(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023003708
(43)【公開日】2023-01-17
(54)【発明の名称】ブローアウトパネル装置
(51)【国際特許分類】
G21C 9/004 20060101AFI20230110BHJP
F16K 17/14 20060101ALI20230110BHJP
【FI】
G21C9/004
F16K17/14
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021104947
(22)【出願日】2021-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-13
(71)【出願人】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 博司
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 靖浩
【テーマコード(参考)】
2G002
3H059
【Fターム(参考)】
2G002CA01
2G002DA01
2G002EA03
3H059AA11
3H059AA13
3H059BB04
3H059CF05
3H059DD13
3H059EE02
3H059FF06
3H059FF20
(57)【要約】
【課題】建屋からの蒸気流出が止まったのちに確実に閉止することができるブローアウトパネル装置を提供する。
【解決手段】ブローアウトパネル装置30は、原子力関連施設の建屋の内外を貫通するように設けられた壁面開口部に設置される、開口部を有する気密架台1と、気密架台1の上部に配置されたヒンジ機構4により開閉可能であり、開口部を塞ぐブローアウトパネル3と、ブローアウトパネル3が開放後、建屋の内圧低下時にブローアウトパネル3が元の位置に戻ったときに、ブローアウトパネル3を気密架台1に押圧する電動押込み機構7と、を備える。電動押込み機構7は、回転軸の周りを偏芯回転体が回転することによりブローアウトパネル3を押圧して閉止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力関連施設の建屋の内外を貫通するように設けられた壁面開口部に設置される、開口部を有する気密架台と、
前記気密架台の上部に配置されたヒンジ機構により開閉可能であり、前記開口部を塞ぐブローアウトパネルと、
前記ブローアウトパネルが開放後、前記建屋の内圧低下時に前記ブローアウトパネルが元の位置に戻ったときに、前記ブローアウトパネルを前記気密架台に押圧する押込み機構と、を備える
ことを特徴とするブローアウトパネル装置。
【請求項2】
前記押込み機構は、回転軸の周りを偏芯回転体が回転することにより前記ブローアウトパネルを押圧して閉止する
ことを特徴とする請求項1に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項3】
前記偏芯回転体の側面は、テーパ又は凸部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項4】
前記偏芯回転体は、そろばん玉形状である
ことを特徴とする請求項2に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項5】
前記押込み機構は、前記回転軸を回転させる駆動部を有し、前記駆動部は前記気密架台内に配設されている
ことを特徴とする請求項2に記載のブローアウトパネル装置。
【請求項6】
前記駆動部は、電動により前記回転軸を回転する
ことを特徴とする請求項5に記載のブローアウトパネル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローアウトパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力関連施設の建屋において、建屋の開口が所定の内圧によって解放され、その後建屋内圧がある程度まで低下したならば、自動的に開口を閉止(閉鎖)するブローアウトパネルが提案されている。
【0003】
