(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037209
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】撹拌処理装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/70 20220101AFI20230308BHJP
B01F 35/10 20220101ALI20230308BHJP
A47J 27/14 20060101ALI20230308BHJP
A21C 1/06 20060101ALN20230308BHJP
【FI】
B01F7/04 Z
B01F15/00 D
A47J27/14 Q
A21C1/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143821
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】500148592
【氏名又は名称】株式会社カジワラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梶原 秀浩
(72)【発明者】
【氏名】清遠 匡章
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美咲
(72)【発明者】
【氏名】堀切 花織
【テーマコード(参考)】
4B031
4B054
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4B031CA20
4B031CC03
4B031CC15
4B054AA03
4B054AB01
4B054AB05
4B054AC01
4B054AC03
4B054AC20
4B054BC06
4B054CD03
4B054CD07
4G037DA15
4G037EA03
4G078AA17
4G078AB09
4G078BA01
4G078BA09
4G078CA09
4G078DA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被撹拌物の撹拌処理の向上を可能にする撹拌処理装置を提供する。
【解決手段】底部9が曲面の撹拌容器3に対し横方向に配置された回転軸21に掻取羽根23、25及び棒状撹拌子27、29が支持され、回転軸21の回転駆動により掻取羽根23、25及び棒状撹拌子27、29が上下方向に旋回して掻取羽根23、25が底部9を掻取りながら被撹拌物を撹拌すると共に棒状撹拌子27、29が被撹拌物を撹拌する撹拌処理装置1であって、掻取羽根23、25は、回転軸21にそれぞれ回転半径方向の径方向アーム33、35を介して結合され且つ回転軸21に沿って複数配列され、棒状撹拌子27、29は、径方向アーム33、35間で回転軸21に結合されたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部が曲面の攪拌容器に対し横方向に配置された回転軸に掻取羽根及び棒状攪拌子が支持され、前記回転軸の回転駆動により前記掻取羽根及び棒状攪拌子が上下方向に旋回して前記掻取羽根が前記底部を掻取りながら被攪拌物を撹拌すると共に前記棒状攪拌子が被撹拌物を撹拌する撹拌処理装置であって、
前記掻取羽根は、前記回転軸にそれぞれ回転半径方向の径方向アームを介して結合され且つ回転軸に沿って複数配列され、
前記棒状攪拌子は、前記径方向アーム間で前記回転軸に結合された、
攪拌処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の撹拌処理装置であって、
前記棒状攪拌子は、前記掻取羽根に対し回転位相がずれて配置された、
攪拌処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の撹拌処理装置であって、
前記複数配列された掻取羽根は、相互に回転位相がずれて前記回転軸に沿った疑似螺旋を形成し前記被撹拌物を前記回転軸に沿って流動させる、
攪拌処理装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項記載の撹拌処理装置であって、
