(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037099
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】シート給紙装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 1/24 20060101AFI20230308BHJP
B65H 1/18 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
B65H1/24 B
B65H1/18 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143632
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊東 俊幸
【テーマコード(参考)】
3F343
【Fターム(参考)】
3F343FA02
3F343FB01
3F343FC01
3F343GA01
3F343GB01
3F343GC01
3F343GD01
3F343HD16
3F343KB04
3F343LA02
3F343LA14
3F343LC06
3F343LC12
3F343MA27
3F343MA32
3F343MC05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シートの種類に係わらず確実にシートを給紙し、シートの給紙不良を低減するシート給紙装置を提供する。
【解決手段】シートを積載する積載トレイと、積載トレイ上の最上位のシートを送り出す送出手段と、積載トレイを昇降する昇降手段と、送出手段から送り出されたシートを1枚に分離して給紙する給紙手段と、送出手段から送り出されるシートを給紙手段に案内するシートガイドと、を備えた給紙装置において、昇降手段は、積載トレイから送り出されるシートの種類に応じて、高さの異なる第1の送出範囲と第2の送出範囲に最上位のシートを移動させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを積載する積載トレイと、前記積載トレイ上の最上位のシートを送り出す送出手段と、前記積載トレイを昇降する昇降手段と、前記送出手段から送り出されたシートを1枚に分離して給紙する給紙手段と、前記送出手段から送り出されるシートを前記給紙手段に案内するシートガイドと、を備えた給紙装置において、
前記昇降手段は、前記積載トレイから送り出されるシートの種類に応じて、高さの異なる第1の送出範囲と第2の送出範囲に最上位のシートを移動させ、
前記第2の送出範囲は、前記第1の送出範囲の上限位置よりも下方を上限位置とし、前記第1の送出範囲の下限位置よりも下方を下限位置とするシート給紙装置。
【請求項2】
前記シートガイドは、前記送出手段にて送り出されるシートを前記給紙手段に向かって案内する傾斜面を有し、前記昇降手段は前記積載トレイを前記シートガイドの傾斜面にシートを送り出す高さに最上位シートを移動させる請求項1に記載のシート給紙装置。
【請求項3】
前記昇降手段は、前記積載トレイから送り出されるシートが所定の厚さよりも大きい場合、シートが前記第1の送出範囲内で前記送出手段にて送り出されるように前記積載トレイを制御し、前記積載トレイから送り出されるシートが所定の厚さ以下の場合、シートが前記第2の送出範囲内で前記送出手段にて送り出されるように前記積載トレイを制御する請求項1又は2に記載のシート給紙装置。
【請求項4】
前記シートガイドは、前記給紙手段側の先端位置が前記第1の送出範囲の上限位置よりも上方に配置される請求項3に記載のシート給紙装置。
【請求項5】
前記積載トレイ上のシートの最上面を第1の高さ位置で検出する第1の検出手段と、
前記積載トレイ上のシートの最上面を、第1の高さ位置よりも下方の第2の高さ位置で検出する第2の検出手段と、を備え、
前記昇降手段は、前記積載トレイから送り出されるシートが所定の厚さよりも大きい場合、前記第1の検出手段の検出状態に応じて、シートが第1の送出範囲内で前記送出手段にて送り出されるように前記積載トレイを制御し、
前記積載トレイから送り出されるシートが所定の厚さ以下の場合、前記第2の検出手段の検出状態に応じて、シートが第2の送出範囲内で前記送出手段にて送り出されるように前記積載トレイを制御する請求項1または2に記載のシート給紙装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のシート給紙装置と、
