(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037126
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
A47C 1/025 20060101AFI20230308BHJP
B60N 2/235 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A47C1/025
B60N2/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143681
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095795
【弁理士】
【氏名又は名称】田下 明人
(74)【代理人】
【識別番号】100143454
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 克彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 風太
(72)【発明者】
【氏名】大西 崇弘
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA17
(57)【要約】
【課題】ベースプレート及びギヤプレート間に配設される内部部品の軸方向ズレを抑制可能な構成を提供する。
【解決手段】付勢部材80は、一端部81及び他端部82と一端部81及び他端部82を連結する弾性変形可能な連結部83とを有し、一端部81がギヤプレート40側から係合しているカム70をロック方向に付勢するように形成され、カムレバー90は、カム70のギヤプレート40側に組み付けられて、カム70のロック解除方向の回動時に各ロックギヤ61,62のギヤプレート40側に設けられる突起61b,62bを利用して外歯61a,62aと内歯41との噛合を解除するように各ロックギヤ61,62を移動させるように形成される。そして、連結部83は、一端部81がカム70に係合している状態で、ギヤプレート40に押圧されてカムレバー90に押圧されない第1曲げ部84及び第2曲げ部85とカムレバー90に押圧されてギヤプレート40に押圧されない第3曲げ部86とを有するように形成される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置であって、
前記第1の部材に取り付けられるベースプレートと、
前記第2の部材に取り付けられるとともに前記ベースプレートに対して相対回動可能に組み付けられて内歯を有するギヤプレートと、
前記ベースプレートの前記ギヤプレート側の面に形成される案内面を利用して半径方向に摺動可能にガイドされるように組み付けられ、前記内歯と噛合可能な外歯を有するロックギヤと、
ロック方向への回動時に前記ロックギヤに対して半径方向内側から当接することで前記外歯を前記内歯に噛合させるカムと、
一端部及び他端部と前記一端部及び前記他端部を連結する弾性変形可能な連結部とを有し、前記一端部が前記ギヤプレート側から係合している前記カムを前記ロック方向に付勢する付勢部材と、
前記カムの前記ギヤプレート側に組み付けられて、前記カムのロック解除方向の回動時に前記ロックギヤの前記ギヤプレート側に設けられる係合部を利用して前記外歯と前記内歯との噛合を解除するように前記ロックギヤを移動させるカムレバーと、
を備え、
前記連結部は、前記一端部が前記カムに係合している状態で、前記ギヤプレートに押圧されて前記カムレバーに押圧されない部位と前記カムレバーに押圧されて前記ギヤプレートに押圧されない部位とを有するように形成されることを特徴とするリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、相対的に傾動する第1の部材と第2の部材との傾動角度を調整するリクライニング装置として、下記特許文献1に開示される車両用のリクライニング装置が知られている。このリクライニング装置では、リクライニング操作レバーの操作に応じて回動するカムと4つのロックギヤとの当接状態に応じて、各ロックギヤがギヤプレートに噛合するロック状態とその噛合を解除するアンロック状態とを切り替えるように構成されている。
【0003】
