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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037192
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】リールシートおよび釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/06 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
A01K87/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143793
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】595015214
【氏名又は名称】メガバス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】伊東 浩一
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AF06
2B019AH01
2B019CB01
2B019CB10
(57)【要約】
【課題】使用者がリールシートを握ったときの握りやすさをより向上させることを目的とする。
【解決手段】本発明のリールシート本体20は、リールシート10の長手方向を前後方向として可動フード体30側を後側とすると、左右の側面のうち固定フード部72よりも上側かつ後側の位置に、リールシート本体20の内側に向かって凹んで形成された凹部62と、凹部62よりも前側の位置に、リールシート本体20の内側に向かって凹んで形成された凹部61と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リールフットの一対の脚部のうち一方の脚部を保持する第1保持部を有し、ブランクに固定されるリールシート本体と、
前記一対の脚部のうちの他方の脚部を保持する第2保持部を有し、前記リールシート本体に対して可動することで前記第1保持部および前記第2保持部によりリールを釣竿に固定する可動フード体と、を備えるリールシートであって、
前記リールシート本体は、
前記リールシートの長手方向を前後方向として前記可動フード体側を後側とすると、
左右の側面のうち前記第1保持部よりも上側かつ前記後側の位置に、前記リールシート本体の内側に向かって凹んで形成された第1凹部と、
前記第1凹部よりも前側の位置に、前記リールシート本体の内側に向かって凹んで形成された第2凹部と、を有することを特徴とするリールシート。
【請求項2】
前記第2凹部は、
前記リールシート本体の下面から、前記下面と左側の側面との境界までに亘る範囲と、
前記リールシート本体の下面から、前記下面と右側の側面との間の境界までに亘る範囲とを含んだ領域に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリールシート。
【請求項3】
前記第1保持部は、前記一方の脚部が挿入される挿入孔を有し、
前記第2凹部は、前記挿入孔の開口縁よりも前側の位置に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリールシート。
【請求項4】
前記第1凹部と前記第2凹部とは稜線を境界にして隣接しており、
前記稜線は、側面視において後斜め上側に沿って傾斜していることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載のリールシート。
【請求項5】
前記リールシート本体は、
前記前後方向に沿って前記ブランクが挿通される挿通孔と、
前記リールフットと対向する位置に、前記挿通孔から前記ブランクの外周面を露出させる開口部と、を有することを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載のリールシート。
【請求項6】
前記第1凹部の肉厚は、前記第2凹部の肉厚よりも薄いことを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載のリールシート。
【請求項7】
ブランクと、前記ブランクに固定されるリールシートとを備える釣竿であって、
前記リールシートは、
リールフットの一対の脚部のうち一方の脚部を保持する第1保持部を有し、前記ブランクに固定されるリールシート本体と、
前記一対の脚部のうちの他方の脚部を保持する第2保持部を有し、前記リールシート本体に対して可動することで前記第1保持部および前記第2保持部によりリールを釣竿に固定する可動フード体と、を備え、
