▶ 株式会社カジワラの特許一覧
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037210
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】撹拌処理方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/70 20220101AFI20230308BHJP
B01F 35/10 20220101ALI20230308BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20230308BHJP
B01F 35/90 20220101ALI20230308BHJP
A23L 5/00 20160101ALN20230308BHJP
【FI】
B01F7/04 A
B01F15/00 D
B01F15/02 A
B01F15/06 Z
A23L5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143822
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】500148592
【氏名又は名称】株式会社カジワラ
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】梶原 秀浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝利
(72)【発明者】
【氏名】加藤 美咲
【テーマコード(参考)】
4B035
4G037
4G078
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LE01
4B035LE07
4B035LG19
4B035LG33
4B035LP26
4B035LT09
4B035LT20
4G037AA01
4G037CA03
4G037CA20
4G037DA15
4G037EA03
4G078AA04
4G078AB09
4G078BA01
4G078CA09
4G078DA01
4G078EA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】冷却固化の観点から製造時間の増大抑制を可能にする撹拌処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を攪拌容器3内で冷却を伴って攪拌処理し、粘着性材を固化させたコーティング状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を得る攪拌処理方法であって、冷却を、粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物に空気を空気吹付部37により吹き付けて行ない、粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を冷却しながら攪拌処理し、粘着性材を固化させたコーティング状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を効率よく得ることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を攪拌容器内で冷却を伴って攪拌処理し、前記粘着性材を固化させたコーティング状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を得る攪拌処理方法であって、
前記冷却を、前記粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物に空気を吹き付けて行う、
攪拌処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の攪拌処理方法であって、
前記冷却は、前記攪拌容器の底部の冷却を伴う、
攪拌処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の攪拌処理方法に用いる攪拌処理装置であって、
前記粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を収容する攪拌容器と、
前記攪拌容器に対し撹拌回転して前記粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を攪拌処理する攪拌部と、
前記粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物に空気を吹き付け前記冷却を行わせる空気吹付部と、
を備えた、
攪拌処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の攪拌処理装置であって、
前記攪拌容器は、前記底部を覆う流体ジャケット又は前記底部に向けられたミストノズルを備え、前記流体ジャケットに、前記冷却のための冷却水を供給する、又は前記ミストノズルから前記冷却のためのミストを噴霧する、
攪拌処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形物に粘着性材を被覆して固形物ごとにほぐすように撹拌処理する撹拌処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撹拌処理装置として、特許文献1のようなものがある。この撹拌処理装置は、ナッツ粒等の固形物にカラメル等の粘着性材を被覆し、粒ごとにほぐすように撹拌処理してカラメルをコーティングした焙煎ナッツ等を製品化するものである。
【0003】
この撹拌処理装置は、羽根状撹拌子及び棒状撹拌子を備えた縦型の自転公転型攪拌装置であり、撹拌駆動軸の自転及び公転により羽根状撹拌子及び棒状撹拌子が撹拌容器に対して横方向(例えば水平方向)に自転及び公転するように構成されている。
【0004】
そして、一例として撹拌容器に投入した粒状ナッツの焙煎とグラニュー糖のカラメル化とを撹拌容器の加熱と羽根状撹拌子及び棒状撹拌子の自転及び公転とによる攪拌を伴うことで行わせる。