また、ロックギヤと固定ガイドとの間には、摺動可能な可動ガイドがそれぞれ介在しており、これら可動ガイドは、外方端から内方端に向かって漸次幅が狭く形成され、可動ガイドの摺動面のうち、ロックギヤ側の摺動面はロックギヤの移動方向に平行に設けられ、固定ガイド側の摺動面は前記ロックギヤ側の摺動面に対し傾斜して設けられている。そして、各可動ガイドにはそれぞれスプリングが係合され、当該スプリングによってベースプレートの内方向へと付勢されている。このため、可動ガイドはロックギヤと固定ガイドとの間に常に食い込んだ状態となるため、これら固定ガイドとロックギヤと可動ガイドとは相互に緊合して、各部材間における隙間が消滅することとなる。これにより、シートバックの前後方向へのガタが確実に解消されることとなり、確実なロック及びその解除を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のように、ベースプレートとギヤプレートとの間に形成されるキャビティ(空間)内にロックギヤ及び可動ガイド、カム、スプリング等の内部部品が配設される構成では、設計上、一部の部品間に軸方向の隙間が設けられる。部品寸法のばらつき等が生じた場合であっても、組み付け時の内部部品の挟み込み等を防止するためである。
【0006】
しかしながら、上述のような隙間があるため、衝突時などの外力が作用する際には、内部部品が軸方向にズレてしまい、そのズレ量によっては、例えば、ロック解除操作時でのカムとロックギヤとの接触面積が小さくなるためにその接触部位が圧損等してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ベースプレート及びギヤプレート間に配設される内部部品の軸方向ズレを抑制可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の発明は、
相対的に傾動する第1の部材(11,11a)と第2の部材(12,12a)との傾動角度を調整するリクライニング装置(20)であって、
前記第1の部材に取り付けられるベースプレート(30)と、
前記第2の部材に取り付けられるとともに前記ベースプレートに対して相対回動可能に組み付けられて内歯(41)を有するギヤプレート(40)と、
前記ベースプレートの前記ギヤプレート側の面に形成される案内面(33a,33b,34a,34b)を利用して半径方向に摺動可能にガイドされるように組み付けられ、前記内歯と噛合可能な外歯(61a,62a)を有するロックギヤ(61,62)と、
ロック方向への回動時に前記ロックギヤに対して半径方向内側から当接することで前記外歯を前記内歯に噛合させるカム(70)と、
一端部(81,81a)及び他端部(82,82a)と前記一端部及び前記他端部を連結する弾性変形可能な連結部(83,83a)とを有し、前記一端部が前記ギヤプレート側から係合している前記カムを前記ロック方向に付勢する付勢部材(80,80a)と、
前記カムの前記ギヤプレート側に組み付けられて、前記カムのロック解除方向の回動時に前記ロックギヤの前記ギヤプレート側に設けられる係合部(61b,62b)を利用して前記外歯と前記内歯との噛合を解除するように前記ロックギヤを移動させるカムレバー(90)と、
を備え、
前記連結部は、前記一端部が前記カムに係合している状態で、前記ギヤプレートに押圧されて前記カムレバーに押圧されない部位(84,85,84a,85a)と前記カムレバーに押圧されて前記ギヤプレートに押圧されない部位(86,86a)とを有するように形成されることを特徴とする。
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明では、付勢部材は、一端部及び他端部と一端部及び他端部を連結する弾性変形可能な連結部とを有し、一端部がギヤプレート側から係合しているカムをロック方向に付勢するように形成され、カムレバーは、カムのギヤプレート側に組み付けられて、カムのロック解除方向の回動時にロックギヤのギヤプレート側に設けられる係合部を利用して外歯と内歯との噛合を解除するようにロックギヤを移動させるように形成される。そして、連結部は、一端部がカムに係合している状態で、ギヤプレートに押圧されてカムレバーに押圧されない部位とカムレバーに押圧されてギヤプレートに押圧されない部位とを有するように形成される。
【0010】
これにより、付勢部材の連結部によってカムレバーとギヤプレートとが互いに離間する方向に付勢されるため、このように付勢されるカムレバーによってカム及びロックギヤがベースプレートに向けて付勢される。このような付勢によって、付勢部材、カムレバー、カム、ロックギヤ等の内部部品間の軸方向の隙間が無くなるか小さくなるので、軸方向付勢用の部材を新たに追加することなく、ベースプレート及びギヤプレート間に配設される内部部品の軸方向ズレを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のリクライニング装置が設置される車両用シートの構成概要を示す側面図である。
