(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036938
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】病原体の毒性を低減するためのプロバイオティクス分子
(51)【国際特許分類】
C07K 7/06 20060101AFI20230307BHJP
A61P 13/02 20060101ALI20230307BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230307BHJP
A61K 38/07 20060101ALI20230307BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230307BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20230307BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20230307BHJP
C07K 5/107 20060101ALI20230307BHJP
C07K 5/113 20060101ALI20230307BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20230307BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20230307BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20230307BHJP
C07K 14/315 20060101ALI20230307BHJP
C07K 14/335 20060101ALI20230307BHJP
C07K 14/195 20060101ALI20230307BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20230307BHJP
【FI】
C07K7/06
A61P13/02 105
A61P31/04 ZNA
A61K38/07
A61K38/08
A61P17/02
A61K38/00
C07K5/107
C07K5/113
A23L33/18
A23L33/135
C12N1/20 E
C07K14/315
C07K14/335
C07K14/195
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023000419
(22)【出願日】2023-01-05
(62)【分割の表示】P 2019572266の分割
【原出願日】2018-03-16
(31)【優先権主張番号】62/472,061
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519337385
【氏名又は名称】マイクロシンテシス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】セラ,モニカ アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】カーチス,サラ エム.
(72)【発明者】
【氏名】ロプケ,ジョナサン パトリック
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者の非腸管感染を予防するおよび/または治療するのに使用されるプロバイオティクス細菌由来のペプチドを提供する。
【解決手段】プロバイオティクス細菌由来である、患者の非腸管感染を予防及び/若しくは治療するための、ならびに/または患者の非腸管感染の毒性を低下させるためのペプチドであって、前記プロバイオティクス細菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ペディオコッカス(Pediococcus)およびこれらの組み合わせから選択される、ペプチドを提供する。プロバイオティクス細菌由来のペプチドはまた、患者の非腸管感染の毒性を低減するのに使用できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロバイオティクス細菌由来である、患者の非腸管感染を予防および/もしくは治療す
るためのならびに/または患者の非腸管感染の毒性を低下させるためのペプチド。
【請求項2】
前記プロバイオティクス細菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(La
ctococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacter
ium)、ペディオコッカス(Pediococcus)およびこれらの組み合わせから選択される、請求
項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ラクトバチルス(Lactobacillus)が、ラクトバチルス アシドフィルス(La-5
)(Lactobacillus acidophilus (La-5))、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacill
us fermentum)、ラクトバチルス ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチル
ス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス ヘルヴェティカス(Lactobacil
lus helveticus)、およびラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)から
選択される、請求項2に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ラクトコッカス(Lactococcus)が、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lact
is)である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)が、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bi
fidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)
、ビフィドバクテリウム インファンティス(Bifidobacterium infantis)およびビフィド
バクテリウム クルディラクティス(Bifidobacterium crudilactis)ならびにこれらの混
合物から選択される、請求項2に記載のペプチド。
【請求項6】
前記ストレプトコッカス(Streptococcus)が、ストレプトコッカス サーモフィラス(St
reptococcus thermophilus)である、請求項2に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが、尿路感染、膣感染、気道感染、胃感染、バイオフィルム産生感染、乳
房炎、皮膚感染、および口腔感染からなる群より選択される感染に対して有効である、請
求項1に記載のペプチド。
【請求項8】
前記ペプチドが、大腸菌(E. coli)、UPEC、インフルエンザ菌(Haemophilus influe
nzae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoni
ae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ヘリ
コバクター ピロリ(Helicobacter pylori)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA
)、ポルフェイロモナス ジンジバリス(Porphyrmonas gingivalis)、プレボッテラ イ
ンターメディア(Prevotella intermedia)、腐性ブドウ球菌(S. saprophytic)、クレビエ
ッサ(Klebiessa)、エンテロバクター(Enterobacter)、プロテウス ミラビリス(Proteus
mirabillis)、腸球菌(Enterococci)、クロストリジウム(Clostridium)、クレブシエラ(Kl
ebsiella)、またはプロテウス(Proteus)に対して有効である、請求項7に記載のペプチド
。
【請求項9】
前記ペプチドが、バイオフィルムに対して有効である、請求項8に記載のペプチド。
【請求項10】
前記ペプチドが、1以上の抗ウィルス剤、糖源、食用食品、栄養補助食品および摂取可
能な液体とさらに組み合わされる、請求項1~9のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項11】
前記ペプチドが、無細胞上清またはその画分から濃縮される、請求項1~10のいずれ
か1項に記載のペプチド。
【請求項12】
前記ペプチドが、凍結乾燥または噴霧乾燥などの、乾燥培養画分として提供される、請
求項1~10のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項13】
前記乾燥培養画分が、無細胞上清である、請求項12に記載のペプチド。
【請求項14】
YPVEPF、YPPGGP、YPPG、NQPY、およびこれらの組み合わせから選
択される配列を有するまたは前記配列から構成される、請求項1~13のいずれか1項に
記載のペプチド。
【請求項15】
配列 YPPGGPを有するまたは前記配列から構成される、請求項14に記載のペプ
チド。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のペプチドを含む組成物。
【請求項17】
前記組成物が、食品、飲料、健康製品、薬剤、または栄養補助食品である、請求項16
に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、前記ペプチドが由来する生きたままのプロバイオティクス細菌含む、請
求項16または17に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、前記ペプチドが由来する細菌以外の生きたままのプロバイオティクス細
菌を含む、請求項16~18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物中のペプチドが精製されている、請求項16~19のいずれか1項に記載の
組成物。
【請求項21】
患者の非腸管感染を治療するおよび/もしくは予防するならびに/または患者の非腸管
感染の毒性を低減するための方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペプ
チドまたは請求項16~20のいずれか1項に記載の組成物をそれらの必要のある患者に
投与することを有する、方法。
【請求項22】
前記非腸管感染が、尿路感染、膣感染、気道感染、胃感染、バイオフィルム産生感染、
乳房炎、皮膚感染、および口腔感染からなる群より選択される、請求項21に記載の方法
。
【請求項23】
前記非腸管感染が、大腸菌(E. coli)、UPEC、インフルエンザ菌(Haemophilus infl
uenzae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumo
niae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ヘ
リコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRS
A)、ポルフェイロモナス ジンジバリス(Porphyrmonas gingivalis)、プレボッテラ
インターメディア(Prevotella intermedia)、腐性ブドウ球菌(S. saprophytic)、クレビ
エッサ(Klebiessa)、エンテロバクター(Enterobacter)、プロテウス ミラビリス(Proteu
s mirabillis)、腸球菌(Enterococci)、クロストリジウム(Clostridium)、クレブシエラ(
Klebsiella)、およびプロテウス(Proteus)からなる群より選択される種によって引き起こ
される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
抗生物質耐性の低減方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペプチドま
たは請求項16~20のいずれか1項に記載の組成物をそれらの必要のある患者に投与す
ることを有する、方法。
【請求項25】
前記方法はMRSの抗生物質耐性を低減するためである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
MRSの治療方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペプチドまたは請
求項16~20のいずれか1項に記載の組成物をそれらの必要のある患者に投与すること
を有する、方法。
【請求項27】
バイオフィルムを予防するまたは破壊するおよび/もしくは貫通する方法であって、請
求項1~15のいずれか1項に記載のペプチドまたは請求項16~20のいずれか1項に
記載の組成物をそれらの必要のある患者に投与することを有する、方法。
【請求項28】
創傷を治癒する方法であって、請求項1~15のいずれか1項に記載のペプチドまたは
請求項16~20のいずれか1項に記載の組成物をそれらの必要のある患者に投与するこ
とを有する、方法。
【請求項29】
患者の組織への非腸内病原体の付着を低減する方法であって、請求項1~15のいずれ
か1項に記載のペプチドまたは請求項16~20のいずれか1項に記載の組成物をそれら
の必要のある患者に投与することを有する、方法。
【請求項30】
必要な患者に対する請求項1~15のいずれか1項に記載のペプチドまたは請求項16
~20のいずれか1項に記載の組成物を含む不活性物。
【請求項31】
一定期間にわたって前記不活性物から放出される、プロバイオティクス分子を含むステ
ント、カテーテル、または創傷被覆材である、請求項30に記載の不活性物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本発明は、プロバイオティクス分子(probiotic molecules)に関する。より詳しくは、
本発明は、側面において、プロバイオティクス分子、プロバイオティクス分子を含む組成
物、ならびにプロバイオティクス分子の様々な方法および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
ラクトバチルス種によって産生される小さなバイオペプチドは、腸管出血性大腸菌感染
に対して有効であることが示されている[Medellin-Pena et al., 2009]。それは、コロニ
ー形成とクオラムセンシング(quorum sensing)に関与する大腸菌遺伝子の転写に影響を与
え、ダウンレギュレートすることが示され、これにより大腸菌の宿主上皮細胞への付着が
防止できた[Medellin-Pena et al., 2009]。バイオペプチドが大腸菌(E. coli)タイプI
II分泌システム(T3SS)に影響を及ぼし、クオラムセンシング(QS)シグナル伝
達システムを妨げることができ、これにより毒性遺伝子のダウンレギュレーションをもた
らすことが示された[Medellin-Pena et al., 2007, Medellin-Pena and Griffiths, 2009
]。
【0003】
国際特許出願公開第WO2009/155711号には、サルモネラ菌や大腸菌などの
有害な病原菌による感染の治療および/または予防のための組成物および方法に使用され
るラクトバチルス属(genus Lactobacillus)、ラクトコッカス属(genus Lactococcus)、ス
トレプトコッカス属(genus Streptococcus)またはビフィドバクテリウム属(genus Bifido
bacterium)のプロバイオティクス細菌(probiotic bacteria)由来の単離され特性が明らか
にされた分子が記載される。単離された分子は、哺乳動物の胃腸管にプロバイオティクス
を提供する栄養食品または医療食品にも使用できる。
【0004】
国際特許出願公開番号WO2015/021530号には、病原性ウイルスによる感染
の治療および/または予防のための組成物および方法に使用されるのに提供されるプロバ