【0005】
次いで、撹拌容器の冷却を伴ってカラメルを固化させながら羽根状撹拌子及び棒状撹拌子の自転及び公転による攪拌を行わせる。この時カラメルの固化で粒子間結着が起きると、大きな塊まりが生成するので、冷却を実験で求めた速度範囲で行う。
【0006】
この結果、粒ごとにほぐした状態でカラメルコーティングが行われた焙煎ナッツを得ることができる。
【0007】
しかし、かかる撹拌処理装置は、攪拌容器の底部に冷却ミストの噴霧を行って冷却を実現するため、固化のための伝熱が主に攪拌容器の底部に接触している部分となっていた。
【0008】
このため、撹拌容器内の粒の全体且つ粒ごとの全面への冷却が行き渡りがたくカラメルコーティングを固化させるための時間を要し、製造時間の増大を招いていた。
【0009】
一方、冷却時間の短縮のために底部の冷却を強めると全体での冷却の速度に偏りが起こり易く、底部側、特に底部に接触している固形物の粘着性材は早期に固化し、且つ固化が始まっている粒の表面全体での固化の偏りがあり、粒ごとにほぐした状態を得ることに困難を伴うという問題があった。
【0010】
かかる問題は、粒に限らず、粘着性材のコーティングを必要とする粒状又は塊状の固形物一般で起こり得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、冷却時間の短縮のために底部の冷却を強めると全体での冷却固化の速度に偏りが起こり易く、冷却を緩めると冷却固化に時間がかかるなど、冷却固化の観点から製造時間の増大を招いていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願発明は、冷却固化の観点から製造時間の増大抑制を可能にするため、粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を攪拌容器内で冷却を伴って攪拌処理し、前記粘着性材を固化させた状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を得る攪拌処理方法であって、前記冷却を、前記粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物に空気を吹き付けて行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願発明は、上記構成であるから、粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物に空気を吹き付けて冷却しながら攪拌処理を行なわせ、粘着性材を固化させたコーティング状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1に係り、攪拌処理装置の概略平面図である。
【
図2】実施例1に係り、攪拌処理装置の概略正面図である。
【
図3】実施例1に係り、攪拌処理装置の概略側面図である。
【
図4】実施例2に係り、第1、第2の攪拌処理部を備えた攪拌処理装置の概略平面図である。
【
図5】実施例2に係り、攪拌処理装置の概略背面図である。
【
図6】実施例2に係り、冷却用空気の吹き出しを示す第2の攪拌処理部の概略平面図である。
【
図7】実施例2に係り、冷却用空気の吹き出しを示す第2の攪拌処理部の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明は、冷却固化の観点から製造時間の増大抑制を可能にするという目的を以下のように実現した。
【0017】
粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を攪拌容器内で冷却を伴って攪拌処理し、前記粘着性材を固化させたコーティング状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を得る攪拌処理方法であって、前記冷却を、前記粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物に空気を吹き付けて行うことで実現した。
【0018】
前記粒状又は塊状の固形物としては、粘着性材をコーティングできるものであればよく、例えばナッツ、ポップコーン、納豆などで実現できる。粘着性材としては、攪拌・冷却・固化により固形物にコーティングできるものであればよく、例えばカラメル、チョコレート、飴などで実現できる。
【0019】
但し、前記固形物及び粘着性材は、固形物に粘着性材をコーティングできるものであればよく、コーティング処理が可能なその他の食品、さらには食品に限らず、医薬、医薬部外品、漢方薬、各種材料におけるコーティング処理においても実現できる。
【0020】
前記塊ごとにほぐした処理物は、複数の粒の塊として実現することもできる。
【0021】
前記加熱を伴った攪拌処理と冷却を伴った攪拌処理とは、同一の装置で実現し、或いは別々の装置で実現することもできる。
【0022】
前記空気の吹き付けは、前記攪拌容器に対する固定位置から前記粘着性材が付着した固形物に行うことで実現できる。但し、冷却用空気の吹き付けを攪拌容器に対して移動させながら行わせて実現することもできる。この移動は攪拌容器の開口の一側に沿って、或いは全周に沿って行わせることで実現することができる。
【0023】
前記空気の温度、湿度、流量、流速は、一定或いは変化させて実現できる。
【0024】
前記冷却は、前記攪拌容器の底部の冷却を伴うことで実現することもできる。
【0025】
前記底部の冷却は、冷却ミスト、冷却水等で実現できる。
【0026】
前記冷却ミストの温度、強さ、範囲、冷却水等の温度、流量、流速等は、一定或いは変化させて実現できる。
【0027】
前記攪拌処理方法に用いる攪拌処理装置であって、前記粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物及び粘着性材を収容する攪拌容器と、前記攪拌容器に対し撹拌回転して前記粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を攪拌処理する攪拌部と、前記粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物に空気を吹き付け前記冷却を行わせる空気吹付部とを備えて実現できる。