【
図4】
図2に示すX1-X1線相当の切断面による断面図である。
【
図5】
図2に示すX2-X2線相当の切断面による断面図である。
【
図7】
図7(A)は、
図6の付勢部材の平面図であり、
図7(B)は、
図6の付勢部材の側面図であり、
図7(C)は、
図6の付勢部材の正面図であり、
図7(D)は、
図7(A)に示すX3-X3線相当の切断面を拡大して示す拡大断面図である。
【
図8】
図7(C)の連結部の一部を拡大して示す説明図である。
【
図9】第1曲げ部及び第2曲げ部にてギヤプレートに押圧され第3曲げ部にてカムレバーに押圧される連結部の組み付け状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係るリクライニング装置の一実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、本発明のリクライニング装置20を備えた車両用シート10は、シートクッション11とシートバック12を主な構成要素とし、シートクッション11にはシートブラケット(下側ブラケット)11aが、シートバック12にはシートバックブラケット(上側ブラケット)12aがそれぞれ固定されている。
【0013】
下側ブラケット11a及び上側ブラケット12aは、ラウンドリクライニングユニット21の相対回動する部位にそれぞれ固定されることで、互いに相対回動可能に連結されている。これにより、シートクッション11に対するシートバック12の傾動角度の調整が可能となる。なお、シートクッション11及び下側ブラケット11aは、「第1の部材」の一例に相当し、シートバック12及び上側ブラケット12aは、「第2の部材」の一例に相当し得る。
【0014】
ラウンドリクライニングユニット21の中央のセンターシャフト22にはリクライニング操作レバー23が装着されている。ラウンドリクライニングユニット21、センターシャフト22及びリクライニング操作レバー23によりリクライニング装置20が構成されている。リクライニング操作レバー23を上方に引くとリクライニング装置20がアンロック状態となりシートバック12の傾動角度の調整が可能となる。ここで、シートバック12を後方に倒した
図1にて示す角度Aの範囲は、リクライニング操作レバー23から手指を離すとその時の角度位置にシートバック12がロックされる傾度調整範囲であり、シートバック12を前方に倒した
図1にて示す角度Bの範囲は、リクライニング操作レバー23から手指を離してもアンロックの状態が持続するロックフリー状態に対応する自由回動範囲である。
図1から判るように、シートバック12は、シートクッション11と接する前倒しの位置からシートクッション11とフラットになる後倒しの位置まで回動可能である。このようなリクライニング装置20の構造について以下説明する。
【0015】
図2及び
図3に示すように、ラウンドリクライニングユニット21は、略円板状のベースプレート30と略お椀形状のギヤプレート40を重ね合わせてカバーブラケット50を組み付けることで、ベースプレート30及びギヤプレート40が相対回動可能に保持されるとともに軸方向への相対移動が抑制されるように構成されている。なお、便宜上、
図2及び
図3では、センターシャフト22及びリクライニング操作レバー23の図示を省略しており、
図4及び
図5では、ギヤプレート40は内歯41近傍のみ図示して、カバーブラケット50の図示を省略している。
【0016】
ベースプレート30とギヤプレート40の間にはキャビティ(空間)Cが形成される。このキャビティC内には、
図2~
図5に示すように、一対の第1ロックギヤ61と一対の第2ロックギヤ62の計4枚のロックギヤ、中央のカム70、2つの付勢部材80及び略円板状のカムレバー90等のロック、アンロックのための部材が配設されている。なお、
図2において、図面左側を軸方向一側、図面右側を軸方向他側として、以下説明する。
【0017】
ベースプレート30は、軸方向一側の側面(以下、取付面30aともいう)に複数の突起30bが形成されており、これら各突起30bを下側ブラケット11aの係合穴(図示略)に係合させることで、当該下側ブラケット11aに取り付けられる。また、
図3及び
図4に示すように、ベースプレート30には、軸方向他側(ギヤプレート40側)の側面に、各ロックギヤ61,62を半径方向に案内するための4つの案内凸部31、32、31、32が形成されている。なお、以下の説明では、