イオティクス細菌由来の分子が記載される。単離された分子は、哺乳動物の胃腸管にプロ
バイオティクスを提供する栄養食品または医療食品にも使用できる。
【0005】
従来技術の欠点の少なくともいくつかを克服または軽減するため、および/または有用
な代替物を提供するための、代替療法に対する必要性がある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図面の説明
本発明は、下記図面を参照しながら下記説明からさらに理解されるであろう。
【
図1】
図1は、乳酸デヒドロゲナーゼ細胞毒性アッセイを示す。無細胞上清を用いた細胞毒性阻害の用量反応曲線。エラーバーは標準偏差を表す。
【
図2】
図2は、乳酸デヒドロゲナーゼ細胞毒性アッセイを示す。無細胞上清を用いた細胞毒性阻害の用量反応曲線。エラーバーは標準偏差を表す。
【発明の概要】
【0007】
要約
一側面によると、プロバイオティクス細菌由来である、患者の非腸管感染を予防および
/もしくは治療するためのならびに/または患者の非腸管感染の毒性を低下させるための
ペプチドが提供される。
【0008】
一側面では、前記プロバイオティクス細菌は、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラク
トコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ビフィドバクテリウム
(Bifidobacterium)、ペディオコッカス(Pediococcus)およびこれらの組み合わせから選択
される。
【0009】
一側面では、前記ラクトバチルス(Lactobacillus)は、ラクトバチルス アシドフィル
ス(La-5)(Lactobacillus acidophilus (La-5))、ラクトバチルス ファーメンタム
(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、
ラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス ヘルヴェティカ
ス(Lactobacillus helveticus)、およびラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus p
lantarum)から選択される。
【0010】
一側面では、前記ラクトコッカス(Lactococcus)は、ラクトコッカス ラクティス(Lact
ococcus lactis)である。
【0011】
一側面では、前記ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)は、ビフィドバクテリウム
ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacte
rium bifidum)、ビフィドバクテリウム インファンティス(Bifidobacterium infantis)
およびビフィドバクテリウム クルディラクティス(Bifidobacterium crudilactis)なら
びにこれらの混合物から選択される。
【0012】
一側面では、前記ストレプトコッカス(Streptococcus)は、ストレプトコッカス サー
モフィラス(Streptococcus thermophilus)である。
【0013】
一側面では、前記ペプチドは、尿路感染、膣感染、気道感染、胃感染、バイオフィルム
産生感染(biofilm-producing infection)、乳房炎、皮膚感染、および口腔感染からなる
群より選択される感染に対して有効である。
【0014】
一側面では、前記ペプチドは、大腸菌(E. coli)、UPEC、インフルエンザ菌(Haemop
hilus influenzae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococ
cus pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus a
ureus)、ヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)、メチシリン耐性黄色ブドウ球
菌(MRSA)、ポルフェイロモナス ジンジバリス(Porphyrmonas gingivalis)、プレ
ボッテラ インターメディア(Prevotella intermedia)、腐性ブドウ球菌(S. saprophytic
)、クレビエッサ(Klebiessa)、エンテロバクター(Enterobacter)、プロテウス ミラビリ
ス(Proteus mirabillis)、腸球菌(Enterococci)、クロストリジウム(Clostridium)、クレ
ブシエラ(Klebsiella)、またはプロテウス(Proteus)に対して有効である。
【0015】
一側面では、前記ペプチドは、バイオフィルムに対して有効である。
【0016】
一側面では、前記ペプチドは、1以上の抗ウィルス剤(antiviral)、糖源(sugar source
)、食用食品(edible food product)、栄養補助食品(nutritional supplement)および摂取
可能な液体(ingestible liquid)とさらに組み合わされる。
【0017】
一側面では、前記ペプチドは、無細胞上清(cell-free supernatant)またはその画分か
ら濃縮される。
【0018】
一側面では、前記ペプチドは、凍結乾燥または噴霧乾燥などの、乾燥培養画分として提
供される。
【0019】
一側面では、前記乾燥培養画分は、無細胞上清である。
【0020】
一側面では、前記ペプチドは、YPVEPF、YPPGGP、YPPG、NQPY、お
よびこれらの組み合わせから選択される配列を有するまたは前記配列から構成される。
【0021】
一側面では、前記ペプチドは、配列 YPPGGPを有するまたは前記配列から構成さ
れる。
【0022】
一側面によると、本明細書に記載されるペプチドを含む組成物が提供される。
【0023】
一側面では、前記組成物は、食品、飲料、健康製品、薬剤、または栄養補助食品である
。
【0024】
一側面では、前記組成物は、前記ペプチドが由来する生きたままのプロバイオティクス
細菌(live probiotic bacteria)を含む。
【0025】
一側面では、前記組成物が、前記ペプチドが由来する細菌以外の生きたままのプロバイ
オティクス細菌(live probiotic bacteria)を含む。
【0026】
一側面では、前記組成物中のペプチドが精製されている。
【0027】
一側面によると、患者の非腸管感染を治療するおよび/もしくは予防するならびに/ま
たは患者の非腸管感染の毒性を低減するための方法であって、本明細書に記載されるペプ
チドまたは組成物をそれらの必要のある患者に投与することを有する、方法が提供される
。
【0028】
一側面では、前記非腸管感染は、尿路感染、膣感染、気道感染、胃感染、バイオフィル
ム産生感染、乳房炎、皮膚感染、および口腔感染からなる群より選択される。
【0029】
一側面では、前記非腸管感染は、大腸菌(E. coli)、UPEC、インフルエンザ菌(Haem
ophilus influenzae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptoc
occus pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus
aureus)、ヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)、メチシリン耐性黄色ブドウ
球菌(MRSA)、ポルフェイロモナス ジンジバリス(Porphyrmonas gingivalis)、プ
レボッテラ インターメディア(Prevotella intermedia)、腐性ブドウ球菌(S. saprophyt
ic)、クレビエッサ(Klebiessa)、エンテロバクター(Enterobacter)、プロテウス ミラビ
リス(Proteus mirabillis)、腸球菌(Enterococci)、クロストリジウム(Clostridium)、ク
レブシエラ(Klebsiella)、およびプロテウス(Proteus)からなる群より選択される種によ
って引き起こされる。
【0030】
一側面によると、抗生物質耐性の低減方法であって、本明細書に記載されるペプチドを
それらの必要のある患者に投与することを有する、方法が提供される。
【0031】
一側面では、前記方法はMRSの抗生物質耐性を低減するためである。
【0032】
一側面によると、MRSの治療方法であって、本明細書に記載されるペプチドをそれら
の必要のある患者に投与することを有する、方法が提供される。
【0033】
一側面によると、バイオフィルムを予防する(preventing)または破壊する(disrupting)
および/もしくは貫通する(penetrating)方法であって、本明細書に記載されるペプチド
を投与することを有する、方法が提供される。
【0034】
一側面によると、創傷を治癒する方法であって、本明細書に記載されるペプチドを投与
することを有する、方法が提供される。
【0035】
一側面によると、患者の組織への非腸内病原体の付着を減らす方法であって、本明細書
に記載されるペプチドを投与することを有する、方法が提供される。
【0036】
一側面によると、本明細書に記載されるペプチドを含む不活性物(inert object)が提供
される。
【0037】
一側面では、前記不活性物は、一定期間にわたって前記不活性物から放出される、プロ
バイオティクス分子を含むステント、カテーテル、または創傷被覆材である。
【0038】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし
ながら、本発明の精神および概念に含まれる様々な変更および修飾が詳細な説明から当業
者に明らかになるであろうため、詳細な説明および詳細な実施例は、本発明の実施形態を
示すものの、説明の目的でのみ記載されていることを理解すべきである。
【0039】
詳細な説明
プロバイオティクス分子は、胃腸管感染症の治療に使用されることが記載されている。
以下の理論に拘束されることを意図するものではないが、国際特許出願公開番号WO 2
009/155711号およびWO 2015/021530号に記載される分子は、I
II型分泌システム(T3SS)病原体のクオラムセンシング(quorum sensing)(QS)
システムを妨げると考えられており、以前の研究から、プロバイオティクス分子が様々な
腸内病原体の病原性遺伝子のダウンレギュレーションを引き起こす可能性があることが示
された。L.アシドフィルス(L. acidophilus)株の無細胞抽出物は、クロストリジウム
ディフィシル(Clostridium difficile)のクオラムセンシングを妨害することができ、C
.ディフィシル(C. difficile)の病原性遺伝子をダウンレギュレートすることができた[Y
un et al., 2014]。ラクトバチルス(Lactobacillus)株およびビフィドバクテリウム(Bifi
dobacterium)株の無細胞抽出物は、カンピロバクター ジェジュニ(Campylobacter jejun
i)の成長を阻害し、flaA sigma 28プロモーターをダウンレギュレートし、カンピロバク
ター ジェジュニ(Campylobactor jejuni)のciaBおよびflaA遺伝子の発現をダウ
ンレギュレートできた[Ding et al., 2005, Mundi et al., 2013]。ラクトバチルス(Lact
obacillus)によって産生されるプロバイオティクス分子は、サルモネラ(Salmonella)の病
原性に影響を及ぼすことが知得され、T3SSに関与する病原性遺伝子を主に標的とする
ことが示された[Sharma 2014]。2015年に実施されたフィールドトライアルでは、離
乳子豚を用いてin vivoでプロバイオティクス分子を試験し、下痢の重篤度及び症
例の減少に有意な効果があることが判明した[University of Guelph/MicroSintesis, 201
5]。
【0040】
この作用機序は、腸内病原体だけでなく、他のタイプの病原体および感染におけるクオ
ラムセンシングによって調節される病原性遺伝子の効果のダウンレギュレーションにも有
効であることが判明した。さらに、ある側面ではこれらのペプチドは少なくとも部分的に
薬剤耐性を克服でき、他の側面では薬剤耐性を低下させることができ、他の側面では薬剤
耐性菌によって引き起こされる感染の毒性を治療および/または予防および/または低減
することができ、さらに、他の側面では細菌および/または薬剤耐性菌に対する抗生物質
の効果を増強することができる。
【0041】
定義
特記しない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技
術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、Singleton et
al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.、J. Wiley & Sons
(New York, N.Y. 1994); Sambrook et al., Molecular Cloning. A Laboratory Manual,
Cold Springs Harbor Press (Cold Springs Harbor, NY 1989)を参照のこと。また、これ
らはそれぞれ参考で全体を本明細書中に引用される。本発明を目的として、下記用語は下
記の通り定義される。
【0042】
「由来(derived)」とは、プロバイオティクス分子がプロバイオティクス細菌(probioti
c bacteria)によって直接的または間接的に生成されることを意味する。例えば、プロバ
イオティクス細菌は、プロバイオティクス分子を培地に直接分泌してもよい。他の側面で
は、上記分子は、例えば、より長いペプチドから切断されることにより、培地内で間接的
に形成されてもよい。
【0043】
本明細書に記載される配列の「変異体(variants)」は、天然配列の1以上のアミノ酸の
挿入、欠失、修飾および/または置換により、天然または野生型配列の配列とは異なるペ
プチド配列を有する生物学的に活性な配列である。このような変異体は、一般的に、天然
配列と100%未満の配列同一性を有する。しかし、通常、生物学的に活性な変異体は、
対応する天然に存在する配列の配列と少なくとも約70%の配列同一性、一般的に少なく
とも約75%、より一般的に少なくとも約80%、さらにより一般的に少なくとも約85
%、さらにより一般的に少なくとも約90%、さらにより一般的に少なくとも約95%、
96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するであ
ろう。対応する天然配列の生物学的活性を保持する任意の長さの変異体ヌクレオチド断片
。変異体は、1以上のアミノ酸が天然配列のいずれかの末端または内部に付加される配列
をも包含する。変異体は、多数のアミノ酸が欠失し、必要であれば1つ以上の異なるアミ
ノ酸で置換された配列をも包含する。
【0044】
「配列同一性(%)(percent sequence identity)」は、本明細書では、配列を整列さ
せ、必要に応じてギャップを導入して最大配列同一性(%)を得た後、対象配列内の残基
と同一である候補配列内のアミノ酸残基の割合(%)として定義され、保存的置換を配列
同一性の一部として考慮しない。候補配列への5’、3’、または内部の拡張、削除もし
くは挿入のいずれも、配列の同一性または相同性に影響するとは解釈されない。アライメ
ントのための方法およびコンピュータープログラムは、「BLAST」など、当技術分野
で周知である。
【0045】
本明細書の目的のための「活性がある(active)」または「活性(activity)」とは、天然
のまたは天然に存在するプロバイオティクス分子の生物活性を指し、「生物学的」活性("
biological" activity)とは、天然のまたは天然に存在するプロバイオティクス分子によ
って引き起こされる生物学的機能(阻害性または刺激性)を指す。
【0046】
したがって、本明細書に記載のプロバイオティクス分子と組み合わせて使用される場合
の「生物学的に活性のある(biologically active)」または「生物学的活性(biological a
ctivity)」は、天然のプロバイオティクス分子または配列のエフェクター機能を示すまた