【0028】
前記攪拌処理装置は、攪拌部を回転駆動する回転軸が攪拌容器に対して上下方向(垂直方向)に配置された縦型、同横方向(水平方向)に配置された横型、斜めに配置された斜軸型等で実現することができる。
【0029】
前記攪拌部は、掻取羽根を備えて実現できる。攪拌部は、掻取羽根及び棒状攪拌子を備えて実現できる。
【0030】
前記空気吹付部は、前記攪拌容器に対し固定して備え又は移動可能に備えて実現できる。この移動は攪拌容器の開口の一側に沿って、或いは全周に沿って行わせることで実現することができる。前記空気吹付部は、着脱可能に備えて実現することもできる。
【0031】
前記空気吹付部は、複数備えて攪拌容器に対し復数位置から空気を吹き付けることで実現することもできる。
【0032】
前記攪拌容器は、前記底部を覆う流体ジャケット又は前記底部に向けられたミストノズルを備え、前記流体ジャケットに、前記冷却のための冷却水を供給する、又は前記ミストノズルから前記冷却のためのミストを噴霧することで実現できる。
【0033】
前記冷却水の温度、流量、流速は、前記冷却ミストの温度、強さ、範囲等は、一定或いは変化させて実現できる。
【実施例0034】
[攪拌処理方法及び攪拌処理装置]
図1は、攪拌処理装置の概略平面図である。
図2は、攪拌処理装置の概略正面図である。
図3は、攪拌処理装置の概略側面図である。
【0035】
図1、
図2の攪拌処理装置1は、粒状又は塊状の固形物に粘着性材をコーティングした状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を得るものである。粒状又は塊状の固形物としては、粘着性材をコーティングできるものであればよく、例えばナッツ、ポップコーン、納豆などである。粘着性材としては、攪拌・冷却・固化により固形物をコーティングできるものであればよく、例えばカラメルなどである。
【0036】
前記攪拌処理装置1は、攪拌容器3を備えている。攪拌容器3は、粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を収容し、攪拌部5により攪拌処理するものである。攪拌容器3は、鉄、ステンレス、銅などで形成され、下部に曲面状の底部を備えている。攪拌容器3の上部一側には、注ぎ口6が設けられている。
【0037】
前記攪拌容器3は、ベースフレーム7に支軸9、11により転傾動作可能に支持されている。ベースフレーム7には、転傾操作ハンドル13が備えられている。転傾操作ハンドル13はギヤの噛合い等により攪拌容器3に連動構成されている。転傾操作ハンドル13のハンドル操作により攪拌容器3を支軸9、11周りに回転させて注ぎ口6側へほぼ90°まで転傾動作ができるようになっている。
【0038】
前記攪拌容器3には、底部を加熱するガス加熱装置15が設けられている。攪拌容器3の底部は、制御ボックス17の制御により前記ガス加熱装置15によって加熱可能となっている。前記ガス加熱装置15は、攪拌容器3の底部を加熱するように図示しないガスノズルが配列されている。
【0039】
本実施例1では、ガスノズルの周囲に周方向所定間隔で複数配置された図示しないミストノズルを備えている。ミストノズルは、攪拌容器3の底部に向けられて配置されている。ミストノズルは、例えば粒径が170μm~200μmのミストを円錐形に噴霧するものである。ミストノズルと攪拌容器3との間の最短距離は、約100mmであり、噴霧面直径は、φ140(噴角約70°)、ノズル水圧0.15MPaである。ミストノズルの噴出方向は、ガス加熱装置15の中心側へ若干倒れている。
【0040】
これらのミストノズルに関する設定は特に限定されず、冷却のために種々設定することができる。ミストノズルの数も冷却仕様に応じて設定することができる。
【0041】
前記攪拌部5は、前記攪拌容器3に対し撹拌回転して前記粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を、冷却を伴った攪拌処理により粘着性材を固化させたコーティング状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を得ることができる機能を備えている。
【0042】
前記攪拌部5は、特許第6633299号公報に記載のものと同様な構造を備え、公転ボックス19に撹拌駆動軸21を備えている。公転ボックス19は、攪拌主駆動軸により旋回駆動されるようになっている。攪拌駆動軸21は、ギヤを介して攪拌主駆動軸に連動構成され、公転ボックス19に対して自転するようになっている。攪拌駆動軸21に掻取羽根及び棒状撹拌子が支持されている。公転ボックス19には、側面掻取軸23が支持され、側面掻取羽根が支持されている。これら掻取羽根等により攪拌容器3内の底部及び側壁部をスプリング付勢により弾接しながら掻き取り、被攪拌物を攪拌処理する。
【0043】
前記撹拌主駆動軸は、攪拌容器3の上部に備えられた撹拌ヘッド29の先端部に支持されている。撹拌主駆動軸は、撹拌ヘッド29内の駆動部であるギヤードモータにチェーンにより連動して回転駆動され、自転する構成となっている。ギヤードモータは、制御ボックス17により駆動制御される。
【0044】
前記公転ボックス19の旋回と共に側面掻取軸23を介して掻取羽根が公転し、攪拌容器3の側壁部に粘着性材により付着する固形物を底部方向に掻き落とす。同時に撹拌駆動軸21の自転及び公転により、掻取羽根等が旋回して底部の掻取動作を行う。こうして攪拌容器3全体で固形物及び粘着性材を効果的に掻取撹拌混合することができる。
【0045】
前記撹拌ヘッド29は、ベースフレーム7側のヘッド支持ブラケット33に回転自在に支持されている。ヘッド支持ブラケット33には、ヘッド操作ハンドル31が取り付けられている。ヘッド操作ハンドル31は、撹拌ヘッド29に連動構成されている。したがって、ヘッド操作ハンドル31の回転操作で、撹拌ヘッド29をヘッド支持ブラケット33に対する回動により攪拌部5と共に上方へ退避させ、攪拌容器3の転傾動作を許容する。