図4に示すように、第1ロックギヤ61を案内するための一対の案内面のうち、案内凸部31の案内面を一方の第1案内面33aとし、案内凸部32の案内面を他方の第1案内面33bとする。また、第2ロックギヤ62を案内するための一対の案内面のうち、案内凸部32の案内面を一方の第2案内面34aとし、案内凸部31の案内面を他方の第2案内面34bとする。
【0018】
ベースプレート30には、センターシャフト22の軸部(図示略)が挿通する挿通孔35が形成されている。また、ベースプレート30の軸方向他側の側面には、案内凸部31,32の内方となる位置に、円形状の凹部36が挿通孔35に対して同軸的となるように設けられている。凹部36は、
図2に示すように、カム70の軸方向一側が相対回動可能に入り込むように形成されている。この凹部36の深さは、許容されるカム70とロックギヤ61,62の軸方向ずれに等しくなるように設定することができる。
【0019】
ギヤプレート40の内周面には、全周にわたって内歯41が形成されている。ギヤプレート40は、その背面(軸方向他側の面)に複数の突起40aが形成されており、これら各突起40aを上側ブラケット12aの係合穴(図示略)に係合させることで、当該上側ブラケット12aに取り付けられる。
【0020】
また、ギヤプレート40の内周面には、内歯41と同軸的に形成された円弧状段部が180°間隔に2つ配置されている。当該円弧状段部は、上述したロックフリー状態を実現するためのもので、第1ロックギヤ61の突起63(後述する)が内周側から当接する角度範囲が上記自由回動範囲に対応するように形成されている。
【0021】
図3及び
図4に示すように、両第1ロックギヤ61及び両第2ロックギヤ62の外周側には、ギヤプレート40の内歯41と噛合可能な外歯61a、62aがそれぞれ形成されている。各ロックギヤ61,62は、ベースプレート30の案内面33a,33b,34a,34bを利用して半径方向に摺動可能にガイドされるように組み付けられている。具体的には、両第1ロックギヤ61は、案内凸部31の一方の第1案内面33aと案内凸部32の他方の第1案内面33bに案内される可動ガイド37(後述する)とに案内されて半径方向にのみ摺動自在にそれぞれ支承されている。また、両第2ロックギヤ62は、案内凸部32の一方の第2案内面34aと案内凸部31の他方の第2案内面34bとに案内されて半径方向にのみ摺動自在にそれぞれ支承されている。
【0022】
また、両第1ロックギヤ61には、軸方向他側(ギヤプレート40側)に係合部として突出する突起61bがそれぞれ設けられ、両第2ロックギヤ62には、軸方向他側に係合部として突出する突起62bがそれぞれ設けられている。両突起61b及び両突起62bは、後述するように回動するカムレバー90によって案内されることで、各ロックギヤ61、62の半径方向移動を制御するように機能する。また、両第1ロックギヤ61には、突起61bの外側に突起63がそれぞれ設けられており、両突起63は、ギヤプレート40の円弧状段部に内周側から当接することで、内歯41と外歯61aとの噛合を解除した状態が維持されるように形成されている。
【0023】
可動ガイド37は、一方端から他方端に向かって漸次幅が狭くなるよう楔状に形成されており、第1ロックギヤ61と案内凸部32の他方の第1案内面33bとの間にて摺動可能にそれぞれ配置されている。両可動ガイド37には付勢部材80を係合するための係合穴37aが形成されており、この係合穴37aに付勢部材80を係合することで、当該付勢部材80によって両可動ガイド37がベースプレート30の内方向へとそれぞれ付勢されている。これにより、当該可動ガイド37は第1ロックギヤ61と他方の第1案内面33bとの間に常に食い込んだ状態となり、これら第1ロックギヤ61と他方の第1案内面33bと可動ガイド37とが相互に緊合して(堅く合わさって)、各部材間における回動方向の隙間が消滅する。そのため、シートバック12の前後方向におけるガタが解消されることとなる。
【0024】
ベースプレート30には、その凹部36を利用して、センターシャフト22の軸部を挿入するための貫通孔71が形成される板状のカム70が、回動可能に配設されている。カム70は、両ロックギヤ61の内側端面61c及び両ロックギヤ62の内側端面62cに対してそれぞれカム面72にて半径方向内側から当接し、回動軸となる上記軸部を中心に所定の状態に回動した際にロックギヤ61,62の外歯61a,62aをギヤプレート40の内歯41に噛合させるように形成されている。また、カム70には、ギヤプレート40側となる側面に、付勢部材80が係合する2つの係合穴73と軸方向他側に突出する2つの円柱状の突起74とが形成されている。
【0025】
図5に示すように、カム70は、2つの付勢部材80とそれぞれ係合することにより、ロック方向(