前記リールシート本体は、
前記リールシートの長手方向を前後方向として前記可動フード体側を後側とすると、
左右の側面のうち前記第1保持部よりも上側かつ前記後側の位置に、前記リールシート本体の内側に向かって凹んで形成された第1凹部と、
前記第1凹部よりも前側の位置に、前記リールシート本体の内側に向かって凹んで形成された第2凹部と、を有することを特徴とする釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リールシートおよび釣竿に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、釣竿にリールを固定する場合にはリールシートが用いられる。リールシートにはリールを釣竿に固定する機能と、使用者が釣竿を握るときのグリップとして機能とを兼ね備えているものがある。グリップの機能を備えるリールシートでは使用者の手がフィットするようなグリップの形状が提案されている。
【0003】
特許文献1には、リール脚を載置させる部位の前後方向の一側に設けた固定フードと、回動可能に構成したナット部材の回動によって前後に移動するように他側に設けた移動フードとを有するリールシート本体が開示されている。特許文献1のリールシート本体は、リール脚載置部位とは径方向反対側に滑らかに上方に膨出していることで、リールシート部を握持した場合に掌が膨出部に当たり握持感がよくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-18636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
グリップの機能を備えるリールシートでは使用者がリールシートを握ったときの握りやすさを更に改良できる余地がある。
本発明は、使用者がリールシートを握ったときの握りやすさをより向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、リールフットの一対の脚部のうち一方の脚部を保持する第1保持部を有し、ブランクに固定されるリールシート本体と、前記一対の脚部のうちの他方の脚部を保持する第2保持部を有し、前記リールシート本体に対して可動することで前記第1保持部および前記第2保持部によりリールを釣竿に固定する可動フード体と、を備えるリールシートであって、前記リールシート本体は、前記リールシートの長手方向を前後方向として前記可動フード体側を後側とすると、左右の側面のうち前記第1保持部よりも上側かつ前記後側の位置に、前記リールシート本体の内側に向かって凹んで形成された第1凹部と、前記第1凹部よりも前側の位置に、前記リールシート本体の内側に向かって凹んで形成された第2凹部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用者がリールシートを握ったときの握りやすさをより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の釣竿の構成の一例を示す図である。
図2】リールシートの構成の一例を示す斜視図である。
図3】リールシートを分解した構成の一例を示す斜視図である。
図4】リールシートの構成の一例を示す図である。
図5】リールシートの構成の一例を示す図である。
図6】リールシートを握ったときの状態の一例を示す図である。
図7】第2の実施形態の釣竿の構成の一例を示す図である。
図8】リールシートを握ったときの状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態のリールシートおよび釣竿について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は本実施形態のリールシート10を適用した釣竿100の一部を示す図である。なお、本実施形態では、図1を含む各図には必要に応じて、立位姿勢で釣竿100のリールシート10を握っているときの使用者を基準にして上下左右前後を示している。例えば、ブランクの長手方向を前後方向として先端側が前であり、その反対側が後である。
【0010】
釣竿100は、釣竿の本体であるブランク101と、リアグリップ部102と、釣竿100にスピングリール(リール110)を取り付けるためのリールシート10と、を含んで構成される。
【0011】
ブランク101は、リールシート10内を前後方向に挿通する。ブランク101は、例えば、カーボン製、グラスファイバ製である。
リアグリップ部102は、ブランク101の後端に固定される。リアグリップ部102は、例えば、コルク製、EVA等の合成樹脂製である。
【0012】