【0046】
前記攪拌容器3の一側には、添加剤供給部36及び水供給部38が備えられている。添加剤供給部36には、添加剤供給パイプ36aが取り付けら、添加剤供給パイプ36aの先端は、攪拌容器3の開口上に臨まされている。水供給部38には、水供給パイプ38aが取り付けら、水供給パイプ38aの先端は、攪拌容器3の開口上に臨まされている。添加剤供給部36は、予め弁を開にしたときの時間当たりの流下量を測定している。したがって、制御ボックス17は、添加剤供給部36の弁を閉じている時間で添加量を制御する。水供給部38は、後述のレシピにある水を添加するものである。
【0047】
かかる攪拌処理装置1は、空気吹付部37を備えている。空気吹付部37は、被攪拌物の冷却用として備えられている。表面に粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を攪拌容器3内で冷却を伴って攪拌処理し、粘着性材を固化させたコーティング状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を得る攪拌処理方法を実現する。前記冷却は、空気冷却の他に、本実施例において前記ミストノズルから噴霧するミストによる冷却を伴っている。
【0048】
前記空気吹付部37は、配管39を備えている。配管39は、攪拌容器3の側方に設置され、下端がフィルター付きの送風機41に結合されている。送風機41は、ベースフレーム7の延設部分に設置されている。配管39は、送風機41から上方へ延設され、撹拌駆動軸21等に対して平行に設定されている。配管39の先端部39aは、攪拌容器3の開口部に向けて下降傾斜するように屈曲形成されている。吹出口43は、攪拌容器3の開口部に対して一側寄りに位置している。また、吹出口43は、攪拌容器3の開口部の一側寄りで開口縁より少し外れた上方に位置している。この位置で吹出口43は、攪拌容器3内の中心部で攪拌容器3の上下ほぼ中間位置に指向している。
【0049】
したがって、制御ボックス17による送風機41の駆動制御により吹出口43から清浄な空気が攪拌容器3内の中心部で上下ほぼ中間位置に向けて吹き付けられる。吹出口43から吹き出された空気は、多少拡散することで被攪拌物に吹き付けられる。
【0050】
つまり、被攪拌物が攪拌部5の攪拌回転により攪拌されているとき、攪拌中の被攪拌物に対して冷却用の空気が全体的に吹き付けられる。吹き付け空気の流速、流量、温度、湿度などの吹き付け条件は、冷却固化を適切に行わせるために予め実験で求められている。
【0051】
こうして、被攪拌物の冷却を伴った攪拌処理を行わせることができる。
【0052】
[攪拌処理部の撹拌駆動等]
前記攪拌処理装置1の攪拌容器3は、加熱を伴う攪拌処理に際しては、稼働時にガス加熱装置15により加熱制御する。この攪拌処理装置1では、撹拌部5の撹拌ヘッド29を介して回転駆動力が撹拌主駆動軸に伝達される。撹拌主駆動軸が回転すると公転ボックス19が撹拌主駆動軸の軸心回りに一体的に旋回する。この旋回により撹拌駆動軸21が撹拌主駆動軸の軸心回りである攪拌容器3の中心回りに公転する。
【0053】
同時に公転ボックス19内部の歯車の噛み合いを介して撹拌主駆動軸から撹拌駆動軸21に回転駆動力が伝達される。この回転伝達により撹拌駆動軸21が軸心回りに自転駆動される。
【0054】
すなわち、撹拌駆動軸21は、撹拌主駆動軸の軸心回りで自転、公転駆動され、公転ボックス19の旋回を介して掻取羽根等が攪拌容器3の底部を掻き取り移動する。また、外周の掻取羽根は、側面掻取軸23と共に公転して攪拌容器3の側壁部を掻き取り移動する。
【0055】
冷却を伴う攪拌処理に際しては、ガス加熱装置15を停止させ、ミストノズルから攪拌容器3の底部にミストを噴霧する。同時に送風機41を稼働させ、配管39を通して吹出口43から攪拌容器3内へ清浄な空気が吹き付けられる。
【0056】
この空気の吹き付けは、攪拌容器3内の被攪拌物の上面に対し攪拌容器3のほぼ中央位置に当たるように設定されている。この位置への吹き付けで攪拌容器3内の被攪拌物へ全体的に空気を吹き付けることができる。
【0057】
前記粘着性材と粒状又は塊状の固形物とを加熱撹拌した後、空気の吹き付けとミストによる底部の冷却とにより粘着性材が付着した固形物の表面温度の分布の偏倚を全体的に抑制し、粘着性材がコーティングされた固形物を短時間でほぐすことができる。
【0058】
つまり、攪拌容器3底部の冷却と空気の吹き付けによる冷却とで冷却を強めることなく粒全体の冷却を偏りを抑制して行わせ、粒全面での冷却の偏りも抑制し、粒ごとにほぐす時間を短縮することができる。
【0059】
図3のように、前記ヘッド操作ハンドル31により撹拌ヘッド29を回動により上方へ回転移動させると撹拌部5を攪拌容器3の上方一側へ退避させることができる。
【0060】
この退避状態において、転傾動作用の転傾操作ハンドル13を操作すると攪拌容器3が支軸9,11周りに回転動作する。この回転動作により攪拌容器3が注ぎ口6側へ転傾動作する。
【0061】
[撹拌調理]
本装置を用いてアーモンドのカラメルナッツを製造する実施例を説明する。
【0062】
<空気吹付部の仕様>
送風機:0-5m3/min 調節可能
吹出口43の口径:内径85mm
吹出口43の位置:攪拌容器3である攪拌釜3の中心にある製品表面の中央に対し、距離1m程度で水平から45度の角度を持って吹き降ろす。
【0063】
<攪拌釜の仕様>
攪拌釜の釜径 :850mm
攪拌釜の内容積:265L(満水)
ガス加熱及び釜底部外よりのミスト冷却機能付き
【0064】
<レシピ>
・ナッツ12kg(常温:20℃)
・グラニュー糖
・水
・添加物
【0065】
<手順>
(1)撹拌釜3にグラニュー糖、水投入。
(2)ガス加熱装置の点火、撹拌主駆動軸の駆動による撹拌開始。
攪拌部5による攪拌を行わせ、グラニュー糖を溶ほぐし煮詰める。
(3)撹拌釜3に固形物であるナッツを追加投入する。
