(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023037218
(43)【公開日】2023-03-15
(54)【発明の名称】オゾン水製造方法及びオゾン水製造システム
(51)【国際特許分類】
C02F 1/42 20230101AFI20230308BHJP
C02F 1/78 20230101ALI20230308BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143832
(22)【出願日】2021-09-03
(71)【出願人】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 徹
【テーマコード(参考)】
4D025
4D050
【Fターム(参考)】
4D025AA04
4D025AB05
4D025BA08
4D025BA25
4D025BB07
4D025DA01
4D025DA02
4D025DA04
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4D050AA05
4D050BB02
4D050BD06
4D050CA03
4D050CA06
4D050CA07
4D050CA08
4D050CA15
4D050CA16
(57)【要約】
【課題】金属成分を充分に除去したオゾン水を製造できるオゾン水製造方法及びオゾン水製造システムを得る。
【解決手段】超純水にオゾンを溶解させてオゾン水を製造し、オゾン水からイオン交換処理により金属成分を除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水にオゾンを溶解させてオゾン水を製造し、
前記オゾン水からイオン交換処理により金属成分を除去する、
オゾン水製造方法。
【請求項2】
前記イオン交換処理において、前記オゾン水の鉄濃度を0.01μg/L以下とする請求項1に記載のオゾン水製造方法。
【請求項3】
前記イオン交換処理に、イオン交換繊維を用いる請求項1又は請求項2に記載のオゾン水製造方法。
【請求項4】
超純水を製造する超純水製造装置と、
前記超純水製造装置で製造された超純水にオゾンを溶解させてオゾン水を得るオゾン溶解装置と、
前記オゾン水からイオン交換処理により金属成分を除去するイオン交換装置と、
を有するオゾン水製造システム。
【請求項5】
前記イオン交換装置において、前記オゾン水の鉄濃度を0.01μg/L以下になるまで前記金属成分を除去する請求項4に記載のオゾン水製造システム。
【請求項6】
前記イオン交換装置が、イオン交換繊維を備える請求項4に記載のオゾン水製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、オゾン水製造方法及びオゾン水製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オゾン水が、半導体製造プロセスにおいてたとえばシリコンウェーハの表面洗浄や表面処理等に用いられている。
【0003】
たとえば特許文献1には、鏡面加工したシリコンウェーハ表面にSi-Hの結合を形成し、このシリコンウェーハ表面にオゾンまたは過酸化水素水を作用させて、原子1層分だけの酸化膜を形成する例が示されている。
【0004】
特許文献2には、ウェーハ表面の研磨液による研磨が終了に近づくと、研磨液の供給を停止すると同時に、ウェーハ表面から砥粒を除去するためにリンス液を供給する方法が記載されている。リンス液に含まれる酸化剤としては、オゾン水が例示されている。
【0005】
特許文献3には、シリコンウェーハの表面を親水面とする洗浄の例として、少量のフッ化水素酸とオゾン水との混合液による洗浄が用いられることが記載されている。
【0006】
