(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023036999
(43)【公開日】2023-03-14
(54)【発明の名称】免疫応答を調節するためのオキサビシクロヘプタン
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20230307BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230307BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230307BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230307BHJP
A61K 31/496 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K31/496
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023003205
(22)【出願日】2023-01-12
(62)【分割の表示】P 2019530702の分割
【原出願日】2017-12-08
(31)【優先権主張番号】62/497,949
(32)【優先日】2016-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/465,001
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/545,373
(32)【優先日】2017-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】510090726
【氏名又は名称】リクスト・バイオテクノロジー,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エス. コヴァチ
(72)【発明者】
【氏名】ゼンピン ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ゼー チュン ウィンソン ホー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルイ ワン
(72)【発明者】
【氏名】ロンゼ ルー
(57)【要約】
【課題】免疫応答を調節するためのオキサビシクロヘプタンの提供。
【解決手段】本発明は、がんに罹患した被験体を処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を被験体に投与することを含む方法を提供する。本発明は、がんに罹患した被験体を処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて被験体に投与することを含み、合わせた場合の量が、被験体を処置するのに有効である、方法を提供する。本発明はまた、がんに罹患しておりチェックポイント阻害剤を受容している被験体を処置する方法であって、チェックポイント阻害剤単独と比較して処置を増強するのに有効な量のPP2A阻害剤を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2016年12月8日に出願された米国仮特許出願第62/497,949号、2017年2月28日に出願された米国仮特許出願第62/465,001号および2017年8月14日に出願された米国仮特許出願第62/545,373号(これらの全体は、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
プロテインホスファターゼ2A(PP2A)は、ATM/ATR依存性の応答経路およびATM/ATR非依存性の応答経路の両方の多くのタンパク質を脱リン酸化する遍在性セリン/スレオニンホスファターゼである(Mumby, M.、2007年)。PP2Aの薬理学的阻害は、p53、γH2AX、PLK1、およびAktなどの様々なシグナル伝達タンパク質の構成的リン酸化を介して、がん細胞を放射線媒介性のDNA損傷に対して感作し、その結果、細胞周期の脱調節、DNA修復の阻害、およびアポトーシスをもたらすことが、これまでに示されている(Wei, D.ら、2013年)。
ツチハンミョウ抽出物(Mylabris)の主な活性成分であるカンタリジンは、PP2Aの強力な阻害剤であることが示されている伝統的な漢方薬に由来する化合物である(Efferth, T.ら、2005年)。カンタリジンはヘパトーマの処置においてこれまで使用されており、多剤耐性の白血病細胞株に対する有効性を示しているが(Efferth, T.ら、2002年)、その重度の毒性によりその臨床的有用性は制限される。LB-100は、毒性が大幅に少ない、カンタリジンの小分子誘導体である。これまでの前臨床研究によって、LB-100が、神経膠芽腫(GBM)、転移性褐色細胞腫、および膵臓がんに対するテモゾロミド、ドキソルビシン、および放射線療法の細胞傷害性効果を増強させ得ることが示されている(Wei, D.ら、2013年;Lu, J.ら、2009年;Zhang, C.ら、2010年;Martiniova, L.ら、2011年)。LB-100では、充実性腫瘍の処置のための、ドセタキセルと組み合わせた第1相研究も行われている(Chung, V.、2013年)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Wei,D.ら、Clin Cancer Res(2013)19(16):p.4422~32
【非特許文献2】Lu,J.ら、Proc Natl Acad Sci U S A(2009)106(28):p.11697~702
【非特許文献3】Zhang,C.ら、Biomaterials(2010)31(36):p.9535~43
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、がんに罹患した被験体を処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて被験体に投与することを含み、合わせた場合の量が、被験体を処置するのに有効である、方法を提供する。
【0005】
本発明はまた、がんに罹患しておりチェックポイント阻害剤を受容している被験体を処置する方法であって、チェックポイント阻害剤単独と比較して処置を増強するのに有効な量のPP2A阻害剤を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0006】
本発明はまた、被験体における腫瘍またはがんを処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて被験体に投与することを含み、合わせた場合の量が、腫瘍またはがんを処置するのに有効である、方法を提供する。
【0007】
本発明はまた、がんに罹患した被験体におけるがん細胞に対するT細胞応答を増大させる方法であって、ある量のPP2A阻害剤をがん細胞に対するT細胞応答を増大させるのに有効な有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0008】
本発明はまた、がんに罹患した被験体におけるT細胞の活性化を増大させる方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて被験体に投与し、それによって、T細胞の活性化を増大させることを含む方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、T細胞におけるCTLA-4の機能を阻害する方法であって、T細胞にPP2A阻害剤を投与し、それによってCTLA-4の機能を阻害することを含む方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、T細胞におけるPD-1:PD-L1相互作用を阻害する方法であって、T細胞にPP2A阻害剤を投与し、それによってPD-1:PD-L1の相互作用を阻害することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、エントリー時に測定可能な疾患を有する患者における指標病変の大きさの最大変化を示す図である。
【0012】
【
図2】
図2は、研究へのエントリーの昇順での各患者の疾患の安定性または部分応答(赤色丸)の期間(サイクルの数)を示す図である。
【0013】
【
図3】(
図3A)
図3Aは、PP2Aの阻害が、CD4T細胞におけるIFN-γ産生を大幅に増強することを示す図である。40nMのLB-100の存在下または非存在下で5日間、CD3/CD28ビーズを用いて活性化されたCD4T細胞からのIFNガンマ産生。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0014】
(
図3B)
図3Bは、PP2Aの阻害が、CD4T細胞におけるIFN-γ産生を大幅に増強することを示す図である。種々の濃度のLB-100の存在下または非存在下で5日間、CD3/CD28ビーズを用いて活性化されたCD4T細胞からのIFNガンマ産生。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0015】
【
図4】(
図4A)
図4Aは、PP2Aの阻害が、CD4T細胞増殖を大幅に増強することを示す図である。1000nMのLB-100の存在下または非存在下で5日間、CD3/CD28ビーズを用いて増殖されたCD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0016】
(
図4B)
図4Bは、PP2Aの阻害が、CD4T細胞増殖を大幅に増強することを示す図である。種々の濃度のLB-100の存在下または非存在下で5日間、CD3/CD28ビーズを用いて増殖されたCD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0017】
【
図5】(
図5A)
図5Aは、PP2Aの阻害が、CD4T細胞増殖を大幅に増強することを示す図である。LB-100の非存在下で5日間、CD3/CD28ビーズを用いて増殖されたCD4T細胞の代表的なフロープロット。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0018】
(
図5B)
図5Bは、PP2Aの阻害が、CD4T細胞増殖を大幅に増強することを示す図である。1000nMのLB-100の存在下で5日間、CD3/CD28ビーズを用いて増殖されたCD4T細胞の代表的なフロープロット。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0019】
【
図6】(
図6A)
図6Aは、PP2Aの阻害が、T細胞での共起刺激分子OX40発現を大幅に増強することを示す図である。1000nMのLB-100の存在下または非存在下で5日間CD3/CD28ビーズを用いた場合のOX40を発現するCD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0020】
(
図6B)
図6Bは、PP2Aの阻害が、T細胞での共起刺激分子OX40発現を大幅に増強することを示す図である。種々の濃度のLB-100の存在下または非存在下で5日間CD3/CD28ビーズを用いた場合のOX40を発現するCD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0021】
【
図7】(
図7A)
図7Aは、PP2Aの阻害が、Tbet(CD4T細胞におけるIFNγ産生を駆動するための転写因子)を増強することを示す図である。1000nMのLB-100の存在下または非存在下で5日間のCD3/Cd28ビーズを用いた場合のTbetを発現するCD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0022】
(
図7B)
図7Bは、PP2Aの阻害が、Tbet(CD4T細胞におけるIFNγ産生を駆動するための転写因子)を増強することを示す図である。抗PD1抗体を伴うまたは伴わない種々の濃度のLB-100の存在下または非存在下で5日間増殖された、共培養単球由来樹状細胞、CD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0023】
【
図8】(
図8A)
図8Aは、組み合わせ処置を用いた場合のCD4T細胞の増強された増殖を示す図である。抗PD1抗体を伴うまたは伴わない8nMのLB-100の存在下または非存在下で5日間、単球由来樹状細胞と共培養された、増殖されたCD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0024】
(
図8B)
図8Bは、組み合わせ処置を用いた場合のCD4T細胞の増強された増殖を示す図である。抗PD1抗体を伴うまたは伴わない種々の濃度のLB-100の存在下または非存在下で5日間、単球由来樹状細胞と共培養された、増殖されたCD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0025】
【
図9】(
図9A)
図9Aは、対照におけるCD4T細胞増殖の代表的なフローサイトメトリープロットを示す図である。
【0026】
(
図9B)
図9Bは、LB-100におけるCD4T細胞増殖の代表的なフローサイトメトリープロットを示す図である。
【0027】
(
図9C)
図9Cは、抗PD-1におけるCD4T細胞増殖の代表的なフローサイトメトリープロットを示す図である。
【0028】
(
図9D)
図9Dは、LB-100+抗PD-1におけるCD4T細胞増殖の代表的なフローサイトメトリープロットを示す図である。
【0029】
【
図10】(
図10A)
図10Aは、組み合わせ処置を用いた場合のCD4T細胞の増強されたOX40発現を示す図である。0.05nMの抗PD1抗体を伴うまたは伴わない8nMのLB-100の存在下または非存在下で5日間、単球由来樹状細胞と共培養されたOX40を発現するCD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0030】
(
図10B)
図10Bは、組み合わせ処置を用いた場合のCD4T細胞の増強されたOX40発現を示す図である。抗PD1を伴うまたは伴わない種々の濃度のLB-100の存在下または非存在下で5日間、単球由来樹状細胞と共培養されたOX40を発現するCD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0031】
【
図11】(
図11A)
図11Aは、組み合わせ処置を用いた場合のCD4T細胞における、増強されたTbet発現を示す図である。抗PD1抗体を伴うまたは伴わない200nMのLB-100の存在下または非存在下で5日間、単球由来樹状細胞と共培養されたTbetを発現するCD4T細胞のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0032】
(
図11B)
図11Bは、組み合わせ処置を用いた場合のCD4T細胞における、増強されたTbet発現を示す図である。抗PD1抗体を伴うまたは伴わない種々の濃度のLB-100の存在下または非存在下で5日間、単球由来樹状細胞と共培養されたCD4T細胞におけるTbet発現のパーセンテージ。LB-100は3日目に添加または置換した。
【0033】
【
図12】
図12は、8用量を2日毎に処置されたマウスにおいてPP2A阻害剤が、マウスB16黒色腫腫瘍成長を大幅に低減したことを示す図である。処置は、腫瘍移植の同日に開始した。対照-PBS、低用量-0.16mg/kg、中用量-0.32mg/kg。
【0034】
【
図13】(
図13A)
図13Aは、PP2A阻害剤がナイーブマウスにおいてCD4/8エフェクター細胞を増大したことを示す図である。in vivoでの低用量のLB処置は、リンパ節においてより多いCD8(左)およびCD4(右)エフェクターT細胞を誘導した。群あたり5匹のマウス。対照-PBS、低用量-0.16mg/kg、中用量-0.32mg/kg。
【0035】
(
図13B)
図13Bは、PP2A阻害剤がナイーブマウスにおいてCD4/8エフェクター細胞を増大したことを示す図である。
図13AにおけるCD44+CD62L-CD8(左)およびCD4(右)の代表的なフローサイトメトリープロット。対照-PBS、低用量-0.16mg/kg、中用量-0.32mg/kg。
【0036】
【
図14】(
図14A)
図14Aは、PP2A阻害剤が、血液および脾臓におけるCD8T細胞でのPD-1発現を低減したことを示す図である。in vivoでの低用量のLB処置は、血液においてPD-1を発現するCD8+T細胞を低減した。
【0037】
(
図14B)
図14Bは、PP2A阻害剤が、血液および脾臓におけるCD8T細胞でのPD-1発現を低減したことを示す図である。in vivoでの中用量のLB処置は、脾臓においてPD-1を発現するCD8+T細胞を低減した。
【0038】
【
図15】
図15は、PP2A阻害剤が、ヒトT細胞からのIFN-g産生を増強したことを示す図である。LB-100または抗PD-1または組み合わせ(LB-100および抗PD-1)の存在下での単球由来DCと共培養されたCD4T細胞から得た上清におけるIFNγ産生。
【0039】
【
図16】(
図16A)
図16Aは、PP2A阻害剤が、ヒトCD4T細胞でのPD-1発現を低減したことを示す図である。アイソタイプ対照の存在下で単球由来DCと共培養されたPD-1を発現するCD4T細胞のパーセンテージ。
【0040】
(
図16B)
図16Bは、PP2A阻害剤が、ヒトCD4T細胞でのPD-1発現を低減したことを示す図である。LB-100の存在下で単球由来DCと共培養されたPD-1を発現するCD4T細胞のパーセンテージ。
【0041】
(
図16C)
図16Cは、PP2A阻害剤が、ヒトCD4T細胞でのPD-1発現を低減したことを示す図である。抗PD-1の存在下で単球由来DCと共培養されたPD-1を発現するCD4T細胞のパーセンテージ。
【0042】
(
図16D)
図16Dは、PP2A阻害剤が、ヒトCD4T細胞でのPD-1発現を低減したことを示す図である。組み合わせ(LB-100および抗PD-1)の存在下で単球由来DCと共培養されたPD-1を発現するCD4T細胞のパーセンテージ。
【0043】
【
図17】(
図17A)
図17Aは、CD8+CD44+エフェクターT細胞が、PP2A阻害剤LB-100処置により増大されることを示す図である。LB-100またはPBSを用いて処置されたB16腫瘍を有するマウスから得た腫瘍流入領域リンパ節におけるCD8+CD44+Tエフェクター細胞集団のパーセンテージ。群あたり5匹のマウス。
【0044】
(
図17B)
図17Bは、CD8+CD44+エフェクターT細胞が、PP2A阻害剤LB-100処置により増大されることを示す図である。
図17Aに示されるデータの代表的なフローサイトメトリープロット。
【0045】
【
図18】(
図18A)
図18Aは、B16腫瘍を有するマウスから得たリンパ節における増加したCD44+CD62L-CD4エフェクターT細胞を示す図である。LB-100またはPBSを用いて処置されたB16腫瘍を有するマウスから得たリンパ節におけるCD44+CD62L-CD4エフェクターT細胞集団のパーセンテージ。群あたり5匹のマウス。
【0046】
(
図18B)
図18Bは、B16腫瘍を有するマウスから得たリンパ節における増加したCD44+CD62L-CD4エフェクターT細胞を示す図である。
図18Aに示されるデータの代表的なフローサイトメトリープロット。
【0047】
【
図19】(
図19A)
図19Aは、B16腫瘍を有するマウスから得たリンパ節における増加したCD44+CD62L-CD8エフェクターT細胞を示す図である。LB-100またはPBSを用いて処置されたB16腫瘍を有するマウスから得たリンパ節におけるCD44+CD62L-CD8エフェクターT細胞のパーセンテージ。群あたり5匹のマウス。
【0048】
(
図19B)
図19Bは、B16腫瘍を有するマウスから得たリンパ節における増加したCD44+CD62L-CD8エフェクターT細胞を示す図である。
図19Aにおいて示されるデータの代表的なフローサイトメトリープロット。
【0049】
【
図20】(
図20A)
図20Aは、BALB/cマウスに、その右胸部脇腹(thoracic flank)にCT26細胞を皮下移植したことを示す図である。13日後、30~100mm
3の大きさに到達した腫瘍を有するマウスを無作為化し、PBS対照、抗PD-L1、LB-100または組み合わせ(LB-100および抗PD-1)を用いて28日間処置した。経時的な個体の腫瘍体積。
【0050】
(
図20B)
図20Bは、BALB/cマウスに、その右胸部脇腹(thoracic flank)にCT26細胞を皮下移植したことを示す図である。13日後、30~100mm
3の大きさに到達した腫瘍を有するマウスを無作為化し、PBS対照、抗PD-L1、LB-100または組み合わせ(LB-100および抗PD-1)を用いて28日間処置した。経時的なメジアン腫瘍体積。
【0051】
(
図20C)
図20Cは、BALB/cマウスに、その右胸部脇腹(thoracic flank)にCT26細胞を皮下移植したことを示す図である。13日後、30~100mm
3の大きさに到達した腫瘍を有するマウスを無作為化し、PBS対照、抗PD-L1、LB-100または組み合わせ(LB-100および抗PD-1)を用いて28日間処置した。経時的なマウス生存。
【0052】
【
図21】(
図21A)
図21Aは、最初の接種の約60日後、治癒したマウスおよびCT26-ナイーブ対照マウスに、CT26細胞をその左脇腹に(再)接種したことを示す図である。経時的な個体の腫瘍体積。
【0053】
(
図21B)
図21Bは、最初の接種の約60日後、治癒したマウスおよびCT26-ナイーブ対照マウスに、CT26細胞をその左脇腹に(再)接種したことを示す図である。経時的なメジアン腫瘍体積。
【0054】
【
図22】(
図22A)
図22Aは、BALB/cマウスに、その右胸部脇腹にCT26細胞を皮下移植したことを示す図である。11日後、30~100mm
3の大きさに到達した腫瘍を有するマウスを、4群に無作為化した:対照、CD8枯渇、CD8枯渇+組み合わせ(LB-100および抗PD-1)または組み合わせのみ(LB-100および抗PD-1)。次いで、枯渇群のマウスに、CD8枯渇抗体を与えた。次いで2日後、マウスにそれぞれの処置を開始した。経時的な個体の腫瘍体積。
【0055】
(
図22B)
図22Bは、BALB/cマウスに、その右胸部脇腹にCT26細胞を皮下移植したことを示す図である。11日後、30~100mm
3の大きさに到達した腫瘍を有するマウスを、4群に無作為化した:対照、CD8枯渇、CD8枯渇+組み合わせ(LB-100および抗PD-1)または組み合わせのみ(LB-100および抗PD-1)。次いで、枯渇群のマウスに、CD8枯渇抗体を与えた。次いで2日後、マウスにそれぞれの処置を開始した。経時的なメジアン腫瘍体積。
【0056】
(
図22C)
図22Cは、BALB/cマウスに、その右胸部脇腹にCT26細胞を皮下移植したことを示す図である。11日後、30~100mm
3の大きさに到達した腫瘍を有するマウスを、4群に無作為化した:対照、CD8枯渇、CD8枯渇+組み合わせ(LB-100および抗PD-1)または組み合わせのみ(LB-100および抗PD-1)。次いで、枯渇群のマウスに、CD8枯渇抗体を与えた。次いで2日後、マウスにそれぞれの処置を開始した。経時的なマウス生存。
【0057】
【
図23】(
図23A)
図23Aは、BALB/CマウスにCT26腫瘍細胞を右胸部脇腹に皮下接種し、
図22A~Cに記載されるように、対照(PBS)、LB-100、抗PD-1または組み合わせ(LB-100および抗PD-1)を用いて処置したことを示す図である。処置の開始の12日後、フローサイトメトリーによって腫瘍浸潤T細胞を解析した。PMA刺激の4時間後にIFNg+を産生するCD8+腫瘍浸潤T細胞のパーセンテージは、組み合わせ群において増大した(
*p=0.05)。
【0058】
(
図23B)
図23Bは、BALB/CマウスにCT26腫瘍細胞を右胸部脇腹に皮下接種し、
図22A~Cに記載されるように、対照(PBS)、LB-100、抗PD-1または組み合わせ(LB-100および抗PD-1)を用いて処置したことを示す図である。処置の開始の12日後、フローサイトメトリーによって腫瘍浸潤T細胞を解析した。腫瘍におけるCD45+細胞のCD4+FoxP3+制御性T細胞のパーセンテージは、LB-100処置群において減少した(
**p<0.01)。
【0059】
【
図24】(
図24A)
図24Aは、BALB/cマウスに0.5×10
6個のCT26細胞を右胸部脇腹に皮下接種したことを示す図である。腫瘍が50~100mm
3の間に到達した時点で、マウスを4つの処置群に無作為化し、2日毎に4週間処置した。
【0060】
(
図24B)
図24Bは、左、個体の腫瘍成長曲線:対照、LB-100、a-PD-1および組み合わせ、中央、経時的な平均腫瘍サイズ、右、継時的な累積生存を示す図である。
【0061】
(
図24C)
図24Cは、PD-1遮断を伴うPP2A阻害の有効性が、CD8+T細胞に依存することを示す図である。24Aにおけるように、BALB/cマウスに接種した。腫瘍が30~100mm
3に到達した時点で、マウスはCD8+T細胞が一時的に枯渇し、組み合わせを用いて処置した。
【0062】
(
図24D)
図24Dは、左、個体の腫瘍成長曲線:対照、組み合わせ、CD-8枯渇のみおよびCD8枯渇との組み合わせ、中央、経時的な平均腫瘍サイズ、右、経時的な累積生存を示す図である。データは、2つの独立した実験の代表である。
*P<0.05、
**P<0.01および
****P<0.0001(ログ-ランクマンテル-コックス(log-rank Mantel-Cox)検定)。
【0063】
【
図25】(
図25A)
図25Aは、BALB/cマウスに0.5×10
6個のCT26細胞を皮下接種し、処置したことを示す図である。CRまたはナイーブ対照マウスに、最初の移植の約60日後に0.5×10
6個のCT26細胞を左胸部脇腹に、または乳頭脂肪パッドに1.25×10
5個の4T1乳癌細胞と組み合わせて再負荷した。CT26を単独で(再)負荷されたマウスは、CT26腫瘍の成長がないことを実証した。
【0064】
(
図25B)
図25Bは、左、個体の腫瘍成長曲線:ナイーブ、CR、右、経時的な平均腫瘍サイズを示す図である。
【0065】
(
図25C)
図25Cは、接種の18日後のCT26腫瘍体積の定量化を示す図である(P<0.001、両側スチューデントのt検定)。
【0066】
(
図25D)
図25Dは、CRおよびナイーブマウスにCT26および4T1腫瘍細胞を用いて(再)負荷したことを示す図である:ナイーブ-CT26、CR-CT26、ナイーブ-4T1、CR-4T1。左、個体の腫瘍成長曲線、右、経時的な平均腫瘍サイズ。
【0067】
(
図25E)
図25Eは、接種の18日後のCT26および4T1腫瘍体積の定量化を示す図である(P<0.0001、チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。
【0068】
(
図25F)
図25Fは、CT26および4T1腫瘍接種後の代表的なナイーブおよびCRマウスの像を示す図である。
【0069】
【
図26】(
図26A)
図26Aは、脾臓におけるCD8+T細胞におけるCD44およびCD62Lの代表的なFACSプロットを示す図である。
【0070】
(
図26B)
図26Bは、脾臓におけるCD62-CD44+の(CD8+T細胞の)定量化(n=4~5)を示す図である。
【0071】
(
図26C)
図26Cは、腫瘍流入領域リンパ節におけるCD62-CD44+の(CD8+T細胞の)定量化(n=4~5)を示す図である。
【0072】
(
図26D)
図26Dは、CD45+細胞のパーセンテージとしてのCD8+CD3+T細胞の代表的なFACSプロットを示す図である。
【0073】
(
図26E)
図26Eは、CD45+細胞のパーセンテージとして表されるCD3+の免疫浸潤解析(n=5)を示す図である。エラーバーは、SEMを示す。データは、5匹の独立に解析されたマウス/群を用いる2つの実験のうち一方を表す。
【0074】
(
図26F)
図26Fは、CD45+細胞のパーセンテージとして表されるCD8+の免疫浸潤解析(n=5)を示す図である。エラーバーは、SEMを示す。データは、5匹の独立に解析されたマウス/群を用いる2つの実験のうち一方を表す。
【0075】
(
図26G)
図26Gは、CD45+細胞のパーセンテージとして表されるCD4+の免疫浸潤解析(n=5)を示す図である。エラーバーは、SEMを示す。データは、5匹の独立に解析されたマウス/群を用いる2つの実験のうち一方を表す。
【0076】
(
図26H)
図26Hは、腫瘍におけるCD8+のCD4+細胞に対する比を示す図である。エラーバーは、SEMを示す。データは、5匹の独立に解析されたマウス/群を用いる2つの実験のうち一方を表す。
【0077】
(
図26I)
図26Iは、腫瘍におけるCD45+細胞のパーセンテージとして表されるCD8+およびCD44+を示す図である。エラーバーは、SEMを示す。データは、5匹の独立に解析されたマウス/群を用いる2つの実験のうち一方を表す。
【0078】
(
図26J)
図26Jは、腫瘍におけるCD45+細胞のパーセンテージとして表されるCD8+およびKi67+を示す図である。エラーバーは、SEMを示す。データは、5匹の独立に解析されたマウス/群を用いる2つの実験のうち一方を表す。
【0079】
(
図26K)
図26Kは、腫瘍におけるCD8+細胞におけるPD1+の発現を示す図である。
*P<0.05、(チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。
【0080】
(
図26L)
図26Lは、腫瘍におけるCD4+細胞の発現を示す図である。
*P<0.05、(チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。
【0081】
【
図27】(
図27A)
図27Aは、腫瘍におけるFoxP3+およびCD4+T細胞の代表的なFACSプロットを示す図である。(
図27B)
図27Bは、総CD3+細胞のCD4+FoxP3+T細胞のパーセンテージを示す図である。
【0082】
(
図27C)
図27Cは、腫瘍におけるCD8+のCD4+FoxP3+Treg細胞に対する比(n=5)を示す図である。
【0083】
(
図27D)
図27Dは、CD45+細胞のCD8+IFNγ+T細胞の代表的なFACSプロットを示す図である。
【0084】
(
図27E)
図27Eは、CD45+細胞のCD8+IFNγ+T細胞のパーセンテージを示す図である。
【0085】
(
図27F)
図27Fは、CD45+細胞のCD8+TNFα+T細胞のパーセンテージを示す図である。
【0086】
(
図27G)
図27Gは、CD45+細胞のCD8+二重陽性IFNγ+TNFα+T細胞のパーセンテージを示す図である。
【0087】
(
図27H)
図27Hは、CD45+細胞のCD8+GranzymeB+T細胞のパーセンテージを示す図である。
【0088】
(
図27I)
図27Iは、CD4+T細胞のCD4+IFNγ+のパーセンテージを示す図である。
【0089】
(
図27J)
図27Jは、FACSによって決定されるようなCD45+免疫細胞サブセットおよびCD45-細胞のまとめを示す図である。サブセットは、すべての獲得された生事象(右)およびCD3+細胞(左)のパーセンテージとして示される;右側の図:非CD45-、CD3+、非CD3+CD45白血球;左側の図:CD8、CD4-Treg、CD4-conv.