(4)撹拌釜3の壁温を火力調整により調整し、ナッツの焙煎と糖のカラメル化を行う。
(5)消火 (中間処理物である製品を徐冷しカラメルを徐々に固体化させる工程に入る。)
(6)撹拌釜3の裏面に冷却ミスト噴霧を短時間繰り返し行い、飴(カラメル)の温度及び撹拌釜3の壁温をゆっくりと下げる。(壁温を下げすぎると壁面にカラメルが固化する。或いは、固化しなくとも、早く下げすぎると、粒子間が結着し大きな塊となる。)ゆっくりの程度は、予め実験で求めた。
同時に清浄な空気(温度は外気温度)を、攪拌釜3の上方から、水平に対し45°下向きの角度で、攪拌釜3内の被攪拌物(中間処理物である製品)上面の中央付近を目指して、吹き込む。吹き出し点と製品までの距離は1m程度である。
吹き込み量は、最初は微少量から、流動状況を確認しながら、徐々に増量する。
(7)撹拌釜3に添加物を適宜投入(底部からのミスト冷却と送入空気で冷却しながら行う。)
(8)ミスト冷却終了、空気冷却終了。
(9)攪拌ヘッド29と共に攪拌部5を跳ね上げ、撹拌釜3を傾動させ、カラメルナッツを取り出す。
【0066】
こうした手順により、大部分が粒状のナッツで、カラメルでコーティングされた焙煎ナッツが得られた。
【0067】
冷却時間は15分程度で終了した。
【0068】
比較例として、同条件で空気吹き込みを行わないで攪拌処理した。この場合、焙煎ナッツを得るまでの冷却時間は、25分程度を要した。
【0069】
また、仕込み量24kgの場合は、空気冷却を併用して、冷却時間は25分程度となった。
【0070】
また、底部からミスト冷却を行わず、空気吹き込みのみで処理することも可能である。この場合冷却に同条件で30分程度を要した。但し、粘着性材が被覆された固形物の表面温度の分布の偏倚を全体的に抑制する効果は底部のミスト冷却よりも大きく、空気吹込みによる条件を変えることで時間短縮は可能である。さらに、ミスト冷却設備を省く場合は、ガス加熱装置15をシンプルにすることができる。
【実施例0071】
図4は、第1、第2の攪拌処理部を備えた攪拌処理装置の概略平面図である。
図5は、攪拌処理装置の概略背面図である。
図6は、冷却用空気の吹き出しを示す第2の攪拌処理部の概略平面図である。
図7は、冷却用空気の吹き出しを示す第2の攪拌処理部の概略正面図である。
【0072】
図4、
図5のように攪拌処理装置51は、第1、第2の攪拌処理部53、55を備えている。第1の攪拌処理部53は、縦型加熱攪拌装置で構成され、第2の攪拌処理部55は、横型攪拌装置で構成されている。
【0073】
前記第1、第2の攪拌処理部53、55は、隣接して配置されている。第1の攪拌処理部53は、第1の攪拌容器57に対し攪拌ヘッド59に備えた図示省略の第1の攪拌部が上方から挿入されて横方向(例えば水平方向)に旋回する構成となっている。第2の攪拌処理部55は、第2の攪拌容器61に対し第2の攪拌部63が上下(垂直)方向に旋回する構成となっている。
【0074】
前記第1の攪拌容器57で粒状又は塊状の固形物と粘着性材とを第1の攪拌部により加熱を伴って攪拌処理を行なわせることで前段の中間処理物を製造する。前記中間処理物を前記第1の攪拌容器57から前記第2の攪拌容器61に移し冷却を伴って前記第2の攪拌部63により上下方向での攪拌処理を行なわせる。この攪拌処理により前記粒状又は塊状の固形物に前記粘着性材をコーティングした状態で粒又は塊ごとにほぼほぐした後段の処理物を得る。第2の攪拌部63での冷却を伴った攪拌処理を行わせるために、実施例1と同様に空気吹付部37を備えている。
【0075】
前記第1の攪拌容器57は、前記第2の攪拌容器61に向けた移送態様へ転傾動作可能である。第1の攪拌容器57の移送態様で前段の攪拌処理による中間処理物を第1の攪拌容器57の傾斜を利用して第2の攪拌容器61へ移送し、第1の攪拌容器57の洗浄態様で第1の攪拌容器57内の洗浄水を排出可能にしている。
【0076】
[縦型加熱攪拌装置]
図4のように、第1の攪拌処理部53は、粒状又は塊状の固形物である例えばナッツの焙煎と糖のカラメル化との加熱を伴う前段の攪拌処理により中間処理物を製造する。
【0077】
前記第1の攪拌処理部53の第1の攪拌容器57は、鉄、ステンレス、銅などで釜型に形成され、下部に球面状の底部を備えている。
【0078】
前記第1の攪拌容器57は、ベースフレーム67に転傾動作可能に支持されている。ベースフレーム67は略矩形に組まれ、四隅に脚部を備えている。ベースフレーム67には、第2の攪拌処理部55側において左右の回転支持部69が設けられている。回転支持部69は、ボールベアリングなどを含んで形成されている。回転支持部69が、回転軸によりベースフレーム67上に回転可能に支持されている。第1の攪拌容器57は、制御ボックス71による図示しない油圧シリンダーの制御により回転支持部69を中心に起き上がり回動する。この回動により第1の攪拌容器57が第2の攪拌容器61側へ転傾動作するようになっている。
【0079】
前記ベースフレーム67上には、図示しないガス加熱装置が設けられ、前記第1の攪拌容器57の下部に配置されている。第1の攪拌容器57の底部は、制御ボックス71の制御によるガス加熱装置によって加熱可能となっている。
【0080】
前記撹拌ヘッド59は、ベースフレーム67側に回転自在に支持されている。撹拌ヘッド59は、制御ボックス71により駆動制御される油圧シリンダー装置の駆動により第1の撹拌部と共に上方へ退避され、第1の攪拌容器57の転傾動作を許容する。
【0081】
[横型撹拌装置]
図5、
図6のように、第2の攪拌処理部55は、横型撹拌装置で構成され、前記第1の攪拌処理部53から前記第2の攪拌処理部55に中間処理物を移し、冷却を伴って前記第2の攪拌処理部55により上下方向での後段の攪拌処理を行なわせる。この後段の攪拌処理により例えばナッツにカラメルをコーティングした状態でナッツ粒をほぼ粒ごとにほぐした処理物を得る。
【0082】