一般的に、オゾン水はシリコンウェーハの洗浄工程において使用されることが多く、たとえば、レジスト剥離等のシリコンウェーハ上のデバイス形成工程において多く利用されている。ところが、このようなデバイス形成工程では、シリコンウェーハ表面に配線やレジスト等が存在する。シリコンウェーハの洗浄工程において、たとえばこれらの配線やレジスト等を剥離、除去する際には、剥離剤にレジストが混入する。したがって、剥離剤として用いるオゾン水中に不純物が存在していても、この不純物が問題となることはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-63910号公報
【特許文献2】特開平11-243072号公報
【特許文献3】特開2005-244127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体製造プロセスの一部では、シリコンウェーハに対するレジストの除去やパターン形成等において、上記したようなオゾン水が用いられている。
【0009】
ところで、表面が鏡面加工されたシリコンウェーハでは、この表面の不純物が極度に少ないことが要求される。それに応じて、オゾン水に含まれる不純物も極度に少ないことが必要となる。特に将来的に、製造される半導体が微細化されるにつれ、この傾向は顕著となることが予想される。しかしながら、このようなシリコンウェーハ等を対象とする半導体製造プロセスに好適に用いられる程度に金属成分を充分に除去したオゾン水は、実際上は存在していない。
【0010】
たとえば特許文献1では、8ppmのオゾン水に5秒間シリコンウェーハを浸漬することで、表面に自然酸化膜が1層分形成される点は記載されているが、オゾン水における金属成分の濃度については記載されていない。
【0011】
特許文献2では、リンス液中の酸化剤の含有量は、リンス液の酸化還元電位が10mV以上になるように決められる点は記載されているが、オゾン水の金属成分の濃度については記載されていない。
【0012】
特許文献3においても、オゾン水における金属成分の濃度については記載されていない。
【0013】
このように、表面を鏡面加工したシリコンウェーハの洗浄や処理に用いることができる程度に金属成分が除去されたオゾン水は存在せず、また、このように金属成分が充分に除去されたオゾン水の製造方法及び製造システムも存在しない。
【0014】
本願の目的は、金属成分を充分に除去したオゾン水を製造できるオゾン水製造方法及びオゾン水製造システムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第一態様のオゾン水製造方法では、超純水にオゾンを溶解させてオゾン水を製造し、
前記オゾン水からイオン交換処理により金属成分を除去する。
【0016】
このオゾン水製造方法では、超純水にオゾンを溶解させ、オゾン水を製造する。この段階で、オゾンの濃度としては充分な量のオゾンが溶解されたオゾン水が得られる。
【0017】
しかしながら、このようにして得られたオゾン水には、オゾン以外に、鉄やチタン等の金属成分が含まれていることがある。表面が鏡面加工されたシリコンウェーハの表面洗浄や表面処理には、このように金属成分が多く含まれたイオン水では不適な場合がある。
【0018】
第一態様のオゾン水製造方法では、得られたオゾン水から、イオン交換処理により、金属成分を除去する。これにより、表面が鏡面加工されたシリコンウェーハの表面洗浄や表面処理に必要な量のオゾンが溶解され、且つ、金属成分は充分に除去されたオゾン水を製造できる。
【0019】
イオン交換処理による金属成分の除去の程度は、表面が鏡面加工されたシリコンウェーハの表面洗浄や表面処理に用いることができる程度に十分であればよいが、たとえば、第二態様では、前記イオン交換処理において、前記オゾン水の鉄濃度を0.01μg/L以下とする。換言すれば、表面が鏡面加工されたシリコンウェーハの表面洗浄や表面処理には、鉄濃度が0.01μg/L以下となっている程度に金属成分が除去されたオゾン水であれば、問題なく用いることができる。
【0020】
第三実施形態では、前記イオン交換処理に、イオン交換繊維を用いる。
【0021】
これにより、たとえばイオン交換処理にイオン交換樹脂を用いる構成と比較して、効率的にオゾン水から金属成分を除去できる。
【0022】
第四態様のオゾン水製造システムでは、超純水を製造する超純水製造装置と、前記超純水製造装置で製造された超純水にオゾンを溶解させてオゾン水を得るオゾン溶解装置と、前記オゾン水からイオン交換処理により金属成分を除去するイオン交換装置と、を有する。