前記撹拌容器は、前記回転軸の軸心方向に端壁を備え、
前記端壁を掻取る端壁掻取羽根を備え、
前記端壁掻取羽根は、前記径方向アーム間で屈曲アームにより前記回転軸に支持された、
撹拌処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の撹拌処理装置であって、
前記屈曲アームは、前記径方向アーム及び棒状攪拌子に対して回転位相がずれている、
撹拌処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着物と固形物の混合等を撹拌処理する撹拌処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撹拌処理装置として、特許文献1の
図6のようなものがある。
【0003】
この撹拌処理装置は、レオニーダー(登録商標)の名称で食品製造などに広く使用されている。その性能は、掻取羽根が円筒状の器壁を周回することによる
(1)掻取羽根による材料の器壁からの掻取りによる伝熱向上、焦げ付き防止。
(2)掻取羽根の旋回による、素材が羽根を乗り越える運動による混合。
(3)(2)の効果で、羽根が軸方向に角度を持つ事による、羽根と接触する材料の軸方向への移動及びそれに伴う混合。
(4)羽根が材料層より上方に出た時、羽根上の材料が落下する事による混合。
(5)羽根の円柱状のアームが材料中を旋回運動する事による材料の排除・吸引とせん断による混合。
などの効果により、横型のリボン混合機にアームによるせん断混合を加えたような特性を持ち、広く食品の加熱・混合に用いられ、粘着物と固形物の混合を行うこともできる。
【0004】
しかしながら、掻取羽根付近では、羽根の形状が板状であるため、素材の性状によっては、羽根の進行方向にある素材が羽根を含んだ1つの塊となり、共回りする現象が生じるという課題があり、特に粘着物と固形物等の混合においては、攪拌混合に時間がかかるという問題があった。
【0005】
また、従来の撹拌処理装置として、特許文献2のようなものもある。この撹拌処理装置は、固形物及び粘着性材の加熱・冷却・攪拌混合を促進する装置で、例えば、ナッツ粒等の固形物にカラメル等の粘着性材を被覆し、固形物ごとに解すように撹拌処理してカラメルをコーティングした焙煎ナッツ等を製品化するものである。
【0006】
この撹拌処理装置は、羽根状撹拌子及び棒状撹拌子より成る攪拌翼を備えた縦型の自転公転型攪拌装置であり、撹拌駆動軸の自転及び公転により羽根状撹拌子及び棒状撹拌子より成る攪拌翼が撹拌容器に対して横方向に自転及び公転するように構成されている。
【0007】
そして、一例として撹拌容器に投入した粒状ナッツの焙煎とグラニュー糖のカラメル化とを撹拌容器の加熱と羽根状撹拌子及び棒状撹拌子より成る攪拌翼の自転及び公転とを伴うことで行わせる。
【0008】
次いで、撹拌容器の冷却を伴ってカラメルを固化させながら羽根状撹拌子及び棒状撹拌子より成る攪拌翼の自転及び公転を行わせる。
【0009】
この結果、粒ごとにほぐした状態でカラメルコーティングが行われた焙煎ナッツを得ることができる。
【0010】
しかし、かかる撹拌処理装置は、被撹拌物に羽根状攪拌子と棒状攪拌子が一体構造として作用するため固形物及び粘着性材よりなる材料等の混合・撹拌処理に限界があり、製造時間の増大を招いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4152616号公報
【特許文献2】特許第6633299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、被撹拌物の混合撹拌処理に限界があり、製造時間の増大を招いていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、被撹拌物の混合撹拌処理の向上を可能にするため、底部が曲面の攪拌容器に対して横方向に配置された回転軸に掻取羽根及びが支持され、前記回転軸の回転駆動により前記掻取羽根及び棒状攪拌子が上下方向に旋回して前記掻取羽根が前記底部を掻取りながら被攪拌物を撹拌すると共に前記棒状攪拌子が被撹拌物を混合撹拌する撹拌処理装置であって、前記掻取羽根は、前記回転軸にそれぞれ回転半径方向の径方向アームを介して結合され且つ回転軸に沿って複数配列され、前記棒状攪拌子は、前記径方向アーム間で前記回転軸に結合されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願発明は、上記構成であるから、掻取羽根及び棒状攪拌子が上下方向に旋回して掻取羽根が撹拌容器の曲面の底部を掻取りながら被攪拌物を撹拌すると共に棒状攪拌子が被撹拌物を混合撹拌することができる。