前記第2の攪拌処理部55の第2の攪拌容器61は、第1の撹拌容器57から中間処理物を受け入れるものであり、鉄、ステンレス、銅などで形成されている。前記第2の攪拌容器61は、横置きの円筒部73の上部にホッパー部75を一体に備えたものである。ホッパー部75は、第2の攪拌容器61の上部開口を形成する。この第2の攪拌容器61は、第1の攪拌容器57に対しベースフレーム77に軸周りで前後方向に傾斜動作可能に支持されている。この傾斜動作は制御ボックス91での油圧シリンダーの制御等により行われる。
【0083】
前記円筒部73の軸心部には、第2の攪拌部63の回転軸79が横方向に配置され回転自在に支持されている。第2の攪拌部63の冷却を伴った撹拌処理により粒状又は塊状の固形物に粘着性材をコーティングした状態で粒又は塊ごとにほぼほぐした処理物を得ることができる。
【0084】
前記回転軸79は、制御ボックス91側の駆動モーターによって回転駆動されるようになっている。回転軸79には、所定間隔で撹拌アーム81が取り付けられ、各撹拌アーム81の先端に掻取羽根83が取り付けられている。回転軸79には、棒状のほぐし子85も取り付けられている。
【0085】
前記第2の攪拌容器61のホッパー部75の開口には、開閉格子87が開閉可能に取り付けられている。開閉格子87は、油圧制御などによる開閉駆動機構89により制御ボックス91側に支持されている。
【0086】
前記第2の攪拌容器61の円筒部73は、下部外周に冷却用の流体ジャケット93を備えている。流体ジャケット93は給水配管95により給水部に接続され、制御ボックス91による制御で給水部から流体ジャケット93に冷却水が給水制御できるようになっている。冷却水の温度は、制御ボックス91の制御で変更できるようになっている。
【0087】
図4、
図5のように、かかる攪拌処理装置51は、空気吹付部37を備えている。空気吹付部37は、被攪拌物の冷却用として備えられている。表面に粘着性材が付着した粒状又は塊状の固形物を攪拌容器61内で冷却を伴って攪拌処理し、粘着性材を固化させたコーティング状態で粒又は塊ごとにほぐした処理物を得る攪拌処理方法を実現する。前記冷却は、本実施例において前記流体ジャケット93に冷却水が給水制御されることによる底部の冷却を伴っている。
【0088】
前記空気吹付部37は、配管39を備えている。配管39は、第2の攪拌容器61の側方に設置されている。配管39の下端は、フィルター付きの送風機41に結合されている。送風機41は、ベースフレーム67側に設置されている。配管39は、送風機41から上方へ延設され、回転軸79に対して平行に設定されている。配管39の先端部39aは、下降傾斜するように形成されている。吹出口43は、回転軸79の回転半径方向で第2の攪拌容器61の底部に対し一側寄りに位置している。この位置は、攪拌羽根83が回転軸79により回転しているとき、底部から抜け出て上方側へ回転移動する部分となる。また、吹出口43は、回転軸79の軸方向でホッパー部75の開口の一側寄りに配置され且つ開口縁より少し外れた上方に位置している。
【0089】
したがって、制御ボックス71による送風機41の駆動制御により吹出口43から清浄な空気が第2の攪拌容器61内に吹き付けられる。吹き付けの範囲は、
図6,
図7で吹出口43から延びている斜線部分である。吹出口43から吹き出された空気は、方向は斜線部であるが、この斜線部に対し多少拡散することで被攪拌物に吹き付けられる。
【0090】
つまり、被攪拌物がほぼ回転軸79の高さまで収容され、攪拌羽根83が回転軸79により回転しているとき、底部から抜け出て上方側へ回転移動する攪拌羽根83により被攪拌物が掻き上げ攪拌されつつ、この部分に向けて空気が主として吹き付けられる。
【0091】
こうして、第2の攪拌容器61の底部の冷却水による冷却及び第2の攪拌容器61の上部からの空気吹付による冷却を伴った被攪拌物の攪拌処理を行わせることができる。前記攪拌処理装置51は、前記第2の攪拌処理部55が走行レール97を備えたものである。
【0092】
前記走行レール97は、定置の第1の攪拌処理部53に対して第2の攪拌処理部55を移動可能に支持している。前記第2の攪拌処理部55のベースフレーム77には、滑車98a、98bが備えられ、走行レール97上に搭載されている。この走行レール97による支持で前記第1、第2の攪拌処理部53、55間を接近離反可能としている。第2の攪拌処理部55の走行レール97上での移動は、図示しない油圧シリンダーの制御により行われる。
【0093】
前記油圧シリンダーは、前記走行レール97に隣接して配置されている。この油圧シリンダーは、制御ボックス91の制御で動作する。油圧シリンダーのピストンロッドは、走行レール97側に受け用のフランジにより固定され、油圧シリンダーのシリンダー部は、ベースフレーム77側に固定されている。
【0094】
油圧シリンダーが伸長制御されると第2の攪拌処理部55が第1の攪拌処理部53に近接するように移動する。油圧シリンダーが伸長制御されると滑車98a、98bが走行レール97上を走行し、第2の攪拌処理部55が走行レール97に沿って第1の攪拌処理部53側へ移動する。
【0095】
油圧シリンダーが収縮制御されると第2の攪拌処理部55が第1の攪拌処理部53から離反するように移動する。油圧シリンダーが収縮制御されると滑車98a、98bが走行レール97上を走行して戻り、第2の攪拌処理部55が走行レール97に沿って第1の攪拌処理部53から離反移動する。油圧シリンダーが収縮するとき、ストロークエンドではダンピング作用が働き、第2の攪拌処理部55が離反位置に戻るとき静かに戻すことができる。
【0096】
前記中間処理物の移送時には前記第2の攪拌容器61の開閉格子87は開かれている。
【0097】
そして、中間処理物の移送に際し、第1の攪拌処理部53を走行レール97上で移動させ、第1、第2の攪拌処理部53、55間を設定位置に接近させる。
【0098】
前記第1、第2の攪拌処理部53、55間の接近位置では、第1の攪拌容器57を第2の攪拌容器61側へ転傾動作させ、同時に第2の攪拌容器61を第1の攪拌容器57側へ傾斜動作させる。これらの動作により第1の攪拌容器57の開口が第2の攪拌容器61のホッパー部75上に位置することになる。この位置で第1の攪拌容器57は、第2の攪拌容器61に向かって若干の下降傾斜状態となる。