は共有するプロバイオティクス分子またはアミノ酸配列を指す。例えば、本明細書に記載
のプロバイオティクス分子は、動物の感染を予防、阻害、または治療する生物学的活性を
有する。
【0047】
「生物学的に活性のある(biologically active)」または「生物学的活性(biological a
ctivity)」は、変異配列と組み合わせて使用される場合には、変異配列が親配列のエフェ
クター機能を示すまたは共有することを意味する。変異配列の生物学的活性は、親配列と
比較して増加、減少、または同じレベルであってもよい。
【0048】
「単離された(isolated)」とは、その供給源から精製されたまたは組換え法もしくは合
成法によって調製、精製された分子を指す。精製されたプロバイオティクス分子は、他の
アミノ酸を実質的に含まない。
【0049】
本明細書における「実質的に含まない(substantially free)」とは、約5%未満、典型
的には約2%未満、より典型的には約1%未満、さらに典型的には約0.5%未満、最も
典型的には約0.1%未満の他のアミノ酸源の混入を意味する。「本質的に純粋な(essen
tially pure)」プロバイオティクス分子組成物は、組成物の総重量に基づいて、少なくと
も約90重量%のプロバイオティクス分子、組成物の総重量に基づいて、典型的には少な
くとも約95重量%、より典型的には少なくとも約90重量%、さらにより典型的には少
なくとも約95重量%、さらにより典型的には少なくとも約99重量%のヌクレオチドを
含む組成物を意味する。
【0050】
本明細書で使用される「治療(treatment)」または「療法(therapy)」は、有益なまたは
望ましい臨床結果を得るためのアプローチである。本明細書に記載の目的に関して、有益
または望ましい臨床結果としては、以下に制限されないが、検出可能または検出不能にか
かわらず、症状の緩和、病気(disease)の程度の減少、病気の安定化(すなわち悪化しな
い)状態、病気の進行の遅延(delay)または減速(slowing)、症状の改善(amelioration)ま
たは緩和(palliation)、および寛解(部分的または全体的)がある。「治療(treatment)
」または「療法(therapy)」は、治療または療法を受けない場合に予想される生存期間と
比較して生存期間を延長することも意味する。ゆえに、「治療(treatment)」または「療
法(therapy)」は、疾患(disorder)の病理を変えることを意図して行われる介入である。
具体的には、治療または療法は、感染などの病気または疾患の病状を直接予防、減速、も
しくはさもなければ低下させ、または他の治療薬による治療または療法に対して感染をよ
り感受性にするものであってもよい。
【0051】
「治療上有効量(therapeutically effective amount)」、「有効量(effective amount)
」または「十分な量(sufficient amount)」という用語は、哺乳動物、例えばヒトを含む
患者に投与した場合、所望の結果を得るのに十分な量、例えば感染を治療するのに有効な
量を意味する。本明細書に記載されるプロバイオティクス分子の有効量は、患者の病状、
年齢、性別、および体重などの要因に応じて異なり得る。当業者に理解されているように
、最適な治療反応を提供するために、投与計画または治療計画を調整してもよい。
【0052】
さらに、治療上有効量を用いた患者の治療計画は、単回投与で構成されても、または一
連の適用を含んでもよい。治療期間の長さは、病気の重篤度および/または部位、患者の
年齢、薬剤の濃度、薬剤に対する患者の反応性、またはそれらの組み合わせなどの様々な
要因に依存する。また、治療に使用される薬剤の有効投与量は、特定の治療計画の過程で
増加または減少する可能性があることも理解されよう。投与量の変化が生じ、当該分野で
知られている標準的な診断アッセイによって明らかになる場合がある。本明細書に記載の
プロバイオティクス分子は、側面において、感染などの問題の病気または疾患に対する従
来の療法による治療の前、最中または後に投与されてもよい。
【0053】
本明細書で使用される「患者(subject))」という用語は、鳥、魚、無脊椎動物、両生類
、哺乳動物、および爬虫類を含む動物界の任意のものを指す。通常、患者はヒトまたは非
ヒト脊椎動物である。非ヒト脊椎動物には、家畜動物、愛玩動物、実験動物がある。非ヒ
ト患者には、具体的には非ヒト霊長類およびげっ歯類が含まれる。また、非ヒト患者とし
ては、具体的には、以下に制限されないが、家禽、ニワトリ、ウマ、ウシ、ブタ、ヤギ、
イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ミンク、ウサギ、甲殻類、および軟体動物が挙げ
られる。通常、患者は家禽または哺乳動物である。「哺乳動物」という用語は、ヒト、他
の高等霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギなどの、家畜およ
び農場動物、動物園、スポーツ、またはペット動物を含む哺乳動物に分類される動物を指
す。通常、哺乳動物は、ヒトである。
【0054】
1つ以上のさらなる治療薬「と組み合わせた」投与は、同時(simultaneous)(並行(con
current))投与および任意の順序での連続投与を包含する。
【0055】
「薬学的に許容される(pharmaceutically acceptable)」という用語は、化合物または
化合物の組み合わせが医薬用途の製剤の残りの成分と適合性があり、米国食品医薬品局(U
nited States Food and Drug Administration)によって公布されたものなどの、確立され
た政府基準に従ってヒトに投与するのが一般に安全であることを意味する。
【0056】
本明細書で使用される「担体」は、使用される用量および濃度で曝露される細胞または
患者に対して無毒である薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を包含する。多
くの場合、薬学的に許容される担体は、pH緩衝水溶液である。薬理学的に許容される担
体の例としては、リン酸塩、クエン酸塩、他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸等の抗
酸化剤;低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、また
は免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン
、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン等のアミノ酸;グルコース、マン
ノース、およびデキストリン等の単糖類、二糖類、および他の炭水化物;EDTA等のキ
レート剤;マンニトールおよびソルビトール等の糖アルコール;ナトリウム等の塩形成性
対イオン;および/またはTWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、P
LURONICS(商標)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0057】
「リポソーム」は、本明細書に記載のプロバイオティクス分子などの薬剤を哺乳動物な
どの患者にデリバリーするのに有用である様々なタイプの脂質、リン脂質、および/また
は界面活性剤で構成される小さなベシクルである。リポソームの成分は、通常、生体膜の
脂質配置と同様に、二重層構造で配置される。
【0058】
本願の範囲を理解する際に、冠詞「a」、「an」、「the」、および「said」
は、1以上の要素があることを意味するものとする。さらに、本明細書で使用される、「
含む(comprising)」という用語およびその派生語は、記載された特徴、要素、構成要素、
グループ、整数、および/またはステップの存在を規定する制約のない用語(open ended
terms)を意図し、他の記載されない特徴、要素、構成要素、グループ、整数、および/ま
たはステップの存在を排除するものではない。また、上記は、用語「含む(including)」
、「有する(having)」、およびそれらの派生語などの類似の意味を持つ単語にも適用され
る。
【0059】
特定の成分を「含む(comprising)」と記載される側面は、「から構成される(consist o
f)」または「から実質的に構成される(consist essentially of)」ものであってもよく、
この際「から構成される(consist of)」は閉じた(close ended)または限定的な意味を持
ち、「から実質的に構成される(consist essentially of)」は記載された成分を含むが不
純物として存在する材料、その成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存
在する不可避な材料、および本発明の技術的な効果を達成する以外の目的で添加される成
分以外の他の成分を排除することを意味する。例えば、「から実質的に構成される(consi
st essentially of)」という句を使用して定義される組成物は、既知の薬学的に許容され
る添加剤、賦形剤、希釈剤、担体などを包む。典型的には、1セットの成分から実質的に
構成される(consist essentially of)組成物は、5重量%未満、典型的には3重量%未満
、より典型的には1重量%未満の記載されていない成分を含むであろう。
【0060】
含まれると本明細書で規定される成分は、但し書きにより(by way of proviso)または
ネガティブな制限により(by way of negative limitation)、特許請求の範囲に規定され
る発明から明示的に除外され得ると理解されるであろう。例えば、側面において、腸内細
菌および/または腸内ウイルス感染等の、腸管感染は、本明細書に記載の組成物および方
法から明示的に除外される。他の側面では、本明細書に記載の分子はバクテリオシンでは
ない。
【0061】
加えて、本明細書に記載されているすべての範囲には、明示的に記載されているかどう
かにかかわらず、範囲の末端と中間範囲ポイントを含む。
【0062】
最後に、本明細書で使用される「実質的に(substantially)」、「約(about)」および「
およそ(approximately)」などの程度の用語は、最終結果が大幅に変更されないように修
正用語の妥当な量の偏差を意味する。これらの程度の用語は、この偏差が修正する単語の
意味を否定しない場合、修正された用語の少なくとも±5%の偏差を含むと解釈されるべ
きである。
【0063】
プロバイオティクス分子およびプロバイオティクス分子を含む組成物
本発明は、プロバイオティクス細菌(probiotic bacteria)から単離されたプロバイオテ
ィクス分子、および患者の感染、典型的には非腸管感染を最小化、阻害、治療、および/
または予防できる上記細菌の、無細胞上清等の、さらなる培養画分を提供する。特に、当
該分子は、Aerococcus属、Bacillus属、Bacteroides属、Bifidobacterium属、Clostridiu
m属、Enterococcus属、Fusobactehum属、Lactobacillus属、Lactococcus属、Leuconostoc
属、Melissococcus属、Micrococcus属、Pediococcus属、Peptostrepococcus属、Propioni
bacterium属、Staphylococcus属、Streptococcus属およびWeissella属からなる群より選
択される1以上の細菌種由来であってもよい。詳細なプロバイオティック活性(probiotic
ally active)乳酸菌種としては、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Lacto
bacillus acidophilus、Lactobacillus alimentarius、Lactobacillus casei Shirota、L
actobacillus casei subsp. paracasei、Lactobacillus casei subsp. casei、Lactobaci
llus casei、Lactobacillus crispatus、Lactobacillus curvatus、Lactobacillus delbr
uckii subsp. lactis、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus、Lactobacillus
farciminus、Lactobacillus fermentum、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus helvet
icus、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus paracasei subsp. paracasei、Lactoba
cillus rhamnosus、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus
rhamnosus、Lactobacillus sake、Lactococcus lactis、Lactocoocus lactis subsp. cre
moris、Streptococcus faecalis、Streptococcus faecium、Streptococcus salivariusお
よびStreptococcus thermophilusがある。さらなる例としては、Bifidobacterium infant
is、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium longu
m、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium animalisおよびBifidobacterium breve等
のプロバイオティック活性Bifidobacterium種がある。
【0064】
さらなる細菌種は、プロバイオティック活性のあるPaenibacillus lautus、Bacillus c
oagulans、Bacillus licheniformis、Bacillus subtilis、Micrococcus varians、Pedioc
occus acidilactici、Pediococcus pentosaceus、Pediococcus acidi- lactici、Pedioco
ccus halophilus、Staphylococcus carnosusおよびStaphylococcus xylosus、さらに微生
物Lactobacillus casei ssp. rhamnosus strain LC-705、欧州特許出願公開第05767
80号に記載され、米国特許第5908646号ではLactobacillus rhamnosus LC-705,
DSM 7061として記載されるDSM 7061からなる群より選択でき、この際、上記細菌種は単独
でまたはPropionibacterium属の細菌またはLactobacillus caseiの他の菌株と組み合わせ
てもよい。
【0065】
本明細書に記載の分子を産生し得る特定のプロバイオティクス細菌株(probiotic bacte
rial strain)は、側面において、Bifidobacterium animalis strain DSM15954、Bifidoba
cterium longum subsp. infantis strain DSM15953、Bifidobacterium longum subsp. lo
ngum strain DSM15955、Enterococcus faecium strain DSM15958、Lactobacillus acidop
hilus strain DSM13241 (La-5)、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus strain
DSM15956、Lactobacillus helveticus strain DSM14998、Lactobacillus helveticus st
rain DSM14997、Lactococcus lactis strain DSM14797、Streptococcus thermophilus st
rain DSM15957、Lactobacillus fermentum strain ATCC55845およびLactobacillus rhamn