径方向アームは、旋回によって被撹拌物に対する混合作用を奏することができる。棒状攪拌子は、径方向アーム間で前記回転軸に結合されているため、径方向アーム間で棒状攪拌子が径方向アームとの協働により被撹拌物のせん断、素材移動、微分散などの混合を複合的に行わせることができる。したがって、掻取羽根により被撹拌物の掻取り撹拌を行いながら径方向アーム及び径方向アーム間の棒状攪拌子が掻き取られた被撹拌物に対して直接的に動く事による撹拌の向上を可能とする。
【0015】
本願発明は、上記構成であるから、掻取羽根及び棒状攪拌子が上下方向に旋回して掻取羽根が撹拌容器の曲面の底部を掻取りながら被攪拌物を混合撹拌すると共に棒状攪拌子が被撹拌物を混合撹拌することができる。径方向アームは、旋回によって被撹拌物に対する混合作用を奏することができる。棒状攪拌子は、径方向アーム間で前記回転軸に結合されているため、径方向アーム間で棒状攪拌子が径方向アームとの協働により被撹拌物の混合作用を奏することができる。したがって、掻取羽根により被撹拌物の掻取り撹拌を行いながら径方向アーム及び径方向アーム間の棒状攪拌子による被撹拌物の混合撹拌の向上を可能とする。
【0016】
これらにより、粘着物と固体との混合等を強化し、攪拌時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例に係り、攪拌処理装置の概略断面図である。
【
図2】実施例に係り、回転軸の軸方向から見た概略透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本願発明は、被撹拌物の混合撹拌処理の向上を可能にするという目的を以下のように実現した。
【0019】
本発明は、底部が曲面の攪拌容器に対して横方向に配置された回転軸に掻取羽根及び棒状攪拌子が支持され、前記回転軸の回転駆動により前記掻取羽根及び棒状攪拌子が上下方向に旋回して前記掻取羽根が前記底部を掻取りながら被攪拌物を撹拌すると共に前記棒状攪拌子が被撹拌物を混合撹拌する撹拌処理装置であって、前記掻取羽根は、前記回転軸にそれぞれ回転半径方向の径方向アームを介して結合され且つ回転軸に沿って複数配列され、前記棒状攪拌子は、前記径方向アーム間で前記回転軸に結合されたことにより実現した。
【0020】
前記被撹拌物は、例えば、固形物及び粘着性材よりなる材料等の調理処理物、或いは、粒状又は塊状の固形物に粘着性材をコーティングした状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を得る場合のものである。調理処理物としては、米と麹の混合、ドウ生地の混捏、求肥の製造、白和え、などがあり、粒状又は塊状の固形物としては、粘着性材をコーティングできるものであればよく、例えばナッツ、ポップコーン、納豆などである。粘着性材としては、攪拌により固形物をコーティングできるものであればよく、例えばカラメル、チョコレート、飴などである。
【0021】
但し、前記被撹拌物は、混合処理、ほぐし撹拌処理を必要とするものであれば特に限定されるものでは無く、上記処理物に限らず、混合処理、ほぐし処理が必要なその他の食品、さらには食品に限らず、医薬、医薬部外品、漢方薬、各種材料などのほぐし処理で実現することもできる。
【0022】
前記底部が曲面の攪拌容器は、底部が、横置きの円筒の一部として径方向の断面で円筒の下部であり、例えば底部のほぼ半円を形成する横型の撹拌容器である。但し、底部は、掻取羽根の旋回で掻取りができればよく、底部が径方向の断面で半円を下回り、或は半円を上回る範囲で実現することもできる。また、底部が球面の一部を形成する縦型の攪拌容器で実現することもできる。
【0023】
