範であることができる。(Burciu,RG,et al.,Distinct patterns of brain activity in progressive supranuclear palsy and Parkinson’s disease,Mov. Disord.30(9):1248-58(2015))。
【0148】
容量測定MRIはMRIスキャナーが局部脳容積における容積差を測定する技法である。これは、たとえば、様々な障害を対比させることによって、または患者における脳領域の容積の差異を経時的に測定することによって行われてもよい。容量測定MRIを採用してPSPのような神経変性疾患にて疾患の進行または改善を判定してもよい。その技法は当業者に周知である。(Messina,D,et al.,Patterns of brain atrophy in Parkinson’s disease, progressive supranuclear palsy and multiple system atrophy,Parkinsonism and Related Disorders,17(3):172-76(2011))。測定されてもよい脳の領域の例には、頭蓋内容積、大脳皮質、小脳皮質、視床、尾状葉、果核、淡蒼球、海馬、扁桃、側脳室、第三脳室、第四脳室及び脳幹が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
(h)ニューロン新生
本発明はまた、たとえば、低下した認知もしくは運動の機能を介して、または神経炎症との関連を介してそれ自体現れてもよい低下したまたは損傷したニューロン新生を伴う対象にてニューロン新生を治療することまたは改善することも考慮する。本発明の実施形態には、例として且つ限定ではなく、パルス状投薬治療計画を用いて、低下したまたは損傷したニューロン新生を伴う対象に血液血漿、血漿画分またはPPFを投与することが含まれる。
【0150】
本発明の実施形態はまた、血液血漿、血漿画分またはPPFの投与の前に、その間に及び/またはその後でニューロン新生のレベルを判定することも考慮する。ニューロン新生を評価するための非侵襲性技法が報告されている。(Tamura,Y.et al.,J.Neurosci.(2016),36(31):8123-31)。BBB輸送体阻害剤であるプロベネシドと併用した、トレーサー[18F]FLTと共に使用されるポジトロン放出断層撮影(PET)は、脳におけるニューロン新生領域にてトレーサーの蓄積を可能にする。そのような画像解析によって神経変性疾患について治療されている患者におけるニューロン新生の評価が可能になる。
【0151】
(i)神経炎症
本発明はまた、たとえば、低下した認知もしくは運動の機能を介して、または低下したニューロン新生もしくは神経炎症との関連を介してそれ自体現れてもよい亢進した神経炎症を伴う対象にて神経炎症を治療することまたは改善することも考慮する。本発明の実施形態には、例として且つ限定ではなく、パルス状投薬治療計画を用いて、神経炎症を伴う対象に血液血漿、血漿画分またはPPFを投与することが含まれる。
【0152】
本発明の実施形態はまた、血液血漿、血漿画分またはPPFの投与の前に、その間に及び/またはその後でニューロン新生のレベルを判定することも考慮する。たとえば、11C-PK11195及び他のそのようなトレーサーを用いたTSPOポジトロン放出断層撮影(TSPOPET)のような、神経炎症を評価するための非侵襲性の技法が報告されている。(参照によって本明細書に組み入れられるVivash,L,et al.,J.Nucl.Med.2016,57:165-68;及びJanssen,B,et al.,Biochim. et Biophys.Acta,2016,425-41を参照のこと)。神経炎症を評価するための侵襲性の技法には、脳脊髄液を採取し、たとえば、プロスタグランジンE2、シクロオキシゲナーゼ-2、TNFアルファ、IL-6、IFNガンマ、IL-10、エオタキシン、ベータ-2ミクログロブリン、VEGF、グリア細胞株由来の神経栄養因子、キトトリオシダーゼ-1、MMP-9、CXCモチーフケモカイン13、終末補体複合体、キチナーゼ-3様タンパク質1及びオステオポンチンのような(しかし、これらに限定されない)神経炎症マーカーまたは因子の発現レベルを検出することが挙げられる。(参照によって本明細書に組み入れられるVinther-Jensen,T,et al.,Neruol Neurimmunol Neuroinflamm,2016,3(6):e287;及びMishra,et al.,J.Neuroinflamm.,2017,14:251を参照のこと)。
【0153】
14.幹細胞及びパルス状投薬療法の併用
本発明の実施形態には、幹細胞療法を受けている、受ける予定であるまたは受けたことがある対象にて有効量の血液血漿または血漿画分を対象に投与することによって、認知障害、運動機能の障害、神経炎症またはニューロン新生の低下であると診断された対象を治療することが含まれる。本発明の別の実施形態には、有効量の血液血漿または血漿画分を対象に投与することが含まれ、対象は幹細胞療法を受けている、受ける予定であるまたは受けたことがあり、治療法で使用される幹細胞は、胚性幹細胞、非胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)、臍帯血幹細胞、羊水幹細胞等であることができる。
【0154】
幹細胞療法及びそのような治療法を実施するための技法は当業者に既知である(すべて参照によって本明細書に組み入れられるAndres,RH,et al.,Brain,2011,134;1777-89;Daadi,MM,et al.,Cell Transplant,2013,22(5):881-92;Horie,N,et al.,Stem Cells,2011,29(2):doi:10.1002/stem.584;Thomsen,GM,et al.,Stem Cells,2018,doi:10.1002/stem.2825;米国特許出願番号09/973,198;12/258,210;12/596,884;及び13/290,439)。本発明の別の実施形態には、外傷性脊髄損傷、脳卒中、網膜疾患、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、難聴、心疾患、関節リウマチ、重度熱傷であるまたは骨髄移植が必要であると診断され、幹細胞療法を受けている、受ける予定であるまたは受けたことがある対象を有効量の血液血漿または血漿画分で治療することが含まれる。
【0155】
15.組成物を選別する方法
提供されるものはまた、認知もしくは運動の障害を治療する、神経炎症を軽減するまたはニューロン新生を増やすことにおける活性のための組成物を選別する方法である。そのような方法は、本発明によって考慮され、それには以下の実験例で記載されている方法が挙げられる。本発明の実施形態によって選別されてもよい組成物には、生物組成物(たとえば、タンパク質、タンパク質の組み合わせ、抗体、小分子アンタゴニスト)、血漿画分または他の血液組成物が挙げられる。組成物を選別する方法からの結果には、海馬(たとえば、歯状回)または他のCNSの領域における炎症/神経炎症マーカーの結果、海馬または他のCNSの領域における細胞増殖の結果、海馬または他のCNSの領域における細胞の生存、海馬または他のCNSの領域における増殖している神経前駆細胞(NPC)の細胞運命(たとえば、星状細胞、新しいニューロン)及び海馬または他のCNSの領域におけるニューロン新生が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
認知もしくは運動の障害を治療する、神経炎症を軽減するまたはニューロン新生を増やすことにおける活性のために組成物を選別する方法の別の実施形態には、齧歯類または別の動物モデルにて選別される組成物または対照(パルス状に投与される)の付随する連続5~7日間の毎日投与と共にBrdUの連続5~7日間の毎日投与を含む、海馬の炎症及び増殖に対する組成物の急性効果を判定することが含まれる。選別される組成物のパルス状投薬の結末の後、10日間(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10日間)まで、歯状回における細胞の数はBrdU染色によって判定され、CD68染色を示す(炎症の指標)領域のパーセントが決定される。
【0157】
認知もしくは運動の障害を治療する、神経炎症を軽減するまたはニューロン新生を増やすことにおける活性のために組成物を選別する方法の別の実施形態には、齧歯類または別の動物モデルにて選別される組成物または対照の5~7日間のパルス状投薬計画を開始する前に連続5日間(1日1回)BrdUを投与することが含まれる。その4、5、6、7、8、9、10、11または12週後、海馬の細胞生存はBrdUで染まる歯状回における細胞の数として判定され、ニューロン新生はダブルコルチン(DCX)で染まる歯状回における細胞の数として判定され、星状細胞(加齢に関連する)またはニューロン(加齢に関連しない)のいずれかになる神経前駆細胞の細胞運命は、それぞれBrdUのGFAPとの、またはNeuNとの同時局在化によって判定される。
【0158】
