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▶ ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ、 アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー オブ アグリカルチャーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036867
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】光呼吸効率が増加した植物
(51)【国際特許分類】
   A01H 5/00 20180101AFI20230307BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20230307BHJP
   C12N 15/29 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 15/53 20060101ALI20230307BHJP
   C12N 15/54 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A01H5/00 A ZNA
C12N15/113 Z
C12N15/29
C12N15/53
C12N15/54
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209353
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2019548622の分割
【原出願日】2018-03-07
(31)【優先権主張番号】62/467,993
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/913,395
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515009642
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ、 アズ リプレゼンティッド バイ ザ セクレタリー オブ アグリカルチャー
【氏名又は名称原語表記】THE UNITED STATES OF AMERICA, AS REPRESENTED BY THE SECRETARY OF AGRICULTURE
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】オート,ドナルド アール.
(72)【発明者】
【氏名】サウス, ポール エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー, バークレイ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】葉緑体グリコール酸エクスポート能力に欠ける植物、およびそれらを作製するための方法、加えて、光合成効率を増加させるための1つまたは複数の代替光呼吸バイパス経路を含有する植物を提供する。
【解決手段】グリコール酸を葉緑体の少なくとも一部分から輸送する植物の能力の喪失又は低下を含み、且つ植物の葉緑体の少なくとも一部分内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得を含む、1つ以上の遺伝子改変を含む遺伝子改変植物を提供する。グリコール酸および/またはグリセリン酸を往復させることに関与する輸送タンパク質の破壊は、結果として、光合成速度の低下、植物成長の低下、ならびに遺伝子発現および光合成代謝産物プロファイルの変化を生じさせる。そのような破壊は、また、代替の光呼吸酵素経路の成分を発現する遺伝子の導入と組み合わされて、光合成効率を増加させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール酸を葉緑体の少なくとも一部分から輸送する植物の能力の喪失または低下を含み、かつ前記植物の葉緑体の少なくとも一部分内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得を含む、1つ以上の遺伝子改変を含む遺伝子改変植物。
【請求項2】
前記葉緑体グリコール酸輸送能力の喪失は、配列番号6と少なくとも70%配列同一性、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%配列同一性、または少なくとも95%配列同一性を有する内因性タンパク質のレベルの低下、活性の低下、活性の部分的喪失、または活性の完全な喪失を含む、請求項1の植物。
【請求項3】
前記葉緑体グリコール酸輸送能力の喪失は、配列番号46と少なくとも95%同一のRNA分子の発現により誘導されるRNA干渉を含む、請求項1または請求項2の植物。
【請求項4】
前記葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得は、葉緑体におけるトランスジェニックリンゴ酸シンターゼおよびトランスジェニックグリコール酸デヒドロゲナーゼの産生を含む、請求項1~3のいずれか一項の植物。
【請求項5】
前記リンゴ酸シンターゼは、配列番号43のアミノ酸残基41~607と少なくとも95%同一である、請求項4の植物。
【請求項6】
前記グリコール酸デヒドロゲナーゼは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136と少なくとも95%同一である、請求項4または請求項5の植物。
【請求項7】
前記リンゴ酸シンターゼは、配列番号43を含み、
前記グリコール酸デヒドロゲナーゼは、配列番号45を含む、
請求項4の植物。
【請求項8】
前記葉緑体グリコール酸輸送能力の喪失は、配列番号3と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生の欠如、および配列番号6と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生の欠如を含み、
前記葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得は、配列番号43と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生、および配列番号45と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生を含む、請求項1の植物。
【請求項9】
前記植物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、およびキャッサバからなる群から選択される、請求項1~8のいずれか一項の植物。
【請求項10】
a.グリコール酸を植物の葉緑体の少なくとも一部分から輸送する能力の喪失を含む遺伝子改変を植物に導入する工程と、
b.葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得を含む遺伝子改変を植物に導入し、それにより植物の成長または生産性を増加させる工程と、
を含む、成長または生産性が増加した植物を作製する方法。
【請求項11】
前記植物の葉緑体の少なくとも一部分からグリコール酸を輸送する能力の喪失は、
配列番号3と少なくとも95%同一性を有する内因性タンパク質のレベルの低下、活性の低下、活性の部分的喪失、もしくは活性の完全な喪失を含み、
また、配列番号6と少なくとも95%同一性を有した第2の内因性タンパク質のレベルの低下、活性の低下、活性の部分的喪失、もしくは活性の完全な喪失を含み、
またはその両方を含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記葉緑体グリコール酸輸送能力の喪失は、配列番号46と少なくとも95%同一のRNA分子の発現によりRNA干渉を誘導することを含む、請求項10または請求項11の方法。
【請求項13】
前記葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得は、葉緑体におけるトランスジェニックリンゴ酸シンターゼおよびトランスジェニックグリコール酸デヒドロゲナーゼの産生を含む、請求項10~12のいずれか一項の方法。
【請求項14】
前記リンゴ酸シンターゼは、配列番号43のアミノ酸残基41~607と少なくとも95%同一であり、
前記グリコール酸デヒドロゲナーゼは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136と少なくとも95%同一である、
請求項13の方法。
【請求項15】
前記リンゴ酸シンターゼは、配列番号43を含み、
前記グリコール酸デヒドロゲナーゼは、配列番号45を含む、
請求項13の方法。
【請求項16】
前記葉緑体グリコール酸輸送能力の喪失は、配列番号3と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生の欠如、配列番号6と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生の欠如、または両方に起因し、
前記葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得は、配列番号43と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生、および配列番号45と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生を含む、
請求項13の方法。
【請求項17】
前記植物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、およびキャッサバからなる群から選択される、請求項10~16のいずれか一項の方法。
【請求項18】
リンゴ酸シンターゼをコードする第1の異種ポリヌクレオチドと、
グリコール酸デヒドロゲナーゼをコードする第2の異種ポリヌクレオチドと、
を含む遺伝子改変植物であって、
リンゴ酸シンターゼおよびグリコール酸デヒドロゲナーゼは、植物の葉緑体に局在する、植物。
【請求項19】
前記植物の葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する、請求項18の植物。
【請求項20】
前記リンゴ酸シンターゼは、Cucurbita maxima由来である、請求項18または請求項19の植物。
【請求項21】
前記リンゴ酸シンターゼは、配列番号43のアミノ酸残基41~607と少なくとも95%同一である、請求項18~20のいずれか一項の植物。
【請求項22】
前記グリコール酸デヒドロゲナーゼは、Chladymonas reinhardtii由来である、請求項18~21のいずれか一項の植物。
【請求項23】
前記グリコール酸デヒドロゲナーゼは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136と少なくとも95%同一である、請求項18~22のいずれか一項の植物。
【請求項24】
前記第1の異種ポリヌクレオチドは、配列番号43のアミノ酸配列をコードし、
前記第2の異種ポリヌクレオチドは、配列番号45のアミノ酸配列をコードする、
請求項18~23のいずれか一項の植物。
【請求項25】
前記植物の葉緑体において、1つ以上の内因性グリコール酸輸送タンパク質のレベルの低下、活性の低下、活性の部分的喪失、または活性の完全な喪失をさらに含む、請求項18~24のいずれか一項の植物。
【請求項26】
前記植物の葉緑体からのグリコール酸輸送の低下または喪失を有する、請求項25の植物。
【請求項27】
前記1つ以上のグリコール酸輸送タンパク質は、PLGG1およびBASS6を含む、請求項25または請求項26の植物。
【請求項28】
前記1つ以上のグリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つは、配列番号6と少なくとも70%配列同一性、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、または少なくとも90%配列同一性を有する、請求項25~27のいずれか一項の植物。
【請求項29】
前記1つ以上のグリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つは、配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有する、請求項28の植物。
【請求項30】
グリコール酸輸送タンパク質の発現を阻害するRNA分子をコードする異種ポリヌクレオチドを含む、請求項25~29のいずれか一項の植物。
【請求項31】
前記1つ以上のグリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つのレベルの低下、活性の低下、活性の部分的喪失、または活性の完全な喪失は、CRISPR/Cas、TALEN、Zn-フィンガーヌクレアーゼ、およびRNAiからなる群から選択される技術を用い生じさせられる、請求項25~29のいずれか一項の植物。
【請求項32】
前記RNA分子は、配列番号46と少なくとも95%同一である、請求項30の植物。
【請求項33】
イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、およびキャッサバからなる群から選択される、請求項18~32のいずれか一項の植物。
【請求項34】
リンゴ酸シンターゼをコードする第1の異種ポリヌクレオチドと、
グリコール酸デヒドロゲナーゼをコードする第2の異種ポリヌクレオチドと、
を含む遺伝子改変植物であって、
リンゴ酸シンターゼおよびグリコール酸デヒドロゲナーゼは、植物の葉緑体に局在する、植物。
【請求項35】
配列番号43と少なくとも95%同一性を有する第1のポリペプチドをコードする第1の異種ポリヌクレオチドと、
配列番号45と少なくとも95%同一性を有する第2のポリペプチドをコードする第2の異種ポリヌクレオチドと、
を含み、
第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドは、植物の葉緑体に局在する、遺伝子改変植物。
【請求項36】
リンゴ酸シンターゼをコードする第1の異種ポリヌクレオチドおよびグリコール酸デヒドロゲナーゼをコードする第2の異種ポリヌクレオチドを植物へ導入することを含む、成長または生産性が増加した植物を作製する方法であって、
リンゴ酸シンターゼおよびグリコール酸デヒドロゲナーゼは、植物の葉緑体に局在し、
植物は、葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の増加を有し、それにより植物の成長または生産性を増加させる、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
この特許出願は、35U.S.C.§119(e)により、米国仮出願第62/467,993号の優先権を主張し、その仮出願は、2017年3月7日に出願され、参照により本明細書に組み入れられている。
【0002】
本開示は、光呼吸特性が改変された植物を提供する。グリコール酸および/またはグリセリン酸を往復させることに関与する輸送タンパク質の破壊は、結果として、光合成速度の低下、植物成長の低下、ならびに遺伝子発現および光合成代謝物プロファイルの変化を生じさせる。そのような破壊は、代替光呼吸酵素経路の成分を発現する遺伝子の導入と組み合わされた場合、光合成効率を増加させる。
【背景技術】
【0003】
リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(RubisCO)は、リブロース-1,5-ビスリン酸(RuBP)のCOとの固定を触媒して、2分子の3-ホスホグリセリン酸(3-PGA)を生成する。しかしながら、25℃および現在のCOレベルでは、C3光合成代謝を有する植物におけるRubisCO触媒活性の約25%は、二酸化炭素ではなく、競合する基質である酸素との固定であり、それは、RuBPの、1分子の3-PGAと1分子の2-ホスホグリコール酸(2-PG)への変換を生じさせる(Bowes et al.、Biochem Bioph.Res.Co(1971)45:716~22;Ogren and Bowes、Nature-New Biol.(1971)230:159~60;Lorimer,G.H.、Ann.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.(1981)32:349~83;Ogren,W.L.、Ann.Rev.Plant Physiol.Plant Mol.Biol.(1984)35:415~42;Sharkey,T.D.、Physiologia Plantarum(1988)73:147~52)。葉緑体ストロマにおける2-PG蓄積は、トリオースリン酸イソメラーゼおよびホスホフルクトキナーゼを阻害し、それにより、RuBP再生能力を低減させ得る(Anderson,L.E.、Biochim Biophys Acta(1971)235:237~44;Kelly and Latzko、Febs Lett(1976)68:55~58)。2-PGは、2-ホスホグリコール酸ホスファターゼにより迅速に脱リン酸されるが、生成されたグリコール酸もまた、葉緑体における光合成の速度を抑制し得、細胞にとって毒性であると考えられている(Kelly and Latzko、supra;GonzalezMoroら、J.Plant Physiol.(1997)150:388~94)。葉緑体、ペルオキシソーム、ミトコンドリア、およびサイトゾルにおけるステップを含むC2光呼吸経路を通して、2-PG/グリコール酸による光合成の阻害が防止され、低下した炭素の部分的回復が達成される(Somerville and Ogren、Plant Physiol(1979)63:152;Eisenhut et al.、Plant Biol.(2013)676~85)。光呼吸は、2分子の2-PGを1分子の3-PGAへ変換し、1分子のCOを放出する。
【0004】
加えて、光呼吸サイクルは、ミトコンドリアにおいて、ATPを利用し、グリシンのセリンへの変換の副産物として、アンモニア(NH)を生成する。その後、植物は、還元当量NAD(P)Hを用いてそのNHをリサイクルする。結果として、現在の大気CO濃度下での光呼吸は、地域の成長期温度に依存して、季節性C3光合成効率に対する約15~50%の低減(drag)を生じさせる(Ogren、supra;Peterhansel et al.、Photorespiration.The Arabidopsis Book(2010)、20130)。光呼吸による収量の損失は、US中西部のダイズおよびコムギ生産だけで、1年あたり合計約150兆カロリーにのぼり(Walker et al.、Ann.Rev.Plant Biol.(2016)107~29)、米およびジャガイモなどの他の主なC3作物にも同様の負の影響を生じさせる(Sharkey,T.D.supra、Zhu et al.、Ann.Rev.Plant Biol.(2010)61:235~61)。
【0005】
光呼吸は、C3植物にとって必須であるが、固定された二酸化炭素およびエネルギーを大量に費やすことで行われる。光呼吸は、光合成の最初の酵素であるリブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ(Rubisco)が、二酸化炭素の代わりに酸素と反応した時、開始され、毒性化合物のグリコール酸を生成し、その後、そのグリコール酸は光呼吸によりリサイクルされる。光呼吸は、林冠および地域的スケールでモデル化して、現在および未来の大気下におけるそのコストを決定することができる。地域的スケールモデルにより、光呼吸は、現在、USダイズおよびコムギ収量を36%および20%減少させることが明らかにされている。この光呼吸による損失のわずかな改善でさえも、USのみで年間1億ドルの価値があり得、光呼吸は、作物収量を向上させるための標的過程になり得る(Annu.Rev.Plant Biol.2016 67:107~29)。合成生物学の進歩により、より少ないエネルギーを用いて葉緑体においてグリコール酸を代謝する酵素を導入すること、および光呼吸のCO生成の場所をミトコンドリアから葉緑体へ移動させ、それにより、Rubiscoによる迅速な再固定を可能にすることにより、天然経路を短絡させることを意図する、植物葉緑体へのいくつかの新規な経路の導入が可能になっている(Kebeishら、Nat Biotechnol(2007)25:593~599;MaurinoおよびPeterhansel、Curr Opin Plant Biol(2010)13:249~256)。
【0006】
光呼吸に関与する可溶性酵素は、過去40年に渡って十分研究されており、光呼吸代謝を司る生化学および遺伝学に関する多くの情報がもたらされている(Peterhanselら、supra;Timm and Bauwe、Plant Biol.(2013)15:737~47)。対照的に、光呼吸における炭素のリサイクリングに関与する少なくとも25個の提唱された輸送ステップがあるにも関わらず、少数のトランスポーターのみが光呼吸に関与することが実証されている(Eisenhut et al.、supra)。重要なことに、光呼吸は、窒素サイクルおよびアミノ酸生合成を含む複数の他の代謝経路と相互作用する高フラックス経路である(Fernie et al、Plant Biol.(2013)15:748~53)。
【0007】
光呼吸に関与することが同定された最初のトランスポーターは、葉緑体ジカルボン酸トランスポーターDiT1およびDiT2であった(Woo et al.、Plant Physiol.(1987)84:624~32)。DiT2.1における単一の点変異、およびその後の生化学的特徴づけにより、DiT2は、葉緑体内包膜に位置するグルタミン酸/リンゴ酸トランスポーターであることが明らかにされた(Renne et al.、Plant J.(2003)35:316~31)。DiT1のアンチセンス抑制は、環境CO下での成長の減少および二酸化炭素濃度([CO])の上昇による補完の古典的光呼吸変異表現型を示し、葉緑体における2-オキソグルタル酸輸送の減少に起因する硝酸再同化作用の低下を生させた(Schneidereit et al.、Plant J.(2006)45:206~24)。合わせると、DiT1およびDiT2は、光呼吸代謝におけるグリシン脱炭酸反応から放出されたアンモニアの適切な再固定に必要である。
【0008】