リールシート10は、ブランク101の前後方向において後側寄りであって、リアグリップ部102よりも前側に位置する。リールシート10は、前後方向に沿って長い略筒状である。リールシート10は、内部を前後方向に挿通するブランク101の外周面(あるいはブランク101の外周面に嵌め合わされたシャフトの外周面)に接着剤等を用いて固定される。リールシート10は、ブランク101よりも下側の位置でリール110を保持することで、釣竿100にリール110を固定することができる。なお、リール110は、リール110をリールシート10に固定する部位であるリールフット111を有する。リールフット111は、上下方向に沿った支持脚112と、支持脚112の上端から前側および後側にそれぞれ延出する一対の脚部113a、113bとを有する。
【0013】
図2はリールシート10の構成の一例を示す斜視図である。図3はリールシート10を分解した構成の一例を示す斜視図である。図4(a)はリールシート10の底面図であり、図4(b)はリールシート10の平面図であり、図4(c)はリールシート10の左側面図であり、図4(d)はリールシート10を前側から見た図である。なお、リールシート10の右側面図は、左側面図と対称であるために省略する。
リールシート10は、ブランク101に固定されるリールシート本体20と、リールシート本体20に対して可動する可動フード体30とを備えている。
【0014】
まず、リールシート本体20について説明する。
リールシート本体20は、前側に位置するグリップ部41と、前後方向の中央に位置するシート部42と、後側に位置する螺合部75(図3を参照)とを有する。本実施形態のリールシート本体20は、グリップ部41が別部材であり、シート部42と螺合部75とが一体の部材である。グリップ部41は握りやすさを向上させるために、コルク製、あるいはEVA等の合成樹脂製である。一方、シート部42と螺合部75とは、負荷が掛かっても破損しないように強度を向上させるためにポリアミド系の硬質の合成樹脂製である。
【0015】
グリップ部41は、略筒状であり、前後方向に沿った挿通孔43を有する。また、シート部42および螺合部75も、略筒状であり、前後方向に沿った挿通孔44を有する。挿通孔43と挿通孔44とは中心軸線Cが同軸であり、それぞれ前後方向に沿ってブランク101が挿通する。
【0016】
図3に示すように、グリップ部41とシート部42とは、シート部42の前端に一体で形成された前後方向に沿った円筒状のガイド部45を、グリップ部41の挿通孔43に嵌め込み、両者を接触剤で結合することで一体に構成される。ここで、グリップ部41とシート部42とは外観に現れる部位であり、両者を合わせて外観部40と称する。グリップ部41とシート部42との間の境界は段差がなく連続している。グリップ部41とシート部42との間の境界線46は、外観部40の表面に現れる。図4(c)に示すように、境界線46は、外観部40の下面側では外観部40の前側寄りに位置し、外観部40の上面側では外観部40の後側寄りに位置する。また、図4(c)のような側面視で見たときに、境界線46のうち、外観部40の下側の表面(下面)と交差する位置を点P1とし、外観部40の上側の表面(上面)と交差する位置を点P2とし、点P1から点P2に向かって境界線46を辿る(たどる)と境界線46は後斜め上側に沿って傾斜している。より具体的には、境界線46は点P1から傾斜が急になり、中心軸線C周辺では傾斜が中心軸線Cと平行になるぐらいまで緩やかになり、点P2に近づくにつれて傾斜が再び急になる。境界線46は、点P1から中心軸線Cまでが前斜め上側に向かって凸状の緩やかな曲線であり、中心軸線Cから点P2までが後斜め下側に向かって凸状の緩やかな曲線である。
【0017】
本実施形態の外観部40は、全体が前後方向に長い略円筒状であるが、握りやすさを向上させるために、外周面の一部が中心軸線Cから外側(径方向の外側)に向かうにように膨出したり、外周面の一部が逆に外側から中心軸線Cに向かうように凹んだりするように形成される。
以下では、外観部40の上面50a、下面50b、右側の側面50c、左側の側面50dの形状について説明する。なお、図4(d)に示すように、外観部40を前後方向から見て、中心軸線Cを中心にして上下左右にそれぞれ90度ごとに等間隔の角度で区分したときに、上側に位置する面を上面50a、下側に位置する面を下面50b、右側に位置する面を右側の側面50c、左側に位置する面を左側の側面50dという。上面50aと、下面50bと、右側の側面50cと、左側の側面50dとの境界を二点鎖線で示している。境界は、上下に沿った鉛直線に対してそれぞれ45度、左右に傾斜している。
【0018】