認知もしくは運動の障害を治療する、神経炎症を軽減するまたはニューロン新生を増やすことにおける活性のために組成物を選別する方法の別の実施形態には、BrdUと選別される組成物または対照とを同時に(及び毎日)5~7日間投与し、その後、海馬におけるDCX染色によってニューロン新生の程度を、または上述のように増殖しているNPCの細胞運命を判定することが含まれる。
【0159】
認知もしくは運動の障害を治療する、神経炎症を軽減するまたはニューロン新生を増やすことにおける活性のために組成物を選別する方法の別の実施形態には、選別される組成物または対照のパルス状投与計画を投与し、以下の実施例に記載されているように齧歯類または別の動物モデルにて認知または運動の機能の改善を判定することが含まれる。
【0160】
16.試薬、装置及びキット
提供されるものはまた、上記に記載されている方法の1以上を実践するための試薬、装置及びそれらのキットである。主題の試薬、装置及びそれらのキットは大きく変化してもよい。
【0161】
対象とする試薬及び装置には、それを必要とする対象に輸注するための血漿を含む血液製剤を調製する方法に関して上記で言及されたもの、たとえば、抗凝固剤、低温保存剤、緩衝液、等張溶液等が挙げられる。
【0162】
キットは、採血バッグ、配管、針、遠沈管等も含んでもよい。さらに他の実施形態では、本明細書に記載されているようなキットは、たとえば、血漿タンパク質画分のような血液血漿製剤の2つ以上の容器、たとえば、血液血漿製剤の6つ以上を含む、3つ以上、4つ以上、5つ以上の容器を含む。場合によっては、キットにおける血液血漿製剤の異なる容器の数は、36個以上、たとえば、48個以上を含めて9つ以上、12個以上、15個以上、18個以上、21個以上、24個以上、30個以上であってもよい。各容器は、その中に含有される血液血漿製剤についての種々のデータを含む識別情報と関連してもよく、識別情報には、血液血漿製剤のドナーの年齢、血液血漿製剤に関する処理の詳細、たとえば、血漿製剤は平均分子量を上回ってタンパク質を除くように処理されたか否か(たとえば、上記に記載されている)、血液型の詳細等の1つ以上が含まれてもよい。場合によっては、キットにおける各容器は、その中に含有される血液血漿についての識別情報を含み、識別情報には、血液血漿製剤のドナーの年齢についての情報が含まれ、たとえば、識別情報は、血液血漿製剤のドナーの年齢関連のデータを確認することを提供する(そのような識別情報は採取時点でのドナーの年齢であってもよい)。場合によっては、キットの各容器は実質的に同じ年齢のドナーに由来する血液血漿製剤を含有する、すなわち、容器のすべては同じではないにしろ、実質的に同じ年齢であるドナーに由来する製剤を含む。実質的に同じ年齢によって、キットの血液血漿製剤が得られる種々のドナーがそれぞれ、場合によっては、5歳以下、たとえば、4歳以下、たとえば、2歳以下、たとえば、1歳以下を含めて3歳以下、たとえば、9ヵ月以下、6ヵ月以下、1ヵ月以下を含めて3ヵ月以下それぞれ年齢が異なることを意味する。識別情報は、たとえば、ラベル、RFIDチップ等のような容器の好都合な成分に存在することができる。識別情報は、所望のようにヒトが読めてもよいし、コンピューターで読み出しできてもよい。容器は好都合な形状を有してもよい。容器の容積は変化してもよい一方で、場合によっては、容積は10mLから5000mLに及び、たとえば、25mL~2500mL、たとえば、100mL~500mLを含めて50mL~1000mLに及ぶ。容器は剛性であっても柔軟性であってもよいし、好都合な材料、たとえば、医学等級のプラスチック材料を含むポリマー材料から製造されてもよい。場合によっては、容器はバッグまたはポーチの形状を有する。容器に加えて、そのようなキットはさらに、たとえば、上記に記載されているような投与用具を含んでもよい。そのようなキットの成分は好適な包装、たとえば、容器及び他のキット成分を保持するように構成される箱または類似の構造で提供されてもよい。
【0163】
上記の成分に加えて、主題のキットはさらに主題の方法を実践するための指示書を含む。これらの指示書は種々の形態で主題のキットに存在してもよく、その1つ以上がキットに存在してもよい。これらの指示書が存在してもよい形態の1つは好適な媒体または基材、たとえば、キットの包装にて、添付文書等にて情報が印刷される1枚または数枚の紙にて印刷された情報のようなものである。さらに別の手段は、情報が記録されているコンピューターで読み出せる媒体、たとえば、ディスク、CD、携帯用フラッシュドライブ等である。存在してもよいさらに別の手段は、移動させたサイトで情報にアクセスするインターネットを介して使用されてもよいウェブサイトのアドレスである。どんな好都合な手段もキットに存在してもよい。
【0164】
17.運動負荷
運動負荷は有酸素活動または非有酸素活動を特徴とすることができ、高カロリー燃焼活動及び中程度カロリー燃焼活動を含むことができる。運動負荷は筋力トレーニング(たとえば、ウエイトトレーニングまたは等尺性運動負荷)を含んでもよい。運動負荷はまた、たとえば、ランニング、自転車に乗ること、ウォーキング、ダンス、マーチング、水泳、ヨガ、太極拳、平衡運動負荷、脚帯、縄跳び、サーフィン、漕艇、腕または脚を回し、屈曲すること、ガーデニング、清掃、たとえば、ボーリング、エアロビクス、ピラティス及び武道のような活発な競技も含んでもよい。
【0165】
運動負荷計画は、特定の頻度で単一の運動負荷を実施すること、または特定の頻度で運動負荷の組み合わせを実施することを含んでもよい。頻度は週に1、2、3、4、5、6または7回であってもよい。頻度は週単位で異なってもよい。運動負荷計画は本発明の組成物の投与の前に対象が実践した場合と同じレベルの強度及び/または頻度であってもよい。運動負荷計画は本発明の組成物の投与の前に対象が実践したレベルと比べて高いレベルの強度及び/または頻度であってもよい。運動負荷計画は医療関係者もしくはフィットネス関係者によって提案もしくは処方されていてもよいし、または運動負荷計画は対象彼自身もしくは彼女自身で開始されていてもよい。
【実施例0166】
18.実験的実施例
(a)実施例1
清澄化した若齢ヒト血漿(若齢血漿)または市販のPPF(「PPF1」)を老化した免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)に投与した。PPF1は、電気泳動で判定したとき、およそ88%の正常ヒトアルブミン(総タンパク質に対して)と12%のアルファ及びベータのグロブリンと1%以下のガンマグロブリンとを伴うPPFである。言及される場合を除いて、PPF1は本明細書の実施例では5%溶液(w/v、50g/L)を用いて生体内に投与される。マウスはすべて4つの異なる基準である自分のケージでの営巣の採点、当初の体重、オープンフィールドでの移動した距離、及びオープンフィールドの中央にいる時間の%に従って処理群にわたって均質化した。群の決定に続いて、5日間150mg/kgで投与される10mg/mLの最終濃度でPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)にて処方したBrdU(5-ブロモ-2’-デオキシウリジン)を腹腔内(IP)でマウスに注射した。これに続いて、150μLのPPF1を週に3回4週間マウスに静脈内(IV)で注射した。行動試験は5週目と6週目とに発生したが、その際、マウスは並行する試験日での注射を回避するために週2回の注射を受けた。6週間の期間にわたる合計16回の注射について最後のIV注射の24時間後にマウスを安楽死させた。マウスの追加の2つのコホートには150μLのPPF1または生理食塩水を連続7日間静脈内で(IV)注射した(パルス状投与した)。週群当たり3回と同じ回数で行動試験は5週目と6週目とに発生した。
【0167】
CleverSysソフトウェア(Reston,VA)を用いて行動試験を解析した。CleverSys TopSCan V3.0を用いて、迷路なし、Barnesの迷路、オープンフィールド及びY迷路にてマウスの行動を追跡した。Barnesの迷路はCleverSysによって構築した。握力計を設計し、Columbus Instruments(Columbus,OH)が作製した。Y迷路及びオープンフィールドのチャンバーはSan Diego Instruments(San Diego,CA)の仕様書に従って構築した。海馬切片の組織学的解析は、DCF7000T明視野/蛍光色顕微鏡カメラを備えたLeica(Buffalo Grove,IL)撮像顕微鏡モデルDM5500Bで実施した。
【0168】
行動試験
図1Aは、PPF1でパルス投与を受けた群が、生理食塩水対照群及びPPF1で週3回処理された群の双方と比べてオープンフィールド試験にて移動距離を増やす傾向があったことを示している。この結果はパルス投与群における移動性を増やす傾向を示している。
図1Bは、PPF1でパルス投与を受けた群が、生理食塩水対照群及びPPF1で週3回処理された群の双方と比べてオープンフィールドの中央で過ごす時間の比率を増やす傾向があったことを示している。この結果はパルス投与群における不安低下の傾向を示している。
【0169】
体重
図2はPPF1の体重に対する影響を示す。双方のPPF1処理群(パルス状投薬または週3回)は注射からの有害効果を示さなかった。
【0170】
組織学
