(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037129
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】棚取り用釣具
(51)【国際特許分類】
A01K 93/00 20060101AFI20230308BHJP
A01K 91/20 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
A01K93/00 H
A01K91/20
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143685
(22)【出願日】2021-09-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-12
(71)【出願人】
【識別番号】521390084
【氏名又は名称】株式会社東華堂
(74)【代理人】
【識別番号】110001922
【氏名又は名称】弁理士法人日峯国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩間 雄介
【テーマコード(参考)】
2B307
【Fターム(参考)】
2B307EB02
2B307HB01
(57)【要約】
【課題】仕掛けの遠投時及び着水時の不具合を解消し、近場だけでなく遠場でも糸がらみすることなく安定してタナまでの深さを正確に把握する。
【解決手段】棚取り用釣具は、ロッドの先から延びてリールで巻き取り可能なラインと、前記ラインの先端に取り付けられたウキと、前記ウキの手前側を前記ラインに沿って移動可能に設けられたオモリと、前記オモリの手前側にその荷重で移動するように前記ラインに通されたスライダと、を有し、前記スライダは、前記ラインに巻き取り時のテンションが掛かったときに前記ウキからタナまでの深さを示す位置で移動がロックされる、ことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロッドの先から延びてリールで巻き取り可能なラインと、
前記ラインの先端に取り付けられたウキと、
前記ウキの手前側を前記ラインに沿って移動可能に設けられたオモリと、
前記オモリの手前側にその荷重で移動するように前記ラインに通されたスライダと、を有し、
前記スライダは、前記ラインに巻き取り時のテンションが掛かったときに前記ウキからタナまでの深さを示す位置で移動がロックされる、
ことを特徴とする棚取り用釣具。
【請求項2】
前記オモリは、前記ウキを遠投する際に前記ラインの先端側に移動し、着水時に前記ウキが勢いを受け止めることで垂下する、
ことを特徴とする請求項1に記載の棚取り用釣具。
【請求項3】
タナ計測後の前記スライダと前記ウキの間に、前記オモリを任意の位置で移動を制限した上で、釣り用仕掛けが取り付けられる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の棚取り用釣具。
【請求項4】
ロッドの先から延びてリールで巻き取り可能なラインと、
前記ラインの先端に取り付けられたオモリと、
前記オモリの手前側を前記ラインに沿って移動可能に設けられたウキと、
前記ウキの手前側を移動可能に前記ラインに通されたスライダと、を有し、
前記スライダは、着水した前記オモリが垂下したとき前記ウキに載ることで、前記ラインに引き上げ時のテンションが掛かったときにタナまでの深さを示す位置で移動がロックされる、
ことを特徴とする棚取り用釣具。
【請求項5】
前記スライダは、テンションの掛かった前記ラインとの間に摩擦力を発生させるために、入口から出口まで折曲又は湾曲しながら前記ラインを通すための通路が貫通し、外側面から前記通路に至るように前記通路に沿って前記ラインが通る幅でスリットが形成され、前記入口及び出口の周縁に前記スリットの一部を開閉可能なキャップが被せられる、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の棚取り用釣具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海などで魚釣りをする際に海の深さを測るために用いられる棚取り用釣具に関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣りでは、釣竿などの道具が用いられる。釣竿は、弾力性に富むロッドから先端に鈎状の釣針などの釣り用仕掛けを付けた釣糸(ライン)を延ばしたものである。釣糸の先端付近には、餌(疑似餌を含む)を付けた釣針などの釣り用仕掛けを遠投するとともに水中に沈めるための錘や、釣り用仕掛けを入れる深さを調整するとともに目印として使用する浮きなども取り付けられる。また、釣針に魚などが掛かったときに釣糸を巻き取るためのリールが備えられる場合もある。