【0023】
このオゾン水製造システムでは、超純水製造装置で超純水を製造し、製造された超純水
にオゾン溶解装置によりオゾンを溶解させ、オゾン水を製造する。この段階で、オゾンの濃度としては充分な量のオゾンが溶解されたオゾン水が得られる。
【0024】
しかしながら、このようにして得られたオゾン水には、オゾン以外に、鉄やチタン等の金属成分が含まれていることがある。表面が鏡面加工されたシリコンウェーハの表面洗浄や表面処理には、このように金属成分が多く含まれたイオン水では不適な場合がある。
【0025】
第四態様のオゾン水製造システムでは、オゾン溶解装置によって得られたオゾン水から、イオン交換装置により、金属成分を除去する。これにより、表面が鏡面加工されたシリコンウェーハの表面洗浄や表面処理に必要な量のオゾンが溶解され、且つ、金属成分は充分に除去されたオゾン水を製造できる。
【0026】
イオン交換装置による金属成分の除去の程度は、表面が鏡面加工されたシリコンウェーハの表面洗浄や表面処理に用いることができる程度に十分であればよいが、たとえば、第五態様では、前記イオン交換装置において、前記オゾン水の鉄濃度を0.01μg/L以下になるまで前記金属成分を除去する。換言すれば、表面が鏡面加工されたシリコンウェーハの表面洗浄や表面処理には、鉄濃度が0.01μg/L以下となっている程度に金属成分が除去されたオゾン水であれば、問題なく用いることができる。
【0027】
第六実施形態では、前記イオン交換装置が、イオン交換繊維を備える。
【0028】
これにより、たとえばイオン交換装置としてイオン交換樹脂を備えた構成を用いる場合と比較して、効率的にオゾン水から金属成分を除去できる。
【発明の効果】
【0029】
本願では、金属成分を充分に除去したオゾン水を製造できるオゾン水製造方法及びオゾン水製造システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は第一実施形態のオゾン水製造システムを示す構成図である。
【
図2】
図2は第一実施形態のオゾン水製造システムにおけるイオン交換装置の内部構成を示す説明図である。
【
図3】
図3は第二実施形態のオゾン水製造システムにおけるイオン交換装置の内部構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して第一実施形態のオゾン水製造システム12について説明する。
【0032】
第一実施形態のオゾン水製造システム12は、
図1に示すように、超純水製造装置14、脱気装置16、オゾン溶解装置18、イオン交換装置20及びユースポイント22を有している。そして、原水から所定の濃度でオゾンが溶解されたオゾン水を得ることができる。このオゾン水の用途としては、たとえば、表面が鏡面加工されたシリコンウェーハの表面洗浄や表面処理を行う半導体製造プロセスがある。ここで、「鏡面」とは、シリコンウェーハの表面が、たとえばJIS B0601-2013(もしくは、ISO13565-1)に規定される算術平均粗さ(Ra)で4nm以下であることをいう。この算術平均粗さ(Ra)は、一例として以下の条件にて測定可能である。
・微細形状測定装置:KLA Tencor製P16-OF
・測定モード:Roughness
・測定長:200μm
・測定速度:5μm/sec
・測定荷重:1mg
算術平均粗さ(Ra)は、対象の表面における測定長の範囲で、凹凸の高さの平均値を基準とし、基準線と凹凸との差の絶対値を積分し、測定長で除した値(単位長さ当たりの積分値)である。
【0033】
超純水製造装置14は、供給された原水から不純物を除去し、超純水を製造する。原水としては、工業用水、水道水、地下水、河川水等を挙げることができる。
【0034】
超純水製造装置14は、たとえば、前処理装置、一次純水装置、純粋タンク、及び二次純水装置等を有する構成である。
【0035】
前処理装置は、超純水の製造に用いられる原水を前処理する。すなわち、供給された原水に対し、凝集沈澱装置、砂濾過装置、膜濾過装置、脱塩装置などを用いて原水を除濁し、懸濁物質及び有機物等の不純物の一部が除去された前処理水を得る。