前記棒状攪拌子は、直状の丸棒による棒状撹拌子で実現できる。棒状攪拌子は、回転軸の軸方向で複数本設定して実現できる。この複数本の棒状攪拌子は、相互の長さを異ならせて実現することもできる。棒状攪拌子は、回転軸の周方向で複数本設定して実現することもできる。この複数本の棒状攪拌子は、相互の長さを異ならせて実現することもできる。棒状攪拌子は、単一で実現することもできる。
【0024】
前記棒状攪拌子は被撹拌物を混合撹拌できればよく、被撹拌物に応じること等で断面矩形、断面楕円形等の棒状等の撹拌子で実現することもできる。
【0025】
前記棒状攪拌子は、直状に限らず、径方向アームとの相互関係を考慮しつつ湾曲状、屈曲状などで実現することもできる。
【0026】
前記径方向アームは、断面円形の直状のアームで実現した。
【0027】
前記径方向アームは、掻取羽根を回転軸に結合し、且つ棒状攪拌子との協働により被撹拌物を混合撹拌できればよく、断面矩形、断面楕円形等アームで実現することもできる。
【0028】
前記径方向アームは、直状に限らず、棒状攪拌子との相互関係を考慮しつつ湾曲状、屈曲状などで実現することもできる。
【0029】
前記複数配列された掻取羽根は、回転方向で端部がオーバーラップするように実現した。
【0030】
前記掻取羽根は、円筒の一部を形成する底部を掻取りながら被攪拌物を撹拌することができればよく、複数配列された掻取羽根は、回転方向でオーバーラップさせずに回転軸に沿った方向で離間させて実現することもできる。
【0031】
前記棒状攪拌子は、前記掻取羽根に対し回転位相がずれて配置されたことにより実現した。
【0032】
前記回転位相のずれは、90°であることにより実現した。
【0033】
但し、前記棒状攪拌子は被撹拌物を径方向アームとの協働により被撹拌物をほぐし撹拌できればよく、この限りにおいて回転位相の選択は自由に実現できる。
【0034】
前記複数配列された掻取羽根は、相互に回転位相がずれて前記回転軸に沿った疑似螺旋を形成し前記被撹拌物を前記回転軸に沿って流動させるように実現できる。
【0035】
前記掻取羽根の回転位相のずれは、複数配列された掻取羽根が疑似螺旋を形成して被撹拌物を回転軸に沿って流動させることができる限り、自由に設定できる。
【0036】
前記撹拌容器は、軸心周りに円形形状の端壁を備え、前記端壁を掻取る端壁掻取羽根を備え、前記端壁掻取羽根は、前記径方向アーム間で屈曲アームにより前記回転軸に支持されたことで実現できる。
【0037】
前記屈曲アームは、回転半径方向及び回転軸方向に直角に屈曲する形態で実現するが、端壁掻取羽根を径方向アーム間で回転軸に結合できればよく、屈曲の形態は自由に実現できる。
【0038】
前記屈曲アームは、径方向アーム間外で回転軸に結合することで実現することもできる。
【0039】
前記屈曲アームは、前記径方向アーム及び棒状攪拌子に対して回転位相がずれて実現した。
【0040】
前記屈曲アームを、径方向アーム間外で回転軸に結合する形態では、径方向アーム及び棒状攪拌子に対して回転位相のずれなく実現することもできる。
【実施例0041】
[攪拌処理装置]
図1は、実施例に係り、攪拌処理装置の概略断面図である。
図2は、実施例に係り、
図1のII―II線矢視における概略透視図である。
【0042】
図1、
図2の攪拌処理装置1は、粘着物と固形物の加熱冷却混合する装置である。
【0043】
以下に使用例を示す。
【0044】
米麹の製造
(1)種切り(種麹を米全体に撒き、次の培養が均一に進むように、混合し均一にすり込む操作を種切りと呼ぶ)
蒸し米(精米と玄米の混合物を蒸し、50℃程度に冷却したもの)に少量の種麹を50cm程度の高さから撒き、その後、
図1の混合機に仕込む。4rpmで40分間混合し終了
(2)培養
次いで35度で48時間、時々5rpmで混合する。
得られた米麹が保形性よく一粒ずつパラで、麹の香りがし、以後の利用で問題が無かった。
棒状攪拌子がない場合は、混合すると、米が中央部に集まり、製品の入れ替わりが不十分であった。種切りは不均一で、失敗した。一方、棒状攪拌子を併用すると、上面が盛り上がらず、製品の入れ替わりがスムーズに行われ、良好な混合状態であった。
(3)生地(ドウ)混捏