図3は歯状回の顆粒層内でのDCX陽性標識細胞の数を示す。週3回処理群及び生理食塩水群と比べてパルス状投与PPF1処理群との間でニューロン新生に有意な増加があった。示したデータはすべて平均値±s.e.m.であり、
**p<0.01である。Dunnettの多重比較事後解析による一元配置ANOVA(n:生理食塩水=8、PPF1パルス状投与=10、PPF1 3×/週=10)。
図4は、3つの別々に処理したマウス群の歯状回の顆粒層内におけるBrdU陽性標識細胞の数を示す。週3回処理群及び生理食塩水群と比べてパルス状投与PPF1処理群との間で細胞生存に有意な増加があった。示したデータはすべて平均値±s.e.m.であり、
****p<0.0001、
*p<0.05である。Dunnettの多重比較事後解析による一元配置ANOVA(n:生理食塩水=8、PPF1パルス状投与=10、PPF1 3×/週=10)。
【0171】
海馬切片の解析はDCF7000T明視野/蛍光色顕微鏡カメラを備えたLeica(Buffalo Grove,IL)撮像顕微鏡モデルDM5500Bで実施した。Ki67染色は1:500でのAbcam(ab15580)であり、二次抗体は1:300でのヤギ抗ウサギ(Alex Fluor555)(ab150090)である。
【0172】
(b)実施例2
清澄化した若齢ヒト血漿(YP)、老齢ヒト血漿(OP)または市販のPPF(「PPF1」)を老化した免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)に投与した。マウスはすべて4つの異なる基準である自分のケージでの営巣の採点、当初の体重、オープンフィールドでの移動した距離、及びオープンフィールドの中央にいる時間の%に従って処理群にわたって均質化した。群の決定に続いて、5日間150mg/kgで投与される10mg/mLの最終濃度でPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)にて処方したBrdUを腹腔内(IP)でマウスに注射した。これに続いて、マウスには、清澄化した若齢ヒト血漿またはPPF1のいずれかの150μLを(1)週3回で6週間(「3×/週」)、(2)週3回で1週間だけ(「3×」)、(3)7日間で1週間、静脈内に(IV)注射した。マウスの追加の群には生理食塩水をパルス状で7日間投与した。若齢血漿または老齢血漿、PPF1または溶媒の投薬の開始の6週間後、マウスをすべて屠殺した。
【0173】
組織学
図5は、若齢ヒト血漿(YP)、老齢ヒト血漿(OP)、PPF1または生理食塩水のいずれかで処理したマウスの9つの別々の処理群での歯状回の顆粒層内におけるDCX陽性標識細胞の数を示す。PPF1処理したマウスはパルス投与または週3回処理の双方とも他の群と比べてニューロン新生の増加を示した。示したデータはすべて平均値±s.e.m.であり、
*p<0.05である。Dunnettの事後解析によるANOVA。PPF1処理(パルス状または3×/週)及び生理食塩水処理(n:生理食塩水=4、PPF1パルス状=5、PPF1 3×/週=5、PPF1 3×=4、YPパルス状=6、YP3×/週=6、YP3×=4、APパルス状=6、AP3×=6)。
【0174】
図6は、若齢ヒト血漿(YP)、老齢ヒト血漿(OP)、PPF1または生理食塩水のいずれかで処理したマウスの9つの別々の処理群での歯状回の顆粒層内におけるBrdU陽性標識細胞の数を示す。PPF1で処理したマウスは他の群と比べて細胞生存で有意な増加を示し、パルス投与したPPF1処理マウスは週3回投与PPF1処理マウスよりも大きな有意差を示した。示したデータはすべて平均値±s.e.m.であり、
**p<0.01、
*p<0.05である。Dunnettの事後解析によるANOVA。PPF1処理(パルス状または3×/週)及び生理食塩水処理(n:生理食塩水=4、PPF1パルス状=5、PPF1 3×/週=5、PPF1 3×=4、YPパルス状=6、YP3×/週=6、YP3×=4、APパルス状=6、AP3×=6)。
【0175】
(c)実施例3
清澄化した若齢ヒト血漿(YP)、老齢ヒト血漿(OP)または市販のPPF(「PPF1」)を老化した免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)に投与した。マウスは1週間の投薬計画にて7日間毎日静脈内(IV)投与で処理した。
【0176】
マウスはすべて4つの異なる基準である自分のケージでの営巣の採点、当初の体重、オープンフィールドでの移動した距離、及びオープンフィールドの中央にいる時間の%に従って処理群にわたって均質化した。群の決定に続いて、5日間150mg/kgで投与される10mg/mLの最終濃度でPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)にて処方したBrdUを腹腔内(IP)でマウスに注射した。すべてのマウスに、150μLの若齢血漿または老齢血漿、PPF1または生理食塩水を連続7日間(パルス状投薬と呼ぶ)静脈内で(IV)注射した。パルス状投薬が完了した3週間後、30mg/kgで投与される10mg/mLの最終濃度でのPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)で処方したEdU(5-エチニル-2’-デオキシウリジン)をマウスに腹腔内で(IP)5日間注射した。8週目(パルス状投薬の終了に続いて6週)にBarnesの迷路を実施した。
【0177】
CleverSysソフトウェア(Reston,VA)を用いて行動試験を解析した。CleverSys TopSCan V3.0を用いて、Barnes迷路におけるマウスの行動を追跡した。海馬切片の解析は、DCF7000T明視野/蛍光色顕微鏡カメラを備えたLeica(Buffalo Grove,IL)撮像顕微鏡モデルDM5500Bで実施した。
【0178】
行動試験
図7は、Barnesの迷路によって調べたときの各処理群について1日当たり試行当たり標的穴を見つけるためにかかった時間(待ち時間)を示す。PPF1のパルス状投与で処理したマウスは幾つかの個々の試験区分についての試行待ち時間で有意な減少を示したということは認知能力の改善を示している。
*p<0.05。平均値±s.e.m.、独立t検定(n:生理食塩水=13、PPF1=13、AP=14、YP=14)。
【0179】
組織学
図8は、若齢ヒト血漿(YP)、老齢ヒト血漿(OP)、PPF1または生理食塩水のいずれかで処理した4つの別々の処理群の歯状回の顆粒層内におけるDCX陽性標識細胞の数を示す。生理食塩水処理と比べてパルス状投与のPPF1及びパルス状投与の若齢ヒト血漿ではニューロン新生で有意な増加があった。示したデータはすべて平均値±s.e.m.であり、
****p<0.0001、
**p<0.01である。Dunnettの多重比較事後解析による一元配置ANOVA。(n:生理食塩水=14、PPF1=14、AP=14、YP=15)。
【0180】
図9は、若齢ヒト血漿(YP)、老齢ヒト血漿(OP)、PPF1または生理食塩水のいずれかで処理したマウスの歯状回の顆粒層内におけるBrdU標識細胞の数を示す。生理食塩水処理と比べてパルス状投与のPPF1及びパルス状投与のYPでは細胞生存で有意な増加があった。示したデータはすべて平均値±s.e.m.であり、
****p<0.0001である。平均値±SEM、Dunnettの多重比較事後解析による一元配置ANOVA。(n:生理食塩水=14、PPF1=14、AP=14、YP=15)。
【0181】
(d)実施例4
市販のPPF(「PPF1」)を老化した免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)に投与した。1週間投薬計画にて7日間毎日の尾静脈内(IV)投与で12ヵ月齢のマウスを処理した。処理後、行動試験に先立って4.5週間、マウスを自分のケージ環境に置いたままにした。注射及び行動試験はすべて各コホートについて7週間の経過にわたって行われ、9週間の合計期間にわたって実施された。マウスはすべて最初の投薬に先立って5日間BrdUをIPで受け入れた。最後の行動試験の結論の翌日、マウスを屠殺した。
【0182】
行動試験はCleverSysソフトウェア(Reston,VA)を用いて解析した。CleverSys TopSCan V3.0を用いて、Y迷路におけるマウスの行動を追跡した。
【0183】
行動試験
図10は、Y迷路試験における処理群による各走行路に入る総進入のうち精通走行路または新規走行路に入る進入の総数のパーセントを示す。12ヵ月齢のマウスを生理食塩水、PPF1または5×濃度のPPF1によってパルス投与で処理した。PPF1及びPPF1(×5)のパルス投与で処理したマウスは双方とも生理食塩水で処理したマウスによる新規走行路への進入の量に比べて新規走行路に進入することで有意な増加を示したということは、認知における改善を示している。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。
*p<0.05。対応があるt検定。
【0184】