最近では、同時発現分析を用いて、光呼吸に関与している可能性のある他のトランスポーターが同定された(Bordych et al.、Plant Biol.(2013)15:686~93)。同時発現分析は、正常なグリシンデカルボキシラーゼ(GDC)活性および分裂組織成長に必要とされるミトコンドリアトランスポーターA BOUT DE SOUFFLE(BOU)を同定し、そのトランスポーターにおけるヌル変異体は、上昇した[CO]による補完の光呼吸変異表現型を示す(Eisenhut et al.、Plant J.(2013)73:836~49)。現在、同定されている、グリコール酸から直接誘導された炭素を輸送する唯一の光呼吸経路トランスポーターは、色素体グリコール酸/グリセリン酸輸送体タンパク質、PLGG1である。Plgg1は、光呼吸に関与する多くの酵素と同時発現する(Pick et al.、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA(2013)110:3185~90)。Arabidopsis thalianaにおけるPlgg1 T-DNAノックアウト系列(plgg1-1)は、光呼吸経路における最初と最後の輸送ステップ、すなわち、グリコール酸の葉緑体からのエクスポートおよびグリセリン酸の葉緑体へのインポートにおけるPLGG1の役割を明らかにしている(Pick et al.、supra)。PLGG1の分子同定よりほぼ30年前、グリセリン酸のインポートと同時に起こるグリコール酸のエクスポートが、精製されたホウレンソウ葉緑体において実証された(Howitz and McCarty、Biochem.(1985)24:3645~50;HowitzおよびMcCarty、Plant Physiol.(1986)80:390~95;Howitz and McCarty、Plant Physiol.(1991)96:1060~69;Young and McCarty、Plant Physiol.(1993)101:793~99)。加えて、PLGG1は、プロテオミクス研究において葉緑体タンパク質として同定され、当初はプログラム細胞死に関与すると考えられたが、最新の証拠により、その表現型は、光呼吸中間体の蓄積に関連づけられていることが示唆されている(Yang et al.、New Phytol.(2012)193:81~95;Pick et al.、上記)。しかしながら、Arabidopsis plgg1-1系列は、微小光条件下で測定された場合、野生型と比較して、CO同化作用の量子効率の差または光呼吸CO補償点の変化を示さないことが示された(Walker et al.、Photosyn Res.(2016)129:93~103)。組み合わせると、これらのデータにより、PLGG1タンパク質は、光呼吸代謝に関与することが示され、さらにグリコール酸が葉緑体を出て行くための追加の経路も示唆し、また、光呼吸経路において表現型からトランスポーターを同定することの困難さを示している(Hodges et al.、J.Exp.Bot.(2016)3015~26)。
【0009】
遺伝的アプローチと同時発現アプローチの両方は、光呼吸代謝に関与する遺伝子を同定することに成功しているが、光呼吸中間体のフラックスに関与するトランスポーターの多くは、未知のままである。同時発現分析の代替アプローチは、葉緑体内包膜プロテオミクス研究からの葉緑体内膜トランスポーター候補を同定し、クロロフィル蛍光を用いて、その候補遺伝子のtDNA挿入変異体を光呼吸変異表現型についてスクリーニングすることである(Badger et al.、Funct.Plant Biol.(2009)36:867~73;Sunら、Nucleic Acids Res.、(2009)37:D969~D974)。光呼吸欠損変異体は、低COレベル下で照明に曝された時の光化学系II(PSII)の機能障害に起因するFv/Fmクロロフィル蛍光の低下を示す(Kozaki and Takeba、Nature(1996)384:557~60;Wingler et al.、Philosoph.Trans.Royal Soc.B-Biol.Sci.(2000)355:1517~29;Takahashi et al.、Plant Physiol.(2007)144:487~94)。
【0010】
推定トランスポーター様葉緑体内包膜タンパク質を標的にする順遺伝学と組み合わせてのこのハイスループット蛍光に基づいたアプローチを用いることは、光呼吸代謝物輸送に重要な追加の遺伝子を同定できる可能性を有する。ナトリウム胆汁酸シンポーターは、哺乳動物の肝臓において胆汁酸トランスポーターとして最初に同定された輸送タンパク質のファミリーである。さらなる分析により、トランスポーターのBASSファミリーは、ピルビン酸、ステロイド、および生体異物などの非胆汁酸有機化合物を含む幅広い範囲の基質特異性を示すことが示された(Furumoto et al.、Nature(2011)476:472~75;Claro da Silva et al.、Mol.Aspects of Med.(2013)34:252~69)。胆汁酸は植物においては生成されないが、BASSファミリー遺伝子は、単子葉植物と双子葉植物の両方に存在する(Gigolashvili et al.、The Plant Cell(2009)21:1813~29;Sawada et al.、Plant and Cell Physiol.(2009)50:1579~86;Furumoto et al.、supra)。
【0011】
本明細書に詳述されているように、光呼吸に関与するグリコール酸トランスポーターとしてのナトリウム胆汁酸シンポーター6タンパク質(BASS6)が同定された。Arabidopsisにおけるbass6ノックアウトT-DNA系列(bass6-1およびbass6-2)の分析により、Bass6の欠損は、光呼吸変異体表現型、ならびに光呼吸代謝中間体のグリシンおよびグリコール酸の蓄積を生じさせることが明らかになった。加えて、葉緑体包膜に局在したBASS6タンパク質、およびグリコール酸を輸送するBASS6の能力が、酵母相補性と輸送分析の組合せを通して実証された。bass6-plgg1二重変異体は、相加的発育異常を示した。
【0012】
本発明者らの発見により、葉緑体包膜に位置した2つのグリコール酸トランスポーターを介するグリコール酸の葉緑体からの迅速なエクスポートに起因して、光呼吸短絡またはバイパス経路はあまり効果的ではなかったことが明らかにされた。PLGG1(Proc Natl Acad Sci USA(2013)110(8):3185~90)は、葉緑体包膜のグリコール酸をグリセリン酸に交換する、色素体グリコール酸グリセリン酸輸送体である。PLGG1はグリセリン酸のインポートを全面的に担当するが、BASS6およびPLGG1は、葉緑体からのグリコール酸のエクスポートを分担する。したがって、BASS6およびPLGG1の組み合わされた活性は、グリコール酸の合成光呼吸バイパス経路と競合し、それにより、光合成効率および植物成長/収量を向上させることにおけるバイパスの有効性を制限する。
【0013】
光呼吸におけるRuBisCO酸素化反応およびグリシン変換の毒性副産物(それぞれ、グリコール酸およびアンモニア)は、3つのオルガネラ:葉緑体、ペルオキシソーム、およびミトコンドリアの間で、高エネルギーの要求と固定炭素の純損失を伴って、再固定され、使用可能な生成物へと変換される(Bauwe、 et al.Trends Plant Sci.(2010)15:330~6)。いくつかの光合成藻類、光合成細菌、および光合成植物は、炭素濃縮機構(CCM)およびC4光合成を介して光呼吸のストレスを低下させる方法を進化させている(Price et al.、J.Exp.Bot.(2013)64:753~68)。代替として、代替代謝経路を用いて光呼吸をバイパスすることは、より効率的に、エネルギー要求を低下させ、かつその過程で失われた炭素を再捕獲できる可能性がある(Betti et al.、J.Exp.Bot.(2016)67:2977~88)。3つの異なる光呼吸バイパスが、Arabidopsis、Camelina sativa、およびジャガイモなどの植物において実証されている(Dalal et al.、Biotechnol.Biofuels(2015)8;Kebeish et al.、Nat.Biotechnol.(2007)593~9;Maierら、Front.Plant Sci.(2012)3:12;Nolke et al.、Plant Biotechnol.J.(2014)12:734~42)。いくつかの変形を含むこれらのバイパスは、植物生産性の向上を示したが、農業条件下におけるそれらの有効性は実証されておらず、農家の圃場において光呼吸へのバイパスを完全に最適化するための試みは、現在行われていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これらの懸念に対処するために、葉緑体グリコール酸エクスポート能力に欠ける植物、およびそれらを作製するための方法、加えて、光合成効率を増加させるための1つまたは複数の代替光呼吸バイパス経路を含有する植物が本明細書に提示されている。その2つのアプローチの組合せが、結果として、さらなる効率性を生じさせる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
グリコール酸を葉緑体の少なくとも一部分から輸送する植物の能力の喪失または低下させ、かつ植物の葉緑体の少なくとも一部分内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力を獲得させる、1つ以上の遺伝子改変を含む遺伝子改変植物が本明細書に提供される。一つの実施形態において、葉緑体グリコール酸輸送能力の喪失は、配列番号6と少なくとも70%同一性を有する機能性タンパク質の産生の欠如に起因する。他の実施形態において、葉緑体グリコール酸輸送能力の喪失は、配列番号46と少なくとも95%同一のRNA分子の発現によるRNA干渉を誘導することを含む。さらなる他の実施形態において、葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得は、葉緑体におけるトランスジェニックリンゴ酸シンターゼおよびトランスジェニックグリコール酸デヒドロゲナーゼの産生を含む。特定の実施形態において、リンゴ酸シンターゼは、配列番号43のアミノ酸残基41~607と少なくとも95%同一であり、グリコール酸デヒドロゲナーゼは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136と少なくとも95%同一である。特定の実施形態において、リンゴ酸シンターゼは配列番号43を含み、グリコール酸デヒドロゲナーゼは配列番号45を含む。別の具体的な実施形態において、葉緑体グリコール酸輸送能力の喪失は、配列番号3と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生の欠如、および配列番号6と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生の欠如を含み、葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得は、配列番号43と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生、および配列番号45と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生を含む。遺伝子改変植物は、任意のC3植物であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、本開示の植物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、またはキャッサバである。
【0016】
a)グリコール酸を植物の葉緑体の少なくとも一部分から輸送する能力の喪失を含む遺伝子改変を植物に導入すること、およびb)葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得を含む遺伝子改変を植物に導入し、それにより植物の成長または生産性を増加させることにより、成長または生産性が増加した植物を作製する方法もまた本明細書に開示されている。いくつかの実施形態において、グリコール酸を植物の葉緑体の少なくとも一部分から輸送する能力の喪失は、配列番号3と少なくとも95%同一性を有する機能性タンパク質の産生の欠如、配列番号6と少なくとも95%同一性を有する機能性タンパク質の産生の欠如、またはその両方を含む。さらなる追加の実施形態において、葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得は、葉緑体におけるトランスジェニックリンゴ酸シンターゼおよびトランスジェニックグリコール酸デヒドロゲナーゼの産生を含む。いくつかの実施形態において、リンゴ酸シンターゼは、配列番号43のアミノ酸残基41~607と少なくとも95%同一であり、グリコール酸デヒドロゲナーゼは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136と少なくとも95%同一である。特定の実施形態において、リンゴ酸シンターゼは配列番号43を含み、グリコール酸デヒドロゲナーゼは配列番号45を含む。具体的な実施形態によれば、葉緑体グリコール酸輸送能力の喪失は、配列番号3と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生の欠如、配列番号6と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生の欠如、またはその両方を含み、葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得は、配列番号43と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生、および配列番号45と少なくとも95%同一性を有するタンパク質の産生を含む。任意のC3植物が本開示の方法と共に用いられ得る。いくつかの実施形態において、植物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、またはキャッサバである。
【0017】
本明細書に提供された追加の実施形態は、リンゴ酸シンターゼをコードする第1の異種ポリヌクレオチドと、グリコール酸デヒドロゲナーゼをコードする第2の異種ポリヌクレオチドと、を含む遺伝子改変植物であって、リンゴ酸シンターゼおよびグリコール酸デヒドロゲナーゼは、植物の葉緑体に局在する、遺伝子改変植物である。好ましい実施形態において、植物は、植物の葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する。いくつかの実施形態において、リンゴ酸シンターゼは、Cucurbita maximaを含む、本明細書に提供される任意の供給源に由来する。具体的な実施形態において、リンゴ酸シンターゼは、配列番号43のアミノ酸残基41~607と少なくとも95%同一である。さらなる実施形態において、これらの植物のいずれかは、Chlamydomonas reinhardtiiを含む、本明細書に提供される任意の供給源から選択された生物体由来のグリコール酸デヒドロゲナーゼを発現する。特定の実施形態において、グリコール酸デヒドロゲナーゼは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136と少なくとも95%同一である。具体的な実施形態において、第1の異種ポリヌクレオチドは配列番号43のアミノ酸配列をコードし、第2の異種ポリヌクレオチドは配列番号45のアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施形態において、植物は、植物の葉緑体における1つ以上の内因性グリコール酸輸送タンパク質の、レベルの低下、活性の低下、活性の部分的喪失、または活性の完全な喪失をさらに含む。いくつかの実施形態において、植物は、植物の葉緑体からのグリコール酸輸送の低下または喪失を有する。特定の実施形態において、1つ以上のグリコール酸輸送タンパク質は、PLGG1およびBASS6を含む。さらなる実施形態において、1つ以上のグリコール酸輸送タンパク質は、配列番号6と少なくとも70%配列同一性、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、少なくとも90%配列同一性、または少なくとも95%配列同一性を有する。さらなる実施形態において、1つ以上のグリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つは、配列番号3と少なくとも70%配列同一性、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、または少なくとも90%配列同一性を有した。他の実施形態において、1つ以上のグリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つは、配列番号3との少なくとも95%配列同一性を有した。いくつかの実施形態において、植物は、グリコール酸輸送タンパク質をコードするDNA分子の変異を含む。追加の実施形態において、植物は、配列番号46と少なくとも95%同一であるRNA分子など、グリコール酸輸送タンパク質の発現を阻害するRNA分子をコードする異種ポリヌクレオチドを含む。さらなる実施形態において、1つ以上のグリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つのレベルの低下、活性の低下、活性の部分的喪失、または活性の完全な喪失を、CRISPR/Cas、TALEN、Zn-フィンガーヌクレアーゼ、およびRNAiからなる群から選択される技術を用いて発生させた。
【0018】
本開示の別の態様は、遺伝子改変植物であり、植物は、配列番号43と少なくとも95%同一性を有する第1のポリペプチドをコードする第1の異種ポリヌクレオチド、および配列番号45と少なくとも95%同一性を有する第2のポリペプチドをコードする第2の異種ポリヌクレオチドを含み、第1のポリペプチドおよび第2のポリペプチドが、植物の葉緑体に局在している。追加の実施形態において、植物は、配列番号3と少なくとも95%同一性を有する第3のポリペプチドのレベルの低下または活性の低下、および配列番号6と少なくとも95%同一性を有する第4のポリペプチドのレベルの低下または活性の低下をさらに含む。例示的な植物には、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、およびキャッサバが挙げられる。
【0019】
本開示の追加の態様は、リンゴ酸シンターゼをコードする第1の異種ポリヌクレオチド、およびグリコール酸デヒドロゲナーゼをコードする第2の異種ポリヌクレオチドを植物へ導入することを含む、成長または生産性が増加した植物を育成する方法であって、リンゴ酸シンターゼおよびグリコール酸デヒドロゲナーゼが植物の葉緑体に局在し、植物は、葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力が上昇しており、それにより植物の成長または生産性を増加させる、方法を提供する。いくつかの実施形態において、この方法は、また、植物に遺伝子改変を導入する工程を有し、その植物は、その植物の葉緑体の少なくとも一部分からグリコール酸を輸送する能力の低下を有する。追加の実施形態において、リンゴ酸シンターゼは、Cucurbita maximaを含む、本明細書に提供された生物体に由来する。具体的な実施形態において、リンゴ酸シンターゼは、配列番号43のアミノ酸残基41~607と少なくとも95%同一である。さらなる実施形態において、グリコール酸デヒドロゲナーゼは、Chlamydomonas reinhardtiiを含む、本明細書に提供された生物体に由来する。具体的な実施形態において、グリコール酸デヒドロゲナーゼは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136と少なくとも95%同一である。特定の実施形態において、リンゴ酸シンターゼは配列番号43のアミノ酸配列を含み、グリコール酸デヒドロゲナーゼは配列番号45のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、植物へ遺伝子改変を導入する工程は、植物の葉緑体における1つ以上の内因性グリコール酸輸送タンパク質のレベルの低下、活性の低下、活性の部分的喪失、または活性の完全な喪失を引き起こす。この方法論のいくつかの実施形態において、1つまたは複数の内因性グリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つのレベルの低下、活性の低下、活性の部分的喪失、または活性の完全な喪失は、内因性グリコール酸輸送タンパク質をコードした内因性DNA分子へ変異を導入することを含む。追加の実施形態において、1つ以上の内因性グリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つのレベルの低下、活性の低下、活性の部分的喪失、または活性の完全な喪失は、内因性グリコール酸輸送タンパク質の発現を阻害するRNA分子をコードする異種ポリヌクレオチドを導入することを含み、例えば、RNA分子は、配列番号46と少なくとも95%同一である。具体的な実施形態において、1つ以上の内因性グリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つは、PLGG1またはBASS6である。いくつかの実施形態において、1つ以上の内因性グリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つは、配列番号6と少なくとも70%配列同一性、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、または少なくとも90%配列同一性を有する。特定の実施形態において、1つ以上の内因性グリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つは、配列番号6と少なくとも95%配列同一性を有する。他の実施形態において、1つ以上の内因性グリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つは、配列番号3と少なくとも70%配列同一性、少なくとも75%配列同一性、少なくとも80%配列同一性、少なくとも85%配列同一性、または少なくとも90%配列同一性を有する。特定の実施形態において、1つ以上の内因性グリコール酸輸送タンパク質のうちの少なくとも1つは、配列番号3と少なくとも95%配列同一性を有する。具体的な実施形態において、1つ以上の内因性グリコール酸輸送タンパク質は、配列番号6と少なくとも95%同一性を有する第1のグリコール酸輸送タンパク質、および配列番号3と少なくとも95%同一性を有する第2のグリコール酸輸送タンパク質である。特定の実施形態において、植物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、またはキャッサバである。
