(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037108
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】大環状ビスピリジニウム化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 471/18 20060101AFI20230308BHJP
C07D 498/18 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C07D471/18
C07D498/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143645
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005980
【氏名又は名称】三菱製紙株式会社
(72)【発明者】
【氏名】住岡 孝一
【テーマコード(参考)】
4C065
4C072
【Fターム(参考)】
4C065AA09
4C065BB09
4C065CC10
4C065DD04
4C065DD05
4C065EE03
4C065HH01
4C065JJ01
4C065KK01
4C065LL01
4C065PP01
4C065QQ02
4C072AA03
4C072BB03
4C072CC02
4C072CC04
4C072CC12
4C072EE09
4C072FF06
4C072GG01
4C072JJ02
4C072UU01
4C072UU02
4C072UU10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】新規大環状ビスピリジニウム化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される大環状ビスピリジニウム化合物。
(一般式(1)において、L
1、L
2は水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる単独または複数の原子により構成される基の組み合わせを表す。但し、ピリジニウム環の炭素原子と窒素原子およびL
1、L
2で構成される環は26員環以上であり、かつL
1はピリジニウム環の3位または4位で結合しているものとする。X
-はカウンターアニオンを表す。nは分子内の正荷電を中和するのに必要な数値を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される大環状ビスピリジニウム化合物。
【化1】
(一般式(1)において、L
1、L
2は水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる単独または複数の原子により構成される基の組み合わせを表す。但し、ピリジニウム環の炭素原子と窒素原子およびL
1、L
2で構成される環は26員環以上であり、かつL
1はピリジニウム環の3位または4位で結合しているものとする。X
-はカウンターアニオンを表す。nは分子内の正荷電を中和するのに必要な数値を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大環状化合物に関するものであり、詳しくはビスピリジニウム構造を分子内に有する新規大環状ビスピリジニウム化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
種々の基本構造を有する大環状化合物が、医薬、香料、農薬等の様々な分野において有用な活性を示すことが知られており、うち大環状構造の中にピリジン部位が組み込まれた化合物が、例えば特許文献1~4などに開示されている。しかし、大環状構造の中にピリジニウム部位が組み込まれた化合物は知られていない。
【0003】
一方、ビスピリジニウム構造を部分構造として有する化合物が、例えば特許文献5~7などに開示されているが、ビスピリジニウム構造を有する大環状化合物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-137826号公報
【特許文献2】特表2017-509685号公報
【特許文献3】特表2019-530660号公報
【特許文献4】特表2020-524701号公報
【特許文献5】特開2001-226354号公報
【特許文献6】特開2008-94740号公報
【特許文献7】特開2008-214268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、新規大環状ビスピリジニウム化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、下記一般式(1)で表される化合物によって達成される。
【0007】
【0008】
一般式(1)において、L1、L2は水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる単独または複数の原子により構成される基の組み合わせを表す。但し、ピリジニウム環の炭素原子と窒素原子およびL1、L2で構成される環は26員環以上であり、かつL1はピリジニウム環の3位または4位に結合しているものとする。X-はカウンターアニオンを表す。nは分子内の正荷電を中和するのに必要な数値を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、新規大環状ビスピリジニウム化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一般式(1)で表される化合物について説明する。一般式(1)において、L1、L2は水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる単独または複数の原子により構成される基の組み合わせを表す。これらの基の例としては、アルカンジイル基(例えばメチレン基、エチレン基、プロパンジイル基、ブタンジイル基、ペンタンジイル基、ヘキサンジイル基、オクタンジイル基、デカンジイル基、ドデカンジイル基、ペンタデカンジイル基などが挙げられる。なお以上の基は可能であるならば分枝構造であってもよい)、エーテル基、スルフィド基、ジスルフィド基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、スルホンアミド基などがある。アルカンジイル基の場合は、単独でL2を構成することができる。その他の基でL1、L2を構成する場合は、アルカンジイル基とそれ以外の基の組み合わせとなる。