特許文献1に係るブローアウトパネル装置において、ブローアウトパネルにはその建屋外の面からハンガーアームが突出され、このハンガーアームの先端は開口部に向けて下り勾配に設置したレールに可動に係合されている。なお、レールは主蒸気配管破裂時に流出した蒸気を誘導するダクトの上側内面に固定されている。また、ダクトの側壁内面にはハンガーアームの基端に対向して緩衝装置が設けられている。
【0004】
従って、特許文献1に係るブローアウトパネル装置では、ブローアウトパネルのハンガーアームの先端がレールに移動自在に係合されているため、主蒸気配管破裂時に流出した蒸気の内圧が作用した時、ブローアウトパネルはレールに沿って急速に移動する。また、緩衝装置がブローアウトパネルを受け止めることで、ブローアウトパネルに作用する衝撃を緩和し、その破損を防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係るブローアウトパネル装置において、建屋からの蒸気流出が止まると、ブローアウトパネルはその自重で開口部まで戻る。しかし、ブローアウトパネルはその自重で開口部へ押し付けるため、ブローアウトパネルが開口部を確実に閉止できないおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、建屋からの蒸気流出が止まったのちに確実に閉止することができるブローアウトパネル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明のブローアウトパネル装置は、原子力関連施設の建屋の内外を貫通するように設けられた壁面開口部に設置される、開口部を有する気密架台と、前記気密架台の上部に配置されたヒンジ機構により開閉可能であり、前記開口部を塞ぐブローアウトパネルと、前記ブローアウトパネルが開放後、前記建屋の内圧低下時に前記ブローアウトパネルが元の位置に戻ったときに、前記ブローアウトパネルを前記気密架台に押圧する押込み機構と、を備えることを特徴とする。本発明のその他の態様については、後記する実施形態において説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、建屋からの蒸気流出が止まったのちに確実に閉止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る原子炉関連施設の建屋に設けられたブローアウトパネル装置を示す正面図である。
【
図2】ブローアウトパネルの構造を示す
図1のAA断面図である。
【
図3】電動押込み機構を示す
図1のBB断面図である。
【
図4】テーパ偏芯ローラ及びシャーピンのホルダを示す拡大図である。
【
図5】テーパ偏芯ローラ周りの詳細を示す側面図である。
【
図6】電動押込み機構の駆動部の構造を示す上面図である。
【
図7】電動押込み機構の駆動部の構造を示す正面図である。
【
図8A】ブローアウトパネルに加重が生じる場合を示す側面図である。
【
図8B】シャーピンに加重が生じる場合を示す側面図である。
【
図8C】シャーピンが破断した場合を示す側面図である。
【
図9A】内圧を受け上部ヒンジ機構によりブローアウトパネルが開いた状態を示す説明図である。
【
図9B】自重によりブローアウトパネルが再閉止状態を示す説明図である。
【
図10】電動押込み機構の駆動部の駆動状態を示す説明図である。
【
図11】
図10のC部から見た電動シリンダ周りの構造を示す斜視図である。
【
図12A】テーパ偏芯ローラの回転前の状態を示す説明図である。
【
図12B】テーパ偏芯ローラの回転後の状態を示す説明図である。
【
図13】複数のブローアウトパネル装置を配置した一例を示す正面図である。
【
図14】
図13において電動押込み機構を動作させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る原子炉関連施設の建屋に設けられたブローアウトパネル装置30を示す正面図である。
図2は、ブローアウトパネル30の構造を示す
図1のAA断面図である。
図3は、電動押込み機構7を示す
図1のBB断面図である。
図4は、テーパ偏芯ローラ10及びシャーピン5のホルダ6を示す拡大図である。
図5は、テーパ偏芯ローラ10周りの詳細を示す側面図である。
【0012】