前記シート給紙装置から給送されるシートに画像を形成する画像形成装置と、を備える画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに画像を形成する画像形成装置にシートを供給する給紙装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンター等の画像形成装置の画像形成部にシートを供給する給紙装置が知られている。給紙装置からシートを供給された画像形成装置の画像形成部は、シートに画像を形成した後に排出トレイに排出する。
【0003】
給紙装置には、数百枚から数千枚に及ぶ大容量のシートを収納可能なカセットや収納庫を備えるものが知られている。また、給紙装置は、カセットや収納庫内に設けられ、シートが積載される昇降トレイと、送出位置で昇降トレイ上のシートの最上面に接触してシートを送り出す送出ローラと、送り出されたシートを1枚に分離して給紙する給紙ローラと分離ローラからなる分離機構を備えている。そして、昇降トレイを上昇させてシートの最上面を送出位置に移動させ、送出ローラによってシートを送り出し、分離機構にて1枚に分離した後、画像形成部にシートを供給するように構成されている。
【0004】
このような給紙装置には、給紙ローラと分離ローラのニップ部にシートを案内する傾斜した傾斜面を有するガイド板、いわゆる前捌き板が設けられている(例えば、特許文献1、特許文献2)。この前捌き板は、傾斜面によってシートを捌き、捌かれたシートが分離機構に送られるようになっている。これによって、分離機構にて1枚に分離できる精度がより向上する。
【0005】
また、給紙装置の給紙動作では、積載シートの最上面が送出位置にある状態から送出ローラにてシートを連続して送り出し、シートの送り出しによって積載シートの最上面が所定量低くなった時点で昇降トレイを上昇させて所定の送出位置に積載シートの最上面を移動させ、この動作を繰り返すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-124666号公報
【特許文献2】特開2000-191169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従前の給紙装置では、常に一定の送出範囲内からシートを送り出すため、送出範囲を前捌き板の下側に対向する位置とした場合、厚いシートを傾斜面に沿って送り出す際の負荷が大きくなり、送出ローラとシートですべりが生じ、不送りエラーが発生する。一方、送出範囲を前捌き板の上側に対向する位置とした場合、傾斜面による十分な前捌き効果を得ることができないため、重送の頻度が増加するとの問題が生じる。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、シートの種類に係わらず確実にシートを給紙し、シートの給紙不良を低減するシート給紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、シートを積載する積載トレイと、積載トレイ上の最上位のシートを送り出す送出手段と、積載トレイを昇降する昇降手段と、送出手段から送り出されたシートを1枚に分離して給紙する給紙手段と、送出手段から送り出されるシートを給紙手段に案内するシートガイドと、を備えた給紙装置において、昇降手段は、積載トレイから送り出されるシートの種類に応じて、高さの異なる第1の送出範囲と第2の送出範囲に最上位のシートを移動させる。
【発明の効果】
【0010】
シートの種類に係わらず確実にシートを送り出し、シートの給紙不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】画像形成システムの全体構成を示す構成図である。
【
図3】シート給紙装置における分離給紙機構の構成を示す構成図である。
【
図4】シート給紙装置の収納庫の装着時における積載トレイの昇降動作を示す動作フローチャート図である。
【
図5】シート給紙装置における給紙動作及び給紙動作中の積載トレイの上昇動作を示す動作フローチャート図である。
【
図6】シート給紙装置の厚紙時における積載トレイの昇降動作による最上位シートの高さ方向の位置と第1、第2の上面検出センサの検出状態を示す模式図である。
【
図7】シート給紙装置の薄紙時における積載トレイの昇降動作による最上位シートの高さ方向の位置と第1、第2の上面検出センサの検出状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の画像形成システムの全体構成を示している。画像形成システムは、画像形成装置1と、シート給紙装置2とを備える。シート給紙装置2は、画像形成装置1の一方(
図1中、右側)の側面1aに連結されている。画像形成装置1には、原稿読取装置3と原稿給送装置4とが一体に搭載されている。
