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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037145
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】切除装置の取外方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/00 20060101AFI20230308BHJP
   F16L 41/06 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
F16L55/00 C
F16L41/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143706
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000105556
【氏名又は名称】コスモ工機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】玉田 聡
【テーマコード(参考)】
3H019
【Fターム(参考)】
3H019CB01
3H019CB02
(57)【要約】
【課題】吊上能力を低く抑えたクレーンを用いて切片と共に取外すことが可能な切除装置の取外方法を提供する。
【解決手段】流体管1に取り付けられた筐体2の内部で、流体管1を切断した後、不断流状態で流体管1から切断された切片1aと共にクレーンを用いて切除装置5を取り外す取外方法であって、切片1aと共にカッタ52を、筐体2内を開閉可能な作業弁4よりも筐体2の開口部2b側に移動させた後、作業弁4を閉塞する閉塞工程と、クレーンを用いてカッタ52との接続を解除した駆動機構8を撤去する駆動機構撤去工程と、クレーンを用いて筐体2との接続を解除した蓋体53を撤去する蓋体撤去工程と、クレーンを用いてカッタ52を切片1aと共に筐体2より撤去するカッタ撤去工程と、からなる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に取り付けられた筐体の内部で、前記流体管を切断した後、不断流状態で前記流体管から切断された切片と共にクレーンを用いて切除装置を取り外す取外方法であって、
前記切除装置は、前記切片を保持するカッタと、前記筐体の開口部に設置される蓋体と、前記カッタを駆動させるための駆動機構と、を少なくとも備え、
前記切片と共に前記カッタを、前記筐体内を開閉可能な作業弁よりも前記筐体の開口部側に移動させた後、前記作業弁を閉塞する閉塞工程と、
前記クレーンを用いて前記カッタとの接続を解除した前記駆動機構を撤去する駆動機構撤去工程と、
前記クレーンを用いて前記筐体との接続を解除した前記蓋体を撤去する蓋体撤去工程と、
前記クレーンを用いて前記カッタを前記切片と共に前記筐体より撤去するカッタ撤去工程と、からなることを特徴とする切除装置の取外方法。
【請求項2】
前記切除装置は、前記作業弁よりも前記筐体の開口部側に移動させた前記カッタを保持する保持手段を更に備え、
前記閉塞工程と前記蓋体撤去工程との間に、前記保持手段により前記カッタを保持させる保持工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の切除装置の取外方法。
【請求項3】
前記保持手段は、前記筐体に対して径方向に移動可能に設けられている保持具を備え、
前記保持工程では、前記保持具を前記筐体の内方に進出させて前記カッタを保持することを特徴とする請求項2に記載の切除装置の取外方法。
【請求項4】
前記蓋体は、前記駆動機構を前記カッタと共に前記流体管から離間方向に移動させる移動手段を備え、
前記保持工程では、前記移動手段によって前記駆動機構と共に前記カッタを前記流体管から離間方向に移動させた後、前記保持具を前記筐体の内方に進出させることを特徴とする請求項3に記載の切除装置の取外方法。
【請求項5】
前記カッタ撤去工程において、前記カッタに前記クレーンを連結するための被吊持手段を設けることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の切除装置の取外方法。
【請求項6】