まず、外観部40の上面50aのうち、図4(c)のような側面視で見たときに外観部40の外形となる外形線51に注目すると、外形線51は、外観部40の前端から後端に向かうにしたがって緩やかに中心軸線Cからの上下方向の距離Lhが長くなり、最も長い位置を過ぎると逆に後端に向かうにしたがって緩やかに短くなっている。すなわち、外観部40の上面50aには外観部40の外側に向かって緩やかな湾曲状に膨出した膨出部52が形成されている。なお、上面50aにはグリップ部41とシート部42との間の境界線46が位置しているものの、グリップ部41とシート部42との間に段差がなく、握りやすさを向上させている。
【0019】
次に、外観部40の下面50bのうち、図4(c)のような側面視で見たときに外観部40の外形となる外形線53に注目すると、外形線53は、外観部40の前端から後端に向かうにしたがって緩やかに中心軸線Cからの上下方向の距離Lbが長くなり、最も長い位置である点P3を過ぎると逆に後端に向かうにしたがって急に短くなっている。また、外形線53のうち点P1から点P3までに注目すると、少なくとも点P1から点P3までの外形線53が外観部40の内側に向かって緩やかな湾曲状に凹んでいる。すなわち、外観部40の下面50bの一部は、外観部40の内側に向かって(中心軸線Cに向かって)凹んで形成された凹部61を有する。凹部61は、後述する凹部62よりも前側に位置し、シート部42の表面に形成される。具体的には、凹部61は、下面50bのみではなく、下面50bから下面50bと左側の側面50dとの間の境界を越えて左側の側面50dの一部に至るまで、および、下面50bから下面50bと右側の側面50cとの間の境界を越えて右側の側面50cの一部に至るまで形成されている。
【0020】
図5(a)は、図4(d)に示すように矢印A方向(下面50bと左側の側面50dとの間の境界に沿った方向)から見たリールシート10を示す図である。図5(a)では、外観部40の外形として、上面50aと左側の側面50dとの間の境界、下面50bと右側の側面50cとの間の境界が現れる。
図5(a)のように下斜めから見たときに外観部40の右下の外形となる外形線54のうち点P4から点P5までに注目すると、点P4から点P5までの外形線54は外観部40の内側に向かって緩やかな湾曲状に凹んでいる。すなわち、図5(a)では、凹部61が、下面50bから下面50bと右側の側面50cとの間の境界まで亘っていることを示している。ここでは、図4(d)に示す矢印A方向から見た場合について説明したが、図4(d)に示す矢印B方向から見た場合には、図5(a)に示す外観部40が前後反転した形状となる。すなわち、凹部61は、下面50bから下面50bと左側の側面50dとの間の境界まで亘って形成される。このように、凹部61は、下面50bから下面50bと左側の側面50dとの境界までに亘る範囲と、下面50bから下面50bと右側の側面50cとの間の境界までに亘る範囲とを含んだ領域に形成される。
【0021】
また、外観部40の下面50bは、点P3よりも後側には、前後方向に離れた位置にリールフット111の一対の脚部113a、113bを接地させるための一対の脚接地部71a、71bを有する。一対の脚接地部71a、71bのうち前側の脚接地部71aは外観部40の前後方向における中央側に位置し、後側の脚接地部71bは外観部40の後端に位置する。
また、外観部40の下面50bは、前側の脚接地部71aの前側の位置にリールフット111の一対の脚部113a、113bのうち前側に向かって延出する脚部113aを保持する固定フード部72を有する。固定フード部72は、リールフットの一対の脚部113a、113bのうち一方の脚部113aを保持する第1保持部の一例に対応する。固定フード部72は、後側に向かって開口する挿入孔73を有する。固定フード部72は、挿入孔73に後側から脚部113aが挿入されることで脚部113aを保持する。
【0022】
また、外観部40の下面50bは、前側の脚接地部71aと後側の脚接地部71bとの間の位置に開口部74を有する。開口部74は、リールシート10にリール110が固定された状態ではリールフット111に対して上下に対向して位置する。また、開口部74は、シート部42の挿通孔44と、外観部40の外側とを上下方向に連通する。したがって、挿通孔44に挿通されたブランク101の外周面(あるいはブランク101の外周面に嵌め合わされたシャフトの外周面)が開口部74から露出される。開口部74が形成されている部位はリールシート10の剛性に与える影響が少ないことから、外観部40の下面50bに開口部74を形成することでリールシート10の軽量化を図ることができる。
【0023】