【0014】
画像形成装置1は、所定枚数(例えば、100枚程度)のシートを収納可能な2つの給紙カセット6a,6bを内部に備えている。シート給紙装置2は、給紙カセット6a,6bよりも多数枚のシートの積載に対応可能に比較的大容量に構成されている。
【0015】
画像形成装置1は、原稿読取装置3によって原稿から読み取られた画像データに基づいて、給紙カセット6a,6b又はシート給紙装置2から供給されたシート上に画像形成を行い、画像形成されたシートをシート集積部5に集積する。原稿読取装置3には、原稿給送装置4によって原稿シートを自動で給送することもできる。ここで、画像形成システムにおいて扱われるシートは、A6,B5、A4、B4、A3等の異なるサイズ、厚紙、薄紙等の坪量(厚さ)の異なるシート、OHPシートやトレーシングペーパー、コート紙等の特殊なシートである。
【0016】
画像形成装置1は、例えば、複写機、プリンター、ファクシミリ等である。本実施の形態の画像形成装置1は、静電式画像形成機構を採用した複写機である。
図1に示す画像形成装置1は、投光器(レーザーヘッド等)7と、感光ドラム8と、現像器9と、転写チャージャー10と、定着ローラ11とを備えている。各給紙カセット6a,6bに収納されているシートは、分離給紙機構12によって1枚ずつに分離されて給紙され、搬送ローラ対14によって搬送路15に沿って転写チャージャー10へと送られる。シート給紙装置2から搬入されたシートは、同様に搬送ローラ対14によって搬送路15に沿って転写チャージャー10へと送られる。
【0017】
給紙カセット6a,6b又はシート給紙装置2から供給されたシートには、感光ドラム8の表面に投光器7で形成した静電潜像(静止画像)に現像器9で付着させたトナーが、転写チャージャー10によって転写される。トナーが転写されたシートは、下流側に配置される定着ローラ11に送られて、シート上のトナーを加熱定着させた後、排紙ローラ対16によってシート集積部5へ排出される。
【0018】
原稿読取装置3の上部には、透明なガラスで形成された第1のプラテン17と第2のプラテン18とが水平方向に並設されている。第1のプラテン17は、手置きでセットされる原稿の読み取りに用いられ、対応可能な最大サイズの原稿を載置できるようなサイズに形成されている。第2のプラテン18は、原稿給送装置4から給送されて所定速度で移動する原稿の読み取りに用いられる。
【0019】
原稿読取装置3の内部には、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20と、集光レンズ21及び光電変換素子22を有する光電変換手段が設けられている。第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20は、図示されないキャリッジモータによって駆動されて、第1のプラテン17の下方を副走査方向に往復移動する。第1のプラテン17上に載置された原稿の読み取りを行うとき、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20を移動させながら、第1の読取キャリッジ19のランプから光を第1のプラテン17上の原稿の画像へ照射し、原稿からの反射光を、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20のミラーから集光レンズ21を介して光電変換素子22に案内し、電気信号に変換することによって画像データを生成させる。
【0020】
原稿給送装置4は、給紙トレイ23と、シート搬送機構24と、排紙トレイ25とを備える。給紙トレイ23上に載置された原稿は、シート搬送機構24によって1枚ずつ搬送され、第2のプラテン18上を通過し、排紙トレイ25に排出される。原稿給送装置4から給送されて第2のプラテン18上を通過する原稿を読み取るとき、第1の読取キャリッジ19及び第2の読取キャリッジ20は、第2のプラテン18の下方で予め停止させておき、第2のプラテン18上を通過する原稿から画像データを生成させる。
【0021】
図2は、シート給紙装置2の構成を示す模式図である。
図1及び
図2を参照して、シート給紙装置2の構造を詳細に説明する。シート給紙装置2は、装置全体を収容する筐体31内に、シートを収納する収納庫32と、収納庫32内のシートを1枚ずつに分離して画像形成装置1に向けて供給する分離給紙機構33を備えている。
【0022】
収納庫32は、上部に開口部を設けた概略箱型形状を有し、その内側には、積載トレイ38が、昇降機構34により上下方向に昇降可能に設けられている。収納庫32は、シート給紙装置2から画像形成装置1へシートを供給する給紙方向と直交する正面方向(
