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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037130
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】歯車機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/18 20060101AFI20230308BHJP
   F16H 1/06 20060101ALI20230308BHJP
   F16H 19/04 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
F16H55/18
F16H1/06
F16H19/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143687
(22)【出願日】2021-09-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 一般社団法人日本機械学会,日本機械学会2021年度年次大会 予稿(ダウンロードページ:https://confit.atlas.jp/guide/event/jsme2021/subject/S111-08/date?cryptoId=),令和3年8月30日 一般社団法人日本機械学会,日本機械学会2021年度年次大会 抄録(掲載ページ:https://confit.atlas.jp/guide/event/jsme2021/subject/S111-08/date?cryptoId=),令和3年8月30日
(71)【出願人】
【識別番号】391002487
【氏名又は名称】学校法人大同学園
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】林 秀行
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 和彦
【テーマコード(参考)】
3J009
3J030
3J062
【Fターム(参考)】
3J009DA11
3J009EA04
3J009EA05
3J009EA11
3J009EA21
3J009EA32
3J009EA43
3J009EB01
3J030BA01
3J030BA08
3J030BB12
3J030BC02
3J062AA60
3J062AB05
3J062BA26
3J062CA15
3J062CA36
(57)【要約】
【課題】バックラッシュをより低減することが可能な歯車機構を実現する技術を提供する。
【解決手段】歯車機構100は、第1と第2の歯車110,120を、それぞれのピッチ円P11,P12が互いに接触するように配置することにより構成されている、第1と第2の歯車110,120は、それぞれ、周期数が歯数の1/2の三角波曲線をピッチ円P11,P12に巻き付けた第1の円周三角波曲線と、第1の円周三角波曲線をピッチ円P11,P12に対して反転した第2の円周三角波曲線との円周三角波曲線の組のうちの、ピッチ円P11,P12よりも外方に位置する凸領域によって外縁部の形状が規定された凸型板状部111,122と、円周三角波曲線の組のうちの、ピッチ円P11,P12よりも内方に位置する凹領域によって外縁部の形状が規定された凹型板状部112,121とを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2の歯車を備える歯車機構であって、
前記第1と第2の歯車は、それぞれ、
周期数が歯数の1/2の三角波曲線をピッチ円に巻き付けた第1の円周三角波曲線と、前記第1の円周三角波曲線を前記ピッチ円に対して反転した第2の円周三角波曲線との円周三角波曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも外方に位置する凸領域によって外縁部の形状が規定された凸型板状部と、
前記円周三角波曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも内方に位置する凹領域によって外縁部の形状が規定された凹型板状部と、
を有しており、
前記第1と第2の歯車を、前記第1の歯車の前記ピッチ円と、前記第2の歯車の前記ピッチ円とが互いに接触するように配置することにより構成されている、
歯車機構。
【請求項2】
前記第1の歯車における前記ピッチ円の直径を、前記第1の歯車における前記歯数で除した前記第1の歯車のモジュールと、前記第2の歯車における前記ピッチ円の直径を、前記第2の歯車における前記歯数で除した前記第2の歯車のモジュールとが、同一に設定されている、請求項1記載の歯車機構。
【請求項3】
遊星歯車機構であって、
請求項1または2記載の歯車機構と、
前記第1の歯車と同軸の内歯車と、
を備え、
前記内歯車は、
周期数が歯数の1/2の三角波曲線をピッチ円に巻き付けた第1の円周三角波曲線と、前記第1の円周三角波曲線を前記ピッチ円に対して反転した第2の円周三角波曲線との円周三角波曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも内方に位置する凸領域によって内縁部の形状が規定された凸型環状部と、
前記円周三角波曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも外方に位置する凹領域によって内縁部の形状が規定された凹型環状部と、
を有しており、
前記第2の歯車と前記内歯車とを、前記第2の歯車の前記ピッチ円と、前記内歯車の前記ピッチ円とが互いに接触するように配置することにより構成されている、
遊星歯車機構。
【請求項4】
前記第2の歯車における前記ピッチ円の直径を、前記第2の歯車における前記歯数で除した前記第2の歯車のモジュールと、前記内歯車における前記ピッチ円の直径を、前記内歯車における前記歯数で除した前記内歯車のモジュールとが、同一に設定されている、請求項3記載の遊星歯車機構。
【請求項5】
第1と第2の歯車を備える歯車機構であって、
前記第1の歯車の歯数と、前記第2の歯車の歯数とには、1以外の公約数が存在し、
前記第1と第2の歯車は、それぞれ、周期数が歯数の1/2の三角波曲線をピッチ円に巻き付けた第1の円周三角波曲線と、前記第1の円周三角波曲線を前記ピッチ円に対して反転した第2の円周三角波曲線との円周三角波曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも外方に位置する凸領域と、前記ピッチ円よりも内方に位置する凹領域とから選択され、前記凸領域と前記凹領域とを少なくとも1つずつ含む部分領域によって外縁部の形状が規定された複数の板状部を有しており、
前記第1の歯車における前記部分領域と、前記第2の歯車における前記部分領域とは、前記第1と第2の歯車の干渉を回避するように前記凸領域と前記凹領域とが選択された前記公約数と同数の連続する部分領域の1以上の繰り返しであり、
前記第1と第2の歯車を、前記第1の歯車の前記ピッチ円と、前記第2の歯車の前記ピッチ円とが互いに接触するように配置することにより構成されている、
歯車機構。
【請求項6】
前記第1と第2の歯車のそれぞれにおいて、前記複数の板状部は、前記複数の板状部の外縁部が前記円周三角波曲線の組を描くように配置されている、請求項5記載の歯車機構。
【請求項7】
ラックとピニオンとを備える歯車機構であって、
前記ラックは、
三角波曲線、シニュソイド曲線、サイクロイド曲線および鋸波曲線のうちから選択された第1の周期曲線と、前記第1の周期曲線を前記第1の周期曲線の基準線に対して反転した第2の周期曲線との周期曲線の組のうちの、前記基準線よりも前記ピニオン側に位置する凸領域によって前記ピニオン側の縁部の形状が規定された凸型平棒部と、
前記周期曲線の組のうちの、前記基準線よりも前記ピニオンとは反対側に位置する凹領域によって前記ピニオン側の縁部の形状が規定された凹型平棒部と、
を有し、
前記ピニオンは、
周期数が歯数の1/2の前記第1の周期曲線と同種の周期曲線をピッチ円に巻き付けた第1の円周周期曲線と、前記第1の円周周期曲線を前記ピッチ円に対して反転した第2の円周周期曲線との円周周期曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも外方に位置する凸領域によって外縁部の形状が規定された凸型板状部と、
前記円周周期曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも内方に位置する凹領域によって外縁部の形状が規定された凹型板状部と、
を有しており、
前記ラックと前記ピニオンとを、前記基準線と前記ピッチ円とが互いに接触するように配置することにより構成されている、
歯車機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の歯車から構成される歯車機構に関し、特に、バックラッシュの低減が可能な歯車機構に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車機構は、確実な動力伝達が可能な基本的な機械要素であり、産業機械や民生機械のみならず、日用品や玩具等の様々な分野で利用されている。このような歯車機構を構成する歯車は、その動力の伝達部位である歯形の形状によって、機械的特性等が種々変化する。そのため、歯形の形状は、歯車機構の使用目的に応じて決定されるが(非特許文献1)、機械的特性等のすべての要求に対して理想的な歯形を実現することは困難である。
【0003】
例えば、インボリュート曲線によって歯形が規定されたインボリュート歯車は、2つの歯車の中心軸の間の距離が変化した場合においても、かみ合いを正しく維持することが可能であるが、歯形の干渉に関して設計上の考慮が必要となる。また、サイクロイド曲線によって歯形が規定されたサイクロイド歯車は、インボリュート歯車と比較して歯形の干渉や滑りが少ないものの、製作が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献1】小原歯車工業株式会社編 「歯車の手引き」小原歯車工業株式会社 昭和61年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13は、従来の歯車機構900の構成と動作を示す説明図である。図13に示す歯車機構900は、歯数が6の2つのインボリュート歯車910,920を、それぞれのピッチ円P91,P92が接触するように配置し、2つのインボリュート歯車910,920をかみ合わせることにより構成されている。