次に、外観部40の左側の側面50dのうち、図4(a)のような底面視あるいは図4(b)のような平面視で見たときに、外観部40の外形となる外形線55に注目すると、外形線55は、外観部40の前端から後端に向かうにしたがって緩やかに中心軸線Cからの左右方向の幅Wlが大きくなり、最も大きい位置である点P6を過ぎると逆に後端に向かうにしたがって緩やかに小さくなり、最も小さい位置である点P7を過ぎると再び後端に向かうにしたがって大きくなっている。ここで、幅Wlが最も大きい点P6の位置と、図4(c)に示す点P3の位置とは前後方向において略同じ位置である。また、幅Wlが最も小さい点P7の位置は、図4(c)に示す開口部74の前後方向における中央に相当する位置と前後方向において略同じ位置である。
ここで、外形線55のうち点P6から、外形線55の後端の位置に対応する点P8までに注目すると、少なくとも点P6から点P8までの外形線55が外観部40の内側に向かって緩やかな湾曲状に凹んでいる。すなわち、外観部40の左側の側面50dは、外観部40の内側に向かって(中心軸線Cに向かって)凹んで形成された凹部62を有する。なお、外観部40は左右対称であるために、外観部40の右側の側面50cも同様に、外観部40の内側に向かって凹んで形成された凹部62を有する。凹部62は、シート部42の表面に形成される。具体的には、凹部62は、左側の側面50dから左側の側面50dと下面50bとの間の境界に至るまで形成され、同様に、右側の側面50cから右側の側面50cと下面50bとの間の境界に至るまで形成されている。凹部62は、固定フード部72よりも上側かつ後側に位置する。
【0024】
図5(a)のように下斜めから見たときに外観部40の右下の外形となる外形線54のうち点P5から点P9までに注目すると、点P5から点P9までの外形線54は外観部40の内側に向かって緩やかな湾曲状に凹んでいる。すなわち、図5(a)では、凹部62が、右側の側面50cから右側の側面50cと下面50bとの間の境界まで亘っていることを示している。ここでは、図4(d)に示す矢印A方向から見た場合について説明したが、図4(d)に示す矢印B方向から見た場合には、図5(a)に示す外観部40が前後反転した形状となる。したがって、凹部62は、左側の側面50dから左側の側面50dと下面50bとの間の境界まで亘って形成され、右側の側面50cから右側の側面50cと下面50bとの間の境界まで亘って形成される。このように、凹部62は、左側の側面50dから左側の側面50dと下面50bとの間の境界までに亘る範囲と、右側の側面50cから右側の側面50cと下面50bとの間の境界までに亘る範囲とを含んだ領域に形成される。
【0025】
また、図4(c)あるいは図5(a)に示すように、凹部61は凹部62よりも前側に位置しており前後に隣接している。ここで、凹部61と凹部62とはそれぞれ外観部40の内側に向かって緩やかな湾曲状に凹んでいることで、凹部61と凹部62との間の境界では、逆に外観部40の外側に向かって突出する稜線63が形成される。図4(c)のような側面視で見たときに、稜線63の一部が点P3と重なる。また、稜線63が境界線46と交わる位置を点P10とし、点P3から点P10に向かって稜線63を辿る(たどる)と、稜線63は後斜め上側に沿って傾斜している。凹部61と凹部62とは稜線63を境界にして隣接している。
【0026】
また、凹部62は、上述した膨出部52のうちシート部42側の部位と隣接している。ここで、凹部62は外観部40の内側に向かって緩やかな湾曲状に凹んでおり、逆に膨出部52では外観部40の内側に向かって緩やかな湾曲状に膨出していることで、図4(c)に示すように、凹部62と膨出部52のうちシート部42側の部位との間の境界では稜線64が形成される。図4(c)のような側面視で見たときに、稜線64がシート部42の後端と交わる位置を点P11として、点P10から点P11に向かって稜線64を辿る(たどる)と、稜線64は後斜め上側に沿って傾斜した後、逆に後斜め下側に向かって傾斜している。
【0027】
凹部61と凹部62とについて更に説明する。
凹部61と凹部62とは、何れも外観部40の内側に向かって緩やかな湾曲状に凹んだ形状であるものの、特性に応じた形状に施されている。
凹部61と凹部62とを比較すると、凹部61の湾曲形状の曲率半径と、凹部62の湾曲形状の曲率半径とが異なっている。具体的には、凹部61の曲率半径は、凹部62の曲率半径よりも大きい。すなわち、凹部61の方が緩やかな湾曲形状であるのに対して、凹部62の方が急峻な湾曲形状である。なお、凹部61の曲率半径は、例えば、点P1から点P3までの外形線53上でそれぞれ十分に離れた位置で3点を選択して、選択した3点を通過する仮想円の半径とすることができる。また、凹部62の曲率半径は、例えば、点P6から点P8までの外形線53上でそれぞれ十分に離れた位置で3点を選択して、選択した3点を通過する仮想円の半径とすることができる。