【0020】
参照による組み入れ
この明細書で言及された全ての刊行物、特許、および特許出願は、あたかも各個々の刊行物、特許、または特許出願が、具体的かつ個々に示されて参照により組み入れられているのと同じ程度で、参照により本明細書に組み入れられている。
【0021】
特許出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含むこの特許または特許出願刊行物の複写は、依頼および必要な料金の支払いによって特許庁により提供される。
【0022】
本開示の新規な特徴は、特許請求の範囲において具体的に示されている。本開示の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面において言及されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】光呼吸C2サイクルの図である。
図2】環境CO(グロースチャンバーにおいて250μmol・m-2・s-1光強度で、8時間明期/16時間暗期サイクル(22℃/18℃)で、8週間 400ppm CO)で成長した野生型A.thalianaと比較した、代表的なbass6変異体およびplgg1変異体の写真である。
図3】24時間の低いCOおよび一定照明後のFv/Fmの変化を示す、野生型A.thalianaと比較した、代表的なbass6変異体およびplgg1変異体の写真である。数値は、3つの複製実験からの12個の植物の平均を表す。
図4A-4B】異なるCO濃度における、野生型A.thalianaと比較した、bass6-1変異体およびplgg1-1変異体の相対的成長速度を示すグラフである。図4Aにおいて、誤差バーは、標準偏差を示し、アスタリスク()は、CO処理間の有意差を示す。二重アスタリスク(**)は、T-DNA系列とWTの間での成長速度の有意な変化を示す。統計的差は、StudentのT検定p<0.05に基づいている。
図5】Bass6を欠損するA.thaliana変異体における同化作用(A)、内部CO濃度(C)、および気孔伝導度(g)の低下を示すグラフである。光合成測定は、400ppm COおよび飽和光(1000μmol・m-2・s-1)における、示された系統、同化作用(A)、内部CO濃度(C)、および気孔伝導度(g)について記録された。文字は、ANOVA分析N=3に基づいた統計的差を示す。
図6A-6B】相加的光呼吸表現型効果を示す、bass6、plgg1の二重変異体A.thalianaの分析を示す図である。図6Aは、代表的な野生型、bass6、plgg1、および二重変異体bass6、plgg1の成長およびクロロフィル蛍光におけるFv/Fm変化を示す写真を提供する。その写真は、2000ppm COにおいて4週間、その後、環境COへシフトされて5日間、成長した、示された植物を表す。Fv/Fm画像は、葉上の葉緑体病変の形成によるクロロフィル蛍光の変化を示す。画像は5つの反復を代表する。図6Bは、これらの植物における葉緑体病変形成の程度を示すグラフを提供する。葉病変サイズのcmでの面積は、写真ソフトウェア(Adobe)を用いて測定されたピクセル密度に基づいている。
図7】GFPタグ付きPLGG1(パネルD~F)およびGFPタグ付きBASS6(パネルG~I)の葉緑体包膜への局在化を示す、単離されたNicotiana benthamianaプロトプラストの共焦点顕微鏡画像である。これらの画像は、4つの連続した平面の最大投影図であり、PLGG1とBASS6の両方が葉緑体包膜に局在し(矢じり)、そこでそれらがストロミュール(星印の付いた矢じり)を形成することを示している。全てのプロトプラストは、また、不図示のP19およびmCherryタグ付きERマーカーを発現している。スケールバー:10μmである。パネルJ~Lは、35sプロモーターから発現するBass6-eGFPを一過性に発現させるN.benthamiana葉組織の光シート画像を提供する。矢印は、クロロフィル自己蛍光に関連していないGFP蛍光を示す。星印の付いた矢印は、クロロフィル包膜と関連したGFP蛍光を示す。スケールバー:50μmである。全てのパネルにおいて、GFPシグナルは緑色で示されており、葉緑体自己蛍光は、マゼンタ色で示されている。
図8A-8B】相加的光呼吸表現型効果を示す、bass6、plgg1の二重変異体A.thalianaの分析を示す図である。図8Aは、2000ppm CO(濃い灰色バー)または400ppm CO(薄い灰色バー)のいずれかにおける、示されたArabidopsis T-DNA系列の相対的成長速度を示すグラフである。誤差バーは、3つの生物学的複製あたり少なくとも5つの植物の標準偏差を示す。アスタリスク()は、CO処理間の有意差を示す。二重アスタリスク(**)は、T-DNA系列とWTの間での成長速度の有意な変化を示す。統計的差は、StudentのT検定p<0.05に基づいている。図8Bは、示された系統についての、示されたCO濃度および飽和光(1000μmol・m-2・s-1)において記録された光合成測定値のグラフである。文字は、ANOVA分析およびTukeyのpost-hoc検定からの有意差を表す。誤差バーは標準偏差を示す。
図9】上昇したCOにおいて6週間成長した、A.thaliana野生型、bass6、plgg1、および二重変異体bass6、plgg1植物における様々な光呼吸中間体の蓄積を示すグラフである。黒色バーは2000ppm COを示し、灰色バーは150ppm COを示す。X軸の数値は、内部標準に基づく、示された光呼吸代謝物の相対的差を表す。誤差バーは平均値の標準誤差を示す。文字は、ANOVA分析;N=3に基づいた統計的差を示す。
図10】A.thaliana野生型、bass6、plgg1、および二重変異体bass6、plgg1での、グリコール酸代謝におけるBASS6およびPLGG1の役割を実証するグラフである。示された植物系列は、上昇したCO(2000ppm)で4週間、その後、環境大気(400ppm CO)へシフトされて24時間成長した。8時間の明期サイクルの終わりに、組織を、時間0として収集した。その後の各時点は、暗期の間での試料収集であった。X軸数値は、内部標準に基づく、示された光呼吸代謝物の相対的差を表す。誤差バーは平均値の標準誤差を示す。アスタリスクは、WT対照をT-DNA系列と比較するANOVA分析;N=3に基づいた統計的差を示す。
図11】A.thaliana PLGG1またはBASS6を発現する様々な酵母系統の写真であり、両方のタンパク質のグリコール酸を輸送する能力を示す写真である。
図12】A.thaliana PLGG1またはBASS6を発現する様々な酵母系統の、放射標識されたグリコール酸を取り込む能力を示すグラフである。誤差バーは標準偏差を示し、文字は、ANOVA分析;N=3に基づいた統計的差を示す。
図13】BASS6およびPLGG1の発現を制御する遺伝的調節機構の一部を実証するグラフである。葉組織におけるBass6およびPlgg1の発現は、plgg1-1変異体およびbass6-1変異体において、qRT-PCR分析により決定された。左のパネルにおいて、誤差バーは、それぞれ3つの技術的複製を含む3つの生物学的複製からの平均値の標準誤差を示す。アスタリスクは有意な変化(p<0.05)を示す。示されたArabidopsisトランスジェニック系列の相対的成長速度が右のパネルに示されている。誤差バーは、3つの生物学的複製あたり少なくとも5つの植物の標準偏差を示す。アスタリスク()は、環境大気条件下で成長したトランスジェニック系列間の有意差を示す。統計的差はStudentのT検定に基づいている。
図14】光呼吸バイパスへの合成生物学アプローチを示す図である。3つの光呼吸バイパス設計のモデルである。バイパス1(オレンジ色)は、E.coliグリコール酸経路由来の5つの遺伝子である、3つの遺伝子である、DEFグリコール酸デヒドロゲナーゼと、グリオキシル酸カルボリガーゼと、タルトロン酸セミアルデヒドレダクターゼとを用いて、グリコール酸をグリセリン酸へ変換する。バイパス2(赤色/紫色)は、3つの遺伝子である、グリコール酸オキシダーゼと、リンゴ酸シンターゼと、グリコール酸オキシダーゼにより生成された過酸化水素を除去するためのカタラーゼとを利用する。バイパス3(青色/紫色)は、2つの遺伝子である、Chlamydomonas reinhadrtiiグリコール酸デヒドロゲナーゼとCucurbita maximaリンゴ酸シンターゼとを用いる。
図15A-15B】図15Aは、24時間の低いCOおよび一定照明の後、Fv’/Fm’の変化による光呼吸バイパスの向上についての蛍光に基づいたスクリーニングにおける日齢9日間のトランスジェニックタバコ系列の代表的な写真である。図15Bは、グリコール酸/グリセリン酸トランスポーターPLGG1を標的にするRNAi有りおよび無しでの、3つのバイパス構築物設計の、合計した値を示す図である。誤差バーはSEMを示す。は、一元配置ANOVA P≦0.05に基づいた、WTと比較しての統計的差を示す。
図16A-16B】バイパス3系列の遺伝子発現およびタンパク質分析を示す図である。図16Aは、バイパス3における2つの導入遺伝子、およびRNAi構築物の標的遺伝子PLGG1のqRT-PCR分析である。図16Bは、示された標的遺伝子に対して産生されたカスタム抗体を用いたウェスタンブロット分析である。RbcS対照(1.5μg)を除き、レーンあたりタンパク質の3μg負荷である。矢印(→)は、分子量に基づいく、検出されたタンパク質を示す。誤差バーはSEMを示す。は、一元配置ANOVA P≦0.05に基づいた、WTと比較しての統計的差を示す。
図17A-17B】バイパス1および2の遺伝子発現分析を示す図である。図17Aは、バイパス1の、示された導入遺伝子、およびRNAiについて標的にされた天然PLGG1のqRT-PCR分析である。グリコール酸デヒドロゲナーゼサブユニットD、E、F(GDH)、タルトロン酸セミアルデヒドレダクターゼ(TSR)、グリオキシル酸カルボリガーゼ(GCL)、色素体グリコール酸/グリセリン酸トランスポーター(PLGG1)である。図17Bは、バイパス2の、示された導入遺伝子、およびRNAiについて標的にされた天然PLGG1のqRT-PCR分析である。グリコール酸オキシダーゼ(GO)、カタラーゼ(CAT)、リンゴ酸シンターゼ(MS)である。誤差バーはSEMを示す。
図18A-18B】圃場試験の茎の高さおよびバイオマスを示す図である。図18Aは、発芽から7週間後に記録された測定に基づいた茎の高さの分析である。誤差バーは、SDを示し、は、一元配置ANOVA N=8に基づいた有意性を示す。図18Bは、PLGG1 RNAiモジュール有りおよび無しにおける、WT対照と比較した、組み合わされた茎、葉、および全体の乾燥重量バイオマスにおけるパーセント差である。誤差バーはSEMを示す。は、一元配置ANOVA N=8に基づいた有意性を示す。
図19A-19C】圃場試験の光合成効率を示す図である。図19Aは、示された[CO]における、利用可能な光応答曲線に基づいた同化作用の線形回帰、およびCO同化の飽和速度により決定されたバイパス1の、組み合わされた光合成の見かけの量子効率(Φa)である。図19Bは、示された[CO]における、利用可能な光応答曲線に基づいた同化作用の線形回帰により決定されたバイパス2の、総合した、光合成の見かけの量子効率(Φa)、およびCOの飽和同化速度。図19C:示された[CO]における、利用可能な光応答曲線に基づいた同化作用の線形回帰、およびCO同化の飽和速度により決定されたバイパス3の、組み合わされた光合成の見かけの量子効率(Φa)である。誤差バーはSEMを示し、は、一元配置ANOVA P≦0.05に基づいた有意性を示す。
図20A-20D】温室条件で試験された光合成効率を示す図である。図20Aは、組み合わされたRubiscoカルボキシル化の最大速度(Vcmax)である。図20Bは、組み合わされた電子伝達の最大速度(Jmax)である。カルボキシル化および電子伝達の最大速度は、PS-Fitモデルを用いて、変化するCO濃度下での光合成応答からモデル化されている。図20Cは、一般的な切片方法および傾き回帰を用いて計算された、組み合わされた見かけのCO補償点:ガンマ星(Γ)である。図20Dは、内部[CO](Ci)に基づいたCO同化作用である。誤差バーはSEMを示す。は、一元配置ANOVAに基づいた、WTと比較しての統計的差を示す。P値が示されている。
図21A-21E】2017年圃場試験からの植物生産性および光合成効率を示す図である。図21Aは、PLGG1 RNAiモジュール有りおよび無しにおける、バイパス3について、WT対照と比較した、組み合わされた葉(左のバー)、茎(真ん中のバー)、および全体(右のバー)のバイオマスにおけるパーセント差である。文字は、二元配置ANOVA P≦0.05に基づいた統計的差を示す。図21Bは、示された系列についての、組み合わされた全体の蓄積された葉デンプンである。図21Cは、利用可能な光応答曲線に基づいた同化作用の線形回帰により決定された、組み合わされた光合成の見かけの量子効率(Φa)である。図21Dは、光合成の日周分析に基づいた、組み合わされたCO2の蓄積同化作用(A’)である。図21Eは、日周光合成に基づいた同化作用から決定された、組み合わされた電子伝達に用いられた蓄積電子である。誤差バーはSDを示し、P値はANOVA分析に基づいて示されている。
図22】RNAiによるPLGG1のノックダウンは、上昇したCOから環境大気へのシフト後、Fv’/Fm’を増加するように導かれることを示す図である。同じT0形質転換事象由来の導入遺伝子ネガティブ植物と比較した、PLGG1 RNAiモジュールのみを発現する5つのトランスジェニックポジティブ植物の組み合わされた値である。Fv’/Fm’は、上昇したCOから環境大気への移行から3日後に測定された。誤差バーは標準偏差を示す。
図23】温室条件下における光呼吸バイパスはバイオマスの増加させることを示す図である。示された植物系列の全体の乾燥重量バイオマスにおける%差である。EV、空ベクター;AP1、バイパス1;AP2、バイパス2;AP3、バイパス3である。は、一元配置ANOVAに基づいた統計的差を示す。誤差バーはSEMである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
光呼吸は、RubisCO酸素化反応の生成物である毒性代謝物2-ホスホグリコール酸をリサイクルする、エネルギー大量消費工程である。光呼吸経路は、葉緑体、ペルオキシソーム、サイトゾル、およびミトコンドリアを含め、高度に区画化されている(図1)。光呼吸に関与する可溶性酵素は十分特徴づけられているが、光呼吸に関与する膜トランスポーターは今までほとんど同定されていない。光呼吸条件下で、ナトリウム胆汁酸シンポーターBass6を標的にするArabidopsis T-DNA挿入は、光合成を阻害し、上昇したCOにおいて救出される環境大気低成長表現型を生させた。加えて、代謝物分析および酵母におけるグリコール酸輸送の遺伝的相補性により、BASS6が、Arabidopsis葉緑体からのグリコール酸の光呼吸エクスポートにおけるその関与と一致するグリコール酸輸送の能力があることが示された。Bass6およびグリコール酸/グリセリン酸トランスポーターPlgg1を含む二重ノックアウトArabidopsis系列(bass6-1-plgg1-1)は、いずれかの単一の変異単独と比較して、相加的発育異常、グリコール酸蓄積の増加、光合成速度の低下をもたらした。そのデータは、BASS6が、グリコール酸の葉緑体内包膜に局在したトランスポーターであり、Bass6の外因性発現が光呼吸変異体表現型を補完し得ることを示している。C3植物の葉緑体からのグリコール酸エクスポートを担うトランスポーターを知ることは、よりエネルギー効率が高い光呼吸経路を導入し、それにより、光合成効率を向上させるための戦略を設計するにおいて重要な情報である。
【0025】
光呼吸をバイパスすることができる複数の可能性のある設計を用いて、コンピュータモデリングは、圃場条件下で植物を栽培するためにその利益を最大にするためには、最適化された非天然遺伝子の発現およびバイパス経路を通るフラックスが必要とされることを示唆している。加えて、天然の光呼吸経路を低下または閉鎖させることは、植物における光呼吸バイパス経路を発現させることの利益をさらに増加させるだろう。本発明者らは、葉緑体からのグリコール酸の輸送を低下させると同時に、異なる光呼吸バイパス戦略を発現する遺伝子構築物のライブラリーを作製する合成生物学アプローチを用いることは、光呼吸バイパスの利益を知る上での手掛かりとなり、作物生産性を増加させる植物系列を成し遂げる精鋭を設計するために用いることができると仮定した(図14)。
【0026】
したがって、バイパス経路の発現と組み合わせた、PLGG1タンパク質産生のRNAiノックダウンをもたらす組換えdsRNA(配列番号46)を含有する植物もまた本明細書に提示される。ノックダウン系統またはノックアウト系統のいずれも、そのような系統間で類似した結果を示すデータを考慮すれば、同様に機能することが予想される。したがって、いくつかの実施形態において、機能性PLGG1タンパク質を含まない植物は、バイパス3タンパク質(C.reinhardtii由来のリンゴ酸シンターゼおよびグリコール酸デヒドロゲナーゼ)と組み合わされて、光合成効率が増加した植物を生じさせる。他の実施形態は、バイパス3タンパク質を発現し、かつ機能性BASS6タンパク質を欠損する植物を提供する。バイパス3タンパク質を発現し、かつ(ノックアウトまたはノックダウンを介して)機能性BASS6タンパク質と機能性PLGG1タンパク質の両方を欠損するトランスジェニック植物が本明細書でさらに企図される。
【0027】
本開示の好ましい実施形態が、本明細書に示され、かつ説明されている。そのような実施形態が、例としてのみ提供されることは当業者には明らかである。多数の変形、変更、および置換が、本開示から逸脱することなく、当業者によって考えられ得る。本明細書に説明された本開示の実施形態の様々な代替が、本開示を実行することにおいて用いられ得る。含まれる特許請求の範囲が、本開示の範囲を定義すること、ならびにこれらの特許請求の範囲の範囲内の方法および構造およびそれらの均等物がそれらにより包含されることが、意図される。
【0028】
本明細書で用いられる技術的および科学的用語は、他に規定がない限り、本開示が関連する分野の当業者により一般的に理解されている意味を有する。当業者に知られた様々な材料および方法論が本明細書で参照される。組換えDNA技術の一般的な原理を示す標準参考文献には、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Plainview、N.Y.、1989;Kaufmanら編、「Handbook of Molecular and Cellular Methods in Biology and Medicine」、CRC Press、Boca Raton、1995;およびMcPherson編、「Directed Mutagenesis:A Practical Approach」、IRL Press、Oxford、1991が挙げられる。本開示の選択された態様に有用な真菌遺伝学の一般的な方法論および原理を教示する標準参考文献には、Shermanら、「Laboratory Course Manual Methods in Yeast Genetics」、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986、およびGuthrieら、「Guide to Yeast Genetics and Molecular Biology」、Academic、New York、1991が挙げられる。
【0029】
当業者に知られた任意の適切な材料および/または方法が、本開示を行うことにおいて利用することができる。本開示を実行するための材料および/または方法が記載されている。以下の説明および実施例において参照される材料、試薬などは、特に断りのない限り、商業的供給源から入手できる。
【0030】
本明細書および特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」の使用は、文脈が明らかに他に指示しない限り、複数形の表示を含む。
【0031】
本明細書で用いられる場合、単離された、精製された、または生物学的に純粋なという用語は、その言及された材料がその天然状態において通常伴う成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。
【0032】
用語「約」は、挙げられた値のプラスまたはマイナス10パーセントとして定義される。例えば、約1.0gは、具体的に示されようが示されまいが、0.9g~1.1gおよびその範囲内の全ての値を意味する。
【0033】
用語「遺伝子」は、RNAもしくはポリペプチドまたはそれらの前駆体を産生することに関与するDNA配列を指す。ポリペプチドまたはRNAは、完全長コード配列により、またはエクソン配列などの、コード配列のイントロンにより中断された部分により、コードされ得る。
【0034】
用語「プライマー」は、プライマー伸長が開始される条件下に置かれた時、合成の開始点として作用する能力があるオリゴヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチド「プライマー」は、精製された制限消化物においてのように天然で存在する場合もあるし、または合成的に作製される場合もある。
【0035】
プライマーは、鋳型の特定の配列の鎖と「実質的に相補的」であるように選択される。プライマーは、プライマー伸長が起こるために鋳型鎖とハイブリダイズするのに十分に相補的でなければならない。プライマー配列は、鋳型の正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補性ヌクレオチド断片が、プライマー配列の残りがその鎖と実質的に相補的であるように、プライマーの5’末端に付着してよい。プライマー配列が、ハイブリダイズし、それによりプライマーの伸長産物の合成のための鋳型プライマー複合体を形成するのに、鋳型の配列と十分相補的であるという条件で、非相補的塩基またはそれより長い配列がプライマー中に散在し得る。
【0036】
この開示の目的のために、パーセンテージとして表される、2つの関係したヌクレオチドまたはアミノ酸配列の「配列同一性」は、その2つの最適に整列された配列における、同一残基を有する位置の数(×100)を、比較される位置の数で割ったものを指す。ギャップ、すなわち、ある残基が一方の配列に存在するが、他方において存在しない整列における位置が、非同一残基を有する位置としてみなされる。2つの配列の整列は、Needleman-Wunschアルゴリズムにより実施される(Needleman and Wunsch、J Mol Biol、(1970)48:3、443~53)。コンピュータ援用配列整列は、Wisconsin Package Version 10.1(Genetics Computer Group、Madison、Wisconsin、USA)の一部であるGAPなどの標準ソフトウェアプログラムを用いて、50のギャップ生成ペナルティおよび3のギャップ伸長ペナルティを有するデフォルトスコアリングマトリックスを使用して、便利に実施することができる。