osus strain ATCC55826からなる菌株の群より選択される。
【0066】
典型的な側面では、上記分子は、Lactobacillus acidophilus (La-5)由来、さらにはPe
diococcusの菌株、以下に制限されないが、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium b
ifidum、Bifidobacterium infantis、およびBifidobacterium crudilactis等のBifidobac
teriumの菌株由来、さらにはLactobacillus fermentum、Lactobacillus rhamnosus、Lact
obacillus helveticus、Lactobacillus plantarum、Lactococcus lactis、およびStrepto
coccus thermophilus由来である。
【0067】
プロバイオティクス分子は、現在、非腸内病原体に対して有効であることが示されてお
り、腸内および非腸内病原体に対して有効な新規な分子が特定されている。本明細書に記
載されるプロバイオティクス分子としては、国際特許出願公開第WO 2009/155
711号およびWO 2015/021530号に記載される分子があり、これらは参考
で全体を本明細書中に引用される。
【0068】
側面において、プロバイオティクス分子は、温度耐性があり(加熱、冷凍、解凍しても
活性を発揮できる)、長期間(2年にわたって)冷凍されても安定であり、容易に大量(
例えば、約2mg/L)生産でき、さらに凍結乾燥および/または噴霧乾燥などの方法に
よって乾燥できる、通常はタンパク質性である、低分子である。典型的には、上記分子は
ペプチドである。
【0069】
上記分子は、いずれかのタイプの動物やヒト等の患者に投与するために様々な物質に組
み込まれてもよい。例えば、上記分子は、動物またはヒトが消費するためのいずれかのタ
イプの食品、栄養補助食品または飲料に組み込まれてもよい。
【0070】
治療薬として、本明細書に記載のプロバイオティクス分子を、感染の効果的な治療のた
めに動物またはヒトに投与してもよい。治療薬または予防薬として、処置は、必要に応じ
て他の治療薬と併用してもよい。別の実施形態では、本明細書に記載のプロバイオティク
ス分子を、全プロバイオティクス細菌の使用に加えて、組成物および方法に使用してもよ
い。または、本分子が治療有効量で培養培地で産生されるように細菌を培養および/また
は使用される場合には、プロバイオティクス細菌全体を単独で使用してもよい。
【0071】
側面において、プロバイオティクス分子は、Lactobacillus acidophilus (La-5)等のプ
ロバイオティクス細菌に由来し、この際、本分子は以下のアミノ酸配列の1以上を含む:
YPVEPF、YPPGGP、YPPG、およびNQPY。典型的には、本分子は以下の
アミノ酸配列を含む:YPPGGP。これらの配列は、分子の活性が実質的に低下しない
限り、欠失、置換または挿入により変更できることは当業者に理解される。上記列は、1
以上のアミノ酸残基の挿入、置換、または削除をさらに有してもよい。さらに、本明細書
に記載の分子は、グリコシル化、非グリコシル化、有機および無機塩でさらに変更されて
もよく、共有結合的に修飾されてもよい。また、in vivoでの半減期を延長するように修
飾された、例えば、PEG化された、分子も包含される。本明細書に記載の分子に対する
可能な、しかし、非限定的な修飾としては、1以上のアミノ酸の欠失または1以上のアミ
ノ酸の付加を伴うアミノ酸置換の組み合わせを含む修飾がある。
【0072】
一般化された側面では、本明細書に記載の分子は、治療有効量で単独でまたは組成物に
おいてレシピエントの感染状態/健康、年齢、性別、および体重等の因子に応じて変動し
得る量で提供されてもよい。投薬計画は、最適な治療反応を提供するために調整されても
よく、主治医または獣医の裁量によってもよい。例えば、いくつかの分割された用量を毎
日または定期的な間隔で投与してもよい、および/または治療状況の緊急性によって示さ
れるように用量を比例的に減らしてもよい。投与される分子の量は、投与経路、投与時間
によって異なり、個々の患者の反応に従って変化し得る。適切な投与経路は、例えば、局
所、経口、直腸または非経口(例えば、静脈内、皮下または筋肉内)経路を介したものが
ある。加えて、分子を持続放出を可能にするポリマーに組み込んでもよく、この際、ポリ
マーは送達が望まれる場所の近く、例えば感染部位に移植されても、またはポリマーは、
本明細書に記載の分子を全身送達できるように、例えば、皮下もしくは筋肉内に移植され
てもまたは静脈内もしくは腹腔内に送達されてもよい。
【0073】
本明細書に記載される分子は、例えば、錠剤、カプセル、ロゼンジ、カシェ剤、溶液、
懸濁液、エマルジョン、粉末、エアロゾル、坐剤、スプレー、トローチ、軟膏、クリーム
、ペースト、フォーム、ゲル、タンポン、ペッサリー、顆粒、ボーラス、うがい薬、また
は経皮パッチの形態で投与されてもよい。本分子は、無細胞上清として投与されてもよく
、これは、側面においては、無細胞上清濃縮物である。濃縮物は、液状であってもまたは
粉末形態であってもよい。
【0074】
製剤としては、経口、直腸、鼻、吸入、局所(皮膚、経皮、頬および舌下を含む)、膣
、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、眼内、気管内、および硬膜外を含む)、乳房内
、または吸入投与に適するものがある。製剤は、単位剤形で簡便に提供されてもよく、従
来の製薬技術により調製されてもよい。このような技術は、活性成分および製薬担体また
は賦形剤を混合する(bringing into association)ステップを含む。一般に、製剤は、活
性成分を液体担体もしくは微粉化した固体担体またはその両方と均一よく混合した後、必
要に応じて製品を成形することにより調製される。
【0075】
経口投与に適した製剤は、それぞれが所定量の活性成分を含むカプセル、カシェ剤もし
くは錠剤などの個別の単位として;粉末もしくは顆粒として;水性液体もしくは非水性液
体の溶液または懸濁液として;または水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型エマル
ジョンなどとして提供されてもよい。
【0076】
錠剤は、必要に応じて1以上の補助成分とともに、圧縮または成形することにより作製
されてもよい。圧縮錠剤は、適切な機械で、粉末または顆粒などの自由流動形態の本明細
書に記載の分子を、必要であれば結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤お
よび/または分散剤と混合して、圧縮することにより調製され得る。成形錠剤は、不活性
液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を、適切な機械で成形することによって作製
され得る。錠剤は、必要に応じて、コーティングまたは刻み目を付けられてもよく、その
中の活性成分を徐放または制御放出させるように製剤化してもよい。
【0077】
口への局所投与に適した製剤としては、風味付けされた基剤、典型的にはスクロースお
よびアカシアまたはトラガカント中に成分を含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリンな
どの不活性基剤、またはスクロースおよびアカシア中に有効成分を含むトローチ;ならび
に適切な液体担体に投与される成分を含むうがい薬がある。
【0078】
皮膚への局所投与に適した製剤としては、薬学的に許容される担体中に投与される成分
を含む軟膏、クリーム、ゲル、またはペーストとして提示されてもよい。一実施形態では
、局所送達システムは、投与される成分を含む経皮パッチである。
【0079】
直腸投与用の製剤は、例えば、カカオバターまたはサリチル酸塩を含む適切な基剤を含
む坐剤として提供され得る。
【0080】
担体が固体である、経鼻投与に適した製剤は、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻
腔を介して急速に吸入することにより投与される、例えば、20~500ミクロンの範囲
の粒径を有する粗い粉末を含む。例えば、鼻スプレーまたは点鼻薬として投与するための
、担体が液体である、適切な製剤は、活性成分の水性または油性溶液を含む。
【0081】
膣内投与に適した製剤は、活性成分に加えて、当技術分野で適切であることが知られて
いる担体などの成分を含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム
またはスプレー製剤として提示されてもよい。
【0082】
吸入に適した製剤は、活性成分に加えて、当技術分野で適切であることが知られている
担体などの成分を含むミスト、ダスト、粉末またはスプレー製剤として提示されてもよい
。
【0083】
非経口投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および製剤を患者レシピ
エントの血液と等張にする溶質を含んでよい水性および非水性滅菌注射液;ならびに懸濁
化剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性滅菌懸濁液がある。非経口投与に適し
た製剤としては、以下に制限されないが、低ミクロン、またはナノメートル(例えば、平
均断面で2000ナノメートル未満、通常1000ナノメートル未満、最も典型的には5
00ナノメートル未満)の大きさの粒子を含む抗血管新生剤の粒状製剤があり、この際、
上記粒子は、本明細書に記載の分子単独で構成される、または前記分子を補助成分と組み
合わせてもしくは持続放出のためのポリマー中で構成される。製剤は、単位用量容器また
は複数用量容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルで提示されてもよく、使用直前に
、滅菌液体担体、例えば、注射用水を加えるだけでよいフリーズドライ(freeze-dried)(
凍結乾燥(lyophilized))状態で保存されてもよい。即時(extemporaneous)注射溶液およ
び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製してもよい。
【0084】
本明細書に記載の分子を含む組成物は、約0.00001重量%~約99重量%および
その間の任意の範囲の活性成分を含むことができる。例えば、典型的な用量は、300m
g用量当たり約0.1μg~約10μg、または約1μg~約5μg、または約1μg~
約2μgなどの、300mg用量あたり約0.5μg、約1μg、約2μg、約3μg、
約4μg、約5μg、約6μg、約7μg、約8μg、約9μg、約10μg、約25μ
g、約50μg、または約75μgなどの、300mg用量あたり約0.1μg~約10
0μg(ならびに関連するすべての増加および重量パーセント)の本明細書に記載の分子
を含んでもよい。
【0085】
プロバイオティクス分子は、治療中の感染の重篤度、感染の再発の可能性が高いと考え
られるかどうか、感染を防ぐためなど、いくつかの要因に応じて、数時間、数日、数週間
、または数か月にわたって投与されてもよい。投与は一定であってもよく、例えば、数時
間、数日、数週間、数ヶ月などの期間にわたって一定の注入であってもよい。または、投
与は断続的であってもよく、例えば、数日間にわたって1日1回、数時間にわたって1時
間1回、または適切と考えられるような他の任意のスケジュールで分子を投与してもよい
。
【0086】
本明細書に記載の組成物は、有効量の活性物質が薬学的に許容可能なビヒクルとの混合
物中で組み合わされるように、患者に投与可能な薬学的に許容可能な組成物の調製のため
のそれ自体既知の方法によって調製することができる。適切なビヒクルは、例えば、"Han
dbook of Pharmaceutical Additives" (compiled by Michael and Irene Ash, Gower Pub
lishing Limited, Aldershot, England (1995))に記載される。これに基づいて、組成物
としては、排他的ではないが、物質を1以上の薬学的に許容されるビヒクルまたは希釈剤
と組み合わせた溶液があり、適切なpHの緩衝溶液に含まれてもよくおよび/または生理
液と等浸透圧であってもよい。これに関して、米国特許第5,843,456号を参照す
ることができる(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0087】
薬学的に許容される担体は、当業者に周知であり、例えば、滅菌生理食塩水、乳糖、ス
クロース、リン酸カルシウム、ゼラチン、デキストリン、寒天、ペクチン、ピーナッツ油
、オリーブ油、ゴマ油および水がある。さらに、医薬組成物は、例えば、ソルビトール、
マンニトール、デンプン、スクロース、デキストリンおよびグルコースを含む炭水化物、
アルブミンまたはカゼインなどのタンパク質、およびアルカリリン酸塩などの緩衝剤など
の1以上の安定剤を含んでもよい。
【0088】
別の非限定的な側面において、プロバイオティクス分子の投与は、経口または直腸など
で、消化管に分子を導入する可能性が高い任意の方法によって達成することができ、その
後プロバイオティクス分子は血流に入る。プロバイオティクス分子を産生する細菌および
/または単離されたプロバイオティクス分子を担体と混合し、液体もしくは固体飼料また
は飲料水に適用してもよい。担体材料は、動物に対して無毒である必要がある。プロバイ
オティクス分子を産生する細菌および/または単離されたプロバイオティクス分子は、動
物の口に直接注入される接種ペースト(inoculant paste)として提供される組成物状に製
剤化されてもよい。製剤は、嗜好性を改善し、貯蔵寿命を改善し、栄養上の利点を与える
ためなどの追加成分を含んでもよい。再現性のある測定された用量が望ましい場合、本明
細書に記載のように、ルーメン・カニューレ(rumen cannula)により分子を投与してもよ
い。投与されるプロバイオティクス細菌から単離された分子の量は、有効性に影響する因
子によって左右される。プロバイオティクス細菌のプロバイオティクス分子の投与前、投
与中、および投与後に感染を監視することにより、当業者は、動物によって運ばれる感染
の量を減らすために必要な用量レベルを容易に確認することができる。プロバイオティク
ス細菌の1以上の菌株の分子を一緒に投与してもよい。個々の動物は特定の個体で最も持
続する菌株に関して異なる場合があるため、菌株の組み合わせが有利になる可能性がある
。
【0089】
プロバイオティクス分子を投与する方法は、予防または治療にかかわらず、本質的に同
じである。したがって、病原性感染が動物によって運ばれているかどうかを最初に判断す
る必要がない。群れのすべての動物に有効量を定期的に投与することによって、病原性感
染による汚染のリスクを予防と治療との組み合わせにより大幅に低減または排除できる。
【0090】
単離された分子およびそれを含む培養画分は、患者における感染の予防および/または
治療のために既知の治療薬と組み合わせて使用できることが当業者には理解される。本明
細書に記載のプロバイオティクス分子の組成物は、単離されているかまたは培養画分中に
あるかまたはプロバイオティクス細菌と一緒であるかにかかわらず、例えば組成物の約0
.01重量%~約0.1重量%の量のグルコースなどの糖源と組み合わせて(配合されて
)使用できることも理解される。
【0091】
また、本明細書に記載の組成物を直接摂取するかまたは食物と一緒に添加物として使用
してもよいが、以下に制限されないが、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズ、パン、ビ
スケットやケーキなどの焼き製品、乳製品および乳製品の代替食品、菓子製品、食用油組
成物、スプレッド、朝食用シリアル、ジュース、肉、農産物等の様々な食品や飲料に組み
込むことができると考えられるであろうことも理解される。特に機能性食品として分類さ
れる可能性が高い食品、すなわち「外観が従来の食品と類似しており、通常の食事の一部
として消費されることを意図しているが、単純な栄養素の提供を超えた生理学的役割を果
たすように変更された食品」は、「食品」という用語の範囲内に含まれる。同様にして、
本明細書に記載の組成物は、カプセルまたは乾燥・圧縮錠剤または直腸もしくは膣坐剤な
どの剤形で、またはエアロゾルもしくは吸入器として提供されてもよい。繰り返すが、活