前記カッタ撤去工程において、前記カッタにおける周方向の等配箇所に設けられる複数の前記被吊持手段に前記クレーンを連結することを特徴とする請求項5に記載の切除装置の取外方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管に取り付けられている筐体に対して、この流体管の一部を切除する切除装置を不断流状態で取り外す取外方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水やガス等が流れる既設の管路を構成する流体管は、経年劣化の対処や新たな分岐路を形成するために、既設の流体管の一部を新たな流体管に変更したり、経年劣化した管路を遮断したりすることがある。このような場合には、切除装置を用いて流体管の一部を切除することがある。
【0003】
このように流体管を切除する方法として、不断流状態で流体管を切除する方法が知られている。このような方法では、既設の流体管の管壁に密封状に取付けられる筐体と、筐体内部を開閉可能な作業弁と、筐体の開口部に密封状に取付けられる切除装置と、が用いられる。この切除装置は、流体管を切除するためのカッタと、筐体の開口部を密封状に閉塞可能な蓋体と、カッタを進退移動及び回転動作させるための駆動機構と、から主に構成されている。
【0004】
これらの部材で構成された切除装置を用いて流体管を切除するにあたっては、筐体内部にカッタを配置した状態で筐体の開口部を蓋体で閉塞し、駆動機構により回転動作するカッタを流体管に向かって進出させて流体管を切断し、駆動機構により切断した切片と共にカッタを作業弁よりも上方に後退させた後、作業弁で筐体内部を閉塞することで、一連の工程に亘って不断流状態を保つことができる。
【0005】
このような切除装置は、一般的にクレーンで吊架されて筐体内の設置位置に取付けられる。特に流体管の管径が大きい場合には、切除装置の構造も大きくなり、重量が嵩むため、一体に組み立てられた状態で切除装置を運搬するには、吊上能力の高い大型のクレーンを用意する必要がある。そのため、クレーンの配置や取り回しに広いスペースが要求される。
【0006】
そこで、例えば特許文献1に示される切除装置の取付けにあっては、クレーンを用いてカッタとともに筐体の上部を閉塞するための蓋体を吊架し、蓋体を筐体に密封状に取付けた後、同じクレーンを用いて駆動機構を別工程にて吊架し、駆動機構とカッタ及び蓋体を連結することで、切除装置を組立てる。これにより、クレーンに対して要求される吊上能力を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-74123号公報(第6,7頁、第5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような特許文献1の切除装置の取付けにあっては、吊上能力を低く抑えたクレーンを用いて切除装置を筐体に取り付けることが可能であるため、広いスペースが確保できない作業環境であっても作業弁を取り付けることができる。
【0009】
一方、流体管を切断した後に切除装置を筐体から取外すにあたっては、切除装置を取付けるときとは逆の工程で、すなわち駆動機構と、カッタを保持している蓋体とに分けて、筐体から撤去することが行われている。しかしながら、切断後のカッタは流体管の切片を保持していることから重量が嵩んでおり、特に切片は流体管の管径が大となる程、若しくは流体管の切断部分が大きくなる程その重量が増すため、切除装置の取付け時に使用した当該クレーンの吊上能力を超過してしまう虞があった。そのため、切片の重量を見越して吊上能力の高いクレーンを用意する必要があった。
【0010】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、吊上能力を低く抑えたクレーンを用いて切片と共に取外すことが可能な切除装置の取外方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の切除装置の取外方法は、
流体管に取り付けられた筐体の内部で、前記流体管を切断した後、不断流状態で前記流体管から切断された切片と共にクレーンを用いて切除装置を取り外す取外方法であって、
前記切除装置は、前記切片を保持するカッタと、前記筐体の開口部に設置される蓋体と、前記カッタを駆動させるための駆動機構と、を少なくとも備え、
前記切片と共に前記カッタを、前記筐体内を開閉可能な作業弁よりも前記筐体の開口部側に移動させた後、前記作業弁を閉塞する閉塞工程と、