【0037】
2つ以上のポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の関連における用語「同一の」またはパーセント「同一性」およびそれらの文法的変形は、配列比較アルゴリズムを用いて、または手作業での整列および目視検査により測定された指定領域に渡る最大一致のために比較および整列された時、同じである、または(それぞれ)同じである特定のパーセンテージのヌクレオチドもしくはアミノ酸を有する(例えば、80%、85%同一性、90%同一性、99%、または100%同一性)、2つ以上の配列または部分配列を指す。
【0038】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの関連における句「高パーセント同一の」または「高パーセント同一性」、およびそれらの文法的変形は、配列比較アルゴリズムを用いて、または目視検査により測定された、最大一致のために比較および整列された時、少なくとも約80%同一性、少なくとも約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%ヌクレオチドまたはアミノ酸同一性を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。例示的な実施形態において、高パーセント同一性は、少なくとも約16ヌクレオチド長またはアミノ酸長である配列の領域にわたって存在する。別の例示的な実施形態において、高パーセント同一性は、少なくとも約50ヌクレオチド長またはアミノ酸長である配列の領域にわたって存在する。なお別の例示的な実施形態において、高パーセント同一性は、少なくとも約100ヌクレオチド長またはアミノ酸長である配列の領域にわたって存在する。一つの例示的な実施形態において、配列は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の全長にわたって高パーセント同一である。
【0039】
用語「BASS6」ならびにその大文字表記およびイタリック体表記は、本明細書に記載される植物遺伝子およびタンパク質を指す。いくつかの実施形態において、この用語は、本明細書に記載されるA.thaliana遺伝子およびタンパク質を指す場合がある。他の実施形態において、この用語は、任意のC3植物の遺伝子およびタンパク質の1つ以上のホモログまたはオルソログを指す場合もある。いくつかの実施形態において、この用語は、任意のC3植物の遺伝子およびタンパク質の1つ以上パラログを指す場合もある。いくつかの実施形態において、C3植物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、またはキャッサバである。配列番号1は、A.thaliana BASS6遺伝子のゲノム配列を提供する。配列番号2は、A.thaliana BASS6遺伝子のcDNA配列を提供する。配列番号3は、A.thaliana Bass6タンパク質を提供する。全てイタリック体での小文字で示された場合、その遺伝子/タンパク質の変異体(例えば、ノックアウト)バージョンが意図される。A.thalianaにおいて、変異体バージョンは、単一の遺伝子/タンパク質であり得る。他のC3植物において、変異体バージョンは、その遺伝子/タンパク質のうちの1つ、いくつか、または全てのホモログ、オルソログ、および/もしくはパラログであり得る。
【0040】
用語「PLGG1」ならびにその大文字表記およびイタリック体表記は、本明細書に記載される植物遺伝子およびタンパク質を指す。いくつかの実施形態において、この用語は、本明細書に記載されるA.thaliana遺伝子およびタンパク質を指す場合がある。他の実施形態において、この用語は、任意のC3植物の遺伝子およびタンパク質の1つ以上のホモログまたはオルソログを指す場合もある。いくつかの実施形態において、この用語は、任意のC3植物の遺伝子およびタンパク質の1つ以上のパラログを指す場合もある。いくつかの実施形態において、C3植物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、またはキャッサバである。配列番号4は、PLGG1遺伝子のA.thalianaゲノム配列を提供する。配列番号5は、A.thaliana PLGG1遺伝子のcDNA配列を提供する。配列番号6は、A.thaliana Plgg1タンパク質を提供する。全てイタリック体での小文字で示された場合、その遺伝子/タンパク質の変異体(例えば、ノックアウト)バージョンが意図される。A.thalianaにおいて、変異体バージョンは、単一の遺伝子/タンパク質であり得る。他のC3植物において、変異体バージョンは、その遺伝子/タンパク質のうちの1つ、いくつか、または全てのホモログ、オルソログ、および/もしくはパラログであり得る。配列番号46は、本発明のいくつかのトランスジェニック植物におけるdsRNAの産生を介するRNAiノックダウンに利用される、PLGG1コード配列の一部分を提供する。
【0041】
具体的に他に指示がない限り、用語「CmMS」または「MS」は、Cucurbita maximaリンゴ酸シンターゼ遺伝子およびタンパク質を指す。配列番号43は、rubisco小サブユニットシグナルペプチド(アミノ酸残基1~40)と融合したリンゴ酸シンターゼタンパク質(アミノ酸残基41~607)を提供する。配列番号42は、シグナルペプチドを有するこのタンパク質をコードするDNA配列を提供し、本明細書に記載されるバイパス3植物を作製するために用いられる。配列番号43と95%以上の同一性を有するタンパク質をコードするDNA、および代替シグナルペプチド配列を利用するタンパク質などの、これらの核酸配列およびタンパク質配列の変種が含まれる。
【0042】
用語「CrGDH」または「GDH」は、Chlamydomonas reinhardtiiグリコール酸デヒドロゲナーゼ遺伝子およびタンパク質を指す。配列番号45は、rubisco小サブユニットシグナルペプチド(アミノ酸残基1~40)と融合したリンゴ酸シンターゼ(アミノ酸残基41~1136)を提供する。配列番号44は、シグナルペプチドを有するこのタンパク質をコードするDNA配列を提供し、本明細書に記載されるバイパス3植物を作製するために用いられる。配列番号45と95%以上の同一性を有するタンパク質をコードするDNA、および代替シグナルペプチド配列を利用するタンパク質などの、これらの核酸配列およびタンパク質配列の変種が含まれる。
【0043】
本明細書で用いられる用語「バイパス」は、組換え植物細胞へ導入され、それにより発現したトランスジェニック酵素経路を指す。3つのバイパス経路1、2、および3は、表1に示されている。これらは、下記の実施例部分にさらに詳述されている。
【0044】
【表1】
【0045】
「dsRNA」は、選択された標的遺伝子のセンス部分およびアンチセンス部分(または遺伝子サイレンシングが起こり得るようにそれとの高配列同一性を有する配列)を含む二本鎖RNA、加えて、RNアーゼまたはダイサー活性によりそれから形成された任意のより小さい二本鎖RNAを指す。そのようなdsRNAは、一本鎖RNAの部分を含み得るが、少なくとも19ヌクレオチドの二本鎖RNAを含む。本開示の一つの実施形態において、dsRNAは、標的にされた遺伝子のセンス配列とアンチセンス配列の間にループまたはスペーサー配列を含有するヘアピンRNAを含み、好ましくは、そのようなヘアピンRNAスペーサー領域は、イントロン、特に、rolA遺伝子イントロン(Pandolfini et al.、2003、BioMedCentral(BMC)Biotechnology 3:7(www.biomedcentral.com/1472-6750/3/7))、pHellsgate 11または12由来の二重配向イントロン(WO02/059294ならびにそれにおける配列番号25および15参照)またはpdkイントロン(Flaveria trinerviaピルビン酸オルトリン酸ジキナーゼイントロン2、WO99/53050参照)を含む。配列番号46は、本開示のいくつかの実施形態においてノックダウンPLGG1作製に利用されたRNA配列を提供する。
【0046】
表1に提供された酵素名、グリコール酸カルボリガーゼ、2-ヒドロキシ-3-オキソプロピオン酸レダクターゼ、タルトロン酸セミアルデヒドレダクターゼ、グリコール酸デヒドロゲナーゼサブユニットD、E、およびF、グリコール酸オキシダーゼ、リンゴ酸シンターゼ、カタラーゼHPII、ならびにグリコール酸デヒドロゲナーゼは、提供された酵素および配列により例示された酵素のカテゴリーを指す。これらの用語は、これらの酵素のホモログ、および同じ反応を触媒することができる酵素を含む。
【0047】
本明細書で用いられる用語「成長を増加させる」および「生産性を増加させる」、ならびにそれらの文法的変形は、所定の時点における植物の成長速度もしくはサイズの増加、または同じ種の非改変植物と比較した遺伝子改変植物の光合成効率の増強を指す。
【0048】
分子生物学的方法
単離された核酸は、構造が、任意の天然に存在する核酸の構造と同一ではない核酸である。したがって、その用語は、例えば、(a)天然に存在するゲノムDNA分子の部分の配列を有するが、それが天然で存在する生物体のゲノムにおいてその分子のその部分に隣接するどちらのコードまたは非コード配列にも隣接していないDNA;(b)ベクターへ、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAへ、結果として生じた分子がいかなる天然に存在するベクターまたはゲノムDNAとも同一ではないような様式で組み込まれた核酸;(c)cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により産生された断片、または制限断片などの別個の分子;ならびに(d)ハイブリッド遺伝子の部分である組換えヌクレオチド配列、すなわち、融合タンパク質をコードする遺伝子、を包含する。この定義から具体的に排除されるのは、(i)DNA分子、(ii)形質転換またはトランスフェクションされた細胞の混合物、および(iii)細胞クローンの混合物に存在する核酸であり、例えば、これらは、cDNAまたはゲノムDNAライブラリーなどのDNAライブラリーに存在している。
【0049】
組換え核酸という用語は、遺伝子工学技術により、または化学合成により、ポリヌクレオチドの単離された部分の人工的操作により達成された配列の、2そうでなければ分離している2つの部分の組合せにより生成されるポリヌクレオチドを指す。そうすることによって、所望の機能のポリヌクレオチド部分を一つに連結して、所望の機能の組合せを生じさせ得る。
【0050】
本明細書に開示された開示のいくつかの実施形態を実行することにおいて、1つ以上の標的タンパク質(例えば、BASS6またはPLGG1)の機能的発現を妨げる、および/または導入された遺伝子の発現を可能にする遺伝要素を導入するために、宿主細胞の組換え系統のゲノムDNA、葉緑体DNA、またはミトコンドリアDNAを変更することが有用であり得る。好ましい実施形態において、そのような宿主細胞は植物細胞である。
【0051】
標的タンパク質の機能的発現、または標的タンパク質の発現の低下もしくは活性の低下を妨げることを意図された改変は、標的遺伝子座のオープンリーディングフレーム、標的遺伝子座のプロモーターなどの転写制御因子、およびオープンリーディングフレームの5’側または3’側に位置した任意の他の制御核酸配列を非限定的に含む、標的遺伝子の全部または一部分の欠失と、オープンリーディングフレームにおける中途での停止コドンの挿入と、翻訳の中途での終結をもたらすリーディングフレームをシフトする挿入または欠失と、を含む、標的タンパク質をコードするDNAまたは遺伝子の変異を含み得る。そのような欠失変異は、当業者に知られた任意の技術を用いて達成することができる。標的タンパク質のレベルの低下または標的タンパク質の活性の低下は、また、標的タンパク質をコードするDNAまたは遺伝子における点変異または挿入で達成され得る。開示されたヌクレオチド配列および遺伝子の変異、挿入、および欠失変種は、当業者によく知られている方法により容易に調製することができる。標的タンパク質のレベルの低下および/または活性の低下を達成するために用いられる技術には、CRISPR/Cas、TALEN、およびZn-フィンガーヌクレアーゼが挙げられ得る。本明細書に開示された特定のものと機能が同等である変異、挿入、および欠失変異を生じさせることは、十分、当業者の能力の範囲内である。加えて、機能性タンパク質産生へのそのような改変は、二本鎖RNA(dsRNA)、siRNA、または当技術分野において知られた他の技術により媒介されるRNA干渉(RNAi)などのタンパク質「ノックダウン」アプローチを介して達成することができる。標的タンパク質の発現を阻害するRNA分子は、そのタンパク質をコードする遺伝子の発現を低下させることができ、またはそのタンパク質の翻訳を低下させ得る。
【0052】
組換え核酸が、特定の配列の発現、クローニング、または複製のために意図される場合、宿主細胞への導入のために調製されたDNA構築物は、典型的には、所望のポリペプチドをコードする意図されたDNA断片を含む、宿主により認識される複製系(すなわち、ベクター)を含み、そのポリペプチドをコードする部分に作動可能に連結された転写および翻訳開始制御配列もまた含み得る。加えて、そのような構築物は、細胞局在化シグナル(例えば、葉緑体局在化シグナル)を含み得る。好ましい実施形態において、そのようなDNA構築物は、宿主細胞のゲノムDNA、葉緑体DNA、またはミトコンドリアDNAへ導入される。
【0053】
いくつかの実施形態において、1つ以上の導入された遺伝子の発現を誘導するために、一体化されていない発現系を用いることができる。発現系(発現ベクター)は、例えば、複製開始点または自己複製配列(ARS)、ならびに発現調節配列、プロモーター、エンハンサー、および、例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、転写終結配列、およびmRNA安定化配列などの必要なプロセシング情報部位を含み得る。必要に応じて、同じ種または関連種の分泌されたポリペプチド由来のシグナルペプチドもまた、含めることができ、タンパク質が、細胞膜、細胞壁を横断するおよび/もしくはそれらに留まる、または細胞から分泌されることを可能にする。
【0054】
本明細書に開示された本開示の方法論を実行することにおいて有用な選択マーカーは、ポジティブ選択マーカーであり得る。典型的には、ポジティブ選択は、遺伝子改変細胞が、関心の組換えポリヌクレオチドが細胞内に存在している時のみ、毒性物質の存在下で生存できる場合を指す。ネガティブ選択マーカーおよびスクリーニングマーカーもまた当技術分野においてよく知られており、本開示により企図される。当業者は、入手可能な任意の関連マーカーが、本明細書に開示された本発明を実行することにおいて利用され得ることを認識している。
【0055】
本開示の組換え系統のスクリーニングおよび分子分析は、核酸ハイブリダイゼーション技術を利用して実施することができる。ハイブリダイゼーション手順は、本明細書に教示されているように、有用であるのに十分な本制御配列との相同性を有する、本明細書に記載された技術を用いて変更されたものなどのポリヌクレオチドを同定するために有用である。特定のハイブリダイゼーション技術は本開示に必須ではない。ハイブリダイゼーション技術が進歩したため、それらは、当業者によって容易に適用され得る。ハイブリダイゼーションプローブは、当業者に知られた任意の適切な標識で標識することができる。例えば、温度および塩濃度などの、ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件は、変更されて、検出閾値のストリンジェンシーを変化させることができる。ハイブリダイゼーション条件に関するさらなるガイダンスについて、例えば、Sambrook et al.、(1989)下記参照、またはAusubel et al.、(1995)Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、NY、N.Y.を参照。
【0056】
加えて、遺伝子改変系統のスクリーニングおよび分子分析、そして所望の単離された核酸の作製は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて実施することができる。PCRは、核酸配列の反復性の、酵素的な、プライムされる合成である。この手順はよく知られており、当業者に一般的に用いられている(Mullis、米国特許第4,683,195号、第4,683,202号、および第4,800,159号;Saiki et al.、(1985)Science 230:1350~1354参照)。PCRは、標的配列の逆ストランドにハイブリダイズする2つのオリゴヌクレオチドプライマーが隣接する関心対象となるDNA断片の酵素的増幅に基づいている。プライマーは、3’末端がお互いの方を向くように配向される。鋳型の熱変性、プライマーのそれらの相補配列へのアニーリング、およびアニールしたプライマーのDNAポリメラーゼでの伸長の繰り返されるサイクルは、結果として、PCRプライマーの5’末端により定義されるセグメントの増幅を生させる。各プライマーの伸長産物は、他のプライマーの鋳型としての役割を果たすことができるため、各サイクルは、その前のサイクルで産生されたDNA鋳型の量を本質的に倍加する。これは、特定の標的断片の、数時間で数百万倍までの指数関数的蓄積を生させる。好熱性細菌Thermus aquaticusから単離されるTaqポリメラーゼなどの耐熱性DNAポリメラーゼを用いることにより、増幅工程は完全に自動化することができる。用いることができる他の酵素は、当業者に知られている。
【0057】
本開示の核酸およびタンパク質は、また、具体的に開示された配列のホモログを包含することができる。相同性(例えば、配列同一性)は、50%~100%であり得る。場合によっては、そのような相同性は、80%より高く、85%より高く、90%より高く、または95%より高い。配列の任意の意図される使用に必要とされる相同性または同一性の程度は、当業者により容易に同定される。本明細書で用いられる場合、2つの核酸のパーセント配列同一性は、Karlin and Altschul(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264~2268により開示され、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873~5877においてのように変更されたものなど、当技術分野において知られたアルゴリズムを用いて決定される。そのようなアルゴリズムは、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:402~410のNBLASTおよびXBLASTプログラムへ組み入れられている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実施されて、所望のパーセント配列同一性を有するヌクレオチド配列が得られる。比較を目的としたギャップド整列を得るために、Altschul et al.(1997)Nucl.Acids.Res.25:3389~3402に記載されているようなギャップドBLASTが用いられる。BLASTおよびギャップドBLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(NBLASTおよびXBLAST)のデフォルトパラメータが用いられる。www.ncbi.nih.gov参照。
【0058】
好ましい宿主細胞は、植物細胞である。本関連における組換え宿主細胞は、単離された核酸分子を含有するように、正常では宿主細胞内に存在し、かつ機能的な1つ以上の欠失した、もしくは非機能的な遺伝子を含有するように、または少なくとも1つの組換えタンパク質を産生する1つ以上の遺伝子を含有するように、遺伝子変更されている宿主細胞である。本開示のタンパク質をコードする核酸は、特定の細胞型に適切である当技術分野において知られた任意の手段により導入することができ、その手段には、非限定的に、形質転換、リポフェクション、エレクトロポレーション、または当業者により知られた任意の他の方法論が挙げられる。
【0059】
トランスジェニック植物および植物細胞(t-dnaおよび葉緑体発現)
本開示の一つの実施形態は、1つ以上の変更された植物遺伝子および/または導入された遺伝子を含む植物または植物細胞を提供する。例えば、本開示は、葉緑体局在化輸送タンパク質BASS6および/またはPLGG1をコードする遺伝子の機能的発現を欠損するトランスジェニック植物を提供する。加えて、本明細書に提供されるいくつかの植物または植物細胞は、また、細菌由来、植物由来、および藻類由来の遺伝子によりコードされる酵素などの非天然遺伝子を発現する。あるいは、本明細書に提供されるいくつかの植物または植物細胞は、産生されたタンパク質が、それが天然では局在していないオルガネラ(例えば、葉緑体)または他の細胞内コンパートメントに局在するように天然遺伝子を発現することができる。他の遺伝要素(例えば、PLGG1タンパク質産生のノックダウンを生じさせるdsRNA)の発現もまた企図され、本明細書に記載される。
【0060】
遺伝子改変された単子葉および双子葉の植物細胞の形質転換および作製は、当技術分野においてよく知られている。例えば、Weising et al.、Ann.Rev.Genet.22:421~477(1988);米国特許第5,679,558号;Agrobacterium Protocols、Gartland編、Humana Press Inc.(1995);およびWang et al.、Acta Hort.461:401~408(1998)参照。方法の選択は、形質転換される植物の型、特定の適用、および/または所望の結果によって異なる。適切な形質転換技術は、熟練した実行者により容易に選択される。
【0061】