【0006】
歯車機構900において、図13(a)に示した状態では、2つのインボリュート歯車910,920が2点において接触している。しかしながら、図13(b)に示すように、中心軸C91を中心に第1のインボリュート歯車910を+Z方向側からみて反時計回りに10°回転させることにより、中心軸C92を中心に第2のインボリュート歯車920を+Z方向側からみて時計回りに10°回転させると、図13(b)において二点鎖線で囲まれた円形の部分を拡大した図13(c)に 示すように、2つのインボリュート歯車910,920は、紙面下方の一点では接触するものの、紙面上方の位置において、隙間が生じる。このように、インボリュート歯車910,920を用いた歯車機構900では、回転状態によって隙間が生じるため、バックラッシュを十分に低減することが困難である。
【0007】
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、バックラッシュをより低減することが可能な歯車機構を実現する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的の少なくとも一部を達成するために、本発明は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0009】
[適用例1]
第1と第2の歯車を備える歯車機構であって、前記第1と第2の歯車は、それぞれ、周期数が歯数の1/2の三角波曲線をピッチ円に巻き付けた第1の円周三角波曲線と、前記第1の円周三角波曲線を前記ピッチ円に対して反転した第2の円周三角波曲線との円周三角波曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも外方に位置する凸領域によって外縁部の形状が規定された凸型板状部と、前記円周三角波曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも内方に位置する凹領域によって外縁部の形状が規定された凹型板状部と、を有しており、前記第1と第2の歯車を、前記第1の歯車の前記ピッチ円と、前記第2の歯車の前記ピッチ円とが互いに接触するように配置することにより構成されている、歯車機構。
【0010】
この適用例によれば、第1と第2の歯車のうちの一方の歯車の凸型板状部および凹型板状部と、他方の歯車の凹型板状部および凸型板状部とがそれぞれかみ合い、第1と第2の歯車の凸型板状部および凹型板状部の間で動力が伝達されるので、従来の歯車機構と同様に動力の伝達を行うことができる。そして、第1と第2の歯車の回転状態によらず、互いにかみ合う凸型板状部と凹型板状部とが干渉することなく接触した状態に維持されるので、歯車機構におけるバックラッシュを十分に低減することができる。
【0011】
[適用例2]
前記第1の歯車における前記ピッチ円の直径を、前記第1の歯車における前記歯数で除した前記第1の歯車のモジュールと、前記第2の歯車における前記ピッチ円の直径を、前記第2の歯車における前記歯数で除した前記第2の歯車のモジュールとが、同一に設定されている、適用例1記載の歯車機構。
【0012】
この適用例によれば、互いにかみ合う凸型板状部と凹型板状部の外縁部の周速が略同一となるので、互いにかみ合う凸型板状部と凹型板状部の間の滑りが抑制され、2つの歯車の摩耗が抑制される。
【0013】
[適用例3]
遊星歯車機構であって、適用例1または2記載の歯車機構と、前記第1の歯車と同軸の内歯車と、を備え、前記内歯車は、周期数が歯数の1/2の三角波曲線をピッチ円に巻き付けた第1の円周三角波曲線と、前記第1の円周三角波曲線を前記ピッチ円に対して反転した第2の円周三角波曲線との円周三角波曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも内方に位置する凸領域によって内縁部の形状が規定された凸型環状部と、前記円周三角波曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも外方に位置する凹領域によって内縁部の形状が規定された凹型環状部と、を有しており、前記第2の歯車と前記内歯車とを、前記第2の歯車の前記ピッチ円と、前記内歯車の前記ピッチ円とが互いに接触するように配置することにより構成されている、遊星歯車機構。
【0014】
この適用例によれば、従来の内歯車と外歯車とを用いた遊星歯車機構によって生じる干渉の発生を抑制することができるので、各歯車の歯数を適宜変更して、遊星歯車機構の減速比をより柔軟に設定することが可能となる。
【0015】
[適用例4]
前記第2の歯車における前記ピッチ円の直径を、前記第2の歯車における前記歯数で除した前記第2の歯車のモジュールと、前記内歯車における前記ピッチ円の直径を、前記内歯車における前記歯数で除した前記内歯車のモジュールとが、同一に設定されている、適用例3記載の遊星歯車機構。
【0016】
この適用例によれば、互いにかみ合う凸型板状部の外縁部と凹型環状部の内縁部、および、凹型板状部の外縁部と凸型環状部の内縁部の周速が略同一となるので、互いにかみ合う凸型板状部と凹型環状部との間、および、凹型板状部と凸型環状部との間の滑りが抑制され、第2の歯車および内歯車の摩耗が抑制される。
【0017】
[適用例5]
第1と第2の歯車を備える歯車機構であって、前記第1の歯車の歯数と、前記第2の歯車の歯数とには、1以外の公約数が存在し、前記第1と第2の歯車は、それぞれ、周期数が歯数の1/2の三角波曲線をピッチ円に巻き付けた第1の円周三角波曲線と、前記第1の円周三角波曲線を前記ピッチ円に対して反転した第2の円周三角波曲線との円周三角波曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも外方に位置する凸領域と、前記ピッチ円よりも内方に位置する凹領域とから選択され、前記凸領域と前記凹領域とを少なくとも1つずつ含む部分領域によって外縁部の形状が規定された複数の板状部を有しており、前記第1の歯車における前記部分領域と、前記第2の歯車における前記部分領域とは、前記第1と第2の歯車の干渉を回避するように前記凸領域と前記凹領域とが選択された前記公約数と同数の連続する部分領域の1以上の繰り返しであり、前記第1と第2の歯車を、前記第1の歯車の前記ピッチ円と、前記第2の歯車の前記ピッチ円とが互いに接触するように配置することにより構成されている、歯車機構。
【0018】
この適用例によっても、第1の歯車の板状部と第2の歯車の板状部とがかみ合い、第1と第2の歯車の板状部の間で動力が伝達されるので、従来の歯車機構と同様に動力の伝達を行うことができる。そして、第1と第2の歯車の回転状態によらず、互いにかみ合う第1の歯車の板状部と第2の歯車の板状部とが干渉することなく接触した状態に維持されるので、歯車機構におけるバックラッシュを十分に低減することができる。
【0019】
[適用例6]
前記第1と第2の歯車のそれぞれにおいて、前記複数の板状部は、前記複数の板状部の外縁部が前記円周三角波曲線の組を描くように配置されている、適用例5記載の歯車機構。
【0020】
この適用例によれば、第1の歯車の複数の板状部と、当該複数の板状部がかみ合う第2の歯車の複数の板状部とのいずれかの間で、動力が伝達されるので、動力伝達効率の変動を抑制し、動力伝達効率をより高くすることができる。
【0021】
[適用例7]
ラックとピニオンとを備える歯車機構であって、前記ラックは、三角波曲線、シニュソイド曲線、サイクロイド曲線および鋸波曲線のうちから選択された第1の周期曲線と、前記第1の周期曲線を前記第1の周期曲線の基準線に対して反転した第2の周期曲線との周期曲線の組のうちの、前記基準線よりも前記ピニオン側に位置する凸領域によって前記ピニオン側の縁部の形状が規定された凸型平棒部と、前記周期曲線の組のうちの、前記基準線よりも前記ピニオンとは反対側に位置する凹領域によって前記ピニオン側の縁部の形状が規定された凹型平棒部と、を有し、前記ピニオンは、周期数が歯数の1/2の前記第1の周期曲線と同種の周期曲線をピッチ円に巻き付けた第1の円周周期曲線と、前記第1の円周周期曲線を前記ピッチ円に対して反転した第2の円周周期曲線との円周周期曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも外方に位置する凸領域によって外縁部の形状が規定された凸型板状部と、前記円周周期曲線の組のうちの、前記ピッチ円よりも内方に位置する凹領域によって外縁部の形状が規定された凹型板状部と、を有しており、前記ラックと前記ピニオンとを、前記基準線と前記ピッチ円とが互いに接触するように配置することにより構成されている、歯車機構。
【0022】
この適用例によれば、ピニオンの凸型板状部とラックの凹型平棒部とがかみ合い、ピニオンの凹型板状部とラックの凸型平棒部とがかみ合うことにより、板状部と平棒部との間で動力が伝達されるので、従来の歯車機構と同様に動力の伝達を行うことができる。そして、ピニオンが回転してラックに対して相対的に移動する際において、互いにかみ合う板状部と平棒部とが干渉することなく接触した状態に維持されるので、歯車機構としてのラックアンドピニオンにおけるバックラッシュを十分に低減することができる。
【0023】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、歯車機構、その歯車機構を用いた駆動機構や減速機、その駆動機構や減速機とモーター等の動力発生装置とを組み合わせた駆動装置等の態様で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1実施形態としての歯車機構の構成を示す説明図。
図2】歯車の板状部の具体的形状を示す説明図。
図3】第1実施形態の歯車機構が動作する様子を示す説明図。
図4】第2実施形態の歯車機構の構成と動作を示す説明図。
図5】第3実施形態の歯車機構の構成と動作を示す説明図。
図6】第4実施形態としての遊星歯車機構の構成を示す説明図。
図7】第5実施形態としての歯車機構の構成を示す説明図。
図8】第5実施形態の歯車機構が動作する様子を示す説明図。
図9】第5実施形態の第1の変形例としての歯車機構の構成を示す説明図。
図10】第5実施形態の第2の変形例としての歯車機構の構成を示す説明図。