*P<0.05、(チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。エラーバーは、SEMを示す。データは、5匹の独立に解析されたマウス/群を用いる2つの実験のうち一方を表す。
【0090】
【
図28】(
図28A)
図28Aは、LB-100および/またはaPD-1処置を受けているマウスの脾臓における(A)CD4+の活性化および免疫チェックポイントマーカーのフローサイトメトリー解析を示す図である。CD4+T細胞では、CD8+T細胞とは異なり、CD62L-CD44+発現の発現において変化がなかった。また、免疫チェックポイントマーカー:PD1、CTLA4、TIM3およびOx40の発現において変化がなかった。
【0091】
(
図28B)
図28Bは、LB-100および/またはaPD-1処置を受けているマウスの脾臓におけるCD8+リンパ球の活性化および免疫チェックポイントマーカーのフローサイトメトリー解析を示す図である。CD8+T細胞では、免疫チェックポイントマーカー:PD1、CTLA4、TIM3およびOx40の発現において変化はなかった。
【0092】
【
図29】(
図29A)
図29Aは、LB-100および/またはaPD-1処置を受けているマウスの流入領域リンパ節(dLN)におけるCD4+の活性化および免疫チェックポイントマーカーのフローサイトメトリー解析を示す図である。CD4+T細胞では、CD8+T細胞とは異なり、CD62L-CD44+発現の発現において変化はなかった。aPD-1処置群におけるPD-1発現において小さいが有意な増大があったが、単独または組み合わせたLB-100は、PD-1発現をさらに変更しなかった。その他の免疫チェックポイントマーカー:CTLA4、TIM3およびOx40の発現において変化はなかった。
*P<0.05、
**<P<0.01(チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。エラーバーは、SEMを示す。
【0093】
(
図29B)
図29Bは、LB-100および/またはaPD-1処置を受けているマウスの流入領域リンパ節(dLN)におけるCD8+リンパ球の活性化および免疫チェックポイントマーカーのフローサイトメトリー解析を示す図である。CD8+T細胞では、免疫チェックポイントマーカー:PD1、CTLA4、TIM3およびOx40の発現において変化はなかった。
*P<0.05、
**<P<0.01(チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。エラーバーは、SEMを示す。
【0094】
【
図30】
図30は、腫瘍浸潤リンパ球のフローサイトメトリー解析のゲート(gating)戦略を示す図である。SSC-FSCゲートを使用して、非細胞性残屑を排除し、続いて、FSC-H-FSA-Aゲートによってデュプレット(duplet)を排除した。固定可能な生-死(L/D)染色を使用して、死細胞を排除した。次いで、CD45+汎白血球マーカーの発現に基づいて生細胞をゲートした。CD45-細胞を腫瘍細胞とみなした。次いで、CD45+細胞をCD3、CD8、CD4発現にさらに基づいて表現型決定した。CD45+CD3+CD8+細胞をCD8+リンパ球としてゲートし、CD45+CD3+CD4+細胞をCD4+リンパ球としてゲートした。次いで、CD4+およびCD8+サブセットのさらなる染色を本文に示されるように実施した。
【0095】
【
図31】(
図31A)
図31Aは、各処置群について、CD3+、CD8+およびCD4+細胞の、CD45-腫瘍常在細胞に対する比を示す図である。対照と比較して、組み合わせ群において、CD3/腫瘍およびCD8/腫瘍比において増大があったが、CD4/腫瘍比には変化がなかった。
【0096】
(
図31B)
図31Bは、各処置群について、1グラムの腫瘍重量あたりのCD3+、CD8+およびCD4+細胞の数を示す図である。同様の傾向が
図31Aにおいても見られるが、対照と比較してaPD-1処置群単独において腫瘍1グラムあたりのCD3+およびCD8+に有意差があった。組み合わせ処置のCD3+およびCD8+/腫瘍においてさらなる増大の傾向があったが、統計的に有意ではなかった。
*P<0.05、
***<P<0.001(チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。エラーバーは、SEMを示す。
【0097】
【
図32】(
図32A)
図32Aは、LB-100および/またはaPD-1処置を受けているマウスの腫瘍におけるCD4+リンパ球の免疫チェックポイントマーカーのフローサイトメトリー解析を示す図である。CD4+T細胞では、免疫チェックポイントマーカー:TIM3、Ox40、CTLA4およびLAG3の発現において変化はなかった。
【0098】
(
図32B)
図32Bは、LB-100および/またはaPD-1処置を受けているマウスの腫瘍におけるCD8+リンパ球の、および免疫チェックポイントマーカーのフローサイトメトリー解析を示す図である。CD8+T細胞では、免疫チェックポイントマーカー:TIM3、Ox40、CTLA4およびLAG3の発現において変化はなかった。
【0099】
【
図33】(
図33A)
図33Aは、増加したTNF-α+を示す代表的なフローサイトメトリープロットを示す図である。示されたパーセンテージは、総CD3+のものである。
【0100】
(
図33B)
図33Bは、増加したTNF-α+IFN-γ+二重陽性を示す代表的なフローサイトメトリープロットを示す図である。示されたパーセンテージは、総CD8+のものである。
【0101】
(
図33C)
図33Cは、増加したGranzymeB+CD8腫瘍浸潤T細胞を示す代表的なフローサイトメトリーを示す図である。示されたパーセンテージは、総CD3+細胞のものである。
【0102】
【
図34】(
図34A)
図34Aは、C57BL/6マウスを4つの処置群に無作為化したことを示す図である。2.5×10
5個のB16F10細胞を、処置の開始の2日後に右胸部脇腹に皮下接種した。マウスを生存エンドポイントまで2日毎に処置した。
【0103】
(
図34B)
図34Bは、左、個体の腫瘍成長曲線:対照、LB-100、a-PD-1および組み合わせ、右、継時的な平均腫瘍サイズを示す図である。
【0104】
(
図34C)
図34Cは、接種の15日後のB16腫瘍体積の定量化を示す図である(P<0.0001、チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。
【0105】
(
図34D)
図34Dは、継時的な累積生存を示す図である。
*P<0.05、(ログ-ランクマンテル-コックス検定)データは、2つの独立した実験からプールされている。
【0106】
(
図34E)
図34Eは、各処置群(群あたりn=2~3)の皮膚および唾液腺のヘマトキシリンおよびエオシン染色の代表的な画像を示す図である。スケールバー、100μm。
【0107】
【
図35】
図35は、各処置群(群あたりn=2~3)の膵臓、肺および胃のヘマトキシリンおよびエオシン染色の代表的な画像を示す図である。スケールバー、100μm。
【0108】
【
図36】(
図36A)
図36Aは、CD3T細胞をマウス脾細胞から単離し、固定化された抗CD3(10.ig/ml)および可溶性抗CD28(2.ig/ml)を使用して刺激と伴ってまたは伴わずに培養したことを示す図である。活性化の3時間後にPP2A酵素活性を測定した。PP2A活性を、LB-100用量滴定の存在下で活性化された対照と比べて測定した。
【0109】
(
図36B)
図36Bは、LB-100用量滴定の存在下で刺激の3時間後にThr308(p-AKT(T308))またはSer473(p-AKT(S473))でリン酸化されたAKTを解析するフローサイトメトリーを示す図である。
【0110】
(
図36C)
図36Cは、LB-100用量滴定の存在下でリン酸化されたS6(p-S6)を解析するフローサイトメトリーを示す図である。
*P<0.05、
***P<0.001、(チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。データは、同様の結果を有する2つの独立した実験を代表する1つの実験に由来する。エラーバーは、SEMを示す。
【0111】
【
図37】
図37は、刺激の30分後のAKTおよびmTORCシグナル伝達を示す図である。LB-100用量滴定の存在下で刺激の30分後に、Thr308(p-AKT(T308))、Ser473(p-AKT(S473))でリン酸化されたAKTまたはリン酸化されたS6(p-S6)を解析するフローサイトメトリー。(チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。データは、同様の結果を有する2つの独立した実験を代表する1つの実験に由来する。エラーバーは、SEMを示す。
【0112】
【
図38】(
図38A)
図38Aは、左、Foxp3について陽性のCD4細胞の%、右、LB-100を用いた場合のFoxp3細胞の%の減少を実証する代表的なフローサイトメトリーデータを示す図である。CD4+細胞で細胞をゲートした。
【0113】
(
図38B)
図38Bは、フローサイトメトリーを用いてGATA3の細胞内レベルを測定したことを示す図である。左、GATA3について陽性のCD4細胞の%。右、LB-100を用いた場合のGATA3細胞の%の減少を実証する代表的なフローサイトメトリーデータ。
【0114】
(
図38C)
図38Cは、GATA3+Th2の、Tbet+Th1 CD4細胞に対する比を示す図である。
【0115】
(
図38D)
図38Dは、フローサイトメトリーによってIFN-γの細胞内産生が測定されたことを示す図である。左、T
H1およびT
H2条件においてIFN-γについて陽性であるCD4細胞の%。右、T
H1およびT
H2条件の両方においてLB-100を用いた場合のIFN-γの%の増大を実証する代表的なフローサイトメトリーデータ。
【0116】
(
図38E)
図38Eは、T
H1傾斜条件において3日間活性化されたナイーブCD4
+T細胞の上清におけるTNF、IL2およびIFN-γ産生を示す図である。
【0117】
(
図38F)
図38Fは、T
H2傾斜条件において3日間活性化されたナイーブCD4
+T細胞の上清におけるTNF、IL2、IFN-γおよびIL4産生を示す図である。サイトカインレベルは絶対細胞数に対して補正された。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001、(チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。データは、同様の結果を有する2つの独立した実験を代表する1つの実験に由来する。エラーバーは、SEMを示す。
【0118】
【
図39】(
図39A)
図39Aは、IL4およびGM-CSF中で7日間培養することによって、DCが精製単球から誘導されたことを示す図である。次いで、10
5個のCFSE標識された精製CD4+T細胞を、2連または3連で5日間、LB-100の滴定の存在下で10
4個の同種異系DCと共培養した。LB-100を3日目に補充した。5日目に上清を回収し、IFN-γ産生について測定した。FACS解析を培養細胞で実施した。
【0119】
(
図39B)
図39Bは、サイトゾルCFSEの希釈によって測定される、LB-100用量滴定の存在下でのCD4+T細胞のin vitro増殖を示す図である。左、分裂した細胞の%をLB-100の濃度に対してプロットした。右、1uMのLB-100での分裂した細胞の%の増大を実証する代表的なフローサイトメトリーデータ。
【0120】
(
図39C)
図39Cは、IFN-α産生を5日目に測定し、LB-100を用いた場合の、IFN-α分泌の用量依存性増大を実証したことを示す図である。
【0121】
(
図39D)
図39Dは、5日間の共培養後にCD4+T細胞においてT-betの細胞内染色を実施したことを示す図である。LB-100濃度に対するCD4+Tbet+の(CD4+細胞の)パーセンテージ。
【0122】
(
図39E)
図39Eは、アイソタイプ対照、LB-100および/またはニボルマブを用いて処置した細胞における(E)IFN-γ産生を示す図であり、組み合わせ処置に対する相乗応答を実証する。
*P<0.05、
**P<0.01、
***P<0.001(チューキーの多重比較検定を用いる一元配置分散分析)。データは、同様の結果を有する2つの独立した実験を代表する1つの実験に由来する。エラーバーは、SEMを示す。
【発明を実施するための形態】
【0123】
本発明は、がんに罹患した被験体を処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて被験体に投与することを含み、合わせた場合の量が、被験体を処置するのに有効である、方法を提供する。
【0124】
本発明はまた、がんに罹患しておりチェックポイント阻害剤を受容している被験体を処置する方法であって、チェックポイント阻害剤単独と比較して処置を増強するのに有効な量のPP2A阻害剤を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0125】
本発明はまた、被験体における腫瘍またはがんを処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて被験体に投与することを含み、合わせた場合の量が、腫瘍またはがんを処置するのに有効である、方法を提供する。
【0126】
本発明はまた、がんに罹患した被験体におけるがん細胞に対するT細胞応答を増大させる方法であって、ある量のPP2A阻害剤を、がん細胞に対するT細胞応答を増大させるのに有効な有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0127】
本発明はまた、がんに罹患した被験体におけるT細胞の活性化を増大させる方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて被験体に投与し、それによって、T細胞の活性化を増大させることを含む方法を提供する。
【0128】
一部の実施形態では、上記量の化合物および上記量のチェックポイント阻害剤は、各々定期的に被験体に投与される。
【0129】
一部の実施形態では、上記量の化合物および上記量のチェックポイント阻害剤は、同時に、個別に、または逐次的に投与される。
【0130】
一部の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PP2A阻害剤と同時に、PP2A阻害剤の前に、またはPP2A阻害剤の後に投与される。
【0131】
一部の実施形態では、一緒に投与される場合の上記量のチェックポイント阻害剤および上記量の化合物は、同量の各薬剤が単独で投与される場合よりも、被験体を処置するのに有効である。
【0132】
一部の実施形態では、一緒に投与される場合の上記量の化合物および上記量のチェックポイント阻害剤は、被験体におけるがんの臨床症状を低減させるのに有効である。
【0133】
一部の実施形態では、化合物は、チェックポイント阻害剤の免疫療法的効果を増強させる。
【0134】
一部の実施形態では、がんは、免疫応答による処置に対して感受性である。
【0135】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4剤である。
【0136】
一部の実施形態では、CTLA-4チェックポイント阻害剤は、イピリムマブまたはトレメリムマブである。
【0137】
一部の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1または抗PD-L1剤である。
【0138】
一部の実施形態では、PD-1および/またはPD-L1チェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、ニボルマブ、またはペムブロリズマブである。
【0139】
一部の実施形態では、がんは、黒色腫、腎細胞癌、前立腺がん、尿路上皮癌、または卵巣がんである。
【0140】
一部の実施形態では、がんは、黒色腫である。
【0141】
一部の実施形態では、PP2A阻害剤は、0.25mg/m2、0.5mg/m2、0.83mg/m2、1.25mg/m2、1.75mg/m2、2.33mg/m2、または3.1mg/m2の用量で投与される。
【0142】
一部の実施形態では、PP2A阻害剤は、2.33mg/m2の用量で投与される。
【0143】
一部の実施形態では、PP2A阻害剤は、3週間毎に3日間投与される。
【0144】
一部の実施形態では、イピリムマブは、0.5mg/kg~10mg/kgまたはそれ未満の用量で静脈内に投与される。
【0145】
一部の実施形態では、イピリムマブは、3週間毎またはそれより少なく、90分にわたり静脈内に投与される。
【0146】
一部の実施形態では、アテゾリズマブは、0.1mg/kg~20mg/kgまたはそれ未満の用量で静脈内に投与される。
【0147】
一部の実施形態では、アテゾリズマブは、3週間毎またはそれより少なく、60分にわたり静脈内に投与される。
【0148】
一部の実施形態では、ニボルマブは、0.1mg/kg~10mg/kgまたはそれ未満の用量で静脈内に投与される。
【0149】
一部の実施形態では、ニボルマブは、2週間毎またはそれより少なく、60分にわたり静脈内に投与される。
【0150】
一部の実施形態では、ペムブロリズマブは、1mg/kg~10mg/kgまたはそれ未満の用量で静脈内に投与される。
【0151】
一部の実施形態では、ペムブロリズマブは、3週間毎またはそれより少なく、30分にわたり静脈内に投与される。
【0152】
本発明はまた、T細胞におけるCTLA-4の機能を阻害する方法であって、T細胞にPP2A阻害剤を投与し、それによってCTLA-4の機能を阻害することを含む方法を提供する。
【0153】
本発明はまた、T細胞におけるPD-1:PD-L1相互作用を阻害する方法であって、T細胞にPP2A阻害剤を投与し、それによってPD-1:PD-L1の相互作用を阻害することを含む方法を提供する。
【0154】
一部の実施形態では、本方法において、PP2A阻害剤は、構造:
【化1】
を有するか、またはその塩、両性イオン、もしくはエステルであり、式中、
結合αが、存在しているかもしくは存在せず、
一緒になったR
1およびR
2が、=Oであり、
R
3が、OH、O
-、OR
9、O(CH
2)
1~6R
9、SH、S
-、もしくはSR
9であり、
ここで、R
9が、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはアリールであり、
R
4が、
【化2】
であり、
式中、Xが、O、S、NR
10、N
+HR
10、もしくはN
+R
10R
10であり、
ここで、各R
10が、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、
【化3】
、-CH
2CN、-CH
2CO
2R
11、もしくは-CH
2COR
11であり、
ここで、各R
11が、独立して、H、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニルであり、
R
5およびR
6が、一緒になって=Oであり、
R
7およびR
8が、各々Hである。
【0155】
一部の実施形態では、化合物は、構造:
【化4】
を有する。
【0156】
一部の実施形態では、化合物内の結合αは存在する。
【0157】
一部の実施形態では、化合物内の結合αは存在しない。
【0158】
一部の実施形態では、R
3は、OH、O
-、またはOR
9であり、
ここで、R
9は、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールであり、
R
4は、
【化5】
であり、
式中、Xは、O、S、NR
10、N
+HR
10、またはN
+R
10R
10であり、
ここで、各R
10は、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、
【化6】
である。
【0159】
一部の実施形態では、R3は、OH、O-、またはOR9であり、ここで、R9は、H、メチル、エチル、またはフェニルである。
【0160】
一部の実施形態では、R3は、OH、O-、またはOR9であり、ここで、R9は、メチルである。
【0161】
【0162】
一部の実施形態では、R
4は、
【化8】
であり、式中、R
10は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、または
【化9】
である。
【0163】
一部の実施形態では、R
4は、
【化10】
であり、式中、R
10は、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、または
【化11】
である。
【0164】
一部の実施形態では、R
4は、
【化12】
である。
【0165】
一部の実施形態では、R
4は、
【化13】
であり、式中、R
10は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、
【化14】
である。
【0166】
一部の実施形態では、R
4は、
【化15】
である。
【0167】
一部の実施形態では、R
4は、
【化16】
である。
【0168】
一部の実施形態では、化合物は、構造
【化17】
を有するか、またはその塩、両性イオン、もしくはエステルであり、式中、
結合αが、存在しているかもしくは存在せず、
R
9が、存在しているかもしくは存在せず、存在している場合には、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはフェニルであり、かつ
Xが、O、NR
10、NH
+R
10、もしくはN
+R
10R
10であり、
ここで、各R
10が、独立して、H、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、
【化18】
、-CH
2CN、-CH
2CO
2R
12、もしくは-CH
2COR
12であり、
ここで、R
12が、Hもしくはアルキルである。
【0169】
一部の実施形態では、化合物は、構造
【化19】
を有するか、またはその塩、両性イオン、もしくはエステルであり、式中、
結合αが、存在しているかもしくは存在せず、
Xが、OもしくはNR
10であり、
ここで、各R
10が、独立して、H、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、
【化20】
、-CH
2CN、-CH
2CO
2R
12、もしくは-CH
2COR
12であり、