【0036】
一次純水装置では、前処理装置で得られた前処理水に対し、さらに吸着、濾過、イオン交換等の各処理を行って、前処理装置では除去しきれなかった不純物を除去し、一次純水を得る。
【0037】
一次純水装置で得られた一次純水は、純水タンクへ送水されて、一時的に貯留される。二次純水装置では、純粋タンクから送られた一時純水に対し、たとえば紫外線照射による有機物の分解や殺菌、吸着、濾過、イオン交換等の各処理が施され、一次純水装置では除去しきれなかった不純物がさらに除去されて、超純水を製造する。
【0038】
脱気装置16は、超純水から、溶存酸素等の気体を除去する装置である。たとえば、水分を透過させず気体は透過させる気体分離膜を用いて、超純水中の気体、特に溶存酸素を除去する構成を挙げることができる。なお、このような構成の脱気装置(膜脱気装置)は、たとえば二次純水装置に含まれていてもよい。また、脱気装置16による脱気処理を行わなくても、溶存された気体の量がオゾン水の使用に際し問題とならない程度に低い場合がある。このような場合は、脱気装置16による脱気処理を行わない構成としてもよい。
【0039】
オゾン溶解装置18は、脱気装置16で脱気された超純水に、オゾンを溶解させる装置である。
【0040】
超純水にオゾンを溶解させる具体的方式は特に限定されず、たとえば、膜溶解式、タンク溶解式、非循環式、循環式等を用いることが可能である。膜溶解式のオゾン溶解装置では、超純水中に、ガス透過膜を用いて、溶解させるガス(本願の場合はオゾンガス)を拡散させ溶解させる。タンク溶解式のオゾン溶解装置では、タンクに超純水及びオゾンを収容した状態で、タンクを所定の内圧に制御し、超純水にオゾンを溶解させる。この場合、順次内圧を低くした複数のタンクに超純水を順に移動させながら、オゾンを超純水に溶解させるようにしてもよい。これにより、超純水に所定濃度でオゾンが溶解されたオゾン水が得られる。また、循環式とは、製造したオゾン水のうちユースポイント22で使用されなかったオゾン水を、オゾン水製造工程におけるいずれかの工程に戻し、再利用する方式である。これに対し、非循環式は、製造したオゾン水のうちユースポイント22で使用されなかったオゾン水を、オゾン水製造工程におけるいずれの工程にも戻すことをしない方式である。
【0041】
イオン交換装置20は、オゾン溶解装置18でオゾンが溶解されて得られたオゾン水に対し、イオン交換処理を行い、このオゾン水から金属成分を除去する装置である。
【0042】
第一実施形態では、イオン交換装置20として、
図2に示すように、イオン交換繊維32を備えるカチオン交換型のイオン交換装置を使用している。具体的には、たとえばポリエステル繊維、セルロース繊維、高密度ポリエチレン繊維等によって、不織布のシート状の基材34が形成されている。この基材34の表面にはモノマーが添加されることで、多数の炭化水素鎖36が備えられている。そして、これら多数の炭化水素鎖36に、グラフト重合等により、金属イオン吸着剤としての官能基38が設けられている。官能基38としては、たとえば、スルホ基、イミノジ酢酸基等を用いることができる。
【0043】
なお、実際のイオン交換繊維32はたとえばシート状であるので、複数のイオン交換繊維32を重ね合わせた状態でカートリッジ等の容器に収容して用いる。一例として、1枚のシート状のイオン交換繊維32を一定方向に渦巻状に巻き付けて、全体として複数層の略円筒状とし、これをカートリッジ等に収容する構造が挙げられる。この場合、イオン交換繊維32の渦巻きの中心から外周側へオゾン水が流れるようにすることで、オゾン水がイオン交換繊維32に接触する面積を広く確保できる。あるいは、1枚又は積層された複数枚のイオン交換繊維をカプセルに収容し、イオン交換繊維32の厚み方向にオゾン水を通水するようにしてもよい。
【0044】
このような構造のイオン交換装置20では、オゾン水が通水されると、オゾン水に含まれている金属成分(金属イオン)が官能基38に捕捉され、オゾン水からは金属成分が除去される。
【0045】
