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  • 特開-風呂装置、及びその制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037200
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】風呂装置、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/375 20220101AFI20230308BHJP
   F24H 15/196 20220101ALI20230308BHJP
   F24H 15/212 20220101ALI20230308BHJP
【FI】
F24H4/02 W
F24H1/00 606B
F24H1/18 302K
F24H4/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143809
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】早川 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 弘明
(72)【発明者】
【氏名】盤若 明日香
【テーマコード(参考)】
3L024
3L122
【Fターム(参考)】
3L024CC05
3L024CC30
3L024DD06
3L024DD17
3L024DD22
3L024DD27
3L024GG03
3L024GG04
3L024GG06
3L024GG07
3L024GG12
3L024GG22
3L024GG23
3L024GG25
3L024HH54
3L122AA72
3L122BB05
3L122EA50
(57)【要約】
【課題】先行湯張り運転を含む各種運転を制御して、経済性の高い運転を実行可能な風呂装置、及びその制御方法を提供する。
【解決手段】前回までの分割先行湯張り動作で蓄熱槽から払出した合計熱量としての第1合計熱量、もしくは前回の分割先行湯張り動作による浴槽への温水の払出し直前の浴槽熱量に、前回の分割先行湯張り動作による蓄熱槽から払出した熱量を加えた合計熱量としての第2合計熱量の何れかと、ヒートポンプ効率と電気単価から電気料金を算出すると共に、今回の払出し直前の浴槽の熱量である第3合計熱量と、ボイラ効率とガス単価からガス料金を算出し、ガス料金に1以下の所定の比率である所定比率を積算した値が電気料金より安くなる場合、以降の分割先行湯張り動作を停止する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ式給湯器と、燃料ガスを燃料とする瞬間式給湯器と、前記ヒートポンプ式給湯器の蓄熱運転により加熱された蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、前記蓄熱槽の前記蓄熱水を用いて温水を浴槽に供給する温水供給作動を行う温水供給手段と、前記浴槽の湯張り状態が目標湯張り状態となるように前記温水供給手段を前記温水供給作動させる湯張り運転を行う運転制御手段とが設けられている風呂装置であって、
前記運転制御手段は、前記湯張り運転を行うよりも先行して、前記浴槽の湯張り状態が前記目標湯張り状態に達する前の先行湯張り状態になるように前記温水供給手段を前記温水供給作動させる先行湯張り運転を行い、当該先行湯張り運転を完了した状態で前記浴槽を前記蓄熱槽として使用するように構成され、
当該先行湯張り運転において、一日のうちで入浴予定時刻よりも早い時刻に、前記蓄熱槽の貯湯温度が、当該蓄熱槽が満蓄である満蓄温度から給水温度となるまで、前記温水供給作動により前記温水を前記浴槽へ払出す分割先行湯張り動作を、複数回実行する際に、1回目の前記分割先行湯張り動作を実行した後は、前記分割先行湯張り動作を実行する前に、前回までの前記分割先行湯張り動作で前記蓄熱槽から払出した合計熱量としての第1合計熱量、もしくは前回の前記分割先行湯張り動作による前記浴槽への前記温水の払出し直前の浴槽熱量に、前回の前記分割先行湯張り動作による前記蓄熱槽から払出した熱量を加えた合計熱量としての第2合計熱量の何れかと、ヒートポンプ効率と電気単価から電気料金を算出すると共に、
今回の払出し直前の前記浴槽の熱量である第3合計熱量と、ボイラ効率とガス単価からガス料金を算出し、
前記ガス料金に1以下の所定の比率である所定比率を積算した値が前記電気料金より安くなる場合、以降の前記分割先行湯張り動作を停止する風呂装置。
【請求項2】
所定水位以上となった前記浴槽の前記温水の温度を計測可能な温度計測手段を備え、
前記運転制御手段は、1回目の前記分割先行湯張り動作での前記浴槽への前記温水の払出し湯量を、前記浴槽を前記所定水位以上とする所定湯量とする請求項1に記載の風呂装置。
【請求項3】
前記運転制御手段は、前記所定比率を0.7以上1以下とする請求項1又は2に記載の風呂装置。
【請求項4】
前記運転制御手段は、前記蓄熱槽の前記蓄熱水の沸上げ温度、もしくは前記分割先行湯張り動作により前記浴槽に供給する温水温度を、前記浴槽にて設定可能な最高温度以下とする請求項1~3の何れか一項に記載の風呂装置。
【請求項5】
前記第1合計熱量は、前回までの前記分割先行湯張り動作で前記蓄熱槽から払出した熱量であって、今回の払出し直前までに前記浴槽から放熱した熱量も含めた合計熱量であり、
当該第1合計熱量に基づいて算出される前記電気料金は、前回までの前記分割先行湯張り動作で前記蓄熱槽から払出した熱量であって、今回の払出し直前までに前記浴槽から放熱した熱量を含む熱量を前記ヒートポンプ式給湯器にて沸上げる前記電気料金であり、
前記第3合計熱量は、今回の払出し直前の前記浴槽の熱量であって、今回の払出し直前までに前記浴槽から放熱した熱量を除いた合計熱量であり、