ここで、R
12が、Hもしくはアルキルである。
【0170】
一部の実施形態では、化合物は、構造
【化21】
を有するか、またはその塩、両性イオン、もしくはエステルであり、式中、
結合αが、存在しているかもしくは存在せず、
Xが、OもしくはNH
+R
10であり、
ここで、R
10が、H、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、
【化22】
、-CH
2CN、-CH
2CO
2R
12、もしくは-CH
2COR
12であり、
ここで、R
12が、Hもしくはアルキルである。
【0171】
一部の実施形態では、化合物は、構造
【化23】
を有するか、またはその塩もしくはエステルである。
【0172】
本発明は、T細胞におけるCTLA-4の機能を阻害する方法であって、T細胞にPP2A阻害剤を投与し、それによってCTLA-4の機能を阻害することを含む方法を提供する。
【0173】
本発明はまた、がんに罹患した被験体におけるCTLA-4の機能を阻害する方法であって、PP2A阻害剤を被験体に投与し、それによって被験体におけるCTLA-4の機能を阻害することを含む方法を提供する。
【0174】
本発明は、がんに罹患した被験体におけるT細胞の活性化を増大させる方法であって、PP2A阻害剤を被験体に投与し、それによってT細胞の活性化を増大させることを含む方法をさらに提供する。
【0175】
本発明は、がんに罹患した被験体におけるがん細胞に対するT細胞応答を増大させる方法であって、PP2A阻害剤を被験体に投与し、それによってがん細胞に対するT細胞応答を増大させることを含む方法をさらに提供する。
【0176】
本発明はまた、がんに罹患した被験体を処置する方法であって、有効量のCTLA-4チェックポイント阻害剤および有効量のPP2A阻害剤を被験体に投与することを含み、合わせた場合の量が、被験体を処置するのに有効である、方法を提供する。
【0177】
一部の実施形態では、PP2A阻害剤は、PP2AとCTLA-4との相互作用を改変する。
【0178】
一部の実施形態では、PP2A阻害剤は、CTLA-4へのPP2Aの結合を低下させる。
【0179】
上記の方法のいずれかの一部の実施形態では、がんは、抗CTLA-4免疫療法に対して感受性である。
【0180】
上記の方法のいずれかの一部の実施形態では、被験体は、CTLA-4によって媒介される、T細胞の活性化の低減を有する。
【0181】
本発明はまた、がんに罹患した被験体を処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を被験体に投与し、それによってがんを処置することを含み、がんが抗CTLA-4免疫療法に対して感受性である、方法を提供する。
【0182】
本発明はまた、がんに罹患した被験体を処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を被験体に投与し、それによってがんを処置することを含み、がんが免疫療法に対して感受性である、方法を提供する。
【0183】
本発明はまた、がんに罹患した被験体を処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を被験体に投与し、それによってがんを処置することを含み、被験体が、CTLA-4によって媒介される、T細胞の活性化の低減を有する、方法を提供する。
【0184】
上記の方法のいずれかの一部の実施形態では、がんは、抗CTLA-4免疫療法に対して感受性である。
【0185】
上記の方法のいずれかの一部の実施形態では、被験体は、CTLA-4によって媒介される、T細胞の活性化の低減を有する。
【0186】
上記の方法のいずれかの一部の実施形態では、がんは、黒色腫、腎細胞癌、前立腺がん、尿路上皮癌、または卵巣がんである。
【0187】
上記の方法のいずれかの一部の実施形態では、がんは、黒色腫である。
【0188】
上記の方法のいずれかの一部の実施形態では、抗CTLA-4免疫療法に対して感受性であるがんは、黒色腫である。
【0189】
一部の実施形態では、がんは、膵臓がんである。
【0190】
一部の実施形態では、がんは膵臓がんであり、膵臓がんのがん細胞は、Mad2を過剰発現する。
【0191】
一部の実施形態では、がんは、PP2A機能および/またはDNA損傷修復経路に異常を有する。
【0192】
一部の実施形態では、被験体は、線維肉腫、軟骨肉腫、胸腺腫、非定型肺カルチノイド、または卵巣がん、精巣がん、乳がん、もしくは前立腺がんに罹患している。
【0193】
上記の方法の一部の実施形態では、PP2A阻害剤は、がんに罹患した被験体を処置するのに有効である。
【0194】
一部の実施形態では、上記の方法は、PP2A阻害剤と同時に、PP2A阻害剤の前に、またはPP2A阻害剤の後に、抗がん療法を投与することをさらに含む。
【0195】
一部の実施形態では、抗がん療法は、チェックポイント阻害剤、例えばCTLA-4チェックポイント阻害剤を投与することを含む。上記の方法の一部の実施形態では、PP2A阻害剤は、CTLA-4チェックポイント阻害剤の化学療法的効果を増強させる。
【0196】
上記の方法の一部の実施形態では、CTLA-4チェックポイント阻害剤は、抗体である。
【0197】
上記の方法の一部の実施形態では、PP2A阻害剤は、PP2AとCTLA-4との相互作用を改変する。
【0198】
上記の方法の一部の実施形態では、PP2A阻害剤は、CTLA-4へのPP2Aの結合を増大させる。
【0199】
抗CTLA-4免疫療法に対して感受性であるがんには、限定はしないが、前臨床または臨床試験において抗CTLA-4免疫療法に適していることが示されているがんが含まれる。
【0200】
抗PD-1または抗PD-L1免疫療法に対して感受性であるがんには、限定はしないが、前臨床または臨床試験において抗PD-1または抗PD-L1免疫療法に適していることが示されているがんが含まれる。
【0201】
一部の実施形態では、化合物の量は、被験体におけるがんの臨床症状を低減させるのに有効である。
【0202】
一部の実施形態では、処置は、被験体における細胞傷害性T細胞の量を増大させることを含む。
【0203】
一部の実施形態では、処置は、被験体におけるがん細胞と相互作用する細胞傷害性T細胞の量を増大させることを含む。
【0204】
一部の実施形態では、処置は、被験体における細胞傷害性T細胞によって死滅するがん細胞の量を増大させることを含む。
【0205】
T細胞のタイプには、「キラー」細胞傷害性CD8+T細胞および「ヘルパー」CD4+T細胞が含まれる。後者は、「Treg」細胞などの免疫応答の調節に関与するサブタイプ、および、キラーT細胞または抗体産生B細胞を刺激し得る「非自己」タンパク質の認識を含む獲得免疫系を刺激するその他のサブタイプを包含する。低レベルでの抗原曝露後に「記憶」T細胞としてその一部が維持される特異的なT細胞クローンは、特定のMHC/エピトープの組み合わせによって活性化され、サイトカインの放出、クローンの増殖、および獲得免疫応答をもたらす。
【0206】
一部の実施形態では、T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、および/またはCD4+CD8+T細胞である。
【0207】
一部の実施形態では、がんは、肝細胞癌、ヒト骨肉腫、原発性肝臓がん、胃がん、卵巣がん、子宮内膜がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、軟組織肉腫、精上皮腫、乳がん、リンパ腫、線維肉腫、神経芽細胞腫、粘液性卵巣がん、尿路上皮膀胱がん、子宮頚部の扁平上皮癌、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、肺腺腫、ヘパトーマ、腸がん、線維肉腫、骨肉腫、前立腺がん、血管筋脂肪腫、乳腺癌、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、および多発性骨髄腫、ならびに他の形質細胞新生物である。
【0208】
一部の実施形態では、がんは、肺腺腫、ヘパトーマ、肝細胞癌、腸がん、リンパ腫、線維肉腫、骨肉腫、前立腺がん、血管筋脂肪腫、または乳腺癌である。
【0209】
一部の実施形態では、がんは、急性骨髄性白血病である。
【0210】
一部の実施形態では、がんは、乳がん、結腸がん、大細胞肺がん、肺腺癌、小細胞肺がん、胃がん、肝臓がん、卵巣腺癌、膵臓癌、前立腺癌、前骨髄球性白血病(promylocytic leukemia)、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫および形質細胞新生物、結腸直腸がん、卵巣がん、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、神経芽細胞腫、髄芽腫、神経膠芽腫、脊索腫、髄膜腫(非悪性のおよび悪性の)、びまん性内在性橋神経膠腫(diffuse intrinsic potine glioma)、または非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍である。
【0211】
上記の方法の一部の実施形態では、がんは、乳がん、結腸がん、大細胞肺がん、肺腺癌、小細胞肺がん、胃がん、肝臓がん、卵巣腺癌、膵臓癌、前立腺癌、急性前骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫および形質細胞新生物、結腸直腸がん、卵巣がん、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、またはホジキンリンパ腫である。
【0212】
上記の方法の一部の実施形態では、がんは、脳がんである。
【0213】
上記の方法の一部の実施形態では、脳がんは、神経膠腫、重細胞性星状細胞腫、低悪性度びまん性星状細胞腫、未分化星状細胞腫、多形神経膠芽腫(glioblastoma
multiforrne)、乏突起神経膠腫(oligodendrogliorna)、上衣腫、髄膜腫、脳下垂体腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、またはびまん性内在性橋神経膠腫である。
【0214】
上記の方法の一部の実施形態では、抗がん剤を被験体に投与することをさらに含む。
【0215】
上記の方法の一部の実施形態では、抗がん剤は、X線放射または電離放射線から選択される。
【0216】
上記の方法の一部の実施形態では、標的細胞は、がん細胞である。
【0217】
上記の方法の一部の実施形態では、がん細胞は、乳がん、結腸がん、大細胞肺がん、肺腺癌、小細胞肺がん、胃がん、肝臓がん、卵巣腺癌、膵臓癌、前立腺癌、前骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病(leuemia)、急性リンパ芽球性白血病、結腸直腸がん、卵巣がん、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、またはホジキンリンパ腫の細胞である。
【0218】
LB-100の類似体は、LB-100と類似の活性を有し、本明細書において記載される方法において同様の効果を示す。このような類似体には、その各々の内容が参照によって本明細書に組み込まれる、2008年8月14日に公開されたPCT国際出願公開第WO2008/097561号、2010年2月4日に公開されたPCT国際出願公開第WO2010/014254号、2015年5月21日に公開されたPCT国際出願公開第WO2015/073802号、および2016年11月24日に公開されたPCT国際出願公開第WO2016/186963号において記載されている化合物が含まれる。
【0219】
LB-100および/またはエンドタールのin vivoでの送達のためのプロドラッグとして作用する化合物は、LB-100と類似の活性を有し、本明細書において記載される方法において同様の効果を示す。より具体的には、プロドラッグの投与は、LB-100の投与と同様の効果をもたらす。LB-100および/またはエンドタールのプロドラッグには、その各々の内容が参照によって本明細書に組み込まれる、2015年5月21日に公開されたPCT国際出願公開第WO2015/073802号、および2016年11月24日に公開されたPCT国際出願公開第WO2016/186963号において記載されている化合物が含まれる。
【0220】
別段の特定がある場合を除き、本発明の方法において使用される化合物の構造が不斉炭素原子を含む場合、化合物が、ラセミ体、ラセミ混合物、および単離された単一のエナンチオマーとして生じることが理解される。これらの化合物の全てのこのような異性体形態は、本発明に明白に含まれる。別段の特定がある場合を除き、各不斉炭素(stereogenic carbon)は、RまたはS立体配置のものであり得る。したがって、別段の指示がない限り、このような非対称から生じる異性体(例えば、全てのエナンチオマーおよびジアステレオマー)が、本発明の範囲内に含まれることが理解されよう。このような異性体は、伝統的な分離技術によって、および、J. Jacques、A. Collet、およびS. Wilenによる「Enantiomers, Racemates and Resolutions」、John Wiley & Sons刊、NY、1981年において記載されているものなどの、立体化学的に制御された合成によって、実質的に純粋な形態で得ることができる。例えば、分割は、キラルカラム上での分取クロマトグラフィーによって行うことができる。
【0221】
本発明はまた、本明細書において開示される方法において、化合物上に生じる原子の全ての同位体を含むものである。同位体には、同一の原子番号を有するが異なる質量数を有する原子が含まれる。一般例として、また限定はしないが、水素の同位体には、トリチウムおよび重水素が含まれる。炭素の同位体には、C-13およびC-14が含まれる。
【0222】
本願の全体を通して、構造における炭素のいかなる表記法も、さらなる表記法を伴わずに使用される場合、12C、13C、または14Cなどの炭素の全ての同位体を表すものであることに留意されたい。さらに、13Cまたは14Cを含有するいかなる化合物も、本明細書において開示される化合物のいずれかの構造を具体的に有し得る。本願の全体を通して、構造における水素のいかなる表記法も、さらなる表記法を伴わずに使用される場合、1H、2H、または3Hなどの水素の全ての同位体を表すものであることにも留意されたい。さらに、2Hまたは3Hを含有するいかなる化合物も、本明細書において開示される化合物のいずれかの構造を具体的に有し得る。同位体で標識された化合物は、一般に、利用される標識されていない試薬の代わりに、同位体で標識された適切な試薬を使用して、当業者に公知の従来の技術によって調製することができる。
【0223】
一部の実施形態では、本方法では、被験体に、被験体におけるがんを処置するための、本発明の化合物および少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含む医薬組成物が投与される。
【0224】
一部の実施形態では、医薬組成物において、薬学的に許容される担体は、リポソームを含む。
【0225】
一部の実施形態では、医薬組成物において、化合物は、リポソームまたはミクロスフェア内に含有される。
【0226】
一部の実施形態では、医薬組成物は、PP2A阻害剤およびCTLA-4チェックポイント阻害剤を含む。
【0227】
上記の方法または使用のいずれかの、一部の実施形態では、被験体はヒトである。
【0228】
上記の方法または使用のいずれかの、一部の実施形態では、化合物および/またはCTLA-4チェックポイント阻害剤は、被験体に経口投与される。
【0229】
本発明は、T細胞におけるCTLA-4の機能の阻害において使用するための、PP2A阻害剤を提供する。
【0230】
本発明は、がんに罹患した被験体におけるCTLA-4の機能の阻害において使用するための、PP2A阻害剤を提供する。
【0231】
本発明は、がんに罹患した被験体におけるT細胞の活性化の増大において使用するための、PP2A阻害剤を提供する。
【0232】
本発明は、がんに罹患した被験体におけるがん細胞に対するT細胞応答の増大において使用するための、PP2A阻害剤を提供する。
【0233】
本発明は、がんに罹患した被験体の処置において使用するためのPP2A阻害剤であって、がんが抗CTLA-4免疫療法に対して感受性である、PP2A阻害剤を提供する。
【0234】
本発明は、がんに罹患した被験体の処置において使用するためのPP2A阻害剤であって、被験体がCTLA-4によって媒介される、T細胞の活性化の低減を有する、PP2A阻害剤を提供する。
【0235】
本発明は、がんに罹患した被験体の処置において使用するための、CTLA-4チェックポイント阻害剤と組み合わせたPP2A阻害剤を提供する。
【0236】
T細胞におけるCTLA-4の機能を阻害するための、PP2A阻害剤の使用。
【0237】
がんに罹患した被験体におけるCTLA-4の機能を阻害するための、PP2A阻害剤の使用。
【0238】
がんに罹患した被験体におけるT細胞の活性化を増大させるための、PP2A阻害剤の使用。
【0239】
がんに罹患した被験体におけるがん細胞に対するT細胞応答を増大させるための、PP2A阻害剤の使用。
【0240】
がんに罹患した被験体を処置するための、PP2A阻害剤の使用であって、がんが抗CTLA-4免疫療法に対して感受性である、PP2A阻害剤の使用。
【0241】
がんに罹患した被験体を処置するための、PP2A阻害剤の使用であって、被験体がCTLA-4によって媒介される、T細胞の活性化の低減を有する、PP2A阻害剤の使用。
【0242】
がんに罹患した被験体を処置するための、CTLA-4チェックポイント阻害剤と組み合わせたPP2A阻害剤の使用。
【0243】
本発明はまた、1投与量のLB-100を投与されている被験体の血流中のLB-100の濃度を最適化する方法であって、
【0244】
(a)被験体におけるLB-100の血漿中濃度を測定するステップ、
【0245】
(b)さらなるLB-100用量を被験体に投与する必要があるかを、(a)の測定値に基づいて決定するステップ、および
【0246】
(c)(b)の決定に基づいて、必要に応じてさらなる1投与量または複数投与量のLB-100を投与するステップ
を含む方法を提供する。
【0247】
一部の実施形態では、上記のステップ(b)は、さらなるLB-100用量を被験体に投与する必要があるかを、(a)の測定値がLB-100の最小有効濃度(MEC)を上回るか、下回るか、またはそれに等しいかに基づいて決定することを含む。
【0248】
一部の実施形態では、被験体に投与されるLB-100の初回用量は、0.1mg/m2から5mg/m2の量である。
【0249】
一部の実施形態では、被験体に投与されるLB-100のさらなる用量は、0.1mg/m2から5mg/m2の量である。
【0250】
一部の実施形態では、化合物は、0.25mg/m2、0.5mg/m2、0.83mg/m2、1.25mg/m2、1.75mg/m2、2.33mg/m2、または3.1mg/m2の用量で投与される。
【0251】
一部の実施形態では、化合物は、2.33mg/m2の用量で投与される。
【0252】
一部の実施形態では、化合物は、3週間毎に3日間投与される。
【0253】
一部の実施形態では、被験体に投与されるLB-100のさらなる用量は、初回用量よりも25%少ない量である。
【0254】
一部の実施形態では、被験体に投与されるLB-100のさらなる用量は、初回用量よりも50%少ない量である。
【0255】
一部の実施形態では、被験体に投与されるLB-100のさらなる用量は、初回用量よりも75%少ない量である。
【0256】
一部の実施形態では、被験体に投与されるLB-100のさらなる用量は、初回用量よりも25%多い量である。
【0257】
一部の実施形態では、被験体に投与されるLB-100のさらなる用量は、初回用量よりも50%多い量である。
【0258】
一部の実施形態では、被験体に投与されるLB-100のさらなる用量は、初回用量よりも75%多い量である。
【0259】
一部の実施形態では、被験体は、投与と同時に、投与前に、または投与後に、抗がん療法でさらに処置される。
【0260】
抗がん療法の例には、放射線療法もしくは化学療法、抗原放出を促進するための標的化療法、抗原提示を促進するためのワクチン接種、T細胞の活性化を増幅させるための共刺激分子のアゴニストもしくは共阻害分子の遮断、調節性T細胞もしくは骨髄由来サプレッサー細胞の輸送阻害、腫瘍内のT細胞の浸潤を刺激するための抗血管内皮増殖因子、T細胞の浸潤によるがんの認識を増大させるための養子細胞移入、または腫瘍の死滅の刺激が含まれる。さらなる例は、Swartら、2016年;Topalianら、2015年;およびTsiatasら、2016年で見ることができる。
【0261】
一部の実施形態では、抗がん療法は、免疫療法を含む。用語「免疫療法」は、免疫応答を誘発する、増強する、抑制する、または他の仕方で修飾することを含む方法による、疾患に罹患した被験体の処置を指す。免疫療法剤には、CTLA-4、PD-1、PD-L1、GITR、OC40、LAG-3、KIR、TIM-3、B7-H3、B7-H4、CD28、CD40、およびCD137の1つまたは複数を標的化する抗体剤が含まれ得る。
【0262】
一部の実施形態では、抗がん療法は、抗がん剤を投与することを含む。
【0263】
一部の実施形態では、抗がん剤は、免疫チェックポイント調節物質である。用語「免疫チェックポイント調節物質」は、免疫チェックポイントと直接的または間接的に相互作用する薬剤を指す。免疫チェックポイント調節物質は、阻害シグナルを克服し、がん細胞に対する免疫攻撃を許可するおよび/または強めるために投与され得る。一部の実施形態では、免疫チェックポイント調節物質は、免疫エフェクター応答(例えば、細胞傷害性T細胞応答)を増大させる。一部の実施形態では、免疫チェックポイント調節物質は、1つまたは複数の抗原に対する免疫寛容を低減させる、除去する、または予防する。例えば、免疫チェックポイント調節物質は、負の免疫応答調節因子(例えば、CTLA4)によるシグナル伝達を低下させる、阻害する、もしくは無効にすることによって、免疫応答の正の調節因子(例えば、CD28)のシグナル伝達を刺激するもしくは増強させることによって、または、自己免疫応答を予防し、免疫細胞媒介性の組織損傷を限定することによって、免疫細胞応答を容易にし得る。
【0264】
一部の実施形態では、抗がん剤は、抗体またはその抗原結合部分を含む。
【0265】
一部の実施形態では、抗がん剤は、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)阻害剤を含む。一部の実施形態では、PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブである。