図1中、手前側)に筐体31から引き出し可能であり、そのように引き出した状態で、上部の開口部を通して積載トレイ38上にシートを装填、積載することができる。
【0023】
収納庫32内部の積載トレイ38を収容する収容空間には、積載トレイ38上の給紙方向に直交するシート幅方向に両側から挟んで位置する一対の側端規制部材42(一方のみを図示)と、積載トレイ38上のシートの後端(給紙方向に画像形成装置1から遠い側の端部)側に位置する後端規制部材43とが設けられている。積載トレイ38上のシートは、幅方向の両側端の位置が側端規制部材42によって規制され、給紙方向の後端の位置が後端規制部材43によって規制されるようになっている。
【0024】
側端規制部材42は、例えばラックとピニONとによって互いに連動してシートの幅方向にスライド可能に収納庫32の底部に立設されている。後端規制部材43は、給紙方向にスライド可能に収納庫32の底部に立設されている。側端規制部材42及び後端規制部材43のいずれも、積載トレイ38と干渉しないように、積載トレイ38に設けられた切欠部(図示せず)を貫通して延びている。このような構成により、積載トレイ38上で積載されるシートのサイズに応じて、側端規制部材42及び後端規制部材43を収納庫32の底部上で移動させて、その側端位置及び後端位置を規制することができる。
【0025】
積載トレイ38は、昇降機構34によって収納庫32内で上下方向に昇降可能に支持されている。積載トレイ38は、それぞれ幅方向の両側辺の角部近傍の位置に設けられた4つの支持部に取り付けられた4本のワイヤー46(
図2には、簡単のために2本だけを例示)によって吊り下げられている。昇降機構34は、積載トレイ38の各支持部にそれぞれ一端を固定された吊下げ部材としての4本のワイヤー46と、対応する各ワイヤー46を巻き取る4つの巻取プーリー47と、各巻取プーリー47と対応する積載トレイ38の支持部との間に延びるワイヤー46をそれぞれ巻き掛ける複数の中間プーリー48と、巻取プーリー47を回転駆動させる昇降モータMT3とによって構成されている。
【0026】
昇降モータMT3を正転駆動すると、4つの巻取プーリー47が同時に回転してそれぞれワイヤー46を巻き取ることによって、積載トレイ38は略水平状態を維持したまま上昇する。昇降モータMT3を逆転駆動すれば、4つの巻取プーリー47が上昇時とは反対方向に回転駆動されて、各ワイヤー46が繰り出されることによって、積載トレイ38は、自重によって略水平状態を維持したまま下降する。昇降機構34は、このように積載トレイ38を略水平状態を保ったまま昇降できるものであればよく、本実施形態のものに限定されない。
【0027】
図3は分離給紙機構33の構成を示す構成図である。分離給紙機構33は、積載トレイ38上に積載されたシートの最上面に接触してシートを送り出す送出ローラ51と、送り出されたシートを一枚ずつに分離して画像形成装置1へ搬送する分離搬送手段としての給紙ローラ52と分離ローラ53を含んでいる。分離ローラ53は、給紙ローラ52に圧接して2枚目以降のシートの給紙を阻止する。
図2で示すように分離給紙機構33の下流側には、シートを画像形成装置1の搬送路15内に送り出すための搬送ローラ対54が設けられている。
【0028】
送出ローラ51は、給紙モータMT1によって回転駆動され、積載トレイ38から最上位のシートを送り出す。給紙ローラ52は、同様に給紙モータMT1によって、図示されていない複数のギアやタイミングベルトを介して駆動されて回転し、送出ローラ51によって積載トレイ38上から送り出されたシートを給紙方向に送り出す。搬送ローラ対54は、搬送モータMT2によって回転駆動され、給紙ローラ52から送り出されたシートを画像形成装置1へ供給する。
【0029】
送出ローラ51は、
図3(a)(b)に示すように、その回転軸が、給紙ローラ52の回転軸の周りに回転自在に取り付けられたアーム部材55の先端に回転可能に支持されている。送出ローラ51は、自重によって下方に垂下されている。送出ローラ51は、積載トレイ38の上昇によって積載トレイ上の最上位のシートと接触し、該最上位のシートが更に上昇することによって上方に押し上げられる。これによって、アーム部材55は給紙ローラ52の回転軸を支点として回動するようになっている。
【0030】
アーム部材55には、第1のセンサフラグFG1、第2のセンサフラグFG2が、アーム部材55と一体に回動するように設けられている。本実施形態の第1、第2のセンサフラグFG1、FG2は、
図3(a)(b)に示すように、アーム部材55の回転軸に対して送出ローラ51の支持側とは反対側に延設されている。