性プロバイオティクス分子の量は、特定の食品または飲料に応じて異なり、特に摂取可能
なカプセル/錠剤として製剤化される場合には、製品の約100%までの任意の量を含ん
でもよい。
【0092】
本明細書に記載の分子は、単離されているまたは培養画分に含まれるものとして提供さ
れるかどうかにかかわらず、治療方法にまたは栄養補給のためのプロバイオティクス細菌
の使用と組み合わせることができることも当業者に理解される。特定の側面では、本明細
書に記載の分子は、当該分子が由来する種の生きたプロバイオティクス細菌と組み合わせ
てもよい。他の側面では、これらの細菌種は組成物から除外されてもよい。他の側面では
、本明細書に記載の分子は、当該分子を産生しない種の生きたプロバイオティクス細菌と
組み合わせてもよい。
【0093】
使用方法
予期せぬことに、本明細書に記載のプロバイオティクス分子は、単離された形態でまた
はプロバイオティクス分子が由来する細菌の形態で投与されるにかかわらず、感染症、い
くつかの側面では腸管または非腸管感染症、の治療に使用できることを知得した。これら
のうちの多くを以下に具体的に説明する。
【0094】
特定の側面では、本明細書に記載の分子は、互いにおよび/または抗生物質もしくは他
の抗感染剤と相乗的に相互作用して、抗生物質耐性を低下するおよび/または抗生物質等
の従来の治療薬に対する特定の病原性微生物の感受性を増加するなどの、腸管もしくは非
腸管感染を治療および/もしくは予防するならびに/または腸管もしくは非腸管感染の毒
性を低下させる。
【0095】
尿路感染(urinary Tract Infections)
尿路感染(UTI)は、ヒトで最も頻繁に起こる細菌感染症の1つであり、大腸菌はす
べてのUTIの90%を担い、毎年推定1,130万人の女性に影響を及ぼしている[Mar
rs et al., 2005]。健康な女性の膣に見られるフローラを支配するLactobacillus菌株は
、直腸から会陰にまで広がり、膣にバリアを形成して尿路病原体による侵入をブロックす
る。プロバイオティクスによってLactobacillusの数を人工的に増やすという概念は長い
間理論化されてきたが、最近では効果的であることが示された[Reid and Bruce, 2005]。
様々な研究により、UTIの治療、特に再発性UTIの予防に、使用されるLactobacillu
sのプロバイオティクス株のプラスの効果が示された[Bruce et al., 1992; Chrisholm, 2
015; Delley et al., 2015; Stapleton et al., 2011]。再発性尿路感染症に対する安全
で効果的でかつ抗菌剤を使用しない(non-antimicrobial)治療法を見つけることが強く求
められている[Stapleton et al., 2011]。
【0096】
最も一般的なUTI病原体は、QSによって調節される毒性(virulence)を有する大腸
菌であり、腸内大腸菌は、本明細書に記載のプロバイオティクス分子で処置した場合、毒
性が低くなることが以前に示された[Medellin-Pena et al., 2007, Medellin-Pena and G
riffiths, 2009,参考で全体を本明細書中に引用される]。尿路病原性大腸菌(uropathogen
ic E. coli)(UPEC)は、腸内大腸菌と同じ病原性遺伝子の多くが活性化され、T3
SSを有する。したがって、本明細書に記載のプロバイオティクス分子は、UPEC株の
毒性を低下させるのに効果的であるはずである[Snyder et al., 2004]。Reid [2000]は、
Lactobacillus acidophilus株が尿路上皮細胞に付着する尿路病原性腸球菌(uropathogeni
c enterococci)を有意に阻害する化合物を産生することを示した。UTIのin vivoで注
目される主な遺伝子は、感染の発生に必要な尿路上皮細胞の表面への付着に必要な線毛タ
ンパク質遺伝子であるfim遺伝子である[Snyder et al., 2004]。バイオペプチドが大
腸菌の尿路病原性株の病原性を低減するのに効果的であることを確認するために、我々は
、本明細書に記載のプロバイオティクス分子にさらした場合のダウンレギュレーションに
ついてUPEC株におけるこれらの遺伝子の調節を試験する予定である。
【0097】
他の側面では、本明細書に記載のプロバイオティクス分子は、E. coliまたはS. saprop
hyticusによって引き起こされるものなどの、急性膀胱炎の治療に;E. coli、Klebsiella
、Enterobacter、またはProteus mirabillisによって引き起こされるものなどの腎盂腎炎
の治療に;大腸菌(E. coli)、腸球菌(Enterococci)、Klebsiella、Proteus、もしくは緑
膿菌(P. aeruginosa)などによって引き起こされるものなどの、複雑なUTIの治療に;
または大腸菌(E. coli)、グラム陰性バチルス(gram negative bacilli)、ブドウ球菌(Sta
phylococcus)、腸球菌(Enterococcus)によって引き起こされるものなどの前立腺炎に使用
できる。
【0098】
細菌性膣炎(Bacterial Vaginosis)
別の一般的な感染症としては細菌性膣炎(BV)があり、これは膣細菌叢において保護
性乳酸菌の優勢が病原性細菌に移行することを特徴とし、婦人科診療所への訪問者の最大
25%を占める[Barrons and Tassone, 2008]。BVは、HIV感染のリスクを高め、低
出生体重児や早産のリスクを高める[Reid and Burton, 2002]。従来の抗生物質によるB
V治癒率は低く、6か月で女性の最大50%で感染が再発する[Barrons and Tassone, 20
08]。ラクトバチルス(Lactobacillus)株を毎日摂取することにより、無症候性BV患者で
正常な膣内細菌叢が回復した[Reid and Burton, 2002]。研究では、ラクトバチルス(Lact
obacillus)株のみの使用は、標準的な抗生物質療法と同等のBV治癒率に関連しているこ
とがわかった[Barrons and Tassone, 2008]。
【0099】
研究により、プロバイオティクス細菌の凍結乾燥坐剤を使用することにより、プロバイ
オティクス細胞による尿生殖路がより迅速にコロニー形成できることが示された[Barrons
and Tassone, 2008; Reid and Bruce, 2006]。本明細書に記載のプロバイオティクス分
子は凍結乾燥(lyophilisation)などの乾燥方法に耐性があるため、フリーズドライ(freez
e-dried)坐剤は送達の実行可能なモードである。これにより、プロバイオティクス分子が
感染部位でより容易に利用できるようになる。
【0100】
呼吸器感染(Respiratory Infections)
呼吸器感染には、広範な感染症(中耳炎、肺炎、咽頭炎)およびインフルエンザ菌(Hae
mophilus influenzae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Strepto
coccus pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、および黄色ブドウ球菌(Staphyl
ococcus aureus)などの一般的な株などの、病原体がある[Nagalingam et al, 2013]。呼
吸器感染は、特に乳児および高齢者にとって非常に深刻であり、世界中の罹患率および死
亡率に大いに寄与している。別の治療法と予防法が有益であろう[Veras de Araujo et al
., 2015]。
【0101】
下気道感染および上気道感染の両方が、本明細書に記載の分子による治療に有用である
と本明細書では特に意図される。例えば、連鎖球菌性咽頭炎(streptococcal pharyngitis
)(「strep throat」)および/または他の咽喉感染におけるグループA連鎖球菌(group A
streptococcus)である、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)は、本明細書に記載の分
子で治療することができる。
【0102】
Nagalingamらは、副鼻腔ミクロビオームの組成が病気と相関することを示唆する。慢性
副鼻腔炎患者の副鼻腔ミクロビオームは、健常な人のものと比較して乳酸菌(LAB)集
団が有意に減少していることが示された[Nagalingam et al., 2013]。彼らはさらに、胃
腸(GI)および尿生殖路の場合と同様、LABの補給が感染から気道の粘膜表面を保護する
ために使用できることを示唆する[Nagalingam et al., 2013]。プロバイオティクスおよ
び上気道感染の影響に関する多くの研究がある。2例から、2つの非常に影響を受けやす
い集団(乳児と高齢者)で、プロバイオティクス細菌(probiotic bacteria)を経口摂取し
た人が対照群と比較して上気道感染症(URI)が少ないことが示された[Maldonado et
al, 2012; Guillmard et al., 2010]。
【0103】
ほとんどの研究ではプロバイオティクス細菌の経口摂取が利用されたが、鼻スプレーも
有効であった[Skovberg et al., 2009]。これは、別の送達方法として鼻スプレーを示唆
する。これにより、感染部位へのプロバイオティクス細菌の送達が促進されるであろう。
【0104】
ヘリコバクター ピロリ感染(Helicobacter pylori infection)
ヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)は、慢性胃炎を引き起こし、消化性潰
瘍疾患の発症の原因であり、胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫や胃腺癌などの胃悪性腫瘍の
発症の危険因子と考えられる[Wang et al., 2004]。既存の抗生物質治療は有効であるも
のの、抗菌薬耐性に対する懸念がある。さらに、そのような薬物は、しばしば治療の中止
につながるマイナスの副作用を引き起こす可能性がある。これらの理由により、代替治療
法を調査することが望ましい[Wang et al., 2004]。彼らの研究において、Wangら[2004]
は、ラクトバチルス(Lactobacillus)株およびビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)株
を含むプロバイオティクスヨーグルトを摂取すると、ヒトでピロリ菌(H. pylori)の感染
を抑制できることを発見した[Wang et al., 2004]。さらに古い研究では、Lactobacillus
acidophilus La1の上清がin vitroでピロリ菌(H. pylori)の成長を阻害し、ヒトでピロ
リ菌(H. pylori)に対して抑制効果があることが示された[Michetti et al., 1999]。Cand
ucciらによる別の研究では、L. acidophilusの使用済み培養上清(spent culture superna
tant)がin vitroおよびin vivoでピロリ菌(H. pylori)の生存率を劇的に低下できること
も示された[2000]。これは、無細胞使用済み培地(cell free spent media)でラクトバチ
ルス(Lactobacillus)株によって産生されるプロバイオティクス生物活性物質が、ピロリ
菌(H. pylori)感染の治療に有益な効果をもたらし得ることを強く示唆する。
【0105】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus)(M
RSA)は、肺炎、敗血症、骨髄炎、心内膜炎など、生命を脅かす多くの感染症の原因と
なる。患者では、通常、長期間コロニーが形成化され(colonized)、患者の50%で1年
後もまだコロニーが形成される(colonized)[Karska-Wysocki, et al., 2010]。MRSA
は、多くの表面に付着できるバイオフィルム産生病原体である。この研究により、Lactob
acillus acidophilusが24時間のインキュベーション後にMRSA細胞の99%を除去
できることが示された。この研究は、上記効果をバイオフィルムの産生を阻害する生理活
性ペプチドを産生する乳酸菌と結び付ける[Karska-Wysocki, et al., 2010]。本明細書に
記載のプロバイオティクス分子は、バイオフィルムの生産を調節するQSシステムを妨げ
ることが示された。これによりバイオフィルムを阻害できる可能性があるため、プロバイ
オティクス分子はMRSAだけでなく、他の抗生物質耐性病原体の治療にも有効であり得
る。
【0106】
口腔衛生(Oral Health)
科学的研究から、プロバイオティクスが口腔衛生の維持と口腔疾患の予防に効果的であ
ることが示唆される。例えば、プロバイオティクスは共生細菌叢を強化し、病原体のコロ
ニー形成(colonization)を防ぎ、歯肉の炎症を予防することが示された[Iniesta et al.,
2012]。口腔衛生におけるラクトバチルス(Lactobacilli)プロバイオティクスの使用を評
価する研究がいくつかある。結果から、L. reuteriを含む錠剤の使用が、唾液中のPrevot
ella intermediaさらにはP. gingivalis等の歯周病原体の数の有意な減少と関連するが示
される[Iniesta et al., 2012]。上記結果から、L. reuteriのロゼンジの経口投与が、慢
性歯周炎のスケーリング・ルートプレーニング(scaling and root planing)と併用できる
ことが示される[Teughels et al., 2013]。
【0107】
Porphyrmonas gingivalisは、歯周炎の原因となる一般的な病原体である。プロバイオ
ティクスのラクトバチルス(Lactobacillus)株は、P. gingivalisの数を大幅に減少させた
[Matsuoka and Koga, 2014]。これらの例から、ラクトバチルス(Lactobacillus)プロバイ
オティクス細菌の使用が病原体の付着を妨げる可能性があり、コロニー形成が健康に大き
な利益をもたらす可能性があることが示される。
【0108】
上記から、本明細書に記載のプロバイオティクス分子が、細菌、ウイルス、酵母、真菌
、および寄生虫などの、広範な病原体の治療に使用できることが明らかである。側面では
病原体は非腸由来(non-enteric)であるおよび/または感染は非腸管部位である。
【0109】
例えば、本明細書に記載のプロバイオティクス分子は、Abiotrophia、Achromobacter、
Acidaminococcus、Acidovorax、Acinetobacter、Actinobacillus、Actinobaculum、Actin
omadura、Actinomyces、Aerococcus、Aeromonas、Afipia、Agrobacterium、Alcaligenes
、Alloiococcus、Alteromonas、Amycolata、Amycolatopsis、Anaerobospirillum、Anaero
rhabdus、"Anguillina"、Arachnia、Arcanobacterium、Arcobacter、Arthrobacter、Atop
obium、Aureobacterium、Bacillus、Bacteroides、Balneatrix、Bartonella、Bergeyella
、Bifidobacterium、Bilophila、Branhamella、Borrelia、Bordetella、Brachyspira、Br
evibacillus、Brevibacterium、Brevundimonas、Brucella、Burkholderia、Buttiauxella
、Butyrivibrio、Calymmatobacterium、Campylobacter、Capnocytophaga、Cardiobacteri
um、Catonella、Cedecea、Cellulomonas、Centipeda、Chlamydia、Chlamydophila、Chrom
obacterium、Chyseobacterium、Chryseomonas、Citrobacter、Clostridium、Collinsella
、Comamonas、Corynebacterium、Coxiella、Cryptobacterium、Delfiia、Dermabacter、D