小麦粉、野菜粉体、豆類粉体、塩,黒コショー等を攪拌機に仕込み、調味液を少しずつ添加し練り込み焼き菓子用の生地混捏をおこなった。棒状攪拌子がない場合は、混合すると、生地が硬く締まり供回りし、それを解消することはできなかった。一方、棒状攪拌子を併用すると、良好な混合状態で生地を製造できた。生地を成型し焼成したところ、目標とする焼き菓子が得られた。
【0045】
図1、
図2の攪拌処理装置1は、粒状又は塊状の固形物に粘着性材をコーティングした状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を得るものである。粒状又は塊状の固形物としては、粘着性材をコーティングできるものであればよく、例えばナッツ、ポップコーン、納豆などである。粘着性材としては、攪拌により固形物をコーティングできるものであればよく、例えばカラメルなどである。
【0046】
図1、
図2のように攪拌処理装置1は、撹拌容器3内で被撹拌物としての粒状又は塊状の固形物と高融点で流動性の有る粘着性材とを攪拌処理部5により上下方向での攪拌処理を行なわせる。この攪拌処理により例えばナッツにカラメルをコーティングした状態でナッツ粒をほぼ粒ごとにほぐした処理物を得る。
【0047】
前記攪拌処理装置1の攪拌容器3は、粒状又は塊状の固形物と粘着性材との混合物を被撹拌物として収容するものであり、鉄、ステンレス、銅などで形成されている。前記攪拌容器3は、横置きの円筒部7の上部にホッパー部14を一体に備えたものである。
【0048】
前記円筒部7は、底部9が円筒の一部を構成し、軸心方向の両側に端壁11、13を備えている。軸心方向とは、円筒部7が含む円筒の中心軸方向であり、この中心軸に配置された後述する回転軸の軸心方向を意味する。この円筒部7に対してホッパー部14が上方に向けて開放形状で一体に備えられている。ホッパー部14が攪拌容器3の上部開口を形成する。
【0049】
前記撹拌容器3の底部9は、円筒の一部として径方向の断面でほぼ半円を形成している。径方向とは、円筒部7が含む円筒の中心軸に対するものである。
【0050】
前記底部9は、外面に冷却用の流体ジャケット15を備えている。流体ジャケット15は、図示しない給水配管により給水部に接続されている。流体ジャケット15には、図示しない制御ボックスによる制御で給水部から冷却水が給水制御できるようになっている。冷却水の温度は、制御ボックスの制御で変更できるようになっている。
【0051】
前記円筒部7の軸心方向両端は、前記端壁11、13で閉じられている。端壁11、13は、円筒部7の軸心回りの円形形状となっている。端壁11、13は、軸心方向外側に凸条の湾曲面で構成されている。
【0052】
前記端壁11、13には、一方及び他方の中空の軸ブラケット17、19が取り付けられている。軸ブラケット17、19は、装置フレーム側に回転可能に支持さされている。他方の軸ブラケット19は、装置フレーム側で軸ブラケット回転用の電動モーターに減速機構を介して連動連結されている。したがって、軸ブラケット回転用の電動モーターを制御ボックスの制御により回転駆動すると撹拌容器3を軸心回りに回転させ処理物取り出し等を可能としている。なお、前記流体ジャケット15の給水配管は、一方の軸ブラケット17を通して行われている。
【0053】
前記攪拌処理部5は、前記円筒部7の軸心部に回転軸21を備えている。回転軸21は、軸ブラケット17、19内で軸受メタル及びパッキンを介して回転自在に支持されている。
【0054】
前記回転軸21は、他方の軸ブラケット19側で図示はしないが端部が突出している。この回転軸21の突出した部分は、例えば制御ボックス内に挿入配置され、チエーンスプロケット機構、減速機構を介して軸回転用の電動モーターに連動連結されている。
【0055】
したがって、前記回転軸21は、制御ボックスの制御により減速機構、チエーンスプロケット機構を介して回転駆動されるようになっている。
【0056】
前記攪拌容器3に対し前記回転軸21に掻取羽根23、25及び棒状攪拌子27、29、端壁掻取羽根31を備えている。掻取羽根23、25及び棒状攪拌子27、29、端壁掻取羽根31は、撹拌容器3の缶体中心Oに対して左右点対称に配置されている。
【0057】