前記クレーンを用いて前記カッタとの接続を解除した前記駆動機構を撤去する駆動機構撤去工程と、
前記クレーンを用いて前記筐体との接続を解除した前記蓋体を撤去する蓋体撤去工程と、
前記クレーンを用いて前記カッタを前記切片と共に前記筐体より撤去するカッタ撤去工程と、からなることを特徴としている。
この特徴によれば、カッタの撤去に先行して、筐体との接続を解除した蓋体を撤去することにより、カッタを切片と共に撤去する際のクレーンに対する負荷を軽減できる。これにより、取付時に使用した吊上能力を低く抑えたクレーンを用いて、切片と共に切除装置を取外すことができる。
【0012】
前記切除装置は、前記作業弁よりも前記筐体の開口部側に移動させた前記カッタを保持する保持手段を更に備え、
前記閉塞工程と前記蓋体撤去工程との間に、前記保持手段により前記カッタを保持させる保持工程を行うことを特徴としている。
この特徴によれば、保持具によりカッタを筐体に保持させることができるため、蓋体を取外すことができる。
【0013】
前記保持手段は、前記筐体に対して径方向に移動可能に設けられている保持具を備え、
前記保持工程では、前記保持具を前記筐体の内方に進出させて前記カッタを保持することを特徴としている。
この特徴によれば、カッタを保持するための操作を外部から行うことができる。
【0014】
前記蓋体は、前記駆動機構を前記カッタと共に前記流体管から離間方向に移動させる移動手段を備え、
前記保持工程では、前記移動手段によって前記駆動機構と共に前記カッタを前記流体管から離間方向に移動させた後、前記保持具を前記筐体の内方に進出させることを特徴としている。
この特徴によれば、保持具によってカッタを保持する作業を容易に行うことができる。
【0015】
前記カッタ撤去工程において、前記カッタに前記クレーンを連結するための被吊持手段を設けることを特徴としている。
この特徴によれば、クレーンをカッタに容易に接続することができる。
【0016】
前記カッタ撤去工程において、前記カッタにおける周方向の等配箇所に設けられる複数の前記被吊持手段に前記クレーンを連結することを特徴としている。
この特徴によれば、クレーンによりカッタを吊持する際の重量バランスを取りやすい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例における流体管に筐体を取付けた様子を示す側断面図である。
図2】切断機を取付ける工程において、カッタを筐体内に挿入する様子を示す側断面図である。
図3】切断機を取付ける工程において、カッタに駆動機構を接続する様子を示す側断面図である。
図4】切断機を取付ける工程において、カッタに駆動機構を接続した様子を示す側断面図である。
図5】切断機により流体管を切断する様子を示す側断面図である。
図6】切断機を取外す工程において、筐体を作業弁により閉塞した様子を示す側断面図である。
図7】切断機を取外す工程において、カッタを保持する様子を示す側断面図である。
図8】切断機を取外す工程において、駆動機構をカッタより取外した様子を示す側断面図である。
図9】切断機を取外す工程において、蓋体を筐体より取外す様子を示す側断面図である。
図10】カッタとクレーンとの連結について説明するための平面図である。
図11】切断機を取外す工程において、カッタを切片と共に筐体より抜出す様子を示す側断面図である。
図12】別態様のカッタとクレーンとの連結について説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る切除装置の取外方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0019】
実施例においては、流路構成部材を構成する既設の流体管1の所定箇所を、切除装置としての切断機5により切断し、切断機5を不断流状態で取外すまでの一連の流れを図1から図12を参照して説明する。
【0020】
図1に示されるように、地中に埋設された流体管1の所定箇所の周囲を掘削し、上方に開口する分岐部2aを有する2分割構造の筐体2を密封状に囲繞する。尚、流体管1内の流体は、例えば、上水や工業用水、下水等の他、ガスやガスと液体との気液混合体であっても構わない。更に尚、筐体2は、本実施例では2分割構造であるが、他の複数分割構造であってもよく、分割筐体同士の接合は、溶接若しくはパッキンを介しボルトにより取付けても構わない。
【0021】