【0031】
送出ローラ51は、給紙モータMT1による給紙ローラ52の回転軸の回転が、複数のギアを介して伝達されることによって、回転駆動されるように構成することができる。
【0032】
分離ローラ53は、
図2に示すようにその回転軸にトルクリミッター57が取り付けられている。これにより、給紙ローラ52と分離ローラ53とが圧接されるニップ部でシートが2枚以上重なってニップされたとき、分離ローラ53が逆転して2枚目以降のシートの供給を阻止するようになっている。当然ながら、分離ローラ53に代えて分離パッドなど他の部材を用いてもよい。
【0033】
図3(a)に示すように、給紙ローラ52と分離ローラ53のニップ部の上流には、シートガイド58が設けられている。シートガイド58は、積載トレイ38上から送り出されるシートを給紙ローラ52と分離ローラ53とのニップ部に案内するために、給紙方向に沿って積載トレイ38の先端側から上向きに傾斜したガイド面を有する。シートガイド58は、例えば収納庫32側に固定した平板部材によって形成することができる。
【0034】
シートガイド58の給紙方向先端は、給紙ローラ52と分離ローラ53とのニップ部にできる限り近接させて配置することが好ましい。それにより、積載トレイ38上から送り出されたシートの先端がシートガイド58先端から垂れ下がり、分離ローラ53に接触することによって発生し得るシートの先端めくれを防止することができる。
【0035】
シート給紙装置2は、
図2に示すように積載トレイ38及びシートの昇降方向の位置を検出するために、下限検出センサS3と第1、第2の上面検出センサS1、S2とを備える。下限検出センサS3は、積載トレイ38の昇降範囲における下限位置に積載トレイ38が下降したことを検出する。第1、第2の上面検出センサS1、S2は、積載トレイ38上の最上位のシートが、送出ローラ51によって送り出し可能な位置にあることを検出する。また、給紙ローラ52と搬送ローラ対54との間で給紙ローラ52から搬送ローラ対54へ送り出されるシートを検出するシート検出センサS4が設けられている。
【0036】
第1、第2の上面検出センサS1、S2は、送出ローラ51を支持するアーム部材55に設けられた第1、第2のセンサフラグFG1、FG2を検出状態によって積載トレイ38上の最上位シートの位置を検出する。
【0037】
ここで、第1、第2のセンサフラグFG1、FG2による最上位シートの位置検出について説明すると、昇降機構34にて積載トレイ38が上昇させると積載トレイ38上の最上位シートが送出ローラ51に当接し、送出ローラ51が押し上げる。これによって、アーム部材55が図中反時計方向上向きに回転し、第1、第2のセンサフラグFG1、FG2も反時計方向下向きに回転する。そして、第1、第2のセンサフラグFG1、FG2が反時計方向下向きに回転することで、第1、第2の上面検出センサS1、S2が第1、第2のセンサフラグFG1、FG2を検出する。第1のセンサフラグFG1、第1の上面検出センサS1は、最上位シートが第1の高さ位置Ph1に到達すると第1の上面検出センサS1が第1のセンサフラグFG1を検出するように配置されている。また、第2のセンサフラグFG2、第2の上面検出センサS2は、最上位シートが第1の高さ位置よりも低い第2の高さ位置Ph2に到達すると第2の上面検出センサS2が第2のセンサフラグFG2を検出するように配置されている。
【0038】
本実施の形態では、厚紙の場合のシートの送り出す高さ方向の範囲(第1の送出範囲ER1)よりも薄紙の場合のシートの送り出す高さ方向の範囲(第2の送出範囲ER2)が低くなるように構成されている。これによって、厚紙の場合は、シートガイド58の傾斜面の先端側(上側)に接触させてシートの送り出すことができる。これによって、シートガイド58による送り出し負荷を低減することができる。一方、薄紙の場合は、シートガイド58の傾斜面の基端側(下側)から接触させて送り出すことで、シートガイド58による捌き効果を十分得ることができる。このように、シートの種類によって適切な送り出し位置に設定しているので、シートの送り出し不良や分離不良を低減することができる。
【0039】
なお、後述するが第1の上面検出センサS1と第2の上面検出センサS2は積載トレイ38上に積載されたシートの種類に応じていずれか一方が選択され、選択された第1の上面検出センサS1または第2の上面検出センサS2のいずれか一方に基づいて積載トレイ38の昇降が制御される。
【0040】
図2に示すようにシート給紙装置2は、その動作を制御するための制御部100を備える。制御部100は、中央演算処理装置(CPU)からなり、読み出し専用メモリであるROMと、書き換え可能なメモリであるRAMとが接続されている。ROMには、後述する制御手順を予め記憶されている。RAMは、入力データの記憶用及び作業用記憶領域等として使用される主記憶装置である。