【0003】
魚を釣るためには、魚がいる位置(層)に釣針を入れることが重要となる。例えば、低層にいる魚を釣る場合は、水面から底(タナ)までの深さを予め把握しておく。特許文献1に記載されているように、釣り場においてウキ釣りをするときにウキ下の長さを決めるためにその場所の水面から水底までの深さを簡単かつ正確に測定する魚釣り用ウキ下水深測定具の考案も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の考案は、先端に錘を付けた釣糸を、ウキに取り付けたコイル発条に掛けたもので、錘が水底に到達してウキが倒れた時点で釣糸を引き上げることにより、釣糸に沿って可動するコイル発条が固定されて、錘までの長さから水深を把握することができる。
【0006】
しかしながら、釣糸の途中に係止されているコイル発条付きウキは、コの字形という形状から糸がらみを防止することは難しい。またウキと錘が離れているので、仕掛け自体の重心が定まりにくく遠投しにくい。糸がらみを避けるには静かに仕掛けを投入するなどの対策が必要である。コイル発条にラインを通す際も手間がかかる。水中でラインがコイル発条を通る際にn字型となるが、使う錘の重量によっては過剰に摩擦が発生して効果を十分に発揮することができない。
【0007】
仮に遠投できたとしても空中または着水後に糸がらみが発生するおそれがある。仕掛けの着水後、錘の抵抗は水のみなので、放物線状に飛んだ錘は、真下ではなく前方斜め下に進む。錘が着底するまでは、コイル発条は投げた勢いと錘の重量により釣糸にテンションが掛かっているので水中に沈むことになる。ウキとコイル発条が水面に浮いていなければ効果を得ることができない。
【0008】
水中に沈んだウキは浮力によって水面に上がろうとするが、テンションの掛かった釣糸をコイル発条付きウキが引っ張る格好となってコイル発条がロックされてしまいウキの上昇が阻害される。水の抵抗や錘の着底によりテンションが無くなればロックが外れるが、コイル発条が途中で何かに引っ掛かって浮いて来ない可能性もある。また、仮にウキとコイル発条がラインに絡まず水面に浮いたとしても、投げ入れた錘は前方斜め下に進むため、計測場所のタナの深さによってはウキと錘を結ぶ線が鉛直方向でない可能性が高く、正確にタナを計測することができない。
【0009】
すなわち、すぐ近くに釣糸を垂らすだけなら良いが、離れた場所のタナを測るために遠投するには投げづらく絡まりやすくタナを正確に計測できないという問題があり、また、釣糸がコの字形にコイル発条へ掛けられているので、錘が水底に到達する前にロックされたり、釣糸を引き上げる際に可動されなかったりして、正確に水深を測定できない可能性がある。これは、コイル発条の形状及びタナを計測する仕組み自体に原因がある。
【0010】
そこで、本発明は、仕掛けの遠投時及び着水時の不具合を解消し、近場だけでなく遠場でも糸がらみすることなく安定してタナまでの深さを正確に把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明である棚取り用釣具は、ロッドの先から延びてリールで巻き取り可能なラインと、前記ラインの先端に取り付けられたウキと、前記ウキの手前側を前記ラインに沿って移動可能に設けられたオモリと、前記オモリの手前側にその荷重で移動するように前記ラインに通されたスライダと、を有し、前記スライダは、前記ラインに巻き取り時のテンションが掛かったときに前記ウキからタナまでの深さを示す位置で移動がロックされる、ことを特徴とする。
【0012】
前記棚取り用釣具において、前記オモリは、前記ウキを遠投する際に前記ラインの先端側に移動し、着水時に前記ウキが勢いを受け止めることで垂下する、ことを特徴とする。
【0013】
前記棚取り用釣具は、タナ計測後の前記スライダと前記ウキの間に、前記オモリを任意の位置で移動を制限した上で、釣り用仕掛けが取り付けられる、ことを特徴とする。
【0014】
また、本発明である棚取り用釣具は、ロッドの先から延びてリールで巻き取り可能なラインと、前記ラインの先端に取り付けられたオモリと、前記オモリの手前側を前記ラインに沿って移動可能に設けられたウキと、前記ウキの手前側を移動可能に前記ラインに通されたスライダと、を有し、前記スライダは、着水した前記オモリが垂下したとき前記ウキに載ることで、前記ラインに引き上げ時のテンションが掛かったときにタナまでの深さを示す位置で移動がロックされる、ことを特徴とする。
【0015】
