(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036882
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】細胞培養液を用いて臍帯羊膜から間葉系幹細胞を単離する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20230307BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20230307BHJP
A61K 35/50 20150101ALI20230307BHJP
A61K 35/51 20150101ALI20230307BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C12N5/0775
A61K35/28
A61K35/50
A61K35/51
A61P43/00 105
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209799
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2019515832の分割
【原出願日】2017-10-05
(31)【優先権主張番号】62/404,582
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519096688
【氏名又は名称】セルリサーチ コーポレイション プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ファン トアン タン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】臍帯の羊膜から間葉系幹細胞集団を単離する方法、及び臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞の高度に均一な集団を提供する。
【解決手段】本発明は、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞集団を単離する方法であって、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で臍帯組織を培養する段階を含む前記方法に関する。本発明はまた、臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞集団であって、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、前記間葉系幹細胞集団に関する。本発明はまた、この間葉系幹細胞集団の薬学的組成物に関する。
【選択図】
図6c
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍帯の羊膜から間葉系幹細胞集団を単離する方法であって、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で臍帯組織を培養する段階を含む、前記方法。
【請求項2】
培養液が、最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、最終濃度約5~15% (v/v) のF12、最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および最終濃度約1~8% (v/v) のFBSを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
培養液が、最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
培養液が、最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
培養液が、最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
培養液が、最終濃度約10 ng/mlのEGFを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
培養液が、最終濃度約1μg/ml~10μg/mlのインスリンを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
培養液が、最終濃度約5μg/mlのインスリンを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
培養液が、補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの少なくとも1つをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
培養液が、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つ全てを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
培養液が、最終濃度約0.01~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約0.1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項12】
羊膜の間葉系幹細胞の細胞増殖が約70~80%の集密度に達するまで臍帯組織を培養する段階を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞を取り出す段階を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
培養容器から間葉系幹細胞を取り出す段階が酵素処理によって行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
酵素処理がトリプシン処理を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
間葉系幹細胞が、継代培養のために継代培養用の培養容器に移される、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
間葉系細胞が、継代培養のために1.0×106細胞/mlの濃度で懸濁される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
間葉系幹細胞が、請求項1~10のいずれか一項において定義される培養液中で継代培養される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
間葉系幹細胞が、約70~80%の集密度に達するまで継代培養される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
継代培養が自己完結型バイオリアクター中で行われる、請求項16~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
バイオリアクターが、平行平板バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、およびマイクロ流体バイオリアクターからなる群より選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
臍帯組織が、臍帯全体からの小片または臍帯の羊膜である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
培養が温度37℃のCO2細胞培養インキュベーター内で行われる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
継代培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞を取り出す段階を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
培養容器から間葉系幹細胞を取り出す段階が酵素処理によって行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
酵素処理がトリプシン処理を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
単離された間葉系幹細胞を収集する段階をさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)の発現を欠いている、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
単離された間葉系幹細胞の約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、請求項28または29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
単離された幹/前駆細胞をさらなる使用のために保存する段階をさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
保存する段階が凍結保存によって行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
臍帯羊膜の単離された間葉系幹細胞集団であって、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、前記間葉系幹細胞集団。
【請求項34】
前記幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、請求項33に記載の間葉系幹細胞集団。
【請求項35】
単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、請求項34に記載の間葉系幹細胞集団。
【請求項36】
請求項1~30のいずれか一項において定義される方法によって取得可能である、請求項33~35のいずれか一項に記載の間葉系幹細胞集団。
【請求項37】
請求項1~30のいずれか一項において定義される方法によって得られる、請求項33~35のいずれか一項に記載の間葉系幹細胞集団。
【請求項38】
臍帯羊膜の単離された間葉系幹細胞集団を含む薬学的組成物であって、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、前記薬学的組成物。
【請求項39】
全身または局所への適用に適合している、請求項38に記載の薬学的組成物。
【請求項40】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項38または39に記載の薬学的組成物。
【請求項41】
臍帯の羊膜から間葉系幹細胞集団を単離するのに適した培養液を作製する方法であって、最終容量500 mlの培養液を得るために、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. ウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml(最終濃度2.5%)
を混合する段階を含む、前記方法。
【請求項42】
v. 最終濃度10 ng/mlを達成するためのEGF保存溶液 (5μg/ml) 1 ml
vi. 最終濃度5μg/mlを達成するためのインスリン保存溶液 (14.28 mg/ml) 0.175 ml
を添加する段階をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの1つまたは複数をDMEMに添加し、それによって全容量500 mlの培養液とする段階をさらに含む、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
DMEM中の補充物質の最終濃度が、
約0.05~0.1μg/mlのアデニン、例えば約0.025μg/mlのアデニン、
約1~10μg/mlのヒドロコルチゾン、
約0.5~5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)、例えば1.36 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)
である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項41~44のいずれか一項に記載の方法によって取得可能である細胞培養液。
【請求項46】
臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離する方法であって、請求項41~44のいずれか一項において定義される方法によって調製された培養液中で羊膜組織を培養する段階を含む、前記方法。
【請求項47】
‐最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、
‐最終濃度約5~15% (v/v) のF12、
‐最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および
‐最終濃度約1~8% (v/v) のFBS
を含む細胞培養液。
【請求項48】
最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む、請求項47に記載の細胞培養液。
【請求項49】
最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含む、請求項48に記載の細胞培養液。
【請求項50】
最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含む、請求項47~49のいずれか一項に記載の細胞培養液。
【請求項51】
最終濃度約10 ng/mlのEGFを含む、請求項7~50のいずれか一項に記載の細胞培養液。
【請求項52】
最終濃度約1μg/ml~10μg/mlのインスリンを含む、請求項47~51のいずれか一項に記載の細胞培養液。
【請求項53】
最終濃度約5μg/mlのインスリンを含む、請求項52に記載の細胞培養液。
【請求項54】
補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項47~53のいずれか一項に記載の細胞培養液。
【請求項55】
アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つ全てを含む、請求項54に記載の細胞培養液。
【請求項56】
最終濃度約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含む、請求項54または55に記載の細胞培養液。
【請求項57】
細胞培養液500 mlが、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. ウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml(最終濃度2.5%)
を含む、請求項47~56のいずれか一項に記載の細胞培養液。
【請求項58】
v. 最終濃度10 ng/mlのEGF
vi. 最終濃度5μg/mlのインスリン
vi. インスリン0.175 ml(最終濃度5μg/ml)