【0099】
この第1の攪拌容器57の下降傾斜により第1の攪拌容器57内の高融点で流動性の有る中間処理物がホッパー部75から円滑に受け入れられ、第2の攪拌容器61内へ移送される。
【0100】
したがって、第2の攪拌処理部55で中間処理物の冷却を伴った攪拌処理により固形物にコーティングされた粘着性材が冷却、固化され、粒又は塊ごとにほぐした処理物を得ることができる。
【0101】
前記第1の攪拌処理部53の洗浄に際しては、第2の攪拌処理部55が走行レール97上で逆方向に移動して戻される。この第1、第2の攪拌処理部53、55間が離反した状態では、前記転傾動作により前記第1の攪拌容器57の傾斜を利用して前記第1の攪拌容器57内の洗浄水を排出可能にする。
【0102】
したがって、第1の攪拌容器57の第2の攪拌容器61側への転傾動作で移送態様と洗浄態様とを行わせることができる。
【0103】
[第1の攪拌処理部の撹拌駆動等]
前記第1の攪拌処理部53の第1の攪拌容器57は、第1の攪拌部の稼働時にガス加熱装置により加熱を伴う撹拌処理の加熱を制御する。前記第1の攪拌処理部53では、撹拌ヘッド59先端の第1の撹拌部に伝達される。
【0104】
この伝達により第1の撹拌部の回転により第1の攪拌容器57の底部及び側壁部が掻き取り攪拌される。
【0105】
油圧シリンダー装置の駆動により撹拌ヘッド59を上方へ回転移動させると第1の撹拌部を攪拌ヘッド59と共に第1の攪拌容器57の上方一側へ退避させることができる。
【0106】
この退避状態において、転傾動作用の油圧シリンダー装置が駆動されると回転支持部により第1の攪拌容器57が第2の攪拌容器61側へ転傾動作する。
【0107】
[第2の攪拌処理部の撹拌駆動等]
前記回転軸79が回転制御されると、第2の攪拌部63が横置きの第2の攪拌容器61に対して上下方向に回転する。つまり、掻取羽根83等が回転軸79周りで上下に旋回し第2の攪拌容器61内の被撹拌物である固形物及び粘着性材を掻取撹拌する。
【0108】
前記第2の攪拌容器61の開閉格子87は、油圧制御などによる開閉駆動機構89により開閉動作する。前記第1の攪拌容器57から中間処理物の移送を受けるとき、第2の攪拌容器61は、制御ボックス91による油圧シリンダーの制御により第1の攪拌容器57側へ指向するように傾斜動作する。第2の攪拌容器61は、処理物取り出し時に、油圧シリンダーの制御等により第1の攪拌容器57に対し反対側へ指向するように傾斜動作する。
【0109】
冷却を伴う攪拌処理に際して、前記第2の攪拌処理部55の第2の攪拌容器61は、制御ボックス91での制御により給水配管95を介して流体ジャケット93に温度制御された冷却水を給水する。同時に送風機41を稼働させ、配管39を通して吹出口43から第2の攪拌容器61内へ清浄な空気が吹き付けられる。
【0110】
この空気の吹き付けの範囲は、
図6,
図7で吹出口43から延びている斜線部分である。吹出口43から吹き出された空気の吹き出し方向は斜線部であるが、この斜線部に対し多少拡散することで被攪拌物に吹き付けられる。
【0111】
この空気の吹付は、攪拌羽根83が回転軸79により回転しているとき、底部から抜け出て上方側へ回転移動する攪拌羽根83により被攪拌物が掻き上げ攪拌されつつ、この部分に向けて空気が主として吹き付けられる。
【0112】
つまり、第2の攪拌容器61底部の冷却と空気の吹き付けによる冷却とで冷却を強めることなく粒全体の冷却を偏りの抑制により行わせ、粒全面での冷却の偏りも抑制し、粒ごとにほぐす時間を短縮することができる。
【0113】
[処理物の製造]
始めに粒状又は塊状の固形物と粘着性材との原料を第1の攪拌容器57に投入する。
【0114】
前記第1の攪拌部が駆動制御されると第1の撹拌部の掻取羽根等が自転公転する。同時に制御ボックス71の制御によりガス加熱装置が稼働され、第1の攪拌容器57が加熱制御される。この状態で第1の攪拌部が駆動制御され第1の攪拌容器57内の原料が加熱を伴って撹拌処理され、中間処理物が製造される。
【0115】
次に、第1の攪拌容器57の加熱制御、第1の攪拌部の駆動制御が停止され、撹拌ヘッド59の回動により第1の撹拌部が第1の攪拌容器57の上方一側へ退避される。
【0116】
このとき、第2の攪拌処理部55は、油圧シリンダーの伸長制御により第1の攪拌処理部53に近接するように走行レール97上を移動し、移送状態にセットされる。前記第2の攪拌容器61の開閉格子87は開かれている。
【0117】
次に油圧シリンダー装置の駆動により第1の攪拌容器57が第2の攪拌容器61側へ転傾動作する。
【0118】
このとき、第2の攪拌処理部55では、第2の攪拌容器61がベースフレーム77に対して第1の攪拌容器57側へ指向するように予め傾斜動作している。かかる傾斜動作は、制御ボックス71、91の連係により行わせている。但し、手動操作により第2の攪拌容器61を予め傾斜動作させるようにすることもできる。
【0119】
これら第1の攪拌容器57の転傾動作、第2の攪拌容器61の傾斜動作により第1の攪拌容器57の開口が傾斜した第2の攪拌容器61のホッパー部75上に位置することになる。この位置で第1の攪拌容器57は、第2の攪拌容器61に向かって下降傾斜状態となる。
【0120】
この第1の攪拌容器57の下降傾斜により第1の攪拌容器57内の高融点で流動性の有る中間処理物がホッパー部75から円滑に受け入れられ、第2の攪拌容器61内へ移送される。
【0121】
次いで、第1の攪拌容器57の転傾及び第2の攪拌容器61の傾斜が戻され、給水部から給水配管95を通して流体ジャケット93へ冷却水が供給される。同時に送風機41を稼働させ、配管39を通して吹出口43から第2の攪拌容器61内へ清浄な空気が吹き付けられる。
【0122】
この空気の吹き付けは、第2の攪拌容器61内の被攪拌物の上面に対し
図6、
図7のように吹き付け、第2の攪拌容器61内の被攪拌物へ撹拌回転の上昇側で全体的に空気を吹き付けることができる。
【0123】
前記空気の吹き付けにより粘着性材が付着した固形物の表面温度の分布の偏倚を全体的に抑制し、粘着性材が被覆された固形物を短時間でほぐすことができる。