前記棚取り用釣具において、前記スライダは、テンションの掛かった前記ラインとの間に摩擦力を発生させるために、入口から出口まで折曲又は湾曲しながら前記ラインを通すための通路が貫通し、外側面から前記通路に至るように前記通路に沿って前記ラインが通る幅でスリットが形成され、前記入口及び出口の周縁に前記スリットの一部を開閉可能なキャップが被せられる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ラインのテンションによって可動・静止するスライダと、通常とは異なるウキ及びオモリの配置で組み込むことにより、海や湖において近場遠場に拘わらず糸がらみすることなく安定してタナまでの深さを正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明である棚取り用釣具を遠場で使用する場合を説明する図である。
【
図2】本発明である棚取り用釣具を使用して遠場にオモリを着水させた状態を示す図である。
【
図3】本発明である棚取り用釣具を使用してオモリが着底した状態を示す図である。
【
図4】本発明である棚取り用釣具を使用してラインを巻き上げている状態を示す図である。
【
図5】本発明である棚取り用釣具のスライダの構造を示す概略図である。
【
図6】本発明である棚取り用釣具のスライダのバリエーションを示す図である。
【
図7】本発明である棚取り用釣具のスライダの形状を説明する図である。
【
図8】本発明である棚取り用釣具のスライダの外観を示す図である。
【
図9】本発明である棚取り用釣具のスライダの本体を示す図である。
【
図10】本発明である棚取り用釣具でタナを計測した後に釣りをする場合を示す図である。
【
図11】本発明である棚取り用釣具を近場で使用する場合を説明する図である。
【
図12】本発明である棚取り用釣具を使用して近場にオモリを着水させた状態を示す図である。
【
図13】本発明である棚取り用釣具を使用してオモリが着底した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【実施例0019】
まず、本発明である棚取り用釣具について説明する。
図1は、棚取り用釣具を遠場で使用する場合を説明する図である。
図2は、棚取り用釣具を使用して遠場にオモリを着水させた状態を示す図である。
図3は、棚取り用釣具を使用してオモリが着底した状態を示す図である。
図4は、棚取り用釣具を使用してラインを巻き上げている状態を示す図である。この実施例では棚取り用釣具で遠場のタナを計測する。
【0020】
図1に示すように、棚取り用釣具100は、海などで釣りをするときに釣り用仕掛けを投入する場所の水面から底までのタナの深さを予め計測するための道具である。棚取り用釣具100の棚取り用仕掛けとしては、ライン220に沿って移動可能なスライダ300等を用い、それに加えてオモリ230やウキ260等を適当に組み合わせる。
【0021】
ライン220は、釣糸が用いられ、ロッド200の先から延びてリール210で巻き取り可能である。ロッド200は、弾力性に富む釣竿であり、手元に取り付けたリール210から出したライン220が、間欠的に複数設けられた環状ガイドを通して先端から出ていく。なお、ライン220の先端側から見てリール210側を手前側とする。
【0022】
ライン220の先端には、サルカン250を介してウキ260が取り付けられる。ウキ260は、ライン220に沿って移動しないように固定され、着水したとき水面に浮く。ウキ260としては、通常の釣竿の浮きと同様に、10号の棒浮きや円錐浮きなどが使用される。
【0023】
ウキ260の手前側には、ライン220に沿って移動可能にオモリ230が通される。オモリ230は、ライン220の先端を遠くに飛ばすときの勢いとなり、着水すると水中に沈む。オモリ230としては、通常の釣竿の錘と同様に、10号の天秤錘やタル付き錘などが使用される。オモリ230とウキ260の間には、絡み防止用にビーズ240を介在させても良い。
【0024】
オモリ230の手前側には、スライダ300がそのオモリ230の荷重に押されて移動するようにライン220に通される。なお、この実施例において、棚取り用釣具100は、通常の釣竿とは異なる配置でオモリ230とウキ260を取り付けることで、スライダ300によってタナの深さを計測する。釣竿と分けて併用しても良いし、釣針などの釣り用仕掛けを取り付けて兼用しても良い。
【0025】
通常の釣竿では、釣糸の先端に釣針と錘が取り付けられ、手前側に浮きが取り付けられる。錘が沈み、浮きが水面に浮くので、釣針を入れる深さに応じて浮きの位置を変動させる。なお、釣糸に通した浮きゴムに挿すなどして浮きを留める。それに対して、棚取り用釣具100では、ライン220の先端にウキ260が取り付けられ、手前側にオモリ230が移動可能に取り付けられる点で異なる。
【0026】