図11は、各処理群についてのY迷路の精通走行路に対する新規走行路への進入回数の比を示す。12ヵ月齢のマウスを生理食塩水、PPF1または5×濃度のPPF1によってパルス投与で処理した。PPF1及びPPF1(×5)のパルス投与で処理したマウスは双方とも生理食塩水で処理したマウスに比べて新規走行路への進入の増加の傾向を示した。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。
【0185】
組織学
図12は、海馬切片すべての中でのBrdU陽性標識細胞の数を示す。PPF1のパルス投与で処理したマウスは生理食塩水及びPPF1(×5)で処理したマウスに比べて細胞生存の増加傾向を示した。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。
【0186】
図13は、海馬切片すべての中でのDCX陽性標識細胞の数を示す。PPF1及びPPF1(×5)パルス投与のマウスは生理食塩水で処理したマウスに比べてニューロン新生の増加傾向を示した。示したデータはすべて平均値±s.e.mである。
【0187】
(e)実施例5
市販のPPF(「PPF1」)を老化した(10.5ヵ月齢)免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)に投与した。マウスはすべて4つの異なる基準である自分のケージでの営巣の採点、当初の体重、オープンフィールドでの移動した距離、及びオープンフィールドの中央にいる時間の%に従って処理群にわたって均質化した。群の決定に続いて、5日間150mg/kgで投与される10mg/mLの最終濃度でPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)にて処方したBrdUを腹腔内(IP)でマウスに注射した。これに続いて、マウスには、(1)連続5日間[PPF1-5d]、(2)連続7日間[PPF1-7d]、(3)連続5日間と最初の投薬の完了の6週後に発生する強化(B)投薬の追加の連続5日間[PPF1-5d-B]、(4)連続7日間と最初の投薬の完了の6週後に発生する強化(B)投薬の追加の連続7日間[PPF1-7d-B]のいずれかでPPF1を静脈内(IV)で注射した。追加の群には連続7日間と最初の投薬の完了の6週後に発生する強化(B)投薬の追加の連続7日間[SAL-7d-B]で生理食塩水を注射した。パルス状投薬の5週後、マウスには、30mg/kgで投薬される10mg/mLの最終濃度でのPBSで処方したEdU(5-エチニル-2’-デオキシウリジン)をIPで5日間注射した。マウスはすべて、PPF1または溶媒のパルス投薬の完了の12週後に屠殺した。
【0188】
海馬切片の解析は、DCF7000T明視野/蛍光色顕微鏡カメラを備えたLeica(Buffalo Grove,IL)撮像顕微鏡モデルDM5500Bで実施した。
図14は、PPF1及び生理食塩水で処理したマウスにおける歯状回の顆粒層内でのDCX陽性標識細胞の数を示す。これらの結果は、強化投薬が後に続く連続5日間処理した群で著しい改善があることを示し、それは連続7日間処理した群に匹敵する。示したデータはすべて平均値±s.e.mである。生理食塩水に対するPPF1-7d、PPF1-5d-Bは
*p<0.05。Dunnettの事後解析によるANOVA。(n:生理食塩水=5、PPF1-5d=8、PPF1-7d=7、PPF1-5d-B=8、PPF1-7d-B=7)。
【0189】
図15は、PPF1及び生理食塩水で処理したマウスにおける歯状回の顆粒層内でのBrdU陽性標識細胞の数を示す。これらの結果は、増殖している細胞という点で、強化投薬がない連続5日間または連続7日間で処理した群と比べて強化投薬が後に続く連続5日間処理した群で刺激は本格的に増加させることを示している。さらに、強化投薬処理は細胞生存を全体で有意に増やす。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。生理食塩水に対するPPF1-5d-B、PPF1-7d-Bは
***p<0.001、
*p<0.05。Dunnettの事後解析によるANOVA。PPF1-5d-Bに対するPPF1-5d、+p<0.05、独立t検定。(n:生理食塩水=7、PPF1-5d=8、PPF1-7d=7、PPF1-5d-B=8、PPF1-7d-B=7)。
【0190】
図16は、若齢血漿、PPF1及び生理食塩水で処理したマウスにおける歯状回の顆粒層内でのEdU陽性標識細胞の数を示す。これらの結果は、強化投薬で観察された効果は存在する増殖している細胞の総数での増加のせいではなく、強化投与によって引き出された高い生存メカニズムのせいであることを示している。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(n:生理食塩水=4、PPF1-5d=7、PPF1-7d=6、PPF1-5d-B=7、PPF1-7d-B=6)。
【0191】
(f)実施例6
市販のPPF(「PPF1」)を成熟(3ヵ月齢及び6ヵ月齢)免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)に投与した。マウスはすべて4つの異なる基準である自分のケージでの営巣の採点、当初の体重、オープンフィールドでの移動した距離、及びオープンフィールドの中央にいる時間の%に従って処理群にわたって均質化した。群の決定に続いて、5日間150mg/kgで投与される10mg/mLの最終濃度でPBS(リン酸緩衝化生理食塩水)にて処方したBrdUを腹腔内(IP)でマウスに注射した。これに続いて、マウスには、生理食塩水またはPPF1を静脈内で(IV)連続7日間(パルス投薬)注射した。生理食塩水及びPPF1処理の双方に由来するマウスのサブセットには自分のケージ内にて回し車を提供した。パルス投薬の完了の3日後、10日後または42日後にマウスを屠殺した。
【0192】
図17は、回し車の有無にかかわらず、PPF1または生理食塩水の処理で処理した3ヵ月齢のNSG動物における歯状回の顆粒層内でのDCX陽性標識細胞の数を示す。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。生理食塩水の42日後に対する回し車+PPF1の42日後、回し車の42日後、
****p<0.0001、
*p<0.05。Dunnettの事後解析によるANOVA。PPF1の42日後に対する回し車、
***p<0.0001、独立t検定。(n:生理食塩水3日後=8、PPF1の3日後=8、PPF1の10日後=7、溶媒42日後=8、PPF1の42日後=8、回し車42日後=8、回し車+PPF1の42日後=8)。
図17はまた、回し車の有無にかかわらず、PPF1または生理食塩水の処理で処理した6ヵ月齢のNSG動物における歯状回の顆粒層内でのDCX陽性標識細胞の数も示す。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。生理食塩水の42日後に対する回し車+PPF1の42日後、回し車の42日後、
****p<0.0001、
**p<0.01。Dunnettの事後解析によるANOVA。PPF1の42日後に対する回し車、
***p<0.0001、対応がないt検定。生理食塩水の42日後に対するPPF1の42日後、
*p<0.05、独立t検定。(n:生理食塩水3日後=7、PPF1の3日後=8、PPF1の10日後=6、生理食塩水42日後=8、PPF1の42日後=6、回し車42日後=8、回し車+PPF1の42日後=9)。
【0193】
図18は、回し車の有無にかかわらず、PPF1または生理食塩水の処理で処理した3ヵ月齢のNSG動物における歯状回の顆粒層内でのKi67陽性標識細胞の数を示す。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。生理食塩水の42日後に対する回し車+PPF1の42日後、
***p<0.001、Dunnettの事後解析によるANOVA。(n:生理食塩水3日後=6、PPF1の3日後=6、PPF1の10日後=7、生理食塩水42日後=8、PPF1の42日後=8、回し車42日後=8、回し車+PPF1の42日後=8)。
【0194】
図18はまた、回し車の有無にかかわらず、PPF1または生理食塩水の処理で処理した6ヵ月齢のNSG動物における歯状回の顆粒層内でのKi67陽性標識細胞の数も示す。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。生理食塩水の42日後に対する回し車+PPF1の42日後、回し車の42日後、
***p<0.001、
*p<0.05。Dunnettの事後解析によるANOVA。(n:生理食塩水3日後=7、PPF1の3日後=7、PPF1の10日後=8、生理食塩水42日後=8、PPF1の42日後=7、回し車42日後=7、回し車+PPF1の42日後=9)。
【0195】
図19は、回し車の有無にかかわらず、PPF1または生理食塩水の処理で処理した3ヵ月齢及び6ヵ月齢のNSG動物における歯状回の顆粒層内でのBrdU陽性標識細胞の数を示す。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。溶媒の42日後に対する回し車+PPF1の42日後、
***p<0.001、Dunnettの事後解析によるANOVA。(
****p<0.0001、
***p<0.001、
**p<0.01、
*p<0.05、Dunnettの事後解析によるANOVA)。
【0196】
