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特開2023-37152フロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法
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  • 特開-フロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法 図1
  • 特開-フロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法 図2
  • 特開-フロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037152
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】フロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/22 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
F16T1/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143718
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】福田 剛士
(57)【要約】      (修正有)
【課題】簡易な構成でありながらフロートの着座位置の調整を容易かつ確実に行うことができるフロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法を提供する。
【解決手段】弁室15に浮動可能に配置されたフロート2は、弁座に形成されているオリフィスを閉塞する。フロートは、この弁座と調整ネジ11,12の3点によって着座を支持されている。フロートの着座位置の調整を行う場合、まず調整ネジを回転操作し、フロートの着座位置を大きくずらせて蒸気等の漏洩音を発生させる。この後、調整ネジの各々の回転を微調整して、漏洩音が停止する状態を探り、漏洩音が完全に停止したときフロートがオリフィスを確実に閉塞したと判断して、着座位置の調整を終了する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する弁室空間を有する自動弁本体、
前記自動弁本体に設けられた弁座部であって、前記弁室空間に連通する弁口部が形成された弁座部、
前記弁室空間に浮動自在に配置されたフロート体であって、閉塞状態に位置するとき、前記弁座部に接して前記弁口部を閉塞するフロート体、
前記自動弁本体に設けられた複数の支持手段であって、前記弁室空間に向けて突出し、閉塞状態に位置するフロート体を支持する複数の支持手段、
を備えたフロート式自動弁であって、
前記複数の支持手段のうち少なくとも一つの支持手段は、前記弁室空間に向けた突出の度合いを調整することが可能である、
ことを特徴とするフロート式自動弁。
【請求項2】
請求項1に係るフロート式自動弁において、
前記複数の支持手段は、2つの支持手段である、
ことを特徴とするフロート式自動弁。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係るフロート式自動弁において、
前記支持手段には、前記自動弁本体に螺入されるネジ部が形成されており、前記支持手段を当該ネジ部に従って回転操作することによって、前記弁室空間に向けた突出の度合いを調整する、
ことを特徴とするフロート式自動弁。
【請求項4】
流体が流入する弁室空間を有する自動弁本体、
前記自動弁本体に設けられた弁座部であって、前記弁室空間に連通する弁口部が形成された弁座部、
前記弁室空間に浮動自在に配置されたフロート体であって、閉塞状態に位置するとき、前記弁座部に接して前記弁口部を閉塞するフロート体、
前記自動弁本体に設けられた複数の支持手段であって、前記弁室空間に向けて突出し、閉塞状態に位置するフロート体を支持する複数の支持手段、
を備えた自動弁におけるフロート着座位置の調整方法であって、
前記弁口部から流体を漏洩させ、漏洩音を発生させるステップ、
前記複数の支持手段のうち少なくとも一つの支持手段について、前記弁室空間に向けた突出の度合いを調整するステップ、
前記漏洩音が停止したことによって、前記支持手段の突出の度合いの調整を終了し、フロート体の閉塞状態における位置決めを行うステップ、