【0011】
上記一般式(1)において、ピリジニウム環の炭素原子と窒素原子およびL1、L2で構成される環は26員環以上であり、かつL1はピリジニウム環の3位または4位に結合している。26員環未満である場合、環化反応の速度が遅くなり、オリゴマー化反応が主反応となって所望の大環状化合物を得ることができない。またL1がピリジニウム環の2位で結合している場合も、オリゴマー化反応が主反応となって所望の大環状化合物を得ることができない。
【0012】
なお一般式(1)におけるピリジニウム環およびL1、L2は置換基を有していてもよい。その例としては、例えば、脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、アリル基、ブテニル基などのアルケニル基、プロパルギル基などのアルキニル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基などのアラルキル基などが挙げられる。なお以上の基は可能であるならば分枝構造であってもよい)、芳香族基(例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、フルオレン基など)、複素環基(例えば、インドリル基、ピリジル基、フリル基、チエニル基など)、アミノ基、ビニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ホスホン酸基、スルホ基、ハロゲン原子などがある。なおこれらの置換基は、複数であってもそれぞれが組み合わさったものであってもよい。
【0013】
一般式(1)においてX-はカウンターアニオンを表す。その例として、1価のアニオンとしてはハロゲンイオン(例えば、クロリド、ブロミド、ヨージドなど)、アルキル硫酸イオン(例えば、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオンなど)、有機スルホン酸イオン(例えば、メタンスルホナート、p-トルエンスルホナートなど)、過塩素酸イオン、BF4
-、PF6
-などがある。また2価のアニオンとしては、亜硫酸イオン、硫酸イオンなどがあり、3価のアニオンとしては、リン酸イオンなどがある。nは分子内の正荷電を中和するのに必要な数値を表す。
【0014】
以下に本発明の一般式(1)で表される化合物の具体例を記載する。なお本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
これらの化合物は、一般的には下記一般式(2)と一般式(3)で表される中間体を反応させることによって合成される。なお一般式(2)と一般式(3)におけるL1、L2は前記一般式(1)におけるL1、L2と同義であり、一般式(3)におけるYは、ハロゲン原子、スルホン酸エステルなどの脱離基である。
【0025】
【実施例0026】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明する。なお以下の実施例および比較例においては、下記中間体群を使用している。
【0027】
【0028】
【0029】
(実施例1)
<BP-1(26員環)の合成>
中間体A0.27g、1,12-ジブロモドデカン0.33g、スルホラン15mlを混合し、浴温100℃にて72時間攪拌した。放冷後酢酸エチル90mlを加えて、沈降したタールを分取した。このタールにメタノール2mlを加えて溶解し、その中へアセトン40mlを加えてガム状の沈澱物を得た。この沈澱物をよくすりつぶして濾取し、フィルター上でアセトン洗浄後、デシケーター中で乾燥して、0.45gのBP-1を得た。
1H-NMR(400MHz,TMS/CD3OD):1.25~1.55ppm(m,16H)、1.85ppm(m,4H)、2.08ppm(m,4H)、3.72ppm(t,4H)、4.75ppm(t,4H)、4.82ppm(s,4H)、8.15ppm(t,2H)、8.60ppm(d,2H)、9.01ppm(d,2H)、9.11ppm(s,2H)
【0030】
(実施例2)
<BP-2(27員環)の合成>
中間体B0.28g、1,12-ジブロモドデカン0.33g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例1と同様の手法にて0.51gのBP-2を得た。
1H-NMR(400MHz,TMS/CD3OD):1.25~1.55ppm(m,16H)、2.01ppm~2.15ppm(m,6H)、3.60ppm(t,4H)、4.77ppm(t,4H)、8.52ppm(d,4H)、9.25ppm(d,4H)
【0031】
(実施例3)
<BP-8(28員環)の合成>
中間体C0.41g、1,4-ジブロモブタン0.22g、スルホラン15mlを混合し、浴温100℃にて72時間攪拌した。放冷後アセトン90mlを加えて、沈降したタールを分取した。このタールにメタノール2mlを加えて溶解し、その中へアセトン40mlを加えてガム状の沈澱物を得た。この沈澱物をよくすりつぶして濾取し、フィルター上でアセトン洗浄後、デシケーター中で乾燥して、0.50gのBP-8を得た。
1H-NMR(400MHz,TMS/CD3OD):1.25~1.45ppm(m,16H)、1.68ppm(m,4H)、2.24ppm(m,4H)、3.45ppm(t,4H)、4.85ppm(t,4H)、8.45ppm(d,4H)、9.25ppm(d,4H)
1H-NMR(400MHz,TMS/DMSO-d6):1.22~1.42ppm(m,16H)、1.58ppm(m,4H)、2.02ppm(m,4H)、4.73ppm(t,4H)、8.45ppm(d,4H)、9.25ppm(m,6H)
【0032】
(実施例4)
<BP-9(46員環)の合成>