細胞DNA(例えば、ゲノムDNAおよびオルガネラDNA)を欠失させ、挿入し、または変更するための当技術分野において知られた任意の方法論が、本明細書に開示された本発明を実行することにおいて用いることができる。例えば、Agrobacterium tumefaciensにおける、標的遺伝子の欠失または挿入のための遺伝子構築物を含有する非武装Tiプラスミドを用いて、植物細胞を形質転換することができ、その後、形質転換された植物は、当技術分野において、例えば、EP0116718、EP0270822、PCT公開WO84/02913および公開された欧州特許出願(「EP」)0242246号に記載された手順を用いて形質転換植物細胞から再生することができる。Tiプラスミドベクターはそれぞれ、TiプラスミドのT-DNAの境界配列間に、または右境界配列の左側に少なくとも位置する、その遺伝子を含有する。もちろん、他の型のベクターを用いて、直接的遺伝子移入(例えば、EP0233247に記載される)、花粉媒介型形質転換(例えば、EP0270356、PCT公開WO85/01856、および米国特許第4,684,611号に記載される)、植物RNAウイルス媒介型形質転換(例えば、EP0067553および米国特許第4,407,956号に記載される)、リポソーム媒介型形質転換(例えば、米国特許第4,536,475号に記載される)、ならびに他の方法、例えば、トウモロコシ(例えば、米国特許第6,140,553号;Fromm et al.、Bio/Technology(1990)8、833~839);Gordon-Kamm et al.、The Plant Cell、(1990)2、603~618)およびイネ(Shimamoto et al.、Nature、(1989)338、274~276;Datta et al.、Bio/Technology、(1990)8、736~740)の特定の系列を形質転換するための方法、および単子葉植物を一般的に形質転換するための方法(PCT公開WO92/09696)などの手順を使用して、植物細胞を形質転換することができる。ワタの形質転換について、PCT特許公開WO00/71733に記載された方法を用いることができる。大豆の形質転換について、当技術分野において知られた方法、例えば、Hinchee et al.、(Bio/Technology、(1988)6、915)およびChristou et al.、(Trends Biotech、(1990)8、145)またはWO00/42207の方法が参照される。
【0062】
本開示のいくつかの実施形態において、1つ以上の遺伝子は、宿主植物細胞から「ノックアウト」されている。典型的には、これは、標的遺伝子の全ての機能的コピー(例えば、標的遺伝子のコピー数に依存して、2個以上のコピー)の欠失を意味する。標的遺伝子または対立遺伝子が機能性タンパク質を産生することができなくなるような天然配列のいかなる変更も、用語「ノックアウト」に含まれる。そのような変更には、ミスセンス変異、ナンセンス変異、停止コドン変異、挿入変異、欠失変異、フレームシフト変異、およびスプライス部位変異が挙げられるが、それらに限定されない。
【0063】
本開示のトランスジェニック植物は、通常の植物育種方式において、同じ特性を有するより多くのトランスジェニック植物を生産するために、または同じもしくは関連した植物種の他の変種に遺伝子改変を導入するために用いることができる。形質転換植物から得られる種子は、好ましくは、染色体またはオルガネラDNAにおいて安定な挿入物として遺伝子改変を含有する。本開示による遺伝子改変を含む植物には、本開示の遺伝子改変を含む植物の台木を含むまたは由来する植物、例えば、果樹または観賞植物が挙げられる。そのため、形質転換植物または植物部分上に挿入された任意の非トランスジェニックの接木植物部分は本開示に含まれる。
【0064】
発現ベクターまたは発現カセット内のいずれでも、導入された遺伝子の発現を生じさせる導入された遺伝要素は、典型的には、植物発現可能プロモーターを利用する。本明細書で用いられる「植物発現可能プロモーター」は、植物細胞において本開示の遺伝子改変の発現を保証するプロモーターを指す。植物における構成的発現を命令するプロモーターの例は当技術分野において知られており、それには、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)、例えば、分離株CM 1841(Gardner et al.、Nucleic Acids Res、(1981)9、2871~2887)、CabbB-S(Franck et al.、Cell(1980)21、285-294)およびCabbB-JI(Hull and Howell、Virology、(1987)86、482~493)の強力な構成的35Sプロモーター(「35Sプロモーター」);ユビキチンファミリー由来のプロモーター(例えば、Christensen et al.、Plant Mol Biol、(1992)18、675~689のトウモロコシユビキチンプロモーター)、gos2プロモーター(de Pater et al.、The Plant J(1992)2、834~844)、エミュープロモーター(Last et al.、Theor Appl Genet、(1990)81、581~588)、An et al.(The Plant J、(1996)10、107)により記載されたプロモーターなどのアクチンプロモーター、Zhang et al.(The Plant Cell、(1991)3、1155~1165)により記載されたイネアクチンプロモーター;キャッサバ静脈モザイクウイルスプロモーター(WO97/48819、Verdaguer et al.(Plant Mol Biol、(1998)37、1055~1067)、サブタレニアンクローバースタントウイルス由来のプロモーターのpPLEXシリーズ(WO96/06932、特に、S4またはS7プロモーター)、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター、例えば、pAdh1S(GenBankアクセッション番号X04049、X00581)、ならびに、それぞれ、T-DNAの1’および2’遺伝子の発現を駆動するTR1’プロモーターおよびTR2’プロモーター(それぞれ、「TR1’プロモーター」および「TR2’プロモーター」)()(Velten et al.、EMBO J、(1984)3、2723~2730)が挙げられる。
【0065】
あるいは、植物発現可能プロモーターは、組織特異的プロモーター、すなわち、植物のいくつかの細胞または組織、例えば、緑色組織におけるより高いレベルの発現を命令するプロモーター(例えば、PEPカルボキシラーゼのプロモーター)であり得る。植物PEPカルボキシラーゼプロモーター(Pathirana et al.、Plant J、(1997)12:293~304)は、維管束組織における発現のための強力なプロモーターであると記載されており、本開示の一つの実施形態において有用である。あるいは、植物発現可能プロモーターは、また、エンドウマメ細胞壁インベルターゼ遺伝子のプロモーターなどの傷害誘導性プロモーターであり得る(Zhanget al.、Plant Physiol、(1996)112:1111~1117)。本明細書で用いられる「傷害誘導性」プロモーターは、機械的にまたは昆虫摂食によるいずれかでの植物の傷害により、プロモーターの調節下でのコード配列の発現が、そのような植物において有意に増加することを意味する。これらの植物発現可能プロモーターは、エンハンサー要素と組み合わせることができ、エンハンサー要素は、ミニマルプロモーター要素と組み合わせることができ、または望まれる発現プロファイルを保証するために反復した要素を含み得る。
【0066】
いくつかの実施形態において、植物細胞において発現を増加させるために用いることができる遺伝要素を利用することができる。例えば、導入された遺伝子の5’末端もしくは3’末端の、または導入された遺伝子のコード配列中のイントロン、例えば、hsp70イントロンである。他のそのような遺伝要素には、プロモーターエンハンサー要素、2重または3重のプロモーター領域、別の導入遺伝子とは異なるまたは内因性(植物宿主)遺伝子リーダー配列とは異なる5’リーダー配列、同じ植物に用いられた別の導入遺伝子とは異なるまたは内因性(植物宿主)トレーラー配列とは異なる3’トレーラー配列が挙げられるが、それらに限定されない。
【0067】
本開示の導入された遺伝子は、その挿入された遺伝子部分が、適切な3’末端転写制御シグナル(すなわち、転写産物形成シグナルおよびポリアデニル化シグナル)の上流(すなわち、5’側)にあるように宿主細胞DNAにおいて挿入することができる。これは、好ましくは、植物細胞ゲノム(核または葉緑体)にその遺伝子を挿入することにより達成される。好ましいポリアデニル化シグナルおよび転写産物形成シグナルには、形質転換植物細胞において3’-非翻訳DNA配列として働く、ノパリンシンターゼ遺伝子のシグナル(Depicker et al.、J.Molec Appl Gen、(1982)1、561~573)、オクトピンシンターゼ遺伝子のシグナル(Gielen et al.、EMBO J、(1984)3:835~845)、SCSVまたはリンゴ酸酵素ターミネーター(Schunmann et al.、Plant Funct Biol、(2003)30:453~460)、およびT-DNA遺伝子7(Velten and Schell、Nucleic Acids Res、(1985)13、6981~6998)が挙げられる。
【0068】
タンパク質ホモログ
本明細書に開示された特定のタンパク質の様々なホモログは、欠失もしくはノックダウンアプローチのための標的にすること、またはバイパス経路を生み出すために利用することができることは、当業者により理解される。以下は、本明細書に開示された実施形態を実行するために利用することができる、この開示に提供された特定のタンパク質の、非限定的で、例示的なタンパク質ホモログである。
【0069】
BASS6ホモログには、以下(種およびアクセッション番号)の:A.thaliana(NP_567671.1)、A.thaliana(CAA16569.1)、A.lyrata(XP_002867746.1)、Eutrema salsugineum(XP_006413612.1)、Capsella rubella(XP_006282633.1)、Camelina sativa(XP_010433982.1)、Camelina sativa(XP_010448822.1)、Arabis alpine(KFK39256.1)、Brassica oleracea var.oleracea(XP_013593377.1)、Brassica napus(XP_013737613.1)、Brassica rapa(XP_009137288.1)、およびRaphanus sativus(XP_018484108.1)が挙げられる。
【0070】
PLGG1ホモログには、以下(種およびアクセッション番号)の:Arabidopsis thaliana(NP_564388.1)、Arabidopsis thaliana(AAM65181.1)、Arabidopsis lyrata(XP_020868671.1)、Arabidopsis lyrata(EFH69957.1)、Capsella rubella(XP_006307262.1)、Camelina sativa(XP_010478626.1)、Camelina sativa(XP_010461027.1)、Camelina sativa(XP_010499753.1)、Brassica napus(XP_013733826.1)、Raphanus sativus(XP_018457661.1)、Brassica oleracea var.oleracea(XP_013587088.1)、Brassica napus(XP_013731498.1)、Brassica rapa(XP_009114919.1)、Eutrema salsugineum(XP_006415255.1)、Brassica oleracea var.oleracea(XP_013587305.1)、Brassica napus(XP_022559249.1)、Brassica napus(CDY35540.1)、Brassica rapa(XP_009145211.1)、Raphanus sativus(XP_018486680.1)、Arabis alpine(KFK44969.1)、Brassica napus(CDY59206.1)、Brassica napus(XP_013731491.1)、Brassica napus(CDY22583.1)、Tarenaya hassleriana(XP_010518925.1)、Ricinus communis(XP_002519004.1)、Hevea brasiliensis(XP_021652349.1)、Citrus sinensis(XP_006471454.1)、Brassica napus(XP_022575243.1)、およびJuglans regia(XP_018843901.1)が挙げられる。
【0071】
リンゴ酸シンターゼホモログには、以下(種およびアクセッション番号)の:Cucurbita maxima(XP_023000792.1)、Cucurbita pepo(XP_023519701.1)、Cucurbita moschata(XP_022923624.1)、Momordica charantia(XP_022137538.1)、Cucumis sativus(XP_004152519.1)、Cucumis melo(XP_008439505.1)、Theobroma cacao(EOY22418.1)、Juglans regia(XP_018821986.1)、Eucalyptus grandis(XP_010037447.1)、Eucalyptus grandis(KCW49165.1)、Herrania umbratica(XP_021286625.1)、Theobroma cacao(XP_007037917.2)、Arachis duranensis(XP_020997255.1)、Gossypium barbadense(PPR87616.1)、Prunus avium(XP_021800964.1)、Vitis vinifera(XP_002279452.1)、Quercus suber(XP_023901530.1)、Quercus suber(POF20494.1)、Gossypium raimondii(XP_012468378.1)、Cephalotus follicularis(GAV68244.1)、Gossypium barbadense(PPD76680.1)、Capsicum baccatum(PHT53703.1)、Nicotiana tabacum(XP_016464464.1)、Capsicum chinense(PHU23662.1)、Ricinus communis(XP_002511225.1)、Capsicum annuum(XP_016563806.1)、Gossypium arboretum(XP_017604788.1)、Citrus clementina(XP_006440060.1)、Medicago truncatula(XP_013444720.1)、Durio zibethinus(XP_022737455.1)、Trifolium pretense(PNY13237.1)、Medicago truncatula(ACJ85740.1)、Nicotiana tomentosiformis(XP_009595632.1)、Citrus unshiu(GAY51023.1)、Prunus mume(XP_008239432.1)、Prunus sibirica(AIU64851.1)、Prunus persica(XP_020420471.1)、Solanum lycopersicum(XP_004236345.1)、Parasponia andersonii(PON64176.1)、Ricinus communis(NP_001310646.1)、Citrus sinensis(XP_006476991.1)、Glycine max(NP_001347240.1)、Nicotiana attenuate(XP_019261379.1)、Daucus carota subsp.Sativus(XP_017250345.1)、Aquilegia coerulea(PIA33657.1)、Trema orientalis(PON95652.1)、Helianthus annuus(XP_022038983.1)、Macleaya cordata(OVA17558.1)、Nicotiana sylvestris(XP_009776635.1)、Jatropha curcas(XP_012079884.1)、Lupinus angustifolius(XP_019463065.1)、Vigna angularis(XP_017425062.1)、Solanum pennellii(XP_015070973.1)、Glycine soja(KHN14088.1)、Tarenaya hassleriana(XP_010555537.1)、Solanum lycopersicum(XP_010319064.1)、Solanum tuberosum(XP_006351486.1)、Solanum pennellii(XP_015070972.1)、Solanum tuberosum(XP_006351485.1)、Cicer arietinum(XP_004510708.1)、Vigna radiata var.radiate(XP_022639201.1)、Lactuca sativa(XP_023732731.1)、Populus euphratica(XP_011024067.1)、Populus trichocarpa(PNT01248.1)、Carica papaya(XP_021909023.1)、Cajanus cajan(XP_020216385.1)、Nicotiana tabacum(XP_016435566.1)、Olea europaea var.sylvestris(XP_022878435.1)、Malus domestica(XP_008374272.1)、Olea europaea var.sylvestris(XP_022878436.1)、Hevea brasiliensis(XP_021681023.1)、Morus notabilis(XP_010103099.1)、Punica granatum(OWM90581.1)、Arabidopsis thaliana(NP_196006.1)、Arabidopsis lyrata(XP_002873119.1)、Ipomoea nil(XP_019198829.1)、Erythranthe guttata(XP_012854673.1)、Eutrema salsugineum(XP_006398845.1)、Camelina sativa(XP_010490879.1)、Sesamum indicum(XP_011073010.1)、Ziziphus jujube(XP_015878765.1)、Brassica rapa(XP_009125524.1)、Fragaria vesca subsp.Vesca(XP_004297548.1)、Camelina sativa(XP_010423656.1)、Glycine max(XP_003525685.1)、Capsella rubella(XP_006286626.1)、Brassica napus(XP_013720273.1)、Raphanus sativus(XP_018468682.1)、Brassica napus(CDY14170.1)、Arabis alpine(KFK24848.1)、Brassica oleracea var.oleracea(XP_013621105.1)、Solanum tuberosum(XP_006351487.1)、Dorcoceras hygrometricum(KZV21744.1)、Corchorus capsularis(OMO84006.1)、Manihot esculenta(OAY30724.1)、およびBrassica napus(CAA73793.1)が挙げられる。
【0072】
グリコール酸ヒドロゲナーゼホモログには、以下(種およびアクセッション番号)の:Chlamydomonas reinhardtii(XP_001695381.1)、Chlamydomonas reinhardtii(ABG36932.1)、Volvox carteri f.nagariensis(XP_002946459.1)、Gonium pectoral(KXZ46746.1)、Chlamydomonas eustigma(GAX77289.1)、Chlorella variabilis(XP_005852216.1)、Coccomyxa subellipsoidea(XP_005648725.1)、Micromonas commode(XP_002506446.1)、Auxenochlorella protothecoides(XP_011399156.1)、Ostreococcus tauri(XP_003074362.2)、Ostreococcus lucimarinus(XP_001415862.1)、Ostreococcus tauri(OUS42650.1)、Bathycoccus prasinos(XP_007511439.1)、Micromonas pusilla(XP_003063153.1)、Chrysochromulina sp.(KOO33603.1)、およびGuillardia theta(XP_005827919.1)が挙げられる。
【0073】
本発明を一般的に説明してきたが、本発明は、ある特定の具体的な実施例を参照することにより、より良く理解され、その実施例は、本発明をさらに例示するために本明細書に含まれるものであり、特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例0074】
材料および方法
植物材料および成長条件
A.thaliana Columbia(Col-0)を野生型参照として用いた。Salk_03569C(plgg1-1)、CS859747(bass6-1)、およびSalk_052903C(bass6-2)を、Arabidopsis Biological Resource Center(abrc.osu.edu)から入手した。植物を、LC1 Sunshine Mixを用いるグロースチャンバー(Conviron、USA)において、上昇したCO(2000ppm CO)または環境CO(400ppm CO)のいずれかで、8時間明期/16時間暗期のサイクル(22℃/18℃)、250μmol・m-2・s-1 PAR、および65%相対湿度(RH)で成長させた。
【0075】
クロロフィル蛍光測定
Arabidopsis植物を、環境大気条件下で成長させ、クロロフィル蛍光測定の前に、(Badgerら et al.2009)と同様に、低CO条件、一定照明下で、24時間、密封された透明のプラスチック容器へ移した。クロロフィル蛍光測定を、以前に記載したように(Oxborough and Baker、Plant、Cell & Environ.(1997)20:1473~83;Badger et al.、supra)行った。簡単に述べれば、週齢4週間の植物の15分間の暗順応後、CF Imager Technologica(www.technologica.co.uk)を用いてFv/Fm画像を取得した。最大フラッシュ強度は、800ミリ秒間の6800μmol・m-2・s-1であった。各個々の植物について、画像値を、各位置を定義するfluorimagerソフトウェアプログラム内でコロニーを検出することにより、取得した。