を備えたことを特徴とする自動弁におけるフロート着座位置の調整方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係るフロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法は、弁座に対するフロートの着座位置の調整についての技術に関する。
【背景技術】
【0002】
フロート式自動弁としては、たとえば産業プラントに設置されるスチームトラップがある。産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気等を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。そして、この配管内で蒸気が液化しドレン(蒸気の凝縮水)が発生した場合、蒸気等の移送の障害になるため、適宜、ドレンを配管外に排出する必要がある。
【0003】
このため、配管系統の随所に設けられているのがスチームトラップである。フロート式スチームトラップは弁室内に中空のフロートを浮動自在に内蔵している。そして、弁室の下方には、小径のオリフィスが形成された弁座が設けられている。通常時においてはフロートが弁座に着座し、フロートの球面によって弁座に形成されたオリフィスは閉塞されている。
【0004】
スチームトラップの弁室にドレンが流入して滞留した場合、これに従ってフロートが浮上して弁座から離れ、弁座のオリフィスを開放する。この開放によって、滞留したドレンはオリフィスを通じ、スチームトラップの外部に自動的に排出される。ドレン排出後はフロートが下降して弁座に着座し、オリフィスを閉塞するため蒸気漏れは生じない。
【0005】
フロート式スチームトラップに関する技術として後記特許文献1及び後記特許文献2に開示された構成がある。まず特許文献1に開示された減圧弁は、下部にトラップ部を有しており、このトラップ部の復水溜り部14の底面に、45度の傾斜をもってトラップ弁座15を装着している。そして、このトラップ弁座15に着座可能に自由状態でフロート24を配置する。なお、トラップ弁座15の反対側には、フロート24が自由状態でトラップ弁座15と密着するように2点のフロート座20、21が設けられている。
【0006】
特許文献2に開示されたフロート式弁装置においては、弁室4の下部に弁口11aが形成された弁座11が設けられており、弁室4内には復水の水位に従って上下動するフロート弁体12が配置されている。そして、弁座11に装着された環状基部13cには、兎耳状に伸びる2本の支持指13dが一体的に固定されている。この2本の支持指13dの先端には、それぞれ支持座13aが形成されており、支持座13aは弁座11に着座した状態のフロート弁体12を支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62-67377号公報
【特許文献2】特開2007-32844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前述の特許文献1及び特許文献2に開示された構成においては、弁座に対するフロートの着座位置について微調整を行うことは容易ではない。
【0009】
すなわちフロートは、弁座に形成された小径のオリフィスを閉塞するために、弁座に対して正確な位置に着座させる必要があるが、この着座位置は特許文献1に係る2点のフロート座20、21や、特許文献2に係る2本の支持指13d及び支持座13aの加工精度に依存するため、弁装置の組み立て時に着座位置を正確に調整することは難しい。
【0010】
また、経年劣化等により、フロートやフロート座(特許文献1)、支持指13d(特許文献2)に摩耗や歪みが生じたり、弁座に対するフロートの着座位置にずれが生じたりする場合があり得る。しかし、特許文献1及び特許文献2に開示された構成では、装置の組み立て後や装置の施工後において、フロートの着座位置の再調整を行うことは容易ではない。
【0011】
本願に係るフロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法は、簡易な構成でありながらフロートの着座位置の調整を容易かつ確実に行うことができるフロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願に係るフロート式自動弁は、
流体が流入する弁室空間を有する自動弁本体、
前記自動弁本体に設けられた弁座部であって、前記弁室空間に連通する弁口部が形成された弁座部、
前記弁室空間に浮動自在に配置されたフロート体であって、閉塞状態に位置するとき、前記弁座部に接して前記弁口部を閉塞するフロート体、
前記自動弁本体に設けられた複数の支持手段であって、前記弁室空間に向けて突出し、閉塞状態に位置するフロート体を支持する複数の支持手段、
を備えたフロート式自動弁であって、