つまり、実施例の攪拌処理装置1は、底部9及び端壁11、13を含む胴部に4枚の掻取羽根と両サイドに2枚の計6枚の掻取羽根が設置され、胴部に更に4本の追加攪拌子として粒子相互の結着等を防ぐ棒状攪拌子27、29を持つ。但し、6枚の掻取羽根、4本の追加撹拌子は、適宜選択的に省き、或はその数を増減することができる。
【0058】
前記撹拌容器3の4本の掻取羽根23、25及び2本の端壁掻取羽根31、追加の4本の棒状攪拌子27、29は、撹拌容器3の缶体中心Oを境として左右両側相互間で180°回転位相がずれて配置されている。
【0059】
前記回転軸21の回転駆動により前記掻取羽根23、25及び棒状攪拌子27、29、端壁掻取羽根3が上下方向に旋回して前記掻取羽根23、25が前記底部9を掻取りながら被攪拌物を撹拌すると共に前記棒状攪拌子27、29が被撹拌物をほぐし撹拌し、且つ端壁掻取羽根31が端壁11、13を掻取るものである。
【0060】
前記掻取羽根23、25は、フッ素樹脂などにより形成され、前記回転軸21にそれぞれ回転半径方向の径方向アーム33、35を介して結合され且つ回転軸21に沿って配列されている。
【0061】
前記複数配列された掻取羽根23、25は、回転軸21に対して30°傾斜して取り付けられている。この30°の傾斜は、回転軸21に沿って缶体中心Oから遠い部分が回転方向に先行するように設定されている。
【0062】
前記掻取羽根23、25の径方向アーム33、35は、同一構造である。例えば径方向アーム33は、ステンレス等で形成され、アーム主体37と取付部39と羽根支持部41とを備えている。
【0063】
前記アーム主体37は、断面円形に形成され、回転径方向に沿った直状である。取付部39は、回転軸21に嵌合して結合固定されている。前記取付部39の構造は、アーム主体37を回転軸21に結合できればよく、一体的な嵌合構造、分解可能な取り付け構造の何れでもよい。
【0064】
前記羽根支持部41は、掻取羽根23側のナックル部43を回転自在に支持するものである。ナックル部43は、掻取羽根23を取り付けるステンレス製等の羽根取付板45に形成されている。羽根支持部41とナックル部43との形状関係は、逆に構成することもできる。羽根支持部41とナックル部43との間には、図示しないナックルスプリングが介設され、径方向アーム33に対し掻取羽根23が回転付勢され、掻取羽根23が底部9に押し付けられながら旋回により掻き取るようになっている。
【0065】
前記羽根支持部41は、アーム主体37に対して角度を持っており、この羽根支持部41のアーム主体37に対する角度により掻取羽根23の前記30°の取付角度が設定されている。この30°の取付角度において掻取羽根23の羽根先縁は、底部9を掻き取ることができるように湾曲形成されている。
【0066】
前記掻取羽根25の径方向アーム35も径方向アーム33と同一構成である。但し、径方向アーム33に対し径方向アーム35は、回転位相が15°ずれて遅れる取付位置となっている。
【0067】
前記掻取羽根23、25相互間では、端部が回転方向にオーバーラップしており、且つ前記角度設定により相互間で疑似螺旋面を構成し、リボンスクリューに近似した形状となっている。この疑似螺旋面により掻取羽根23、25は、撹拌容器3の缶体奥側である端壁13側から缶体中心O側へ被撹拌物を移動させる機能を有する。
【0068】
前記端壁掻取羽根31は、前記掻取羽根23、25と同様にフッ素樹脂などにより形成され、前記回転軸21にそれぞれ屈曲アーム47に支持されている。屈曲アーム47の構成は、屈曲している以外は、径方向アーム33と同一であり、ステンレス等で形成され、アーム主体49と取付部51と羽根支持部53とを備えている。
【0069】
前記屈曲アーム47は、径方向アーム33、35間の中間で回転軸21に取付部51が取り付けられている。屈曲アーム47は、前記径方向アーム33、35及び棒状攪拌子27、29に対して回転位相がずれている。この回転位相のずれは、掻取羽根23の径方向アーム33に対して180°としている。但し、この回転位相のずれは、アームの過多を避けるために180°以外に設定することもできる。
【0070】
前記屈曲アーム47のアーム主体49は、回転軸21に沿って屈曲し、端壁13に向かって90°の屈曲角を有している。羽根支持部53は、アーム主体49に対して角度を持っており、この羽根支持部53のアーム主体49に対する角度により端壁掻取羽根31の取付角度が設定されている。この取付角度は、