これらのデータは、3ヵ月齢のNSGマウスにおける投薬の6週後に溶媒と比べてPPF1及び回し車にてニューロン新生で有意な増強があることを示している。さらに、3ヵ月齢のNSGマウスにおいて投薬の6週後に回し車単独と比べてPPF1及び回し車にてニューロン新生で有意な増強がある。6ヵ月齢のNSGマウスにおいても投薬の6週後に溶媒と比べてPPF1及び回し車にてニューロン新生で有意な増強がある。これらの結果はまた、6ヵ月齢のNSGマウスにおける投薬の6週後に回し車単独と比べてPPF1及び回し車にてニューロン新生で有意な増強も示している。さらに、3ヵ月齢及び6ヵ月齢双方のNSGマウスにおける投薬の6週後に溶媒と比べてPPF1及び回し車にて前駆細胞の増殖に有意な増強がある。
【0197】
6ヵ月齢での成熟NSGマウスにおけるこれらの知見は、運動負荷またはPPF1処理のいずれかと別々に比べてニューロン新生の有意な増強を生じる運動負荷とPPF1投与とによる潜在的な相乗効果を示している。このことは、臨床現場における運動負荷計画と併せたPPF1治療の潜在的な有用性を支持している。さらに、これらのデータは、複数の独立したまたは重複したメカニズムを介してアクセスされ得る脳におけるニューロン新生について有意な受容能力があることを明らかにしている。
【0198】
(g)実施例7
PPF1または生理食塩水対照を11ヵ月齢の免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)の2つの処理群に投与した。マウスはすべて連続7日間、投与当たり150μLのPPF1または生理食塩水のIV注射を受けた。回し車(MedAssociates)は、試験の7週目に開始するランナーと名付けた(n=8、PPF1及び生理食塩水についてn=8)マウスのケージに入れた。車の回転数は昼夜、連続5日間記録した。
【0199】
図20は、暗期を示す網掛け領域を伴う所与の期間での車の回転数を示す。対応がないt検定を用いて、明暗サイクルにおける処理群及び非処理群双方についての総走行の統計的有意性に評価した。リズム発現プロファイルを抽出し、マウス当たり5つの13時点系列を持つ処理群及び未処理群に由来する各マウスについて別々に、13時点系列についての時間と頻度との領域解析を用いて特徴付けた。期間、相及び大きさは各リズムについて定義されたパラメーターであり、対応がない両側t検定を用いて2群間で比較した。PPF1で処理したマウスは未処理のマウスよりも有意に多く走行し、運動活動の改善の指標である。足での正常な痛覚を検査するためにホットプレート試験にマウスを供した。感覚の喪失は行動の読み出しに先立って影響を与えたはずである。ホットプレート試験は、
図20の四角で囲った区分で示した車の回転のスパイクによって明らかなように回し車のケージ環境に戻した後、活動での軽い増加につながった。
【0200】
(h)実施例8
組換えヒトアルブミン(「rhアルブミン、Albumedix,Ltd,Nottingham,UK)、清澄化した若齢ヒト血漿(「YP」)または生理食塩水対照を10.5ヵ月齢の免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)に投与した。マウスはすべて、7日間のパルス投薬に先立って1週目に50mg/kgのBrdUのIPを受けた。rhアルブミン及びYPを注射用水(WFI、0.9%生理食塩水)で50mg/mLに希釈した。マウスはすべて投与当たり150μLのrhアルブミン、YPまたは生理食塩水の連続7日間のIV注射を受けた。処理の最終日の6週後、マウスを屠殺した。
【0201】
図21Aは、歯状回(「DG」)にてBrdU標識細胞の数によって判定されたように3つの処理群すべてにおける細胞生存の量を示す。若齢血漿は生理食塩水及びrhアルブミンと比べて細胞生存を有意に増やすのに対してrhアルブミンは細胞生存に有意な効果を有さなかった。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である(独立t検定によって
***p<0.001)。
【0202】
図21Bは、歯状回(「DG」)にてDCX陽性細胞の数によって判定されたように3つの処理群すべてにおけるDCX染色の量を示す。若齢血漿は生理食塩水及びrhアルブミンと比べてニューロン新生を有意に増やすのに対してrhアルブミンは生理食塩水対照と比べてニューロン新生の減少に関連した。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である(独立t検定によって
**p<0.01、
***p<0.001)。
【0203】
(i)実施例9
マウスE16の皮質に由来する解離混合神経細胞を48穴多重電極アレイプレート(Axion Biosystems)に入れ、増殖させた。各ウェルは入れた神経細胞と物理的に接触し、細胞膜特性のわずかな変化を測定する16の電極を含有する。この設定は、種々の異なるパラメーターを評価して単一電極レベルでのニューロンのスパイク活動及び発火行動についての情報を得るとともに、ウェル内での複数の電極にわたってニューロンの発火特性の同期生を評価することによってニューロンの結合性の程度についての情報を得ることを可能にする。
【0204】
1日目から前方へ処理条件の存在下でニューロンの培養物を維持した。処理条件は、10%(v/v)の組換えヒトアルブミン(「rhアルブミン、Albumedix,Ltd,Nottingham,UK)、PPF1またはHAS1を含有するNeurobasal培地にB27補完剤を加えたものを含んだ。PBSは対照を構成した。ニューロンの活動は培養の7日目及び14日目に測定した。
【0205】
図22は、7日間のPPF1処理が対照、rhアルブミンまたはHAS1の処理と比べて神経ネットワーク活動の上昇をもたらすことを示す。HAS1は、冷アルコール分画法によって調製し、ドナーからのプールしたヒト血漿に由来する、5%溶液(w/v、50g/L)にて95%余りがヒトアルブミン(総タンパク質に対して)である市販のHASである。PPF1及びHAS1は双方とも5%溶液(w/v、50g/L)で入荷し、Neurobasal培地+B27補完剤で1:10に希釈した。PPF1の神経ネットワーク活動に対する効果は培養で14日まで持続する。このことは、PPF1が神経ネットワークの成熟の促進に関連することを示している。示したデータは平均値±s.e.m.である(独立t検定によって
*p<0.05)。
【0206】
(j)実施例10
清澄化した老齢ヒト血漿(OP)または無菌生理食塩水を8週齢の(若齢)免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)に投与した。各実験では、マウスは体重によって処理群にわたって均質化した。マウスすべてには、無菌PBS中の150mg/kgのBrdUを連続5日間IPで注射した。BrdU注射には投与当たり150μLでの異なる治療規範の老齢血漿のIV投与が続いた。規範はすべて
図23で要点を述べる。
【0207】
規範1には、5週間にわたる合計10回の注射のための週2回の注射が含まれる。組織学的解析は最後の血漿投与の48時間後に実施される。規範2には、4週間にわたる合計10回の注射のための週3回の注射が含まれ、最後の血漿投与の48時間後に組織学的解析を伴う。規範3では、マウスは連続7日間毎日注射を受け、最後の投与の48時間後に組織学的に解析される。規範4では、マウスは連続7日間毎日注射を受け、最後の投与の21日後に解析される。老齢血漿で処理したマウスの脳を内皮炎症のマーカー、海馬におけるVCAM-1及び歯状回にてダブルコルチン(DCX)陽性細胞によって標識される新生ニューロンの数について解析した。VCAM-1は30μmの浮遊切片にて免疫組織化学処理の後、Hamamatsu NanoZoomer HT(Hamamatsu)にて画像化し、Image Pro Software(Media Cybernetics)を用いて解析した。歯状回におけるDCX陽性細胞はLeica広視野顕微鏡(Leica)にてライブで計数した。
【0208】
海馬におけるパーセントVCAM-1陽性領域の解析(
図24)は、内皮の炎症が最後の血漿の投与の48時間後有意に上昇し、週2回投薬ではその傾向があり(
図24A)、週3回投薬(
図24B)及びパルス状投薬(
図24C)では有意に上昇した。最後の老齢血漿を投与した21日後ではVCAM-1はもはや有意に上昇しなかった(
図24D)。
【0209】
ダブルコルチンに対する効果は3~4週の期間の後でしか観察することができないので、DCX陽性細胞の数は規範1、2及び4における歯状回にて解析した。解析は、週2回(
図25A)または週3回(
図25B)の投薬規範によるニューロン新生に対する老齢血漿の効果はなかったが、連続7日間のパルス状投薬(
図25C)はDCX陽性細胞の数の有意な低下を生じた。このデータは老齢ヒト血漿のパルス状投薬のみがニューロン新生に対して有意な効果を有したことを示唆している。
【0210】
(k)実施例11
老齢ヒト血漿(65~68歳起源)で連続7日間処理した8週齢のNSGマウスを老齢血漿の最後の注射の4週後に改変Barnes迷路を用いて調べた。