【0266】
Tecentriq(商標)の活性成分であるアテゾリズマブは、ヒトプログラム細胞死リガンド-1(PD-L1)の遮断抗体である。アテゾリズマブは、特異的抗体によって同定される(Tecentriq、Food and Drug Administration Approved Labeling(参照ID:4000525)[オンライン]、Genentech Inc.、2016年[2017年2月24日に検索した]、インターネット:<URL:www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2016/761041lbl.pdf>から検索した)。
【0267】
アテゾリズマブの推奨される用量およびスケジュールは、1200mgであり、これは、疾患の進行または許容されない毒性が生じるまで、3週間毎に60分にわたり静脈内に投与される。その後の注入は、最初の注入が耐容性を示す場合、30分にわたり送達され得る。
【0268】
一部の実施形態では、アテゾリズマブの投与は、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、またはそれ未満のアテゾリズマブを含む。
【0269】
一部の実施形態では、アテゾリズマブの定期的な投与は、1回、2回、3回、4回、またはそれ未満のアテゾリズマブの投与を含む。
【0270】
一部の実施形態では、ニボルマブの投与は、2週間もしくは3週間毎かまたはそれより少ない。
【0271】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、プログラム細胞死1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1の活性を阻害する(「抗PD-1抗体」)。一部の実施形態では、抗PD-1抗体は、ニボルマブまたはペムブロリズマブである。
【0272】
Opdivo(商標)の活性成分であるニボルマブは、ヒトプログラム細胞死受容体-1(PD-1)の遮断抗体である。ニボルマブは、特異的抗体によって同定される(Opdivo(商標)、Food and Drug Administration Approved Labeling(参照ID:3677021)[オンライン]、Bristol-Myers Squibb、2014年[2017年2月24日に検索した]、インターネット:<URL:www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2014/125554lbl.pdf>から検索した)。
【0273】
ニボルマブの推奨される用量およびスケジュールは3mg/kgであり、これは、疾患の進行または許容されない毒性が生じるまで、4用量が2週間毎に60分にわたり静脈内に投与される。
【0274】
一部の実施形態では、ニボルマブの投与は、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、またはそれ未満のニボルマブを含む。
【0275】
一部の実施形態では、ニボルマブの定期的な投与は、1回、2回、3回、4回、またはそれ未満のニボルマブの投与を含む。
【0276】
一部の実施形態では、ニボルマブの投与は、2週間もしくは3週間毎かまたはそれより少ない。
【0277】
Keytruda(商標)の活性成分であるペムブロリズマブは、ヒトプログラム細胞死受容体-1(PD-1)の遮断抗体である。ペムブロリズマブは、特異的抗体によって同定される(Keytruda、Food and Drug Administration Approved Labeling(参照ID:3621876)[オンライン]、Merck & Co.、2014年[2017年2月24日に検索した]、インターネット:<URL:www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2014/125514lbl.pdf>から検索した)。
【0278】
ペムブロリズマブの推奨される用量およびスケジュールは、2mg/kgであり、これは、疾患の進行または許容されない毒性が生じるまで、3週間毎に30分にわたり静脈内に投与される。
【0279】
一部の実施形態では、ペムブロリズマブの投与は、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、またはそれ未満のペムブロリズマブを含む。
【0280】
一部の実施形態では、ペムブロリズマブの定期的な投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、またはそれ未満のペムブロリズマブの投与を含む。
【0281】
一部の実施形態では、ペムブロリズマブの投与は、2週間もしくは3週間毎かまたはそれより少ない。
【0282】
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に特異的に結合し、CTLA-4の活性を阻害する(「抗CTLA-4抗体」)。別の実施形態では、一部の実施形態では、抗CTLA-4抗体は、イピリムマブまたはトレメリムマブである。
【0283】
Yervoy(商標)の活性成分であるイピリムマブは、ヒト細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)の遮断抗体である。イピリムマブは、特異的抗体によって同定される(Yervoy、Food and Drug Administration Approved Labeling(参照ID:3839653)[オンライン]、Bristol-Myers Squibb、2015年[2017年2月24日に検索した]、インターネット:<URL:www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2015/125377s073lbl.pdf>から検索した)。
【0284】
切除不能または転移性の黒色腫のためのイピリムマブの推奨される用量およびスケジュールは3mg/kgであり、これは、4用量が3週間毎に90分にわたり静脈内に投与される。黒色腫のアジュバント処置のためのイピリムマブの推奨される用量およびスケジュールは10mg/kg(4用量が3週間毎に90分にわたり静脈内に投与される)、それに続き、最大3年間、12週間毎に10mg/kgである。
【0285】
一部の実施形態では、イピリムマブの投与は、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、またはそれ未満のイピリムマブを含む。
【0286】
一部の実施形態では、イピリムマブの定期的な投与は、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、またはそれ未満のイピリムマブの投与を含む。
【0287】
本発明はまた、被験体における腫瘍またはがんを処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を被験体に投与することを含み、腫瘍またはがんが、免疫応答による処置に対して感受性である、方法を提供する。
【0288】
本発明はまた、がんに罹患した被験体におけるがん細胞に対するT細胞応答を増大させる方法であって、T細胞応答を増大させるのに有効な量のPP2A阻害剤を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0289】
一部の実施形態では、PP2A阻害剤は、構造:
【化24】
を有する。
【0290】
一部の実施形態では、本方法は、1つまたは複数のさらなる抗がん剤を投与することをさらに含む。
【0291】
本発明はまた、がんに罹患した被験体を処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量の抗がん療法と組み合わせて被験体に投与することを含み、合わせた場合の量が、被験体を処置するのに有効である、方法を提供する。
【0292】
本発明はまた、がんに罹患し、抗がん療法を受けている被験体を処置する方法であって、抗がん療法単独と比較して処置を増強させるのに有効な有効量のPP2A阻害剤を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0293】
一部の実施形態では、がんは、免疫応答による処置に対して感受性である。
【0294】
本発明の方法において使用される化合物は、プロテインホスファターゼ2A(PP2A)阻害剤である。調製方法は、Luら、2009年;US7,998,957B2;およびUS8,426,444B2で見ることができる。化合物LB-100は、ヒトがん細胞においてin vitroで、およびマウスに非経口投与した場合にはマウスにおけるヒト腫瘍細胞の異種移植片における、PP2Aの阻害剤である。LB-100は、マウスモデル系におけるがん細胞の成長を阻害する。
【0295】
本明細書において使用する場合、再灌流傷害に関連する「症状」には、再灌流傷害に関連するあらゆる臨床上または実験上の症状発現が含まれ、これは、被験体が感じ得るかまたは観察し得るものに限定されない。
【0296】
本明細書において使用する場合、「疾患の処置」または例えば再灌流傷害を「処置すること」は、疾患、または疾患に関連する症状もしくは状態の予防、阻害、退縮、または静止を誘発することを包含する。
【0297】
本明細書において使用する場合、被験体における疾患の進行または疾患の合併症の「阻害」は、被験体における疾患の進行および/または疾患の合併症を予防することまたは低減させることを意味する。
【0298】
本明細書において使用する場合、「アルキル」は、特定の数の炭素原子を有する分岐鎖状および直鎖状の両方の飽和脂肪族炭化水素基を含むことが意図される。したがって、「C1~Cnアルキル」のようにC1~Cnは、1つ、2つ、・・・n-1個、またはn個の炭素を直鎖状または分岐鎖状の配置で有する基を含むと定義され、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチルなどを含む。一実施形態は、C1~C20アルキル、C2~C20アルキル、C3~C20アルキル、C4~C20アルキルなどであり得る。一実施形態は、C1~C30アルキル、C2~C30アルキル、C3~C30アルキル、C4~C30アルキルなどであり得る。「アルコキシ」は、酸素架橋を介して付着している上記のアルキル基を表す。
【0299】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素間二重結合を含有する、直鎖状または分岐鎖状の非芳香族炭化水素ラジカルを指し、可能性のある最大数の非芳香族炭素間二重結合が存在し得る。したがって、C2~Cnアルケニルは、1つ、2つ、・・・n-1個、またはn個の炭素を有する基を含むと定義される。例えば、「C2~C6アルケニル」は、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つの炭素原子、および少なくとも1つの炭素間二重結合、および例えばC6アルケニルの場合では最大3つの炭素間二重結合を有するアルケニルラジカルをそれぞれ意味する。アルケニル基には、エテニル、プロペニル、ブテニル、およびシクロヘキセニルが含まれる。アルキルに関して上記に記載したように、アルケニル基の直鎖状、分岐鎖状、または環状の部分は、二重結合を含有し得、置換されたアルケニル基が示される場合には、置換されていてよい。一実施形態は、C2~C12アルケニル、C3~C12アルケニル、C2~C20アルケニル、C3~C20アルケニル、C2~C30アルケニル、またはC3~C30アルケニルであり得る。
【0300】
用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素間三重結合を含有する直鎖状または分岐鎖状の炭化水素ラジカルを指し、可能性のある最大数の非芳香族炭素間三重結合が存在し得る。したがって、C2~Cnアルキニルは、1つ、2つ、・・・n-1個、またはn個の炭素を有する基を含むと定義される。例えば、「C2~C6アルキニル」は、2つもしくは3つの炭素原子および1つの炭素間三重結合を有する、または4つもしくは5つの炭素原子および最大2つの炭素間三重結合を有する、または6つの炭素原子および最大3つの炭素間三重結合を有するアルキニルラジカルを意味する。アルキニル基には、エチニル、プロピニル、およびブチニルが含まれる。アルキルに関して上記に記載したように、アルキニル基の直鎖状または分岐鎖状の部分は、三重結合を含有し得、置換されたアルキニル基が示される場合には、置換されていてよい。一実施形態は、C2~Cnアルキニルであり得る。一実施形態は、C2~C12アルキニル、またはC3~C12アルキニル、C2~C20アルキニル、C3~C20アルキニル、C2~C30アルキニル、またはC3~C30アルキニルであり得る。
【0301】
本明細書において使用する場合、「アリール」は、少なくとも1つの環が芳香族である、各環内に最大10個の原子がある、任意の安定な単環式または二環式の炭素環を意味するものである。このようなアリールエレメントの例には、フェニル、ナフチル、テトラヒドロ-ナフチル、インダニル、ビフェニル、フェナントリル、アントリル、またはアセナフチルが含まれる。アリール置換基が二環式であり、1つの環が非芳香族である場合では、付着が芳香環を介するものであることが理解される。本発明に含まれる置換されたアリールは、任意の適切な位置での、アミン、置換されたアミン、アルキルアミン、ヒドロキシ、およびアルキルヒドロキシでの置換を含み、ここで、アルキルアミンおよびアルキルヒドロキシの「アルキル」部分は、本明細書において上記で定義したように、C2~Cnアルキルである。置換されたアミンは、本明細書において上記で定義したような、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリール基で置換されていてよい。
【0302】
アルキル、アルケニル、またはアルキニルのそれぞれの存在は、分岐しているかまたは分岐しておらず、置換されていないかまたは置換されている。
【0303】
アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリール置換基は、具体的に別段の定義がない限り、置換されていても置換されていなくてもよい。例えば、(C1~C6)アルキルは、OH、オキソ、ハロゲン、アルコキシ、ジアルキルアミノ、またはヘテロシクリル、例えば、モルホリニル、ピペリジニルなどから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてよい。
【0304】
本発明の化合物において、アルキル、アルケニル、およびアルキニル基は、1つまたは複数の水素原子を、本明細書において記載される非水素基によって可能な限り置き換えることによって、さらに置換され得る。これらには、限定はしないが、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、アミノ、カルボキシ、シアノ、およびカルバモイルが含まれる。
【0305】
用語「置換された」は、本明細書において使用する場合、所与の構造が、上記に定義したようなアルキル、アルケニル、またはアリール基であり得る置換基を有することを意味する。この用語は、指定された置換基による複数の度合いの置換を含むと見なされるものとする。複数の置換基部分が開示されるかまたは特許請求される場合、置換された化合物は、開示されたまたは特許請求された置換基部分の1つまたは複数によって、単独でまたは複数で、独立して置換され得る。独立して置換されるとは、(2つまたはそれよりも多くの)置換基が同一であっても異なっていてもよいことを意味する。
【0306】
化学的に安定で、かつ、容易に入手可能な出発材料から当技術分野において公知の技術および以下に記載する方法によって容易に合成され得る化合物を得るために、本発明の化合物上の置換基および置換パターンが当業者によって選択され得ることが理解される。置換基がそれ自体、1つより多くの基で置換されていれば、これらの複数の基は、安定な構造が得られる限り、同一の炭素上または異なる炭素上に存在し得ることが理解される。
【0307】
本明細書において使用する場合、薬剤を「投与すること」は、当業者に周知の様々な方法または送達系のいずれかを使用して行うことができる。投与は、例えば、経口的に、非経口的に、腹腔内に、静脈内に、動脈内に、経皮的に、舌下に、筋肉内に、直腸に、経頬的に(transbuccally)、鼻腔内に、リポソームによって、吸入を介して、膣に、眼内に、局所的送達を介して、皮下に、脂肪内に(intraadiposally)、関節内に、髄腔内に、脳室内に、心室内に、腫瘍内に、脳実質内に、または実質内に行うことができる。
【0308】
いくつかの通常使用される薬学的担体を利用する以下の送達系が使用され得るが、これらは、本発明に従って組成物を投与するために想定される多くの考えられる系の代表にすぎない。
【0309】
注射可能な薬物送達系には、溶液、懸濁物、ゲル、ミクロスフェア、およびポリマー性注射液が含まれ、これらは、溶解度改変剤(例えば、エタノール、プロピレングリコール、およびスクロース)およびポリマー(例えば、ポリカプロラクトンおよびPLGA)などの賦形剤を含み得る。
【0310】
他の注射可能な薬物送達系には、溶液、懸濁物、ゲルが含まれる。経口送達系には、錠剤およびカプセルが含まれる。これらは、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、他のセルロース性の材料、およびデンプン)、希釈剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、デンプン、リン酸二カルシウム、ならびにセルロース性の材料)、崩壊剤(例えば、デンプンポリマーおよびセルロース性の材料)、および滑沢剤(例えば、ステアレートおよびタルク)などの賦形剤を含有し得る。
【0311】
移植可能な系には、ロッドおよびディスクが含まれ、これらは、PLGAおよびポリカプロラクトンなどの賦形剤を含有し得る。
【0312】
経口送達系には、錠剤およびカプセルが含まれる。これらは、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、他のセルロース性の材料、およびデンプン)、希釈剤(例えば、ラクトースおよび他の糖、デンプン、リン酸二カルシウム、およびセルロース性の材料)、崩壊剤(例えば、デンプンポリマーおよびセルロース性の材料)、および滑沢剤(例えば、ステアレートおよびタルク)などの賦形剤を含有し得る。
【0313】
経粘膜送達系には、パッチ、錠剤、坐剤、ペッサリー、ゲル、およびクリームが含まれ、これらは、可溶化剤および増強剤(enhancer)(例えば、プロピレングリコール、胆汁酸塩、およびアミノ酸)、および他のビヒクル(例えば、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステルおよび誘導体、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒアルロン酸などの親水性ポリマー)などの賦形剤を含有し得る。
【0314】
皮膚送達系には、例えば、水性および非水性のゲル、クリーム、多重エマルジョン、マイクロエマルジョン、リポソーム、軟膏剤、水性および非水性の溶液、ローション、エアロゾル、炭化水素基剤ならびに粉末が含まれ、これらは、可溶化剤、浸透増強剤(例えば、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、およびアミノ酸)、および親水性ポリマー(例えば、ポリカルボフィルおよびポリビニルピロリドン)などの賦形剤を含有し得る。一実施形態では、薬学的に許容される担体は、リポソームまたは経皮増強剤である。
【0315】
再構成可能な送達系のための溶液、懸濁物、および粉末には、懸濁化剤(例えば、ゴム、キサンタン(zanthan)、セルロース性物質、および糖)、保湿剤(例えば、ソルビトール)、可溶化剤(例えば、エタノール、水、PEG、およびプロピレングリコール)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、Span、Tween、およびセチルピリジン(cetyl pyridine))、防腐剤および抗酸化剤(例えば、パラベン、ビタミンEおよびC、ならびにアスコルビン酸)、抗ケーキング剤(anti-caking agent)、被覆剤、ならびにキレート剤(例えば、EDTA)などのビヒクルが含まれる。
【0316】
本明細書において使用する場合、「薬学的に許容される担体」は、妥当な利益/リスク比に見合った、過度の有害な副作用(毒性、刺激、およびアレルギー応答など)を伴わない、ヒトおよび/または動物での使用に適した担体または賦形剤を指す。これは、本化合物を被験体に送達するための、薬学的に許容される溶媒、懸濁化剤、またはビヒクルであり得る。
【0317】
本発明の方法において使用される化合物は、塩の形態であり得る。本明細書において使用する場合、「塩」は、化合物の酸性塩または塩基性塩を作ることによって修飾されている、本化合物の塩である。感染または疾患を処置するために使用される化合物の場合では、塩は、薬学的に許容される。薬学的に許容される塩の例には、限定はしないが、アミンなどの塩基性残基の鉱酸または有機酸の塩;フェノールなどの酸性残基のアルカリ塩または有機塩が含まれる。塩は、有機酸または無機酸を使用して作ることができる。このような酸性塩は、塩化物、臭化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、ギ酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩などである。フェノレート塩は、アルカリ土類金属塩、ナトリウム、カリウム、またはリチウムである。用語「薬学的に許容される塩」は、この点において、本発明の化合物の、比較的無毒の、無機および有機の酸または塩基付加塩を指す。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製の間に、または、その遊離塩基もしくは遊離酸の形態の精製された本発明の化合物を、適切な有機もしくは無機の酸もしくは塩基と個別に反応させ、こうして形成された塩を単離することによって、in situで調製することができる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩(napthylate)、メシル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩などが含まれる(例えば、Bergeら、(1977年)「Pharmaceutical Salts」、J.