図2のように回転軸21に対して回転方向前方へ倒れるように例えば15°に設定されている。
【0071】
この取付確度は、15°以外に設定することもできる。この取付角度において端壁掻取羽根31の羽根先縁は、ナックルスプリングによる押し付けで端壁13の曲面を掻き取ることができるように湾曲形成されている。
【0072】
前記棒状攪拌子27は、径方向アーム33と屈曲アーム47との間で回転軸21に取り付けられている。前記棒状攪拌子29は、径方向アーム35と屈曲アーム47との間で回転軸21に取り付けられている。この位置で棒状攪拌子27は、回転軸21の軸方向で掻取羽根23の回転範囲内に位置し、棒状攪拌子29は、掻取羽根25の回転範囲内に位置している。棒状攪拌子29は、掻取羽根23、25の間の重なり部分に近接している。且つ棒状攪拌子27,29は、径方向アーム33及び屈曲アーム47にも比較的近接している。棒状攪拌子27,29相互は、平行に配置されている。
【0073】
前記棒状攪拌子27、29は、同一構成である。例えば、棒状攪拌子27は、回転軸21への取付部55と棒状部57とを備えている。取付部55の構造は、棒状部57を回転軸21に結合できればよく、一体的な嵌合構造、分解可能な取り付け構造の何れでもよい。棒状部57は、直状に形成されている。
【0074】
そして、攪拌動作時に前記掻取羽根23、25から落下した粒子群は、攪拌容器3の槽の底部9で粒子間が若干結着して大きな塊となる傾向がある。前記棒状攪拌子27,29は、掻取羽根23,25が上方に位置するときに、器壁面からの影響で静止状態の大きな塊に食い込ませ、粒子間の結着を破砕するような挙動をさせるものである。棒状攪拌子27、29の棒状部57は、断面円形の丸棒の形状を選定している。丸棒の棒状部57であれば、粒子を傷めずに外力を与えるのに適した構造となる。
【0075】
前記棒状部57の長さは、先端が底部9に近接する程度である。棒状攪拌子27、29の各棒状部57は、相互に長さを変え、形状を変えることもできる。棒状部57は屈曲形状等にすることもできる。棒状攪拌子27、29は、回転軸21に対する回転位相が同一に設定され、掻取羽根23の径方向アーム33に対して90°先行するように設定されている。掻取羽根23の径方向アーム33に対する回転位相を90°以外に設定することもできる。棒状攪拌子27、29の回転位相は、掻取羽根25の径方向アーム33に対して90°先行するように設定することもできる。棒状攪拌子27、29の回転位相を相互間で変えることもできる。
【0076】
[攪拌処理部の撹拌駆動]
前記攪拌容器3には、粒状又は塊状の固形物と粘着性材との混合物が収容される。この混合物は、加熱を伴う前段の攪拌処理装置で粒状又は塊状の固形物と粘着性材の原料とを攪拌処理したものである。但し、本攪拌処理装置1においても流体ジャケット15に過熱蒸気を選択して供給することで粒状又は塊状の固形物と粘着性材との混合物である中間処理物を掻取攪拌処理により製造することはできる。
【0077】
ここでは、粒状又は塊状の固形物と粘着性材との混合物の中間処理物を被攪拌物とし、制御ボックスでの制御により給水配管を介して流体ジャケット15に温度制御された冷却水を選択的に給水する。
【0078】
前記回転軸21が回転制御されると、掻取羽根23、25、端壁掻取羽根31、棒状攪拌子27、29が回転軸21周りで上下に旋回し攪拌容器3内の固形物及び粘着性材を掻取混合撹拌する。
【0079】
このとき、掻取羽根23、25、端壁掻取羽根31が上方に行くと、掻上げられた中間処理物の底部9への落下エネルギーだけがほぐす力となる。棒状攪拌子27、29は、底部9へ落下しほぐされた中間処理物に棒状部57が突き込む動作を行う。この突き込む動作で中間処理物が更にほぐされる。同時に底部9で冷却を受けて固形物表面の粘着性材のコーティングが次第に固化するため固形物相互の分離を促進させることができる。
【0080】
前記底部9壁面にある中間処理物は、掻取羽根23、25の円周運動により円周方向に移動すると共に、掻取羽根23、25相互の30°の角度の疑似螺旋により羽根上を回転軸21の軸心方向に移動する。この軸方向の移動により端壁11、13側の中間処理物を攪拌容器3の槽の中央側に移動させ、軸方向の混合が行なわれる。