をさらに含む、請求項57に記載の細胞培養液。
【請求項59】
最終濃度約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) をさらに含む、請求項57または58に記載の細胞培養液。
【請求項60】
臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離するための、請求項47~59のいずれか一項において定義される細胞培養液の使用。
【請求項61】
臍帯の羊膜に由来する間葉系幹細胞を培養するための、請求項47~59のいずれか一項において定義される細胞培養液の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/404,582号の優先権の恩典を主張し、その内容はすべての目的のために全体として参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞(またはそのような幹細胞集団)を単離する方法、および臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞集団に関する。本発明はまた、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離するための細胞培養液を対象にする。本発明はまた、単離された間葉系幹細胞集団の薬学的組成物および使用を対象にする。本発明はまた、本発明の間葉系幹細胞集団またはそのような間葉系幹細胞集団を含有する薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与する段階を含む、疾患または障害を処置する方法を対象にする。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞は、最初に米国特許出願第2006/0078993号(特許文献1)(登録された米国特許第9,085,755号(特許文献2)および米国特許第9,737,568号(特許文献3)につながる)ならびに対応する国際特許出願WO2006/019357(特許文献4)において報告された。それ以来、臍帯組織は、多能性細胞の供給源として注目を集めている;臍帯、および具体的には臍帯の羊膜から単離された幹細胞(「臍帯ライニング (cord lining) 幹細胞」とも称される)は、広く入手可能であるため、再生医療用の細胞の優れた代替供給源と見なされている。Jeschke et al. Umbilical Cord Lining Membrane and Wharton's Jelly-Derived Mesenchymal Stem Cells: the Similarities and Differences; The Open Tissue Engineering and Regenerative Medicine Journal, 2011, 4, 21-27(非特許文献1)を参照されたい。
【0004】
その後の研究では、臍帯の羊膜(臍帯ライニング (CL-MSC))、臍帯血 (CB-MSC)、胎盤 (P-MSC)、およびワルトン膠様質 (WJ-MSC) に由来するヒト間葉系幹細胞 (MSC) の表現型、増殖速度、遊走、免疫原性、および免疫調節能が比較された (Stubbendorf et al, Immunological Properties of Extraembryonic Human Mesenchymal Stromal Cells Derived from Gestational Tissue, STEM CELLS AND DEVELOPMENT Volume 22, Number 19, 2013, 2619-2629(非特許文献2))。Stubbendorfらは、胚外妊娠組織に由来するMSC集団が、免疫応答を回避する、および免疫調節効果を発揮する多様な能力を示すと結論づけた。CL-MSCが低い免疫原性を示し、また増殖能および遊走能の増強を示すため、これらの細胞が細胞ベースの療法の最も有望な可能性を示すことを、著者らはまた見出した。そのため、今後の研究は、CL-MSCが投与され得る最良の疾患モデルに焦点を合わせるべきである。
【0005】
羊膜の間葉系幹細胞は、米国特許出願第2006/0078993号(特許文献1)および国際特許出願WO2006/019357(特許文献4)に記載されたプロトコールを用いて容易に得ることができるが、高度に均一でありしたがって臨床試験に使用され得る、これらの臍帯ライニングMSCの集団を単離できるようにする方法が手元にあることは、これらの臍帯ライニングMSCを用いる臨床試験のために有利である。
【0006】
よって、本発明の目的は、この要求を満たす、臍帯の羊膜に由来する間葉系幹細胞の集団を単離する方法を提供することである。したがって、臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞の高度に均一な集団を提供することもまた、本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第2006/0078993号
【特許文献2】米国特許第9,085,755号
【特許文献3】米国特許第9,737,568号
【特許文献4】国際特許出願WO2006/019357
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Jeschke et al. Umbilical Cord Lining Membrane and Wharton's Jelly-Derived Mesenchymal Stem Cells: the Similarities and Differences; The Open Tissue Engineering and Regenerative Medicine Journal, 2011, 4, 21-27
【非特許文献2】Stubbendorf et al, Immunological Properties of Extraembryonic Human Mesenchymal Stromal Cells Derived from Gestational Tissue, STEM CELLS AND DEVELOPMENT Volume 22, Number 19, 2013, 2619-2629
【発明の概要】
【0009】
この目的は、独立請求項の特徴を有する方法、間葉系幹細胞集団、各薬学的組成物、および細胞培養液によって達成される。
【0010】
第1局面において、本発明は、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞集団を単離する方法を提供し、該方法はDMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で臍帯組織を培養する段階を含む。
【0011】
第2局面において、本発明は、臍帯の羊膜の単離された間葉系幹細胞集団を提供し、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞は以下のマーカーの各々を発現する:CD73、CD90、およびCD105。好ましくは、単離された間葉系幹細胞集団は、以下のマーカーの発現を欠いている:CD34、CD45、およびHLA-DR。この第2局面の複数の態様では、単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現する。加えて、第2局面のこれらの態様において、単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、好ましくマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている。間葉系幹細胞集団は、第1局面の間葉系幹細胞集団を単離する方法によって得られ得る。
【0012】
第3局面において、本発明は、本発明の(第2局面の)哺乳動物細胞を含有する薬学的組成物を提供する。
【0013】
第4局面において、本発明は、単離用の培養液を作製する方法を提供し、該方法は、最終容量500 mlの培養液を得るために、以下を混合する段階を含む:
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. 最終濃度2.5% (v/v) を得るためのウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml。
【0014】
第5局面において、本発明は、第4局面の方法によって取得可能である細胞培養液を提供する。
【0015】
第6局面において、本発明は、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離する方法を提供し、該方法は、第4局面の方法によって調製された培養液中で羊膜組織を培養する段階を含む。
【0016】
第7局面において、本発明は、以下を含む細胞培養液を提供する:
‐最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、
‐最終濃度約5~15% (v/v) のF12、
‐最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および
‐最終濃度約1~8% (v/v) のFBS。
【0017】
第8局面において、本発明は、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離するための、第7局面の細胞培養液の使用を提供する。
【0018】
第9局面において、本発明は、臍帯の羊膜に由来する間葉系幹細胞を培養するための、第7局面の細胞培養液の使用を提供する。
[本発明1001]
臍帯の羊膜から間葉系幹細胞集団を単離する方法であって、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で臍帯組織を培養する段階を含む、前記方法。
[本発明1002]
培養液が、最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、最終濃度約5~15% (v/v) のF12、最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および最終濃度約1~8% (v/v) のFBSを含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
培養液が、最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む、本発明1002の方法。
[本発明1004]
培養液が、最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含む、本発明1003の方法。
[本発明1005]
培養液が、最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含む、本発明1001~1004のいずれかの方法。
[本発明1006]
培養液が、最終濃度約10 ng/mlのEGFを含む、本発明1001~1005のいずれかの方法。
[本発明1007]
培養液が、最終濃度約1μg/ml~10μg/mlのインスリンを含む、本発明1001~1006のいずれかの方法。
[本発明1008]
培養液が、最終濃度約5μg/mlのインスリンを含む、本発明1001~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
培養液が、補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの少なくとも1つをさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1010]
培養液が、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つ全てを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1011]
培養液が、最終濃度約0.01~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約0.1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含む、本発明1011または1012の方法。
[本発明1012]
羊膜の間葉系幹細胞の細胞増殖が約70~80%の集密度に達するまで臍帯組織を培養する段階を含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1013]
培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞を取り出す段階を含む、本発明1012の方法。
[本発明1014]
培養容器から間葉系幹細胞を取り出す段階が酵素処理によって行われる、本発明1013の方法。
[本発明1015]
酵素処理がトリプシン処理を含む、本発明1014の方法。
[本発明1016]
間葉系幹細胞が、継代培養のために継代培養用の培養容器に移される、本発明1013~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
間葉系細胞が、継代培養のために1.0×106細胞/mlの濃度で懸濁される、本発明1016の方法。
[本発明1018]
間葉系幹細胞が、本発明1001~1010のいずれかにおいて定義される培養液中で継代培養される、本発明1017の方法。
[本発明1019]
間葉系幹細胞が、約70~80%の集密度に達するまで継代培養される、本発明1018の方法。
[本発明1020]
継代培養が自己完結型バイオリアクター中で行われる、本発明1016~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
バイオリアクターが、平行平板バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、およびマイクロ流体バイオリアクターからなる群より選択される、本発明1020の方法。
[本発明1022]
臍帯組織が、臍帯全体からの小片または臍帯の羊膜である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1023]
培養が温度37℃のCO2細胞培養インキュベーター内で行われる、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1024]
継代培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞を取り出す段階を含む、本発明1023の方法。
[本発明1025]
培養容器から間葉系幹細胞を取り出す段階が酵素処理によって行われる、本発明1024の方法。
[本発明1026]
酵素処理がトリプシン処理を含む、本発明1025の方法。
[本発明1027]
単離された間葉系幹細胞を収集する段階をさらに含む、本発明1026の方法。
[本発明1028]
単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1029]
単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)の発現を欠いている、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1030]