ユースポイント22には、イオン交換装置20によって金属成分が除去されたオゾン水が送られる。なお、ユースポイント22において使用されなかったオゾン水を、脱気装置16の上流側、又は、オゾン溶解装置18の上流側に戻して、再利用するようにしてもよい。
【0046】
次に、本実施形態のオゾン水製造システム12の作用、及びオゾン水製造方法について説明する。
【0047】
超純水製造装置14では、原水から超純水が製造される。この超純水に対し、脱気装置16によって脱気処理がなされる。脱気処理により、超純水の溶存酸素等の気体が除去される。
【0048】
そして、脱気装置によって脱気された超純水に対し、オゾン溶解装置18によってオゾンが溶解され、オゾン水が得られる。本願の開示の技術において、オゾン水の用途としては、たとえば、表面が鏡面処理されたシリコンウェーハ等の表面洗浄及び表面処理等の半導体製造プロセスが挙げられる。オゾン溶解装置18によって得られたオゾン水は、これらの半導体製造プロセスに用いるために必要なオゾンの濃度を満たしている。
【0049】
ところで、オゾン水の用途として、上記した半導体製造プロセスを想定した場合には、従来のオゾン水では、含まれている金属成分に起因して使用に不適となる場合がある。たとえば、シリコンウェーハを貼り合わせる構成では、貼り合わせ表面において不純物を極度に少なくすることが求められる。また、シリコンウェーハの表面を鏡面研磨したり、研磨後の洗浄を行ったりする構成においても、表面に微小な傷や不純物の付着を生じさせないことが求められる。さらに、シリコンウェーハの表面にエピタキシャル膜と形成する構成においても、たとえば表面を親水面になるように洗浄する場合に、表面に不純物を付着させないことが求められる。より具体的な対象としては、シリコンウェーハの表面に配線を形成する場合であれば、形成される配線の線幅が22nm以下、特に10nm以下、さらには5nm以下のシリコンウェーハを製造するプロセス等である。
【0050】
したがって、上記した半導体製造プロセスでは、金属成分を極限まで低減したオゾン水が必要となる。しかしながら、従来のオゾン水に含まれる金属成分の濃度は、これらの用途には高い場合があり、金属成分の濃度を充分に低くしたオゾン水の製造方法及び製造システムは存在していなかった。
【0051】
これに対し、本願の開示の技術では、オゾン溶解装置18によってオゾンが溶解されて得られたオゾン水に対し、イオン交換装置20におけるイオン交換処理により、金属成分を除去する。この金属成分の除去の指標(程度)としては、たとえば、オゾン水の鉄濃度として0.01μg/L以下になるまで除去する。この程度まで鉄濃度が除去されたオゾン水では、鉄以外の金属成分も除去されており、上記の半導体製造プロセスに用いるにあたって、充分に金属成分が除去されたオゾン水となっている。
【0052】
すなわち、本願の開示の技術では、金属成分が極度に少ないオゾン水が求められる半導体製造プロセスに使用可能な程度に、金属成分を充分に除去したオゾン水を製造することが可能である。
【0053】
次に第二実施形態について説明する。第二実施形態では、第一実施形態に対し、イオン交換装置の構成が異なっているが、他は同一の構成とすることが可能である。以下では、第二実施形態のオゾン水製造システムの全体構成は図示を省略し、イオン交換装置40について説明する。
【0054】
図3に示すように、第二実施形態のオゾン水製造システムにおけるイオン交換装置40では、第一実施形態のイオン交換繊維32(
図2参照)に代えて、イオン交換樹脂42を用いている。
【0055】
イオン交換樹脂42は、多数の細孔46を有する粒子状の樹脂基材44を有している。そして、細孔46の内部に官能基(第一実施形態の官能基38を参照)が存在している。そして、複数のイオン交換樹脂42(粒子状の樹脂基材44)が、一定形状の容器に収容されており、この容器をオゾン水が通水される。
【0056】
第二実施形態のオゾン水製造システムにおいても、このようなイオン交換樹脂42を備えたイオン交換装置40を有しているので、オゾン溶解装置18によってオゾンが溶解されて得られたオゾン水に対し、イオン交換装置20においてイオン交換処理を行う。そしてこれにより、上記の半導体製造プロセスに用いるにあたって充分に金属成分が除去されたオゾン水を製造することができる。