Pharm. Sci. 66巻:1~19頁を参照されたい)。
【0318】
本発明は、本方法の化合物のエステルまたは薬学的に許容されるエステルを含む。用語「エステル」には、限定はしないが、R-CO-OR’基を含有する化合物が含まれる。「R-CO-O」部分は、本発明の親化合物に由来し得る。「R’」部分には、限定はしないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、ヘテロアルキル、アリール、およびカルボキシアルキル基が含まれる。
【0319】
本発明には、本方法の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグエステルが含まれる。本発明の化合物の薬学的に許容されるプロドラッグエステルは、加溶媒分解によってまたは生理学的条件下で親化合物の遊離カルボン酸に変換可能なエステル誘導体である。プロドラッグの例は、in vivoで切断されて目的の化合物をもたらす、アルキルエステルである。
【0320】
化合物、またはその塩、両性イオン、もしくはエステルは、任意選択で、適切な薬学的に許容される担体を含む薬学的に許容される組成物内で、提供される。
【0321】
本明細書において使用する場合、ミリグラム単位で測定される薬剤の「量」または「用量」は、薬物製品の形態にかかわらず、薬物製品中に存在する薬剤のミリグラムを指す。
【0322】
National Institutes of Health(NIH)は、体重に対する表面積の比率を、種間において考慮に入れた変換係数を提供する、以下の、同等表面積投与量変換係数(Equivalent Surface Area Dosage
Conversion Factor)(表A)を提供している。
【0323】
【0324】
本明細書において使用する場合、用語「治療有効量」または「有効量」は、本発明の様式で使用する場合に、妥当な利益/リスク比に見合った、過度の有害な副作用(毒性、刺激、およびアレルギー応答など)を伴わない、所望の治療応答を得るのに十分な構成成分の量を指す。具体的な有効量は、処置される特定の状態、患者の身体状態、処置される哺乳動物のタイプ、処置の期間、併用療法の性質(存在する場合)、ならびに、利用する具体的な製剤、および化合物またはその誘導体の構造などの因子によって変化する。
【0325】
範囲が本明細書内で与えられる場合、この範囲は、その範囲内の全ての整数および0.1単位、ならびにその任意の部分範囲を含むことが理解される。例えば、77から90%の範囲は、77、78、79、80、および81%などの開示である。
【0326】
本明細書において使用する場合、言及された数に関する「約」は、言及された値の+1パーセントから-1パーセントの範囲を包含する。例えば、約100mg/kgは、したがって、99、99.1、99.2、99.3、99.4、99.5、99.6、99.7、99.8、99.9、100、100.1、100.2、100.3、100.4、100.5、100.6、100.7、100.8、100.9、および101mg/kgを含む。したがって、約100mg/kgは、一実施形態では、100mg/kgを含む。
【0327】
パラメータの範囲が提供される場合、その範囲内の全ての整数、およびその10分の1もまた、本発明によって提供されることが理解される。例えば、「0.2~5mg/kg/日」は、0.2mg/kg/日、0.3mg/kg/日、0.4mg/kg/日、0.5mg/kg/日、0.6mg/kg/日など、最大5.0mg/kg/日の開示である。
【0328】
前述の実施形態では、本明細書において開示される各実施形態は、他の開示される実施形態のそれぞれに適用可能であると考えられる。したがって、本明細書において記載される様々なエレメントの全ての組み合わせは、本発明の範囲内である。
【0329】
本発明は、以下の実験の詳細を参照することによってより良く理解されるが、当業者は、詳述される具体的な実験は、その後に続く特許請求の範囲においてより完全に記載される本発明の実例にすぎないことを容易に理解するであろう。
【0330】
組み合わせ療法
黒色腫などの所与の状態を処置するための2つの薬物の投与は、いくつかの潜在的な問題を生じさせる。2つの薬物の間でのin vivoでの相互作用は、複雑である。任意の単一の薬物の効果は、その吸収、分布、および排出に関連する。2つの薬物が体内に導入されると、各薬物は、他方の薬物の吸収、分布、および排出に影響し得、したがって他方の薬物の効果を改変し得る。例えば、1つの薬物は、他方の薬物の排出の代謝経路に関与する酵素の生産を阻害、活性化、または誘発し得る(Guidance for Industry、1999年)。したがって、2つの薬物を、同一の状態を処置するために投与する場合、各薬物が、ヒト被験体における他方の薬物の治療的活性を補う、他方の薬物の治療的活性に対して影響を有さない、または他方の薬物の治療的活性に干渉するかどうかは、予測不可能である。
【0331】
2つの薬物間の相互作用が各薬物の目的の治療的活性に影響し得るだけではなく、この相互作用は、毒性代謝物のレベルを増大させ得る(Guidance for Industry、1999年)。この相互作用はまた、各薬物の副作用を高め得るかまたは下げ得る。したがって、疾患を処置するために2つの薬物を投与する際、どのような変化が各薬物の負の副作用のプロファイルにおいて生じるかは、予測不可能である。
【0332】
加えて、2つの薬物間の相互作用の影響がいつ現れるかを正確に予測することは困難である。例えば、薬物間の代謝相互作用は、第2の薬物の初回投与の際、2つの薬物が定常状態濃度に達した後、または薬物の一方を中断した際に、明らかになり得る(Guidance for Industry、1999年)。
【実施例0333】
実験の詳細
(実施例1 PP2A阻害およびCTLA-4活性)
化合物LB-100および本明細書において開示されるLB-100のその他の同族体は、CTLA-4およびPP2Aの相互作用を変更し、それによって、T細胞活性化のCTLA-4媒介性阻害を遮断することによって、T細胞においてCTLA-4の機能を阻害する。このような相互作用は、T細胞活性化の増大をもたらす。
【0334】
(実施例2 in vitro研究:PP2AおよびCTLA4)
初代ヒトT細胞およびジャーカットT細胞をLB-100を用いて処置し、T細胞活性化レベルを測定する。LB-100は、T細胞の活性化を増大する。
【0335】
初代ヒトT細胞およびジャーカットT細胞をLB-100を用いて処置し、PP2A:CTLA-4相互作用を評価する。LB-100は、PP2AおよびCTLA-4の相互作用を減少させる。
【0336】
初代ヒトT細胞およびジャーカットT細胞をLB-100を用いて処置し、PP2Aリン酸化のレベルを測定する。LB-100は、T細胞においてリン酸化を増大する。
【0337】
(実施例3 LB-100および類似体の投与)
ある量の化合物LB-100を、がんに罹患した被験体に投与する。化合物の量は、被験体において細胞傷害性T細胞の数を増大することによってがんを処置するのに有効である。
【0338】
本明細書において開示される化合物LB-100の類似体を、がんに罹患した被験体に投与する。化合物の量は、被験体において細胞傷害性T細胞の数を増大することによってがんを処置するのに有効である。
【0339】
ある量の化合物LB-100を、黒色腫に罹患した被験体に投与する。化合物の量は、被験体において細胞傷害性T細胞の数を増大することによってがんを処置するのに有効である。
【0340】
本明細書において開示される化合物LB-100の類似体を、黒色腫に罹患した被験体に投与する。化合物の量は、被験体において細胞傷害性T細胞の数を増大することによってがんを処置するのに有効である。
【0341】
(実施例4 CTLA-4チェックポイント阻害剤と組み合わせたLB-100の投与)
CTLA-4チェックポイント阻害剤と組み合わせたある量の化合物LB-100を、がんに罹患した被験体に投与する。化合物および阻害剤の量は、被験体を処置するのに有効である。
【0342】
CTLA-4チェックポイント阻害剤と組み合わせたある量の化合物LB-100を、がんに罹患した被験体に投与する。化合物の量は、CTLA-4チェックポイント阻害剤の抗がん活性を増強するのに有効である。
【0343】
CTLA-4チェックポイント阻害剤と組み合わせたある量の化合物LB-100を、黒色腫に罹患した被験体に投与する。化合物および阻害剤の量は、被験体を処置するのに有効である。
【0344】
CTLA-4チェックポイント阻害剤と組み合わせたある量の化合物LB-100を、黒色腫に罹患した被験体に投与する。化合物の量は、CTLA-4チェックポイント阻害剤の抗がん活性を増強するのに有効である。
【0345】
(実施例5 イピリムマブまたはトレメリムマブへの追加療法としてのLB-100の有効性の評価)
追加療法は、相乗作用を提供し、副作用が低減したより低い用量を可能にする。
【0346】
すでにイピリムマブまたはトレメリムマブを受けている、黒色腫に罹患したヒト患者のための追加療法としてのLB-100の定期的な投与は、イピリムマブまたはトレメリムマブが単独で投与されている(同一用量で)場合よりも患者の処置において、臨床上有意義な利点を提供し、より有効である(少なくとも相加作用を、または相加作用を超えたものを提供する)。
【0347】
すでにLB-100を受けている、黒色腫に罹患したヒト患者のための追加療法としてのイピリムマブまたはトレメリムマブの定期的な投与は、LB-100が単独で投与されている(同一用量で)場合よりも患者の処置において、臨床上有意義な利点を提供し、より有効である(少なくとも相加作用を、または相加作用を超えたものを提供する)。
【0348】
追加療法はまた、過度の有害な副作用を伴わずに、または処置の安全性に影響を及ぼさずに、患者の処置において有効性を提供する(少なくとも相加作用を、または相加作用を超えたものを提供する)。各薬剤が単独で投与される場合と比較して:
【0349】
1.追加療法は、黒色腫を有する患者において細胞傷害性T細胞の量の増大においてより有効である(相加作用または相加作用を超えたものを提供する);
【0350】
2.追加療法は、黒色腫を有する患者において黒色腫の進行の減速においてより有効である(相加作用または相加作用を超えたものを提供する)および/または
【0351】
3.追加療法は、黒色腫患者においてCTLA-4の機能の低減においてより有効である(相加作用または相加作用を超えたものを提供する)。
【0352】
考察(実施例1~5)
がんとの関連で、免疫系の重要性は、がん免疫療法の開発とともにますます認識されるようになった。自己免疫を防ぐ免疫系の天然制御機序が、免疫監視を逃れるために腫瘍によって利用されることが多い。プログラム細胞死-1(PD-1)および細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)などのチェックポイント分子は、腫瘍のネオ抗原を認識する細胞傷害性T細胞の活性を抑制するように腫瘍によって構成的に活性化される免疫系の負の調節因子である(Topalianら、2015年)。免疫抑制性制御性T細胞(Treg)もまた、CD8T細胞の有効性を低減するために腫瘍微小環境(TME)に動員される。PD-1またはCTLA-4シグナル伝達を遮断するモノクローナル抗体は、転移性黒色腫を有する一部の患者において耐久性のある長期間応答を誘導し得る。これは、進行した黒色腫の処置のための米国食品医薬品局による2011年のイピリムマブ(抗CTLA-4)の承認および2014年のニボルマブ(抗PD-1)の承認につながった。複数のその他のがんにチェックポイント阻害剤の使用を拡大するために現在の臨床治験が進行中であり、がん療法へのアプローチにおいてパラダイムシフトの先駆けとなっている。しかし、患者のサブセットのみが、単剤では、チェックポイント阻害に有効に応答し、これは、免疫抑制TMEを作り出すことに複数の重複した機序が関与しているという事実を強調する。したがって、研究の活性領域は、チェックポイント阻害の効果を増大し得る組み合わせ戦略を同定することである。
【0353】
細胞傷害性Tリンパ球関連抗原-4(CTLA-4)は、免疫グロブリンスーパーファミリーの活性化誘導性糖タンパク質であり、その主な機能は、T細胞応答を下方制御することである(Brunet, J.F.ら、1987年)。CTLA-4は、T細胞の表面に発現され、そこで、阻害性下流T細胞受容体(TCR)シグナル伝達を誘導することおよびT細胞共起刺激受容体、CD28の活性に対抗することによって主にその活性化の初期段階を抑制し、したがってT細胞活性化を阻害し、特定の疾患、例えば、がんに対する免疫寛容を増大する。CTLA-4の阻害能を説明するために、CD28依存性共起刺激の拮抗作用および直接的な負のシグナル伝達を含むいくつかの機序が報告されている(Carreno, B.M.ら、2000年)。CTLA-4の細胞質テールは、固有の酵素活性を欠くので、このような負のシグナルの送達は、CTLA-4の、重要なシグナル伝達分子との会合によって提供される可能性が高い(Teft, W.A.ら、2006年)。
【0354】
CTLA-4の阻害は、免疫チェックポイント遮断によるがんの処置のために標的化されている。細胞性およびマウス悪性疾患モデルは、細胞傷害性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)、T細胞応答の負の調節因子の遮断が、それ自身だけで、またはその他の治療的介入とともに利用された場合に、腫瘍細胞に対する内因性応答を増大し、したがって腫瘍細胞死につながる(Grosso, J.F.ら、2013年)ことを実証する。前臨床知見が、それぞれCTLA-4と結合する、完全ヒトIgG1モノクローナル抗体(mAb)、イピリムマブおよび完全ヒトIgG2mAb、トレメリムマブの臨床的開発へとつながった。
【0355】
キナーゼによるタンパク質のリン酸化およびホスファターゼによるその脱リン酸化は、細胞増殖および細胞死を含むプロセスの多重度を調節する細胞性シグナル伝達経路の重大な構成要素である(Shiら、2009年)。ホスファターゼは、がん処置の潜在的に重要な標的と長く考えられてきたが、毒性に対する懸念からホスファターゼ阻害剤を開発する努力はほとんどなかった(Janssensら、2012年)。
【0356】
プロテインホスファターゼ2A(PP2A)は、ATM/ATR依存性の応答経路および非依存性の応答経路の両方の多数のタンパク質を脱リン酸化する遍在性セリン/トレオニンホスファターゼである(Mumby M.、2007年)。PP2Aは、細胞プロセスの多様なセットに関与している。免疫系では、PP2Aは、CTLA-4と会合し、活性化T細胞の阻害につながるAktの脱リン酸化を媒介すると示されている(Parryら、2005年)。PP2Aの薬理学的阻害は、p53、γH2AX、PLK1およびAktなどの種々のシグナル伝達タンパク質の構成的リン酸化によって放射線媒介性DNA損傷に対してがん細胞を感作し、細胞周期調節解除、DNA修復の阻害およびアポトーシスをもたらすことがこれまでに示されている(Wei, D.ら、2013年)。
【0357】
ツチハンミョウ抽出物(Mylabris)の主な有効成分であるカンタリジンは、PP2Aの強力な阻害剤であると示されている伝統的な漢方薬に由来する化合物である(Efferth, T.ら、2005年)。カンタリジンは、これまでにヘパトーマの処置において使用されており、多剤耐性白血病細胞株に対して有効性を示しているが(Efferth, T.ら、2002年)、その重度の毒性によりその臨床的有用性は制限される。天然に存在する毒素であるカンタリジン、およびその脱メチル化類似体であるノルカンタリジンは、両方ともPP2Aの強力な阻害剤であり(Bertiniら、2009年)、これらは中国において胃腸癌を有する患者において抗がん活性を有すると報告された(Wangら、1989年)が、臨床的詳細はほとんど入手できない。
【0358】
フォストリエシン、PP2Aの別の選択的阻害剤は、20年以上前に、いくつかのUS NCI支援を受けた第1相治験において評価された。最大の治験において、フォストリエシンは、46人の固形腫瘍患者のうち16人(34.8%)において疾患安定性と関連しており、用量制限毒性(DLT)を有さなかった(Leら、2004年)。不十分な薬物供給のために、治験は完了しなかった。
【0359】
LB-100は、毒性が大幅に少ない、カンタリジンの小分子誘導体である。LB-100およびその脂溶性同族体、LB-102は、種々のヒト固形腫瘍由来の細胞株の増殖を阻害する。両化合物とも、膵臓癌および肝細胞癌、線維肉腫、褐色細胞腫、神経芽細胞腫および神経膠芽腫の異種移植片に対するシスプラチン、ドキソルビシンおよびテモゾロミドの、ならびに膵臓、鼻咽頭および神経膠芽腫異種移植片に対する限局性X線の毒性を大幅に増大することなく、活性を強める(Baiら、2014年a;Baiら、2014年b;Zhangら、2010年;Matiniovaら、2011年;Luら、2009年;Weiら、2013年;Lvら、2014年;Gordonら、2015年)。さらに、LB-100は、卵巣癌および髄芽腫異種移植片においてシスプラチンに対する耐性を逆転させた(Changら、2015年;Hoら、2016年)。これまでの前臨床研究によって、LB-100は、神経膠芽腫(GBM)、転移性褐色細胞腫および膵臓がんに対するテモゾロミド、ドキソルビシンおよび放射線療法の細胞傷害性効果を増強させ得ることが示されている(Wei, D.ら、2013年;Lu, J.ら、2009年;Zhang, C.ら、2010年;Martiniova, L.ら、2011年)。
【0360】
LB-100では、固形腫瘍の処置のための、ドセタキセルと組み合わせた第1相研究も行われている(Chung, V.、2013年)。LB-100は、第1相治験において進行性固形腫瘍の安定化と関連する用量で良好に耐容されると最近示された、プロテインホスファターゼ2A(PP2A)の新規の画期的な小分子阻害剤である(Chungら、2017年)。PP2Aは、CTLA-4の下流でAktシグナル伝達を媒介することに関与していた(Parryら、2005年)。in vivoプールされた短いヘアピンRNAスクリーニングでは、Ppp2r2d、PP2Aの調節因子サブユニットは、ノックダウンされた場合に、腫瘍浸潤リンパ球の増殖を、RNAライブラリー中のすべての遺伝子の中で最大程度まで増大することがわかり、PP2Aを、腫瘍微小環境におけるT細胞増殖の抑制において重要な調節因子として同定した(Zhouら、2014年)。さらに、PP2Aは、制御性T細胞(Treg)機能にとって必須であるとわかった(Apostolidisら、2014年)。
【0361】
複数の前臨床研究が、種々の腫瘍モデルにおいてLB-100は有効な化学感作物質または放射線感作物質であると示しているが(Honeら、2015年)、免疫系に対するその効果を研究したものはなかった。
【0362】
CTLA-4機能の機能障害によって、がん患者がそのがんに対して、より有効な細胞傷害性t細胞攻撃を開始することが可能となる。CTLA-4の主要な、臨床的に使用される調節物質、治療有効用量で顕著な毒性と関連する抗体イピリムマブ(Yervoy)とは異なり、化合物LB-100は、いかなる顕著な毒性も副作用も伴うこともなく、いくつかの異なる種類のがんの安定性と関連している。
【0363】
特に、進行した黒色腫を有する患者においてイピリムマブを用いてCTLA-4を阻害することによる臨床的活性のいくつかの報告がある。これらの研究は、単剤イピリムマブおよびダカルバジンなどの細胞傷害性薬物と組み合わせた、または別の免疫チェックポイント阻害剤、ニボルマブと組み合わせたイピリムマブが、がんの退縮を引き起こすことを示す。イピリムマブは、単独でまたはその他の薬剤と組み合わせて、2.1%の死亡率を含む患者の最大15%がグレード3または4の有害事象を有していたHodiら(2010年)による研究においてなど、顕著な毒性と関連している。Wolchokら(2013年)は、進行した黒色腫を有する患者においてイピリムマブおよびニボルマブを研究したが、患者の53%においてグレード3または4の有害事象が生じた。したがって、進行性がんの安定化と関連する用量で制限毒性のない、抗CTLA-4活性を有するLB-100などの分子の利用可能性は、ヒトがんの処置のための魅力的な臨床候補である。現在、CTLA-4調節に対する臨床応答の分子決定因子はない。Snyderら(2014年)は、黒色腫のCTLA-4処置からの潜在的利益の遺伝的根拠を報告し、各患者の候補腫瘍ネオ抗原を特徴付けるための潜在的根拠を提供した。
【0364】
いかなる理論にも捉われることなく、CTLA-4は、ヒトT細胞においてPP2Aと相互作用し、このような相互作用は、CTLA-4の適切な機能にとって必須であると考えられる。CTLA-4は、正しく機能している場合には、T細胞活性化を阻害し、したがって、がん細胞に対する免疫応答を低減する。がんを有する被験体へのPP2A阻害剤の投与は、PP2AのCTLA-4との相互作用を変更し、それによって、CTLA-4の正常機能を乱す。T細胞におけるCTLA-4機能の低減または排除は、T細胞活性化の増大につながる。T細胞活性化の増大は、被験体において、がん細胞を標的とし、破壊する細胞傷害性T細胞の増大をもたらす。既存の免疫チェックポイント阻害剤と同様に、LB-100は、単独でおよび/またはその他のチェックポイント阻害剤と組み合わせて有効である。
【0365】
(実施例6 進行性固形腫瘍を有する成人患者におけるLB-100の評価)
PP2Aは、細胞分裂、DNA損傷応答、相同組換え修復および有糸分裂停止におけるその調節性役割のために、がん療法のための潜在的に重要な標的として長く認識されているが、この酵素の阻害は、臨床使用には毒性が高すぎる可能性が高いと考えられてきた。この研究は、難治性固形腫瘍を有する患者におけるPP2Aの阻害剤LB-100の安全性、耐容性、および潜在的抗がん活性を示す。PP2A活性は、多数の種類のがんにおいて変異によって直接的にまたは間接的に変更される。PP2Aの臨床上安全な阻害剤の利用可能性は、がん療法にとって有望な新規手段、すなわち、PP2A機能において、および/またはDNA-損傷-修復経路において変異により獲得された異常を有するがんにおけるPP2Aの薬理学的阻害を開く。この研究の結果は、単独およびがんの処置のためのその他の薬剤と組み合わせたLB-100のさらなる開発を支援する。