【0076】
クローニング
全ての発現ベクターを表2に記載した。プロモーターおよびオープンリーディングフレームを、The Arabidopsis Information Resource(TAIR)から得られた配列に基づいて合成した。制限部位および相同性の4塩基対領域を、植物合成生物学における一般的なシンタックスに従って設計した(Patronら、New Phytol.(2015)208:13~19)。次に、構築物を、Golden Gateクローニングプロトコールを用いて集め、その後、バイナリーベクター(EC50505)へサブクローニングした(Werner et al.、Bioengineered(2012)3:38~43;Engler et al.、ACS Synth.Biol.(2014)3:839~43;Marillonnet and Werner、Glyco-engineering、A.Castilho編(Springer New York)269~84ページ(2015);Patron et al.、supra)。安定的形質転換について、バイナリーベクターを、Agrobacterium tumefaciens C58C1へエレクトロポレーションにより形質転換し、その後、Col-0野生型系統、plgg1-1またはbass6-1 T-DNA挿入系列へフローラルディップにより形質転換した(Clough and Bent、Plant J.(1998)16:735~43)。形質転換系列を、BASTA抵抗性に基づいて選択し、遺伝子挿入を、PCR分析により検証した。一過性発現について、上記のように、CaMV35sプロモーターにより駆動され、C末端GFP融合を有する構築物を設計した。
【0077】
【表2】
【0078】
単離されたプロトプラストにおける一過性発現研究について、BASS6-GFP構築物を以下のようにクローニングした。mGFP6(Haseloff,J.、Method Cell Biol.(1999)58:139~51)、6xHIS、およびMYCを含有するC末端タグと共に、A.thaliana Bass6(AT4G22840)のコード配列が、GENEWIZ Inc.により合成され、それを、改変型gateway適合性pUC57プラスミドに挿入し、そこからpMDC32中に組み換えた。AtPLGG1-GFP構築物は、以前に発表された(Rolland et al.、Front.Plant Sci.(2016)7:185)。
【0079】
Nicotiana benthamianaのAgro浸潤および顕微鏡観察
成長および浸潤実験は(Rolland et al.、上記)に記載されている。簡単に述べれば、Agrobacterium tumefaciens GV3101(pMP90)を、関心対象となるプラスミドで形質転換し、リファンピシン(50μg/ml)およびカナマイシン(30μg/ml)を含有するLB培地中で成長させた。培養物を、28~30℃のインキュベータ内で約24時間、成長させ、N.benthamianaの葉の形質転換に用いた。P19を含有する細菌(OD600=0.3)を、関心対象となるプラスミドおよび/またはERコンパートメントマーカー(OD600=0.5)(Arabidopsis Biological Resource Center(http://abrc.osu.edu)からのプラスミドCD3-959(Nelsonら、2007))を含有する細菌と混合した。細胞を、2150 x gで8分間、遠心分離し、再懸濁した(10mM MES pH5.6、10mM MgCl、および150μMアセトシリンゴン)。細胞を室温で2時間、インキュベートし、週齢3~4週間のN.benthamianaの葉へ浸潤させた。
【0080】
プロトプラスト調製物を、以前に記載されているように完成させた(Rolland et al.、supra)。浸潤から2日後、浸潤された葉の4cm区域を、小刀で切り取り、5mlシリンジに移し、それに2mlの消化溶液を添加し、穏やかな減圧を手作業で加えた。浸潤溶液および葉組織を、2ml Eppendorfチューブへ移し、室温で1時間、インキュベートした。葉のデブリを除去し、溶液を画像化溶液(0.4Mマンニトール、20mM KCl、20mM MES pH5.6、10mM CaCl2、0.1%[w/v]BSA)と交換する前に、プロトプラストを沈降させた。
【0081】
プロトプラストを、正立Zeiss LSM780共焦点レーザー走査顕微鏡(Carl Zeiss)、40×水浸対物レンズ(NA=1.1)およびZen 2011ソフトウェアパッケージ(Carl Zeiss)を用いて観察し、画像化した。GFPおよびクロロフィルを488nmで励起し、それぞれ、499~534nmおよび630~735nmで記録した。別個のトラックにおいて、mCherryを561nmで励起し、579~633nmで記録した(本研究においては示さず)。
【0082】
記載される浸潤された葉組織からスライスされた葉組織全体を、40×対物レンズ(NA=1.0)、Zen light sheetソフトウェアパッケージ(Carl Zeiss)を用いるLight sheet Z1(Carl Zeiss INC.Oberkochen、Germany)顕微鏡を用いて、可視化した。GFPおよびクロロフィルを488nmで励起し、発光選択を、それぞれ、505~545nmおよび660nmで記録した。
【0083】
代謝プロファイリング
代謝産物分析について、約40mgの新鮮な葉組織を液体窒素中で凍結させ、粉砕し、その後、500μLの100%メタノールで抽出した。次に、試料を、Urbana-ChampaignにおけるMetabolomics Center、Roy J.Carver Biotechnology Center、University of Illinoisへ提出し、その後、そこで、以下の:イソプロパノール:アセトニトリル:水(3:3:2 v/v)、およびクロロホルム:メタノール(2:2 v/v)の2つの追加の抽出が実施された。Agilent 7890ガスクロマトグラフ、Agilent 5975質量選択検出器、およびHP 7683BオートサンプラーからなるGC-MSシステム(Agilent Inc.、CA、USA)を用いて、代謝産物を分析した。ガスクロマトグラフィを、ZB-5MS(60m×0.32mm I.D.および0.25umフィルム厚さ)キャピラリーカラム(Phenomenex、CA、USA)で実施した。入口およびMSインターフェイス温度は250℃であり、イオン源温度を230℃に調整した。1μLのアリコートを、10:1のスプリット比で注射した。ヘリウムキャリアガスを、2ml/分の一定流速に保った。温度プログラムは以下の:5分間の70℃での等温加熱、続いて、310℃まで5℃/分のオーブン温度上昇、および310℃での最終の10分間であった。質量分析計を、陽電子衝撃モード(EI)において、69.9eVイオン化エネルギー、m/z 30~800スキャン範囲で操作した。全てのクロマトグラムピークのスペクトルを、電子衝撃質量スペクトルライブラリーNIST08(NIST、MD、USA)、W8N08(Palisade Corporation、NY、USA)、および特注のデータベース(464個の固有の代謝産物)と比較した。全ての既知の人工ピークを同定し、除去した。試料間での比較を可能にするために、全てのデータを、各クロマトグラムおよび試料湿重量において内部標準に対して標準化した。全てのクロマトグラムピークのスペクトルを、AMDIS 2.71(NIST、MD、USA)プログラムを用いて評価した。代謝産物濃度を、1グラム湿重量あたりの内部標準に対する濃度(すなわち、ヘントリアコンタン酸のピーク面積で割った、標的化合物ピーク面積:N=X*X-1IS)として報告した。計器変動は、5%の標準合格限界内であった。
【0084】
光合成測定
上昇した[CO]で成長した日齢30~40日間のArabidopsis植物の最も若い完全展開した葉を、ガス交換による光合成の分析に用いた。ガス交換測定を、マニュアル(LI-COR Biosciences、Lincoln、NE、USA)に概略が述べられているように、ガスケット漏れを補正した2cm蛍光測定ヘッドを有するLi-COR 6400XTを用いて実施した。25℃の葉温度および飽和光(1000μmol・m-2・s-1)において、示されたCO濃度においてA、g、およびC測定値を得た。環境CO下での順化後、上記で述べられた同じ温度および光条件下、COの範囲(50~2000ppm)においてAC曲線を測定した。Vc Max、JMax、およびgを、ACデータおよびPsFitモデルを用いて決定した(Bernacchi et al.、Plant Cell.Environ(2003)26:1419~1430)。
【0085】
RT-PCR
8時間/16時間の昼夜サイクル下、180μmol・m-2・s-1 PARおよび22℃/18℃温度状態、65%RHにおいて成長した週齢4週間のArabidopsis植物の、植物RNeasy抽出キットおよびQuantitec逆転写キット(QIAGEN USA)を用いて抽出されたRNAから、cDNAを作製した。それぞれ3つの技術的複製を含む3つの生物学的複製を、全ての試料に用いた。Bio-Rad CFX connectリアルタイムPCRシステム(Bio-Rad laboratories、USA)を用いて試料を分析し、転写産物における相対的変化を、ビオラキサンチンデエポキシダーゼ(VDE)、Plgg1、およびBass6の転写産物へ方向づけられたプライマーを用いるΔΔCt方法を用いて決定した。cDNAを、SSO advanced SYBR green master mix(Bio-Rad)を用いて増幅し、プライマー配列は表3に記載されている。
【0086】
【表3】
【0087】
酵母相補性およびグリコール酸取り込み
酵母プラスミドを、以前記載されているように(South et al.、J.Biol.Chem.(2010)285:595~607)、構築した。簡単に述べれば、RNAをCol-0野生型Arabidopsisから取得し、RNeasy抽出キットおよびQuantitec逆転写キット(QIAGEN、Hilden、Germany)によりcDNAへ変換した。葉緑体局在化シグナル(1~24)無しの完全長Bass6およびPlgg1のCDS配列を、表3に記載されたプライマーを用いるPCRにより増幅した。PCR産物を、pRS415-ADH1ベクター(ATCC、VA USA)へBamHIおよびXhoI制限部位を用いてクローニングした。酵母形質転換を、以前記載されているように、BY4741 mat a野生型およびady2Δ系統(GE Dharmacon)を用いて実施した(South et al.、supra;Southら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA(2013)110:E1016~E1025)。
【0088】
ady2Δ系統の相補を、炭素源としてグリコール酸を用いて成長分析を比較することにより実施した。野生型、およびBass6、Plgg1、または空ベクターの発現プラスミドで形質転換されたady2Δ系統を、ロイシンを欠く合成完全培地(SC-Leu)中の50mL培養物において、0.6から0.8の間のOD600の光学密度に達するまで成長させ、その後、細胞を水中で2回、洗浄し、水中で再懸濁した。炭素源として2%グルコース、乳酸塩、またはグリコール酸塩を含有するSC-Leuプレート上でスポットアッセイを実施した。0.1のOD600から開始した5つの10倍段階希釈溶液を用いて、5μLスポットをプレート上に滴下した。その後、プレートを30℃でインキュベートした。プレートの写真を、1日目(グルコース)、2日目(乳酸塩)、7日目(グリコール酸塩)に撮影した。
【0089】
グリコール酸取り込み測定を、以前記載したグリセロール取り込み(Oliveira et al.、FEMS Microbiol.Lett.(1996)142:147~53)と同様に実施した。酵母系統を、30℃、SC-Leu中50mL培養物において、0.6から0.8の間のOD600の光学密度に達するまで、成長させた。細胞を収集し、水で2回、洗浄し、100mM Tris/クエン酸バッファーpH5.0中、30mg/mlの乾燥重量の濃度で再懸濁した。25℃での2分間のインキュベーション後、50mCi/mmol(3.7*10[Bq]合計)[14C]-グリコール酸(American Radiolabeled chemicals、MO USA)の1μL水溶液を含有する(SC-Leu/グリコール酸塩)の150μL添加で反応を開始した。10分後、5mLの氷冷水の添加により反応を停止させた。その後、反応混合物を、ガラス繊維フィルター(Fisher Scientific USA)で濾過し、5mLの氷冷水で3回、洗浄した。[14C]-グリコール酸塩取り込みを、フィルターおよび4mLのシンチレーション液(RPI Bio-safe II)を用いるシンチレーションにより、Packard Tri-Carb液体シンチレーションカウンター(Perkin Elmer USA)を用いて測定した。
【0090】
統計解析
全ての実験は少なくとも3つの生物学的複製を有し、データは平均値を示す。相対的成長分析およびmRNAレベルの相対的変化は、標準偏差およびstudentのT検定を用いた有意性を含む。代謝産物分析および光合成測定値を、P<0.05の有意性閾値での一元配置ANOVA(遺伝子型)または二元配置ANOVA(CO処理による遺伝子型)のいずれかにより解析した。全てのANOVAの後にTukeyのpost-hoc検定を行い、統計ソフトウェア(OriginPro 9.1、OriginLab、MA USA)を用いて決定した。
【実施例0091】
Arabidopsis bass6変異体表現型の分析
推定葉緑体内膜タンパク質BASS6の発現を欠損する、遺伝子At4g22840を標的にする2つの独立したT-DNA挿入系列を分析した。BASS6が光呼吸に関与するかどうかを決定するために、2つのT-DNA系列(bass6-1およびbass6-2)を、環境CO(400ppm)条件下で成長させた。野生型対照と比較して、両方のbass6変異体系列は、光呼吸に関与するグリコール酸/グリセリン酸トランスポーター変異体plgg1-1と類似して、より小さいロゼットのサイズを示した(図2-環境CO(グロースチャンバー内で、8週間、400ppm CO 8時間明期/16時間暗期のサイクル(22℃/18℃)、250μmol・m-2・s-1光強度)で成長した、WTと比較した、bass6およびplgg1変異体の代表的な写真)。低濃度のCO下での光呼吸変異体の照明は、光化学系IIへの光損傷に起因した可能性がある、暗順応したFv/Fmクロロフィル蛍光の低下を生じた(Badgeret al.、supra)。plgg1-1系列とbass6-1系列のどちらも、一定照明下での24時間後、野生型と比較して、Fv/Fmの有意な低下を示したが、低[CO]処理前にはFv/Fmの低下は観察されなかった(図3)。光呼吸変異体表現型を検証するために、bass6-1変異体の成長分析を、低いCO、環境CO、および上昇したCOにおいて実施した。古典的な光呼吸変異体表現型と一致して、bass6-1変異体とplgg1-1変異体のどちらも、125ppm COにおいて成長しなかった(図4B)。環境CO条件下では、bass6-1 T-DNA系列とplgg1-1 T-DNA系列のどちらも、野生型対照と比較して、遅い成長の表現型を示した(図4Aおよび4B)。重要なことに、その遅い成長表現型は、高い[CO]条件で成長した時、bass6-1変異体とplgg1-1変異体のどちらにおいても野生型表現型へと回復された(図4Aおよび4B)。
【0092】
光呼吸経路における変異体は、野生型またはほぼ野生型の成長のために高レベルのCOを必要とする場合が多く、それは、RubisCO酸素化反応が非常に低いレベルに抑制されている状態である(Timm and Bauwe、supra)。環境[CO]において、光呼吸変異体は、一般的に、炭素同化作用(A)、Rubisco Vc max、およびJmaxのパラメータの低下により特徴づけられる光合成の低下を示す。以前の報告(Pick et al.、supra;Walker et al.、Photosyn Res.(2016)129:93~103)と同様に、plgg1-1は、野生型と比較してより低い光合成速度を示した(図5)。bass6-1植物もまた、WTと比較して、環境[CO]において光合成のわずかな低下を示し、内部CO濃度(C)も気孔伝導度(g)も検出可能な変化はなかった(図5)。bass6-1系列およびplgg1-1系列の光合成への生化学的制限を評価するために、葉内の細胞内[CO](C)における炭素同化作用(A)の応答を調べた。一点光合成測定値と一致して、bass6-1とplgg1-1のどちらも、Vc maxおよびJmax値を減少させた(表3)。表4について、文字は、ANOVA解析p≦0.5に基づいた統計的差を示す。VMaxは、Rubiscoにより許容される最大カルボキシル化速度;J Maxhs、光合成電子伝達の最大速度;Rは、日呼吸;gは、気孔伝導度である。bass6-1系列における光合成速度の低下は、plgg1-1変異体においてと同じではなく、bass6-1対plgg1-1変異体植物の比較によるロゼットのサイズおよび成長速度と一致している(図2および図4A図5および表4と比較する)。
【0093】
【表4】
【0094】
plgg1-1の以前の特徴づけにより、plgg1-1変異体は、高レベルのCOで成長し、その後、環境大気にシフトされた場合、それらの葉に葉緑体病変が発生することが示された(Pick et al.、supra)。クロロフィル蛍光Fv/Fm検出を用いて、葉緑体病変は、環境大気条件における3日後に、検出可能である。以前の研究に一致して、plgg1-1変異体は、環境大気へのシフト後、葉上に病変が発生する(図6A)。bass6-1変異体単独は、移動後3日目、または長くも7日目における環境COへのシフト後、葉に観察可能な葉緑体病変を発生させないが(図6A)、bass6-1とplgg1-1交雑種のホモ接合性F3世代は、相加的光呼吸変異体表現型と一致して、plgg1-1系列単独と比較して、より重度に葉緑体病変が発生する(図6Aおよび図6B)。bass6、plgg1の二重変異体における葉緑体病変の重症度の倍加の観察により、本発明者らは、相加的発育異常および光合成速度のさらなる低下もあると仮定した。予想された通り、F3二重変異体植物において観察された成長表現型は、さらなる減少を示し、光合成速度の低下は、PLGG1機能とBASS6機能の両方が欠損する場合、相加的であると思われる(図8Aおよび図8B)。
【実施例0095】
BASS6タンパク質は葉緑体包膜に局在する
以前の研究は、BASS6タンパク質が葉緑体包膜に局在することを示唆しているが、細胞内位置予測プログラムは、BASS6のミトコンドリア局在をより強く支持した(Gigolashvili et al.、supra)。BASS6タンパク質の局在化を決定するために、BASS6-GFP融合タンパク質の一過性発現を、Nicotiana benthamianaにおけるプロトプラストと葉組織全体の両方において分析した。クロロフィル自己蛍光を用いて、葉緑体を同定した(図7、パネルB、E、H、およびK)。BASS6-GFPシグナルは、既知のグリコール酸/グリセリン酸トランスポーターPLGG1(図7、パネルD~F)と同様に、葉緑体自己蛍光を囲み(図7、パネルG~I)、BASS6が葉緑体包膜に局在していることを示している。さらに、BASS6-GFPまたはPLGG1-GFPのいずれの発現も、形が葉緑体内包膜に局在したタンパク質の典型であるストロミュール(図7、パネルD~Iにおける星印の付いた矢じり)の形成を誘導した(Breuers et al.、Frontiers Plant Sci.、(2012)3:7)。葉組織全体からの光シート顕微鏡法実験は、また、葉緑体包膜および追加の非葉緑体領域への局在化を示したが、これは一過性過剰発現に起因した可能性がある(図7、パネルJ~L)。追加の対照として、GFP対照タンパク質を、BASS6-GFPと比較し、BASS6が、サイトゾルに局在しないことを示した。
【実施例0096】
bass6-1代謝産物プロファイルの分析
RubisCO酸素化速度が相当にある場合、光呼吸に欠陥を有する変異体植物は、光呼吸経路内に様々な代謝産物中間体を蓄積する。光呼吸経路においてBASS6の輸送ステップを同定するのを助けるために、高い(2000ppm)または低い(150ppm)[CO]のいずれかに曝された葉組織において代謝産物プロファイルを分析した。高い[CO]条件下での野生型対照と比較して、bass6-1系列は、アミノ酸セリンの増加を示し、一方、以前に報告されたplgg1-1系列は、高いCO濃度においてさえも、グリコール酸、グリシン、およびグリセリン酸などの複数の光呼吸中間体を蓄積した(図9)。葉が低レベルのCOに曝されてRubisCO酸素化速度を増加させた場合、bass6-1におけるグリシンおよびグリコール酸のレベルは、野生型と比較して、有意に増加した(図9)。比較として、bass6-1は、葉が低レベルのCOに曝された場合、plgg1-1植物と同様のグリシンレベルを蓄積した(図9)。
【0097】
BASS6およびPLGG1の組み合わされた欠損が光呼吸中間体のレベルの相加的増加をもたらすかどうかを決定するために、plgg1-1系列とbass6-1系列の間のホモ接合性F3交雑種を、野生型およびそれぞれの単一変異体と比較した。F3二重変異体は、野生型および単一変異体系列と比較して、グリコール酸蓄積の有意な増加、およびplgg1-1単一変異体と類似したグリセリン酸などの他の中間体の増加を示す(図9)。代謝産物プロファイルデータは、BASS6機能の喪失が、光呼吸代謝産物の蓄積を生じ得ることを示している。加えて、BASS6機能とPLGG1機能の両方の喪失は、グリコール酸蓄積のさらなる増加を生させる。低いCO条件に曝された場合の光呼吸代謝産物の蓄積は、遅い成長表現型、および光呼吸代謝におけるBASS6の役割と一致している。
【0098】