【0028】
また、凹部61と凹部62とを比較すると、凹部61の肉厚T1と凹部62の肉厚T2とが異なっている。
図5(b)は、図4(c)に示す凹部61を通るI-I線に沿って外観部40を切断して矢印方向から見た断面図である。I-I線は、外形線53のうち点P1と点P3との間であって点P1と点P3との中央付近の線である。図5(b)に示すように凹部61を通るように切断した外観部40の断面形状は、中心軸線Cを中心とした円環形状である。挿通孔44の内周面から凹部61の外周面までの径方向の厚みを凹部61の肉厚T1とする。肉厚T1は、下面50bと右側の側面50cとの間の境界から、下面50bと左側の側面50dとの間の境界までに亘って略同一である。
【0029】
一方、図5(c)は、図4(c)に示す凹部62を通るII-II線に沿って外観部40を切断して矢印方向から見た断面図である。II-II線は、前側の脚接地部71aと後側の脚接地部71bとの間であって脚接地部71aと脚接地部71bとの中央付近の線である。図5(c)に示すように凹部62を通るように切断した外観部40の断面形状は、下側に開口部74が位置しており、下側を開口した略C字形状である。挿通孔44の内周面から凹部62の外周面までの径方向の厚みを凹部62の肉厚T2とする。肉厚T2は、上述した凹部61の肉厚T1よりも薄い。また、肉厚T2は、上側が厚く、下側が薄く、上側から下側に向かうにしたがって薄くなる。具体的には、肉厚T2は、側面50c側では、側面50cから側面50cと下面50bとの間の境界に向かうにしたがって徐々に薄くなり、側面50d側では、側面50dから側面50dと下面50bとの間の境界に向かうにしたがって徐々に薄くなる。肉厚T2は、側面50cと下面50bとの間の境界、側面50dと下面50bとの間の境界をそれぞれ超えた位置で0になる。肉厚T2が0の位置が、開口部74の開口縁に相当する。このように、凹部62の肉厚T2を凹部61の肉厚T1よりも薄くすることで、凹部62周辺の軽量化を図ることができる。
【0030】
一方、螺合部75は、外観部40とは異なり、可動フード体30に覆われて隠れてしまう部位である。螺合部75は、雄ネジが外周面に形成されている(図3を参照)。螺合部75の雄ネジには、可動フード体30の後述するナット部90の雌ネジが螺合される。
【0031】
次に、可動フード体30について説明する。
可動フード体30は、リールシート本体20に対して近づく方向に可動することでリール110を釣竿100に固定する。可動フード体30は、前側に位置する筒状部80と、後側に位置するナット部90とを有する。筒状部80と、ナット部90とは別部材である。筒状部80とナット部90とは、ABS等の合成樹脂製、カーボン繊維で強化した合成樹脂製である。ナット部90は、筒状部80に対して中心軸線C回りに回動可能に一体的に接続される。筒状部80とナット部90は、前後方向に一体で可動する。
【0032】
筒状部80は、略筒状であり、前後方向に沿った挿通孔81を有する。また、ナット部90も略筒状であり、前後方向に沿った挿通孔91を有する。挿通孔81と挿通孔91とは中心軸線Cが同軸である。
筒状部80は、可動フード体30が外観部40に向かって前側に可動した場合に、リール110がない状態では、外観部40の後端に接することができる。筒状部80が外観部40の後端に接した状態では、筒状部80の上面、右側の側面、左側の側面がそれぞれ、外観部40の後端との間で連続し、段差がないような形状である。一方、筒状部80の下面は、下側かつ前側の位置で前斜め下側に向かって広がっており、リールフット111の一対の脚部113a、113bのうち後側に向かって延出する脚部113bを保持する可動フード部82を有する。可動フード部82は、リールフットの一対の脚部113a、113bのうち一方の脚部113bを保持する第2保持部の一例に対応する。可動フード部82は、螺合部75の下面との間で囲まれる空間により、前側に向かって開口する挿入孔を形成する。可動フード部82は、螺合部75の下面との間で形成される挿入孔に前側から脚部113bが挿入されることで脚部113bを保持する。
【0033】
ナット部90は、雌ネジが内周面に形成されている。ナット部90の雌ネジには、螺合部75の雄ネジが螺合される。ここで、可動フード体30の筒状部80をリールシート本体20の螺合部75に嵌め込んだ状態で、ナット部90を中心軸線Cの軸回りのうち一方の方向に回動すると、螺合部75の雄ネジとナット部90の雌ネジとが螺合して、可動フード体30全体が外観部40に近づく方向である前側に可動する(アップロック)。このとき、外観部40の固定フード部72の挿入孔73に脚部113aを挿入し、可動フード体30の可動フード部82と螺合部75の下面との間で形成される挿入孔に脚部113bを挿入しておくことで、一対の脚部113a、113bが固定フード部72と可動フード部82との間で挟持される。したがって、リール110は、リールフット111が固定フード部72および可動フード部82によって前後から挟まれることで釣竿100に固定される。このとき、リールフット111の一対の脚部113a、113bは、一対の脚接地部71a、71bに接地した状態となる。