前記第3合計熱量に基づいて算出される前記ガス料金は、今回の払出し直前までに前記浴槽から放熱した熱量を除く熱量を前記瞬間式給湯器にて沸上げる前記ガス料金である請求項1~4の何れか一項に記載の風呂装置。
【請求項6】
ヒートポンプ式給湯器と、燃料ガスを燃料とする瞬間式給湯器と、前記ヒートポンプ式給湯器の蓄熱運転により加熱された蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、前記蓄熱槽の前記蓄熱水を用いて温水を浴槽に供給する温水供給作動を行う温水供給手段とを備え、前記浴槽の湯張り状態が目標湯張り状態となるように前記温水供給手段を前記温水供給作動させる湯張り運転を行う風呂装置の制御方法であって、
前記湯張り運転を行うよりも先行して、前記浴槽の湯張り状態が前記目標湯張り状態に達する前の先行湯張り状態になるように前記温水供給手段を前記温水供給作動させる先行湯張り運転を行い、当該先行湯張り運転を完了した状態で前記浴槽を前記蓄熱槽として使用するように構成され、
当該先行湯張り運転において、一日のうちで入浴予定時刻よりも早い時刻に、前記蓄熱槽の貯湯温度が、当該蓄熱槽が満蓄である満蓄温度から給水温度となるまで、前記温水供給作動により前記温水を前記浴槽へ払出す分割先行湯張り動作を、複数回実行する際に、
1回目の前記分割先行湯張り動作を実行する初回分割先行湯張り工程と、
前記初回分割先行湯張り工程の後において、前記分割先行湯張り動作を実行する前に、前回までの前記分割先行湯張り動作で前記蓄熱槽から払出した合計熱量としての第1合計熱量、もしくは前回の前記分割先行湯張り動作による前記浴槽への前記温水の払出し直前の浴槽熱量に、前回の前記分割先行湯張り動作による前記蓄熱槽から払出した熱量を加えた合計熱量としての第2合計熱量の何れかと、ヒートポンプ効率と電気単価から電気料金を算出する電気料金算出工程と、
今回の払出し直前の前記浴槽の熱量である第3合計熱量と、ボイラ効率とガス単価からガス料金を算出するガス料金算出工程と、
前記ガス料金に1以下の所定の比率である所定比率を積算した値が前記電気料金より安くなるか否かを判定する料金比較工程とを実行し、
前記料金比較工程において、前記ガス料金に前記所定比率を積算した値が前記電気料金より安くなると判定された場合、以降の前記分割先行湯張り動作を停止する制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯器と、燃料ガスを燃料とする瞬間式給湯器と、前記ヒートポンプ式給湯器の蓄熱運転により加熱された蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、前記蓄熱槽の蓄熱水を用いて温水を浴槽に供給する温水供給作動を行う温水供給手段と、前記浴槽の湯張り状態が目標湯張り状態となるように前記温水供給手段を温水供給作動させる湯張り運転を行う運転制御手段とが設けられている風呂装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような風呂装置は、運転制御手段が湯張り運転を行うことにより、ヒートポンプ式給湯器により加熱した蓄熱槽の蓄熱水にて給水を加熱すると共にその加熱された湯水を浴槽に供給したり、又は追焚き用熱交換器において蓄熱槽の蓄熱水にて浴槽に貯留している湯水を加熱してその加熱した湯水を浴槽に戻したり、瞬間式給湯器により加熱した湯水を浴槽に供給して、浴槽の湯張り状態を目標湯張り状態としている。目標湯張り状態は、目標湯張り設定温度と目標湯張り量とから定められ、浴槽に目標湯張り設定温度の温水を目標湯張り量貯めた状態を目標湯張り状態としている(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
ここで、湯張り運転では、浴槽が空の状態であっても浴槽の湯張り状態を目標湯張り状態にすることが求められるので、浴槽の湯張り状態を目標湯張り状態とする為に必要な熱量が大きくなる。そのため、浴槽の湯張り状態を目標湯張り状態とする為に必要となる熱量の全量を予め蓄熱槽に蓄熱しておくと、それだけ容量の大きな蓄熱槽が必要となるが、マンション等の集合住宅における各戸においては、大型の蓄熱槽を設定するスペースを確保し難いため、比較的小容量の蓄熱槽を備えざるを得ないという状況があった。
そこで、例えば、特許文献2に開示の技術では、湯張り運転に先行して、蓄熱槽に貯留する蓄熱水を用いて温水を浴槽へ供給する先行湯張り運転を行い、浴槽を蓄熱槽として使用する構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-95147号公報
【特許文献2】特開2008-241126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示の技術では、ヒートポンプ式給湯器とバーナ等を加熱源として有する瞬間式給湯器の双方を備えた風呂装置において、ヒートポンプ式給湯器は熱の汲み上げ効果により効率が高いが、沸き上げに時間がかかる。
蓄熱槽の容量が大きい場合は、ヒートポンプ装置により予め時間をかけて蓄熱水を沸き上げ、蓄熱槽へ蓄熱しておけば良いが、蓄熱槽の容量が小さい場合は、当該蓄熱槽に蓄熱された熱量では、浴槽を目標湯張り状態とする熱量としては足りない場合がある。
そこで、上記特許文献2に開示の技術における先行湯張り運転において、入浴予定時刻よりも早い時刻に、蓄熱槽に蓄熱された熱を浴槽へ払出しする先行湯張り運転を実行することが考えられるが、窓や風呂の蓋の締め忘れ等により放熱が大きくなると、効率が大幅に低下することになり、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒートポンプ式給湯器と瞬間式給湯器とを備えた構成において、ヒートポンプ式給湯器による蓄熱水の沸き上げと瞬間式給湯器による湯水の加熱のバランスを適切なものとする形で、先行湯張り運転を含む各種運転を制御して、経済性の高い運転を実行可能な風呂装置、及びその制御方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための風呂装置は、