図26は、Barnes迷路の脱出にかかった時間経過を示し、老齢血漿及び生理食塩水で処理したNSGマウスについて脱出穴に達し、それに入る時間を示す。群間での脱出にかかった時間には有意差はなかったが、4日目での老齢血漿で処理したマウスは生理食塩水対照よりも上手く実行しなかった。このデータは海馬機能に関連する空間記憶作業における低下した学習と記憶とを示している。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。二元配置ANOVA、Sidak事後検定。
【0211】
図27は、4日目における最後の3回のBarnes迷路の試行での平均脱出時間を示す。老齢血漿で処理したマウスは記憶機能の障害を示す脱出時間の増加傾向を示した。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(独立t検定)。
【0212】
図28は、Barnes迷路の試行1と試行3との間での脱出時間の差異を示し、これらの試行が1日内での学習の測定基準として使用できることを示す。老齢血漿で処理したマウスはこれらの試行間での脱出時間の有意に少ない差異を有するということは、学習能力の低下を明らかにしている。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(独立t検定によって
*p<0.05)。
【0213】
図29は、ニューロン新生及びシナプス機能に関連する様々なマーカーのmRNAレベルを定量するために使用されるqPCRの結果を示す。新生ニューロンのマーカーであるダブルコルチン(DCX)の相対的な発現レベルは同じマーカーの組織学的な解析と一致して低下した。加えて、グルタミン酸作動性シナプスのマーカーであるvglut1(小胞性グルタミン酸輸送体1)、シナプスマーカーsyn1(シナプシン1)、tuj1(ベータIIIチューブリン)及びbdnf(脳由来神経栄養因子)のレベルの低下に向かう傾向があった。これらの低下は老齢血漿を注射したマウスの脳における全体的に損傷したシナプスネットワーク及び神経ネットワークを示している。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(独立t検定による
*p<0.05)。
【0214】
(l)実施例12
若齢(8週齢)免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)を体重によって処理群にわたって均質化した。マウスには無菌生理食塩水中35mg/kgのカイニン酸(Sigma)または生理食塩水対照を皮下で(s.c.)注射した。カイニン酸の末梢投与は、海馬における急性発作活動、炎症を生じ、マウスのサブセットでは、海馬のCA1領域にてニューロンの欠損も生じた。カイニン酸注射の2時間後、マウスに150μLのPPF1または生理食塩水を静脈内に投与した。PPF1または生理食塩水の投与は合計5日間毎日継続した(
図30)。6日目に分析のために組織を回収した。ミクログリアの活性化(CD68)及び星状細胞の活性化(GFAP)についての免疫蛍光染色の後、海馬のCA1領域にて炎症性の変化を分析した。切片は30μmの浮遊切片にて免疫組織化学処理の後、Hamamatsu NanoZoomer HT(Hamamatsu)にて画像化し、Image Pro Software(Media Cybernetics)を用いて解析した。
【0215】
海馬のCA1領域におけるパーセントCD68陽性領域の解析は、カイニン酸投与がCD68免疫反応性の上昇を生じ、それはミクログリアの活性化を示唆している(
図31A)。5日間のPPF1投与は、CD68陽性領域の比率の有意な低下を生じるので、ミクログリア活性化の低下を生じる。同様に、CFAP陽性領域の比率(
図31B)の解析はカイニン酸投与の後、有意な上昇を示し、それはPPF1投薬の後、有意に低下する。データは、PPF1がカイニン酸を投与されているマウスの脳で急性の抗炎症効果を有することを示唆している。
*p<0.05。Dunnettの多重比較事後解析による一元配置ANOVA。
【0216】
(m)実施例13
6ヵ月齢のNSGマウスに150μL(10mg/mL)の用量でPPF1または生理食塩水対照のいずれかをIVで1週間(7日間)毎日注射した。マウスはすべて、PPF1または生理食塩水対照を受け入れるのと同じ日に1日1回50mg/kgのBrdUで処理した。次いでマウスを2つのコホートに分けた。第1のコホートはBrdU及びPPF1による同時処理の7日間の直後の日に屠殺した。第2のコホートは7日後屠殺され、追加の7日間のBrdUの毎日投与を受けた。
【0217】
図32は、コホート1及び2(左から右)の歯状回にて染色された細胞の数を示す。双方のコホートは生理食塩水対照と比べて歯状回にて細胞増殖の増加を示した(
***p<0.001、独立t検定)。
【0218】
(n)実施例14
3ヵ月齢または6ヵ月齢のNSGマウスにPPF1または生理食塩水溶媒のいずれかをIVで1週間(7日間)毎日注射した。その後、マウスは7日間の毎日投与が投与された3、10または42日後に屠殺した。歯状回のブレードにおける神経幹細胞及び神経前駆細胞を標識する増殖している細胞にしか存在しない核マーカーであるKi67で脳を染色した。
図33は、PPF1を用いた連続7日間のパルス投薬計画の終了の10日後、6ヵ月齢のマウスが歯状回にて総前駆細胞(Ki67陽性または「Ki67+」)の増加を呈したことを示す。
図34は、PPF1を用いた連続7日間のパルス投薬計画の終了の10日後、NSGマウスにおける歯状回でのKi67の染色(明るい領域)を示す。これは、投薬停止の42日後に細胞生存全体及びニューロン新生を増やすことにおけるPPF1についての考えられる作用機序の1つが総前駆細胞(神経幹細胞)の増加によるものであり得ることを示している。
【0219】
(o)実施例15
市販のPPF(「PPF1」)または生理食塩水対照を6ヵ月齢と12ヵ月齢との免疫不全マウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)の2つの異なる集団に投与した。マウスはすべて、試験剤の7日間パルス投薬に先立って1週目に50mg/kgのBrdUを受け入れた。マウスはすべて、投与当たり150μLのPPF1または生理食塩水のIV注射を受けた。各処理群に由来する1コホートを用いて増殖を調べ、最後の施された投与の6週後に屠殺した。
【0220】
図35Aは、PPF1で処理した6ヵ月齢マウスのコホートが生理食塩水対照と比べてニューロンに分化する前駆細胞(NeuN+)の数で有意な増加、及び対照と比べて星状細胞に分化する前駆細胞(GFAP+)の数で低下を示している。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(独立t検定によって
**p<0.01)。
【0221】
図35Bは、PPF1で処理した12ヵ月齢マウスのコホートが生理食塩水対照と比べてニューロンに分化する前駆細胞(NeuN+)の数で有意な増加、及び対照と比べて星状細胞に分化する前駆細胞(GFAP+)の数で統計的に有意ではない差異を示している。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(独立t検定によって
**p<0.01)。
【0222】
(p)実施例16
清澄化した老齢ヒト血漿(老齢血漿)または無菌の生理食塩水を3ヵ月齢のマウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)に投与した。各実験では、マウスは体重によって処理群にわたって均質化した。マウスはすべて無菌生理食塩水中の150mg/kgのBrdUの連続5日間のIP注射を受けた。BrdU注射には、投与当たり150μLの老齢血漿または無菌生理食塩水の連続7日間毎日のIV投与が続き、最後の投与の4週後、組織学的に解析した。
【0223】
図36は、最後の投与の4週後、BrdUで標識した増殖している神経前駆細胞の細胞運命を示す。老齢血漿を注射したマウスでは、生存しているBrdU標識細胞は星状細胞よりもニューロンに有意に少なく分化する。このことは、老齢ヒト36B血漿が若齢マウスにおける神経前駆細胞の細胞運命を星状細胞系列に変化させ(
図37B)、歯状回における新生ニューロンの数に負の影響を与える(
図36A)ことを示している(群当たりn=12)。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(独立t検定によって
***p<0.001、
****p<0.0001)。
【0224】
(q)実施例17
皮質活性化
老齢(18ヵ月齢)C57BL/6マウスは150uLのPPF1または0.9%生理食塩水のIV注射を毎日7日間受けた。最後の試験剤投与の2時間半(2.5時間)後、ケタミンとキシラジンによる深麻酔下での0.9%生理食塩水とそれに続く4%ホルムアルデヒドとによる経心臓潅流によってマウスを屠殺した。脳を切断し、後固定し、iDisco手順によって処理し、2×2×3マイクロメーターのボクセル解像にて光シート蛍光顕微鏡(LSFM)を介してcFos陽性細胞を視覚化した。画像化した脳を三次元体積として割り当て、活性化されたcFos陽性細胞をコンピューターで検出した。群間の統計的比較は、偽発見率により多重比較について補正された負の二項回帰によって行った(*は0.05未満のp値を示す)。
【0225】