【0034】
次に、上述したように構成されるリールシート10を適用した釣竿100を用いて、使用者がリールシート10を握ったときの状態について図6を参照して説明する。図6(a)はリールシート10を右手で握った状態を示す平面図であり、図6(b)はリールシート10を右手で握った状態を示す左側面図である。ここでは、右手を二点鎖線で示している。
まず、親指と母指球とが外観部40の膨出部52に沿うように接している。このとき、柔らかい母指球と膨出部52の頂部とが接している。したがって、右手とリールシート10との間の接触面積を増やすことができ、よりブランク101からの振動を手から感じ取りやすくすることができる。
【0035】
次に、人差し指は外観部40の凹部61を下側からあてがうように接している。このとき、人差し指の指先のうち膨らみがある腹部分が左側の側面50dと下面50bとの間の境界に位置する凹部61と接し、人差し指の第1関節と第2関節との間のうち膨らみがある腹部分が下面50bに位置する凹部61と接し、人差し指の第2関節と第3関節との間のうち膨らみがある腹部分が右側の側面50cと下面50bとの間の境界に位置する凹部61と接している。このように、凹部61は人差し指の膨らみに沿うような形状であるために、使用者がリールシート10を握るときの握りやすさが向上する。
【0036】
次に、中指と薬指とはリールフット111の支持脚112を挟んで前後に位置し、中指と薬指とは一対の脚部113a、113bを下側からあてがうように接している。このとき、中指と薬指のそれぞれの指先のうち膨らみがある腹部分が、左側の側面50dに位置する凹部62と接している。また、中指と薬指のそれぞれの指先のうち膨らみがある腹部分が、左側の側面50dと下面50bとの間の境界に位置する凹部62と接している。また、手のひらのうち人差し指と中指の付け根の膨らみ部分が、右側の側面50cに位置する凹部62と接している。また、手のひらのうち人差し指と中指の付け根の膨らみ部分が、右側の側面50cと下面50bとの間の境界に位置する凹部62と接している。このように、凹部62は、中指、薬指および手のひらの膨らみに沿うような形状であるために、使用者がリールシート10を握るときの握りやすさが向上する。
【0037】
また、上述したように凹部62の肉厚T2は、凹部61の肉厚T1より薄いために、凹部62に接している中指、薬指および手のひらがブランク101からの振動を感じ取りやすくすることができる。
なお、小指は可動フード体30の筒状部80を下側からあてがうように接している。このとき、小指の指先、第1関節と第2関節との間、第2関節と第3関節との間のそれぞれの腹部分が、筒状部80の前斜め下側に向かって広がっている可動フード部82と接している。
【0038】
このように、本実施形態のリールシート10のリールシート本体20は、左右の側面50c、50dのうち固定フード部72よりも上側かつ後側の位置に凹部62を有する。凹部62は、使用者がリールシート10を握ったときの指および手の膨らみに沿うような形状であるために、使用者がリールシート10を握るときの握りやすさを向上させることができる。また、本実施形態のリールシート10のリールシート本体20は、凹部62よりも前側の位置に凹部61を有する。凹部61は、使用者がリールシート10を握ったときの指の膨らみに沿うような形状であるために、使用者がリールシート10を握るときの握りやすさを向上させることができる。
【0039】
なお、本実施形態では、使用者がリールシート10を握ったときの状態として図6に示すように、人差し指が凹部61に接し、中指と薬指が凹部62に接するように握る場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、人差し指と中指が凹部61に接し、薬指と小指が凹部62に接するように握ってもよい。この場合には、薬指と小指とはリールフット111の支持脚112を挟んで前後に位置し、薬指と小指とは一対の脚部113a、113bを下側からあてがうように接する。このような握り方であっても、凹部61、62は、使用者がリールシート10を握ったときの指や手の膨らみに沿うような形状であるために、図6に示す握り方と同様、使用者がリールシート10を握るときの握りやすさを向上させることができる。
【0040】