ヒートポンプ式給湯器と、燃料ガスを燃料とする瞬間式給湯器と、前記ヒートポンプ式給湯器の蓄熱運転により加熱された蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、前記蓄熱槽の前記蓄熱水を用いて温水を浴槽に供給する温水供給作動を行う温水供給手段と、前記浴槽の湯張り状態が目標湯張り状態となるように前記温水供給手段を前記温水供給作動させる湯張り運転を行う運転制御手段とが設けられている風呂装置であって、その特徴構成は、
前記運転制御手段は、前記湯張り運転を行うよりも先行して、前記浴槽の湯張り状態が前記目標湯張り状態に達する前の先行湯張り状態になるように前記温水供給手段を前記温水供給作動させる先行湯張り運転を行い、当該先行湯張り運転を完了した状態で前記浴槽を前記蓄熱槽として使用するように構成され、
当該先行湯張り運転において、一日のうちで入浴予定時刻よりも早い時刻に、前記蓄熱槽の貯湯温度が、当該蓄熱槽が満蓄である満蓄温度から給水温度となるまで、前記温水供給作動により前記温水を前記浴槽へ払出す分割先行湯張り動作を、複数回実行する際に、1回目の前記分割先行湯張り動作を実行した後は、前記分割先行湯張り動作を実行する前に、前回までの前記分割先行湯張り動作で前記蓄熱槽から払出した合計熱量としての第1合計熱量、もしくは前回の前記分割先行湯張り動作による前記浴槽への前記温水の払出し直前の浴槽熱量に、前回の前記分割先行湯張り動作による前記蓄熱槽から払出した熱量を加えた合計熱量としての第2合計熱量の何れかと、ヒートポンプ効率と電気単価から電気料金を算出すると共に、
今回の払出し直前の前記浴槽の熱量である第3合計熱量と、ボイラ効率とガス単価からガス料金を算出し、
前記ガス料金に1以下の所定の比率である所定比率を積算した値が前記電気料金より安くなる場合、以降の前記分割先行湯張り動作を停止する点にある。
【0008】
上記目的を達成するための風呂装置の制御方法は、
ヒートポンプ式給湯器と、燃料ガスを燃料とする瞬間式給湯器と、前記ヒートポンプ式給湯器の蓄熱運転により加熱された蓄熱水を貯留する蓄熱槽と、前記蓄熱槽の前記蓄熱水を用いて温水を浴槽に供給する温水供給作動を行う温水供給手段とを備え、前記浴槽の湯張り状態が目標湯張り状態となるように前記温水供給手段を前記温水供給作動させる湯張り運転を行う風呂装置の制御方法であって、その特徴構成は、
前記湯張り運転を行うよりも先行して、前記浴槽の湯張り状態が前記目標湯張り状態に達する前の先行湯張り状態になるように前記温水供給手段を前記温水供給作動させる先行湯張り運転を行い、当該先行湯張り運転を完了した状態で前記浴槽を前記蓄熱槽として使用するように構成され、
当該先行湯張り運転において、一日のうちで入浴予定時刻よりも早い時刻に、前記蓄熱槽の貯湯温度が、当該蓄熱槽が満蓄である満蓄温度から給水温度となるまで、前記温水供給作動により前記温水を前記浴槽へ払出す分割先行湯張り動作を、複数回実行する際に、
1回目の前記分割先行湯張り動作を実行する初回分割先行湯張り工程と、
前記初回分割先行湯張り工程の後において、前記分割先行湯張り動作を実行する前に、前回までの前記分割先行湯張り動作で前記蓄熱槽から払出した合計熱量としての第1合計熱量、もしくは前回の前記分割先行湯張り動作による前記浴槽への前記温水の払出し直前の浴槽熱量に、前回の前記分割先行湯張り動作による前記蓄熱槽から払出した熱量を加えた合計熱量としての第2合計熱量の何れかと、ヒートポンプ効率と電気単価から電気料金を算出する電気料金算出工程と、
今回の払出し直前の前記浴槽の熱量である第3合計熱量と、ボイラ効率とガス単価からガス料金を算出するガス料金算出工程と、
前記ガス料金に1以下の所定の比率である所定比率を積算した値が前記電気料金より安くなるか否かを判定する料金比較工程とを実行し、
前記料金比較工程において、前記ガス料金に前記所定比率を積算した値が前記電気料金より安くなると判定された場合、以降の前記分割先行湯張り動作を停止する点にある。
【0009】
発明者らは、ヒートポンプ式給湯器と瞬間式給湯器との双方を備えた風呂装置による先行湯張り運転に関し、先行湯張り回数を複数回としたときに経済性を最大化する運転方法を新たに見出した。
まず、上記特徴構成によれば、先行湯張り運転において、複数回の分割先行湯張り動作を実行することで、満蓄状態となり更なる蓄熱ができなくなった蓄熱槽の熱を、複数回に分けて浴槽へ供給して、浴槽を蓄熱槽として利用することで、蓄熱槽へ蓄熱された熱の有効利用を促進できる。
更に、上記特徴構成によれば、先行湯張り運転において、1回目の分割先行湯張り動作を実施した以降は、分割先行湯張り動作を実行する前に、前回までの分割先行湯張り動作で蓄熱槽から払出した合計熱量としての第1合計熱量、もしくは前回の分割先行湯張り動作による浴槽への温水の払出し直前の浴槽熱量に、前回の分割先行湯張り動作による蓄熱槽から払出した熱量を加えた合計熱量としての第2合計熱量の何れかと、ヒートポンプ効率と電気単価から電気料金を算出すると共に、今回の払出し直前の浴槽の熱量である第3合計熱量と、ボイラ効率とガス単価からガス料金を算出し、ガス料金に1以下の所定の比率である所定比率を積算した値が電気料金より安くなる場合、以降の分割先行湯張り動作を停止するから、残りの湯張りに関し、2回目以降にヒートポンプ給湯器を働かせて分割先行湯張り動作を実行すると、瞬間式給湯機を用いた湯張り運転するよりも経済性が悪化するような場合に、分割先行湯張り動作を停止することができ、経済性の高い運転を担保できる。
以上より、ヒートポンプ式給湯器と瞬間式給湯器とを備えた構成において、ヒートポンプ式給湯器による蓄熱水の沸き上げと瞬間式給湯器による湯水の加熱のバランスを適切なものとする形で、先行湯張り運転を含む各種運転を制御して、経済性の高い運転を実行可能な風呂装置、及びその制御方法を実現できる。