魚を釣るためには、棚取りが重要であるが、特に海では毎日時間毎に変わる潮によりタナは変化するので、多くの釣り人にとって棚取りは煩わしいものである。なお、タナは、魚が泳いでいる層または底(海底)のことであり、水面(海面)からタナまでの深さを把握すれば、魚が泳いでいる層に釣糸を垂らすことが可能となる。
【0027】
ロッド200からライン220の先端を、離れた水面400に向けて投げ入れるとき、オモリ230が遠心力によりライン220の先端側に移動する。スライダ300の位置はそのままで、オモリ230が先端のウキ260に近付くことで、オモリ230の重さでウキ260を一緒に飛ばすことになるので、仕掛けを狙った位置に投げ入れやすくなる。オモリ230とウキ260が離れていると、一体感なく飛んでバランスが取れないので、ライン220が絡む原因となる。
【0028】
ライン220の先端が放物線状に飛んで水面400に着水するとき、オモリ230が先行すると勢いを無くすものが水以外になくオモリ230とウキ260の位置がずれてしまうことがある。しかし、ウキ260を先行させることで、着水時にオモリ230の勢いをウキ260が受け止め、オモリ230を鉛直方向に垂下させることが可能となる。
【0029】
なお、オモリ230をライン220に掛けている金具と、ウキ260をライン220に留めているサルカン250との間に何も無いと、ライン220が捻れてオモリ230とウキ260が絡まることがあるので、間にビーズ240を介在させて絡まりを防止する。
【0030】
図2に示すように、釣る対象の魚420等がいそうなタナ430を狙って遠投し、ウキ260が水面400に着水した後、ウキ260から下方にオモリ230が沈んでいく。ウキ260は、浮力500により水面400に留まろうとし、オモリ230は、重力510により底410に移動するとともに、ライン220がオモリ230に引かれリール210から繰り出されていく。オモリ230の沈下に伴い、オモリ230に押されてスライダ300も移動する。スライダ300は、リール210を巻かなければ、水中でオモリ230が重力510で沈下する程度の荷重でスムーズに移動可能である。
【0031】
図3に示すように、オモリ230が底410に到達すると、ウキ260とオモリ230が水面400と底410の長さ(水深)だけ離れる。オモリ230が水中にあるときは、ライン220に沿って移動するオモリ230の荷重でライン220も引かれてウキ260が少し沈んで立った状態であるが、オモリ230の荷重が掛からなくなると、ウキ260が完全に浮いて倒れた状態となる。スライダ300も、ライン220の先端から、水深と同じ長さまで移動した位置に来る。ウキ260が倒れたのを目印として、リール210を巻き始めれば良い。
【0032】
図4に示すように、リール210でライン220を巻き取ると、オモリ230が底410から上がる時点で、オモリ230によるテンション530と、リール210でライン220を引いたときのテンション520が両方から掛かって、ライン220は張った状態になる。底410から浮いたオモリ230は、ライン220に沿ってウキ260に向かって移動するが、スライダ300はライン220上で同じ位置を保ったままロッド200の先端に向かう。
【0033】
スライダ300は、ライン220を巻き取るときのテンション520、530が掛かったときにウキ260からタナ430までの深さを示す位置で移動がロックされる。すなわち、ライン220の先端からスライダ300が留まっている位置が、水面400から底410までの長さ540となる。
【0034】
ウキ260をライン220の先端に付け、オモリ230、スライダ300の順番にすることで、遠投時の糸がらみを防止するとともに、遠投のしやすさを達成している。さらに、着水時にウキ260が先に着くことで、オモリ230の勢いを相殺し、オモリ230を垂下させている。ウキ260が水面400に浮いた上で遊動式のオモリ230が沈下するので、ライン220をウキ260側に引く力も生じる。このとき、ウキ260が浮いていることから、オモリ230はライン220を遡るように手前側に移動する。それと同時にオモリ230がスライダ300を押し上げることになる。
【0035】
ウキ260は、着水時にライン220の方向を大きく変える役割がある。ライン220は通常、放物線状に飛んだ仕掛けが着水したとき、水の抵抗により若干変わるが、入水方向ベクトルと鉛直方向ベクトルの間に向かう。しかし、ウキ260の浮力によりブレーキが掛かり、ライン220の先端が全く別の上方を向くことになる。それにより、オモリ230が鉛直方向に沈下してライン220を遡上する。
【0036】