流体管1は、鋼管であって、断面視略円形状に形成されている。尚、本発明に係る流体管は、その他鋳鉄、ダクタイル鋳鉄等の金属製、あるいはコンクリート製、塩化ビニール製、ポリエチレン製若しくはポリオレフィン製等であってもよい。更に尚、流体管の内周面はエポキシ樹脂層、モルタル、めっき等により被覆されてもよく、若しくは適宜の材料を粉体塗装により流体管の内周面に被覆してもよい。
【0022】
また、流体管1に筐体2を取付ける際には、筐体2の下方に図示しないコンクリート基礎を形成し、筐体2周辺の重量を支持して流体管1の折れ曲がり等を防止する。尚、筐体2や切断機5の重量を支持できるものであれば、コンクリート基礎に限られず、ジャッキなどを用いてもよい。
【0023】
また、流体管1の管壁と筐体2との間には、パッキン(図示略)が周方向に亘って圧接されるため、流体管1と筐体2との間の密封性を確保できる。尚、パッキンは、筐体2側に設けられた凹溝に圧入されてもよいし、流体管1側に設けられた凹溝に圧入されていてもよい。
【0024】
また、筐体2は、分岐部2aの開口を閉塞可能な作業弁4を備えている。作業弁4は、分岐部2aの上方に密封状に接続されている略筒状の弁箱41と、弁箱41の弁座41aに着座可能な弁体42と、弁箱41に密封状に接続され、弁体42を収容可能な弁蓋43と、弁体42を弁蓋43に対して進退可能に接続する弁棒44と、から主に構成されている。作業弁4は、弁棒44を正・逆回転させることにより、弁体42を弁箱41側に進出させて弁箱41の弁座に着座させることで筐体2内を閉塞することができ、あるいは弁体42を弁蓋43側に後退させることで筐体2内を開放することができる。
【0025】
また、筐体2は、弁箱41の上方に密封状に接続されている略筒状の取付フランジ筒21を備えている。取付フランジ筒21の上端には、上方に開口された開口部2bが形成されている。
【0026】
次に、取付フランジ筒21の上方に流体管1を切断するための切断機5を取付ける工程について説明する。図2に示されるように、先ず、取付フランジ筒21に対してカッタ52及び蓋体53を仮設置する。詳しくは、カッタ52及びその上方に接続されている取付フランジ筒21の蓋体53を一緒に、図示しないクレーンに吊支されるフックを備えた吊り具C及びワイヤWにより吊持して、取付フランジ筒21の上方まで下降させる。
【0027】
尚、本実施例で使用されるクレーンは、例えば移動式のラフテレーンクレーンが好適であり、言うまでもなくその吊上能力に応じて大型化するものである。また、クレーンの設置面積は、アウトリガー等を含めると、流体管1の掘削面積よりも広い面積を要する場合が多い。尚、使用するラフテレーンクレーンの選定については、各部材の中で最も重量の大きい部材を吊り上げ可能な吊上能力の有無、旋回半径における許容吊り上げ荷重等を基準に行われる。
【0028】
カッタ52は、周端に切断刃を備えた円筒部材52aと、この円筒部材52aに同軸に配設され穿孔刃よりも先方に突出したセンタドリル52bと、からなり、円筒部材52aとセンタドリル52bとは固定されている。また、円筒部材52aとセンタドリル52bとの上方には、上端に環状突部54aが形成されたアダプタ54が相対回転不能に取付けられている。
【0029】
蓋体53は、中心部に上下方向に貫通する貫通孔53aが形成されており、貫通孔53aにアダプタ54が挿通されている。また、蓋体53は、貫通孔53aの内周面から外径方向に凹設される凹部53bが周方向に複数形成されており、凹部53bには、貫通孔53aの径方向に進退可能な固定冶具55が配設されている。固定冶具55が貫通孔53aの内径方向に突出し、アダプタ54の環状突部54aの下面に係止することで、カッタ52と蓋体53とが解除可能に接続されている。また、蓋体53の上面には、貫通孔53aよりも外径側にて上下方向に伸縮可能な複数のジャッキ7(移動手段)が固定されている。
【0030】
次いで、図3に示されるように、取付フランジ筒21の上方に蓋体53を載置するとともに、この状態で取付フランジ筒21と蓋体53との位置合わせを行い、図示しないボルトナットにより固定する。これにより筐体2を構成する取付フランジ筒21の開口部2bは密封されるとともに、カッタ52は取付フランジ筒21の内部に収容されることとなる。
【0031】