図4及び
図5にて時計方向)に強く付勢されている。これにより、カム70は、カム面72にて各ロックギヤ61、62の内側端面61c,62cに当接することで、上記両付勢部材80によるロック方向の付勢力により各ロックギヤ61、62を半径方向外側に強く付勢することとなる。
【0026】
カム70の貫通孔71には、センターシャフト22の軸部が挿入され、このセンターシャフト22を回動させることにより両付勢部材80の付勢力に抗してカム70をロック解除方向(
図4及び
図5にて反時計方向)に回動させることができるようになっている。
【0027】
付勢部材80は、弾性変形可能な線材バネとして形成されるもので、
図6及び
図7に示すように、カム70の係合穴73に係合する一端部81と、可動ガイド37の係合穴37aに係合する他端部82と、一端部81及び他端部82を連結する弾性変形可能な連結部83とを有するように構成される。
【0028】
連結部83は、その曲げ形状から、一端部81に連なる第1曲げ部84と、他端部82に連なる第2曲げ部85と、第1曲げ部84と第2曲げ部85との間に位置する第3曲げ部86とに区分けされる。
図7及び
図8に示すように、第1曲げ部84及び第2曲げ部85は、それぞれ中央ほど軸方向他側(ギヤプレート40側)に反るように曲げて形成されている。第3曲げ部86は、中央ほど軸方向一側(カムレバー90側)に反るように曲げて形成されている。より具体的には、連結部83は、第1曲げ部84及び第2曲げ部85の曲げ頂点と第3曲げ部86の曲げ頂点との軸方向距離(
図7(C)及び
図8の符号H参照)が、組み付け状態でのカムレバー90の軸方向他側の側面とギヤプレート40の軸方向一側の側面との軸方向距離よりも大きくなるように形成されている。なお、
図7(C)及び
図8では、連結部83の線径に相当する断面の軸方向(
図7(C)の上下方向)長さを符号hにて図示している。
【0029】
このように構成される付勢部材80は、
図5に示すように、一端部81にてカムレバー90が組み付けられたカム70の係合穴73に係合し、他端部82にて可動ガイド37の係合穴37aに係合した状態で、連結部83にてカムレバー90とギヤプレート40との双方から押圧されるようにして組み付けられる。より具体的には、
図9からわかるように、連結部83の第1曲げ部84及び第2曲げ部85にてギヤプレート40に常時押圧されてカムレバー90に押圧されず、連結部83の第3曲げ部86にてカムレバー90に常時押圧されてギヤプレート40に押圧されない組み付け状態となる。
【0030】
この組み付け状態では、カムレバー90及びギヤプレート40は、弾性変形する連結部83からの軸方向付勢力に応じて、互いに離間する方向に常時付勢されることになる。このため、付勢部材80は、本来の機能であるカム70をロック方向に付勢する機能と可動ガイド37を半径方向内側に付勢する機能とに加えて、カムレバー90及びギヤプレート40を離間する方向に付勢する機能を兼備するように構成される。
【0031】
図3及び
図5に示すように、カムレバー90には、カム70の両突起74にそれぞれ嵌合する貫通孔91と、2つのカム孔92及び2つのカム孔93とが設けられている。カムレバー90は、これら両貫通孔91と両突起74とをそれぞれ嵌合させ、両カム孔92に突起61bをそれぞれ挿通させ、両カム孔93に突起62bをそれぞれ挿通させた状態で、カム70のギヤプレート40側に組み付けられている。
【0032】
これにより、カムレバー90がカム70とともにロック解除方向に回動すると、カム孔92の内周縁が第1ロックギヤ61の突起61bにそれぞれ当接するとともにカム孔93の内周縁が両第2ロックギヤ62の突起62bにそれぞれ当接する。さらにカムレバー90がロック解除方向に回動すると、これら突起61b、突起62bが各カム孔92、93の内周縁により半径方向内側に付勢されて、各ロックギヤ61、62が半径方向内側に連動して移動することとなる。
【0033】
このように構成されるリクライニング装置20は、各ロックギヤ61、62及び可動ガイド37、カム70、カムレバー90及び両付勢部材80などの各内部部品をキャビティC内に配設して一体に組み付けたベースプレート30及びギヤプレート40の側周部をカバーブラケット50によりリングかしめをして一体化される。これにより、ベースプレート30及びギヤプレート40は、相対回動可能に保持されるとともに軸方向への相対移動が抑制されることとなる。
【0034】
そして、カム70の貫通孔71に軸部を挿入したセンターシャフト22に対してリクライニング操作レバー23を組み付けることで、