中間体A0.27g、中間体D0.64g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例1と同様の手法にて0.72gのBP-9を得た。
1H-NMR(400MHz,TMS/CD3OD):1.25~1.40ppm(m,32H)、1.48ppm(m,4H)、1.58ppm(m,4H)、1.80ppm(m,4H)、2.01ppm(m,4H)、2.15ppm(t,4H)、3.13ppm(t,4H)、3.66ppm(t,4H)、4.65ppm(t,4H)、4.77ppm(s,4H)、8.10ppm(t,2H)、8.55ppm(d,2H)、8.94ppm(d,2H)、9.02ppm(s,2H)
【0033】
(実施例5)
<BP-15(58員環)の合成>
中間体E0.41g、中間体F0.70g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例3と同様の手法にて0.98gのBP-15を得た。
1H-NMR(400MHz,TMS/CD3OD):1.25~1.50ppm(m,60H)、1.58ppm(m,4H)、1.68ppm(m,4H)、2.01ppm(m,4H)、2.15ppm(t,4H)、3.13ppm(t,4H)、3.45ppm(t,4H)、4.70ppm(t,4H)、8.20ppm(t,2H)、8.94ppm(d,2H)、9.13ppm(d,2H)、9.45ppm(s,2H)
【0034】
(実施例6)
<BP-17(34員環)の合成>
中間体G0.33g、中間体H0.45g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例3と同様の手法にて0.55gのBP-17を得た。
1H-NMR(400MHz,TMS/DMSO-d6):1.25~1.45ppm(m,24H)、1.57ppm(m,4H)、3.12ppm(t,4H)、5.48ppm(s,4H)、8.25ppm(t,2H)、8.60ppm(t,2H)、8.98ppm(d,2H)、9.08ppm(d,2H)、9.14ppm(t,2H)、9.39ppm(s,2H)
【0035】
(実施例7)
<BP-18(48員環)の合成>
中間体E0.41g、中間体I0.56g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例3と同様の手法にて0.61gのBP-18を得た。
1H-NMR(400MHz,TMS/CD3OD):1.25~1.50ppm(m,44H)、1.60~1.75ppm(m,8H)、2.08ppm(m,4H)、2.15ppm(t,4H)、3.14ppm(t,4H)、3.45ppm(t,4H)、4.72ppm(t,4H)、8.21ppm(t,2H)、8.92ppm(d,2H)、9.13ppm(d,2H)、9.44ppm(s,2H)
【0036】
(比較例1)
<中間体Aと1,4-ジブロモブタン(18員環)の反応>
中間体A0.27g、1,4-ジブロモブタン0.22g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例1と同様の手法で0.25gのサンプルを得た。得られたサンプルについて1H-NMR(400MHz,TMS/CD3OD)にて構造確認を行ったが、中間体Aと1,4-ジブロモブタンの交互反応によるオリゴマー混合物であることが判明し、大環状ビスピリジニウム化合物を得ることができなかった。
【0037】
(比較例2)
<中間体Jと1,4-ジブロモブタン(22員環)の反応>
中間体J0.35g、1,4-ジブロモブタン0.22g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例3と同様の手法で0.32gのサンプルを得た。得られたサンプルについて1H-NMR(400MHz,TMS/DMSO-d6)にて構造確認を行ったところ、大環状ビスピリジニウム化合物の存在は確認できたものの、主成分は中間体Jと1,4-ジブロモブタンの交互反応によるオリゴマー混合物であった。
【0038】
(比較例3)
<中間体Aと中間体L(23員環)の反応>
中間体A0.27g、中間体L0.32g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例1と同様の手法で0.33gのサンプルを得た。得られたサンプルについて1H-NMR(400MHz,TMS/CD3OD)にて構造確認を行ったところ、大環状ビスピリジニウム化合物の存在は確認できたものの、主成分は中間体Aと中間体Lの交互反応によるオリゴマー混合物であった。
【0039】
(比較例4)
<中間体Kと1,4-ジブロモブタン(24員環)の反応>
中間体K0.35g、1,4-ジブロモブタン0.22g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例3と同様の手法で0.38gのサンプルを得た。得られたサンプルについて1H-NMR(400MHz,TMS/DMSO-d6)にて構造確認を行ったところ、大環状ビスピリジニウム化合物:中間体Kと1,4-ジブロモブタンの交互反応オリゴマー混合物=約1:3の混合物であった。
【0040】
(比較例5)
<中間体Bと1,12-ジブロモドデカン(25員環)の反応>
中間体B0.28g、1,12-ジブロモドデカン0.33g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例3と同様の手法で0.41gのサンプルを得た。得られたサンプルについて1H-NMR(400MHz,TMS/CD3OD)にて構造確認を行ったところ、大環状ビスピリジニウム化合物:中間体Bと1,12-ジブロモドデカンの交互反応オリゴマー混合物=約1:1の混合物であった。
【0041】
(比較例6)
<中間体Mと中間体F(2位置換ピリジン)の反応>
中間体M0.41g、中間体F0.70g、スルホラン15mlを混合し、以下実施例3と同様の手法で0.44gのサンプルを得た。得られたサンプルについて1H-NMR(400MHz,TMS/DMSO-d6)にて構造確認を行ったが、中間体Mと中間体Fの交互反応によるオリゴマー混合物であることが判明し、大環状ビスピリジニウム化合物を得ることができなかった。