図11】第6実施形態の歯車機構の構成と動作を示す説明図。
図12】第6実施形態の変形例としての歯車機構の構成と動作を示す説明図。
図13】従来の歯車機構の構成と動作を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を以下の順序で説明する。
A.第1実施形態:
A1.歯車機構の構成:
A2.歯車機構の動作:
B.第2実施形態:
C.第3実施形態:
D.第4実施形態:
E.第5実施形態:
E1.歯車機構の構成:
E2.第5実施形態の変形例:
F.第6実施形態:
F1.歯車機構の構成:
F2.第6実施形態の変形例:
【0026】
A.第1実施形態:
A1.歯車機構の構成:
図1は、第1実施形態としての歯車機構100の構成を示す説明図である。図1(a)および図1(b)は、歯車機構100を構成する2つの歯車110,120の個別の構成を示し、図1(c)は、2つの歯車110,120を組み合わせた歯車機構100の全体の構成を示している。なお、図1をはじめとする各図面に示すZ方向は、2つの歯車110,120のそれぞれにおいて回転の中心となる中心軸C11,C12の伸びる方向である。また、以下の説明においては、特に断らない限り、特定の歯車の回転とは、当該特定の歯車の中心軸を中心とする回転のことを謂う。
【0027】
図1(a)および図1(b)に示すように、2つの歯車110,120は、それぞれ、+Z方向側に配置された第1の板状部111,121と、-Z方向側に配置された第2の板状部112,122とを有している。これらの板状部111,112,121,122は、厚みが同一に設定されている。また、第1の歯車110の第1の板状部111と、第2の歯車120の第2の板状部122とは、同一形状となっており、第1の歯車110の第2の板状部112と、第2の歯車120の第1の板状部121とは、同一形状となっている。これらの板状部111,112,121,122の具体的な形状については、後述する。
【0028】
図1(c)に示すように、2つの歯車110,120は、それぞれのピッチ円P11,P12が接触するように配置される。これにより、2つの歯車110,120がかみ合い、一方の歯車(歯車110/歯車120)の回転が、他方の歯車(歯車120/歯車110)に伝達され、当該他方の歯車(歯車120/歯車110)が回転する歯車機構100が実現される。なお、以上の説明から判るように、2つの歯車110,120のピッチ円P11,P12の径(半径あるいは直径)は、同一となっている。
【0029】
図2は、第1の歯車110の板状部111,112の具体的形状を示す説明図である。上述の通り、第1の歯車110の第1の板状部111と第2の歯車120の第2の板状部122とは、同一形状となっており、第1の歯車110の第2の板状部112と、第2の歯車120の第1の板状部121とは、同一形状となっている。そのため、ここでは、第1の歯車110の2つの板状部111,112の形状についてのみ説明し、第2の歯車120の2つの板状部121,122の形状についてはその説明を省略する。
【0030】
図2(a)および図2(b)は、板状部111,112の形状を規定する三角波曲線LT1,LT2および円周三角波曲線CT1,CT2を示し、図2(c)は、円周三角波曲線CT1,CT2に基づいて、板状部111,112の形状が規定される様子を示している。
【0031】
図2(a)に示すように、三角波曲線LT1は、基準線LRとの距離が、基準線LRが延びる方向において直線的に変動する周期曲線である。ここで、「基準線LRとの距離」とは、基準線LRと直交する方向における基準線LRとの距離を謂う。また、以下の説明においても、基準となる特定の線との距離とは、当該特定の線に直交する方向における距離を謂う。一方、三角波曲線LT2は、基準線LRに対して三角波曲線LT1を反転した曲線である。従って、三角波曲線LT2も、基準線LRとの距離が、基準線LRが延びる方向において直線的に変動する周期曲線となっている。なお、図2(a)の例では、基準線LRの一端から他端までの延長に対する三角波曲線LT1,LT2の周期数を3周期としている。
【0032】
図2(b)に示す円周三角波曲線CT1,CT2は、図2(a)に示す三角波曲線LT1,LT2をピッチ円P11に巻き付けた曲線、すなわち、三角波曲線LT1,LT2を、基準線LRがピッチ円P11に沿って一周するように変形させた曲線である。言い換えれば、円周三角波曲線CT1は、ピッチ円P11との距離が、ピッチ円P11が延びる方向すなわちピッチ円P11の周方向において直線的に変動する周期曲線である。また、円周三角波曲線CT2は、ピッチ円P11に対して円周三角波曲線CT1を反転した曲線である。従って、円周三角波曲線CT2も、ピッチ円P11との距離が、ピッチ円P11の周方向において直線的に変動する周期曲線となっている。そして、図2の例では、基準線LRの延長に対する三角波曲線LT1,LT2の周期数を3周期としているため、円周三角波曲線CT1,CT2の一周に対する周期数(以下、単に「周期数」と謂う)は、3周期となっている。
【0033】
図2(c)に示すように、第1の板状部111の外縁部の形状(以下、単に「形状」とも謂う)は、円周三角波曲線CT1,CT2のうちのピッチ円P11よりも外方に位置する部分領域(凸領域)の形状によって規定される。一方、第2の板状部112の形状は、円周三角波曲線CT1,CT2のうちのピッチ円P11よりも内方に位置する部分領域(凹領域)の形状によって規定される。
【0034】
第1実施形態では、円周三角波曲線CT1,CT2の周期数を3周期としているため、第1の板状部111では、その形状を規定する円周三角波曲線CT1,CT2の凸領域の数、すなわち、ピッチ円P11よりも外方に突出した部分(凸部)の数が6個となっている。また、第2の板状部112では、その形状を規定する円周三角波曲線CT1,CT2の凹領域の数、すなわち、ピッチ円P11から内方に凹んだ部分(凹部)の数が6個となっている。
【0035】
詳細については後述するが、第1の板状部111においてピッチ円P11よりも外方に突出した凸部、および、第2の板状部112においてピッチ円P11から内方に凹んだ凹部は、いずれも、第1の歯車110による動力の伝達に関与する。このように、第1の板状部111の凸部と、第2の板状部112の凹部は、いずれも、従来の歯車の歯形に相当するので、「歯形部」とも謂うことができる。そして、第1の歯車110では、動力の伝達に関与する凸部あるいは凹部の数が6(すなわち、一周に対する円周三角波曲線CT1,CT2の周期数3の2倍)となるので、第1の歯車110の歯数は6となる。以上の説明から判るように、三角波曲線LT1,LT2の周期数、および、円周三角波曲線CT1,CT2の周期数は、いずれも、第1の歯車110の歯数(6)の1/2となっている。
【0036】
また、第1の板状部111は、ピッチ円P11よりも外方に突出した凸部のみを有し、第2の板状部112は、ピッチ円P11から内方に凹んだ凹部のみを有している。以下では、このように凸部のみを有する板状部(図2の例では、板状部111)を「凸型板状部」とも呼び、凹部のみを有する板状部(図2の例では、板状部112)を「凹型板状部」とも呼ぶ。
【0037】
A2.歯車機構の動作:
図3は、第1実施形態の歯車機構100が動作する様子を示す説明図である。なお、上述の通り、第1の歯車110の第1の板状部111(図1)と第2の歯車120の第2の板状部122とは、同一形状となっており、第1の歯車110の第2の板状部112と、第2の歯車120の第1の板状部121(図1)とは、同一形状となっている。そのため、ここでは、2つの歯車110,120のそれぞれにおいて-Z方向側に配置される第2の板状部112,122の図示を省略し、第1の歯車110と第2の歯車120との動作を、2つの歯車110,120のそれぞれにおいて+Z方向側に配置される第1の板状部111,112を用いて説明する。
【0038】
図3(a)は、図1(c)に示すように、歯車機構100を構成する2つの歯車110,120(板状部111,121)を、それぞれのピッチ円P11,P12が接触するように配置した様子を示し、図3(b)は、図3(a)に示す状態から2つの歯車110,120を回転させた様子を示している。また、図3(c)は、図3(b)において二点鎖線で囲まれた円形の部分を拡大して示している。
【0039】
図3(a)に示すように、第1実施形態の歯車機構100では、2つの歯車110,120を、それぞれのピッチ円P11,P12が接触するように配置している。そのため、2つの歯車110,120の中心軸C11,C12の間の距離は、2つの歯車110,120のピッチ円P11,P12の半径の和となっている。
【0040】
上述の通り、2つの歯車110,120の板状部111,121は、それぞれ、その形状が円周三角波曲線CT1,CT2の凸領域と凹領域によって規定されている。そのため、2つの歯車110,120は、中心軸C11,C12の配列方向における板状部111,121の周縁部と、それぞれの中心軸C11,C12との距離の和が、ピッチ円P11,P12の半径の和(中心軸C11,C12の間の距離)と等しくなるように、同じ角度で逆方向に回転する。
【0041】
そして、図3(b)に示すように、図3(a)に示す状態から第1の歯車110(板状部111)を+Z方向から見て反時計回りに10°(-10°)回転させると、第2の歯車120(板状部121)は、図3(a)に示す状態から+Z方向から見て時計回りに10°(+10°)回転する。以下では、このように+Z方向から見て時計回りの回転方向を正の回転方向(正方向)とし、正方向の角度を正値の角度で表す。一方、+Z方向から見て反時計回りの回転方向を負の回転方向(負方向)とし、負方向の角度を負値の角度で表す。
【0042】
なお、図3(b)に示す状態から第1の歯車110(板状部111)を負方向に回転させる場合、第1の歯車110の第1の板状部111から第2の歯車120の第1の板状部121へは、動力が伝達されない。しかしながら、図3において図示を省略した第1の歯車110の第2の板状部112と第2の歯車120の第2の板状部122とは、図3の紙面における左右を反転した態様で配置される。そのため、図3(b)に示す状態においても、第1の歯車110の第2の板状部112から第2の歯車120の第2の板状部122へは、動力が伝達される。
【0043】