【0366】
目的:進行性固形腫瘍を有する成人患者における、LB-100、プロテインホスファターゼ2A(PP2A)の画期的な小分子阻害剤の安全性、耐容性および潜在的活性を評価すること。
【0367】
実験デザイン:LB-100を、3+3用量漸増デザインにおいて21日サイクルで3日間、静脈内に毎日投与した。主な目的は、最大耐容用量および推奨第2相用量(ClinicalTrials.gov:NCT01837667)を決定することであった。
【0368】
材料および方法
適格な患者は、進行性固形腫瘍を有すると証明された、標準治療が失敗した18歳またはそれよりも年長とした。患者は、少なくとも12週間の平均余命、0または1のECOGパフォーマンスステータスを有さなくてはならず、インフォームドコンセントを得ることができなければならなかった。参加前に、患者は、先の処置からベースラインまたはグレード1未満の毒性に回復していなければならず、適当な骨髄(絶対好中球数>1.5×109個/Lおよび血小板数>100×109個/L)、腎臓(血清クレアチニン<1.2mg/dLおよび>1.2mg/dLである場合には、クレアチニンクリアランス[Cockcroft-Gault法]>60mL/分/1.73m2)および肝機能(血漿総ビリルビン<1.5mg/dL、アラニントランスアミナーゼ(ALT)およびアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)<2.5×正常の上限)を有さなくてはならない。患者は、いかなる他の制御されない全身性疾患も有してはならない。妊娠可能性のある女性は、陰性の血清または尿妊娠検査結果を有さなくてはならなかった。
【0369】
研究デザインおよび処置
オープンラベル、用量漸増、第I相研究を実施して、3週間毎に3日間連続投与したLB-100の安全性、耐容性および活性を評価した。薬物動態研究を最大耐容用量(MTD)でデザインした。出発用量、0.25mg/m2、イヌにおいて最も高い非重度毒性用量の1/15および用量漸増のデザインは、FDAによって指定されたものである。研究は、各研究センターでヒト調査委員会によって承認され、clinicaltrials.gov:NCT01837667に登録されている。
【0370】
LB-100は、単回使用溶液として供給された。最初に、LB-100を、50mLの生理食塩水中で15分かけて投与した。2.33mg/m2レベルでの血清クレアチニンの限定されない可逆的増大のために、LB-100を、その後、500mLの生理食塩水中で2時間かけて投与した。用量漸増は、どのコホート内でも禁止した。患者は、容認できない毒性、疾患進行または併発性疾病が中止を必要としない限り、最大6サイクルの研究療法を受けるのに適格であった。進行および毒性の非存在下では、6を超えるサイクルが許可された。動物毒性学研究における高用量での心臓および腎毒性のために、患者は、すべてのサイクルの前に、ECG、MUGAまたは心エコー図、心筋トロポニンおよびBNPを含む広範なモニタリングを有していた。血液化学、尿検査、血液学的プロファイルおよびバイタルサインを、各サイクルに先立って、ならびに1、3、8、15および22日目にモニタリングした。実験室パラメータを、最大NCI-CTCAE(バージョン4.0)重症度グレードによって作表した。安全性検討委員会が2週間毎にすべての臨床データを評価し、コホート間の用量漸増を承認した。
【0371】
毒性および臨床活性の評価
LB-100の用量を、3人の患者の群において漸増した。新規用量レベルの第1の患者を3週間観察し、その後、次の2人をその用量で処置した。潜在的なDLTが生じた場合には、3人の新規患者をその用量に入れた。別のDLTが生じた場合には、3人のさらなる患者を、以前の非DLT用量で処置して、第2相治験のためにそのレベルの安全性を決定した。
【0372】
RECISTバージョン1.1を使用して処置に対する応答を評価した。測定可能な疾患を有し、LB-100の2サイクルを完了し、少なくとも1回のベースライン後腫瘍評価を有したすべての患者が、有効性について評価可能であった。任意のLB-100を受けている患者が安全性について評価可能であった。有害な事象および実験室異常の重症度は、NCI-CTCAEバージョン4.0に従って報告され、医薬品規制用語集を使用してコードされている。
【0373】
転帰
主目的は、3週間毎に、3日間連続で静脈内に毎日投与されたLB-100の安全性、耐容性および最大耐容用量を決定することであった。二次的目的は、潜在的な抗腫瘍活性のいかなる証拠も文書に記録し、LB-100をMTDで受けている患者における、LB-100および代謝産物、エンドタールに関する薬物動態データを得ることであった(Quangら、2016年)。
【0374】
結果:
7回の用量漸増にわたり29人の患者のエントリーがあった。1人の患者は、急性感染のために1回の用量後に処置を停止し、回復後に再登録した。両経過は、別個の患者エントリーとして解析した。2人の患者は、3.1mg/m2レベルで用量制限毒性を有していた(血清クレアチニンまたは算出された血清クレアチニンクリアランスにおける可逆的増大)。6人(20.7%)の患者において研究薬物が関連することがほぼ確実なまたは可能性があるグレード3の有害事象が発生した[貧血(n=2)、クレアチニンクリアランスの減少、呼吸困難、低ナトリウム血症、リンパ球減少症]。応答が評価可能である20人の患者のうち10人(50%)が、4またはそれより多いサイクルの間、安定病態を有していた。膵臓癌を有する1人の患者は、10サイクル後に記載された部分応答を有しており、それは、さらに5サイクルの間維持された。安定病態に達しているその他の患者は、以下のうちの1つを有していた:線維肉腫、軟骨肉腫、胸腺腫、非定型肺カルチノイドまたは卵巣がん、精巣がん、乳がん(n=2)および前立腺がん。LB-100の推奨第2相用量は、2.33mg/m2、3週間毎に3日間の間、毎日である。
【0375】
患者の特徴
進行した固形腫瘍を有する28人の患者が4つの臨床現場で登録された。患者の人口統計学的特徴が表1に列挙されている。4人の患者は、毒性について評価可能ではなかった。これらの患者のうち3人は、サイクル1を完了する前に疾患関連合併症を有していた。非定型肺カルチノイドを有する4番目の患者を、急性感染のために1回の用量のLB-100の後に研究から除外した;該患者を7週間後に研究に再度入れ、5サイクルの間安定病態に達した。両経過を解析に含めた。これらの有害な事象のうち、薬物投与と関連していると考えられるものはなかった。
【表1】
【0376】
用量漸増および毒性
24人の患者が、LB-100の3日サイクルの少なくとも1つを完了した。試験した用量レベルは、0.25、0.50、0.83、1.25、1.75、2.33および3.1mg/m
2であった。最初の6用量レベルの間、DLTはなかった。3.1mg/m2用量レベルで、前立腺がんを有する患者および軟骨肉腫を有する患者は、それぞれ、4および9サイクルの処置の間、DLTを有していなかった。卵巣がんを有する第3の患者は、サイクル1後に算出されたクレアチニンクリアランスにおいてグレード3の増大を有しており、8日目までに正常に戻り、腫瘍進行前に2.33mg/m2の低減された用量でさらに3つのサイクルを受けた。線維肉腫を有する第4の患者は、第1の経過後に算出されたクレアチニンクリアランスにおいてグレード3の増大を有していた。クレアチニンは、21日目までに処置前の値に戻り、2.33mg/m2での第2の経過は、クレアチニンクリアランスにおいてグレード2の増大をもたらし、その他の毒性は伴わなかった。用量は1.75mg/m2に低下し、さらに10のサイクルが投与され、36週後の進行まで毒性を伴わなかった。3.1mg/m2で2/4人の患者が、サイクル1の間にクレアチニンクリアランスにおいてグレード3の増大を有していたので、3人のさらなる患者は、2.33mg/m2の先行用量レベルで評価した。該患者は制限毒性を有さず、それによって、そのレベルでMTDを確立した。可逆性の軽度から中程度の疲労以外の症候性毒性はなかった。薬物投与と関連している可能性がある有害事象を、表2に列挙する。
【表2】
【0377】
薬物動態
1人の患者において1日目に、ならびに2人の患者において1日目および3日目に2.33mg/m2のLB-100のMTDで2時間注入の前および完了後4時間かけてLB-100およびエンドタールの血漿中濃度を測定した(Quangら、2016年)。LB-100の薬物動態は、1日目および3日目で同様であり、低クリアランス、低分布体積および短い半減期を特徴とした。エンドタールの血漿中濃度は注入を通じて低く、1人の患者では検出の下限(5ng/mL)未満であった。その他の2人の患者では、最後のサンプリング時点(4時間)でエンドタールの最大濃度(34.7ng/mL)が観察され、これは、その排出半減期の決定を妨げた(表3)。
【表3】
【0378】
臨床活性の評価
測定可能な疾患を有する20人の患者のうち、膵臓がんを有する1人の患者が、10サイクル後に認められ、さらに5サイクル持続する部分応答を有しており、16人の患者では、その指標病変(複数可)の進行はなかった。該患者は、新規病変の出現または臨床進行を表すと判断された症状のいずれかのために研究から除外した。十二指腸腺癌を有する1人および結腸腺癌を有する2人の、3人の患者のみが、RECIST判定基準によるその指標病変(複数可)の大きさの有意な増加を有していた(
図1)。
【0379】
疾患の部分応答または安定性に達することは、明確に用量依存性ではなく、膵臓がん(15サイクル)および非定型肺カルチノイド(5サイクル)では0.83mg/m
2で、乳がん(4サイクル)および精巣がん(5サイクル)では1.25mg/m
2で;および悪性胸腺腫(8サイクル)および卵巣がん(6サイクル)では1.75mg/m
2で生じた。3.1mg/m
2で、軟骨肉腫を有する患者は、LB-100の8サイクルの間安定であり、正常腎機能に変化は全くなかったが、3.1mg/m
2で開始した線維肉腫を有する患者は2回の用量低減後12サイクルの間安定であった(
図2)。
【0380】
結論:LB-100の安全性、耐容性、抗腫瘍活性の予備的証拠および新規作用機序は、単独およびその他の療法と組み合わせたその継続開発を支持する。
【0381】
考察(実施例6)
LB-100、PP2Aの強力な阻害剤のMTDを、固形腫瘍を有する患者において決定した。推奨第2相開始用量は、腎毒性の非存在下では3.1mg/m2までの漸増、および疾患が安定または退縮している場合、腎毒性があるなら1.75mg/m2またはそれより低いものへの漸減を伴って、2.33mg/m2、3週間毎に3日間毎日である。患者は、疾患の安定性を有しており、膵臓がんを有する1人の患者は、3週間毎に3日間毎日、0.83mg/m2ほどの低い用量で膵臓がんの客観的退縮があったので、ヒトにおける最適抗がん活性は、MTDよりもかなり低い可能性がある。
【0382】
少なくとも2サイクルのLB-100を受けている20人の患者のうち10人(50%)が、最大15サイクルの療法の間、制限毒性も累積毒性も有さずに安定病態を有していた。この現象の根底にある機序は明らかではない。PP2A活性は、変異によって、またはいくつかの内因性PP2A阻害剤のうち1種もしくは複数の発現の増大によって多数の種類のがんにおいて損なわれている、または増強されている(Changら、2015年;Perottiら、2013年;Seshacharyuluら、2013年;Sangodkarら、2016年)。本研究において、膵臓がんを有する1人の患者が、11ヶ月を超える間、客観的応答およびそうでなければ安定病態を有していたので、ヒト膵臓癌の大多数においてPP2A活性亢進と関連しているPP2Aの調節性サブユニットの著しい過剰発現が最近報告されたことは、特別注目される(Heinら、2016年)。ヌードマウスに同所性に移植された、ヒト膵臓細胞株における、このサブユニット、PR55αのノックダウンは、その腫瘍形成能および転移潜在能を大幅に低減した(Heinら、2016年)。
【0383】
他方、特定の理論に束縛されることを望まないが、PP2A活性における後天的な欠陥は、PP2Aのさらなる薬理学的阻害に対して腫瘍を選択的に脆弱性にし得る。例えば、del(5q)骨髄異形成症候群(MDS)では、PP2Aの触媒サブユニットの対立遺伝子が欠失している(Sallmanら、2014年)。レナリドミド、MDSの処置のための標準薬剤は、その中程度のPP2A阻害活性のために、これらのPP2Aハプロ不全のdel(5q)MDS細胞に対して選択的に細胞傷害性であると報告された(Sallmanら、2014年)。PP2A阻害はまた、Rbおよび/またはp53経路における変異と協調して生じる、Mad2(有糸分裂停止欠損タンパク質2)を過剰発現するがん細胞の合成致死をもたらす(Bianら、2014年;Schvartmanら、2011年)。本研究では、部分応答を有する膵臓がんの患者は、Mad2を著しく過剰発現した。
【0384】
単一薬剤LB-100が、がんの進行を阻害し得る別の可能性ある機序として、細胞傷害性T細胞機能を増強することによるものがある。特定の理論に束縛されることを望まないが、PP2Aのホスファターゼ活性は、CTLA-4媒介性T細胞活性化にとって重要であり(Teftら、2009年)、制御性T細胞機能にとって必須である(Apostolidisら、2016年)。さらに、Ppp2r2d、PP2Aの調節性サブユニットの阻害は、T細胞機能の公知の負の調節因子のもの以外の機序によってT細胞増殖およびサイトカイン産生を増強する(Zhouら、2014年)。しかし、本研究では、免疫チェックポイント遮断を誘導する現在承認されている化合物を用いた場合に生じる自己免疫活性を示唆する毒性を経験した患者はいなかった。
【0385】
PP2Aの臨床上安全な阻害剤の利用可能性は、がん療法のための、長い間認識されていたが、無視されてきた治療標的を利用する機会を提供する。現在の治験は、LB-100単独が抗がん活性を有するということを示唆する。しかし、PP2Aの薬理学的阻害は、特に、PP2A機能において、および/またはDNA-損傷-修復経路において後天的異常を有する腫瘍に対して、細胞傷害性薬物と(Zhuangら、2009年;Hongら、2015年)および/またはその他の種類の免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせた場合に、がん療法に最も有効である可能性が高い。
【0386】
(実施例7 組み合わせでのLB-100の投与)
抗がん療法と組み合わせたある量の化合物LB-100を、がんに罹患した被験体に投与する。化合物および抗がん療法の量は、被験体を処置するのに有効である。
【0387】
抗がん療法と組み合わせたある量の化合物LB-100を、がんに罹患した被験体に投与する。化合物の量は、抗がん療法単独に対して、抗がん活性を増強するのに有効である。
【0388】
(実施例8 PP2AおよびPD-1)
PP2Aの薬理学的阻害は、免疫活性化およびがん免疫療法を増強し得る。PP2Aの阻害は、従来のCD4およびCD8T細胞の増殖を直接的に増大することによって、およびTregの免疫抑制機能を損なうことによって、がん免疫療法を増強するはずである。LB-100は、免疫チェックポイント遮断の効果を増大し得ると仮定した。これは、前臨床モデルにおいて、PP2Aの薬理学的阻害が免疫療法と相乗作用し得ることを実証する最初の研究である。
【0389】
T細胞に対するLB-100の効果を、CD8+またはCD4+T細胞が自己単球由来樹状細胞と共培養された、ヒト同種異系混合リンパ球反応において評価した。CD8+およびCD4+細胞におけるT細胞増殖の用量依存性増大(
図4A~Bおよび5A~B)ならびにCD4+T細胞におけるIFNγ分泌の増大(
図3A~B)が見られた。用量依存性増大は、T細胞での共起刺激分子OX40発現(
図6A~B)およびTbet、CD4+T細胞におけるIFNγ産生を駆動する転写因子(
図7A~B)を増強するとわかった。LB-100および抗PD-1抗体の効果を、同一アッセイにおいてCD4+T細胞で調べた。組み合わせは、抗PD-1単独(
図15)と比較して、増殖(
図8A~B、9A~D)、OX40発現(
図10A~B)、Tbet発現(
図11A~B)およびIFNγ産生を増強した。
【0390】
(実施例9 LB-100阻害およびPD-1遮断は、耐久性のあるCD8+T細胞媒介性腫瘍拒絶を誘発する)
LB-100を用いるPP2Aの阻害は免疫媒介性抗腫瘍応答を増強し得るという仮説を試験するために、マウスにCT26腫瘍細胞を移植した。CT26は、低レベルのPD-L1を発現するマウス結腸腺癌であり、抗PD1療法に対して耐性である。約13日後、30~100mm
3の間の腫瘍サイズを有するマウスを、4つの処置群(PBS対照、LB-100のみ - 0.16mg/kg、抗PD-1のみ - 10mg/kgまたは両方の組み合わせ)に無作為化した。処置は、合計28日間2日毎に行った。2日毎に腫瘍サイズを評価した(
図20A~C)。抗PD1を用いる単剤処置は、腫瘍負荷の低減または生存の増大において有効ではなかった。LB-100単独は、メジアン生存を21から33日に増大できた(p=0.02)。組み合わせ処置は、処置後14日目に対照と比較して(p<0.01)平均腫瘍体積を70%有意に低下させた。メジアン生存はまた、21から72日に増大した(p<0.01)。より著しくは、マウスの50%が、腫瘍の完全退縮(CR)に達し、疾患の証拠はなかった。この応答は、処置の完了後に耐久性のあるものであった。
【0391】
次に、組み合わせ療法からCRに達したマウスが、長期の免疫記憶を発達させたか否かを調べた。最初の接種の約60日後、治癒したマウスに同一CT26細胞を再接種した(
図21A~B)。マウス(n=8)のうち、再負荷で腫瘍を発生したものはなかった。対照として働くように、CT26ナイーブマウスに同時に接種した。この結果は、組み合わせ療法によって治癒したマウスは、腫瘍特異的抗原に対して長期記憶を確立することができたということを示す。
【0392】
次いで、腫瘍退縮をもたらしたLB-100の抗PD-1との相乗作用が、CD8T細胞によって媒介されるか否かを調査した。CT26腫瘍を有するマウスを、処置の開始に先立って枯渇性抗生物質を使用するCD8除去に供した。CD8+T細胞除去は、処置の3日後に脾細胞のFACSを用いて確認した。CD8が枯渇すると、組み合わせ療法は、抗腫瘍応答を誘発できなかった。CD8+非枯渇群の72%と比較して、組み合わせを受けているCD8+枯渇マウスのうちCRに達したものは0%であった(
図22A~C)。総合すると、これらの結果は、LB-100の効果は、腫瘍に対する直接的な細胞傷害性効果ではなく免疫系によって媒介されるということを実証した。
【0393】
方法
試薬-LB-100は、Lixte Biotechnologyによって提供された。抗マウスPD-1、クローンRMP1-14、抗体は、BioXcellから購入した。フローサイトメトリーに以下のモノクローナル抗体(mAb)を使用した:ラット抗マウスCD4-BV421、ラット抗マウスCD3-PE、ラット抗マウスCD8a-Alexa647、ラット抗マウスCD45-BV785、ラット抗マウスIFNg-FITC、ラット抗マウスFOXP3-Alexa647。これらの抗体は、Biolegendから購入した。
【0394】
細胞株およびマウス-CT26.CL25結腸癌株は、ATCCから入手した。腫瘍細胞は、10%(vol/vol)FBS(Thermofisher)、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン(Gibco)を含有する完全培地(RPMI1640;Cellgro)で培養した。6~8週齢の雌のBALB/cを、Charles Riverから購入した。マウスは国立衛生研究所(Bethesda、MD)の実験動物施設に収容した。すべての実験は、国立衛生研究所の動物管理使用局(National Institutes of Health Office of Animal Care and Use)によって承認され、国立衛生研究所ガイドラインに従って実施された。
【0395】
腫瘍接種および動物研究-CT26腫瘍細胞(0.5×106個)を、腹部の右側に皮下注射した。LB-100および抗PD-1を、それぞれ0.16mg/kgおよび10mg/kgの用量でi.p.経路によって注射し、腫瘍移植の11日後に開始して、2日毎に28日間継続した。腫瘍サイズは、デジタルノギスを用いて2~3日毎にモニタリングし、体積(長さ×幅2×0.5)として表した。腫瘍が潰瘍化した/壊死した、または2,000mm3を超えるもしくは最大直径が2cmより大きい腫瘍負荷の動物は、安楽死させた。
【0396】
CD8T細胞の枯渇。抗CD8(クローン53.6.7)mAb(BioXcell)を、療法の2日および1日前、療法の当日ならびに療法の開始の5および8日後に注射した。用量は、注射あたり0.1mgとした。
【0397】
腫瘍再負荷研究。ナイーブBALB/cマウスおよび上記のような組み合わせ処置により以前に治癒していたマウスに、CT26細胞を左(これまでに接種していない)胸部脇腹に接種した。腫瘍を、上記のように週に2回測定した。腫瘍が潰瘍化した/壊死した、または2,000mm3を超えるもしくは最大直径が2cmより大きい腫瘍負荷の動物は、安楽死させた。
【0398】
(実施例10 LB-100およびPD-1遮断は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を調節する)
処置効果を、腫瘍浸潤リンパ球で評価した(