このとき、リール210からライン220が自由に繰り出されることで、スライダ300を通るライン220は片方から引かれているだけとなり、摩擦力によりロックされずにスライダ300内を通過する。スライダ300は沈下するオモリ230に押され、適度なテンションを保っているので、ライン220が緩み過ぎることもない。オモリ230が底410に到達すると、テンションが無くなってライン220が緩む。ウキ260を引く力も弱くなり、ウキ260が倒れることでオモリ230の着底が知らされる。
【0037】
このことは、ウキ260とオモリ230とスライダ300の順番を特定したこと、ウキ260とオモリ230のバランスを適切に取ったこと、オモリ230を遊動式にしたこと、ウキ260をライン220の先端に固定したこと、ライン220がスライダ300の一方側から引かれた場合に通過すること、という特徴を取り入れることで実現されたものである。
【0038】
次に、棚取り用釣具のスライダについて説明する。
図5は、棚取り用釣具のスライダの構造を示す概略図である。
図6は、棚取り用釣具のスライダのバリエーションを示す図である。
図7は、棚取り用釣具のスライダの形状を説明する図である。なお、ロッド200側を上、オモリ230側を下とする。
【0039】
図5に示すように、スライダ300は、水圧や波などの影響を受けにくいように縦長の楕円体の形状であり、ライン220を通すことが可能の径で、上面の入口310と下面の出口320まで貫通する通路330が形成される。通路330は、内部をライン220が滑動するが、一直線状ではなく、折曲又は湾曲させることで、ライン220にテンション520、530の掛かったときに摩擦力340、350を発生させる。
【0040】
図5(a)では、ライン220が通路330内で折れ曲がった状態となり、入口310及び出口320の縁に摩擦力340が掛かり、さらに通路330内の突出した面で摩擦力350が掛かるので、ライン220が移動しづらくなる。
【0041】
図5(b)では、入口310及び出口320の縁と、通路330内の突出した面に接しているが、ライン220が通路330内で一直線状となり、摩擦力340、350がほとんど掛からない。
【0042】
図5(c)では、ライン220が通路330内で一直線状となり、入口310の縁、出口320の縁、通路330内の突出した面のいずれかに接しておらず、いずれにも接しない状態もあり得るので、摩擦力340、350がほぼ得られない。自重で抵抗なく移動してしまう。
【0043】
図6に示すように、スライダ300は、ライン220にテンション520、530が掛かったときに、摩擦力340、350によりライン220に移動が抑制されるが、ライン220にテンション520、530が掛かっていないときには、摩擦力340、350がほとんど掛からず、ライン220がスムーズに滑動することが好ましい。なお、自重程度では移動しづらく、オモリ230の荷重など弱い力を加えれば移動する程度で良い。
【0044】
図6(a)では、入口310と出口320を結ぶ直線からずれるように、入口310から通路330aが斜めに入り、途中で方向を変えて出口320へ斜めに出る。通路330a内1点で折れ曲がっており、その突出した点で摩擦力350が発生するが、テンション520、530が掛かったライン220の移動を留めるには若干弱い。
【0045】
図6(b)では、入口310から通路330bが斜めに入り、途中で方向を変えて入口310と出口320を結ぶ直線と平行になり、さらに方向を変えて出口320へ斜めに出る。通路330b内2点で折れ曲がっており、その突出した面で摩擦力350が発生する。テンション520、530が掛かったライン220の移動を十分に留める効果がある。
【0046】
図6(c)では、入口310から通路330cが斜めに入り、途中で何度か方向を変えてジグザグ状になり、さらに方向を変えて出口320へ斜めに出る。通路330c内のジグザグ部分でライン220が直線状に通る場合は複数点で摩擦力350が発生するが、ライン220もジグザク状に折れ曲がると摩擦力350が強すぎて、テンション520、530が掛かっていなくてもライン220の移動が抑制されてしまう。
【0047】
図6(d)では、入口310から通路330dが斜めに長めに入り、途中で方向を変えて入口310と出口320を結ぶ直線と平行になり、さらに方向を変えて出口320へ斜めに短めに出る。通路330dの折れ曲がり方が上下対称でないため、テンション520とテンション530の掛かり方に差が出て、摩擦力350も若干弱くなる。
【0048】
図6(e)では、入口310から通路330eが斜めに入り、途中で方向を変えて入口310と出口320を結ぶ直線と交差するように斜めになり、さらに方向を変えて出口320へ斜めに出る。スライダ300の中心において点対称の通路330eとなる。通路330e内2点で折れ曲がっており、その逆方向に突出した点で摩擦力350が発生する。テンション520、530が掛かったライン220の移動を十分に留める効果がある。
【0049】