単離された間葉系幹細胞の約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、本発明1028または1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
単離された幹/前駆細胞をさらなる使用のために保存する段階をさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1032]
保存する段階が凍結保存によって行われる、本発明1031の方法。
[本発明1033]
臍帯羊膜の単離された間葉系幹細胞集団であって、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現する、前記間葉系幹細胞集団。
[本発明1034]
前記幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、本発明1033の間葉系幹細胞集団。
[本発明1035]
単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、本発明1034の間葉系幹細胞集団。
[本発明1036]
本発明1001~1030のいずれかにおいて定義される方法によって取得可能である、本発明1033~1035のいずれかの間葉系幹細胞集団。
[本発明1037]
本発明1001~1030のいずれかにおいて定義される方法によって得られる、本発明1033~1035のいずれかの間葉系幹細胞集団。
[本発明1038]
臍帯羊膜の単離された間葉系幹細胞集団を含む薬学的組成物であって、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、前記薬学的組成物。
[本発明1039]
全身または局所への適用に適合している、本発明1038の薬学的組成物。
[本発明1040]
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、本発明1038または1039の薬学的組成物。
[本発明1041]
臍帯の羊膜から間葉系幹細胞集団を単離するのに適した培養液を作製する方法であって、最終容量500 mlの培養液を得るために、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. ウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml(最終濃度2.5%)
を混合する段階を含む、前記方法。
[本発明1042]
v. 最終濃度10 ng/mlを達成するためのEGF保存溶液 (5μg/ml) 1 ml
vi. 最終濃度5μg/mlを達成するためのインスリン保存溶液 (14.28 mg/ml) 0.175 ml
を添加する段階をさらに含む、本発明1041の方法。
[本発明1043]
補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの1つまたは複数をDMEMに添加し、それによって全容量500 mlの培養液とする段階をさらに含む、本発明1041または1042の方法。
[本発明1044]
DMEM中の補充物質の最終濃度が、
約0.05~0.1μg/mlのアデニン、例えば約0.025μg/mlのアデニン、
約1~10μg/mlのヒドロコルチゾン、
約0.5~5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)、例えば1.36 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)
である、本発明1043の方法。
[本発明1045]
本発明1041~1044のいずれかの方法によって取得可能である細胞培養液。
[本発明1046]
臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離する方法であって、本発明1041~1044のいずれかにおいて定義される方法によって調製された培養液中で羊膜組織を培養する段階を含む、前記方法。
[本発明1047]
‐最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、
‐最終濃度約5~15% (v/v) のF12、
‐最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および
‐最終濃度約1~8% (v/v) のFBS
を含む細胞培養液。
[本発明1048]
最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む、本発明1047の細胞培養液。
[本発明1049]
最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含む、本発明1048の細胞培養液。
[本発明1050]
最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含む、本発明1047~1049のいずれかの細胞培養液。
[本発明1051]
最終濃度約10 ng/mlのEGFを含む、本発明1007~1050のいずれかの細胞培養液。
[本発明1052]
最終濃度約1μg/ml~10μg/mlのインスリンを含む、本発明1047~1051のいずれかの細胞培養液。
[本発明1053]
最終濃度約5μg/mlのインスリンを含む、本発明1052の細胞培養液。
[本発明1054]
補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの少なくとも1つをさらに含む、本発明1047~1053のいずれかの細胞培養液。
[本発明1055]
アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つ全てを含む、本発明1054の細胞培養液。
[本発明1056]
最終濃度約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含む、本発明1054または1055の細胞培養液。
[本発明1057]
細胞培養液500 mlが、
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. ウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml(最終濃度2.5%)
を含む、本発明1047~1056のいずれかの細胞培養液。
[本発明1058]
v. 最終濃度10 ng/mlのEGF
vi. 最終濃度5μg/mlのインスリン
vi. インスリン0.175 ml(最終濃度5μg/ml)
をさらに含む、本発明1057の細胞培養液。
[本発明1059]
最終濃度約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) をさらに含む、本発明1057または1058の細胞培養液。
[本発明1060]
臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離するための、本発明1047~1059のいずれかにおいて定義される細胞培養液の使用。
[本発明1061]
臍帯の羊膜に由来する間葉系幹細胞を培養するための、本発明1047~1059のいずれかにおいて定義される細胞培養液の使用。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明は、非限定的な実施例および図面と併せて考慮した場合に、詳細な説明を参照してより良く理解されるであろう。
【
図1-1】実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したDMEMのカタログ番号を含む、ダルベッコ改変イーグル培地に関するLonzaの技術情報シートを示す。
【
図1-2】実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したDMEMのカタログ番号を含む、ダルベッコ改変イーグル培地に関するLonzaの技術情報シートを示す。
【
図2】ハムF12培地に関するLonzaの技術情報シートを示す。
【
図3】実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したDMEM:F12 (1:1) 培地のカタログ番号を含む、DMEM:F12 (1:1) 培地に関するLonzaの技術情報シートを示す。
【
図4-1】実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したM171培地のカタログ番号を含む、M171培地に関するLife Technologies Corporationの技術情報シートを示す。
【
図4-2】実験の項において本発明の培地 (PTT-6) の実例を作製するために使用したM171培地のカタログ番号を含む、M171培地に関するLife Technologies Corporationの技術情報シートを示す。
【
図5】培地PTT-6を作製するために実験の項において使用した成分のリストを、それらの商業的供給業者およびカタログ番号を含めて示す。
【
図6a】臍帯から単離された間葉系幹細胞を、間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105の発現について解析した、フローサイトメトリー実験の結果を示す。これらの実験のために、3種の異なる培養液中で臍帯組織を培養することにより、間葉系幹細胞を臍帯組織から単離し、続いて各培地中で間葉系幹細胞を継代培養した。これらの実験において、以下の3種の培養液を使用した:a) 10 % FBS (v/v) を補充した90% (v/v/ DMEM、b) 90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、米国特許出願第2006/0078993号および対応する国際特許出願WO2006/019357に記載されている培養液PTT-4(WO2006/019357のパラグラフ [0183] を参照されたい)、ならびにc) 本明細書においてその組成が記載される、本発明の培養液PPT-6。このフローサイトメトリー解析において、臍帯ライニング間葉系幹細胞 (CLMC) 集団の2つの異なるサンプルを、使用した3種の培養液の各々について解析した。結果を
図6a~6cに示す。より詳細には、
図6aは、DMEM/10% FBS中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示す。
【
図6b】臍帯から単離された間葉系幹細胞を、間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105の発現について解析した、フローサイトメトリー実験の結果を示す。これらの実験のために、3種の異なる培養液中で臍帯組織を培養することにより、間葉系幹細胞を臍帯組織から単離し、続いて各培地中で間葉系幹細胞を継代培養した。これらの実験において、以下の3種の培養液を使用した:a) 10 % FBS (v/v) を補充した90% (v/v/ DMEM、b) 90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、米国特許出願第2006/0078993号および対応する国際特許出願WO2006/019357に記載されている培養液PTT-4(WO2006/019357のパラグラフ [0183] を参照されたい)、ならびにc) 本明細書においてその組成が記載される、本発明の培養液PPT-6。このフローサイトメトリー解析において、臍帯ライニング間葉系幹細胞 (CLMC) 集団の2つの異なるサンプルを、使用した3種の培養液の各々について解析した。結果を
図6a~6cに示す。より詳細には、
図6bは、PTT-4中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示す。
【
図6c】臍帯から単離された間葉系幹細胞を、間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105の発現について解析した、フローサイトメトリー実験の結果を示す。これらの実験のために、3種の異なる培養液中で臍帯組織を培養することにより、間葉系幹細胞を臍帯組織から単離し、続いて各培地中で間葉系幹細胞を継代培養した。これらの実験において、以下の3種の培養液を使用した:a) 10 % FBS (v/v) を補充した90% (v/v/ DMEM、b) 90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、米国特許出願第2006/0078993号および対応する国際特許出願WO2006/019357に記載されている培養液PTT-4(WO2006/019357のパラグラフ [0183] を参照されたい)、ならびにc) 本明細書においてその組成が記載される、本発明の培養液PPT-6。このフローサイトメトリー解析において、臍帯ライニング間葉系幹細胞 (CLMC) 集団の2つの異なるサンプルを、使用した3種の培養液の各々について解析した。結果を
図6a~6cに示す。より詳細には、
図6cは、PTT-6中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示す。
【
図7a】臍帯から単離された間葉系幹細胞を、細胞療法に対する多能性ヒト間葉系幹細胞の適合性を規定するために使用される幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105、CD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)のそれらの発現について解析し、骨髄間葉系幹細胞によるこれらのマーカーの発現と比較した、フローサイトメトリー実験の結果を示す。この実験のために、本発明の培養液PPT-6中で臍帯組織を培養することにより、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞を臍帯組織から単離する一方で、標準的なプロトコールを用いて、ヒト骨髄から骨髄間葉系幹細胞を単離した。
図7aは、PTT-6培地中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示す。
【
図7b】臍帯から単離された間葉系幹細胞を、細胞療法に対する多能性ヒト間葉系幹細胞の適合性を規定するために使用される幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105、CD34、CD45、およびHLA-DR(ヒト白血球抗原‐抗原D関連)のそれらの発現について解析し、骨髄間葉系幹細胞によるこれらのマーカーの発現と比較した、フローサイトメトリー実験の結果を示す。この実験のために、本発明の培養液PPT-6中で臍帯組織を培養することにより、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞を臍帯組織から単離する一方で、標準的なプロトコールを用いて、ヒト骨髄から骨髄間葉系幹細胞を単離した。