また、取付フランジ筒21の開口部2bと蓋体53との間には、パッキン(図示略)が周方向に亘って圧接されるため、取付フランジ筒21と蓋体53との間の密封性を確保できる。尚、パッキンは、蓋体53側に設けられた凹溝に圧入されてもよいし、取付フランジ筒21側に設けられた凹溝に圧入されていてもよい。
【0032】
次に、切断機5の駆動機構8をカッタ52に接続する。先ず、駆動機構8の構造について説明する。
【0033】
図3に示されるように、駆動機構8は、軸部材81と、軸部材81を把持若しくは把持解除可能な把持部材82と、把持部材82を軸部材81の軸方向の範囲内で進退移動させる進退部材83と、進退部材83よりも下方の位置で軸部材81を移動規制若しくは規制解除可能な規制部材84と、進退部材83及び規制部材84が取付けられる基部材85と、から主に構成されている。
【0034】
基部材85には、上方に立設する支柱部が複数設けられており、進退部材83は、支柱部に沿って上下方向にスライド移動可能に取付けられている。すなわち、軸部材81を把持部材82により把持し、その状態で進退部材83を支柱部に沿って移動させることにより、軸部材81を上下方向にスライドさせることができるようになっている。
【0035】
また、基部材85の下方には、軸部材81を挿通可能な筒状のケース部86が設けられている。ケース部86の下端縁には略水平方向に延びる延出片部86aが形成されている。
【0036】
また、進退部材83の一部には、回転モータ87が固設されており、回転モータ87によって軸部材81を把持した状態の把持部材82に対して回転力を付与することによって軸部材81に回転を伝えることができるとともに、軸部材81が回転することにより、カッタ52を回転させることができるようになっている。尚、軸部材81は、複数用意することで、軸方向に継ぎ足して軸方向の長さを長くできるようになっており、このような継ぎ足し構造のため、重量と高さを軽減することができる。
【0037】
このように構成された駆動機構8をカッタ52と接続する際には、図4を参照して、軸部材81を予め所定長さ下方に進行させ、軸部材81の下端部がケース部86よりも下方に突出した状態とし、吊り具C及びワイヤWにより駆動機構8を吊り下げ、ケース部86の延出片部86aをジャッキ7の基部から上方に延出させたロッドの上端に固定する。
【0038】
次いで、ケース部86と蓋体53の上部フランジ53cとの隙間から作業者がアクセスして、軸部材81とアダプタ54とをボルトナットにより接続する。そして、固定冶具55を凹部53b内に退避させる。ここで延出片部86aは必ずしも必要なものではなく、例えば上部フランジ53cと駆動機構8との間に支持機構を載置してもよい。また上部フランジ53cではなく地面に載置しても構わない。
【0039】
続いて、図4に示されるように、ジャッキ7の基部内にロッドを収納させ、ケース部86を蓋体53の上部フランジ53cに載置させ、図示しないボルトナットによりケース部86と蓋体53とを固定する。これにより、カッタ52、蓋体53、アダプタ54及び駆動機構8により切断機5が構成されるため、切断機5を一体に運搬する場合と比較して、一度の吊持においてクレーンに対してかかる負荷を軽減することができる。これにより、吊上能力を低く抑えた小型のクレーンを用いて切断機5を筐体2に設置することができる。この際、センタドリル52bが閉止時の弁体42と接触しないように調整されるのは言うまでもない(図6参照)。
【0040】
尚、本実施例では、ジャッキ7により駆動機構8を下降させる形態を例示したが、安全性を高めるために吊り具C及びワイヤWにより緩く吊持しながらジャッキ7により駆動機構8を下降させてもよい。このようにすることで、クレーンにかかる荷重を減らし、クレーンへの負荷を軽減できる。また、ジャッキ7を用いずクレーンにより駆動機構8を下降させてもよい。
【0041】
また、ケース部86と蓋体53とを固定したときには、パッキン(図示略)がケース部86と蓋体53の上部フランジ53cとの間で圧接されるため、ケース部86と蓋体53との間の密封性を確保できる。尚、パッキンは、ケース部86の下面に形成された環状溝に圧入されていてもよいし、蓋体53の上部フランジ53c側に設けられた環状溝に圧入されていてもよい。
【0042】
次に、図5に示されるように、作業弁4の弁体42を弁蓋43内に退避させて分岐部2aを開放した状態で、駆動機構8を操作してカッタ52を進行させながら流体管1を不断流状態で切断する。この際、軸部材81に、別の軸部材81’を連結することで、カッタ52を移動させる距離を適宜調整することができる。