尚、所定比率は、先行湯張り運転を行うときに窓や風呂の蓋の開閉状態が変化する等の状況変化リスクを織り込むための値である。
【0010】
風呂装置の更なる特徴構成は、
所定水位以上となった前記浴槽の前記温水の温度を計測可能な温度計測手段を備え、
前記運転制御手段は、1回目の前記分割先行湯張り動作での前記浴槽への前記温水の払出し湯量を、前記浴槽を前記所定水位以上とする所定湯量とする点にある。
【0011】
上記特徴構成の如く、運転制御手段が1回目の分割先行湯張り動作での浴槽への温水の払出し湯量を、風呂装置に設けられた温度計測手段が浴槽の温水温度を計測可能な所定水位以上とすることで、2回目以降の分割先行湯張り動作の前に、当該温度計測手段にて計測される温水温度に基づく放熱量も考慮して、電気料金やガス料金を算出することができ、より実態に即した状態で経済性の判断を行うことができる。
【0012】
風呂装置の更なる特徴構成は、
前記運転制御手段は、前記所定比率を0.7以上1以下とする点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、0.7以上1以下の所定比率を設定することで、先行湯張り運転を行うときに窓や風呂の蓋の開閉状態が変化する等の状況変化リスクを適切に織り込んだ状態で、電気料金とガス料金の比較を行って、より実態に即した状態で経済性の高い運転状態を実現できる。
【0014】
風呂装置の更なる特徴構成は、
前記運転制御手段は、前記蓄熱槽の前記蓄熱水の沸上げ温度、もしくは前記分割先行湯張り動作により前記浴槽に供給する温水温度を、前記浴槽にて設定可能な最高温度以下とする点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、少なくとも、先行湯張り運転において、浴槽にて設定可能な最高温度(例えば、48℃)を超える温水が浴槽へ供給されることを防止できるから、浴室温度と温水温度との温度差が大きくなり放熱ロスが高くなることを防止できると共に、浴槽の温水による火傷を防止できる。
【0016】
風呂装置の更なる特徴構成は、
前記第1合計熱量は、前回までの前記分割先行湯張り動作で前記蓄熱槽から払出した熱量であって、今回の払出し直前までに前記浴槽から放熱した熱量も含めた合計熱量であり、
当該第1合計熱量に基づいて算出される前記電気料金は、前回までの前記分割先行湯張り動作で前記蓄熱槽から払出した熱量であって、今回の払出し直前までに前記浴槽から放熱した熱量を含む熱量を前記ヒートポンプ式給湯器にて沸上げる前記電気料金であり、
前記第3合計熱量は、今回の払出し直前の前記浴槽の熱量であって、今回の払出し直前までに前記浴槽から放熱した熱量を除いた合計熱量であり、
前記第3合計熱量に基づいて算出される前記ガス料金は、今回の払出し直前までに前記浴槽から放熱した熱量を除く熱量を前記瞬間式給湯器にて沸上げる前記ガス料金である点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、その時点までに蓄熱槽の蓄熱水を沸上げるのにヒートポンプ式給湯器にて使用したすべての電気の電気料金を導出すると共に、その時点での浴槽の温水の温度にまで瞬間式給湯器にて沸上げるガス料金を導出し、両者を所定比率を勘案して比較することになるから、実際に、その時点においてコストメリットが発生するか否かを実態に即した状態で判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る風呂装置において、蓄熱運転、湯張り運転及び先行湯張り運転を実行する場合の湯水の流れを含む回路図である。
図2】実施形態に係る風呂装置において、追焚き運転を実行する場合の湯水の流れを含む回路図である。
図3】別実施形態に係る風呂装置の回路図である。
図4】実施形態に係る先行湯張り運転の制御フロー図である。
【0019】
〔実施形態〕
本発明の実施形態に係る風呂装置100、及びその制御方法は、ヒートポンプ式給湯器と瞬間式給湯器とを備えた構成において、ヒートポンプ式給湯器による蓄熱水の沸き上げと瞬間式給湯器による湯水の加熱のバランスを適切なものとする形で、先行湯張り運転を含む各種運転を制御して、経済性の高い運転を実行可能なものに関する。
以下、図1、2、4に基づいて実施形態に係る風呂装置100、及びその制御方法について説明する。
【0020】
実施形態に係る風呂装置100は、湯水(蓄熱水の一例)を貯留する貯湯タンク2(蓄熱槽の一例)を備え、貯湯タンク2に貯留された湯水を浴槽Bに供給する湯水供給作動を実行可能に構成されると共に、浴槽Bの湯張り状態が目標湯張り状態となるように湯水供給作動を実行して湯張り運転を行う制御装置50(運転制御手段の一例)とが設けられている。即ち、当該実施形態に係る風呂装置100にあっては、蓄熱水は湯水に含まれる概念であり、蓄熱水が湯水として浴槽Bや給湯利用箇所1としての給湯栓に供給される。
【0021】
貯湯タンク2は、例えば、内部に湯水を貯留可能で、断熱性能を有するタンクにて構成されており、内部の湯水は、上方から下方にかけて高温から低温となる温度成層を形成するように構成されている。
燃焼装置12(瞬間式給湯器の一例)は、二缶二水路式に構成されており、内部に設けられる第1バーナ11aにてガス燃料(例えば、都市ガス13A)を燃焼させて、内部の第1熱交換部12aを通流する湯水を加熱可能に構成されると共に、内部に設けられる第2バーナ11bにてガス燃料を燃焼させて、内部の第2熱交換部12bを通流する湯水を加熱可能に構成されている。
【0022】
更に、風呂装置100は、湯水を加熱する熱源機としてのヒートポンプ9と、当該ヒートポンプ9と貯湯タンク2との間で湯水を循環する循環路C1を備えている。