図7bは、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された骨髄間葉系幹細胞の割合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
上記で説明したように、第1局面において、本発明は、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞集団を単離する方法を対象にし、該方法は、DMEM(ダルベッコ改変イーグル培地)、F12(ハムF12培地)、M171(培地171)、およびFBS(ウシ胎仔血清)を含む培養液中で臍帯組織を培養する段階を含む。そのような培地を使用することにより、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞集団が単離され、その細胞の90%超またはさらには99%もしくはそれ以上が3種の間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90に関して陽性であり、それと同時にこれらの幹細胞がCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いており(実験の項を参照されたい)、このことが、この集団の99%またはさらにはそれ以上の細胞が幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現しながら、マーカーCD34、CD45、およびHLA-DRを発現しないことを意味することが、本出願において驚くべきことに見出された。そのように極めて均一でありかつ明確に定義された細胞集団は、例えば、例えばDominici et al,「Minimal criteria for defining multipotent mesenchymal stromal cells. The International Society for Cellular Therapy position statement」, Cytotherapy (2006) Vol. 8, No. 4, 315-317、Sensebe et al,.「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a, review」, Stem Cell Research & Therapy 2013, 4:66)、Vonk et al., Stem Cell Research & Therapy (2015) 6:94、またはKundrotas Acta Medica Lituanica. 2012. Vol. 19. No. 2. P. 75-79によって規定されるような、細胞療法に使用されるべきヒト間葉系幹細胞に関して一般に許容される基準を十分に満たすため、臨床試験および細胞ベースの療法の理想的な候補である。また、Quantum細胞増殖システムなどのバイオリアクターを使用することで、1回の実行当たり3~7億個の間葉系幹細胞といった多数の間葉系幹細胞を得ることが可能である(実験の項もまた参照されたい)。したがって、本発明により、費用効率の高い様式で、創傷治癒における使用などの治療適用に必要な量の幹細胞を提供することが可能になる。加えて、本発明の培養液を作製するために使用される構成成分はすべて、GMP品質で市販されている。よって、本発明は、臍帯の羊膜からこの高度に均一な間葉系幹細胞集団をGMP生産するためのルートを開く。
【0021】
これに関連して、本発明の培養液によって、間葉系幹/前駆細胞を分化させることなく間葉系幹/前駆細胞の細胞増殖を可能にする条件下で、羊膜から間葉系幹細胞集団(本明細書において「間葉系幹細胞」とも称される)を単離することが可能になることが留意される。したがって、本明細書に記載されるように羊膜から間葉系幹細胞を単離した後、単離された間葉系幹/前駆細胞集団は、例えば米国特許出願第2006/0078993号、米国特許第9,085,755号、国際特許出願WO2006/019357、米国特許第8,287,854号、またはWO2007/046775に記載されるように、複数の細胞型に分化する能力を有する。例えば米国特許出願第2006/0078993号に記載されるように、臍帯の羊膜の間葉系幹細胞は、紡錘形を有し、遺伝子POU5f1、Bmi-1、白血病抑制因子 (LIF) を発現し、かつアクチビンAおよびフォリスタチンを分泌する。本発明において単離された間葉系幹細胞は、これらに限定されないが、脂肪細胞、皮膚線維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、腱細胞、靱帯維芽細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、骨格筋細胞、脂肪細胞、ムチン産生細胞、インスリン産生細胞(例えば、β島細胞)などの内分泌腺由来の細胞、または神経外胚葉細胞などの、間葉系細胞のいかなる型にも分化させることができる。本発明において単離された幹細胞は、後に医療目的で分化細胞を使用するために、インビトロで分化させることができる。そのようなアプローチの実例は、間葉系幹細胞のインスリン産生β島細胞への分化であり、この細胞は次いで、糖尿病などのインスリン欠乏に罹患している患者に、例えば移植によって投与することができる(この点において、WO2007/046775もまた参照されたい)。あるいは、本発明の間葉系幹細胞は、例えば、熱傷または慢性糖尿病創傷の処置などの創傷治癒の目的で、細胞ベースの療法のために未分化状態で使用することができる。これらの治療適用において、本発明の間葉系幹細胞は、周囲の罹患組織と相互作用することによって創傷治癒を促進するのに役立ち得るか、またはそれぞれの皮膚細胞にも分化し得る(例えば、再度WO2007/046775を参照されたい)。
【0022】
これに関連して、本明細書において記載される間葉系幹細胞集団は、臍帯組織が羊膜(「臍帯ライニング」とも称される)を含有する限りにおいて、任意の臍帯組織から単離し培養することができる(すなわち、任意の臍帯組織に由来する)ことが留意される。よって、間葉系幹細胞集団は、本出願の実験の項に記載されているように、臍帯全体(からの小片)から単離することができる。したがってこの臍帯組織は、羊膜に加えて、臍帯の任意の他の組織/構成成分を含有してもよい。例えば、米国特許出願第2006/0078993号または国際特許出願WO2006/019357の
図16に示されるように、臍帯の羊膜は、臍帯を覆っている、臍帯の最も外側の部分である。加えて、臍帯は、1本の静脈(酸素化し栄養分に富んだ血液を胎児に運ぶ)および2本の動脈(脱酸素化され栄養分が枯渇した血液を胎児から運び出す)を含有する。保護および機械的支持のために、これら3本の血管は、大部分がムコ多糖でできているゼラチン状物質であるワルトン膠様質内に包埋されている。よって、本発明において用いられる臍帯組織はまた、この1本の静脈、2本の動脈、およびワルトン膠様質を含み得る。臍帯のそのような全体(無傷)部分の使用は、羊膜を臍帯の他の構成成分から分離する必要がないという利点を有する。これによって、単離段階が減少し、ひいては本発明の方法が、より簡便になり、より迅速になり、間違いが起こりにくくなり、かつより経済的になる‐これらはすべて、間葉系幹細胞の治療適用に必要なGMP生産の重要な局面である。したがって間葉系幹細胞の単離は、組織外植片から開始することができ、その後、より多くの量の間葉系幹細胞が例えば臨床試験において使用するために所望される場合には、単離された間葉系幹細胞を続いて継代培養(培養)することができる。あるいは、最初に臍帯の他の構成成分から羊膜を分離し、本発明の培養液中で羊膜を培養することによって、羊膜から間葉系臍帯ライニング幹細胞を単離することもまた可能である。この培養はまた、組織外植片で行うこともでき、任意にその後、単離された間葉系幹細胞の継代培養が行われる。これに関連して、「組織外植片」または「組織外植片法」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味で用いられて、ひとたび回収された組織またはその組織片が、培養液(増殖培地)を含む細胞培養ディッシュ中に配置され、時間と共に幹細胞が組織からディッシュの表面上に遊走する方法を指す。次いでこれらの初代幹細胞を、本明細書においても記載されるように、大量増殖 (micropropagation)(継代培養)により、さらに増大させ、新たなディッシュに移すことができる。これに関連して、治療目的のための細胞の生成の観点において、臍帯から羊膜間葉系幹細胞を単離する第1段階において、単離された間葉系幹細胞のマスター細胞バンクが得られ、その後の継代培養においてワーキング細胞バンクが得られ得ることが留意される。本発明の間葉系幹細胞集団(具体的には、そのうちの少なくとも約98%または99%が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、間葉系幹細胞の集団)が、臨床試験のためにまたは認可された治療として用いられる場合には、この目的のために、ワーキング細胞バンクの細胞集団が典型的に用いられる。単離段階の幹細胞集団(マスター細胞バンクを構成し得る)および継代培養段階の幹細胞集団(ワーキング細胞バンクを構成し得る)はいずれも、例えば凍結保存形態で貯蔵することができる。
【0023】
上記のように、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離する本方法は、本発明の培養液中で使用される全構成成分がGMP品質で入手可能であり、したがって、間葉系幹細胞がその後の治療的投与のためにGMP条件下で単離される可能性をもたらすという利点を有する。
【0024】
「DMEM」とは、1969年に開発され、基本培地イーグル (BME) の改変物であるダルベッコ改変イーグル培地を意味する(Lonzaから入手可能なDMEMのデータシートを示す
図1を参照されたい)。最初のDMEM処方は1000 mg/Lのグルコースを含有し、胚性マウス細胞の培養について初めて報告された。それ以来DMEMは細胞培養のための標準的な培地となり、ほんの数例の供給業者を挙げると、ThermoFisher Scientific(カタログ番号11965-084)、Sigma Aldrich(カタログ番号D5546)、またはLonzaなどの、様々な供給源から市販されている。したがって、いかなる市販のDMEMも、本発明において使用することができる。好ましい態様において、本明細書で用いられるDMEMは、Lonzaからカタログ番号12-604Fで入手可能なDMEM培地である。この培地は、4.5 g/L グルコースおよびL-グルタミンが補充されているDMEMである。別の好ましい態様において、本明細書で用いられるDMEMは、Sigma Aldrichカタログ番号D5546のDMEM培地であり、これは1000 mg/L グルコースおよび炭酸水素ナトリウムを含有するが、L-グルタミンを含まない。
【0025】
「F12」培地とは、ハムF12培地を意味する。この培地もまた標準的な細胞培養液であり、ホルモンおよびトランスフェリンと組み合わせて血清と共に使用された場合に、幅広い種類の哺乳動物細胞およびハイブリドーマ細胞を培養できるように、当初設計された栄養混合物である(LonzaからのハムF12培地のデータシートを示す
図2を参照されたい)。いかなる市販のハムF12培地(例えば、ほんの数例の供給業者を挙げると、ThermoFisher Scientific(カタログ番号11765-054)、Sigma Aldrich(カタログ番号N4888)、またはLonzaからのもの)も、本発明において使用することができる。好ましい態様では、LonzaからのハムF12培地が用いられる。
【0026】
「DMEM/F12」または「DMEM:F12」とは、DMEMとハムF12培養液の1:1混合物を意味する(LonzaからのDMEM: F12 (1:1) 培地のデータシートを示す
図3を参照されたい)。DMEM/F12 (1:1) 培地もまた、多くの異なる哺乳動物細胞の増殖を支持するために広く使用されている基本培地であり、ThermoFisher Scientific(カタログ番号11330057)、Sigma Aldrich(カタログ番号D6421)、またはLonzaなどの様々な供給業者から市販されている。いかなる市販のDMEM:F12培地も、本発明において使用することができる。好ましい態様において、本明細書で用いられるDMEM:F12培地は、Lonzaからカタログ番号12-719Fで入手可能なDMEM/F12 (1:1)培地(L-グルタミン、15 mM HEPES、および3.151 g/Lグルコースを伴うDMEM: F12である)である。
【0027】
「M171」とは、正常ヒト乳腺上皮細胞の増殖について培養するための基本培地として開発された培養液171を意味する(Life Technologies CorporationからのM171培地のデータシートを示す
図4を参照されたい)。この基本培地もまた広く使用されており、例えばThermoFisher ScientificまたはLife Technologies Corporation(カタログ番号M171500)などの供給業者から市販されている。いかなる市販のM171培地も、本発明において使用することができる。好ましい態様において、本明細書で用いられるM171培地は、Life Technologies Corporationからカタログ番号M171500で入手可能なM171培地である。
【0028】
「FBS」とは、ウシ胎仔血清(ウシ胎児血清とも称される)、すなわち、天然の血液凝固後に残存し、続いて遠心分離によっていかなる残存赤血球も除去された血液画分を意味する。ウシ胎仔血清は、非常に低レベルの抗体を有し、より多くの増殖因子を含有し、多くの異なる細胞培養適用における多用途性を可能にするという理由で、真核細胞のインビトロ細胞培養のために最も広く使用されている血清補充物質である。FBSは、その主眼が、適切な起源追跡管理、表示の真実性、ならびに適切な規格化および監視を通した血清および動物由来製品の安全性および安全使用であるInternational Serum Industry Association (ISIA) のメンバーから入手することが好ましい。ISIAメンバーであるFBSの供給業者には、少し記述するだけでも、Abattoir Basics Company、Animal Technologies Inc.、Biomin Biotechnologia LTDA、GE Healthcare、Gibco by Thermo Fisher Scientific、およびLife Science Productionが含まれる。現在好ましい態様において、FBSはGE Healthcareからカタログ番号A15-151で得られる。
【0029】
ここで本発明の培養液に目を向けると、培養液は、間葉系臍帯ライニング幹細胞の単離または培養のために、最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、最終濃度約5~15% (v/v) のF12、最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および最終濃度約1~8% (v/v) のFBSを含み得る。本明細書で用いられる「% (v/v)」という値は、培養液の最終容量に対する個々の構成成分の容量を指す。これは、DMEMが例えば最終濃度約55~65% (v/v) で培養液中に存在するのであれば、1リットルの培養液が約550~650 ml DMEMを含有することを意味する。