(第2の実施形態)
図7は本実施形態のリールシート10を適用した釣竿200の一部を示す図である。本実施形態では、図7および後述する図8には必要に応じて、立位姿勢で釣竿200のリールシート10を握っているときの使用者を基準にして上下左右前後を示している。例えば、ブランクの長手方向を前後方向として先端側が前であり、その反対側が後である。
【0041】
本実施形態のリールシート10は、第1の実施形態のリールシート10の前後を入れ替えたものであり、上述した第1の実施形態のリールシート10と全く同一の構成である。したがって、図7および図8では、上述した第1の実施形態のリールシート10と同一符号を付している。
図7に示すようにブランク101に固定されたリールシート10にリール110を固定する場合には、可動フード体30の筒状部80をリールシート本体20の螺合部75に嵌め込んだ状態で、ナット部90を中心軸線Cの軸回りのうち他方の方向に回動すると、螺合部75の雄ネジとナット部90の雌ネジとが螺合して、可動フード体30全体が外観部40に近づく方向である後側に可動する(ダウンロック)。したがって、一対の脚部113a、113bが固定フード部72と可動フード部82との間で挟持され、リールフット111が釣竿200に固定される。
【0042】
次に、上述したように構成されるリールシート10を適用した釣竿200を用いて、使用者がリールシート10を握ったときの状態について図8を参照して説明する。図8(a)はリールシート10を右手で握った状態を示す平面図であり、図8(b)はリールシート10を右手で握った状態を示す左側面図である。ここでは、右手を二点鎖線で示している。
まず、母指球が外観部40の膨出部52に接している。したがって、右手とリールシート10との間の接触面積を増やすことができ、よりブランク101からの振動を手から感じ取りやすくすることができる。
【0043】
次に、人差し指は可動フード体30の可動フード部82を下側からあてがうように接している。このとき、人差し指のうち膨らみがある腹部分が、筒状部80の外周面と可動フード部82との境界に接しているので、使用者がリールシート10を握るときの握りやすさが向上する。
【0044】
次に、中指と薬指とはリールフット111の支持脚112を挟んで前後に位置し、中指と薬指とは一対の脚部113a、113bを下側からあてがうように接している。このとき、中指と薬指のそれぞれの指先のうち膨らみがある腹部分が、左側の側面50cに位置する凹部62と接している。また、中指と薬指のそれぞれの指先のうち膨らみがある腹部分が、左側の側面50cと下面50bとの間の境界に位置する凹部62と接している。また、手のひらのうち人差し指と中指の付け根の膨らみ部分が、右側の側面50dに位置する凹部62と接している。また、手のひらのうち人差し指と中指の付け根の膨らみ部分が、右側の側面50dと下面50bとの間の境界に位置する凹部62と接している。このように、凹部62は、中指、薬指および手のひらの膨らみに沿うような形状であるために、使用者がリールシート10を握るときの握りやすさが向上する。
【0045】
また、小指は外観部40の凹部61を下側からあてがうように接している。このとき、小指の指先のうち膨らみがある腹部分が左側の側面50cと下面50bとの間の境界に位置する凹部61と接し、小指の第1関節と第2関節との間のうち膨らみがある腹部分が下面50bに位置する凹部61と接し、小指の第2関節と第3関節との間のうち膨らみがある腹部分が右側の側面50dと下面50bとの間の境界に位置する凹部61と接している。このように、凹部61は小指の膨らみに沿うような形状であるために、使用者がリールシート10を握るときの握りやすさが向上する。
このように、本実施形態のリールシート10は、前後を入れ替えても凹部61、62は、使用者がリールシート10を握ったときの指の膨らみに沿うような形状であるために、使用者がリールシート10を握るときの握りやすさを向上させることができる。
【0046】
以上、本発明を上述した実施形態により説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、上述した実施形態の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
100、200:釣竿 101:ブランク 110:リール 111:リールフット 113a、113b:脚部 10:リールシート 20:リールシート本体 30:可動フード体 61、62:凹部 63:稜線 72:固定フード部(第1保持部) 73:挿入孔 82:可動フード部(第2保持部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8