【0124】
つまり、第2の攪拌容器61底部の冷却と空気の吹き付けによる冷却とで冷却を強めることなく粒全体の冷却を、偏りを抑制して行わせ、粒全面での冷却の偏りも抑制し、粒ごとにほぐす時間を短縮することができる。
【0125】
前記第2の攪拌部63が駆動され、第2の攪拌容器61では、後段の攪拌処理として中間処理物が冷却を伴って撹拌処理される。
【0126】
この第2の攪拌容器61での撹拌処理では、第2の撹拌部63の撹拌回転により中間処理物が上下方向に撹拌回転され、固形物にコーティングされた粘着性材が底部の冷却及び上部の空気による冷却で早期に固化され、粒又は塊ごとにほぐした処理物を得ることができる。
【0127】
このとき、第2の攪拌容器61での撹拌回転が横方向ではなく、重力方向であるため、第2の撹拌部63で掻き上げられた固形物が第2の攪拌容器61内で落下し、表面のコーティングが次第に固化する固形物相互の分離を促進させることができる。
【0128】
連続したバッチ生産を行う時は、同様の操作を続けて行うことになる。
【0129】
生産終了後は第1、第2の攪拌処理部53、55の何れも洗浄する。特に第1の攪拌処理部53では、第1の攪拌容器57の容器内部或は第1の攪拌部への粘着性材及び固形物の付着を除去して清浄にする必要がある。
【0130】
この洗浄に際しては、粘着性材が固化していないので熱水により簡単に短時間で溶解除去することができる。
【0131】
前記洗浄により第1の攪拌容器57内に残る洗浄水は、第2の撹拌処理部55を移動させて行わせる。油圧シリンダーが収縮制御されると第2の攪拌処理部55が第1の攪拌処理部53から離反するように移動する。この状態で第1の攪拌容器57を第2の攪拌処理部55側へ転傾動作させて無理なく排水させることができる。
【0132】
前記第2の攪拌処理部55では、冷却を伴う攪拌処理であるから処理物を取り出した後、第2の攪拌容器61及び第2の攪拌部63等に対する粘着性材等の付着、固化は殆ど無く、簡単な拭取り清掃後、次回の冷却・固化処理に備えることができる。特に粒に付着した粘着性材を早期に固化させることで第2の攪拌容器61等への粘着性材の付着が大きく抑制させることが可能となる。
【0133】
[撹拌調理]
本装置を用いてアーモンドのカラメルナッツを製造する実施例を説明する。
【0134】
<空気吹付部の仕様>
送風機:0-13m3/min 調節可能
吹出口43の口径:内径108mm
吹出口43の位置:第2の攪拌容器61である攪拌釜内の製品表面の中央等に対し、距離0.5m程度で水平から50度の角度を持って吹き降ろす。
【0135】
つぎに、本実施例2の撹拌処理方法によりアーモンドを用いたカラメルナッツの製造を説明する。
【0136】
<攪拌釜の仕様>
<第1の攪拌処理部:カラメル化・焙煎撹拌釜の仕様>
第1の攪拌容器:ガス加熱機能付き攪拌釜
攪拌釜の釜径:1200mm
攪拌釜の内容積:350L(満水)
第1の攪拌部:自転公転型多軸攪拌機
【0137】
<第2の攪拌処理部:冷却・固化機の仕様>
型式 横型レオニーダー(レオニーダーは、登録商標)(梶原工業株式会社製)
第2の攪拌容器:冷却水によるジャケット冷却機能付き撹拌槽
胴の径:550mm
撹拌槽の内容積:300L(満水)
第2の攪拌部:壁面掻取り型横軸攪拌機
【0138】
<レシピ>
・ナッツ40kg(常温:20℃)
・グラニュー糖
・水
・添加物
【0139】
<手順>
<カラメル化・焙煎>
(1)カラメル化・焙煎攪拌釜にグラニュー糖、水投入
(2)ガス加熱装置の点火、自転公転型多軸撹拌機による撹拌開始
グラニュー糖を溶ほぐし煮詰める。
(3)カラメル化・焙煎攪拌釜に固形物であるナッツを追加投入する。
(4)攪拌釜の壁温を火力調整し、ナッツの焙煎と糖のカラメル化を行う。
(5)消火する(余熱でカラメル化とナッツの焙煎を進める)。
(6)撹拌停止し、掻取羽根等を跳ね上げ、攪拌釜を傾動させる。
(7)中間処理物を冷却・固化機へ移送する。
【0140】
以下、後段の冷却・固化の処理中に前段の攪拌釜の清掃作業を行わせ、(1)の操作に戻る。攪拌釜の清掃作業に際しては、攪拌釜に熱水を入れ、残存中間処理物を溶解除去する。この溶解除去は、カラメル等が固化していない状態で行われるから、攪拌釜内のカラメル等が熱水に短時間で溶解する。攪拌釜内の洗浄水は、攪拌釜の転傾動作により排水し、簡単に洗浄することができる。
【0141】
<冷却・固化>
(8)(7)に連携して移送される中間処理物を第2の攪拌処理部55である冷却・固化機へ受け入れる。
(9)冷却・固化機の攪拌を起動する。
(10)冷却・固化機のジャケットに冷却水を徐々に流し、飴(カラメル)の温度及び冷却・固化機の壁温をゆっくりと下げる。(壁温を下げすぎると壁面にカラメルが固化する。或いは、固化しなくとも、早く下げすぎると、粒子間が結着し大きな塊となる。)ゆっくりの程度は、予め実験で求めた。
同時に清浄な空気(温度は外気温度)を、第2の攪拌容器61である攪拌釜の上方から、水平に対し50°下向きの角度で、攪拌釜内の被攪拌物(中間処理物である製品)上面に
図6,
図7のように吹き込む。吹き出し点と製品までの距離は1m程度である。
吹き込み量は、最初は微少量から、流動状況を確認しながら、徐々に増量する。
(11)冷却・固化機に添加物を適宜投入(ジャケット側から冷却水の供給、冷却用空気の吹き込み継続)する。
(12)冷却が終了したら、冷却水の供給及び空気の吹き出しと攪拌とを停止し、冷却・固化機を傾動させ、冷却・固化機より、冷却されたカラメルナッツを取出す。
(13)冷却・固化機の清掃を行う。特に、空気の吹き出しで粒に付着した粘着性材を早期に固化させることができ、第2の攪拌容器61等への粘着性材の付着が大きく抑制され、清掃を容易に行わせることもできる。但し、壁面への製品の付着は少なく、次回の使用が可能な状態である。処理物(製品)の断片等の微少な固形物が器壁、掻取羽根上に残留しているので、拭取り清掃後、次回の冷却・固化操作に備える。
【0142】
こうした手順により、大部分が粒状のナッツで、カラメルでコーティングされた焙煎ナッツが得られた。