ブローアウトパネル装置30は、原子力関連施設の建屋100の壁面の壁面開口部110に設けるブローアウトパネル装置である。ブローアウトパネル装置30は、壁面開口部110に設置される、開口部9を有する気密架台1と、気密架台1の上部に配置されたヒンジ機構4により開閉可能であり、開口部9を塞ぐブローアウトパネル3と、ブローアウトパネル3を閉止するシャーピン5と、ブローアウトパネル3が開放後、ブローアウトパネル3を再度閉止するための電動押込み機構7と、を備える。建屋100の内圧上昇時にシャーピン5の破断によりブローアウトパネル3が開放され、建屋100の内圧低下時にブローアウトパネル3が元の位置に戻ったときに、電動押込み機構7でブローアウトパネル3を閉止する。
【0013】
図1に示すように、ベースプレート2の上部の2個所にヒンジ機構4が設けられ、ベースプレート2の下部の2個所にシャーピン5を固定するホルダ6が設けられている。また、ベースプレート2の下部の2個所に電動押込み機構7が設けられている。ベースプレート2は、気密架台1に配設される。
【0014】
図2には、平常時におけるブローアウトパネル3の位置と、建屋100の内圧上昇時におけるブローアウトパネル3の位置を示している。平常時には、ブローアウトパネル3は、ブローアウトパネル3の下部に設けたシャーピン5がホルダ6により固定され、シール材8を押圧して気密が保たれている。建屋100の内圧上昇時には、シャーピン5が破断して、ブローアウトパネル3は二点鎖線で示すように開放される。本実施形態では、シャーピン5での保持機構を示しているが、これに限定されるわけではない。保持機構は材料の破壊の他ある一定の圧力により弾性変形し開放する機構でもよい。
【0015】
図3は、再閉止時における電動押込み機構7のテーパ偏芯ローラ10の位置を示している。テーパ偏芯ローラ10は、回転中心11に対し偏芯ローラである。再閉止時において、テーパ偏芯ローラ10は、ブローアウトパネル3の先端部に設けたローラ係止部3aに係合し、ブローアウトパネル3を閉止する。テーパ偏芯ローラ10は、例えば、そろばん玉形状、テーパを有する四角形状、三角形状などであってもよい。テーパ偏芯ローラ10(偏芯回転体)の側面は、テーパ又は凸部を有する。
【0016】
図4は、テーパ偏芯ローラ10の平常時の位置と、再閉止時の位置関係を示す。テーパ偏芯ローラ10は、平常時には、テーパ偏芯ローラ10は、ローラ係止部3a(
図3参照)に係合しておらず、再閉止時にローラ係止部3aに係合する。
【0017】
図5は、テーパ偏芯ローラ10周りの詳細を示す。テーパ偏芯ローラ10は、ローラ回転軸12に配設され、ローラ回転軸12の他端には、ローラ回転歯車13を設けている。ローラ回転歯車13は、後述する駆動部20(
図5、
図6参照)により回転することができる。ローラ係止部3aには、気密補強部3bが接合されており、気密補強部3bがシール材8を押圧することにより気密性を高めている。
【0018】
図6は、電動押込み機構7の駆動部20の構造を示す上面図である。
図7は、電動押込み機構7の駆動部20の構造を示す正面図である。
駆動部20は、電動シリンダ18と、駆動軸回転歯車17、駆動軸16、ラック移動歯車15、ラック14を含んで構成されている。電動シリンダ18のピストンロッドには直線状に歯切りされており、駆動軸回転歯車17の円形歯車と係合することにより、ピストンロッド(電動シリンダ18)の直線運動を駆動軸回転歯車17(駆動軸16、ラック移動歯車15)の回転運動に変換する。駆動軸16の一端には、駆動軸回転歯車17が設けられ、他端にはラック移動歯車15が設けられている。ラック14の両端は、直線状に歯切りされており、ラック14の一端の歯車はラック移動歯車15と係合し、ラック14の他端の歯車はローラ回転歯車13と係合している。そこで、電動シリンダ18のピストンロッドを、図面右側に引くと(矢印参照)、ラック移動歯車15は、反時計周りに回転し、左右のラック14はそれぞれ移動することができる。なお、
図7のように、この例ではラック14は2本あり、右側のラック14と左側のラック14は、ラック14の移動方向を示す矢印のように、それぞれ反対方向に移動する。この詳細な構造については
図11に示す。
図11には、電動シリンダ18での直線運動を回転運動に変換したラックアンドピニオン方式を示しているが、回転モータより複数の歯車により変換することで左右逆の動きに変換もしくは回転モータを直線運動に変換する機構でも同様の機構を達成できる。
【0019】
次に、
図8A~
図12を参照して、ブローアウトパネル3の再閉止の動作を説明する。