【0057】
第二実施形態では、イオン交換装置40として用いたイオン交換樹脂42は、粒子状の樹脂基材44を有している。樹脂基材44は形状が安定しているので、且つ官能基が細孔46に設けられているので、官能基を保持した状態を維持しやすい。
【0058】
これに対し、第一実施形態では、多数の炭化水素鎖36に官能基38が設けられており、オゾン水の金属イオンを捕捉する面積が、第二実施形態よりも広い。したがって、オゾン水から金蔵成分を除去する除去速度(単位時間当たりに除去する金属イオンの量)も、第一実施形態の方が第二実施形態よりも大きい。
【実施例0059】
次に、本願の開示の技術を実施例及び比較例により、さらに詳細に説明する。なお、本願の開示の技術は、次の実施例1及び実施例2に記載の構成及び範囲に限定されるものではない。
【0060】
実施例1では第一実施形態、実施例2では第二実施形態のオゾン水製造システムをそれぞれ使用してオゾン水を製造した。また、本願の開示の技術に係るオゾン水製造システムを用いることなく、すなわち、イオン交換装置20、40による金属成分の除去を行わないオゾン水を比較例とした。これらの各実施例及び比較例に加えて、超純水製造装置14(
図1参照)により得られた超純水について、鉄濃度、チタン濃度及びTOC(Total Organic Carbon:全有機炭素)濃度の数値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
実施例1及び実施例2において使用したイオン交換装置は、以下の通りである。
【0063】
実施例1:グランクラフトKG-Sタイプ(倉敷繊維加工株式会社製)の10インチカートリッジ1本を用いる構成のイオン交換装置。
実施例2:カチオン交換樹脂(Duolite CGP(ローム・アンド・ハース社製)
空間速度:30(1/h)
【0064】
なお、上記の空間速度は、単位時間当たりに対象(本件の場合はイオン交換樹脂42)を通過する流量を、イオン交換樹脂42の体積で除した値であり、単位時間当たりに、イオン交換樹脂42の何倍のオゾン水がイオン交換樹脂42を通過するか、を示す。各実施例及び比較例において、流量は20L/minとした。
【0065】
表1に示されるように、比較例では、超純水よりも鉄及びチタンが増加している。これは、超純水製造装置14で超純水を製造した後の工程のいずれかにおいて、鉄及びチタンの溶出が生じているためであると考えられる。そして、実施例1及び実施例2では、このように鉄の濃度が0.01μg/Lよりも増加しているオゾン水に対し、イオン交換装置20又はイオン交換装置40により、鉄の濃度が0.01μg/L以下になるまで、金属成分を除去している。
【0066】
これにより、実施例1のオゾン水では、比較例のオゾン水と比較して、鉄及びチタンの濃度が大きく低下しており、金属成分を充分に除去できていることが分かる。
【0067】
なお、実施例1のオゾン水では、超純水に対しTOCの値がわずかに増加している。これは、イオン交換装置20において、微量の有機物が分解により生じたためであると考えられる。しかし、実施例1のオゾン水におけるTOCの増加量であれば、本願の開示の技術におけるオゾン水の用途には影響がない程度であり、実質的には実施例1のオゾン水は超純水と同等である。
【0068】
実施例2のオゾン水においても、比較例のオゾン水と比較して、鉄及びチタンの濃度が大きく低下しており、金属成分を充分に除去できていることが分かる。但し、実施例2のオゾン水では、実施例1のオゾン水と比較すると、鉄及びチタンの濃度は高い。これは、実施例1で用いたイオン交換繊維32と比較して、実施例2で用いたイオン交換樹脂42では、イオン水が接触する表面積が狭く、イオン交換速度が遅いことに起因すると考えられる。また、実施例2のオゾン水では、実施例1のオゾン水と比較してTOCの値が大きい。これは、イオン交換繊維32と比較するとイオン交換樹脂42の方が、オゾンで分解されることで炭素成分が生じやすいためであると考えられる。