【0041】
制御部100には、第1、第2の上面検出センサS1、S2と、下限検出センサS3と、シート検出センサS4とが接続され、これら各センサからの検出信号がリアルタイムで受信されるようになっている。更に制御部100には、給紙モータMT1、搬送モータMT2、昇降モータMT3が接続されており、制御部100は、これらの動作を各検出手段からの検出信号に基づいて制御する。また、制御部100には、ユーザーによる操作やユーザーに表示する操作部と表示部を兼ねるパネル200が接続されている。
【0042】
シート給紙装置2は、筐体31から引き出された収納庫32が筐体31内に装着されたことを装着検知センサ(図示せず)によって検出したとき、昇降モータMT3を駆動して積載トレイ38を上昇させる。
【0043】
また、シート給紙装置2は給紙動作中において、積載トレイ38上からシートが送出ローラ51によって順次送り出され、最上位シートの位置が設定された位置まで低くなったときも、昇降モータMT3を駆動して積載トレイ38を上昇させる。この給紙動作中において、積載トレイ38上のシートが厚紙の場合は、最上位シートを第1の上限位置P1aに移動させる(
図6(c)参照)。そして、最上位シートが送出ローラ51によって順次送り出されて第1の下限位置P1bに到達する(
図6(b)参照)と積載トレイ38を上昇させ、最上位シートを第1の上限位置P1aに移動させる。薄紙の場合は、最上位シートを第1の上限位置P1aよりも下方に設定した第2の上限位置P2aに移動させる(
図7(c)参照)。そして、最上位シートが送出ローラ51によって順次送り出されて第1の下限位置P1bよりも下方の第2の下限位置P2bに到達する(
図7(b)参照)と積載トレイ38を上昇させ、最上位シートを第2の上限位置P2aに移動させる。
【0044】
なお、最上位シートが送出ローラ51によって順次送り出されて符号P1b、P2bに示す位置まで最上位シートが低くなったことは、第1の上面検出センサS1が第1のセンサフラグFG1を検出しなくなり、OFFになること、またはで第2の上面検出センサS2が第2のセンサフラグFG2を検出しなくなり、OFFになることで判断される。
【0045】
以下に、
図4、
図5の動作フローチャート図及び
図6、
図7の給紙状態を示す模式図を用いて、収納庫32の装着時における積載トレイ38の昇降動作及び給紙動作時の積載トレイ38の昇降について説明する。
【0046】
収納庫32の装着時における積載トレイ38の昇降動作について、
図4のフローチャート図に基づいて説明する。引き出された収納庫32が筐体31内に装着されたことを装着検知センサ(図示せず)で検出されると、制御部100は積載トレイ38の昇降動作を実行する。この昇降動作では積載トレイ38上のシートが厚紙であるか否かによって最上位シートの高さ位置を異なる位置に移動するように積載トレイ38の昇降を制御する。
【0047】
収納庫32における装着時の積載トレイ38の昇降動作は、先ず積載トレイ38上のシートが厚紙であるか否かを判断し、積載トレイ38上のシートが厚紙である場合、昇降モータMT1を正転駆動する(ST01-ST02)。これによって巻取プーリー47が回転してワイヤー46を巻き取り、積載トレイ38が上昇する。積載トレイ38の上昇によって、積載トレイ38上のシートの最上面が送出ローラ51に当接し、シートの最上面によって送出ローラ51が押し上げられてアーム部材55が図中反時計方向上向きに回転する。そして、
図6(a)に示すように第1のセンサフラグFG1が第1の上面検出センサS1に検出(ON)され、最上位シートが第1の高さ位置Ph1に到達したことが検出されると、昇降モータMT3を停止、逆転する(ST03-ST04)。これによって、積載トレイ38が下降してシートの最上面が下方に移動する。このシート最上面の下方への移動に追従して送出ローラ51が下方に移動することで、アーム部材55が図中時計方向下向きに回転する。そして、第1のセンサフラグFG1が第1の上面検出センサS1に検出しなくなった(OFF)時点で昇降モータMT3を停止する(ST05-ST06)。これによって、
図6(b)に示すようにシートの最上面が第1の送出範囲の下限位置P1bに位置付けられ、この状態で待機する。
【0048】
一方、積載トレイ38上のシートが薄紙である場合、昇降モータMT1を正転駆動する(ステップST07)。これによって巻取プーリー47が回転してワイヤー46を巻き取り、積載トレイ38が上昇する。積載トレイ38の上昇によって、積載トレイ38上のシートの最上面が送出ローラ51に当接し、シートの最上面によって送出ローラ51が押し上げられてアーム部材55が図中反時計方向上向きに回転する。そして、