図23A~B)。CT26腫瘍を有するマウスを、上記のようにLB-100および/または抗PD-1抗体を用いて処置した。処置の12日後、腫瘍をFACSによって解析した。LB-100および抗PD-1抗体の組み合わせを用いて処置したマウスから得た腫瘍浸潤CD8+T細胞は、対照動物および抗PD-1単独を用いて処置した動物から得た細胞と比較してIFNg+CD8+T細胞の有意な増大を示した(それぞれ11.0%および10.5%と比較して25.3%、p=0.05)。IFNγは、抗腫瘍応答を媒介する最も重大なサイトカインであるので、この結果は、組み合わせで処置されたマウスが、移植された腫瘍に対して増強された免疫を有することの機能的確認である。さらに、TregにおけるPP2Aの公知の重要性を考慮し、LB-100および/または抗PD-1処置の効果を腫瘍中に存在するTregの量に関して調べた。LB-100単独は、腫瘍環境中のTregを有意に枯渇させた(対照における14.7%と比較して2.1%)。この効果は、抗PD-1または組み合わせによるTreg枯渇に対する効果に対して同程度である。LB-100単独がTregを枯渇させることができるという事実は、LB-100単独処置群において観察された、小さいが有意な生存利益を説明する、可能性のある機序を示唆する。
【0399】
さらに、CRに達しているマウスは、CT26細胞を再接種した場合に腫瘍成長に対して抵抗性であった。枯渇抗体を使用するCD8+T細胞除去に供されたマウスは、組み合わせ療法を用いる処置にもかかわらずCT26腫瘍を拒絶できず-0/8(0%)、これは、抗PD-1処置を用いるLB-100の抗腫瘍効果は、CD8+T細胞によって媒介されるということを示す。結論として、同系動物モデルでは、PP2A阻害剤、LB-100は、チェックポイント遮断とともに相乗作用の可能性を有し、臨床において免疫療法を増強するその能力の調査を支持する。
【0400】
要約すると、この前臨床モデルにおいて、LB-100が、抗PD-1と組み合わされた場合に、処置されたマウスの相当な部分の完全退縮をもたらす頑強な相乗作用を有することが実証された。この効果は、CD8+T細胞を介する適応免疫によって媒介される。また、腫瘍の退縮と関連する免疫記憶の確立も存在する。これは、免疫療法を増強するための標的としてPP2Aの薬理学的阻害を使用する最初の報告である。
【0401】
腫瘍は、多くの場合免疫系から逃れるために複数の機序を発達させたが、そのうちの1つが、T細胞のPD-1の発現であり、これは、T細胞が腫瘍を攻撃することを有効に阻害する。抗PD-1は、この阻害性シグナルを取り消し、それによって、T細胞が腫瘍を認識し、根絶することが可能となる。LB-100、プロテインホスファターゼ2A(PP2A)の阻害剤は、結腸がんの前臨床モデルにおいて劇的な抗腫瘍効果を有することがわかった。この効果は、免疫系の増強によって媒介されることがわかった。
【0402】
(実施例11 PD-1および/またはPD-L1チェックポイント阻害剤との組み合わせでのLB-100の投与)
PD-1および/またはPD-L1チェックポイント阻害剤との組み合わせで、ある量の化合物LB-100をがんに罹患した被験体に投与する。化合物および阻害剤の量は、被験体を処置するのに有効である。
【0403】
PD-1および/またはPD-L1チェックポイント阻害剤との組み合わせで、ある量の化合物LB-100をがんに罹患した被験体に投与する。化合物の量は、PD-1および/またはPD-L1チェックポイント阻害剤の抗がん活性を増強するのに有効である。
【0404】
PD-1および/またはPD-L1チェックポイント阻害剤との組み合わせで、ある量の化合物LB-100を黒色腫に罹患した被験体に投与する。化合物および阻害剤の量は、被験体を処置するのに有効である。
【0405】
PD-1および/またはPD-L1チェックポイント阻害剤との組み合わせで、ある量の化合物LB-100を黒色腫に罹患した被験体に投与する。化合物の量は、PD-1および/またはPD-L1チェックポイント阻害剤の抗がん活性を増強するのに有効である。
【0406】
(実施例12 アテゾリズマブ、ニボルマブまたはペムブロリズマブへの追加療法としてのLB-100の有効性の評価)
追加療法は、相乗作用を提供し、低減された副作用しか伴わないより少ない用量を可能にする。
【0407】
すでにアテゾリズマブ、ニボルマブまたはペムブロリズマブを受けている黒色腫に罹患したヒト患者のための追加療法としてのLB-100の定期的な投与は、臨床上有意義な利点を提供し、アテゾリズマブ、ニボルマブまたはペムブロリズマブが単独で投与される場合よりも(同一用量で)患者の処置においてより有効である(少なくとも相加作用を、または相加作用を超えたものを提供する)。
【0408】
LB-100をすでに受けている黒色腫に罹患したヒト患者のための追加療法としてのアテゾリズマブ、ニボルマブまたはペムブロリズマブの定期的な投与は、臨床上有意義な利点を提供し、LB-100が単独で投与される場合よりも(同一用量で)患者の処置においてより有効である(少なくとも相加作用を、または相加作用を超えたものを提供する)。
【0409】
追加療法はまた、過度の有害な副作用を伴わない、または処置の安全性に影響を及ぼさない患者の処置において有効性を提供する(少なくとも相加作用を、または相加作用を超えたものを提供する)。各薬剤を単独で投与した場合と比較して:
【0410】
1.追加療法は、黒色腫を有する患者における細胞傷害性T細胞の量の増大においてより有効である(相加作用または相加作用を超えたものを提供する)、
【0411】
2.追加療法は、黒色腫を有する患者における黒色腫の進行の減速においてより有効である(相加作用または相加作用を超えたものを提供する)および/または
【0412】
3.追加療法は、黒色腫患者におけるPD-1およびまたはPD-L1の機能の低減においてより有効である(相加作用または相加作用を超えたものを提供する)。
【0413】
(実施例13 LB-100を用いるプロテインホスファターゼ-2Aの薬理学的阻害は、PD-1遮断と組み合わせた場合に耐久性のある免疫媒介性抗腫瘍活性を達成する)
本実施例は、とりわけ、小分子PP2A阻害剤、LB-100が、抗PD1(aPD-1)遮断と組み合わせた場合に、CT26結腸がんモデルにおいて耐久性のある免疫媒介性抗腫瘍応答を相乗的に誘発することを実証する。この効果は、T細胞依存性であり、腫瘍の相当な割合の著しい退縮につながった。腫瘍リンパ球の解析は、エフェクター対制御性T細胞比の著しい増大をもたらすエフェクターT細胞の浸潤の増強および抑制性制御性T細胞の枯渇を実証した。腫瘍のクリアランスは、抗原特異的二次防御免疫を確立した。LB-100およびaPD-1遮断の相乗作用はまた、B16黒色腫モデルにおいても観察された。さらに、本明細書において、LB-100によってmTORC1シグナル伝達経路が特異的に活性化され、ナイーブCD4細胞の制御性T細胞への分化の減少がもたらされたという知見が記載される。Th1の発現の増大およびTh2サイトカインの発現の減少も見られた。これらのデータは、チェックポイント阻害と組み合わせたPP2A阻害の橋渡しの可能性を強調する。
【0414】
LB-100およびaPD-1の組み合わせ処置は、CT26腫瘍の拒絶を相乗的に誘発する。PP2A阻害が、aPD-1難治性腫瘍においてin vivoでaPD-1療法と協同するという仮説を試験するために、高いPD-L1発現を有するが、aPD-1療法に対して制限された応答を有するマウス結腸直腸癌であるCT26腫瘍を使用した。マウスにCT26腫瘍細胞(0.25×10
6個)を接種した。10~13日後、50~100mm
3の大きさに達している腫瘍を有するマウスを、4つの処置群に無作為化した:対照(PBS)、aPD-1、LB-100ならびにaPD-1およびLB-100の組み合わせ。処置を、2日毎に30日間施した。腫瘍成長を2日毎に評価した(
図24A)。このモデルでは、LB-100単独は、腫瘍成長を有意に減少させなかったが、メジアン生存を拡張した(33対21日、p=0.02)。さらに、aPD1単独は、腫瘍成長または生存に対して効果がなかった。しかし、LB-100およびaPD1の組み合わせは、腫瘍の相当な部分の著しい退縮をもたらし、50%が研究の期間の間の完全退縮(CR)に達した。処置後8日における腫瘍サイズに有意差(p≦0.05)があり、組み合わせと対照処置アーム間に生存において有意な増大(p<0.005)があった(
図24B)。
【0415】
LB100およびaPD-1の組み合わせの効果は、CD8T細胞に依存する:耐久性のある腫瘍退縮をもたらすLB-100およびaPD-1の組み合わせの相乗効果が、免疫媒介性プロセスであったか否かを次いで調べた。CT26腫瘍を有するマウスを、LB-100およびaPD-1を用いる処置に先立って、およびその処置の間に、枯渇抗体を使用するCD8+T細胞除去に供した(
図24C)。FACSによって処置の5日後に末梢CD8+枯渇が確認された(示されていないデータ)。CD8+T細胞が枯渇すると、LB-100およびaPD-1の組み合わせは、腫瘍拒絶を誘発しなかった(0対72%、p=0.0015)(
図24D)。非枯渇群における腫瘍体積と比較して、CD8が枯渇した組み合わせ群において平均腫瘍体積は、処置の10日後には13倍に増大した(612対46mm
3、p<0.001)。生存も、CD8枯渇を用いた場合に有意に減少した(p<0.0001)。CD8T細胞枯渇単独は、腫瘍成長および生存の両方において、対照と比較してわずかな有害効果を有しており、これは、CD8+T細胞媒介性免疫のベースラインレベルが、ベースライン条件におけるCT26成長を制限するように働くことを示唆する。これらのデータは、LB-100およびaPD-1の相乗作用が、CD8+T細胞媒介性後天的免疫に依存し、腫瘍成長のPP2A阻害の直接的な効果ではないことを示した。
【0416】
組み合わせ療法によって治癒されたマウスは、抗原特異的長期記憶を発達させる:適応免疫応答の成功の特徴は、免疫学的記憶の確立である。以下の実験は、その二次的な保護抗腫瘍応答について完全応答(CR)を経験したマウスを試験した。CT26細胞を用いて、最初の腫瘍移植の約60日後にマウスに再負荷した(
図25A)。これらのマウスは、CT26細胞再負荷に対して完全に抵抗性であった(
図25B)。(再)移植後18日での平均腫瘍サイズは、CRマウスにおける0mm
3と比較して、ナイーブにおいて480mm
3であった(p<0.0001)(
図25C)。
【0417】
次いで、二次的な保護免疫学的応答が、CT26腫瘍に対して特異的であったか否かを試験した。最初の移植から約60日後、CRマウスに、CT26細胞を用いて側腹部に、および4T1細胞、無関係のマウスの乳がん細胞株を用いて乳頭脂肪パッドに再負荷した(
図25D)。CRを有するマウスは、CT26に対して抵抗性であったが、4T1細胞に対しては抵抗性ではなかった。接種の18日後、ナイーブおよびCRマウス間で4T1腫瘍体積において差はなかったが、CT26は、CRマウスでは増殖できなかった(
図25E~F)。この結果は、二次的記憶応答は、CT26によって発現された抗原に対して特異的であることを示す。
【0418】
組み合わせ処置を用いるリンパ球の活性化の増強:LB-100/aPD-1組み合わせによる腫瘍拒絶を媒介する細胞性機序に対処するために、二次的リンパ器官における、および腫瘍における免疫系の状態を調べた。マウスにCT26腫瘍を移植し、上記のように、LB-100および/またはaPD-1を用いて処置した。3日目に、2回の処置後、脾臓、腫瘍流入領域リンパ節(dLN)および腫瘍を回収し、フローサイトメトリーによって解析した(
図26~27)。二次的リンパ系組織では、CD44+CD62L-CD8+T細胞のより大きな頻度によって示されるように、対照と比較した、組み合わせレジメンを用いて処置したマウスにおけるCD8+T細胞のより大きな活性化が観察された(
図26A~C)。脾臓では、LB-100単独を用いる処置は、CD44+CD62L-CD8+T細胞のわずかな増大をもたらした(13.0から16.6%、p<0.05)が、組み合わせ処置は、LB-100またはaPD1いずれか単独よりも大きい増大をもたらした(それぞれ16.6および15.5%に対して20.8、p<0.05およびp<0.005)(
図26B)。同様に、CD44+CD62L-CD8+T細胞は、対照と比較して、組み合わせを用いて処置されたマウスのdLNにおいて増大した(7.4から17.9%、p<0.05)(
図26C)。脾臓およびdLNの両方においてCD4+T細胞中のCD44+CD62L-サブセットの頻度に差はなかった(
図28Aおよび29A)。CD8+およびCD4+T細胞でのPD-1、CTLA4、TIM3およびOx40の発現を含む免疫チェックポイントマーカーを腫瘍流入領域リンパ節および脾臓において調べた(
図28および29)。dLNにおけるaPD-1処置されたCD4+T細胞におけるPD-1発現の、小さいが有意な増大を除いて、これらのマーカーの発現に差はなかったが、単独または組み合わせたLB-100は、PD-1発現をさらに変更しなかった(
図29A)。
【0419】
腫瘍浸潤リンパ球の包括的解析(
図26~27、30)を次いで実施した。第1に、CD45+細胞の絶対パーセンテージを調べた。処置群の間に有意差はなかった。しかし、CD45+集団内に、対照と比較して組み合わせ処置においてCD3+T細胞の有意な増大があった(33.3から49.9%、p<0.05)(
図26E)。より重要なことに、CD3+T細胞集団のこの増大は、CD45+細胞に対して(25.9から45.3%、p≦0.01)(
図26F)正規化されるか、または腫瘍常在細胞数に対して(8から19%、p<0.05)正規化されるか(
図31A)に関わらず、CD8+T細胞の有意な増大に起因していた(
図26D)。同様の傾向が、腫瘍重量に対して正規化されたCD8+T細胞において観察された(
図31B)。代わりに、CD4+T細胞集団は、変化がないままであり(
図26G、31)、CD8/CD4比の著しい増大をもたらした(3.6から9.0、p<0.001)(
図27H)。これは、LB-100/aPD-1組み合わせが、腫瘍へのCD8+T細胞輸送の増強をもたらすことを示し、これは、一貫して免疫療法に対する応答の1つの最も重要な予測因子であると示されている。エフェクター表現型マーカーCD44+を標識することによってCD8+TILの部分集団をさらに調べた。対照に対して組み合わせを用いて処置されたマウスにおいて、CD8+CD44+T細胞の有意な増大があった(9.8から17.1%、p≦0.01)(
図26I)。また、細胞周期関連タンパク質Ki67の発現によって測定されるような、CD8+TILの増殖の増大が見られた(12.3から22.5%、p<0.05)(
図26J)。次いで、PD-1、TIM3、Ox40、CTLA4およびLAG3を含む、TILにおける免疫チェックポイントマーカーのアレイの発現を調べた。aPD-1を用いる処置は、PD-1発現の予測された低下をもたらしたが、LB-100は、単独またはaPD-1に加えて、CD4+およびCD8+TILの両方においてPD-1発現をさらに変更しなかった(
図26K~L)。TIM3、Ox40、CTLA4およびLAG3の発現は、単独または組み合わせ処置を用いてもCD4+またはCD8+TILにおいて有意に変化せず(
図32)、これは、LB-100を、これらのチェックポイントマーカーに対する標的化治療薬と組み合わせることに可能性があることを示唆した。
【0420】
PP2Aが抑制性Tregにおいて必須の役割を果たすことを実証するこれまでの研究を考慮し、次いで、LB-100の添加が抗CTLA4療法と同様にTreg枯渇をもたらし得るか否かを調べた。aPD-1は、腫瘍のレベルで作用すると知られており、Tregを枯渇させる限定された能力を有する。しかし、LB-100の添加を用いて、組み合わせ処置は、TILの中でもCD4+FoxP3+Treg細胞のパーセンテージを有意に低下させた(CD3+T細胞の10.3から4.9%、p<0.05)(
図27A~B)。同時のTregの低下およびCD8+T細胞の増大は、TILにおける、CD8+のTregに対する比に、3.5倍という劇的な増大をもたらした(7.5から26.4、p<0.05)(
図27C)。その後、TILにおけるLB-100/aPD-1組み合わせの機能的結果を評価した。PMA/イオノマイシンを用いるin vitro刺激に応じたIFN-γの細胞内発現を解析した。組み合わせ処置は、対照に対して、CD8+TILによるIFN-γ産生を有意に増強した(CD45+の16.6から31.5%、p<0.05)(
図27D~E)。さらに、組み合わせ処置により、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)産生CD8+TIL(
図27F、33A)およびIFN-γ/TNF-α二重産生CD8+TIL(
図27G、33B)の頻度が有意に増大した。CD8+TILの細胞溶解能力もGranzyme B(GzmB)発現によって決定し、これは、LB-100/a-PD1処置により有意に増大した(
図27H、33C)。CD4+T細胞では、IFN-γ産生の、小さいが統計的に有意な増大(CD4+細胞の6.1から10.8%、p<0.05)が観察された(
図27I)。これは、LB-100/a-PD1組み合わせを用いた場合にCD4+浸潤の全体的な増大はなかったが、腫瘍中に存在するエフェクターCD4+T細胞は、それにもかかわらず、より機能的に活性であり、IFN-γ産生が増強されたことを示唆する。
【0421】
総合すると、LB-100を、aPD-1遮断と組み合わせることは、TILの組成に有意な変化をもたらした(
図27J)。全体的なCD45+集団は比較的安定したままであったが、CD8+T細胞の優勢によって駆動されるCD3+T細胞浸潤の著しい増大があった。同時に、Treg集団を同時に枯渇させ、CD8/Treg比の劇的な増大をもたらした。さらに、CD8+T細胞は、サイトカイン発現によって示されるように、より増殖性であり、機能的に活性であった。これらの知見は、LB-100/a-PD1組み合わせが、免疫依存的な様式でCT26において耐久性のある腫瘍拒絶を誘発できたという観察結果と一致する。
【0422】
LB-100およびaPD-1は、自己免疫の組織学的証拠を伴わずにB16黒色腫において抗腫瘍活性を増強する:次いで、LB-100/aPD-1組み合わせが、その他のaPD-1耐性腫瘍に対して有効であるか否かを決定した。腫瘍予防モデルでは、6~8週齢のC57BL/6マウスを、4つの処置群:PBS、LB-100、aPD-1および組み合わせに無作為化した。処置の開始の2日後にB16F10細胞(2.5×10
5個)を右胸部脇腹に皮下接種した。生存に従って、処置を2日毎に施した(
図34A)。腫瘍移植後15日目まで、対照および単剤アーム間で差はなかった。しかし、腫瘍サイズは、対照に対して組み合わせ群において有意により小さく(305.9から109.0mm
3、p<0.05)(
図34B~C)、生存は、組み合わせ処置によって延長された(p<0.05)(
図34D)。
【0423】
組み合わせ群中のマウスのうち、自己免疫炎症事象のいかなる臨床徴候も実証したものがなかったことは注目すべきである。しかし、LB-100/aPD-1組み合わせが、エフェクター機能の増大およびTreg枯渇をもたらしたことを考慮すると、自己免疫が懸念事項である。したがって、本発明者らは、炎症の徴候を探すために、処置されたマウスの複数の臓器の組織構造を調べた。生存エンドポイントに到達したC57BL/6マウスを屠殺し、皮膚、唾液腺、膵臓、肺および胃の組織構造を調べた(
図34E、35)。いずれの処置群にも、リンパ球浸潤の増大または自己免疫の徴候を示唆する証拠はなかった。
【0424】
LB-100は、PP2A活性を阻害し、mTORC1活性化を増強する:マウス脾細胞から単離されたCD4およびCD8細胞のPP2A酵素活性を、プレーティングされたCD3および可溶性CD28を用いるin vitro刺激の3時間後に測定した。CD4およびCD8細胞の両方においてPP2A酵素活性の用量依存性低下があり、CD4細胞よりもCD8においてより大きな効果を有していた(
図36A)。
【0425】
単離されたCD3細胞のin vitro活性化の3時間後、mTORC1、mTORC2およびPI(3)K-AKT経路の活性を、それぞれ、リボソームS6タンパク質(S6)、Thr473でのAKTおよびThr308でのAKTのリン酸化をチェックすることによって評価した。LB-100は、mTORC2およびPI(3)K-AKT経路に対して最小の効果を有する一方で(
図36B)、S6のリン酸化によって測定されるようなmTORC1の活性において用量依存性増大があった(
図36c)ことがわかった。この差は、活性化の30分後のより早い時点では、3経路のいずれにおいても観察されなかった(
図37)。
【0426】
LB-100は、制御性細胞またはTh2 CD4細胞へのナイーブCD4細胞発生を阻害する:
【0427】
ナイーブCD4細胞をマウス脾細胞から単離し、TGF-βまたはIL4の存在下で抗CD3およびCD28を用いてin vitroで活性化して、TregまたはTh2 CD4+細胞のそれぞれの発生を誘導した。72時間後、Foxp3またはGATA3の核内発現を、フローサイトメトリーによって定量化して、TregまたはTh2細胞のそれぞれのパーセンテージを決定した。LB-100処置は、TGF-βによるFoxp3(
図38A)またはIL-4によるGATA3(
図38B)の誘導を用量依存的な様式で有意に損なった。さらに、T-betについて標識することによってTh2およびTh1
CD4+細胞の相対割合を定量化した。Tbet発現細胞に対するGATA3発現細胞の頻度は、LB-100処置により有意に低下した(
図38C)。次に、LB-100処置を用いたTh1 CD4+細胞の機能的結果を調査した。Th1およびTh2傾斜条件の両方の下で、PP2A阻害を伴うIFN-γ発現の用量依存性増大があった。これは、細胞内染色(
図38D)およびサイトカイン分泌の測定(
図38E~F)の両方を用いて示された。TNF-αおよびIL2を含むその他のTh1関連サイトカインも、Th1およびTh2の両条件において増大した。IL4の分泌は、予測されたように低下した(
図38F)。これらのデータは、PP2A阻害が、Treg形成を減少させ、CD4細胞分化をTh1系統に向けて傾斜させて、Th1サイトカイン分泌の全体的な増大をもたらしたことを示唆する。これらのin vitro実験は、in-vivo TIL知見と一致し、PP2A阻害が、mTORC1超活性化によってがん免疫を増強したことを潜在的に示唆する。
【0428】
ヒト混合リンパ球反応におけるLB-100のin vitro活性:LB-100の免疫調節性効果が臨床有用性を有することをさらに確認するために、健常ヒトドナーから得たPBMCを使用して混合リンパ球反応(MLR)を実施した。単球由来樹状細胞を、サイトゾル色素CFSEを用いて標識された同種異系CD4+T細胞と共培養した。LB-100を共培養の当日(0日目)に投与し、3日目に再度投与した。CD4T細胞による増殖およびIFN-γ分泌を5日目に評価した(