このように、第1実施形態によれば、形状が円周三角波曲線CT1,CT2で規定された板状部111,112を有する第1の歯車110と、形状が円周三角波曲線CT1,CT2で規定された板状部121,122を有する第2の歯車120とをかみ合わせることにより、従来の歯車機構と同様に動力の伝達を行うことができる。なお、このように、第1実施形態の歯車機構100を構成する2つの歯車110,120は、いずれも、形状が円周三角波曲線CT1,CT2で規定されているので、「三角波歯車」とも謂うことができる。
【0044】
また、第1実施形態においては、図3(b)に示すように2つの歯車110,120(板状部111,121)を回転させた状態においても、図3(c)に示すように、2つの歯車110,120の板状部111,121は、干渉することなく接触した状態に維持される。同様に、2つの歯車110,120のそれぞれにおいて-Z方向側に配置される第2の板状部112,122(図1)も、干渉することなく接触した状態に維持される。
【0045】
このように、第1実施形態の歯車機構100においては、歯車機構100を構成する2つの歯車110,120の回転状態によらず、第1の板状部111,121が接触した状態に維持されるとともに、第2の板状部112,122が接触した状態に維持される。そのため、第1実施形態によれば、歯車機構100においてバックラッシュが発生することを抑制することができる。
【0046】
また、第1実施形態では、第1および第2の板状部の一方(第1の板状部111,121/第2の板状部112,122)により動力が伝達されない状態においても、他方の板状部(第2の板状部112,122/第1の板状部111,121)により動力を伝達することができる。このように、第1実施形態では、2つの歯車110,120がそれぞれ凸型板状部111,122と凹型板状部112,121とを有しているので、2つの歯車110,120の間での動力伝達効率の変動を抑制し、動力伝達効率をより高くすることができる。
【0047】
さらに、第1実施形態において歯車110,120を構成する板状部111,112,121,122の歯形部(凸部あるいは凹部)の形状が外方(部材のない空間の方)に向かって凸な形状となっている。そのため、歯車110,120においては、歯形部における応力の集中が抑制されるので、歯形部の折損等の歯車の損傷が抑制される。
【0048】
また、第1実施形態の歯車機構100を構成する歯車110,120は、それぞれ、凸型板状部111,122と凹型板状部112,121とによって構成されている。このような歯車は、フライス加工等の切削加工等により形成し、あるいは、別個に形成された凸型板状部と凹状板状部とを組み合わせることにより形成することができる。そのため、第1実施形態によれば、バックラッシュが十分に抑制された歯車機構をより容易に製造することができる。
【0049】
加えて、第1実施形態によれば、2つの歯車110,120の歯数と、2つの歯車110,120のピッチ円P11,P12の径とを同一としているので、2つの歯車110,120のモジュール(ピッチ円の直径を歯数で除した値)が同一となっている。このように、2つの歯車110,120のモジュールを同一とすることにより、歯車機構100の動作に際して、互いにかみ合う板状部(板状部111,121/板状部112,122)の外縁部の周速が略同一となる。そのため、互いにかみ合う板状部(板状部111,121/板状部112,122)の間の滑りが抑制されるので、歯車110,120の摩耗が抑制される。
【0050】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態の歯車機構200の構成および動作を示す説明図である。図4(a)は、歯車機構200を構成する2つの歯車210,220の構成を示し、図4(b)および図4(c)は、2つの歯車210,220をかみ合わせた歯車機構200の動作の様子を示している。第2実施形態の歯車機構200は、歯車機構200を構成する2つの歯車210,220の歯数がそれぞれ2および5に設定されている点で、第1実施形態と異なっている。
【0051】
図4(a)に示すように、歯車機構200を構成する第1の歯車210は、+Z方向側に配置された凸型板状部である第1の板状部211と、-Z方向側に配置された凹型板状部である第2の板状部212とを有している。また、歯車機構200を構成する第2の歯車220は、+Z方向側に配置された凹型板状部である第1の板状部221と、-Z方向側に配置された凸型板状部である第2の板状部222とを有している。
【0052】
第1の歯車210の2つの板状部211,212の形状は、ピッチ円P21に対して互いに反転した、周期数が1周期の2つの円周三角波曲線によって規定される。そのため、第1の板状部211は、2つの円周三角波曲線の凸領域で形状が規定された2つの凸部を有しており、第2の板状部212は、2つの円周三角波曲線の凹領域で形状が規定された2つの凹部を有している。
【0053】
一方、第2の歯車220の2つの板状部221,222の形状は、ピッチ円P22に対して互いに反転した、周期数が2.5周期の2つの円周三角波曲線によって規定される。そのため、第1の板状部221は、2つの円周三角波曲線の凹領域で形状が規定された5つの凹部を有しており、第2の板状部222は、2つの円周三角波曲線の凹領域で形状が規定された2つの凹部を有している。
【0054】
なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様に、2つの歯車210,220のモジュールは同一に設定されている。そのため、2つの歯車210,220のピッチ円P21,P22の径は、その比が2つの歯車210,220の歯数の比(2:5)に等しくなるように設定されている。これらの2つの歯車210,220を、それぞれのピッチ円P21,P22が接触するように配置することにより、図4(b)に示すように、第2実施形態の歯車機構200が構成される。
【0055】
第2実施形態の歯車機構200においても、第1実施形態と同様に、2つの歯車210,220は、中心軸C21,C22の配列方向における、板状部211,221の周縁部とそれぞれの中心軸C21,C22との距離の和、および、板状部212,222の周縁部とそれぞれの中心軸C21,C22との距離の和が、いずれも、中心軸C21,C22の間の距離と等しくなるように、歯数の逆比(5:2)の角度で逆方向に回転する。そして、図4(c)に示すように、図4(b)に示す状態から第1の歯車210を-25°回転させると、第2の歯車220は、図4(b)に示す状態から+10°回転する。
【0056】
このように、第2実施形態によっても、形状が円周三角波曲線で規定された2つの歯車210,220をかみ合わせることにより、従来の歯車機構と同様に動力の伝達を行うことができる。また、第2実施形態においても、2つの歯車210,220の回転状態によらず、第1の板状部211,221が接触した状態に維持されるとともに、第2の板状部212,222が接触した状態に維持されるので、バックラッシュの発生を抑制することができる。そして、第2実施形態においても、2つの歯車210,220がそれぞれ凸型板状部211,222と凹型板状部212,221とを有しているので、2つの歯車210,220の間での動力伝達効率の変動を抑制し、動力伝達効率をより高くすることができる。
【0057】
また、第2実施形態の歯車210,220は、それぞれ、凸型板状部211,222と凹型板状部212,221とで構成されているので、バックラッシュが十分に抑制された歯車機構200をより容易に製造することが可能になる。そして、歯車210,220として三角波歯車を採用しているので、歯車210,220の歯形部における応力の集中を抑制して、歯形部の折損等を抑制することができる。
【0058】
さらに、第2実施形態においても、2つの歯車210,220は、モジュールが同一となるように構成されている。そのため、歯車機構200の動作に際して、互いにかみ合う板状部(板状部211,221/板状部212,222)の間の滑りが抑制され、歯車210,220の摩耗が抑制される。
【0059】
加えて、第2実施形態では、歯車機構200を構成する2つの歯車210,220として三角波歯車を使用することにより、第1の歯車210の歯数を2としている。このように、第2実施形態では、従来の歯車では実現が困難な、歯数が極めて少ない歯車を実現することができるので、歯車機構200の減速比や増速比をより大きくすることが可能である。
【0060】
C:第3実施形態
図5は、第3実施形態の歯車機構300の構成および動作を示す説明図である。図5(a)は、歯車機構300を構成する2つの歯車310,220の構成を示し、図5(b)および図5(c)は、2つの歯車310,220をかみ合わせた歯車機構300の動作の様子を示している。第3実施形態の歯車機構300は、歯車機構300を構成する第1の歯車310の歯数が1に設定されている点と、2つの歯車310,220のモジュールが異なっている点とで、第2実施形態と異なっている。他の点は、第2実施形態と同様である。
【0061】
図5(a)に示すように、歯車機構300を構成する第1の歯車310は、第1および第2実施形態と同様に、+Z方向側に配置された凸型板状部である第1の板状部311と、-Z方向側に配置された凹型板状部である第2の板状部312とを有している。なお、歯車機構300を構成する第2の歯車220は、第2実施形態と同一であるので、ここではその説明を省略する。
【0062】
第1の歯車310を構成する2つの板状部311,312のうち、第1の板状部311は、ピッチ円P31に対して互いに反転した、周期数が0.5周期の2つの円周三角波曲線のうちの凸領域で形状が規定されており、1つの凸部を有している。一方、第2の板状部312は、周期数が0.5周期の2つの円周三角波曲線うちの凹領域で形状が規定されており、1つの凹部を有している。
【0063】
また、第1の歯車310のピッチ円P31の径は、第2実施形態における第1の歯車210(図4)のピッチ円P21の径と同一に設定されている。そのため、第3実施形態においては、第1の歯車310のモジュールは、第2の歯車220のモジュールの2倍となっている。そして、これらの2つの歯車310,220を、それぞれのピッチ円P31,P22が接触するように配置することにより、図5(b)に示すように、第3実施形態の歯車機構300が構成される。
【0064】