図7(a)に示すように第2のセンサフラグFG2が第2の上面検出センサS2に検出(ON)され、最上位シートが第2の高さ位置Ph2に到達したことが検出されると、昇降モータMT3を停止、逆転する(ST08-ST09)。これによって、積載トレイ38が下降してシートの最上面が下方に移動する。このシート最上面の下方への移動に追従して送出ローラ51が下方に移動することで、アーム部材55が図中時計方向下向きに回転する。そして、第2のセンサフラグFG2が第2の上面検出センサS2に検出しなくなった(OFF)時点で昇降モータMT3を停止する(ST10、ST06)。これによって、
図7(b)に示すようにシートの最上面が第2の送出範囲の下限位置P2bに位置付けられ、この状態で待機する。
【0049】
なお、上述の実施の形態では、収納庫32を装着後の積載トレイ38上の最上位シートの待機する位置を第1の送出範囲の下限位置P1b、または第2の送出範囲の下限位置P2bとしたが、最上位シートの待機する位置を後述する第1の送出範囲の上限位置P1a、または第2の送出範囲の上限位置P2aとしてもよい。また、送出ローラ51が接触しない任意の位置に移動させて待機させるようにしてもよい。
【0050】
ここで、本実施形態では、薄紙とは坪量で120g/m2よりも小さいシートであり、厚紙とは坪量で120g/m2以上のシートとしている。また、本実施形態において、積載トレイ38上のシートが薄紙であるか否かは、使用者が事前にパネル200から入力したシート種類に係る情報を、画像形成装置1を介して取得し、取得したシート種類に係る情報に基づいて制御部100が判断する。
【0051】
次に、給紙動作及び給紙動作中の積載トレイ38の上昇について、
図5のフローチャート図に基づいて説明する。先ずこの昇降動作は画像形成装置1から給紙指令を受信したことによって実行される。
【0052】
画像形成装置1から給紙指令を受信すると、積載トレイ38上のシートが厚紙か否かが判断される(ST20)。積載トレイ38上のシートが厚紙である場合、
図6(b)に示すように第1の上面検出センサS1がOFF、すなわち第1のセンサフラグFG1を検出していなければ、昇降モータMT1を正転駆動する(ST21-ST22)。これによって巻取プーリー47が回転してワイヤー46を巻き取り、積載トレイ38が上昇し、シートの最上面が送出ローラ51を押し上げ、アーム部材55が図中反時計方向上向きに回転する。そして、
図6(a)に示すように最上位シートが第1の高さ位置Ph1に到達し、第1のセンサフラグFG1が第1の上面検出センサS1に検出(ON)されると、第1の上面検出センサS1がONした時点から積載トレイ38を一定距離上昇させて昇降モータMT3を停止する(ST23-ST25)。これによって、
図6(c)に示すようにシートの最上面は第1の送出範囲の上限位置P1aに移動する。
【0053】
その後に給送処理が実行され、積載トレイ38上のシートが画像形成装置1に向かって給送する(ST26)。そして、給送処理が終了すると、給送されたシートが1ジョブにおける最終のシートとか否かが確認され、最終シートでなければ、ステップ20(ST20)に戻り次シートの給送動作を実行する(ST27、ST20)。一方、最終シートであれば給紙動作を終了する。
【0054】
なお、上述したステップ21(ST21)で第1の上面検出センサS1がOFFでない場合、すなわちONである場合は、積載トレイ38を昇降させることなく位置を保持したままで給送処理及びそれ以降の処理を実行する(ST26-ST27)。
【0055】
次に、ステップ20(ST20)で積載トレイ38上のシートが厚紙以外、すなわち薄紙である場合、
図7(b)に示す第2の上面検出センサS2がOFFであれば、昇降モータMT1を正転駆動する(ST31-ST32)。これによって、積載トレイ38が上昇し、シートの最上面が送出ローラ51を押し上げ、アーム部材55が図中反時計方向上向きに回転する。そして、
図7(a)に示すように第2のセンサフラグFG2が第2の上面検出センサS2に検出(ON)されると、第2の上面検出センサS2がONした時点から積載トレイ38を一定距離上昇させて昇降モータMT3を停止する(ST33-ST34、ST25)。これによって、
図7(c)に示すようにシートの最上面は第2の送出範囲の上限位置P2aに移動する。
【0056】