【0030】
他の態様において、培養液は、最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含み得る。さらなる態様において、培養液は、最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含み得る。
【0031】
上記の構成成分に加えて、培養液は、間葉系臍帯ライニング幹細胞の培養に有利な補充物質を含み得る。本発明の培養液は、例えば上皮増殖因子 (EGF) を含み得る。存在する場合には、EGFは最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlで培養液中に存在し得る。これらの態様のいくつかにおいて、培養液は最終濃度約10 ng/mlのEGFを含み得る。
【0032】
本発明の培養液はまた、インスリンを含み得る。存在する場合には、インスリンは最終濃度約1μg/ml~10μg/mlで存在し得る。これらの態様のいくつかにおいて、培養液は最終濃度約5μg/mlのインスリンを含み得る
【0033】
培養液は、以下の補充物質のうちの少なくとも1つをさらに含み得る:アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) 。そのような態様において、培養液は、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つ全てを含み得る。これらの態様において、培養液は、最終濃度約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含み得る。
【0034】
本発明の方法では、臍帯組織を、適切な数の(初代)間葉系臍帯ライニング幹細胞が組織から増殖するまで培養することができる。典型的な態様では、臍帯組織を、羊膜の間葉系幹細胞の細胞増殖が約70~約80%の集密度に達するまで培養する。本明細書において、「集密度」または「集密」という用語は、細胞培養の技術分野におけるその通常の意味で用いられ、細胞によって覆われた表面の割合を参照した、培養ディッシュまたはフラスコ中の接着細胞の数の推定値/指標を意味することが留意される。例えば、50パーセントの集密とは、表面のおよそ半分が覆われており、細胞が増殖する余地がなお存在することを意味する。100パーセントの集密とは、表面が細胞によって完全に覆われており、細胞が単層として増殖する余地が残されていないことを意味する。
【0035】
ひとたび適切な数の初代細胞(間葉系臍帯ライニング幹細胞)が組織外植片による臍帯ライニング組織から得られたならば、培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞を取り出す。そうすることによって、羊膜の(初代)単離間葉系幹細胞を含有するマスター細胞バンクを得ることができる。典型的には、間葉系幹細胞は接着細胞であるため、取り出しは標準的な酵素処理を用いて行われる。例えば、酵素処理は、国際米国特許出願第2006/0078993号、国際特許出願WO2006/019357、または国際特許出願WO2007/046775に記載されているようにトリプシン処理を含んでよく、これは、増殖している細胞をさらなる増大のためにトリプシン処理(0.125%トリプシン/0.05% EDTA)によって回収できることを意味する。回収された間葉系幹細胞が、例えばマスター細胞バンクを作製するために用いられる場合には、本明細書において以下に説明されるように、細胞を凍結保存し、さらなる使用のために貯蔵することもできる。
【0036】
ひとたび回収されたならば、間葉系幹細胞を継代培養用の培養容器に移すことができる。継代培養はまた、凍結された初代細胞から、すなわちマスター細胞バンクから開始することもできる。継代培養のために、任意の適切な量の細胞を、細胞培養プレートなどの培養容器中に播種することができる。間葉系細胞を、この目的のために、例えば約0.5×106細胞/ml~約5.0×106細胞/mlの濃度で、継代培養用の適切な培地(最も好都合には、本発明の培養液)中に懸濁することができる。1つの態様では、細胞を、継代培養のために約1.0×106細胞/mlの濃度で懸濁する。継代培養は、単純な培養フラスコ中で培養することによって行うこともできるが、例えば、インキュベーター内で積み重ねることができる、CellStack(Corning、Corning, NY, USA)またはCellfactory(Nunc、Thermo Fisher Scientific Inc.の一部、Waltham, MA, USA)などの多層システム中で培養することによって行うこともできる。あるいは、継代培養はまた、バイオリアクターなどの閉鎖自己完結型システムで行うこともできる。様々なデザインのバイオリアクターが当業者に周知であり、例えば、平行平板、中空繊維、またはマイクロ流体バイオリアクターがある。例えば、Sensebe et al. 「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a review」、前記を参照されたい。市販の中空繊維バイオリアクターの実例は、例えば、臨床試験のための骨髄間葉系幹細胞の増大に使用されているQuantum(登録商標)細胞増殖システム (Terumo BCT, Inc) である(Hanley et al, Efficient Manufacturing of Therapeutic Mesenchymal Stromal Cells Using the Quantum Cell Expansion System, Cytotherapy. 2014 August ; 16(8): 1048-1058を参照されたい)。本発明の間葉系幹細胞集団の継代培養に使用され得る市販のバイオリアクターの別の例は、GE Heathcareから入手可能なXuri細胞増殖システムである。Quantum(登録商標)細胞増殖システムなどの自動化システムにおける間葉系幹細胞の培養は、治療適用のためのワーキング細胞バンクがGMP条件下で生成されるべきであり、多数の細胞が必要である場合に、特に有効である。
【0037】
本発明の間葉系臍帯ライニング幹細胞の継代培養は、本発明の培養液中で行われる。よって、本発明の培養液は、羊膜からの間葉系幹細胞の単離、および継代培養による単離初代細胞のその後の培養の両方のために使用され得る。継代培養についても同様に、間葉系幹細胞は、適切な量の細胞が増殖するまで培養することができる。例証的な態様において、間葉系幹細胞は、それらが約70~約80%の集密度に達するまで継代培養される。
【0038】
間葉系臍帯ライニング幹細胞の集団の単離/培養は、哺乳動物細胞を培養するための標準的な条件下で行われ得る。典型的には、間葉系臍帯ライニング幹細胞の集団を単離する本発明の方法は典型的に、その細胞の由来元の種の細胞を培養するために通常用いられる条件(温度、雰囲気)で行われる。例えば、ヒト臍帯組織および間葉系臍帯ライニング幹細胞はそれぞれ、通常は5% CO2を含む空気雰囲気中で37℃で培養される。これに関連して、本発明において間葉系細胞は、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ヒツジ、サル、またはヒトなどの任意の哺乳動物種に由来してよく、1つの態様においてはヒト起源の間葉系幹細胞が好ましいことが留意される。
【0039】
ひとたび所望の/適切な数の間葉系臍帯ライニング幹細胞が継代培養から得られたならば、継代培養に使用した培養容器から間葉系幹細胞を取り出すことにより、それらを回収する。間葉系幹細胞の回収は典型的には、この場合も同様に、細胞のトリプシン処理を含む酵素処理によって行われる。単離された間葉系幹細胞をその後収集し、直接使用するかまたはさらなる使用のために保存する。典型的に、保存は凍結保存によって行われる。「凍結保存」という用語は、本明細書においてその通常の意味で用いられて、間葉系幹細胞が、(典型的に)-80℃または-196℃(液体窒素の沸点)などの氷点下の温度まで冷却することによって保存される過程を表す。凍結保存は、当業者に公知のように行うことができ、臍帯の細胞中の氷晶の形成を遅らせる、ジメチルスルホキシド (DMSO) またはグリセロールなどの凍結保護剤の使用を含み得る。
【0040】
本発明の単離方法によって得られた間葉系臍帯ライニング幹細胞の単離された集団は、高度に明確でありかつ高度に均一である。本方法の典型的な態様において、単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、以下のマーカーを発現する:CD73、CD90、およびCD105。加えて、これらの態様において、単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、以下のマーカーの発現を欠き得る:CD34、CD45、およびHLA-DR。特定の態様において、単離された間葉系幹細胞集団の約97%もしくはそれ以上、約98%もしくはそれ以上、または約99%もしくはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105を発現しながら、CD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている。
【0041】
したがって、上記の開示と一致して、本発明はまた、臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞集団を対象にし、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞は以下のマーカーの各々を発現する:CD73、CD90、およびCD105。好ましい態様において、単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上の細胞が、CD73+、CD90+、かつCD105+であり、このことは、単離された細胞集団のこの割合が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現することを意味する(本出願の実験の項を参照されたい)。加えて、単離された間葉系幹細胞の少なくとも約90%またはそれ以上、約91%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約92%またはそれ以上、約93%またはそれ以上、約94%またはそれ以上、約95%またはそれ以上、約96%またはそれ以上、約97%またはそれ以上、約98%またはそれ以上、約99%またはそれ以上が、以下のマーカーの発現を欠き得る。特定の態様において、単離された間葉系幹細胞集団の約97%もしくはそれ以上、約98%もしくはそれ以上、または約99%もしくはそれ以上が、CD73、CD90、およびCD105を発現しながら、CD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている。臍帯の羊膜に由来する間葉系幹細胞のそのように高度に均一な集団は、本明細書において初めて報告され、細胞療法に使用されるべき間葉系幹細胞の基準を満たす(実験の項、および例えばSensebe et al.「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a review」、前記もまた参照されたい)。これに関連して、この間葉系幹細胞集団は、本発明の単離方法によって得ることができるが、望ましい場合には、細胞選別などの異なる方法によって得ることもできることが留意される。
【0042】
上記と一致して、本発明はまた、臍帯の羊膜から単離された間葉系幹細胞集団を含む薬学的組成物を対象にし、該幹細胞集団の少なくとも約90%またはそれ以上の細胞はマーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつ任意にCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている。薬学的組成物は、任意の薬学的に許容される賦形剤を含んでよく、任意の所望の薬学的投与方法のために製剤化され得る。薬学的組成物は、例えば全身または局所への適用に適合していてもよい。
【0043】
さらなる局面において、本発明は、単離用の培養液を作製する方法を対象にし、該方法は、最終容量500 mlの培養液を得るために、以下を混合する段階を含む:
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. 最終濃度2.5% (v/v) に達するためのウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml。
【0044】
上記で説明したように、DMEM/F12培地は、DMEMとハムF12培養液の1:1混合物である。したがって、DMEM/F12培地118 mlは、DMEM 59 mlおよびF12 59 mlを含有する。よって、培養液を作製するこの方法を用いた場合、全容量500 mlにおける最終濃度 (v/v) は以下の通りである:
DMEM:250 ml + 59 ml = 309 ml、309/500 = 61.8 % (v/v) に相当する。
M171:118 ml、118/500 = 23.6 % (v/v) に相当する。
F12:59 ml、59/500 = 11.8 % (v/v) に相当する。
【0045】
培養液を作製する本方法の態様は、以下を添加する段階をさらに含む:
v. 最終EGF濃度10 ng/mlを達成するためのEGF保存溶液 (5μg/ml) 1 ml、および
vi. 最終インスリン濃度5μg/mlを達成するためのインスリン保存溶液 (14.28 mg/ml) 0.175 ml。
【0046】
これらの態様において、これらの構成成分i~viの上記の容量が、最終容量499.675 mlの培養液をもたらすことが、本明細書において留意される。さらなる構成成分が培養液に添加されない場合、残りの0.325 ml(合計して500 mlの容量とするため)は、例えば、DMEM、M171、DMEM/F12、またはFBSのいずれかを意味する、構成成分i~ivのいずれかであってよい。あるいは、培養液の全容量が500 mlとなるように、EGFまたはインスリンの保存溶液の濃度を当然ながら調整することもできる。加えて、構成成分i~viは、必ずしもそれらが列挙されている順に添加しなければならないわけではなく、本発明の培養液に達するように、任意の順序を用いてこれらの構成成分を混合することも当然ながら可能である。このことは、例えば、M171とDMEM/F12を共に混合し、次いでDMEMおよびFBSと組み合わせて、本明細書に記載される最終濃度、すなわち、DMEMの最終濃度 約55~65% (v/v)、F12の最終濃度 約5~15% (v/v)、M171の最終濃度 約15~30% (v/v)、およびFBSの最終濃度 約1~8% (v/v) とすることができることを意味する。
【0047】
他の態様において、本方法は、補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの1つまたは複数を0.325 mlの容量でDMEMに添加し、それによって全容量500 mlの培養液とする段階をさらに含む。この態様において、DMEM中のこれらの補充物質の最終濃度は、以下の通りであってよい:
約0.05~0.1μg/mlのアデニン、例えば約0.025μg/mlのアデニン、
約1~10μg/mlのヒドロコルチゾン、
約0.5~5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)、例えば1.36 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3)。
【0048】
上記の開示と一致して、本発明はまた、本明細書に記載される培地を作製する方法によって取得可能であるまたは得られる細胞培養液を対象にする。
【0049】
加えて、本発明はまた、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離する方法に関係し、該方法は、本明細書に記載される方法によって調製された培養液中で羊膜組織を培養する段階を含む。
【0050】
したがって、本発明はまた、以下を含む細胞培養液を対象にする:
‐最終濃度約55~65% (v/v) のDMEM、
‐最終濃度約5~15% (v/v) のF12、
‐最終濃度約15~30% (v/v) のM171、および
‐最終濃度約1~8% (v/v) のFBS。
【0051】
本明細書において記載される培養液のある特定の態様において、培地は、最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む。他の態様において、培養液は、最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含み得る。
【0052】
加えて、培養液は、最終濃度約1 ng/ml~約20 ng/mlの上皮増殖因子 (EGF) をさらに含み得る。ある特定の態様において、培養液は最終濃度約10 ng/mlのEGFを含む。本明細書に記載される培養液は、最終濃度約1μg/ml~10μg/mlのインスリンをさらに含み得る。そのような態様において、培養液は最終濃度約5μg/mlのインスリンを含み得る。
【0053】
本発明の細胞培養液は、以下の補充物質のうちの少なくとも1つをさらに含み得る:アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) 。ある特定の態様において、培養液は、アデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) の3つ全てを含む。存在する場合には、培養液は、最終濃度約0.01~約0.1μg/mlアデニンもしくは約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約0.1~約10μg/mlヒドロコルチゾンもしくは約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含み得る。
【0054】
細胞培養液の態様において、本発明の細胞培養液500 mlは、以下を含む:
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM/F12 118 ml
iv. ウシ胎仔血清 (FBS) 12.5 ml(最終濃度2.5%)。
【0055】
さらなる態様において、細胞培養液は、以下をさらに含み得る:
v. 最終濃度10 ng/mlのEGF、および
vi. 最終濃度5μg/mlのインスリン。
【0056】
インスリンおよびEGFはいずれも、培養液の全容量が500 mlを超えないように、最適な保存溶液を用いて培養液に添加することができる。
【0057】
特定の例において、本発明の培養液の構成成分i~viは、
図5に示される構成成分であり、これは、それらが
図5に示されるカタログ番号を用いて各製造業者から入手されることを意味する。
図5に示されるような構成成分i~viを混合して得られる培地は、本明細書において「PTT-6」とも称される。これに関連して、任意の他の商業的供給業者の、構成物質i~vi、および抗生物質などの任意の他の成分が、本発明の培地を作製する上で使用され得ることが再度留意される。
【0058】
加えて、本発明の細胞培養液は、最終濃度約0.01~約0.1μg/mlアデニンもしくは約0.05~約0.1μg/mlアデニンのアデニン、最終濃度約0.1~10μg/ml、約0.5~約10μg/ml、もしくは約1~約10μg/mlヒドロコルチゾンのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.1~約5 ng/mlもしくは約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含み得る。
【0059】
最後に、本発明はまた、疾患を有する患者を処置する方法を提供し、該方法は、本明細書に開示されるような間葉系臍帯ライニング幹細胞または幹細胞を含有する薬学的組成物を患者に投与する段階を含む。疾患は、上記のような任意の疾患であってよい。対象を処置するために、本発明の間葉系幹細胞集団を、例えば、これらに限定されないが、局所投与、移植、または注射を含む任意の適切な方法で投与することができる。幹細胞集団を、例えば、熱傷または糖尿病創傷などの創傷上に直接配置してもよい(国際特許出願WO2007/046775を参照されたい)。あるいは、幹細胞集団を、皮下に、例えば皮膚下に直接、体脂肪中に、または腹膜内に移植してもよい。
【0060】
本発明は、以下の非限定的な実験実施例によりさらに例証されるであろう。
【実施例0061】
実験実施例
1. 間葉系幹細胞を単離する前の臍帯組織の凍結保存
臍帯組織(臍帯は、母親のインフォームドコンセントを得て供与された)を、臍帯の羊膜から間葉系幹細胞をその後単離するために、以下のように処理した。
【0062】
1.1 臍帯組織サンプルの洗浄:
a. 外科用メスを保護カバーから外す。
b. 鉗子を用いて臍帯をしっかりと保持し、外科用メスを用いて臍帯を10 cm長の小片に切断する。使用できない組織は、元の組織カップに戻す。
c. 10 cm長の臍帯小片を新たな150 mm培養ディッシュに移す。150 mm培養ディッシュをカップの代わりに使用することもできる。
d. 150 mm培養ディッシュのカバーを、鉗子および外科用メスの置き場所として使用する。
e. 30 mlシリンジでPlasmalyte A(Baxter、カタログ# 2B2543Q)25 mlを取り出す。片手でシリンジを45°の角度に保持し、Plasmalyte Aを臍帯組織上に直接分注する。
f. 培養ディッシュをわずかな角度で保持しながら、30 mlシリンジおよび鈍針でPlasmalyte Aを除去する。
g. 使用済みのPlasmalyte Aを、廃物容器となる300 mlトランスファーバッグ中に収集し、それをバイオハザードゴミ箱中に処分する。
h. 必要に応じて各洗浄につき新たな培養ディッシュを用いて、洗浄手順を繰り返す。表面上の血塊がすべて除去されたことを確認する。組織の清浄化が必要である場合には、さらなるPlasmalyte Aを使用することができる。
i. 組織をラベル付きの新たな組織培養ディッシュに入れて、組織の切断を継続する。切断中に組織が乾燥しないように、20 mlのPlasmalyte Aをディッシュ中に入れる。
j. 臍帯を同等のおよそ1-cm切片になるよう切断し、合計で10個の切片とする。
k. 各1 cm切片を、切片当たりおよそ0.3 cm×0.3 cm~0.5 cm×0.5 cmのより小さな小片になるようさらに切断する。
l. ディッシュ中のPlasmalyte Aをすべて除去する。
m. 元のPlasmalyte Aバッグから30 mlシリンジでPlasmalyte A 25 mlを引き出しし、臍帯組織片上に直接分注する。
n. 培養ディッシュを斜めに保持して、組織の洗浄に使用したすべてのPlasmalyte Aを片側に収集し、シリンジおよび鈍針でそれを除去する。
o. 洗浄をもう一度繰り返す。いかなる血塊も残ってはならない。
【0063】
注記:臍帯を直ちに凍結しない場合には、凍結直前まで臍帯組織をPlasmalyte A中で維持する。
【0064】
1.2 臍帯組織の凍結保存:
a. 凍結保存溶液を調製する:
i. 60% Plasmalyte A、30%の5%ヒト血清アルブミン、および10%ジメチルスルホキシド (DMSO) からなる凍結溶液 50mlを調製する。
ii. 150 mlトランスファーバッグに「組織凍結溶液」のラベルを貼り、無菌技法を用いて血漿トランスファーセットをポートに取り付ける。
iii. 元のPlasmalyte Aバッグから30 mlシリンジでPlasmalyte A 30 mlを取り出し、溶液の作製日時と共に「組織凍結溶液」のラベルが貼られたトランスファーバッグ中に移す。
iv. 20 mlシリンジで15 mlの5%ヒト血清アルブミンを取り出し、それをラベル付きのトランスファーバッグ中に移す。
v. DMSO 5 mlをトランスファーバッグに添加する。
vi. 十分に混合し、凍結溶液の混合を記録する。
b. 凍結溶液を添加する前に、組織からPlasmalyte Aを除去する。
c. 60 mlシリンジを用いて、全50 mlの凍結溶液をシリンジ中に引き出し、臍帯組織を含む150 mm細胞培養ディッシュに凍結溶液およそ30 mlを添加する。鈍針をシリンジ上に取り付けて、それを無菌状態に保つ。
d. 組織および凍結溶液を含む培養ディッシュを10分間にわたって1分ごとに旋回させる。
e. 鉗子を用いて、ランダムに選択された切片8個を選び、それらを4本の4 mlクライオバイアルの各々に入れる。ランダムに選択された切片4個を選び、それらを1本の1.8 mlクライオバイアルに入れる。これらの切片は、血塊を含んではならない。
f. 臍帯組織を含む各クライオバイアルに、残っている凍結溶液を、4 mlチューブについては3.6 ml充填線まで、および1.8 ml Nuncバイアルについては1.8 ml線まで満たす。
g. Bactec Lytic/10 - Anaerobic/Fボトル1本およびBactec Pluc Aerobic/Fボトル1本に組織IDのラベルを貼る。
h. シリンジおよび鈍針で培養ディッシュから凍結溶液20 mlを取り出し、Bactecバイアルをアルコール綿で拭いた後、鈍針を18g針に交換し、好気性および嫌気性Bactecボトルにそれぞれ10 mlを接種する。
i. 制御速度フリーザーを起動する。
j. 制御速度フリーザーが完了した後、ユニットをさらなる使用時まで連続温度モニター付き液体窒素フリーザー中に置いておく。
【0065】
2. 臍帯組織からの間葉系臍帯ライニング幹細胞の単離
2.1. 臍帯組織からMSCを処理するための培地の調製:
a. PTT6(培養液/増殖培地) 500 mlを作製するため、以下のものを列挙されている順に添加する:
i. DMEM 250 ml
ii. M171 118 ml
iii. DMEM F12 118 ml
iv. FBS 12.5 ml(最終濃度2.5%)
v. EGF 1 ml(最終濃度10 ng/ml)
vi. インスリン0.175 ml(最終濃度5μg/ml)。
【0066】
構成成分i~viの上記の容量は、最終容量499.675 mlの培養液をもたらす。さらなる構成成分が培養液に添加されない場合、残りの0.325 ml(合計して500 mlの容量とするため)は、例えば、DMEM、M171、DMEM/F12、またはFBSのいずれかを意味する、構成成分i~ivのいずれかであってよい。あるいは、培養液の全容量が500 mlとなるように、EGFまたはインスリンの保存溶液の濃度を当然ながら調整することもできる。あるいは、ペニシリン-ストレプトマイシン-アンホテリシンなどの抗生物質の保存溶液を、最終容量500 mlとなるように添加することもできる。補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの1つまたは複数を0.325 mlの容量で培養液に添加し、それによって全容量500 mlの培養液とすることも可能である。
【0067】
vii. ボトルに、培地の調製日、操作者のイニシャル、および「有効期限」という語句とそれに続く有効期限日と共に、「PTT6」のラベルを貼る。有効期限日は、構成成分のいずれかの最も早い有効期限日か、または調製日から1ヵ月後かの、いずれか早い方である。
【0068】
b. リンス培地(カルシウムおよびマグネシウム不含かつ5% FBS含有ハンクス緩衝塩類溶液 (HBSS))を作製するため、50 ml遠心管中のHBSS 47.5 mlにFBS 2.5 mlを添加する。チューブに、操作者のイニシャルおよび培地の作製日と共に、「リンス培地」のラベルを貼る。
c. Bactec Lytic/10 - Anaerobic/F (Becton Dickinson & Company) およびBactec Plus + Aerobic/F (Becton Dickinson & Company) を用いて、すべての培地を無菌性について試験する。調製済みの培地20 mlを各ボトルに注入する。
【0069】
2.2 MSC回収のための臍帯組織の解凍:
a. 操作者がクリーンルーム内でサンプルを処理する準備ができた時点で、解凍を開始する。バイアルが同じドナーに由来する場合を除いて、一度に2本以上のバイアルを解凍してはならない。
b. ウォーターバスを消毒剤および続いて70%イソプロパノールで拭き、これを滅菌水1 Lで満たす。ウォーターバスを36~38℃まで加熱する。
c. クリーンルーム内のバイオセーフティキャビネット下で、70%~90% PlasmaLyte Aからなるリンス培地10 mlを調製する。10 mlシリンジに取り付けられた0.2-μmシリンジフィルターでこの溶液を滅菌濾過し、使用時まで溶液を冷蔵して維持する。
d. 50 mlコニカルチューブに処理ラベルを貼る。
e. ウォーターバス温度が36~38℃であることを確認する。
f. 液体窒素貯蔵から組織のバイアルを取り出し、滅菌水1 Lで満たされた37℃ウォーターバス内で迅速に解凍する。Mr. Frosty Nalgene Cryo 1℃凍結容器のバイアルホルダーは、バイアルを所定の位置に収めて浮遊し、サンプルを解凍する場合に浮遊ラックとして使用することができる。
g. ウォーターバスからバイアルを取り出し、それらに70%イソプロパノール溶液をスプレーする。ウォーターバスからバイアルを引き上げるのに適したタイミングは、バイアル中に小さな氷が浮いているのが見える時である‐バイアルの内部温度が37℃未満であることを示唆する。
h. バイアルをパススルーに置き、クリーンルーム処理技術者に知らせる。
【0070】
2.3 組織処理の準備:
a. 臍帯組織処理は、環境モニター (EM) クリーンルーム内で行わなければならない。各シフトの終了時には、部屋およびフードの完全な清掃を行う。
b. バイオセーフティキャビネットを準備/清掃する。
c. バイオセーフティキャビネット内での作業中は、生物粒子計数を行う。
d. 包装の破損および有効期限日についてそれぞれチェックしながら、必要な物品をすべてバイオセーフティキャビネット内に集める。シリンジ、血清用ピペット、滅菌鉗子、外科用メス、組織プレート、および針を取り扱う場合には、滅菌生成物と接触するであろう表面に決して触れないようにする。注射筒、管類、プランジャーチップ、および/または針のキャップもしくはケースの外部のみ、安全に取り扱ってもよい。表面に触れるか、または表面が非滅菌表面に触れた場合には、物品を廃棄する。