第3実施形態の歯車機構300においても、第1および第2実施形態と同様に、2つの歯車310,220は、中心軸C31,C22の配列方向における、板状部311,221の周縁部とそれぞれの中心軸C31,C22との距離の和、および、板状部312,222の周縁部とそれぞれの中心軸C31,C22との距離の和が、いずれも、中心軸C31,C22の間の距離と等しくなるように、歯数の逆比(5:1)の角度で逆方向に回転する。そして、図5(c)に示すように、図5(b)に示す状態から第1の歯車310を-50°回転させると、第2の歯車220は、図5(b)に示す状態から+10°回転する。
【0065】
このように、第3実施形態によっても、2つの円周三角波曲線で形状が規定された2つの歯車310,220をかみ合わせることにより、従来の歯車機構と同様に動力の伝達を行うことができる。また、第3実施形態においても、2つの歯車310,220の回転状態によらず、第1の板状部311,221が接触した状態に維持されるとともに、第2の板状部312,222が接触した状態に維持されるので、バックラッシュの発生を抑制することができる。そして、第3実施形態においても、2つの歯車310,220がそれぞれ凸型板状部311,222と凹型板状部312,221とを有しているので、2つの歯車310,220の間での動力伝達効率の変動を抑制し、動力伝達効率をより高くすることができる。
【0066】
また、第3実施形態の歯車310,220は、それぞれ、凸型板状部311,222と凹型板状部312,221とで構成されているので、バックラッシュが十分に抑制された歯車機構300をより容易に製造することが可能になる。そして、歯車310,220として三角波歯車を採用しているので、歯車310,220の歯形部における応力の集中を抑制して、歯形部の折損等を抑制することができる。
【0067】
なお、第3実施形態の歯車機構300では、2つの歯車310,220のモジュールが異なっている。そのため、歯車機構300の動作に際して、第1の板状部311,221の間で外縁部の周速が異なり、同様に、第2の板状部312,222の間で外縁部の周速が異なる。そのため、第1の板状部311,221の間、および、第2の板状部312,222の間で滑りが発生し、第1および第2実施形態よりも、歯車310,220の摩耗が増大する虞がある。この点において、第1および第2実施形態は、第3実施形態よりも好ましい。
【0068】
一方、第3実施形態では、歯車機構300を構成する2つの歯車310,220のモジュールを変えることで、歯車機構300の減速比や増速比をより大きくすることができる。また、以上の説明から判るように、第3実施形態の歯車機構300のように、三角波歯車を用いることにより、2つの歯車のモジュールを一致させる必要がないため、歯車機構の減速比や増速比をより柔軟に設定することができる。
【0069】
加えて、第3実施形態においても、歯車機構300を構成する2つの歯車310,220として三角波歯車を使用することにより、第1の歯車310の歯数を1としている。このように、第3実施形態では、従来の歯車では実現が不可能な、歯数が1の歯車を実現することができるので、歯車機構300の減速比や増速比をさらに大きくすることが可能である。
【0070】
D.第4実施形態:
図6は、第4実施形態としての遊星歯車機構400の構成を示す説明図である。図6(a)は、遊星歯車機構400に使用される内歯車410の構成を示し、図6(b)は、遊星歯車機構400に使用される太陽歯車420の構成を示し、図6(c)は、遊星歯車機構400に使用される遊星歯車430の構成を示している。また、図6(d)は、内歯車410、太陽歯車420および4つの遊星歯車430を用いて、遊星歯車機構400が構成される様子を示す説明図である。
【0071】
図6(a)に示すように、第4実施形態の内歯車410は、+Z方向側に配置された第1の環状部419と、-Z方向側に配置された第2の環状部418とを有している。第1の環状部419および第2の環状部418の内縁部の形状は、いずれも、中心軸C41を中心とするピッチ円P41を基準とした、周期数が9.5周期の円周三角波曲線と、当該円周三角波曲線をピッチ円P41に対して反転した円周三角波曲線によって規定されている。
【0072】
具体的には、第1の環状部419の内縁部の形状は、これら2つの円周三角波曲線において、ピッチ円P41よりも外方に位置する部分領域の形状によって規定される。一方、第2の環状部418の内縁部の形状は、これらの円周三角波曲線において、ピッチ円P41よりも内方に位置する部分領域の形状によって規定されている。なお、内歯車410では、歯形部が内方側に形成されているため、2つの円周三角波曲線のうちのピッチ円P41よりも外方に位置する部分領域を「凹領域」と呼び、ピッチ円P41よりも内方に位置する部分領域を「凸領域」と呼ぶ。
【0073】
図6(a)に示すように、第1の環状部419では、その形状を規定する円周三角波曲線の凹領域の数、すなわち、ピッチ円P41から外方に凹んだ凹部の数が19個となっており、第2の環状部418では、その形状を規定する円周三角波曲線の凸領域の数、すなわち、ピッチ円P41から内方に突出した凸部の数が19個となっている。このように、内歯車410(図1)では、遊星歯車機構400において動力の伝達に関与する凸部あるいは凹部の数が19個となっているので、内歯車410の歯数は19と規定される。
【0074】
図6(b)に示すように、太陽歯車420は、内歯車410と同軸のピッチ円P42を基準とした、歯数が5の三角波歯車であり、+Z方向側に配置された凹型板状部421と、-Z方向側に配置された凸型板状部422とを有している。
【0075】
図6(c)に示すように、遊星歯車430は、中心軸C43を中心とするピッチ円P43を基準とした、歯数が7の三角波歯車であり、+Z方向側に配置された凸型板状部431と、-Z方向側に配置された凹型板状部432とを有している。
【0076】
なお、内歯車410、太陽歯車420および遊星歯車430のそれぞれのピッチ円P41,P42,P43の径の比は、各歯車410,420,430のモジュールが同一となるよう、各歯車410,420,430の歯数の比(19:5:7)に設定されている。
【0077】
図6(d)に示すように、各歯車410,420,430は、遊星歯車430のピッチ円P43が、内歯車410と太陽歯車420とのそれぞれのピッチ円P41,P42に接触するように配置される。そして、遊星歯車430の凸型板状部431が、内歯車410の第1の環状部419と、太陽歯車420の凹型板状部421との双方とかみ合い、遊星歯車430の凹型板状部432が、内歯車410の第2の環状部418と、太陽歯車420の凸型板状部422との双方とかみ合うことにより、遊星歯車機構400が実現される。
【0078】
上記各実施形態において説明した通り、三角波歯車を用いた歯車機構では、従来の歯車機構と同様に動力の伝達が行われる。また、内歯車と外歯車とをかみ合わせた歯車機構でも、従来の歯車機構と同様に動力の伝達が行われる。そのため、第4実施形態の遊星歯車機構400は、従来の遊星歯車機構と同様に動作する。
【0079】
具体的に云えば、内歯車410を固定した状態で太陽歯車420を回転させると、遊星歯車430の中心軸C43は、内歯車410および太陽歯車420の中心軸C41を中心として、太陽歯車420の回転と同方向に減速比4.8(=19/5+1)で回転する。
【0080】
また、太陽歯車420を固定した状態で内歯車410を回転させると、遊星歯車430の中心軸C43は、内歯車410および太陽歯車420の中心軸C41を中心として、内歯車410の回転と同方向に減速比約1.26(=5/19+1)で回転する。
【0081】
そして、遊星歯車430の中心軸C43を固定した状態で太陽歯車420を回転させると、内歯車410は、太陽歯車420の回転と反対方向に減速比3.8(=19/5)で回転する。
【0082】
このように、第4実施形態によれば、遊星歯車機構400を構成する内歯車410、太陽歯車420および遊星歯車430として、形状が円周三角波曲線で規定された三角波歯車を用いることにより、従来と同様の遊星歯車機構を実現することができる。
【0083】
また、第4実施形態の遊星歯車機構400では、内歯車410、および、内歯車410とかみ合う遊星歯車430として三角波歯車を用いているので、遊星歯車の歯数を少なくすることによって生じるインボリュート干渉や、内歯車と遊星歯車との歯数の差を少なくすることによって生じるトロコイド干渉等の、従来の内歯車と外歯車とを用いた遊星歯車機構によって生じる干渉の発生を抑制することができる。そのため、各歯車の歯数を適宜変更して、遊星歯車機構の減速比をより柔軟に設定することが可能となる。
【0084】
さらに、上記第3実施形態において説明したとおり、三角波歯車によって構成される歯車機構においては、各歯車のモジュールを必ずしも同一にする必要がない。そのため、第4実施形態のように、遊星歯車機構を構成する内歯車、太陽歯車および遊星歯車を三角波歯車とすれば、各歯車の歯数を適宜変更して、遊星歯車機構の減速比をさらに柔軟に設定することが可能となる。但し、互いにかみ合う歯車の摩耗を抑制することが可能となる点において、遊星歯車機構を構成する各歯車のモジュールは、同一にするのが好ましい。
【0085】
また、第4実施形態においても、互いにかみ合う内歯車410の2つの環状部419,418と、遊星歯車430の凸型板状部431および凹型板状部432とは、いずれも接触した状態に維持されるとともに、互いにかみ合う遊星歯車430の凸型板状部431および凹型板状部432と、太陽歯車420の凹型板状部421および凸型板状部422とは、いずれも接触した状態に維持されるので、バックラッシュの発生を抑制することができる。そして、第4実施形態においても、内歯車410が凹部と凸部とのいずれか一方のみを有する環状部419,418を有し、太陽歯車420と遊星歯車430とが、それぞれ、凹型板状部421,432と凸型板状部422,431とを有するので、動力伝達効率の変動を抑制し、動力伝達効率をより高くすることができる。
【0086】
さらに、上記各実施形態の説明から判るように、太陽歯車420と遊星歯車430とは、その製造がより容易となっている。そして、第4実施形態の遊星歯車機構400では、内歯車410が2つの環状部419,418によって構成されているので、内歯車410は、フライス加工等の切削加工等により形成し、あるいは、別個に形成された第1の環状部419と第2の環状部418とを組み合わせることにより形成することができる。そのため、第4実施形態によれば、バックラッシュが十分に抑制された遊星歯車機構400をより容易に実現することができる。