その後に給送処理が実行され、積載トレイ38上のシートが画像形成装置1に向かって給送する(ST26)。そして、給送処理が終了すると、給送されたシートが1ジョブにおける最終のシートとか否かが確認され、最終シートでなければ、ステップ20(ST20)に戻り次シートの給送動作を実行する(ST28-ST28)。一方、最終シートであれば給紙動作を終了する。
【0057】
なお、上述したステップ31(ST31)で第2の上面検出センサS2がOFFでない場合、すなわちONである場合は、積載トレイ38を昇降させることなく位置を保持したままで給送処理及びそれ以降の処理を実行する(ST26-ST27)。
【0058】
上述の給紙動作によれば、実施の形態では、厚紙の場合は送出ローラ51によって積載トレイ38上のシートが順次送り出され、最上位シートが第1の下限位置P1bにまで低くなると昇降トレイ38を上昇して最上位シートを第1の上限位置P1aに移動させる。これによって、積載トレイ38上のシートの最上位は常に第1の送出範囲ER1内に保持される。薄紙の場合は送出ローラ51によって積載トレイ38上のシートが順次送り出され、最上位シートが第2の下限位置P2bにまで低くなると昇降トレイ38を上昇して最上位シートを第2の上限位35置P2aに移動させる。これによって、積載トレイ38上のシートの最上位は常に第2の送出範囲ER2内に保持される。
【0059】
なお、本実施の形態では、第1の送出範囲ER1よりも低い位置に第2の送出範囲ER2を設定したが、第1の送出範囲ER1の下方の一部分と第2の送出範囲ER2の上方の一部分が重なるように第1の下限位置P1b、第2の上限位置P2aを設定してもよい。
【0060】
上述の実施の形態によれば、薄紙は、送出ローラ51による送出範囲ER2を低い位置に設定したので、シートの先端がシートガイド58の上向き傾斜面の低い位置から傾斜面に沿って斜めに押し上げられつつ、送り出される。それによって、シートガイド58で捌かれて送り出すことができる。また、厚紙は、送出ローラ51による送出範囲ER1を高い位置に設定したので、シートガイド58の傾斜面による送り出し負荷が低減され、送り出し不良を抑えることができる。
【0061】
上述の実施の形態では、第1、第2の上面検出センサS1、S2の2つを用いて、第1、第2の送出範囲ER1、ER2内に最上位シートを位置付けるように積載トレイ38の上昇を制御したが、他の実施の形態として第1の上面検出センサS1のみを用いて2つの送出範囲内に最上位シートを位置付けるようにすることもできる。
【0062】
具体的に他の実施の形態を説明すると、厚紙の場合は、上述の実施の形態と同様に上面検出センサS1がOFFの状態で積載トレイ38が上昇させ、第1のセンサフラグFG1が第1の上面検出センサS1を検出(ON)した時点から積載トレイ38を一定距離上昇させて停止する。そして、給紙処理にて送出ローラ51によってシートが順次送り出されて最上位シートの位置が低くなり、第1の上面検出センサS1がOFF、すなわち第1のセンサフラグFG1が第1の上面検出センサS1で検出されなくなると、積載トレイ38が上昇させ、第1の上面検出センサS1がONした時点から積載トレイ38を一定距離上昇させて停止する。
【0063】
薄紙の場合は、上面検出センサS1がOFFの状態で積載トレイ38が上昇させ、第1のセンサフラグFG1が第1の上面検出センサS1を検出(ON)した時点で積載トレイ38を停止する。その後、給紙処理にて送出ローラ51によってシートを送り出す。そして、所定の枚数のシートが送り出されると積載トレイ38を上昇させ、第1のセンサフラグFG1が第1の上面検出センサS1を検出(ON)した時点で積載トレイ38を停止する。
【0064】
このように、薄紙のときは、所定の枚数が送り出されたことによって、積載トレイ38を第1のセンサフラグFG1が第1の上面検出センサS1を検出(ON)する位置まで上昇させることで第1のセンサフラグFG1、第1の上面検出センサS1を設けただけで、シートの種類に応じて異なるシートの送出範囲からシートを送り出すことが可能となり、上述の実施の形態と同一な効果を得ることができる。
【0065】
なお、上述した実施の形態及び他の実施の形態では、厚紙、薄紙で最上位シートの高さ方向における送出範囲を異なる範囲としてが、厚紙、薄紙に特定するものでなく、例えばシートの材質などの多様なシートの種類に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 画像形成装置
2 シート給紙装置
33 分離給紙機構
38 積載トレイ
51 送出ローラ
52 給紙ローラ
53 分離ローラ
54 搬送ローラ対
55 アーム部材
58 シートガイド
MT1 給紙モータ
S1 第1の上面検出センサ
S2 第2の上面検出センサ
FG1 第1のセンサフラグ
FG2 第2のセンサフラグ