e. 使用するすべての試薬および物品のロット番号および有効期限日(該当する場合)を記録する。
f. 70%アルコールで湿らせたリントフリーワイプでバイアルを清浄化してから、バイオセーフティキャビネット内に移動させることにより、解凍バイアルを受け取る。
g. シリンジに装着した吸引用針を用いて、バイアルからできるだけ多くの液体を抜き取る。組織を吸引しないようにする。
h. 滅菌鉗子を用いて、組織を滅菌100 mmペトリ皿に移す。
i. 組織断片に一定分割量5 mlのリンス培地を添加する。
j. 内容物を15~30秒間旋回させ、次いでピペットまたは吸引針付きシリンジでリンス培地を除去する。このリンス過程を2回繰り返す。
k. 組織が乾燥しないように、リンス培地 2 mLを組織に添加する。
【0071】
2.4. 組織からのMSC増殖の開始:
a. 6ウェルプレートの底に、MSCロット番号または臍帯組織IDおよび増殖の開始日と共に、「増殖1」のラベルを貼る。60 mm組織培養ディッシュを使用する場合には、ディッシュの底にグリッドを描いて、プレートを4つの区分に分割する。
b. 滅菌使い捨て鉗子を用いて、3×3 mm~5×5 mmの組織1個を各ウェルに入れる。60 mm組織培養ディッシュを使用する場合には、組織を各区分の中央に置いて組織を離しておく(互いに1 cm超)。
c. 各ウェルをPTT6 3 mlで満たす。
d. 30 mlシリンジに連結した吸引用針を用いて、組織をかろうじて覆う程度に十分な培地を抜き取る。プレートを傾けてはならない。吸引針でウェルの底を触れてはならない。
e. 倒立光学顕微鏡を用いて、細胞増殖を毎日観察する(24±6時間)。光学顕微鏡の代わりに、リアルタイム細胞培養イメージングシステムを使用してもよい。
f. 培地を毎日交換する。必ず使用前に培地を室温に平衡化する。
i. 培地を吸引除去する。
ii. PTT6 3 mlを添加する。
iii. 組織が培地中にかろうじて浸っている状態まで、吸引する。
g. 組織から細胞増殖が観察された時点で、プレートに「増殖2」のラベルを貼ることを除いて上記の4.a~4.eと同じ手順を用いて、組織を新たな6ウェルプレートに移す。PTT6 2 mlを各ウェルに添加することにより、「増殖1」プレート中の細胞増殖を維持する。集密度について毎日観察する。培地を2~3日ごとに置換する(必ず使用前に培地を室温に平衡化する)。
h. 「増殖2」プレート中で細胞増殖が観察された時点で、プレートに「増殖3」のラベルを貼ることを除いて段階4.a~4.eを繰り返す。PTT6 2 mlを各ウェルに添加することにより、「増殖2」プレート中の細胞増殖を維持する。集密度について毎日観察する。培地を2~3日ごとに置換する(必ず使用前に培地を室温に平衡化する)。
i. 「増殖3」プレート中で増殖が観察された時点で、組織を廃棄する。組織が非常に小さく、細胞増殖を妨げないようであれば、継代培養の際に組織を処分する。
j. 細胞が40~50%の集密度に達した時点で、細胞を毎日観察して過剰な増大を防ぐ。
k. 細胞が70~80%の集密度に達した時点で、細胞を継代培養する。細胞を80%の集密を超えるまで増大させてはならない。
【0072】
組織外植片のサイズが約1~3 mmであり、組織外植片/細胞の培養が175 mm角型培養ディッシュ中で行われる場合、外植片から回収される間葉系幹細胞の平均数は、典型的に細胞約4,000~6,000個/外植片である。よって、間葉系幹細胞を外植片48個から同時に増殖させる場合、約300,000個の細胞が回収時に得られ得る。外植片から収集されたこれら300,000個の間葉系幹細胞は次いで、以下の実施例2.5に記載されるように、175 cm2細胞培養フラスコにそのような300,000個の細胞を播種することにより、継代培養に使用することができる(これは継代1代目と称され得る)。次いでこの継代1代目から得られた間葉系幹細胞を用いて、以下の実施例2.5に記載されるように、再度175 cm2フラスコに播種し(継代2代目)、細胞を増大させることができる。継代1代目および継代2代目の両方から得られた細胞を凍結保存によって「バンク化」することができ、継代2代目後に得られた間葉系幹細胞がマスターセルバンクを表すと見なし、これは、以下の実施例2.7において説明されるように、例えばバイオリアクター中で間葉系幹細胞をさらに増大させるためのものとなる。
【0073】
2.5. 細胞培養ディッシュ中でのMSCの継代培養
a. バイオセーフティキャビネット内での作業中は、生物粒子計数を行う。使用前にすべての培地を室温に平衡化する。
b. 細胞増殖が約70~80%の集密度に達した時点で、細胞を継代培養する。
i. ペトリ皿からPTT6を除去する。
ii. カルシウムおよびマグネシウム不含HBSSでリンスする。
iii. 1×TrypLE-EDTA 0.2 mlを添加し、1~2分間旋回させる。
iv. ディッシュを30~45°傾けて、細胞が重力流により下方に移動できるようにする。プレートの側面を穏やかにタッピングして、脱離を促進させる。
v. PTT6 1 mlを添加する。ピペットで穏やかに上下させ、次いで細胞を15 ml遠心管に移す。各ウェルごとに清潔なピペットチップを使用する。全6ウェルからの細胞を単一の15 mlチューブ中にプールする。
vi. 1200 rpmで10分間遠心分離する。
vii. 上清を除去し、PTT6 5 mlで細胞を再懸濁する。
c. MSCを継代培養する。
i. 細胞懸濁液50μlを分取し、トリパンブルー排除アッセイによりTNCおよび生存率についてアッセイする。
ii. 血球計算盤を用いて細胞を計数する。細胞20~100個/区画を計数するよう予測する。数が100よりも多い場合には、元のサンプルを1:5に希釈し、血球計算盤を用いてトリパンブルー法を繰り返す。
iii. 生細胞/mlおよび全生細胞を計数する:
1. 生細胞/ml = 生細胞数×希釈係数×104
2. 全生細胞 = 生細胞数×希釈係数×全容量×104
iv. %生存率を計数する:
1. %生存率= 生細胞数×100 /(生細胞数 + 死細胞数)
v. 細胞懸濁液を1.0×106細胞/mlに希釈する:
1. 「X」容量 = 全生細胞/106細胞/ml
2. 例えば、全生細胞数が1.0×107個である場合;
3. 「X」= 107/106細胞/ml、すなわち10 mlであり、したがって、細胞懸濁液(5 mlである)に5 mlを添加することにより、全細胞容量を10 mlにする。
vi. 細胞懸濁液が106個/ml未満である場合には、各150 mmペトリ皿または175 cm2フラスコに細胞2×106個を播種するのに必要な容量を決定する。
1. 細胞2×106個に対する容量 = 細胞2×106個÷生細胞/ml
2. 例えば、生細胞/mlが8×105細胞/mlである場合、細胞2×106個÷8×105細胞/ml、すなわち2.5 mlが必要である。
vii. MSCマーカー解析のために0.5 mlを取り分けておく。
viii. 細胞2×106個をPTT6 30 mlで各150 mmペトリ皿または175 cm2フラスコに播種する。
ix. 接着、コロニー形成、集密について、3日ごとに観察する。細胞が40~50%の集密に達した時点で、細胞を毎日~2日ごとに観察して過剰な増大を防ぐ。細胞を80%の集密を超えるまで増大させてはならない。光学顕微鏡の代わりに、リアルタイム細胞培養モニタリングシステムを使用することができる。
x. 培地を2~3日ごとに置換する。
【0074】
2.6 MSC細胞の凍結保存
a. バイオセーフティキャビネット内での作業中は、生物粒子計数を行う。
b. 細胞が70~80%の集密に達した時点で、各150 mmペトリ皿または175 cm2フラスコに対して1×TrypLE-EDTA 2 mlを用いて細胞を脱離させる。
i. ペトリ皿からPTT6を除去する。
ii. カルシウムおよびマグネシウム不含のHBSSまたはPBS 5 mlで洗浄する。
iii. 1×TrypLE-EDTA 2 mlを添加し、1~2分間旋回させる。
iv. ディッシュを30~45°傾けて、細胞が重力流により下方に移動できるようにする。ペトリ皿の側面を穏やかにタッピングして、脱離の促進を助ける。
v. PTT6 10 mlを添加して、TrypLEを不活性化する。十分に混合して、細胞塊を解離させる。
vi. パスツールピペットを用いて、細胞を15 ml遠心管に移す。
vii. 1200 rpmで10分間遠心分離する。
viii. 培地を吸引し、PTT6 10 mlで再懸濁する。
ix. 50μlを分取し、上記のように全生細胞数および%生存率を決定する。細胞が凝集し始める可能性があるため、細胞計数は15分以内に行う必要がある。
c. 凍結保存用の細胞を調製する。
i. 細胞懸濁培地および凍結保存培地を調製し、細胞を凍結させる。
【0075】
2.7. Quantumバイオリアクター (Terumo BTC, Inc.) 中でのMSCの継代培養(増大)
Quantumバイオリアクターを用いてMSCを増大させることも可能である。Quantumバイオリアクター中で増大させるための出発細胞数は、1回の実行当たり2000~3000万個の細胞であるべきである。1回の実行当たりの典型的な収量は、回収時に3~7億個のMSCである。バイオリアクターは、製造業者のプロトコールに従って操作される。そのようにして得られた間葉系幹細胞は典型的に凍結保存され(以下を参照されたい)、ワーキング細胞バンクとなる。
【0076】
材料/試薬:
1. Quantum増大セット
2. Quantum廃液バッグ
3. Quantum培地バッグ
4. Quantumインレットバッグ
5. PTT6
6. PBS
7. フィブロネクチン
8. TrypLE
9. 3 mlシリンジ
10. グルコース試験紙
11. 乳酸試験紙
12. 60 ml細胞培養プレートまたはその同等物
13. 医療等級5% CO2気体混合物
14. 50 mlコンビチップ
【0077】
装置:
1. バイオセーフティキャビネット
2. グルコース測定器(Bayer Healthcare/Ascensia Contour血糖測定器)
3. Lactate Plus (Nova Biomedical)
4. ヘッドを備えた蠕動ポンプ
5. 遠心分離機、Eppendorf 5810
6. 滅菌チューブコネクター
7. M4連続ピペッター
8. RFシーラー
【0078】
手順:
1. Quantumバイオリアクターの準備
a) Quantumバイオリアクターの事前準備
b) バイオリアクターのコーティング:
1) バイオセーフティキャビネット内でフィブロネクチン溶液を調製する。
1) 凍結乾燥フィブロネクチンを室温に順化させる(室温で≧15分)。
2) 滅菌蒸留水5 mlを添加する;旋回も撹拌もしてはならない。
3) 30分間かけてフィブロネクチンを溶液の状態にする。
4) 18g針を取り付けた10 mlシリンジを用いて、PBS 95 mlを含むCcellインレットバッグにフィブロネクチン溶液を移す。
2) バッグを「試薬」ラインに接続する。
3) 気泡をチェックする(気泡は、「IC空気の除去」または「EC空気の除去」を使用することにより、およびインレット供給源として「洗浄」を使用することにより、除去することができる)。
4) バイオリアクターのコーティングのプログラムを開くまたは設定する(
図1、段階3~5)。
5) プログラムを実行する。
6) プログラムを実行してバイオリアクターをコーティングしている間に、PTT6培地4 Lの培地バッグを準備する。
7) 滅菌チューブコネクターを用いて、培地バッグをIC培地ラインに接続する。
8) バイオリアクターのコーティング段階が完了した時点で、RFシーラーを用いて、フィブロネクチン溶液に使用した細胞インレットバッグを取り外す。
c) 過剰なフィブロネクチンの洗浄除去
d) 培地によるバイオリアクターの馴化
2. Quantumバイオリアクター中での細胞の培養
a) 均一な懸濁液を用いた細胞の負荷および接着:
b) 細胞の栄養補給および培養
1) 培地流速を選択して細胞に栄養を補給する。
2) 乳酸およびグルコースについて毎日サンプリングする。
3) 乳酸レベルが上昇するにつれて、培地の流速を調整する。実際の最大の許容乳酸濃度は、細胞の由来元のフラスコ培養物によって規定される。十分なPTT6培地が培地バッグ中に入っているかを確認する。必要に応じて、PTT6培地バッグを新たなPTT6培地バッグと交換する。
4) 流速が所望の値に達した時点で、乳酸レベルを8~12時間ごとに測定する。乳酸レベルが低下しない場合、または乳酸レベルが上昇し続ける場合、細胞を回収する。
3. Quantumバイオリアクターからの細胞の回収
a) 乳酸濃度が低下しない時点で、乳酸およびグルコースについて最後にサンプリングした後、細胞を回収する。
b) 細胞の回収:
1) 滅菌チューブコネクターを用いて、TrypLE 100 mlで満たした細胞インレットバッグを「試薬」ラインに接続する。
2) 十分なPBSがPBSバッグ中に入っていることを確かめる。そうでない場合には、滅菌チューブコネクターを用いて、少なくとも1.7リットルのPBSが入った新たなバッグを「洗浄」ラインに接続する。
3) 回収プログラムを実行する。
4. 細胞の凍結保存
1) ひとたび細胞が回収されたならば、細胞を50 ml遠心管に移して、細胞をペレット化する。
2) 冷細胞懸濁溶液25 mlを用いて再懸濁する。SysmexまたはBiorad細胞計数器を用いて、細胞を計数する。細胞数レポートを各Quantum処理バッチ記録に添付する。
3) 細胞濃度を2×10
7個/mlに調整する。
4) 等容量の凍結保存溶液を添加し、十分に混合する(振盪もボルテックスもしてはならない)。
5) 連続ピペッターを用いて、凍結保存剤中の細胞懸濁液1 mlを各1.8 mlバイアル中に添加する。制御速度フリーザーを用いて、SOP D6.100 CB凍結保存に記載されているように、CRFプログラムを用いて凍結保存する。
6) バイアルを指定の液体窒素貯蔵スペース内に貯蔵する。
7) CRF実行レポートを各MSC P3-Quantum処理バッチ記録の用紙に添付する。
【0079】
3. 異なる培養液を用いて臍帯組織から単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞集団における幹細胞マーカー発現の解析
フローサイトメトリー実験を実施して、臍帯から単離された間葉系幹細胞を間葉系幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105の発現について解析した。
【0080】
これらの実験のために、実施例2に記載されるように、3種の異なる培養液中で臍帯組織を培養することにより、間葉系幹細胞を臍帯組織から単離し、続いて各培地中で間葉系幹細胞を継代培養した。
【0081】
これらの実験において、以下の3種の培養液を使用した:a) 10% FBS (v/v) を補充した90% (v/v/ DMEM、b) 90% (v/v) CMRL1066および10% (v/v) FBSからなる、米国特許出願第2006/0078993号および対応する国際特許出願WO2006/019357に記載されている培養液PTT-4(WO2006/019357のパラグラフ [0183] を参照されたい)、ならびにc) 本明細書においてその組成が記載される、本発明の培養液PPT-6。このフローサイトメトリー解析において、臍帯ライニング間葉系幹細胞 (CLMC) 集団の2つの異なるサンプルを、使用した3種の培養液の各々について解析した。