【0087】
E.第5実施形態:
E1.歯車機構の構成:
図7は、第5実施形態としての歯車機構500の構成を示す説明図である。図7(a)は、歯車機構500の全体的な構成を斜視図で示している。また、図7(b)および図7(c)は、歯車機構500を構成する2つの歯車510,520において、最も+Z方向側に配置された板状部511,512を示している。
【0088】
なお、第5実施形態の歯車機構500では、2つの歯車510,520のそれぞれの中心軸の位置関係と、2つの歯車510,520を構成する板状部511~513,521~523の形状を規定するピッチ円および円周三角波曲線とを、いずれも、第1実施形態の歯車機構100と同一に設定している。そのため、第5実施形態では、中心軸C11,C12、ピッチ円P11,P12および円周三角波曲線CT1,CT2については、第1実施形態と同一の符号を付している。
【0089】
そして、第1実施形態と同様に、板状部511~513,521~523の形状を規定する円周三角波曲線CT1,CT2の周期数が3周期となっているため、板状部511~513,521~523から構成される2つの歯車510,520の歯数は、いずれも6となる。
【0090】
図7(a)に示すように、歯車機構500を構成する2つの歯車510,520は、それぞれ、+Z方向側から-Z方向側に向かって順次積層された、第1の板状部511,521と、第2の板状部512,522と、第3の板状部513,523とを有している。
【0091】
これらの板状部511~513,521~523は、いずれも、その形状と厚みとが同一に設定されている。そして、第1の歯車510の板状部511~513は、+Z方向側から-Z方向側に向かって、第1の歯車510の中心軸C11を中心として、-60°(負方向に1歯分)で順次回転させた状態で積層されている。一方、第2の歯車520の板状部521~523は、+Z方向側から-Z方向側に向かって、第2の歯車520の中心軸C12を中心として、+60°(正方向に1歯分)で順次回転させた状態で積層されている。
【0092】
なお、このように板状部511~513,521~523は、同一形状となっているため、板状部511~513,521~523の形状の説明においては、その一部の板状部についてのみ説明し、他の板状部については、説明を省略する。
【0093】
図7(b)および図7(c)に示すように、第5実施形態において2つの歯車510,520を構成する板状部511,521の形状は、第1実施形態における板状部111,112(図2)と同様に、それぞれのピッチ円P11,P12と、2つの円周三角波曲線CT1,CT2によって規定されている。
【0094】
第1の歯車510の板状部511の形状は、図7の紙面上方から正方向の順に、2つの円周三角波曲線CT1,CT2のうちの凹領域、凸領域、凹領域、凹領域、凸領域および凹領域によって規定されている。一方、第2の歯車520の板状部521の形状は、図7の紙面上方から負方向の順に、2つの円周三角波曲線CT1,CT2のうちの凸領域、凹領域、凹領域、凸領域、凹領域および凹領域によって規定されている。このように、第2の歯車520の板状部521は、第1の歯車510の板状部511を-60°(すなわち、負方向に1歯分)回転した形状となっている。
【0095】
このように、第5実施形態の2つの歯車510,520を構成する板状部511~513,521~523の形状は、円周三角波曲線CT1,CT2のうち、中心軸C11,C12に対して2回対称となる(180°の回転で重なり合う)ように選択された2つの凸領域と4つの凹領域とによって規定されている。従って、板状部511~513,521~523は、中心軸C11,C12に対して2回対称となる位置に設けられた2つの凸部と4つの凹部とを有している。
【0096】
第5実施形態の歯車機構500は、このように形状が規定された板状部511~513,521~523によって構成される2つの歯車510,520を、それぞれのピッチ円P11,P12が接触し、Z方向において対応する位置に配置された板状部(板状部511,521/板状部512,522/板状部513,523)が互いにかみ合うように配置することにより、実現される。
【0097】
なお、図7から判るように、歯数が6の第1の歯車510は、3つの板状部511~513を1歯分ずつ順次回転して積層することにより構成されている。そして、3つの板状部511~513は、中心軸C11に対して2回対称となっている。そのため、第1の歯車510においては、第1の歯車510を構成する3つの板状部511~513の外縁部が、2つの円周三角波曲線CT1,CT2を描いている。同様に、第2の歯車520においては、第2の歯車520を構成する3つの板状部521~523の外縁部が2つの円周三角波曲線CT1,CT2を描いている。
【0098】
図8は、第5実施形態の歯車機構500が動作する様子を示す説明図である。図8(a)ないし図8(c)は、それぞれ、図7(a)に示す状態における第1の板状部511,521、第2の板状部512,522および第3の板状部513,523の位置関係を示している。
【0099】
ここで、図8(a)ないし図8(c)に示した状態から、矢印で示すように、第1の歯車510(板状部511~513)を負の回転方向に回転することを考える。この場合、第1の歯車510の第1および第2の板状部511,512から、第2の歯車520の第1および第2の板状部521,522へは、回転に伴う応力が加わらないので、動力の伝達が行われない。
【0100】
しかしながら、第1の歯車510の第3の板状部513から、第2の歯車520の第3の板状部523へは、回転に伴う応力が加わるので、動力の伝達が行われ、第2の歯車(板状部521~523)は正の回転方向に回転する。これにより、第1の歯車510(板状部511~513)から、第2の歯車520(板状部521~523)に動力が伝達されるので、第5実施形態の歯車機構500(図7(a))も、従来の歯車機構と同様に動力の伝達を行うことができる。
【0101】
このように、第5実施形態では、2つの歯車510,520において、それぞれ3つの板状部(板状部511~513/板状部521~523)が、その外縁部が2つの円周三角波曲線CT1,CT2を描くように配置されているため、互いにかみ合う板状部(板状部511,521/板状部512,522/板状部513,523)のいずれかにおいて動力が伝達されるので、動力伝達効率の変動を抑制し、動力伝達効率をより高くすることができる
【0102】
但し、第1の板状部511,521と、第2の板状部512,522と、第3の板状部513,523とのいずれかを省略することも可能である。この場合、2つの歯車の回転角度および回転方向によって2つの歯車で動力の伝達がなされない状態が発生するため、動力の伝達が間欠的になり、動力伝達効率の変動が発生する。
【0103】
また、第5実施形態では、2つの歯車510,520のそれぞれについて3つの板状部511~513/521~523を積層しているが、積層する板状部の数をさらに多くすることも可能である。一般的には、歯車を構成する板状部の数は、歯車の歯数を、中心軸に対する板状部の対称回数で除した値以上であればよい。この場合、積層される板状部が、回転方向に対して等間隔に回転した状態に配置されていれば、板状部の外縁が2つの円周三角波曲線CT1,CT2を描くようにしない状態であっても、動力伝達効率の変動を抑制することができる。
【0104】
第5実施形態によっても、第1実施形態と同様に、バックラッシュの発生を抑制するとともに、歯形部の折損等の歯車の損傷を抑制することもできる。そして、2つの歯車510,520は、それぞれ別個に形成された同一形状の板状部511~513,521~523を組み合わせることにより形成できるので、バックラッシュが十分に抑制された歯車機構500をさらに容易に製造することができる。
【0105】
さらに、第5実施形態では、図7(a)に示すように、一方の歯車(歯車510/歯車520)の第2の板状部(板状部512/板状部522)が、他方の歯車(歯車520/歯車510)の第1の板状部(板状部521/板状部511)と第3の板状部(板状部523/板状部513)とによって挟み込まれる。このようにして、第5実施形態の歯車機構500では、2つの歯車510,520のZ方向における移動が規制されるので、別個の軸受けを省略しても、軸方向(Z方向)への荷重による2つの歯車510,520のかみ合いが外れることを抑制することができる。
【0106】
E2:第5実施形態の変形例:
[第1の変形例]
図9は、第5実施形態の第1の変形例としての歯車機構500aの構成を示す説明図である。図9(a)は、図7(a)と同一の斜視図であり、第5実施形態としての歯車機構500を示しており、図9(b)は、第1の変形例としての歯車機構500aを斜視図で示している。
【0107】
図9(b)に示すように、第1の変形例の歯車機構500aを構成する2つの歯車510a,520aは、第5実施形態の2つの歯車510,520に、さらに、第1の板状部511,521と同様に構成し配置された第4の板状部514,524と、第2の板状部512,522と同様に構成し配置された第5の板状部515,525と、第3の板状部513,523と同様に構成し配置された第6の板状部516,526とを積層することによって構成されている。言い換えれば、第1の変形例の歯車機構500aは、第5実施形態の歯車機構500をZ方向に2つ積層することによって構成されている。
【0108】
このように構成された第1の変形例の歯車機構500aは、第1の歯車510aと第2の歯車520aとの接触部分が広くなるため、第5実施形態の歯車機構500よりも、動力伝達効率を高くすることができる。一方、第5実施形態の歯車機構500は、第1の変形例の歯車機構500aよりも、部品点数を低減し、軸方向の長さを短縮できる。
【0109】
なお、第1の変形例の歯車機構500aは、第5実施形態の歯車機構500(2つの歯車510,520)をZ方向に2つ積層した構成となっているが、積層される一方の歯車機構500について、第1の歯車510を所定の角度回転し、当該回転に対応して第2の歯車520を回転させた状態で積層することもできる。この場合、回転角度を1歯分の整数倍以外(例えば、0.5歯分:30°)とすることにより、動力伝達効率の変動をより抑制することができる。また、積層する歯車機構500の数は、3以上としても良く、歯車機構500に一部の板状部(例えば、第4の板状部514,524)のみを積層するものとしてもよい。