ermatophilus、Desulfomonas、Desulfovibrio、Dialister、Dichelobacter、Dolosicoccu
s、Dolosigranulum、Edwardsiella、Eggerthella、Ehrlichia、Eikenella、Empedobacter
、Enterobacter、Enterococcus、Erwinia、Erysipelothrix、Escherichia、Eubacterium
、Ewingella、Exiguobacterium、Facklamia、Filif actor、Flavimonas、Flavobacterium
、Flexispira、Francisella、Fusobacterium、Gardnerella、Gemella Globicatella、Gor
dona、Haemophilus、Hafnia、Helicobacter、Helococcus、Holdemania、Ignavigranum、J
ohnsonella、Kingella、Klebsiella、Kocuria、Koserella、Kurthia、Kytococcus、Lacto
bacillus、Lactococcus、Lautropia、Leclercia、Legionella、Leminorella、Leptospira
、Leptotrichia、Leuconostoc、Listeria、Listonella、Megasphaera、Methylobacterium
、Microbacterium、Micrococcus、Mitsuokella、Mobiluncus、Moellerella、Moraxella、
Morganella、Mycobacterium、Mycoplasma、Myroides、Neisseria、Nocardia、Nocardiops
is、Ochrobactrum、Oeskovia、Oligella、Orientia、Paenibacillus、Pantoea、Parachla
mydia、Pasteurella、Pediococcus、Peptococcus、Peptostreptococcus、Photobacterium
、Photorhabdus、Plesiomonas Porphyrimonas、Prevotella、Propionibacterium、Proteu
s、Providencia、Pseudomonas、Pseudonocardia、Pseudoramibacter、Psychrobacter、Ra
hnella、Ralstonia、Rhodococcus、Rickettsia、Rochalimaea、Roseomonas、Rothia、Rum
inococcus、Salmonella、Selenomonas、Serpulina、Serratia、Shewenella、Shigella、S
imkania、Slackia、Sphingobacterium、Sphingomonas、Spirillum、Staphylococcus、Ste
notrophomonas、Stomatococcus、Streptobacillus、Streptococcus、Streptomyces、Succ
inivibrio、Sutterella、Suttonella、Tatumella、Tissierella、Trabulsiella、Trepone
ma、Tropheryma、Tsαkamurella、Turicella、Ureaplasma、Vagococcus、Veillonella、V
ibrio、Weeksella、Wolinella、Xanthomonas、Xenorhabdus、YersiniaおよびYokenellaか
らなる群より選択される属の細菌感染の治療に有用であり得る。
【0110】
例えば、上記細菌感染は、Actimomyces europeus、Actimomyces georgiae、Actimomyce
s gerencseriae、Actimomyces graevenitzii、Actimomyces israelii,、Actimomyces mey
eri、Actimomyces naeslundii、Actimomyces neuii neuii、Actimomyces neuii anitratu
s、Actimomyces odontolyticus、Actimomyces radingae、Actimomyces turicensis、Acti
momyces viscosus、Arthrobacter creatinolyticus、Arthrobacter cumminsii、Arthroba
cter woluwensis、Bacillus anthracis、Bacillus cereus、Bacillus circulans、Bacill
us coagulans、Bacillus licheniformis、Bacillus megaterium、Bacillus myroides、Ba
cillus pumilus、Bacillus sphaericus、Bacillus subtilis、Bacillus thuringiensis、
Borrelia afzelii、Borrelia andersonii、Borrelia bissettii、Borrelia burgdorferi
、Borrelia garinii、Borrelia japonica、Borrelia lusitaniae、Borrelia tanukii、Bo
rrelia turdi、Borrelia valaisiana Borrelia caucasica、Borrelia crocidurae、Borre
lia recurrentis、Borrelia duttoni、Borrelia graingeri、Borrelia hermsii、Borreli
a hispanica、Borrelia latyschewii、Borrelia mazzottii、Borrelia parkeri、Borreli
a persica、Borrelia recurrentis、Borrelia turicatae、Borrelia venezuelensi、Bord
etella bronchiseptica、Bordetella hinzii、Bordetella holmseii、Bordetella parape
rtussis、Bordetella pertussis、Bordetella trematum、Clostridium absonum、Clostri
dium argentinense、Clostridium baratii、Clostridium bifermentans、Clostridium be
ijerinckii、Clostridium butyricum、Clostridium cadaveris、Clostridium carnis、Cl
ostridium celatum、Clostridium clostridioforme、Clostridium cochlearium、Clostri
dium cocleatum、Clostridium fallax、Clostridium ghonii、Clostridium glycolicum、
Clostridium haemolyticum、Clostridium hastiforme、Clostridium histolyticum、Clos
tridium indolis、Clostridium innocuum、Clostridium irregulare、Clostridium leptu
m、Clostridium limosum、Clostridium malenominatum、Clostridium novyi、Clostridiu
m oroticum、Clostridium paraputriβcum、Clostridium piliforme、Clostridium putre
fasciens、Clostridium ramosum、Clostridium septicum、Clostridium sordelii、Clost
ridium sphenoides、Clostridium sporogenes、Clostridium subterminale、Clostridium
symbiosum、Clostridium tertium、Escherichia coli、Escherichia fergusonii、Esche
richia hermanii、Escherichia vulneris、Enterococcus avium、Enterococcus casselif
lavus、Enterococcus cecorum、Enterococcus dispar、Enterococcus durans、Enterococ
cus faecalis、Enterococcus faecium、Enterococcus flavescens、Enterococcus gallin
arum、Enterococcus hirae、Enterococcus malodoratus、Enterococcus mundtii、Entero
coccus pseudoavium、Enterococcus raffinosus、Enterococcus solitarius、Haemophilu
s aegyptius、Haemophilus aphrophilus、Haemophilus par aphrophilus、Haemophilus p
arainfluenzae、Haemophilus segnis、Haemophilus ducreyi、Haemophilus influenzae、
Klebsiella ornitholytica、Klebsiella oxytoca、Klebsiella planticola、Klebsiella
pneumoniae、Klebsiella ozaenae、Klebsiella terrigena、Lysteria ivanovii、Lysteri
a monocytogenes、Mycobacterium abscessus、Mycobacterium africanum、Mycobacterium
alvei、Mycobacterium asiaticum、Mycobacterium aurum、Mycobacterium avium、Mycob
acterium bohemicum、Mycobacterium bovis、Mycobacterium branderi、Mycobacterium b
rumae、Mycobacterium celatum、Mycobacterium chelonae、Mycobacterium chubense、My
cobacterium confluentis、Mycobacterium conspicuum、Mycobacterium cookii、Mycobac
terium flavescens、Mycobacterium fortuitum、Mycobacterium gadium、Mycobacterium
gastri、Mycobacterium genavense、Mycobacterium gordonae、Mycobacterium goodii、M
ycobacterium haemophilum、Mycobacterium hassicum、Mycobacterium intracellulare、
Mycobacterium interjectum、Mycobacterium heidelberense、Mycobacterium kansasii、
Mycobacterium lentiflavum、Mycobacterium leprae、Mycobacterium malmoense、Mycoba
cterium marinum、Mycobacterium microgenicum、Mycobacterium microti、Mycobacteriu
m mucogenicum、Mycobacterium neoaurum、Mycobacterium nonchromogenicum、Mycobacte
rium peregrinum、Mycobacterium phlei、Mycobacterium scrofulaceum、Mycobacterium
shimoidei、Mycobacterium simiae、Mycobacterium smegmatis、Mycobacterium szulgai
、Mycobacterium terrae、Mycobacterium thermoresistabile、Mycobacterium triplex、
Mycobacterium triviale、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium tusciae、Mycob
acterium ulcerans、Mycobacterium vaccae、Mycobacterium wolinskyi、Mycobacterium
xenopi、Mycoplasma buccale、Mycoplasma faucium、Mycoplasma fermentans、Mycoplasm
a genitalium、Mycoplasma hominis、Mycoplasma lipophilum、Mycoplasma orale、Mycop
lasma penetrans、Mycoplasma pirum、Mycoplasma pneumoniae、Mycoplasma primatum、M
ycoplasma salivarium、Mycoplasma spermatophilum、Pseudomonas aeruginosa、Pseudom
onas alcaligenes、Pseudomonas chlororaphis、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas
luteola. Pseudomonas mendocina、Pseudomonas monteilii、Pseudomonas oryzihabitan
s、Pseudomonas pertocinogena、Pseudomonas pseudalcaligenes、Pseudomonas putida、
Pseudomonas stutzeri、Rickettsia africae、Rickettsia akari、Rickettsia australis
、Rickettsia conorii、Rickettsia felis、Rickettsia honei、Rickettsia japonica、R
ickettsia mongolotimonae、Rickettsia prowazeldi、Rickettsia rickettsiae、Rickett
sia sibirica、Rickettsia slovaca、Rickettsia typhi、Salmonella choleraesuis chol
eraesuis、Salmonella choleraesuis arizonae、Salmonella choleraesuis bongori、Sal
monella choleraesuis diarizonae、Salmonella choleraesuis houtenae、Salmonella ch
oleraesuis indica、Salmonella choleraesuis salamae、Salmonella enteritidis、Salm
onella typhi、Salmonella typhimurium、Shigella boydii、Shigella dysentaeriae、Sh
igella flexneri、Shigella sonnei、Staphylococcus aureus、Staphylococcus auricula
ris、Staphylococcus capitis capitis、Staphylococcus c. ureolyticus、Staphylococc
us caprae、Staphylococcus aureus、Staphylococcus cohnii cohnii、Staphylococcus c
. ureolyticus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus equorum、Staphylococcu
s gallinarum、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis hominis、Staph
ylococcus h. novobiosepticius、Staphylococcus hyicus、Staphylococcus intermedius