循環路C1は、その上流端が貯湯タンク2の下部に接続されると共にその下流端が貯湯タンク2の上部に接続されており、当該循環路C1の湯水を圧送する第1循環ポンプP1をヒートポンプ9の上流側に備えている。ここで、ヒートポンプ9、循環路C1及び第1循環ポンプP1がヒートポンプ給湯器として機能する。
【0023】
貯湯タンク2には、その下部に接続されて給水圧によりタンク内へ給水を供給する給水流路R1が接続されると共に、その上部に接続されて給水圧によりタンク上方に貯留された湯水を吐出する吐出流路R2が設けられ、当該吐出流路R2には当該吐出流路R2を開閉する第1開閉弁K1が設けられている。尚、給水流路R1には、給水温を計測する第1温度センサT1が設けられている。
因みに、図1~3では、開放状態にある弁体を黒塗りとし閉止状態にある弁体を白抜きとして図示している。
給水流路R1と吐出流路R2とを接続する加熱前混合流路R3が設けられると共に、当該加熱前混合流路R3を通流する給水の流量を調整する比例弁H1が設けられている。吐出流路R2と加熱前混合流路R3との合流部である第1合流部G1の合流後で燃焼装置12による加熱前の加熱前混合流路R3には、加熱前混合温度を検出する第2温度センサT2が設けられている。
【0024】
加熱前混合流路R3は、燃焼装置12の第1熱交換部12aへ湯水を通流させる加熱流路R4に接続されており、当該加熱流路R4には燃焼装置12の出口での補助加熱後温度を検出する第4温度センサT4が設けられている。
加熱前混合流路R3と加熱流路R4との接続部位は、加熱後混合流路R5の上流端が接続されると共に、加熱流路R4と加熱後混合流路R5への湯水の流量比を調整可能な第2三方弁S2が設けられており、加熱後混合流路R5の下流端は、加熱流路R4の第4温度センサT4の下流側の第2合流部G2に接続されている。
第2合流部G2には、給湯利用箇所1(給湯栓の一例)に接続される給湯流路R7が設けられており、当該給湯流路R7の第2合流部G2への接続部位の近傍には、加熱後混合温度を測定する第3温度センサT3が設けられており、給湯流路R7の給湯利用箇所1の近傍には、給湯流路R7に湯水が通流しているか否かを検出可能な第2水量センサF2が設けられている。
給湯流路R7の第3温度センサT3が設けられている箇所の下流側には、浴槽Bへ湯水を導く湯張流路R8が接続されており、当該湯張流路R8には、湯張流路R8に湯水が通流しているか否かを検出可能な第1水量センサF1が設けられていると共に、湯張流路R8を開閉する第2開閉弁K2が設けられている。
【0025】
更に、上流端が浴槽Bの下方部位に接続されると共に下流端が浴槽Bの上方部位に接続される追焚流路R9が設けられており、当該追焚流路R9には、上流側から順に、追焚流路R9に流入する湯水の温度を測定する第7温度センサT7、追焚流路R9の上流側から下流側へ湯水を圧送する第1圧送ポンプP3、当該追焚流路R9に湯水が通流しているか否かを検知する第3水量センサF3、追焚流路R9から浴槽Bへ流入する湯水の温度を測定する第6温度センサT6が設けられている。
また、燃焼装置12の第2熱交換部12bに接続される追焚循環路C2が設けられ、当該追焚循環路C2には、当該追焚循環路C2に湯水を循環する第2循環ポンプP2、当該第2循環ポンプP2による湯水の圧送方向で、第2循環ポンプP2を基準として、燃焼装置12の第2熱交換部12b、追焚循環路C2を開閉する第3開閉弁K3、バッファタンクBTが記載の順に設けられている。
加えて、追焚流路R9の湯水の通流方向で、第3水量センサF3と第6温度センサT6との間を通流する湯水と、追焚循環路C2の湯水の通流方向で、第2熱交換部12bと第3開閉弁K3との間を通流する湯水とを対向流で熱交換させる第1熱交換器EX1が設けられている。
これまで説明してきた構成において、第1水量センサF1、比例弁H1、第1開閉弁K1~第2開閉弁K2、第2三方弁S2、給水流路R1、吐出流路R2、加熱前混合流路R3、加熱流路R4、加熱後混合流路R5、湯張流路R8、第1温度センサT1~第5温度センサT5及び燃焼装置12が湯水供給手段として働くことになる。
【0026】
風呂装置100の運転を制御するコンピュータを備えた制御装置50(運転制御手段の一例)は、運転を指令する人為操作式の貯湯式給湯装置用リモコン(図示省略)との間で各種情報を通信可能に構成されている。当該貯湯式給湯装置用リモコンは、例えば、台所や浴室等に設けられており、給湯目標温度、目標湯張り状態における湯張り目標温度、先行湯張り運転における目標先行湯張り温度等を設定可能であると共に、各種スイッチのON操作により各種運転の運転要求を要求可能に構成されている。また、制御装置50は、浴槽Bの湯張り運転等を指令する人為操作式の風呂リモコン(図示省略)との間で各種の情報を通信可能に構成されている。
【0027】
制御装置50は、リモコンの運転スイッチがON操作されると制御可能な状態となり、給湯利用箇所1としての給湯栓が開栓されると、給湯利用箇所1に給湯する給湯運転を実行する。
また、制御装置50は、例えば、ヒートポンプ9が運転状態にある間は、貯湯タンク2へ蓄熱する蓄熱運転を実行する。更に、制御装置50は、風呂リモコンの湯張りスイッチがON操作されて湯張り要求されると湯張り運転を実行すると共に、浴槽Bに貯留される湯水を追焚きする追焚き運転、湯張り運転に先行して浴槽Bへ先行湯張りする先行湯張り運転を実行する。以下、各運転について説明する。
【0028】
(蓄熱運転)
当該蓄熱運転では、制御装置50は、貯湯タンク2の下部の湯水を循環路C1に通流させ、湯水をヒートポンプ9により加熱し、加熱された湯水を貯湯タンク2の上部に戻す運転である。当該蓄熱運転では、第1循環ポンプP1を所定の回転速度で駆動させる。
【0029】
(給湯運転)
湯水の流れの図示は省略するが、給湯運転は、第2水量センサF2にて水流を検出したときに実行される運転であり、制御装置50は、第5温度センサT5にて検出される貯湯温度に基づいて、第2温度センサT2にて測定される加熱前混合温度もしくは第3温度センサT3にて測定される加熱後混合温度の少なくとも一方が、給湯運転で設定された給湯目標温度になるように、第1開閉弁K1、比例弁H1、第2三方弁S2とを開閉制御する。