図6(f)では、入口310から通路330fが斜めに入り、途中で2回方向を変えて入口310と出口320を結ぶ直線と交差するように斜めになり、さらに2回方向を変えて出口320へ斜めに出る。通路330f内4点で折れ曲がっており、その逆方向に突出した面で摩擦力350が発生する。ただ、テンション520、530が掛かっていなくても摩擦力350が掛かり、ライン220の移動が抑制されてしまう。
【0050】
図7に示すように、入口310から通路330eが斜めに入り、途中で弓なり(弧状)に曲がって入口310と出口320を結ぶ直線と交差するようになり、さらに弓なりに曲がって出口320へ斜めに出る。
【0051】
スライダ300は、通路330内でテンション520、530の掛かったライン220に、入口310と出口320を結ぶ帯領域360と重ならない部分370が存在するように、通路330が空けられる。なお、重ならない部分370は、帯領域360に対する任意の横断面において、通路330と帯領域360とが完全に重なっていない部分であり、一部重なる部分が存在するときを含まない。入口310と出口320を結ぶ帯領域360と重ならない部分370が存在しないと、テンション520、530が掛かったライン220が一直線状に近くなり、摩擦力350が弱くなる。
【0052】
摩擦力350は、通路330内において1点で接するより複数点さらに面で接するほうが強くなる。さらに同じ方向で接するだけでなく、反対方向でも接するほうがより強くなる。
【0053】
入口310と出口320は、スライダ300の長手方向における上下中央に空いていることが好ましいが、スライダ300内で通路330の通り方にバランスが取れていれば中央からずれていても良い。
【0054】
次に、棚取り用釣具のスライダをラインに取り付ける方法について説明する。
図8は、棚取り用釣具のスライダの外観を示す図である。
図9は、棚取り用釣具のスライダの本体を示す図である。
【0055】
棚取り用釣具100は、スライダ300を成形し、ロッド200の先から延びたライン220に通し、さらにオモリ230を通し、先端にウキ260を取り付けることで製造される。
【0056】
図8(a)に示すように、スライダ300は、楕円体の長手方向の両端面に入口310と出口320を有し、入口310から出口320まで折曲又は湾曲した通路330が貫通する。なお、3Dプリンタを用いて水に浮かない樹脂等で成形しても良く、楕円体以外の形状にしても良い。
【0057】
図8(b)に示すように、スライダ300の通路330は一直線状でないのでライン220を通しづらいし、ライン220の先端からスライダ300の取付位置までの間に仕掛けなどが既に付いているとライン220を通すことは困難である。そのため、ライン220の途中に直接スライダ300を取り付ける。
【0058】
図9(a)に示すように、スライダ300の外側面から通路330に至るように通路330に沿ってライン220が通る幅でスリット380を形成し、ライン220を着脱可能にする。入口310及び出口320の周縁の幅を絞って、スリット380を開閉可能にC字型のキャップ390を被せる。
【0059】
図9(b)に示すように、キャップ390の空いた部分とスリット380を合わせればライン220が通過可能である。スリット380を介して外側から通路330にライン220を通した後、キャップ390を回転させてスリット380の一部を塞げばライン220は外れなくなる。
ここでは、オモリ230として、両端にアイ(輪っか)の付いたタル付き錘を利用し、ライン220が通っていない側のアイに釣り用仕掛け270を付ける。釣り用仕掛け270としては、釣針の付いたハリスや、餌などを入れた天秤カゴなどがある。
スライダ300は取り外しても良いが、オモリ230がライン220の手前側に移動しすぎないように、止め糸280を結び付ける。止め糸280は、オモリ230のアイを通過しないようなものであれば、どのような手段でも良い。釣り用仕掛け270は、スライダ300のあった位置から止め糸280までの長さより短くすれば、水中に浮いた位置となる。
例えば、タナ430の深さが10メートルと計測されたときに、長さ1メートルの釣り用仕掛け270を用いて、底410から1メートルの高さを泳いでいる魚420を狙う場合、スライダ300のあった位置からウキ260側に2メートルのところに止め糸280を結んでオモリ230を留めれば良い。
釣り用仕掛け270に魚420が掛かると、魚420が釣り用仕掛け270を引くことでオモリ230がウキ260に向かって移動するとともに、ウキ260も水中に引かれる。リール210でライン220を巻き取り、魚420を釣り上げるときには、オモリ230はウキ260に近い位置まで移動した状態となる。飲ませ釣りや生餌釣りをする場合でも、魚420に違和感を与えることはない。