マウスの脳の解析は、PPF1で処理した18ヵ月齢マウスにおける皮質及び等皮質と同様に脳全体体積にてcFos陽性細胞の数の全体的増加を示した(
図37)。多重比較について補正した二項回帰を用いて、陽性cFos全体の数におけるこれらの増加の差異は有意性に達しなかった。しかしながら、たとえば、前頭皮質、眼窩皮質、辺縁内皮質及び縁前方皮質のようなさらに定義された皮質領域の解析はcFos陽性細胞の数の有意な増加を示した(
図38)ということは、ニューロン活動の上昇を示している。前部前頭皮質領域での活動の増強が認知能力の向上と相関するということは、PPF1処理が老齢C57BL/6マウスにて認知の改善を生じることを示唆している。cFos陽性細胞の数の類似の有意な増加は副嗅核及び嗅結節でも見いだされた(
図39)。これらの領域は嗅覚情報の処理と関連し、活動の増強は嗅覚機能の増加を示唆している。赤色におけるcFos活性化のボクセル統計に基づく視覚化は、PPF1で処理したマウスの皮質におけるcFosシグナルの増加を示した(
図40)。
【0226】
(r)実施例18
市販のPPF(「PPF1)または生理食塩水対照を22ヵ月齢の野生型(WT)マウス(C57BL/6J,“WT”,系統コード0664,Jackson Labs,Bar Harbor,ME)に投与した。マウスはすべて7日間パルス投薬に先立って1週目に50mg/kgのBrdUを受け入れた。続いて、マウスはすべて、連続7日間、投与当たり150μLのPPF1または生理食塩水のIV注射を受けた。最後のPPF1または生理食塩水の注射の10日後、マウスを屠殺し、組織検査のために脳を処理した。
【0227】
図41Aは海馬におけるCD68免疫反応性領域のパーセントを示す(n=10、10)。
図41Bは海馬におけるIba-1免疫反応性領域のパーセントを示す(n=10、10)。
図41Cは海馬におけるGFAP免疫反応性領域のパーセントを示す(n=10、10)。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(独立t検定によって
*p<0.05、
**p<0.01)。これらの結果は、PPF1で処理した老齢マウスの海馬におけるミクログリアのマーカーであるCD68及びIba-1の有意な低下を示している。
【0228】
(s)実施例19
市販のPPF(「PPF1)または生理食塩水対照を23ヵ月齢の野生型(C57BL/6J,“WT”,系統コード0664,Jackson Labs,Bar Harbor,ME)に投与した。マウスはすべて連続7日間パルス投薬に先立って1週目に50mg/kgのBrdUを受け入れた。続いて、マウスはすべて、連続7日間、投与当たり150μLのPPF1または生理食塩水のIV注射を受けた。各処理群に由来する1コホートを用いて神経炎症についての組織学マーカーを調べ、最後に施された投与の6週後に屠殺した。
【0229】
図42Aは、投薬後、6、9及び12週での生理食塩水対照と比べた、海馬における細胞生存の指標であるBrdUの発現の変化のパーセントを示す。マウスは連続7日間のパルス状投薬計画で処理した。
【0230】
図42Bは、投薬後、6、9及び12週での生理食塩水対照と比べた、海馬におけるニューロン新生の指標であるダブルコルチン(DCX)の変化のパーセントを示す。マウスは連続7日間のパルス状投薬計画で処理した。
【0231】
(t)実施例20
4~4.5ヵ月齢の30匹のオスのアルファ-シヌクレイントランスジェニックマウス(ライン61、野生型背景C57BL/6J)を15匹の2群に分け、PPF1または溶媒のいずれかで連続7日間処理した。PPF1処理は体重のグラム当たり5μLにてIVで投与した。アルファ-シヌクレインマウスはパーキンソン病のトランスジェニックモデルとして役立ち、アルファ-シヌクレインタンパク質を過剰発現する。このトランスジェニックモデルはNSGマウスとは異なり、免疫不全ではない。
【0232】
PPF1または溶媒の最後の処理の翌日、マウスをすべて、たとえば、営巣、パスタ齧り、金網懸垂、ロタロッド及び梁歩行のような行動及び運動機能の試験に供した。パスタ齧り、金網懸垂、及び梁歩行は試験の終了時二度実行した。試験は無作為化した順で行った。
【0233】
マウスは週1回体重を測定した。
図43A及び
図43BはPPF1処理した及び溶媒処理したアルファ-シヌクレイントランスジェニックマウス(「Tg」)の間で有意差がなかったことを示す。
【0234】
図44は営巣についての結果を示す。木質チップの寝床材とプレス綿の四角片1つと(巣材)を含有するケージにマウスを個々に収容した。他の巣材(たとえば、木質ウール)は存在しなかった。巣の状態を評価する前日、暗期が開始される約2~3時間前に巣材を導入し、実験の翌日、明期が開始した後約2~3時間以内に営巣行動を評価した。綿四角片の導入と巣の状態の評価との間の時間の長さは実験すべてで同じだった。5点スケール(Deacon,RM2006,Assessing nest building in mice.Nat.Protoc.1:1117-19.)に従って巣材の操作及び営巣の構造を評価した。
図44に示すように、溶媒処理したマウスと比べてPPF1処理したマウスでは、営巣行動で上昇傾向があった。
【0235】
図45A及び
図45Bは、最後の処理の3週後、溶媒処理群と比べてPPF1処理群にてパスタ齧りに有意な増加があったことを示し、運動の改善を示している(
図45B)。試験は小型齧歯類における運動障害を研究するために開発された。試験の少なくとも2時間前にマウスを実験室に入れた。ケージのフタ、給水ビン、餌ペレットを取り除き、乾燥スパゲティの小片(およそ5mm)をケージに入れた。スパゲティ片の上にマイクを置いた。マウスが食べ始めるとすぐに記録を開始した。齧りエピソード当たりの噛みつきの数及び噛みつきの頻度を評価し、Avisoft SASLab Proソフトウェアを用いて齧りパターンを解析した。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(独立t検定によって
*p<0.05)。
【0236】
図46は、運動力の神経筋異常を評価する金網懸垂試験の結果を示す。最後の処理の3週後、溶媒処理群と比べてPPF1処理群にて落下までの時間で有意な増加があった。試験を行うために、金網のケージフタを用い、外周の周りにダクトテープを配置し、マウスが出っ張りから立ち去ることを防いだ。マウスをケージフタの上に置いた。フタを3回軽く振り、強制的にマウスに金網を掴ませ、次いでフタを上下逆さまにした。フタは、マウスがジャンプして降りることを防ぐために十分高く、落下して損傷を引き起こすほど高くない柔らかい下敷きの上でおよそ50~60cmの高さに保持した。落下するまでの待ち時間を定量し、300秒カットオフ時間を使用した。普通、野生型マウスは数分間逆さまにぶら下がることができる。
【0237】
図47A、47B及び47Cは梁歩行試験の結果を示す。
図47Aは困難さが増す5つの異なる試行で使用された様々な梁の形状及びサイズ(四角または円筒状の棹)を示す。
図47Bは最後の処理の72時間後の5つの試行の結果を示す。
図47Cは最後の処理の3週後の5つの試行の結果を示す。PPF1で処理したマウスは、試験1の試行5(処置の72時間後)及び試験2の試行4(処理の3週後)での梁を縦走することで有意に高い成功を示した。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(二項検定によって
**p<0.01)。
【0238】
図48A~48Fは、線条体及び海馬の染色の組織学的結果を示す。
図48Aは線条体のCD68の染色を示す。
図48Bは海馬のCD68の染色を示す。
図48Cは線条体のIba-1の染色を示す。
図48Dは海馬のIba-1の染色を示す。
【0239】
図48Eは線条体のNeuN染色を示す。
図48Fは海馬のNeuN染色を示す。これらの図は、PPF1で処理したマウスが線条体及び海馬の双方でIba-1及びCD68によるミクログリオーシス(神経炎症)の低下を、及び線条体及び海馬におけるNeuNによるニューロン生存の増加を実証したことを示す。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(独立t検定によって
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001)。
【0240】
(u)実施例21
PPF1、HAS1または生理食塩水対照を12ヵ月齢のマウス(NOD.Cg-Prkdscid Il2rgtm 1 Wj1/SzJ,「NSG」系統)に投与した。HAS1は冷アルコール分画法によって調製し、ドナーからのプールしたヒト血漿に由来する、5%溶液(w/v、50g/L)にて95%余りがヒトアルブミン(総タンパク質に対して)である市販のHASである。言及された場合を除いて、HAS1は本明細書の実施例では5%を用いて生体内で投与された。マウスには、連続7日間毎日、用量当たり150μLでのPPF1、HAS1または無菌生理食塩水をIV投与で注射し、最後の投与の4週後に行動の面で解析した。
【0241】
図49は、PPF1、HAS1及び溶媒で処理したマウスについて脱出穴に入るまでのマウスにとってBarnes迷路脱出にかかった時間を示す。PPF1処理したマウスは、溶媒処理したマウスよりも有意に早く脱出穴を見つけた。このデータは、PPF1が老齢NSG動物における認知を効果的に向上させる一方でHAS1は海馬依存性の記憶に効果を有さないことを示している。示したデータはすべて平均値±s.e.m.である。(独立t検定によって