【0030】
給湯運転において、制御装置50は、第1開閉弁K1を開放状態とし、比例弁H1の開度を所定の開度とし、第2三方弁S2を加熱流路R4のみに湯水を通流させる開放状態として、貯湯タンク2に貯留された湯水を燃焼装置12にて補助加熱することなく給湯利用箇所1へ供給する加熱停止状態と、第1開閉弁K1を開放状態とし、比例弁H1の開度を所定の開度とし、第2三方弁S2を加熱流路R4と加熱後混合流路R5との双方に所定の比率で湯水を通流させる開放状態として、貯湯タンク2に貯留された湯水を燃焼装置12にて補助加熱をして給湯利用箇所1へ供給する加熱作動状態とに切り換え自在である。
【0031】
制御装置50は、貯湯タンク2の上部に貯留される湯水の貯湯温度(第5温度センサT5で測定される温度)が給湯利用箇所1にて要求されている給湯目標温度より高い時、加熱停止状態に切り換え、貯湯タンク2の上部に貯留される湯水の貯湯温度が給湯目標温度以下である時、加熱作動状態に切り換える。
【0032】
加熱停止状態に切り換える時には、上水の圧力により貯湯タンク2の上部から吐出流路R2へ吐出させた湯水と、上水の圧力により加熱前混合流路R3を通流する給水とを、第1合流部G1にて合流させた後、加熱流路R4及び給湯流路R7を介して給湯利用箇所1から供給する。
ここで、制御装置50は、第2温度センサT2にて測定される加熱前混合温度が、給湯目標温度よりも高い場合、比例弁H1を開き側へ制御し、給湯目標温度未満の場合、比例弁H1を閉じ側へ制御する形態で、加熱前混合温度が給湯目標温度となるように制御する。
【0033】
一方、加熱作動状態に切り換える時には、上水の圧力により貯湯タンク2の上部から吐出流路R2へ吐出させた湯水と、上水の圧力により加熱前混合流路R3を通流する給水とを、第1合流部G1にて合流させた湯水の一部を、加熱流路R4へ通流させて燃焼装置12にて加熱すると共に、残部を加熱後混合流路R5へ通流させて第2合流部G2で混合し、給湯流路R7を介して給湯利用箇所1から供給する。
ここで、制御装置50は、第2温度センサT2にて測定される加熱前混合温度が、給湯目標温度から燃焼装置12の第1バーナ11aにより最小能力で加熱した時の温度上昇の想定値である最小加熱温度を減算した温度以下になるように、比例弁H1の開度を制御し、且つ、第3温度センサT3で測定される加熱後混合温度が給湯目標温度になるように、燃焼装置12の第1バーナ11aの燃焼量及び第2三方弁S2の開度を制御する。
【0034】
(湯張り運転)
当該湯張り運転は、制御装置50が、第5温度センサT5にて検出される貯湯温度に基づいて、第2温度センサT2にて測定される加熱前混合温度もしくは第3温度センサT3にて測定される加熱後混合温度の少なくとも一方を、湯張り運転で設定された湯張り目標温度になるように、第1開閉弁K1、比例弁H1、第2三方弁S2とを開閉制御すると共に、第2開閉弁K2を開放状態とする。
当該湯張り運転は、リモコン(図示せず)により予め設定された所定の時間に実行されるか、又はリモコンから湯張り要求がされると実行される。
【0035】
湯張り運転は、制御装置50が、第1開閉弁K1を開放状態とし、比例弁H1の開度を所定の開度とし、第2三方弁S2を加熱流路R4のみに湯水を通流させる開放状態として、貯湯タンク2に貯留された湯水を燃焼装置12にて補助加熱することなく浴槽Bへ供給する加熱停止状態と、第1開閉弁K1を開放状態とし、比例弁H1の開度を所定の開度とし、第2三方弁S2を加熱流路R4と加熱後混合流路R5との双方に所定の比率で湯水を通流させる開放状態として、貯湯タンク2に貯留された湯水を燃焼装置12にて補助加熱をして浴槽Bへ供給する加熱作動状態とに切り換え自在である。
【0036】
〔追焚き運転〕
追焚き運転は、図示しないリモコンにて追焚き運転が要求されると実行されるものであり、図2に示すように、制御装置50は、第3水量センサF3にて追焚流路R9で所定以上の水流を検知すると、第3開閉弁K3を開放状態として第1圧送ポンプP3及び第2循環ポンプP2を所定の回転速度で作動させた状態で、燃焼装置12の第2バーナ11bを所定の出力で作動させ、第7温度センサT7にて計測される湯水温度が目標追焚き温度(又は、目標追焚き温度+α)となるまで、当該状態を維持する。ちなみに、第6温度センサT6にて計測される温度は、浴槽Bでの使用者が火傷をしない程度の温度(例えば、48℃)以下に設定される。
第7温度センサT7にて計測される湯水温度が目標追焚き温度(又は、目標追焚き温度+α)となると、燃焼装置12の第2バーナ11bを停止すると共に、第3開閉弁K3を閉止状態として第1圧送ポンプP3及び第2循環ポンプP2を停止する。
【0037】
さて、当該実施形態に係る風呂装置100は、これまで説明してきたヒートポンプ式給湯器と瞬間式給湯器とを備えた構成において、ヒートポンプ式給湯器による貯湯タンク2の蓄熱水の沸き上げと瞬間式給湯器による湯水の加熱のバランスを適切なものとする形で、先行湯張り運転を含む各種運転を制御して、経済性の高い運転を実行するべく、運転制御手段としての制御装置50の演算を含めた以下の処理を実行する。
【0038】
(先行湯張り運転)
制御装置50は、先行湯張り運転において、一日のうちで入浴予定時刻よりも早い時刻に、貯湯タンク2の貯湯温度が、当該貯湯タンク2が満蓄である満蓄温度から給水温度となるまで、温水供給作動により温水を浴槽Bへ払出す分割先行湯張り動作を、複数回実行する際に、1回目の分割先行湯張り動作を実行した後は、分割先行湯張り動作を実行する前に、毎回、前回までの分割先行湯張り動作で貯湯タンク2から払出した合計熱量としての第1合計熱量、もしくは前回の分割先行湯張り動作による浴槽Bへの温水の払出し直前の浴槽熱量に、前回の分割先行湯張り動作による貯湯タンク2から払出した熱量を加えた合計熱量としての第2合計熱量の何れかと、ヒートポンプ効率と電気単価から電気料金を算出すると共に、今回の払出し直前の浴槽Bの熱量である第3合計熱量と、ボイラ効率とガス単価からガス料金を算出し、ガス料金に1以下の所定の比率である所定比率を積算した値が電気料金より安くなる場合、以降の分割先行湯張り動作を停止する。