図39A)。LB-100処置を1μMで用いた場合に、分裂細胞のパーセンテージによって測定されるようなCD4T細胞増殖において有意な増大があった(対照における20%と比較して31%)(
図39B)。また、より低いLB100濃度(マイクロモル濃度未満の範囲で)で増殖の増大への傾向があった。5μMという高用量では、増殖は損なわれ、これは、免疫を増強するLB-100曝露の最適ウィンドウがあることを示唆した。IFN-γ分泌についても同様のパターンが観察された(
図39C)。0.2および1μMのLB-100で、IFN-γ放出はそれぞれ3.5~4倍に有意に増強された。また、T-betについて標識することによって、CD4T細胞における系統分化の効果を調べた。1μMのLB-100は、T-bet発現を有意に増大し(
図8D)、LB-100は、CD4系統をTh1分化に向けて傾斜させると思われるという本発明者らのこれまでの知見が確認された。次いで、LB-100が、ニボルマブを使用するPD1遮断と組み合わせて、IFN-γ分泌をin vitroで増強できるか否かを試験した。LB-100を用いて同様のMLRアッセイを実施した。LB-100は、抗PD1(aPD-1)遮断と協同し、単剤と比較してIFN-γ分泌を増強することがわかった(
図39E)。
【0429】
材料および方法
【0430】
薬物-ニボルマブはBristol-Myers Squibbから入手し、LB-100は、Lixte Biotechnology Holdings, Inc.から入手した。
【0431】
細胞株-CT26.CL25結腸癌、B16 F10黒色腫および4T1乳癌細胞株は、ATCCから入手した。腫瘍細胞は、10%(vol/vol)FBS(Gibco)、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(Gibco)を含有する完全培地(RPMI1640、Gibco)中で培養した。
【0432】
同系腫瘍モデル-マウスを維持し、NINDS Animal Use and Care Committeesの承認を得て実験を実施した。CT26腫瘍について:BALB/c(6~8週齢)をCharles River Laboratoryから購入した。CT26細胞(0.5×106個)を、右脇腹に皮下注射した。ひとたび腫瘍が30~100mm3の体積に到達すると(0日目)、マウスを無作為化し、PBS、LB-100(0.156mg/kg)および/または抗マウスPD-1(10mg/kg)(RMP1-14;ラットIgG2b;Bio X Cell)を用いて処置した。処置は、2日毎に30日間施した。腫瘍体積をノギスを使用して2日毎に測定し、腫瘍体積を次式に従って算出した:体積(mm3)=L×W2/2(式中、Lは、腫瘍の長さであり、Wは幅である(ミリメートルでの)。B16腫瘍について:C57BL/6(6~8週齢)をCharles River Laboratoryから購入した。マウスをそれぞれの処置群に無作為化し、最初の処置の2日後に、B16F10細胞(0.5×106個)を、右脇腹に皮下注射した。処置および測定は2日毎に行った。生存エンドポイントは以下の基準のうちいずれかに到達した時点と定義した:1)2000mm3を超える腫瘍体積、2)2cmを超える腫瘍直径、3)腫瘍上の重度の非治癒性皮膚壊死。指示があった時点で、一部のマウスは、250∝gのCD8枯渇抗体(クローン53.6.7;BioXcell)の注射によってCD8+T細胞を枯渇させた。注射は、療法の2日前および1日前、療法開始の当日ならびに療法の開始の5日後および8日後に、それ以降毎週与えた。
【0433】
腫瘍再負荷研究-ナイーブBALB/cマウスおよび組み合わせ療法によりCT26腫瘍から以前に治癒していた(CR)マウスに、0.5×106個のCT26細胞を左(CR)および右(ナイーブ)胸部脇腹に接種した。指示があった場合にはまた、一部のマウスに、1.25×105個の4T1乳癌細胞を乳頭脂肪パッド中に接種した。次いで、腫瘍体積を上記と同様にモニタリングした。
【0434】
TILの単離-マウスに0.5×10
6個のCT26細胞を右胸部脇腹に注射し、腫瘍が50~100mm
3の間に到達した後に上記のように処置した。2回の処置後、マウスを屠殺し、腫瘍を切り出した。腫瘍を、腫瘍解離キット(Miltenyi Biotec)を使用する酵素消化の存在下で、GentleMACS Dissociator(Miltenyi Biotec)を使用する機械的破壊に供した。TILの解析のために使用したゲート戦略を
図S3に示す。細胞内サイトカイン染色、ホスホフロー(phosphoflow)およびフローサイトメトリー-T細胞を含有する懸濁物をPBS中での固定可能な生/死染色(Invitrogen)と、それに続く、FACS緩衝液(0.5% BSAおよび0.1%アジ化ナトリウムを含むPBS)中での表面抗体染色を用いて染色した。細胞内染色のために、細胞を表面分子について染色し、続いて、固定および透過処理(eBioscience)した。サイトカイン染色のために、細胞を、PMA/イオノマイシンおよびタンパク質輸送阻害剤を含有する細胞刺激カクテル(eBioscience)を用いてまず刺激し、その後、染色を行った。リン酸染色(phosphostaining)のために、固定のために4%ホルムアルデヒドを使用し、透過処理プロトコールのために100%メタノールを使用した。細胞をフローサイトメトリー(LSRII;BD Bioscience)によって解析した。データ解析は、FlowJoソフトウェア(TreeStar)を使用して実施した。
【0435】
PP2Aホスファターゼアッセイ-マウスCD4+およびCD8+T細胞は、それぞれCD4およびCD8単離キット(StemCell)を用いて単離した。細胞を固定化された抗CD3(10ug/ml)および可溶性抗CD28(2ug/ml)を使用して3時間活性化した。次いで、製造業者の指示(EMD Millipore)のとおりにマラカイトグリーンホスファターゼアッセイキットを使用して免疫沈降後にPP2A活性を評価した。
【0436】
T細胞刺激および傾斜-マウス脾細胞(StemCell)からナイーブCD4細胞を単離した。細胞を固定化された抗CD3(10ug/ml)および可溶性抗CD28(2ug/ml)を使用して3日間活性化した。傾斜条件は以下のとおりとした:TH1、1.ig/mL抗IL4、5ng/mL IL2および10ng/mL IL12;TH2、1.ig/mL抗IFN-γ、5ng/mL IL2および10ng/mL IL4;Treg、1.ig/mL 抗IFNγおよび1ig/mL抗IL4および2ng/mL
TGFβ1。ビーズベースの多検体フローイムノアッセイ(BD Bioscience)を製造業者の指示のとおりに使用して、上清中のサイトカイン産生を測定した。計数ビーズ(Biolegend)を使用するフローサイトメトリーを用いて絶対細胞数を定量化した。
【0437】
フローサイトメトリーのための抗体-抗マウス:α-CD45(30-F11、BD)、α-CD3(145-2C11、Biolegend)、α-CD4(GK1.5、Biolegend)、α-CD8(53-6.7、BD)、α-PD-1(J43、ThermoFisher)、α-CTLA4(1B8、abcam)、α-TIM-3(B8.2C12、Biolegend)、α-OX-40(OX-86、Biolegend)、α-CD62L(MEL-14、BD)、α-CD44(IM7、Biolegend)、α-LAG-3(C9B7W、Biolegend)、α-IFN-γ(XMG1.2、Biolegend)、α-TNF-α(MP6-XT22、Biolegend)、α-Granzyme B(NGZB、ThermoFisher)、α-FOXP3(MF-14、Biolegend)、α-Ki67(SolA15、ThermoFisher)。抗ヒト:α-CD4(A161A1、Biolegend)、α-T-bet(4B10、Biolegend)、α-ホスホ-Akt(Ser473)(D9E、Cell Signaling)、α-ホスホ-Akt(Thr308)(D25E6、Cell Signaling)、α-ホスホ-S6リボソームタンパク質(Ser235/236)(D57.2.2E、Cell Signaling)。
【0438】
組織構造-ホルマリン固定された組織を処理し、ヘマトキシリンおよびエオシンを用いて染色し、委員会認定病理学者によって盲検的に評価した。
【0439】
ヒト混合リンパ球反応-39にこれまでに記載されたとおり。単球単離キット(StemCell)を使用して、PBMCから単離された単球を、500U/mlインターロイキン-4(IL-4)および250U/ml GM-CSF(R&D Systems)とともにin vitroで7日間培養することによって樹状細胞(DC)を作製した。CD4単離キット(StemCell)を用いて単離し、CFSE(ThermoFisher)を用いて標識したCD4+T細胞(1×105個)を、同種異系のDC(1×104個)と共培養した。アッセイの開始時に、LB-100および/またはニボルマブの滴定を付加した。3日後、LB-100を最終指示濃度に補充した。5日後、培養上清をELISA(eBioscience)によって解析し、フローサイトメトリーによって細胞を解析した。少なくとも3人の別個のドナーが得られ、1人の代表的なドナーの結果が報告された。
【0440】
統計-図の凡例で他に述べられていなければ、サンプルはチューキーの多重比較検定を用いてGraphPad Prismソフトウェアで分析した。散布図は、SEMをともなう平均として表されている。
参考
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
がんに罹患した被験体を処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて前記被験体に投与することを含み、合わせた場合の前記量が、前記被験体を処置するのに有効である、方法。
(項目2)
がんに罹患しておりチェックポイント阻害剤を受容している被験体を処置する方法であって、前記チェックポイント阻害剤単独と比較して処置を増強するのに有効な量のPP2A阻害剤を前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目3)
被験体における腫瘍またはがんを処置する方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて前記被験体に投与することを含み、合わせた場合の前記量が、前記腫瘍または前記がんを処置するのに有効である、方法。
(項目4)
がんに罹患した被験体におけるがん細胞に対するT細胞応答を増大させる方法であって、ある量のPP2A阻害剤を前記がん細胞に対する前記T細胞応答を増大させるのに有効な有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて前記被験体に投与することを含む、方法。
(項目5)
がんに罹患した被験体におけるT細胞の活性化を増大させる方法であって、有効量のPP2A阻害剤を有効量のチェックポイント阻害剤と組み合わせて前記被験体に投与し、それによって、前記T細胞の活性化を増大させることを含む、方法。
(項目6)
前記量の前記化合物および前記量の前記チェックポイント阻害剤が、各々定期的に前記被験体に投与される、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記量の前記化合物および前記量の前記チェックポイント阻害剤が、同時に、個別に、または逐次的に投与される、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記チェックポイント阻害剤が、前記PP2A阻害剤と同時に、前記PP2A阻害剤の前に、または前記PP2A阻害剤の後に投与される、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
一緒に投与される場合の前記量のチェックポイント阻害剤および前記量の化合物が、同量の各薬剤が単独で投与される場合よりも、前記被験体を処置するのに有効である、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
一緒に投与される場合の前記量の前記化合物および前記量の前記チェックポイント阻害剤が、前記被験体における前記がんの臨床症状を低減させるのに有効である、項目1~9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
前記化合物が、前記チェックポイント阻害剤の免疫療法的効果を増強させる、項目1~10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記がんが、免疫応答による処置に対して感受性である、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記免疫チェックポイント阻害剤がCTLA-4剤である、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記CTLA-4チェックポイント阻害剤が、イピリムマブまたはトレメリムマブである、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1または抗PD-L1剤である、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記PD-1および/またはPD-L1チェックポイント阻害剤が、アテゾリズマブ、ニボルマブ、またはペムブロリズマブである、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記がんが、黒色腫、腎細胞癌、前立腺がん、尿路上皮癌、または卵巣がんである、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記がんが黒色腫である、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記化合物が、0.25mg/m
2、0.5mg/m
2、0.83mg/m
2、1.25mg/m
2、1.75mg/m
2、2.33mg/m
2、または3.1mg/m
2の用量で投与される、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記化合物が、2.33mg/m
2の用量で投与される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記化合物が3週間毎に3日間投与される、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記イピリムマブが、0.5mg/kg~10mg/kgまたはそれ未満の用量で静脈内に投与される、項目14に記載の方法。
(項目23)
前記イピリムマブが、3週間毎またはそれより少なく、90分にわたり静脈内に投与される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記アテゾリズマブが、0.1mg/kg~20mg/kgまたはそれ未満の用量で静脈内に投与される、項目14に記載の方法。
(項目25)
前記アテゾリズマブが、3週間毎またはそれより少なく、60分にわたり静脈内に投与される、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記ニボルマブが、0.1mg/kg~10mg/kgまたはそれ未満の用量で静脈内に投与される、項目16に記載の方法。
(項目27)
前記ニボルマブが、2週間毎またはそれより少なく、60分にわたり静脈内に投与される、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記ペムブロリズマブが、1mg/kg~10mg/kgまたはそれ未満の用量で静脈内に投与される、項目16に記載の方法。
(項目29)
前記ペムブロリズマブが、3週間毎またはそれより少なく、30分にわたり静脈内に投与される、項目28に記載の方法。
(項目30)
T細胞におけるCTLA-4の機能を阻害する方法であって、前記T細胞にPP2A阻害剤を投与し、それによって前記CTLA-4の機能を阻害することを含む、方法。
(項目31)
T細胞におけるPD-1:PD-L1相互作用を阻害する方法であって、前記T細胞にPP2A阻害剤を投与し、それによってPD-1:PD-L1の相互作用を阻害することを含む、方法。
(項目32)
前記PP2A阻害剤が、構造:
【化30】
を有するか、またはその塩、両性イオン、もしくはエステルであり、式中、
結合αが、存在しているかもしくは存在せず、
一緒になったR
1およびR
2が=Oであり、
R
3が、OH、O
-、OR
9、O(CH
2)
1~6R
9、SH、S
-、もしくはSR
9であり、
ここで、R
9が、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはアリールであり、
R
4が、
【化31】
であり、
式中、Xが、O、S、NR
10、N
+HR
10、もしくはN
+R
10R
10であり、
ここで、各R
10が、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、
【化32】
、-CH
2CN、-CH
2CO
2R
11、もしくは-CH
2COR
11であり、
ここで、各R
11が、独立して、H、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニルであり、
R
5およびR
6が、一緒になって=Oであり、
R
7およびR
8が、それぞれHである、
項目1~23のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記化合物が、構造:
【化33】
を有する、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記化合物内の結合αが存在する、項目32または33に記載の方法。
(項目35)
前記化合物内の結合αが存在しない、項目32または33に記載の方法。
(項目36)
R
3が、OH、O
-、またはOR
9であり、
ここで、R
9が、アルキル、アルケニル、アルキニル、またはアリールであり、
R
4が、
【化34】
であり、
式中、Xが、O、S、NR
10、N
+HR
10、またはN
+R
10R
10であり、
ここで、各R
10が、独立して、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、
【化35】
である、
項目32または33に記載の方法。
(項目37)
R
3が、OH、O
-、またはOR
9であり、ここで、R
9が、H、メチル、エチル、またはフェニルである、項目36に記載の方法。
(項目38)
R
3が、OH、O
-、またはOR
9であり、ここで、R
9がメチルである、項目37に記載の方法。
(項目39)
R
4が、
【化36】
である、項目36に記載の方法。
(項目40)
R
4が、
【化37】
であり、式中、R
10が、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、または
【化38】
である、項目36に記載の方法。
(項目41)
R
4が、
【化39】
であり、式中、R
10が、-H、-CH
3、-CH
2CH
3、または
【化40】
である、項目40に記載の方法。
(項目42)
R
4が、
【化41】
である、項目41に記載の方法。
(項目43)
R
4が、
【化42】
であり、式中、R
10が、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、
【化43】
である、項目36に記載の方法。
(項目44)
R
4が、
【化44】
である、項目43に記載の方法。
(項目45)
R
4が、
【化45】
である、項目36に記載の方法。
(項目46)
前記化合物が、構造
【化46】
を有するか、またはその塩、両性イオン、もしくはエステルであり、式中、
結合αが、存在しているかもしくは存在せず、
R
9が、存在しているかもしくは存在せず、存在している場合には、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、もしくはフェニルであり、かつ
Xが、O、NR
10、NH
+R
10、もしくはN
+R
10R
10であり、
ここで、各R
10が、独立して、H、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、
【化47】
、-CH
2CN、-CH
2CO
2R
12、もしくは-CH
2COR
12であり、
ここで、R
12が、Hもしくはアルキルである、
項目34または35に記載の方法。
(項目47)
前記化合物が、構造
【化48】
を有するか、またはその塩、両性イオン、もしくはエステルであり、式中、
結合αが、存在しているかもしくは存在せず、
Xが、OもしくはNR
10であり、
ここで、各R
10が、独立して、H、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、
【化49】
、-CH
2CN、-CH
2CO
2R
12、もしくは-CH
2COR
12であり、
ここで、R
12が、Hもしくはアルキルである、
項目46に記載の方法。
(項目48)
前記化合物が、構造
【化50】
を有するか、またはその塩、両性イオン、もしくはエステルであり、式中、
結合αが、存在しているかもしくは存在せず、
Xが、OもしくはNH
+R
10であり、
ここで、R
10が、H、アルキル、置換されたアルキル、アルケニル、置換されたアルケニル、アルキニル、置換されたアルキニル、アリール、
【化51】
、-CH
2CN、-CH
2CO
2R
12、もしくは-CH
2COR
12であり、
ここで、R
12が、Hもしくはアルキルである、
項目46に記載の方法。
(項目49)
前記化合物が、構造
【化52】
を有するか、またはその塩もしくはエステルである、項目40に記載の方法。