、Staphylococcus lugdunensis、Staphylococcus pasteuri、Staphylococcus saccharoly
ticus、Staphylococcus saprophyticus、Staphylococcus schleiferi schleiferi、Staph
ylococcus s. coagulans、Staphylococcus sciuri 、Staphylococcus simulans、Staphyl
ococcus warneri、Staphylococcus xylosus、Streptococcus agalactiae、Streptococcus
canis、Streptococcus dysgalactiae dysgalactiae、Streptococcus dysgalactiae equi
similis、Streptococcus equi equi、Streptococcus equi zooepidemicus、Streptococcu
s iniae、Streptococcus porcinus、Streptococcus pyogenes、Streptococcus anginosus
、Streptococcus constellatus constellatus、Streptococcus constellatus pharyngidi
s、Streptococcus intermedius、Streptococcus mitis、Streptococcus oralis、Strepto
coccus sanguinis、Streptococcus cristatus、Streptococcus gordonii、Streptococcus
parasanguinis、Streptococcus salivarius、Streptococcus vestibularis、Streptococ
cus criceti、Streptococcus mutans、Streptococcus ratti、Streptococcus sobrinus、
Streptococcus acidominimus、Streptococcus bovis、Streptococcus equinus、Streptoc
occus pneumoniae、Streptococcus suis、Vibrio alginolyticus、V、carchariae、Vibri
o cholerae、C. cincinnatiensis、Vibrio damsela、Vibrio fluvialis、Vibrio furniss
ii、Vibrio hollisae、Vibrio metschnikovii、Vibrio mimicus、Vibrio par ahaemolyti
cus、Vibrio vulnificus、Yersinia pestis、Yersinia aldovae、Yersinia bercovieri、
Yersinia enterocolitica、Yersinia frederiksenii、Yersinia intermedia、Yersinia k
ristensenii、Yersinia mollaretii、Yersinia pseudotuberculosisおよびYersinia rohd
eiからなる群より選択される細菌によって引き起こされる可能性がある。
【0111】
または、本明細書に記載のプロバイオティクス分子は、Astroviridae、Caliciviridae
、Picornaviridae、Togaviridae、Flaviviridae、Caronaviridae、Paramyxviridae、Orth
omyxoviridae、Bunyaviridae、Arenaviridae、Rhabdoviridae、Filoviridae、Reoviridae
、Bornaviridae、Retroviridae、Poxviridae、Herpesviridae、Adenoviridae、Papovavir
idae、Parvoviridae、Hepadnaviridae,(例えば、Coxsackie A-24 virus Adeno virus 11
、Adeno virus 21、Coxsackie B virus、Borna Diease Virus、Respiratory syncytial v
irus、Parainfluenza virus、California encephalitis virus、human papilloma virus
、varicella zoster virus、Colorado tick fever virus、Herpes Simplex Virus、vacci
nia virus、parainfluenza virus 1、parainfluenza virus 2、parainfluenza virus 3、
dengue virus、Ebola virus、Parvovirus B19 Coxsackie A-16 virus、HSV-1、hepatitis
A virus、hepatitis B virus,hepatitis C virus、hepatitis D virus、hepatitis E vi
rus、human immunodeficiency virus、Coxsackie B1-B5、Influenza viruses A、Bまたは
C、LaCross virus、Lassavirus、rubeola virus Coxsackie AまたはB virus、Echovirus
、lymphocytic choriomeningitis virus、HSV-2、mumps virus、Respiratory Synytial V
irus、Epstein-Barr Virus、Poliovirus Enterovirus、rabies virus、rubivirus、vario
la virus、WEE virus、Yellow fever virusおよびvaricella zoster virusからなる群よ
り選択されるウイルス)からなる群より選択されるファミリーのウイルスの治療に使用で
きる可能性がある。
【0112】
または、本明細書に記載されるプロバイオティクス分子は、酵母または真菌の治療に使
用できる可能性がある。例えば、宿主に感染する真菌または酵母は、Aspergillus sp.、D
ermatophytes、Blastomyces dermatitidis、Candida sp.、Histoplasma capsulatum、Spo
rothrix schenckii、Histoplasma capsulatumおよびDematiaceous Fungiからなる群より
選択される。
【0113】
本明細書で使用される、「寄生虫(parasite)」または「寄生虫感染(parasitological i
nfection)」という用語は、単細胞または多細胞にかかわらず、他の生物、例えばヒトに
感染できるウイルス、細菌、真菌または酵母以外の、生物を意味するものとする。このよ
うな寄生虫の例としては、例えば、Ancylostoma ceylanicum、Ancylostoma duodenale、A
scaris lumbricoides、Balantidium coli、Blastocystis hominis、Clonorchis sinensis
、Cyclospora cayetanensis、Dientamoeba fragilis、Diphyllobothrium latum、Dipylid
ium caninum、Encephalitozoon intestinalis、Entamoeba histolytica、Enterobius ver
micularis、Fasciola hepatica、Enterobius vermicularis、Fasciola hepatica、Fascio
lopsis buski、Giardia intestinalis (syn. Giardia lamblia)、Heterophyes heterophy
es、Hymenolepis diminuta、Hymenolepis nana、Isospora belli、Metagonimus yokogawa
i、Necator americanus、Opisthorchis felineus、Paragonimus westermani、Schistosom
a haematobium、Schistosoma intercalatum、Schistosoma japonicum、Schistosoma mans
oni、Taenia saginata、Trichuris trichiura、Babesia diver gens、Plasmodium falcip
arum、Plasmodium malariae、Plasmodium ovale、Plasmodium vivax、Leishmania brazil
iensisおよびLeishmania donovaniからなる群より選択される寄生虫がある。
【0114】
側面において、プロバイオティクス分子は、一般に、バイオフィルム形成を低減するま
たはすでに形成されたバイオフィルムを破壊するために使用できる。また、プロバイオテ
ィクス分子は、病原性遺伝子、典型的にはT3SSに関連するもの、をダウンレギュレー
ションするのに、および組織および/または表面への病原体の付着を低減するのに使用で
きる。本明細書に記載のプロバイオティクス分子を用いた創傷の治療ならびに創傷の感染
の治療および/または予防も期待される。
【0115】
より一般的な側面では、プロバイオティクス分子を従来の抗生物質療法の代替または補
助として使用することにより、抗生物質の使用を減らし、抗生物質耐性の発生を軽減する
ことができる。
【0116】
本明細書に記載のプロバイオティクス分子は、側面において、例えば、非経口、静脈内
、皮下、皮内、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼内、脳室内、関節包内(intracapsular)、脊
髄内、嚢内(intracisternal)、腹腔内、鼻腔内、直腸内、膣内、エアロゾルまたは経口投
与によって、投与できる。典型的には、本発明の組成物は、感染部位に経口または直接投
与される。
【0117】
本明細書に記載のプロバイオティクス分子は、側面において、例えば、抗生物質を含む
、感染の従来の治療と組み合わせて、同時にまたは連続して投与してもよい。本明細書に
記載のプロバイオティクス分子は、適切な場合には、このような従来の治療と一緒に処方
されてもよい。
【0118】
本明細書に記載のプロバイオティクス分子は、任意の適切な量で使用され得るが、典型
的には、約1~約1000、約1~約500、約10~約250などの、約1~約100
00ng/kg、または約1、約10、約25、約50、約75、約100、約150、
約200、約250、約300、もしくは約500ng/kgなどの、約50~約100
ng/kgを含む用量で提供される。
【0119】
上記開示は、本発明をおおまかに説明する。下記特定の例を参照することで、より完全
な理解できる。これらの例は、単に例示の目的で記載されており、本発明の範囲を限定す
ることを意図するものではない。状況が便宜を示唆または提供する可能性があるため、形
式の変更および同等物の代替が包含される。本明細書では特定の用語が使用されるが、こ
のような用語は説明的な意味で意図されており、限定の目的ではない。
【実施例0120】
実施例
実施例1:尿路病原性大腸菌およびバイオペプチド同定の概要
目的:
これらの実験の目的は、La-5の無細胞上清が尿路病原性大腸菌(uropathogenic E.
coli)(UPEC)の病原性遺伝子の発現をダウンレギュレーションするかどうかを判断
することであった。
【0121】
材料および方法:
これらの実験に使用したLa-5無細胞上清はバッチD4であった。2種のUPEC株
は、犬の尿路感染症から単離された。これらはグエルフ大学(University of Guelph)の病
理生物学研究所から提供された。菌株1別名ではUPEC99株(strain 1 alias UPEC99
)および菌株2別名ではUPEC804株(strain 2 alias UPEC804)。これらの菌株をL
B寒天上で培養した。2つの異なる培地は試験LBおよび人工尿培地であった。
【0122】
【0123】
Sharma 2014に記載されるのと同様にして、サルモネラアッセイと同様にしてアッセイ
を実施した。UPECは、無細胞上清の存在下で4時間生育させた。細胞を集め、RNA
を抽出した。RNAをDNAse Iで処理し、ゲノムDNAを除去した。RNAは、c
DNAを作製するためのテンプレートとして使用した。cDNAをqPCRによりアッセ
イし、遺伝子発現を参照遺伝子に対して正規化し、無細胞培地なしの対照と比較した。
【0124】
結果:
【0125】
【0126】
表1.1のデータから、無細胞上清がFliCではなくHylAのダウンレギュレーシ
ョンに有効であることが示唆された。人工尿培地と比較して、HylAのLB培地でより
多くのダウンレギュレーションがある。遺伝子のダウンレギュレーションがより高いため
、これらの遺伝子の発現をLB培地のみでさらに調査した。この実験を再度テストして、
応答が菌株特異的であることを確認した。
【0127】
【0128】
表1.2のデータから、HylAが菌株2で発現していないように見えるため、無細胞
上清は菌株1でのみHylAをダウンレギュレートできることが示唆される。無細胞上清
はFliCのダウンレギュレーションに影響しないと思われる。
【0129】
【0130】
1×用量は、10mLの無細胞上清(1倍)に相当する。HylAのダウンレギュレー
ションは、アッセイされる物質の量と相関する。これから、無細胞上清がHylAの調節
および潜在的な下流メカニズム(potential down-stream mechanisms)と特異的に相互作用
することが示唆される。
【0131】
【0132】
1×用量は、10mLの無細胞上清(1倍)に相当する。材料の2番目のバッチを試験
し、追加の独立した生産バッチもまたHylA発現のダウンレギュレーションするかにつ
いて乾燥無細胞上清において決定した。試験した乾燥無細胞上清の量とHylAのダウン
レギュレーションで用量反応があった。
【0133】
実施例2:無細胞上清の生物活性分子の同定
目的:
これらの実験の目的は、無細胞上清から生理活性ペプチドを特定することであった。
【0134】
材料および方法:
Sephadex G75樹脂を使用して、無細胞上清を分離した。サンプルを分離し、下記画分と
なるように集めた:画分1(>163000Da)、画分2(163000~14500
Da)、画分3(14500~1300Da)、画分4(1300~110Da)、画分
5(110~10Da)。これらのサンプルを集め、サルモネラ腸チフスDT104株(S
almonella enteric typhimurium DT104 strain)を使用してqPCRによってアッセイし
た。HilAのダウンレギュレーションを、参照遺伝子16Sと比較した。
【0135】
【0136】
G75サイズ排除クロマトグラフィーからの活性画分を、逆相クロマトグラフィーを用
いてさらに分離した。逆相からの画分:画分1(0~2分)、画分2(2~4分)、画分
3(4~16分)、画分4(16~32分)、画分5(32~40分)、画分6(40~
58分)。これらの画分を乾燥、中和して、溶媒からアセトニトリルとトリフルオロ酢酸
を除去した。上記と同じqPCRアッセイ条件を使用して、乾燥画分をアッセイした。グ
エルフ大学先進分析センター(University of Guelph Advance Analytical center)でのde
novo配列分析(de novo sequencing)により、画分を分析した。6バッチの活性画分のペ
プチドを比較し、バッチの共通ペプチドを推定した。
【0137】
【0138】
サイズ排除画分3の活性がインプットと同様の活性を有していることからこの画分の活
性が生物活性分子の主要成分であることを示唆したため、サイズ排除画分3の特徴をさら
に調べた。
【0139】
【0140】
RP画分3および5をde novoシーケンシング(de novo sequencing)用に選択した。画
分5が最も活性が高く、MALPPKがRP画分3でも見つかったが、他のペプチドは画
分5でのみ見つかったため、結果は画分5のものである。
【0141】
【0142】
de novoシーケンシング(de novo sequencing)を使用して、Salmonella enterica typhi