つまり、当該実施形態に係る風呂装置、及びその制御方法の先行湯張り運転では、分割先行湯張り動作が少なくとも1回以上行われることにより実行される。
ここで、入浴予定時刻は、例えば、図示しない記憶部に記憶される湯張り運転が完了した過去の時刻に基づき、制御装置50が算出するものである。
【0039】
以下、当該実施形態に係る先行湯張り運転の制御フローについて、図1図4を参照しながら説明する。
制御装置50は、第1温度センサT1にて給水温を取得すると共に(#01)、ヒートポンプ9による貯湯タンク2の湯水の沸上げ(満蓄温度:48℃)を開始する(#02)。
次に、制御装置50は、先行湯張り運転に含まれる複数の分割先行湯張り動作の回数K(以下、先行湯張り回数と呼ぶ場合がある)を初期化(K←1)する(#03)。
その後、制御装置50は、貯湯タンク2が満蓄状態でない場合(第5温度センサT5の取得温度<満蓄温度Tα:#04でNo)、所定時間毎に当該#04の処理を実行し、貯湯タンク2が満蓄状態にある場合(第5温度センサT5の取得温度≧満蓄温度Tα:#04でYES)、以下の#05以降のステップを実行する。
次に、制御装置50は、先行湯張り回数Kが1より大きくない場合(K=1の場合:#05でNO)、1回目の分割先行湯張り動作を実行すると共に(#06)、先行湯張り回数Kを1カウント増加した後(#07)、#04の前へ戻る。
ここで、満畜温度及び浴槽Bへ払出される温水の温度は、浴槽Bでの火傷を防止するべく、浴槽Bにて設定可能な最高温度(例えば、48℃)以下に設定されている。また、1回目の分割先行湯張り動作として、浴槽Bへ払出される湯量は、払出された浴槽Bの湯温が追焚流路R9に設けられる第7温度センサT7(温度計測手段の一例)にて計測できるように、浴槽Bが所定水位以上となる所定量(当該実施形態では100L)とする。即ち、1回目の分割先行湯張り動作では、貯湯タンク2の貯留量が所定量未満の場合、貯湯タンク2の貯留量に加えて、給水を供給する形で、所定量を浴槽Bへ払出すことになる。
【0040】
一方、制御装置50は、先行湯張り回数Kが1より大きい場合(#05でYES)、K回目の分割先行湯張り動作前の浴槽湯温を第7温度センサT7にて計測し(#08)、K回目の湯張り前の熱量(第3合計熱量)を以下の〔式3〕にて算出し(#09)、K回目の湯張り前の熱量のガス料金を以下の〔式4〕にて算出する(#10)。尚、以下の〔式1〕~〔式4〕における浴槽Bの湯量は、分割先行湯張り動作毎に、第1水量センサF1にて計測される値に基づいて算出される。
【0041】
K回目の湯張り前の熱量[Wh]=
K-1回目までの湯量[L]×(K回目湯張り直前の湯温-給水温)/0.86
・・・〔式3〕
【0042】
K回目の湯張り前の熱量のガス料金=
K回目湯張り前の熱量[Wh]×0.86/ボイラ効率/ガス熱量×ガス単価
・・・〔式4〕
【0043】
ここで、「0.86」は、Whとkcalとの換算係数であり、ボイラ効率は0.9とし、ガス熱量は、都市ガスの単位体積当たりの熱量である10750kcal/mである。
【0044】
更に、制御装置50は、K-1回目までの湯張り時の熱量(第1合計熱量)を以下の〔式1〕にて算出し(#11)、K-1回目までの湯張り時の熱量の電気料金(第1電気料金)を以下の〔式2〕にて算出する(#12)。
【0045】
K-1回目までの湯張り時の熱量[Wh]=
Σ{K-1回目の湯量[L]×(K-1回目湯張りの湯温-給水温)/0.86}
・・・〔式1〕
【0046】
K-1回目までの湯張り時の熱量の電気料金=
K-1回目までの湯張り時の熱量[Wh]/ヒートポンプのCOP/1000×電気単価 ・・・〔式2〕
【0047】
ここでヒートポンプ9のCOPは「4.5」である。
また、以上の〔式1〕~〔式4〕からわかるように、第1合計熱量は、前回までの分割先行湯張り動作で前記蓄熱槽から払出した熱量であって、今回の払出し直前までに浴槽Bから放熱した熱量も含めた合計熱量であり、当該第1合計熱量に基づいて算出される電気料金としての第1電気料金は、前回までの分割先行湯張り動作で前記蓄熱槽から払出した熱量であって、今回の払出し直前までに浴槽Bから放熱した熱量を含む熱量をヒートポンプ9にて沸上げる電気料金であり、第3合計熱量は、今回の払出し直前の浴槽Bの熱量であって、今回の払出し直前までに浴槽Bから放熱した熱量を除く合計熱量であり、第3合計熱量に基づいて算出されるガス料金は、今回の払出し直前までに浴槽Bから放熱した熱量を除く浴槽Bの熱量を燃焼装置12(瞬間式給湯器の一例)にて沸上げるガス料金である。
【0048】
更に、制御装置50は、K回目の湯張り前の熱量のガス料金がK-1回目までの湯張り時の熱量の電気料金未満の場合(#13でNO:料金比較工程の一例)、ヒートポンプ9による貯湯タンク2の湯水の沸上げを停止し(#17)、先行湯張り運転を終了する。
【0049】
一方、制御装置50は、K回目の湯張り前の熱量のガス料金がK-1回目までの湯張り時の熱量の電気料金以上の場合(#13でYES:料金比較工程の一例)、K回目の分割先行湯張り動作を実行する(#14)。
【0050】
#14のステップの後、制御装置50は、これまでのトータルの浴槽Bへの払い出し湯量が目標先行湯張り湯量よりも少ない場合(#15でYES)、先行湯張り回数Kのカウントを1増加し(#16)、#04のステップの前に戻る。一方、これまでのトータルの浴槽Bへの払い出し湯量が目標先行湯張り湯量以上の場合(#15でNO)、ヒートポンプ9による貯湯タンク2の湯水の沸上げを停止し(#17)、先行湯張り運転を終了する。
【0051】
〔シミュレーション〕