【0043】
尚、筐体2の底部には、下方に凹むように凹部2eが形成されており、カッタ52により流体管1を切断した際には、円筒部材52aの下端よりも下方に突出するセンタドリル52bが凹部2e内に離間状態で収容されるようになっているため、センタドリル52bが筐体2を不測に損傷する虞を防止できる。
【0044】
更に尚、凹部2eの底部には、図示しない弁が取付けられている。この弁を開放することで、カッタ52により流体管1を切断する際に発生する切り粉を流体と共にドレンを通じて外部へ排出できる。
【0045】
ここで、図6に示されるように、センタドリル52bの先端には、このセンタドリル52bの外径方向に拡張可能であって、後述する流体管1の切片1aを係止して保持するための保持具52gが設けられている。この保持具52gは、センタドリル52bが流体管1の管壁を穿孔している途中では、図6の吹き出し内にて点線で図示するように、センタドリル52bの外周面よりも内径側に収納されており、管壁を貫通した状態では、図6の吹き出し内にて実線で図示するように、センタドリル52bの外周面よりも外径側に拡張される。これにより、カッタ52により切断された流体管1の切片1aは、保持具52gに係止され、円筒部材52aの内側に保持されている。
【0046】
次に、切断機5の取外方法について説明する。切断機5の取外しは、閉塞工程、保持工程、駆動機構撤去工程、蓋体撤去工程、カッタ撤去工程の順で行われる。
【0047】
先ず、図6に示されるように、閉塞工程を行う。本工程では、駆動機構8を操作してカッタ52を切片1aとともに上方に引き上げ、作業弁4の弁体42が移動可能な位置よりも上方側の取付フランジ筒21内に後退させる。そして、弁棒44を正回転させて弁体42を弁箱41内に進出させて筐体2内を閉塞状態とする。
【0048】
次いで、図7に示されるように、保持工程を行う。本工程では、最初に駆動機構8のケース部86と蓋体53の上部フランジ53cとを固定しているボルトナットを取外し、ジャッキ7を伸長させ、駆動機構8とカッタ52と共に上方側へと移動させる。
【0049】
ここで、取付フランジ筒21の周壁には、その内周面から外径方向に凹設される凹部21aが周方向に複数形成されている。図7の吹き出し内に示すように、凹部21aには、取付フランジ筒21の径方向に進退可能な保持具90が配設されている。保持具90は、凹部21aの内周面によって回止がなされている。また、凹部21aにおける外径端には、スピンドル91が回転可能に軸支されている。このスピンドル91には、保持具90の雌ネジ穴に螺合されている雄ネジが形成されている。
【0050】
これにより、取付フランジ筒21の外側に開放されているスピンドル91の操作部を正・逆回転させることにより、保持具90は取付フランジ筒21の内径側に進出し、あるいは保持具90は凹部21a内に後退する。すなわち、筐体2の一部である取付フランジ筒21、保持具90及びスピンドル91は、本発明の保持手段9を構成している。
【0051】
また、カッタ52には、円筒部材52aの上端に、外径側に突出形成されている環状のフランジ52cが形成されている。尚、フランジ52cは、後述するカッタ52の上端部52d(図10参照)に形成されていてもよく、カッタ52を保持可能であればその形成箇所や形状は適宜変更されてもよく、例えば環状ではなく保持具90の位置に合わせた突起状でもよい。
【0052】
保持工程の説明に戻って、取付フランジ筒21の外側からスピンドル91を正回転させて、保持具90を取付フランジ筒21の内径側へと進出させ、カッタ52のフランジ52cの下面に係止することで、カッタ52が筐体2に保持される。このとき、上述したようにジャッキ7によりカッタ52が移動されているため、保持具90によってカッタ52を容易に保持することができる。また、カッタ52のフランジ52cにより、保持具90がカッタ52を容易に係止できるようになっている。
【0053】
次いで、図7図8に示されるように、駆動機構撤去工程を行う。本工程では、軸部材81とアダプタ54とを接続しているボルトナットを取外し、これらの接続を解除する。尚、これらの接続を解除しても、カッタ52及び切片1aの荷重は、保持具90によって筐体2に保持されている。続けて、ジャッキ7のロッドとケース部86の延出片部86aとの固定も解除する。そして、直接の図示は省略するが、吊り具C及びワイヤWにより駆動機構8を吊り上げ、撤去する(図8参照)。