【0110】
[第2の変形例]
図10は、第5実施形態の第2の変形例としての歯車機構500bの構成を示す説明図である。図10(a)は、2つの歯車510b,520の第1の板状部511b、521の形状を示している。また、図10(b)および図10(c)は、歯車機構500bの動作の様子を示している。なお、第2の変形例では、図10から判るように、第1の歯車510bについては、板状部511bの形状を第5実施形態から変更しているが、第2の歯車520については、第5実施形態から変更していない。
【0111】
なお、図10では、歯車機構500bの2つの歯車510b,520を構成する板状部のうち、最も+Z方向側に配置された第1の板状部511b、521のみを図示している。2つの歯車510b,520を構成する他の板状部は、第5実施形態の2つの歯車510,520(図7(a))と同様に、第1の板状部511b、521を順次回転した状態で-Z方向側に積層される。
【0112】
図10(a)に示すように、第1の歯車510bの板状部511bの形状は、図10の紙面上方から正方向の順に、2つの円周三角波曲線CT1,CT2(図7(b))のうちの凹領域、凸領域、凸領域、凹領域、凸領域および凸領域によって規定されている。
【0113】
このように、第2の変形例においては、第1の歯車510bを構成する板状部511bの形状は、円周三角波曲線CT1,CT2のうち、中心軸C11に対して2回対称となるように選択された4つの凸領域と2つの凹領域とによって、規定されている。従って、板状部511bは、中心軸C11に対して2回対称となる位置に設けられた4つの凸部と2つの凹部とを有している。
【0114】
歯車機構500bは、図10(b)に示すように、第5実施形態とは形状の異なる板状部511bを有する第1の歯車510bと、第5実施形態と同一の第2の歯車520とを、それぞれのピッチ円P11,P12が接触するように配置することにより構成される。そして、図10(c)に示すように、図10(b)に示す状態から第1の歯車510b(板状部511b)を-30°回転させると、第2の歯車520(板状部521)は、図10(b)に示す状態から+30°回転する。
【0115】
このように2つの歯車510b、520を回転させた場合、2つの歯車510b、520において互いに対向する部分(対向部分)は、第1の歯車510bでは、周方向において正方向に回転するように遷移していき、第2の歯車520では、周方向において負方向に回転するように遷移していく。次の表1は、このように遷移していく対向部分の周方向における位置と、対向部分における板状部511b,521の形状を規定する部分領域の凹凸とを示している。なお、周方向における対向部分の位置は、図10の紙面上方の位置を数値1で表し、回転に伴う遷移に対応して数値を1ずつ増加させている。
【表1】
【0116】
表1から判るように、第2の変形例においては、2つの歯車510b,520の回転に伴って遷移した対向部分における板状部511b,521の形状を規定する部分領域は、常時異なった状態に維持される。そのため、第2の変形例においては、2つの歯車510b,520の回転状態によらず、2つの板状部511b,521の干渉を回避することができる。
【0117】
ここで、第2の歯車において、板状部の形状を第1の歯車510bの板状部511bとした場合を考える。この場合における対向部分の周方向における位置と、対向部分における2つの歯車の板状部の形状を規定する部分領域の凹凸とは、次の表2の通りとなる。
【表2】
【0118】
表2から判るように、この場合、網掛けを施した位置2および5において、2つの歯車の板状部の形状を規定する部分領域は、いずれも凸領域となる。そのため、位置2および5が対向するような回転状態においては、2つの歯車の板状部が干渉し、歯車機構として機能させることができない。
【0119】
第5実施形態およびその第2の変形例においては、第1の歯車510,510bと第2の歯車520とで、歯数を同一(6)にしているので、上記表1および表2では、第1と第2の歯車の歯数をいずれも6にした際の様子を示している。しかしながら、一般的に歯車機構には、減速あるいは増速する機能を要求される。そこで、第1の歯車と第2の歯車との歯数が異なる場合を考える。
【0120】
次の表3および表4は、第1の歯車の歯数を6とし、第2の歯車の歯数を9とした場合における、対向部分の周方向における位置(以下、「対向位置」とも謂う)と、対向部分における2つの歯車の板状部の形状を規定する部分領域の凹凸とを示している。なお、表3では、第2の変形例と同様に、第1の歯車の板状部が4つの凸部と2つの凹部と有する場合を示し、表4では、第5実施形態と同様に、第1の歯車の板状部が2つの凸部と4つの凹部と有する場合を示している。
【表3】

【表4】
【0121】
表3および表4の例において、第1の歯車の歯数(6)と、第2の歯車の歯数(9)とには、1以外の公約数(3)が存在する。そのため、表3および表4に示すように、公約数と同数(3つ)の連続する対向位置ごとに、干渉を回避するように対向部分における部分領域の凹凸を選択し、その選択の態様を繰り返すようにすれば、すなわち、干渉を回避するように凹凸が選択された部分領域を繰り返すようにすれば、2つの歯車の回転状態によらず、2つの歯車がそれぞれ有する板状部の干渉を回避することができる。
【0122】
ここで、2つの歯車の歯数の公約数とは、一方の歯車の歯数が、他方の歯車の歯数の整数倍である場合、当該他方の歯車の歯数およびその約数(1を除く)を含むものとする。また、凹凸が選択された部分領域の繰り返しは、1以上、すなわち、当該部分領域1つのみであってもよい。
【0123】
具体的には、表3の例では、第1の歯車の板状部の形状を規定する部分領域は、位置1~3において、凹領域、凸領域および凸領域がこの順で選択されている。一方、第2の歯車の板状部の形状を規定する部分領域は、第1の歯車の板状部と反対の部分領域、すなわち、凸領域、凹領域および凹領域がこの順で選択されている。
【0124】
また、表4の例では、第1の歯車の板状部の形状を規定する部分領域は、位置1~3において、凹領域、凸領域および凹領域がこの順で選択されている。一方、第2の歯車の板状部の形状を規定する部分領域は、第1の歯車の板状部と反対の部分領域、すなわち、凸領域、凹領域および凸領域がこの順で選択されている。
【0125】
なお、表3および表4の例では、第1の歯車の板状部と第2の歯車の板状部とで、その形状を規定する部分領域として互いに反対の部分領域を選択しているが、一般的には、第1の歯車の板状部と第2の歯車の板状部とで、その形状を規定する部分領域は、2つの歯車の歯数(6および9)の公約数(3)と同数の連続する対向位置について、凸領域および凹領域から干渉しないように選択され、その選択の態様が繰り返されていればよい。例えば、表4の例において、位置1,2のいずれか一方について、凸領域に替えて凹領域を選択するようにすることも可能である。
【0126】
次の表5は、第1の歯車の歯数を6とし、第2の歯車の歯数を8とした場合における、対向部分の周方向における位置と、対向部分における2つの歯車の板状部の形状を規定する部分領域の凹凸とを示している。なお、表5の例では、第5実施形態と同様に、第1の歯車の板状部が2つの凸部と4つの凹部と有する場合を示している。
【表5】
【0127】
表5の例において、第1の歯車の歯数(6)と、第2の歯車の歯数(8)とには、1以外の公約数(2)が存在する。しかしながら、第1の歯車の板状部の形状を規定する部分領域は、位置1,2、位置3,4および位置5,6とで、凹領域および凸領域の選択の態様が異なっている。そのため、位置1~6において干渉が生じないように第2の歯車の板状部の形状を規定する部分領域を選択しても、2つの歯車の回転に伴って対向位置が進んでいくと、網掛けで示すように、2つの歯車の板状部の形状を規定する部分領域がいずれも凸領域となる対向位置(位置11)が現れる。
【0128】
このように、第1の歯車の板状部と第2の歯車の板状部とで、その形状を規定する部分領域は、2つの歯車の歯数(6および8)の公約数(2)と同数の連続する対向位置について、凸領域および凹領域から干渉しないように選択されていても、その選択の態様が繰り返されていなければ、2つの歯車の回転状態によらず、2つの歯車がそれぞれ有する板状部の干渉を回避することが困難となる。
【0129】
次の表6は、第1の歯車の歯数を6とし、第2の歯車の歯数を5とした場合における、対向部分の周方向における位置と、対向部分における2つの歯車の板状部の形状を規定する部分領域の凹凸とを示している。なお、表6の例では、第5実施形態と同様に、第1の歯車の板状部が2つの凸部と4つの凹部と有する場合を示している。
【表6】
【0130】
表6の例において、第1の歯車の歯数(6)と、第2の歯車の歯数(5)とには、1以外の公約数が存在しない。そのため、位置1~6において干渉が生じないように第2の歯車の板状部の形状を規定する部分領域を選択しても、2つの歯車の回転に伴って対向位置が進んでいくと、網掛けで示すように、2つの歯車の板状部の形状を規定する部分領域がいずれも凸領域となる対向位置(位置8)が現れる。
【0131】
このように、第1の歯車の歯数と、第2の歯車の歯数とに、1以外の公約数が存在しない場合、2つの歯車の回転状態によらず、2つの歯車がそれぞれ有する板状部の干渉を回避することができない。
【0132】
F.第6実施形態:
F1.歯車機構の構成:
図11は、第6実施形態の歯車機構600の構成および動作を示す説明図である。図11(a)は、歯車機構600を構成する2つの歯車610,620の構成を示し、図11(b)および図11(c)は、2つの歯車610,620をかみ合わせた歯車機構600の動作の様子を示している。図11から判るように、第6実施形態の歯車機構600は、外歯車であるピニオン610と、棒状の歯車であるラック620とをかみ合わせて構成されるラックアンドピニオンである。
【0133】
図11(a)に示すように、歯車機構(ラックアンドピニオン)600を構成するピニオン610は、+Z方向側に配置された凸型板状部である第1の板状部611と、-Z方向側に配置された凹型板状部である第2の板状部612とを有している。また、中心軸C6を中心とするピッチ円P6の径と、板状部611,612の形状を規定する円周三角波曲線CT1,CT2(図2(b))とは、第1実施形態と同一である。