murium DT104のHilAなどの病原性遺伝子のダウンレギュレーションに関与するアミノ
酸配列を同定した。6つの独立した生産バッチを分析した。無細胞上清を、サイズ排除ク
ロマトグラフィー(Sephadex G75)を使用して分離した。サンプルを、分子量に基づいて5
つの画分に分離した。予測分子量範囲が14.5~1.3kDaの第3の画分を逆相クロ
マトグラフィーでさらに分析し、画分RP5をde novoシーケンシングによって分析した
。分析されたすべてのバイオペプチドの比較により、6つのバッチすべてに共通する2つ
のペプチドおよび少なくとも4つのバッチに共通する2つの追加のペプチドが特定された
。de novoシーケンシングは定性分析に過ぎないため、これらのペプチドの4つすべてを
合成して、Salmonella enteric typhimurium DT104のHilAのダウンレギュレーション
に関与するペプチドを同定した。
【0143】
【0144】
de novoシーケンシングから選択されたバイオペプチドおよび国際特許出願公開第WO
2009/155711号で特定された2つの追加のペプチドについて、多重反応モニ
タリング(multiple reaction monitoring)(MRM)モードを用いた質量分析し、安定バ
ッチ(stability batch)S1に存在するバイオペプチドの量を半定量化した。各ペプチド
のピーク高さを、量が既知の各バイオペプチドの希釈系列のピーク高さと比較した。この
半定量的方法により、MALPPKが分析した6つのペプチドの中で最も豊富に存在する
ペプチドであることが特定された。
【0145】
【0146】
合成バイオペプチドは、1アッセイあたり50μgで分析した。qPCR分析から、Y
PVEPF以外のすべてのペプチドがHylAのダウンレギュレーションに影響すること
が示唆される。ペプチドMALPPKは、HylAのダウンレギュレーションに最も高い
効果があり、LKPTPEGD、YPPGGP、CVLPPK、およびHLLPLPがそ
れに続く。
【0147】
要約:
表2.1~2.5に示されるデータから、La-5発酵培地の無細胞上清で発見された
ペプチドが、Salmonella enterica typhimurium DT104のHilA及びHemolysin A(Hy
lA)の発現をダウンレギュレーションできることが示される。HylAは、UPECに
よって生成される細孔形成毒素であり、感染に関与する毒性因子の1つである。フラジェ
リン(FliC)の発現は無細胞上清の存在下ではダウンレギュレートされないため、相
互作用は特異的であると考えられる。2つの独立した生産バッチは、用量依存的にHyl
Aの特定のダウンレギュレーションを示した。サイズ排除画分3のde novoシーケンシン
グから4つのペプチドが同定された。これらの4つのペプチドおよび以前の特許からの2
つの追加のペプチドが合成され、HylA遺伝子発現に対する効果をqPCRによって定
量化した。YPVEPFを除くすべてのバイオペプチドは活性があり、MALPPKは分
析した6つのペプチドの中で最も活性の高いペプチドであった。
【0148】
実施例3:尿路病原性大腸菌細胞毒性アッセイ
目的:
この実験の目的は、生理学的細胞毒性アッセイを使用して本発明のラクトバチルス ア
シドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の無細胞培地で尿路病原性大腸菌(uropathoge
nic E. coli)の毒素産生が減少したかどうかを判定することであった。
【0149】
材料および方法:
乾燥した無細胞上清をLBブロス(14mg/mL)に溶解し、0.1N NaOHを
用いてpH 7.2に調整した。この溶液を最終濃度になるようにLBブロスで希釈した
。ブロス(5mL)に50μLのUPEC099株18時間培養物を接種した。サンプル
を200rpmで攪拌しながら37℃で4時間生育させた。培養液の1mLアリコートを
10,000×gで遠心して、大腸菌細胞を除去した。上清(100μL)を1mLのH
T29哺乳動物細胞(1E6細胞/mL)に加え、5%CO2を添加しながら37℃で1
時間インキュベートした。インキュベーション後、混合物を1.5mLチューブに移し、
250×gで遠心して、哺乳動物細胞を除去した。上清(50μL)を、Pierce Lactate
Dehydrogenase LDH細胞毒性アッセイ(Thermo Fisher Scientific)を用いた細胞毒性の
試験に使用した。アッセイ用溶液は、製造業者の指示に従って調製した。上清50μLを
96ウェルプレートでアッセイ反応混合物50μLとインキュベートした。ホイルをアッ
セイで覆って光から保護し、室温で30分間インキュベートした。反応停止(50μL)
混合物を加え、96ウェルプレートを490nmおよび680nmで読み取った。吸光度
値を用いて細胞毒性を計算し、データは阻害率(%)として表す。
【0150】
結果/ディスカッション:
図1および2に示されるデータは、無細胞上清によるUPEC毒素産生の阻害を表わす
。これらのデータから、無細胞上清が用量依存的にHT29哺乳動物細胞に対する毒素の
影響を低減できるという生理学的裏付けが提供される。乳酸デヒドロゲナーゼは細胞溶解
の生理学的マーカーであり、エンドポイントアッセイにおける乳酸デヒドロゲナーゼの阻
害から、より少ない哺乳類細胞が溶解されたことが示唆され、これから無細胞上清がUP
EC099によって産生される毒素の量を減らすことができると推測される。
【0151】
実施例4:薬剤耐性の克服
目的:
Lactobacillus acidophilus La-5などのプロバイオティクス細菌の無細胞上清が、抗生
物質に対する薬剤耐性細菌、特にセフォキシチンに対するメチシリン耐性ブドウ球菌の感
受性を高める可能性があるかどうかを判断すること。
【0152】
材料および方法:
これらの実験に使用されたLa-5無細胞上清は、バッチN9~N10およびN13か
ら得た。これらの実験では、下記3種のメチシリン耐性ブドウ球菌(MRS)株を使用し
た:1)イヌの皮膚感染からの臨床分離株である、Staphylococcus pseudintermedius(
菌株の別名(strain alias) C260 22-2011 dtqa);2)カナダ、PE
I、シャーロットタウンの食料品店から購入した牛肉から単離した家畜関連株である、St
aphylococcus aureus(菌株の別名(strain alias) LA-414M SPA t034
);および3)カナダ、PEI、シャーロットタウンの食料品店から購入した家禽肉から
単離した、Staphylococcus aureus(菌株の別名(strain alias) 81M SPA t0
08)。3種のMRS株はすべて、プリンスエドワード島大学(University of Prince Ed
ward Island)のAtlantic Veterinary College(AVC)によって提供された。これらの
株のメチシリン耐性が、オキサシリンディスク拡散法を用いてAVCスタッフによって確
認された。これらの株はもともとヒツジ血液寒天スラントで培養された後、溶原性ブロス
寒天プレートに移された。メタノールに再懸濁したセフォキシチンを抗生物質耐性試験に
使用し、2種類の異なる培地タイプ、標準溶原培地(standard Lysogeny Broth)及び標準
BBL(商標)カチオン調整ミューラーヒントン培地(standard BBLTMCation-Adjusted M
ueller-Hinton Medium)(Becton, Dickinson and Company)で生育を試験した。無細胞上清
の存在下および非存在下で各培地で各株について、セフォキシチンの最小発育阻止濃度(
MIC)を測定した。アッセイは、Staphylococcal speciesのMIC試験に関する臨床試
験基準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute)(CLSI)ガイドライン[
CLSI, 2015]、さらには欧州臨床微生物感染症協会(European Society of Clinical Micro
biology and Infectious Diseases)の抗菌薬感受性試験欧州委員会(European Committee
for Antimicrobial Susceptibility Testing)(EUCAST)[EUCAST, 2003]に従って
行った。
【0153】
MICテストのプロトコルは下記のとおりであった。無細胞上清を各培地に再懸濁し、
0.22μMのポアサイズフィルターで濾過滅菌した。必要濃度の乾燥した無細胞上清を
秤量し、0~60mg/mLの範囲の濃度で添加した。セフォキシチンを0~250μg
/mLの最終濃度になるように添加した。各菌株の培養物を、好気性条件下で200rp
mの振とうしながら37℃で16~20時間、溶菌ブロス(lysogeny broth)またはミュー
ラーヒントン(Mueller Hinton)で一晩生育させ、1.2~1.6の600nmでの光学密
度(OD600)を得た。一晩培養物を1,000倍に希釈し、それぞれのサンプルに接
種した;この一晩培養物の希釈により、約5×106CFU/mLを含む接種材料を得た
。培養液(150μL)を、96ウェルの透明な平底マイクロタイタープレートで培養し
た。次いで、マイクロタイタープレートをパラフィルムで覆い、35℃±2℃で24時間
インキュベートした。インキュベーション後、マイクロプレートリーダーを使用して、マ
イクロプレートを600nmで読み取った。MIC値は、OD600の読み取り値が0.
1未満となる抗生物質の濃度であった。データは、2つの生物学的複製物(biological re
plicates)の2つの技術的複製物(technical replicates)の平均である。
【0154】
メチシリンやセフォキシチンなどのβ-ラクタムは、細菌の細胞壁生合成を阻害する。
細菌は、抗生物質耐性につながるこれらの阻害剤を回避するメカニズムを進化させてきた
。MecAは、β-ラクタムに結合することによりその活性を低下させる遺伝子である。
MecA遺伝子を獲得したブドウ球菌(Staphylococci)はメチシリン耐性である。Mec
Aの発現はクオラムセンシングによって調節されるため、我々は無細胞上清がクオラムセ
ンシングを阻害することによりメチシリン耐性ブドウ球菌の感受性を高めるかどうかを調
査した。
【0155】
データから、無細胞上清がセフォキシチン抗生物質に対するメチシリン耐性ブドウ球菌
種の感受性を高めることができることが示される;これにより、メチシリン耐性ブドウ球
菌種の増殖を停止する(halt)または防止する(prevent)のに必要なセフォキシチンの濃度
を減少できる。試験濃度(5mg/mL、30mg/mL、および60mg/mL)の無
細胞上清では、データは用量反応を示す:無細胞上清濃度が増加すると、セフォキシチン
MICが0mg/mLコントロールに比較して大幅に減少する。セフォキシチンと無細胞
上清との組み合わせは、セフォキシチンのみと比較して、メチシリン耐性ブドウ球菌の感
受性を2.5~6.25倍増加させることができる(表4)。
【0156】
【0157】
サイズ排除クロマトグラフィーでは、Sephadex G75樹脂を使用してサンプルを分離した
。サンプルを分離し、以下の画分に収集した:画分1(>163000Da)、画分2(
163000~14500Da)、画分3(14500~1300Da)、画分4(13
00~110Da)、画分5(110~10Da)。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌81
M(methicillin resistant Staphylococcus aureus 81M)は、サイズ排除画分3と一緒に
インキュベートすると、セフォキシチンに対する感受性が最も高かった。このデータから
、活性成分がサイズ排除画分3にあることが示され(表4)、これによりこの効果に関与
する生物活性分子が本明細書で説明されおよび特徴付けられたものと同じであることが示
唆される。
【0158】
【0159】
上記の開示は、本発明を一般的に説明するものである。本明細書では特定の用語が使用
されているが、そのような用語は説明的な意味で意図されており、限定の目的を意図する
ものではない。
【0160】
上記のすべての出版物、特許、および特許出願は、個々の出版物、特許、または特許出
願がその全体が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度
に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0161】
本発明の好ましい実施形態を本明細書で詳細に説明してきたが、本発明の精神または添
付の特許請求の範囲から逸脱することなく変更を加えることができることを当業者は理解
するであろう。
前記プロバイオティクス細菌が、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ペディオコッカス(Pediococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載のペプチド。
前記ラクトバチルス(Lactobacillus)が、ラクトバチルス アシドフィルス(La-5)(Lactobacillus acidophilus (La-5))、ラクトバチルス ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス ヘルヴェティカス(Lactobacillus helveticus)、およびラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)から選択される、請求項2に記載のペプチド。
前記ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)が、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム インファンティス(Bifidobacterium infantis)およびビフィドバクテリウム クルディラクティス(Bifidobacterium crudilactis)ならびにこれらの混合物から選択される、請求項2に記載のペプチド。
前記ストレプトコッカス(Streptococcus)が、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)である、請求項2に記載のペプチド。
前記ペプチドが、尿路感染、膣感染、気道感染、胃感染、バイオフィルム産生感染、乳房炎、皮膚感染、および口腔感染からなる群より選択される感染に対して有効である、請求項1に記載のペプチド。
前記ペプチドが、大腸菌(E. coli)、UPEC、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ポルフェイロモナス ジンジバリス(Porphyrmonas gingivalis)、プレボッテラ インターメディア(Prevotella intermedia)、腐性ブドウ球菌(S. saprophytic)、クレビエッサ(Klebiessa)、エンテロバクター(Enterobacter)、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabillis)、腸球菌(Enterococci)、クロストリジウム(Clostridium)、クレブシエラ(Klebsiella)、またはプロテウス(Proteus)に対して有効である、請求項8に記載のペプチド。
前記非腸管感染が、大腸菌(E. coli)、UPEC、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、ヘリコバクター ピロリ(Helicobacter pylori)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、ポルフェイロモナス ジンジバリス(Porphyrmonas gingivalis)、プレボッテラ インターメディア(Prevotella intermedia)、腐性ブドウ球菌(S. saprophytic)、クレビエッサ(Klebiessa)、エンテロバクター(Enterobacter)、プロテウス ミラビリス(Proteus mirabillis)、腸球菌(Enterococci)、クロストリジウム(Clostridium)、クレブシエラ(Klebsiella)、およびプロテウス(Proteus)からなる群より選択される種によって引き起こされる、請求項21に記載の使用。