前記複数の支持手段のうち少なくとも一つの支持手段は、前記弁室空間に向けた突出の度合いを調整することが可能である、
ことを特徴とする。
【0013】
また、本願に係る自動弁におけるフロート着座位置の調整方法は、
流体が流入する弁室空間を有する自動弁本体、
前記自動弁本体に設けられた弁座部であって、前記弁室空間に連通する弁口部が形成された弁座部、
前記弁室空間に浮動自在に配置されたフロート体であって、閉塞状態に位置するとき、前記弁座部に接して前記弁口部を閉塞するフロート体、
前記自動弁本体に設けられた複数の支持手段であって、前記弁室空間に向けて突出し、閉塞状態に位置するフロート体を支持する複数の支持手段、
を備えた自動弁におけるフロート着座位置の調整方法であって、
前記流出口から流体を漏洩させ、漏洩音を発生させるステップ、
前記複数の支持手段のうち少なくとも一つの支持手段について、前記弁室空間に向けた突出の度合いを調整するステップ、
前記漏洩音が停止したことによって、前記支持手段の突出の度合いの調整を終了し、フロート体の閉塞状態における位置決めを行うステップ、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願に係るフロート式自動弁においては、複数の支持手段のうち少なくとも一つの支持手段は、弁室空間に向けた突出の度合いを調整することが可能である。また、本願に係る自動弁におけるフロート着座位置の調整方法においては、複数の支持手段のうち少なくとも一つの支持手段について、弁室空間に向けた突出の度合いを調整し、漏洩音が停止したことによって、支持手段の突出の度合いの調整を終了し、フロート体の閉塞状態における位置決めを行う。
【0015】
このため、本願に係るフロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法によれば、簡易な構成でありながらフロートの着座位置の調整を容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本願に係るフロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法の第1の実施形態であるスチームトラップ90の断面図である。
図2図1に示すスチームトラップ90のII-II方向の矢視断面図である。
図3図2に示す調整ネジ11近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係るフロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法の下記の要素に対応している。
【0018】
フロート2・・・フロート体
蒸気又はドレン9・・・流体
調整ネジ11、12・・・支持手段
軸部11b・・・ネジ部
弁室15・・・弁室空間
上部本体41及び下部本体42・・・自動弁本体
弁座50・・・弁座部
オリフィス51・・・弁口部
スチームトラップ90・・・フロート式自動弁
フロート2がオリフィス51を閉塞した状態・・・閉塞状態
【0019】
[第1の実施形態]
本願に係るフロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、本願に係るフロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法をスチームトラップに適用した例を掲げる。
【0020】
(スチームトラップの構成及び動作の説明)
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管内で蒸気が液化するとドレンが滞留し、蒸気の移送の障害になる。
【0021】
このような事態を回避するために、配管系統の随所には多数のスチームトラップが設けられている。図1は本実施形態におけるスチームトラップ90の断面図であり、図2図1に示すスチームトラップ90のII-II方向の矢視断面図である。上部本体41と下部本体42とはボルト94によって固定され、内部に気密性を保った弁室15を形成する。
【0022】
配管の主管(図示せず)には支管81が連通して設けられており、この支管81に、下部本体42に形成された流入口97が接続される。そして、流入口97から弁室15に蒸気やドレンが矢印101方向に流入する。なお、弁室15の上部には、網状のストレーナ80が装着されており、蒸気やドレンはこのストレーナ80を透過して弁室15に流入する。ストレーナ80を透過することによって、蒸気やドレンに混入しているゴミやスケール等の異物がストレーナ80によって捕捉される。
【0023】