図2に示すリクライニング装置20が完成する。このように構成されるリクライニング装置20に対して、ベースプレート30の各突起30bを下側ブラケット11aの係合穴に係合させるとともに、ギヤプレート40の各突起40aを上側ブラケット12aの係合穴に係合させることで、シートクッション11及びシートバック12がリクライニング装置20により相対傾動可能に連結されることとなる。
【0035】
次に、上述ように構成される本実施形態に係るリクライニング装置20のアンロック状態、ロックフリー状態及びロック状態について、以下に説明する。
【0036】
(アンロック状態)
まず、リクライニング装置20におけるアンロック状態について説明する。
乗員がシートバック12の傾斜角度を調整するためロックを外す時は、リクライニング操作レバー23を操作してセンターシャフト22をロック解除方向に回動させる。すると、カム70は、センターシャフト22とともに両付勢部材80の付勢力に抗してロック解除方向に回動する。
【0037】
カム70がロック解除方向に回動することにより、カム70のカム面72と各ロックギヤ61、62のそれぞれの内側端面61c,62cとの当接が解除されて、各ロックギヤ61、62を半径方向外側へ付勢しているカム70による付勢力が解除される。これにより、各ロックギヤ61、62は半径方向内側に移動することが可能になり、ギヤプレート40の内歯41と各ロックギヤ61、62の外歯61a、62aとの噛合が解除可能状態となる。
【0038】
そして、カムレバー90がカム70とともにロック解除方向に回動することにより、カムレバー90の各カム孔92、93の内周縁が各ロックギヤ61、62の突起61b、62bに当接して、各ロックギヤ61、62を積極的に半径方向内側に移動させて内歯41と外歯61a、62aとの噛合が解除される。
【0039】
上述のように、内歯41と外歯61a、62aとの噛合が解除されると、ギヤプレート40の回動が自由になり、ラウンドリクライニングユニット21がアンロック状態になる。ラウンドリクライニングユニット21がアンロック状態になれば、リクライニング装置20がアンロック状態になり、シートバック12を後方に倒す場合には、当該シートバック12の傾斜角度を自由に調整可能な状態になる(
図1の角度A参照)。
【0040】
(ロックフリー状態)
次に、リクライニング装置20におけるロックフリー状態について説明する。
上述のようなアンロック状態において、シートバック12を前方に倒す場合には、ベースプレート30及びギヤプレート40が相対回動し、突起63がギヤプレート40の円弧状段部に当接可能な位置に両第1ロックギヤ61が移動する。この状態でリクライニング操作レバー23を緩めると、カム70が、両付勢部材80の付勢力によりロック方向に回動し、このカム70の回動により各ロックギヤ61、62が半径方向外側に付勢される。
【0041】
このとき、両第1ロックギヤ61の突起63がギヤプレート40の円弧状段部にそれぞれ当接するため、内歯41と外歯61a、62aとの噛合が解除された状態が維持される。このため、突起63がギヤプレート40の円弧状段部に当接する間、ベースプレート30及びギヤプレート40が相対回動するようにシートバック12を前方に倒しても、アンロック状態が維持されることとなる(
図1の角度B参照)。
【0042】
(ロック状態)
次に、リクライニング装置20におけるロック状態について説明する。
乗員によるシートバック12の傾斜角度の調整が終了すると、リクライニング操作レバー23を緩めることにより、カム70が、両付勢部材80の付勢力によりロック方向に回動する。
【0043】
この回動するカム70のカム面72が各ロックギヤ61、62のそれぞれの内側端面61c,62cに当接することにより、各ロックギヤ61、62が半径方向外側に付勢される。これにより、各ロックギヤ61、62の外歯61a、62aがギヤプレート40の内歯41に噛合するように半径方向外側へ移動する。そして、各ロックギヤ61、62の外歯61a、62aがギヤプレート40の内歯41に噛合することにより、ギヤプレート40の回動が制限され、リクライニング装置20がロック状態になる。
【0044】
次に、付勢部材80における連結部83の曲げ形状による効果について、
図9を参照して説明する。なお、
図9では、便宜上、2つの付勢部材80のうち一方のみを図示している。
リクライニング装置20は、軸方向が略水平になるように車両用シート10に組み込まれるため、上述のようなロック状態、アンロック状態、ロックフリー状態の遷移を繰り返す際に、キャビティC内の各内部部品に対して軸方向の力が作用する。また、衝突時などの外力が作用する際にも、各内部部品に対して軸方向の力が作用する。