【0082】
フローサイトメトリー解析のために以下のプロトコールを使用した。
【0083】
【0084】
手順
a) 臍帯ライニング膜からの細胞の単離および培養
1. 実施例2で説明されているように、外植片組織サンプルを細胞培養プレート内でインキュベートし、各培地中に浸漬させ、次いで37℃のCO2インキュベーター内でこれを維持した。
2. 3日ごとに培地を交換した。
3. 組織培養外植片からの細胞増殖を光学顕微鏡下でモニターした。
4. 約70%の集密の時点で、細胞をトリプシン処理(0.0125%トリプシン/0.05% EDTA)によってディッシュから分離し、フローサイトメトリー実験に使用した。
b) 実験用の細胞のトリプシン処理
1. 細胞培養プレートから培地を除去する。
2. FBSはトリプシンの酵素作用を妨げるため、滅菌1×PBSで穏やかにリンスして微量のFBSを除去する。
3. 1Xトリプシンを細胞培養プレートに添加し、37℃で3~5分間インキュベートする。
4. 顕微鏡下で細胞を観察して、それらが除去されたことを確実にする。FBSを含有する完全培地(10% FBSを含むDMEM)を添加することにより、トリプシンを中和する。
5. ピペットを使用して、培地中でプレートの壁に対して細胞をピペッティングすることによって細胞塊を破壊する。細胞懸濁液を収集し、50 ml遠心管に移す。
6. 滅菌1×PBSをプレートに添加しこれをリンスし、細胞懸濁液を同じ遠心管に収集する。
7. これを1800 rpmで10分間遠心分離する。
8. 上清を廃棄し、細胞ペレットをPBA培地で再懸濁する。
c) 細胞の計数
1. 好ましくは血球計算盤およびそのカバーガラスを70%エタノールで洗浄し、乾燥させてからキムワイプ(リントフリー紙)で拭くことにより、それらが清潔でかつ乾燥していることを確実にする。
2. 懸濁状の少量の細胞を微量遠心管に分取し、BSCフードから取り出す。
3. 等容量のトリパンブルーで懸濁状の細胞を染色する、例えば、懸濁液500μlに対してトリパンブルー500μlを添加する(希釈係数 = 2X、0.2%トリパンブルー溶液となる)。
4. トリパンブルーは毒性であり、非生存細胞の増加につながり、偽細胞数を生じるため、細胞をトリパンブルーに30分よりも長く曝露しないようにする。
5. 細胞懸濁液混合物20μlを血球計算盤の各チャンバーに添加し、光学顕微鏡下で見る。
a. 上部および下部チャンバー内の合計8つの区分について、血球計算盤の各区分内の生細胞(明るい細胞;非生細胞は容易にトリパンブルーを取り込み、したがって色が濃い)の数を計数する。全細胞数は、(平均細胞数/区分)×104細胞/mlとして与えられる。
d) 細胞の染色
i. 細胞を染色する前の準備
・それぞれ50,000個の細胞を含有する細胞懸濁液を、2つ組で3本のチューブ(CD73、CD90、CD105)および2本のチューブ(陰性対照)に分取する。
ii. 一次抗体 (Ab) による染色
・一次抗体1μl [0.5 mg/ml Ab] を細胞懸濁液100 ulに添加する、4℃で45分間インキュベートする。
・PBAで1 mlに合わせる。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・PBA 1 mlを添加し、ペレットを再懸濁する。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・PBA 100 ul中に再懸濁する。
iii. 二次Abによる染色‐暗下で
・二次抗体1 ul [0.5 mg/ml ab] を細胞懸濁液100 ulに添加する、4℃で30分間インキュベートする。
・PBAで1 mlに合わせる。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・PBA 1 mlを添加し、ペレットを再懸濁する。
・8000 rpm、4℃で5分間遠心分離する。
・上清を除去する。
・フローサイトメトリー解析のために、PBA 200~300 ul中に再懸濁する。
・BD FACS CANDOフローサイトメトリーで読み取るために、細胞をFACSチューブに移す。
【0085】
フローサイトメトリー解析の結果を
図6a~
図6cに示す。
図6aは、DMEM/10% FBS中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、
図6bは、PTT-4中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示し、ならびに
図6cは、PTT6-中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞の割合を示す。
図6aからわかるように、培養液培養としてDMEM/10% FBSを用いて単離された集団は、約75% CD73+細胞、78% 90+細胞、および80% CD105+細胞(2つの実験の平均値)を有するのに対して、PPT-4培養液を用いて臍帯組織を単離/培養した後の(
図6bを参照されたい)、CD73陽性、CD90陽性、およびCD105陽性である間葉系幹細胞の数は、2つの実験の平均値で約87%(CD73+細胞)、93% /CD90+細胞)、および86%(CD105+細胞)である。本発明のPTT-6培地中で培養することによって得られた間葉系幹細胞集団の純度は、3つ全てのマーカー(CD73、CD90、CD105)について少なくとも99.0%であり、このことは、この細胞集団の純度が、PPT-4培地またはDMEM/10% FBSを用いた培養の場合よりも有意に高いことを意味する。加えて、およびさらにより重要なことには、PTT-6中で培養することによって得られた間葉系幹細胞集団は、本質的に100%純粋でかつ明確な幹細胞集団である。これにより、本発明の幹細胞集団は、幹細胞ベースの療法の理想的な候補となる。したがって、間葉系臍帯ライニング幹細胞のこの集団は、そのような幹細胞ベースの治療アプローチの至適基準になり得る。
【0086】
図6に示される知見は、
図7aおよび
図7bに示されるフローサイトメトリー解析の結果によってさらに裏付けられる。
図7aは、PTT-6培地中で臍帯組織から単離し培養した後の、幹細胞マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された間葉系臍帯ライニング幹細胞(臍帯の羊膜の間葉系幹細胞)の割合を示す。
図7aに示されるように、間葉系幹細胞集団は97.5%の生細胞を含有し、そのうちの100%がCD73、CD90、およびCD105の各々を発現するのに対して(「CD73+CD90+」および「CD73+CD105+」の列を参照されたい)、幹細胞集団の99.2%がCD45を発現せず、かつ幹細胞集団の100%がCD34およびHLA-DRを発現しなかった(「CD34-CD45-」および「CD34-HLA-DR-」の列を参照されたい)。したがって、PTT-6培地中で培養することによって得られた間葉系幹細胞集団は、間葉系幹細胞が細胞療法に使用されることを実現させるための基準(幹細胞集団の95%またはそれ以上がCD73、CD90、およびCD105を発現する一方で、幹細胞集団の98%またはそれ以上がCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、Sensebe et al. 「Production of mesenchymal stromal/stem cells according to good manufacturing practices: a review」、前記を参照されたい)を満たす、本質的に100%純粋でかつ明確な幹細胞集団である。本明細書において、本発明の羊膜の間葉系幹細胞が標準的な培養条件においてプラスチックに対して接着性であり、インビトロで骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨芽細胞に分化し、米国特許第9,085,755号、米国特許第8,287,854号、またはWO2007/046775を参照されたい、したがって細胞療法における間葉系幹細胞の使用に関して一般に許容される基準を満たすことが留意される。
【0087】
図7bは、CD73、CD90、およびCD105を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの発現を欠いている、単離された骨髄間葉系幹細胞の割合を示す。
図7bに示されるように、骨髄間葉系幹細胞集団は94.3%の生細胞を含有し、そのうちの100%がCD73、CD90、およびCD105の各々を発現するのに対して(「CD73+CD90+」および「CD73+CD105+」の列を参照されたい)、骨髄幹細胞集団の62.8%のみがCD45の発現を欠き、かつ幹細胞集団の99.9%がCD34およびHLA-DRの発現を欠いていた(「CD34-CD45-」および「CD34-HLA-DR-」の列を参照されたい)。したがって、間葉系幹細胞の至適基準であると見なされる骨髄間葉系幹細胞は、本出願の(臍帯の羊膜の)間葉系幹細胞集団よりも、幹細胞マーカーに関して均一性/純度がはるかに低い。この知見から、本発明の幹細胞集団が、幹細胞ベースの療法の理想的な候補となり得、幹細胞ベースの治療アプローチの至適基準になり得ることもまた示される。
【0088】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に開示された本発明に対して種々の置き換えおよび修正を行うことができることは、当業者に容易に明白であろう。
【0089】
本明細書において言及されるすべての特許および出版物は、本発明が関連する当技術分野における当業者のレベルを示す。特許および出版物はすべて、個々の出版物が具体的にかつ個別に参照により組み入れられることが示されるのと同程度に、参照により本明細書に組み入れられる。
【0090】
本明細書において例示的に記載された発明は、本明細書において具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限の不在下で適切に行うことができる。したがって、例えば、「含む (comprising)」、「含む (including)」、「含有する」等の用語は、包括的にかつ非限定的に読み取られるものとする。さらに、本明細書において使用される用語および表現は、限定の用語ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用には、示されかつ説明された特徴またはその一部のいかなる等価物も除外する意図はなく、特許請求される本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。したがって、本発明を好ましい態様および任意選択の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書において開示されているその中で具体化された発明の修正および変更が、当業者に委ねられてよいこと、ならびにそのような修正および変更が本発明の範囲内であると見なされることが理解されるべきである。本発明は、本明細書において幅広くかつ総称的に記載されている。総称的な開示の範囲内に入るより狭い種および亜属集団の各々もまた、本発明の一部を形成する。これには、除かれた題材が本明細書において具体的に挙げられているか否かにかかわらず、任意の主題を属から除外する条件付きのまたは負の限定を用いた本発明の総称的記載も含まれる。加えて、本発明の特徴または局面がマーカッシュ群の観点から記載されている場合、当業者は、本発明がまたそれにより、そのマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点からも記載されていることを認識するであろう。本発明のさらなる態様は、添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
臍帯羊膜の単離された間葉系幹細胞集団であって、該単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも97%またはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、前記間葉系幹細胞集団。
単離された間葉系幹細胞集団の少なくとも約98%もしくはそれ以上または約99%もしくはそれ以上の細胞が、CD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、請求項1に記載の間葉系幹細胞集団。
臍帯羊膜の単離された間葉系幹細胞集団を含む薬学的組成物であって、該幹細胞集団の少なくとも97%またはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、前記薬学的組成物。
前記幹細胞集団の少なくとも約98%もしくはそれ以上または少なくとも99%もしくはそれ以上の細胞が、マーカーCD73、CD90、およびCD105の各々を発現し、かつマーカーCD34、CD45、およびHLA-DRの各々の発現を欠いている、請求項4に記載の薬学的組成物。
v. 最終濃度10 ng/mlを達成するためのEGF保存溶液 (5μg/ml) 1 ml
vi. 最終濃度5μg/mlを達成するためのインスリン保存溶液 (14.28 mg/ml) 0.175 ml
を添加する段階をさらに含む、請求項8に記載の方法。
補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの1つまたは複数をDMEMに添加し、それによって全容量500 mlの培養液とする段階をさらに含む、請求項8または9に記載の方法。
臍帯の羊膜から間葉系幹細胞を単離する方法であって、請求項8~10のいずれか一項に記載される方法によって調製された培養液中で羊膜組織を培養する段階を含む、前記方法。
最終濃度約57.5~62.5% (v/v) のDMEM、最終濃度約7.5~12.5% (v/v) のF12、最終濃度約17.5~25.0% (v/v) のM171、および最終濃度約1.75~3.5% (v/v) のFBSを含む、請求項14に記載の細胞培養液。
最終濃度約61.8% (v/v) のDMEM、最終濃度約11.8% (v/v) のF12、最終濃度約23.6% (v/v) のM171、および最終濃度約2.5% (v/v) のFBSを含む、請求項15に記載の細胞培養液。
補充物質であるアデニン、ヒドロコルチゾン、および3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項14~20のいずれか一項に記載の細胞培養液。
最終濃度約0.05~約0.1μg/mlのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) を含む、請求項21または22に記載の細胞培養液。
v. 最終濃度10 ng/mlのEGF
vi. 最終濃度5μg/mlのインスリン
vi. インスリン0.175 ml(最終濃度5μg/ml)
をさらに含む、請求項24に記載の細胞培養液。
最終濃度約0.05~約0.1μg/mlのアデニン、最終濃度約1~約10μg/mlのヒドロコルチゾン、および/または最終濃度約0.5~約5 ng/mlの3,3',5-トリヨード-L-チロニンナトリウム塩 (T3) をさらに含む、請求項24または25に記載の細胞培養液。