本実施形態におけるスチームトラップ90においては、上部本体41に上部排出口31が形成されており、この上部排出口31の下方に近接して温度応動弁36が設けられている。この温度応動弁36は、主に蒸気移送の初期段階において、配管内や弁室15に存在する空気を上部排出口31を通じて排出し、エアーバインディング(空気障害)を解消するためのものである。
【0024】
温度応動弁36は、周辺温度が低温の場合、内部に封入されているサーモリキッド(感温液)の作用によって収縮して上部排出口31を開放し、上部排出口31から上部排出路33を通じて空気を送り出す。この上部排出路33は、下部本体42に形成されている流出路98及び下部本体42の流出口99に接続されたドレン回収管82に連通しており、空気はドレン回収管82に排出される。
【0025】
そして、弁室15に蒸気が流入した場合、蒸気の高温雰囲気によって温度応動弁36は膨張して上部排出口31を閉塞する。これによって、上部排出口31からの蒸気漏れが防止される。
【0026】
弁室15の下方には弁座50が固定されており、この弁座50にはオリフィス51が形成されている。このオリフィス51は、弁座50の弁座空間53に通じており、さらに弁座空間53は流出路98及び流出口99に接続されたドレン回収管82に連通している。
【0027】
これによって、弁室15に滞留したドレン9を、オリフィス51からドレン回収管82に向けて矢印102方向に排出することができる。なお、オリフィス51を基点とした弁室15側が一次側、弁座空間53側が二次側である。
【0028】
弁室15には、中空の球状体として構成されたフロート2が浮動可能に配置されている。弁室15に滞留したドレン9の水位が基準レベルL1にあるとき、フロート2は図1に示す状態に位置し、弁座50に着座して接触しオリフィス51を閉塞する。
【0029】
弁室15にドレンが流入してドレン9の水位が上昇した場合、フロート2はこれにともなって矢印103方向に浮上して弁座50から離れオリフィス51を開放する(図示せず)。これによって、弁室15に滞留したドレン9は、配管内の高圧に基づく勢いに従い、オリフィス51から弁座空間53、流出路98及び流出口99を通して矢印102方向に抜け、ドレン回収管82に排出される。
【0030】
排出後は、弁室15のドレン9の水位が下降するため、これに伴ってフロート2も下降し、ドレン9の水位が基準レベルL1に戻ったとき、フロート2は図1に示す状態に復位して弁座50に着座しオリフィス51を閉塞する。こうして、フロート2の上昇、下降によってオリフィ51が開閉を繰り返すが、オリフィス51は常時、ドレン9に水没した状態にあるため、オリフィス51から蒸気漏れが生じることはない。なお、ストレーナ80の内側にはフロート2の過度の浮き上がりを防止するためのフロートカバー70が設けられている。
【0031】
ところで、蒸気漏れ等を防止するためには、フロート2が弁座50に着座した際、小径のオリフィス51をフロート2の球面によって確実に閉塞する必要がある。しかし、フロート2や弁座50には製品の個体差があるため、スチームトラップ90の組み立て時に弁座50に対するフロート2の着座位置を微調整することができれば製品の信頼性を高めることができる。また、経年劣化等によってフロート2や弁座50に摩耗や歪みが生じることがあるため、スチームトラップ90の組み立て後にフロート2の着座位置を再調整しなければならないこともある。
【0032】
このため、本実施形態におけるスチームトラップ90には、フロート2の着座位置を調整するための2つの調整ネジ(所謂栓ネジ又はプラグ)11、12が設けられている。調整ネジ11、12の先端部分はフロート2の球面に接触し、弁座50及び調整ネジ11、12の3点でフロート2の弁座50への着座位状態を支持する。
【0033】
調整ネジ11近傍の拡大断面図を図3に示す。調整ネジ11は、頭部11a及び外周面にネジ凹凸部が形成された軸部11bから構成されている。そして、調整ネジ11は下部本体42の底部に形成された貫通孔を貫通して取り付けられており、この貫通孔の内面に形成されたネジ凹凸部に軸部11bが螺入し、ネジ結合11cで螺入結合している。
【0034】
下部本体42に形成された貫通孔の外側空間にはグランドパッキン11Gが取り付けられており、調整ネジ11はこのグランドパッキン11Gを貫通して設けられている。グランドパッキン11Gは、調整ネジ11の頭部11aによって加圧され弁室15の気密性を保つ。
【0035】
調整ネジ11が下部本体42に形成された貫通孔を貫通することによって、調整ネジ11の軸部11bの先端部分は弁室15に向けて突出する。調整ネジ11のネジ先端面11dがフロート2の球面に当接し、フロート2を支持する。そして、図3に示す弁室15に向けての軸部11bの突出長さ49(弁室15に向けた突出の度合い)は、調整ネジ11を螺入操作することによって調整することが可能である。なお、図1ないし図3において、調整ネジ11の頭部11aは断面ではなく側面図として表れている。図2における調整ネジ12についても同様である。