【0045】
本実施形態に係るリクライニング装置20では、付勢部材80は、一端部81及び他端部82と一端部81及び他端部82を連結する弾性変形可能な連結部83とを有し、一端部81がギヤプレート40側から係合しているカム70をロック方向に付勢するように形成され、カムレバー90は、カム70のギヤプレート40側に組み付けられて、カム70のロック解除方向の回動時に各ロックギヤ61,62のギヤプレート40側に設けられる突起61b,62bを利用して外歯61a,62aと内歯41との噛合を解除するように各ロックギヤ61,62を移動させるように形成される。そして、連結部83は、一端部81がカム70に係合している状態で、ギヤプレート40に押圧されてカムレバー90に押圧されない第1曲げ部84及び第2曲げ部85とカムレバー90に押圧されてギヤプレート40に押圧されない第3曲げ部86とを有するように形成される。
【0046】
このため、付勢部材80における連結部83の第1曲げ部84、第2曲げ部85及び第3曲げ部86によってカムレバー90とギヤプレート40とが互いに離間する方向に付勢されるため、このように付勢されるカムレバー90によってカム70、各ロックギヤ61,62や各可動ガイド37がベースプレート30に向けて付勢される。このような付勢によって、付勢部材80、カムレバー90、カム70、各ロックギヤ61,62や各可動ガイド37等の内部部品間の軸方向の隙間が無くなるか小さくなるので、軸方向付勢用の部材を新たに追加することなく、ベースプレート30及びギヤプレート40間に配設される内部部品の軸方向ズレを抑制することができる。
【0047】
[他の実施形態]
なお、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、例えば、以下のように具体化してもよい。
(1)付勢部材80は、弾性変形可能な線材によって連結部83を有するように形成されることに限らず、一端部81及び他端部82を連結する連結部がギヤプレート40に押圧されてカムレバー90に押圧されない部位とカムレバー90に押圧されてギヤプレート40に押圧されない部位とを交互に有するように形成されればよく、このように形成されることで上記効果を奏する。このような連結部としては、例えば、ウェーブワッシャのような形状、ギヤプレート40に押圧される基部から1又は2以上の突起がカムレバー90に押圧されるように突出する形状、カムレバー90に押圧される基部から1又は2以上の突起がギヤプレート40に押圧されるように突出する形状等を採用することができる。
【0048】
(2)また、弾性変形可能な線材バネとして形成される付勢部材80に代えて、加工方法が異なる付勢部材、例えば、
図10及び
図11に例示するような、板材から加工された板バネとして形成される付勢部材80aを採用してもよい。この付勢部材80aは、一端部81及び他端部82に相当する一端部81a及び他端部82aと、一端部81a及び他端部82aを連結する連結部83aを有するように構成され、連結部83aは、第1曲げ部84、第2曲げ部85及び第3曲げ部86に相当する第1曲げ部84a、第2曲げ部85a及び第3曲げ部86aを有するように構成される。このように構成される付勢部材80aを採用する場合でも、上述した付勢部材80と同等の効果を奏する。
【0049】
(3)本発明は、ベースプレート30が下側ブラケット11aに取り付けられてギヤプレート40が上側ブラケット12aに取り付けられるリクライニング装置20に適用されることに限らず、ベースプレートが上側ブラケット12aに取り付けられてギヤプレートが下側ブラケット11aに取り付けられるリクライニング装置に適用されてもよい。なお、このような構成では、上側ブラケット12a及びシートバック12が「第1の部材」に相当し、下側ブラケット11a及びシートクッション11が「第2の部材」に相当し得る。
【符号の説明】
【0050】
10…車両用シート
11…シートクッション(第1の部材)
11a…下側ブラケット(第1の部材)
12…シートバック(第2の部材)
12a…上側ブラケット(第2の部材)
20…リクライニング装置
30…ベースプレート
33a,33b,34a,34b…案内面
40…ギヤプレート
41…内歯
61…第1ロックギヤ
61a…外歯
61b…突起(係合部)
62…第2ロックギヤ
62a…外歯
62b…突起(係合部)
70…カム
80,80a…付勢部材
81,81a…一端部
82,82a…他端部
83,83a…連結部
84,84a…第1曲げ部
85,85a…第2曲げ部
86,86a…第3曲げ部
90…カムレバー