【0054】
次いで、図8図9に示されるように、蓋体撤去工程を行う。本工程では、取付フランジ筒21と蓋体53とを固定しているボルトナットを取外し、吊り具C及びワイヤWにより蓋体53を吊り上げ、撤去する(図9参照)。
【0055】
次いで、図10図11に示されるように、カッタ撤去工程を行う。本工程では、図10に示されるように、最初にカッタ52の上端部52dに周方向に等配に形成されている4つの雌ネジ孔52eに、シャックルSを取付ける。このとき、筐体2の上端である開口部2b近傍にてカッタ52が保持されているためシャックルSの取付が容易である。
【0056】
そして、シャックルSにワイヤWを連結し、吊り具C及びワイヤWによりカッタ52を切片1aと共に吊り上げ、撤去する(図11参照)。このとき、雌ネジ孔52eは、カッタ52の周方向に4等配されているため、カッタ52を吊持する際の重量バランスを取りやすい。これにより、カッタ52及び切片1aを傾けることなく安全に撤去することができる。このように、雌ネジ孔52e及びシャックルSは、本実施例の被吊持手段を構成している。尚、雌ネジ孔52eは4等配に限らず、2等配以上であればよく、等配されていなくともよく、数や配置は適宜変更されてもよい。また、複数(例えば10か所)ある雌ネジ孔52eの中から、シャックルSの取付位置を適宜選定してもよい。
【0057】
尚、カッタ52の上端部52dには、図12に示されるように、流体管1を切断する際の流体を逃がすための連通孔52fが6等配されているため、隣接する一対の連通孔52f,52fを挿通させて取付けた吊持用のベルトBに吊り具Cを係止し、吊り具C及びベルトBによりカッタ52を切片1aと共に吊り上げ、撤去するようにしてもよい。すなわち、連通孔52fを有するカッタ52の上端部52dも被吊持手段である。
【0058】
また、直接の図示は省略するが、シャックルS、ワイヤW、ベルトBを併用することで、これらに作用する荷重を分散させてもよい。
【0059】
これらのようにして、不断流状態を保ちながら、流体管1を切断し、切断機5を筐体2から取外すとともに、切片1aを回収することができる。
【0060】
以上、説明したように、本実施例の切断機5の取外方法では、カッタ52の撤去に先行して、筐体2との接続を解除した蓋体53を撤去することにより、カッタ52を切片1aと共に撤去する際のクレーンに対する負荷を軽減できる。これにより、取付時に使用した吊上能力を低く抑えた小型なクレーンを用いて、切片1aと共に切断機5を取外すことができる。
【0061】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0062】
例えば、前記実施例では、切除装置としてホールソーであるカッタ52を有する切断機5を例に説明したが、これに限られず、切除装置は、穿孔機であってもよく、流体管1の周壁における少なくとも一部を切除するものであればよい。
【0063】
また、保持手段9は、取付フランジ筒21と、保持具90と、スピンドル91によって構成されていると説明したが、これに限られず、保持手段は、例えば作業弁4の弁箱41や筒状部を有する蓋体に保持具90及びスピンドル91が設けられていてもよく、作業弁4の弁体42にカッタ52を載置する構成であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0064】
また、保持具90は、スピンドル91の回転に応じて径方向に移動する構成として説明したが、これに限られず、例えば取付フランジ筒21の周壁に螺入されたボルトであってもよく、ジャッキによって径方向に移動する構成であってもよく、適宜変更されてもよい。
【0065】
また、蓋体53にはジャッキ7が固定されている構成として説明したが、これに限られず、着脱可能に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 流体管
1a 切片
2 筐体
2b 開口部
4 作業弁
5 切断機(切除装置)
7 ジャッキ(移動手段)
8 駆動機構
9 保持手段
52 カッタ
52d 上端部(被吊持手段)
52e 雌ネジ孔(被吊持手段)
53 蓋体
90 保持具
91 スピンドル
S シャックル(被吊持手段)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12