光呼吸は光依存性経路である。plgg1-1 Arabidopsis系列の代謝産物分析により、葉緑体におけるグリコール酸エクスポートとグリセリン酸インポートの両方の障害と一致して、グリコール酸、グリシン、セリン、およびグリセリン酸の光依存性蓄積が示された(Pick et al.、supra)。環境大気下での夜の間、plgg1-1変異体におけるグリコール酸およびグリシンのレベルは、野生型レベルに戻り、グリセリン酸の有意な低下があった(Pick et al.、supra)。野生型およびplgg1-1と比較して、bass6-1植物およびF3二重変異体植物におけるグリコール酸、グリセリン酸、およびグリシンのレベルの変化を決定するために、高い[CO]から環境大気へのシフト後、成長光周期の終わりにおける明から暗への移行直後に、代謝産物分析を実施した。plgg1-1変異体は、明期の終了後、グリコール酸レベルの低下を示す(図10)。bass6-1植物の代謝産物プロファイルにより、明期の終了時点におけるグリコール酸およびグリセリン酸の蓄積が示され、それらは、10分以内に有意に低下した(図10)。グリコール酸の蓄積は、plgg1-1植物と比較して、F3-bass6、plgg1二重変異体において有意に増加したが、F3変異体におけるグリシンおよびグリセリン酸レベルは、plgg1-1変異体と非常に類似した。BASS6の葉緑体内包膜への局在化とこれらを合わせて考えると、PLGG1およびBASS6は共に、グリコール酸の葉緑体からのエクスポートを担うことが強く暗示している。
【実施例0099】
BASS6およびPLGG1は、グリコール酸を炭素源とした、酵母の成長を救出する
酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて既知のグリコール酸トランスポーターはないが、酢酸トランスポーターADY2は、酢酸とグリコール酸の両方を輸送することが知られているEscherichia coli yjcGと相同である(Gimenez et al.、J.Bacteriol.、(2003)185:6448~55)。したがって、本発明者らは、BASS6とPLGG1の両方を発現する酵母ベクターを作製し、それらを、野生型BY4741と同質遺伝子的ady2Δ系統の両方において発現させた。成長を測定するスポットアッセイにより、空ベクターのみを発現するady2Δ系列は、グリコール酸を唯一の炭素源として成長することはできないことを示した(図11)。予想された通り、ady2Δ酵母系統におけるPLGG1の発現は、唯一の炭素源としてグリコール酸を用いて、成長を野生型のレベルまで戻して救出した(図11)。Bass6遺伝子の発現もまた、ady2Δ系統において成長を救出し、BASS6がグリコール酸輸送を補完し得るという証拠を示した(図11)。炭素源としてグルコースおよび乳酸を用いる対照は、酵母におけるBASS6およびPLGG1の発現が成長にネガティブには影響しないこと、およびady2Δ系統が両方の炭素源を利用できることを示している(図11)。
【0100】
BASS6およびPLGG1がグリコール酸を炭素源とした成長について酵母を補完し得るという所見に基づいて、本発明者らは、両方のタンパク質の輸送能力を決定しようとした。酵母で発現したBASS6およびPLGG1の輸送特性を試験するために、本発明者らは、[14C]-グリコール酸を用いる取り込み実験を実施した。[14C]-グリコール酸を、クエンチングおよびシンチレーションカウンティングの前の10分間、インキュベートした。PLGG1タンパク質の発現は、野生型とady2Δ系統の両方においてグリコール酸の取り込み能力の増加を示し、BASS6タンパク質の発現も同様であった(図12)。データより、酵母で発現したBASS6とPLGG1のどちらも、グリコール酸取り込み欠損ady2Δ変異体において成長の救出をもたらす膜貫通グリコール酸輸送を促進することが示されている(図12)。
【実施例0101】
遺伝子発現への効果
ArabidopsisにおけるBass6またはPlgg1のいずれかの欠損は、環境またはより低い[CO]大気において、野生型と比較して成長速度が低下した光呼吸変異体表現型をもたらす(図2)。加えて、BASS6およびPLGG1の発現を欠損する二重変異体植物は、植物の成長する能力をさらに低下させた(図6A)。BASS6またはPLGG1のいずれかの欠損は光呼吸表現型を生じさせたが、いずれのT-DNA挿入系列も、多数の他の光呼吸変異体に関して見られたように、環境大気において成長した場合、致死性ではなかった。これは、輸送過程における重複性、および1つの遺伝子の欠損の別の遺伝子発現の増加による補完によるものであり得た。Bass6またはPlgg1の欠損が他の遺伝子の発現の変化を生じるかどうかを試験するために、リアルタイムPCR(RT-PCR)実験を実施した。plgg1-1系列において、野生型と比較して、Bass6発現における検出可能な差はなかった(図13)。しかしながら、Plgg1の発現は、bass6-1系列において野生型に対して4.8倍増加し、Plgg1発現が、BASS6の欠損により引き起こされた代謝変化を補完するように顕著に増加したことを示唆している(図13)。Plgg1発現がbass6-1植物において増加したことを決定した後、Plgg1発現の変化が、plgg1-1と比較してbass6-1においてそれほど重篤ではない表現型が観察されることの理由であると仮定した。このことにより、Bass6またはPlgg1のいずれかの発現が、単一変異体のそれぞれの遅い成長表現型を潜在的に補完し得るかどうかを試験することに至った。
【0102】
また、plgg1-1系列表現型またはbass6-1系列表現型のいずれかが別の変異によるという可能性を除外するために、Plgg1およびBass6を、また、plgg1-1系列およびbass6-1系列へ、それらの天然プロモーターの調節下に形質転換させた。Bass6のそれ自体のプロモーターの調節下またはPlgg1プロモーターの調節下でのBass6の発現は、bass6-1系列における成長速度表現型を救出し、BASS6の欠損が、光呼吸表現型の原因であることを確認した(図13)。加えて、Plgg1のそれ自体のプロモーターの調節下での発現は、その光呼吸表現型を救出する(図13)。しかしながら、Plgg1の発現プラスミドのbass6-1系列へ形質転換することは、bass6-1変異体と比較して、成長速度の有意な変化を示さなかった(図13)。これは、PLGG1の多すぎる発現は、植物成長にネガティブな影響を生じさせ得ること、および内因性Plgg1遺伝子の発現が野生型と比較してすでに増加していることの事実によるものであり得る(Yang et al.、supra;図13)。興味をそそることに、Bass6のその天然プロモーターの調節下での発現は、空ベクターと比較して、plgg1-1系列の成長速度を若干増加させたが、野生型レベルまで戻すところまで完全には救出されなかった(図13)。
【実施例0103】
植物成長および収量を増加させるための合成バイパス経路を通してのグリコール酸フラックスの増強
植物材料
Nicotiana tabacum c.v.「Petite Havana」を、標準方法論を用いたAgrobacterium tumefaciens媒介性形質転換を用いて(Glowacka et al.、Plant Cell Environ.、(2016)39:908~17)、形質転換し、18個のバイナリープラスミドが、表5に記載および列挙されているように、構築された。以下の:(TSR)タルトロン酸セミアルデヒドレダクターゼ、(Spm)トウモロコシサプレッサー-ミュテータ-転位可能エレメントプロモーター(Maize Supressor-mutator transposable element promoter)、(RbcS)Rubisco小サブユニットプロモーターおよびシグナルペプチド、(Ocs)Agrobacteriumオパインシンターゼ、(GdD)E.coliグリコール酸デヒドロゲナーゼサブユニットD、(Act2)アクチン2プロモーターおよびターミネーター、(35s)カリフラワーモザイクウイルス35sプロモーターおよびターミネーター、(Pgm)ホスホグルコムターゼシグナルペプチド、(GdE)E.coliグリコール酸デヒドロゲナーゼサブユニットE、(GdF)E.coliグリコール酸デヒドロゲナーゼサブユニットF、(Gcl)グリオキシル酸カルボリガーゼ、(GO)グリコール酸オキシダーゼ、(MS)リンゴ酸シンターゼ、(Cat)カタラーゼ、(Nos)Agrobacteriumノピン(Nopine)シンターゼプロモーターおよびターミネーター、(2×35S)二重35sプロモーター、(Ubi)ユビキチンプロモーターが略語として表で利用されている。
【0104】
以前に報告されているように(Kebeish et al.、Nat.Biotechnol.(2007)25:593~99;Maier et al.、Front.Plant Sci.、(2012))、バイパス経路1遺伝子は、E.coliに由来し、バイパス経路2遺伝子は、植物およびE.coli供給源に由来した。本発明者らは、グリコール酸デヒドロゲナーゼについてChlamydomonas reinhardtiiに由来した遺伝子(配列番号44)およびリンゴ酸シンターゼについてCucurbita maximaに由来した遺伝子(配列番号42)を利用する異なる経路であるバイパス経路3を開発した。これらの遺伝子と共に、本発明者らは、Solゲノミクスネットワーク(solgenomics.net)から引き出された300bpのエクソン配列(配列番号46)を用いて設計されたA.thaliana由来の色素体グリコール酸/グリセリン酸トランスポーターPLGG1を標的にするRNAiモジュールを開発した。全てのバイナリープラスミドは、植物形質転換についての選択マーカーとしてBASTA resistance(bar)遺伝子を含有した。最低限10個の独立したT形質転換が発生し、T子孫を産生した。T-DNAコピー数を、デジタルdroplet PCR分析によるか、またはqRT-PCR分析(iDNA genetics、Norwich UK)を通してかのいずれかで、T上で決定した。これらの結果から、最低限5個の独立した形質転換事象を選択して、自家受粉させ、T子孫を産生した。各形質転換事象について単一インサートホモ接合性系列を検証するために、再び、コピー数分析を実施した。
【0105】
【表5】
【0106】
クロロフィル蛍光測定
タバコ種子を、管理環境チャンバー(Environmental Growth Chambers、Chagrin Falls、Ohio、USA)内、14時間昼(25℃)/10時間夜(22℃)および500μmol m-2-1の光強度で、必須ビタミンを含むムラシゲスクーク(MS)プレート上、環境大気下で発芽させた。発芽から8日後、実生プレートを、管理環境グロースチャンバー内の特注で組み立てられた低COチャンバーへ移した。光レベルを、24時間、1200μmol m-2-1へ増加させ、CO濃度を35μbar未満に維持した。Fv’/Fm’を、CF Imager Technologica(www.technologica.co.uk)を用いて各プレート上で決定した。最大フラッシュ強度は、800ミリ秒間、6800μmol・m-2-1であった。以前に記載されているように(South et al.、Plant Cell(2017)29:808~823;Badger et al.、Funct.Plant Biol.(2009)36:867~73;Schmidt & Delaney、Mol.Genet.Genomics(2010)283:233~41)、各位置を定義するfluorimagerソフトウェアプログラム内でコロニーを検出することにより、各個々の植物について画像値を得た。
【0107】
遺伝子発現およびタンパク質検出
植物を、下に記載された温室または圃場条件下で成長させた。5つの葉片を、系列あたり3つの植物から採取した(2.9cm、約100mg)。RNAおよびタンパク質を、同じ葉試料からNucleoSpin RNA/タンパク質キット(Macherey-Nagel GmbH & Co.KG、Duren、Germany)を用いて抽出した。cDNAを、抽出されたRNAからQuantinova逆転写酵素キット(QIAGEN、USA)を用いて作製した。それぞれ3つの技術的複製を含む最低限3つの生物学的複製を、全試料について用いた。遺伝子発現を、Bio-Rad CFX connectリアルタイムPCRシステム(Bio-Rad Laboratories、USA)を用いて分析した。転写産物の相対的変化を、導入遺伝子転写産物および標準対照遺伝子としてのL25遺伝子へ方向づけられたプライマーを用いてΔΔCt方法を用いて決定した(Brooks and Farquhar、Planta(1985)165:397~406)。cDNAを、SSO advanced SYBR green master mix(Bio-Rad)および表6に記載されたプライマー配列を用いて増幅した。
【0108】
【表6】
【0109】
バイパス3からの総タンパク質、または液体窒素中で粉砕され、植物プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma-Aldrich)を加えた溶解バッファー(50mM Hepes pH7.6、300mMスクロース、2mM MgCl)中で再懸濁された凍結葉材料からの総タンパク質を、上記のNucleospinタンパク質/RNAキットを用いて抽出した。タンパク質を、タンパク質定量アッセイ(Macherey-Nagel GmbH & Co.KG、Duren、Germany)を用いて定量した。レーンあたり3μgのタンパク質を負荷し、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)により分離した。PAGEゲルをPVDF膜(Immobilon-P、Millipore、USA)にBio-Rad semi-dry transfer systemを用いて転写した。6%ミルクTBS-T溶液中でのブロッキング後、膜を、リンゴ酸シンターゼ(MS)およびPLGG1(Agrisera、Vannas、Sweden)およびグリコール酸デヒドロゲナーゼ(GDH)(Genscript、USA)に対して産生されたカスタム抗体でインキュベートした。タンパク質負荷対照として、Rubiscoの大サブユニット(RbcL)に対して産生された市販の抗体を用いた(Agrisera、Vannas、Sweden)。その後の洗浄および抗ウサギ二次抗体(Bio-Rad、USA)とのインキュベーション後、化学発光を、ImageQuant LAS4010スキャナ(GE Healthcare Life Sciences、Pittsburgh、USA)を用いて検出した。
【0110】
成長分析(温室)
光呼吸の3つのバイパスが成長能力および成長速度の増加を生させるかどうかを決定するために、茎の高さおよび乾燥重量バイオマスを決定した。単一インサートT種子を、LC1 sunshine mix(Sun Gro 202 Horticulture、Agawam、MA、USA)上で発芽させた。発芽から10日後、実生を、徐放性肥料(Osmocote Plus 15/9/12、The Scotts Company LLC、Marysville、OH、USA)を追加したLC1 sunshine mixを含む4Lのポット(400C、Hummert International、Earth City、MO、USA)に移した。ポットを温室内でランダム化し、各灌水前に位置を変化させた。温室内の光強度を、量子センサー(LI-190R、LI-COR、Lincoln、Nebraska、USA)を用いて測定した。大気温度、相対湿度、および[CO2]を、複合型温度湿度センサー(HMP60-L、Vaisala Oyj、Helsinki、Finland)、および赤外線ガスアナライザ(SBA-5、PPsystems、Amesbury、MA、USA)を用いて測定した。全ての気候データを、データロガー(CR1000、Campbell Scientific Inc、Logan、UT、USA)を用いて記録した。利用された温室成長条件は、文献(Kromdijk et al.、supra)に以前報告されたものと同様であった。地上バイオマスを、茎の高さの決定後7週間目に採取し、2週間、乾燥させ、乾燥重量を各画分について決定した。
【0111】
2016年圃場実験
概念実験の立証として、各光呼吸バイパスデザインの効果を、イリノイ州中央において2016年期についての圃場条件下で評価した。バイパス3の5つの独立した形質転換事象、バイパス1の4つの事象、およびWTと比較して貧弱な性能により、バイパス2のたった2つの独立した形質転換を、2つの野生型(WT)および2つの空ベクター(EV)対照と共に、ランダム化されたブロックデザインに植えた。以前記載されているように(Kromdijk et al.、Science(2016)354:857~61)、ホモ接合性単一インサートT種子を、soil mix(Sun Gro 202 Horticulture、Agawam、MA、USA)を含有するポットにおいて2016年5月14日に発芽させ、7日間、成長させて、その後、浮きトレイに移した。植物を、Universtiy of Illinois Energy Farm圃場ステーション(40.11°N、88.21 261°W、Urbana、IL、USA)へ、その圃場を記載されているように(Kromdijk et al.、supra)準備した後、2016年6月6日に移植した。各ブロックは、30cmの間隔をあけた6×6であった。ブロックあたり内側の16個の植物は、WT境栽に囲まれた、示されたトランスジェニック植物系列であった。WT植物の追加の2列の境栽がその実験を囲んだ。プロット内に置かれた6つの給水塔から必要に応じて灌水が提供された。光強度、大気温度、および降水量を含む気象データを、記載される2016年圃場季節について測定した(データ未呈示)。
【0112】
環境400μbarおよび低い100μbar CO濃度における光合成の光飽和レベルを含む光合成の見かけの量子効率(Φa)を、圃場への移植から14~20日後、最も若い完全展開した葉において測定した。Φaを、示された[CO]における光レベルに応答した同化作用測定値から決定した。ガス交換測定を、マニュアル(LI-COR Biosciences、Lincoln、NE、USA)に概略が述べられているように、ガスケット漏れを補正した2cm蛍光測定キュベットを有するLI-COR 6400XTを用いて実施した。CO同化作用の測定を、1200、380、120、65、40、30、25、18、および10μmol・m-2・s-1の光強度において行い、同化作用を、各光レベルにおいて最低限120秒後に、記録した。Φaを、低い光レベルにおける同化作用の初期応答の傾きから計算した。同化作用の飽和レベル(Asat)を、示された[CO]における1200μmol・m-2・s-1測定値から決定した。茎の高さ、葉および茎のバイオマスを、定植後7週間目にプロットあたり8つの植物について決定した。茎の高さを評価した後、地上バイオマスを採取し、葉および茎の画分へ分けた。植物材料を、バイオマス測定の前に最低限2週間、乾燥させた。
【0113】
2017年圃場実験
農業条件下でのバイパス3の植物生産性への効果のより正確な評価を得るために、繰り返しランダム化されるブロック設計を、2017年圃場期に用いた。圃場プロットは、ブロックあたり7個のランダム化される6×6プロットを有する、5つの複製ブロックからなった。中央の16個の植物は、WT境栽に囲まれた、試験されるトランスジェニック系列またはWTであった。35個のプロット全体は、境栽としてのWTの追加の列により囲まれた。同じ収穫期からの単一インサートホモ接合性系列は、LC1 sunshine mix上に蒔かれ、7日間、発芽した。7日後、上記のように、実生を浮きトレイへ移植した。浮きトレイへの移植から14日後、植物を、University of Illinois、Urbana、IL USAのEnergy farm圃場ステーションへ、2017年6月21日に移植した。灌水を必要に応じて、並列細流灌漑(滴下ライン)を用いて提供した。光強度、大気温度、および降水量を含む気象データを、2017年圃場期について記録した。Φaを決定するための光合成測定を2017年7月2~5日、実施し、それと共に、同時期の間、最も若い完全展開した葉において光合成色素を採取した。
【0114】
Φaを、以前記載されているように(Kromdijk et al.、supra)、実施した。簡単に述べれば、ガス交換測定を、上記のように、2cm蛍光測定キュベットを有するLI-COR 6400XTを用いて実施した。光に対するCO同化作用応答の測定を、夜明け前に開始し、0、10、18、25、30、40、65、120、380、1200、および2000μmol mol-1の光強度において実施した。光合成の日周測定を、7月14日、夜明け前から開始して実施し、ブロックあたり2つの植物について2時間ごとに測定した。光レベルおよび温度を、LI-COR 6400上のPARセンサーを用いた入射光レベルおよび内蔵温度センサーに基づいて、測定前に決定した。CO濃度を、400ppmに維持した。日周測定を夕暮れ後まで続けた。発芽後49日目、プロットあたり8つの植物を、全ての5つの複製ブロックから採取した。地上バイオマスを、葉および茎画分へ分け、バイオマス測定の前に2週間、乾燥させた。デンプン分析について、7月14日に収集された10mgの葉材料を液体窒素中で凍結させ、処理まで-80℃で保存した。デンプンを、Enzychromデンプンアッセイキット(bioassay systems、Hayward、CA、USA)を用いてアッセイした。比色測定を、Biotek synergy HTプレートリーダー(Biotek Winooski、VT、USA)において実施した。
【0115】
ガス交換
CO用量応答から正味光合成同化速度を決定するために、週齢7週間のN.tabacum植物の底面から5番目の葉を、LI-COR 6800赤外線ガスアナライザ(Li-Cor Biosciences、Lincoln、NE、USA)の蛍光キュベットへクランプし、葉温度を25℃に管理し、光強度を1500μmol m-2-1に設定した。定常状態に達するように葉を400μmol mol-1で気候順化した。応答曲線のCO濃度を、400、200、100、50、30、400、600、800、1000、1500、2000μmol mol-1に設定し、同化作用が定常状態に達した時に、測定値をとった。カルボキシル化の最大速度(Vcmax)、最大電子伝達速度(Jmax)、およびミトコンドリア呼吸速度を決定するために、収集されたCO応答曲線から無限葉肉伝導度を想定した温度補正を有する葉光合成のモデルを用いた。ΓおよびR測定を、一般的な交差方法を用い、ガス交換を、蛍光チャンバーを使用するLI-COR 6800(LI-COR Biosciences)を用いて実施した。Γを、様々な亜飽和照射量下での光合成のCO応答を測定することにより、一般的な交差方法を用いて測定した。一般的な交差は、C*およびRのより正確かつ一貫した値を生じるために、傾き切片回帰を用いて決定した(Walker et al.、Plant Cell Environ.(2016)39:1198~1203)。植物を、光合成が定常に達するまで、150μBar COにおいて、250μmol m-2-1光下で気候順化させ、150、120、90、70、50、および30μBar COにおいて250、165、120、80、および50μmol m-2-1の照射量下で測定した。以前報告されているように(Walker et al.、supra)、x交点を、Γに変換した。