【0036】
他方、調整ネジ12も調整ネジ11と同じ構成を備えている。すなわち、調整ネジ12も頭部及びネジ凹凸部が形成された軸部から構成されている。そして、下部本体42の底部に形成された貫通孔を貫通して取り付けられており、この貫通孔の内面に形成されたネジ凹凸部に軸部が螺入し、ネジ結合で螺入結合している。調整ネジ12にもグランドパッキンが取り付けられており、弁室15の気密性が保たれている。調整ネジ12のネジ先端面がフロート2の球面に当接してフロート2を支持し、弁室15に向けての軸部の突出長さは、調整ネジ12を螺入操作することによって調整可能である。
【0037】
図1に示すように、本実施形態においては弁座50の弁座中心軸50Lと調整ネジ11のネジ中心軸11Lとの角度θ1は約90度に設定されている(調整ネジ12も同様)。また、図2において調整ネジ11のネジ中心軸11Lと調整ネジ12のネジ中心軸12Lとの角度θ2は約80度に設定されており、調整ネジ11のネジ中心軸11Lと調整ネジ12のネジ中心軸12Lとは本体中心軸90Lを対称軸として線対称にバランスよく配置されている。
【0038】
このように調整ネジ11、12が配置されることによって、調整ネジ11、調整ネジ12及び弁座50のオリフィス51部分の3点でフロート2を安定的に支持することができ、さらにフロート2がオリフィス51を閉塞又は開放する開閉動作の反復を円滑かつ確実なものとすることができる。
【0039】
(弁座に対するフロートの着座位置の調整動作の説明)
次に、弁座50に対するフロート2の着座位置の調整動作を説明する。フロート2の着座位置を調整する場合、調整ネジ11の頭部11a(図3)と、調整ネジ12の頭部にそれぞれ工具を取り付けて回転操作する。調整ネジ11を締め込めば突出長さ49を大きくすることができ、逆に調整ネジ11を緩めれば突出長さ49を小さくすることができる。調整ネジ12についても同様である。
【0040】
こうして調整ネジ11、12をそれぞれ回転操作することによって、フロート2を支持する3点のうち2点の位置をネジの軸方向に沿って変化させることができる。このため、フロート2がその球面で弁座50のオリフィス51を確実に閉塞できる着座位置に配置することができる。
【0041】
また、スチームトラップ90をたとえば配管系統に設置した後、フロート2の着座位置の調整を行うこともできる。この場合、例えば、弁室15に蒸気やドレンが滞留している状態で、まず調整ネジ11又は調整ネジ12のいずれか一方又は双方を外部から回転操作することにより、フロート2の着座位置を大きくずらせて蒸気等の漏洩音を発生させる。
【0042】
この後、調整ネジ11又は調整ネジ12のいずれか一方又は双方を逆方向に外部から回転操作し、また続けて調整ネジ11、12の各々の回転を微調整して、漏洩音が停止する状態を探る。そして、漏洩音が完全に停止したとき、フロート2の球面が弁座50のオリフィス51を確実に閉塞したと判断して、着座位置の調整を終了する。これによってフロート2の閉塞状態における位置決めが行われる。
【0043】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、本願に係るフロート式自動弁及び自動弁におけるフロート着座位置の調整方法をスチームトラップに適用した例を掲げたが、これに限定されるものではなく、流路上に設けられた弁座部の弁口部を、浮動自在に配置されたフロート体によって開閉するものであれば、他の自動弁に適用することができる。
【0044】
また、前述の実施形態においては、支持手段として2つの調整ネジ11、12を例示したが、弁室空間に向けた突出の度合いを調整することが可能なものであれば他の構成を採用することもできる。たとえば、回転操作を伴わず、軸方向に直線的に移動するバーを用い、所望の位置で固定することが可能な固定具を備えた構成を採用することができる。また、3つ以上の支持手段を設けることも可能である。
【0045】
さらに、前述の実施形態においては、支持手段としての2つの調整ネジ11、12の双方が回転操作によって弁室15への突出長さ調整が可能な構成を例示したが、いずれか一方のみについて突出長さを調整する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0046】
2:フロート 9:ドレン 11、12:調整ネジ 11b:軸部 15:弁室
41:上部本体 42:下部本体 50:弁座 51:オリフィス
90:スチームトラップ

図1
図2
図3