【0081】
さらに説明すると、攪拌容器3の槽内に回転軸21軸位高さまで中間処理物(粒状物と比較的少量の粘着性液体)がある場合、掻取羽根23、25のみによる攪拌容器3内での混合は以下のようになる。
【0082】
中間処理物は流動性がある。底部9の胴壁に接している部分は自重で壁に付着する。中間処理物が掻取羽根23、25、径方向アーム33、35、屈曲アーム47と接する部分は回転方向に押されて攪拌容器3内を流動する。掻取羽根23、25の部分は板状なので前面にある中間処理物を掻取り移動させる。径方向アーム33、35部分は略丸棒状なので中間処理物を押しのけて行く形で混合を行う。
【0083】
掻取羽根23、25が回転軸21の高さ付近で中間処理物の充填高さに達した時、掻取羽根23、25上の中間処理物は、攪拌容器3内の空間部に位置し、重力と粘着力等により適宜落下する。この落下と掻取羽根23、25、径方向アーム33、35、屈曲アーム47の中間処理物中での運動により、中間処理物の混合が行われる。
【0084】
この混合で特に重要なのが、粘着物が固化し出した時である。固化により粒子の結着が強固になる前に、混合力を与え、結着を壊す事が重要である。この時に棒状攪拌子27、29が特に有効に働く。
【0085】
図2のように、棒状攪拌子27、29は、回転方向で掻取羽根23の90°前方にある。
【0086】
図2の状態から回転軸21を回転した場合を考えると、掻取羽根23、25で中間処理物を掻取混合し、その径方向アーム33、35で混合をおこない、棒状攪拌子27、29は中間処理物から上方の空中に出て行く。
【0087】
図2の状態から90°回転すると、掻取羽根23は中間処理物を羽根に乗せて攪拌容器3の槽上部の空間上部に出て行く。棒状攪拌子27、29は、回転軸21直上の空中に垂直に指向する状態となる。この状態から、中間処理物の落下によるほぐしが起こる。攪拌容器3の槽側では、攪拌が遅い場合に混合力がない状態となっている。攪拌が速い場合は、中間処理物の慣性による混合が続く。
【0088】
この攪拌混合は、落下時に粒子に重力が作用し粒子間が粗になる(掻き上げ速度と重力落下の速度差だけ粒子間の距離が開く)作用をする一方、落下中は粒子間を結着させる外力が働かず、粒子をくっ付けずに、ばらけた状態に固化させる。
【0089】
さらに90°回転すると、掻取羽根23が回転軸21の直上の空中で垂直となり、中間処理物の落下は終了した状態となる。このとき、棒状攪拌子27、29が中間処理物の上部位置になり、棒状部57が中間処理物としての表面に粘着性を持つ粒状物の相互間に押し入ることでほぐし、混合が行われる。
【0090】
さらに90°回転すると、棒状攪拌子27、29が中間処理物に垂直に入り、ほぐし・混合が行われている。一方、掻取羽根23は中間処理物の上部位置になったところである。これから掻取り混合に入ることになる。
【0091】
このような挙動により粒状物ごとのほぐし攪拌混合が進む。
【0092】
なお、上記のように端壁掻取羽根31は、掻取羽根23、25に対して回転位相がずれている。このため、特に端壁掻取羽根31の屈曲アーム47が混合に及ぼす効果がある。
特に、掻取羽根23,25により持上げられた中間処理物は塊となる場合も多く、これを、解し羽根で壊すような効果が見られる。
【0093】
前記径方向アーム33、35、屈曲アーム47も旋回によりほぐし・混合に寄与することは前記のとおりである。棒状攪拌子27、29は、これら径方向アーム33、35と屈曲アーム47との間に回転位相がずれて配置され、且つ掻取羽根23、25の旋回範囲内にオーバーラップして配置されているため、棒状攪拌子27、29のほぐし機能を掻取羽根23、25と径方向アーム33、35と屈曲アーム47との協働により無駄なく奏することができる。
【0094】
前記棒状攪拌子27、29は、粒状原料のほぐし、生地混捏時の主軸周りの動き強化、餅のような粘稠性ペーストの混合等に効果が期待できる。せん断効果もあり、材料に与える過度のせん断・破断力を抑えつつ、固形原料を保形性良くほぐし混ぜることができる。あるいは粘稠性ペーストの腰抜け(粘度低下)を抑えつつ混合できる。