【0116】
統計解析
全ての統計解析を、Origin pro 2016(バージョン9.3.226、Origin lab corporation Northampton、MA、USA)を用いて実施した。Fv’/Fm’測定について、各プレートは、最低限10個の実生を含有し、データは平均値を示す。有意性を、一元配置分散分析(ANOVA)により評価した。遺伝子発現の相対変化を、温室または圃場のいずれかで成長した試料からの生物学的複製あたり3つの技術的複製に関して、一元配置ANOVAにより解析した。温室バイオマスおよび茎の高さ実験を、最低限8つの生物学的複製に関して、一元配置ANOVAにより解析した。2016年圃場期からのバイオマスおよび茎の高さ実験を、8つの生物学的複製に関して、一元配置ANOVAにより解析した。2017年圃場期からのバイオマスデータを、ブロックあたり遺伝子型につき8つの生物学的複製に関して、二元配置ANOVA(遺伝子型×ブロック)により解析した。温室光合成測定値を、測定あたり3つの生物学的に関して、一元配置ANOVAにより解析し、圃場光合成測定値を、プロットあたり2つの植物複製および5つのランダム化された複製ブロックに関して二元配置ANOVAにより解析した。図に示されているように、全てのANOVA検定を、P<0.05またはそれ未満で実施した。全てのANOVA解析の後に、平均値比較のためにTukeyのpost-hoc検定を行った。
【0117】
結果および分析
Nicotiana tabacumを、5つの遺伝子を発現する3つの異なる光呼吸バイパスデザインで形質転換した(図14、表5)。バイパス1およびバイパス2は、文献において以前報告された。しかしながら、新しく開発されたバイパス3は、グリコール酸オキシダーゼの代わりにChlamydomonas reinhardtiiグリコール酸デヒドロゲナーゼ(配列番号45)を利用して、設計され、グリコール酸デヒドロゲナーゼは、有益なことに、グリコール酸からグリオキシル酸への変換中の副産物としての過酸化水素を生成しない(Abolemy et al.、Plant Physiol.Biochem.(2014)79:25~30)。
【0118】
単一遺伝子挿入の試験と違って、多重遺伝子構築物は、デザインされた経路を通ってフラックスを最適化するために遺伝子発現の協調の増加を必要とし得る。光呼吸バイパスの効力を最適化するプロモーター遺伝子の組合せの先験的知識を知らずに、本発明者らは、報告された光呼吸バイパス設計についての複数のプロモーター遺伝子組合せを利用し、バイパス1の5つのイテレーション、バイパス2の3つのイテレーション、およびバイパス3の単一のイテレーションを作製した(表5)。光呼吸バイパス遺伝子の発現に加えて、長いヘアピンRNAi構築物(配列番号46)を設計し、バイパス経路を通ってのフラックスを増加させる目的で、葉緑体グリコール酸/グリセリン酸トランスポーターPLGG1の発現を低下させるために、多重遺伝子構築物のライブラリーに加えた(図14、表5)。全体で、設計された18個の独立した構築物のうちの17個が、成功裏に形質転換され、PLGG1トランスポーターを標的にするRNAiモジュールの包含有りまたは無しで、バイパス1、2、および3の機能を試験するために、それらを調べた。
【0119】
光呼吸ストレスが誘発した光化学系IIへの損傷は、光におけるPSIIの最大作動効率(すなわち、Fv’/Fm’)の減少によりクロロフィル蛍光を用いて可視化することができる(South et al.、supra;Badger et al.、supra)。見かけの光呼吸効率の指標として蛍光におけるこれらの変化を用いて、各光呼吸バイパスデザインを、高い光強度(1200μmol m-2-1)およびほぼゼロ濃度のCOにおける24時間の成長後に、スクリーニングし、野生型(WT)および空ベクター(EV)対照と比較した(図15Aおよび15B)。全体として、バイパス1およびバイパス3のバージョンで形質転換された植物は、WTおよびET対照と比較して見かけの光呼吸効率の向上を示した(図15B)。この最初のスクリーニングから見かけの光呼吸効率の増強を実証した系列を、温室と圃場の両方の設定におけるさらなる特徴づけのために各設計から選択した。
【0120】
多重遺伝子構築物設計の最初の評価の間およびその後、多くの表現型が、独立した挿入または準最適に設計されたプロモーター遺伝子組合せかのいずれかに起因して、貧弱な表現型を示し、複数の挿入事象が同じ有害な表現型を有した。
【0121】
スクリーニングの成功の後、光呼吸バイパス経路の遺伝子発現を、温室および圃場試験においてさらに試験された各構築物について検証した(図16Aならびに図17Aおよび17B)。各構築物デザインの最低限3つの独立した形質転換を、温室条件下で評価した。本発明者らは、全ての3つのバイパスデザインにおいて乾燥重量バイオマスの増加を観察し、他の植物種における以前報告された所見(Dalal et al.、Biotechnol Biofuels(2015)8;Kebeish et al.、supra;Maier et al.、supra;Nolke et al.、Plant Biotechnol.J.(2014)12:734~42;Ahmad et al.、Plant Biotechnol.Rep.(2016)10:269~76)と同様に、光呼吸バイパスの成功を示唆した。全体として、温室条件下で、新規なバイパス3由来の植物は、バイパス1および2系列由来の植物よりバイオマスにおける予想外に大きい差を示し、本発明者らは、PLGG1を標的にするRNAiモジュールが存在する場合、バイパス3においてさらなる増強を観察し、全体のバイオマスは、WTに対して多くも23%、ならびにバイパス1および2系列それぞれと比較して、13%および7%増加した(図23)。圃場条件下で試験された場合、PLGG1を標的にするRNAiを有するバイパス3は、再び、WT対照と比較して多くも27%、全体の乾燥重量バイオマスの最も有意な増加を示した(図18B)。
【0122】
その後、温室試験からの有望な系列を、2016年、単一ブロックのレプリケート菜園実験において、農業条件下で光合成効率および植物生産性の増加について試験した。本発明者らは、バイパス設計を有する植物が、天然光呼吸経路を通る代謝フラックスの減少に起因して、光合成の量子効率(Φa)の増加を示すだろうと仮定した。全体として、本発明者らは、PLGG1トランスポーターを標的にするRNAiモジュールを含有するものを含む、全てのバイパス系列由来の植物においてΦaの増加を観察した(図19A~19C)。本発明者らは。また、光呼吸ストレス(すなわち、低い[CO])条件下での性能を測定し、バイパス3系列由来の植物が、光合成の光飽和時速度および量子効率の増加を生じたことを見出し、再び、これは、バイパスデザインの成功に関連した光呼吸ストレスの軽減を示している。
【0123】
蛍光スクリーニング、温室研究と2016年の圃場期研究を合わせると、バイパス3は、全体の植物成長においてWT、EV、ならびにバイパス1および2の性能を上回ることができたことが示され、この設計は、さらなる特徴づけのために進められた。バイパス3デザインを、特注作製された抗体を用いて、CrGDHおよびMSの存在、加えて、PLGG1タンパク質の低下を確認するためにウェスタンブロット分析で確認した(図16B)。本発明者らは、さらに、温室条件下での植物内での光呼吸バイパス3の生理的影響を特徴づけた。本発明者らは、カルボキシル化の最大速度(Vcmax)およびRuBP律速の電子伝達の速度(Jmax)を、内部CO濃度(Ci)に基づいて光合成速度(A)をモデル化することにより、決定した。バイパス3は、PLGG1 RNAiモジュール有りと無しのどちらにおいても、VcmaxおよびJmaxの増加を示し、光呼吸ストレスが最も高い、より低い[CO]におけるより効率的な光合成を示唆した(図20A、20B、20D)。本発明者らは、光呼吸バイパスが、光合成補償点、または光合成に利用可能な内部[CO]が昼間の呼吸で生成されるCOと等しい点を低くするだろうと仮定した。実際、本発明者らは、本発明者らのバイパス3植物において、WT対照と比較して、より低いΓ測定値を観察し、光呼吸バイパスが、おそらく、導入された経路における脱炭酸ステップ後に予想される葉緑体内のCOの濃度の増加に起因して、より低い[CO]値において光合成効率を増加させることを示唆した(図14)。
【0124】
バイパス3が農業条件下でどのように機能するかをより正確に評価するために、より大きい複製ブロック設計を、2017年圃場期の間において用いた。PLGG1を標的にするRNAiモジュール有りおよび無しの3つの独立した形質転換バイパス系列を含む、5つのランダム化された複製ブロックを試験した。2017年圃場期の間、本発明者らは、葉、茎、および全体の乾燥重量バイオマス、真昼のデンプン含有量、光合成の見かけの量子効率(Φa)を評価した。全体として、バイパス3は、全体の乾燥重量バイオマスの25%増加(22%葉、44%茎)を示し、PLGG1 RNAi有りのバイパス3は、全体の乾燥重量バイオマスの41%増加(33%葉、50%茎)を示した(図21A)。加えて、バイパス3設計におけるPLGG1 RNAiモジュールの包含は、バイパス3単独と比較して、葉および全体の乾燥重量バイオマスの有意な増加を示した(図21A)。真昼のデンプン総含有量は、WT対照と比較して、両方のバイパス3設計において、それぞれ、およそ70%および42%上昇した(図21B)。光合成の見かけの量子効率は、両方のバイパス設計において増加し、バイパス3単独において有意に増加した(図21C)。
【0125】
両方のバイパス3設計における光合成の量子効率の増加および補償点の減少に関して、本発明者らは、明期を通しての正味の光合成総量が、WT対照と比較して高く、その結果としてバイオマスの増加が観察されたと仮定した(図18Bおよび図21A)。これを決定するために、本発明者らは、総合した、COの日周同化作用を測定し、WTと比較して、両方のバイパスデザインにおける正味の同化作用総量(A’)、および光合成へ使用された電子の総数(J’)の有意な増加を観察した(図21Dおよび図21E)。
【0126】
全体として、本発明者らの合成生物学アプローチは、本発明者らが、複数の光呼吸バイパス設計を設計し、構築し、試験し、異なるプロモーター遺伝子組合せを比較することを可能にした。加えて、これは、最終結果が明瞭には予測できない農業関連条件下で、光呼吸バイパスの効果を記載する初めての研究であった。最初のものであり、かつ現在、最も多く報告されたデザインであったバイパス1設計は、実際、植物成長および乾燥重量バイオマスの向上を示している(図18B)。比較すると、バイパス1は、バイパス3より驚くほど生産性が低く、温室と圃場の両方の設定においてPLGG1 RNAiモジュールが加えられた場合、バイパス1を適所に有することによる向上は、低下した(図18Aおよび18B)。これらのデータは、天然の光呼吸経路を通してのフラックスの低下がある場合、すなわち、PLGG1発現がサイレンシングの標的にされた、またはノックアウト系統において発現していない場合、バイパス1代謝経路が、グリコール酸を効果的に変換することができないことを示唆している。バイパス2は、植物生産性において最も低い向上を示し、多くのトランスジェニック系列は、発育不良および黄葉を生じた。副産物としての過酸化水素の生成およびカタラーゼの非最適化発現(それは、以前、示唆されていた)は、バイパス2表現型の原因である可能性が高い(Maier et al.、supra)。
【0127】
C.maximaリンゴ酸シンターゼおよびC.reinhardtiiグリコール酸デヒドロゲナーゼ酵素を含有する光呼吸バイパス3は、植物バイオマスを有意に増加させ、文献において以前報告された、可能性のあるバイパス経路に対して、光合成効率の驚くべき向上を実証した。加えて、結果としてPLGG1ノックアウト系統と同様の効果を生じさせるPLGG1葉緑体グリコール酸グリセリン酸トランスポーターの発現を低下させるRNAiモジュールの包含(図22)は、バイパス3単独と比較して収穫後の乾燥重量バイオマスを有意に増加させた(図18B)。
【0128】
本発明は、例証された実施形態の詳細を参照して記載されているが、これらの詳細は、添付の特許請求の範囲において定義されているような本発明の範囲を限定することを意図するものではない。排他的な権利または特権が主張されている本発明の実施形態は、以下のように定義される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図20D
図21A
図21B
図21C
図21D
図21E
図22
図23
【配列表】
2023036867000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の葉緑体の少なくとも一部分内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得を含む、1つ以上の遺伝子改変を含み、
前記葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得は、葉緑体における異種またはトランスフェクトされた緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼポリプペチドおよび異種またはトランスフェクトされたリンゴ酸シンターゼポリプペチドの産生を含む、
遺伝子改変植物。
【請求項2】
前記異種またはトランスフェクトされた緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼポリプペチドは、Chlamydomonas reinhardtii、 Volvox carteri f. nagariensis、Gonium pectorale、 Chlamydomonas eustigma、 Chlorella variabilis、 Coccomyxa subellipsoidea、 Micromonas commoda、 Auxenochlorella protothecoides、 Ostreococcus tauri、 Ostreococcous lucimarinus、 Bathycoccus prasinos、 Micromonas pusilla、 Chrysochromulina sp.、および Guillardia thetaの群から選択された緑藻種に由来する、
請求項1の遺伝子改変植物。
【請求項3】
前記異種またはトランスフェクトされた緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼポリプペチドは、XP_001695381.1,ABG36932.1,XP_002946459.1,KXZ46746.1,GAX77289.1,XP_005852216.1,XP_005648725.1,XP_002506446.1,XP_011399156.1,XP_003074362.2,XP_001415862.1,OUS42650.1,XP_007511439.1,XP_003063153.1,KO033603.1,およびXP_005827919.1の群から選択されたポリプペチドに対して少なくとも80%の同一性を有する、
請求項1又は2の遺伝子改変植物。
【請求項4】
前記異種またはトランスフェクトされたリンゴ酸シンターゼポリペプチドが高等植物種に由来する、
請求項1から3のいずれかの遺伝子改変植物。
【請求項5】
前記異種またはトランスフェクトされた緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼポリプペチドは、第1の葉緑体標的配列に作動可能に連結され、
前記異種またはトランスフェクトされたリンゴ酸シンターゼポリペプチドは、第2の葉緑体標的配列に作動可能に連結される、
請求項1から4のいずれかの遺伝子改変植物。
【請求項6】
前記第1および/または第2の葉緑体標的配列は、配列番号43または配列番号45のアミノ酸残基1~40を含むrubisco小サブユニットシグナルペプチドを含む。
請求項5の遺伝子改変植物。
【請求項7】
前記異種またはトランスフェクトされた緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼポリプペチドは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、
請求項1から6のいずれかの遺伝子改変植物。
【請求項8】
前記異種またはトランスフェクトされた緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼポリプペチドは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136を含む、
請求項7の遺伝子改変植物。
【請求項9】
前記異種またはトランスフェクトされたリンゴ酸シンターゼポリペプチドは、配列番号43のアミノ酸残基41~607に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、
請求項1~8のいずれか一項に記載の遺伝子改変植物。
【請求項10】
前記異種またはトランスフェクトされたリンゴ酸シンターゼポリペプチドは、配列番号43のアミノ酸残基41~607を含む、
請求項9の遺伝子改変植物。
【請求項11】
前記植物がC3植物である、請求項1から10のいずれか一項の遺伝子改変植物。
【請求項12】
前記植物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、およびキャッサバからなる群から選択される、
請求項11の遺伝子改変植物。
【請求項13】
葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得を含む遺伝子改変を植物に導入し、それにより植物の成長または生産性を増加させる工程を含み、
前記葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する能力の獲得は、葉緑体における異種またはトランスフェクトされた緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼポリプペチドおよび異種またはトランスフェクトされたリンゴ酸シンターゼポリプペチドの産生を含む、
成長または生産性が増加した植物を作製する方法。
【請求項14】
前記異種またはトランスフェクトされた緑藻類グリコール酸デヒドロゲナーゼポリペプチドは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
前記異種またはトランスフェクトされたリンゴ酸シンターゼポリペプチドは、配列番号43のアミノ酸残基41~607に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含む、
請求項13の方法。
【請求項15】
前記異種またはトランスフェクトされた緑藻類グリコール酸デヒドロゲナーゼポリペプチドは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136を含み、
前記異種またはトランスフェクトされたリンゴ酸シンターゼポリペプチドは、配列番号43のアミノ酸残基41~607を含む、
請求項13の方法。
【請求項16】
前記植物がC3植物であり、
前記植物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、およびキャッサバからなる群から選択される、
請求項13~15の方法。
【請求項17】
リンゴ酸シンターゼをコードする第1の異種またはトランスフェクトされたポリヌクレオチドと、
緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼをコードする第2の異種またはトランスフェクトされたポリヌクレオチドと、を含み、
リンゴ酸シンターゼおよび緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼは、植物の葉緑体に局在し、
前記第1および第2の異種またはトランスフェクトされたポリヌクレオチドは、遺伝子改変植物に対して異種であり、前記植物は前記植物の葉緑体内でグリコール酸をエネルギーへ変換する、
遺伝子改変植物。
【請求項18】
前記異種またはトランスフェクトされた緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼポリプペチドは、XP_001695381.1,ABG36932.1,XP_002946459.1,KXZ46746.1,GAX77289.1,XP_005852216.1,XP_005648725.1,XP_002506446.1,XP_011399156.1,XP_003074362.2,XP_001415862.1,OUS42650.1,XP_007511439.1,XP_003063153.1,KO033603.1,およびXP_005827919.1の群から選択されたポリプペチドに対して少なくとも80%の配列同一性を有する、
請求項17の遺伝子改変植物。
【請求項19】
前記異種またはトランスフェクトされた緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼポリプペチドは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136に対して少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを含み、
前記異種またはトランスフェクトされたリンゴ酸シンターゼポリペプチドは、配列番号43のアミノ酸残基41~607に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドを含む、
請求項17の遺伝子改変植物。
【請求項20】
前記異種またはトランスフェクトされた緑藻グリコール酸デヒドロゲナーゼポリプペチドは、配列番号45のアミノ酸残基41~1136を含み、
前記異種またはトランスフェクトされたリンゴ酸シンターゼポリペプチドは、配列番号43のアミノ酸残基41~607を含む、
請求項19の遺伝子改変植物。
【請求項21】
配列番号43のアミノ酸残基41~607に対して少なくとも80%の配列同一性を有する第1のポリペプチドをコードする第1の異種またはトランスフェクトされたポリヌクレオチドと、
配列番号45のアミノ酸残基41~1136に対して少なくとも80%の配列同一性を有する第2のポリペプチドをコードする第2の異種またはトランスフェクトされたポリヌクレオチドと、を含み、
前記第1のポリペプチドおよび前記第2のポリペプチドは植物の葉緑体に局在する、
遺伝子改変植物。
【請求項22】
前記植物がC3植物であり、
前記植物は、イネ、ダイズ、ジャガイモ、ササゲ、オオムギ、コムギ、およびキャッサバからなる群から選択される、
請求項17~21の遺伝子改変植物。