図8Aは、ブローアウトパネル3に加重が生じる場合を示す側面図である。
図8Bは、シャーピン5に加重が生じる場合を示す側面図である。
図8Cは、シャーピン5が破断した場合を示す側面図である。
図9Aは、内圧を受け上部のヒンジ機構4によりブローアウトパネル3が開いた状態を示す説明図である。
図9Bは、自重によりブローアウトパネル3が再閉止状態を示す説明図である。
図10は、電動押込み機構7の駆動部20の駆動状態を示す説明図である。
図11は、
図10のC部から見た電動シリンダ18周りの構造を示す斜視図である。
図12Aは、テーパ偏芯ローラ10の回転前の状態を示す説明図である。
図12Bは、テーパ偏芯ローラ10の回転後の状態を示す説明図である。なお、
図10の上図は
図6と同じ図であり、
図10の下図は
図7の抜粋である。
【0020】
(1)水蒸気により建屋100内の内圧が上昇し、ブローアウトパネル3の面板に荷重が生じる(
図8A参照)。
(2)ブローアウトパネル3を施錠していたシャーピン5に荷重が伝播し破断する(
図8B、
図8C参照)。
(3)内圧を受け、上部のヒンジ機構4によりブローアウトパネル3が開く(
図9A参照)。
(4)建屋100内外の圧力が均一になり、自重によりブローアウトパネル3が降りる(
図9B参照)。
(5)電動シリンダの昇降(押し引き)運動を駆動軸回転歯車17により回転運動に変換する(
図10参照、
図11参照)。
(6)ラック移動歯車15の回転運動が、ラック14(ラック14L,14R)を介してローラ回転歯車13(ローラ回転歯車13L,13R)に伝わる(
図10参照、
図11参照)。
(7)左右のローラ回転歯車13と同軸のテーパ偏芯ローラ10が偏芯して回転する(
図12A参照)。
(8)テーパ偏芯ローラ10がブローアウトパネル3のローラ係止部3aの内部に挿入し、ブローアウトパネル3が押し付くことで、ブローアウトパネル3を再閉止することができる(
図12B参照)。
【0021】
電動シリンダ18の動作のタイミングは、ブローアウトパネル3が戻ったことを検知する検知スイッチの指令で自動的に動作させてもよいし、建屋100の内外の圧力が均一となったことを管理者が判断した際に動作させてもよい。
【0022】
また、本実施形態の場合、駆動部20に電動シリンダ18を用いているが、建屋100内の電源喪失の場合を考慮して、マニュアルで手動できるシリンダを用いてもよい。
【0023】
図13は、複数のブローアウトパネル装置30を配置した一例を示す正面図である。
図13は、建屋100の壁面開口部110(
図2参照)が大きい場合に、
図1に示したブローアウトパネル装置30を8個配置した場合を示す。
【0024】
図14は、
図13において、電動押込み機構7を動作させた状態を示す図である。テーパ偏芯ローラ10が、ブローアウトパネル3を再閉止できる位置に回転していることがわかる。定期点検時に、電動押込み機構7(
図1参照)を駆動させることにより、テーパ偏芯ローラ10が定常時の状態位置か、再閉止時の状態位置かを確認することができる。
【0025】
<作用効果>
特許文献1に係るブローアウトパネル装置では、建屋からの蒸気流出が止まると、ブローアウトパネルはその自重で開口部まで戻る。しかし、ブローアウトパネルから開口部への押し付け力が弱くなり、ブローアウトパネルが開口部を確実に閉止できない課題があった。本実施形態によれば、電動押込み機構7がテーパ偏芯ローラ10を回転することで、開放された開口部9をブローアウトパネル3によって確実に閉止することができる。また、ブローアウトパネル装置30は、電動押込み機構7を有しているので、遠隔からの指示でブローアウトパネル3を再閉止することが可能である。
【符号の説明】
【0026】
1 気密架台
2 ベースプレート
3 ブローアウトパネル
3a ローラ係止部
3b 気密補強部
4 ヒンジ機構
5 シャーピン
6 ホルダ
7 電動押込み機構(押込み機構)
8 シール材
9 開口部
10 テーパ偏芯ローラ(偏芯回転体、そろばん玉)
11 回転中心
12 ローラ回転軸(回転軸)
13,13L,13R ローラ回転歯車
14,14L,14R ラック
15 ラック移動歯車
16 駆動軸
17 駆動軸回転歯車
18 電動シリンダ
20 駆動部
30 ブローアウトパネル装置
100 建屋
110 壁面開口部