【0134】
ラックアンドピニオン600を構成するラック620は、+Z方向側に配置された第1の平棒部621と、-Z方向側に配置された第2の平棒部622とを有している。ラック620を構成する平棒部621,622は、ピニオン610を構成する板状部611,612と厚みが同一に設定されている。
【0135】
第1の平棒部621は、ピニオン610側(歯側)の縁部の形状が、三角波曲線LT1,LT2(図2(a))において、基準線LRよりも歯側の反対側に位置する部分領域(凹領域)によって規定される。一方、第2の平棒部622は、歯側の縁部の形状が、三角波曲線LT1,LT2において、基準線LRよりも歯側に位置する部分領域(凸領域)によって規定される。
【0136】
このように、第1の平棒部621は、歯側の縁部の形状が凹領域によって規定された凹部のみを有しているので、「凹型平棒部」とも謂うことができる。一方、第2の平棒部622は、歯側の縁部の形状が凸領域によって規定された凸部のみを有しているので、「凸型平棒部」とも謂うことができる。
【0137】
なお、第1実施形態では、基準線LRの延長を三角波曲線LT1,LT2の3周期分としているが、第6実施形態では、基準線LRおよび三角波曲線LT1,LT2が、基準線LRの延長方向に連続的に接続されているものとして扱っている。
【0138】
図11(b)に示すように、ピニオン610とラック620とは、ピニオン610のピッチ円P6とラック620の基準線LRとが接触するように配置される。これにより、ピニオン610とラック620がかみ合い、ピニオン610の回転がラック620に伝達され、ピニオン610とラック620とが、ラック620の基準線LRの方向に相対的に移動するラックアンドピニオン600が実現される。
【0139】
そして、図11(c)に示すように、図11(b)に示す状態からピニオン610を-30°回転させると、ピニオン610は、ラック620の0.5ピッチ分、図11の紙面における左方向にラック620に対して相対的に移動する。
【0140】
このように、第6実施形態によれば、形状を円周三角波曲線CT1,CT2で規定した板状部611,612を有するピニオン610と、形状を三角波曲線LT1,LT2で規定した平棒部621,622を有するラック620とをかみ合わせることにより、従来のラックアンドピニオンと同様に動力の伝達を行うことができる。なお、このように、第6実施形態のラックアンドピニオン600を構成するラック620も、形状が三角波曲線LT1,LT2で規定されているので、「三角波歯車」とも謂うことができる。
【0141】
また、第1実施形態と同様に、ピニオン610が回転してラック620に対して相対的に移動する際において、ピニオン610の第1の板状部611とラック620の第1の平棒部621とが接触した状態に維持されるとともに、ピニオン610の第2の板状部612とラック620の第2の平棒部622とが接触した状態に維持される。そのため、第6実施形態においても、ラックアンドピニオン600におけるバックラッシュを抑制することができる。そして、第6実施形態においても、ピニオン610が凸型板状部611と凹型板状部612とを有し、ラック620が凹型平棒部621と凸型平棒部622とを有しているので、ピニオン610とラック620との間での動力伝達効率の変動を抑制し、動力伝達効率をより高くすることができる。
【0142】
さらに、第6実施形態においてピニオン610を構成する板状部611,612は、凹部の底から凸部の先までの歯形部の形状が外方に向かって凸な形状となっており、ラック620を構成する平棒部621,622は、歯側の縁部(歯形部)の形状が折れ線様の形状となっている。そのため、ピニオン610およびラック620においては、歯形部における応力の集中が抑制されるので、歯形部の折損等のピニオン610やラック620の損傷が抑制される。
【0143】
上述の通り、外歯車であるピニオン610は、フライス加工等の切削加工等により形成し、あるいは、別個に形成された凸型板状部と凹型板状部とを組み合わせることにより形成することができる。また、ラック620は、2つの平棒部621,622によって構成されているので、フライス加工等の切削加工等により形成し、あるいは、別個に形成された凹型平棒部621と凸型平棒部622とを組み合わせることにより形成することができる。このように、第6実施形態によれば、ピニオン610とラック620との製造がより容易となるので、バックラッシュが十分に抑制されたラックアンドピニオン600をより容易に実現することができる。
【0144】
F2.第6実施形態の変形例:
図12は、第6実施形態の変形例を示す説明図である。図12(a)および図12(b)は、第1の変形例としてのラックアンドピニオン600aの構成と動作を示し、図12(c)および図12(d)は、第2の変形例としてのラックアンドピニオン600bの構成と動作を示し、図12(e)および図12(f)は、第3の変形例としてのラックアンドピニオン600cの構成と動作を示している。
【0145】
図12に示すように、これらのラックアンドピニオン600a,600b,600cは、いずれも、ピニオン610a,610b,610cと、ラック620a,620b,620cとで構成されている。ピニオン610a,610b,610cは、+Z方向側に配置された第1の板状部611a,611b,611cと、-Z方向側に配置された第2の板状部612a,612b,612cとを有している。また、ラック620a,620b,620cは、+Z方向側に配置された第1の平棒部621a,621b,621cと、-Z方向側に配置された第2の平棒部622a,622b,622cとを有している。
【0146】
図12(a)および図12(b)に示す第1の変形例は、ラック620aが有する2つの平棒部621a,622aの形状が、2つの三角波曲線LT1,LT2(図2(a))に替えて2つのサイクロイド曲線で規定されている点と、ピニオン610aが有する2つの板状部611a,612aの形状が2つのサイクロイド曲線をピッチ円に巻き付けた円周サイクロイド曲線で規定されている点とで、第6実施形態と異なっている。他の点は、第6実施形態と同様である。
【0147】
図12(c)および図12(d)に示す第2の変形例は、ラック620bが有する2つの平棒部621b,622bの形状が、2つの三角波曲線LT1,LT2(図2(a))に替えて2つのシニュソイド曲線で規定されている点と、ピニオン610bが有する2つの板状部611b,612bの形状が2つのシニュソイド曲線をピッチ円に巻き付けた円周シニュソイド曲線で規定されている点とで、第6実施形態と異なっている。他の点は、第6実施形態と同様である。
【0148】
図12(e)および図12(f)に示す第3の変形例は、ラック620cが有する2つの平棒部621c,622cの形状が、2つの三角波曲線LT1,LT2(図2(a))に替えて2つの鋸波曲線で規定されている点と、ピニオン610cが有する2つの板状部611c,612cの形状が2つの鋸波曲線をピッチ円に巻き付けた円周鋸波曲線で規定されている点とで、第6実施形態と異なっている。他の点は、第6実施形態と同様である。
【0149】
図12に示すように、第1ないし第3の変形例のラックアンドピニオン600a,600b,600cにおいても、第6実施形態と同様に、ピニオン610a,610b,610cを-30°回転させると、ピニオン610a,610b,610cは、ラック620a,620b,620cの0.5ピッチ分、図12の紙面における左方向にラック620a,620b,620cに対して相対的に移動する。
【0150】
そして、図12から判るように、ピニオン610a,610b,610cが回転してラック620a,620b,620cに対して相対的に移動する際に、ピニオン610a,610b,610cとラック620a,620b,620cとの干渉が生じないため、第1ないし第3の変形例のラックアンドピニオン600a,600b,600cも、従来のラックアンドピニオンと同様に動作する。
【0151】
このように、ラックアンドピニオン600a,600b,600cの場合、歯車(ラック620a,620b,620cおよびピニオン610a,610b,610c)の形状を規定する曲線としては、三角波曲線LT1,LT2および円周三角波曲線CT1,CT2と異なる種類の周期曲線(サイクロイド曲線および円周サイクロイド曲線,シニュソイド曲線および円周シニュソイド曲線,鋸波曲線および円周鋸波曲線)を使用することが可能である。
【符号の説明】
【0152】
100…歯車機構
110,120…歯車
111,112,121,122…板状部
C11,C12…中心軸
LR…基準線
LT1,LT2…三角波曲線
P11,P12…ピッチ円
CT1,CT2…円周三角波曲線
200…歯車機構
210,220…歯車
211,212,221,222…板状部
C21,C22…中心軸
P21,P22…ピッチ円
300…歯車機構
310…歯車
311,312…板状部
C31…中心軸
P31…ピッチ円
400…遊星歯車機構
410,420,430…歯車
418,419…環状部
421,422,431,432…板状部
C41,C43…中心軸
P41,P42,P43…ピッチ円
500…歯車機構
510,520…歯車
511~513,521~523…板状部
500a…歯車機構
510a,520a…歯車
514~516,524~526…板状部
500b…歯車機構
510b,520b…歯車
511b,521b…板状部
600…歯車機構
610…ピニオン
611,612…板状部
620…ラック
621,622…平棒部
C6…中心軸
P6…ピッチ円
600a…ラックアンドピニオン
610a…ピニオン
611a,612a…板状部
620a…ラック
621a,622a…平棒部
C6a…中心軸
600b…ラックアンドピニオン
610b…ピニオン
611b,612b…板状部
620b…ラック
621b,622b…平棒部
C6b…中心軸
600c…ラックアンドピニオン
610c…ピニオン
611c,612c…板状部
620c…ラック
621c,622c…平棒部
C6c…中心軸
900…歯車機構
910,920…インボリュート歯車
C91,C92…中心軸
P91,P92…ピッチ円
図1
図2
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図13