*p<0.05)。
【0242】
(v)実施例22
PPFを用いた臨床規範
(1)軽度から中程度のAD
軽度から中程度のADの60歳以上の男女を、6ヵ月の総期間での試験の1週目と13週目とに5日間毎日1回、100mLまたは250mLのPPF1(「パルス状投薬」)を受け入れるように無作為に割り振る。2回の5日間投薬の期間の間、対象は入院観察ユニットに居住し、安全性評価を円滑にし、対象はすべてスクリーニング来診、ベースライン来診、治療来診、経過観察来診、及び試験終了の来診/早期終了の来診を受ける。安全性及び忍容性の評価は来診ごとに発生する。神経認知評価及び運動評価はベースライン及び投薬に続く定期的な中間来診で行う。
【0243】
主な評価項目は、各投薬計画の安全性、忍容性、及び実行可能性である。安全性は治療・緊急有害事象の発生によって測定される。忍容性は、少なくとも5回の点滴を受けた8週後に完了する対象の数及び少なくとも10回の点滴を受けた24週後に完了する対象の数によって測定される。試験の実行可能性は5回及び10回の点滴を完了する対象の数によって測定される。副次的評価項目は、アルツハイマー病評価スケール・認知サブスケールを含む種々の確立された認知評価基準を用いて認知に対する可能性がある効果を評価する。予備的な評価項目には、血液系生体マーカーの組成及び分布における変化と同様に磁気共鳴画像における変化の評価が挙げられる。
【0244】
(2)軽度から中程度のAD
軽度から中程度のADであると診断された対象の2群を二重盲検法での積極的な治療に対して無作為化する。対象はすべて、合計6ヵ月間の試験期間で1週目と13週目とにて連続5日間無作為化投与での1日当たり1回の点滴を受ける。対象は、2つの投与レベルである100mL及び250mLのPPF1の1つに対して無作為化される。投薬群を性別によっても階層化する。投与時間は2~2.5時間であり、投与全体が施されるように投与専用の指針に従って流速を設定する。
【0245】
対象は最適なCSF生体マーカー研究に参加する。そのような対象は、最初の投薬に先立って1回目の、及び最終投薬に続く2回目のCSF採取のための2回の腰椎穿刺を受ける。神経認知評価及び運動評価はベースライン及び投薬に続いて実施される定期的な中間評価にて行われる。
【0246】
各投薬計画の安全性、忍容性及び実行可能性が判定される。認知スコアが決定され、ミニメンタルステート検査(MMSE)、11項目のアルツハイマー病評価スケール・認知サブスケール(ADAS-Cog/11)、溝付きペグボード検査、カテゴリー流暢性検査(CFT)、臨床認知症評定スケール・箱の合計(CDR-SOB)、アルツハイマー病共同研究・日常生活動作(ADCS-ADL)、アルツハイマー病共同研究・変化の臨床的な全体印象(ADCS-CGIC)、神経精神病学的目録アンケート(NPI-Q)、及びSavonixの神経認知評価及び数唱を含む試験について要約される。
【0247】
(3)パーキンソン病
パーキンソン病及び認知障害の対象を、2つの群である積極的治療とプラセボとの2つの期間に無作為化する。対象は、試験の第1週の間に連続5日間(「パルス状投薬」)積極的治療またはプラセボ治療の1日1回の点滴を受ける。13週目の間に両群は連続5日間積極的治療を受け、試験期間はおよそ7ヵ月である。投与時間は2~2.5時間であり、投与全体が施されるように投与専用の指針に従って流速を設定する。
【0248】
各投薬計画の安全性、忍容性及び実行可能性が判定される。認知機能及び運動機能は、MoCA、CDR-CCBにおける注意、作業、記憶及びエピソード記憶の継続及び能力、MDS-UPDRS3、MDS-UPDRS2、SE-ADL、及びCISI-PDを含む試験にわたって要約される。
【0249】
本発明は記載されている特定の態様に限定されないので、変化してもよいことが理解されるべきである。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、本明細書で使用されている専門用語は特定の態様のみを説明する目的のためのものであって、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。
【0250】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上端と下端との間での、文脈が明瞭に指示しない限り、下端の単位の10分の1までの各介在する値及びその定められた範囲における任意の他の定められたまたは介在する値は本発明の範囲内に包含される。定められた範囲にて具体的に除外される端次第で、これらのさらに小さな範囲の上端及び下端はそのさらに小さな範囲に独立して含まれてもよく、本発明の範囲内にも包含される。定められた範囲が端の一方または双方を含む場合、それら含まれる端のいずれかまたは双方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0251】
特に定義されない限り、本明細書で使用されている専門用語及び科学用語はすべて、本発明が属する技術の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似するまたは同等であるどんな方法及び物質も本発明の実践及び試験で使用することもできるが、代表的な説明に役立つ方法及び物質がここでは記載されている。
【0252】
本明細書で引用されている出版物及び特許は、各出版物または特許が具体的に且つ個々に参照によって本明細書に組み入れられるように指示されたかのように、及び参照によって本明細書に組み入れられて併せて出版物が引用される方法及び/または物質を開示し、記載するかのように参照によって本明細書に組み入れられる。出版物の引用は出願日に先立つその開示のためのものであり、本発明が従来発明という理由でそのような出版物に先行する権利が与えられないという承認と解釈されるべきではない。さらに、提供される出版物の日付は、独立して確認される必要があってもよい実際の刊行日とは異なってもよい。
【0253】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形態「a」、「an」及び「the」は文脈が明瞭に指示しない限り、複数の指示対象を含むことが言及される。特許請求の範囲は任意の要素を除外するように起草されてもよいことがさらに言及される。そのようなものとして、この言及は、特許請求の範囲の要素の引用または「否定的な限定」の使用と併せた「単に」、「のみ」等のような排除的用語の使用についての先行詞として役立つように意図される。
【0254】
本開示を読む際に当業者に明らかなように、本明細書に記載され、説明されている個々の態様のそれぞれは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく他の幾つかの態様のいずれかの特徴から容易に分離されてもよい、またはそれと容易に組み合わせられてもよい個別の成分及び特徴を有する。引用された方法は、引用された事象の順にまたは論理的に可能である任意の他の順に実施することができる。
【0255】
前述した発明は、理解の明瞭性を目的として説明及び例示を経て詳細に記載されているが、本発明の教示の観点で、添付の特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなくそれに対する特定の変更及び修正が行われてもよいことが当業者に容易に明らかである。
【0256】
従って、前述したことは単に本発明の原理を説明しているに過ぎない。本明細書では明白に記載されず、または示されていないが、本発明の原理を具体化し、精神及び範囲の中に含められる種々の配置を当業者が工夫できることは十分に理解される。さらに、本明細書で引用されている実施例及び条件付き言語はすべて、本発明及び本発明者による当該技術の拡大に寄与する概念を理解することにて読者を助けるように主として意図され、そのような具体的に引用された実施例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。さらに、原理、態様及び本発明の態様と同様にその具体例を引用する本明細書での言及すべてはその構造的及び機能的な同等物を包含するように意図される。
【0257】
さらに、そのような同等物には現在既知の同等物及び将来開発される同等物、すなわち、構造にかかわりなく同じ機能を実行する開発される要素の双方が含まれることが意図される。従って、本発明の範囲は本明細書で示され、記載されている例となる態様に限定されるようには意図されない。むしろ、本発明の範囲及び精神は添付の特許請求の範囲によって具体化される。
【0258】
関連出願
米国特許法第119条(e)に従って、本出願は、その出願の開示が参照によって本明細書に組み入れられる2017年4月26日に出願された米国仮特許出願番号62/490,519、2017年11月10日に出願された米国仮特許出願番号62/584,571、2018年1月29日に出願された米国仮特許出願番号62/623,468及び2018年3月9日に出願された米国仮特許出願番号62/641,194の出願日に対して優先権を主張する。