ここで、ヒートポンプ9による貯湯タンク2の1回の沸上げ時間が0.44[h]である場合にシミュレーションを実行した場合の計算結果を以下の〔表2-1〕、〔表2-2〕に示す。ちなみに1回の沸き上げ時間は、タンク満蓄熱量をヒートポンプ9の沸き上げ能力で除算した値であり、貯湯タンク2の熱量が先行湯張り以外への利用がないことを前提とした値である。
尚、当該シミュレーションにおいては、前提条件を以下の〔表1〕に示す通りとした。ただし、各表に示す数値は、四捨五入している関係で、一部、最小桁に誤差が生じている場合がある。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2-1】
【0054】
【表2-2】
【0055】
当該計算結果では、先行湯張り回数2回目以降(K≧2)の何れの場合においても、K回目の湯張り前の熱量のガス料金がK-1回目までの湯張り時の熱量の電気料金(第1電気料金)以上であるため、トータルの浴槽Bへの払い出し湯量が目標先行湯張り湯量以上となるまで、分割先行湯張り動作が実行されることになる。
【0056】
次に、ヒートポンプ9の沸き上げの途中で給湯等の熱需要が発生し、貯湯タンク2に蓄熱された熱が利用され、沸上げ時間[h]が、上記〔表2-1〕及び〔表2-2〕の場合に比べて2倍となる場合の計算結果を、以下の〔表3-1〕、〔表3-2〕に示す。
【0057】
【表3-1】
【0058】
【表3-2】
【0059】
当該計算結果では、先行湯張り回数2回目(K=2)のときに、K回目の湯張り前の熱量のガス料金がK-1回目までの湯張り時の熱量の電気料金(第1電気料金)未満となっているため、先行湯張り回数2回目(K=2)のときの料金比較の完了後に、ヒートポンプ9による貯湯タンク2の湯水の沸上げを停止し、先行湯張り運転を終了する。
【0060】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、電気料金としては、前回までに貯湯タンク2から払出した合計熱量としての第1合計熱量に基づいて算出した電気料金(第1電気料金)を用いた。
他の構成例として、電気料金としては、前回の払出し直前の浴槽熱量に前回貯湯タンク2から払出した熱量を加えた合計熱量としての第2合計熱量に基づいて算出する電気料金(第2電気料金)を用いても構わない。
【0061】
因みに、当該第2電気料金を用いたシミュレーションの計算結果について、上記〔表2-1〕、〔表2-2〕、〔表3-1〕、〔表3-2〕に基づいて説明する。
第2電気料金を用いた場合、〔表2-1〕、〔表2-2〕に示す計算結果では、先行湯張り回数2回目以降(K≧2)の何れの場合においても、K回目の湯張り前の熱量のガス料金が、K-1回目の払出し直前の浴槽熱量に、K-1回目の払出し熱量を合算した熱量の電気料金(第2電気料金)以上であるため、これまでのトータルの浴槽Bへの払い出し湯量が目標先行湯張り湯量以上となるまで、分割先行湯張り動作が実行されることになる。また、〔表3-1〕、〔表3-2〕に示す計算結果では、先行湯張り回数2回目(K=2)のときに、K回目の湯張り前の熱量のガス料金が、K-1回目の払出し直前の浴槽熱量に、K-1回目の払出し熱量を合算した熱量の電気料金(第2電気料金)未満となっているため、先行湯張り回数2回目(K=2)のときの料金比較の完了後に、ヒートポンプ9による貯湯タンク2の湯水の沸上げを停止し、先行湯張り運転を終了する。
【0062】
(2)上記実施形態では、先行湯張り回数2回目(K=2)より、毎回、図4の制御フローの#08から#13で判定した後に、#14の分割先行湯張り動作を実行していたが、#08から#13の動作を、時々省略して、#14の分割先行湯張り動作を実行しても構わない。
【0063】
(3)上記実施形態では、第7温度センサT7で計測される浴槽湯温と、第1水量センサF1で計測される湯張り湯量から、前回までに貯湯タンク2から払出した合計熱量としての第1合計熱量を算出したが、浴槽Bの水位が低く、浴槽湯温が計測できない場合は、第3温度センサT3で計測される浴槽Bへ払出される温水の温度と、第1水量センサF1で計測される湯張り湯量から、前回までに貯湯タンク2から払出した合計熱量としての第1合計熱量を算出しても構わない。
【0064】
(4)風呂装置100は、図3に示すように、貯湯タンク2に蓄熱される蓄熱水と浴槽Bや給湯利用箇所1へ供給される湯水とが異なるものであっても構わない。
即ち、図3に示すように、貯湯タンク2の内部に貯湯タンク2の内部の蓄熱水と通流する湯水とを熱交換可能な第2熱交換器EX2が設けられ、給水流路R1と第2熱交換器EX2と吐出流路R2とが連通接続する構成を作用しても構わない。
【0065】
(5)上記制御フローの#13において、K回目の湯張り前の熱量のガス料金がK-1回目までの湯張り時の熱量の電気料金(第1電気料金)以上であるか否かの判定を行ったが、当該判定は、K回目の湯張り前の熱量のガス料金×βがK-1回目までの湯張り時の熱量の電気料金(第1電気料金)以上であるか否かの判定としても構わない。
ここで、βは、浴槽Bの窓や風呂の蓋の開閉状態が変化する等の状況変化リスクを織り込むための所定比率であり、0.7以上1以下に設定される値である。
【0066】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のヒートポンプ式給湯器と瞬間式給湯器とを備えた構成において、ヒートポンプ式給湯器による蓄熱水の沸き上げと瞬間式給湯器による湯水の加熱のバランスを適切なものとする形で、先行湯張り運転を含む各種運転を制御して、経済性の高い運転を実行可能な風呂装置、及びその制御方法として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
2 :貯湯タンク
9 :ヒートポンプ
12 :燃焼装置
50 :制御装置
100 :風呂装置
B :浴槽
K :先行湯張り回数
T7 :第7温度センサ


図1
図2
図3
図4